説明

分散体の製造方法

本開示は、分散体の製造方法に関する。マイクロ粒子、ナノ粒子及び流体ポリマー構成成分は、混合されて、分散体を形成する。十分な分量のナノ粒子は、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料処理量の増加をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散体の材料処理量を増加するための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
樹脂中の粒子の均質なブレンドを達成することは、医薬品、食品、プラスチック、及び電池の生産などの様々な産業界においてエンジニア及び作業者が日常直面する問題である。容認できるブレンドが得られる場合でも、このブレンドを下流の設備を通じて維持する際に更なる難題が生じる。加工前及び加工中にブレンド不足であること又は適度なブレンドを維持できないことは、典型的に、追加のまた不必要な費用につながる(例えば、不良品及び低下した歩留り、追加のブレンド時間及びエネルギー、低下した生産性、始動遅延並びに欠陥品又は仕様から外れた製品に関連する費用)。
【0003】
ブレンドは、一般的には、不均衡又は不連続な濃度の材料を有する領域を有するブレンドと対比して、均一な特性を達成するために及び性能要件を満たすために、構成成分の十分な分散を必要とする。少量及び大量の材料は、加工条件及びブレンド又は混合物の構成成分の特性に関連して、組成物中で分散するのが困難であることがある。材料の分散性若しくは流動性及び/又は粉末の固化は、均一なブレンド及び混合物を達成できなくするのに寄与し、バッチ均一性を低下させることがあり、これは他の欠点と合わさって、更なる試験及びサンプリングを必要とする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの条件の厳しくない産業上の用途は、より条件の厳しい用途では許容されない程度の凝集を許容することができる場合がある。しかしながら、粉末の正確な計量又は混合を伴う用途は典型的に、より少ない凝集であることを必要とする。比較的条件の厳しくない用途においても、粉末の流動性を改善する能力は、より穏かな混合条件で又は短縮された混合時間で、均質性の向上を提供することができる。加えて、粉末の流動性が向上することにより、高価な成分(例えば、染料及び顔料)を、特に、このような成分の濃度の使用要件が、それらが混合される粉末中での材料の分散性と相関する場合に、より少量で利用することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、マイクロ粒子、ナノ粒子及び流体ポリマー構成成分を混合することを含む、分散体の製造方法を提供する。ナノ粒子は、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料処理量を増加するために十分な分量で存在する。
【0006】
1つの実施形態では、ナノ粒子は、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、混合時間を削減するために十分な分量で分散体中に存在する。
【0007】
1つの態様では、本開示は、マイクロ粒子、ナノ粒子、及び流体ポリマー構成成分を含む分散体を提供し、ナノ粒子は、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料処理量を増加するために十分な分量で存在する。
【0008】
1つの態様では、分散体の表面改質ナノ粒子は、分散体の材料処理量を増加するために十分な分量で存在する。
【0009】
1つの態様では、ナノ粒子は、マイクロ粒子内に分散され、流体ポリマー構成成分と混合されて分散体を形成する。
【0010】
1つの態様では、コーティング組成物は本開示の分散体を含み、この組成物は硬化性である。
【0011】
粒子(例えば、充填剤及び増量剤)並びに/又は小分子は、コーティング中及び種々の樹脂組成物中に問題を提供することがある。粒子又は小分子は、樹脂(類)及び他の構成成分と混合されるとき、組成物の表面に移動することがあり、又は不十分にしか分散されないことがあり、不均衡又は不連続な濃度の領域を形成し、結果として負の特性及び/又は望ましくない特性を生じる。流体又は液体を粒子と混合する間に、混合粘度、トルク、及び材料処理量の不一致が、不混和性組成物及び/又は粒子の不十分な分散の結果として見られることがある。
【0012】
マイクロ粒子及びナノ粒子は、流体ポリマー構成成分中で混合されて、増加された材料処理量及び削減された混合時間を有する分散体を形成する。十分な分量のナノ粒子を有する分散体を含むコーティングは、ナノ粒子を有さない分散体を含む比較可能なコーティングと対比して、増加された材料処理量及び削減された混合時間を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に定義されている用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0014】
用語「材料処理量」とは、分散体を作るために一定時間(グラム/分で記録される)にわたってマイクロ粒子、ナノ粒子及び流体ポリマー構成成分を混合する混合プロセスにより製造される分散体の分量を指す。本発明のプロセスの産出量は、ナノ粒子を有さないが使用装置及び加工条件(例えば、温度)などの他の全ての点で本質的に同一である同様のプロセスの産出量に対比される。1つの実施例では、分散体は、30.5cm(12インチ)共回転二軸押出成形機(B&Pプロセシングシステムズ(B&P Processing Systems)、型番MP−2019、15:1の17〜90°のニーディングブロック、及び2〜60°のフォワードニーディングブロック(forward kneading block))を供給速度設定点1.5で使用して溶融混合することができる。材料は約105℃〜115℃の温度で押出成形機を出て、押出成形機ダイで回収され、時間の関数として計量される。本明細書での実施例は、材料処理量の比較のために他のプロセスも提供する。
【0015】
用語「混合時間」とは、ナノ粒子、マイクロ粒子、及び流体ポリマー構成成分を混合して分散体を作製するために必要とされる時間を指す。
【0016】
用語「トルク」とは、回転運動を起こすために押出成形機スクリュー又は混合インペラなどの部材に適用される力の尺度を意味する。トルクは、旋回点から力が適用される点までの距離で適用される力を乗じることにより決定される。
【0017】
用語「十分な分量」とは、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料特性を与える、分散体中に存在するナノ粒子の量を指す。例えば、特性は、材料の量又は分量の関数として、増加されてよく又は削減されてよい。例えば、分散体中に混合されたナノ粒子は、材料処理量の増加、及び/又は混合時間の減少をもたらす。
【0018】
用語「比較可能な分散体」とは、本発明の分散体と比較するとナノ粒子の不在を除き同一である、ナノ粒子の分散体を指す。比較可能な分散体は、マイクロ粒子及び流体媒体を含み、マイクロ粒子の濃度は流体ポリマー構成成分に対して一定のままである。
【0019】
用語「流体ポリマー構成成分」とは、例えば、マイクロ粒子及びナノ粒子といった粒子を分散するための液体流体を指す。流体は、上述の粒子を効果的に分散するのに適切な粘度を有する。当業者であれば、分散体用に使用される流体の適切な粘度を決定することができる。粒子が流体中での混合により独立して分散されるか、又はマイクロ粒子及びナノ粒子が流体中での分散に先立って一緒に混合される。
【0020】
用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用されるとき、(個々の文脈が特に他のものを暗示しているのでなければ、)一般的には、粒子、粒子の群、分子の小さな個々の群又は緩く結合した群などの粒子状の分子、並びに具体的な幾何学形状が潜在的に変化するが、ナノ寸法(100ナノメートル未満)で測定することができる有効、若しくは中央直径を有する粒子状の分子の群を指し、より好ましくは50nm未満の有効、若しくは中央直径又は粒径を有する。
【0021】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包括される全ての数を包含する(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を包含する)。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に包含されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0023】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている成分の量、性質の測定値などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に指示がない限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本開示の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。本開示の広範囲を示す数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載のそれらの数値は可能な限り正確に報告する。しかし、いずれの数値もそれらの試験測定値それぞれにおいて見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を本来含む。
【0024】
分散体の製造方法は、マイクロ粒子、ナノ粒子及び流体ポリマー構成成分を混合する工程を含む。分散体の製造において、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料処理量を増加し、混合時間を削減するために、ナノ粒子が、加えられる。典型的には、ナノ粒子は、マイクロ粒子中に存在する凝集及び軟凝集の分量を減らす。
【0025】
マイクロ粒子は一般的に、有機及び/又は無機マイクロ粒子を包含する。いくつかの実施形態では、マイクロ粒子は、有機及び無機材料の両方を含んでよい(例えば、有機材料の外層を備える無機コアを有する粒子)。一般的に、マイクロ粒子は0.5マイクロメートルを超える中央粒径又は直径を有する。マイクロ粒子は、相対的なサイズ又は中央粒径若しくは直径、形状、及び/又は表面内若しくは表面上の機能性により、本開示のナノ粒子から更に識別されてよく、マイクロ粒子は典型的にはナノ粒子よりも大きい。
【0026】
いくつかの無機及び有機マイクロ粒子の例には、ポリマー、ラクトース、薬剤、充填剤、賦形剤(例えば、微結晶セルロース(及び他の天然又は合成ポリマー))、ラクトース一水和物及び他の糖、剥離剤、化粧品成分、エアロゲル、食品、トナー材料、顔料並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
有機マイクロ粒子の更なる例には、ポリ(塩化ビニル)、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、及びポリスチレンなどのポリマーが挙げられる。ポリマーマイクロ粒子は、当該技術分野において既知の技術を使用して作製することができ、及び/又は市販されている。例えば、「エポン(Epon)2004」及び「エポン1001F」は、ヘキシオン・スペシャリティ・ケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals)(オハイオ州コロンバス(Columbus))から入手可能である。
【0028】
無機粒子の例には、研磨材、金属、セラミックス(ビーズ、バブル、微小球及びエアロゲルなど)、充填剤(例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、カスミ石(商標名「マイネックス(MINEX)」(ユニミン社(Unimin Corporation)(コネチカット州ニューケーナン(New Canaan))で入手可能)、長石及びウォラストナイト)、賦形剤、剥離剤、化粧品成分、ケイ酸塩(例えば、タルク、粘土、及び絹雲母)、アルミネート並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
例示のセラミックマイクロ粒子は、当該技術分野において既知の技術を使用して作製でき、及び/又は市販されている。セラミックバブル及びセラミック微小球は、例えば、米国特許第4,767,726号(マーシャル(Marshall)及び同第5,883,029号(キャッスル(Castle))に記載される。市販されているガラスバブルの例には、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))から取引表記「3Mスコッチライト・ガラスバブル(3M SCOTCHLITE GLASS BUBBLES)」として販売されるもの(例えば、K1等級、K15等級、S15等級、S22等級、K20等級、K25等級、S32等級、K37等級、S38等級、K46等級、S60/10000等級、S60HS等級、A16/500等級、A20/1000等級、A20/1000等級、A20/1000等級、A20/1000等級、H50/10000EPX等級、及びH50/10000等級(酸洗浄したもの))、ポター・インダストリーズ(Potter Industries)(ペンシルバニア州バレイ・フォージ(Valley Forge))から取引表記「スフェリセル(SPHERICEL)」(例えば、110P8等級及び60P18等級)、「ラクシル(LUXSIL)」及び「Q−セル(Q-CEL)」(例えば、30等級、6014等級、6019等級、6028等級、6036等級、6042等級、6048等級、5019等級、5023等級、及び5028等級)として販売されるガラスバブル、グレフコ・ミネラルズ(Grefco Minerals)(ペンシルバニア州バーラ・シンウィド(Bala Cynwyd))から取引表記「ダイカパール(DICAPERL)」として販売される中空ガラス微小球(例えば、HP−820等級、HP−720等級、HP−520等級、HP−220等級、HP−120等級、HP−900等級、HP−920等級、CS−10−400等級、CS−10−200等級、CS−10−125等級、CSM−10−300等級、及びCSM−10−150等級)、並びにシルブリコ社(Silbrico Corp.)(イリノイ州ホジキンス(Hodgkins))から取引表記「シル−セル(SIL-CELL)」として販売される中空のガラス粒子(例えば、SIL 35/34等級、SIL−32等級、SIL−42等級、及びSIL−43等級)が挙げられる。市販のセラミック微小球には、スフェアワン社(SphereOne, Inc.)から取引表記「エクステンドスフェアズ(EXTENDOSPHERES)」として販売されるセラミック中空微小球(例えば、SG等級、CG等級、TG等級、SF−10等級、SF−12等級、SF−14等級、SLG等級、SL−90等級、SL−150等級、及びXOL−200等級)、及び3M社(3M Company)から取引表記「3Mセラミック微小球(3M Ceramic Microspheres)」として販売されるセラミック微小球(例えば、G−200等級、G−400等級、G−600等級、G−800等級、G−850等級、W−210等級、W−410等級、及びW−610等級)が挙げられる。
【0030】
一般的に使用される充填剤には、ヒュームドシリカ又は沈殿シリカなどの、凝結された形状のシリカが挙げられる。このような凝結されたシリカは、互いに強く凝結されて不規則な網状組織になった小さな直径の粒子からなる。これらの凝結体は、分解されるのに高剪断を必要とし、高剪断力にさらされたときでさえもこれらの凝結体は典型的には個々の粒子に分解されない。同様に、表面処理されたシリカは、高剪断力に曝露された後に、新たな非処理粒子表面を生じ、流体ポリマー構成成分中への粒子溶解度特性/分散性に影響する可能性がある。
【0031】
1つの実施形態では、マイクロ粒子は、ケイ酸塩、セラミックビーズ、セラミックバブル、又はセラミック微小球のうちの少なくとも1つである。
【0032】
一般的に、マイクロ粒子は、0.5マイクロメートルを超える中央粒径を有し、更に望ましくは5マイクロメートルを超える。場合によっては、マイクロ粒子は、25マイクロメートルを超える中央粒径を有してよく、いくつかの中央粒径は100マイクロメートルを超えるが、表面改質ナノ粒子よりも大きい。1つの実施形態では、マイクロ粒子は、中央粒径に基づいて、0.5マイクロメートル〜200マイクロメートルの範囲、好ましくは1マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲、より好ましくは5マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有してよいが、上記の範囲内のマイクロ粒子に限定されない。一部のマイクロ粒子はマイクロ粒子サイズの分布を有してよく、大部分のマイクロ粒子は上記の範囲内に入ってよい。一部のマイクロ粒子は、マイクロ粒子分布の外側の中央粒径を有してよい。
【0033】
いくつかの実施形態ではマイクロ粒子は同一である(例えば、サイズ、形状、組成、ミクロ構造、表面特性などの点で)一方で、他の実施形態ではこれらは異なる。いくつかの実施形態では、マイクロ粒子はモード(例えば、2モード又は3モード)分布を有してよい。別の態様では、1種以上のマイクロ粒子が使用されてよい。有機及び/又は無機マイクロ粒子の組み合わせが使用されてよい。マイクロ粒子は、単独で、又は分散体中にナノ粒子及び流体ポリマー構成成分を有する有機及び無機マイクロ粒子の混合物並びにそれらの組み合わせを包含する1種以上の他のマイクロ粒子と組み合わせて使用してよいことが理解されるであろう。
【0034】
本開示に記載されるナノ粒子は、非表面改質ナノ粒子、表面改質ナノ粒子又はそれぞれの混合物及び組み合わせであってよい。表面改質ナノ粒子は物理的又は化学的に改質されて、ナノ粒子のバルクの組成物と異なる。ナノ粒子の表面基は、粒子の表面上に単一層、好ましくは連続単一層を形成するのに十分な量で好ましくは存在する。表面基は、続けてマイクロ粒子及び流体ポリマー構成成分と混合されることができて最小限の凝結又は凝集しか生じないナノ粒子を提供するために十分な分量で、ナノ粒子の表面上に存在する。
【0035】
ナノ粒子は、材料処理量を増加するために及び分散体の混合時間を減らすために十分な分量で分散体中に存在する。
【0036】
好適な無機ナノ粒子には、リン酸カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、並びにジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化ニッケル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な無機複合ナノ粒子には、アルミナ/シリカ、酸化鉄/チタニア、チタニア/酸化亜鉛、ジルコニア/シリカ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金、銀、又は他の貴金属などの金属も、固体粒子として、又は有機若しくは無機ナノ粒子上のコーティングとして利用することができる。
【0037】
1つの実施形態では、ナノ粒子は少なくともシリカ、アルミナ、又はチタニアのうちの1つである。
【0038】
表面改質ナノ粒子又はそれらの前駆体は、コロイド状分散体の形状であってよい。これらの分散体の一部は、非改質シリカ出発材料、例えば、「ナルコ(NALCO)1040」、「ナルコ1050」、「ナルコ1060」、「ナルコ2326」、「ナルコ2327」、及び「ナルコ2329」コロイダルシリカという商品表記で、ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州ナパーヴィル(Naperville))から入手可能なナノサイズのコロイダルシリカとして市販されている。金属酸化物コロイド状分散体には、コロイド状酸化ジルコニウム(好適な例が、例えば、米国特許第5,037,579号(マチェット(Matchett))に記載されている)、及びコロイド状酸化チタン(好適な例が、例えば、米国特許第6,329,058号及び同第6,432,526号(アーニー(Arney)ら)に記載されている)が挙げられる。このようなナノ粒子は、下記のような表面改質に好適な基材である。
【0039】
好適な有機ナノ粒子には、有機ポリマーナノスフィア、トレハロース(グルコースの二糖)、ラクトース、グルコース又はスクロースなどの不溶性糖、及び不溶性アミノ酸が挙げられる。別の実施形態では、別の分類の有機ポリマーナノスフィアには、バングス・ラボラトリーズ社(Bangs Laboratories, Inc.)(インディアナ州フィッシャーズ(Fishers))から粉末又は分散体として入手可能なポリスチレンを含むナノ粒子が挙げられる。このような有機ポリマーナノ粒子は、一般に、20ナノメートルから60ナノメートル以下までの範囲の中央粒径を有する。
【0040】
別の分類の有機ナノ粒子には、バックミンスターフラーレン(フラーレン)、デンドリマー、表面が化学的に改質された4、6、又は8本の手を有するポリエチレンオキシド(アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))、又はシェアウォーター社(Shearwater Corporation)(アラバマ州ハンツヴィル(Huntsville))から入手可能)などの分枝状及び多分枝状の「星形」ポリマーが挙げられる。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C82、及びC84が挙げられる。デンドリマーの具体例には、同様にアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能な2次〜10次(G2〜G10)までのポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが挙げられる。
【0041】
選択された表面改質ナノ粒子は、単独で、又は有機及び無機ナノ粒子の混合物並びに組み合わせを包含する1種以上の他のナノ粒子と組み合わせて使用されてよいことが理解されるであろう。このような組み合わせは、均一であっても、又は別個の相であってもよく、これは分散可能であるか、又は層状若しくはコア−シェル型構造のように局部的に特異的であることが可能である。選択されたナノ粒子は、無機又は有機に関わらず、及び採用される形状に関わらず、一般的に100ナノメートル未満の中央粒子直径を有する。いくつかの実施形態では、例えば50、40、30、20、15、10又は5ナノメートル以下の、いくつかの実施形態では、2ナノメートル〜20ナノメートルの、更に他の実施形態では、3ナノメートル〜10ナノメートルの、より小さな中央有効粒子直径を有するナノ粒子が利用されてよい。選択されたナノ粒子又はナノ粒子の組み合わせ自体が凝結される場合、凝結されたナノ粒子の最大の好ましい断面寸法は、これらの規定されたいずれかの範囲内である。
【0042】
多くの場合、利用されるナノ粒子は、実質的に球形状であることが望ましいことがある。しかしながら、他の用途では、より細長い形状が望ましい。10以下の縦横比が好ましいと考えられ、一般には3以下の縦横比がより好ましい。
【0043】
分散体のマイクロ粒子及び流体ポリマー構成成分と混合されるとき、所望の特性を妨げる可能性がある程度の粒子会合、凝集、又は凝結をナノ粒子が本質的に受けないように、表面改質又は非改質ナノ粒子が選択されてよい。本明細書で使用されるとき、粒子「会合」は、より弱い部類の化学結合力のいずれかによる可逆的な化学結合として定義される。粒子会合の例には、水素結合、静電引力、ロンドン力、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。本明細書で使用されるとき、用語「凝集」は、分子又はコロイド粒子の組み合わせが塊になることと定義される。凝集は電荷の中和により生じることがあり、典型的には可逆性である。本明細書で使用されるとき、用語「凝結」は、大きな分子又はコロイド状粒子が結合して塊又は集塊になり、溶解状態から沈殿又は分離する傾向として定義される。凝結したナノ粒子は互いに強く会合し、分解されるためには高剪断を必要とする。凝集及び会合粒子は一般に容易に分離することができる。
【0044】
1つの実施形態では、表面改質ナノ粒子は、改質表面を有するナノ粒子を含んでよい。ナノ粒子は無機又は有機であってよく、本明細書でより詳細に記載されるように、流体ポリマー構成成分中で混合されるマイクロ粒子と相溶性を有し、目的とされる用途に好適である。一般的に、ナノ粒子の選択は、分散体のための具体的な性能要件と、目的用途のためのいずれかのより一般的な要件とに少なくとも部分的に支配される。例えば、固体又は液体分散体のための性能要件は、ナノ粒子が、特定の安定性要件(処理溶媒又は混合溶媒中での不溶性)に加えて、特定の寸法特徴(サイズと形状)、及び表面改質材料との相溶性を有することを必要とすることがある。更なる要件は、分散体の目的とされる使用又は用途によって規定されてよい。このような要件は、高温などのより厳しい環境下での生体適合性又は安定性を包含してよい。
【0045】
選択されたナノ粒子の表面は、いくつかの方法で化学的又は物理的に改質される。ナノ粒子表面へのこのような改質には、例えば、共有化学結合、水素結合、静電引力、ロンドン力を挙げてよく、並びに親水性又は疎水性の相互作用が少なくともナノ粒子がこれらの目的とされる有用性を達成するために必要とされる時間中維持されるのであれば、その親水性又は疎水性の相互作用も挙げてよい。ナノ粒子の表面は、1つ以上の表面改質基で改質されてよい。表面改質基は、無数の表面改質剤から誘導されてよい。概略的に、表面改質剤は、次の一般式で表すことができる:
A−B (I)
式I中のA基は、ナノ粒子の表面と結合することができる基又は部分である。ナノ粒子が溶媒中で処理される状況下で、B基はナノ粒子を処理するために使用されるいかなる溶媒についても相溶性を有する基である。ナノ粒子が溶媒中で処理されない状況下では、B基は、ナノ粒子の不可逆的な凝集を阻止することができる基又は部分である。A及びB構成成分は、結合基が、所望の表面適合性をも付与できる場合には、同一であることが可能である。この相溶性を有する基はマイクロ粒子と反応性であってよいが、一般的には非反応性である。結合組成物は、1つを超える構成成分から構成されても、又は1つを超える工程で作製されてよく、例えば、A組成物は、ナノ粒子の表面と反応するA’部分から構成され、その後、Bと反応し得るA”部分が後に続いてよい。付加順序は重要ではなく、すなわち、A’A”B構成成分の反応は、ナノ粒子との結合前に全体として又は部分的に行うことができる。コーティングにおけるナノ粒子の更なる説明は、M.リンゼンビューラー(Linsenbuhler, M.)ら(「パウダー・テクノロジー(Powder Technology)」158巻、2003年、3〜20頁)に見出すことができる。
【0046】
ナノ粒子表面を改質するための表面改質剤の多くの好適な部類は、当業者には既知であり、シラン、有機酸、有機塩基、及びアルコール、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
別の実施形態では、表面改質剤にはシランが挙げられる。シランの例には、オルガノシラン、例えば、アルキルクロロシラン、アルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリアルコキシアリールシラン、イソオクチルトリメトキシ−シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、シラン官能性(メタ)アクリレート(例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシラン、及び3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン)、ポリジアルキルシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、アリールシラン(例えば、置換及び非置換アリールシラン)、アルキルシラン(例えば、置換及び非置換アルキルシラン(例えば、メトキシ及びヒドロキシ置換アルキルシラン))、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
1つの実施形態では、ナノ粒子のための表面改質剤は非置換アルキルシランであってよい。
【0049】
1つの実施形態では、ナノ粒子のための表面改質剤はイソオクチルトリメトキシシランであり、この場合、ナノ粒子は化学的な改質の後ではイソオクチル官能基化シリカナノ粒子となる。「イソオクチル官能基化」とは、米国特許第6,586,483号(コルブ(Kolb)ら)に記載されるようなイソオクチルトリメトキシシランでのシリカナノ粒子の化学的な改質を指す。
【0050】
例えば、シリカナノ粒子は、例えば、米国特許第4,491,508号(オルソン(Olson)ら)、同第4,455,205号(オルソン(Olson)ら)、同第4,478,876号(チャン(Chung))、同第4,486,504号(チャン(Chung))、及び第5,258,225号(カッサンベリス(Katsamberis))に記載されるようなシラン官能性(メタ)アクリレートで改質されてよい。表面改質されたシリカナノ粒子には、シラン表面改質剤(例えば、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、並びにこれらの組み合わせ)で表面改質されたシリカナノ粒子が挙げられる。シリカナノ粒子は多数の表面改質剤(例えば、アルコール、オルガノシラン(例えば、アルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、及びこれらの組み合わせ)、及びオルガノチタネート及びこれらの混合物)で処理することが可能である。
【0051】
ナノ粒子表面は、炭素のオキシ酸(例えば、カルボン酸)、硫黄のオキシ酸、及びリンのオキシ酸、酸誘導化ポリ(エチレン)グリコール(PEG)、並びにこれらのうちいずれかの組み合わせが挙げられる有機酸表面改質剤で改質されてよい。好適なリン含有酸には、ホスホン酸(例えば、オクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、及びオクタデシルホスホン酸)、モノポリエチレングリコールホスホネート、及びホスフェート(例えば、ラウリルホスフェート又はステアリルホスフェート)が挙げられる。好適な硫黄含有酸には、ドデシルスルフェート及びラウリルスルホネートなどのスルフェート及びスルホン酸が挙げられる。任意のこのような酸は、酸又は塩の形状のいずれかで使用され得る。
【0052】
非シラン表面改質剤には、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)スクシネート、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクシネート、及びこのような剤のうち1つ以上の組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、表面改質剤には、CHO(CHCHO)CHCOOH、化学構造CHOCHCHOCHCOOHを有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、酸若しくは塩のいずれかの形態のモノ(ポリエチレングリコール)スクシネート、オクタン酸、ドデカン酸、ステリン酸、アクリル酸及びオレイン酸、又はこれらの酸性誘導体などのカルボン酸官能性が組み込まれる。更なる実施形態では、表面改質された酸化鉄ナノ粒子には、内因性脂肪酸(例えば、ステアリン酸)又は内因性化合物を使用する脂肪酸誘導体(例えば、乳酸ステロイル、又はサルコシン若しくはタウリン誘導体)で改質されたものが挙げられる。更に、表面改質ジルコニアナノ粒子には、粒子の表面上に吸着されたオレイン酸とアクリル酸との組み合わせが挙げられる。
【0053】
ナノ粒子のための有機塩基表面改質剤にはまた、アルキルアミン(例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、及びモノポリエチレングリコールアミン)を挙げてよい。
【0054】
表面改質用アルコール及びチオールがまた採用されてよく、これらには、脂肪族アルコール(例えば、オクタデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール及びフルフリルアルコール)、脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール)、及び芳香族アルコール(例えば、フェノール及びベンジルアルコール)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。チオール系化合物は、コアを金表面で改質する場合に特に好適である。
【0055】
表面改質ナノ粒子は、これらから形成された分散体が、分散体又は用途の所望の特性を妨げる程度の粒子の凝集又は凝結を受けないように選択される。表面改質ナノ粒子は一般的に、マイクロ粒子及びマイクロ粒子とナノ粒子と混合するための流体ポリマー構成成分の特性に依存して、生じる分散体が実質的に自由流動(すなわち、材料が、個々の粒子としての、安定的で、規則的及び均一/持続的な流れを維持する能力)特性を呈するように、疎水性又は親水性のどちらかであるように選択される。
【0056】
用いられるナノ粒子の表面改質を生じさせる好適な表面基は、それ故に、用いられる流体ポリマー構成成分及びバルク材料の性質に、並びに得られる分散体、物品、又は用途の所望の特性に基づいて選択することができる。処理溶媒(流体ポリマー構成成分)が疎水性であるときには、例えば、当業者は、疎水性溶媒と相溶性を有する表面改質粒子を達成する様々な疎水性表面基から選択することができ、処理溶媒が親水性であるときには、当業者は様々な親水性表面基から選択することができ、溶媒がヒドロフルオロカーボン又はフルオロカーボンであるときには、当業者は、様々な相溶性表面基の中から選択することができる、といったようになる。マイクロ粒子及び分散体の他の構成成分の性質が、所望の最終特性に加えて、ナノ粒子表面組成の選択に影響を与える可能性もある。ナノ粒子は、組み合わせて所望の一連の特徴を有する表面改質ナノ粒子を提供する、2つ以上の異なる表面基(例えば、親水性基と疎水性基の組み合わせ)を包含することができる。表面基は、一般に、統計的に平均化された、無秩序に表面改質された粒子を提供するように選択されてよい。
【0057】
ナノ粒子の表面上の表面基は、分散体の流体ポリマー構成成分中のマイクロ粒子との相溶性及び十分な混合に必要な特性を表面改質ナノ粒子に提供するために十分な分量で存在する。更なる相溶性条件には、コーティング、インク、フィルム、及び薬剤における用途についての他の構成成分の使用も包含されてよい。
【0058】
様々な方法が、ナノ粒子の表面を改質するのに利用できる。表面改質剤は、例えば、ナノ粒子に(例えば、粉末又はコロイド状分散体の形状で)加えてよく、更に表面改質剤をナノ粒子と反応させてよい。表面改質基を伴うナノ粒子をもたらす複数の合成順序が可能である。表面改質プロセスは、例えば、米国特許第2,081,185号(アイラー(Iler))、同第4,522,958号(ダス(Das))、及び同第6,586,483号(コルブ(Kolb)ら)に記載されている。
【0059】
1つの実施形態では、ナノ粒子(例えば、非改質及び/又は表面改質):マイクロ粒子の重量比は、少なくとも1:100,000である。一般的に、ナノ粒子:マイクロ粒子の重量比は、少なくとも1:100,000から1:20までであり、より好ましくは重量比は1:10,000から1:500までの範囲であり、更に好ましくは重量比は1:5,000から1:1,000までの範囲である。
【0060】
本開示の流体ポリマー構成成分は液体又は溶融加工可能な組成物からなってよい。マイクロ粒子及びナノ粒子は流体ポリマー構成成分中で混合され、流体ポリマー構成成分は固体、液体及びこれらの混合物の形状であってよい。流体ポリマー構成成分は、ポリマー樹脂、オリゴマー樹脂、モノマー及びこれらの組み合わせを包含してよく、所望により、水、有機溶媒、無機溶媒及び/又は可塑剤を包含してよい。ポリマー樹脂、オリゴマー樹脂、及びモノマーは重合可能であってよい。
【0061】
流体構成成分として有用なポリマー樹脂の例には、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−アクリロニトリル、セルロース、塩化ポリエーテル、エチレンビニルアセテート、フルオロカーボン(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン及びポリフッ化ビニリデン)、ポリアミド(例えば、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバクアミド、ポリウンデカノアミド、ポリラウロアミド及びポリアクリルアミド)、ポリイミド(例えば、ポリエーテルイミド、及びポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリ−4−メチルペンテン)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリフェニレンオキシド)、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ビニルポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及びポリ塩化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
エラストマーなどの有用な他の熱可塑性樹脂には、例えば、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、フルオロシリコーンなどのフルオロエラストマー、並びに例えば、塩化ポリエチレンなどのクロロエラストマー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
流体構成成分として有用なポリマー樹脂の例には、天然及び合成ゴム樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、これらのハイブリッド及びコポリマーなどの、熱硬化性樹脂が挙げられる。いくつかの有用な樹脂には、アクリル化ウレタン及びアクリル化ポリエステル、アミノ樹脂(例えば、アミノプラスト樹脂)(例えば、アルキル化尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂など)、アクリレート樹脂(例えば、アクリレート及びメタクリレート、ビニルアクリレート、アクリル化エポキシ、アクリル化ウレタン、アクリル化ポリエステル、アクリル化アクリル、アルキル化ポリエーテル、ビニルエーテル、アクリル化油及びアクリル化シリコーンなど)、アルキド樹脂(ウレタンアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、反応性ウレタン樹脂など)、フェノール樹脂(例えば、レゾール樹脂、ノボラック樹脂及びフェノール−ホルムアルデヒド樹脂など)、フェノール/ラテックス樹脂、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールエポキシ樹脂、脂肪族及び脂環式エポキシ樹脂、エポキシ/ウレタン樹脂、エポキシ/アクリレート樹脂並びにエポキシ/シリコーン樹脂)、イソシアネート樹脂、イソシアヌレート樹脂、ポリシロキサン樹脂(アルキルアルコキシシラン樹脂など)、反応性ビニル樹脂、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
1つの実施形態では、流体ポリマー構成成分は、少なくともポリアルキレンオキシド、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、及びポリオレフィンのうちの1つである。
【0065】
分散体を作製するための流体ポリマー構成成分中でのナノ粒子及びマイクロ粒子の混合は、押出成形、溶融混合、溶液混合及びこれらの組み合わせを介して達成されてよい。この分散体は、表面改質ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、増加した材料処理量を有する。
【0066】
ポリマー分散体を溶融加工するための様々な装置及び技術が当該技術分野において既知である。このような装置及び技術は、例えば、米国特許第3,565,985号(シュレンク(Schrenk)ら)、同第5,427,842号(ブランド(Bland)ら)、同第5,589,122号及び同第5,599,602号(レオナード(Leonard))、並びに同第5,660,922号(ヘニッジ(Henidge)ら)に開示されている。本発明の組成物を溶融加工するための溶融加工装置の例には、押出成形機(一軸又は二軸)、バッチオフ押出成形機、バンバリー(Banbury)ミキサー、ブラベンダー(Brabender)押出成形機が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
1つの態様では、分散体は押出成形機で混合される。組成物の加熱は75℃〜300℃の範囲の少なくとも1つの温度で行なわれる。加熱は、流体ポリマー構成成分中でのマイクロ粒子及びナノ粒子の混合中に1つ以上の温度を包含してよい(例えば、複数領域押出成形機)。分散体の構成成分は、混合されて、押出成形機を通って搬送されて、増加した材料処理量を有する分散体を生じてよい。加工温度は分散体を形成して混合時間の減少をもたらすのに十分である。
【0068】
1つの実施形態では、分散体の材料処理量は、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体に対比して、混合後、時間の関数として組成物の少なくとも5重量%増加される。好ましくは、材料処理量は少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は更には少なくとも50%増加される。
【0069】
1つの実施形態では、少なくとも同一条件(例えば、スクリュー速度、押出成形温度、供給速度、スクリュー構成)下であるならば、少なくとも1つのナノ粒子を有さない比較可能な分散体に対比して、分散体の材料処理量は、十分な分量のナノ粒子の存在により増加されてよい。マイクロ粒子及びナノ粒子及び流体ポリマー構成成分の効果的な混合は、分散体の混合時間を減らすことができる。
【0070】
分散体中に存在するナノ粒子の濃度は、分散体の総重量に基づいて少なくとも0.00075重量パーセントである。ナノ粒子は、一般的には少なくとも0.0075から15重量パーセントまでの範囲の濃度で、より好ましくは0.075〜7.5重量パーセントの範囲の濃度で、最も好ましくは0.75〜5重量パーセントの範囲の濃度で、分散体中に存在する。
【0071】
1つの態様では、分散体は、コーティング及び/又はコーティング組成物での使用(例えば、室内及び室外用途の塗料)のために選択されてよい。塗料の例は、米国特許第7,041,727号(キュビセック(Kubicek)ら)及び同第6,881,782号(クレイター(Crater))に記載されている。分散体を含む塗料及び/コーティング組成物の例は、「実施例」の実施例1〜4に記載される。
【0072】
追加的な用途には、分散体を含む組成物が硬化性構成成分を更に含む、インク及び塗料が挙げられる。硬化性構成成分の例には、ジシアンジアミド、エポキシド、アクリレート、アルコール、有機及び無機過酸化物、イソシアネート、酸、オレフィン、ウレタン、メタクリレート、エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。硬化性構成成分は、流体ポリマー構成成分であってよく、又はコーティング若しくはインク組成物の追加的な構成成分であってよい。
【0073】
インクは典型的には、米国特許第7,074,842号(チャン(Chung)ら)に記載されるような、顔料及び/若しくは添加物を有する溶媒の中のポリマーあるいは結合剤のエマルションを含む。流体ポリマー構成成分がポリマー樹脂、オリゴマー樹脂、及び/又は重合可能なモノマーである分散体は、インク及び/又はインク組成物の中で使用されてよい。
【0074】
本発明は、例示であって本発明の範囲を制限することを意図しない以下の実施例により更に明確化される。
【実施例】
【0075】
本発明は、本発明の範囲内の多数の修正例及び変更例が当業者にとって明らかであるために、例証のみを意図する以下の実施例に更に詳しく記載される。別に言及されない限り、次の実施例で報告される全ての部、百分率、及び比は、重量基準であり、実施例で使用される全ての試薬は、下記の化学薬品供給元から得られたか又は入手でき、あるいは従来の技術により合成されてよい。
【0076】
特に記載のない限り、実施例に記載される部、百分率、比率などは全て、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に指示がない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))より入手された。エポキシ樹脂(当量重量=4)、「エポン(Epon)2004」は、ヘキシオン・スペシャルティ社(Hexion Specialty Company)(テキサス州ヒューストン(Houston))により供給された。ジシアンジアミド硬化剤、「ジシアンジアミドAB04」は、デグサ社(Degussa Corporation)(ニュージャージー州パーシッパニー(Parsippany))から入手できた。無機充填剤(マイクロ粒子)、「バンシル(Vansil)W20」(メタケイ酸カルシウム)は、R.T.ヴァンダービルト・ケミカルズ社(R.T. Vanderbilt Chemicals)(コネチカット州ノーウォーク(Norwalk))から入手できた。顔料、「緑色顔料C.I.74260」は、サン・ケミカル社(Sun Chemical Corporation)(ニュージャージー州パーシッパニー(Parsippany))から供給された。触媒、「エピ−キュア(Epi-Cure)P103」は、ヘキシオン・スペシャルティ社(Hexion Specialty Company)(テキサス州ヒューストン(Houston))により供給された。顔料、SMC 1108(TiO)は、スペシャル・マテリアルズ社(Special Materials Company)(ペンシルバニア州ドイルズタウン(Doylestown))から入手できた。流動性調整剤、レシフロウ(Resiflow)PL 200は、エストロン・ケミカル社(Estron Chemical, Incorporated)(ケンタッキー州カルバートシティ(Calvert City))から入手できた。
【0077】
表面改質ナノ粒子
表面改質ナノ粒子は、米国特許第6,586,483号(コルブ(Kolb)ら)に記載される手順により調製された。ナルコ(NALCO)2326コロイダルシリカ(ナノ粒子)は、ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州ナパーヴィル(Naperville))から入手された。シリカナノ粒子は、ワッカー・シリコーンズ社(Wacker Silicones Corp.)(ミシガン州エイドリアン(Adrian))から入手可能なイソオクチルトリメトキシシランで表面改質され、イソオクチルシラン表面改質シリカナノ粒子として採取された。
【0078】
セラミックバブルとナノ粒子のブレンド(目視検査)
セラミック微小球は、米国特許公開第2006/0122049−A1号(H.マーシャル(Marshall)ら)に記載されるように調製され、1重量%の表面改質ナノ粒子(上記のもの)と混合されて、微小球内でのナノ粒子の向上した分散を示した(試料Qとして参照される)。対照試料は、ナノ粒子を有さないセラミック微小球を含有した。使用された微小球は、凝集体を含有した。対照試料及び試料Qは別個の容器の中で混合されて、元々存在していた凝集微小球の減少に留意された。試料Qでは、可視的な凝集体は観察されず、25%ミキサー速度設定で約1分間の混合後に、自由流動性ブレンドが観察された。50%ミキサー速度設定で約2分間の混合後に、対照試料は元々の凝集体の50%超を保有し、断続的な流動を有した。試料Qは、表面改質ナノ粒子を有さない対照試料と対比して、表面改質ナノ粒子の分散体とのセラミック微小球の向上した流動性及び混合を示した。
【0079】
バンシル(VANSIL)W20(微小球)中に表面改質ナノ粒子を含む分散体の調製
バンシルW20(微小球)と組み合わせられた表面改質ナノ粒子の分散体1重量パーセント(重量%)及び0.1重量%が調製された。
【0080】
ナノ粒子はまずトルエン中にそれぞれ1重量%及び0.1重量%で分散され、次に微小球に加えられた。分散体は、均質化に先立って、追加の300グラムのトルエンで更に希釈された。ナノ粒子及びマイクロ粒子はシルバーサン(Silverson)L4Rホモジナイザー(チェシャム(Chesham)、英国)で30分間にわたって混合された。溶媒は取り除かれ、混合物は150℃で乾燥された。
【0081】
比較例A
比較例Aは、エポン(Epon)2004、ジシアンジアミドAB 04、エピ−キュア(Epi-Cure)P103、SMC 1108、緑色顔料C.I.74260、レシフロウ(Resiflow)PL−200、及びバンシル(Vansil)W20(微小球)などの構成成分から、表1(下記)に指示されるようなグラムで構成された。この組成物は、混合及び押出成形プロセスを使用して作製された。この組成物は、まず高剪断ミキサー(サーモプリズム(Thermo Prism)型番B21R 9054 STR/2041)の中で約4000回転毎分(rpm)で20分間にわたってプレミックスされた。プレミックス後に、試料は、30.5cm(12インチ)共回転二軸押出成形機(B&Pプロセシングシステムズ(B&P Processing Systems)、型番MP−2019、15:1の17〜90°のニーディングブロック及び2〜60°のフォワードニーディングブロック)を供給速度設定点1.5で使用して溶融混合された。押出成形機からの組成物の出口温度、押出成形機スクリュー速度、及び混合後の組成物の材料処理量が、表1(下記)に列記される。この実施例は、ナノ粒子及び微小球の分散体を有さなかった。
【0082】
(実施例1〜4)
表1に列記される実施例1〜4は分散体を含む組成物を記載する。これらの分散体の微小球及びナノ粒子は、樹脂及び他の構成成分とのプレミックスに先立って、上記のように調製された。この項に記載される組成物の構成成分は、まず高剪断ミキサー(サーモプリズム(Thermo Prism)型番B21R 9054 STR/2041)の中で約4000rpm(回転毎分)で20秒間にわたってプレミックスされた。次に、この組成物は、30.5cm(12インチ)共回転二軸押出成形機(B&Pプロセシングシステムズ(B&P Processing Systems)、型番MP−2019、15:1の17〜90°のニーディングブロック及び2〜60°のフォワードニーディングブロック)を供給速度設定点1.5で使用して溶融混合され、材料処理量が記録された。押出成形機からの組成物の出口温度、押出成形機スクリュー速度、及び混合後の組成物の材料処理量が、表1(下記)に列記される。
【0083】
【表1】

【0084】
表1(上記)は本開示の分散体を使用しての結果を示す。実施例1では、分散体(1重量%表面改質ナノ粒子)は、460rpmの押出成形機スクリュー速度で、比較例Aと対比して材料処理量の約40パーセント増を生じた。同様に、実施例3は、0.1重量%表面改質ナノ粒子を有する分散体を含み、類似した加工条件下で、材料処理量の18パーセント増を生じた。実施例2及び4(それぞれ1重量%及び0.1重量%表面改質ナノ粒子)は、同一の供給速度及びより遅いスクリュー速度で、比較例Aと対比して材料処理量の増加を示した。
【0085】
より大きな材料処理量については、表1の組成物を加工するために必要とされるトルクは比較例Aの組成物と対比して一般的に減じられる。実施例1〜4の分散体を含む組成物を加工するためのエネルギー消費における減少が予想される。
【0086】
本発明の様々な修正形態及び変更形態が、当業者には、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく明らかとなろう。また本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散体の製造方法であって、該方法が、
マイクロ粒子、ナノ粒子及び流体ポリマー構成成分を混合して分散体を形成する工程を含み、そこでは、前記ナノ粒子が、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料処理量を増加するために十分な分量で存在する、方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、混合時間を削減するために十分な分量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ粒子が、充填剤、増量剤、セラミックビーズ、セラミックバブル、セラミック微小球、顔料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ粒子が、0.5マイクロメートルを超える中央粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化ニッケル、ジルコニア、バナジア、セリア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記流体ポリマー構成成分が、ポリマー樹脂、オリゴマー樹脂、モノマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記流体ポリマー構成成分が、熱可塑性又は熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、表面改質されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、イソオクチル官能基化シリカナノ粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、前記マイクロ粒子内に分散されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記材料処理量が、少なくとも5パーセント増加されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合時間が、少なくとも5パーセント削減されている、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子の前記マイクロ粒子に対する重量比が、少なくとも1:100,000である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子が、前記分散体の総重量に基づいて、少なくとも0.00075重量パーセントの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
マイクロ粒子、ナノ粒子、及び流体ポリマー構成成分を含む分散体であって、前記ナノ粒子が、ナノ粒子を有さない比較可能な分散体と対比して、材料処理量を増加するために十分な分量で存在する、分散体。
【請求項16】
前記マイクロ粒子が、顔料を含む、請求項15に記載の分散体。
【請求項17】
硬化性構成成分を更に含む、請求項15に記載の分散体を含む組成物。

【公表番号】特表2010−513690(P2010−513690A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543048(P2009−543048)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/086720
【国際公開番号】WO2008/079631
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】