説明

分散制御システムの訓練システム

【課題】DCS改修作業後の回復処理が簡便な分散制御システムの訓練システムを提供する。
【解決手段】複数の制御対象機器を含むプラントを模擬する訓練システム用計算機と、訓練システム用計算機の複数の制御対象機器に対して操作信号を与える複数のコントローラと、通信線を介して複数のコントローラに接続された訓練用開発計算機と訓練用計算機を備え、訓練員は訓練用計算機を用いて訓練システム用計算機との間で訓練を実施するようにされた分散制御システムの訓練システムにおいて、訓練用開発計算機は、訓練初期状態情報ファイルと自動再生成ファイルを備え、訓練状態において、訓練初期状態情報ファイルと自動再生成ファイルには、訓練システム用計算機と複数のコントローラと訓練用計算機の出力を逐次記憶することで選択された訓練コースの途中経過を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラントの制御を行う分散制御システムに係り、特に運転員の訓練を行うための分散制御システムの訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスオートメーションの分野における計測制御システムの多くは分散制御システムDCS(Distributed Control System)を採用している。この分散制御システムDCSを備えたプラントにおいては、制御の自動化が行われているものの、信頼性を保つために運転員によるプラントの操作も必要である。従って、運転員にも高信頼の操作技術が要求される。そのためには、運転員の技術を養成する分散制御システムの訓練システムが必要となる。
【0003】
訓練システムでは、新人教育、プラント異常発生時の対応訓練を行う。この訓練システム内には、必ず訓練初期状態ファイルを作成する作業が発生する。訓練初期状態ファイルとは分散制御システムDCSシステムのメモリイメージである。
【0004】
ところで訓練を中断した場合には、訓練初期状態ファイルから訓練状態を復元し、ある一定状態にある訓練ポイントまでプラントを構築してから訓練を再開する。また訓練内容としては複数のコース、訓練パターンが準備されており、これらにより複数の訓練初期状態ファイルを作成する必要がある。
【0005】
ところで分散制御システムは多くの制御対象機器、計測器および調節器などから構成されているので、長年の使用の中では分散制御システムの変更(DCS改修)を実施する場合がある。このとき、訓練システム側も分散制御システムの変更(DCS改修)を反映したものとする必要がある。
【0006】
DCS改修に対処する分散制御システムの訓練システムとして特許文献1がある。ここでは、調節器などの特性データを変更可能にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−110005号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、DCS改修作業が発生した場合は、DCS改修以前に作成していた訓練初期状態ファイルがDCSソフトウェア及び訓練システムで保存している初期状態ファイルが不一致で使用不可となり最初から訓練初期状態ファイルを作成する必要がある。また訓練パターンが複数存在する場合は繰り返し訓練初期状態ファイルを作成する必要がある。
【0009】
特許文献1の手法は、係る問題点をある程度解決しているが、この対応にはプロセスを熟知しているオペレータ部門及びシステムを熟知している部門も必要となる。また、DCS改修作業が発生する毎に訓練初期状態ファイルを作成する手法では訓練パターン分繰り返し初期状態ファイルを作成する為、時間がかかる。
【0010】
以上のことから本発明においては、DCS改修作業後の回復処理が簡便な分散制御システムの訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のことから本発明においては、複数の制御対象機器を含むプラントを模擬する訓練システム用計算機と、訓練システム用計算機の複数の制御対象機器に対して操作信号を与える複数のコントローラと、通信線を介して複数のコントローラに接続された訓練用開発計算機と訓練用計算機を備え、訓練員は訓練用計算機を用いて訓練システム用計算機との間で訓練を実施するようにされた分散制御システムの訓練システムにおいて、
訓練用開発計算機は、訓練初期状態情報ファイルと自動再生成ファイルを備え、訓練状態において、訓練初期状態情報ファイルと自動再生成ファイルには、訓練システム用計算機と複数のコントローラと訓練用計算機の出力を逐次記憶することで選択された訓練コースの途中経過を記憶する。
【0012】
また、訓練システム用計算機にも訓練初期状態情報ファイルを備え、訓練状態において、訓練初期状態情報ファイルにも訓練システム用計算機と複数のコントローラと訓練用計算機の出力を逐次記憶することで選択された訓練コースの途中経過を記憶する。
【0013】
また、自動再生成ファイルには、複数の制御対象機器の情報がTAG情報として記録されている。
【0014】
また、自動再生成ファイルには、TAG情報のほかにシーケンス情報、端子情報を含む。
【0015】
また、訓練システム用計算機が模擬するプラントにおいて構成の変更を生じた場合に、訓練用開発計算機の自動再生成ファイルの記録内容を用いてプラントにおける構成の変更を反映し、以後の訓練に反映する。
【0016】
また、訓練初期状態情報ファイルはメモリイメージのバイナリファイル形式でデータ記録し、自動再生成ファイルはテキストファイル形式でデータ記録される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、DCS改修作業後の訓練初期状態ファイルを作成作業が複数専門部署で行う必要が無くなり、また自動再生成ファイルを元に訓練ポイントまでプラントを復元することができる為、訓練初期状態ファイル作成作業が軽減され、さらに時間も短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】訓練用開発計算機と訓練システム用計算機のシステム構成を示した図。
【図2】一般的な分散制御システムDCSの構成を示す図。
【図3】図1の分散制御システムDCSに対応する訓練システムの構成を示す図。
【図4】訓練コースの具体事例を示す図。
【図5】訓練初期状態ファイル及び自動再生成ファイルを作成する機能を示す図。
【図6】DCS改修後の訓練再開手法する機能を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る分散制御システムの訓練システムについて、自動再生成ファイルを用いて訓練ポイントまでプラントを構成する方法と、訓練再開する方法について説明する。
【実施例】
【0020】
図2は、一般的な分散制御システムDCSの構成を示している。この図でPは制御対象のプラントとして例えばガス製造プラントであり、プラント内には弁、ポンプ、電動機などの複数の制御対象機器を備えている。CTは、プログラマブルコントローラPLCなどのコントローラであり、プラントの制御対象機器に対して操作信号Sを与える。コントローラCTは、通信線E1を介して複数の計算機PCに接続されており、計算機PCからコントローラCTに対して、プラントの制御対象機器の操作のための各種設定信号などが与えられる。
【0021】
ここで、計算機PCのうち、PC1−PC3は監視制御用に使用され、マウスやキーボードなどの入力機器とモニタ画面を含み、運転員はモニタ画面上に表示されたプラントの状態を監視し、必要に応じてコントローラCTに対してプラント操作のための各種設定信号などを与える。計算機PC4もマウスやキーボードなどの入力機器と、モニタ画面を備えているが、この使用目的は分散制御システムDCSの構成をハード的にあるいはソフト的に変更する場合に対応する為の開発用の計算機である。
【0022】
なお、プラントとして例えばガス製造プラントの場合には、原材料から最終製品であるガスを得るために複数の工程を経由するので、コントローラCTは例えば工程単位に適宜機能を分散して設けられることが多い。
【0023】
係る分散制御システムDCSにおいて、制御対象のプラントが巨大であるほど、制御対象機器が増大する関係にあるので、分散するコントローラCT数が増加(図2の例ではCT1−CT3の3台)し、あるいは計算機PC台数(図2の例ではPC1−PC3の3台)を増やして、複数運転員による運転体制を構築するのが一般的である。
【0024】
ところで、運転監視制御を行う運転員に対しては、巨大プラントの隅々まで熟知し、非常時の対応に齟齬を生じないように、日頃から訓練を行っておく必要があるが、図2の実プラントでの非常時対応訓練は不可能である。
【0025】
このために、図3の訓練システムを備えて、日頃から運転員に対する訓練を行っている。図3の訓練システムは、基本的には図2の分散制御システムDCSと同じ構成とされている。つまり、図3の訓練システムにおいても、訓練用計算機PC1a、PC2a、PC3aとコントローラCT1a−CT3aにより、分散制御システムDCSの構成を採用している。この訓練システムの構成では、プラントPが訓練用計算機PCTに置き換わっており、複数のコントローラCTと訓練システム用計算機PCTの間が通信線E2で接続されている点で相違する。なお、図3の各機器は図2の各機器と表示を区別する意味で記号に「a」を付している。
【0026】
図3の訓練システムにおいて、訓練対象の運転員は、訓練用計算機PC1a、PC2a、PC3aのいずれかに向かい、訓練用開発計算機PC4aと訓練システム用計算機PCTが演出する仮想のプラント状態に対応する。
【0027】
図1は、図3の訓練システムのうち、訓練用開発計算機PC4aと訓練システム用計算機PCTについて、そのシステム構成を示した図である。従ってここには、コントローラCT1a−CT3a、通信線E1aあるいは計算機PC1a−PC3aの表示が割愛されている。これらの計算機PC4aとPCTは、オペレーティングシステムOS、ミドルソフト(ミドルウェア)MW、アプリケーションAPで構成されている。
【0028】
このうち訓練用開発計算機PC4aは、アプリケーションAPの中に、訓練初期状態情報ファイルAPF1D、自動再生成ファイルAPF2及びDCSソフトウェアAPSを備える。また訓練システム用計算機PCTは、アプリケーションAPの中に、訓練用開発計算機PC4aと同じ訓練初期状態情報ファイルAPF1Tを備え、ミドルウェアMWTに訓練機能を含んでいる。
【0029】
これらのアプリケーションAPのうち、DCSソフトウェアAPSはプラントの起動から通常運転を経て停止に至るまでの各運転状態における分散制御システムDCSの運転制御プログラムを格納したものである。
【0030】
訓練初期状態情報ファイルAPF1は、複数の訓練コース(訓練メニュー)を記憶している。ここでは、訓練対象の運転員の習得レベルに応じて複数の訓練コースが準備されており、運転員はどの訓練コースで訓練するかを選択することができる。ここに準備された訓練操作は任意のものとできる。
【0031】
具体的な訓練コースを、例えば図4に示すようにバルブV1,V2,ポンプPuが配管上に直列に配置され、ポンプPuをモータMにより駆動する例で考える。訓練コース1ではバルブV1、バルブV2を順次開いた後にポンプPu起動して運転し、その後モータMを停止させるという一連の正常動作の手続きを経験させるものである。訓練コース2ではバルブV1を閉、バルブV2を開いた状態でポンプPu起動して運転し、その結果モータMが故障したという一連の異常動作の手続きを経験させるものである。
【0032】
また訓練初期状態情報ファイルAPF1は、選択された訓練コースの途中経過を記憶する。その訓練コースでモニタ画面上に表示されたプラント状態などを監視している運転員が、どの制御対象機器に対して操作指示を与え、その結果プロセス量などがどのように変化し、これを受けた運転員がさらに如何なるアクションを起こしたかを逐一記憶する。なお訓練初期状態情報ファイルAPF1は、訓練実施中に訓練用開発計算機PC4aと、訓練システム用計算機PCT内で、それぞれ選択された訓練コースの途中経過を作成、記憶する。これにより、同じ情報が2組の訓練初期状態情報ファイルAPF1に記憶される。
【0033】
自動再生成ファイルAPF2は、本発明により設けられたものである。後でその詳細を説明するが、極簡単には訓練初期状態ファイルAPF1の作成と同時に、訓練初期状態ファイルAPF1とセットで自動再生成ファイルAPF2を作成する。なお自動再生成ファイルAPF2には、TAG情報I1、シーケンス情報I2、端子情報I3が保存される。これらの詳細について後述する。
【0034】
図1に一部詳細構成を示す図3の訓練システムは、2種類の機能を果たす。第1の機能は、通常訓練のための訓練初期状態ファイルAPF1及び自動再生成ファイルAPF2を作成する機能である。第2の機能は分散制御システムDCS改修(システム構成変更など)後に自動再生成ファイルAPF2を用いて訓練を再開する機能である。第1の機能について図5を用い、第2の機能について図6を用いて説明する。
【0035】
図5に示す通常訓練プログラムS10では、訓練初期状態ファイルAPF1及び自動再生成ファイルAPF2を作成する。ここでの最初の処理ステップS11では、図3の訓練用計算機(例えばPC1a)に向かって運転員が訓練開始を要求したことで開始される。訓練用開発計算機PC4aはこれを確認して訓練開始要求受付とする。
【0036】
次の処理ステップS12では、訓練用開発計算機PC4aにおいて訓練開始の準備を行う。準備内容には、運転員が指示した訓練コースの選択に応じて、当該の訓練初期状態情報ファイルAPF1を準備し、自動再生成ファイルAPF2の作成開始準備を行うなどの処理が含まれる。
【0037】
訓練用開発計算機PC4a側の準備ができると、次の処理ステップS13では、通信線E1,E2を介して訓練システム用計算機PCTとの間の通信を確立し、データ送受信を開始する。これにより、訓練システム用計算機PCTでも訓練開始の準備を行い、訓練システム用計算機PCT内の当該の訓練初期状態情報ファイルAPF1を準備する。
【0038】
また訓練システム用計算機PCTは、次の準備段階として処理ステップS14において訓練ポイントまでプラントを構成する。このために訓練システム用計算機PCTは、コントローラCTに対して通信線E2を介して訓練開始、訓練コース名を連絡する。コントローラCTは、訓練開始、訓練コース名を指示されると、訓練用開発計算機PC4aにアクセスし、訓練初期状態情報ファイルAPF1Dに保存されている情報を読み込んでコントローラCT内のメモリにセットする。
【0039】
これら一連の準備段階処理により、訓練用開発計算機PC4aと、訓練システム用計算機PCTと、コントローラCTの三者を共通の訓練開始状態とすることができる。つまり、訓練ポイントまでプラントを構成することができる。
【0040】
これは例えば、図4の訓練コース1を選択したときに、最初の処理であるバルブV1開操作の前段階にいることの認識を三者が共有したことを意味している。あるいは、前回の訓練が訓練コース1のポンプPuの運転まで進んでいたとすると、今回の訓練では次のモータM停止から開始されることを三社共有している状態であることを意味する。
【0041】
この状態から訓練が開始される。ここでは運転員が訓練用計算機PC1a内のモニタ画面に向かって実行した操作指示がコントローラCTを経由して訓練システム用計算機PCTに伝達される。さらには、この結果としてのプラント応答を模擬する訓練システム用計算機PCTからの信号が、逆のルートで訓練用計算機PC1aに伝達されてそのモニタ画面に表示される。
【0042】
これら双方からのアクションは、通信線E1、E2を介して訓練用開発計算機PC4aと訓練システム用計算機PCT内の訓練初期状態情報ファイルAPF1に保持される。この結果を受けて、処理ステップS15において2組の訓練初期状態情報ファイルAPF1(APF1DとAPF1T)と、自動再生成ファイルAPF2を作成して保存する。この場合に、2組の訓練初期状態情報ファイルAPF1(APF1DとAPF1T)と自動再生成ファイルAPF2の記録内容は、この訓練内容に関して同期化され、同じ内容を保持することになる。
【0043】
なおこのときに自動再生成ファイルAPF2に形成される情報は、TAG情報I1、シーケンス情報I2、端子情報I3として保持され、これにより現在の処理状況が保存される。
【0044】
ここでTAG情報I1とは、プラントの操作対象機器あるいはプラントの計測機器ごとに固有の記号(TAG)を付与して管理するものであり、この操作対象機器についてのプロセス状態を表している。具体的には、アドバンスループのカスケード状態、計測用TAGのモード、調節器(PID)のチューニングパラメータ、TAGステータスといったものがこれに含まれる。
【0045】
シーケンス情報I2は、コントローラCTによる現在実行中のシーケンス処理が一連の処理のどこに位置づけられているのかを示す情報である。また、端子情報I3は、プラントから信号を取り込むときに複数ある端子のどこに現れた信号を取り込んでいるかを示している。従って、取り扱う信号の種別を意味している。
【0046】
自動再生成ファイルAPF2に取り込まれるこれらの情報によれば、現在の処理状況として、処理の進展度合い(シーケンス情報I2)、処理内容(TAG情報I1)、処理対象(端子情報I3)が関連付けて把握できる。
【0047】
図5の処理ステップS11から処理ステップS15に至る一連の処理により、訓練初期状態ファイルAPF1(APF1DとAPF1T)及び自動再生成ファイルAPF2を作成し保存することができる。
【0048】
ここで、2組の訓練初期状態情報ファイルAPF1にはメモリイメージのバイナリファイル形式でデータ記録される。このバイナリファイル形式によれば、処理の高速性、プログラム作成のしやすさという特徴がある。これに対し、自動再生成ファイルAPF2にはテキストファイル形式でデータ記録される。通常良く知られたことであるが、テキストファイルではデータの内容全てを人間が読んで理解できる表現形式であり、バイナリファイルはそうでない表現形式で記録されることが多い。
【0049】
また、バイナリファイル形式では、「終わり」を最初に定義しているに対し、テキストファイル形式では「データはここで終わり」という信号がくるまで「終わりでない」という相違がある。この結果、バイナリファイル形式は拡張性に乏しいのに比べ、テキストファイル形式はデータの拡張性が高く、データ修正がしやすいという特徴が有る。
【0050】
本発明では、ファイル形式のこれらの属性の相違を利用して、通常の訓練処理には、メモリイメージのバイナリファイル形式でデータ記録されている訓練初期状態情報ファイルAPF1を使用し、分散制御システムDCSの改修作業が発生した場合にはテキストファイル形式の自動再生成ファイルAPF2を使用する。
【0051】
本発明においては、以上のようにして2組の訓練初期状態情報ファイルAPF1(APF1DとAPF1T)と自動再生成ファイルAPF2の記録内容を同期化し、同じ内容を保持している。この結果、分散制御システムDCSの改修作業が発生した場合の訓練開始準備処理を著しく簡便に行うことができる。改修作業後の訓練開始準備処理について、図6を用いて詳細に説明する。
【0052】
ここでは分散制御システムDCSの改修作業の一例として、先に説明した訓練コース1で使用した制御対象機器のうちバルブV2を削除して使用しないようにする改修を行ったものとする。従って、図4において改修前の訓練コース1では、「バルブV1開⇒バルブV2開⇒ポンプPu運転⇒モータM停止」という一連の正常動作の手続きを、改修後の訓練コース1では、「バルブV1開⇒ポンプPu運転⇒モータM停止」とする。
【0053】
分散制御システムDCS改修後の訓練開始準備処理(訓練再開処理)の手順S20を示す図6において、最初の処理ステップS21は、訓練を受ける運転員ではなく訓練システムを熟知する技術者により行われる。技術者は、開発用の計算機PC4aを用いて自動再生成ファイルAPF2の記録内容を読み出す。自動再生成ファイルAPF2には、データがTAG情報I1、シーケンス情報I2、端子情報I3として保持されているので、TAGリストの中から今回のDCS回収作業の対象になっている制御対象機器(バルブV2)の情報を削除する。そのうえで、開発用の計算機PC4aからコントローラCTに対してソフトローディング作業を実施する。これにより、コントローラCTの制御する制御対象機器にはバルブV2が含まれないことになる。
【0054】
処理ステップS21における自動再生成ファイルAPF2の編集作業は、TAG情報を用いることで制御対象機器との対応が明確であり、かつテキストファイル形式であることから、技術者による作業の親和性を高くすることができる。また拡張性の高いテキストファイル形式であるため、DCS改修にあわせた変更が容易に行える。
【0055】
次の段階の処理(処理ステップS22からS24)は、基本的に図5での通常の訓練準備段階と同じである。処理ステップS22が図5の処理ステップS11に、処理ステップS23が図5の処理ステップS12に、処理ステップS24が図5の処理ステップS13にそれぞれ対応し、ここで行う内容はほぼ同じである。この段階での処理には訓練システム用計算機PCTが使用される。
【0056】
準備完了し、接続完了すると、次の処理ステップS25ではまた訓練システム用計算機PCTは、次の準備段階として処理ステップS25において訓練ポイントまでプラントを構成する。このために訓練システム用計算機PCTは、コントローラCTに対して通信線E2を介して訓練開始、訓練コース名を連絡する。コントローラCTは、訓練開始、訓練コース名を指示されると、訓練用開発計算機PC4aにアクセスし、訓練初期状態情報ファイルAPF1Dに保存されている訓練コースの情報と、自動再生成ファイルAPF2に保存されている自動再生成ファイル情報を読み込んでコントローラCT内のメモリにセットする。
【0057】
これら一連の準備段階処理により、訓練用開発計算機PC4aと、訓練システム用計算機PCTと、コントローラCTの三者を共通の訓練開始状態とすることができる。つまり、訓練ポイントまでプラントを構成することができる。
【0058】
なお、実際にこの訓練コースに入り訓練が開始されたときには、図5の処理ステップS15に従い、訓練初期状態情報ファイルAPF1Dと、自動再生成ファイルAPF2PF2を作成し、保存する。
【符号の説明】
【0059】
DCS:分散制御システム
P:制御対象のプラント
CT:コントローラ
S:操作信号
E1、E2:通信線
PC:計算機
PC1−PC3:監視制御用計算機
PC4:開発用計算機
PCT:訓練用計算機
PC1a、PC2a、PC3a:訓練用計算機
PC4a:訓練用開発計算機
OS:オペレーティングシステム
MW:ミドルソフト(ミドルウェア)
AP:アプリケーション
APF1D、APF1T:訓練初期状態情報ファイル
APF2:自動再生成ファイル
I1:TAG情報
I2シーケンス情報
I3:端子情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御対象機器を含むプラントを模擬する訓練システム用計算機と、該訓練システム用計算機の複数の制御対象機器に対して操作信号を与える複数のコントローラと、通信線を介して前記複数のコントローラに接続された訓練用開発計算機と訓練用計算機を備え、訓練員は前記訓練用計算機を用いて前記訓練システム用計算機との間で訓練を実施するようにされた分散制御システムの訓練システムにおいて、
前記訓練用開発計算機は、訓練初期状態情報ファイルと自動再生成ファイルを備え、訓練状態において、前記訓練初期状態情報ファイルと前記自動再生成ファイルには、前記訓練システム用計算機と前記複数のコントローラと前記訓練用計算機の出力を逐次記憶することで選択された訓練コースの途中経過を記憶することを特徴とする分散制御システムの訓練システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散制御システムの訓練システムにおいて、
前記訓練システム用計算機にも前記訓練初期状態情報ファイルを備え、訓練状態において、前記該訓練初期状態情報ファイルにも前記訓練システム用計算機と前記複数のコントローラと訓練用計算機の出力を逐次記憶することで選択された訓練コースの途中経過を記憶することを特徴とする分散制御システムの訓練システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分散制御システムの訓練システムにおいて、
前記自動再生成ファイルには、前記複数の制御対象機器の情報がTAG情報として記録されていることを特徴とする分散制御システムの訓練システム。
【請求項4】
請求項3に記載の分散制御システムの訓練システムにおいて、
前記自動再生成ファイルには、前記TAG情報のほかにシーケンス情報、端子情報を含むことを特徴とする分散制御システムの訓練システム。
【請求項5】
請求項3に記載の分散制御システムの訓練システムにおいて、
前記訓練システム用計算機が模擬する前記プラントにおいて構成の変更を生じた場合に、前記訓練用開発計算機の前記自動再生成ファイルの記録内容を用いて前記プラントにおける構成の変更を反映し、以後の訓練に反映することを特徴とする分散制御システムの訓練システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の分散制御システムの訓練システムにおいて、
前記訓練初期状態情報ファイルはメモリイメージのバイナリファイル形式でデータ記録し、前記自動再生成ファイルはテキストファイル形式でデータ記録されることを特徴とする分散制御システムの訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109249(P2013−109249A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255722(P2011−255722)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)