説明

分散型圧縮空気貯蔵発電システム

【課題】水上はもとより地上(特に、耕作放棄地や港湾埋立地等の軟弱地盤)においても耐震性・耐久性に優れるとともに、電力供給の安定化と効率化を図ること。
【解決手段】発電装置により発電された電力の内、送電される電力以外の余剰電力で作動される分散型の空気圧縮装置と、空気圧縮装置により圧縮された空気を分散して貯蔵する圧縮空気貯蔵部と、圧縮空気貯蔵部から放出された圧縮空気により分散して再発電する再発電装置とを備え、圧縮空気貯蔵部は、円筒形に形成した多数の耐震性の良い圧縮空気貯蔵容器を連通連結して構成し、各圧縮空気貯蔵容器から圧縮空気を選択的に放出可能となした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型圧縮空気貯蔵発電システムに関するものであり、特に、水上はもとより、軟弱地盤等の地上においても耐震性・耐久性に優れた圧縮空気貯蔵構造となすとともに、電力供給の安定化を図ることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エネルギーを貯蔵するシステムの一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1では、広大な敷地を安く確保し易い海・川・湖等の水上に浮体構造物を設置して、浮体構造物に液化ガスを貯蔵することができる液化ガス貯蔵システムが開示されている。かかる液化ガス貯蔵システムは、LNG等の液化ガスを地上以外の場所に容易に貯蔵することができ、長期間の貯蔵であっても貯蔵効率やエネルギー効率の低下を抑制することができるというものである。また、欧米では、地震の少ない地域の岩塩地層に、気密性の高い巨大な空洞を削掘して大量の圧縮空気を蓄える、いわゆる集中型のエネルギー貯蔵法(ドイツHuntorf,米国Alabana など)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−265938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1は、エネルギー貯蔵が地上以外、つまり水上に制限されるものであって、地上、特に軟弱地盤等の未利用地においては耐震性等の観点から適用に難があった。同じく巨大な空洞に圧縮空気を集中的に蓄える方法は、十分な大きさの岩塩地層がある地震の少ない場所に限られること、岩盤空洞で代用する場合には、耐震性
の課題の他に、気密性・施工性、陥没等の2次災害の面で難があった。
【0005】
そこで、本発明は、水上はもとより地上(特に、耕作放棄地や港湾埋立地等の軟弱地盤)においても耐震性・耐久性に優れるとともに、電力供給の安定化と効率化を図ることができる分散型圧縮空気貯蔵発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、発電装置により発電された電力の内、送電される電力以外の余剰電力で作動される分散型の空気圧縮装置と、空気圧縮装置により圧縮された空気を分散して貯蔵する圧縮空気貯蔵部と、圧縮空気貯蔵部から放出された圧縮空気により分散して再発電する再発電装置とを備え、圧縮空気貯蔵部は、円筒形に形成した多数の耐震性の良い圧縮空気貯蔵容器を連通連結して構成し、各圧縮空気貯蔵容器から圧縮空気を選択的に放出可能となしたことを特徴とする。
【0007】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、風力や太陽光等の自然エネルギーを利用した発電装置により発電して、発電された電力の所定量を所定の場所に送電する。そして、送電される電力以外の余剰電力でコンプレッサ等の空気圧縮装置を作動させて、空気を圧縮して圧縮空気貯蔵部に貯蔵する。圧縮空気貯蔵部に貯蔵した圧縮空気は必要に応じて圧縮空気貯蔵部から放出して、その圧縮空気によりマイクロタービンや小型水車等の再発電装置を作動させて再発電(欧米の集中型システムに較べて、分散型でタービン等も小型化されるため、耐震対策等が容易で、熱放出・吸収の問題の対応策も簡単になる)して、発電された電力を送電することができる。つまり、自然エネルギーによる電力創生・安定供給システムを提供することができる。換言すると、電力の自給自足及び安定供給を実現することができる。
【0008】
この際、圧縮空気貯蔵部は、円筒形に形成した多数の圧縮空気貯蔵容器を束状に集合させて構成し、各圧縮空気貯蔵容器から圧縮空気を選択的に放出可能となすことで、エネルギー消費量の大きい都市や工業地帯の周辺に圧縮空気貯蔵部を適宜、分散・設置することができる。その結果、送電ロスを小さくすることができる。特に、我が国を始めとして海に隣接する多くの国では、海外貿易に有利な沿岸域に大都市や工業地帯、いわゆる臨海都市や臨海工業地帯を形成して発展してきたという経緯があり、幅広く分散・設置することができる圧縮空気貯蔵部と再発電装置とから電力供給拠点を有効にかつ大きな自由度で設計することができる。
【0009】
請求項2記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、水上に浮遊可能な浮体に、前記発電装置と前記空気圧縮装置と前記圧縮空気貯蔵部と前記再発電装置を設けると共に、圧縮空気貯蔵部は浮体内に前記圧縮空気貯蔵容器を充填状態に配設して形成したことを特徴とする。
【0010】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、浮体を離島や沿岸地域に電力供給拠点を分散させて構築することができる。そして、浮体は、免震構造で波浪安定性が良く、長寿命・低コストの海洋インフラとなすことが可能であり、かかる浮体に発電装置と空気圧縮装置と圧縮空気貯蔵部を設けることで、電力を適宜創生して、離島や沿岸地域に安定供給することができる。
【0011】
請求項3記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、浅水域において、間隔をあけて複数の支柱を立設し、対向する支柱間には支持体を介して上下方向に伸延する多数の圧縮空気貯蔵容器を垂設することで前記圧縮空気貯蔵部を構成したことを特徴とする。
【0012】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、沿岸浅海域に電力供給拠点を分散させて構築することができる。そして、圧縮空気貯蔵部は、支柱と多数の圧縮空気貯蔵容器とで波浪による外力をもたせるが、免震性の高い水が介在しているため、耐震性と耐久性に優れた構造、つまり透過型(スリット型)の堤防となすことができる。そのため、電力を自給自足することができるとともに、内海を静穏化して沿岸漁業を良好に確保することができる。
【0013】
請求項4記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、地面に船底状の凹条溝を形成し、凹条溝の表面にコンクリートを打設して凹条床部を形成し、凹条床部内に多数の圧縮空気貯蔵容器を横臥状に整列させて配置して圧縮空気貯蔵容器の最下層を形成するとともに、最下層の上にさらに圧縮空気貯蔵容器を載積して地面よりも上方まで積層して膨出層を形成し、圧縮空気貯蔵容器間には間詰め気泡コンクリートを充填して、床部の側縁部間に掛け廻した固定片を介して積層した多数の圧縮空気貯蔵容器を固定することで前記圧縮空気貯蔵部を構成したことを特徴とする。
【0014】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、耕作放棄地や湾岸埋立地等の軟弱地盤に対する耐震性・耐久性に優れた電力供給拠点を分散させて構築することができる。そして、電力の自給自足ができるため、農村・山村・地方の活性化を図ることができる。また、圧縮空気貯蔵部は、地面に形成した船底状の凹条溝の表面にコンクリートを打設して凹条床部を形成しているため、施工が容易で地震に強い構造(下面に発砲ウレタン層を持つコンクリート床版の上蓋を設ければ、直下型地震衝撃による万一の爆裂などに対処することも可能)となすことができる。
【0015】
請求項5記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1〜4のいずれか1項記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、前記圧縮空気貯蔵容器は、円筒状の容器本体と、容器本体の両端開口部を閉蓋する一対の蓋体と、一対の蓋体の周縁部間に容器本体内を通して介設することで容器本体に軸線方向にプレストレスを導入するロッド状の軸線方向補強体と、容器本体の外周面に一定の張力を加えて螺旋状に巻回することで容器本体の円周方向にプレストレスを付与するテープ状の円周方向補強体とを具備することを特徴とする。
【0016】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、軸線方向補強体に軸線方向の応力を分担させるとともに、円周方向補強体に円周方向の応力を分担させることで、充填した圧縮空気が容器本体に作用する内圧(例えば、7MPa)に耐え得る圧縮空気貯蔵容器の構造となすことができる。
【0017】
請求項6記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項5記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、前記容器本体は、側縁部の長手方向と端縁部の周方向にそれぞれ段付き嵌合部を有するコンクリート製の一対の円弧状本体形成片同士を、側縁部の段付き嵌合部間に緩衝体を介して接続するとともに、端縁部の段付き嵌合部間に緩衝体を介して軸線方向に複数接続して円筒状に形成したことを特徴とする。
【0018】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、コンクリート製の一対の円弧状本体形成片同士を接続するとともに、軸線方向に複数接続して容器本体を円筒状に形成している。この際、円弧状本体形成片同士には、側縁部に段付き嵌合部を形成して、段付き嵌合部間に緩衝体を介設するとともに、端縁部に段付き嵌合部を形成して、段付き嵌合部間に緩衝体を介設している。そのため、圧縮空気貯蔵容器内に圧縮空気を出し入れした際に、内圧の変化により容器本体が膨張・収縮変形を繰り返すが、その変形を緩衝体により堅実に緩衝することができる。その結果、圧縮空気貯蔵容器をコンクリート製で安価に製造することができるとともに、変形疲労破壊に対する耐久性を保持させることができる。なお、緩衝体としては、例えば、ブチルゴムを使用することができる。
【0019】
請求項7記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1〜4のいずれか1項記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、前記圧縮空気貯蔵容器は、外側容器内に単数ないしは複数の内側容器を配設して、外側容器内において内側容器の内と外にそれぞれ圧縮空気貯蔵空間を形成したことを特徴とする。
【0020】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、例えば、円筒状の外側容器内に複数の円筒状の内側容器を配設することで、圧縮空気貯蔵容器の面積率を良好となすことができるとともに、内側容器内に形成される圧縮空気貯蔵空間に比較的高圧の圧縮空気を貯蔵する一方、内側容器外に形成される圧縮空気貯蔵空間に比較的低圧の圧縮空気を貯蔵することで、圧縮空気の貯蔵量の合理的な増加(大容量化)が可能となる。この際、外側の圧縮空気貯蔵空間内の圧力を低減させることができるので、外側容器に作用するフープストレスを低減させることができて、耐強度を低減、つまり、外側容器の肉厚(例えば、鋼製管の板厚)を減少させることができる。また、外側の圧縮空気貯蔵空間内の圧力を低減させることができるので、外側容器として耐久性のあるPC管(プレキャスト管)を採用することもできる。その結果、圧縮空気貯蔵容器を腐食環境の劣る地域に適用可能となる。
【0021】
また、内側容器は、基本的に応力の自己平衡系(力のつり合いを保つ)として、外側容器の長手方向の耐力増大を防止することができる。そのため、内側容器を内蔵した外側容器の両端側における長手方向の外部支持力を大幅に軽減することができる。その結果、圧縮空気貯蔵容器の設置個所の適用自由度を増大させることができる。
【0022】
請求項8記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1〜4のいずれか1項記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、前記圧縮空気貯蔵容器は、外側容器内に複数の内側容器を多重に配設して、外側容器内において内側容器の内と外にそれぞれ圧縮空気貯蔵空間を多重に形成したことを特徴とする。
【0023】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、例えば、円筒状の外側容器内に複数の円筒状の内側容器を略同心円状にかつ半径方向に間隔をあけて多重に配設することで、外側容器内において内側容器の内と外にそれぞれ圧縮空気貯蔵空間を多重に形成することができる。この際、中心側の圧縮空気貯蔵空間には可及的(可能な限り)高圧の圧縮空気を貯蔵し、外側に位置する圧縮空気貯蔵空間には順次減圧して比較的低圧の圧縮空気を貯蔵することができる。そして、圧縮空気を再発電装置(例えば、タービン発電機)に放出して使用する際には、中心側の圧縮空気貯蔵空間に貯蔵された圧縮空気から順次外側の圧縮空気貯蔵空間に貯蔵された圧縮空気を放出させて使用することができる。特に、電力の日間ピークトップ時には、中心側の圧縮空気貯蔵空間に貯蔵された高圧の圧縮空気を優先的に使用することで、タービン発電力を向上させることができる。また、最外側の圧縮空気貯蔵空間には比較的低圧の圧縮空気を貯蔵しているため、外側容器に作用するフープストレスを低減させることができて、耐強度を低減、つまり、外側容器の肉厚(例えば、鋼製管の板厚)を減少させることができる。また、外側の圧縮空気貯蔵空間内の圧力を低減させることができるので、外側容器として耐久性のあるPC管(プレキャスト管)を採用することもできる。その結果、圧縮空気貯蔵容器を腐食環境の劣る地域に適用可能となる。
【0024】
請求項9記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項1〜8のいずれか1項記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、発電装置は、ダム湖等の対向する湖岸間に一対の綱体を横架し、一対の綱体間に多数の太陽光発電用の太陽光パネルを架設したことを特徴とする。
【0025】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、ダム湖等の広大な湖面の上方に太陽光パネルを配設して、太陽光パネルにより太陽光発電を行うことができる。この際、広大な湖面を有効利用しているために、太陽光パネルを設置するスペースを容易に確保することができる。換言すると、敷地を確保することが困難である地上設置型の太陽光発電装置に比して、太陽光パネルの設置スペースの確保が容易である上に、伐採費や整地費が不要で環境保全に優れるとともに、メンテナンス費を削減することができる。また、一対の綱体間に架設した太陽光パネルにより湖面を広範囲に遮光することができ、この遮光効果(例えば、80%の遮光率)によって、有害なアオコの発生を抑制することができる。
【0026】
請求項10記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項9記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、綱体には、その長手方向に間隔をあけて湛水湖面上に浮遊する複数の浮体を連結して、浮体により綱体を湛水湖面の上方に一定の間隔をあけて弾性的に支持する柔構造となしたことを特徴とする。
【0027】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、湛水湖面上に浮遊する複数の浮体を介して綱体を湛水湖面の上方に一定の間隔(例えば、0.5m〜1.0m)をあけて弾性的に支持しているため、綱体への風圧を格段に小さくすることができる(空中1mの風圧は空中10mの風圧の400分の1である)。すなわち、例えば、前後方向と左右方向の2方向に20m〜30mの間隔で浮体を配置して、浮体により綱体を弾性支持しているため、風による綱体の上下振動を抑制することができて、動的不安定現象を無視することができる。この際、必要に応じて浮体と浮体の中間にさらに浮体を配置することで、上からの風圧を分散支持させることができる。
【0028】
請求項11記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムは、請求項10記載に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システムであって、綱体は吊り上げ調節自在となして、綱体に浮体を着脱自在に連結するとともに、遠隔操作して綱体から浮体を離脱可能となしたことを特徴とする。
【0029】
かかる分散型圧縮空気貯蔵発電システムでは、例えば、流木を伴う大洪水時に遠隔操作して綱体から浮体を離脱させて、浮体を回収するとともに、綱体を吊り上げ調節して湖面から1m前後に離隔させることで、流木等により綱体、さらには、綱体に架設した太陽光パネルが損傷等されるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、自然エネルギーによる電力創生・安定供給システムを構築することができて、電力の自給自足及び安定供給を実現することができる。そして、本発明では、エネルギー消費量の大きい都市や工業地帯の周辺に圧縮空気貯蔵部を適宜、分散・設置することができて、送電ロスを小さくすることができる。また、幅広く分散・設置することができる圧縮空気貯蔵部と再発電装置とから電力供給拠点を有効に設計することができるとともに、電力供給拠点が耐震性と耐久性を有することから設計に大きな自由度をもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例に係る分散型圧縮空気貯蔵発電システム(CAES)の概念的説明図。
【図2】第1実施例としての浮体の斜視説明図。
【図3】浮体本体の部分的斜視説明図。
【図4】浮力体の部分的斜視説明図。
【図5】浮力体の一部切欠正面説明図。
【図6】浮力体の断面平面説明図。
【図7】第2実施例としての透過型(スリット型)の堤防の斜視説明図。
【図8】圧縮空気貯蔵部の一部切欠正面説明図。
【図9】圧縮空気貯蔵部の一部切欠平面説明図。
【図10】ソーラーパネル部正面説明図。
【図11】ソーラーパネル部平面説明図。
【図12】第3実施例としての軟弱地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の斜視説明図。
【図13】軟弱地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の一部正面説明図。
【図14】軟弱地盤に配設した変形例としての圧縮空気貯蔵部の断面正面説明図。
【図15】圧縮空気貯蔵容器の分解斜視説明図。
【図16】圧縮空気貯蔵容器の断面正面説明図。
【図17】圧縮空気貯蔵容器の部分斜視図。
【図18】圧縮空気貯蔵容器の断面部分平面図。
【図19】コンクリート製の圧縮空気貯蔵容器の製造工程説明図。
【図20】金属製の圧縮空気貯蔵容器の製造工程説明図。
【図21】変形例1としての圧縮空気貯蔵容器の断面正面説明図。
【図22】変形例1としての圧縮空気貯蔵容器の拡大断面平面説明図。
【図23】内側容器の拡大断面平面説明図。
【図24】変形例2としての圧縮空気貯蔵容器の断面正面説明図。
【図25】第2実施例の変形例としての堤防の斜視説明図。
【図26】第3実施例の変形例1としての軟弱地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の断面正面説明図。
【図27】第3実施例の変形例1としての軟弱地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の断面側面説明図。
【図28】第3実施例の変形例1としての軟弱地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の力のつり合い説明図。
【図29】第3実施例の変形例2としての軟弱地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の平面説明図(a)と断面正面説明図(b)。
【図30】第3実施例の変形例3としての人工地盤に配設した圧縮空気貯蔵部の断面正面説明図。
【図31】発電装置の他実施例としてのメガソーラー空中発電装置の説明図。
【図32】メガソーラー空中発電装置の平面説明図。
【図33】メガソーラー空中発電装置の側面説明図。
【図34】図32のX部の拡大説明図。
【図35】図33のY部の拡大説明図。
【図36】発電装置のもう一つの他実施例としてのメガソーラー空中発電装置の一部切欠斜視説明図(斜面適用例)。
【図37】発電装置のもう一つの他実施例としてのメガソーラー空中発電装置の一部切欠斜視説明図(段々畑適用例)。
【図38】支持基礎体の斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態である分散型圧縮空気貯蔵発電システム(以下に、「CAES」(Distributed Compressed Air Energy Storage System)ともいう。)は、太陽光(ソーラー)発電や風力発電等の余剰電気で空気を圧縮・貯蔵し、貯蔵した圧縮空気を必要に応じて放出することで、その圧縮空気によりマイクロタービンや小型水車等の再発電装置を作動させて再発電し、発電された電力を適宜所要の場所に送電することができるものである。この際、圧縮空気とLNGガス(液化天然ガス)でタービン発電することもできる。この場合、高圧水素貯蔵に較べて安全性が高く、LNGガスを約2/3節約でき、発電コストの削減と電力供給の安定化に役立つ。
【0033】
周知のごとく地震災害が多発する我国は、4面海に囲まれ、人口の多くは臨海都市や臨海工業地帯の沿岸域に集中する。そして遠浅の海岸は稀で、海底の傾斜は比較的大きい。このため、海上や海中に圧縮空気貯蔵容器を分散設置する可能性が高い。しかも、その設置箇所は電力の消費地である臨海都市や臨海工業地帯に近く、送電ロスが小さい。
【0034】
他方、可動式メガソーラー空中発電(発案者:太田)は、臨海都市や臨海工業地帯の低層工場・倉庫や郊外駐車場、遊休地、港湾のコンテナーヤード、漁船等の小型船舶の船溜りや周辺の起伏地および埋め立て等の軟弱地盤、さらには沿岸浅海域等の上空に広い面積に亘って展開でき、これらを合せれば、臨海都市や臨海工業地帯が必要とする消費電力を相当量供給することが可能である。
【0035】
したがって、メガソーラー発電等による電力を臨海都市、臨海工業地帯,離島に安定供給するうえで、洋上・海中CAESの意義は極めて大きい。しかも、これは、大容量化と沿岸海域で分散設置ができる等の特長であり、我国を始めとする海洋国やインド・中国・アメリカ等の沿岸大都市にも幅広く適用でき、これまでのスマートグリッドに一大変革をもたらすものである。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1に示す1は本発明に係る実施例としてのCAESであり、CAES1は、複数の地域においてソーラー発電や風力発電等の発電装置2により発電された電力を電力安定供給管理センター7に送電し、電力安定供給管理センター7から電力消費地8(臨海都市、臨海工業地帯、工場・倉庫、農・漁村、離島、郊外駐車場等)に送電するようにしている。
【0038】
そして、各地域の発電装置2により発電された電力の内、電力安定供給管理センター7に直接送電される電力以外の余剰電力で複数の地域に分散して複数配置した(分散型)コンプレッサ等の空気圧縮装置3をそれぞれ作動して、各空気圧縮装置3により空気を圧縮するとともに、圧縮空気を各地域に分散して配置した(分散型)圧縮空気貯蔵部4に貯蔵するようにしている。圧縮空気貯蔵部4に貯蔵している圧縮空気は必要に応じて放出させて、各地域に分散して配置した(分散型)マイクロタービンや小型風車等の再発電装置5に供給することで再発電装置5を作動させて再発電する。各地域で再発電された電力は電力安定供給管理センター7に送電して、電力安定供給管理センター7から電力消費地8(臨海都市、臨海工業地帯、工場・倉庫、農・漁村、離島、郊外駐車場等)に送電するようにしている。
【0039】
したがって、各地域に分散して配置した圧縮空気貯蔵部4に貯蔵されている圧縮空気により各地域の再発電装置5を適宜作動させて、再発電された各地域の電力を電力安定供給管理センター7で集中管理して、需要のある電力消費地8に安定供給することができる。
【0040】
圧縮空気貯蔵部4は、周壁を円筒形に形成して両端部を閉塞した耐震性の良い圧縮空気貯蔵容器6の多数個を束状に配置するとともに、各圧縮空気貯蔵容器6を連通連結パイプ等の連通連結体で直列状ないしは並列状に連通連結して構成しており、各圧縮空気貯蔵容器6から圧縮空気を選択的に放出可能となしている。
【0041】
圧縮空気貯蔵部4の好適な配設場所として、水上に浮遊可能な浮体F内と、沿岸浅海域における透過型(スリット型)の堤防Tと、耕作放棄地や湾岸埋立地等の軟弱地盤Gを、第1〜第3実施例として以下に説明する。
【0042】
[第1実施例]
第1実施例としての圧縮空気貯蔵部4は、図2に示すように、水上に浮遊可能とした浮体F内に設けている。浮体Fは、浮体本体11と、浮体本体11に垂設した浮力体12とから構成している。
【0043】
浮体本体11は、図3にも示すように、平面視六角リング状に形成したコンクリート製の上下一対の浮体形成版体13,14を一定の間隔を開けて対向配置し、両浮体形成版体13,14の内外側縁部間にトラス構造の支持枠体15,16を介設して、内部に六角リング状の本体貯蔵空間17を形成している。Sは水深20〜100mの海域である。
【0044】
浮力体12は、図4にも示すように、有底円筒状に形成して、下側の浮体形成版体14の下面の各隅部に上端縁部を連設して垂下状となしている。そして、各浮力体12の内部には円柱状の浮力体貯蔵空間18を形成している。
【0045】
浮体本体11の上側の浮体形成版体13上には、図2に示すように、一つの隅部に風力による発電装置2を配設するとともに、他の隅部に機能室24を配設しており、機能室24内には空気圧縮装置3と再発電装置5等を設けている。なお、浮体形成版体13上には漁業利用充電施設等を設置することもできる。そして、浮体本体11は、複数個(本実施例では2個)を連結して、海洋エネルギーファーム(水深・地形条件、航路条件の制約に適合し易い蜂の巣形クラスターのプラットフォーム)となしている。また、水深10〜20m の浅水域では、鋼管で支持された着底式や軟着底式コンクリートプラットフォームでも対応できる。
【0046】
圧縮空気貯蔵部4は、図3及び図4に示すように、本体貯蔵空間17と浮力体貯蔵空間18に多数の圧縮空気貯蔵容器6を束状に集合させて充填状態に配置することで形成している。
【0047】
より具体的に説明すると、浮力体12は、図5及び図6にも示すように、PS(プレストレスト)コンクリート製の有底円筒体であり、内部の浮力体貯蔵空間18には、圧縮空気貯蔵容器6の面積率を良好となすべく径の異なるもの、つまり、5本の大径の圧縮空気貯蔵容器6aと4本の小径の圧縮空気貯蔵容器6bを配設している。22は各圧縮空気貯蔵容器6a,6bの間隙を長手方向に間隔を開けて充填した発砲コンクリート(比重1.04)、23は浮力体12の内周部12bの内面に、周方向に一定の間隔を開けて突設したコンクリート製の補強柱片であり、長手方向に伸延させて形成している。
【0048】
浮力体12の天井部12aには、各圧縮空気貯蔵容器6a,6bの上端部に連通連結した注入・放出パイプ19を突出させており、各注入・放出パイプ19には開閉弁20を取り付けて、各注入・放出パイプ19の先端部を連通連結体としての連通連結パイプ21に並列的に連通連結している。また、本体貯蔵空間17に配置した各圧縮空気貯蔵容器6にも開閉弁20を有する注入・放出パイプ19を連通連結するとともに、各注入・放出パイプ19の先端部を連通連結パイプ21に並列的に連通連結している。各圧縮空気貯蔵容器6には連通連結パイプ21を通して圧縮空気を送給・放出可能としており、開閉弁20としては電磁弁を使用して、電気的に開閉制御可能となして、適宜圧縮空気を送給・放出可能としている。
【0049】
このように構成することにより、自然エネルギーである風力(や太陽エネルギー)を利用した発電装置2により発電して、発電された電力の所定量を所定の場所に送電する。そして、送電される電力以外の余剰電力でコンプレッサ等の空気圧縮装置3を作動させて、空気圧縮装置3により空気を圧縮して圧縮空気貯蔵部4に貯蔵する。圧縮空気貯蔵部4に貯蔵した圧縮空気は必要に応じて圧縮空気貯蔵部4から放出して、その圧縮空気によりマイクロタービンや小型水車等の再発電装置5を作動させて再発電して、再発電された電力を送電することができる。
【0050】
この際、電磁弁式の開閉弁20は電気的に開閉制御することで、各圧縮空気貯蔵容器6に連通連結パイプ21を通して圧縮空気を適宜送給・放出することができる。
【0051】
ここで、コンクリート製の圧縮空気貯蔵容器6の建設コストは大幅に削減できるため、経済的に優れた洋上CAES1となすことができる。洋上プラットフォーム上で圧縮空気貯蔵容器6への圧縮空気の出し入れやLNGガスタービン発電への供給が容易になり、メンテナンスや管理コストが軽減出来るメリットがある。また、この中抜き六角形コンクリート浮体クラスターには、電動型漁船向けの充電装置や漁礁機能、養殖機能、赤潮抑止機能(圧縮空気を海中にバブル状に放出し、酸欠状況を改善する)を有する装置を装備することで、沿岸漁業の活性化に大きく寄与することができる。このため、漁業との共生が比較的容易になる。特に離島漁村の活性化に貢献できる。
【0052】
また、この洋上における圧縮空気貯蔵容器6が容量的に不足する場合には、不足分だけコンクリート製の圧縮空気貯蔵容器6を周辺の海中に設置して補間することができる。例えば、直径5mで長さ15mの円筒形状のコンクリート製の圧縮空気貯蔵容器6(圧縮空気による内圧:7Mpa)を水深20〜30mレベル(波浪の影響が小さい)でTLP繋留工法(海底のコンクリートアンカーに接続した高強度のテンションケーブルで繋留する工法)によって保持する(なお、我国の海洋土木技術は水深30m〜50mの鋼管杭基礎を施工できるので、この鋼管杭をアンカー補助に利用することも考えられる)。
【0053】
この海中方式では、コンクリート製の圧縮空気貯蔵容器6の重量は浮力でキャンセルされ、しかも、水は免震媒体(地震力を弱める効果)であるため、海中のコンクリート貯蔵容器は、陸域で建設する場合に較べて、より耐震性に優れることになる。すなわち、陸域では、コンクリート製の圧縮空気貯蔵容器6の重量が大きくなる分、耐震基礎工費が高くなる他、臨海都市や臨海工業地帯周辺では、広い用地を安く取得することは極めて困難である。
【0054】
ところで、我国では塩害に強い高強度構造材料として、(超)高強度コンクリート(3H-CRETE:トリプルエイチクリートの圧縮強度=120Mpa、サクセムの圧縮強度=180Mpa)が市販されており、いずれも養生工場で製造ライン化すれば、高強度であるため輸送に適した軽量ユニット化でき、したがって量産による低コストが期待できる。コンクリートの補強材(RCやPC)として、超高強度(引張強度=2,300Mpa)で塩害に強い長繊維強化プラスチック補強体(SCFロッド:特許第3947038号の図7に開示されている)を適用することができる。これらの塩害に強い高強度構造材料を用いれば、長寿命で・低コストの海洋CAES1を構築できる。
【0055】
なお、コンクリート製の圧縮空気貯蔵容器6の内部空間を生かせば、アウトケーブルに樹脂塗装ピアノ線を用いた従来型のPC工法も採用可能であるので、従来PC工法で設計・施工が可能である。いずれにせよ全体組み立ては、海岸の陸上ヤード行うことができる。コンクリート製の浮体F、圧縮空気貯蔵容器6および付加重量の錘付きを陸上ヤードで一括施工し、大型クレーン等でそれぞれ海面に降ろす。次いで、タグボートで適宜、現場に曳航し、海底に設置する。潮流に抵抗させるため、鋼管杭等やテンションケーブルで連結する。なお、海中〜洋上プラットフォーム間での圧縮空気(最大内圧:7Mpa)の注入・放出には、海底ケーブル等に準じ、新素材等で螺旋状に補強され、気密性と耐久性に優れた可撓性パイプを用いることになる。
【0056】
以上のように、メガソーラー空中発電等と海洋でのCAES1こそが、我国を始めとする海洋国において、文字通り無尽蔵な新エネルギーを創出し、余剰エネルギーを海洋空間に分散・貯蔵し、併せて臨海都市や臨海工業地帯に電力を比較的安価に安定供給する画期的な再生可能エネルギーシステムであり、その普及は、持続型低炭素社会の構築と地球温暖化防止に大きく貢献するものである。
【0057】
[第2実施例]
第2実施例としての圧縮空気貯蔵部4は、図7に示すように、浅水域としての沿岸浅海域A1に構築した透過型(スリット型)の堤防Tに設けている。
【0058】
堤防Tは、陸域(海岸)A2から沿岸浅海域A1へ突き出るように伸延する海域方向伸延部30と、海域方向伸延部30から海岸に沿って伸延する海岸線方向伸延部31と、海岸線方向伸延部31から海岸方向に伸延する複数の載設物支持用伸延部32とから形成している。複数の載設物支持用伸延部32と海域方向伸延部30は海岸線方向に一定の間隔を開けて略平行に配置して、これら伸延部30,32の上に可動式メガソーラー空中発電装置33を載設している。
【0059】
上記伸延部30,31,32は、図8及び図9にも示すように、それぞれ伸延方向に間隔をあけて複数の支柱34を海底Sgから海面Ssよりも上方位置まで立設し、対向する支柱34,34の上端部間と中途部間にはそれぞれ四角形格子枠状の支持体35,35を介設して、上部の支持体35の上面に天端床部36を設けて構成している。そして、両支持体35,35には上下方向に伸延する多数の圧縮空気貯蔵容器6を海中まで垂設して、圧縮空気貯蔵部4を構成している。なお、両支持体35,35に圧縮空気貯蔵容器6を内蔵した浮力体12を海中まで垂設して、圧縮空気貯蔵部4を構成することもできる。
【0060】
可動式メガソーラー空中発電装置33は、図7に示すように、前記伸延部30,32に対向状態に立設した支柱体40の上端部間に連結体41を懸架して吊り連結体ユニット42を形成している。そして、吊り連結体ユニット42は、並列的に間隔を開けて複数(本実施形態では3個)配置している。隣接する連結体41,41間には、太陽光を集光して発電するソーラーパネル部43を架設している。ソーラーパネル部43は扁平板状となして、ソーラーパネル部43の下方に吹き抜け空間44を形成している。50はバックステーとしてのワイヤである。
【0061】
隣接する吊り連結体ユニット42,42間には、図10及び図11に示すように、梁片と桁片とから格子状に形成したパネル部支持枠体45を横架して、パネル部支持枠体45にソーラーパネル部43を架設している。ソーラーパネル部43は、左右方向に隣接して蝶番46により枢支・連結されたソーラーパネル部本体47,47同士の前部間と後部間とに、それぞれ一対の空気圧シリンダ等の折り畳みアクチュエータ48,48を介設している。49は転動ローラである。そして、ソーラーパネル部43は、折り畳みアクチュエータ48,48を伸縮作動させることで、支柱体40,40間にて略水平に横臥させて展開張設した使用状態と、支柱体40,40側にて略垂直に起立させて折り畳み収納した不使用状態とに状態変更可能となしている。
【0062】
図7中、51は空気圧縮装置3と再発電装置5等を設けた機能室、52は陸域に設けた可動式メガソーラー空中発電装置であり、上記した可動式メガソーラー空中発電装置33と同様に構成している。
【0063】
上記した圧縮空気貯蔵部4では、沿岸浅海域A1に電力供給拠点を分散させて構築することができる。そして、圧縮空気貯蔵部4は、支柱34と多数の圧縮空気貯蔵容器6とで波浪による外力をもたせるが、沿岸浅海域A1においては免震性の高い水(海水)が介在しているため、耐震性と耐久性に優れた構造、つまり透過型(スリット型)の堤防Tとなすことができる。そのため、電力を自給自足することができるとともに、内海を静穏化して沿岸漁業を良好に確保することができる。
【0064】
[第3実施例]
第3実施例としての圧縮空気貯蔵部4は、図12及び図13に示すように、耕作放棄地や湾岸埋立地等の軟弱地盤Gに船底状の凹条溝60を形成し、凹条溝60の表面にコンクリートを打設して凹条床部61を形成するとともに、凹条床部61の両側縁部より立ち上がり壁部62を立ち上げて一体成形することで、排水孔を兼ねたコンクリート基礎工63となしている。コンクリート基礎工63内には、上方へ凹条床部61内に多数の圧縮空気貯蔵容器6を横臥状に整列させて、複数段(本実施例では3段)に段積みして配置することで形成している。
【0065】
すなわち、凹条床部61に圧縮空気貯蔵容器6を整列させて配置することで最下層(1段目)を形成するとともに、最下層の上にさらに圧縮空気貯蔵容器6を載積して軟弱地盤Gの表面よりも上方まで積層して膨出層(2段目と3段目)を形成している。ここで、例えば、凹条溝60の深さを1m、膨出層の高さを2m、立ち上がり壁部62の高さを50cm、コンクリート基礎工の幅を20m、コンクリート基礎工の肉厚を10cm、コンクリート基礎工の長手幅を12mに設計することができる。なお、圧縮空気貯蔵容器6の長さ(長手幅)は、基本的には12mに設定している。そして、圧縮空気貯蔵容器6間にはを間詰め気泡コンクリート64(比重0.6〜1.4、150kg/cm)を充填し、凹条床部61の両立ち上がり壁部62,62間に固定片65を掛け廻して、積層した多数の圧縮空気貯蔵容器6を固定片65を介して固定することで圧縮空気貯蔵部4を構成している。66は立ち上がり壁部62に沿わせてその長手方向に間隔を開けて打ち込んだコンクリート製の摩擦支持杭であり、複数(本実施例では8本)の摩擦支持杭66によりコンクリート基礎工63を支持している。
【0066】
上記した圧縮空気貯蔵部4では、耕作放棄地や湾岸埋立地等の軟弱地盤Gに対する耐震性・耐久性に優れた電力供給拠点を分散させて構築することができる。そして、電力の自給自足ができるため、農村・山村・地方の活性化を図ることができる。また、圧縮空気貯蔵部4は、地面に形成した船底状の凹条溝60の表面にコンクリートを打設してコンクリート基礎工63となしているだけであるため、施工が容易で地震に強い構造となすことができる。
【0067】
圧縮空気貯蔵容器6の等価な比重は、0.0005〜0.0007程度で、軟弱地盤Gに加わる死荷重は0.051kg/cmである。間詰め気泡コンクリート64も比重0.6〜1.4、150kg/cmと軽量である。圧縮空気貯蔵容器6が3段であっても高さは2mであっても、等価な自重による荷重は0.051kg/cmで十分小さく、軟弱地盤Gにも適した耐震工法である。水平方向の地震力は、コンクリート製の摩擦支持杭66とコンクリート基礎工63で対処可能である(地震による水平せん断応力は、0.03〜0.05kg/cmであり、3kg/cmよりも小さい)。
【0068】
図14は、第3実施例としての圧縮空気貯蔵部4の変形例を示すものであり、圧縮空気貯蔵部4を半埋設式となしている。すなわち、かかる圧縮空気貯蔵部4は、上面開口の扁平箱形に形成したコンクリート製のケース体70を上端縁部が露出するように軟弱地盤G中に埋設している。そして、ケース体70内に貯蔵容器ユニットケース71を複数段(本実施例では2段)に整列させて段積みして、コンクリートスラブを複数(本実施例では4枚)の分割蓋体72として、分割蓋体72を発泡ウレタン等の衝撃力緩和層部73を介して閉蓋している。74は隣接する貯蔵容器ユニットケース71,71間に介設した連通連結体としての圧縮空気移動パイプであり、圧縮空気移動パイプ74を介してケース体70内に収容した全ての貯蔵容器ユニットケース71を直列的に連通連結している。75は圧縮空気注入・放出パイプであり、76は圧縮空気注入・放出パイプ75の中途部に設けた開閉バルブである。77は排水パイプである。78は気泡コンクリートである。
【0069】
貯蔵容器ユニットケース71は、図5及び図6に示す浮力体12と基本的構造を同じくするものであるが、ケース本体79内に収容している5本の大径の圧縮空気貯蔵容器6aと4本の小径の圧縮空気貯蔵容器6bを直列的に連通連結して、圧縮空気注入・放出パイプ75を通して全ての圧縮空気貯蔵容器6a,6bに圧縮空気を注入・放出することができるようにしている。
【0070】
このように構成することで、圧縮空気貯蔵容器6a,6bが限界以上の内圧を受けた時、あるいは直下型大地震の衝撃力を受けて、圧縮空気貯蔵容器6a,6bが破損する万一に非常事態でも、爆裂の衝撃力を緩和して、安全性を確保する方策のある半埋設方式の貯蔵法となすことができる。
【0071】
次に、圧縮空気貯蔵容器6の構造を具体的に説明する。すなわち、図15〜図19に示すように、圧縮空気貯蔵容器6は、円筒状の容器本体80と、容器本体80の両端開口部を閉蓋する一対の蓋体81,81と、一対の蓋体81,81の周縁部間に容器本体80内を通して介設することで容器本体80に軸線方向にプレストレスを導入するロッド状の軸線方向補強体82と、容器本体80の外周面に一定の張力を加えて螺旋状に巻回することで容器本体80の円周方向にプレストレスを付与するテープ状の円周方向補強体83とを具備している。
【0072】
容器本体80は、側縁部の長手方向と端縁部の周方向にそれぞれ段付き嵌合部84,87を有するコンクリート製の一対の円弧状本体形成片85,85同士を、側縁部の段付き嵌合部84,84間にブチルゴム等の緩衝体86を介して接続するとともに、端縁部の段付き嵌合部87,87間にブチルゴム等の緩衝体88を介して軸線方向に複数接続して円筒状に形成している。
【0073】
軸線方向補強体82としては、前記したSCFロッドを採用することができる。すなわち、図16に示すように、軸線方向補強体82はロッド状に伸延する補強体本体82aと、補強体本体82aの両端部に一体成形したリング状の係止片82b,82bとからなる。一方(右側)の蓋体81に形成した係止孔90に鍔付き筒状の一側係止体91を係止し、一側係止体91に横断貫通させた係止ピン92に一方の係止片82bを係止している。他方(左側)の蓋体81に形成した係止孔90に筒状の他側係止体93を係止し、他側係止体93に横断貫通させた係止ピン94に他方の係止片82bを係止している。93aは他側係止体93の雄ネジ部、95は雄ネジ部93aに螺着する雌ねじ部である。105はコンクリート等の充填材である。
【0074】
係止孔90は蓋体81の周縁部に周方向に間隔を開けて複数(本実施例では8個)形成して、対向する蓋体81,81間に複数の軸線方向補強体82を前記したように取り付けている。
【0075】
左右側の蓋体81,81にはそれぞれ軸架体96,96を取り付けて、各軸架体96,96を一対の回転支持体97,97に回転自在に取り付け可能としている。軸架体96は円板状の取付体96aと、取付体96aの中心部から外方へ直交状態に突設した回転支軸96bとから形成している。取付体96aは蓋体81の外面中央部に取付用雄ネジ部96c及び取付用雌ネジ部96dを介して取り付けている。
【0076】
円周方向補強体83としては、CFRP(カーボンファイバーレインフォーストプラスチック)を使用することができる。
【0077】
次に、圧縮空気貯蔵容器6の製造方法を具体的に説明する。すなわち、図19(a)に示すように、一対の回転支持体97,97に軸架体96,96を介して複数のロッド状の軸線方向補強体82で連結した左右側の蓋体81,81を軸架する。
【0078】
図19(b)に示すように、左右側の蓋体81,81をロッド状の軸線方向補強体82の軸線方向である左右方向に相互に離隔させて、複数の軸線方向補強体82を引張して複数の軸線方向補強体82に一定の張力を加える。そして、引張状態において蓋体81,81間に4個の円弧状本体形成片85を配置して容器本体80を組み立てる。
【0079】
図19(c)に示すように、引張力を解除することでロッド状の軸線方向補強体82で連結された左右側の蓋体81,81を介して容器本体80に軸線方向にプレストレスを導入する。そして、リール体98に巻回したテープ状の円周方向補強体83をガイド体99を介して繰り出して、円周方向補強体83を容器本体80の外周面に一定の張力を加えて螺旋状に巻回することで、容器本体80の円周方向にプレストレスを付与する。
【0080】
図19(d)に示すように、円周方向補強体83の外周面には多機能特殊ポリマーセメントモルタル等の保護材を塗布して保護層100を形成する。
【0081】
図19(e)に示すように、蓋体81から軸架体96を取り外すとともに、蓋体81に圧縮空気を注入・放出するための注入・放出パイプ101を連通連結して、蓋体81にも保護材を塗布して保護層100を形成する。
【0082】
このようにして、最終製品としての圧縮空気貯蔵容器6を製造することができる。この際、圧縮空気貯蔵容器6は、軸線方向補強体82に軸線方向の応力を分担させるとともに、円周方向補強体83に円周方向の応力を分担させることで、充填した圧縮空気が容器本体80に作用する内圧(例えば、7MPa)に耐え得る構造となすことができる。
【0083】
しかも、容器本体80は、コンクリート製の一対の円弧状本体形成片85,85同士を接続するとともに、軸線方向に複数接続して円筒状に形成している。この際、円弧状本体形成片85,85同士には、側縁部に段付き嵌合部84,84を形成して、段付き嵌合部84,84間に緩衝体86を介設するとともに、端縁部に段付き嵌合部87,87を形成して、段付き嵌合部87,87間に緩衝体88を介設している。そのため、圧縮空気貯蔵容器6内に圧縮空気を出し入れした際に、内圧の変化により容器本体80が膨張・収縮変形を繰り返すが、その変形を緩衝体86,88により堅実に緩衝することができる。その結果、圧縮空気貯蔵容器6をコンクリート製で安価に製造することができるとともに、変形疲労破壊に対する耐久性を保持させることができる。
【0084】
図20は、変形例としての圧縮空気貯蔵容器6の構造及び製造工程を示すものである。
【0085】
変形例としての圧縮空気貯蔵容器6は、前記した圧縮空気貯蔵容器6と基本的構造を同じくするが、容器本体110を金属製として、蓋体120と回転支軸兼注入・放出パイプ130を一体成形している点で異なる。すなわち、容器本体110を円筒状に形成し、容器本体110の両端開口部をキャップ状に形成した蓋体120,120で閉蓋している。各蓋体120の中央部には回転支軸兼注入・放出パイプ130の基端部を連通連設している。
【0086】
変形例としての圧縮空気貯蔵容器6の製造方法は、図20(a)〜図20(e)に示すように、前記した圧縮空気貯蔵容器6と同様である。そして、製造された圧縮空気貯蔵容器6は、軸線方向補強体82に軸線方向の応力を分担させるとともに、円周方向補強体83に円周方向の応力を分担させることで、充填した圧縮空気が容器本体80に作用する内圧(例えば、7MPa)に耐え得る構造となすことができる。
【0087】
[海中で使用する圧縮空気貯蔵容器の試設計]
ここで直径3m、長さ12m円筒形の高強度コンクリート容器(3Hクリート、бc=120Mpa,бta=бc/10=12Mpa)を想定する。円筒形の接線方向と長手方向のPCケーブル本数と補強リブ断面積を、Nθ、NzとAθ、Azとする。円筒は、1.5m(=B)x1.57m(=3mxπx/6)リブ付き曲面版ユニット8x6=48枚(板厚t=20cm,6分割)で構成され、リブ付き曲面板ユニットの重量1.13t(=1.5mx1.57mx0.2x2.4)は、輸送制約条件25t以下を十分満足する。またリブ(間隔=0.75cm、断面=0.1mx0.1m)付き曲面板ユニットは型枠の転用ができるため、専用工場ラインでの量産化が可能で、コスト削減が期待できる。
【0088】
さて、内圧p を受ける円筒形の応力бθ、бzとプレストレス力Pθ、Pzは
бθ≒pr/t 、NθPθ=((B x t)−2Aθ) x(бθ−бta)(1)
бz≒pr/2t 、NzPz=(πr2−2Aθ)x(бz−бta)(2)
よって、内圧を7Mpa、海中の水深を50m(水圧:0.5Mpa)、Nθ=30本、Nz=150本 とすれば、
бθ=(7-0.5)(150-10) /20=45.5 Mpa、
Pθ=(150x20-2x10x10)x(455−120)/30/1,000=31.27ton
1)PSケーブル(破断強度の70%)の引張強度は、
P’θ=Pθ/0.7=44.7t→OK.
2)一方、бz=22.75 Mpa、
Pz=(πx1502-6x25x25)x(227.5-120)/150/1,000≒48ton
3)PSケーブル(破断強度の70%)の引張強度は、
P’z=Pz/0.7=68.3t→OK.
すなわち、現場に近い沿岸陸域においてポステン工法で組み立てられる。
【0089】
次に、高強度コンクリート貯蔵容器の浮力Fu、容量Vと重量W、付加重量(両端に厚さ1mの普通コンクリート製円盤)を算定する。
【0090】
Fu≒πx1.5mx(12m+2m)=99t
V=(2πx1.5mx12m)x0.2m+6本x0.252m2x12m+16本x0.152m xπx3m=28.6m
W=2.4x28.6=68.64t(現場ヤードで一括組み立て施工可能)
Wa=2.4xπx1.52x1=17t
(W+2Wa)−Fu=(68.64+2x17)−99=3.64t→OK(重量は浮力でほぼ相殺されている)
4)鋼管杭やコンクリートアンカーにΦ16mmのCFRPケーブル(引張耐力Na=46 ton)を利用し、水平潮流力に対処する。使用ケーブル長を20mとすれば、この材料単価を800万円/tonとして
Ct=(πx(1.6/100)2x20mx1.8)x800万円≒23万円/基
5)ユニット化・ライン化・量産化できるため、貯蔵容器の 建設コストは、3Hクリートの施工単価40万円/mとし、量産効果0.7、海域での施工の割り増し率を1.4とすれば、
C=0.7x1.4x40万円x28.6m≒1121.1万円/基
付加重量のそれは普通コンクリートであり、単価4万円/mとして、
Ca=1mxπx1.52mx4万円=28.3万円/基
コンクリートアンカーこの付加重量のコンクリート製円盤2対をそのまま活用する。
∴ C0=C+2Ca+Ct=1121.1+2x28.3+23=1200.7万円/基
6)3Hクリートは、フライアッシュを使用しており、海水に対する耐久性に優れている特長で知られたコンクリートである。したがってこの海中貯蔵容器の空気貯蔵量は、
VA=(πx(1.5-0.1)2-6x0.25x0.25)x12m
=69.35m3(69.35x103x0.006≒ 416kWhで1mの鉛蓄電池2.1個分)であるが、100 基では、容積1m相当の鉛蓄電池208個分(41.6MWh)となり、約125MW級ソーラー空中発電(3時間レベル)に対処可能になる。
【0091】
加えて、ユニット総数は実に4,800個にもなり、したがって急速に量産効果は0.7→0.4 以下になる。その場合の建設コストC’=0.4x1.4x40x28.6≒640.6 万円/基
∴ C’0= C+2Ca+Ct=720.2万円/基 (a)
以上の試算から、メガソーラー空中発電の規模に合せて柔軟に設置できる。このため、本構想は全国の臨海都市や臨海工業地帯の近くの海域に普及・展開できると言える。
【0092】
[洋上と海中において圧縮空気貯蔵容器を併用する場合の試算]
前述したように、中抜き6角形コンクリート浮体を構成する隅角部の円筒形コンクリート浮力体6体を、圧縮空気の貯蔵容器として利用できる。しかも、例えば、直径4m、長さ15mの円筒形浮力体の喫水は、4〜5mと浅いため(デッキが波を被らない直径60mの中抜き6角形コンクリート浮体例)、デッキ上で圧縮空気の注入・放出が容易に出来、したがって配管等の維持管理費が安くなる。
【0093】
中抜き6角形コンクリート浮体の空気貯蔵量 VAfは、壁厚を20cmとして、
VAf≒6x(πx(2m−0.1m)2−6x0.25mx0.25m)x(15m−2x0.2m)=960m/基
浮体F基であれば、10VAf=9,600m(畜電能:9,600x103x0.006≒57,600kWh)
すなわち、浮体F基の浮力体群は海中貯蔵容器VAの138基分に相当し、約58MWhの畜電能を保有できるのである。無論、この圧縮空気貯蔵容器の建設コストはゼロである。
【0094】
したがって、この場合、海中貯蔵容器100基分を基準にすれば、式(a)の海中貯蔵容器のコストは実質的に、C’’=720.2万円x100/(100+138)=302.6万円/基(畜電能:41.6MWh) (b)
ここで浮体F基+海中圧縮空気貯蔵容器100基を併用した場合を想定する。
【0095】
この場合の建設費は、100C’’= 3.03億円(合計畜電能:99.2MWh、0.305万円/kWh) (c)
ここで蓄電池として、最も実績が多く、低コストの鉛電池を比較の対象に選べば等価な鉛電池(単価:5万円/kWh,系統用では、15万円/kWh)は等価な建設費Cbを求めれば、
Cb=(5〜15)万円x99.2x1000≒49.6〜149.億円(系統用)>3.03億円(d)
すなわち、この併用型の海中圧縮空気貯蔵容器の建設コストは、大規模ソーラー発電等の場合、鉛電池の方式に較べて、約1/16〜1/49になる。
【0096】
この他にNaS電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの蓄電池があり、現在の系統用のコストは、概ね15万円/kWh(参考資料)で、鉛電池のコストの3倍に近い他、安全管理、耐久性、充放電回数等で解決すべき課題が残されている。これに加えて、大型蓄電池の採用方式に派生する可能性のある希少資源(レア金属等)の輸入リスクや価格高騰の恐れ等の問題がある。
【0097】
これに対して、海上・海中CAESは太陽光発電や風力発電等の大規模発電向けに適し、安全性と安定性(圧縮空気の出し入れの回数が無制限)に優れている他、設計・施工・設置場所(沿岸漁業の活性化に役立ち、漁民の理解を得易い)の自由度が高い。このため全国的に普及する可能性が高く、そうなれば建設コストはより低減されると考えられる。
【0098】
[洋上における圧縮空気貯蔵容器の試算]
水平トラス6体をリブ付きコンクリート板(等価板厚;8cm、圧縮強度50Mpa)で密閉し、20mx4mx5mの6空間を浮力体のそれに加えて洋上貯蔵容器に使用できる(主な力はトラスが分担)とする。
【0099】
この改良型の場合、VAt≒6x400m3=2,400m
∴ VAf+ VAt≒960+2,400 =3,360m
浮体F基連結であれば、
10基x(VAf+ VAt) =33,600m3(畜電能:33,600x103x0.006/1000≒201.6MWh) (e)
すなわち、浮体F基の改良浮力体群の洋上貯蔵容器VAf+VAtは実に約202MWhの畜電能を保有することになる(海中貯蔵容器VAの485基分に相当)。
【0100】
密閉に要するリブ付きコンクリート板の容積は、
10VCt=10x6x(20x4x2+20x5x2)x0.08=1,728m
50Mpa級コンクリートの施工コストは、18万円/mであるので、この浮体F基分の海上貯蔵容器の付加コストは、
18万円x1,728m3≒3.1億円 (201.6MWh、0.1538万円/kWh) (f)
すなわち、大規模ソーラー発電等の場合、従来型の鉛電池のコスト=202MWhx(5〜15万円/kWh)
x103/104=101億円〜303億円(系統用) ∴ 約1/33〜1/98
したがって、洋上貯蔵容器が最もエネルギー貯蔵率が高く、経済性にも優れていると言える。
【0101】
[圧縮空気貯蔵容器の変形例1]
変形例1としての圧縮空気貯蔵容器6は、図21〜図23に示すように、外側容器170内に複数(本実施例では7本)の内側容器180を相互に間隔を開けて整然と配設して、外側容器170内において内側容器180の内部に内側圧縮空気貯蔵空間190を形成するとともに、内側容器180の外部に外側圧縮空気貯蔵空間191を形成している。なお、内側容器180の本数は本実施例のものに限られるものではなく、外側容器170内に単数(1本)の内側容器180を配設することもできる。
【0102】
外側容器170は、円筒状の容器本体171と、容器本体171の一側端部を閉塞する一側端壁体172と、容器本体171の他側端部を閉塞する他側端壁体173とからなり、コンクリートにより一体成形している。また、外側容器170は、スチール製等の金属製となすこともできる。
【0103】
内側容器180は、円筒状の容器本体181と、容器本体181の一側端部を閉塞する一側端壁体182と、容器本体181の他側端部を閉塞する他側端壁体183とからなり、金属製材により一体成形している。そして、内側容器180は、外側容器170内にその軸線に沿わせて7本並列させて配置している。つまり、外側容器170の中心部に1本の内側容器180を配置するとともに、その周りに6本の内側容器180を相互に一定の間隔をあけて配置している。このようにして、圧縮空気貯蔵容器6の面積率を良好となしている。
【0104】
また、内側容器180は、基本的に応力の自己平衡系(力のつり合いを保つ)となして、外側容器170の長手方向の耐力増大を防止している。そのため、内側容器180を内蔵した外側容器170の両端側、つまり、両側端壁体172,173における長手方向の外部支持力を大幅に軽減することができる。その結果、圧縮空気貯蔵容器6の設置個所の適用自由度を増大させることができる。
【0105】
容器本体181の外周面には、その周方向に一定の間隔をあけて3個の硬質ゴム製の第1スペーサ片184を、取付ベルト187を介して外方へ突出状に取り付けている。そして、外側容器170内において、各内側容器180の外周面に突設した3個の第1スペーサ片184により7本の内側容器180の相互の位置を保持させている。外側容器170の一側端壁体172と各内側容器180の一側端壁体182との間には、硬質ゴム製で円板状の第2スペーサ片185を介在させている。外側容器170の他側端壁体173と各内側容器180の他側端壁体183との間には、硬質ゴム製で円板状の第3スペーサ片186を介在させている。
【0106】
外側容器170の一側端壁体172には第1注入・放出パイプ192を連通連結して、第1注入・放出パイプ192を通して外側容器170内の外側圧縮空気貯蔵空間191に圧縮空気を注入、ないしは、外側圧縮空気貯蔵空間191から圧縮空気を放出することができるようにしている。193は第1注入・放出パイプ192の先端部に取り付けて圧縮空気の注入・放出を制御する第1開閉バルブである。各内側容器180の一側端壁体182には、外側容器170の一側端壁体172と第2スペーサ片185を介して第2注入・放出パイプ194を連通連結して、第2注入・放出パイプ194を通して内側容器180内の内側圧縮空気貯蔵空間190に圧縮空気を注入、ないしは、内側圧縮空気貯蔵空間190から圧縮空気を放出することができるようにしている。195は第1注入・放出パイプ192の先端部に取り付けて圧縮空気の注入・放出を制御する第2開閉バルブである。
【0107】
内側容器180の内部に形成される内側圧縮空気貯蔵空間190には比較的高圧の圧縮空気を貯蔵する一方、内側容器180の外部に形成される外側圧縮空気貯蔵空間191に比較的低圧の圧縮空気を貯蔵している。つまり、内側圧縮空気貯蔵空間190に貯蔵する圧縮空気は、外側圧縮空気貯蔵空間191に貯蔵する圧縮空気よりも高圧となしている。そうすることで、圧縮空気の貯蔵量の合理的な増加(大容量化)が可能となる。この際、外側圧縮空気貯蔵空間191内の圧力を低減させることができるので、外側容器170の容器本体171に作用するフープストレスを低減させることができて、耐強度を低減、つまり、外側容器170の肉厚(例えば、鋼製管の板厚)を減少させることができる。その結果、圧縮空気貯蔵容器6の貯蔵能を増大させることができる。また、外側圧縮空気貯蔵空間191内の圧力を低減させることができるので、外側容器170として耐久性のあるPC管(プレキャスト管)を採用することもできる。その結果、圧縮空気貯蔵容器6を腐食環境の劣る地域に適用可能となる。
【0108】
[変形例1としての圧縮空気貯蔵容器の比較試算例]
次に、上記した変形例1としての圧縮空気貯蔵容器6(多重鋼管方式)の比較試算例(2重管)を提示する。
(比較試算例)
基準;直径1m(半径r0=50cm)、肉厚t0=2cm、長さ10m単一鋼管容器V0に、圧縮空気p0=7Mpa(=71.4kgf/cm2)を貯蔵する場合を想定。
V0=πx12/4x10=7.85m3,p0V0=7.85x106x71.4=5.605x108kgf・cm (1)
円周方向の応力(フープストレス)σ0は、
σ0=r0/t0xp0=50/2x71.4=1,785kgf/cm2 (2)
長手方向の端部支持力P0は、
P0=(πx12/4)xp0=0.785x104x71.4/1000=560t (3)
一方、2重鋼管の場合、直径30cm(r2=15cm)、肉厚t2=1.5cm,長さ10m内鋼管V2に、圧縮空気p2=20pa(=204kgf/cm2)を貯蔵する。
【0109】
同じ直径1m(r1=r0=50cm),肉厚t1=1.5cm,長さ10mの外側鋼菅V1管に圧縮空気p=5pa(=51kgf/cm2)を貯蔵する。
【0110】
内鋼菅V2は7本設置可能なので
7V2=7xπx0.32/4x10=4.946m3
7p2V2=4.946x106x204=10.09x108kgf・cm (4)
V1=7.85−4.947=2.904m3
p1V1=2.904x106x51=1.48x108kgf・cm (5)
7p2 V2+p1 V1=11.57 x108 kgf・cm
1)エネルギー貯蔵能の比較;
∴(7p2V2+p1V1)/p0V0=11.57/5.605=2.06倍 (6)
2)円周方向の応力σ1,σ2の比較;
σ1=r1/t1xp1=50/1.5x51=1,700kgf/cm20→OK (7)
σ2=r2/t2x(p2−p1)=15/1.5x(204−51)=1,530kgf/cm20→OK (8)
3)長手方向の端部支持力の比較;
内鋼菅V2は、自己平衡系であるので、その断面積を差し引くことになるので、
P1=0.2904x104x51/1000=148t≒P0/3.78 (9)
(結論)
多重鋼管方式は、同径単一鋼管に較べてエネルギー貯蔵容量を大きく(本例では2.06倍)でき、大容量化が可能な他、外側をPC管にして耐久性を高められる。多重鋼管方式は、同径単一鋼管に較べて端部支持力を小さく(本例では1/3.78)でき、比較的支持力の小さい場所でも設置可能で、設置コストもその分低減する。
【0111】
[圧縮空気貯蔵容器の変形例2]
変形例2としての圧縮空気貯蔵容器6は、図24に示すように、変形例1としての圧縮空気貯蔵容器6と基本的構造を共通にしているが、外側容器170内に複数(本実施例では3本)の第1〜第3内側容器200,210,220を入れ子式に多重に配設して、外側容器170内において第1〜第3内側容器200,210,220の内と外にそれぞれ第1〜第4圧縮空気貯蔵空間230〜233を多重に形成している。
【0112】
第1〜第3内側容器200,210,220は、内側容器180と同様に、円筒状の第1〜第3容器本体201,211,221と、第1〜第3容器本体201,211,221の一側端部を閉塞する第1〜第3一側端壁体202,212,222と、第1〜第3容器本体201,211,221の他側端部を閉塞する第1〜第3他側端壁体203,213,223とからなり、スチール製材等の金属製材によりそれぞれ相似形状に一体成形している。そして、外側容器170内に第3内側容器220を同心円的に配設し、第3内側容器220内に第2内側容器210を同心円的に配設し、第2内側容器210内に第1内側容器200を同心円的に配設している。240は第1内側容器200と第2内側容器210との間に介設した硬質ゴム製の第1スペーサ体、241は第2内側容器210と第3内側容器220との間に介設した硬質ゴム製の第2スペーサ体、242は第3内側容器220と外側容器170との間に介設した硬質ゴム製の第3スペーサ体、243は第3内側容器220の第3一側端壁体222と外側容器170の一側端壁体172との間に介設した硬質ゴム製で円板状の第4スペーサ体、244は第3内側容器220の第3他側端壁体223と外側容器170の他側端壁体173との間に介設した硬質ゴム製で円板状の第5スペーサ体である。
【0113】
第1内側容器200の第1一側端壁体202には、外側容器170の一側端壁体172と第4スペーサ体243と第3内側容器220と第2内側容器210を介して第1注入・放出管204を連通連結して、第1注入・放出管204を通して第1内側容器200内の第1圧縮空気貯蔵空間230に圧縮空気を注入、ないしは、第1圧縮空気貯蔵空間230から圧縮空気を放出することができるようにしている。205は第1注入・放出管204の先端部に取り付けて圧縮空気の注入・放出を制御する第1開閉弁である。
【0114】
第2内側容器210の第2一側端壁体212には、外側容器170の一側端壁体172と第4スペーサ体243と第3内側容器220を介して第2注入・放出管214を連通連結して、第2注入・放出管214を通して第2内側容器210内の第2圧縮空気貯蔵空間231に圧縮空気を注入、ないしは、第2圧縮空気貯蔵空間231から圧縮空気を放出することができるようにしている。215は第2注入・放出管214の先端部に取り付けて圧縮空気の注入・放出を制御する第2開閉弁である。
【0115】
第3内側容器220の第3一側端壁体222には、外側容器170の一側端壁体172と第4スペーサ体243を介して第3注入・放出管224を連通連結して、第3注入・放出管224を通して第3内側容器220内の第3圧縮空気貯蔵空間232に圧縮空気を注入、ないしは、第3圧縮空気貯蔵空間232から圧縮空気を放出することができるようにしている。そして、第3注入・放出管224内に第2注入・放出管214を挿通して配管し、第2注入・放出管214内に第1注入・放出管204を挿通して配管している。225は第3注入・放出管224の先端部に取り付けて圧縮空気の注入・放出を制御する第3開閉弁である。
【0116】
中心側の圧縮空気貯蔵空間である第1圧縮空気貯蔵空間230には可及的(可能な限り)高圧の圧縮空気を貯蔵し、外側に位置する圧縮空気貯蔵空間である第2〜第4圧縮空気貯蔵空間231〜233には順次減圧して比較的低圧の圧縮空気を貯蔵している。つまり、第1圧縮空気貯蔵空間230内の圧縮空気の圧力Pa(例えば、20Mpa)>第2圧縮空気貯蔵空間231内の圧縮空気の圧力Pb(例えば、15Mpa)>第3圧縮空気貯蔵空間232内の圧縮空気の圧力Pc(例えば、10Mpa)>第4圧縮空気貯蔵空間233内の圧縮空気の圧力Pd(例えば、3〜5Mpa)に設定している。したがって、第1内側容器200の耐圧は圧力(Pa−Pb)に軽減され、第2内側容器210の耐圧は圧力(Pb−Pc)に軽減され、第3内側容器220の耐圧は圧力(Pc−Pd)に軽減され、外側容器170の耐圧は圧力Pdに維持される。
【0117】
そして、圧縮空気を再発電装置(例えば、タービン発電機)5に放出して使用する際には、第1〜第3開閉弁205,215,225の開閉動作をシーケンス制御することで、圧縮空気の圧力の高い順、すなわち、第1圧縮空気貯蔵空間230に貯蔵された圧縮空気→第2圧縮空気貯蔵空間231に貯蔵された圧縮空気→第3圧縮空気貯蔵空間232に貯蔵された圧縮空気を順次放出させて使用することができる。特に、電力の日間ピークトップ時には、第1圧縮空気貯蔵空間230に貯蔵された高圧の圧縮空気を優先的に使用することで、タービン発電力を向上させることができる。また、第3圧縮空気貯蔵空間232には比較的低圧の圧縮空気を貯蔵して、外側容器170に作用するフープストレスを低減させることができて、耐強度を低減、つまり、外側容器170の肉厚を減少させることができる。また、第3圧縮空気貯蔵空間232内の圧力を低減させることができるので、外側容器170として耐久性のあるPC管(プレキャスト管)を採用することもできる。その結果、圧縮空気貯蔵容器6を腐食環境の劣る地域に適用可能となる。
【0118】
[第2実施例の変形例]
第2実施例の変形例としての圧縮空気貯蔵部4は、図25に示すように、透過型(スリット型)の堤防Tに設けている。すなわち、堤防Tは、鉄筋コンクリート製のブロック体135と、圧縮空気貯蔵容器6としての鋼管を多数配置して(鋼管杭群となして)形成している。このように構成することで、鋼管により堤防Tの強度(転倒モーメントの引張応力)を確保するとともに、圧縮空気貯蔵部4における圧縮空気貯蔵空間を確保している。
【0119】
具体的には、堤防Tは、複数(本実施形態では4個)のブロック体135を所定の方向に一定間隔を開けて配置し、隣接するブロック体135,135間に多数の圧縮空気貯蔵容器6としての鋼管(規格SKKの材料)を相互に間隔を開けて起立状に(上下方向に軸線を向けて)配置して(鋼管杭群となして)いる。ブロック体135と圧縮空気貯蔵容器6は、それぞれ下端部を海底Sgに埋設させて固定する一方、上端部を海面Ssよりも上方に突出させている。そして、ブロック体135と圧縮空気貯蔵容器6の上端部間には天端床部36を架設状に設けている
このように構成することで、堤防Tを安価に築造することができる。つまり、間隔を開けて多数配置した圧縮空気貯蔵容器6間に波を透過させてそのエネルギーを大きく減衰させるという堤防としての機能を確保するとともに、各圧縮空気貯蔵容器6に圧縮空気を貯蔵しておくことで、圧縮空気貯蔵部4としての貯蔵空間を確保することができる。
【0120】
[第3実施例の変形例1]
第3実施例の変形例1としての圧縮空気貯蔵部4は、図26〜図28に示すように、軟弱地盤Gの表層部に埋設状に形成している。
【0121】
すなわち、砂質土では軟弱地盤と判断できるN値が5以下の地盤G1において、その表層部に一方向に長尺(例えば、200〜1000m)で深さが浅い(例えば、2m)凹部空間140を形成し、この凹部空間140の内面にコンクリートを打設して、扁平四角形の貯蔵室141を形成している。貯蔵室141の両端面部142,143は底部144や両側部145,146に比して肉厚に形成している。147は開閉蓋体である。そして、貯蔵室141の両端面部142,143間にはPC(プレストレス)用ピアノ線148を介設して、両端面部142,143が対向する方向にプレストレスを導入している。さらには、貯蔵室141の両端面部142,143の外面と岩盤G4との間に杭149,149を介設して、両端面部142,143を外方から支持している。153は貯蔵室141内における圧縮空気貯蔵容器6間の間隙に充填した気泡コンクリートであり、気泡コンクリート153により圧縮空気貯蔵容器6を保護している。G2はN値が5〜10の地盤、G3はN値が10以上の地盤である。
【0122】
貯蔵室141内には、圧縮空気貯蔵容器6を多数本(本実施例では上下2段に10本)配置している。そして、圧縮空気貯蔵容器6は、一定長さの鋼管(例えば、規格SKKの材料で、内径が1m、長さが12m)を相互に連結バンド150を介して直列状に接続して形成している。長尺の各圧縮空気貯蔵容器6の両端開口部は端壁片151,152より閉塞しており、各端壁片151,152はそれぞれ対面する両端面部142,143に面接触させている。そして、各圧縮空気貯蔵容器6内には圧縮空気を注入・放出自在に注入して貯蔵している。
【0123】
図28は貯蔵室141における力のつり合いを示す説明図であり、各圧縮空気貯蔵容器6内に充填された圧縮空気が両端面部142,143に及ぼす圧力P1,P1と、貯蔵室141の底部144外面に生起される摩擦抵抗力F1,F1との合力に対して、プレストレスP2,P2と杭反力F2,F2との合力がつり合うようにしている。
【0124】
[第3実施例の変形例2]
第3実施例の変形例2としての圧縮空気貯蔵部4は、図29に示すように、軟弱地盤Gに鋼管杭工法(打撃ないしは振動工法)により圧縮空気貯蔵容器6としての鋼管を多数本施工して形成している。
【0125】
すなわち、圧縮空気貯蔵部4となす軟弱地盤Gの平面視で四角形領域160の四隅と長手辺の中央部に、それぞれ鋼管杭161(規格SKKの材料)を施工している。そして、鋼管杭161の間に多数の鋼管である圧縮空気貯蔵容器6を施工して配置している。ここで、圧縮空気貯蔵容器6は、上下方向に伸延する鋼管(例えば、規格SKKの材料で、内径が1m、長さが12m)を1本ないしは長手方向に2本接続して形成している。
【0126】
このように構成することで、圧縮空気貯蔵容器6としての鋼管を鋼管杭群(耐震基礎工)としても機能させることができて、軟弱地盤Gに形成した圧縮空気貯蔵部4における支持力を高める(強化する)ことができる。さらに、圧縮空気貯蔵容器6の容器鋼管杭群を露出させて、地表より高い人工地盤(図止せず)の耐震基礎工とすれば、津波が鋼管の間を通過し、その力を弱めるほか、洪水の冠水対策にもなる。
【0127】
[第3実施例の変形例3]
第3実施例の変形例3としての圧縮空気貯蔵部4は、図30に示すように、人工地盤Gjに多数の圧縮空気貯蔵容器6を建て込んで、多数の圧縮空気貯蔵容器6を耐震杭と兼用させることで杭基礎として構成している。Kは河川、Tkは河岸堤防である。圧縮空気貯蔵容器6としては前記した実施例(変形例も含む)を適宜採用することができる。
【0128】
杭基礎を構成する群としての圧縮空気貯蔵容器6は、その上端部を河岸堤防Tkの天端面(堤防道路)と略同一の地上高に配置して、人工地盤Gjの地表よりも高く配置した露出上端部6cとなしている。そして、圧縮空気貯蔵容器6の上端に各種工場Fa,Fb,Fcや機能庫Kiや住宅Hや道路Rを構築して生活・社会活動空間Sを形成している。各種工場Fa,Fb,Fcの中には避難所を設けている。機能庫Kiには圧縮機等の空気圧縮装置3やマイクロタービン等の再発電装置5(図1参照)を配設している。生活・社会活動空間Sの上方には吊橋式メガソーラー発電装置(図3の可動式メガソーラー空中発電装置33を参照)を配設している。可動式メガソーラー空中発電装置33に設けたソーラーパネル部43は、折り畳みアクチュエータ48,48(図10及び図11参照)を圧縮空気貯蔵容器6に貯蔵した圧縮空気の圧力により作動させることで折り畳み収納可能としている。Hiは避難所である。
【0129】
このように、可動式メガソーラー空中発電装置33は、ソーラーパネル部43において風や雪の力を逃すことができるため、台風や大雪対策として好適なものである。生活・社会活動空間Sは人工地盤Gjの地表よりも高く配置しているため、津波や地震や緊急避難対策として好適なものである。圧縮空気貯蔵部4は、それを構成する圧縮空気貯蔵容器6に耐震杭を兼用させているため、津波や地震や蓄電対策として好適なものである。この際、圧縮空気貯蔵容器6群の露出上端部6cは河岸堤防Tkを越えて浸水してきた津波を通過させて津波の力を逃がすため、津波対策に有効に機能する。したがって、かかる圧縮空気貯蔵部4を備えたCAES1は、防災とグリーン電力の安定供給に優れたものである。
【0130】
[発電装置2の他実施例]
発電装置2の他実施例としてのメガソーラー空中発電装置270は、図31に示すように、網目状の柔構造システムを用いた湖上メガソーラー発電システムである。
【0131】
ところで、太陽光発電は、屋根設置型と地上設置型に大別されるが、前者は住宅の新築時期に左右され、後者は厖大の土地を要するなどの理由で、我国の原発代替エネルギーになり得ないとする識者は少なくない。
【0132】
その論点(障壁)を整理すると(エネルギー政策を除く)、次の通りである。
(1)電力供給の不安定→百万kW(原発相当分)では、電力安定化には約2倍の余剰電力(約2百万kW)が蓄電に必要。
(2)敷地不足→厖大な土地、つまり、約2,000ha(原発相当分は約3百万kW)もの敷地が必要で、狭隘な我国では用地確保が困難。
(3)防災・環境問題→大規模地上太陽光発電は森林伐採するため土砂災害・冠水に脆弱で環境破壊を起す。
(4)送電ロス→大規模地上太陽光発電の立地は電力消費都市から遠い場合が多く、送電ロスが大きい。
(5)2次蓄電池の劣化→劣化で換算寿命が短く(5年=公証10年の半分)、社会インフラ条件を満しえない。
(6)高ランニングコスト→自然エネルギーで最も発電のランニングコスト(40円/kWh程度)が高い。
(7)普及速度→屋根太陽光発電は個別の設計やパワーコンディショナーが必要で非効率。大規模地上太陽光発電は用地取得が困難。このため、普及速度が遅い。
【0133】
これらの障壁を解消する新技術が、本実施例にかかるメガソーラー空中発電装置270である。すなわち、制約の多い地上や屋根に代えて広い空中を利用するもので、防災対策に優れた吊り構造を用いた出口の早いシステム(=普及速度が速い)である。地上型に較べて吊り構造の分、コスト高になる反面、広大な敷地確保と伐採費・整地費が不要で、メンテナンス費が少なくて済む外、伐採・整地しないので環境保全に優れる。最大の特色は地上型では敷地が他に利用出来ないデッドベースになるのに対して、空中太陽光発電では直下の空間用地や周辺敷地を活かすことによって、建設投資の費用対効果を高める点である。
換言すれば、付加価値ある事業化によって太陽光発電の欠点であった高いランニングコストを補えるメリットが大きい。
【0134】
以下に、メガソーラー空中発電装置270の構造を具体的に説明する。すなわち、発電装置であるメガソーラー空中発電装置270は、図31〜図33に示すように、ダム湖271等の対向する湖岸272,273間に、横長四角形枠状の枠体274を巻取・巻戻綱体275,275を介して横架し、枠体274に多数の多数の太陽光発電用の太陽光パネル276を架設している。枠体274は左右方向に伸延する綱体としての一対の主綱体277,277を前後方向に一定の間隔(例えば、30m)をあけて平行に配置し、主綱体277,277の端部間に前後方向に伸延する副綱体278,278を連結して枠体274を形成している。副綱体278,278は、適宜主綱体277,277の中途部間にも適宜追加して連結して、枠体274を補強することもできる。主・副綱体277,278としては、引張強度・耐衝撃性・耐紫外線・耐水性に優れ、水に浮遊する比重1以下の素材、例えば、ダイニーマロープを使用することができる。268はダムである。
【0135】
副綱体278,278には左右方向に伸延する複数(本実施形態では2本ずつ合計8本)の巻取・巻戻綱体275,275の一端部(先端部)を連結し、湖岸272,273にそれぞれ複数台(本実施形態では4台)配設した巻取・巻戻機280,281に複数(本実施形態では2本づつ合計8本)の巻取・巻戻綱体275,275の他端部(基端部)を連結している。巻取・巻戻機280,281により巻取・巻戻綱体275,275を適宜巻き取ることも、また、巻き戻す(繰り出す)ことも可能として、枠体274及びその枠体274に取り付けた太陽光パネル276と湛水湖面269との上下方向の間隔を調整可能としている。
【0136】
太陽光パネル276は、図34に示すように、太陽光発電が可能なソーラーフィルム(フィルム式太陽電池)等をプラスチックボードに貼設して、薄肉四角形板状で軽量に形成しており、本実施形態では前後方向に縦長の長方形板状に形成している。282は太陽光パネル276の周縁部に配設した枠状周縁部である。
【0137】
そして、太陽光パネル276は、枠体274内に一定の周縁部間隔W1(例えば、30cm〜40cm)をあけて多数の太陽光パネル276を縦横に整然と配置するとともに、相互に太陽光パネル276の前後左右方向に一定の前後間隔W2及び左右間隔W3(例えば、30cm〜40cm)をあけて網目状に配置している。枠体274の主・副綱体277,278には第1連結体283を介して太陽光パネル276の角部に設けた連結ブラケット284を着脱自在に連結し、隣接する4枚の太陽光パネル276の角部が対向する中心部には第2連結体285を配設して、第2連結体285に太陽光パネル276の角部に設けた連結ブラケット284を着脱自在に連結している。なお、前後間隔W2ないしは左右間隔W3をあけて相互に隣接する太陽光パネル276,276の間には、帯状の網体を介設して、網体をキャットウォークとして使用することができる。
【0138】
第1連結体283は、電気ケーブルの中継機能を有する板状の連結本体286に、主綱体277及び/又は副綱体278に連結する綱体連結片287と、1個ないしは2個の連結ブラケット284に連結するブラケット連結部288と、後述する浮体292を着脱自在に連結する磁石体289とを設けている。第2連結体285は、電気ケーブルの中継機能を有する板状の連結本体290に、4個の連結ブラケット284に連結するブラケット連結部291と、後述する浮体292を着脱自在に連結する磁石体289とを設けている。
【0139】
293は枠体274から巻取・巻戻綱体275に沿わせて湖岸272,273まで配線した第1電気ケーブル、294は主・副綱体277,278に沿わせて配線した第2電気ケーブル、295は第1連結体283ないしは第2連結体285と太陽光パネル276とを接続した第3電気ケーブルである。これらの第1・第2・第3電気ケーブル293,294,295には太陽光パネル276からの集電用電線と磁石体289への送電用電線を配線して、これらの第1・第2・第3電気ケーブル293,294,295を通して太陽光パネル276から集電することも、また、磁石体289へ送電することも可能となしている。ここで、磁石体289は、送電しない場合(通電を遮断している場合)には浮体292に設けた磁石296に吸着(ON)して連結状態が保持される一方、送電された場合(通電された場合)には浮体292に設けた磁石296に反発(OFF)して連結解除状態となるように構成している。そして、かかる磁石体289の連結・解除操作は第1・第2・第3電気ケーブル293,294,295を介して遠隔操作可能としている。
【0140】
枠体274の主・副綱体277,278には第1・第2連結体283,285に設けた磁石体289を介して浮体292を連結している。すなわち、図35に示すように、枠体274の主・副綱体277,278に、それぞれ長手方向(伸延方向)に間隔(例えば、10m〜30m)をあけて磁石体289を配設する一方、浮体292の上端部に磁石296を設けている。そして、湛水湖面269に浮遊する複数の浮体292の各磁石296をいずれかの磁石体289に磁性で吸着させて、磁石体289に磁石296を介して浮体292を連結し、浮体292により枠体274と太陽光パネル276を湛水湖面269の上方に一定の間隔Ha(例えば、0.5m)を保持して弾性的に支持する柔構造となしている。
【0141】
かかる柔構造では、風圧が格段に小さく(例えば空中10mの風圧poに対して、空中1.0mの風圧p1はp1 = po /400と各段に小さくなり(動的不安定現象も無視できる(∵風による上下振動の抑え=2方向に20〜30m程度の間隔で浮体292群が枠体274と太陽光パネル276を弾性支持している(必要に応じて、それらの中間に設置されたより小型で軽量の浮体(ブイ)群(上からの風圧を分散支持)も付加する)。
【0142】
そして、太陽光パネル276と湛水湖面269との間には一定の間隔Haを保持しているため、太陽光パネル276の下方に間隔Haの風路Waを形成することができる。かかる風路Waは太陽光パネル276の発熱を冷却する冷却機能を有する。太陽光パネル276の周囲には周縁部間隔W1、前後間隔W2及び左右間隔W3をあけているため、太陽光パネル276の上方と風路Waとが上下方向に連通して、風が上下方向にも流動させることができる。そのため、太陽光パネル276の冷却効果が増大する。また、太陽光パネル276のメンテナンス等を行う際には、作業者は小舟を利用して太陽光パネル276の下方に形成された風路Wa中に乗り入れて、所望の太陽光パネル276に近接する周縁部間隔W1、前後間隔W2ないしは左右間隔W3を通して上半身を太陽光パネル276の上方へ出すように小舟上に起立することで、所望の太陽光パネル276のメンテナンス等を楽に行うことができる。なお、枠体274と太陽光パネル276は、浮体292群を切り離して湛水湖面269に直接浮かべることもできる。この場合、太陽光パネル276の発熱を湖水で冷却することができる。
【0143】
浮体292は上下方向に伸延する円柱状に形成した発泡スチロールを耐紫外線・耐水性に優れたカバー体により被覆して形成している。浮体292の上端部には上方へ突出する磁石支持凸部297の上端に磁石296を配設している。浮体292の下端部にはワイヤ連結片298を下方へ突設し、ワイヤ連結片298を介して隣接する浮体292を相互に連結ワイヤ299により連結している。このように、複数の浮体292を相互に連結ワイヤ299により連結することで、磁石体289から離脱させた浮体292を連結ワイヤ299を介して楽に回収することができるようにしている。
【0144】
湛水湖面269の水位の変動には、両側の巻取・巻戻機280,281で巻取・巻戻綱体275,275を巻き取り・巻き戻し作動させることで適応できる。ここで、巻取・巻戻機280,281は、湛水湖面269の水位を検出する水位センサ(図示せず)の水位検出結果に基づいてコンピュータ等の制御手段により巻き取り・巻き戻し作動を自動制御して、枠体274と太陽光パネル276の配設位置を湛水湖面269の水位の変動に適応させるようにしている。また、遮光効果(80%の遮光率)によって有害なアオコの発生を抑制できる。集中豪雨による異常な洪水(流木を伴う)が発生した場合には、流木防止フェンス(アバター)を、太陽光パネル276を架設した枠体274の上流前面と両側面に(門型形状)配置して、流木による衝撃力を全体のフレキシブルな構造システムで吸収する。ただし、門型形状アバターは端部や隅各点に位置確保用の浮体292で連結されている。仮に損傷した浮体292があれば、洪水後に取り替える。すなわち、修復が容易なので、多少の周辺部損傷を許容する、いわゆる減災思想の設計法を採用している。
【0145】
なお、太陽光パネル276が軽量な太陽光フィルムを貼ったプラスチックボードの場合、枠体274の前後幅を、例えば、30m程度とすれば、両湖岸272,273の上に簡易コンクリートタワーを設置し、斜め上から全体を斜張橋方式のように吊り上げて(集中豪雨による大災害時が予測される時には湖面から1m程度)、大量の流木流入状況から枠体274と太陽光パネル276群を安全に湛水湖面269から退避させることが可能である。この際、浮体292群は枠体274と太陽光パネル276群から遠隔操作で切り離す。
【0146】
また、対向する主綱体277間に副綱体278を縦横に架設して網目状(格子状)の枠体274を形成し、各網の目空間内に太陽光パネル276を架設することもできる。主綱体277と副綱体278とで形成される網の目空間は太陽光パネル276の大きさに応じて適宜設定することができる。
【0147】
上記のように構成したメガソーラー空中発電装置270は、太陽光フィルム(0.5 MW/ha程度)や太陽光パネル(1MW/ha程度)を適用することで、概ね、(1)用地費・整地費が不要、(2)周辺部には揚水ポンプや送電施設等が備わっている、(3)安全管理が容易という利点がある。このため、比較的低いコスト(従来式の1/2程度)で建設でき、その分、少ない投資の発電事業が可能になる。
【0148】
ちなみに全国のダム湖32万haに適用し、太陽光フィルム0.5MW/ha、年間稼動時間1,051h、遮光率80%を採用すれば、100万kW原発25基相当分の電力が生み出され、夏場の電力不足(ピークカット16%)をこれだけで解消できるなど社会的メリットは大きい。
【0149】
すなわち、総湛水面積32万ha の総発電量=1,346億kWh (≒80%x0.5MW/hax32万hax 1,051h)。したがって、我国の総消費電力8,580億kWhに対して 16%(≒1,346/8,580x100 )。
【0150】
次に、電力供給の安定化の技術について簡単に説明する。前記したように鋼管(多重)柱等に両機能を持たせる分散型のCAES1は、耐震基礎技術(空気力電池)と既存の圧縮機・多段式マイクロタービン技術を組み合わせたもので、2次電池の課題である社会インフラ条件(長寿命でライフサイクルコストが安い)を満足する。
【0151】
すなわち、空気力電池は多柱基礎(多重鋼管杭等)に圧縮空気を貯蔵し、必要時に空気力で多段式タービンを回して発電する(欧米の集中型と異なる防災構造機能を兼備した分散型のCAES1)。
【0152】
コスト比較=1/50(3万円x5年/15万円/50年)←固定型蓄電池(劣化による寿命5年)、15万円/kWh;杭(寿命50年)、3万円/kWh(杭施工費は耐震対策費等で別負担とする)。
【0153】
水力発電等のダム湖の場合、発電施設が完備しているので、余力がある場合、そのまま利用できる。送電施設が限界にある場合、電力貯蔵として分散型のCAES1が利用できる。一般に、ダム周辺部は良好な岩盤支持が多いため、長尺鋼管群をコンクリートボックスに水平設置する(収納装置・検査路、主に両端部のみで圧縮支持)が合理的である。
【0154】
大規模ダム湖上太陽光発電の場合、余剰電気で超軽量高圧CFRP圧縮空気貯蔵容器(例えば、内圧:70Mpa、直径:40cm、長さ:12m、容積:1500 little)に圧縮空気を貯蔵し、トラックで消費地にあるマイクロ・タービンやガスタービン発電所に陸送することもできる。
【0155】
[ダム湖上のメガソーラー空中発電装置270の試算例]
ダム湖271の両湖岸の距離500mに幅100m(33.3mユニット幅の3列)のダイニーマ製綱方式のメガソーラー発電5MWを行う。
(1)枠体材料はダイニーマ;820万円/ton、比重0.97
1)主綱体Φ30mm ;断面積=π0.032/4=7.07x10-4、500mx2、
重量=0.97x7.07x10-4x103=0.686t ∴C1=0.686t x 820万円/ton=562万円 ・・・(1)
2)副綱体Φ20mm;断面積=π0.022/4=3.14x10-4、100mx26+500mx4=4,600m、
重量=0.97x3.14x10-4x4.6x103=1.4t ∴ C1=1.4t x 820万円/ton=1,148万円 ・・・(2)
3)ネットΦ2mm;断面積=π0.0022/4=0.31x10-5、20mx800x125=2x106m、
キャットウォーク有効面積20%(パネル周辺部、ネットユニット幅30mの両側も除く)
重量=0.2x0.97x0.31x10-5x2x106=1.2t ∴C1=1.2t x 820万円/ton=1,070万円 ・・(3)
全体で、ネット制作費割り増し係数1.1として
Cn=1.1x(562+1,148+1,072)=3.060万円・・・・・・・・・(4)
(2)流木防護材フェンス・アバター支持用と枠体支持用の浮体は地元間伐材を利用。
【0156】
浮体(中に発砲スチロール)40基; 1,080万円
流木防護フェンス; 3,500万円
Cw=1,080+3,500=4,580万円・・・・・・・・・(5)
(3)巻き取り機 (浮力でキャンセルするので小型で済む。取り付け工事含む)
C=800万円 ・・・・・・・・・(6)
(4)太陽光パネル(パワーコン含む);25万円/kW、 125W/m2(≒発電効率17%)
面積100m x 500m x80%=40,000 m2 (=4ha)
発電能;40,000 m2 x 125W/m2 =5,000kW
Cp=25万円/kWx5,000kW =12.5億円・・・・・・・・・(7)
(5)総建設費
CT=3.060+4,580+800+125,000=13.344億円・・・・・・・・・(8)
CT/5,000kW =26.67万円/kW ・・・・・・・・・(9)
柔綱構造費用C0(=8,440万円)や太陽光パネル費Cp(125,000万円)の割合は、
C0/CTx100=6.3% ,Cp/CTx100= 93.7%・・・・・・・・・(10)
以上に試算から、ダム湖上ネット方式のメガソーラー発電の建設費は、太陽光パネルのコストが支配的であり、高価な超高強度新素材のダイニーマ (カーボン、アラミド繊維以上の強度)を使っても、綱支持システムは6.3%と格段に安いことが分かる。しかるに、問題の太陽光パネルのコストは年々10% 低下する方向にあるので、普及が促進した暁には、ダム湖上ネット方式の太陽光発電は出口の早い、経済性の優れた発電システムになると予測される(地上設置型に較べて、湖水の免震機能で地震力を無視でき、設置レベルが水面約0.5mなので風力も小さい柔支持構造となる)。加えて、用地費が不要、送電などの電力施設に接続が容易であること、安全性(減災思想)が十分でダム水質の維持管理費が少なくなること、など通常の地上設置型メガソーラーに比べて経済的な比較優位性がある。
【0157】
[結論]
ダム湖上太陽光発電システムのメリット
1)昼間の湖上太陽光発電の電力を用いて
a)ダムの貯水量が十分な場合
昼間に主に湖上太陽光発電を行い、一方の水力発電を補助的に行う。夜間に水力発電のみを行う。この場合、既存の揚水発電電力施設をそのまま活用でき、送電・変電等の新規建設費用投資は不要になり、経済的。原発発電量に限界が来ても柔軟に対応可能である。
【0158】
b)ダムの貯水量に限界がある場合
昼間に水力発電と湖上太陽光発電を行う節水型にする。湖上太陽光発電の余剰電気は圧縮空気貯蔵する。夜間に水力発電に使用する。
【0159】
2)水道用水・農業用水の調整ダム等では、ポンプ施設が備わっているので、そのまま合理的な水量の調整が可能になる。
【0160】
3)既設の限界送電量を超える場合の電力・貯蔵・送電調整システムとしては、
a)超過電力で圧縮空気貯蔵する。ただし運搬に適した軽量なCFRP製圧縮空気貯蔵容器を湖上屋周辺に設置し、コンプレッサで圧縮する。圧縮時の発熱は湖水で容易に冷却出来て効率的に貯蔵できる。
【0161】
b)ダム湖には道路が接続しているので、軽量なCFRP製圧縮空気貯蔵容器(直径30〜45cm,長さ12m)トラックで(取り付け道路は備わっている)適宜、都市や工業団地に近いガスタービン発電所(天然ガスを約2/3節約できる)やゴミ発電所(余熱を利用した蒸気発電)等のマイクロタービン発電施設に陸送し、圧縮空気力で再発電し、都市や工業団地に 電力供給できる(所謂、送電のバイパスシステムとなる)。
【0162】
4)その他の特長
・淡水湖で塩害が無く、アオコの発生が抑えられる。
・湖水が免震機能で、地震力が抑えられる。
・湖面上0.5m〜1.0m近傍にダイニーマ(比重0.97)などの軽量枠体構造で設置するので、風力の影響が小さいく、ソーラーパネル(フィルム)群と枠体全体の風による動的不安定現象は中間の浮体群(2x2x1m:間伐材を利用し、内側に発砲スチロールを入れる)で抑えられている。
【0163】
洪水による流木は、既存の流木防止フェンス(アバター=プラスチック製のブイを浮力として間隔を空けて数珠状につなぎ、その水面下に帯状の網を水没させたもの)もしくはそれに準じたもの(浮体の表面に古タイヤを備えたもの)を、枠体周辺に設置。
【0164】
場合によっては、周辺部に流木衝撃力による局部的損傷が発生する。枠体周辺部は点検用のキャットウォークになるなど、小船の利用できるので周辺部の損傷したパネルの取替えは容易である。
・大洪水時の安全性を完全に確保するには、軽量なソーラーフイルム(プラスチック枠補強)を採用する。先ず浮体群から枠体を切り離し(磁石体を遠隔操作)、次いでソーラーフイルム群と枠体を、両湖岸に設置した簡易コンクリートタワーを介して、複数ケーブルで斜め方向に吊り上げる(綱体の最低面は湖面から1m前後にする)。
・ダム湖には発電・送電施設やポンプ施設が備わっている。したがって、建設コストがその分廉価である。
【0165】
[発電装置2のもう一つの他実施例]
発電装置2のもう一つの他実施例としてのメガソーラー空中発電装置300は、図36及び図37に示すように、網目状の柔構造システムを用いた中山間地域(南側斜面ないしは南東側斜面)用メガソーラー発電システムである。図36はゴルフ場等の斜面適用例であり、図37は耕作放棄地等の段々畑適用例である。
【0166】
メガソーラー空中発電装置300は、前記したメガソーラー空中発電装置270と同様に、枠体274に太陽光パネル276の四つの角部を、ブラケット等を介して着脱自在に取り付けて柔支持構造体310を構成し、支持基礎体320を介して柔支持構造体310を斜面地G5ないしは段々畑地G6に沿わせて配設している。柔支持構造体310は、枠体274を、例えば、ダイニーマ製の主綱体277と副綱体278とで網目状に形成して、網目部分に太陽光パネル276の四つの角部を、ブラケット等を介して着脱自在に取り付けて構成することもできる。支持基礎体320は、図38に示すように、側面視逆T字状で斜面地G5ないしは段々畑地G6の斜面を横断する方向(本実施形態では前後方向)に伸延させて形成したコンクリート製の基礎本体321と、基礎本体321の上端部にその伸延方向に沿わせて配設した木製の横梁体322とから構成している。横梁体322は間伐材により形成することができる。支持基礎体320は、斜面地G5ないしは段々畑地G6の斜面に沿わせて一定間隔毎に配設して、支持基礎体320により柔支持構造体310を地面から一定高さ(例えば、30cm〜1.7m)の比較的低空間レベルで支持するようにしている。その際、支持基礎体320の高さや大きさは配設場所に応じて個々に設定する。横梁体322に柔支持構造体310の枠体274を連結・固定している。
【0167】
このように構成したメガソーラー空中発電装置300は、起伏地や段々畑などでも、地形を整地する度合いが少なく、従来方式に較べて用地利用率が高い。多数の支持基礎体320の自重と摩擦力と簡易杭抵抗力とが枠体274の張力で分散支持されて、高次不制静定構造になっているため、全体が倒壊される恐れや、揚力で吹き飛ばされる恐れがない。(一部のパネルや電線結合部等が故障することはあっても、修復・パネルの取替え等のメンテが可能である。独立フレーム構造の従来方式に較べて、強風(台風)に対して、より安全である。)枠体274の下面に横梁体322(間伐材等)を後付けできる工夫が容易なため、強風による太陽光パネル276の動的不安定現象を抑制できる(台風時にはロープ等でアンカー可能)。枠体274が高次不制静定ネット構造になっているため、同じ理由で地震に強いとともに、高次不制静定ネット構造になっているため、沈下の恐れがある畑などの軟弱地盤にも適用できる。台風・地震対策に優れ、発電事業の保険を掛ける上で有利。セット・リセットが容易(将来、農地に戻すことも可能)。整地が必要な従来方式より建設コストが安い。メンテが容易。例えば中間部に軽量な脚立(高さ1m程度)を置き、木製の横梁体322と脚立を支点として軽量な踏み板を架け、故障パネルの取替えを行うことができる。
【符号の説明】
【0168】
1 CAES
2 発電装置
3 空気圧縮装置
4 圧縮空気貯蔵部
5 再発電装置
6 圧縮空気貯蔵容器
7 電力安定供給管理センター
8 電力消費地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置により発電された電力の内、送電される電力以外の余剰電力で作動される分散型の空気圧縮装置と、空気圧縮装置により圧縮された空気を分散して貯蔵する圧縮空気貯蔵部と、圧縮空気貯蔵部から放出された圧縮空気により分散して再発電する再発電装置とを備え、
圧縮空気貯蔵部は、円筒形に形成した多数の耐震性の良い圧縮空気貯蔵容器を連通連結して構成し、各圧縮空気貯蔵容器から圧縮空気を選択的に放出可能となしたことを特徴とする分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項2】
水上に浮遊可能な浮体に、前記発電装置と前記空気圧縮装置と前記圧縮空気貯蔵部と前記再発電装置を設けると共に、圧縮空気貯蔵部は浮体内に前記圧縮空気貯蔵容器を充填状態に配設して形成したことを特徴とする請求項1記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項3】
浅水域において、間隔をあけて複数の支柱を立設し、対向する支柱間には支持体を介して上下方向に伸延する多数の圧縮空気貯蔵容器を垂設することで前記圧縮空気貯蔵部を構成したことを特徴とする請求項1記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項4】
地面に船底状の凹条溝を形成し、凹条溝の表面にコンクリートを打設して凹条床部を形成し、凹条床部内に多数の圧縮空気貯蔵容器を横臥状に整列させて配置して圧縮空気貯蔵容器の最下層を形成するとともに、最下層の上にさらに圧縮空気貯蔵容器を載積して地面よりも上方まで積層して膨出層を形成し、圧縮空気貯蔵容器間には間詰め気泡コンクリートを充填して、床部の側縁部間に掛け廻した固定片を介して積層した多数の圧縮空気貯蔵容器を固定することで前記圧縮空気貯蔵部を構成したことを特徴とする請求項1記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項5】
前記圧縮空気貯蔵容器は、円筒状の容器本体と、容器本体の両端開口部を閉蓋する一対の蓋体と、一対の蓋体の周縁部間に容器本体内を通して介設することで容器本体に軸線方向にプレストレスを導入するロッド状の軸線方向補強体と、容器本体の外周面に一定の張力を加えて螺旋状に巻回することで容器本体の円周方向にプレストレスを付与するテープ状の円周方向補強体とを具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項6】
前記容器本体は、側縁部の長手方向と端縁部の周方向にそれぞれ段付き嵌合部を有するコンクリート製の一対の円弧状本体形成片同士を、側縁部の段付き嵌合部間に緩衝体を介して接続するとともに、端縁部の段付き嵌合部間に緩衝体を介して軸線方向に複数接続して円筒状に形成したことを特徴とする請求項5記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項7】
前記圧縮空気貯蔵容器は、外側容器内に単数ないしは複数の内側容器を配設して、外側容器内において内側容器の内と外にそれぞれ圧縮空気貯蔵空間を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項8】
前記圧縮空気貯蔵容器は、外側容器内に複数の内側容器を多重に配設して、外側容器内において内側容器の内と外にそれぞれ圧縮空気貯蔵空間を多重に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項9】
発電装置は、ダム湖等の対向する湖岸間に一対の綱体を横架し、一対の綱体間に多数の太陽光発電用の太陽光パネルを架設したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項10】
綱体には、その長手方向に間隔をあけて湛水湖面上に浮遊する複数の浮体を連結して、浮体により綱体を湛水湖面の上方に一定の間隔をあけて弾性的に支持する柔構造となしたことを特徴とする請求項9記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。
【請求項11】
綱体は吊り上げ調節自在となして、綱体に浮体を着脱自在に連結するとともに、遠隔操作して綱体から浮体を離脱可能となしたことを特徴とする請求項10記載の分散型圧縮空気貯蔵発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−239370(P2012−239370A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268504(P2011−268504)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(592104874)
【出願人】(511055773)
【出願人】(508327962)日本コアパートナー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】