説明

分散体の製造方法および液体混合装置

【課題】 粒径のバラツキを抑制しつつ、粒径の小さな反応生成物の分散体を得る方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも2種類の液体を接触させ、反応生成物を生成する工程を含み、前記反応生成物からなる粒子を分散媒中に分散させた分散体の製造方法であって、
それぞれ吐出させた液体の進行方向が自由空間内で交わり、該自由空間内で前記液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ、合体して流れるように前記ノズルより前記液体を吐出させることを特徴とする分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散体の製造方法および液体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性物質を含有する分散体材料には、従来から機能性材料として、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、また着色剤を有するインク、トナー、カラーフィルタ等の色材が良く知られている。
【0003】
そして、インク、トナー等に含有される色材として顔料が用いられるようになってきている。こうした中、顔料を用いて良好な顔料分散体を得るためにマイクロジェットリアクターを利用した顔料分散方法提案されている。
【0004】
特許文献1は、リアクターチャンバー内の筐体内で粗顔料が溶媒に溶解した溶液と沈殿媒体とをノズルから噴霧、衝突させて、顔料の懸濁液を得る方法を開示する。
【0005】
また、特許文献2は、2種類の液体を反応させて反応生成物を生成する工程を含み、反応生成物を分散媒中に分散させた分散体の製造方法を開示する。
【0006】
より具体的には、特許文献2は、吐出させた液体の進行方向が互いに120度以下の範囲内で交わるように、且つ前記液体がその後一体となって流れるように2種類の液体をそれぞれ個別に設けられたノズルから吐出させる。そして、反応生成物を生成させる分散体の製造方法を開示する。
【特許文献1】特開2002−155221号公報
【特許文献2】特開2007−191700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、顔料を含む溶液と沈殿媒体とを互いに相対するノズルから正面で噴霧して混合させるため、液体がチャンバー中の筐体内に飛散する。
【0008】
この場合、飛散した液体または反応物は筐体内壁に付着、堆積し、時間の経過に伴って筐体内壁から離脱、剥離することが考えられる。
【0009】
そして、離脱、剥離した液体または反応物がノズルから新たに噴霧された液体と2次的反応を生ずる恐れがある。
【0010】
特許文献2は、特許文献1におけるこうした課題を解決する優れた発明であり、液体の飛散を抑えることで飛散に起因する2次的反応を排除し、長時間安定的に分散体を製造できるとしている。
【0011】
特許文献2に記載の方法の本技術分野における貢献は大きいものの、改善の余地がないわけではない。特許文献2の方法によると粒径の小さな反応生成物の分散体を得ることができるが、粒径のバラツキ抑制に関しては更なる向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の顔料分散体の製造方法は、少なくとも2種類の液体を接触させることにより反応生成物を生成する工程を含み、前記反応生成物からなる粒子を分散媒中に分散させた分散体の製造方法であって、それぞれ吐出させた前記液体の進行方向が自由空間内で交わり、該自由空間内で前記液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ、合体して流れるように前記ノズルより前記液体を吐出させることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の液体混合装置は、少なくとも2種類の液体を吐出させる複数のノズルを有し、該複数のノズルから吐出された液体同士を混合する液体混合装置であって、
それぞれのノズルから吐出させる液体の進行方向が自由空間内で交わり、該自由空間内で前記液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ合体して流れるように前記複数のノズルが配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、吐出させた液体の進行方向が自由空間内で交わり、自由空間内で液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ、合体して流れるようにノズルを配置して、このノズルより液体を吐出させる。これにより、液体の流れは安定化し、液体同士の均一な混合、反応がなされることとなる。その結果、小粒径で狭い粒度分布を有する顔料分散体を得ることができる。
【0015】
また、本発明の液体混合装置は、本発明の方法を実施するのに好適な装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の顔料分散体の製造方法は、少なくとも2種類の液体を接触させることにより反応生成物を生成する工程を含み、前記反応生成物からなる粒子を分散媒中に分散させた分散体の製造方法である。そして、吐出させた液体の進行方向が自由空間内で交わり、自由空間内で液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ、合体して流れるようにノズルを配置して、このノズルより液体を吐出させる。
【0017】
本発明において、らせん流とは、複数の液体がからみ合いながら軸の回りを円運動しながら、軸方向に移動する流れをいう。
【0018】
複数の液体がからみ合いながら、軸の回りを円運動することにより、液体の流れは安定化し、液体同士の均一な混合、反応がなされることとなる。その結果、小粒径で狭い粒度分布を有する顔料分散体を得ることができる。
【0019】
本発明は、吐出させた液体が進行方向になす軸の中心同士が、互いにずれた位置で交わるように前記ノズルを配置することを包含する。
【0020】
本発明は、2種類の液体のうち一方の液体Aと、他方の液体Bと、の接液面に対して垂直で、且つ合体後の液体の進行方向に垂直な方向で切った断面における、液体Aの重心Gaと、
液体Bの重心Gbと、が前記接液面に対する同一の法線上からずれた位置となるように前記ノズルを配置することを包含する。
【0021】
また、本発明は、2種類の液体のうち一方の液体を、顔料が溶解した溶液であり、他方の液体を、顔料の溶解度を低下させる溶液とすることもできる。また、2種類の液体のうち一方の液体を、カプラーを含有する溶液で、他方の液体を、ジアジニウム塩を含有する溶液とすることもできる。
【0022】
更に、2種類の液体のうち少なくとも一方の液体が、分散剤を含有するものとすることもできる。
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の分散体の製造方法に適用可能な液体混合装置と、この装置により形成されるらせん流とを示す模式図である。
【0025】
図1に示した液体混合装置は、2つのノズル121、122の開口部111及び112より、それぞれ第1の液体(A)191と第2の液体(B)192とを吐出させ、これら液体の進行方向が自由空間で交わるように制御された液体混合装置である。ここで液体同士は、自由空間で交わった(接触)後、合体してらせん流181を形成している。
【0026】
本発明において自由空間で交わるとは、ノズル開口部より吐出された液体同士が筐体や、壁等の物体に接触せずに、大気空間、開放空間、減圧制御された空間、あるいは、気体の雰囲気を制御された空間内で最初に接触することをいう。
【0027】
本発明においては、流体Aと流体Bとを混合することで、化学反応を生じ、これにより生成される粒子を分散媒中に分散させた分散体が製造される。
【0028】
化学反応の例としては、カップリング反応、加水分解反応、イオン反応、ラジカル反応、脱水反応、付加重合、重縮合、酸化反応、還元反応、中和反応や酵素反応等が挙げられる。
【0029】
これら化学反応には、溶液中の溶解しておいた成分が、別の溶液(単なる溶媒の場合も含む)と混合されることによって、溶液への溶解度が低下し、析出する反応も含む。
【0030】
また、反応は、複数の反応が組合せられたものも含む。
【0031】
本発明の分散体の製造方法では、ノズルの開口部111及び112から吐出された液体Aと液体Bが液体の進行方向の延長線上で接触し、らせん流181を形成する。
【0032】
液体Aと液体Bとの接触する角度Tは一般的には、150度以下とすることができる。
【0033】
しかし、より好ましくは120度以下であり、らせん流181の安定性の観点からすると50度以下とすることがより好ましい。
【0034】
本発明において、らせん流とは、複数の液体がからみ合いながら軸の回りを円運動しながら、軸方向に移動する流れをいう。
【0035】
本発明者らの検討によると、液体Aと液体Bとは、開口部111及び開口部112より吐出されるので、両液の接触前には液体Aは進行軸の中心部分の速度がノズル壁の影響を受ける周辺部よりも大きくなる。同様に液体Bについても進行軸の中心部分の速度が大きくなる。
【0036】
そして、接触後は、らせん流を形成することから、接触後の初期の段階では、液体の進行方向に垂直な断面方向の液体Aと液体Bとの流れは、液体Aと液体Bとが擦れるように回転したものとなる
(両液とも例えば、時計回りに回転するので、接触面では互いの回転を打ち消す方向に回転する)。
【0037】
その後、液体Aと液体Bの一方の優勢な流れに他方の流体が引きづられ、渦巻き状の界面を形成しつつ一体となって流れる。ここで、渦巻き状の界面を形成することから、液体Aと液体Bとの接触面積は、単なる平面で接触する場合に比べてより大きなものとなる。
【0038】
その結果、広い面積で液体Aと液体Bとの反応が生ずることになり、短時間で反応が終了する。
【0039】
そして、更に時間が経過すると(液体が流れると)、渦巻き状の界面は消失し、全体が略均一な混合物(組成物、分散体)とみなせる状態となる。
【0040】
このような理由で、本発明によれば、粒子の大きさの均一性に優れた分散体を製造できるのである。また、らせん流181を形成することによって液体Aと液体Bとの流束の拡がりを抑制でき、分散体を回収しやすいという効果も生ずる。
【0041】
次に本発明におけるらせん流の発生の仕方について説明する。
【0042】
図2は、らせん流の発生について説明するための模式図であり、液体Aと液体Bとの接液面に対して垂直で、且つ合体後の液体の進行方向に垂直な方向で切った液体の断面図である。
【0043】
本発明においては、吐出させた液体の進行方向になす軸の中心同士が、互いにずれた位置の状態で液体同士が接触することで、らせん流を形成することができる。ここで、液体が進行方向になす軸の中心は、図2でいえば107a、107bがこれに相当する。
【0044】
2液の軸の中心同士が互いにずれた位置状態で、液体同士が接触することについてより詳細に説明すると以下の通りとなる。
【0045】
図2において、150は接液面、191は液体Aの断面であり、107aは、断面における液体Aの重心Gaを、192は液体Bの断面、107bは、断面における液体Bの重心Gbをそれぞれ示している。そして、108は接液面150に対する法線(一方の液体の重心を通る)を示している。
【0046】
図2の(a)乃至(e)において、液体Aの重心107aと液体Bの重心107bは、互いに同一の法線108(法線上)からずれて位置している。
【0047】
即ち、本発明において、らせん流を形成するには、2つの液体の接触面に対して垂直で、合体後の液体の進行方向に垂直な方向で切った断面における2つの液体の重心を、接液面に対する同一の法線上からずれた位置に配置することが有効である。
【0048】
図2(a)は、2つの液体191と192の径は異なるが、略円形の断面を示す場合を示しており、図2(b)は、2つの液体の断面がそれぞれ、楕円形となる場合を示している。
【0049】
図2(c)は、液体A191の断面が雪だるま(ひょうたん)状の場合、図2(d)は、だるま状の場合、図2(e)は、2つの液体の断面が雪だるま(ひょうたん)状の場合をそれぞれ示している。
【0050】
図2に示した2つの液体の重心の位置関係は、次のようにして測定することができる。
【0051】
図3に示すように液体192を吐出する開口部112を備えたノズルをXYθステージ130にノズル支持部材136と、ノズル固定部材138を用いて固定する。
【0052】
図4に示すように、XYYθステージのつまみ(不図示)を制御しつつ、液体A191のみを開口部111より吐出させ、カメラ145及びカメラ146を用いて、重心を算出する。ついで、図5に示すように他方の液体B192のみを吐出させ、同様に重心を算出する。
【0053】
また、安定したらせん流を形成するには液体の表面張力や粘性も要因となり、扱う液体に応じて適宜接触する角度や吐出圧等を調整することが望ましい。
【0054】
図1乃至図5では、2種類の液体を2本のノズルよりそれぞれ吐出させて分散体を製造する方法について説明したが、反応容器を大きくするのではなく、ノズルの数を増加させて生産量を増やし、量産化を図ることも可能である。
【0055】
図7に示した装置は、第1の液体(A)を吐出するノズル121と第2の液体(B)を吐出するノズル122の対を複数配置して集積化した装置である。この装置でも各対ごとにらせん流181を発生させて反応を行なうことができる。
【0056】
これまで、2種類の液体を用いる方法について説明したが、3種類以上の液体を用いることも可能である。
【0057】
図8に示す装置は、3種類の液体を用いてらせん流181を形成するものである。この装置では、第1の液体(A)191、第2の液体(B)192に加えて、第3の液体(C)を3つ目の吐出開口113より吐出させてらせん流181を形成する。
【0058】
この装置の場合、3つの液体を全て異なる液体とすることも可能であるが、2つの液体を同じものとすることも可能な他、液体の成分は同じまま、濃度を変化させる等、液体は得ようとする分散体に応じて適宜変化させて使用することができる。
【0059】
次に、液体を吐出するノズル部分だけでなく、本発明に適用可能な分散体の製造装置のシステム例について説明する。
【0060】
図6は、こうしたシステムの一例を示す模式図である。
【0061】
図6において、100はノズル121及び122を備えた混合装置であり、ノズル121及び122から吐出された液体どうしは接触混合して、混合液体回収手段108より回収される。
【0062】
図6において、131及び132は液体供給手段であり液体は不図示の液体貯蔵槽から液体供給手段131、132に供給される。液体供給手段131、132としては市販のシリンジポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、電磁ポンプ等を採用することができる。
【0063】
混合装置100と液体供給手段131、132との間には配管171及び172を介してそれぞれ、モニター手段141、142、制御手段151、152、温度制御手段161、162が接続されている。
【0064】
モニター手段141、142は流量計、圧力計等で構成され、制御手段151、152は弁、バルブ等で構成される。温度制御手段161、162はヒーター、冷却機等で構成することができる。
【0065】
これらの各部品を接続するのは搬送する液体に対して耐性のあるチューブ等で構成される配管171、172である。液体混合装置100と液体供給手段131、132との間に設けられた各部品は、必要に応じて設けられるもので、全ての部品を設けなくても良い。
【0066】
ノズル121及び122より吐出された液体の混合液体回収手段108への搬送は液体の自重による流れを利用してもよいし、ポンプによる圧力を利用することもできる。
【0067】
図6に示した液体混合装置100として、図1、図3、図8、等で説明した装置を用いることができる。これらの液体混合装置100は、液体の混合や反応を行なうための小型の化学装置で構成することができる。
【0068】
液体を吐出させる吐出口を構成するノズルの開口形状は、丸型、楕円型、正方形等の多角形、長方形等の軸対称形状や異なる形状がつながった非軸対称形状でもよい。
【0069】
吐出される液体の吐出直後は開口形状に由来した形状ではあるが、表面張力により断面形状は円形もしくは楕円形に近づいてゆく。
【0070】
液体Aと液体Bとを吐出するノズル開口形状は同一であっても、異なっていてもよい。また、ノズル開口面積についても同一であって、異なっていてもよい。
【0071】
本発明に適用可能なノズルの開口部として使用される材料の例としては、金属、ガラス、シリコン、テフロン(登録商標)、セラミックス、プラスチック等を挙げることができる。
【0072】
耐熱、耐圧および耐溶剤性が必要な場合には、金属、ガラス、シリコン、テフロン(登録商標)、セラミックスが材料として好ましいが、より好ましくは金属材料が望ましい。
【0073】
金属材料の例としては、ステンレス、ハステロイ(Ni−Fe系合金)ニッケル、金、白金、タンタル等が挙げられる。
【0074】
また、ノズルの耐食性や所望の表面エネルギーを得るためにノズル表面にライニング加工を施したものを用いてもよい。
【0075】
本発明の分散体の製造方法では、液体Aと液体Bとの接触が自由空間内にて行なわれ、らせん流を形成する。この方法では、流体Aと流体Bはらせん流を形成して同じタイミングで混合されるため反応や混合の均一性が上がり形成される粒子の粒径は揃いやすくなる。
【0076】
また、ノズルの開口部の開口面積を小さくすることにより供給される液体同士の絶対量が小さくなるため速やかな混合や反応が行なわれ小粒径になりやすい。
【0077】
速やかな混合が行なわれると小粒径になりやすい理由は、瞬間的な混合により多数の核が生じ、それに基づき多数の粒子が成長するため、粒子化がスムーズに行なわれ一次粒径の小さい粒子が形成されるからである。
【0078】
液体を供給するノズルひとつあたりの開口部の開口面積は混合効率の観点から好ましくは7mm以下であり、より好ましくは0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.2mm以下であり、最も好ましくは0.008mm以下である。
【0079】
また、ノズルの開口部からの吐出と、液体の粘性を考慮すると、好ましくは0.00008mm以上であり、より好ましくは0.002mm以上である。
【0080】
ノズル開口部の開口面積が小さいほど、供給される液体の液幅(液径)が小さくなり、混合が効率良く行なわれる。
【0081】
一方、開口部の開口面積が大きくなると液幅も大きくなり混合の効率は低下してしまう。
【0082】
ただし、流体の粘性が高いものを扱う場合、開口部の開口面積の小さいものを用いると圧力損失が大きくなり吐出できないこともあるので、扱う流体に応じた開口部の開口面積を設定することが有用である。
【0083】
本発明では、液体Aと液体Bとの接触が流路内ではなく、自由空間内で行われることにより接触によって形成される粒子による流路閉塞は起こらない。
【0084】
また、混合が流路中での層流過程での自己分散による混合(反応)でないため形成される粒子による混合の阻害は抑えられるため粒子生成濃度を高くすることが可能になる。
【0085】
これにより、使用する溶媒等を低減することもでき、その後の濃縮時間や精製時間の短縮できることから低コスト化が図れる。
【0086】
顔料が希薄な濃度でしか溶解できない場合、有機金属錯体を生成するにあたって溶媒量が増すことが考えられ、また、限外ろ過や減圧留去による濃縮がすることは可能であるが廃液処理のコストや環境面への負荷等の不都合が考えられる。
【0087】
このような場合に本発明は特に有用である。
【0088】
本発明の分散体の製造方法において製造できる粒子分散体としては、無機粒子、有機粒子、エマルションやポリマー粒子これらの複合化粒子等が挙げられる。
【0089】
また、粒子の大きさはnmサイズからmmサイズまで、材料の持つ性質と、用途に応じて粒子径を決定することができる。
【0090】
エマルションやポリマー粒子として、一般的なラテックスの製造に利用することができる。
【0091】
無機粒子としては、一般的な金属粒子の製造に適応することが可能で、加水分解重縮合反応においては、例えば、液体Aは無機アルコキシドで液体Bは水を含む溶液という組合せが一例として挙げられる。
【0092】
この際、反応生成物は無機アルコキシド加水分解重縮合物となる。
【0093】
無機アルコキシドの加水分解と、それに続く重縮合反応は、ゾル−ゲル法と呼ばれる反応である。無機アルコキシドを溶液中で加水分解・重縮合反応させて溶液を無機酸化物または無機水酸化物の微粒子が溶解したゾルとし、さらに反応を進めてゲルとする反応である。
【0094】
無機アルコキシド加水分解重縮合物の分散体として得るために液体Aと液体Bのどちらか一方もしくは両方に分散剤を含ませておくことができる。特に反応生成物の無機アルコキシド加水分解重縮合物が分散媒体に対して所望の分散性を有しているのなら分散剤は必ずしも液体Aと液体Bのどちらか一方もしくは両方に含ませる必要はない。
【0095】
無機アルコキシドとしては、例えば、次式(I)で示される化合物を挙げることができる。
M(ORm−n ・・・・・(I)
式(I)中、Mは、Si、Al、Ti、Zr、Ca、Fe、V、Sn、Li、Beから選択される原子、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル基、官能基を有するアルキル基、mは、Mの原子価、およびnは、1からmまでの整数である。
【0096】
式(I)の化合物のうち汎用されるのは、n=m、つまりMにアルコキシ基のみが結合した化合物である。
【0097】
MがTiの場合には、Tiの原子価mは、4であり、このようなアルコキシドは、Ti(ORで表される。
【0098】
このようなチタニウムアルコキシドとしては、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OCH(CH、Ti(OCなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0099】
MがSiの場合には、Siの原子価mは、4であり、このようなアルコキシドは、Si(Rで表される。
【0100】
このようなアルコキシシランとしては、Si(OCH、Si(OC、HNCHSi(OCH、HNCHSiCH(OCH、HNCHCHSi(OCH、HNCHCHSi(OCHCH
HN(CH)CHSi(OCH、HN(CH)CHCHSi(OCH、HN(CH)CHCHCHSi(OCH、HN(CH)CHCHCHSi(OCHCH
N(CHCHSi(OCH、N(CHCHCHSi(OCH、N(CHCHCHCHSi(OCHCH、Cl(CHCHSi(OCH
Cl(CHCHCHSi(OCH、Cl(CHCHCHCHSi(OCH、Cl(CHCHCHCHSi(OCH
Cl(CHCHCHCHSi(OCHCH、CNHCHCHCHSi(OCH、NHCONHCHCHCHSi(OCH、NHCHCHNHCHCHCHSi(OCH
などが挙げられる。
【0101】
MがAlの場合には、Alの原子価mは、3であり、このようなアルコキシドは、Al(ORで表される。
【0102】
このようなアルミニウムアルコキシドとしては、Al(OCH、Al(OC、Al(OC、Al(OCH(CH、Al(OCなどが挙げられる。
【0103】
他の無機アルコキシドとしては、例えば、Ca(OC、Fe(OC、V(OCH(CH、Sn(OC(CH)4、Li(OC)、Be(OC等が挙げられる。
【0104】
また、アルコキシドでなく、ORがハロゲンである無機ハライドを用いてもよい。
【0105】
本発明においては、反応はこれらに限定されるものではなく、その他の金属ナノ粒子等の分散体製造にも利用することができる。
【0106】
有機粒子としては色材、代表的には顔料あるいは染料を挙げることができる。
【0107】
使用し得る染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、脂溶性染料又は、分散染料の不溶性色素を挙げることができる。
【0108】
例としては、C.I.ソルベントブルー,−33,−38,−42,−45,−53,−65,−67,−70,−104,−114,−115,−135;
C.I.ソルベントレッド,−25,−31,−86,−92,−97,−118,−132,−160,−186,−187,−219;
C.I.ソルベントイエロー,−1,−49,−62,−74,−79,−82,−83,−89,−90,−120,−121,−151,−153,−154等が挙げられる。
【0109】
水溶性染料の例としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−19,−22,−32,−38,−51,−62,−71,−108,−146,−154;
C.I.ダイレクトイエロー,−12,−24,−26,−44,−86,−87,−98,−100,−130,−142;
C.I.ダイレクトレッド,−1,−4,−13,−17,−23,−28,−31,−62,−79,−81,−83,−89,−227,−240,−242,−243;
C.I.ダイレクトブルー,−6,−22,−25,−71,−78,−86,−90,−106,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−39,−44,−46,−60;
C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;
C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−7,−24,−26,−31,−52,−63,−112,−118,−168,−172,−208;
C.I.アシッドイエロー,−11,−17,−23,−25,−29,−42,−49,−61,−71;
C.I.アシッドレッド,−1,−6,−8,−32,−37,−51,−52,−80,−85,−87,−92,−94,−115,−180,−254,−256,−289,−315,−317;
C.I.アシッドブルー,−9,−22,−40,−59,−93,−102,−104,−113,−117,−120,−167,−229,−234,−254;
C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、
C.I.リアクティブブラック,−1,−5,−8,−13,−14,−23,−31,−34,−39;
C.I.リアクティブイエロー,−2,−3,−13,−15,−17,−18,−23,−24,−37,−42,−57,−58,−64,−75,−76,−77,−79,−81,−84,−85,−87,−88,−91,−92,−93,−95,−102,−111,−115,−116,−130,−131,−132,−133,−135,−137,−139,−140,−142,−143,−144,−145,−146,−147,−148,−151,−162,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−13,−16,−21,−22,−23,−24,−29,−31,−33,−35,−45,−49,−55,−63,−85,−106,−109,−111,−112,−113,−114,−118,−126,−128,−130,−131,−141,−151,−170,−171,−174,−176,−177,−183,−184,−186,−187,−188,−190,−193,−194,−195,−196,−200,−201,−202,−204,−206,−218,−221;
C.I.リアクティブブルー,−2,−3,−5,−8,−10,−13,−14,−15,−18,−19,−21,−25,−27,−28,−38,−39,−40,−41,−49,−52,−63,−71,−72,−74,−75,−77,−78,−79,−89,−100,−101,−104,−105,−119,−122,−147,−158,−160,−162,−166,−169,−170,−171,−172,−173,−174,−176,−179,−184,−190,−191,−194,−195,−198,−204,−211,−216,−217;
C.I.リアクティブオレンジ,−5,−7,−11,−12,−13,−15,−16,−35,−45,−46,−56,−62,−70,−72,−74,−82,−84,−87,−91,−92,−93,−95,−97,−99;
C.I.リアクティブバイオレット,−1,−4,−5,−6,−22,−24,−33,−36,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−8,−12,−15,−19,−23;
C.I.リアクティブブラウン,−2,−7,−8,−9,−11,−16,−17,−18,−21,−24,−26,−31,−32,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;
C.I.ベーシックレッド,−1,−2,−9,−12,−13,−14,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−3,−5,−7,−9,−24,−25,−26,−28,−29;
C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;
C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0110】
顔料としては、無機顔料、有機顔料やこれらの複合顔料が挙げられる。
【0111】
無機顔料においては前述の無機粒子が代表的なものであり、有機顔料としては、次のものが例として挙げられる。
【0112】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:2、
C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられる。
【0113】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、C.I.Pigment Red−7、C.I.Pigment Red−12、C.I.PigmentRed−48、C.I.Pigment Red−48:1、
C.I.PigmentRed−57、C.I.Pigment Red−112、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、C.I.Pigment Red−168、
C.I.Pigment Red−184、C.I.Pigment Red−202、C.I.Pigment Red−207等が挙げられる。
【0114】
黄色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、
C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、
C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、
C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられる。
【0115】
本発明の方法では、液体Aを顔料の酸もしくはアルカリ溶媒または、酸もしくはアルカリ溶媒と有機溶媒との混合溶媒に溶解した溶液とし、液体Bを顔料の沈殿媒体(顔料の溶解度を低下させる貧溶媒)とすることが可能である。
【0116】
この場合、使用される酸は、顔料を酸単独または有機溶媒との混合溶媒にて溶解するものから選択され、一例として、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;
これらがハロゲンで置換されたハロゲン化アルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸、酢酸、
リン酸、ポリリン酸等を使用することができる。
【0117】
また、これらは1種類単独でまたは2種類以上を併用することもできる。
【0118】
溶解においては、これら酸が常温で固体である場合はその融点以上に加熱し溶解を行なっても良い。また顔料の溶解は、常温または加熱下で行っても良い。
【0119】
アルカリは、顔料をアルカリ単独または有機溶媒との混合溶媒にて溶解するものから選択される。
【0120】
一例として、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド及び有機強塩基が、有機顔料の可溶化能力の高さから好ましい。
【0121】
具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、カリウム−tert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等
の第4級アンモニウム化合物、
1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]−7−ノネン、グアニジン等を挙げることができる。また、これらのアルカリは、1種類単独で、または2種類以上を併用することもできる。
【0122】
有機溶媒(分散媒)は顔料を有機溶媒単独または酸もしくはアルカリとの混合溶媒にて溶解するものから選択される。
【0123】
一例として、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、
ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン、酢酸、アセトニトリル挙げられ、これらは併用することもできる。
【0124】
沈殿媒体(分散媒)は、溶解している顔料の溶解度を低下させる媒体から選択することができる。
【0125】
一例として、水、酸性水溶液、アルカリ水溶液、アルコール、水溶性有機溶媒、非水溶性有機溶媒やこれらの混合物が挙げられる。
【0126】
ここで、液体Aの顔料溶液と、液体Bの沈殿媒体との接触を分散剤存在下で行なうと顔料が析出によって粗大な粒子に成長する前に分散剤により顔料に分散性が付与されるため小粒径の顔料分散体を得るのに有用である。
【0127】
本発明の方法では、液体Aは、カプラ−溶液で、液体Bをジアジニウム塩溶液とすることも可能である。
【0128】
これらを用いると、アゾ化合物を製造することができる。アゾ化合物としては公知なアゾ、ビスアゾ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ系顔料が挙げられる。これら顔料としては、市販されている顔料を用いても良い。市販されている顔料を以下に例示する。
【0129】
即ち、C.I.Pigment Yellow74、93、94、95、120、128、151、154、166、175、180、181、
C.I.Pigment Red 5、31、144、146、147、150、166、176、184、269、Pigment Orange31等である。
【0130】
ジアゾニウム塩としては、芳香族アミン、複素環式アミン構造を有する化合物から誘導されるジアジニウム塩を用いることができる。
【0131】
カプラーとしては、アニリン、フェノール、ナフトール系構造を有する芳香族化合物やアセトアセトキシ基を有する化合物を有するカプラーを用いることができる。
【0132】
ここで、カプラー溶液とジアゾニウム塩との接触を分散剤存在下で行なうとアゾ化合物が粒子の場合、析出によって粗大な粒子に成長する前に分散剤によりアゾ化合物に分散性が付与されるため小粒径のアゾ化合物分散体として得るのみ有用である。
【0133】
分散剤は、生成物が粒子の場合には、粒子表面に吸着し粗大粒子に成長していくことを抑制し、粒子同士が凝集していくことを抑制するものを用いることが好ましい。このような分散剤としては界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、カチオン性を用いることができる。
【0134】
本発明においては、液体Aと液体Bの両方もしくはどちらか一方に含ませることによって分散剤存在下で、液体Aと液体Bとの接触を行なうことができる。
【0135】
本発明で使用できるアニオン性界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、
ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0136】
カチオン性活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0137】
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン、また、両親媒性のブロック共重合体も挙げることができる。
【0138】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、
グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、が挙げられる。
【0139】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0140】
(実施例1)
本実施例では、顔料の2,9−ジメチルキナクリドンを用いる。
【0141】
300mlの茄子型フラスコに2,9−ジメチルキナクリドンを10重量部入れ、そこにメタンスルホン酸80重量部を常温で加える。その茄子型フラスコを80℃に加熱されたオイルバスに浸しアルゴンガス雰囲気下、10分間の加熱攪拌を行なう。これにより2,9−ジメチルキナクリドンが溶解し青紫色をしたキナクリドン顔料溶解液が調製される。
【0142】
次いで、キナクリドン顔料溶解液50mlに非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンセチルエーテルを6.86重量部と、アセトニトリル30重量部に溶解した溶液を添加し液体Aを調製する。液体Bとして0.1重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル水溶液を調整する。
【0143】
本実施例では、液体Aと液体Bとの接触・混合は、図9に示す2つのノズル開口部が一体化されたテフロン(登録商標)製の混合器を用いる。図9(b)は、図9(a)のA方向とB方向からみたノズル開口部を模式的に表した図である。
【0144】
液体Aを吐出するノズル開口部111は、0.25mmφの円形である。一方、液体Bを吐出するノズル開口部112は図9に示すように0.2mmφと0.18mmφの円形形状が重なった形状をしている。0.2mmφと0.18mmφとの開口部の中心間距離は0.2mmである。液体Aと液体Bとが接触する角度は45度である。尚、この混合器は、液体Aと、液体Bの断面における重心が、2液の接液面に対して同一の法線上にのらないように予め設計されたものである。
【0145】
液体Aはシリンジポンプを用いて流量5ml/minで供給し、液体B2はプランジャーポンプで流量8ml/minで供給する。液体Aと液体Bとは接触後、合体し、らせん流を形成する。これにより、2,9−ジメチルキナクリドンの粒子の生成と分散が瞬時に起こりマゼンタの色を呈する分散体が高濃度で得られる。
【0146】
また、らせん流発生のため飛沫の発生が抑制され、反応生成物の2,9−ジメチルキナクリドンの分散液の回収ロスがなかった。
【0147】
得られる分散液を限外ろ過にて精製と濃縮を行なう。元々、分散体が高濃度で得られていたため生成と濃縮が短時間で済む。DLS−8000(大塚電子社製)を用いて顔料微粒子の平均粒子径を測定すると、得られる分散体の粒径も非常に揃った均一なものになり、平均粒子径は89nmで標準偏差27nmであった。得られるキナクリドン顔料を28日間静置しておいても沈殿は生じない。
【0148】
得られるキナクリドン顔料を色材顔料(C.I.Pigment Red−122)として用い、分散させた分散体をインクジェット用インクとして用いる。
【0149】
BJプリンターBJ F900(キヤノン社製)のインクタンクにインクとして充填し、普通紙に記録すると文字がきれいに印字できる。
【0150】
(実施例2)
本実施例では、図10示す混合装置を用いる。この装置は、液体Aを吐出させるノズル開口部111は、テフロン(登録商標)製で開口径は300μmφである。液体Bを吐出されるノズル開口部112は、ガラス製で開口径は470μmφである。液体Aと液体Bとが接触する角度は40度である。液体Aを、以下のように調製する。
【0151】
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部にジメチルスルホキシド100部を加え懸濁させる。
【0152】
次いで、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウムを40部加え、これらが溶解するまで25%水酸化カリウム水溶液を加えて流体Aを調製する。もう一方のノズル開口部112から吐出させる液体としてはイオン交換水を用いる。
【0153】
流体供給手段としてシリンジポンプを用いて流体A1を流量7ml/minで、流体B2は、流量10ml/minでシリンジポンプから供給する。
【0154】
ノズルより吐出された2種類の液体が、それぞれの進行方向の延長線上で交わり、液体Bの断面の中心(重心)と液体Aの断面の中心(重心)が、接液面に対する同一の法線上からずれるように、ノズルの位置合わせを行なう。ここで、位置合わせは、図3乃至図5を用いて説明したのと同様の手法で行なう。
【0155】
図10に示すように2種類の液体は接触後、らせん流181を形成する。2種類の液体は接触後、再沈殿反応と分散が瞬時に起こりキナクリドン顔料の分散体が得られる。
【0156】
こうして得られた分散体を実施例1と同様の手法で測定したところ、粒子の粒径は平均粒径が30nmであり、標準偏差12nmの粒度分布であった。
【0157】
(比較例1)
本比較例では、液体Aと液体Bとが接触後、らせん流を形成しないノズル配置とした以外、上述の実施例2と同様の条件で、分散体の製造を行った。
【0158】
具体的には、ノズルより吐出された2種類の流体はそれぞれの進行方向の延長線上で液体の中心同士で接触するようにノズルの位置合わせを行ない、2液を接触、反応させた。
【0159】
2種類の液体は、接触後、図11に示すように、らせん流を形成せずに合体して流れた。
【0160】
こうして得られたキナクリドン顔料の分散体を、上述の実施例1と同様に測定したところ、分散体粒子の平均粒径は、30nmであり、標準偏差は20nmであった。
【0161】
(比較例2)
本比較例は、液体Aと液体Bとが接触後、らせん流を形成しないまま回収手段に回収される例である。具体的は、液体混合装置は、液体Aを吐出させるノズル開口部はテフロン(登録商標)製で開口径は400μmφ、液体Bを吐出されるノズル開口部はガラス製で開口径は470μmφのものを用いた。液体Aと液体Bとが接触する角度は100度である。液体Aは、以下のように調製する。
【0162】
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部にジメチルスルホキシド100部を加え懸濁させる。
【0163】
次いで、分散剤としてラウリル硫酸ナトリウムを40部加え、これらが溶解するまで25%水酸化カリウム水溶液を加えた。
【0164】
液体Bとしてはイオン交換水を用いる。
【0165】
液体供給手段としてシリンジポンプを用いて液体Aを流量18ml/minで、流体Bは、流量20ml/minでシリンジポンプから供給する。
【0166】
ノズルより吐出された2種類の流体はそれぞれの進行方向の延長線上で液体の中心同士で接触するようにノズルの位置合わせを行なう。2種類の液体は接触後、図12に示したように扇状に拡がり、周囲に飛沫が飛ぶ。液体の接触後、再沈殿反応と分散が起こりキナクリドン顔料の分散体が得られる。飛沫を漏らさないように広口の回収容器を用いて分散体を回収すると、その分散体は粒径40nmと120nmとの2つのピークをもつ分布であった。
【0167】
(実施例3)
本実施例は、実施例2と同様な混合装置(ノズル)を用いる例である。
【0168】
具体的には、液体Aを吐出させるノズルはテフロン(登録商標)製で、開口径は300μmφ、液体Bを吐出されるノズルはガラス製で、開口径は470μmφである。
【0169】
液体Aと液体Bの進行する方向のなす角度は50度である。
【0170】
液体Aは、3,3’−ジクロロベンジデンテトラアゾ水溶液、液体Bは濃度約6%のカプラー水溶液にポリオキシエチレンラウリルエーテルを溶解させた溶液とした。
【0171】
液体供給手段としてシリンジポンプを用いて液体Aを流量7ml/minで、液体Bは、流量10ml/minでシリンジポンプから供給する。
【0172】
実施例2と同様の手法で、ノズルを配置し、2つの液体を流し、らせん流を形成する。
【0173】
液体Aと液体Bとの接触によってアゾカップリング反応が起こりピグメントイエロー83の粒子が生成する。
【0174】
その際、共存するポリオキシエチレンラウリルエーテルが分散剤として働き、粒径が小さく、大きさの揃ったピグメントイエロー83の分散液が得られる。得られた分散体の粒径は、平均粒径が45nmの非常に揃った均一なものであった。
【0175】
(実施例4)
本実施例では、実施例1と同様の混合装置を用いる例である。
【0176】
液体Aとして、チタンテトライソプロポキシド、液体Bとして、濃度約60%のイソプロピルアルコール水溶液を用いた以外、実施例1と同様に2液の接触、反応を行った。
【0177】
その結果、加水分解重縮合物としてチタニアの分散体が得られ、得られた分散体は平均粒径30nmの粒径が非常に揃った均一なものであった。
【0178】
(実施例5)
本実施例は、脂溶性染料の分散体を製造する例である。
【0179】
液体Aを吐出させるノズル開口部は、テフロン(登録商標)チューブ製で開口径は170μmφ、液体Bを吐出されるノズル開口部もテフロン(登録商標)チューブ製で開口径250μmφの混合装置を用いた。液体Aと液体Bとが接触する角度は35度である。
【0180】
液体Aは、脂溶性染料オイルグリーン502(オリエント化学製)7重量部とポリオキシエチレンセチルエーテル7重量部とをテトラヒドロフラン50重量部に溶解した溶液である。液体Bは、イオン交換水を用いる。
【0181】
液体供給手段としてプランジャーポンプを用いて液体Aと液体Bをそれぞれのノズルに供給する。液体Aは流量6ml/minで、液体Bは流量7ml/minでプランジャーポンプから供給する。
【0182】
ノズルの位置合わせを実施例2と同様に行った後、液体Aと液体Bを流し、らせん流を形成する。脂溶性染料の溶解度が低下し粒子が生成する。共存するポリオキシエチレンセチルエーテルが分散剤として働き脂溶性染料の分散が行われ平均粒径は50nmになる。
【0183】
(実施例6)
本実施例では、図8に示すような3種類の液体を接触、混合させて分散体を得る例を説明する。ここで、3つのノズルは、いずれもテフロン(登録商標)チューブ製で、液体Aを吐出するノズルは、開口径250μmφ、液体Bを吐出するノズルの開口径は250μmφ、流体Cを吐出するノズルの開口径は500μmφとする。互いの流体同士が接触する角度は50度とする。
【0184】
マゼンタ顔料の2,9−ジメチルキナクリドンを用いる。300mlの茄子型フラスコに2,9−ジメチルキナクリドンを10重量部入れ、そこにメタンスルホン酸100重量部を常温で加える。
【0185】
茄子型フラスコを80℃に加熱されたオイルバスに浸しアルゴンガス雰囲気下10分間加熱攪拌を行なう。
【0186】
こうして、2,9−ジメチルキナクリドンが溶解し青紫色したキナクリドン顔料溶解液を調製する。
【0187】
キナクリドン顔料溶解液50mlに非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンセチルエーテルを6.86重量部とアセトニトリル35重量部に溶解した溶液を添加し、液体Aを調製する。
【0188】
液体Bは、ピグメントイエロー151を10重量部とポリオキシエチレンセチルエーテル8重量部に6Nの水酸化ナトリウム水溶液を50重量部加えたピグメントイエロー151の溶解液とする。
【0189】
液体Cとして0.1重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル水溶液を用いる。
【0190】
液体Aをシリンジポンプで流量5ml/minで、液体Bをプランジャーポンプで流量6ml/minでそれぞれのノズルから吐出させる。液体Cをプランジャーポンプにて12.5ml/minで液体Aと液体Bとの接液面に向けて吐出する。
【0191】
その際、液体Cを吐出するノズルの位置を3種類の液体が接触後、らせん流を形成するところまでずらす。3種類の流体は接触後、再沈殿反応と分散が瞬時に起こりオレンジ色の分散体が得られる。得られる分散液を限外ろ過にて精製と濃縮を行なう。
【0192】
DLS−8000(大塚電子社製)を用いて顔料微粒子の平均粒子径を測定すると、95nmであり、粒径が非常に揃った均一な分散体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明の方法の概要を説明するための模式図である。
【図2】らせん流を発生させる方法の一例を説明するための模式図である。
【図3】2つの液体を接触させて、らせん流を形成する混合装置の一例を示す模式図である。
【図4】2つの液体を接触させて、らせん流を形成する混合装置の一例を示す模式図である。
【図5】2つの液体を接触させて、らせん流を形成する混合装置の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施に適用可能な分散体の製造装置システムの一例を示す模式図である。
【図7】2つの液体を接触させて、らせん流を形成する混合装置を集積化した一例を示す模式図である。
【図8】3つの液体を接触させて、らせん流を形成する混合装置の一例を示す模式図である。
【図9】2つの液体を接触させて、らせん流を形成する混合装置の一例を示す模式図である。
【図10】2つの液体を接触後、合体流がらせん流を形成した状態を示す写真である。
【図11】2つの液体を接触後、合体流がらせん流を形成しない状態を示す写真である。
【図12】2つの液体を接触後、合体流がらせん流を形成せずに、扇状に広がる状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0194】
111、112 ノズルの開口部
121、122 ノズル
181 らせん流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の液体を接触させることにより反応生成物を生成する工程を含み、前記反応生成物からなる粒子を分散媒中に分散させた分散体の製造方法であって、
それぞれ吐出させた前記液体の進行方向が自由空間内で交わり、該自由空間内で前記液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ、合体して流れるように前記ノズルより前記液体を吐出させることを特徴とする分散体の製造方法。
【請求項2】
前記吐出させた液体の進行方向になす軸の中心同士が、互いにずれた位置の状態で前記液体同士が接触するように前記ノズルを配置することを特徴とする請求項1に記載の分散体の製造方法。
【請求項3】
前記2種類の液体のうち一方の液体Aと、他方の液体Bと、の接液面に対して垂直で、且つ合体後の液体の進行方向に垂直な方向で切った断面における、液体Aの重心Gaと、液体Bの重心Gbと、が前記接液面に対する同一の法線上からずれた位置となるように前記ノズルを配置することを特徴とする請求項2に記載の分散体の製造方法。
【請求項4】
前記らせん流を形成しつつ、合体して流れる前記液体同士の界面は、渦巻き状となることを特徴とする請求項1に記載の分散体の製造方法。
【請求項5】
前記2種類の液体のうち一方の液体が、顔料が溶解した溶液であり、他方の液体が前記顔料の溶解度を低下させる溶液であることを特徴とする請求項1に記載の分散体の製造方法。
【請求項6】
前記2種類の液体のうち一方の液体が、カプラーを含有する溶液で、他方の液体がジアジニウム塩を含有する溶液であること特徴とする請求項1に記載の分散体の製造方法。
【請求項7】
前記2種類の液体のうち少なくとも一方の液体が、分散剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の分散体の製造方法。
【請求項8】
少なくとも2種類の液体を吐出させる複数のノズルを有し、該複数のノズルから吐出された液体同士を混合する液体混合装置であって、
それぞれのノズルから吐出させる液体の進行方向が自由空間内で交わり、該自由空間内で前記液体同士が接触後、らせん流を形成しつつ合体して流れるように前記複数のノズルが配置されていることを特徴とする液体混合装置。
【請求項9】
前記吐出させた液体の進行方向になす軸の中心同士が、互いにずれた位置の状態で前記液体同士が接触するように前記ノズルが配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−31217(P2010−31217A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278426(P2008−278426)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】