説明

分散剤

【課題】少量の添加で、ポリオレフィン樹脂中へのフィラー分散効果に優れ、とくに耐衝撃性、剛性を向上させる分散剤を提供すること、および、該分散剤とフィラーからなる樹脂用改質材、該樹脂用改質材に添加剤を含有させてなる樹脂改質用組成物、および該樹脂用改質材または樹脂改質用組成物とポリオレフィン樹脂からなるマスターバッチ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】1,500〜100,000の数平均分子量を有するポリオレフィン(a)からなる疎水基と、特定のオニウム塩基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たりの数平均分子量が750〜50,000である変性ポリオレフィン(A)からなる分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散剤に関する。更に詳しくは、ポリオレフィンなどの樹脂中にフィラー、とくにクレーを分散させる際に有用な分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン樹脂の機械的・熱的特性(例えば引張強度、曲げ強度、耐摩耗性および熱変形温度)を向上させるためにフィラーを分散させる際、分散剤としてマレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマー等が使用されている。とくに親水性のアルキルアンモニウムクロライドなどが層間に挿入されたクレーがポリオレフィン中に微分散されたものは、クレーが少量であっても樹脂の機械的・熱的特性が向上するが、その際の分散剤としてもマレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマーが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、以降において、フィラーがクレーの場合、上記のように、クレーの層間に有機カチオンを挿入し、層間に存在するNaイオン等を置換して層間距離を拡げ、さらにクレーの周囲を有機物で取り囲むことにより、樹脂中へのクレーの分散を容易にすることを「有機化」、また有機化に用いられるものを「有機化分散剤」と定義し、以下同様の意味で本用語を用いる。
【0004】
しかしながら、少量のマレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマーの添加ではフィラーの分散効果が低く、フィラーの分散効果を上げるためにその添加量を増やすと、該オリゴマー自身が低分子量であるため逆に樹脂の機械的・熱的特性が低下する傾向にあること、またマレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマーの分子量を増大させると、マレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマーが原理的に分子量とマレイン酸変性率との間に負の相関があるため、分子量の高いマレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマーは変性率が低く分散効果自体が不足する等の問題がある。さらに、有機化されたフィラー(例えばクレー)をポリオレフィン中に分散させる場合は、ポリオレフィン中に分散させる前の事前のフィラーの有機化工程が煩雑であるという問題もある。
【0005】
本出願人らは、先にこれらの問題を解決するため、特定のオニウム塩基を有する分散剤を提唱した(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−182892号公報
【特許文献2】特開2005−307201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記分散剤を用いた場合、上記の問題は解決するものの、上記フィラーを含有する組成物を成形してなる成形品は耐衝撃性、剛性の点でまだ十分満足できるものではない。
【0007】
本発明の目的は、少量の添加で、ポリオレフィン樹脂中へのフィラー分散効果に優れ、とくに耐衝撃性、剛性を向上させる分散剤を提供することにある。
【0008】
さらに他の目的は、該分散剤とフィラーからなる樹脂用改質材、該樹脂用改質材に添加剤を含有させてなる樹脂改質用組成物、および該樹脂用改質材または樹脂改質用組成物とポリオレフィン樹脂からなるマスターバッチ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、1,500〜100,000の数平均分子量を有するポリオレフィン(a)からなる疎水基と、下記一般式(1)で示されるオニウム塩基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たりの数平均分子量が750〜50,000である変性ポリオレフィン(A)からなる分散剤;該(A)からなる分散剤と、フィラーを組み合わせてなることを特徴とする樹脂用改質材;該樹脂用改質材に、さらに、着色剤、補強剤、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、塗装性改良剤、その他の分散剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(B)を含有させてなる樹脂改質用組成物;並びに該樹脂用改質材または樹脂改質用組成物とポリオレフィン樹脂(C)からなり、樹脂用改質材を10〜80重量%含有してなるマスターバッチ樹脂組成物である。
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R、RおよびRは、水酸基で置換されていてもよい、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数3〜15のシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、フェニル、または、炭素数7〜15のアリールアルキルもしくはアルキルアリール基;Xは、エーテル結合およびアミド結合からなる群から選ばれる1種または2種の結合を有する、炭素数4〜20の2価の有機基;QはNまたはP;Zは対アニオンを表す。]
【0013】
[ポリオレフィン(a)]
(a)には、重合法によるポリオレフィン、および該重合法によるポリオレフィンが減成されたポリオレフィン{高分子量ポリオレフィン〔好ましくは数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による]50,000〜150,000〕を機械的、熱的および化学的に減成してなるもの}が含まれる。変性の容易さと分散性能の点から、好ましいのは減成されたポリオレフィン、とくに熱減成されたポリオレフィンである。熱減成されたポリオレフィンは特に限定されないが、高分子量ポリオレフィンを不活性ガス中で加熱する(通常300〜450℃で0.5〜10時間)ことにより熱減成されたもの(例えば特開平3−62804号公報記載のもの)が挙げられる。
【0014】
(a)のうち重合法によるポリオレフィンには、オレフィンの1種または2種以上の(共)重合体、並びにオレフィンの1種以上と他の単量体の1種以上との共重合体が含まれる。以下において、%および比は、別に規定しない限り、それぞれ重量%および重量比を表す。
【0015】
上記オレフィンには、炭素数(以下、Cと略記)2〜30(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜4)のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、1−、2−およびイソブテン、並びにC5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1,1−デセン、1−ドデセン等);他の単量体には、オレフィンと共重合性の不飽和単量体、例えばスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸を表し、以下同様の表現を用いる)およびそのアルキル(C1〜30)エステルが含まれる。
【0016】
重合法によるポリオレフィンの具体例には、エチレン系重合体、例えば高密度、中密度および低密度ポリエチレン、およびエチレンとC4〜30の不飽和単量体[ブテン(1−ブテン等)、C5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸等]との共重合体(共重合比30/70〜99/1、好ましくは50/50〜95/5)等;プロピレン系重合体、例えばポリプロピレン、プロピレンとC4〜30の不飽和単量体(同上)との共重合体(共重合比、同上);エチレン/プロピレン共重合体(共重合比0.5/99.5〜30/70、好ましくは2/98〜20/80);C4以上のオレフィンの重合体、例えばポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1が含まれる。
【0017】
これらのうち、ポリオレフィン樹脂への後述のフィラーの分散性の観点から好ましいのは、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/不飽和単量体(C4〜20)共重合体、およびとくにポリプロピレンである。
【0018】
(a)のMnは、下限が1,500、好ましくは2,000、さらに好ましくは2,500、とくに好ましくは3,000、上限が100,000、好ましくは50,000、さらに好ましくは25,000、とくに好ましくは10,000である。Mnが1,500未満では、後述のフィラーの分散後の樹脂の機械強度が悪化し、Mnが100,000を超えると、後述する変性剤との反応性が小さく、フィラー分散性能の点で好ましくない。
【0019】
上記(a)のうち、変性の容易さの観点および後述する樹脂組成物中でのポリオレフィン樹脂との相溶性の観点から好ましいのは、分子末端および/または分子内の、炭素1,000個当たりの二重結合量が0.2〜10個、さらに好ましくは0.3〜6個、とくに好ましくは0.5〜5個のポリオレフィンである。ここにおいて、二重結合量は1H−NMR(核磁気共鳴)分光法から得られるスペクトル中の4.5〜6.0ppm間における二重結合由来のピークと、0.5〜2.0ppm間における飽和炭化水素基由来のピークの各積分値の比率から算出できる。
【0020】
(a)の熱軟化点は、樹脂との均一な溶融混合および樹脂成形体における表面移行防止の観点から好ましい下限は30℃、さらに好ましくは40℃、とくに好ましくは60℃であり、また、樹脂の劣化防止の観点から好ましい上限は210℃、さらに好ましくは180℃、とくに好ましくは150℃である。ここにおいて熱軟化点は、JIS K2207−96(環球式熱軟化点測定法)で測定される値である。
【0021】
(a)は、本発明における変性ポリオレフィン(A)の疎水基を構成するに当たり、通常予めカルボキシ変性され、該カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)の残基[(ax)からカルボキシル基を除いた部分]が疎水基を構成する。該(ax)には、(a)を、後述するα,β−不飽和カルボン酸(無水物)(m1)等でカルボキシ変性してなるポリオレフィン(ax1)、および(ax1)をさらにカルボキシ変性剤(m2)で変性(2次変性)してなるポリオレフィン(ax2)、並びにこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0022】
(ax1)には、(i)(a)を(m1)と反応させて変性したもの、および(ii)(a)を酸化剤(例えば酸素および/またはオゾン)で酸化してカルボキシル基を導入したものが含まれる。
【0023】
α,β−不飽和カルボン酸(無水物)(m1)には、不飽和モノ−およびジカルボン酸、およびそれらの無水物が含まれる。
【0024】
モノカルボン酸には、C3〜18(好ましくは3〜15とくに3〜10)の脂肪族、脂環式および芳香環含有のモノカルボン酸、例えば(メタ)アクリル、(イソ)クロトン、シクロヘキセンモノカルボンおよびケイ皮酸が含まれる。
【0025】
ジカルボン酸(無水物)には、脂肪族のもの(C4〜18、好ましくはC4〜15とくに好ましくはC4〜12)、例えば(無水)マレイン、フマル、(無水)イタコン、(無水)シトラコン、メサコンおよびアリルマロン酸;脂環式のもの(C7〜24、好ましくはC8〜16)、例えば4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸;および芳香環含有のもの(C8〜24、好ましくはC8〜16)、例えばフェニルマレイン酸が含まれる。(a)との相溶性および反応性の観点、および得られる(ax1)の溶融粘度の観点から、好ましいのは不飽和ジカルボン酸(とくに脂肪族ジカルボン酸)の無水物、とくに無水マレイン酸(以下、MAと略記)である。
【0026】
変性に用いる(m1)の量は、(a)の重量に基づいて通常0.5〜40%、(a)との反応性および後述するフィラーの分散性の観点から好ましくは1〜30%である。
【0027】
変性の方法および条件は特に限定されるものではないが、(a)に含まれる二重結合に溶融法または溶液法で(m1)を熱的に付加させることができる。例えば(1)溶融状態の(a)に(m1)を混合した後、必要により有機過酸化物の存在下に、加熱する方法、(2)(a)、(m1)および溶剤を混合した後、必要により有機過酸化物の存在下に加熱する方法、および(3)(a)と(m1)を二軸押出機で加熱混練中に有機過酸化物を添加する方法が挙げられる。
【0028】
上記有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられ、その使用量は、(a)と(m1)の合計重量に基づいて通常0.1〜10%、(m1)の付加効率の観点から好ましくは0.5〜5%である。
【0029】
反応温度は、広範囲(例えば80〜230℃)に変えることができ、方法に応じ適宜採択され、方法(1)では通常100〜220℃、好ましくは140〜200℃、方法(2)では通常80〜180℃、好ましくは110〜150℃、方法(3)では通常80〜140℃である。方法(2)の溶剤としては例えばトルエンおよびキシレンが挙げられる。これらのうち、副生物が少なく均一な反応が可能であるとの観点から好ましいのは方法(2)である。酸化によるカルボキシル基の導入は、例えば米国特許第3,692,877号明細書記載の方法で行うことができる。
【0030】
(ax2)の製造に用いる変性剤(m2)には、(m20)後述の(m21)の前駆体[(m21)を形成しうる化合物、以下同様]たるラクタムおよびラクトン、(m21)アミノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸、(m22)カルボキシ反応性のカップリング剤とポリカルボン酸類(酸もしくはそのエステル形成性誘導体を指す。以下同様)との組合せ、並びにこれらの2種以上の組合せが含まれる。(ax1)の2次変性は、(m20)の開環付加(重合)、(m21)の(重)縮合、または(m22)のカップリング反応によって行うことができる。
【0031】
アミノカルボン酸には、C2〜12のもの、例えばアミノ酸[グリシン、アラニン、バリン、(イソ)ロイシン、フェニルアラニン等]、ω−アミノアルカン酸(例えばω−アミノカプロン、ω−アミノエナント、ω−アミノカプリル、ω−アミノペルゴン、ω−アミノカプリン、11−アミノウンデカンおよび12−アミノドデカン酸)、および芳香族アミノカルボン酸(例えばo−、m−およびp−アミノ安息香酸);ラクタムには、C4〜15(好ましくは6〜12)のもの、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタム;ラクトンおよびヒドロキシカルボン酸には、上記ラクタムおよびアミノカルボン酸に相当する(NHがOに置換った)もの(例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ω−ヒドロキシカプロン酸、サリチル酸、p−およびm−ヒドロキシ安息香酸)、並びにグリコール酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸およびベンジル酸が含まれる。好ましいのはカプロラクタムおよび12−アミノドデカン酸である。
【0032】
変性剤(m20)または(m21)の量は、(ax1)の不飽和ジカルボン酸(無水物)基またはカルボキシル基1個当たり1〜10モルまたはそれ以上、好ましくは1モルである。
【0033】
カルボキシ反応性のカップリング剤には、ポリカルボン酸類のカルボキシル基と反応性の基を2個またはそれ以上有する化合物、例えばポリオール、有機ポリイソシアネート(以下PIと略記)、ポリアミン(以下PAと略記)、ポリエポキシドおよびエポキシアルコールが含まれる。これらのポリカルボン酸類、ポリオール、PI、PAおよびポリエポキシドには後述のもの、エポキシアルコールにはグリシドール等が含まれる。
【0034】
(ax2)は、(ax1)のカルボキシル基(カルボン酸基またはカルボン酸無水物基、以下同様)の少くとも一部が例えば下記一般式で示されるカルボキシ含有基に変換された構造を有する。
−E−(G−L−E)−G−L−E−OH
(−E−)−G−L[−G−(E−L−E−G−L−G)−E−L−E−OH]
(−E−)P−G−L[−G−E−(L−G−E)−L−(E−G−L)−E−OH]
【0035】
式中、Eは−CO−(カルボニル基);nは0または1以上(好ましくは1〜9またはそれ以上)の整数;Lは、アミノカルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸の残基(アミノもしくはヒドロキシル基とカルボキシル基が除かれた)、またはラクタムもしくはラクトンの残基(アミドもしくはエステル結合が除かれた);Lはポリカルボン酸の残基(2個のカルボキシル基が除かれた);Lはジアミンもしくはジオールの残基(アミノもしくはヒドロキシル基が除かれた);fは0または1以上の整数;Lは、(1+f)価のPA、ポリオールもしくはPIの残基(アミノ、ヒドロキシルもしくはイソシアネート基が除かれた)、又はエポキシ開環基(エポキシドの開環により形成される基);pは1または2;Gは、−O−(Lがヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンの残基、Lがジオールの残基、Lがポリオールの残基もしくはエポキシ開環基のとき)または−NH−(Lがアミノカルボン酸もしくはラクタムの残基、L2がジアミンの残基、LがPAもしくはPIの残基のとき)[LがPAの残基でpが2のときは(−E−)に結合したGは>N−][すなわち(−E−)G−は、エステル結合、アミド結合またはイミド結合]を表す。上記および以下において、複数個存在する場合の各記号は同一でも異なっていてもよい。
【0036】
エポキシ開環基には、−CH−CH(OH)−CH−、およびポリエポキシ開環基、例えば式−CR−CR−J−(CR−CR−)で示される基が含まれる[式中、Jはポリエポキシドの残基(エポキシ基が除かれた);RおよびRの、一方(例えばR)はOHであり、他方(例えばR)はHであるか、またはそれら(例えば2個のR)が互にまたはJと結合して環を形成していてもよい(Jが脂環式ポリエポキシドの残基の場合)。]。
【0037】
カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)のうちで好ましいのは、(ax1)、とくに不飽和ジカルボン酸(無水物)で変性されたものである。
【0038】
(ax)のカルボキシ変性度は特に限定されるものではないが、分散性能の観点から、(ax)の酸価は好ましくは2〜100(mgKOH/g、以下数値のみを示す。以下同様。)、さらに好ましくは8〜80、とくに好ましくは15〜60である。
【0039】
上記ポリオールには、2価〜8価またはそれ以上の、高分子ポリオール(250以上のOH当量を有する)、低分子ポリオール(250未満のOH当量を有する)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0040】
低分子ポリオールには、多価アルコール、並びに低分子OH末端ポリマー[ポリエーテルポリオール(以下、PTポリオールと略記)およびポリエステルポリオール(以下、PSポリオールと略記)]が含まれる。
【0041】
多価アルコールには、以下のものが含まれる。
2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下、それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等];C6〜10の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等];C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];
3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下、それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えば蔗糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトースおよびグルコシド(メチルグルコシド等)];含窒素ポリオール(3級アミノ基含有ポリオールおよび4級アンモニウム基含有ポリオール):含窒素ジオール、例えばC1〜12の脂肪族、脂環式および芳香族1級モノアミン[メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピルアミン、(イソ)アミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、1−,2−および3−アミノヘプタン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等]のビスヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ビス(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等、例えば米国特許第4,271,217号明細書に記載の3級窒素原子含有ポリオール]、およびそれらの4級化物[上記米国特許明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート等)による4級化物]、例えば上記米国特許明細書に記載の4級窒素原子含有ポリオール;および3価〜8価またはそれ以上の含窒素ポリオール、例えばトリアルカノール(C2〜4)アミン(トリエタノールアミン等)およびC2〜12の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環PA[後述のもの、例えばエチレンジアミン、トリレンジアミン、アミノエチルピペラジン]のポリヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ポリ(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等:例えばテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンおよびペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン]、およびこれらの上記と同様の4級化物;
スルホ基含有ポリオール:上記2価および3価〜8価またはそれ以上の多価アルコールにスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホグリセリン、スルホエリスリトール、スルホジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、スルホジ(ヒドロキシエチル)ベンゼン、スルホジ(ヒドロキシプロピル)ベンゼン、スルホヒドロキシメチルヒドロキシエチルベンゼン、およびそれらの塩。
【0042】
ここにおける塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0043】
塩を構成するアミンには、C1〜20のアミン、例えばヒドロキシルアミン〔C2〜10、例えば(ジ)アルカノールアミン、シクロアルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミン[例えば2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、ジエタノールアミン、ジ−n−およびi−プロパノールアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール、メチルエタノールアミンおよびエチルエタノールアミン]〕、3級アミノ基含有ジオールおよび1級モノアミン、2級モノアミン(ジアルキルアミン、モルホリン等)、並びにそれらのアルキル(C1〜4)化および/またはヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[もしくはそれらのアルキレンオキシド(以下、AOと略記)付加物]:例えばモノ−、ジ−およびトリ−(ヒドロキシ)アルキル(アミン)(モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアミンおよびエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルモルホリン等)が含まれる。4級アンモニウム塩には、これらのアミンの4級化物[米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート等)による4級化物]が含まれる。
【0044】
上記AOには、C2〜12またはそれ以上(好ましくは2〜4)のAO、例えばエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよび3−メチル−テトラヒドロフラン(以下それぞれEO、PO、BO、THFおよびMTHFと略記)、1,3−プロピレンオキシド、イソBO、C5〜12のα−オレフィンオキシド、置換AO、例えばスチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、並びにこれらの2種以上の併用(ランダム付加および/またはブロック付加)が含まれる。ヒドロキシカルボン酸には前掲のものが含まれる。
【0045】
低分子OH末端ポリマーには、後述のような、PTポリオール、PSポリオールおよびポリウレタン(以下PUと略記)ポリオール[PIと過剰(イソシアネート基1個当り1モル)の多価アルコールとの反応生成物]で250未満のOH当量を有するものが含まれる。例えば低重合度のAO開環重合物および活性水素原子含有多官能化合物の低モルAO付加物[例えば後述のPEG、PPG、PTMG等、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびビスフェノールAのEO2〜4モル付加物]、低縮合度の縮合PSポリオールおよびポリオールの低モルラクトン付加物[ポリカルボン酸と過剰(カルボキシル基1個当り1モル)の多価アルコールとの縮合物(例えばジヒドロキシエチルアジペート)およびEGのカプロラクトン1モル付加物]、並びに低重合度のPUポリオール(例えばTDI1モルとEG2モルとの反応生成物)が挙げられる。
【0046】
高分子ポリオールは、通常250〜3,000またはそれ以上のOH当量(OH価に基づく、OH当りの分子量)を有する。該ポリオールは、通常500〜5,000またはそれ以上、好ましくは700〜4,500のMnを有し;好ましくは500〜6,000、とくに700〜4,000の重量平均分子量(測定はGPC法による。以下、Mwと略記)を有する。その例には、OH末端のポリマー[PT、PS、ポリアミド(以下PDと略記)、PU、ビニル系ポリマー(以下VPと略記)およびポリマーポリオール(以下P/Pと略記)]、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0047】
OH末端のPTには、AOの開環重合物、少くとも2個(2個〜8個またはそれ以上)の活性水素原子を有する開始剤に1種または2種以上のAOを付加させた構造を有するPTポリオール(AO付加物)、およびそれら(同一または異なる)の2分子またはそれ以上をカップリング剤でカップリングさせてなるPTポリオールが含まれる。
【0048】
AO付加の開始剤には、例えば前掲の、多価アルコール、ヒドロキシルアミン、アミノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸;多価フェノール;並びにポリカルボン酸(後述)が含まれる。
【0049】
多価フェノールには、C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、F、C、B、ADおよびS、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)が含まれる。
【0050】
これらのうち好ましいのは、脂肪族2価アルコールおよびビスフェノール、とくにエチレングリコールおよびビスフェノールAである。
【0051】
開始剤へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒、または触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒等)の存在下(とくにAO付加の後半の段階で)に常圧または加圧下に1段階または多段階で行なわれる。2種以上のAOは、ランダム付加、ブロック付加、両者の組合せ(例えばランダム付加に次いでブロック付加)のいずれでもよい。
【0052】
AO付加物のカップリング剤には、ポリハライド、例えばC1〜6のアルカンポリハライド(例えばC1〜4のアルキレンジハライド:メチレンジクロライド、1,2−ジブロモエタン等);エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等);およびポリエポキシド(後述のもの)が含まれる。
【0053】
OH末端のPTの例には、PTジオール、例えばポリアルキレングリコール(以下PAGと略記)[例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下それぞれPEG、PPGおよびPTMGと略記)、ポリ−3−メチルテトラメチレンエーテルグリコール]、共重合ポリオキシアルキレンジオール〔EO/PO共重合ジオール、THF/EO共重合ジオール、THF/MTHF共重合ジオール等(重量比例えば1/9〜9/1)〕、芳香環含有ポリオキシアルキレンジオール[ポリオキシアルキレンビスフェノールA(ビスフェノールAのEOおよび/またはPO付加物等)];および3官能以上のPTポリオール、例えばポリオキシプロピレントリオール(GRのPO付加物等);並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが含まれる。
【0054】
OH末端のPSには、縮合PSポリオール、ポリラクトン(以下PLと略記)ポリオール、ヒマシ油系ポリオール[ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)およびそのポリオール変性物]、およびポリカーボネートポリオールが含まれる。
【0055】
縮合PSポリオールは、ポリオールとポリカルボン酸類(および必要によりヒドロキシカルボン酸)との重縮合またはポリオールとポリカルボン酸無水物およびAOとの反応により、PLポリオールはポリオールを開始剤とするラクトンの開環付加(またはポリオールとヒドロキシカルボン酸との重縮合)により、ヒマシ油のポリオール変性物はヒマシ油とポリオールとのエステル交換反応により、そしてポリカーボネートポリオールはポリオールを開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合、ポリオールとジフェニルもしくはジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)、またはポリオールもしくは2価フェノール(前掲のもの:ビスフェノールA等)のホスゲン化により、製造することができる。
【0056】
PSの製造に用いるポリオールは、通常1,000以下、好ましくは30〜500のOH当量を有する。その例には、上記の多価アルコール[ジオール(例えばEG、1,4−BD、NPG、HDおよびDEG)および3価以上のポリオール(GR、TMP、PE等)]、上記PTポリオール(PEG、PPG、PTMG等)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジオール、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価以上のポリオールとの併用である。
【0057】
ポリカルボン酸類には、ジカルボン酸および3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸が含まれる。それらの例には、C2〜30またはそれ以上(好ましくはC2〜12)の飽和および不飽和の脂肪族ポリカルボン酸、例えばC2〜15ジカルボン酸(例えばシュウ、コハク、マロン、アジピン、スベリン、アゼライン、セバチン、ドデカンジカルボン、マレイン、フマルおよびイタコン酸)、C6〜20トリカルボン酸(例えばトリカルバリルおよびヘキサントリカルボン酸)];C8〜15の芳香族ポリカルボン酸、例えばジカルボン酸(例えばテレフタル、イソフタルおよびフタル酸)、トリ−およびテトラ−カルボン酸(例えばトリメリットおよびピロメリット酸);C6〜40の脂環式ポリカルボン酸(ダイマー酸等);およびスルホ基含有ポリカルボン酸[上記ポリカルボン酸にスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホコハク、スルホマロン、スルホグルタル、スルホアジピンおよびスルホイソフタル酸、およびそれらの塩(前記スルホ基含有ポリオールにおけると同様の塩)];並びにカルボキシ末端のポリマーが含まれる。
【0058】
カルボキシ末端のポリマーには、PTポリカルボン酸、例えばポリオール[上記の多価アルコール、PTポリオール等]のカルボキシメチルエーテル(アルカリの存在下にモノクロル酢酸を反応させて得られる);およびPD、PSおよび/またはPUポリカルボン酸、例えば上記ポリカルボン酸を開始剤としてラクタムもしくはラクトン(前記)を開環重合させてなるポリラクタムポリカルボン酸およびPLポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸類の2分子またはそれ以上をポリオール(上記)またはPAもしくはPI(後述)でカップリング(エステル化またはアミド化)させてなる縮合PSポリカルボン酸および縮合PDポリカルボン酸、および上記のポリカルボン酸類およびポリオールとPIを反応(ウレタン化およびエステル化もしくはアミド化)させてなるPUポリカルボン酸が含まれる。
【0059】
エステル形成性誘導体には、酸無水物、低級アルキル(C1〜4)エステルおよび酸ハライド、例えばコハク、マレイン、イタコンおよびフタル酸無水物、テレフタル酸ジメチル、並びにマロニルジクロライドが含まれる。
【0060】
縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジカルボン酸類、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸類との併用である。
【0061】
ラクトンおよびヒドロキシカルボン酸には前掲のものが含まれる。
【0062】
アルキレンカーボネートには、C2〜6のアルキレン基を有するもの、例えばエチレンおよびプロピレンカーボネートが含まれる。ジアルキルカーボネートには、C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネートが含まれる。
【0063】
OH末端のPSの具体例には、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリブチレン/ヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチレンセバケート、ポリカプロラクトンジオールおよびポリヘキサメチレンカーボネートジオールが含まれる。
【0064】
OH末端のPDには、ポリカルボン酸類(上記)を、ヒドロキシルアミン(前記)またはポリオール(上記)およびPA(後述)と重縮合させてなる、ポリ(エステル)アミドポリオールが含まれる。
【0065】
OH末端のPUには、ポリオールをPIで変性してなるOH末端ウレタンプレポリマーが含まれる。ポリオールには、前掲の、多価アルコール、高分子ポリオール(上記OH末端のPTおよびPS、並びに後述のOH末端のVPおよびP/P)、並びにこれらの2種以上の併用が含まれる。好ましいのは高分子ポリオール(とくにOH末端のPSおよびとくにPT)およびこれと低分子ポリオール(とくに多価アルコール)との併用である。併用する低分子ポリオールの量は、用途および要求される性能に応じて適宜変えることができるが、一般に、高分子ポリオール1当量に対して、0.01〜0.5当量、さらに0.02〜0.4当量、とくに0.1〜0.2当量が好ましい。OH末端ウレタンプレポリマー製造に当り、ポリオールとPIとの当量比(OH/NCO比)は、通常1.1〜10、好ましくは1.4〜4とくに1.4〜2である。ポリオールとPIとは、1段で反応させても、多段で反応(例えばポリオールもしくはPIの一部を反応させたのち残部を反応)させてもよい。
【0066】
PIには、2〜6個またはそれ以上(好ましくは2〜3個とくに2個)のイソシアネート基を有する、下記のPI、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族PI:ジイソシアネート(以下DIと略記)、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレートおよびビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等);
C4〜15の脂環式PI:DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート;C8〜15の芳香脂肪族PI:m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
C6〜20の芳香族PI:DI、例えば1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび1,5−ナフチレンDI;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート);
並びに、PIの変性体:これらのPIの変性体(例えばCD、ウレタン、ウレア、イソシアヌレート、ウレトイミン、アロファネート、ビウレット、オキサゾリドンおよび/またはウレトジオン基を有する変性体)、例えばMDI、TDI、HDI、IPDI等のウレタン変性物(ポリオールと過剰のPIとを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー)、ビウレット変性物、イソシアヌレート変性物、トリヒドロカルビルホスフェート変性物、およびこれらの混合物。
【0067】
ウレタン変性に用いるポリオールには、前述の多価アルコール、PTポリオールおよび/またはPSポリオールが含まれる。好ましいのは、500以下とくに30〜200のOH当量を有するポリオール、例えばグリコール(EG、PG、DEG、DPG等)、トリオール(TMP、GR等)、4官能以上の高官能ポリオール(PE、SO等)およびこれらのAO(EOおよび/またはPO)(1〜40モル)付加物、とくにグリコールおよびトリオールである。ウレタン変性におけるPIとポリオールとの当量比(NCO/OH比)は、通常1.1〜10、好ましくは1.4〜4とくに1.4〜2である。
【0068】
上記変性PIの遊離イソシアネート基含量は通常8〜33%、好ましくは10〜30%、とくに好ましくは12〜29%である。
【0069】
PIのうちで、耐光性の観点から好ましいのは、非芳香族系(脂肪族、脂環式および芳香脂肪族)PI、とくに脂肪族PI、脂環式PIおよびこれらの併用である。
【0070】
OH末端のVPには、ポリブタジエン系ポリオール、例えばOH末端のブタジエンホモポリマーおよびコポリマー(スチレン−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー等)[1,2−ビニル構造を有するもの、1,4−トランス構造を有するもの、1,4−シス構造を有するもの、およびこれらの2種以上を有するもの(1,2−ビニル/1,4−トランス/1,4−シスのモル比100〜0/100〜0/100〜0、好ましくは10〜30/50〜70/10〜30]、並びにこれらの水素添加物(水素添加率:例えば20〜100%);アクリルポリオール、例えばアクリル共重合体[アルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート、またはこれらと他のモノマー(スチレン、アクリル酸等)との共重合体]にヒドロキシル基を導入したもの[ヒドロキシル基の導入は主としてヒドロキシエチル(メタ)アクリレートによる];および部分鹸化エチレン/酢酸ビニル共重合体が含まれる。
【0071】
P/Pは、ポリオール(前述のOH末端のPTおよび/またはPS、またはこれと前述の多価アルコールとの混合物)中でエチレン性不飽和モノマーをその場で重合させることにより得られる。エチレン性不飽和モノマーには、アクリル系モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリルおよびアルキル(C1〜20またはそれ以上)(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート等);炭化水素(以下HCと略記)系モノマー、例えば芳香族不飽和HC(スチレン等)および脂肪族不飽和HC(C2〜20またはそれ以上のアルケン、アルカジエン等、例えばα−オレフィンおよびブタジエン);並びにこれらの2種以上の併用[例えばアクリロニトリル/スチレンの併用(重量比100/0〜80/20)]が含まれる。P/Pは、例えば5〜80%またはそれ以上、好ましくは30〜70%の重合体含量を有する。
【0072】
高分子ポリオールのうちで好ましいのはPTポリオールおよびPSポリオールである。
【0073】
PAには、1級および/または2級PA、例えば前記PIに相当する(NCOがNHに置き換った)、脂肪族(C2〜18)、脂環式(C4〜15)、芳香脂肪族(C8〜15)および芳香族(C6〜20)のPA;ポリアルキレン(C2〜6)PA(重合度2〜10またはそれ以上)、例えばポリエチレンPA(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等)、および相当するポリプロピレンPA;重合脂肪酸PA[脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等)の重合体(ダイマー酸等)から誘導される(そのアミドもしくはニトリルを水素化してなる)PA];アミノ末端ポリマー(下記);これらのPAの部分アルキル(C1〜10)化および/またはヒドロキシアルキル(C2〜4)化物(N−アルキルジアミン、N,N’−ジアルキルジアミン、N−ヒドロキシアルキルジアミン、N,N’−ジヒドロキシアルキルジアミン等);並びに複素環PA、例えばピペラジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン等、およびそれらのN−アミノアルキル−およびN,N’−ジアミノアルキル置換体(アミノエチルピペラジン等)が含まれる。
【0074】
アミノ末端ポリマーには、アミノ末端PT、例えば前記ポリオール(多価アルコール、PTポリオール等)のC3〜10(好ましくはC3)アミノアルキルエーテル[シアノアルキル化物(シアノエチル化物等)の水素化物];アミノ末端PD、例えばアミノ末端縮合PD[上記PAとポリカルボン酸類(前掲)との重縮合により得られる]およびアミノ末端ポリラクタム[上記PAを開始剤としてラクタムもしくはアミノカルボン酸(前掲)との開環付加もしくは重縮合により得られる]が含まれる。
【0075】
好ましいPAは、ジアミン(以下DAと略記)、とくに脂肪族DAである。さらに好ましいのは、C2〜12のもの[エチレンDA(以下EDAと略記)、ヘキサメチレンDA、ヘプタメチレンDA、オクタメチレンDAおよびデカメチレンDA]、とくにEDAである。
【0076】
ポリエポキシドには、下記のものが含まれる。
(1)脂肪族ポリエポキシド:脂肪族ポリオール[前記2価〜8価またはそれ以上の多価アルコールおよびPTポリオール]のポリグリシジルエーテル(グリシジルエーテルは以下GEと略記):ジGE[例えばEG、PG、1,4−BD、HD、MPD、DEG、NPG、PEG(Mn150〜200,000)およびPPG(Mn134〜200,000)のジGE]、トリGE[例えばGRおよびTMPのトリGE]、および4価またはそれ以上のGE[例えばPEテトラGEおよびSOヘキサGE];脂肪族ポリカルボン酸(前記PS製造用に挙げた2価〜3価またはそれ以上の脂肪族ポリカルボン酸)のポリグリシジルエステル(グリシジルエステルは以下GSと略記)[例えばシュウ酸およびアジピン酸ジGS、およびトリカルバリルトリGS]、およびグリシジル(メタ)アクリレート重合体およびグリシジル(メタ)アクリレートと他のモノマー〔例えば不飽和HC(脂肪族HC、脂環式HC、芳香族HC等)、アルキル(メタ)アクリレート[C1〜50のアルキル基を有するもの、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびエイコシル(メタ)アクリレート]、およびカルボニル、エーテルおよび/またはイオウ含有不飽和モノマー[例えば不飽和エステル、不飽和エーテル、ビニルケトン、サルファイド結合含有モノマーおよびスルホン基含有モノマー]等、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート〕との共重合体(Mnは好ましくは300〜10,000、とくに500〜5,000;共重合比は好ましくは2/98〜80/20、とくに5/95〜50/50);エポキシ化動植物油(例えばエポキシ化大豆油);
【0077】
(2)脂環式ポリエポキシド:C8〜20のもの、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EGビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、および後述の芳香環含有ポリエポキシドの核水添化物;
【0078】
(3)複素環含有ポリエポキシド:C5〜20、例えばトリスグリシジルメラミン;
【0079】
(4)芳香環含有ポリエポキシド:多価フェノール(前記2価〜3価またはそれ以上多価フェノール)もしくはそのAO付加物のポリGE:2価フェノールのジGE(ビスフェノールF、A、B、ADおよびSのジGE、カテコールジGE、レゾルシノールジGE、ハイドロキノンジGE、1,5−ジヒドロキシナフタリンジGE、ジヒドロキシビフェニルジGE、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応により得られるジGE等);3価フェノールのトリGE(ピロガロールトリGE等);および4価以上のポリフェノールのポリGE(フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂のGE、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒドもしくはホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリGE、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリGE等)等が挙げられる。
【0080】
これらのうち、(ax1)との反応性の観点から好ましいのは、脂肪族系ポリエポキシドおよび芳香環含有系ポリエポキシド、とくにTMPトリGE、グリシジル(メタ)アクリレートの重合体[グリシジル(メタ)アクリレート10〜100%と他のモノマー[前記のアルキル(メタ)アクリレート、とくにドデシルメタアクリレート]0〜90%の(共)重合体、Mn500〜5,000]およびビスフェノールAジGEである。
【0081】
また、上記ポリエポキシドのうちさらに好ましいのは、50〜500、とくに60〜200のエポキシ当量を有するものである。
【0082】
[オニウム塩基(b)]
本発明におけるオニウム塩基(b)は、下記の一般式(1)で示される。
【0083】
【化2】

【0084】
式中、R、RおよびRは、水酸基で置換されていてもよい、C1〜15(好ましくはC1〜8)のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等)、C2〜15(好ましくはC2〜8)のアルケニル(プロペニル、ブテニル等)、C3〜15(好ましくはC3〜8)シクロアルキル(シクロペンチル、シクロヘキシル等)もしくはシクロアルケニル(シクロペンテニル、シクロヘキセニル等)、フェニル、または、C7〜15(好ましくはC7〜8)アリールアルキル(ベンジル、フェニルエチル等)もしくはアルキルアリール(トルイル、エチルフェニル等)基を表し、これらのうち好ましいのはアルキル基である。
【0085】
、RまたはRのCが15を超えるとフィラー、とくにクレーへの層間挿入が難しくなる。
【0086】
Xはエーテル結合およびアミド結合からなる群から選ばれる1種または2種の結合を有する、炭素数4〜20(好ましくは5〜9)の2価の有機基を表し、該有機基としては後述の(b11)および(b12)として例示する化合物を構成するXに該当する有機基が挙げられる。これらのうち好ましいのはエーテル結合を有する有機基である。
【0087】
XのCが4未満ではフィラーの剥離が悪くなり、20を超えると変性ポリオレフィン(A)のポリオレフィン樹脂(C)への相溶性が悪くなる。
【0088】
QはNまたはPを表し、フィラー、とくにクレーへの層間挿入のし易さの観点から好ましいのはNである。
【0089】
Zは対アニオン[ハロゲン(Cl、Br等)イオン、アルキル硫酸(メチル硫酸、エチル硫酸等)イオン等]を表し、好ましいのはアルキル硫酸イオンである。
【0090】
(b)は、分子中にカルボキシル基と反応しうる1級もしくは2級アミノ基、3級アミノ基、並びにエーテル結合およびアミド結合からなる群から選ばれる1種または2種の結合を有する化合物(b11)および/または分子中にカルボキシル基と反応しうる1級もしくは2級アミノ基、第3ホスフィノ基、並びにエーテル結合およびアミド結合からなる群から選ばれる1種または2種の結合を有する化合物(b12)および4級化剤もしくはジアルキルカーボネート(b2)から形成される。
【0091】
(b11)には、C6〜69、例えばジメチルアミノエトキシエチルアミン、ジエチルアミノエトキシエチルアミン、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン、ジメチルアミノブトキシプロピルアミン、3級アミノ基とカルボキシル基を有する化合物(例えばm−ジメチルアミノ安息香酸)とポリアミン(C2〜18、例えばエチレンジアミンおよび1,3−プロパンジアミン)との反応物(モノアミド)、3級アミノ基を有する上記モノアミドとアミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、システイン)とのアミド化物が含まれる。
【0092】
(b12)には、1級もしくは2級アミノ基、第3ホスフィノ基、並びにエーテル結合およびアミド結合からなる群から選ばれる1種または2種の結合を有するもの[C4〜69、例えば5−ジメチルホスフィノアミノジエチルエーテル]が含まれる。
【0093】
これらのうち変性ポリオレフィン(A)の熱安定性および耐加水分解性の観点および(A)中のオニウム塩基濃度の観点から好ましいのは(b11)、とくに好ましいのはジエチルアミノエトキシエチルアミンおよびジメチルアミノエトキシプロピルアミンである。
【0094】
4級化剤もしくはジアルキルカーボネート(b2)のうち、4級化剤には、米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級化剤、例えばアルキル化剤[例えばハライド(C1〜12、例えばメチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、イソプロピルクロライドおよびベンジルクロライド)、およびジアルキル硫酸(C2〜36、例えばジメチル硫酸およびジエチル硫酸)]が含まれる。
【0095】
ジアルキルカーボネートには、C1〜18のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジイソプロピルカーボネートが含まれる。
【0096】
(b11)および/または(b12)を4級化する方法としては、(i)(b11)および/または(b12)と(b2)を直接反応させる方法や、(ii)(b11)および/または(b12)と比較的分解しやすいジメチルカーボネート等の(b2)とを反応させた後、他の酸{有機酸〔例えばスルホン酸[脂肪族(C1〜24、例えばメタンスルホン酸およびエタンスルホン酸)および芳香族(C6〜24、例えばベンゼンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸)]、アルキル硫酸(C1〜24、例えばメチル硫酸、エチル硫酸およびドデシル硫酸)およびアルキルリン酸(C1〜36、例えばモノメチルリン酸、ジエチルリン酸およびジオクチルリン酸)〕および無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸)}と混合することによってアニオン交換させる方法、および(iii)(b11)および/または(b12)と(b2)をアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム)の存在下で反応させて対イオンをヒドロキシルイオンとする方法が挙げられる。
これらのうち簡便性の観点から好ましいのは、(i)の方法である。
【0097】
また、反応の順序としては(1)カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)に(b11)および/または(b12)を反応させた後に4級化する方法、および(2)(b11)および/または(b12)を4級化した後に(ax)と反応させる方法が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、副反応が起こりにくい(1)の方法である。
【0098】
[変性ポリオレフィン(A)]
本発明の変性ポリオレフィン(A)は、前記ポリオレフィン(a)からなる疎水基と、前記オニウム塩基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たりのMnの下限が750、好ましくは800、さらに好ましくは900、特に好ましくは1,000、上限が50,000、好ましくは30,000、さらに好ましくは20,000、特に好ましくは10,000である。(b)1個当たりのMnが750未満および50,000を超えるとフィラー分散能が悪くなる。(b)1個当たりのMnは、1H−NMR(核磁気共鳴)分光法から得られるスペクトル中の0.5〜1.6ppm間におけるポリオレフィン由来のピークと、3.0〜3.6ppm間におけるカチオン基由来のピークの各積分値の比率から算出できる。
【0099】
(A)は、例えば下記の方法で製造することができる。
(1)カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)と(b11)および/または(b12)を反応させてモノアミドおよび/またはモノエステルを得た後、3級アミノ基および/または第3ホスフィノ基を(b2)で4級化する製造方法。
【0100】
(2)(b11)および/または(b12)を4級化剤(b2)で4級化した後、カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)と反応させてモノアミドおよび/またはモノエステルを得る製造方法。
【0101】
(1)の製造方法において、(ax)と(b11)および/または(b12)との反応における官能基当量比[COOH/NH]は、分散性および樹脂成形体の機械的・熱的特性の観点から好ましくは1/0.2〜1/8、さらに好ましくは1/0.5〜1/4である。
【0102】
(2)の製造方法において、(ax)と4級化された(b11)および/または(b12)との反応における官能基当量比[COOH/NH]は、上記と同様の観点から好ましくは1/0.2〜1/8、さらに好ましくは1/0.5〜1/4である。
【0103】
従来の前記特定のオニウム塩基を有する変性ポリオレフィンからなる分散剤では、変性ポリオレフィン中のポリオレフィン部分とオニウム塩基間の距離が比較的短く、オニウム塩基の移動自由度が低いため、クレー層間のNaイオン等と該オニウム塩基とのイオン交換が少なくなって、クレーが凝集してしまうものと推定される。これに対し本発明の変性ポリオレフィン(A)からなる分散剤では、(A)中のポリオレフィン部分とオニウム塩基間の距離が比較的長く、また特定の結合を介することからオニウム塩基の移動自由度が高まり、クレー層間のNaイオン等とオニウム塩基とのイオン交換が促進されてクレーの凝集が抑制されるものと推定される。その結果、クレー添加による成形品の物性、とくに耐衝撃性および剛性を向上させることができるものと考えられる。
【0104】
[樹脂用改質剤]
本発明の樹脂用改質材は、上記分散剤とフィラーを組み合わせてなることを特徴とするものである。
【0105】
フィラーには、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸鉛、金属ケイ酸塩、金属窒化物、炭素類及びその他のフィラーが含まれる。
【0106】
金属酸化物としては、シリカ(シリカバルーン等)、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズおよび酸化アンチモン等;金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムおよび塩基性炭酸マグネシウム等;金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイトおよびハイドロタルサイト等;
金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム(石膏繊維等)、硫酸バリウム等;金属ケイ酸塩としては、ケイ酸カルシウム、クレー(モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土等)、タルク、マイカ、セピオライト、イモゴライト、セリサリト、ガラス(繊維、ビーズ等)等;金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および窒化ケイ素等;炭素類としては、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末等;
その他のフィラーとしては、金属粉(金、銀、銅、スズ等)、チタン酸カリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、スラグ繊維、テフロン(登録商標)粉、木粉、パルプ、ゴム粉およびアラミド繊維等;等が挙げられる。
これらのフィラーは単独でも、2種以上併用してもよい。
【0107】
これらのうち本発明の樹脂用改質材が適用される樹脂の改質効果の観点から好ましいのは炭酸カルシウムおよび金属ケイ酸塩、とくにクレーである。ここにおいてクレーとは、含水ケイ酸塩を主成分とする粘土を指し、クレーには層状構造または非層状構造を有するクレーが含まれる。
【0108】
層状構造を有するクレーとしては、例えばモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイトおよび膨潤性マイカが挙げられ、非層状構造を有するクレーとしては、例えばアロフェンおよびヒシンゲル石等が挙げられる。
【0109】
これらのうち樹脂改質効果の観点から好ましいのは、層状構造を有するクレーであり、さらに好ましいのはモンモリロナイトおよびサポナイトである。
【0110】
また、本発明におけるクレーは、フィラーに対して有機化効果を有する分散剤(以下、フィラー有機化分散剤と略記)で予め処理(有機化すること、以下同じ)されたものでも、また処理されていなくてもいずれでもよい。これらのうち本発明における分散剤の樹脂改質効果をよりよく発揮させることができるとの観点から好ましいのは、該有機化されていないクレーである。
【0111】
上記フィラー有機化分散剤としては、アミン〔例えば脂肪族[C2〜18、例えばモノアミン(オクチルアミン、ドデシルアミンおよびステアリルアミン等)およびジアミン(エチレンジアミン、ヘキシレンジアミン等)]、脂環式[C6〜40、例えばモノアミン(シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン等)およびジアミン(ジアミノシクロヘキサン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)等)]および芳香(脂肪)族[C6〜30、例えばモノアミン(アニリン、p−トルイジン等)およびジアミン(1,3−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノトルエン等)]〕と酸〔無機酸[例えば塩酸、硫酸、リン酸および硝酸]および有機酸[スルホン酸(C1〜18、例えばメタンスルホン酸、ヘキシルスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸)、カルボン酸(C1〜18、例えばギ酸、ラウリン酸およびステアリン酸)等]との塩、第4級アルキルアンモニウム塩(C4〜C72、例えばオクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジエチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウム・メチル硫酸塩が挙げられる。
【0112】
クレーをフィラー有機化分散剤で予め処理して樹脂改質効果を発揮させる場合、その使用量は、クレーの重量に基づいて通常50%以下、樹脂改質効果の観点から好ましくは10%以下、さらに好ましくは0〜8%である。
【0113】
該クレーの処理方法としては、(1)クレーとフィラー有機化分散剤とを、温水(例えば80℃)等の分散剤用の溶剤中で混合し、濾過後に乾燥させる方法、(2)クレーとフィラー有機化分散剤とを2軸押出機等で混合(温度条件は通常60〜270℃)中に水等の分散剤用の溶剤を添加する方法が挙げられる。好ましいのはクレーの層間にフィラー有機化分散剤が層間挿入されやすい(1)の方法である。
【0114】
本発明の樹脂用改質材中の本発明における分散剤の割合は、該改質材の重量に基づいて、樹脂改質効果の観点から好ましい下限は5%、さらに好ましくは10%、とくに好ましくは20%、改質材としての扱いやすさの観点から好ましい上限は95%、さらに好ましくは90%、とくに好ましくは80%である。
【0115】
該樹脂用改質材は本発明における分散剤とフィラーを組み合わせてなるものであり、その組み合わせ方法には、〔1〕該分散剤とフィラーを予め混合して改質材としておき、さらに必要により後述の添加剤(B)を加えて後述する樹脂改質用組成物とした後に、これを樹脂に加える方法と、〔2〕樹脂に対して該分散剤とフィラー、さらに必要により後述の添加剤(B)を別々に順不同で加える方法が含まれる。
【0116】
〔1〕の方法における改質材の製造方法としては、例えば
<1>本発明における分散剤とフィラーおよび必要により少量の水等の溶剤とを、例えば粉体混合機(ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー[商品名:Farrel(株)製]等)で例えば0〜80℃で混合した後、溶融混練装置{バッチ混練機(反応槽等)、連続混練機〔FCM[商品名:Farrel(株)製]、LCM[商品名:(株)神戸製鋼所製]、CIM[商品名:(株)日本製鋼所製]等〕、単軸押出機、二軸押出機等}を使用して120〜220℃で5〜30分間混練する方法;
<2>本発明における分散剤とフィラーおよび必要により少量の水等の溶剤とを上記粉体混合をすることなく、上記と同様の溶融混練装置を使用して同様の条件で直接混練する方法が挙げられる。混練効率の観点から<1>の方法が好ましい。
【0117】
また、得られる改質材のうち、樹脂改質効果の観点から好ましいのは本発明における分散剤がクレーの層間に挿入されたもの、さらに好ましいのは本発明における分散剤が挿入された層間の距離が6nm以上(特に好ましくは20nm以上、最も好ましくは40nm以上)のクレーである。ここにおいて層間距離とは、多層構造を有するクレーの層と層の間の距離を表し、X線回折装置で測定される2θ(単位は°)の数値から計算される格子面間隔dを意味する。
【0118】
上記の好ましい改質材は、本発明における分散剤とクレーとを充分混練することにより得られる。本発明における分散剤がクレーの層間に挿入されている状態は、X線回折装置および/または電子顕微鏡を用いた観察で確認することができ、分散剤の挿入の程度はX線回折装置によって測定されるクレーの格子面間隔(層間距離)により表される。上記〔1〕または〔2〕で示した組み合わせ方法のうち、クレーの層間への挿入効率の観点から好ましいのは〔1〕の方法である。上記〔1〕または〔2〕の方法において、樹脂改質用組成物、または本発明における分散剤とクレー、さらに必要により(B)を別々に順不同で、樹脂に加える方法については後述する。
【0119】
[樹脂改質用組成物]
本発明の樹脂改質用組成物は、該樹脂用改質材に、さらに、着色剤(B1)、補強剤(B2)、艶消剤(B3)、難燃剤(B4)、帯電防止剤(B5)、塗装性改良剤(B6)、その他の分散剤(B7)、酸化防止剤(B8)および紫外線吸収剤(B9)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(B)を含有させてなるものである。
【0120】
着色剤(B1)としては、顔料、例えば白色顔料(酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、黒色顔料(カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラック等)、黄色顔料(黄鉛、カドミイエロー、酸化鉄イエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、オイルイエロー2G等)、橙色顔料(赤口黄鉛、クロムバーミリオン、カドミオレンジ、ピラゾロンオレンジ等)、赤色顔料(ベンガラ、カドミレッド、パーマネントレッド、レーキレッドC、カーミン6B、ピグメントスカーレット3B、パーマネントレッドF5R、キナクリドンレッド、チオインジゴマルーン等)、紫色顔料(コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等)、青色染顔料(群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー等)、緑色顔料(フタロシアニングリーン、クロムグリーン等)、金属粉末顔料(アルミ粉、ブロンズ粉、パールエッセンス等)が挙げられる。
【0121】
補強剤(B2)としては、金属粉(アルミニウム粉、銅粉等)、金属酸化物(アルミナ、ケイ灰石、シリカ、タルク、マイカ、焼成カオリン等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属塩(炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等)、繊維[無機繊維(炭素繊維、繊維素、α−繊維素、ガラス繊維、アスベスト等)、有機繊維(コットン、ジュート、ナイロン、アクリルおよびレーヨン繊維等)等]、マイクロバルーン(ガラス、シラス、フェノール樹脂等)、炭素類(カーボンブラック、石墨、石炭粉等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、有機粉(木粉等)等が挙げられる。
【0122】
艶消剤(B3)としては、粉体、粒状、不定形状、マイクロバルーン状、繊維状、ウィスカ状または微粒子状の、無機および有機の艶消剤、例えば粉体、粒状または不定形状(炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ酸、ケイ酸塩、アスベスト、マイカ等)、マイクロバルーン状(ガラス、フェノール樹脂バルーン等)、繊維状(ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等)、ウィスカ状(セラミックウィスカ、チタンウィスカ等)、および微粒子状(プラスチック微粒子、例えばポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のポリオレフィン微粒子等)等が挙げられる。
【0123】
難燃剤(B4)としては、有機系〔含リン系[リン酸エステル(トリクレジルホスフェート等)等]、含臭素系(テトラブロモビスフェノ−ルA、デカブロモビフェニルエーテル等)、含塩素系(塩素化パラフィン、無水ヘット酸等)等〕、無機系〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、赤リン、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム等〕等が挙げられる。
【0124】
帯電防止剤(B5)としては、下記および米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
【0125】
1)非イオン性界面活性剤:
AO付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)および高級脂肪酸(C8〜24)等:例えばアルキルもしくはアルケニル(ドデシル、ステアリル、オレイル等)アルコールおよびアミン、およびアルカンもしくはアルケン酸(ラウリン、ステアリンおよびオレイン酸等)]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体[AO(C2〜4、例えばEO、PO、BOおよびこれらの2種以上の併用、とくにEO)(1〜500モルまたはそれ以上)付加物(分子量174〜Mn30,000)、およびPAG(例えばPEG;分子量150〜Mn6,000)の高級脂肪酸モノ−およびジ−エステル];多価アルコール[前記のもの、例えばGR、PEおよびソルビタン]の高級脂肪酸(上記)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(同上;分子量320〜Mn30,000;例えばツイーン型ノニオニックス);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(同上;分子量330〜Mn30,000);多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(同上;分子量180〜Mn30,000);およびポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコール(上記)およびポリアミン(前記PA)のポリオキシプロピレン誘導体(例えばPPGおよびエチレンジアミンPO付加物;Mn500〜5,000)]のポリオキシエチレン誘導体(Mn1,000〜30,000)[プルロニック型およびテトロニック型ノニオニックス];多価アルコール(C3〜60)型ノニオニックス、例えば多価アルコール(上記)の脂肪酸(上記)エステル、多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテル、および脂肪酸(上記)アルカノールアミド;並びにアミンオキシド型ノニオニックス、例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18:ドデシル、ステアリル、オレイル、2−ヒドロキシドデシル等)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3:メチル、エチル、2−ヒドロキシエチル等)アミンオキシド。
【0126】
2)カチオン性界面活性剤:
第4級アンモニウム塩型カチオニックス、例えばテトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100)、例えばアルキル(C8〜18:ラウリル、ステアリル等)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8〜18:デシル、オクチル等)ジメチルアンモニウム塩;トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80)、例えばラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩、例えばセチルピリジニウム塩;(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4、重合度1〜100またはそれ以上)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100)、例えばポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩;およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩、例えばステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)および有機酸(下記)の塩が含まれる];並びにアミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン[例えば高級脂肪族アミン(C12〜60:ラウリル、ステアリルおよびセチルアミン、硬化牛脂アミン、ロジンアミン等)、脂肪族アミン(上記)のポリオキシアルキレン誘導体(上記;EO付加物等)、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(ステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン等)]の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩および有機酸(C2〜22:酢酸、プロピオン、ラウリン、オレイン、コハク、アジピンおよびアゼライン酸、安息香酸等)塩。
【0127】
3)アニオン性界面活性剤:
カルボン酸(塩)、例えば高級脂肪酸(上記)、エーテルカルボン酸[高級アルコール(上記)またはそのAO付加物、例えばEO(1〜10モル)付加物のカルボキシメチル化物]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールまたはそのAO付加物の硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート、硫酸化油(天然の不飽和油脂または不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和した塩)、硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸の低級アルコールエステルを硫酸化して中和した塩)および硫酸化オレフィン(C12〜18のオレフィンを硫酸化して中和した塩);スルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α−オレフィン(C12〜18)スルホン酸塩およびN−アシル−N−メチルタウリン(イゲポンT型等);並びにリン酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールもしくはそのAO付加物またはアルキル(C4〜60)フェノールのAO付加物(同上)のリン酸エステル塩(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート)。
【0128】
4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアミノ酸型アンフォテリックス、例えばアルキル(C8〜18)アミノプロピオン酸(塩)、およびベタイン型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)ベタイン(アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等);硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上)アミンの硫酸エステル(塩)、およびヒドロキシアルキル(C2〜4:ヒドロキシエチル等)イミダゾリン硫酸エステル(塩);スルホン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上:ペンタデシル等)スルフォタウリン、およびイミダゾリンスルホン酸(塩);並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばグリセリン高級脂肪酸(上記)エステルのリン酸エステル(塩)。
【0129】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0130】
塩を構成するアミンには、C1〜20のアミン、例えばヒドロキシルアミン、3級アミノ基含有ジオールおよび1級モノアミン、2級モノアミン、並びにそれらのアルキル化(C1〜4)および/またはヒドロキシアルキル化(C2〜4)物(AO付加物):例えばモノ−、ジ−およびトリ−(ヒドロキシ)アルキル(アミン)(モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアミンおよびエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルモルホリン等)が含まれる。4級アンモニウム塩には、これらのアミンの4級化物[米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(前記)による4級化物]が含まれる。
【0131】
塗装性改良剤(B6)としては、前記(ax1)、(ax2)、およびそれらを塩素化したもの[(ax1)または(ax2)の分子中の水素を塩素と置換したもの]等が挙げられる。
【0132】
その他の分散剤(B7)としては、前記フィラー有機化分散剤の他、上記(B5)で例示したものが挙げられる。
【0133】
酸化防止剤(B8)としては、ヒンダードフェノール系〔p−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、2,6−ビス(1−メチルヘプタデシル)−p−クレゾール、ブチル化クレゾール、スチレン化クレゾール、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)、2(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシナメート、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4,−メチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェノール、1,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよびテトラキス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等〕;
含イオウ系〔N,N’−ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ジステアリルチオジプロピオネート、6−(4−オキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)等〕;
含リン系〔2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ホスファイトエステル樹脂、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等〕等が挙げられる。
【0134】
紫外線吸収剤(B9)としては、サリチレート系[フェニルサリチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等];ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン(トリヒドレート)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロー2−ヒドロキシベンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0135】
本発明の樹脂改質用組成物中の(B)全体の使用量は、該組成物の重量に基づいて、通常30%以下、改質材の効果、(B)の機能発現、および経済性の観点から好ましくは1〜10%である。
【0136】
該組成物の重量に基づく各添加剤の使用量は、(B1)は通常10%以下、好ましくは1〜5%;(B2)は通常15%以下、好ましくは3〜10%;(B3)は通常20%以下、好ましくは1〜10%;(B4)は通常15%以下、好ましくは3〜10%;(B5)は通常10%以下、好ましくは1〜5%;(B6)は通常20%以下、好ましくは5〜15%;(B7)は通常2%以下、好ましくは0〜0.5%、特に好ましくは0%;(B8)は通常3%以下、好ましくは0.01〜1%、(B9)は通常3%以下、好ましくは0.01〜1%である。
【0137】
上記(B1)〜(B9)の間で添加剤が同一で重複する場合、または添加剤(B)と前記フィラーが同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0138】
本発明の樹脂改質用組成物の製造方法としては、(1)改質材と(B)を一括して溶融混練する方法、(2)改質材の一部と(B)とを溶融混練して、マスターバッチを作成した後、残りの改質材を加えて溶融混練する方法(マスターバッチ法)等が挙げられる。
【0139】
(2)の方法における改質材の一部/(B)の割合は、改質材および(B)それぞれの機能発現の観点から好ましくは5/95〜50/50である。
【0140】
これらの方法のうち、改質材および(B)それぞれの機能発現の観点から好ましいのは(2)の方法(マスターバッチ法)である。
【0141】
溶融混練装置としては、前記のものが挙げられる。
【0142】
前記、本発明における分散剤とクレーの組み合わせ方法として示した〔1〕あるいは〔2〕の方法において、本発明の改質材または樹脂改質用組成物、あるいは本発明における分散剤とクレー、さらに必要により(B)を別々に順不同で、ポリオレフィン樹脂(C)に加える方法としては、〔1〕の場合は、例えば前記<1>または<2>の方法で得られた改質材またはこれに必要によりさらに(B)を加えた樹脂改質用組成物と(C)とを、前記<1>で例示した、溶融混練装置、必要により粉体混合機を用いて混合する方法、また、〔2〕の場合は、例えば本発明における分散剤およびクレー(必要により少量の水等の溶剤)、さらに必要により(B)と、(C)とを、前記<1>で例示した、溶融混練装置、必要により粉体混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0143】
[マスターバッチ樹脂組成物]
上記〔1〕あるいは〔2〕のいずれの方法においても、最終組成のポリオレフィン樹脂組成物を製造する際には、本発明の改質材のマスターバッチ樹脂組成物を経由して製造する(樹脂組成物のマスターバッチ製造法)ことも可能であり、樹脂改質効果の観点から該製造法が好ましい。該マスターバッチ樹脂組成物のうち、改質材が、層状構造を有するクレー以外のフィラーと本発明における分散剤とからなる場合の該樹脂組成物は、改質剤の添加が少量であっても得られる後述の成形体の機械的・熱的特性の向上が図れる等の優れた樹脂改質効果をもたらすものであり、また、改質材が層状構造を有するクレーと本発明における分散剤とからなる場合の該樹脂組成物は、樹脂に分散させる前のクレーの有機化工程を経由することなく製造でき、しかも上記と同様の優れた樹脂改質効果をもたらすものである。
【0144】
本発明の上記改質材のマスターバッチ樹脂組成物は、本発明の改質材または樹脂改質用組成物とポリオレフィン樹脂(C)からなり、該マスターバッチ樹脂組成物の重量に基づいて改質材の割合は樹脂改質効果の観点から好ましい下限は10%、さらに好ましくは15%、とくに好ましくは20%、作業性の観点から好ましい上限は80%、さらに好ましくは75%、とくに好ましくは70%である。
【0145】
ポリオレフィン樹脂(C)としては、エチレン系重合体、例えば高密度、中密度および低密度ポリエチレン、およびエチレンとC4〜30の不飽和単量体〔ブテン(1−ブテン等)、C5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸等〕との共重合体(共重合比30/70〜99/1、好ましくは50/50〜95/5)等;プロピレン系重合体、例えば〔ポリプロピレン、プロピレンとC4〜30の不飽和単量体(同上)との共重合体(共重合比、同上);エチレン/プロピレン共重合体(共重合比0.5/99.5〜30/70、好ましくは2/98〜20/80);C4以上のオレフィンの重合体、例えばポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1が含まれる。
【0146】
(C)は、通常10,000〜400,000、好ましくは20,000〜300,000のMnを有する。また、該ポリオレフィン樹脂には、重合法によるポリオレフィン、および減成されたポリオレフィン〔高分子量ポリオレフィン(好ましくはMn50,000〜400,000)を機械的、熱的および化学的に減成してなるもの〕が含まれる。
【発明の効果】
【0147】
本発明の分散剤は、下記の効果を奏する。
(1)少量の添加で、ポリオレフィン樹脂中へのフィラー分散効果に優れ、該フィラー含有ポリオレフィン樹脂の耐衝撃性、剛性を向上させる。
(2)ポリオレフィン樹脂の機械的・熱的特性の向上に寄与するフィラーの充填効果(以下、樹脂改質効果と略記)を充分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0148】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、性能評価は下記の試験法により行い、成形体試験片は射出成形した成形体から切り出したものを用いた。
【0149】
(1)X線回折パターン評価による格子面間隔(層間距離)dの測定
樹脂組成物およびその成形体試験片(厚み4mm)について、RINT2200粉末X線回折装置[理学電気(株)製]を用いて、X線の波長λ=0.154056nm、管電圧40.0KV、管電流30mA、発散スリット1/2°、散乱スリット1/2°の条件で反射光強度が極大となる反射角について測定を行い、得られた反射角の倍数2θ(°)から下記計算式を用いて格子面間隔d(nm)を求めた。2θのピークが0.1°以下に現れる、または確認できない場合はdを88nm以上と判断した。
d=λ/(2sinθ)
【0150】
(2)クレー層間剥離
樹脂組成物およびその成形体試験片(厚み4mm)(いずれも酸化ルテニウム染色処理したもの)について、樹脂組成物は直接、また成形体試験片はその中心部分の断面を走査型電子顕微鏡(倍率:10万倍)を用いて肉眼で観察した。評価基準は以下の通り。
◎:クレーが完全に剥離しており、クレー片が分散している。
○:クレーがほぼ剥離しており、2〜4層のクレーがわずかに残る。
△:クレーの剥離が不完全で、5層以上のクレーが残る。
×:クレーの層間が広がらず、そのまま樹脂に分散している。
【0151】
上記各基準において、クレー片とは、クレーの層間距離が広がった結果生じるクレー層一枚のこと、剥離とは、その一枚一枚が剥がれていること、また、そのまま樹脂に分散しているとはクレーに剥離がなく多層を形成したままの状態で樹脂中に観察されることを意味する。
【0152】
(3)衝撃強度
成形体試験片(厚み3.2mm)について、ASTM D256(ノッチ付、厚み3.2mm)に基づき、Method Aにて測定した。(単位:kJ/m
【0153】
(4)剛性
成形体試験片(厚み4mm)について、ASTM D790に基づき、試験片(10×4×100mm)、支点間距離60mmにて曲げ弾性率を測定した。(単位:MPa)
【0154】
製造例1
窒素導入管、排ガス留出管、撹拌装置および冷却管を備えた4ツ口フラスコに、市販のポリプロピレン(ペレット状)[ノーブレンH501、住友化学(株)製、以下同じ。]100部を窒素雰囲気下に入れ、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱し、撹拌しながら360℃で70分間熱減成を行った。熱減成物を180℃まで冷却した後フラスコより取り出してさらに室温まで冷却した後、粗粉砕した。得られた熱減成物の炭素1,000個当たりの二重結合量は2.7であった。窒素導入管、撹拌装置および冷却管を備えた別の4ツ口フラスコに、本熱減成物90部、無水マレイン酸10部およびキシレン100部を入れ、窒素置換後、窒素通気下に130℃まで加熱昇温して均一に溶解した。ここにジクミルパーオキサイド0.5部をキシレン10部に溶解した溶液を滴下した後、キシレン還流温度まで昇温し、3時間撹拌を続けた。その後、減圧下にキシレンを留去した後室温にて冷却し、ハンマーミルにて直径約2mmに粉砕してMn5,100、酸価51.1の無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ax−1)(粉末状)を得た。
【0155】
製造例2
製造例1において、ノーブレンH501に代えてプロピレン・αオレフィンコポリマー(ペレット状)[タフマーXR107L、三井化学(株)製]を用いたこと、360℃で70分間の熱減成を390℃で100分間、無水マレイン酸10部を17部、ジクミルパーオキサイド0.5部を0.9部にした以外は製造例1と同様にして、熱減成物および無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ax−2)(粉末状)を得た。該熱減成物の炭素1,000個当たりの二重結合量は6であり、(ax−2)は、Mn2,040、酸価81.8であった。
【0156】
製造例3
製造例1において、360℃で70分間の熱減成を390℃で200分間、無水マレイン酸10部を12部、ジクミルパーオキサイド0.5部を0.6部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、熱減成物および無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ax−3)(粉末状)を得た。該熱減成物の炭素1,000個当たりの二重結合量は10であり、(ax−3)は、Mn1,500、酸価62.5であった。
【0157】
製造例4
製造例1において、360℃で70分間の熱減成を340℃で10分間、無水マレイン酸10部を1部、ジクミルパーオキサイド0.5部を0.06部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、熱減成物および無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ax−4)(粉末状)を得た。該熱減成物の炭素1,000個当たりの二重結合量は0.3であり、(ax−4)は、Mn46,000、酸価5.6であった。
【0158】
製造例5
製造例1において、360℃で70分間の熱減成を330℃で5分間、無水マレイン酸10部を0.1部、ジクミルパーオキサイド0.5部を0.06部に代えたこと以外は製造例1と同様にして、熱減成物および無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ax−5)(粉末状)を得た。該熱減成物の炭素1,000個当たりの二重結合量は0.2であり、(ax−5)は、Mn80,000、酸価0.6であった。
【0159】
実施例1
窒素導入管、排ガス留出管、撹拌装置および冷却管を備えた冷却管付き4ツ口フラスコに、(ax−1)850部、キシレン850部を入れ、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて140℃に加熱し均一化した後、10分かけてジメチルアミノエトキシプロピルアミン144部を入れて2時間反応させた。100℃まで冷却した後、10分かけてジエチル硫酸59部を入れて反応を1時間継続した。その後、170℃、減圧にてキシレンを500部留去した後、130℃まで冷却し、離型紙を敷いたトレーに取り出した。160℃の減圧乾燥機にて残りのキシレンを留去した後、冷却、粉砕し、1,000部の変性ポリオレフィン(A1)(粉末状)を得た。(A1)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは1,340であった。
【0160】
実施例2
実施例1において、(ax−1)に代えて(ax−2)を用い、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン144部を250部に代えたこと以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(A2)(粉末状)を得た。(A2)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは780であった。
【0161】
実施例3
実施例1において、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン144部をN−(2−アミノエチル)−m−(N’,N’−ジメチルアミノ)ベンズアミド250部に代えたこと以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(A3)(粉末状)を得た。(A3)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは1,450であった。
【0162】
実施例4
実施例1において、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン144部をジメチルアミノエトキシエチルアミン120部、ジエチル硫酸59部をジメチル硫酸47部に変えたこと以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(A4)(粉末状)を得た。(A4)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは1,330であった。
【0163】
実施例5
実施例1において、(ax−1)に代えて(ax−3)を用い、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン144部をN−(13−アミノトリデシル)−m−(N’,N’−ジメチルアミノ)ベンズアミド550部に代えたこと以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(A5)(粉末状)を得た。(A5)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは1,000であった。
【0164】
実施例6
実施例1において、(ax−1)に代えて(ax−4)を用いた以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(A6)(粉末状)を得た。(A6)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは10,000であった。
【0165】
実施例7
実施例1において、(ax−1)に代えて(ax−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(A7)(粉末状)を得た。(A7)のオニウム塩基(b)1個当たりのMnは50,000であった。
【0166】
比較例1
実施例1において、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン144部をN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン100部に代えたこと以外は実施例1と同様にして、変性ポリオレフィン(比A1)(粉末状)を得た。(比A1)のオニウム塩基1個当たりのMnは1,200であった。
【0167】
製造例6
クレー[クニピアF、クニミネ(株)製モンモリロナイト、以下同じ。]20部を水(イオン交換水、以下同じ)に分散させた80℃のスラリー2,000部中にジステアリルジメチルアンモニウムクロライド21部を水に溶解させた80℃の水溶液1,500部を撹拌しながら一括混合した。30分間撹拌を行った後、沈殿物を濾別し、80℃の水200部で2回洗浄を行った。その後、離型紙上に取り拡げ、130℃の循風乾燥機にて60分間乾燥し、格子面間隔(層間距離)dが28nmの有機化クレー(L1)を得た。
【0168】
実施例8〜15、比較例2〜4
市販のポリプロピレン、変性ポリオレフィンおよびフィラーとを表1に示す配合量(部)に従ってヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間20分の条件で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得た。これらを用い射出成形機で所定の試験片を作成後、樹脂物性評価およびX線回折装置による評価を行った。結果を表1に示す。
【0169】
【表1】

【0170】
(注)*1 PP:ポリプロピレン[商品名「ノーブレンH501」、住友化学(株)製]
*2 クレー:モンモリロナイト[商品名「クニピアF」、クニミネ(株)製]
上記(注)は後述の表2、表3についても同じである。
【0171】
実施例16
変性ポリオレフィン(A1)60部およびクレー40部を2軸押出機にて、160℃、100rpm、滞留時間20分の条件で溶融混練した。得られた固形物を室温にて冷却した後、ハンマーミルで直径約2mmに粉砕して、dが88nm以上の樹脂用改質材(K1)を得た。
【0172】
実施例17
実施例16において、変性ポリオレフィン(A1)を(A3)に代えたこと以外は実施例16と同様にして、dが88nm以上の樹脂用改質材(K2)を得た。
【0173】
比較例5
実施例16において、変性ポリオレフィン(A1)を(比A1)に代えたこと以外は実施例16と同様にして、dが1.5nmの樹脂用改質材(比K1)を得た。
【0174】
実施例18
市販のポリプロピレン87.5部および(K1)12.5部をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間20分の条件で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得た。該組成物を用い射出成形機で所定の試験片を作成後、樹脂物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0175】
実施例19
実施例18において、(K1)を(K2)に代えたこと以外は実施例18と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0176】
比較例6
実施例18において、(K1)を(比K1)に代えたこと以外は実施例18と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0177】
【表2】

【0178】
実施例20
市販のポリプロピレン50部、クレー25部および(A1)25部をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、200℃、100rpm、滞留時間20分の条件で溶融混練した。得られた固形物を室温にて冷却した後、ハンマーミルで直径約1mmに粉砕して、dが88nm以上のマスターバッチ樹脂組成物(M1)を得た。
【0179】
実施例21
実施例20において、(A1)を(A3)に代えたこと以外は実施例20と同様にして、dが88nm以上のマスターバッチ樹脂組成物(M2)を得た。
【0180】
実施例22
(M1)20部および市販のポリプロピレン80部をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間20分の条件で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得た。該組成物を用い射出成形機で所定の試験片を作成後、樹脂物性評価を行った。結果を表3に示す。
【0181】
実施例23
実施例22において、(M1)を(M2)に代えたこと以外は実施例22と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0182】
比較例7
実施例22において、(A1)を(比A1)に代えたこと以外は実施例20と同様にして、dが2.8nmのマスターバッチ樹脂組成物(比M1)を得た。
【0183】
比較例8
実施例22において、(M1)を(比M1)に代えたこと以外は実施例22と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0184】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の分散剤は、ポリオレフィン樹脂に良好にフィラーを分散させることにより、特に高い衝撃強度および剛性を発現できることから、有機・無機フィラーの分散剤、ポリオレフィン系ナノコンポジット樹脂(フィラーがナノレベルに分散した複合樹脂)形成用分散剤として極めて幅広く用いられる。さらに、本発明の、分散剤とクレーを組み合わせた樹脂用改質材は、ポリオレフィン樹脂と混練するだけで樹脂の機械的・熱的特性を著しく向上させることができるため、各産業分野、特に建材分野や自動車分野におけるポリオレフィン樹脂用改質材として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,500〜100,000の数平均分子量を有するポリオレフィン(a)からなる疎水基と、下記一般式(1)で示されるオニウム塩基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たりの数平均分子量が750〜50,000である変性ポリオレフィン(A)からなる分散剤。
【化1】

[式中、R、RおよびRは、水酸基で置換されていてもよい、炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数3〜15のシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、フェニル、または、炭素数7〜15のアリールアルキルもしくはアルキルアリール基;Xは、エーテル結合およびアミド結合からなる群から選ばれる1種または2種の結合を有する、炭素数4〜20の2価の有機基;QはNまたはP;Zは対アニオンを表す。]
【請求項2】
(a)が、分子末端および/または分子内に炭素1,000個当たり0.2〜10個の二重結合を有するポリオレフィンである請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
(a)が、高分子量ポリオレフィンの熱減成物である請求項1または2記載の分散剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の分散剤とフィラーを組み合わせてなることを特徴とする樹脂用改質材。
【請求項5】
フィラーが層状構造を有するクレーである請求項4記載の樹脂用改質材。
【請求項6】
樹脂用改質材の重量に基づく分散剤の割合が5〜95%である請求項4または5記載の樹脂用改質材。
【請求項7】
フィラー有機化分散剤として、請求項1〜3のいずれか記載の分散剤のみを含有する請求項4〜6のいずれか記載の樹脂用改質材。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか記載の樹脂用改質材に、さらに、着色剤、補強剤、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、塗装性改良剤、その他の分散剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(B)を含有させてなる樹脂改質用組成物。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれか記載の樹脂用改質材または請求項8記載の樹脂改質用組成物とポリオレフィン樹脂(C)からなり、樹脂用改質材を10〜80重量%含有してなるマスターバッチ樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−280482(P2008−280482A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128095(P2007−128095)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】