説明

分散型エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 発光輝度に優れ、耐久性にも優れ、寿命の改善された分散型EL素子を提供する。さらには、大画面化が可能であり、発光輝度に優れ、耐久性にも優れ、寿命の改善された分散型EL素子を提供する。
【解決手段】 背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも絶縁層及び蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、前記蛍光体粒子の平均サイズが1μm以上20μm未満及び粒子サイズの変動係数が3%以上35%未満であって、前記透明電極と前記発光層との間に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含有する遮断層を少なくとも1層有することを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度で長寿命のエレクトロルミネッセンス(EL)粉末粒子を分散塗布した発光層を有する分散型EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EL蛍光体は電圧励起型の蛍光体であり、蛍光体粉末を電極の間に挟んで発光素子とした分散型ELと薄膜型ELが知られている。分散型EL蛍光体の一般的な形状は、蛍光体粉末を高誘電率のバインダー中に分散したものを、少なくとも一方が透明な二枚の電極の間に挟み込んだ構造からなり、両電極間に交流電場を印加することにより発光する。EL蛍光体粉末を用いて作製された発光素子は数mm以下の厚さとすることが可能で、面発光体であり、発熱が少なく、発光効率が良いなど数多くの利点を有する為、道路標識、各種インテリアやエクステリア用の照明、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の光源、大面積の広告用の照明光源等をしての用途が期待されている。
しかし、蛍光体粉末を用いて作製された発光素子は、他の原理に基づく発光素子に較べて発光輝度が低く、また発光寿命が短いという欠点があり、この為従来から種々の改良が試みられてきた。
【0003】
発光輝度を高める方法としては、サイズの小さい蛍光体粒子を用いる方法が知られている(特許文献1、2)。サイズの小さい蛍光体粒子を用いてEL素子を構成した場合、発光層中の単位体積当りの蛍光体粒子数を増大させることができるため、結果としてEL素子の輝度を高めることが可能となる。しかしながらサイズの小さい蛍光体粒子を用いたEL素子は輝度の劣化が早いという欠点を有している。
【0004】
一方で、一般的にEL素子の劣化要因の一つとしては、蛍光体粒子と透明電極との接触する界面が、熱や酸素等により劣化し、発光面が黒化することが知られている。これを解決するために、パラジウム微粉末を分散させた高誘電率樹脂層を発光層と透明電極の間に付与することが開示されている(特許文献3)。また、他の劣化要因として一般的に知られている発光層と透明電極の剥離に関しては、密着性を改良するための手法がいくつか開示されている(特許文献4、5)。
【特許文献1】特開2002−235080号公報
【特許文献2】特開2004−265866号公報
【特許文献3】特開平5−325645号公報
【特許文献4】特開平8−288066号公報
【特許文献5】特開平10−134963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法では特に蛍光体粒子の平均サイズが小さい場合、発光層内で透明電極と接触する蛍光体粒子の比率が多くなること、また熱や酸素に対する耐性が低いため黒化や剥離を生じやすく、特に高輝度を発生させる条件(例えば周波数800Hz以上、または電圧100V以上の駆動)において耐久性改良効果が充分ではなかった。
【0006】
従って本発明は、発光輝度に優れ、耐久性にも優れ、寿命の改善された分散型EL素子を提供することを目的とするものである。さらには、大画面化が可能であり、発光輝度に優れ、耐久性にも優れ、寿命の改善された分散型EL素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討した結果、発光層を形成する蛍光体粒子のサイズが1μm以上20μm未満で且つ変動係数が3%以上35%未満と小さく、さらに発光層と透明電極との間に遮断層を設けることで長時間、高輝度高効率発光を持続できることを見出した。すなわち、本発明は下記の構成からなるものである。
【0008】
(1)背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも絶縁層及び蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型EL素子において、前記蛍光体粒子の平均サイズが1μm以上20μm未満及び粒子サイズの変動係数が3%以上35%未満であって、前記透明電極と前記発光層との間に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含有する遮断層を少なくとも1層有することを特徴とする分散型EL素子。
(2)前記遮断層を構成する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料が、前記遮断層の体積比で20%以上含んでなることを特徴とする(1)記載の分散型EL素子。
(3)上記中間層の厚みが0.01μm以上10μm未満である(1)又は(2)に記載の分散型EL素子。
(4)前記絶縁層の膜厚が10μm以上30μm未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の分散型EL素子。
(5)前記発光層の膜厚30μm以上50μm未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の分散型EL素子。
(6)前記蛍光体粒子が付活剤として銅を含む硫化亜鉛粒子であって、6族から10族までの第2遷移系列に属する金属元素を少なくとも1種類含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の分散型EL素子。
(7)前記遮断層が、金属または金属酸化物、金属塩化物、金属窒化物及び金属硫化物のうちの少なくとも一つを含有することを特徴とする(1)〜(6)に記載の分散型EL。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分散型EL素子(以下、EL素子と記す)は、発光輝度に優れ、耐久性にも優れ、更に長寿命を有するものである。また、本発明の分散型EL素子は、大画面化が可能であり、発光輝度に優れ、耐久性にも優れ、長寿命を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。
<蛍光体粒子>
本発明に好ましく用いられる蛍光体粒子としては、具体的には第II族元素と第VI族元素とから成る群から選ばれる元素の一つあるいは複数と、第III族元素と第V族元素とから成る群から選ばれる一つあるいは複数の元素とから成る半導体の粒子であり、必要な発光波長領域により任意に選択される。例えば、CdS,CdSe,CdTe,ZnS,ZnSe,ZnTe,CaS,SrS,GaP,GaAsなどが挙げられる。中でも、ZnS,CdS,CaSなどが好ましく用いられる。
【0011】
本発明における蛍光体微粒子は、当業界で広く用いられる焼成法(固相法)で形成することができる。例えば、硫化亜鉛の場合、液相法で10nm〜50nmの微粒子粉末(通常生粉と呼ぶ)を作成し、これを一次粒子すなわち母体物質として用いる。硫化亜鉛には高温安定型の六方晶系と低温安定型の立方晶系の2つの結晶系があるが、いずれを使用してもよく、また混在していてもよい。これに付活剤や共付活剤と呼ばれる不純物、融剤ともに坩堝にて900℃〜1300℃の高温で30分〜10時間焼成し、中間蛍光体粒子を得る。本発明のようなサイズ、変動係数の低い蛍光体粒子を得るのに好ましい焼成温度は950℃〜1250℃、さらに好ましくは1000℃〜1200℃である。また好ましい焼成時間は30分〜6時間、さらに好ましくは1時間〜4時間である。また融剤としては、40質量%以上用いることが好ましい。さらには50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。ここにおける融剤の割合は、融剤の割合(質量%)=融剤の重量/(原料蛍光体1次粒子の重量+融剤の重量)で示される。例えば、後述する銅付活硫化亜鉛蛍光体のように、生粉に付活剤である銅を予め混入させておく場合においては、付活剤である銅も蛍光体原料粉末と一体となっており、このような場合は、銅も含め蛍光体原料粉末の重量と計量するものとする。
【0012】
融剤は、室温の重量と焼成温度での重量は異なる場合がある。例えば塩化バリウムは、室温ではBaCl2・2H2Oの状態で存在しているが、焼成温度では水和水が失われ、BaCl2となっていると考えられる。しかし、ここでの融剤の割合とは、室温で安定な状態での、融剤の重量をもとに計算される。
【0013】
さらに、本発明では、上記焼成によって得られる中間蛍光体粉末中に含まれる過剰の付活剤、共付活剤及び融剤を除去するためにイオン交換水で洗浄することが好ましい。
【0014】
焼成によって得られる中間蛍光体粒子の内部には、自然に生じた面状の積層欠陥(双晶構造)が存在する。これにさらにある範囲の大きさの衝撃力を加えることにより、粒子を破壊することなく、積層欠陥の密度を大幅に増加させることができる。衝撃力を加える方法としては、中間蛍光体粒子同士を接触混合させるか、アルミナ等の球体を混ぜて、混合させる(ボールミル)か、粒子を加速させ衝突させる方法などが従来知られている。特に硫化亜鉛の場合、立方晶系と六方晶系の2つの結晶系が存在し、前者では最密原子面((111)面)はABCABC・・・の三層構造をなし、後者ではc軸に垂直な最密原子面がABAB・・・の二層構造を形成している。このため、硫化亜鉛結晶にボールミル等で衝撃を与えた場合、立方晶系で最密原子面のすべりが起こり、C面が抜けると、部分的にABABの六方晶となり、刃状転位が生じ、またAB面が逆転して双晶が生じることもある。一般に結晶中の不純物は格子欠陥部分に集中するため、積層欠陥を有する硫化亜鉛を加熱して硫化銅などの付活剤を拡散させると積層欠陥に析出する。付活剤の析出部分と母体の硫化亜鉛との界面がエレクトロルミネッセンス発光体の中心となることから、本発明においても輝度向上のためには積層欠陥の密度が高いことが好ましい。
【0015】
次いで、得られた中間体蛍光体粉末に第2回の焼成をほどこす。第2回目は、第1回目より低温の500℃〜800℃で、また短時間の30分〜3時間の加熱(アニーリング)をする。これにより、付活剤を積層欠陥に集中的に析出させることができる。
その後、該中間蛍光体を、塩酸等の酸でエッチングして表面に付着している金属酸化物を除去し、さらに表面に付着した硫化銅を、KCN等で洗浄して除去する。続いて乾燥を施してエレクトロルミネッセンス蛍光体を得る。
このような方法により、サイズ1μm以上20μm未満、変動係数3%以上35%未満の粒子を得ることができる。
【0016】
また、他の蛍光体の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマ法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法などと、流動油面蒸着を組み合わせた方法、等の気相法と、複分解法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、凍結乾燥法、等の液相法や、尿素溶融法、噴霧熱分解法なども用いることができる。
【0017】
本発明の蛍光体粒子の平均サイズや変動係数は、例えば堀場製作所製・レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920のような、レーザー散乱による方法を用いることができる。ここで、平均粒径はメジアン径を指すものとする。
【0018】
また本発明の蛍光体粒子は付活剤として銅を含む硫化亜鉛であること、さらには6族から10族までの第2遷移系列に属する金属元素を少なくとも1種類含有することが好ましい。中でもモリブデン、白金が好ましい。これらの金属は硫化亜鉛中に硫化亜鉛1モルに対して1×10-7モルから1×10-3モルの範囲で含まれることが好ましく、1×10-6モルから5×10-4モル含まれることがより好ましい。これらの金属は硫化亜鉛微粉末と所定量の硫酸銅と共に脱イオン水に添加し、スラリー状にした上でよく混合し、乾燥してから共付活剤や融剤と共に焼成を行うことで硫化亜鉛粒子に含有させることが好ましいが、これらの金属を含む錯体粉末をフラックスと混合しておきこの共付活剤や融剤を用いて焼成を行い硫化亜鉛粒子に含有させることも好ましい。いずれの場合も金属を添加する際の原料化合物としては使用する金属元素を含む任意の化合物を使用することが出来るが、より好ましくは、金属または金属イオンに酸素、または窒素が配位した錯体を用いることが好ましい。配位子としては無機化合物でも有機化合物であってもよい。これらにより、より一層の輝度向上及び長寿命化が可能となる。
【0019】
蛍光体粒子は、粒子の表面に非発光シェル層を有することがより好ましい。このシェル層形成は、蛍光体粒子のコアとなる半導体微粒子の調製に引き続いて化学的な方法を用いて0.1μm以上の厚みで設置するのが好ましい。好ましくは0.1μm以上1.0μm以下ある。
非発光シェル層は、酸化物、窒化物、酸窒化物や、母体蛍光体粒子上に形成した同一組成で発光中心を含有しない物質から作成することができる。また、母体蛍光体粒子材料上にエピタキシャルに成長させた異なる組成の物質により形成することができる。
【0020】
非発光シェル層の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマ法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法などと、流動油面蒸着を組み合わせた方法、等の気相法と、複分解法、ゾルゲル法、超音波化学法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、尿素溶融法、凍結乾燥法、等の液相法や噴霧熱分解法なども用いることができる。
【0021】
特に、蛍光体の粒子形成で好適に用いられる、尿素溶融法や噴霧熱分解法は、非発光シェル層の合成にも適している。
例えば、硫化亜鉛蛍光体粒子の表面に非発光シェル層を付設する場合は、非発光シェル層材料となる金属塩が溶解し、溶融した尿素溶液中に、硫化亜鉛蛍光体を添加する。硫化亜鉛は尿素に溶解しないため、粒子形成の場合と同様に溶液を昇温し、尿素由来の樹脂中に硫化亜鉛蛍光体と非発光シェル層材料が均一に分散した固体を得る。この固体を微粉砕した後、電気炉中で樹脂を熱分解させながら焼成する。焼成雰囲気として、不活性雰囲気、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、アンモニア雰囲気、真空雰囲気を選択することで、酸化物、硫化物、窒化物からなる非発光シェル層を表面に有する硫化亜鉛蛍光体粒子が合成できる。
また、例えば、硫化亜鉛蛍光体粒子の表面に噴霧熱分解法で非発光シェル層を付設する場合は、非発光シェル層材料となる金属塩が溶解した溶液中に、硫化亜鉛蛍光体を添加する。この溶液を霧化し、熱分解することで、硫化亜鉛蛍光体粒子の表面に非発光シェル層が生成する。熱分解の雰囲気や追加焼成の雰囲気を選択することで、酸化物、硫化物、窒化物からなる非発光シェル層を表面に有する硫化亜鉛蛍光体粒子が合成できる。
【0022】
<発光層>
これら蛍光体粒子を用いてEL素子を作成する場合、これら粒子を有機分散媒に分散して、その分散液を塗布し発光層を形成させる。
有機分散媒としては、有機高分子材料、または高沸点の有機溶剤を用いることが出来るが、有機高分子材料を主に構成される有機バインダーが好ましい。
上記有機バインダーとしては、誘電率の高い素材が望ましく、含フッ素高分子化合物(例えばフッ化エチレン、3フッ化1塩化エチレンを重合単位として含む高分子化合物)、または水酸基がシアノエチル化された多糖類、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂が挙げられ、これらを全部または一部含んでなることが好ましい。
このようなバインダーと上記蛍光体粒子との配合割合は、発光層中の上記蛍光体粒子の含有量が固形分全体に対して30〜90質量%となる割合とするのが好ましく、60〜85質量%となる割合とするのが更に好ましい。これにより発光層の表面を平滑に形成することができる。
バインダーとしては、水酸基がシアノエチル化された高分子化合物を発光層全体の有機分散媒のうち質量比で20%以上、更に好ましくは50%以上使用するのが特に好ましい。
【0023】
このようにして得られる発光層の厚みは30μm以上60μm未満が好ましく、より好ましくは35μm以上50μm未満である。30μm以上において、発光層の表面の良好な平滑性を得ることができ、また、60μm未満において蛍光体粒子に有効に電界をかけることができ、好ましい。特に、本発明の遮断層を設けた場合には、絶縁膜の膜厚を薄くし、且つ発光層の膜厚を厚くすることにより、初期輝度の低下を回復するとともに、十分な耐久性効果を得ることができ、好ましい。更に、良好な初期輝度を得るためには、発光層の膜厚は50μm以下であることが好ましい。
【0024】
<遮断層>
本発明のEL素子は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含有する遮断層を少なくとも1層透明電極と発光層との間に有することを大きな特徴とする。
遮断層の厚みは0.01μm以上10μm未満が好ましく、より好ましくは0.02μm以上8μm未満であり、特に好ましくは0.05μm以上7μm未満である。遮断層の厚みが0.01μm以上において、十分な耐久性の向上効果が得られ、また、10μm未満において蛍光体粒子に対して電界を有効にかけることができ、良好な発光効率を得ることができるため、好ましい。特に、遮断層の膜厚が薄いほど、初期輝度の低下を抑えることができ、且つ十分な耐久性向上効果を得ることができるため好ましい。
【0025】
遮断層を形成する材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含有する。熱可塑性樹脂としては例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、低分子量ポリスチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、エポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂や多官能アクリル酸エステル化合物から得られるUV硬化型樹脂も好適に用いることができる。使用する有機高分子化合物は絶縁体であっても導電体で有っても良い。特に、軟化点の高い、具体的には軟化点が120℃以上が好ましく、さらに好ましくは140℃以上、最も好ましくは170℃以上の有機高分子化合物を少なくとも1つ含んでなることが好ましい。軟化点を120℃以上とすることにより、遮断層の厚さがより薄くても、耐久性向上効果を得ることができる。
【0026】
これら軟化点については、例えば『ポリマーハンドブック第3版;ウィリー インターサイエンス社』の第VI章記載のガラス転位点を参考とすることができる。
これらのうち、軟化点が高く好ましいものとしては、ポリエステル類では、ビスフェノールAとテレフタル酸及びイソフタル酸からなるポリエステル(ユニチカ株式会社製;Uポリマーなど)、または4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノールとビスフェノールAとテレフタル酸及びイソフタル酸からなるポリエステルが挙げられる。
またポリカーボネートとしては4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノールとビスフェノールAのポリカーボネート、4,4'−(3,3,5、5−テトラメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノールとビスフェノールAのポリカーボネートが挙げられる。
ポリアミド類では、ポリアクリルアミド、ポリt−ブチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0027】
UV硬化型樹脂としては、例えば、ジペンタエリスロトールヘキサアクリレートを架橋重合して得られるものが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネート化合物(例えばロンザ社;PRIMASET PT−60)の重合で得られるものが挙げられる。
これらのうち軟化点が200℃以上であるポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリエーテルスルホン類が好ましい。
【0028】
上記遮断層は、上記有機高分子化合物を遮断層の構成材料のうち体積比で20%以上(遮断層の固形分中の割合)用いることが好ましく、より好ましくは50%以上、最も好ましくは70%以上用いる。これにより、本発明の遮断層の効果をより有効に発揮することができる。
遮断層が含んでもよい他の化合物としては、具体的には、金属単体、金属酸化物、金属塩化物、金属窒化物、金属硫化物などの粒子が挙げられ、実質的に透明性を損なわない範囲で含有することができる。例えば、Au、Ag、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、Cu、SnO2、In23、SnドープIn23、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、Y23、Al23、ZrO2、PdCl2、AlON、ZnSなどの粒子、またはシリカゲル、アルミナの粒子が挙げられる。また、他の有機高分子化合物としては、特に制限無く用いることができる。ここで実質的な透明とは、450nm、550nm、610nmで測定した場合の透過率が全て50%以上であることを表す。また、染料、蛍光染料、蛍光顔料、透明有機粒子または本発明の効果を失わない程度(EL素子全体の輝度のうち30%以下)の発光体粒子を存在させても良い。
【0029】
これら有機高分子化合物またはその前駆体は、適当な有機溶媒(例えば例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンなど)に溶解し透明電極上あるいは発光層に塗布して形成することができる。
【0030】
また遮断層が無機化合物薄膜層と有機高分子化合物の層の組み合わせで構成されているものも好ましい。無機化合物としては金属単体、二酸化ケイ素、その他金属酸化物、金属窒化物などが上げられる。無機化合物薄膜層を形成する方法としては、スパッタ法、CVD法などが採用できる。遮断層が無機化合物薄膜層と有機高分子化合物の2層の組み合わせで形成されている場合、無機化合物薄膜層の膜厚は10nm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
遮断層は、蛍光体粒子と透明電極との接触を遮断するため、電圧を印加し長時間発光を継続させた場合に起こる蛍光体粒子と透明電極の界面の劣化を顕著に抑制する効果がある。結果として、高輝度高効率を維持したまま、高耐久化を達成するものである。特に高輝度発光条件(周波数800Hz以上、電圧100V以上)で高耐久化を達成できる。
【0031】
<絶縁層>
本発明の絶縁層は、誘電率と絶縁性が高く、且つ高い絶縁破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばBaTiO、KNbO、LiNbO、LiTaO、Ta、BaTa、Y、Al、AlONなどが用いられる。これらは均一な膜として設置されても良いし、また有機バインダーを含有する粒子構造を有する膜として用いても良い。例えば、Mat.Res.Bull.36巻、1065ページに記載されているようにBaTiO微粒子とBaTiOゾルとから構成した膜などが用いられる。
膜厚みは、8μm以上30μm未満であることが望ましい。より好ましくは10μm以上28μm未満であり、12μm以上25未満以下がさらに好ましい。膜厚が薄すぎると絶縁破壊が起きやすくなり、厚すぎると発光層にかかる電圧が小さくなり、実質的に発光効率が低下するため好ましくない。耐久性効果の点からは絶縁膜の膜厚は10μm以上であることが好ましく、初期輝度の観点からは絶縁膜の膜厚は10μm以下であることが好ましい。
【0032】
絶縁層に用いることができる有機バインダーとしては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂が挙げられる。これらの樹脂に、BaTiOやSrTiOなどの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。分散方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる
【0033】
<赤色蛍光染料層>
本発明のエレクトロルミネッセンス素子では、白色発光を作るために青緑に発光する硫化亜鉛粒子の他に赤色に発光する発光材料を使用する。赤色の発光材料は発光粒子層中に分散しても、絶縁層中に分散してもよく、発光粒子層と透明電極の間や透明電極に対して発光粒子層と反対側に位置させてもよい。
【0034】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子において、白色発光時の赤色の発光波長として好ましくは600nm以上650nm以下である。この範囲に含まれる赤色発光波長を得るには、赤色発光材料を発光層に含有させても、発光層と透明電極の間に入れても、透明電極を中心として発光層の反対側に入れてもよいが、絶縁層に含有させることが最も好ましい。赤色発光材料を含む絶縁層は、本発明におけるエレクトロルミネッセンス素子中の絶縁層が全て赤色発光材料を含む層とすることも好ましいが、素子中の絶縁層を2つ以上に分割し、そのうちの一部が赤色発光材料を含む層とすることがより好ましい。赤色発光材料を含む層は、赤色発光材料を含まない絶縁層と発光層の間に位置することが好ましく、両側を赤色発光材料を含まない絶縁層で挟まれる様に位置させることも好ましい。
【0035】
赤色発光材料を含む層を赤色発光材料を含まない絶縁層と発光層の間に位置させる場合、赤色発光材料を含む層は1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上17μm以下である。赤色発光材料を添加した絶縁層中の赤色発光材料の濃度は、BaTiO3に代表される誘電体粒子に対しての質量%で、1質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上15質量%以下である。赤色発光材料を含む層が両側から赤色発光材料を含まない絶縁層に挟まれる様に位置する場合、赤色発光材料を含む層は1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上10μm以下である。赤色発光材料を添加した絶縁層中の赤色発光材料の濃度は、誘電体粒子に対しての質量%で、1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。赤色発光材料を含む層が両側から赤色発光材料を含まない絶縁層に挟まれる様に位置する場合には赤色発光材料を含む層に誘電体粒子を含有させず、高誘電率バインダーと赤色発光材料のみの層にすることも好ましい。
【0036】
ここで使用される赤色発光材料が粉末の状態にある時の発光波長として好ましくは600nm以上750nm以下であることが好ましく、より好ましくは610nm以上650nm以下であり、最も好ましくは610nm以上、630nm以下である。この発光材料がエレクトロルミネッセンス素子に添加され、エレクトロルミネッセンス発光時の赤色の発光波長としては前述の様に600nm以上、650nm以下であることが好ましく、より好ましくは605nm以上630nm以下であり、最も好ましくは608nm以上、620nm以下である。
【0037】
赤色発光材料を含む層の結合剤としては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂が好ましい。
【0038】
本発明の赤色発光材料としては、蛍光顔料または蛍光染料を好ましく用いることが出来る。これらの発光中心をなす化合物としては、ローダミン、ラクトン、キサンテン、キノリン、ベンゾチアゾール、トリエチルインドリン、ペリレン、トリフェンニン、ジシアノメチレンを骨格として持つ化合物が好ましく、他にもシアニン系色素、アゾ染料、ポリフェニレンビニレン系ポリマー、ジシランオリゴチエニレン系ポリマー、ルテニウム錯体、ユーロピウム錯体、エルビウム錯体を用いることも好ましい。これらの化合物は単独で用いても複数種類を用いてもよい。また、これらの化合物はさらにポリマー等に分散した後に使用してもよい。
【0039】
<透明電極>
透明電極は、ガラス基板はもとより、ポリエチレンテレフタレートやトリアセチルセルロースベース等の透明フィルム上に、インジウム・錫酸化物(ITO)や錫酸化物、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、酸化亜鉛等の透明導電性材料を蒸着、塗布、印刷等の方法で一様に付着、製膜することで得られる。
また、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造を用いても良い。さらに、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などの導電性ポリマーを好ましく用いることができる。
これら透明導電性材料に関しては、東レリサーチセンター発行「電磁波シールド材料の現状と将来」、特開平9−147639号公報等に記載されている。
【0040】
また上記透明電極としては、上記透明フィルムに上記透明導電性材料を付着・製膜してなる透明な導電性シートや導電性ポリマーに、一様な網目状、櫛型あるいはグリッド型等の金属および/または合金の細線構造部を配置した導電性面を作成して通電性を改善した透明導電性シートを用いることも好ましい。
【0041】
上記のような細線を併用する場合、金属や合金の細線の材料としては、銅や銀、ニッケル、アルミニウムが好ましく用いられるが、目的によっては、金属や合金の代わりに前述の透明導電性材料を用いてもよい。電気伝導性と熱伝導性が高い材料であることが好ましい。該細線の幅は、任意であるが、0.1μm程度から1000μmの間が好ましい。該細線は、50μmから5cmの間隔のピッチで配置されていることが、好ましく、特に100μmから1cmピッチが好ましい。
該細線構造部の高さ(厚み)は、0.1μm以上10μm以下が、好ましい。特に好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。該細線構造部と透明導電膜は、どちらが表面に出ていも良いが、結果として導電性面の平滑性(凹凸)は、5μm以下であることが好ましい。密着性の観点から、0.01μm以上5μm以下が好ましい。特に好ましいのは、0.05μm以上3μm以下である。
【0042】
ここで、導電性面の平滑性(凹凸)は、3次元表面粗さ計(例えば、東京精密社製;SURFCOM575A−3DF)を用いて5mm四方を測定したときの凹凸部の平均振幅を示す。表面粗さ計の分解能の及ばないものについては、STMや電子顕微鏡による測定によって、平滑性を求める。
細線の幅と高さ、間隔の関係については、細線の幅は、目的に応じて決めればよいが、典型的には、細線間隔の1/10000以上、1/10以下が好ましい。
細線の高さも同様であるが、細線の幅に対して1/100以上10倍以下の範囲が好ましく用いられる。
【0043】
本発明において用いられる透明電極の表面抵抗率は0.1Ω/□以上100Ω/□以下であることが好ましく、1Ω/□以上80Ω/□以下であることがより好ましい。 透明電極の表面抵抗率は、JIS K6911に記載の測定方法に準じて測定された値である。
【0044】
上記透明電極として金属および/または合金の細線構造部を配置した場合には、光の透過率の減少を抑制することが好ましい。細線の間隔、細線幅や高さを上述の範囲内とすることで、90%以上の光の透過率を確保することが、好ましい。
本発明においては、透明電極の光の透過率が、550nmの光に対して70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0045】
また、上記透明電極は、輝度を向上させるため、また白色発光を実現する上で、波長420nm〜650nmの領域の光を80%以上透過することが好ましく、より好ましくは90%以上透過することが好ましい。白色発光を実現する上では、波長380nm〜680nmの領域の光を80%以上透過することがより好ましい。透明電極の光の透過率は、分光光度計によって測定することができる。
【0046】
<背面電極>
光を取り出さない側の背面電極は、導電性の有る任意の材料が使用出来る。金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなどの中から、作成する素子の形態、作成工程の温度等により適時選択されるが、導電性さえあればITO等の透明電極を用いても良い。更に、耐久性を向上させる観点から、背面電極の熱伝導率は高いことが重要で、2.0W/cm・deg以上、特に2.5W/cm・deg以上であることが好ましい。
また、EL素子の周辺部に高い放熱性と通電性を確保するために、金属シートや金属メッシュを背面電極として用いることも好ましい。
【0047】
<製造方法>
本発明のEL素子において、発光層、絶縁層、及び遮断層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法などを用いて形成材料を溶剤に溶解してなる塗布液を塗布して形成することが好ましい。特に、スクリーン印刷法のような印刷面を選ばない方法やスライドコート法のような連続塗布が可能な方法を用いることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法は、蛍光体粒子や誘電体材料の微粒子を高誘電率のポリマー溶液に分散した分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布する。メッシュの厚さ、開口率、塗布回数を選択することにより膜厚を制御できる。分散液を換えることで、発光層や絶縁層のみならず、背面電極層なども形成でき、さらにスクリーンの大きさを変えることで大面積化が容易である。
【0048】
これらの塗布に供する場合、発光層、絶縁層、遮断層の構成材料に適当な有機溶剤を加えた塗布液を調製して用いることが好ましい。好ましく用いられる有機溶剤としては、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0049】
また、上記塗布液の粘度としては、0.1〜5Pa・sが好ましく、0.3〜1.0Pa・sが特に好ましい。発光層形成用塗布液又は誘電体粒子含有の絶縁層形成用塗布液の粘度が、0.1Pa・s未満の場合には、塗膜の膜厚ムラが生じやすくなり、また分散後の時間経過とともに蛍光体粒子又は誘電体粒子が分離沈降してしまうことがある。一方、発光層形成用塗布液又は絶縁層形成用塗布液の粘度が5Pa・sを超える場合には、比較的高速での塗布が困難となる。なお、前記粘度は、塗布温度と同じ16℃において測定される値である。
【0050】
発光層は、スライドコーター又はエクストルージョンコーターなどを用いて、塗膜の乾燥膜厚が5μm以上で50μm以下になるように連続的に塗布して形成することが特に好ましい。
【0051】
支持体上に塗布された各機能層は、少なくとも塗布から乾燥工程までを連続工程とすることが好ましい。乾燥工程は、塗膜が乾燥固化するまでの恒率乾燥工程と、塗膜の残留溶媒を減少させる減率乾燥工程に分けられる。本発明では、各機能層の結合剤比率が高いため、急速乾燥させると表面だけが乾燥し塗膜内で対流が発生し、いわゆるベナードセルが生じやすくなり、また急激な溶媒の膨張によりブリスター故障を発生しやすくなり、塗膜の均一性を著しく損う。逆に、最終の乾燥温度が低いと、溶媒が各機能層内に残留してしまい、防湿フィルムのラミネート工程等のEL素子化の後工程に影響を与えてしまう。したがって、乾燥工程は、恒率乾燥工程を緩やかに実施し、溶媒が乾燥するのに充分な温度で減率乾燥工程を実施することが好ましい。恒率乾燥工程を緩やかに実施する方法としては、支持体が走行する乾燥室をいくつかのゾーンに分けて、塗布工程終了後からの乾燥温度を段階的に上昇することが好ましい。
【0052】
<封止>
本発明の分散型EL素子は、最後に封止フィルムを用いて、外部環境からの湿度や酸素の影響を排除するよう加工するのが好ましい。EL素子を封止する封止フィルムは、40℃−90%RHにおける水蒸気透過率が0.1g/m2/day以下が好ましく、0.05g/m2/day以下がより好ましい。さらに40℃−90%RHでの酸素透過率が0.1cm3/m2/day/atm以下が好ましく、0.01cm3/m2/day/atm以下がより好ましい。
【0053】
このような封止フィルムとしては、有機物膜と無機物膜の積層膜が好ましく用いられる。有機物膜としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられ、特にポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂などは吸水性があるため、あらかじめ真空加熱などの処理を施すことで絶乾状態にしたものを用いることがより好ましい。これらの樹脂を塗布などの方法によりシート状に加工したものの上に、無機物膜を蒸着、スパッタリング、CVD法などを用いて堆積させる。堆積させる無機物膜としては、酸化ケイ素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化ケイ素/酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが好ましく用いられ、特に酸化ケイ素がより好ましく用いられる。より低い水蒸気透過率や酸素透過率を得たり、無機物膜が曲げ等によりひび割れることを防止するために、有機物膜と無機物膜の形成を繰り返したり、無機物膜を堆積した有機物膜を接着剤層を介して複数枚貼り合わせて多層膜とすることが好ましい。有機物膜の膜厚は、5〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。無機物膜の膜厚は、10〜300nmが好ましく、20〜200nmがより好ましい。積層した封止フィルムの膜厚は、30〜1000μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。例えば、40℃−90%RHにおける水蒸気透過率が0.05g/m2/day以下の封止フィルムを得るためには、上記の有機物膜と無機物膜とが2層ずつ積層された構成では50〜100μmの膜厚で済んでしまうが、従来から封止フィルムとして使用されているポリ塩化三フッ化エチレンでは200μm以上の膜厚を必要とする。封止フィルムの膜厚は、薄い方が光透過性や素子の柔軟性の点で好ましい。
【0054】
この封止フィルムでELセルを封止する場合、2枚の封止フィルムでELセルを挟んで周囲を接合封止しても、1枚の封止フィルムを半分に折って封止フィルムが重なる部分を接合封止しても良い。封止フィルムで封止されるELセルは、ELセルのみを別途作成しても良いし、封止フィルムを支持体として封止フィルム上に直接ELセルを作成することもできる。
【0055】
高度な水蒸気透過率や酸素透過率を有する封止フィルムを用いた場合、封止フィルム面からの水分や酸素の侵入は防止できるが、封止フィルム同士の接合部分からの水分や酸素の侵入が問題となるため、ELセルの周囲に乾燥剤層を配置することが望ましい。乾燥剤層に用いられる乾燥剤としては、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、ゼオライト,活性炭、シリカゲル、紙や吸湿性の高い樹脂などが好ましく用いられるが、特にアルカリ土類金属酸化物が吸湿性能の点でより好ましい。これらの吸湿剤は粉体の状態でも使用することはできるが、例えば樹脂材料と混合して塗布や成形などによりシート状に加工したものを使用したり、樹脂材料と混合した塗布液をディスペンサーなどを用いて、ELセルの周囲に塗布したりして乾燥剤層を配置することが好ましい。EL素子の周囲のみならず、ELセルの下面や上面を乾燥剤で覆うことがより好ましい。この場合、光を取り出す面には透明性の高い乾燥剤層を選択することが好ましい。透明性の高い乾燥剤層としては、ポリアミド系樹脂等を用いることができる。
【0056】
封止フィルム同士の接着には、ホットメルト型接着剤又はUV硬化型接着剤が好ましく用いられるが、特に水分透過率と作業性の点でUV硬化型接着剤がより好ましい。ホットメルト型接着剤としてはポリオレフィン系樹脂等、UV硬化型接着剤としてはエポキシ系樹脂等を用いることができる。封止フィルム同士の接着に際しては、封止フィルム全面に接着剤を塗布しELセルと乾燥剤層を配置した後、貼り合わせて熱やUV照射により硬化させても、封止フィルムにELセルと乾燥剤層を配置した後、封止フィルム同士が重なり合う領域に接着剤を塗布して硬化させても良い。
【0057】
封止フィルムの貼り合わせは、プレス機などを用いて圧力をかけながら熱やUV照射する方法で行うことができるが、封止フィルム内部又は封止装置を真空又は露点管理された不活性ガス中で行うことが、EL素子の寿命を向上させるのでより好ましい。
【0058】
<用途>
本発明の用途は、特に限定されるものではないが、光源としての用途を考えると、発光色は白色が好ましい。発光色を白色とする方法としては、例えば、銅とマンガンが付活され、焼成後に徐冷された硫化亜鉛蛍光体粒子のように単独で白色発光する蛍光体粒子を用いる方法や、3原色または補色関係に発光する複数の蛍光体粒子を混合する方法が好ましい。(青−緑−赤の組み合わせや、青緑−オレンジの組み合わせなど)また、特開平7−166161号公報、特開平9−245511号公報、特開2002−62530号公報に記載の青色のように短い波長で発光させて、蛍光顔料や蛍光染料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法も好ましい。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30〜0.43の範囲で、かつy値が0.27〜0.41の範囲が好ましい。
【0059】
本発明はEL素子を高輝度(例えば600cd/m2以上)で発光させて用いる用途で特に有効である。具体的には本発明はEL素子の透明電極と背面電極の間に、100V以上500V以下の電圧を印加する駆動条件、または800Hz以上4000KHz以下の周波数の交流電源で駆動する条件で使用する場合に有効である。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明の分散型ELセルの実施例を示すが、本発明の分散型EL素子はこれに限定されるものではない。
【0061】
(実施例−1)
厚み70μmのアルミ電極(背面電極)上に、以下に示す各層を第1層、第2層の順序で、それぞれの層形成用塗布液を塗布して形成し、更にインジウム−スズ酸化物を厚み40nmの透明電極を形成するようにスパッタしたポリエチレンテレフタレート(厚み75μm)を透明電極側(導電性面側)がアルミ電極側を向くように、透明電極と第2層である蛍光体粒子含有層が隣接するようにして190℃のヒートローラーで窒素雰囲気下で圧着した。
【0062】
以下に示す各層の添加物量は、EL素子1平方メートルあたりの質量を表す。
各層は、ジメチルホルムアミドを加えて粘度を調節した塗布液とした上で塗布して作製し、その後110℃で10時間乾燥させた。
【0063】
第1層;絶縁層(赤色染料層なし)
シアノエチルプルラン 7.0g
シアノエチルポリビニルアルコール 5.0g
チタン酸バリウム粒子(平均球相当直径0.05μm) 50.0g
第2層;絶縁層(赤色染料層あり)
シアノエチルプルラン 7.0g
シアノエチルポリビニルアルコール 5.0g
チタン酸バリウム粒子(平均球相当直径0.05μm) 50.0g
蛍光染料(620nmに発光ピークを有する) 3.0g
第3層;発光層
シアノエチルプルラン 18.0g
シアノエチルポリビニルアルコール 12.0g
蛍光体粒子A 120.0g
【0064】
蛍光体粒子Aの製法、特性については以下に示す。
ZnS(フルウチ化学製・純度99.999%)150gに水を加えてスラリーとし、0.416gのCuSO4・5H2Oを含む水溶液及び亜鉛に対して0.0001モル%の塩化金酸ナトリウムを添加し、一部にCuを置換したZnS生粉(平均粒径100nm)を得た。得られた生粉25.0gに、BaCl2・2H2O;4.2g、MgCl2・6H2O;11.2g、SrCl2・6H2O;9.0gを加え、1200℃で4時間焼成を行い、蛍光体中間体を得た。上記の粒子をイオン交換水で10回水洗し、乾燥した。得られた中間体をボールミルにて粉砕し、その後700℃4時間でアニールした。
得られた蛍光体粒子を、10%のKCN水溶液で洗浄して表面にある余分な銅(硫化銅)を取り除いた後5回水洗を行い、蛍光体粒子Aを得た。
【0065】
さらに蛍光体粒子Bは、融剤の添加量をBaCl2・2H2O;2.1g、MgCl2・6H2O;6.8g、SrCl2・6H2O;37.1gとし、焼成条件を1200℃1時間とした以外は、蛍光体粒子Aと同様に行った。
また、さらに蛍光体粒子Cは、融剤の添加量をBaCl2・2H2O;2.1g、MgCl2・6H2O;4.25g、SrCl2・6H2O;1.0gとした以外は、蛍光体粒子Aと同様に行った。
また、蛍光体粒子Dは、1200℃で焼成を行う前にBaCl2・2H2Oの一部をとり、Na2[Pt(OH)6] をZnS生粉25gに対して、12.5mg添加し、よく混合した後に、ZnS生粉や他の融剤と混合し、1200℃で焼成したこと以外は蛍光体粒子Aと同様に行った。
【0066】
【表1】

【0067】
このようにして得られた塗布物に前述したように透明電極付きのフィルムを圧着し、アルミ電極、透明電極それぞれに電極端子(厚み60μmのアルミ板)を配線してから、封止フィルム(ポリ塩化三フッ化エチレン;厚み200μm)にて密封し、EL素子101とした。
【0068】
次にEL素子101に対し、第2層の内容を変更したり、また第2層と透明電極の間に遮断層を新設したりして変更を加えた以外は同様にして、表2に示すようなEL素子102〜115を作製した。
【0069】
EL素子102;遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0070】
EL素子103;蛍光体粒子Aの代わりに蛍光体粒子Bを用い、さらに遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0071】
EL素子104;蛍光体粒子Aの代わりに蛍光体粒子Cを用い、さらに遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0072】
EL素子105;遮断層として厚み1.0μmのポリカーボネート(帝人化成(株)製;TS−2020)を、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0073】
EL素子106;遮断層として厚み1.0μmの体積比で3:1のシアノエチルプルランとポリカーボネート(帝人化成(株)製;TS−2020)の混合層を、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0074】
EL素子107;遮断層として厚み1.0μmの体積比で9:1のシアノエチルプルランとポリカーボネート(帝人化成(株)製;TS−2020)の混合層を、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0075】
EL素子108;遮断層として厚み0.5μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0076】
EL素子109;遮断層として厚み5.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0077】
EL素子110;遮断層として厚み15μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設けた以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0078】
EL素子111;遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設け、且つ2つの絶縁層の塗布条件を変更して合計の膜厚を20μmとした以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0079】
EL素子112;遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設け、且つ2つの絶縁層の塗布条件を変更して合計の膜厚を8μmとした以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0080】
EL素子113;遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設け、且つ塗布条件を変更して2つの絶縁層の膜厚を合計で20μm、発光層の膜厚を40μmとした以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0081】
EL素子114;遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設け、且つ塗布条件を変更して2つの絶縁層の膜厚を合計で20μm、発光層の膜厚を60μmとした以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0082】
EL素子115;蛍光体粒子Dを用いて、遮断層として厚み1.0μmのビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートを、透明電極と発光層との間に設け、且つ塗布条件を変更して2つの絶縁層の膜厚を合計で20μm、発光層の膜厚を40μmとした以外は、EL素子101と同様にしてEL素子を作製した。
【0083】
【表2】

【0084】
以上のようにして得られたEL素子に、周波数1000Hzの交流電源を用いて150Vの電圧を印加した場合の、EL素子101の輝度を100とした場合の相対輝度を表3に示す。また、同じ交流電源を用いて、初期輝度600cd/m2を示すよう電圧を調整し、該条件で連続点灯後、輝度が300cd/m2に低下するまでの時間(輝度半減時間)を併せて表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
EL素子101、102を比較すると、遮断層として熱可塑性樹脂であるビスフェノールAと4,4'−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(モル比2:1)とのポリカーボネートの層を設けることで、遮断層のない場合の2倍以上の耐久性向上効果を得ることができる。
EL素子102、103、104を比較すると、蛍光体粒子のサイズ及び変動係数が小さいほど150Vでの初期輝度が高いだけでなく、輝度半減時間も長く、好ましい結果が得られている。
EL素子105、106、107を比較すると、遮断層として、ポリカーボネートだけでなく、シアノエチルプルランを含有させることで、150Vでの初期輝度の低下を抑えることができており、且つ輝度半減時間も長い。ただしEL素子107の結果から、EL素子107においても遮断層の耐久性効果が得られるものの、体積比率で熱可塑性樹脂であるポリカーボネートの体積比率が20%以上の場合において、より良好な耐久性効果が得られることが分かる。
【0087】
EL素子102とEL素子108〜110を比較すると、遮断層の膜厚が薄いほど、初期輝度の低下を抑えることができ、また膜厚が薄くても十分な耐久性向上効果が得られることが分かる。初期輝度の観点から10μm以下であることが好ましい。
EL素子102とEL素子111〜115を比較すると、2つの絶縁層の合計膜厚を薄くし、且つ発光層厚を厚くすることで、初期輝度の低下を回復し、さらに耐久性向上効果も得られることが分かる。ただし、初期輝度の観点から、発光層の膜厚は50μm以下が好ましい。さらに蛍光体粒子に白金を含有させた場合、より一層の輝度及び耐久性向上効果が得られた。
【0088】
これらの結果より、本発明のような蛍光体粒子サイズ及び変動係数を有し、且つ遮断層を設けたEL素子は、初期輝度の低下を最小限に抑え、さらには顕著な耐久性向上効果を得ることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面電極及び透明電極からなる一対の電極の間に少なくとも絶縁層及び蛍光体粒子を含有する発光層を有する分散型エレクトロルミネッセンス素子において、前記蛍光体粒子の平均サイズが1μm以上20μm未満及び粒子サイズの変動係数が3%以上35%未満であって、前記透明電極と前記発光層との間に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含有する遮断層を少なくとも1層有することを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記遮断層を構成する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びUV硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料が、前記遮断層の体積比で20%以上含んでなることを特徴とする請求項1記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
上記遮断層の厚みが0.01μm以上10μm未満である請求項1または2に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記絶縁層の膜厚が10μm以上30μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光層の膜厚30μm以上50μm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子
【請求項6】
前記蛍光体粒子が付活剤として銅を含む硫化亜鉛粒子であって、6族から10族までの第2遷移系列に属する金属元素を少なくとも1種類含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。