説明

分散剤

【課題】有機液体媒体中に微粒子状固体を分散させるために有用な分散剤を提供する。
【解決手段】下記式1において、


Rが1〜25個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸に由来し、Zがポリエチレンイミンまたはポリアリルアミンに由来し、−(O−A−CO)−がC1〜4アルキル基で置換されてよいε‐カプロラクトンまたはδ‐バレロラクトンに由来し、Glyがオキシメチレンカルボニル基であり、n+mが2〜100である分散剤、ならびに、前記式においてRが25個以下の炭素原子を有する一価アルコールに由来し、Zがリン酸に由来し、−(O−A−CO)−がC1〜4アルキル基で置換されてよいε‐カプロラクトンまたはδ‐バレロラクトンに由来し、Glyがオキシメチレンカルボニル基であり、n+mが2〜100である分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいクラスの分散剤に、このような分散剤と共に微粒子状固体および有機媒体を含んでいる分散物(dispersion)に、ミルベース(millbases) に、そしてペイントおよび印刷インキでの、このような分散物およびミルベースの利用に、関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(オキシペンタメチレンカルボニル)鎖を含む分散剤は良く知られており、そして一般に、ε−カプロラクトンを含む重合により調製される。これらは、有機液体媒体中に微粒子状固体を分散させるのに特に有用であると言われており、そして酸もしくは塩基末端基を含んでいる。塩基末端基を含んでいる分散剤が、EP208041およびWO94/21368に記載されており、そして、その分散剤は、ε−カプロラクトンの重合時における連鎖停止剤としての脂肪族もしくはヒドロキシ脂肪族カルボン酸の存在下での、ε−カプロラクトンとポリ(エチレンイミン)との反応生成物を含んでいる。酸末端基を含んでいる分散剤が、EP164817に記載されており、そして、その分散剤は、連鎖停止剤としての脂肪アルコールの存在下で重合したε−カプロラクトンのリン酸エステルを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、このような分散剤の合成で用いられるε−カプロラクトンを、一部グリコール酸で置換えることにより極めて優れた分散剤を製造できることが見いだされた。グリコール酸とε−カプロラクトンおよび/またはδ−バレロラクトンとのブロックあるいはランダム共重合で調製される分散剤が特に有利であることが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の方法に従って、一般式1の分散剤(その塩類を含む)が提供される:
【0005】
【化1】

【0006】
式中: Rは水素または重合停止用基;
Zは、酸性基もしくは塩基性基または酸性基もしくは塩基性基のいずれかを含む部位であり;
Aは場合によりアルキル基で置換されているC3-7アルキレン基であり;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nとmは整数であり;そして、 n+mは2から100である。
【0007】
式1の分散剤は、以後“本分散剤”(The Dispersant") と呼ばれる。
n+mは、70以下であるのが望ましく、50以下であるのがより望ましく、そして20以下であるのがが特に望ましい。
【0008】
−[−(O−A−CO)n(Gly)m−]−で代表されるポリ(オキシアルキレンカルボニル)鎖(以後POAC鎖)は、ランダム共重合体あるいはブロック共重合体である。
【0009】
−(O−A−CO)−n−で代表されるポリ(オキシアルキレンカルボニル)鎖は、プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンまたはアルキル置換ε−カプロラクトン(それらの混合物を含む)から誘導されるのが望ましい。推奨されるラクトンは、ε−カプロラクトンとδ−バレロラクトンである。
【0010】
Glyで代表されるオキシメチレンカルボニル基は、グリコール酸から誘導されるのが望ましい。
Zが塩基性の基または塩基性の基を含む部位である場合、それはポリアミンもしくはポリイミンであるのが望ましい。
【0011】
n:mの比は、30:1と1:6の間、より望ましくは、20:1と1:5の間、そして より望ましくは10:1と1:5の間、そして特に10:1と1:1の間であるのが望ましい。R-[-(O‐A‐CO)n(Gly)m-]- で代表されるポリエステル鎖の分子量は、600から3,000であるのが望ましい。さらにまたこのポリエステル鎖の分子量は、800以上、そして特に1.000以上であるのが望ましい。
【0012】
Zが多官能性の場合、各Zに結合している一つ以上のR-[-(O‐A‐CO)n(Gly)m-]- 基が存在し得る。
ε‐カプロラクトン中のアルキル基(一つまたは複数個)は、直鎖でも分岐していてもよく、そして望ましくはC1-8アルキル基、より望ましくは、C1-6アルキル基そして特に望ましくはC1-4アルキル基である。このような基の例は、メチル基および第3ブチル基である。
【0013】
このアルキル置換ε‐カプロラクトン類は、アルキル置換シクロヘキサノンの酸化により得られ、従って、その多くは、アルキル置換ε‐カプロラクトンの混合物である。かくして2-メチルシクロヘキサノンの酸化は、7-メチル(95%)と3-メチルε‐カプロラクトン(5%)の混合物を生成することが多い。しかし、4-アルキルシクロヘキサノンの酸化は、5-アルキルε‐カプロラクトンだけを生成する。アルキル置換ε‐カプロラクトンの他の例は、6-メチル、4-メチル、5-メチル、5-第3ブチル、4,6,6-トリメチルおよび4.4.6-トリメチル誘導体である。7-メチルε‐カプロラクトンが推奨される。
【0014】
このラクトンとPOAC鎖のグリコール酸前駆体との共重合は、ヒドロキシ末端基とカルボキシル末端基を有する共重合体を与える。それゆえ、このR基およびZ基は、酸素もしくは、‐COO‐基のいずれかを介して、その共重合体に連結している。Zがポリアミンもしくはポリイミンのような塩基性の基、または塩基性の基を含む部位である場合には、R基は、水素またはPOAC鎖の酸素原子を介して結合している重合停止基であるのが望ましい。Zが、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基あるいはリン酸基のような酸性の基または酸性の基を含む部位である場合には、R基は、POAC鎖の‐CO‐基を介して結合している重合停止基であるのが望ましい。
【0015】
望ましい分散剤は、重合末端基によりエンドキャップされているPOAC酸(即ち、カルボン酸末端基を有するPOAC鎖)(以後、TPOAC酸)または、重合末端基によりエンドキャップされているPOACアルコール(即ち、ヒドロキシ末端基を有するPOAC鎖)(以後、TPOACアルコール)のいずれかから誘導される。
【0016】
本発明の第1の態様に従えば、本分散剤は、少なくとも二つの、式2のPOAC鎖を担持するポリアミンもしくはポリイミンを含んでなる:
【0017】
【化2】

【0018】
式中: VはPOAC連鎖部位-[-(O‐A‐CO)n(Gly)m-]- であり、そして、 Tは水素またはTPOAC酸を与える連鎖停止剤の残基である。
【0019】
望ましくは、このポリアミンは、ポリアリルアミンもしくはポリビニルアミンである。しかし、本発明の推奨される第1の態様では、本分散剤は、ポリイミン、特にポリ(C2-4アルキレンイミン)(以後“PAI”)を含んでなる。
【0020】
明らかに、式2のPOAC連鎖中の酸素およびカルボニル基は、基Tの結合の様式を示すために含まれているのであって、そのオキシアルキレンカルボニル基-[-(O‐A‐CO)n(Gly)m-]- 中に存在するこれらの基のなおそのほかに追加の酸素もしくはカルボニル基が存在することを表してはいない。
【0021】
各POAC鎖は、POAC鎖のカルボニル末端基とポリアミンもしくはポリイミン中の第1あるいは第2アミノ基の窒素原子との間に形成される共有結合アミド連結基‐CO‐N<、またはPOAC鎖のカルボキシレート末端基とポリアミンもしくはポリイミン中の置換アンモニウム基の正に荷電した窒素原子との間に形成されるイオン塩連結基‐COO− HN+≡、のいずれかにより、そのポリアミンもしくはポリイミンに連結されているのが望ましい。本分散剤は、少なくとも二つのPOAC鎖を含んでいるから、それは、合成時に用いられる反応条件の厳密さに依存してアミド連結基と塩連結基の混合物を含むこともある。
【0022】
本発明の第1態様の本分散剤は、便宜的に、一般式3により表される:
【0023】
【化3】

【0024】
式中: X−*−*−Xは、ポリアミンもしくはポリイミンを代表し、 Yは、アミド基または塩連結基によりポリアミンもしくはポリイミンに連結されているPOAC鎖であり;
qは、2から2000であり;そして POACは、前に規定した通りである。
【0025】
望ましくは、qは、4以上そして特に10以上である。qは、1000以下そして望ましくは500以下であることも望ましい。
Yにより示されるPOAC鎖と、X−*−*−Xにより示されるポリアミンもしくはポリイミンとの重量比が、30:1と1:1の間、より望ましくは25:1と4:1の間、そして特に20:1と5:1の間であることも望ましい。
【0026】
このポリアミンは、望ましくはPAIであり、そして、直鎖もしくは分岐のポリ(エチレンイミン)(以下PEI)である。
このPAIの重量平均分子量は、望ましくは500から600,000、より望ましくは1,000から200,000、さらに望ましくは1,000から100,000、特に望ましくは5,000から100,000、である。
【0027】
本発明の第1態様の本分散剤は、式4のTPOAC酸とポリアミンもしくはポリイミンを反応させることにより、またはポリアミンもしくはポリイミンとラクトンおよびグリコール酸とを重合停止用化合物の存在下で反応させることにより、得られる:
【0028】
【化4】

【0029】
式中: T、V、nおよびmは、前に規定した通りである。
このPOAC鎖の長さは、その合成工程における、連鎖停止剤もしくはカルボン酸のような停止用化合物の存在により調節することができる。本分散剤が、ポリアミンもしくはポリイミンの存在下でのラクトンとグリコール酸の重合により調製されるPOAC鎖を含む場合には、そのPOAC鎖は、ポリアミンもしくはポリイミン上で成長し、お互いに反応できないので、連鎖停止剤の必要性はより小さい。このような場合には、そのペンダントPOAC鎖は、ヒドロキシ基で停止される。即ち、式4のTPOAC酸中でTはHである。
【0030】
本分散剤は、少なくとも二つの第1、第2または第3アミノ基を有するポリアミンもしくはポリイミンとTPOAC酸もしくはその前駆体とから誘導され、その場合、そのポリアミンもしくはポリイミン中のアミノ基とそのPOAC酸のカルボキシ末端基との反応生成物は、アミド結合もしくは塩結合を生成する。前駆体と言うのは、このラクトン(一種または複数)およびグリコール酸を意味し、そしてこの用語は、この後もそのまま使用される。ポリアミンもしくはポリイミンが第3アミノ基を含んでいると、塩結合だけが生成し得るが、それ以外では、反応条件に依存して、塩結合および/またはアミド結合が生成する。一般に、習熟した化学者には良く知られているように、低温および/または短い反応時間のようなマイルドな反応条件は、塩結合の生成を促進し、そして高温および/または長い反応時間のような、よりきびしい反応条件は、アミド結合の生成を促進する。
【0031】
本発明の第1態様の望ましい一つの分散剤は、望ましくはアミノ基を含んでいないカルボン酸から誘導される停止用基Tを含んでいる。望ましいカルボン酸は飽和もしくは不飽和であり、そしてヒドロキシ基、C1-4アルコキシ基またはハロゲンで置換されていることもある、C1-25脂肪族カルボン酸である。望ましい脂肪族カルボン酸は、10個もしくは、それ以上の炭素原子を含んでいる。この脂肪族カルボン酸が置換されている場合、その置換基は望ましくはヒドロキシ基である。カルボン酸の例は、メトキシ酢酸、乳酸、カプロン酸、ラウリル酸、ステアリン酸、リシノレイン酸、12‐ヒドロキシステアリン酸、12‐ヒドロキシドデカン酸、5-ヒドロキシドデカン酸、5-ヒドロキシデカン酸および4-ヒドロキシデカン酸である。
【0032】
本発明の第1態様の本分散剤が遊離のアミノ基を含んでいる場合、これらは、酸または四級化剤との反応により置換アンモニウム基に転化され、本分散剤は置換アンモニウム塩の形になり得る。この目的に適した試薬は、酢酸、硫酸、塩酸、アルキルスルホン酸、アルキル水素硫酸エステル、および酸型の染料および顔料を含むアリールスルホン酸、のような鉱酸および強い有機酸もしくは酸性塩および、例えばジメチル硫酸(DMS)や塩化メチルおよび塩化エチルなどのハロゲン化アルキルのような四級化剤である。
【0033】
本発明の第1態様の本分散剤は、ポリアミンもしくはポリイミンとPOAC酸またはその前駆体を、望ましくは不活性雰囲気中、そして場合によりエステル化触媒の存在下で、50℃から250℃の間の温度で反応させることにより得られる。この温度は、80℃以上そして特に100℃であるのが望ましい。分散剤の炭化を最少にするために、この温度は150℃以下であるのが望ましい。
【0034】
この不活性雰囲気は、最終生成物または出発原料と反応しない任意の気体であり、そして周期律表の不活性気体そして特に窒素である。
本分散剤が、ポリアミンもしくはポリイミン、重合停止剤および前駆体を反応させることによる単一工程で合成される場合には、テトラアルキルチタネート:例えばテトラブチルチタネート、有機酸の亜鉛塩:例えば酢酸亜鉛、脂肪族アルコールのジルコニウム塩:例えばジルコニウム・イソプロポキシド、トルエンスルホン酸もしくは、ハロ酢酸:例えばトリフルオロ酢酸のような強有機酸、のようなエステル化触媒を含んでいるのが望ましい。ジルコニウム・イソプロポキシドとメタンスルホン酸が推奨される。本発明の第1態様の本分散剤が単一工程で合成される場合には、より高い温度が必要なことがあり、そしてこの温度は、標準的には150‐180℃である。
【0035】
しかし、TPOAC酸は、それをポリアミンもしくはポリイミンと反応させる前に、別に調製するのが望ましい。この場合、この前駆体と重合停止剤を、エステル化触媒の存在下、不活性雰囲気中で150‐180℃で相互に反応させる。次いで、それに続いてのTPOAC酸とポリアミンもしくはポリイミンと反応は100‐150℃の温度で行われる。
【0036】
PAIがPEIである場合、TPOAC酸とPEIの重量比は、本分散剤が最終的に、微粒子状固体を極性または非極性有機媒体のいずれに分散させるために用いられるかどうかに依存して、広い範囲で変えられる。TPOAC酸とPEIの重量比が、30:1から1:1、望ましくは25:1から4:1そして特に20:1から5:1である場合に有用な結果が得られた。
【0037】
本発明の第2態様に従って、Zが、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選ばれる酸性基または、酸性基を含む部位である式1の分散剤が提供される。
【0038】
本発明の第2の態様の推奨される分散剤は式5の化合物である:
【0039】
【化5】

【0040】
式中: AおよびDは、その一つが酸性基であるか、または酸性基を担持しており、そして他方は、TPOAC鎖を親水性にしない重合停止用基であるところの、基であり;そして V、nおよびmは前に規定した通りである。
【0041】
式5の本分散剤で、Dが酸性基を担持している場合、Aは、式A1−COOHのエステル化できるカルボン酸のA1−CO‐基であるのが望ましく、式中、A1は水素または、場合により置換されているC1-50ヒドロカルビル基である。A1は、場合により置換されているアルキル、アルケニル、シクロアルキルあるいはポリシクロアルキルであるのが望ましい。A1は、35以下、そして特に25以下の炭素原子を含んでいるのが望ましい。この場合、Dは、多価であるのが望ましく、より望ましくは二価あるいは三価であり、その酸基をPOAC鎖に連結する架橋基であり、そして望ましくは、式‐K‐G‐J‐であり、式中KはO、S、NRもしくは直接連結であり、そしてJはO、NRもしくは直接連結であり、この中でRは水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキルあるいはフェニルであるか、または、KとJが共にNRである場合には、この二つのR基は、それらが付いているの二つの窒素原子を連結して単一のアルキレンあるいはアルケニレン基を形成していてもよく、そして、Gはアルキレン、アルケニレン、シクロアルキレンもしくはアリーレンである。‐K‐G‐J‐中のアルキルもしくはアルケニル基は、20個までの炭素原子を含んでいるのが望ましく、そしてそのシクロアルキル基は、4から8個の炭素原子を含んでいるのが望ましい。
【0042】
式5の化合物で、Aが酸性基を担持している場合、Dは、アルコール、チオールまたは第1もしくは第2アミンであるD1‐K‐H(ここでD1は、上に規定したようなA1と類似の性格の脂肪族もしくは脂環式の基である)の残基であるのが望ましい。この場合、Aは酸性基それ自身であるのが望ましく、そしてPOAC鎖はヒドロキシ末端基を担持しているのが望ましい。このヒドロキシ基は、本分散剤が一つまたはそれ以上の硫酸エステルあるいはリン酸エステル(混合物を含む)を含む場合には、適切な硫酸化剤あるいはリン酸化剤と反応させることによりエステル化して硫酸エステルあるいはリン酸エステルにすることができる。
【0043】
リン酸基が望ましく、そして推奨されるリン酸化剤は、P25、POCl3、ポリリン酸またはホスホン酸である。
1およびA1中に、場合により含まれる置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシおよび他の非イオン性種であり、それらは、そのPOAC鎖を親水性にしないことを前提とする。
【0044】
望ましくは、AまたはDで代表される、酸性基から離れている基は、少なくとも6個、そしてより望ましくは少なくとも10個の炭素原子を含んでいる。
本発明の第2態様での酸性基は、フリーの酸型でもよく、またはアンモニア、アミン、アミノアルコールのような塩基、またはアルカリ金属あるいはアルカリ土金属のような無機金属、の塩として存在していてもよい。
【0045】
本発明の第2態様の推奨される分散剤の一つは、一般式6分散剤である:
【0046】
【化6】

【0047】
式中: A2は、水素もしくは一価の炭化水素あるいは置換炭化水素基であり:そして V、nおよびmは、前に規定した通りである。
【0048】
2は、直鎖もしくは分岐、飽和もしくは不飽和のアルキル基であるのが望ましい。またA2は、少なくとも6個そして望ましくは、少なくとも10個の炭素原子含んでいるのが望ましい。A2は、35以下そして特に25以下の炭素原子を含んでいるのが望ましい。
【0049】
2が置換されている場合、これら置換基は、D1およびA1で規定されたのと同じである。
本発明の第2態様の第2の推奨される分散剤は、一般式7の分散剤である:
【0050】
【化7】

【0051】
式中: A3−COは、エステル化できる酸A3‐COOHの残基であり;
Lは、ホスホン酸基、スルホン酸基またはメチレンカルボン酸基であり;
Mは、カチオンであり;
wは1または2であり;そして V、D、nおよびmは前に規定した通りである。
【0052】
3は、場合により置換されている脂肪族あるいは脂環式基である。この脂肪族基は、直鎖もしくは分岐、飽和もしくは不飽和の基である。A3は、35以下そしてより望ましくは、25以下の炭素原子を含んでいるのが望ましい。A3中に、場合により含まれている置換基は、ハロゲン、第3アミンおよびC1-6アルコキシ基である。
【0053】
3は、未置換であるのが望ましい。
本発明の第2態様の特に推奨される分散剤は、一般式8の分散剤である:
【0054】
【化8】

【0055】
式中: L1は、硫酸基あるいはリン酸基であり;
1、J、V、M、n、mおよびwは、前に規定した通りである。
【0056】
1は、直鎖もしくは分岐、飽和もしくは不飽和の基でよく、そして35以下そしてより望ましくは、25以下の炭素原子を含んでいるのが望ましい。
Jは、酸素であるのが望ましい。
【0057】
1中に場合により含まれている置換基は、ハロゲン、第3アミノおよびC1-6アルコキシ基である。
1は、未置換であるのが望ましい。
【0058】
Dにより代表される架橋基の例は、‐NHC24‐、‐OC24‐、‐OC24O‐、‐OC24NH‐、‐NH(CH2zNH‐(式中zは2から5)、ピペラジン‐1,4-イレン、およびジアミノフェン‐1,4-イレンである。
【0059】
A1 、A2 およびA3 により代表される基の例は、メチル、エチル、CH3(CH24‐、CH3(CH210‐、CH3(CH214‐、CH3(CH216‐、HO(CH25‐、CH3(CH27CH=CH(CH27‐、CH3(CH228‐、CH3(CH25CH(HO)CH2CH=CH(CH27‐、およびCH3OCH2‐およびアビエチン酸の残基、即ち、COOH基を含まないアビエチン酸である。
【0060】
1により代表される基の例は、メチル、エチル、CH3(CH29‐、CH3(CH211‐、CH3(CH215‐、CH3(CH217‐、CH3(CH229‐、CH3(CH27CH=CH(CH27‐、CH3OCH2‐、CH3(CH24CH=CHCH2CH=CH(CH27‐、およびアビエチルアルコールの残基、即ち、OH基を含まないアビエチルアルコールである。
【0061】
本発明の第2態様の本分散剤は、ヒドロキシおよびカルボン酸末端基を有するPOAC酸、または重合停止末端基とヒドロキシ基あるいはカルボン酸基を有するPOAC酸(TPOAC化合物)を、それと反応する基および末端酸性基を有する化合物、と反応させることにより得られる。また代替法では、このPOAC酸またはTPOAC化合物は、この酸性基の前駆体と、あるいは、この酸性基の前駆体と続いて反応される二官能性の化合物、と直接反応させられる。この方法では、このPOAC酸またはPOAC化合物は、グリコール酸とラクトン(一種または複数)および重合停止化合物からその場で合成され、そして直接、本発明の第2態様の本分散剤に転化される。この酸性基を含む適切な化合物は、グリシンのようなα‐アミノ‐またはα‐ヒドロキシアルカンカルボン酸、およびアミノエタンスルホン酸のようなアミノ‐ヒドロキシ‐有機スルホン酸あるいはホスホン酸である。酸性基それ自身の適した前駆体は、P25およびポリリン酸である。POAC酸またはTPOAC化合物と酸性基の間に連結基を生成することができる適した二官能性化合物は、ポリアミン、ポリオールおよびヒドロキシアミン類である。
【0062】
式6の本分散剤は、ラクトン(一種または複数)とグリコール酸を重合し、それに続けて、ヒドロキシ基を含まないカルボン酸、A2COOHと反応させることによるか、またはグリコール酸とラクトン(一種または複数)を、重合停止化合物として作用するA2COOHの存在下で重合させることにより、得られる。
酸A2COOHの例は、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ラウリル酸およびステアリン酸であり、そして天然に存在するトール油脂肪酸のような油である。
【0063】
このPOAC酸もしくは、その前駆体は、A2COOHと、エステル化反応時に生成する水と共沸混合物を生成し得るトルエンあるいはキシレンのような適切な炭化水素溶媒中で反応される。この反応は、望ましくは、窒素のような不活性雰囲気中、80℃と250℃の間の温度、望ましくは150℃から180℃の温度で行われる。望ましくは、この反応は、前に規定したようなエステル化触媒の存在下で行われる。
【0064】
本発明の第2態様の本分散剤は、式6の化合物を、少なくとも一つの酸性基をも含み、そして式6の化合物のカルボン酸基と反応し得る、適切な共‐反応物と反応させることによっても得られる。このカルボン酸基と反応し得る基の例は、アミノ基およびヒドロキシ基である。共−反応物の例は、グリシンのようなアミノ酸および乳酸のような分子鎖の短いヒドロキシ酸である。
【0065】
本発明の第2態様の本分散剤は、式6の化合物を、カルボン酸基と反応するヒドロキシまたはアミノ基のような少なくとも一つの反応性基と少なくとも一つの他の反応性基を含む連結化合物と反応させ、次いで、そのようにして得られた中間生成物を、酸性基と、その連結化合物の該他の反応性基と反応し得る基とを含む化合物と反応させる、間接的二工程反応によっても得られる。適した連結化合物に含まれるのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのような、ポリオール類、ジアミン類およびヒドロキシアミン類である。ヒドロキシアミン連結化合物は、そのヒドロキシ基とアミノ基の反応性に差があり、オリゴマ中間体生成物が減るので望ましい。式6の化合物がそれと反応する、酸性基と該他の反応性基を含んでいる適した連結化合物は、リン酸、硫酸、クロロスルホン酸およびスルファミン酸のような強い無機酸、およびアルキル‐およびアリール−ホスホン酸、アルキル−およびアリール−スルホン酸おびびモノクロロ酢酸のような有機酸である。
【0066】
式6の化合物からの、本発明の第2態様の本分散剤の合成では、式6の化合物の、酸性基を含む化合物との反応(直接ルートの場合)または連結化合物との反応(間接ルートの場合)は、関与する反応物に適した条件下で行われる。かくして、式6の化合物がグリシンのような官能性の酸と直接反応される場合、これら反応物は、希望に応じて、キシレンのような溶媒の存在下で、そして場合により、前に規定したエステル化触媒存在下で、その反応混合物の酸価が適切な水準に低下するまで、180℃から250℃の温度で加熱される。これらの反応物は、式6の化合物中のカルボキシとその酸性基を担持する化合物中のヒドロキシ基あるいはアミノ基に対して大体化学量論に当たる量用いられるのが望ましい。間接ルートの場合には、得られる中間体生成物が、酸性基を担持する化合物との続いての反応に利用できる該他の反応性基をまだ含んでいることを確実にするために、連結化合物中のただ一つの反応基だけが用いられることを除いて、式6の化合物と連結化合物の間の反応に似た条件が用いられる。この連結化合物がヒドロキシルアミンである場合、その反応温度は、望ましくは150℃から200℃である。この場合もまた、希望に応じて、不活性溶媒または稀釈剤および/または触媒が存在してもよい。
【0067】
間接ルートの第2工程では、その中間生成物は、酸性基を担持する化合物と、その反応混合物の酸価が実質的に一定に達することにより示される反応の完結に充分な温度と時間で反応される。酸性基を含むこの化合物が、リン酸または硫酸のような多塩基酸である場合には、その中の、一つまたは二つ、特に一つのイオン化し得る水素原子が反応されるのが望ましく、そして反応中に生成した水を除去する試みはしないのが望ましい。普通、この反応は、40から70℃で約3時間で完了し、特に硫酸を使用する場合には、生成物の脱水が起きる危険があるので、より厳しい条件は避けるのが望ましい。このような複雑な問題は、モノクロロ酢酸の場合には生じないが、反応は、よりゆっくり進み、そしてより強制的な条件が必要になる。一般に、酸性基を含む化合物は、その前駆体中の利用可能な反応基に対して、大体化学量論に当たる量が用いられるが、希望に応じて、より少ない量またはより多い量が用いられることもある。
【0068】
Jが直接連結である、式7の本分散剤は、末端カルボン酸基を有するPOAC酸をアミノ−あるいはヒドロキシ−有機スルホン酸エステル、そして望ましくは、アミノ−あるいはヒドロキシアルキルリン酸エステルと反応させることにより得られる。JがNRである、式7の本分散剤は、POAC酸をジオールまたはアミノアルコールのようなヒドロキシアミノ化合物と反応させ、そして続いて、この生成した中間体のヒドロキシ末端基をP25あるいはポリリン酸のようなリン酸化剤と、またはクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させることにより得られる。
【0069】
Kが直接連結である、式7の本分散剤は、式9のTPOAC酸を、
【0070】
【化9】

【0071】
式10の化合物と反応させることにより得られる:
【0072】
【化10】

【0073】
式中: A3、V、K、G、L、M、n、mおよびwは、前に規定した通りである。
Kが、OあるいはNRである、式7の本分散剤は、式9のTPOAC酸を、式11の化合物、
【0074】
【化11】

【0075】
と反応させ、そして続いて、硫酸化剤もしくはリン酸化剤と反応させることにより得られる。
特に推奨される式8の分散剤は、グリコール酸およびラクトン(一種または複数)を、一価のアルコールまたは第1あるいは第2モノアミンの存在下で重合させて、ヒドロキシ末端基を有するTPOACアルコール、即ちヒドロキシ末端基と重合停止末端基を有するPOAC鎖、を生成させることにより得られる。一価のアルコールは、特に、35個以下の炭素原子、そしてより特定すれば、25個以下の炭素原子を有する物が望ましい。ラウリルアルコールが特に推奨される。このTPOACアルコールは、続いてリン酸化剤もは硫酸化剤と反応される。リン酸化剤としては、特に、P25とポリリン酸が推奨される。
【0076】
このTPOACアルコールは、TPOAC酸の合成に用いられた条件に類似の条件下で、グリコール酸およびラクトン(一種または複数)を一価のアルコールと反応させるることにより得られる。
【0077】
式8のリン酸エステルである本分散剤は、TPOACアルコールとリン酸化剤反応させることにより得られ、その場合、アルコールとリン酸化剤の各リン原子の比は、3:1から1:1、そして特に2:1から1:1である。各TPOACアルコールとリン酸化剤の各リン原子の比は2より小さいことが特に望ましく、例えば、この分散剤がモノ−およびジ−リン酸エステルの混合物である場合、約1.5:1である。
【0078】
このTPOACアルコールとリン酸化剤の間の反応は、無水条件下で、窒素のような不活性雰囲気中で行われるのが望ましい。この反応は、不活性溶媒中で行われることもあるが、無溶媒で、TPOACアルコールとリン酸化剤を反応させるのが、より便利である。この反応温度は、60℃より上、特に80℃より高いのが望ましい。分散剤の炭化を避けるめに、この温度は、120℃より低く、そして特に、100℃より低いのが望ましい。
【0079】
余り推奨できない変更として、式8の本分散剤は、前もって調製したPOACと一価のアルコールと反応させ、そして続いてこのTPOACアルコールをリン酸化剤または硫酸化剤と反応させることによっても合成される。
【0080】
本発明の第2態様の本分散剤は、酸性基を有する分散剤がアルコールまたはアルカノールアミンと反応することにより生成した、追加のエステル、アミドまたはアミン塩基を含んでいることもある。
【0081】
本発明の第2態様の本分散剤は、遊離の酸の形でもよく、あるいは、アルカリ金属、アンモニア、アミン、アルカノールアミンあるいは第4アンモニウム塩との塩の形でもよい。本発明の第2態様の本分散剤は、アミンとの塩の形であるのが望ましい。適したアミンの例は、n−ブチルアミン、ジエタノールアミンおよびジメチルアミノプロピルアミンである。
【0082】
本発明の第1態様の本分散剤は、有色酸(coloured acid) の塩の形であってもよい。“有色酸”という用語は、少なくとも1個、望ましくは、1から6個の酸基、特にスルホン酸、ホスホン酸もしくはカルボン酸基を含んでいる有機顔料あるいは染料を意味する。推奨される有色酸は、銅フタロシアニンもしくは深色の顔料、特に、分子当たり、平均して0.5から3個のスルホン酸基を含むスルホン化銅フタロシアニンである。
【0083】
本発明の方法による本分散剤の合成に用いられる中間体の多くは、特に本発明の第1態様の分散剤を製造するために用いられたTPOAC酸および本発明の第2態様の推奨される分散剤TPOACアルコールは、新規物質である。
【0084】
かくして本発明の方法により、式12のTPOAC酸:
【0085】
【化12】

【0086】
および式13のTPOACアルコールが提供される:
【0087】
【化13】

【0088】
式中: R、V、D1、J、nおよびmは、前に規定した通りである。
前に指摘したように、この分散剤は、有機溶媒中に微粒子状固体を分散するために特に有用である。
【0089】
本発明のさらなる態様に従って、微粒子状固体と式1の分散剤を含んでなる組成物が提供される。
本発明のなおさらなる態様に従って、式1の分散剤、微粒子状固体および有機媒体を含んでなる分散物が提供される。
【0090】
本分散剤中に存在する固体は、任意の無機もしくは有機の固体材料でよく、それらは、当該する温度で実質的に、有機溶媒に不溶で、そして、その中で微分散した形で安定化されているのが望ましい。
【0091】
適した固体の例は、溶剤インキ用顔料;ペイントおよびプラスチック材料用顔料、稀釈材および充填材;染料、特に分散染料;溶剤染色浴、インキおよび他の溶剤利用系用の光学的光沢剤および繊維助剤;オイル・ベースおよび逆相‐エマルション掘削用マッド用固体;ドライクリーニング液中の汚物および固体;微粒子状セラミック材料;磁性材料および磁気記録媒体;および有機媒体中の分散物として使用される、殺菌剤、農業用化学薬品および医薬品、である。
【0092】
望ましい固体は、例えば、カラー・インデックスの第3版(1971)および、それに続く改定版および補巻の、“顔料”という標題の章に、記載されている、既知のクラスの顔料中の任意の顔料である。無機顔料の例は、二酸化チタン、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、硫化水銀(朱)、ウルトラマリーンおよび、クロム塩、モリブデン塩および混合クロム塩を含むクロム顔料、および鉛、亜鉛、バリウム、カルシウムおよび混合物の硫酸塩およびそれらの変性物であり、これらは、プリムローゼ、レモン、ミドル、オレンジ、スカーレットおよびレッド・クロムの名前で緑黄色から赤色の顔料として市場から入手できる。有機顔料の例は、アゾ、ジスアゾ、縮合アゾ、チオインジゴ、インダンスロン、イソインダンスロン、アンサンスロン(anthanthrone)、アントラキノン、イソジベンザンスロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドンおよびフタロシアニン・シリーズ、特に銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化誘導体、そしてまた、酸性、塩基性および媒染染料のレーキからの顔料である。カーボンブラックは、厳密には無機顔料であるが、その分散性は、より有機顔料に似た挙動をする。推奨される有機顔料は、フタロシアニン類、特に銅フタロシアニン、モノアゾ、ジスアゾ、インダンスロン、アンスランスロン、キナクリドンおよびカーボンブラックである。
【0093】
他の推奨される固体は、タルク、カオリン、シリカ、バライト(重晶石)およびチョークのような増量材および充填材;アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合窒化ケイ素−アルミニウム、および金属チタネートのような微粒子状セラミック材料;遷移金属、特に鉄およびクロムの磁性酸化物、例えばγ‐Fe23、Fe34およびコバルトをドープした酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト類、特にバリウム・フェライト類のような微粒子状磁性材料;および金属粒子、特に金属鉄、ニッケル、コバルトおよびそれらの合金の粒子;そして殺菌剤、フルトリアフェン(flutriafen)、カルベンダジム(carbendazim)、クロロサロニル(chlorothalonil)およびマンコゼブ(mancozeb)のような農業用化学薬品である。
【0094】
本発明の分散物中に存在する有機媒体は、望ましくは、極性有機媒体もしくは実質的に非極性の芳香族炭化水素あるいはハロゲン化炭化水素である。有機媒体に関連しての“極性”という用語は、Journal of Paint Technology,Vol.38,1966,page 229、にクロウリー(Crowley)達が、“溶解度への三次元手法”(“A Three Dimensional Approach to Solubility”)という標題の報告中で説明しているような、中程度から強い結合を形成し得る有機液体もしくは樹脂を意味する。このような有機媒体は、一般に、上述の報告中で規定されているように、5またはそれ以上の数の水素結合を有している。
【0095】
適した極性有機液体の例は、アミン類、エーテル類、特に、低級アルキルエーテル類、有機酸類、エステル類、ケトン類、グリコール類、アルコール類およびアミド類である。このような中程度に強い水素結合をしている液体の多くの特定例が、イベルト メラン(Ibert Mellan)による“相溶性と溶解度”(“Compatibility and Solubility")という表題の本(Noyes Development Corporation により1968年に出版)の39‐40ページの表2.14に示されており、そしてこれらの液体は全て、本明細書で用いられているような極性有機液体の用語範囲内に入る。
【0096】
推奨される極性有機液体は、ジアルキルケトン類、アルカンカルボン酸とアルカノールのアルキルエステル類、特に、全部で6個以下の炭素原子を含むような液体である。推奨される、そして特に推奨される液体の例として挙げられるのは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn-アミルケトンおよびシクロヘキサノンのようなジアルキルおよびシクロアルキルケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、メトキシプロピルアセテートおよび酪酸エチルのようなアルキルエステル類;エチレングリコール、2-エトキシエタノール、3-メトキシプロピルプロパノール、3-エトキシプロピルプロパノール、2-ブトキシエチル・アセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-エトキシプロピルアセテートおよび、2-エトキシエチルアセテートのようなグリコール類およびグリコールエステルおよびエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールおよびイソブタノールのようなアルカノール類およびジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランのようなジアルキルおよび環状エーテル類である。
【0097】
単独で、または上述の極性溶媒との混合物として用いられる、実質的に非極性である有機液体は、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタンおよびデカンのような脂肪族炭化水素および、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレンおよびクロロベンゼンのようなハロゲン化脂肪族および芳香族炭化水素である。他の炭化水素の例は、ホワイト・スピリットのような高沸点の芳香族および脂肪族系蒸溜物として市場から入手できる炭化水素である。
【0098】
本発明の分散物形状物のための媒体として適した極性樹脂は、ペイントおよびインキなどの様々な用途に用いられる、インキ、ペイントおよびチップの調製に適している成膜性の樹脂である。このような樹脂の例に含まれるのは、ヴァースアミド(VersamidTM)およびウォルフアミド(WolfamidTM)のようなポリアミド類、およびエチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースのようなセルロースエーテル類である。ペイント樹脂の例に含まれるのは、ショートオイル・アルキッド/メラミン‐ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル/メラミン‐ホルムアルデヒド樹脂、熱硬化性アクリル/メラミン‐ホルムアルデヒド樹脂、ロングオイル・アルキッド樹脂、およびアクリルおよび尿素/アルデヒド樹脂、のようなマルチ‐メディア樹脂である。他の樹脂の例は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂およびポリエチレン樹脂である。
【0099】
希望により、この分散物は、他の成分、例えば、樹脂(樹脂が、その有機媒体を既に構成していない場合)バインダー、(GB-A-1508576およびGB-A-2108143に記載されているような)流動化剤、沈降防止剤、可塑剤、レベリング剤および保存剤、を含んでいてもよい。
【0100】
これら分散物は、普通、5から95重量%の固体を含んでおり、その正確な量は、その固体の性質および固体と有機媒体の相対密度に依存する。例えば、その固体が有機顔料のような有機物である分散物は、その分散物の総重量をベースとして、15から60重量%の固体を含んでいるのが望ましく、一方、その固体が無機顔料、充填材もしくは増量材のような無機物である分散物は、40から90重量%の固体を含んでいるのが望ましい。
【0101】
この分散物は、分散物の調製のために知られている任意の常用の方法で得られる。かくして、固体、有機媒体および分散剤は任意の順序で混合され、次いで、この混合物を機械的処理:例えばボールミル処理、ビーズミル処理、グラベル(砂利)ミル処理またはプラスチックミル処理、にかけて、その固体粒子を適切な大きさにする。あるいはまた、この固体は、その粒径を小さくするために、独立に、または有機媒体あるいは分散剤のいずれかとの混合物として処理し、次いで他の一つの成分あるいは複数の成分を添加して、その混合物を掻き混ぜて、分散物を調製する。
【0102】
この組成物が乾燥した形で求められる場合には、液体媒体は、蒸発のような簡単な分離法で、その固体から容易に除去されるように、揮発性であるるのが望ましい。しかし、この分散物は、液体媒体を含んでなるのが望ましい。
【0103】
この乾燥した組成物が、基本的に、本分散剤と微粒子状固体からなる場合には、それは、その微粒子状固体の重量をベースにして少なくとも0.2%、より望ましくは少なくとも0.5%、そして特に少なくとも1.0%の分散剤を含んでいるのが望ましい。この乾燥組成物は、重量ベースで、100%以下、望ましくは50%以下、より望ましくは20%以下、そして特に10%以下の微粒子状固体を含んでいるのが望ましい。
【0104】
前に説明したように、本発明の本分散剤は、微粒子状固体と成膜性樹脂バインダーの両方の存在下で、その微粒子状固体を液体媒体中で粉砕する場合のミル−ベース(mill-bases)を調製するのに特に適している。
【0105】
かくして、本発明のよりさらなる態様に従って、微粒子状固体、分散剤および成膜性樹脂を含んでなるミル−ベースが提供される。
標準的には、このミル‐ベースは、そのミル−ベースの総重量を基にして、20から70重量%の微粒子状固体を含んでいる。この微粒子状固体は、そのミル−ベースの30重量%以上、そして特に50重量%以上であるのが望ましい。
【0106】
このミル−ベース中の樹脂の量は、広い範囲にわたって変えることができるが、望ましくは、このミル−ベースの連続/液体相の10重量%以上、そして特に20重量%以上であるのが望ましい。この樹脂の量は、このミル−ベースの連続/液体相の50重量%以下、そして特に40重量%以下であるのが望ましい。
【0107】
このミル−ベース中の分散剤の量は、その微粒子状固体の量に依存するが、ミル−ベースの0.5から20重量%そしてより望ましくは、0.5から5重量%である。
【0108】
本発明の分散剤を含む分散物およびミル−ベースは、ペイント、特に、高固形分ペイント;インキ、特に、フレキソ印刷用、グラビヤ印刷用およびスクリーン印刷用インキ、および非水系セラミック加工、特に、テープ−被覆加工、ドクターナイフ加工、押出しおよび射出成型タイプの加工、で使用するのに特に適している。
【0109】
本発明の本分散剤は、ε−カプロラクトンから誘導される既知の分散剤以上の利点を示す。特に、本分散剤は、溶媒のような有機媒体中で非常によい溶解性を示し、そして4℃で長期間4℃で貯蔵した時に分離したり、結晶が析出することがない。低温で貯蔵した場合、−24℃で分離が起きることがあるが、この分散剤は、4−10℃に暖めると容易に再溶解する。ペイントおよびペイント用インキに混和した場合、本発明の分散剤は、得られるペイントおよびインキに、より高い光沢読取り値(gloss readings)および、より小さいヘイズ価(haze values)を与える。
【0110】
本発明は、以下の実施例によりさらに例示される。実施例中、量についての引用は、そうでないと指示しない限り、全て重量部である。
実施例
アルキルε‐カプロラクトン中間体の合成ラクトン1 4-および6-メチルε‐カプロラクトン
3-メチルシクロヘキサノン(10部、0.089 M、例えば、Aldrich 社)をジクロロメタン( 400mL)に溶解し、そして重炭酸ソーダ(37部)を、窒素雰囲気下、18‐20℃で、激しく撹拌しながら少しずつ加えた。次いで、3-クロロペルオキシ安息香酸(24.17 部、0.098 M、例えば、Fluka 社)のジクロロメタン(100 mL)懸濁液を、外側から冷却して、温度を20℃以下に維持しながら、10分間かけて添加し、そしてこの反応を、18−20℃で撹拌しながら、さらに4時間続けた。次に、この反応混合物を亜硫酸ナトリウムの10%水溶液(2×250 mL)で、次いで水(2×250 mL)でふりまぜ、そして次いで、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。その溶媒を蒸発した後、4-および6-メチルε‐カプロラクトンの混合物が、淡単黄色のオイル(8 部)として得られた。
ラクトン2 3-および7-メチルε‐カプロラクトン
このラクトンは、3-メチルシクロヘキサノンの代わりに、同じ量の2-メチルシクロヘキサノン(例えば、Aldrich 社)を用いたことを除いて、ラクトン1で説明したのと同じ方法で合成された。この生成物は、透明なオイル(8 部)として得られ、主として7-メチルε‐カプロラクトン(95%)である。
ラクトン3 5-メチルε‐カプロラクトン
このラクトンは、3-メチルシクロヘキサノンの代わりに、4-メチルシクロヘキサノン(50部;0.445 M、例えば、Aldrich 社)を用い、適宜、ジクロロメタン(1500mL)、重炭酸ソーダ(8.1部、1.0 M)および3-クロロペルオキシ安息香酸(123部;0.5 M)を増やしたことを除いて、ラクトン1に類似の方法で合成された。反応温度は、全体を通して10℃以下に維持された。5-メチルε‐カプロラクトンが、透明な黄色いオイル(49部)として得られた。
ラクトン4 5-第3ブチルε‐カプロラクトン
このラクトンは、ラクトン1で説明した3-メチルシクロヘキサノンおよび各量の代わりに、4-第3ブチルシクロヘキサノン(10部;0.065 M、例えば、Aldrich 社)、3-クロロペルオキシ安息香酸(17.5部、0.0713M)、重炭酸ソーダ(11.5部、0.143 M)およびジクロロメタン(750mL)を用いたことを除いて、ラクトン1と同じ方法で合成された。生成物はオイル(10.2部)として得られた。
ラクトン5 4,6,6-および4,4,6-トリメチルε‐カプロラクトン
3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(10部、0.071 M、例えば、Fluka 社)をジクロロメタン(200mL)に溶解した。3-クロロペルオキシ安息香酸(30.6部、0.142 M)を撹拌下で少しずつ加え、そしてこの混合物を外側から5℃以下に冷却した。トリフルオロ酢酸(8部、0.071 M、例えば、Fluka 社)を、0‐5℃で、撹拌しながら30分かけて滴下し、そしてこの反応物をさらに20時間撹拌し、温度が18−20℃に上がるにまかせた。
【0111】
次いで、この反応塊を亜硫酸ソーダの10w/w%水溶液(50mL)中に注ぎ、そして放置した。その溶媒層を分離し、亜硫酸ソーダの10%水溶液(2×50mL)、炭酸カリウムの10w/w%水溶液(3×50mL)、そして水(2×50mL)で振りまぜた。最後に、この溶媒層を無水硫酸ソーダ上で乾燥し、そして溶媒を蒸発させた。この生成物は、無色透明なオイル(11部)として得られた。
中間体の合成 この中間体の標題には、POAC鎖と連鎖停止剤もしくは、重合停止基が示される。成分識別記号の後の文字は、それら成分のモル比を示す。
実施例1
LA1、ε‐cap(10)、Gly(3)
ラウリル酸(LA、30部、150 mM、例えば、Aldrich 社)、グリコール酸(Gly、34.2部、450 mM、例えば、Aldrich 社)およびε‐カプロラクトン(ε‐cap、171 部、1500mM、例えば、Aldrich 社)を窒素下、120℃で撹拌した。テトラ−n−ブチル・チタネート(0.3部、例えば、Aldrich 社)を添加し、温度を175℃に上げ、そしてこれら反応物をこの温度で18時間撹拌した。この生成物(222部)は褐色の液体として得られ、冷却すると固化した。その数平均分子量は1648で、酸価は、45mgKOH/gであった。これが中間体1である。
実施例2〜7
下の表1中の中間体TPOAC酸は、上の実施例1で説明した方法に類似の方法で、表中に示したような連鎖停止用酸および、酸、ε‐カプロラクトンおよびグリコール酸のモル比を用いて合成された。
【0112】
【表1】

【0113】
表1の脚注 LAはラウリル酸 Mnは数平均分子量 MAはメトキシ酢酸 Mwは重量平均分子量 ε‐capはε‐カプロラクトン PdはMwをMnで割った分子量分布 δ‐valはδ‐バレロラクトン
実施例8
LA1、ε‐cap 6、Gly 8
実施例1で用いられた量の代わりに、6部のε‐カプロラクトンと8部のグリコール酸を用いたことを除き、そしてまた触媒としてテトラ‐n-ブチル・チタネートの代わりに、同じ量のジルコニウム・イソプロポキシドを用いたことを除いて、実施例1の方法を繰返した。これで得られた中間体8は、Mn:459、Mw:1085、Pd:2.36であった。
実施例9
LA1、ε‐cap6、Gly8
触媒として、ジルコニウム・イソプロポキシドの代わりに、同じ量のメタンスルホン酸を用いたことを除いて、実施例8の方法を繰返した。ここで得られた中間体9は、Mn:765、Mw:1398、Pd:1.83であった。
実施例10〜23
連鎖停止剤酸および下の表2に示した量のε‐カプロラクトンとグリコール酸を使用したことを除いて、実施例9の方法を繰返した。
【0114】
【表2】

【0115】
表2の脚注: LAはラウリル酸;MAはメトキシ酢酸;HAはヘキサン酸;SAはステアリン酸;
*では、触媒として、メタンスルホン酸が6‐8時間用いられ、そして次いで、同量のテトラ‐n-ブチル・チタネートを加え、そして,反応はさらに10時間続けられる。
【0116】
**では、第2添加触媒として、ジルコニウム・イソプロポキシドを用いたことを除いて、中間体21および22に同じ。
実施例24
(LA1、ε‐cap10、Gly 3)PEI(13:1)
中間体1(実施例1、52部)を窒素ブランケット下で、120℃に加熱し、そしてポリエチレンイミンSP200(4部、例えばNippon Shokubai 社)を撹拌下で添加した。この反応物を窒素下、120℃で、さらに6時間撹拌した。冷却すると、生成物(50部)は、淡褐色の軟らかい固体として得られた。これが、分散剤1である。
実施例25から61
下の表3に示した中間体を用いたことを除いて、実施例24を繰返した。
【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
表3の脚注: LA、MA、HA、SA、*および**は、表2の脚注に説明した通り。
実施例62から100
本分散剤(0.45部)を、直径3mmのガラスビーズ(17部)を含む、8ドラム(1/16オンス)のガラス製バイアルびん中で、メトキシプロピル・アセテート/n-ブタノールの4:1混合物(7.55部)中に溶解した。モノライト・ルービン(Monolite Rubine)3B(2.00部、例えば Zeneca 社)を添加し、このバイアルびんを密閉し、水平振とう機で16時間振りまぜた。得られた分散物の粘度を、最初と静置後に評価した。
【0120】
メトキシプロピル・アセテート/n-ブタノールの4:1混合物(10部)中に本分散剤(2.0部)を、必要に応じて加熱して溶解することにより、この分散剤の溶解度も評価された。4℃で72時間貯蔵後に、結晶の存在を調べた。
【0121】
結果は、下の表4に示される。
【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
表4の脚注: LA、MA、HA、SA、*および**は、表2の脚注に説明した通り、 Aは非常に流動性、 Bは流動性で、10分後にゲル化、 Cは流動性で、1分後にゲル化、 Dは僅かに流動性で、振とうすると直ちにゲル化、 Eは粘ちょうで、動かないゲル、 対照例1は、ラウリル酸とPEI(MW:10,000)の存在下で重合したε‐カプロラクトンである、 対照例2は、分散剤を含まず、そしてその分散剤の量を、同じ量の溶媒混合物で置き換えてある。
実施例101
LA1、ε‐cap(10)、Gly(3)
ラウリル酸(10部、0.05M、例えば、Aldrich 社)、グリコール酸(11.39 部、0.15M、例えば、Aldrich 社)およびε‐カプロラクトン(56.98部、0.5 M、例えば、Aldrich 社)を窒素下、130℃で撹拌した。メタンスルホン酸(0.3部、例えば、Aldrich 社)を添加し、そして温度を160℃に上げた。この反応物を、160℃で2時間、次いで185−90℃で24時間撹拌した。この生成物はベージュ色の液体として得られ、冷却すると、ベージュ色のワックス(73.08部)になった。これが、中間体24である。
実施例102
[LA(1)、ε‐cap(10)、Gly(3)]ポリアリルアミ ン(13:1)
中間体24(73.08部、例えば、実施例101)を窒素下、100℃で撹拌した。ポリアリルアミン(6.09部、例えば、Aldrich 社、MW 8.500-11,000)および水(15部)を添加し、この反応物を、100℃で2時間、一緒に混ぜた。温度を120℃に上げ、この反応物を、この温度で、速い窒素気流下で、さらに6時間撹拌した。生成物(75部)は、淡褐色の粘ちょうな液体として得られた。これが分散剤39である。
実施例103
[LA(1)、δ‐val(10)、Gly(3)]PEI(7:1)
ラウリル酸(10.02部、0.05M、例えば、Aldrich 社)、グリコール酸(11.41部、0.15M、例えば、Fisher Chemicals社)およびδ‐バレロクトン(50.06部、0.5 M、例えば、Fluka 社)を窒素下、160℃で撹拌した。メタンスルホン酸(0.4部、例えば、Aldrich 社)を添加し、そしてこの反応物を、窒素下で24時間撹拌した。120℃に冷却後、ポリエチレンイミン(10部、SP200、例えば、Nippon Shokubai社)を添加し、そしてこの反応物を窒素下で、さらに6時間撹拌した。生成物(75部)は、褐色の粘ちょうな液体として得られ、冷却すると褐色のゴム状物になった。これが、分散剤40である。
実施例104
[LA(1)、Gly(3)、7-Meε‐cap(3)、ε‐ca p(10)]PEI(13:1)
これは、ラウリル酸(5.21部、0.026 M)、グリコール酸(5.94部、0.078M)、7-メチルε‐カプロラクトン(10部、0.078 M、ラクトン2)、ε‐カプロラクトン(29.7部、0.078 M)、メタンスルホン酸(0.25部)およびPEI(3.8部)を使用したことを除いて、実施例103の分散剤40に類似の方法で調製された。この生成物(51部)は、褐色の粘ちょうな液体として得らた。これが、分散剤41である。
実施例105
[LA(1)、Gly(3)、δ‐val(3)、ε‐cap(10)]
PEI(17:1)
これは、7-メチルε‐カプロラクトンの代わりに、δ‐バレロラクトン(7.82部、0.078 M)を用い、そしてまた、2.78部のPEIを使用したことを除いて、実施例104で説明したのと同じ方法で調製された。この生成物:分散剤42(47部)は、褐色の粘ちょうな液体として得られた。
実施例106から109
分散剤39から42の溶解性を、実施例62〜100で説明したようにして調べた。モノライト・ルービン3Bを分散した液の流動性を、これらの実施例で説明したようにして評価した。結果は、下の表5に示される。
【0125】
【表7】

【0126】
表5の脚注 対照例2は、表4の脚注に説明した通りである。
実施例110
Do(1)、Gly(3)、ε‐cap(10)
ドデカノール(10部、0.054 M、例えば、Aldrich社)、グリコール酸(12.24 部、0.161 M、例えば、Aldrich社)およびε‐カプロラクトン(61.25部、0.54M、例えば、Aldrich社)を窒素下、140℃で撹拌した。メタンスルホン酸(0.3部、例えば、Aldrich社)を添加し、そしてこの反応物を、165℃で4時間、次いで175‐80℃で20時間撹拌した。この生成物は透明な液体として得られ、冷却すると、ベージュ色のワックス(77部)になった。これが、中間体25である。
実施例111
(Do(1)、Gly(3)、ε‐cap(10)3:1リン原子 中間体25(77部、例えば、実施例110)を、ポリリン酸(5.64部、83%P25、例えば、Fluka社)と、窒素下で90−95℃で6時間、掻き混ぜた。この生成物は透明な液体として得られ、冷却すると、ベージュ色のワックス(80部)になった。これが、分散剤43である。
【0127】
分散剤43(2部)を、メトキシプロピル・アセテート/n−ブタノールの4:1混合物(10部)中に、必要に応じて加熱して溶解した。4℃で72時間貯蔵後、この溶液は透明なままであった。比較として、分散剤43を、1モルのドデカノールと12モルのε‐カプロラクトンから誘導したポリエステルのリン酸エステルである分散剤の同じ量で置換すると、貯蔵後に結晶が存在した。
実施例112
分散剤43(0.2部)を、直径3mmのガラスビーズ(17部)を含む、8ドラム(1/16オンス)のガラス製バイアルびん中で、メトキシプロピル・アセテート/n-ブタノールの4:1混合物(7.55部)中に溶解した。二酸化チタン(7.5部、Tioxide TR92、例えば、ICI社)を添加し、このバイアルを、水平振とう機で16時間振りまぜた。得られた分散物の粘度を、表4の脚注に説明されているような任意スケールAからEを用いて判定した。
【0128】
類似の分散物を、分散剤43(0.25部)、溶媒混合物(6.75部)および酸化鉄顔料(3部、Sicotrans Red L2817)を用いて調製した。
結果を下の表6に示す。
【0129】
【表8】

【0130】
表6の脚注 対照例1は、Do(1)ε‐cap(12)のリン酸エステルとリン原子の比が3:1である。
【0131】
対照例2は、分散剤を含まず、そしてその分散剤の量を、同じ量の溶媒混合物で置き換えてある。
【0132】
[発明の態様]
[1] 一般式1の分散剤(その塩類を含む):
【化14】

式中: Rは水素または重合停止基;
Zは、酸性基もしくは塩基性基または酸性基もしくは塩基性基のいずれかを含む部位であり;
Aは場合によりアルキル基で置換されているC3-7アルキレン基であり;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nとmは整数であり;そして、 n+mは2から100である。
[2] 塩基性の基または塩基性の基を含む部位が、ポリアミンもしくはポリイミンに由来する、1に記載の分散剤。
[3] ポリイミンが、ポリ−(C2-4アルキレンイミン)である、2に記載の分散剤。
[4] n+mが20以下である、1から3のいずれかに記載の分散剤。
[5] −(O−A−CO)−が、ε−カプロラクトンもしくはδ−バレロラクトンに由来する、1から4のいずれかに記載の分散剤。
[6] n:mの比が、10:1と1:5の間にある、1から5のいずれかに記載の分散剤。
[7] ε−カプロラクトンのアルキル置換基がC1-4アルキル基である、1から6のいずれかに記載の分散剤。
[8] アルキル置換基がメチル基である、7に記載の分散剤。
[9] 少なくとも二つの、式2のポリオキシアルキレンカルボニル(POAC)連鎖を有するポリアミンもしくはポリイミンを含んでなる、1から8のいずれかに記載の分散剤:
【化15】

式中: Tは水素またはTPOAC酸を与える連鎖停止剤の残基であり;
VはPOAC連鎖部位−[−(O−A−CO)n(Gly)m−]−であり;
そして、 A、Gly、nおよびmは、1で規定した通りである。
[10] n:mの比が、10:1から1:1である、9に記載の分散剤。
[11] 一般式3の9に記載の分散剤:
【化16】

式中: X−*−*−Xは、ポリアミンもしくはポリイミンを表し、 Yは、アミド結合または塩結合によりポリアミンもしくはポリイミンに結合し ているPOAC連鎖であり;そして qは、2から2000である。
[12] ポリイミンがポリ−(C2-4アルキレンイミン)(PAI)である、11に記載の分散剤。
[13] (Y)q:PAIの重量比が25:1と4:1の間にある、11または12に記載の分散剤。
[14] (Y)q:PAIの重量比が20:1と5:1の間にある、11から13のいずれかに記載の分散剤。
[15] PAIのMWが1,000から100,000である、12から14のいずれかに記載の分散剤。
[16] PAIがポリエチレンイミンである、12から15のいずれかに記載の分散剤。
[17] Tが、場合によりヒドロキシ基、C1-4アルコキシ基もしくはハロゲンで置換されているC1-25脂肪族カルボン酸に由来する、9から16のいずれかに記載の分散剤。
[18] カルボン酸が、グリコール酸、乳酸、カプロン酸、ラウリル酸、ステアリン酸、メトキシ酢酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸および4-ヒドロキシデカン酸、から選ばれる、17に記載の分散剤。
[19] カルボン酸がラウリル酸である、18に記載の分散剤。
[20] 式5を有する1に記載の分散剤(その塩類を含む):
【化17】

式中: AおよびDは、その一つが酸性基であるか、または酸性基を担持しており、そして他方は、TPOAC鎖を親水性にしない重合停止基であるところの、基であり;
Vは、POAC連鎖部位−[−(O−A−CO)n(Gly)m−]−であり;
そして、 A、Gly、nおよびmは、1で規定した通りである。
[21] Aが酸性の基を担持している場合に、Dは、アルコール、チオールまたは第1もしくは第2アミンであるD1−K−H[ここでD1は、水素または場合により置換されているC1-50ヒドロカルビル基であり、KはO、SあるいはNR(ここでRはH、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはフェニル基である)]の残基である、20に記載の分散剤。
[22] 式8を有する、20または21のいずれかに記載の分散剤:
【化18】

式中: D1は、場合により置換されているC1-50ヒドロカルビル基であり;
JはO、NRまたは直接連結であり;
RはH、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはフェニル基であり;
1は、硫酸基またはリン酸基であり;
Mはカチオンであり;
wは1または2であり;そして nおよびmは整数であり。そして n+mは2から20である。
[23] JがOである、22に記載の分散剤。
[24] D1がアルキル基である、22または23のいずれかに記載の分散剤。
[25] Mがアミン、アルカノールアミンあるいは第4級アンモニウムで塩である、22から24のいずれかに記載の分散剤。
[26] アミンが、n−ブチルアミン、ジエタノールアミンあるいはジアミノプロピルアミンである、25に記載の分散剤。
[27] L1がリン酸基である、22から26のいずれかに記載の分散剤。
[28] TPOACアルコール:リン原子の比が、3:1と1:1の間である、27に記載の分散剤。
[29] TPOAC酸と、ポリアミンあるいはポリイミンとを、80℃と150℃の間の温度で反応させることを含んでなる、9から19のいずれかに記載の分散剤を製造する方法。
[30] TPOAC酸が、ラクトン(一種または複数)およびグリコール酸と、脂肪族カルボン酸とを、エステル化触媒の存在下、不活性雰囲気中、150℃から180℃で反応させることにより調製される、29に記載の方法。
[31] ラクトン(一種または複数)およびグリコール酸を、一価のアルコールまたは第1あるいは第2モノアミンの存在下で重合させて、TPOACアルコールを生成させ、そしてそのTPOACアルコールをリン酸化剤と反応させることを含んでなる、20から28のいずれかに記載の分散剤を製造する方法。
[32] 微粒子状固体および1から28のいずれかに記載の分散剤を含んでなる組成物。
[33] 1から28のいずれかに記載の分散剤、微粒子状固体および有機媒体を含んでなる分散物。
[34] 有機媒体が極性有機液体である、33に記載の分散物。
[35] 1から28のいずれかに記載の分散剤、微粒子状固体および成膜性樹脂を含んでなるミル・ベース。
[36] 1から28のいずれかに記載の分散剤、33に記載の組成物もしくは35に記載のミル・ベースを含んでなる、ペイントまたはインキ。
[37] 式12のTPOAC酸:
【化19】

式中: Tは水素もしくは重合停止基であり;
VはPOAC連鎖部位−[−(O−A−CO)n(Gly)m−]−であり;
Aは場合によりアルキル基で置換されているC3-7アルキレン基であり;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nおよびmは整数であり;そして n+mは2から100である。
[38] 式13のTPOACアルコール
【化20】

式中: D1は場合により置換されているC1−50ヒドロカルビル基であり;
JはO、NRまたは直接連結であり;
RはH、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはフェニル基であり;
VはPOAC連鎖部位−[−(O−A−CO)n(Gly)m−]−であり;
Aは場合によりアルキル基で置換されているC3-4アルキレン基であり;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nおよびmは整数であり;そして n+mは、2から100である。
[39] C3-4アルキレンが、ε−カプロラクトンおよび/またはδ−バレロラクトンから得られる、37または38のいずれかに記載のTPOAC酸またはTPOACアルコール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子状固体を有機媒体中に分散させるための、一般式1の分散剤(その塩類を含む):
【化1】

式中:
Rは1〜25個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸に由来し、ここで該脂肪族カルボン酸はヒドロキシ又はC1-4アルコキシ基によって置換されていてよく;
Zは、ポリエチレンイミンまたはポリアリルアミンに由来し;
−(O−A−CO)−が、C1-4アルキル基によって置換されていてよいε−カプロラクトンもしくはδ−バレロラクトンに由来し;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nおよびmは整数であり;
n+mは2から100であり;そして
n:mの比が、10:1と1:5の間にある。
【請求項2】
微粒子状固体を有機媒体中に分散させるための、次の一般式の分散剤(その塩類を含む):
【化2】

式中:
Rは25個以下の炭素原子を有する一価のアルコールに由来し;
Zは、リン酸に由来する部位であり;
−(CO−A−O)−が、C1-4アルキル基によって置換されていてよいε−カプロラクトンもしくはδ−バレロラクトンに由来し;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nおよびmは整数であり;
n+mは2から100であり;そして
n:mの比が、10:1と1:5の間にある。
【請求項3】
少なくとも二つの、次の一般式
【化3】

のポリオキシアルキレンカルボニル(POAC)連鎖がポリエチレンイミンまたはポリアリルアミンに結合している、請求項1に記載の分散剤。
【請求項4】
n+mは2から20である、請求項2に記載の分散剤。
【請求項5】
重合停止基によりエンドキャップされているポリオキシアルキレンカルボニル鎖を有するカルボン酸(TPOAC酸)と、ポリアミンもしくはポリイミンとを、80℃と150℃の間の温度で反応させることを含んでなる、請求項1または3に記載の分散剤を製造する方法。
【請求項6】
ラクトン(一種または複数)およびグリコール酸を、一価のアルコールの存在下で重合させて、重合停止基によりエンドキャップされているポリオキシアルキレンカルボニル鎖を有するアルコール(TPOACアルコール)を生成させ、そしてそのTPOACアルコールをリン酸化剤と反応させることを含んでなる、請求項2または4に記載の分散剤を製造する方法。
【請求項7】
微粒子状固体および請求項1から4のいずれかに記載の分散剤を含んでなる組成物。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の分散剤、微粒子状固体および有機媒体を含んでなる分散物。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の分散剤、微粒子状固体および成膜性樹脂を含んでなるミル・ベース。
【請求項10】
請求項1から4のいずれかに記載の分散剤を含んでなるペイントまたはインキ。
【請求項11】
次の一般式の、重合停止基によりエンドキャップされているポリオキシアルキレンカルボニル鎖を有するカルボン酸(TPOAC酸):
【化4】

式中:
Rは1〜25個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸に由来し、ここで該脂肪族カルボン酸はヒドロキシ又はC1-4アルコキシ基によって置換されていてよく;
−(O−A−CO)−が、C1-4アルキル基によって置換されていてよいε−カプロラクトンもしくはδ−バレロラクトンに由来し;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nおよびmは整数であり;
n+mは2から100であり;そして
n:mの比が、10:1と1:5の間にある。
【請求項12】
次の一般式の、重合停止基によりエンドキャップされているポリオキシアルキレンカルボニル鎖を有するアルコール(TPOACアルコール):
【化5】

式中:
Rは25個以下の炭素原子を有する一価のアルコールに由来し;
−(CO−A−O)−が、C1-4アルキル基によって置換されていてよいε−カプロラクトンもしくはδ−バレロラクトンに由来し;
Glyはオキシメチレンカルボニル基であり;
nおよびmは整数であり;
n+mは2から100であり;そして
n:mの比が、10:1と1:5の間にある。

【公開番号】特開2011−224562(P2011−224562A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−92102(P2011−92102)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2000−540922(P2000−540922)の分割
【原出願日】平成11年3月15日(1999.3.15)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】