説明

分散ヘスペレチン

【課題】安定なヘスペレチン分散液、ヘスペレチン粒子を含む粉末およびこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】ヘスペレチン粒子、界面活性剤および溶媒を含むヘスペレチン分散液であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、ヘスペレチン分散液。ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘスペレチンに関する。より詳細には、ヘスペレチン分散液、ヘスペレチン粒子を含む粉末およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘスペリジンは、種々の生理活性を有することが公知である。ヘスペリジンは、例えば、血圧を下げる作用、抗アレルギー作用、LDL−コレステロールを減少させ血中コレステロール値を改善する作用、抗癌作用、毛細血管壁の透過性および脆弱性を低下させる作用、大腸炎抑制作用、関節炎抑制作用、血小板および細胞の凝集抑制作用などを有する。
【0003】
ヘスペリジンは、天然の状態では、ヘスペレチンに糖が結合した配糖体の形で存在する。ヘスペレチンは、ヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペリジンは、動物により摂取された後、腸管中に存在する細菌が産生する酵素により糖とアグリコンとに加水分解された後、アグリコンが大腸から体内に取り込まれると考えられている。
【0004】
このように、ヘスペリジンおよびヘスペレチンは、非常に優れた生理作用を有する。しかも、ヘスペリジンは柑橘類の果実中に多量に存在することから、原料を容易にかつ安価に入手し得る。それにもかかわらず、ヘスペリジンおよびヘスペレチンの利用は非常に制限されている。なぜなら、ヘスペリジンおよびヘスペレチンは、水にはほとんど溶解しないからである。ヘスペリジンとヘスペレチンでは、ヘスペレチンの方が水への溶解度が低い。一般的なフラボノイドでは、アグリコンとその配糖体とでは、アグリコンの方が水への溶解度が低く、体内への吸収量は低い。しかし、ヘスペリジンとヘスペレチンとでは例外的に、アグリコンであるヘスペレチンの方が、配糖体であるヘスペリジンより容易に吸収されることが非特許文献1において示されている。そのため、ヘスペリジンよりもヘスペレチンを積極的に利用することが好ましい。
【0005】
しかし、ヘスペレチンは水への溶解度が低いため、飲料などにヘスペレチンを添加するとすぐに沈澱してしまい、飲料の容器の底に大部分のヘスペレチンが残ってしまう。そのために、添加したヘスペレチンを有効に体内に取り込むことができない。従って、消費者に価値をアピールできる製品になりにくい。そのため、ヘスペレチンを飲料中に安定して分散させることが望ましい。
【0006】
従来、種々の水不溶物に関して、水への分散が検討されている。例えば、特許文献1は、酵素分解レシチンおよび水不溶性ミネラルを含有してなるミネラル含有組成物を開示する。特許文献2は、乳化剤で被覆されたピロリン酸第二鉄を含有してなる抗酸化組成物を開示する。特許文献3は、従来の界面活性剤では不可能であった可溶化物または安定な乳化物の製造を可能にするポリグリセリン脂肪酸エステルを開示する。
【0007】
しかし、特許文献1および特許文献2で分散させる対象として記載されているのは、それぞれ、水不溶性ミネラルおよびピロリン酸第二鉄という無機物であり、有機物であるヘスペレチンとは性質が全く異なる。
【0008】
特許文献3で可溶化する対象として記載されているのは、ビタミンEなどの脂溶性ビタミン、βカロチンなどの油溶性色素、高度不飽和脂肪酸などの油溶性生理活性物質などの疎水性物質である。これらはいずれも常温で液体の物質であり、常温で固体のヘスペレチンとは性質が全く異なる。
【0009】
このように、従来、ヘスペレチンを安定して水中に分散させることはできなかった。
【特許文献1】国際公開第98/14072号パンフレット
【特許文献2】特開2005−239693号公報
【特許文献3】特開2006−111539号公報
【非特許文献1】Booth ANら,Metabolic fate of hesperidin,eriodictyol,homoeriodictyol and diosmin,J.Biol.Chem.230:661−668(1958)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、安定なヘスペレチン分散液、ヘスペレチン粒子を含む粉末およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の界面活性剤を使用することにより、ヘスペレチン粒子が従来と比較して顕著に安定して分散した分散液が得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
ヘスペレチン粒子、界面活性剤および溶媒を含むヘスペレチン分散液であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、ヘスペレチン分散液。
【0013】
(項目2)
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、項目1に記載の分散液。
【0014】
(項目3)
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、項目1または2に記載の分散液。
【0015】
(項目4)
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたものであり、該ポリグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該ポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、項目1〜3のいずれか1項に記載の分散液。
【0016】
(項目5)
前記形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルがデカグリセリンモノオレートである、項目4に記載の分散液。
【0017】
(項目6)
前記界面活性剤が、デカグリセリンとオレイン酸とがエステル化されることにより形成されたデカグリセリンモノオレートと、クエン酸モノステリアン酸グリセリンと、酵素分解レシチンとを含み、該デカグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該デカグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、項目1〜5のいずれか1項に記載の分散液。
【0018】
(項目7)
さらに多糖類を含む、項目1〜6のいずれか1項に記載の分散液。
【0019】
(項目8)
前記多糖類が、アルギン酸およびアルギン酸エステルからなる群より選択される、項目7に記載の分散液。
【0020】
(項目9)
前記多糖類がアルギン酸エステルである、項目7に記載の分散液。
【0021】
(項目10)
前記ヘスペレチン粒子の平均粒子径が0.1μm〜10μmである、項目1〜9のいずれか1項に記載の分散液。
【0022】
(項目11)
前記ヘスペレチン分散液中のヘスペレチン粒子の含有量が1重量%〜50重量%である、項目1〜10のいずれか1項に記載の分散液。
【0023】
(項目12)
24時間静置後に沈澱が実質的に観察されない、項目1〜11のいずれか1項に記載の分散液。
【0024】
(項目13)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、粉末。
【0025】
(項目14)
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、項目13に記載の粉末。
【0026】
(項目15)
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、項目13または14に記載の粉末。
【0027】
(項目16)
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたものであり、該ポリグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該ポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、項目13〜5のいずれか1項に記載の粉末。
【0028】
(項目17)
前記形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルがデカグリセリンモノオレートである、項目16に記載の粉末。
【0029】
(項目18)
前記界面活性剤が、デカグリセリンとオレイン酸とがエステル化されることにより形成されたデカグリセリンモノオレートと、クエン酸モノステリアン酸グリセリンと、酵素分解レシチンとを含み、該デカグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該デカグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、項目13〜17のいずれか1項に記載の粉末。
【0030】
(項目19)
さらに多糖類を含む、項目13〜18のいずれか1項に記載の粉末。
【0031】
(項目20)
前記多糖類が、アルギン酸およびアルギン酸エステルからなる群より選択される、項目19に記載の粉末。
【0032】
(項目21)
前記多糖類がアルギン酸エステルである、項目19に記載の粉末。
【0033】
(項目22)
前記ヘスペレチン粒子の平均粒子径が0.1μm〜10μmである、項目13〜21のいずれか1項に記載の粉末。
【0034】
(項目23)
前記粉末中のヘスペレチン粒子の含有量が30重量%〜95重量%である、項目13〜22のいずれか1項に記載の粉末。
【0035】
(項目24)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む飲食物であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、飲食物。
【0036】
(項目25)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む医薬部外品であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、医薬部外品。
【0037】
(項目26)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む医薬品であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、医薬品。
【0038】
(項目27)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む皮膚外用剤であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、皮膚外用剤。
【0039】
(項目28)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む入浴剤であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、入浴剤。
【0040】
(項目29)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む飼料であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、飼料。
【0041】
(項目30)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含むペットフードであって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、ペットフード。
【0042】
(項目31)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む繊維であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、繊維。
【0043】
(項目32)
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む衣類であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、衣類。
【0044】
(項目33)
項目1に記載のヘスペレチン分散液の製造方法であって、該方法は、
ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;および
該混合物を湿式磨砕機で粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程
を包含する、方法。
【0045】
(項目34)
項目13に記載の粉末の製造方法であって、該方法は、
ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;
該混合物を湿式磨砕機にかけて該混合物中の該ヘスペレチン原末を粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程;および
該ヘスペレチン分散液を乾燥して、ヘスペレチン粉末を得る工程
を包含する、方法。
【0046】
(項目35)
前記乾燥がスプレードライにより行われる、項目34に記載の方法。
【発明の効果】
【0047】
本発明のヘスペレチン分散液は、長期間にわたって保存しても沈澱が実質的に生じないという効果を有する。本発明のヘスペレチン分散液の製造工程において増粘の問題も生じないという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0049】
(1.ヘスペレチン分散液の材料)
本発明のヘスペレチン分散液は、ヘスペレチン粒子、界面活性剤および溶媒を含む。本発明のヘスペレチン分散液の材料について、以下により詳細に説明する。
【0050】
(1.1 ヘスペレチン粒子)
ヘスペレチンは、3’,5,7−トリヒドロキシ−4’−メトキシフラバノンとも呼ばれる。ヘスペレチンは、以下の構造を有する:
【0051】
【化1】

ヘスペレチンは、ヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペレチンは、ヘスペリジンをヘスペリジナーゼまたはナリンギナーゼによって分解することにより入手され得る。ヘスペリジンはフラボノイドの一種であり、柑橘類(例えば、温州みかん、夏みかん、伊予みかん、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジが挙げられる)の果実に含まれており、特に温州みかんに多く含まれている。ヘスペリジンは、未熟期のみかん果実に多量に含まれる。ヘスペリジンは、温州みかん果実の部位の中でも、黄色い外果皮と果肉との間にある、白い中果皮に最も多く含まれている。ヘスペリジンは、柑橘類の果皮、果汁または種子より抽出することができる。例えば、温州みかん果実の搾汁粕からヘスペリジンを抽出する場合は、温州みかん果実の搾汁粕に水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを11.5〜12.5に調整してから撹拌混合し、これを圧搾し、得られた液を遠心分離する。遠心分離により得られた上清に酸を加えてpHを5〜5.5にしてから加温し、この液を遠心分離することによりヘスペリジンを沈澱させ、その後、沈澱しているヘスペリジンを回収する方法が示されている(特開平8−188593号公報を参照のこと)。その後、ヘスペリジン水溶液を調製し、糖部分を(例えば、ナリンギナーゼの作用または酸性条件での加水分解により)除去することにより、ヘスペレチンが得られ得る。柑橘類果実からヘスペリジンを得る方法の詳細は、例えば、King FEおよびRobertson A.,Natural glucosides,Part 3.J.Chem.soc.(II):1704−1709(1931)に記載される。あるいは、市販のヘスペリジンを原料として用いてもよい。ヘスペリジンは、例えば、ハマリ産業株式会社から販売される。ヘスペレチンは、ヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペリジンから酸分解によってヘスペレチンを得る方法の詳細は、例えば、Asahina Y.ら,Flavanone glucosides(V):Reduction of flavanone and flavonol derivatives,J.Pharm.Soc−Japan 50:217−223(1931)に記載される。ヘスペレチンは、ヘスペリジンをラムノシダーゼおよびグルコシダーゼによって酵素分解することによっても入手され得る。
【0052】
ヘスペレチンは無色針状または板状晶であり、その融点は227〜228℃である。本明細書中では、「ヘスペレチン原末」とは、固体ヘスペレチンであって、粒子化処理が施されていないものをいう。針状または板状晶のヘスペレチンは、ヘスペレチン原末である。
【0053】
本明細書中では、「ヘスペレチン粒子」とは、固体ヘスペレチンが粒状に分割されたものをいう。ヘスペレチン粒子の平均粒子径は、好ましくは約10μm以下であり、より好ましくは約5μm以下であり、さらに好ましくは約3μm以下であり、特に好ましくは約2μm以下であり、最も好ましくは約1μm以下である。ヘスペレチン粒子の平均粒子径に特に下限はないが、例えば、約0.01μm以上、約0.05μm以上、約0.1μm以上、約0.2μm以上、約0.3μm以上、約0.4μm以上、約0.5μm以上などであり得る。分散を容易にするためには、ヘスペレチン粒子の平均粒子径は可能な限り小さい方がよい。
【0054】
ヘスペレチン粒子全体のうち、好ましくは約80体積%以上、より好ましくは約90体積%以上、さらに好ましくは約95体積%以上、最も好ましくは約99体積%以上の粒子の粒径が約1μm以下であることが好ましく、約0.8μm以下であることがより好ましく、約0.5μm以下であることが最も好ましい。
【0055】
このような平均粒子径のヘスペレチン粒子は、ヘスペレチン原末をダイノーミル、レディミル、コボールミルなどの湿式粉砕機、ジェットミルなどの乾式粉砕機を用いた物理的粉砕方法によって粉砕することによって入手され得る。ヘスペレチン粒子の平均粒径は、例えば、ベックマン・コールター社の湿式粒度分布計により測定され得る。
【0056】
(1.2 界面活性剤)
本明細書中では、「界面活性剤」とは、分子内に親水基と親油基とを有し、かつ溶液の界面において、または液体と固体との界面において、界面活性を示す物質をいう。本発明で用いられる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される。これらの界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上組合せて用いてもよい。2種以上組合せて用いることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される界面活性剤に加えて、さらに他の一般的な界面活性剤を併用してもよい。このような他の一般的な界面活性剤の例として、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体等の非イオン性界面活性剤;両性界面活性剤;アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、キラヤ抽出物等の天然物由来の界面活性剤が挙げられる。これらの一般的な界面活性剤についても1種で用いてもよく、または2種以上併用してもよい。
【0057】
好ましくは、本発明で用いられる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステルと酵素分解レシチンとを併用することにより、ヘスペレチン分散液の安定性が増す。
【0058】
より好ましくは、本発明で用いられる界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを併用することにより、ヘスペレチン分散液の安定性が極めて顕著に増す。
【0059】
これら界面活性剤の分散液中での配合量は特に限定されない。配合量が少なすぎると水中での分散状態が不安定になる場合があり、配合量が多すぎると分散液の粘度が高くなり分散液の取り扱いが不便になる場合がある。そのような観点からみると、界面活性剤の配合量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1重量%以上である。分散液が、そのまま利用される飲料のような、比較的希薄なものである場合、界面活性剤の配合量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、さらに好ましくは約0.03重量%以上であり、特に好ましくは約0.04重量%以上であり、最も好ましくは約0.05重量%以上である。分散液が、希薄な分散液を作製するためのストック溶液のような、比較的濃いものである場合、界面活性剤の配合量は、意図される濃縮度に応じて、例えば、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上などであり得る。
【0060】
界面活性剤の配合量は、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下であり、さらに好ましくは約3重量%以下である。分散液が、そのまま利用される飲料のような、比較的希薄なものである場合、界面活性剤の配合量は、好ましくは約1重量%以下であり、より好ましくは約0.5重量%以下であり、さらに好ましくは約0.4重量%以下であり、さらにより好ましくは約0.3重量%以下であり、特に好ましくは約0.2重量%以下であり、最も好ましくは約0.1重量%以下である。分散液が、希薄な分散液を作製するためのストック溶液のような、比較的濃いものである場合、界面活性剤の配合量は、意図される濃縮度に応じて、例えば、約10重量%以下、約5重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下などであり得る。
【0061】
(1.2.1 ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明で用いられる「ポリグリセリン脂肪酸エステル」とは、グリセリンの縮合物と脂肪酸とをエステル化したものをいう。ポリグリセリンとは、グリセリンを脱水縮合するなどして得られる重合度2以上の化合物をいう。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステルであっても、ジエステルであっても、トリエステルであっても、それ以上エステル化されたものであってもよい。好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルは一般に種々の重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物として市販される。このような市販の混合物は、どのような重合度のものが多いか、どのような脂肪酸のエステルが多いかなどによって種々のグレードのものが存在する。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、一般に、グリセリンの縮合度が2、3、4、5、6または10のものを主成分とするポリグリセリン脂肪酸エステル混合物が市販されており、これらのいずれかを利用することができる。なかでも親水性の高いグリセリン縮合度が5以上のものが好適に利用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、1種類のポリグリセリン脂肪酸エステルからなるものを用いてもよく、複数種類のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物を用いてもよい。特定種類のポリグリセリン脂肪酸エステルの純度がなるべく高いものを使用することが好ましい。
【0062】
さらに好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたものであり、該ポリグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である。水酸基価とは、油脂およびロウの特性の1つである。「水酸基価」とは、試料油1gから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数をいう。試料を過剰のアセチル化剤(例えば、無水酢酸)と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物のケン化価を測定したのち、次の式に従って計算する:
水酸基価={A/(1−0.00075A)}−B
(ただしAはアセチル化後のケン化価であり、Bはアセチル化前のケン化価を表す)。
【0063】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの形成に使用されるポリグリセリンは、好ましくは、ポリグリセリン中の全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンである。得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化性能および乳化安定性の高さの観点から、1級水酸基の割合が約55%以上のポリグリセリンがより好ましく、1級水酸基の割合が約60%以上のポリグリセリンが最も好ましい。さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの形成に使用されるポリグリセリンの水酸基価は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの親水性疎水性バランス(HLB)の観点から、約1100以下であることがより好ましく、約1000以下であることがさらに好ましく、約950以下であることが特に好ましく、約900以下であることが最も好ましい。作業性および脂肪酸とのエステル化の容易性の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルの形成に使用されるポリグリセリンの水酸基価は、約770以上であることが好ましく、約800以上であることが好ましく、約850以上であることが特に好ましいい。
【0064】
親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)をいい、一般に、20×M/Mにより計算され、ここで、M=親水基部分の分子量であり、M=分子全体の分子量である。HLB値は、分子中の親水基の量が0%のとき0であり、100%のとき20である。HLB値は、乳化剤では乳化剤分子を形成する親水性および疎水性の基の大きさと強さを表し、疎水性の高い乳化剤はHLB値が小さく、親水性の高い乳化剤はHLB値が大きい。
【0065】
全ての水酸基のうちの1級水酸基の割合は、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて測定される。また、水酸基価は当該分野で公知の方法により測定することができる。炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、以下のようにして測定することができる。ポリグリセリン500mgを重水2.8mlに溶解し、ろ過後ゲートつきデカップリングにより13C−NMR(125MHz)スペクトルを得る。ゲートデカップルド測定手法によりピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CHOH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。水酸基価が1200以下であり、かつポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば、特開2006−111539号公報に記載の方法に従って製造され得る。形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルは、好ましくはデカグリセリンモノオレートである。
【0066】
最も好ましくは、界面活性剤は、デカグリセリンとオレイン酸とがエステル化されることにより形成されたデカグリセリンモノオレートと、クエン酸モノステリアン酸グリセリンと、酵素分解レシチンとを含み、このデカグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつデカグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である。
【0067】
ポリグリセリンと反応してポリグリセリン脂肪酸エステルを形成するもう一つの構成成分である脂肪酸は、脂肪族モノカルボン酸であっても脂肪族ジカルボン酸であってもよい。好ましくは、脂肪族モノカルボン酸である。
【0068】
脂肪酸は、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してあるいは分離せずに精製することにより入手され得る。脂肪酸はあるいは、石油などを原料にして化学的に合成することによって得られる脂肪酸であってもよい。脂肪酸はまた、これら脂肪酸を水素添加などして還元したもの、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸、あるいは不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよい。
【0069】
脂肪酸は、炭素数3以上の脂肪酸である。脂肪酸の炭素数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上であり、殊に好ましくは12以上であり、特に好ましくは14以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは17以上である。脂肪酸の炭素数は好ましくは22以下である。脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。二重結合も三重結合も含まない脂肪酸を飽和脂肪酸という。飽和脂肪酸の例としては、酪酸(C4:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、イソステアリン酸(C18:0)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18:0)、リシノール酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)、リグノセリン酸(C24:0)、セロチン酸(C26:0)、モンタン酸(C28:0)、メリシン酸(C30:0)などが挙げられる。飽和脂肪酸は好ましくは、酪酸(C4:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキジン酸(C20:0)およびベヘン酸(C22:0)からなる群より選択される。二重結合を含む脂肪酸を不飽和脂肪酸という。不飽和脂肪酸の例としては、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトオレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、γ−リノレン酸(C18:3)、エイコセン酸(C20:1)、ジホモ−γ−リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、エルカ酸(C22:1)、ドコサペンタエン酸(C22:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)などが挙げられる。不飽和脂肪酸は好ましくは、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)およびγ−リノレン酸(C18:3)からなる群より選択される。脂肪酸は好ましくはミリスチン酸(C14:0)またはオレイン酸(C18:1)である。
【0070】
分散安定性の観点から、脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、縮合リシノール酸が好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸がより好ましい。
【0071】
ポリグリセリン酸脂肪酸エステルのエステル化度については特に限定されないが、モノエステル含有量の高い、低エステル化度のものが好ましい。
【0072】
(1.2.2 酵素分解レシチン)
本発明で用いられる「酵素分解レシチン」とは、レシチンを主成分として含むリン脂質混合物の脂肪酸エステル部分のみをホスホリパーゼによって限定的に加水分解することによって得られるものをいう。酵素分解レシチンを本発明において使用する際に、レシチンのホスホリパーゼ分解物のみからなる酵素分解レシチンを使用してもよく、レシチンのホスホリパーゼ分解物だけでなく、種々のリン脂質のホスホリパーゼ分解物をも含む混合物を使用してもよい。酵素分解レシチンは、ホスホリパーゼによる分解後に任意の精製方法によって精製されたものであってもよい。酵素分解レシチンはまた、既存添加物名簿に記載される酵素分解レシチン、すなわち、植物レシチンまたは卵黄レシチンから得られた、ホスファチジン酸およびリゾレシチンを主成分とするものであってもよい。既存添加物名簿では、「植物レシチン」とは、アブラナまたはダイズの種子から得られた、レシチンを主成分とするものをいう。既存添加物名簿では、「卵黄レシチン」とは、卵黄から得られた、レシチンを主成分とするものをいう。
【0073】
狭義の「レシチン」とは、加水分解により、脂肪酸2分子とグリセロリン酸1分子とコリン1分子とを生じるリン脂質、すなわち、ホスファチジルコリンをいう。レシチンはまた、グリセリン骨格に脂肪酸残基とリン酸基、それに結合した塩基性化合物または糖からなっていてもよい。本発明においてレシチンを使用しようとする場合、純粋なレシチンを使用してもよく、レシチンを主成分とする混合物を使用してもよい。本明細書中では、「主成分とする」とは、その成分が、組成の好ましくは約5重量%以上、より好ましくは約10重量%以上、さらに好ましくは約15重量%以上、最も好ましくは約20重量%以上を占めることをいう。
【0074】
酵素分解レシチンは、いずれもその親水基部分にリン酸基を有している。そのため、酵素分解レシチンは、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤と比較して、ヘスペレチンのような植物ステロール等の水難溶性有機化合物表面への吸着被覆力が著しく強い。そのため、酵素分解レシチンを用いると、ヘスペレチン表面に安定な吸着界面層が形成され、加熱処理を施した際にも剥離することなく、効果的に2次凝集を抑制することが可能となり、その結果として良好な分散性が得られる。
【0075】
本発明で用いられる酵素分解レシチンとしては、一般的にはダイズ、ナタネなどの植物由来のレシチンから製造されたもの、ならびに鶏卵のような動物由来のレシチンから製造されたものが利用され得る。
【0076】
本発明で用いられ得る酵素分解レシチンの例としては、植物レシチンまたは卵黄レシチンをホスホリパーゼAまたはホスホリパーゼDによって加水分解することで得られるものが挙げられる。このような酵素分解レシチンの例としては、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルイノシートルおよびリゾホスファチジルセリンを主成分とするモノアシルグリセロリン脂質混合物、ならびにホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールおよびリゾホスファチジルグリセロールが挙げられる。それらの中では、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンおよびリゾホスファチジルセリンが好ましく、リゾホスファチジルコリンがより好ましい。
【0077】
レシチンの酵素分解に用いられるホスホリパーゼは、ホスホリパーゼAおよび/またはD活性を有するものであればよい。ホスホリパーゼは、ホスホリパーゼ活性を有すれば、ブタの膵臓などの動物起源、キャベツなどの植物起源、カビ類などの微生物起源などの任意のものに由来し得る。
【0078】
酵素分解レシチンの分解率は、特に限定されない。分解率は、使用する目的に応じて適切に調整され得る。ヘスペレチンの2次凝集を抑える目的から、酵素分解レシチンの分解率は約20%〜約95%であることが好ましく、約30%〜約80%であることがより好ましい。酵素分解レシチンの分解率は、当該分野で公知の任意の方法によって測定され得る。例えば、分解率は、ホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンとの比率をHPLCなどで測定することにより求められ得る。
【0079】
本明細書では、「酵素分解レシチンの分解率」とは、酵素分解レシチン中のグリセリン骨格上の遊離水酸基のモル数の合計を、グリセリン骨格の総モル数の3倍で除算して100を乗ずることにより計算される。
【0080】
(1.2.3 グリセリン有機酸脂肪酸エステル)
本発明で用いられる「グリセリン有機酸脂肪酸エステル」とは、グリセリン骨格に脂肪酸と脂肪酸以外の有機酸とがエステル結合したものをいう。グリセリン有機酸脂肪酸エステルは通常、有機酸と脂肪酸モノグリセリドのエステル反応によって得られる。グリセリン有機酸脂肪酸エステルの形成に使用され得る有機酸の例としては、酢酸、乳酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。ヘスペレチンの水溶液中での安定性の観点から、クエン酸およびコハク酸が好ましい。
【0081】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルの形成に使用される脂肪酸としては、上記「1.2.1 ポリグリセリン脂肪酸エステル」において詳述した炭素数6〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が利用可能である。
【0082】
(1.3 多糖類)
本発明の分散液は、さらに多糖類を含むと、より一層安定性の高い分散液となる。このような目的で使用される多糖類の例としては、アルギン酸、アルギン酸エステル、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガムおよびペクチンが挙げられる。多糖類は、好ましくはアルギン酸エステルである。多糖類は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。多糖類の中でも、アルギン酸およびアルギン酸の誘導体であるアルギン酸エステルは、本発明の分散液の安定化に特に好適に利用でき、さらにはアルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したものは本発明の分散液に最も好適に利用できる。アルギン酸エステルのエステル化度は好ましくは約75%以上であり、最も好ましくは約80%以上である。
【0083】
この多糖類の分散液への配合割合は特に限定されない。配合量が少なすぎると、分散液の分散安定性が低下する場合があり、配合量が多すぎると分散液の粘度が著しく高くなるため取り扱いに支障を来たす場合がある。分散液中での多糖類の配合量は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上である。分散液中での多糖類の配合量は、好ましくは約5重量%以下であり、より好ましくは約1重量%以下である。
【0084】
(1.4 溶媒)
本発明のヘスペレチン分散液に用いられる溶媒は、任意の溶媒であり得る。溶媒は好ましくは、水または水と混和性の任意の有機溶媒であり、より好ましくは水またはエタノールであり、最も好ましくは水である。水と有機溶媒とを混合して用いてもよい。
【0085】
水と有機溶媒とを混合する場合、溶媒全体のうちの水の割合は、約50容積%以上であることが好ましく、約60容積%以上であることが好ましく、約70容積%以上であることが好ましく、約80容積%以上であることが好ましく、約90容積%以上であることが好ましく、約95容積%以上であることが最も好ましい。水と混合される有機溶媒は、1種類であっても2種類以上であってもよい。環境への影響および人体への影響などを考慮すると、溶媒は水であるかまたは主に水からなることが好ましい。用語「主に水からなる」とは、溶媒の約80容積%以上が水であることをいう。
【0086】
本発明の分散液は、取り扱いを容易にする程度に粘度が低いことが好ましい。
【0087】
(1.5 ヘスペレチン粒子を製造する際に用いられる分散媒)
本発明のヘスペレチン分散液は、その製造時において、後述するように湿式粉砕装置を使用することが望ましい。湿式粉砕装置による処理を行うためには、上述した原料を分散させる分散媒が必要となる。分散媒は、任意の分散媒であり得る。分散媒は好ましくは、水または水と混和性の任意の有機溶媒であり、より好ましくは水またはエタノールであり、最も好ましくは水である。水と有機溶媒とを混合して用いてもよい。
【0088】
水と有機溶媒とを混合する場合、分散媒全体のうちの水の割合は、約50容積%以上であることが好ましく、約60容積%以上であることが好ましく、約70容積%以上であることが好ましく、約80容積%以上であることが好ましく、約90容積%以上であることが好ましく、約95容積%以上であることが最も好ましい。水と混合される有機溶媒は、1種類であっても2種類以上であってもよい。環境への影響および人体への影響などを考慮すると、分散媒は水であるかまたは主に水からなることが好ましい。
【0089】
これらの分散媒は、ヘスペレチン粒子の製造後、ヘスペレチン分散液の製造前に蒸発させてもよく、あるいは、そのままヘスペレチン分散液の溶媒として利用されてもよい。
【0090】
産業上の安全性を考慮すると、菌の繁殖を防止できる多価アルコールまたは液糖を防腐剤として分散媒に添加することが望ましい。この目的で使用できる防腐剤の例としては、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、およびこれらの水溶液が挙げられる。これらの防腐剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの防腐剤の中でも、ヘスペレチン分散液の調製のしやすさおよび安定性の観点から、グリセリン、還元澱粉糖水飴および果糖ブドウ糖液糖が好適に使用され得る。
【0091】
(1.6 他の材料)
本発明の分散液は、必要に応じて、本発明のさらなる価値向上のために、上述の材料の作用を阻害しない範囲で、他の材料を含み得る。本発明の分散液の品質の安定化のために、チャ抽出物、カテキン、トコフェロールといった抗酸化剤を含んでもよい。
【0092】
(2.ヘスペレチン分散液の製造方法)
本発明のヘスペレチン分散液の調製方法は特に限定されないが、好ましくは、本発明のヘスペレチン分散液は、ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;および該混合物を湿式磨砕機にかけて該混合物中の該ヘスペレチン原末を粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程を包含する、方法により製造される。
【0093】
ヘスペレチン分散液が多糖類を含む場合、本発明のヘスペレチン分散液は、例えば次のような工程で調製できる。まず、溶媒および必要に応じて防腐剤(例えば、グリセリン、液糖類など)に界面活性剤を添加し、約70℃以上に加熱してよく分散させる。次いで、予め粉体混合したヘスペレチン原末と多糖類とを、この界面活性剤分散液に加えて混合物を得る。この混合物を湿式磨砕機によって粉砕し、ヘスペレチン分散液を得る。この工程において、ヘスペレチン原末が湿式磨砕機でせん断力を受けた際、ヘスペレチンの表面に新たに現出する露出面に速やかに界面活性剤が吸着することが、ヘスペレチン粒子同士の凝集を阻害するために望ましい。そのため、湿式磨砕の工程では、ヘスペレチンと界面活性剤とが共存することが好ましい。
【0094】
本発明のヘスペレチン分散液の製造に用いる機器は特に限定されない。ヘスペレチンを微細な粒子とするためには、湿式磨砕機を使用することが望ましい。湿式磨砕機とは、粉砕媒体としてガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ等を用い、粉砕室(ベッセル容器)中でディスクまたはローターを回転させることにより粉砕媒体同士を衝突させ、この粉砕室中に供給される被粉砕物スラリーに対してせん断力を生じさせ、スラリー中の固形分を粉砕する機械である。本発明で好適に用いられる粉砕媒体の例としては、アルミナビーズ、ジルコニアビーズおよびチタニアビーズが挙げられる。
【0095】
粉砕媒体の粒径は特に限定されない。粉砕媒体の粒径は、好ましくは約1mm以下であり、より好ましくは約0.8mm以下であり、さらに好ましくは約0.5mm以下である。粉砕室における粉砕媒体の充填率は特に限定されない。粉砕媒体の充填率は、通常、粉砕室の有効容積に対して約50%以上であり、磨砕効率から好ましくは約70%以上であり、さらに好ましくは約80%以上である。
【0096】
本発明で用いられる湿式磨砕機は特に限定されない。湿式磨砕機の例としては、一般的にコボールミル、ダイノーミル、サンドミル、レディミルなどと呼称されているものが挙げられる。本発明で用いられる湿式磨砕機は、縦型、横型、バッチ式、連続式などのいずれのタイプでも差し支えない。生産効率の観点から、連続式湿式磨砕機が推奨される。磨砕室の材質は任意の材質であり得るが、余分な異物が混入しないよう、金属製ではなくセラミック製であることが望ましい。
【0097】
(3.ヘスペレチン分散液)
本発明のヘスペレチン分散液は、ヘスペレチン粒子、界面活性剤および溶媒を含む。本発明のヘスペレチン分散液は、ヘスペレチンを水に容易に安定的に分散させることができ、かつ取り扱いが容易なように設計されている。本発明のヘスペレチン分散液に用いられるヘスペレチン粒子、界面活性剤および溶媒については、上記1で説明したとおりである。本発明のヘスペレチン分散液は、好ましくは、上記「2.ヘスペレチン分散液の製造方法」に従って製造された分散液である。本発明のヘスペレチン分散液は、本発明のヘスペレチン含有粉末を溶媒(例えば、水)に再度分散させることによって調製された分散液であってもよい。
【0098】
本発明のヘスペレチン分散液中には、ヘスペレチンが安定して分散している。「ヘスペレチンが安定して分散している」とは、ヘスペレチン分散液を室温(好ましくは約20℃)に少なくとも24時間放置した場合に、ヘスペレチンによる沈澱が実質的に観察されないことをいう。
【0099】
本発明のヘスペレチン分散液は、24時間静置後に沈澱が実質的に観察されない。本発明の分散液は、好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、なおさらに好ましくは5日間静置後に、ひときわ好ましくは6日間静置後に、いっそう好ましくは7日間静置後に、よりいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に沈澱が実質的に観察されない。
【0100】
好ましくは、本発明のヘスペレチン分散液は、90℃の熱水中で10分間加熱殺菌してから24時間静置後に沈澱が実質的に観察されず、さらに好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、ひときわ好ましくは5日間静置後に、いっそう好ましくは6日間静置後に、よりいっそう好ましくは7日間静置後に、さらにいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に沈澱が実質的に観察されない。
【0101】
「沈澱が実質的に観察されない」とは、沈澱がまったく観察されないか、または肉眼ではほとんど観察されないか、または観察されたとしてもごくわずかであることをいう。沈澱の量は、好ましくは、ヘスペレチン分散液中に含まれるヘスペリチンの量の約10重量%以下であり、より好ましくは約1重量%以下であり、さらに好ましくは約0.1重量%以下であり、特に好ましくは約0.05重量%以下であり、最も好ましくは約0.01重量%以下である。
【0102】
ヘスペレチン分散液は、着色物質などを特に添加しなければ、乳白色を呈する。分散が不十分な分散液では、長時間静置すると、上部にある分散液の呈色が薄くなり、ひどい場合には透明になり、底部にある分散液の呈色が濃くなる。これに対して、本発明のヘスペレチン分散液は安定しているので、長時間静置しても、この呈色が実質的に均質なままである。本発明の分散液は、24時間静置後に、好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、なおさらに好ましくは5日間静置後に、ひときわ好ましくは6日間静置後に、いっそう好ましくは7日間静置後に、よりいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に観察しても呈色が実質的に均質である。
【0103】
好ましくは、本発明のヘスペレチン分散液は、90℃の熱水中で10分間加熱殺菌してから24時間静置後に観察しても呈色が実質的に均一であり、さらに好ましくは36時間静置後に、より好ましくは3日間後静置後に、さらに好ましくは4日間静置後に、ひときわ好ましくは5日間静置後に、いっそう好ましくは6日間静置後に、よりいっそう好ましくは7日間静置後に、さらにいっそう好ましくは2週間静置後に、特に好ましくは3週間静置後に、最も好ましくは1ヶ月静置後に観察しても呈色が実質的に均質である。
【0104】
「呈色が実質的に均質である」とは、分散液の上部の呈色と底部の呈色とが肉眼で区別がつかないことをいう。
【0105】
ヘスペレチン分散液中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約5重量%以上である。ヘスペレチン分散液が、より希薄なヘスペレチン分散液を製造するための原液として製造される場合、この濃厚なヘスペレチン分散液中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであり得る。
【0106】
ヘスペレチン分散液中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。例えば、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0107】
ヘスペレチン分散液中の水の量は、好ましくは約90重量%以下であり、より好ましくは約80重量%以下であり、さらに好ましくは約70重量%以下であり、特に好ましくは約60重量%以下であり、最も好ましくは約50重量%以下である。ヘスペレチン分散液が、より希薄なヘスペレチン分散液を製造するための原液として製造される場合、この濃厚なヘスペレチン分散液中の水の量は、例えば、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0108】
ヘスペレチン分散液中の水の量に特に下限はない。例えば、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約50重量%以上などであり得る。
【0109】
本発明のヘスペレチン分散液は、固形分量が低い場合、液体状を呈する。本発明のヘスペレチン分散液は、固形分量が多い場合、スラリー状を呈する。スラリー状の本発明のヘスペレチン分散液を水などの溶媒で薄めた場合もまた、安定したヘスペレチン分散液を得ることができる。
【0110】
本発明のヘスペレチン分散液中に含まれるヘスペレチンは非常に微細な粒子となっている。ヘスペレチン粒子の粒子径は微細であるほど分散安定性が高い。本発明のヘスペレチン分散液は非常に濃厚でそのままでは粒度が測定できないことがあるので、そのような場合には、本発明のヘスペレチン分散液を水で薄めて、より希薄な分散液を作製し、その希薄な分散液中の粒径を測定する。例えば、本発明のヘスペレチン分散液を水で希釈し、例えばベックマン・コールター社の湿式粒度分布計で水中での粒度を測定した場合、平均粒子径が10μm以下であり、好ましくは1μm以下であることが望ましい。
【0111】
本発明のヘスペレチン分散液においては、微細なヘスペレチン粉末の周囲に界面活性剤(例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステル、酵素分解レシチンなど)および安定剤(例えば、多糖類)の膜が形成されることにより、安定した分散状態が保持されていると考えられる。このようなヘスペレチン製剤の分散モデル図を図7に示す。図7の左側に、通常のヘスペレチン分散液を模式的に示す。図7の右側に、本発明のヘスペレチン分散液(「ヘスペレチン製剤」と示す)を模式的に示す。さらに、本発明の粉末、飲食物、医薬部外品、医薬品、皮膚外用剤、入浴剤、ペットフード、繊維、衣類などにおいても、このヘスペレチンの周囲に膜が形成された構造が保持されていると考えられる。そのため、これらにおいても、従来のヘスペレチンよりも優れた効果が発揮されると考えられる。
【0112】
本発明のヘスペレチン分散液は、そのまま飲食物として用いられてもよく、あるいは、より希薄なヘスペレチン分散液、飲食物などを製造するための原液として用いられてもよい。
【0113】
(4.ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末の製造方法)
本発明のヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末の製造方法は、ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;該混合物を湿式磨砕機にかけて該混合物中の該ヘスペレチン原末を粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程;および該ヘスペレチン分散液を乾燥して、ヘスペレチン粉末を得る工程を包含する。
【0114】
ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程および該混合物を湿式磨砕機にかけて該混合物中の該ヘスペレチン原末を粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程については、上記「2.ヘスペレチン分散液の製造方法」に記載の通りである。
【0115】
このようにして得られたヘスペレチン分散液を乾燥することにより、ヘスペレチン粉末が得られる。この乾燥は、当該分野で公知の任意の方法によって行われ得る。乾燥方法の例としては、スプレードライ、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥などが挙げられる。スプレードライが好ましい。
【0116】
(5.ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末)
本発明の粉末は、ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末である。本発明の粉末に用いられるヘスペレチン粒子および界面活性剤については、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の粉末は、上記1で説明したとおりの多糖類、抗酸化剤などの他の物質も含み得る。
【0117】
本発明の粉末中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは、約30重量%以上であり、より好ましくは約40重量%以上であり、さらに好ましくは約50重量%以上である。本発明の粉末中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。例えば、約95重量%以下、約90重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下などであり得る。
【0118】
本発明の粉末を水に添加して混合することにより、容易に安定なヘスペレチン分散液を得ることができる。
【0119】
本発明の粉末を摂取した場合、本発明の粉末は、従来のヘスペレチン粉末よりも顕著に優れた効能を発揮する。
【0120】
(6.ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む飲食物)
本発明の飲食物は、ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む。本発明の飲食物に用いられるヘスペレチン粒子および界面活性剤については、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の飲食物は、上記1で説明したとおりの多糖類、抗酸化剤などの他の物質も含み得る。
【0121】
本発明の飲食物は、飲食物は、任意の飲食物であり得る。飲食物は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよいが、好ましくは液体である。飲食物は、好ましくは、健康食品であり、より好ましくは健康飲料であるが、これらに限定されない。健康食品は、その健康食品に含まれるヘスペレチンと同じ通常の用途に用いられ得る。健康食品の用途・効能の例としては、血流改善および冷え性改善用、肌状態改善用、コレステロール低下用、アレルギー症状改善用、ならびに抗炎症用が挙げられる。本発明の飲食物がこのような効能を有することは当該分野で公知の方法に従って確認され得る。本発明の飲食物は、摂取された場合、従来のヘスペレチン含有飲食物よりも顕著に優れた効能を発揮する。
【0122】
飲食物の例としては、例えば、以下が挙げられる:即席食品(例えば、即席麺、カップ麺、レトルト食品、調理済み食品、調理済み缶詰、電子レンジ用食品、即席スープ、即席シチュー、即席みそ汁、即席吸い物、スープ缶詰、フリーズドライ食品);嗜好飲料類(例えば、炭酸飲料(サイダー、ラムネ等)、天然果汁、果汁飲料、清涼飲料、果汁入り清涼飲料水、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、薬味飲料);小麦粉食品(例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉、ギョーザの皮、春巻の皮);小麦粉食品以外の麺類(例えば、そば);菓子類(例えば、洋菓子(例えば、キャラメル、キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、カステラ、パイ、スナック、クラッカー)、和菓子(例えば、ねりきり、あんこ、羊羹、饅頭)、米菓子(例えば、煎餅、あられ、餅)、豆菓子、デザート菓子(例えば、杏仁豆腐、ゼリー、寒天)、錠菓);冷菓(例えば、アイスミルク、氷菓);基礎調味料(例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、魚醤、ニョクマム);複合調味料(例えば、風味調味料、調理ミックス、カレーの素、たれ類、ドレッシング、麺つゆ、スパイス);油脂食品(例えば、バター、マーガリン、マヨネーズ);乳および乳製品(例えば、牛乳、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム、アイスクリーム、調製粉乳、クリーム);冷凍食品(例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品);水産加工品(例えば、水産缶詰、ペースト類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、水産練り製品(例えば、蒲鉾、ちくわ)、水産珍味類、水産乾物類、佃煮);畜産加工品(例えば、畜産缶詰、畜産ペースト類、畜肉ハム、畜産ソーセージ、畜産珍味類);農産加工品(例えば、農産缶詰、果実缶詰、ジャム、マーマレード、果実ソース、漬物、煮豆、農産乾物類、シリアル);ベビーフード、離乳食;ふりかけ、お茶漬けのり;サプリメント、ドリンク剤。
【0123】
本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。
【0124】
本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0125】
1日当たりのヘスペレチン摂取量が、目的の効果を得るのに充分な量となるのであれば、飲食物中のヘスペレチン粒子の含有量および1日当たりの飲食物の摂取量は適宜設定され得る。1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約0.1mg/kg(体重)以上であり、より好ましくは約0.5mg/kg(体重)以上であり、さらに好ましくは約1mg/kg(体重)以上であり、最も好ましくは約5mg/kg(体重)以上である。特定の実施形態では、例えば、10mg/kg(体重)以上、20mg/kg(体重)以上、30mg/kg(体重)以上、40mg/kg(体重)以上または50mg/kg(体重)以上であってもよい。1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約200mg/kg(体重)以下であり、より好ましくは約150mg/kg(体重)以下であり、さらに好ましくは約100mg/kg(体重)以下であり、最も好ましくは約50mg/kg(体重)以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg/kg(体重)以下、30mg/kg(体重)以下、20mg/kg(体重)以下、10mg/kg(体重)以下または5mg/kg(体重)以下であってもよい。
【0126】
本発明の飲食物を製造するには特別な工程を必要とせず、飲食物の製造工程の初期においてヘスペレチン粒子および界面活性剤、あるいは本発明のヘスペレチン分散液または粉末を飲食物の原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン含有粉末を使用して本発明の飲食物を製造することが好ましい。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を飲食物の種類および性状に応じて選択する。本発明の飲食物は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0127】
飲食物に本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な飲食物が得られる。本発明の飲食物はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の飲食物はまた、肌のはりを向上させるためにも有効である。本発明の飲食物はまた、血流を促進することにより体温を回復させる作用を発揮し得る。
【0128】
(7.本発明のヘスペレチン分散液および粉末の用途)
本発明のヘスペレチン分散液および粉末は、飲食物、医薬部外品、医薬品、皮膚外用剤、入浴剤、飼料、ペットフード、繊維、衣類等に幅広く利用できる。本発明のヘスペレチン分散液および粉末の用途はこれらに限定されない。
【0129】
本発明のヘスペレチン分散液および粉末を利用し得る飲食物の好ましい具体例は、例えば、上記「6.ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む飲食物」に記載の飲食物である。
【0130】
本発明のヘスペレチン分散液は特に、長期間保存される飲食物への用途に適している。ヘスペレチン分散液が使用される飲食物の保存期間は好ましくは約1週間以上であり、より好ましくは約2週間以上であり、さらに好ましくは約1ヶ月以上であり、特に好ましくは約3ヶ月以上であり、最も好ましくは約6ヶ月以上である。ヘスペレチン分散液が使用される飲食物の保存期間に特に上限はなく、例えば、約5年以下、約3年以下、約2年以下、約1年以下、約6ヶ月以下、約3ヶ月以下などであり得る。
【0131】
本発明の粉末は特に、分散液を作製した後短期間保存されて、その後摂取することが想定される用途(例えば、粉末飲料)、消費期限が比較的短い製品への用途(例えば、乳飲料などのチルド品)に適している。本発明の粉末が使用される飲食物の保存期間に特に下限はなく、例えば、約12時間以上、約1日以上、約2日以上、約3日以上、約4日以上、約5日以上などであり得る。本発明の粉末が使用される飲食物の保存期間は、好ましくは約2週間以下であり、より好ましくは約10日間以下であり、さらに好ましくは約1週間以下である。
【0132】
(7.1 医薬部外品および医薬品)
本発明のヘスペレチン分散液および粉末を利用し得る医薬部外品および医薬品は、任意の医薬部外品および医薬品であり得る。本発明の医薬部外品および医薬品は、ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む。本発明の医薬部外品および医薬品に用いられるヘスペレチン粒子および界面活性剤については、上記1で説明したとおりである。さらに、本発明の医薬部外品および医薬品は、上記1で説明したとおりの多糖類、抗酸化剤などの他の物質も含み得る。本発明の医薬部外品および医薬品においては、ヘスペレチン粒子は、有効成分として配合されることが好ましい。
【0133】
本発明の医薬部外品および医薬品は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよい。本発明の医薬部外品および医薬品は、好ましくは液体である。
【0134】
本発明の医薬部外品および医薬品は、経口投与または非経口投与(例えば、血管内投与および経皮投与)によって投与され得る、本発明の医薬部外品および医薬品の剤形の例としては、散剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤などが挙げられる。
【0135】
本発明の医薬部外品および医薬品が経口投与用のものである場合、本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0136】
本発明の医薬部外品および医薬品が経皮投与用のものである場合、本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0137】
1日当たりのヘスペレチン摂取量が、目的の効果を得るのに充分な量である限り、本発明の医薬部外品および医薬品中のヘスペレチン粒子の含有量および1日当たりの医薬部外品および医薬品の摂取量は適宜設定され得る。
【0138】
医薬部外品および医薬品に本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な医薬部外品および医薬品が得られる。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、肌のはりを向上させるためにも有効である。本発明の医薬部外品および医薬品はまた、血流を促進することにより体温を回復させる作用を発揮し得る。
【0139】
医薬部外品および医薬品が経口投与されるものである場合、1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約0.1mg/kg(体重)以上であり、より好ましくは約0.5mg/kg(体重)以上であり、さらに好ましくは約1mg/kg(体重)以上であり、最も好ましくは約5mg/kg(体重)以上である。特定の実施形態では、例えば、10mg/kg(体重)以上、20mg/kg(体重)以上、30mg/kg(体重)以上、40mg/kg(体重)以上、または50mg/kg(体重)以上であってもよい。1日当たりのヘスペレチン摂取量は、好ましくは約200mg/kg(体重)以下であり、より好ましくは約100mg/kg(体重)以下であり、さらに好ましくは約150mg/kg(体重)以下であり、最も好ましくは約50mg/kg(体重)以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg/kg(体重)以下、30mg/kg(体重)以下、20mg/kg(体重)以下、10mg/kg(体重)以下または5mg/kg(体重)以下であってもよい。
【0140】
医薬部外品および医薬品が経皮投与されるものである場合、1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約2μg以上であり、より好ましくは約3μg以上であり、さらに好ましくは約5μg(体重)以上であり、最も好ましくは約10μg以上である。1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約200mg以下であり、より好ましくは約150mg以下であり、さらに好ましくは約100mg以下であり、最も好ましくは約50mg以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg以下、30mg以下、20mg以下、10mg以下または5mg以下であってもよい。
【0141】
(7.2 皮膚外用剤)
本発明のヘスペレチン分散液および粉末は、好ましくは、皮膚外用剤に用いられる。
【0142】
本明細書において、用語「皮膚外用剤」とは皮膚に接触させることにより、所望の効果を達成する、皮膚に対して使用する製剤をいう。特に長時間継続的に皮膚に接触させる用途(例えば、1時間以上継続的に皮膚に接触させる用途、または5時間以上継続的に皮膚に接触させる用途)に本発明は有効である。
【0143】
(7.2.1 皮膚外用剤の種類)
皮膚外用剤の好ましい例は、化粧料である。化粧料の好ましい例としては、スキンケア化粧料が挙げられる。化粧料の具体的な例としては、スキンケア化粧料(例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、ジェル、パック剤(例えば、フェイスパック)、ハンドクリーム、レッグクリーム、ネッククリーム、ボディローションなど)、化粧品(例えば、ファンデーション、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム、アイカラー、チークカラー、アイシャドウ、口紅、リップクリーム、頬紅など)、頭髪化粧料(養毛剤、育毛剤、ヘアーリキッド、ヘアートニック、パーマネントウェーブ剤、ヘアカラー、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パックなど)、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、洗顔料、シェービングクリーム、グロス、リップクリーム、ケーキなどが挙げられる。特に、保湿効果が望まれる用途に本発明は有効である。例えば、スキンケア化粧料に本発明は有効である。本発明は、長時間皮膚に接触させる用途に特に有効であるが、洗顔料やシャンプーなどのように、短時間で使用した後に洗い流してしまうような用途においても本発明は有効である。
【0144】
上述したとおり、化粧品も化粧料に含まれる。化粧品としては、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品、メークアップ化粧品、芳香化粧品、日焼け用化粧品、日焼け止め用化粧品、爪化粧品、アイライナー化粧品、アイシャドウ化粧品、チーク、口唇化粧品、口腔化粧品などに分類され、そのいずれの用途にも本発明は有効である。
【0145】
皮膚外用剤に本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な皮膚外用剤が得られる。本発明の皮膚外用剤はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の皮膚外用剤はまた、肌のはりを向上させるためにも有効である。本発明の皮膚外用剤はまた、血流を促進することにより体温を回復させる作用を発揮し得る。
【0146】
本発明の皮膚外用剤の剤形の例としては、軟膏、増粘ゲル系、ローション、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、固形状、シート状、パウダー状、ジェル状、ムース状およびスプレー状が挙げられる。メーク落としパックなどのように、皮膚外用剤を布等に含浸させた形態の製品としてもよい。
【0147】
皮膚外用剤の剤形をローション、乳液、増粘ゲル系などとする場合、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、カラギナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)抽出物、褐藻粉末などの植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、ブルランなどの微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンなどの動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシデンプンなどのデンプン類、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリルイミドなどのアクリル系高分子、グリチルリチン酸やアルギン酸などの有機系増粘剤、ベントナイト、ヘクトライト、ラボナイト、珪酸アルミニウムマグネシウム、無水珪酸などの無機系増粘剤などからなる水溶性増粘剤と、アルコールのうち、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールとを配合することが効果を増大させる点で好ましい。
【0148】
(7.2.2.補助成分)
本発明の皮膚外用剤は、本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末に加えて、補助成分を含み得る。本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末と少なくとも1種類の補助成分とを併用することにより、皮膚外用剤における肌の保湿効果を高めたり、乾燥肌および肌荒れを改善したり、肌の弾力およびハリを改善したり、美白効果を改善することができる。以下に本発明に用いる補助成分について説明する。
【0149】
これらの補助成分は下記の効果の他に、薬剤としての安定性や安全性を高める効果を兼ねているものもある。いずれの補助成分も、下記の配合量の範囲であれば、本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末と併用した場合、皮膚外用剤中のヘスペレチンに影響を及ぼすことがなく、経時安定性も良好で、高い保湿効果や美白効果を発揮することができる。期待される効果の程度によっては、増減することもできる。なお、下記の補助成分は、少なくとも一種、すなわち一種又は2種以上の物質を組み合わせて用いることができる。
【0150】
補助成分は、好ましくは、保湿成分、美白成分、紫外線吸収剤、抗炎症剤、細胞賦活化剤および酸化防止剤からなる群より選択される。
【0151】
(7.2.2.1 保湿成分)
本明細書では、用語「保湿成分」とは、皮膚、毛髪などに水分を与え乾燥を防止する目的で用いる吸収性の高い物質、もしくは、コラーゲン誘導効果を有する化合物をいう。
【0152】
保湿成分の例としては、以下が挙げられる:アスコルビン酸及びその誘導体、アスコルビン酸以外のビタミン類、ピリドキシンの誘導体、α−トコフェロールの誘導体、パントテン酸誘導体、糖及び糖誘導体、アミノ酸類及びその誘導体、多価アルコール、フェノール及びその誘導体、コラーゲン類、ヒドロキシカルボン酸及びその塩、ハイドロキシサリチル酸配糖体、ハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体、ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体、カフェイン酸及びその誘導体、生薬エキス類、天然エキス類、胎盤抽出物、油溶性甘草抽出物、セラミド類、セラミド類似構造物、粗糖抽出物、糖蜜抽出物、菌糸体培養物及びその抽出物、尿素、ヒノキチオール、イオウ、アゼライン及びその誘導体、ビタミンE−ニコチネートとジイソプロピルアミンジクロロアセテート、海洋深層水、ならびにアルカリ単純温泉水。
【0153】
アスコルビン酸及びその誘導体の例としては、アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレートなどのアスコルビン酸モノアルキルエステル類、アスコルビン酸モノリン酸エステル、アスコルビン酸−2−硫酸のようなアスコルビン酸モノエステル誘導体、アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレエート、アスコルビン酸ジリン酸エステルのようなアスコルビン酸ジエステル誘導体、アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレートなどのアスコルビン酸トリアルキルエステル類、アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのアスコルビン酸トリエステル誘導体、アスコルビン酸−2−グルコシドのようなアスコルビン酸配糖体などが挙げられる。特にL−アスコルビン酸は、一般にビタミンCといわれ、その強い還元作用により細胞呼吸作用、酵素賦活作用、膠原形成作用を有し、かつメラニン還元作用を有する。アスコルビン酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中に、約0.01重量%以上であり、特に上限はないが、例えば、約10重量%以下である。
【0154】
アスコルビン酸以外のビタミン類としては、天然抽出物、レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロテン、リコピン(プロビタミンA)、チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、パントテン酸(ビタミンB 5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群:トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)、その他、必須脂肪酸(ビタミンF)、カルニチン、γ−オリザノール、オロット酸、ビタミンP類(ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン)、ビタミンUがある。望ましくは、レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロテン、リコピン(プロビタミンA)、ピリドキシン、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、へスペリジン(ビタミンP)およびその誘導体(例;α−グルコシル−へスペリジン)である。これらのビタミンの1種又は2種以上を適宜選択して配合することができる。アスコルビン酸以外のビタミン類の配合量は一律に決められないが、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、好ましくは約10.0重量%以下であり得る。
【0155】
ピリドキシン誘導体としては、ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシン−5’−リン酸ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン−5’−リン酸、ピリドキサールリン酸、ピリドキシン酸などが挙げられる。ピリドキシン誘導体の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上である。ピリドキシン誘導体の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0156】
α−トコフェロール誘導体として、例えば、ビタミンE酸のエステルであるα−トコフェリルレチノエートがある。この場合のα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロール、D−α−トコフェロール、又はD−α−トコフェロールを含む天然混合トコフェロールで、ビタミンA酸は、レチノイン酸(all−trans−レチノイン酸)、13−cis−レチノイン酸、11−cis−レチノイン酸、9−cis−レチノイン酸、又はこれらの混合異性体であり、特にDL−α−トコフェロールとall−trans−レチノイン酸とのエステルが好ましい。
【0157】
パントテン酸誘導体としては、パンテティン−S−スルホン酸、4’−ホスホパンテティン−S−スルホン酸、パンテティン、グルコピラノシルパントテン酸などが挙げられる。また、これらは遊離酸のみではなく、塩の形で用いることもできる。塩としては、有機酸塩及び無機酸塩が広く挙げられるが、アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩が好ましい。パントテン酸誘導体の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。パントテン酸誘導体の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0158】
糖および糖誘導体としては、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトール、デンプン分解糖還元アルコール、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−トレオース、エリスリトール等)、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソース、D−アラビノース、D−リボース、D−リブロース、D−キシルロース、L−キシルロース、D−グルコース、D−タロース、D−ブシコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ガラクトース、L−マンノース、D−タガトース、アルドヘプトース、ヘプロース等、オクツロース等、2−デオキシ−D−リボース、6−デオキシ−L−ガラクトース、6−デオキシ−L−マンノース等、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等、ショ糖、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α、α−トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類、キトサンおよびキトサン分解物、ヒアルロン酸、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、ムコイチン硫酸、カロニン硫酸、ケラト硫酸、ヘパリン、キチンまたはそれらの塩などのムコ多糖類、グルコサミン、グルコサミン−6−リン酸やグルコサミン−6−硫酸などのグルコサミンおよびその誘導体が挙げられる。一般的に、アミノ酸を含む多糖類は、生体の運動を円滑にさせ、細胞や組織の表面を覆って外界から保護する作用をもつことが知られている。これらの糖および糖誘導体成分の1種又は2種以上を適宜選択して配合される。配合量は、糖および糖誘導体の種類により異なり、一律に決められない。代表的には、糖および糖誘導体の配合量は、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、約5重量%以下である。
【0159】
アミノ酸類及びその誘導体は、老化または硬化した表皮に水和性を回復するために用い、グリシン、セリン、シスチン、アラニン、トレオニン、システイン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、チロシン、ブロリン、イソロイシン、トリプトファン、ヒドロキシブロリン等の中性アミノ酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。アミノ酸誘導体としては、アシルサルコシンとその塩、アシルグルタミン酸とその塩、アシル−β−アラニンとその塩、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸とその塩の他に、グルタチン、カルノシン、グラムシギンS、チロシジンA、チロシジンB等のオリゴペプチド、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸とその塩が挙げられる。アミノ酸類及びその誘導体の配合量が少なすぎると皮膚に対する保温効果が弱く、多すぎても効果の向上がみられないばかりか、アミノ酸の変質を防止し難くなる場合がある。アミノ酸類及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上である。アミノ酸類及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0160】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の2価の多価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の3価の多価アルコール類;ペンタエリスリトール等の4価の多価アルコール類;キシリトール、フルクトース等の5価の多価アルコール類;ソルビトール、マンニトール等の6価の多価アルコール類。デンプン分解糖還元アルコール等の多価アルコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール重合体;POE−テトラハイドロフルフリルアルコール、POP−ブチルエーテル、POP・POE−ブチルエーテル、トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル、POP−グリセリンエーテル、POP・POE−ジグリセリンエーテル、POP−グリセリンエーテルリン酸、POP・POE−ペンタエリスリトールエーテル等のポリアルキレンオキシドエーテル等が挙げられる。多価アルコールの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中に、約0.01重量%以上である。多価アルコールの配合量に特に上限はないが、好ましくは約10重量%以下である。
【0161】
フェノール及びその誘導体としては、ハイドロキノン配糖体、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ハイドロキノンモノn−プロピルエーテル、ハイドロキノンモノn−ブチルエーテル、ハイドロキノンモノn−ヘキサデシルエーテル、ハイドロキノンモノn−オクタデシルエーテル、p−エチルフェノール、p−n−プロピルフェノール、p−n−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−ヘキサデシルフェノール、p−オクタデシルフェノール、4−イソプロピルカテコールモノブチルエステル、4−イソプロピルカテコールモノヘプタデカエステルなどが挙げられる。フェノール及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。フェノール及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0162】
コラーゲン類としては、哺乳動物の皮膚、腱、骨、血管、結合組織、膠原繊維種などの抽出コラーゲン、魚類コラーゲン(皮、うろこ抽出)、可溶性コラーゲン、加水分解コラーゲン液、加水分解コラーゲンエチル、加水分解コラーゲンヘキサデシルなどが挙げられる。コラーゲン類の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中に、約0.01重量%以上である。コラーゲン類の配合量に特に上限はないが、好ましくは1.0重量%以下である。
【0163】
ヒドロキシカルボン酸及びその塩としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、メバロン酸、メバロン酸ラクトンなどが挙げられ、その塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの金属塩やトリエタノールアミン、2−アミノ−メチル−1,3−プロパンジオールなどの有機塩などが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸及びその塩の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.0001重量%以上であり、より好ましくは約0.001重量%以上である。ヒドロキシカルボン酸及びその塩の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0164】
ハイドロキシサリチル酸配糖体とハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体は、一般式1、2、3で表される。これらの配糖体は、ハイドロキシサリチル酸又はハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルとペンタアセチルグルコースのような糖のアセチル化物(又はアセトブロモグルコースのような糖のアセトブロモ化物)とを酸触媒の存在下で反応させることによって得ることができる。ハイドロキシサリチル酸配糖体とハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体の配合量は、皮膚外用剤全量中の好ましくは約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ハイドロキシサリチル酸配糖体とハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体の配合量は、皮膚外用剤全量中の好ましくは約20重量%以下であり、より好ましくは約7重量%以下である。
【0165】
【化2】

【0166】
【化3】

【0167】
【化4】

一般式1〜3中、Rは水素原子、炭素数1〜20の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素基で、Rは糖残基である。
【0168】
上記配糖体の具体例は、3−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸、3−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸メチル、3−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸エチル、3−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸プロピル、3−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸イソプロピル、4−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸、4−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸メチル、4−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸エチル、4−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸プロピル、4−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸イソプロピル、5−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸、5−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸メチル、5−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸エチル、5−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸プロピル、5−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸イソプロピル、6−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸、6−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸メチル、6−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸エチル、6−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸プロピル、6−β−D−グルコピラノシルオキシサリチル酸イソプロピル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−3−ヒドロキシ安息香酸、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−3−ヒドロキシ安息香酸メチル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−3−ヒドロキシ安息香酸エチル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−3−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−3−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−4−ヒドロキシ安息香酸メチル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−4−ヒドロキシ安息香酸エチル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−5−ヒドロキシ安息香酸、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−5−ヒドロキシ安息香酸メチル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−5−ヒドロキシ安息香酸エチル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−5−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−β−D−グルコピラノシルオキシ−5−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル等である。
【0169】
このエーテル化合物は、公知の方法、例えば、対応するアルコールとアルキルハライドとの直接エーテル化法、ルイス酸触媒存在下における対応するアルコールとオレフィンとの付加反応、アルカリ触媒下における対応するアルコールとアルキルハライドとの付加反応で得られるアリルエーテルを還元する方法、対応するアルコールとアルデヒド又はケトンから生成するアセタール又はケタールを還元する方法等、で製造することができる。エーテル化合物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。エーテル化合物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約50重量%以下であり、より好ましくは約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0170】
ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体としては、p−クマリン酸、p−クマル酸を含むヒドロキシケイ皮酸、コーヒー酸などが挙げられる。ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0171】
カフェイン酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。カフェイン酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0172】
生薬エキス類としては、クワ(ソウハクヒ)、シャクヤク、オウゴン、カミツレ、トウキ、ローズマリー、ゲンノショウコ、シコン、茶、葛根、丁字、甘草、枇杷、橙皮、高麗人参、芍薬、山査子、麦門冬、生姜、松笠、厚朴、阿仙薬、黄ゴン、アロエ、アルテア、シモツケ、オランダガラシ、キナ、コンフリー、ロート、ホホバ、センブリ、西洋のこぎり草(Achillea millefolium Linn’e(Compositae))などが挙げられ、それらのエキスも同様に用いることができる。本発明において、生薬及びそのエキスとは、上記生薬の全草、根、葉、花、種子を、必要により乾燥するなどして微粉末としたもの、あるいは水及び/又は有機溶剤で浸漬抽出し、残査を濾別することにより得られる抽出液、この抽出液から溶媒を除去したもの、あるいはこれらの微粉末、または、上記抽出液や溶媒除去物を適当な溶剤を用いるなどして溶解、分散、希釈したものなどをいう。生薬エキス類の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.0001重量%以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上である。生薬エキス類の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0173】
天然エキス類としては、サッカロマイセスなどの酵母、バクテリア、人臍帯、酵母、牛乳由来蛋白、シルク、小麦、大豆、牛血液、ブタ血液、鶏冠、アーモンド、カカオ、マカデミアナッツ、オリーブ、ショウガ、トウモロコシ、ボダイジュ、マツ、ハッカ、ゴボウ、ゴマ、プルーン、ドクダミ、クマザザ、ツバキ、グレープフルーツ、ゼニアオイ、イネ、アボガド、サボテン、ラベンダー、ヒマワリ、ヒノキ、ゴマ、ユリ、ユズ、バラ、アセロラ、キュウリ、コメ、シアバター、シラカバ、トマト、ニンニク、ハマメリス、ヘチマ、ホップ、モモ、アンズ、レモン、キウイ、ドクダミ、トウガラシ、クララ、ギシギシ、コウホネ、セージ、ノコギリ草、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、タイム、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、オウバク、ベニバナ、サンシシ、タイソウ、チンピ、ヨクイニン、クチナシ、サワラ、カモミラ、メリッサ、ビワ、ジャトバ等の動植物、微生物およびその一部から有機溶媒、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコール等で抽出または加水分解して得た天然エキスが挙げられる。天然エキスの配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、好ましくは約10重量%以下である。
【0174】
胎盤抽出物の例としては、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、マウスなどの動物の胎盤から、水及び/又は有機溶剤で浸漬抽出し、残査を濾別することにより得られる抽出液、この抽出液から溶媒を除去したもの、あるいはこれらの微粉末、または、上記抽出液や溶媒除去物を適当な溶剤を用いるなどして溶解、分散、希釈したものなどをいう。具体的には、水溶性や油溶性のプラセンタエキスとして市販されている。胎盤抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。胎盤抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0175】
油溶性甘草抽出物としては、マメ科に属する多年草である甘草(学名Glycyrrhizaglabra linne)から、メチルアルコール、エチルアルコールなどの低級1価アルコールや、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの液状多価アルコールなどの抽出溶媒を用いて抽出したものである。その調製法は特に限定されないが、例えば、様々の適当な溶媒を用いて低温もしくは室温から加温下にて抽出される。好ましい抽出方法の例としては、エチルアルコールを用い、加温しながら2〜10時間抽出を行った後、濾過し、得られた濾液をさらに2〜3日間ほど放置して熟成させ、再び濾過を行う方法が挙げられ、必要に応じて加熱抽出を行った後に濃縮乾燥してもよい。このようにして得られる油溶性甘草抽出物は、特有の臭気を有する茶褐色の物質であり、多くの場合そのままで利用することができるが、必要ならばその効力に影響がない範囲で、脱臭や脱色などの精製処理をしてから用いてもよい。精製処理の手段としては、活性炭カラムなどを用いればよく、抽出物質について一般に適用される通常の精製手段を任意に選択して使用することができる。配合量は、用いる抽出物の品質などに依存する。特定の場合には、油溶性甘草抽出物の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.0001重量%以上であり、より好ましくは約0.001重量%以上である。特定の場合には、油溶性甘草抽出物の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0176】
セラミド類とセラミド類似構造物質は、皮膚に対する保湿、柔軟、美白、抗炎症、抗酸化、血行促進等の効果を有し、セラミド類は一般式4で表され、セラミド類似構造物質は一般式5、6、7、8、9で表される。セラミド類とセラミド類似構造物質は、いずれか一方又は双方の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。セラミド類およびセラミド類似構造物質の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。セラミド類およびセラミド類似構造物質の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約50重量%以下であり、より好ましくは約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%である。この配合量の範囲内であると、使用感、保湿効果、肌荒れ予防および改善効果、安定性の面で特に良好となる。
【0177】
【化5】

【0178】
【化6】

【0179】
【化7】

【0180】
【化8】

【0181】
【化9】

【0182】
【化10】

一般式4中、RとRは同一または異なる、水酸基置換又は未置換の炭素数8〜26の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和炭化水素基である。一般式5中、Rは炭素数10〜26の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の炭化水素基で、Rは炭素数9〜25の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の炭化水素基で、YとZは水素原子又は水酸基で、aは0又は1で、cは0〜4の整数で、bとdは0〜3の整数である。一般式6中、RとRは同一又は異なる、炭素数1〜40の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基で、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基又は単結合で、R10は水素原子又は炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルコキシ基又は2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ基であり、Rが単結合のときR10は水素原子である。一般式7中、R7aは炭素数4〜40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基で、R9aは炭素数3〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基で、R10bは炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルコキシ基である。一般式8中、R、R、R8a、R9aは上記と同じである。一般式9中、R、R、Rは上記と同じで、R10bは水素原子又は炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルコキシ基又は2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ基であり、Rが単結合のときR10bは水素原子である。
【0183】
一般式R11−O−(X−O)n−R12で表されるエーテル化合物は、本発明の皮膚外用剤の経皮吸収性を高める作用を有し、しかも皮膚刺激性を与えることはない。この一般式中、R11とR12は、同じでも、異なっていてもよく、炭素数1〜12、好ましくは2〜22、より好ましくは3〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、R11とR12の少なくとも一方が2カ所以上、特に2カ所分岐したものが好ましく、具体的には、メチル基、ブチルn−ブチルn−デシルn−ドデシル基n−テトラデシル基n−オクタデシル基、n−エイコシル基、n−テトラコシル基、1−メチルプロピル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘプタデシル基、1,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルペンチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。Xは、炭素数1〜12、好ましくは1〜8のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等が挙げられる。なお、R11とR12とXの合計炭素数は、10〜32が必須であり、好ましくは12〜28である。nは、0又は1、好ましくは0である。
【0184】
粗糖抽出物は、褐色を呈する色素成分であり、乾燥粉末は吸湿性であってわずかに焦臭があり、やや苦みを有する。その製法は、特開昭60−78912号公報に記載されているが、具体的には、粗糖(黒砂糖)、または糖蜜(黒砂糖から砂糖を製造する過程で生じる副産物)を適当量の水に溶解し、非極性のポリスチレン系樹脂吸着剤などの吸着剤に接触させて色素成分を吸着させ、この吸着剤を水で洗浄して糖分を十分に除去した後、吸着剤に吸着した色素成分を濃度20%以上の含水アルコールなどで溶離し、濃縮あるいは凍結乾燥、蒸発乾固などを施して必要により再結晶して精製することにより得られる。粗糖抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。粗糖抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0185】
糖蜜抽出物はオリゴ糖が主成分であり、糖蜜をメタノール、エタノールなどの低級アルコールにより冷浸もしくは温浸し、その後濾過、濃縮して脱色することにより得られる。糖蜜抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以下であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。糖蜜抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上である。
【0186】
菌糸体培養物及びその抽出物とは、西洋キノコ、マンネンタケなどの菌糸体を適当な培地で培養したものであり、液体培養による場合はその培養液をそのまま、固体培養による場合は、得られた菌糸体を必要により乾燥するなどして微粉末としたものなどをいう。また菌糸体培養物の抽出物とは、上記の菌糸体培養液、菌糸体、またはこれを微粉末としたものから、水及び/又は有機溶剤で浸漬抽出し、残査を濾別することにより得られる抽出物、この抽出液から溶媒を除去したもの、あるいはこれらの微粉末、または、上記抽出液や溶媒除去物を適当な溶剤を用いるなどして溶解、分散、希釈したものなどをいう。菌糸体培養物及びその抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。菌糸体培養物及びその抽出物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0187】
尿素の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.1重量%以上であり、より好ましくは約1.0重量%以上である。尿素の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約10%重量以下である。
【0188】
ヒノキチオールの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ヒノキチオールの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0189】
イオウの配合量は、皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。イオウの配合量は、皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0190】
アゼライン及びその誘導体としては、アゼライン、アゼライン酸などが挙げられる。アゼライン及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。アゼライン及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0191】
ビタミンE−ニコチネートおよびジイソプロピルアミンジクロロアセテートは、血行促進作用および細胞賦活作用を有し、皮膚の代謝を促進し、紫外線障害による皮膚の老化を防ぐ。ビタミンE−ニコチネートの配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中、約0.01重量%以上であり、好ましくは約5重量%以下である。ジイソプロピルアミンジクロロアセテートの配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中、約0.01重量%以上であり、好ましくは約5重量%以下である。
【0192】
海洋深層水とは、海洋の海面200mよりも下の部分で得られる海水である。海洋深層水は低温安定性、富栄養性、清浄性の特徴を持つ。海洋深層水の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中、約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上である。海洋深層水の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中、約30重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0193】
アルカリ単純温泉水とは、泉温25℃以上で、固形成分および遊離炭酸の含有量が水1kg中1,000mg未満の温泉水であって、pH8.5以上でpH10未満のものをいう。アルカリ単純温泉水の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中、約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上である。アルカリ単純温泉水の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中、約30重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0194】
(7.2.2.2 美白成分)
本明細書では、用語「美白成分」とは、メラニン色素の増加した皮膚部位に使用することにより、安全にメラニン色素の減少を誘導できる成分をいう。
【0195】
美白成分の例としては、以下が挙げられる:チロシナーゼ阻害剤、エンドセリン拮抗剤、α−MSH阻害剤、α−アルブチン、アルブチン及びその塩およびその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩、コウジ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸、テプレノン、アラントイン、アミノエチル化合物、アルキレンジアミンカルボン酸誘導体、ベタイン誘導体、アシルメチルタウリン、ヘデラコサイド、ギムネマサポニン、ビートサポニン、γ−ピロン配糖体、ビフェニル化合物、亜硫酸水素ナトリウム、フィブロネクチン、植物抽出液類ならびにフェノール及びその誘導体。
【0196】
チロシナーゼ阻害剤としては、ニチニチソウ(Catharanthus roseusL.)の培養細胞(ニチニチソウの芽生え(幼植物)の根、胚軸、子葉、成熟体の根、茎、葉柄、花、花粉等の細胞群又は組織片)を、オーキシンやサイトカイニン等の植物ホルモンを含む植物成長調整物質を添加した培地でカルスを誘導するか、アクロバクテリウムトウメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)やアクロバクテリウムリゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)等を用いてニチニチソウの培養細胞から腫瘍組織を作出し、カルス又は腫瘍組織をハイドロキノン−α−D−グルコース含有培地(ムラシゲ−スクーム培地、リンスマイヤー−スクーム培地、ホワイト培地、ガンボルグ培地、ニッチ培地、ヘラー培地、シェンク−ヒルデブラント培地、ニッチ−ニッチ培地、コーレンバッハ−シュミット培地等で培養して得られる培養物のホモジエネートに由来する透明液又はその乾燥物を用いる。配合量は、所望の抗チロシナーゼ活性を示す量とすればよい。
【0197】
エンドセリン拮抗剤とは、BE−18257類(特開平3−94692号公報)、WS7338類(特開平3−130299号公報)、アントラキノン誘導体(特開平3−47163号公報)、TAN−1415類(特開平4−134048号公報)である。エンドセリン拮抗剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%であり、より好ましくは約0.05重量%以上である。エンドセリン拮抗剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0198】
α−MSH阻害剤とは、メラニン生成に深く関与するα−メラノトロピンの生成を阻害する物質群を意味するものである。α−MSH阻害剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上である。α−MSH阻害剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約30重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0199】
α−アルブチン、アルブチン及びその塩およびその誘導体の例としては、α−アルブチン、アルブチン、α-アルブチン-α-グルコシド、α-アルブチン-α-マルトシドが挙げられる。α−アルブチン、アルブチン及びその塩およびその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上である。α−アルブチン、アルブチン及びその塩およびその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0200】
美白成分として用いられるアスコルビン酸及びその誘導体の例としては、アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレートなどのアスコルビン酸モノアルキルエステル類、アスコルビン酸モノリン酸エステル、アスコルビン酸−2−硫酸のようなアスコルビン酸モノエステル誘導体、アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレエート、アスコルビン酸ジリン酸エステルのようなアスコルビン酸ジエステル誘導体、アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレートなどのアスコルビン酸トリアルキルエステル類、アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのアスコルビン酸トリエステル誘導体、アスコルビン酸−2−グルコシドのようなアスコルビン酸配糖体などが挙げられる。特にL−アスコルビン酸は、一般にビタミンCといわれ、その強い還元作用により細胞呼吸作用、酵素賦活作用、膠原形成作用を有し、かつメラニン還元作用を有する。アスコルビン酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中に、約0.01重量%以上である。アスコルビン酸及びその誘導体の配合量に特に上限はないが、好ましくは約10重量%以下である。
【0201】
エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩は、本発明の皮膚外用剤の長期保存安定性を向上させるためのもので、一般式10で表される。エラグ酸系化合物のアルカリ金属塩としては、Na塩、K塩が挙げられる。エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上である。エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約30重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0202】
【化11】

一般式10中、R13、R14、R15、R16は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数1〜20のアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)、−(C2m−O)H(mは2又は3、nは1以上の整数、特に5〜40が好ましい)で示されるポリオキシアルキレン基(例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基)、一般式11で示される糖残基であり、これらは同一でも互いに異なっていてもよい。R17は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基である。
【0203】
【化12】

エラグ酸系化合物と、そのアルカリ金属塩は、エラグ酸、3,4−ジ−o−メチルエラグ酸、3,3’−ジ−o−メチルエラグ酸、3,3’,4−トリ−o−メチルエラグ酸、3,3’,4,4’−テトラ−o−メチル−5−メトキシエラグ酸、3−o−エチル−4−o−メチル−5−ヒドロキシエラグ酸、アムリトシド(Amritoside)や、これらのアルカリ金属塩が挙げられる。これらのエラグ酸系化合物は、イチゴ、タラ(CaesalupiniaSpinosa)、ユーカリ材(Eucalyptus)、リンゴ、毒ウツギ(コリアリア ヤポニカ)、ラジアタ松、クマコケモモ、ザクロ、アンマロク、ウキュウヨウ、エンフヨウ、ガイジチャ、カコウジュヨウ、カシ、キジュ、ケンジン、コウナカ、サンウキュウコン、サンウキュウヨウ、シュウフウボウ、センクツサイ、ソウゲンロウカンソウ、ダイヒョウソウ、ドウモウアンヨウ、ハオウベン、バンセキリュウカン、バンセキリュウヒ、ボウカ、モッショクシ、ヤトウセイカ、ヤトウセイヒ、ユウカンコン、ユウカンボクヒ、ユウカンヨウ、リュウガソウコン、バンセキリュウヨウ、ウキュウボクコンビ、シドコン、チンシュウソウ、ゲンノショウコなどの天然物から得ることができる。
【0204】
コウジ酸及びその誘導体としては、コウジ酸、コウジ酸配糖体、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸モノシンナモエート、コウジ酸モノベンゾエートなどのモノエステルや、コウジ酸ジブチレート、コウジ酸ジパルミテート、コウジ酸ジステアレート、コウジ酸ジオレエートなどのジエステルなどが挙げられる。コウジ酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.01重量%以上である。コウジ酸及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約30重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下である。
【0205】
レゾルシノール誘導体は、血行促進作用や細胞賦活作用を有し、表皮の乾燥を防ぎ、皮膚の代謝を促進し、紫外線障害による皮膚の老化を防ぐ。具体例としては、4−n−エチルレゾルシノール、4−n−ブチルレゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、4−イソアミルレゾルシノール等が挙げられる。レゾルシノール誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.0001重量%以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上である。レゾルシノール誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、好ましくは約10重量%以下である。
【0206】
ノルジヒドログアイアレチン酸は、一般には、抗酸化剤やリポキシゲナーゼ阻害剤として知られている物質であり、酸化防止や薬剤安定化を目的として化粧品、医療品などに応用されているものである。ノルジヒドログアイアレチン酸の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ノルジヒドログアイアレチン酸の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0207】
テプレノンの化学名は、ゲラニルゲラニルアセトンであり、粘膜保護修復作用、細胞増殖賦活作用、リン脂質合成促進作用などを有する。テプレノンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、さらに好ましくは約1.0重量%以上である。テプレノンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、さらに好ましくは約10重量%以下である。
【0208】
アラントインは、皮膚科の諸疾患の治療薬に用いられており、皮膚の創傷治療や肌荒れ防止などに効果的に作用する。アラントインの誘導体としては、ジヒドロキシアルミニウムアラントイネート、クロロヒドロキシアルミニウムアラントイネートなどが挙げられる。アラントインおよびアラントイン誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。アラントインおよびアラントイン誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下である。
【0209】
アミノエチル化合物は、肌荒れ防止および改善、くすみ改善のために用い、NHCHCHX(Xは、−SOH又は−SOSHである)で表される。アミノエチル化合物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.0001重量%以上であり、より好ましくは約0.001重量%以上である。アミノエチル化合物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約1.0重量%以下であり、より好ましくは約0.3重量%以下が適している。
【0210】
アルキレンジアミンカルボン酸誘導体は、皮膚外用剤の保存安定性を高めるために用い、特にエチレンジアミン四酢酸と、そのNa、K、Li塩等のアルカリ金属塩、Ca、Mg等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノール塩等が好ましく、より好ましくはNa塩である。アルキレンジアミンカルボン酸誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上である。アルキレンジアミンカルボン酸誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.5重量%以下であり、好ましくは約0.5重量%以下である。
【0211】
ベタイン誘導体は、経皮促進剤として用い、一般式12で表されるアルキルジメチルアミノ酸、一般式13で表される2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチル−2−イミダゾリン、一般式14で表されるN−(3−アシルアミノプロピル)−N,N−ジメチルアミノ酢酸、一般式15で表されるN−アルキル−N,N−ジメチル−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸が好ましい。
【0212】
アシルメチルタウリンは経皮促進剤として用い、一般式16で表される。
【0213】
【化13】

【0214】
【化14】

【0215】
【化15】

【0216】
【化16】

【0217】
【化17】

ベタイン誘導体とアシルメチルタウリンの配合量は、両者の合計で、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ベタイン誘導体とアシルメチルタウリンの配合量は、両者の合計で、好ましくは皮膚外用剤全量中の約30重量%以下であり、好ましくは約20重量%以下である。
【0218】
ヘデラコサイド(Hederacoside)としては、ムクロジン(エンメイヒ:Sapindusmukurossi Gaertn.)やアケビ(モクツウ:Akebia quinata Decne.)の抽出物から得られるトリテルペノイドサポニンであり、その塩としては、Na塩、K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、塩基性アミノ酸塩、アルカノールアミン塩、エステル等があり、これらは抽出物のままで使用してもよい。ヘデラコサイドおよびその塩の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ヘデラコサイドおよびその塩の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0219】
ギムネマサポニン(Gymnemasaponin)は、ギムネマイノドラムや、インド原産ガガイモ科ギムネマ シルベスタ(Gymnema sylvestre R.Br.)の抽出物から得られるトリテルペノイドサポニンであり、その塩としては、Na塩、K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、塩基性アミノ酸塩、アルカノールアミン塩、エステル等があり、これらは抽出物のままで使用してもよい。ギムネマサポニンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ギムネマサポニンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0220】
ビートサポニンは、アカザ科甜菜の抽出物から得られるオレアノール酸配糖体であり、その塩としては、Na塩、K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、塩基性アミノ酸塩、アルカノールアミン塩、エステル等があり、これらは抽出物のままで使用してもよい。ビートサポニンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.001重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上である。ビートサポニンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0221】
γ−ピロン配糖体は、日焼けによるシミ、ソバカスを防止する作用を有し、一般式17で表されるマルトール−3−O−(6’−O−アピオシル)−グルコシドあるいはマルトール−3−O−グルコシドであり、例えば葛根抽出液よりカラムクロマトグラフィ、分取HPLC、薄層クロマトグラフィ等で採取したものが使用できる。γ−ピロン配糖体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.00001重量%以上であり、より好ましくは約0.0001重量%以上である。γ−ピロン配糖体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約2.5重量%以下であり、より好ましくは約1重量%以下である。
【0222】
【化18】

ビフェニル化合物は、チロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果を有し、一般式18、19で表される。具体的には、デヒドロジクレオソール、デヒドロジオイゲノール、テトラハイドロマグノロール等が挙げられる。ビフェニル化合物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.0001重量%以上であり、より好ましくは約0.001重量%以上である。ビフェニル化合物の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0223】
【化19】

【0224】
【化20】

一般式18.19中、R24は、CH、C、C、CHOH、COH、CHCH=CHで、R25は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐の飽和炭化水素基である。
【0225】
亜硫酸水素ナトリウムは、皮膚外用剤中におけるアルブチンの安定化に効果を発揮する物質として知られているが(特許第2107858号)、ハイドロキノン−α−D−グルコースについても同様の効果を発揮する。配合量は、重量比で、ハイドロキノン−α−D−グルコース:亜硫酸水素ナトリウムが、1:0.0001〜1、好ましくは1:0.001〜0.1となるようにする。
【0226】
フィブロネクチン(寒冷不溶性グロブリン)は、本発明におけるハイドロキノン−α−D−グルコースの美白効果を向上させる効果を有する。フィブロネクチンの配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.000001重量%以上であり、好ましくは約0.1重量%以下である。
【0227】
美白剤としての植物抽出液類は、アスパラガス抽出物、アルテア抽出物、イブキトラノオ抽出物、インチンコウ抽出物、エンドウ豆抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、オノニス抽出物、海藻抽出物、火棘抽出物、カンゾウ抽出物、キイチゴ抽出物、クジン抽出物、黒砂糖抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シャクヤク抽出物、シラユリ抽出物、センプクカ抽出物、ソウハクヒ抽出物、大豆抽出物、胎盤抽出物、タラノキ抽出物、茶抽出物、トウキ抽出物、糖蜜抽出物、ノイバラ抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ種子抽出物、ブナノキ抽出物、フローデマニータ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、羅漢果抽出物などをあげることができ、その1種または2種以上を適宜選択して配合される。美白剤成分の配合量は、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、好ましくは約10重量%以下である。
【0228】
美白剤としてのフェノール及びその誘導体としては、ハイドロキノン配糖体、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ハイドロキノンモノn−プロピルエーテル、ハイドロキノンモノn−ブチルエーテル、ハイドロキノンモノ n−ヘキサデシルエーテル、ハイドロキノンモノ n−オクタデシルエーテル、p−エチルフェノール、p−n−プロピルフェノール、p−n−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−ヘキサデシルフェノール、p−オクタデシルフェノール、4−イソプロピルカテコールモノブチルエステル、4−イソプロピルカテコールモノヘプタデカエステルなどが挙げられる。フェノール及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%である。フェノール及びその誘導体の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約20重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下である。
【0229】
(7.2.2.3 紫外線吸収剤)
本明細書では、用語「紫外線吸収剤」とは、有機紫外線吸収剤とも言い、紫外線を吸収し、人体に影響の少ない赤外線、可視光線等に変換して放出する化合物をいう。
【0230】
紫外線吸収剤は従来の皮膚外用剤に汎用されている任意の紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、より好ましくは0.5重量%以上である。紫外線吸収剤の配合量は、好ましくは皮膚外用剤全量中の約10重量%以下であり、好ましくは約8重量%以下である。
【0231】
紫外線吸収剤の例としては、以下が挙げられる:安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、およびその他の紫外線吸収剤からなる群より選択される。
【0232】
安息香酸系紫外線吸収剤の例としては、パラアミノ安息香酸(以下PABAと略する)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAアミルエステル、N,N−ジメチルPABAオクチルエステルが挙げられる。
【0233】
アントラニル酸系紫外線吸収剤の例としては、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレートが挙げられる。
【0234】
サリチル酸系紫外線吸収剤の例としては、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレートが挙げられる。
【0235】
桂皮酸系紫外線吸収剤の例としては、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルへキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメートが挙げられる。
【0236】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルへキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0237】
その他の紫外線吸収剤の例としては、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、ならびに5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オンが挙げられる。
【0238】
(7.2.2.4 抗炎症剤)
本明細書では、用語「抗炎症剤」とは、ある特定局部の炎症過程を抑えるという特性がある化合物をいう。
【0239】
抗炎症剤の配合量は、抗炎症剤の種類により異なり、一律に決められないが、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、好ましくは約1重量%以下である。
【0240】
抗炎症剤の例としては、以下が挙げられる:酸化亜鉛、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなどのグリチルリチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、β−グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウムなどのグリチルレチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、トラネキサム酸、コンドロイチン硫酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ならびに各種微生物及び動植物の抽出物。
【0241】
(7.2.2.5 細胞賦活化剤)
本明細書では、用語「細胞賦活化剤」とは、細胞の増殖を促進する作用を有する物質をいう。細胞賦活化剤の配合量は細胞賦活化剤の種類により異なるが、通常、皮膚外用剤に対して0.01〜5重量%である。
【0242】
細胞賦活化剤の例としては、以下が挙げられる:CoQ10デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン及びそれらの誘導体、カフェイン、テオフェリンおよびその塩、レチノール及びパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等のレチノール誘導体、レチナール及びデヒドロレチナール等のレチナール誘導体、カロテンなどのカロテノイド及びビタミンA類、チアミンおよびチアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩等のチアミン塩類、リボフラビンおよび酢酸リボフラビンなどのリボフラビン塩類、ピリドキシンおよび塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン塩類、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸誘導体、コリン類などのビタミンB類、γ−リノレン酸およびその誘導体、エイコサペンタエン酸及びその誘導体、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩、グリコール酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸などの有機酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩。
【0243】
(7.2.2.6 酸化防止剤)
本明細書では、用語「酸化防止剤」とは、製品中の成分の酸化を抑制するために添加される成分をいう。
【0244】
酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤の成分の種類により異なり、一律に決められないが、好ましくは、皮膚外用剤全量中の約0.01重量%以上であり、好ましくは約10重量%以下である。植物抽出物等を抽出液のまま用いる場合は乾燥固形分換算の量である。
【0245】
酸化防止剤の例としては、以下が挙げられる:レチノール、デヒドロレチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、ビタミンA油などのビタミンA類およびそれらの誘導体及びそれらの塩、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチンなどのカロテノイド類及びその誘導体、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール−5−リン酸エステル、ピリドキサミンなどのビタミンB類、それらの誘導体及びそれらの塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC類、それらの誘導体及びそれらの塩、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、1,2,5−ジヒドロキシ−コレカルシフェロールなどのビタミンD類、それらの誘導体及びそれらの塩、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類、それらの誘導体及びそれらの塩、トロロックス、その誘導体及びそれらの塩、ジヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α−リポ酸、デヒドロリポ酸、グルタチオン、その誘導体及びそれらの塩、尿酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等のエリソルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、没食子酸、没食子酸プロピルなどの没食子酸、その誘導体及びそれらの塩、ルチン、α−グリコシル−ルチンなどのルチン、その誘導体及びそれらの塩、トリプトファン、その誘導体及びそれらの塩、ヒスチジン、その誘導体及びそれらの塩、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、N−オクタノイルシステイン、N−アセチルシステインメチルエステル等のシステイン誘導体及びそれらの塩、N,N’−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N,N’−ジオクタノイルシスチンジメチルエステル、N,N’−ジオクタノイルホモシスチンジメチルエステルなどのシスチン誘導体及びそれらの塩、カルノシン及びその誘導体及びそれらの塩、ホモカルノシン及びその誘導体及びそれらの塩、アンセリン及びその誘導体及びそれらの塩、カルシニン及びその誘導体及びそれらの塩、ヒスチジン及び/又はトリプトファン及び/又はヒスタミンを含むジペプチド又はトリペプチド誘導体及びそれらの塩、フラバノン、フラボン、アントシアニン、アントシアニジン、フラボノール、クエルセチン、ケルシトリン、ミリセチン、フィセチン、ハマメリタンニン、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのフラボノイド類、タンニン酸、カフェ酸、フェルラ酸、プロトカテク酸、カルコン、オリザノール、カルノソール、セサモール、セサミン、セサモリン、ジンゲロン、クルクミン、テトラヒドロクルクミン、クロバミド、デオキシクロバミド、ショウガオール、カプサイシン、バニリルアミド、エラグ酸、ブロムフェノール、フラボグラシン、メラノイジン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンヌクレオチド、ユビキノン、ユビキノール、マンニトール、ビリルビン、コレステロール、エブセレン、セレノメチオニン、セルロプラスミン、トランスフェリン、ラクトフェリン、アルブミン、ビリルビン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、メタロチオネイン、O−ホスホノ−ピリドキシリデンローダミン、及び米国特許第5,594,012記載のN−(2−ヒドロキシベンジル)アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、及びN−(4−ピリドキシルメチレン)アミノ酸、並びにその誘導体及びそれらの塩。
【0246】
酸化防止剤として用いられるアスコルビン酸ならびにその誘導体および塩の例としては、アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレートなどのアスコルビン酸モノアルキルエステル類、アスコルビン酸モノリン酸エステル、アスコルビン酸−2−硫酸のようなアスコルビン酸モノエステル誘導体、アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレエート、アスコルビン酸ジリン酸エステルのようなアスコルビン酸ジエステル誘導体、アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレートなどのアスコルビン酸トリアルキルエステル類、アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのアスコルビン酸トリエステル誘導体、アスコルビン酸−2−グルコシドのようなアスコルビン酸配糖体などが挙げられる。特にL−アスコルビン酸は、一般にビタミンCといわれ、その強い還元作用により細胞呼吸作用、酵素賦活作用、膠原形成作用を有し、かつメラニン還元作用を有する。配合量は、皮膚外用剤全量中に、0.01重量%以上配合すると効果が現れ、上限値は10重量%程度である。
【0247】
(7.2.3.他の成分)
本発明の皮膚外用剤には上記した成分の他に、通常化粧品や医薬品などの皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば必要に応じて通常皮膚外用剤に配合される添加成分、例えば低級アルコール類、シリコーン類、油脂類、エステル油剤、ステロール類及びその誘導体、炭化水素類等の油性成分、油分、酸化防止剤、界面活性剤、保湿剤、湿潤材、香料、水、色剤、粉末、薬剤、キレート剤、pH調整剤、乳化剤、可溶化剤、増粘剤、ゲル化剤、防腐剤、殺菌剤、酸およびアルカリ、紫外線吸収剤、抗炎症剤、美白剤、溶剤、角質剥離および溶解剤、消炎剤、清涼剤、収瞼剤、高分子粉体、ヒドロキシ酸、ビタミン類及びその誘導体、糖類及びその誘導体、有機酸類、酵素類、無機粉体類、などを必要に応じて適宜配合することができるが、これらは本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で使用されなければならない。
【0248】
このように、乳液、化粧水、クリーム、美容液、ファンデーション、マスク、シャンプー、洗顔料などの化粧品、医薬部外品や医薬品などの皮膚外用剤に本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末を配合することにより、保湿効果やコラーゲン産生促進効果を高める皮膚外用剤が実現される。また、本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末と他の保湿成分やコラーゲン産生促進効果と併用するとさらに効果的である。他の保湿成分あるいはコラーゲン産生促進効果としては例えばアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸ナトリウム、モノステアリン酸アスコルビン酸、アスコルビン酸パルメテート、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、尿素、コラーゲン、海洋コラーゲン、ブドウ糖、ホオバオイル、アミノ酸、イソフラボン、セラミド、カモミールエキス、セリシン、ポリエチレングリコール、ジメチルエーテル、絹セリシン、シコンエキス、トウキエキス、オリーブオイル、トレハロース、アロエエキス、海藻抽出物、ローズマリー油、カミツレエキス、乳酸、紅藻エキス、アボカドエキス、ヘチマ水、オウゴンエキス、シコンエキス、ソウハクヒエキス、オランダカラシエキス、サボンソウエキス、セージエキス、グリシン、システイン、ハーブエキス、スクワラン、ローヤルゼリーエキス、乳酸菌発酵エキス、米エキス、和漢植物エキスなどがあげられる。他の保湿成分やコラーゲン産生促進効果を一種類以上と本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末を併用した場合はお互いの効果を増強した相乗効果がある。
【0249】
すなわち本発明は、アスコルビン酸及びその誘導体、アスコルビン酸以外のビタミン類、糖及び糖誘導体、アミノ酸類及びその誘導体、多価アルコール、フェノール及びその誘導体、コラーゲン類、ヒドロキシカルボン酸及びその塩、ハイドロキシサリチル酸配糖体、ハイドロキシサリチル酸脂肪族エステルの配糖体、ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体、カフェイン酸及びその誘導体、生薬エキス類、天然エキス類、胎盤抽出物、油溶性甘草抽出物、セラミド類、セラミド類似構造物、粗糖抽出物、糖蜜抽出物、菌糸体培養物及びその抽出物、尿素、ヒノキチオール、イオウ、アゼライン、深層水、アルカリ単純温泉水、紫外線吸収剤、細胞賦活化剤、酸化防止剤及びこれら以外の保湿剤、チロシナーゼ阻害剤、エンドセリン拮抗剤、α−MSH阻害剤、α−アルブチン、アルブチン及びその塩さらにはその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、エラグ酸系化合物及びそのアルカリ金属塩、コウジ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、ノルジヒドログアイアレチン酸、テプレノン、アラントイン、アミノエチル化合物、アルキレンジアミンカルボン酸誘導体、ベタイン誘導体、アシルメチルタウリン、ヘデラコサイド、ギムネマサポニン、ビートサポニン、γ−ピロン配糖体、ビフェニル化合物、亜硫酸水素ナトリウム、フィブロネクチン、植物抽出液類及びそれ以外の美白剤等に用いられる成分から選ばれる少なくとも一種と、本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末を含有することを特徴とする皮膚外用剤を要旨とする。
【0250】
本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。
【0251】
本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の皮膚外用剤中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0252】
本発明の皮膚外用剤の1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約2μg以上であり、より好ましくは約3μg以上であり、さらに好ましくは約5μg(体重)以上であり、最も好ましくは約10μg以上である。1日当たりのヘスペレチン塗布量は、好ましくは約200mg以下であり、より好ましくは約150mg以下であり、さらに好ましくは約100mg以下であり、最も好ましくは約50mg以下である。特定の実施形態では、例えば、40mg以下、30mg以下、20mg以下、10mg以下または5mg以下であってもよい。
【0253】
(7.3 繊維または衣類)
本発明のヘスペレチン分散液および粉末はまた、本発明のヘスペレチン分散液および粉末を繊維材料に混合したり、繊維に含浸させたり、または布帛の表面に塗布したりすることにより、その繊維または布帛から製造した衣類(例えば、肌着など)と皮膚とが接触したときにヘスペレチンが経皮吸収されるような利用方法におけるヘスペレチンを含む衣類の製造にも用いられ得る。
【0254】
本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量は、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.3重量%以上であり、さらに好ましくは約0.5重量%以上である。本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約1重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上などであってよい。
【0255】
本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量に特に上限はない。本発明の繊維または衣類中のヘスペレチン粒子の含有量は、例えば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下などであり得る。
【0256】
本発明のヘスペレチン分散液または粉末を含むこれらのものは、身体に利用した場合、従来のヘスペレチンを含むものよりも顕著に優れた効能を発揮する。
【0257】
(8.本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末の吸収性の確認方法)
本発明のヘスペレチン分散液および粉末は、安定したヘスペレチン分散液であるかまたはそのような分散液を形成し得るので、体内に摂取した場合に、単なるヘスペレチン粉末、安定でない従来のヘスペレチン分散液などと比較して顕著に吸収性が向上している。
【0258】
本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末の吸収性は、当該分野に公知の方法を用いて確認され得る。本発明のヘスペレチン分散液またはヘスペレチン粉末の吸収性は、例えば、以下のようにして測定され得る。予備飼育(例えば、約3日〜1週間)した動物(例えば、7週齢のオスddYマウス)を絶食(例えば、約14時間)させ、所定濃度のヘスペレチン分散液(例えば、200μl)を経口投与する。ゾンデを用いて胃に直接投与してもよい。投与後、経時的に(例えば、心臓から)採血し、血清を分離する。次いで、血清に対し、スルファターゼ、グルクロニダーゼを含む溶液を添加して反応させた後、アセトニトリルを添加して遠心分離し、上清を濃縮遠心により乾固する。これをアセトニトリル/メタノール/水(50:20:30、v/v/v)で溶解し、攪拌した後、ソニケーションし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて電気化学検出器で検出することにより、得られた血清中のヘスペレチン誘導体量を定量する。
【0259】
あるいは、得られた血液をJ.A.Boutinらの方法(The American
society for Pharmacology and Experimental Therapeutics,21,1157−1166(1993))によって前処理したのちに、HPLCを用いてそれに含まれるヘスペレチンの量を定量してもよい。J.A.Boutinらの方法は以下のとおりである。採取された血液500μlにアセトニトリル1000μlを添加し、充分振とうした後、15分間静置する。5500rpmで20分間遠心した後、その上清をとり、凍結乾燥する。凍結乾燥した試料をアセトニトリル/蒸留水(20/80;V/V,0.01M NaOH)溶液100μlで溶解し、HPLCで分析する。基本的なHPLCの条件は以下のとおりである:カラム:ODS、カラム温度:40℃、溶離液:アセトニトリル/蒸留水(20/80;V/V)、流速:0.5ml/min、検出:UV 280nm。血液中のヘスペレチン濃度は濃度既知のヘスペレチンを用いて検量線を作成し求める。なお、実験動物としてはマウスの他、ラットなどを用いることもできる。
【実施例】
【0260】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0261】
(実施例1;ヘスペレチン分散液の製造)
還元澱粉糖化物(東和化成工業(株)製;商品名アマミール;固形分70%)715.5gに、界面活性剤であるデカグリセリンモノオレート(太陽化学(株)製;商品名サンソフトQ−17Y;デカグリセリンモノオレート;水酸基価868;1級水酸基の割合59.6%)10g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン(太陽化学(株)製;商品名サンソフトNo.621B;クエン酸モノステアリン酸グリセリン10g)および酵素分解レシチン(太陽化学(株)製;商品名サンレシチンA−1;酵素分解レシチンの含有量33.3%;ホスホリパーゼAにより分解;分解率50%以上)5gを加え、80℃に加熱してよく混合した。ここへヘスペレチン(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)170gとアルギン酸エステル((株)キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)10gを予め十分に粉体混合したものを添加し、さらに水79.5gを加え80℃で均一に攪拌した。これを連続式湿式磨砕機であるダイノーミル((株)シンマルエンタープライゼス)に投入して連続的に30分間粉砕し、本発明のヘスペレチン分散液710gを得た。なお、本ダイノーミルの粉砕室容量は0.6リットルであり、粉砕媒体として直径0.8mmのジルコニアビーズ0.48Lを使用した。
【0262】
この分散液を測定時に水で適宜希釈してベックマン・コールター社の湿式粒度分布計にて粒度を測定したところ、分散液中の粒子の平均粒子径は0.7μmであった。
【0263】
(比較例1;ヘスペレチン分散液の製造)
還元澱粉糖化物(東和化成工業(株)製;商品名アマミール;固形分70%)715.5gに、酵素分解レシチン(太陽化学(株)製;商品名サンレシチンA−1;酵素分解レシチンの含有量33.3%;ホスホリパーゼAにより分解;分解率50%以上)5gを加え、80℃に加熱してよく混合した。ここへヘスペレチン(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)170gとアルギン酸エステル((株)キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)10gを予め十分に粉体混合したものを添加し、さらに水99.5gを加え80℃で均一に攪拌した。これを連続式湿式磨砕機であるダイノーミル((株)シンマルエンタープライゼス)に投入して連続的に30分間粉砕し、ヘスペレチン分散液710gを得た。なお、本ダイノーミルの粉砕室容量は0.6リットルであり、粉砕媒体として直径0.8mmのジルコニアビーズ0.48Lを使用した。
【0264】
この分散液を測定時に水で適宜希釈してベックマン・コールター社の湿式粒度分布計にて粒度を測定したところ、分散液中の粒子の平均粒子径は0.7μmであった。
【0265】
(実施例2:ヘスペレチン分散液の製造)
還元澱粉糖化物(東和化成工業(株)製;商品名アマミール;固形分70%)715.1gに乳化剤であるデカグリセリンモノオレート(太陽化学(株)製;商品名サンソフトQ−17Y;デカグリセリンモノオレート;水酸基価868;1級水酸基の割合59.6%)10g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン(太陽化学(株)製;商品名サンソフトNo.621B;クエン酸モノステアリン酸グリセリン10g)、酵素分解レシチン(太陽化学(株)製;商品名サンレシチンA;酵素分解レシチンの含有量100.0;ホスホリパーゼAにより分解;分解率50%以上)5gおよび炭酸水素Na(純度100%)0.5gを加え、80℃に加熱してよく混合した。ここへヘスペレチン(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)170gとアルギン酸エステル((株)キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)10gを予め十分に粉体混合したものを添加し、さらに水79.4gを加え80℃で均一攪拌した。これを連続式湿式磨砕機であるダイノーミル((株)シンマルエンタープライゼス)に投入して連続的に30分間粉砕し、本発明のヘスペレチン分散液714gを得た。なお、本ダイノーミルの粉砕室容量は0.6リットルであり、粉砕媒体として直径0.8mmのジルコニアビーズ0.48Lを使用した。
【0266】
この分散液を測定時に水で適宜希釈してベックマン・コールター社の湿式粒度分布計にて粒度を測定したところ、分散液中の粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
【0267】
(実施例3:ヘスペレチン分散液の製造)
グリセリン(日本油脂(株)製;商品名グリセリンS;純度100%)400.0g、還元澱粉糖化物(サンエイ糖化(株)製;商品名ダイヤトールN;固形分70%)315.5gに乳化剤であるデカグリセリンモノオレート(太陽化学(株)製;商品名サンソフトQ−17Y;デカグリセリンモノオレート;水酸基価868;1級水酸基の割合59.6%)10g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン(太陽化学(株)製;商品名サンソフトNo.621B;クエン酸モノステアリン酸グリセリン)10gおよび酵素分解レシチン(太陽化学(株)製;商品名サンレシチンA−1;酵素分解レシチンの含有量 33.3%;ホスホリパーゼAにより分解;分解率50%以上)5gを加え、80℃に加熱してよく混合した。ここへヘスペレチン(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)170gとアルギン酸エステル((株)キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)10gを予め十分に粉体混合したものを添加し、さらに水79.5gを加え80℃で均一攪拌した。これをバッチ式湿式磨砕機であるレディミル((株)アイメックス)に一度に投入して90分間粉砕し、本発明のヘスペレチン分散液632.5gを得た。なお、本レディミルの粉砕室容量は2リットルであり、粉砕媒体として直径0.8mmのジルコニアビーズ1Lを使用した。
【0268】
この分散液を測定時に水で適宜希釈して、ベックマン・コールター社の湿式粒度分布計にて粒度を測定したところ、分散液中の粒子の平均粒子径は0.8μmであった。
【0269】
(実施例4:ヘスペレチン粉末の製造)
水795.0gに乳化剤であるデカグリセリンモノオレート(太陽化学(株)製;商品名サンソフトQ−17Y;デカグリセリンモノオレート;水酸基価868;1級水酸基の割合59.6%)10g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン(太陽化学(株)製;商品名サンソフトNo.621B;クエン酸モノステアリン酸グリセリン)10gおよび酵素分解レシチン(太陽化学(株)製;商品名サンレシチンA−1;酵素分解レシチンの含有量33.3%;ホスホリパーゼAにより分解;分解率50%以上)5gを加え、80℃に加熱してよく混合した。ここへヘスペレチン(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)170gとアルギン酸エステル((株)キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)10gを予め十分に粉体混合したものを添加し、80℃で均一攪拌した。これを連続式湿式磨砕機であるダイノーミル((株)シンマルエンタープライゼス)に投入して連続的に30分間粉砕し、本発明のヘスペレチン分散液714gを得た。なお、本ダイノーミルの粉砕室容量は0.6リットルであり、粉砕媒体として直径0.8mmのジルコニアビーズ0.48Lを使用した。
【0270】
この分散液を測定時に水で適宜希釈して、ベックマン・コールター社の湿式粒度分布計にて粒度を測定したところ、分散液中の粒子の平均粒子径は、0.8μmであった。
【0271】
さらに本分散液をL−8型スプレードライヤー(大川原加工機(株))で噴霧乾燥を行い、粉末製剤146gを得た。
【0272】
(評価例1:ヘスペレチン分散液から製造した希薄な分散液の分散安定性の確認)
実施例1のヘスペレチン分散液1.765g(ヘスペレチン含量0.3g)、果糖ブドウ糖液糖(加藤化学(株)商品名 ハイフラクトーカ75)10gおよびクエン酸0.1gを約50mlの水に加え良く撹拌した後、さらに水を加え100mlにメスアップして希薄な分散液を得た。この希薄な分散液をガラス瓶に入れ金属キャップで密封した後、90℃の熱水中で20分間加熱殺菌した。加熱殺菌後の希薄な分散液に沈澱はみられず、またこの分散液は均質な乳白色を呈していた。このガラス瓶を2群に分け、一方を室温(20〜30℃程度)に、他方を冷蔵庫(5℃程度)に静置したところ24時間後も沈澱は見られず、またこれらの分散液は均質な乳白色を呈していた。さらに同じ条件で静置を続けたところ、静置1ヵ月後たっても、室温の条件でも冷蔵庫の条件でも沈澱はみられず、またこれらの分散液は均質な乳白色を呈していた。
【0273】
このことから、本発明のヘスペレチン分散液を用いて製造される希薄な分散液は、非常に優れた分散安定性を有することがわかった。
【0274】
(評価例2:本発明のヘスペレチン粉末製剤から製造したヘスペレチン分散液の分散安定性の確認)
実施例4のヘスペレチン粉末製剤0.36g(ヘスペレチン含量0.3g)、果糖ブドウ糖液糖(加藤化学(株)商品名 ハイフラクトーカ75)10gおよびクエン酸0.1gを約50mlの水に加え良く撹拌した後、さらに水を加え100mlにメスアップして分散液を得た。この分散液をガラス瓶に入れ金属キャップで密封した後、90℃の熱水中で20分間加熱殺菌した。加熱殺菌後の希薄な分散液に沈澱はみられず、またこの分散液は均質な乳白色を呈していた。このガラス瓶を2群に分け、一方を室温(20〜30℃程度)に、他方を冷蔵庫(5℃程度)に静置したところ24時間後も沈澱は見られず、またこの分散液は均質な乳白色を呈していた。さらに同じ条件で静置を続けたところ、静置1ヵ月後には、室温の条件でも冷蔵庫の条件でも、うっすらと少量の沈澱が認められたが、この沈澱の量は比較評価例1および2で観察される沈澱の量と比較すると極めて少なかった。また、静置1ヵ月後の分散液は均質な乳白色を呈していた。
【0275】
このことから、本発明のヘスペレチン粉末を用いて製造される分散液は、非常に優れた分散安定性を有することがわかった。
【0276】
(比較評価例1:従来のヘスペレチン粉末から製造したヘスペレチン分散液)
ヘスペレチン粉末(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)0.3g、果糖ブドウ糖液糖(加藤化学(株)商品名 ハイフラクトーカ75)10g、クエン酸0.1gを約50mlの水に加え良く撹拌した後、さらに水を加え100mlにメスアップした溶液をガラス瓶に入れ金属キャップで密封した後、90℃の熱水中で20分間加熱殺菌した。このガラス瓶を2群に分け、一方を室温(20〜30℃程度)に、他方を冷蔵庫(5℃程度)に静置したところ静置直後からヘスペレチンの沈澱が見られた。
【0277】
(比較評価例2:界面活性剤を用いないヘスペレチン分散液から製造した希薄な分散液の分散安定性の確認)
比較例1のヘスペレチン分散液1.765g(ヘスペレチン含量0.3g)、果糖ブドウ糖液糖(加藤化学(株)商品名 ハイフラクトーカ75)10gおよびクエン酸0.1gを約50mlの水に加え良く撹拌した後、さらに水を加え100mlにメスアップして希薄な分散液を得た。この希薄な分散液をガラス瓶に入れ金属キャップで密封した後、90℃の熱水中で20分間加熱殺菌した。このガラス瓶を2群に分け、一方を室温(20〜30℃程度)に、他方を冷蔵庫(5℃程度)に静置したところいずれにおいても静置直後からヘスペレチンの沈澱が見られた。
【0278】
このことから、ヘスペレチン粒子の粒径を細かくしても、界面活性剤を用いなければ、安定なヘスペレチン分散液を得ることはできないことがわかった。
【0279】
(評価例3:マウスにおける本発明のヘスペレチン分散液の吸収性試験)
ヘスペレチン濃度が5mg/mlとなるように実施例1のヘスペレチン分散液を水に分散したものをヘスペレチン分散液とする。
【0280】
7週齢のddYマウス(雄)に飼料としてMF(オリエンタル酵母(株)製)を与えて3日間予備飼育した後、試験物質投与前14時間絶食下においた。その後、ヘスペレチン分散液(ヘスペレチン濃度:5mg/ml)を200μl経口投与した。投与15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後および8時間後にそれぞれ5〜7匹のマウスの心臓より採血し、常法により血清を分離した。
【0281】
採取した血清試料中のヘスペリジン誘導体量を定量するために、各血清試料50μlに対し、スルファターゼH−2(シグマアルドリッチ ジャパン株式会社製)を酢酸緩衝液(0.1M、pH5.0)で10倍希釈したものを50μl加えて37℃で2時間反応させた。次いで、この反応液にアセトニトリル750μlを加え十分に攪拌した後、遠心分離し、上清を濃縮遠心により乾固して固体を得た。この固体を100〜400μlのアセトニトリル/メタノール/水(50:20:30、v/v/v)で溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。それぞれの血清試料中のヘスペレチンの濃度を、ヘスペレチンを標準として換算することによって求めた。結果を表1および図1に示す。また、このグラフの0時間〜4時間の曲線下面積(AUC)を計算した。結果を表2に示す。
【0282】
(比較評価例3:マウスにおける従来のヘスペレチンの吸収性試験)
蒸留水10mlにヘスペレチン(シグマアルドリッチ ジャパン株式会社製)50mgを加えてヘスペレチン懸濁液を調製した(ヘスペレチン濃度5mg/ml)。この溶液をよく撹拌した後すばやく200μlとり、評価例3と同様の条件の47匹のddYマウス(雄)に経口投与し、評価例3と同様の方法で吸収性を測定した。結果を表1および図1に示す。また、このグラフの0時間〜4時間の曲線下面積(AUC)を計算した。結果を表2に示す。
【0283】
(比較評価例4:マウスにおけるヘスペリジンの吸収性試験)
蒸留水10mlにヘスペリジン(シグマアルドリッチ ジャパン株式会社より購入;純度80%)を126mg(ヘスペリジン換算101mg)加えてヘスペリジン懸濁液を調製した(ヘスペレチン濃度5mg/ml)。この溶液をよく撹拌した後すばやく200μlとり、評価例3と同様の条件の47匹のddYマウス(雄)に経口投与し、評価例3と同様の方法で吸収性を測定した。結果を表1および図1に示す。また、このグラフの0時間〜4時間の曲線下面積(AUC)を計算した。結果を表2に示す。
【0284】
(比較評価例5:酵素処理ヘスペリジンの吸収性試験)
蒸留水10mlに酵素処理ヘスペリジン(ヘスペリジンにさらにグルコース残基が1個付加されたもの;江崎グリコ株式会社より購入;商品名αGヘスペリジンPA−T;純度70%)182mgを加えて酵素処理ヘスペリジン溶液を調製した(ヘスペレチン濃度5mg/ml)。この溶液を200μlとり、評価例3と同様の条件の47匹のddYマウス(雄)に経口投与し、評価例3と同様の方法で吸収性を測定した。結果を表1および図1に示す。また、このグラフの0時間〜4時間の曲線下面積(AUC)を計算した。結果を表2に示す。
【0285】
(評価例3および比較評価例3〜5の結果のまとめ)
以下の表1は、評価例3および比較評価例3〜5において得られた血清ヘスペレチン濃度(ng/ml)を示す。
【0286】
【表1】

これらの結果、本発明のヘスペレチン分散液の投与から15分後の血清中ヘスペレチン濃度は、ヘスペレチン、ヘスペリジンおよび酵素処理ヘスペリジンを投与した場合の血清中ヘスペレチン濃度に比べてそれぞれ、約2.8倍、約310倍および約80倍の高濃度であることが示された。
【0287】
以下の表2は、分散した状態のヘスペレチンを投与したときの投与0時間〜4時間の曲線下面積(AUC)を示す。
【0288】
【表2】

表2において相対比は、ヘスペレチンのAUCを1.0としたときの比を示す。本発明のヘスペレチン分散液を投与したときの投与0〜4時間のAUC(血中濃度下面積)は、ヘスペレチン、ヘスペリジンおよび酵素処理ヘスペリジンを投与した場合のAUCと比べてそれぞれ、約1.4倍、約55倍および約15倍と顕著に高い値を示した。この結果から、ヘスペレチンを安定して分散することにより体内への吸収効率が高くなることが分かった。
【0289】
(実施例5:ヘスペレチン分散物飲料の作製)
以下の表3に記載の割合で以下の表3に記載の材料を混合して、ヘスペレチン分散物飲料を作製した。
【0290】
【表3】

上記材料を混合溶解後、外から中身が識別できないように、100ml容量のアルミボトル缶に充填し、密封後、90℃の熱水中で10分間加熱殺菌した。
【0291】
(評価例4および比較評価例6〜7:血流および冷え性改善効果の確認)
(1.試験内容)
年齢19〜22歳の健康な女子学生12名を対象者とした。なお、対象者には、試験内容および試験方法に関する説明を行い、文書による同意を得た。試験を各対象者の月経終了後2週間以内に実施した。試験時間は、午後3時〜午後5時または午後5時〜午後7時であった。
【0292】
試験食品は、(1)実施例5で作製したヘスペレチン分散物飲料(ヘスペレチンに換算して175mg相当)100ml(評価例4)、(2)αGヘスペリジン入り飲料(ヘスペレチンの代わりにαGヘスペリジンをヘスペレチンに換算して175mg相当含むこと以外は(1)と同じ成分の飲料)100ml(比較評価例6)、または(3)プラセボ(αGヘスペリジンもヘスペレチンも含まないこと以外は(1)、(2)と同じ成分の飲料)100ml(比較評価例7)のいずれかであった。試験食品を37℃で試験に供した。対象者および測定者にはどの試験食品を摂取したかの違いがわからないように工夫した(二重盲検とした)。
【0293】
(2.測定方法)
体表温測定および血流測定を実施した。体表温測定には、皮膚温測定装置(安立計器)を用い、「左手中指背側」および「左足首」の2箇所について測定した。血流測定には、半導体レーザー血流装置((株)ADVANCE)を用い、「左手中指腹側第二関節」で連続的に測定した。
【0294】
(3.試験スケジュール)
試験の被験者を、食事摂取後3時間以上空けて空腹状態で前室へ入室させた。その後、室温に順応させるために30分間安静にさせた。被験者には指定の衣服(ジャージの上下+Tシャツ)に着替えてもらった。試験室入室後、測定機械を装着し、体表温測定、鼓膜温測定および血流測定を開始した。入室から10分以内に装置を装着後、入室から10分後に試験食品)を摂取し、その後72分間連続して測定を行った。このスケジュールを図2に示す。
【0295】
(4.測定室の環境条件)
前室の室温は23℃±0.5℃であり、試験室の室温は21.5(20.7〜21.5)℃であり、前室および試験室のいずれも相対湿度50%±10%であった。
【0296】
(5.その他の指示事項)
対象者には試験中安静にするよう指示し、私語および居眠りを厳しく禁じた。また、特に左手の安静を厳守させた。試験中、左手の先端が机および布に触れないように注意した。
【0297】
(6.結果)
代表的な結果として、左手中指腹側第二関節の血流変化量(ml/min)を表4に、左手の指先(中指背側)の表面温度の変化量(℃)を表5に、そして左足首の表面温度の変化量(℃)を表6に示す。これらの数値はいずれも、12人の対象者の平均である。
【0298】
【表4】

【0299】
【表5】

【0300】
【表6】

手の指先血流に関して、摂取から9分後、14分後および30分後では、ヘスペレチン分散物を用いた場合、αGヘスペリジンおよびプラセボに比べ血流増加量が多かった。
【0301】
手の指先の表面温度に関して、摂取から9分後、14分後、30分後および60分後のいずれの時点でも、ヘスペレチン分散物を用いた場合にプラセボまたはαGヘスペリジンを用いた場合に比べて温度上昇が高かった。60分後には、αGヘスペリジンを用いた場合にはプラセボとほぼ同じ温度上昇であったのと比較して、ヘスペレチン分散物を用いた場合は、プラセボに対して高い値を保っていた。
【0302】
足首の表面温度において、摂取から9分後および14分後では、ヘスペレチン分散物を用いた場合、プラセボまたはαGヘスペリジンを用いた場合に比べて、体温低下が抑制されている。摂取から30分後にはαGヘスペリジンを用いた場合もヘスペレチン分散物を用いた場合と同程度にプラセボに比べ体温低下が抑制されている。60分後では、ヘスペレチン分散物またはαGヘスペリジンを用いた場合にプラセボに比べ体温低下が抑制されているが、ヘスペレチン分散物を用いた場合の方が、αGヘスペリジンを用いた場合よりも顕著に体温低下が抑制されている。
【0303】
(評価例5:本発明のヘスペレチン分散液のヒト吸収性試験)
実施例1に従って調製したヘスペレチン分散液(ヘスペレチン含量17%)を水でヘスペレチン濃度3mg/mlとなるように希釈後よく撹拌混合し、分散ヘスペレチン溶液とした。より詳細には、実施例1に従って調製したヘスペレチン分散液1765mgを水100gで希釈した。対照として、ヘスペレチン300mgを水100gで希釈した。
【0304】
健康な成人男性5人を被験者とし、前日の午後9時30分以降絶食し、朝9時30分に分散ヘスペレチン溶液100ml(ヘスペレチン含有量300mg)を摂取させた。摂取時(0時間)および摂取0.5時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後および8時間後に、上腕部静脈から約5mlの血液を採取し、遠心分離により血清を分離した。分散ヘスペレチン溶液の摂取時点から3日間以上の期間をあけて、ヘスペレチン溶液を用いて同様の試験を実施した。
【0305】
採取した血清試料中のヘスペリジン誘導体量を定量するために、各血清試料500μlに対し、酢酸緩衝液(0.1M、pH4.5)を500μl加えた。さらに、スルファターゼH−2(シグマアルドリッチ ジャパン株式会社製)を酢酸緩衝液(0.1M、pH5.0)で10倍希釈したものを100μl加えて37℃で2時間反応させた。次いで、シュウ酸(0.01M)を500μl添加し、十分に攪拌した後遠心分離し、上清を平衡化したOasis HLB 30mg/1cc(日本ウォーターズ株式会社製)にロードした。シュウ酸(0.01M)1ml、水1mlで洗浄後、メタノール1mlで溶出回収させた。これを濃縮遠心により乾固した。ここに200μlのアセトニトリルを添加し、撹拌した後15分程度ソニケーションし、ヘスペレチンを溶解させた。この溶液を遠心分離後、上清を高速液体クロマトグラフィーにかけ、電気化学検出器(ESA社製 クーロケムIII)を使用して分析した。それぞれの血清試料中のヘスペレチンの濃度を、ヘスペレチンを標準として換算することによって求めた。結果を以下の表7に示す。
【0306】
【表7】

この結果から血中濃度についてのグラフを作成し、このグラフの0時間から8時間の曲線下面積(AUC)を計算した。グラフを図3に示し、曲線下面積の計算結果を以下の表8に示す。
【0307】
【表8】

従って、ヘスペレチンを摂取した場合の曲線下面積を1と換算すると、ヘスペレチン分散液を摂取した場合の曲線下面積は、約3.5倍であった。すなわち、ヘスペレチンを本発明のヘスペレチン分散液とすることにより、吸収量が約3.5倍に向上した。
【0308】
この結果、分散ヘスペレチン溶液を摂取した場合のヘスペレチン吸収量は、ヘスペレチンを摂取した場合に比べ、有意に高い値を示した。それゆえ、ヒトにおいても、評価例3におけるマウスの結果同様、ヘスペレチンを安定して分散させることにより吸収性が向上することがわかった。さらに、マウスにおいては、ヘスペレチンをヘスペレチン分散液とすることにより吸収量が約1.4倍に向上したのと比較して、ヒトにおいては約3.5倍に向上したので、マウスよりもヒトにおいて、より良い結果が得られることがわかった。
【0309】
(評価例6および比較評価例8−1〜8−3:コラーゲン産生誘導作用確認試験)
ヘスペレチン分散液がヒト皮膚繊維芽細胞のコラーゲン産生に与える影響を調べるために、まず、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(NB1RGB株)を2.5×10細胞/ウェルとなるように96穴プレートに播き、200μlのDMEM液体培地(584mg/L L−グルタミン、4%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するDMEM培地(1mg/L グルコース含有)(GIBCO))中、37℃、5%CO下で一晩プレインキュベーションした。培地を除去後、ヘスペレチンに換算した濃度が50μMとなるようにDMEM培地(584mg/L L−グルタミン、4%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するDMEM培地(1mg/L グルコース含有)(GIBCO))で調整したサンプルを各ウェルに添加した。サンプルとして、ヘスペレチン分散液(評価例6)、ヘスペレチン(比較評価例8−1)、ヘスペリジン(比較評価例8−2)および無添加区(比較評価例8−3)を使用した。ヘスペレチン分散液は、実施例1で調製したヘスペレチン分散液を使用した。37℃、5%CO下で72時間培養した後、培地を回収した。ヒトコラーゲン タイプI ELISA(株式会社 エーシーバイオテクノロジーズ)を使用して、この培地中のコラーゲン量を定量した。結果を以下の表9に示す。
【0310】
【表9】

この結果、無添加区(培地のみ)のコラーゲン産生量は3.65μg/mlであったが、ヘスペレチン分散液を添加した場合はコラーゲン産生量が5.26μg/ml(無添加区の約140%)であり、コラーゲン誘導性が認められた。また、このコラーゲン産生量は、従来のヘスペレチンを添加した場合と比較して約120%であり、従来のヘスペレチンよりも顕著に優れたコラーゲン誘導性が認められた。
【0311】
(実施例5および比較例2 分散ヘスペレチンを含有する外用剤の調製およびその効果の確認試験)
(1)分散ヘスペレチンを含有する外用剤の調製
まず、分散ヘスペレチン粉末を製造した。水795.0gに乳化剤であるデカグリセリンモノオレート(太陽化学(株)製;商品名サンソフトQ−17Y;デカグリセリンモノオレート;水酸基価868;1級水酸基の割合59.6%)10g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン(太陽化学(株)製;商品名サンソフトNo.621B;クエン酸モノステアリン酸グリセリン10gおよび酵素分解レシチン(太陽化学(株)製;商品名サンレシチンA−1;酵素分解レシチンの含有量33.3%;ホスホリパーゼAにより分解;分解率50%以上)5gを加え、80℃に加熱してよく混合した。ここへヘスペレチン(江崎グリコ(株)製;平均粒径20μm程度の粉末;純度90%)170gとアルギン酸エステル((株)キミカ製;商品名キミロイドNLS−K;アルギン酸をプロピレングリコールとエステル化したもの;エステル化度80%)10gおよび炭酸水素ナトリウム0.4gを予め十分に粉体混合したものを添加し、80℃で均一攪拌した。これを連続式湿式磨砕機であるダイノーミル((株)シンマルエンタープライゼス)に投入して連続的に30分間粉砕し、本発明のヘスペレチン分散液714gを得た。なお、本ダイノーミルの粉砕室容量は0.6リットルであり、粉砕媒体として直径0.8mmのジルコニアビーズ0.48Lを使用した。
【0312】
この分散液を測定時に水で適宜希釈して、ベックマン・コールター社の湿式粒度分布計にて粒度を測定したところ、分散液中の粒子の平均粒子径は、0.8μmであった。
【0313】
さらに本分散液をL−8型スプレードライヤー(大川原加工機(株))で噴霧乾燥を行い、粉末製剤146gを得た。この粉末製剤(分散ヘスペレチン粉末)は、以下の組成からなる:
ヘスペレチン 82.7重量%
乳化剤 12.2重量%
安定剤 4.9重量%
炭酸水素ナトリウム 0.2重量%
(乳化剤:デカグリセリンモノオレート+クエン酸モノステアリン酸グリセリン+酵素分解レシチン;
安定剤:アルギン酸エステル)。
【0314】
この粉末製剤(分散ヘスペレチン粉末)を3倍量の蒸留水に分散させた分散液を調製し、試験液として使用した(実施例5)。この分散液のヘスペレチン含量は20.7%であった。この分散液は、皮膚外用剤の一例である。対照群(プラセボ溶液)として、蒸留水を使用した(比較例2)。
【0315】
(2)上記の試験液および対照群を用いて以下の試験を実施した。
【0316】
(2−1)肌質の改善効果を見る試験
<試験方法>
測定部位を上腕部と手首の2箇所とし、試験期間は4週間とした。片方の腕の上腕部と手首に試験溶液を、別の腕の上腕部と手首にプラセボ溶液を朝晩の1日2回塗布した。試験溶液およびプラセボ溶液の塗布量はそれぞれ100mg/回であった。摂取前および摂取中は1週間毎に、水分量、水分蒸散量、メラニン量および弾力性の測定を行った。
【0317】
測定に際し被験者には石鹸を用いて測定部位をよく洗浄してもらった。出来る限り測定条件を同一に保つため、室温24℃、相対湿度50%の一定環境に設定した試験室で被験者に20分間以上安静に待機してもらった後、水分量、弾力性、水分蒸発およびメラニン量の測定を行った。水分量は「Corneometer CM825 (Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)」を用いて測定した。弾力性は「Cutometer SEM575 (Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)」を用いて測定した。水分蒸散は「Tewameter TM300 (Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)」を用いて測定した。メラニンは「Mexameter MX18(Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)」を用いて測定した。
【0318】
<試験結果>
被験者数は健康な成人女性3名であった。結果を以下の表10〜14に示す。結果はすべて、塗布前の数値を100とした時の測定時の数値を百分率(%)で示している。
【0319】
【表10】

上腕部および手首の両方で、プラセボ群に比べて試験液群の方が水分量が向上した。すなわち、試験液群の方が肌の潤いを向上させるのに有効であることがわかった。
【0320】
【表11】

上腕部および手首の両方で、プラセボ群に比べて試験液群の方が水分蒸散量が低下した。すなわち、試験液群の方が肌のバリアー性を向上させるのに有効であることがわかった。
【0321】
【表12】

上腕部および手首の両方で、プラセボ群に比べて試験液群の方がメラニン量が低下した。プラセボ群では、手首のメラニン量が増加したのに対し、試験液群では手首のメラニン量が減少した。また、プラセボ群では上腕部のメラニン量は変化しなかったのに対し、試験液群では上腕部のメラニン量が減少した。このことは、通常、日光に当たらない上腕部では本発明の試験液群による美白作用が明確に示されている。また、日光が当たる手首では、本発明の試験液群による日焼け防止効果および美白効果の両方の作用が発揮されていると考えられる。
【0322】
【表13】

上腕部および手首の両方で、プラセボ群に比べて試験液群の方が肌の柔らかさが向上した。
【0323】
【表14】

上腕部および手首の両方で、プラセボ群に比べて試験液群の方が肌の柔らかさが向上した。
【0324】
これらの結果から、本発明の皮膚外用剤が、保湿効果、メラニン抑制効果、肌のはりなどにおいて優れた作用を有することが明らかとなった。
【0325】
(2−2)血流改善および温度回復効果を見る試験
<試験方法>
試験溶液塗布が血流および皮膚温へ及ぼす影響を調べる試験を室温25℃の試験室で実施した。被験者は入室後10分以上安静にさせ、手指先の血流が安定であることを確認した。その後、片方の手の中指、薬指および小指の各指に50mgずつ試験溶液を塗布し、別の手の中指、薬指および小指の各指に50mgずつプラセボ溶液を塗布した。温度センサーを中指、薬指および小指の第一関節部に貼り、皮膚温を記録した。血流を、薬指の第一関節と指先との間の指の腹で測定した。乳化ヘスペレチン溶液またはプラセボ溶液を塗布後、10分間経過した後、ポリエチレンの手袋をはめ、10℃の水に1分間手を浸漬する冷却負荷を行った。冷却負荷後20分間も同様に継続して皮膚温および血流を測定した。皮膚温の測定には、血流の測定には、COMPACT THERMO LOGGER AM−8000K(安立計器株式会社)用い、レーザー血流計(オメガウェーブ FLO−N1)を用いた。
【0326】
<結果>
被験者数は健康な成人女性3名であった。
【0327】
血流変化
冷却負荷により低下した血流が、サンプル塗布前の安静時血流まで回復するのにかかる時間を血流変化の指標とした。被験者3名の平均値を比較した。
【0328】
【表15】

この結果、プラセボ群に比べて試験液群は血流の回復が約2倍早いことがわかった。
【0329】
温度変化
冷却負荷により低下した体温が、サンプル塗布前の安静時体温まで回復するのにかかる時間を温度変化の指標とした。被験者3名の平均値で比較した。
【0330】
【表16】

この結果、プラセボ群に比べて試験液群は温度の回復が早いことがわかった。この効果は血流の回復が早いことに起因していると考えられる。
【0331】
(評価例7−1、7−2および比較評価例9:ヘスペレチン分散液摂取による冷却負荷試験結果)
試験方法は、以下の通りである:
(1.試験内容)
被験者は健康な成人女性3名であった。
【0332】
(2.試験飲料)
実施例5(表3)で作製したヘスペレチン分散物飲料と同様のサンプルを摂取サンプルとして使用した。ヘスペレチン含量が125mgまたは50mgになるようにヘスペレチン分散物を添加した試験群の飲料(評価例7−1および7−2)と、分散物無添加のプラセボ群の飲料(比較評価例9)を作製した。プラセボ群の飲料の成分は、ヘスペレチン分散物を含まないこと以外は、試験群の飲料と同じであった。試験飲料を37℃で試験に供した。対象者および測定者にはどの試験飲料を摂取したかの違いがわからないように工夫した(二重盲検とした)。
【0333】
(3.測定室の環境条件)
前室の室温は23℃±0.5℃であり、試験室の室温は21.5(20.7〜21.5)℃であり、前室および試験室のいずれも相対湿度50%±10%であった。
【0334】
(4.試験スケジュール)
試験の被験者を、食事摂取後3時間以上空けて空腹状態で前室へ入室させた。その後、室温に順応させるために10分間安静にさせた。試験飲料を経口摂取した後、20分間安静にした。次いで、15℃の冷水に1分間、左手を手首まで浸して冷却した。次いで、冷水から手を出して短時間で水分を除去した。冷水から手を出した時間を時間0分として、5分後毎に40分まで体温を測定した。体温の測定部位は、左手甲側の5本の指の第一関節付近であった。5本の指の平均値を得た。得られたサーモグラフ上での測定部位を図5に示す。測定装置(赤外線サーモトレーサーTH9100(NEC三栄製))で測定し、解析ソフト(熱画像処理プログラムTH91−702(NEC三栄製))を用いてデータ処理を行った。
【0335】
(5.測定結果)
測定結果を以下の表17および図6に示す。
【0336】
【表17】

この結果、ヘスペレチン含量が50mgの場合も125mgの場合も、冷却の約5分後の時点から急激に対表面温度が上昇し、10分後にはほぼ冷却前の体温に回復した。これに対して、プラセボの場合には冷却の約30分後まで体温が回復しなかった。
【0337】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0338】
本発明のヘスペレチン分散液は、安定したヘスペレチン分散液であるので、長期保存される食品、特に飲料などに好適に使用され得る。本発明の粉末は、このようなヘスペレチン分散液を製造するために有効に使用され得るので、広範囲に利用され得る。本発明のヘスペレチン分散液および粉末は、従来のヘスペレチンよりも生体への吸収性が向上しているので、種々の用途に好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0339】
【図1】図1は、実施例1のヘスペレチン分散液(評価例3)、従来のヘスペレチン懸濁液(比較評価例3)、ヘスペリジン(比較評価例4)または酵素処理ヘスペリジン(比較評価例5)を投与したマウスの血清中ヘスペレチン濃度を示すグラフである。
【図2】図2は、評価例4および比較評価例6〜7で使用した試験スケジュールを模式的に示す図である。
【図3】図3は、ヘスペレチン分散液または従来のヘスペレチン懸濁液を投与したヒトの血清中ヘスペレチン濃度を示すグラフである。
【図4】図4は、ヘスペレチン関連物質のコラーゲン産生効果を示すグラフである。
【図5】図5は、体表面温の測定部位を示すサーモグラフである。A〜Eの記号が付してある×の箇所の体表面温を測定した。
【図6】図6は、実施例7での冷却負荷試験の結果を示す。
【図7】図7は、ヘスペレチン製剤の分散モデル図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペレチン粒子、界面活性剤および溶媒を含むヘスペレチン分散液であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、ヘスペレチン分散液。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたものであり、該ポリグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該ポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
前記形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルがデカグリセリンモノオレートである、請求項4に記載の分散液。
【請求項6】
前記界面活性剤が、デカグリセリンとオレイン酸とがエステル化されることにより形成されたデカグリセリンモノオレートと、クエン酸モノステリアン酸グリセリンと、酵素分解レシチンとを含み、該デカグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該デカグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、請求項1に記載の分散液。
【請求項7】
さらに多糖類を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項8】
前記多糖類が、アルギン酸およびアルギン酸エステルからなる群より選択される、請求項7に記載の分散液。
【請求項9】
前記多糖類がアルギン酸エステルである、請求項7に記載の分散液。
【請求項10】
前記ヘスペレチン粒子の平均粒子径が0.1μm〜10μmである、請求項1に記載の分散液。
【請求項11】
前記ヘスペレチン分散液中のヘスペレチン粒子の含有量が1重量%〜50重量%である、請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
24時間静置後に沈澱が実質的に観察されない、請求項1に記載の分散液。
【請求項13】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む粉末であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、粉末。
【請求項14】
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、請求項13に記載の粉末。
【請求項15】
前記界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンを含む、請求項13に記載の粉末。
【請求項16】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されることにより形成されたものであり、該ポリグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該ポリグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、請求項13に記載の粉末。
【請求項17】
前記形成されたポリグリセリン脂肪酸エステルがデカグリセリンモノオレートである、請求項16に記載の粉末。
【請求項18】
前記界面活性剤が、デカグリセリンとオレイン酸とがエステル化されることにより形成されたデカグリセリンモノオレートと、クエン酸モノステリアン酸グリセリンと、酵素分解レシチンとを含み、該デカグリセリンの水酸基価が1200以下であり、かつ該デカグリセリンの全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である、請求項13に記載の粉末。
【請求項19】
さらに多糖類を含む、請求項13に記載の粉末。
【請求項20】
前記多糖類が、アルギン酸およびアルギン酸エステルからなる群より選択される、請求項19に記載の粉末。
【請求項21】
前記多糖類がアルギン酸エステルである、請求項19に記載の粉末。
【請求項22】
前記ヘスペレチン粒子の平均粒子径が0.1μm〜10μmである、請求項13に記載の粉末。
【請求項23】
前記粉末中のヘスペレチン粒子の含有量が30重量%〜95重量%である、請求項13に記載の粉末。
【請求項24】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む飲食物であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、飲食物。
【請求項25】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む医薬部外品であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、医薬部外品。
【請求項26】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む医薬品であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、医薬品。
【請求項27】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む皮膚外用剤であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、皮膚外用剤。
【請求項28】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む入浴剤であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、入浴剤。
【請求項29】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む飼料であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、飼料。
【請求項30】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含むペットフードであって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、ペットフード。
【請求項31】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む繊維であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、繊維。
【請求項32】
ヘスペレチン粒子および界面活性剤を含む衣類であって、該界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸有機酸エステルおよび酵素分解レシチンからなる群より選択される、衣類。
【請求項33】
請求項1に記載のヘスペレチン分散液の製造方法であって、該方法は、
ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;および
該混合物を湿式磨砕機で粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程
を包含する、方法。
【請求項34】
請求項13に記載の粉末の製造方法であって、該方法は、
ヘスペレチン原末と界面活性剤と溶媒とを混合して混合物を得る工程;
該混合物を湿式磨砕機にかけて該混合物中の該ヘスペレチン原末を粉砕して、ヘスペレチン分散液を得る工程;および
該ヘスペレチン分散液を乾燥して、ヘスペレチン粉末を得る工程
を包含する、方法。
【請求項35】
前記乾燥がスプレードライにより行われる、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−30967(P2010−30967A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197024(P2008−197024)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】