説明

分散型無機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 高輝度発光でき、かつ長い発光寿命を有するエレクトロルミネッセンス素子を提供すること。さらに、0.25m2以上の大面積を、高輝度発光でき、かつ長い発光寿命を有するエレクトロルミネッセンス素子を提供すること。
【解決手段】 透明導電性層と蛍光体層とを含有するエレクトロルミネッセンス素子であって、該透明導電性層の表面抵抗が、0.05Ω/□〜80Ω/□であり、該透明導電性層と該蛍光体層との間に少なくとも1層の中間層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度かつ長寿命なエレクトロルミネッセンス素子(以下「EL素子」と略称する場合もある。)に関する。さらには、大面積においても高輝度かつ長寿命なエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は、高誘電体中に蛍光体粒子を分散してなる蛍光体層を有する粒子分散型素子と、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる薄膜型素子等の、無機エレクトロルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子に大別される。本発明は、主に、粒子分散型無機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0003】
分散型は、少なくとも一方が光透過性の一対の導電性電極シート間に、フッ素系ゴムあるいはシアノ基を有するポリマーのような高誘電性ポリマー中に蛍光体粒子を含んで成る発光層を有する素子である。EL素子の絶縁破壊を防ぐ為に、さらに高誘電性ポリマー中にチタン酸バリウムのような強誘電体の粒子を含んで成る誘電体層を有するのが通常の形態である。用いられる蛍光体粒子は通常ZnSを母体とし、これにMn,Cu,Cl,Ce、Au、Ag、Al等のイオンが適量ドーピングされている。粒子サイズは20〜30μmサイズのものが一般的である。
【0004】
粒子分散型EL素子は、素子構成時に高温プロセスを用いない為、プラスチックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能であること、真空装置を使用しなくても比較的簡便な工程で、低コストで製造が可能であること、また発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することで素子の発光色の調節が容易であるという特長を有し、バックライト、表示素子へ応用されている。しかしながら発光輝度が低く、また発光寿命が短いために、応用範囲が限られていた。従って、更なる発光輝度および発光寿命の改良が望まれていた。
【0005】
特許文献1には、蛍光体粒子のサイズおよび分布と蛍光体層の膜厚の関係を一定条件に保つことで、高輝度のエレクトロルミネッセンス素子を提供することが、提案されている。しかしながら、この方法では、エレクトロルミネッセンス素子を高輝度に発光させることが充分では無かった。また、高輝度化することにより極端に輝度半減寿命が短くなったり、大面積化すると輝度が低下するという問題があった。
【0006】
一方、光透過性の導電性電極(以下、透明電極と略称する。)に関しては、多くの従来技術が存在する(例えば、非特許文献1等)。特許文献2には、低抵抗の透明電極が提案されている。しかしながら、低抵抗の透明電極を用いて、エネルギー変換効率・発光効率を高くしても、高輝度化した際の輝度半減寿命を充分に増加することは出来なかった。
【0007】
また、蛍光体層と透明電極の密着性を改良する技術として、分散型EL素子において、蛍光体層と透明電極の間に層を設ける技術が提案されている(特許文献3)。また中間層を軟化点が200℃以下の熱可塑性樹脂を用いて形成する技術(特許文献4)も提案されているが、この方法では高輝度を発生させる条件(例えば周波数800Hz以上、または電圧150V以上の駆動)にしても充分な高輝度が得られなかった。
【0008】
近年、表示素子は大型化が求められる場面が増加している。例えば展示広告として用いる場合、表示素子が大判であるほど広告効果も大きく、展示広告用のバックライト光源として、大判のものが求められている。展示広告には、蛍光管や冷陰極管などを用いた大型平面光源が用いられており、これらは重量も大きく持ち運びも難しく、大きな設置スペースを必要とし消費電力も大きく、このため設置場所や使用環境に大きな制約があった。これらに応用するには、従来のエレクトロルミネッセンス素子は、低輝度であるため、応用が限られている。
【特許文献1】特公平7−58636号公報
【特許文献2】特開平9−147639号公報
【特許文献3】特開平8−288066号公報
【特許文献4】特開平10−134963号公報
【非特許文献1】東レリサーチセンター発行「電磁波シールド材料の現状と将来」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来のEL素子は高輝度と長い発光寿命を両立することが困難であった。また、従来型のバックライトでは持ち運び性や設置スペース面で問題があり、これらの点で有利なEL素子でバックライトを構成すべく、より大面積としても充分な輝度を長寿命に発揮するEL素子の開発が要望されている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、高輝度発光でき、かつ長い発光寿命を有するエレクトロルミネッセンス素子を提供することが本発明の課題である。さらに、0.25m2以上の大面積を、高輝度発光でき、かつ長い発光寿命を有するエレクトロルミネッセンス素子を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は本発明を特定する下記の事項およびその好ましい態様により達成された。
【0011】
(1) 透明導電性層と蛍光体層とを含有するエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記透明導電性層の表面抵抗が、0.05Ω/□〜80Ω/□であり、該透明導電性層と前記蛍光体層との間に少なくとも1層の中間層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(2) 前記透明導電性層が、
金属酸化物からなる薄膜層と、
金属および合金から選ばれる少なくとも1つからなる網目状又はストライプ状のパターン層
とを有してなることを特徴とする(1)記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(3) 前記透明導電性層が、
金属酸化物からなる薄膜層及び
金属薄膜層
を有する多層構造であることを特徴とする(1)記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(4) 平均球相当径が、1.0μm〜15μmである蛍光体粒子を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、高輝度発光でき、かつ長い発光寿命を有するものである。さらに、0.25m2以上の大面積を、高輝度発光でき、かつ長い発光寿命を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、透明導電性層と蛍光体層とを含有するエレクトロルミネッセンス素子であって、前記透明導電性層の表面抵抗が特定の範囲であり、該透明導電性層と前記蛍光体層との間に少なくとも1層の中間層を有することを特徴とする。以下、更に詳細に説明する。
【0014】
なお、本明細書において、「数値A」〜「数値B」という記載は、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「数値A以上数値B以下」の意味を表す。
【0015】
<中間層>
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、透明導電性層と蛍光体層との間に少なくとも1層の中間層を有する。このような中間層を有することにより、透明電極として作用する透明導電性層と、蛍光体層とを隔離することができ、充分な輝度を確保し且つ充分に長い寿命を得ることができる。
中間層は、有機高分子化合物または無機化合物を含んでなる層、またはこれらの両層を組み合わせて複数の層で形成されていても良いが、有機高分子化合物を含む層を少なくとも1層有することが好ましい。
中間層の厚み(複数の層からなる場合はそれらの厚さの合計厚さ)は10nm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上30μm以下であり、特に好ましくは0.5μ以上10μ以下である。
【0016】
まず、中間層を形成する材料が有機高分子化合物である場合について説明する。この際、使用できる有機高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニルアルコール、プルランやサッカロース、セルロース等の多糖類、塩化ビニル、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース等が挙げられる他、多官能アクリル酸エステル化合物等の前駆体から得られる紫外線光硬化型樹脂や、エポキシ化合物やシアネート化合物等の前駆体から得られる熱硬化型樹脂が挙げられ、更にこれらのうち軟化点が70℃以上、より好ましくは100℃以上のものが好ましい。これらから選ばれる複数の高分子化合物が組み合わされていることも好ましい。またここで使用する有機高分子化合物は絶縁体であっても導電体で有っても良い。導電体の場合には、透明導電性層の表面抵抗より高い表面抵抗を有することが好ましい。また中間層の有機高分子化合物が軟化点の高い(例えば200℃以上)である場合、透明導電性層や蛍光体層との密着性を改良するなどの目的で、軟化点の低い有機高分子化合物を含んでなる中間層を別に設けることも好ましい。
【0017】
これら有機高分子化合物またはその前駆体は、適当な有機溶媒(例えば例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンなど)に溶解し透明導電性層上あるいは蛍光体層上に塗布し、これにより有機高分子化合物を含んでなる中間層が形成される。
このような有機高分子化合物を含んでなる中間層の厚さは、0.5μm以上10μm以下とするのが好ましい。
【0018】
このような有機高分子化合物含んでなる中間層は、実質的な透明性を有する範囲で、種々の機能を付与するための添加物を有していても良い。「実質的な透明性」とは、波長550nmの透過率が50%以上であることをいい、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。例えばチタン酸バリウム粒子などの誘電体、または酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズ−インジウム、金属粒子などの導電体、または染料、蛍光染料、蛍光顔料、または実質的に発光に寄与しない程度の蛍光体粒子を存在させても良い。
本発明において実質的に発光に寄与しないとは、該EL素子に含まれる蛍光体粒子の総量(質量)に対し、該層に含まれる蛍光体粒子の量が30%以下であることを言う。この範囲であれば、該中間層は蛍光体粒子を含有し得る。好ましくは該中間層の蛍光体粒子含有量はEL素子全体の20%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0019】
次に、中間層が無機化合物により形成された層である場合について説明すると、この際用いられる無機化合物としては、二酸化ケイ素、その他金属酸化物、金属窒化物などが挙げられる。そして、該無機化合物で中間層を形成する方法としては、スパッタ法、CVD法などが採用できる。中間層が無機化合物で形成されている場合、膜厚は10nm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
【0020】
<透明導電性層>
本発明において用いられる前記透明導電性層は、特定の表面抵抗を有する。該特定の表面抵抗は、0.05Ω/□〜80Ω/□であり、0.1Ω/□〜30Ω/□が好ましい。該表面抵抗が0.05Ω/□未満であると、充分な光透過性が得られず、80Ω/□を超えると、輝度ムラや劣化が起き易い。
透明導電性層の表面抵抗は、JIS K7194に記載の測定方法に準じて測定された値である。
本発明の透明導電性層は、金属酸化物からなる薄膜層を有することが好ましい。前記表面抵抗を上述の範囲内に調節するには、透明導電性層を形成する基板として用いる透明フィルム温度を高く設定し、低速で透明導電性層を成長させることで結晶性を上げることが好ましい。
また、本発明の透明導電性層は、金属酸化物からなる薄膜層と、これに積層する層を有することが好ましい。透明導電性層の構成を複数にすることで前記表面抵抗を上述の範囲内に優位に調節することができ、好ましい。
【0021】
金属酸化物からなる薄膜層は、ポリエチレンテレフタレートやトリアセチルセルロースベース等の透明フィルム上に、インディウム・錫酸化物(ITO)や錫酸化物、酸化亜鉛等の透明導電性材料を蒸着、塗布、印刷等の方法で付着、成膜することで得られる。
金属酸化物からなる薄膜層の調製法はスパッター、真空蒸着等の気相法であっても良い。また、ペースト状のITO等を塗布やスクリーン印刷で作成したり、膜を過熱して製膜しても良い。
金属酸化物からなる薄膜層に用いられる上記透明導電性材料としては、例えば上述のインディウム・錫酸化物(ITO)や錫酸化物、酸化亜鉛の他、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫などの金属酸化物などが挙げられる。
また、前記の特定の表面抵抗を満たす限りにおいて、前記金属酸化物からなる薄膜層の代わりに、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造体、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などを用いた透明導電性層も使用することができる。銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造体における高屈折率層の「高屈折率」とは、層の構成に用いられる有機バインダーおよび支持体として用いる上記透明フィルムに対し、高屈折率であることを意味する。
【0022】
金属酸化物からなる薄膜層に積層する層としては、金属および合金から選ばれる少なくとも1つからなる、網目状またはストライプ状のパターン層が好ましい。
該パターン層は、例えば櫛型あるいはグリッド型等の金属細線のパターン層を上記金属酸化物からなる薄膜層に積層することができる。または、パターン層を透明フィルム上に形成してから、その上に金属酸化物からなる薄膜層を積層してもよい。金属細線のメッシュを金属酸化物からなる薄膜層に張り合わせてもよいし、予めマスク蒸着ないしエッチングにより透明フィルム上に形成した金属細線上に金属酸化物からなる薄膜層形成用組成物を塗布、蒸着しても良い。また、予め形成した金属酸化物からなる薄膜層上に上記の金属細線を形成してもよい。
パターン層を設けることで、通電性を改善することができ、好ましい。金属や合金としては、銅や銀、アルミニウムおよびその合金から選ばれることが好ましい。
パターン層における網目状またはストライプ状を構成する細線の太さは、任意であるが、0.5μm〜20μmが好ましい。金属細線は、50μm〜400μmの間隔のピッチで配置されていることが、好ましく、特に100μm〜300μmの間隔のピッチが、好ましい。
【0023】
上記パターン層における細線構造部の高さ(厚み)は、0.1μm以上10μm以下が、好ましい。特に好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。金属および/または合金の細線構造部と金属酸化物からなる薄膜層は、どちらが表面に出ていも良いが、結果として透明導電性層における導電性を有する導電性面の平滑性(凹凸)は、5μm以下であることが好ましい。更には密着性の観点から、0.01μm以上5μm以下が好ましい。特に好ましいのは、0.05μm以上3μm以下である。
ここで、導電性面の平滑性(凹凸)は、3次元表面粗さ計(例えば、東京精密社製;SURFCOM575A−3DF)を用いて5mm四方を測定したときの凹凸部の平均振幅で示される。表面粗さ計の分解能の及ばないものについては、STMや電子顕微鏡による測定によって、平滑性を求める。
金属細線の幅と高さ、間隔の関係については、細線の幅は、目的に応じて決めればよいが、典型的には、細線間隔の1/10000以上、1/10以下が好ましい。
金属細線の高さも同様であるが、細線の幅に対して1/100以上10倍以下の範囲が好ましく用いられる。
【0024】
金属酸化物からなる薄膜層に積層する層としては、100nm以下の平均厚みを有する金属薄膜層も好ましく用いることができる。金属薄膜層は、上記金属酸化物からなる薄膜層の上に用いても、上記透明フィルムと上記金属酸化物からなる薄膜層の間に用いてもよい。
金属薄膜層に用いられる金属としては、AuやIn、Sn、Cu、Niなど耐腐食性が高く、天延性等に優れたものが好ましいが、この限りではない。
【0025】
上記透明導電性層は、高い光透過率を実現することが好ましく、70%以上が特に好ましくは、80%以上の光透過率を有することが特に好ましい。
パターン層を有する場合、透明導電性層における光の透過率の減少を抑制することが好ましく、80%以上100%未満の光の透過率を確保することが好ましい。
光透過率を規定する波長は、550nmである。透明導電性層の光の透過率は、分光光度計によって測定することができる。
【0026】
<蛍光体層>
次に、上記蛍光体層について説明する。
上記蛍光体層は、蛍光体粒子をバインダーに分散してなる層である。
(蛍光体粒子)
本発明に用いる蛍光体粒子としてはエレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略する場合がある)蛍光体粒子が好ましく用いられる。該EL蛍光体粒子の形成材料については後述する。該EL蛍光体粒子は、平均球相当直径が、好ましくは、0.1μm以上15μm以下で、さらに好ましくは、1.0μm以上15μm以下で、特に好ましくは、
1μm以上10μm以下である。球相当直径の変動係数は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは、5%以上25%以下である。その調整方法としては、焼成法、尿素溶融法、噴霧熱分解法、水熱合成法(Hydrothermal method)を好ましく用いることができる。
合成された粒子は、多重双晶構造を有することが好ましい。硫化亜鉛の場合、多重双晶(積層欠陥構造)の面間隔は、1.0nm以上15nm以下で、特に好ましくは、1nm〜10nmが好ましく、より好ましくは、2nm〜5nmが好ましい。
【0027】
以下、まず上記蛍光体粒子の調製法について説明する。
本発明に利用可能な蛍光体粒子は、当業界で広く用いられる焼成法(固相法)で形成するのが好ましい。例えば、硫化亜鉛を形成材料として用いる場合、液相法で結晶子サイズ10nm〜50nmの微粒子粉末(通常生粉と呼ぶ)を作成し、これを一次粒子として用い、これに付活剤と呼ばれる不純物を混入させて融剤とともに坩堝にて900℃〜1300℃の高温で30分〜10時間、第1の焼成をおこない、中間体蛍光体粒子を得る。
第1の焼成によって得られる中間体蛍光体粒子をイオン交換水で繰り返し洗浄してアルカリ金属ないしアルカリ土類金属及び過剰の付活剤、共付活剤を除去する。
次いで、得られた中間体蛍光体粒子に第2の焼成をほどこす。第2の焼成は、第1の焼成より低温の500〜800℃で、また短時間の30分〜3時間の加熱(アニーリング)をする。
これら焼成により蛍光体粒子内には多くの積層欠陥が発生するが、微粒子でかつより多くの積層欠陥が蛍光体粒子内に含まれるように、第1の焼成と第2の焼成の条件を適宜選択することが好ましい。
【0028】
また、上記中間体蛍光体粒子に、ある範囲の大きさの衝撃力を加えることにより、粒子を破壊することなく、積層欠陥の密度を大幅に増加させることができる。衝撃力を加える方法としては、中間体蛍光体粒子同士を接触混合させる方法、アルミナ等の球体を混ぜて混合させる(ボールミル)方法、粒子を加速させ衝突させる方法、超音波を照射する方法、静水圧を利用する方法などを好ましく用いることができる。
これらの方法により、5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子を形成することができる。その頻度の評価法としては、粒子を乳鉢ですりつぶし、ほぼ0.2μm以下の厚みの砕片に砕いたものを加速電圧200KVの電子顕微鏡で観察した際に、5nm以下の間隔で10層以上の積層欠陥を含む破片粒子の頻度で評価することができる。もちろん粒子サイズが、0.2μmを下回る厚みの粒子は、破砕の必要は無く、そのまま観察する。
本発明における蛍光体粒子は、この頻度が50%個を超えるものが好ましく、さらに好ましくは、70%個を超えるものが好ましい。頻度は、高いほど良い。積層欠陥の間隔は、狭いほど良い。
その後、焼成により得られた蛍光体粒子を、HCl等の酸でエッチングして表面に付着している金属酸化物を除去し、さらに表面に付着した硫化銅を、KCNで洗浄して除去し、続いて乾燥してEL蛍光体を得ることができる。
【0029】
また、形成材料が硫化亜鉛の場合などは、蛍光体結晶中に多重双晶構造を導入するため、蛍光体の粒子形成方法として、水熱合成法を用いることも好ましい。水熱合成法の系では、粒子は、よく攪拌された水溶媒に分散されており、かつ粒子成長を起こす亜鉛イオン及び/又は硫黄イオンは、反応容器外から、水溶液で制御された流量で、決められた時間で添加する。従って、この系では粒子は水溶媒中で自由に動くことができ、かつ添加されたイオンは水中を拡散して粒子成長を均一に起こすことができるため、粒子内部における付活剤もしくは共付活剤の濃度分布を変化させることができ、焼成法では得られない粒子を得ることができる。また粒子サイズ分布の制御において、核形成過程と成長過程を明確に分離することができ、かつ粒子成長中の過飽和度を自由に制御することにより、粒子サイズ分布を制御することが可能で、サイズ分布の狭い単分散な硫化亜鉛粒子を得ることが可能となる。核形成過程と成長過程の間に、オストワルド熟成工程を入れることが粒子サイズの調節及び、多重双晶構造の実現のために好ましい。
例えば硫化亜鉛結晶は、水における溶解度が非常に低く、これは水溶液中においてイオン反応で粒子を成長させることにおいて非常に不利な性質である。硫化亜鉛の水への溶解度は、温度を高くすればする程、上昇するが、375℃以上では水は超臨界状態となって、イオンの溶解度は激減する。従って、粒子調製温度は、100℃以上375℃以下が好ましく、200℃以上375℃以下がさらに好ましい。粒子調製にかける時間は好ましくは100時間以内、より好ましくは12時間以内で5分以上である。
【0030】
硫化亜鉛の水への溶解度を増加させる他の方法として、本発明ではキレート剤を用いることが好ましい。Znイオンのキレート剤としては、アミノ基、カルボキシル基を有するものが好ましく、具体的には、エチレンジアミン四酢酸(以下EDTAと表す)、N,2−ヒドロオキシエチルエチレンジアミン三酢酸(以下EDTA−OHと表す)、ジエチレントリアミン五酢酸、2−アミノエチルエチレングリコール四酢酸、1,3−ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、2−ヒドロキシエチルグリシン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノトリエチルアミン、アリルアミン、エタノールアミン、等があげられる。
また、構成元素の先駆体を用いず、構成する金属イオンとカルコゲンアニオンを直接の沈殿反応による場合には、両者の溶液の急速混合が必要で、ダブルジェット式の混合器を用いるのが好ましい。
【0031】
また、本発明に利用可能な蛍光体の形成方法として、尿素溶融法を用いることも好ましい。尿素溶融法は、蛍光体を合成する媒体として溶融した尿素を用いる方法である。尿素を融点以上の温度で維持して溶融状態にした液中に、蛍光体母体や付活剤を形成する元素を含む物質を溶解する。必要に応じて、反応剤を添加する。例えば、硫化物蛍光体を合成する場合は、硫酸アンモニウム、チオ尿素、チオアセトアミド、等の硫黄源を添加して沈殿反応を起こさせる。その融液を450℃程度まで徐々に昇温すると、蛍光体粒子や中間体蛍光体粒子が、尿素由来の樹脂中に均一に分散した固体が得られる。この固体を微粉砕した後、電気炉中で樹脂を熱分解させながら焼成する。焼成雰囲気として、不活性雰囲気、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、アンモニア雰囲気、真空雰囲気を選択することで、酸化物、硫化物、窒化物を母体とした蛍光体粒子が合成できる。
【0032】
また、本発明に利用可能な蛍光体の形成方法として、噴霧熱分解法を用いることも好ましい。蛍光体の前駆体溶液を、霧化器を用いて微小液滴化して、液滴内での凝縮や化学反応または液滴周囲の雰囲気ガスとの化学反応により、蛍光体粒子または中間体蛍光体粒子を合成できる。液滴化の条件を好適にすることで、微粒子化,微量不純物の均一化,球形化,狭粒子サイズ分布化した粒子を得ることができる。微小液滴を生成する霧化器としては、2流体ノズル,超音波霧化器,静電霧化器を用いることが好ましい。霧化器によって生成した微小液滴を、キャリアガスで電気炉などに導入し、加熱することで、脱水・縮合し、さらに液滴内物質同士の化学反応や焼結、または雰囲気ガスとの化学反応により目的とする蛍光体粒子または中間体蛍光体粒子を得る。得られた粒子を、必要に応じて追加焼成する。
例えば、硫化亜鉛蛍光体を合成する場合は、硝酸亜鉛とチオ尿素の混合溶液を霧化し、800℃程度で、不活性ガス(例えば窒素)中で熱分解して、球形の硫化亜鉛蛍光体を得る。出発の混合溶液中に、Mn,Cu及び希土類などの微量不純物を溶解させておけば、発光中心をとして作用する。また、硝酸イットリウムと硝酸ユーロピウムの混合溶液を出発溶液として、1000℃程度で、酸素雰囲気中で熱分解して、ユーロピウムで付活された酸化イットリウム蛍光体を得る。
液滴中の成分は、全てが溶解している必要はなく、二酸化珪素の超微粒子を含有させても良い。亜鉛溶液と二酸化珪素の超微粒子を含んだ微小液滴の熱分解で、珪酸亜鉛蛍光体の粒子が得られる。
【0033】
また、本発明に利用可能な蛍光体の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマCVD法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法、流動油面蒸着を組み合わせた方法などの気相法と、複分解法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、凍結乾燥法などの液相法なども用いることができる。
これらの方法において、粒子の調製条件を制御することで、本発明に好ましい0.1μm以上15μm以下のサイズの微粒子を得ることができる。
【0034】
蛍光体粒子には、特許第2756044号公報や米国特許第6458512号明細書に記載のごとく0.01μm以上の金属酸化物や金属窒化物で構成される非発光シェル層で被覆して、防水性・耐水性を付与することを好ましく行うことができる。
また国際公開02/080626号パンフレットに記載のごとく、発光中心を含むコア部と非発光のシェル部からなる2重構造化することで、光取り出し効率を高める技術を好ましく用いることができる。
蛍光体粒子は、粒子の表面に非発光シェル層を有することがより好ましい。このシェル層形成は、蛍光体粒子のコアとなる半導体微粒子の調製に引き続いて化学的な方法を用いて0.01μm以上の厚みで設置するのが好ましい。好ましくは0.01μm以上1.0μm以下である。
【0035】
非発光シェル層は、酸化物、窒化物、酸窒化物や、母体蛍光体粒子上に形成した同一組成で発光中心を含有しない物質から作成することができる。また、母体蛍光体粒子材料上に異なる組成の物質をエピタキシャルに成長させることによっても形成することができる。
非発光シェル層の形成方法として、レーザー・アブレーション法、CVD法、プラズマCVD法、スパッタリングや抵抗加熱、電子ビーム法などと、流動油面蒸着を組み合わせた方法などの気相法と、複分解法、ゾルゲル法、超音波化学法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、水熱合成法、尿素溶融法、凍結乾燥法などの液相法や噴霧熱分解法なども用いることができる。
特に、蛍光体の粒子形成で好適に用いられる、水熱合成法、尿素溶融法や噴霧熱分解法は、非発光シェル層の合成にも適している。
【0036】
蛍光体粒子の上記付活剤としては、銅、マンガン、銀、金及び希土類元素から選択された少なくとも一種のイオンを好ましく用いることができる。
また、共付活剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、及びアルミニウムから選択された少なくとも一種のイオンを好ましく用いることができる。
【0037】
本発明において上記蛍光体粒子として特に好ましく用いられる上記エレクトロルミネッセンス蛍光体粒子について、さらに詳しく以下に述べる。
本発明に好ましく用いられるEL蛍光体粒子の母体材料としては、具体的には第II族元素と第VI族元素とから成る群から選ばれる元素の一つあるいは複数と、第III族元素と第V族元素とから成る群から選ばれる一つあるいは複数の元素とから成る半導体の微粒子であり、必要な発光波長領域により任意に選択される。例えば、CdS,CdSe,CdTe,ZnS,ZnSe,ZnTe,CaS,MgS,SrS,GaP,GaAs,及びそれらの混晶などが挙げられるが、ZnS,CdS,CaSなどを好ましく用いることができる。
さらに、粒子の母体材料としては、BaAl24、CaGa24、Ga23、Zn2SiO4、Zn2GaO4、ZnGa24,ZnGeO3,ZnGeO4,ZnAl24,CaGa24,CaGeO3,Ca2Ge27,CaO,Ga23,GeO2,SrAl24,SrGa24,SrP27,MgGa24,Mg2GeO4,MgGeO3,BaAl24,Ga2Ge27,BeGa24,Y2SiO5,Y2GeO5,Y2Ge27,Y4GeO8,Y23、Y22S,SnO2及びそれらの混晶などを好ましく用いることができる。
また、発光中心は、MnやCrなどの金属イオン及び、希土類を好ましく用いることができる。
このような、母体材料の選択により、いくつかの蛍光体を用いることで、実質的に、染料や蛍光染料を用いることなく、色度図上 0.3<x<0.4、0.3<y<0.4の範囲の白色発光を得ることもできる。
【0038】
(バインダー)
蛍光体層に用いられる上記バインダーとしては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。これらの樹脂に、BaTiO3やSrTiO3などの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。分散方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる。
【0039】
(蛍光体層)
また、本発明のEL素子は、蛍光体層の厚みが薄いことが好ましく、特に60μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましい。特に好ましいのは、3μm以上45μm以下である。
上記蛍光体層厚みの下限は、蛍光体粒子サイズであるが、素子の平滑性を確保するためには、蛍光体粒子のサイズに対して蛍光体層の厚みが1.0〜10倍であることが好ましい。
上記蛍光体層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法などを用いて、上記蛍光体粒子と上記バインダーとが、ジメチルホルムアミドやアセトン、アセトニトリル等の溶剤に分散されてなる分散液を塗布して形成することが好ましい。特に、スクリーン印刷法のような印刷面を選ばない方法やスライドコート法のような連続塗布が可能な方法を用いることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法は、上記分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布する。メッシュの厚さ、開口率、塗布回数を選択することにより膜厚を制御できる。スクリーンの大きさを変えることで大面積化が容易であり、好ましい。
【0040】
<全体の層構造>
本発明のEL素子は、上述の透明導電性層、蛍光体層及び中間層の他、本発明の素子構成において、基板、背面電極、各種保護層、フィルター、光散乱反射層などを必要に応じて付与することができる。特に基板に関しては、ガラス基板やセラミック基板に加え、フレキシブルな透明樹脂シートを用いることができる。
本発明は、上記のような特徴を有する透明導電性層に上述のEL素子構成を適宜組み合わせることにより高輝度かつ長寿命のEL素子を提供するものである。
上記素子構成において電極間距離のバラツキを中心線平均粗さRaとして見たとき、蛍光体層厚みdに対してRa=d/8以下であることが好ましい。
【0041】
<誘電体層>
本発明のEL素子は、発光層である蛍光体層に隣接して、誘電体層を有することが好ましい。
誘電体層の形成材料としては、誘電率と絶縁性が高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO2,BaTiO3,SrTiO3,PbTiO3,KNbO3,PbNbO3,Ta23,BaTa26,LiTaO3,Y23,Al23,ZrO2,AlON,ZnSなどが用いられる。これらは薄膜結晶層として設置されても良いし、また粒子構造を有する膜として用いても良い。またそれらの組合せであっても良い。薄膜結晶層の場合は、基板にスパッタリング等の気相法で形成した薄膜であっても、BaやSrなどのアルコキサイドを用いたゾルゲル膜であっても良い。粒子形状の場合は、蛍光体粒子の大きさに対し充分に小さいことが好ましい。具体的には蛍光体粒子サイズの1/3〜1/1000の大きさが好ましい。
誘電体層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法などを用いて塗布することが好ましい。特に、スクリーン印刷法のような印刷面を選ばない方法やスライドコート法のような連続塗布が可能な方法を用いることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法は、誘電体物質の微粒子を高誘電率のポリマー溶液に分散した分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布する。メッシュの厚さ、開口率、塗布回数を選択することにより膜厚を制御できる。分散液を換えることで、誘電体層のみならず、背面電極層なども形成でき、さらにスクリーンの大きさを変えることで大面積化が容易であり、好ましい。
誘電体層と蛍光体層の合計膜厚みが、該蛍光体粒子の平均粒子サイズの2倍〜20倍であることが好ましい。
【0042】
<背面電極>
本発明のEL素子における光を取り出さない側には背面電極を設けるのが好ましい。背面電極の形成材料としては、導電性の有る任意の材料が使用出来る。金、銀、白金、銅、鉄、アルミニウムなどの金属、グラファイトなどの中から、作成する素子の形態、作成工程の温度等により適宜選択されるが、その中でも熱伝導率が高いことが好ましく、2.0W/cm・deg以上であることが好ましく、特に2.5W/cm・deg以上であることが好ましい。
また、EL素子の周辺部に高い放熱性と通電性を確保するために、金属シートや金属メッシュを電極として用いることも好ましい。
【0043】
<封止・吸水>
本発明のEL素子は、最後に適当な封止材料を用いて、外部環境からの湿度の影響を排除するよう加工することが好ましい。素子の基板自体が充分な遮蔽性を有する場合には、作成した素子の上方に遮蔽性のシートを重ね、周囲をエポキシ等の硬化材料を用いて封止することが好ましい。また、面状素子をカールさせないために両面に遮蔽性シートを配しても良い。素子の基板が、水分透過性を有する場合は、両面に遮蔽性シートを配することが特に好ましい。
このような遮蔽性のシートは、ガラス、金属、プラスチックフイルム等の中から目的に応じて選択されるが、例えば特開2003−249349号公報に開示されているような酸化珪素からなる層と有機高分子化合物からなる多層構成の防湿フィルムを好ましく用いることができるし、三フッ化塩化エチレン等も好ましく用いることができる。
封止工程は、特許公報63−27837号に記載の如く、真空ないし不活性ガス置換された雰囲気下で行うことが好ましく、封止工程実施前には、特開平5−166582号公報に記載の如く、含水分量を充分に低減することが好ましい。
これらのEL素子を作成する際に、防湿フィルムより内部に、吸水層を設けることが、好ましい。給水層は、ナイロンやポリビニルアルコール等の吸水性が高く、水分保持能力
が高い素材からなることが、好ましい。給水層は、透明性も高いことが好ましい。透明性が高ければ、セルロースや紙の様な素材も好ましく用いることが出来る。
特開平4−230996号公報や特開平11−260557号公報に記載の如くフィルムによる防湿に加え、さらに蛍光体粒子を金属酸化物や窒化物で被覆して、防湿性を向上させることも好ましい。
【0044】
<白色・蛍光染料>
本発明EL素子の用途は、特に限定されるものではない。光源としての用途を考えると、発光色は白色が好ましい。
発光色を白色とする方法としては、例えば、銅とのマンガンが付活され、焼成後に徐冷された硫化亜鉛蛍光体のように単独で白色発光する蛍光体粒子を用いる方法や、3原色または補色関係に発光する複数の蛍光体を混合する方法が好ましい。(青−緑−赤の組み合わせや、青緑−オレンジの組み合わせなど)また、特開平7−166161号公報、特開平9−245511号公報、特開2002−62530号公報に記載の青色や青緑色発光の蛍光体と蛍光顔料や蛍光染料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法も好ましい。好ましい蛍光染料としては、ローダミン系の蛍光染料が挙げられる。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30〜0.4の範囲で、かつy値が0.30〜0.40の範囲が好ましい。
【0045】
<紫外線吸収剤>
本発明には、紫外線吸収剤を用いることも好ましい。紫外線吸収剤としては、特開平9−22781号公報に記載されている酸化セリウム等の無機化合物や、有機化合物を用いることができる。好ましくは、有機化合物である。
上記紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の公報に記載の化合物を用いることができる。
これらは、写真感光材料に好ましく添加されるが、本発明でも有効である。例えば、特開昭46−3335号公報、同55−152776号公報、特開平5−197074号公報、同5−232630号公報、同5−307232号公報、同6−211813号公報、同8−53427号公報、同8−234364号公報、同8−239368号公報、同9−31067号公報、同10−115898号公報、同10−147577号公報、同10−182621号公報、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号及び特表平8−501291号公報等に記載されている化合物を使用できる。
これらの紫外線吸収剤は、蛍光体粒子が、紫外線を吸収しない様に配置されることが好ましく、蛍光体粒子を分散したバインダー中に添加、分散したり、また透明導電性層より外側の防湿フィルムや吸水層を配する場合にはそれらの中に添加して用いることができる。もちろんこれらの層の面上に塗布して紫外線吸収層を形成することもできる。
【0046】
<電圧と周波数>
通常、分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hzから400Hzの交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧ならびに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.25m2以上の大面積素子の場合、一般的には素子の容量成分が増大し、素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなるため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が充分に行われない状態になりやすい。特に0.25m2以上の素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、駆動周波数の増大に対してしばしば印加電圧の低下がおこり、低輝度化がしばしば起こる。
これに対し本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、0.25m2以上の大サイズでも高い周波数の駆動が可能であり、高輝度化することが出来る。その場合、500Hz以上5KHzでの駆動が好ましく、より好ましくは、800KHz以上3KHz以下の駆動が好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕
<蛍光体粒子A>
平均粒子径30nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gに、硫酸銅をZnSに対し0.1モル%と塩化金酸を0.003モル%とを添加した乾燥粉末に、融剤としてNaClおよびMgCl2と塩化アンモニウム(NH3Cl)粉末とを適量、並びに酸化マグネシウム粉末を蛍光体粉末に対し20質量%加えて、得られた粉末混合物をアルミナ製ルツボに入れて1200℃で3.0時間焼成したのち降温した。そののち焼成した粉末を取り出し、ボールミルにて粉砕分散した。さらに超音波分散を行ったのち、ZnCl2 5gに硫酸銅をZnSに対し0.05モル%添加したのちMgCl2を1g加えて、乾燥粉末混合物を作成し、再度アルミナルツボに入れて700℃で6時間焼成した。このとき雰囲気として10%の酸素ガスをフローさせながら焼成を行なった。
焼成後の粒子は、再度粉砕し、40℃のH2Oに分散・沈降、上澄み除去を行なって洗浄したのち、塩酸10%液を加えて分散・沈降、上澄み除去を行い、不要な塩を除去して乾燥させた。さらに10%のKCN溶液を70℃に加熱して表面のCuイオン等を除去した。さらに6モル/Lの塩酸で粒子全体の10質量%に相当する表面層をエッチング除去した。
この様にして得られた粒子をさらに目の大きさが平均14μm孔径の篩いにかけて、小サイズ粒子を取り出して蛍光体粒子を得た。
このようにして得られた蛍光体粒子は、平均粒径が10.3μm、変動係数が20%で、あった。また、すり鉢で粒子を粉砕し、厚みが0.2μm以下の砕片を取り出して、200KVの加速電圧条件で、その電子顕微鏡観察を行なったところ、砕片粒子の少なくとも80%以上が5nm間隔以下の積層欠陥を10枚以上有する部分を含んでいた。
【0049】
<蛍光体粒子B>
蛍光体粒子Aの作製において、融剤として添加するMgCl2の量を調整し、焼成温度と時間を1250℃6時間とし、篩がけを行わず、平均粒子径24μmで変動係数43%の蛍光体粒子Bを作製した。
【0050】
下記のようにEL素子を作製した。このとき、透明導電性層、蛍光体粒子、中間層の有無は、表1の通りにして、試料1〜12とした。
【0051】
<誘電体層>
平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO3微粒子を、30質量%の比率で有機溶媒に溶解したシアノレジン液に分散し、誘電体層厚みが25μmになるように厚み75μmのアルミシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて120℃で1時間乾燥して、誘電体層を形成した。
【0052】
<蛍光体層>
得られた上記蛍光体粒子を、シンロイヒ社製蛍光染料FA−001と300cd/m2の発光時にCIE色度座標でx=3.3±0.3 y=3.4±0.3となる様、30質量%濃度のシアノレジン液に分散し混練し、上記の誘電体層上に厚みが50μmになるよう塗布した。
【0053】
<中間層の形成>
得られた蛍光体層の上に、平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO3微粒子を誘電体層の場合の1/5の量、シアノレジン液に分散した塗布液を、2μmの厚みになるよう塗布して中間層を形成した。
【0054】
<透明導電性層>
透明導電性層A:ポリエチレンテレフタレートからなる透明フィルム上にITOを蒸着し、表面積0.5m×0.7mの透明導電性層Aを作製した。このときの表面抵抗は、150Ω/□で光透過率は、88%であった。
透明導電性層B:IZO(インジウムジンクオキサイド)を透明導電性層Aと同じ透明フィルムに蒸着し、表面抵抗350Ω/□で光透過率93%の金属酸化物からなる薄膜層を作製した。得られた金属酸化物からなる薄膜層の上に間隔500μmピッチで巾20μm、高さ5μmのNiよりなるストライプ状の金属細線からなるパターン層をマスクを用いて蒸着により作製し、透明導電性フィルムAと同じ表面積の、表面抵抗5Ω/□で光透過率87%の透明導電性層Bを得た。
透明導電性層C:透明導電性層Aと同じ透明フィルムにIZOを蒸着し、表面抵抗350Ω/□で光透過率93%の金属酸化物からなる薄膜層を作製した。得られた金属酸化物からなる薄膜層の上にAuを10nm蒸着して金属薄膜層を形成して、透明導電性フィルムAと同じ表面積の、表面抵抗10Ω/□で光透過率70%の透明導電性層Cを得た。
透明導電性層D:透明導電性層Aと同じ透明フィルムにITOを蒸着し、表面抵抗150Ω/□で光透過率88%の金属酸化物からなる薄膜層を作製した。得られた金属酸化物からなる薄膜層の上に透明導電性層Bと同様に、間隔500μmピッチで巾20μm、高さ5μmのNiよりなるストライプ状の金属細線からなるパターン層をマスクを用いて蒸着により作製し、透明導電性フィルムAと同じ表面積の、表面抵抗10Ω/□で光透過率85%の透明導電性層Dを得た。
【0055】
電極として用いる上記の透明導電性層とアルミシートの背面(上記で積層を行った側とは反対側の面)から、それぞれ厚み80μmの銅アルミシートを用いて外部接続用の端子を取り付けた後、素子を、SiO2層を有する防湿フィルム2枚の間に挟んで、透明導電性層と中間層が隣接するように熱圧着した。
【0056】
試料1を基準にして、1KHzで駆動を行った際に初期輝度を500cd/m2にした場合、25℃60%における連続点灯での輝度半減時間を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
〔実施例2〕
実施例1の試料1〜12のEL素子を(イ)0.5m×0.8mのサイズに加工した試料と、これとは別に(ロ)0.05m×0.10mサイズに加工した試料を用意し、初期輝度の駆動周波数依存性と輝度半減時間の関係を調べた。(イ)に対する(ロ)の初期輝度の低下は、本発明では400Hzから2KHzの間で10%未満であったが、比較例では10%以上の低下が見られた。又、(イ)に対する(ロ)の輝度半減時間の減少は、本発明では5%以下であったが、比較例は10%以上の低下が見られた。本発明の輝度向上効果が、大サイズでは、顕著に表れること及び輝度半減寿命増加効果が、顕著になることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性層と蛍光体層とを含有するエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記透明導電性層の表面抵抗が、0.05Ω/□〜80Ω/□であり、該透明導電性層と前記蛍光体層との間に少なくとも1層の中間層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記透明導電性層が、
金属酸化物からなる薄膜層と、
金属および合金から選ばれる少なくとも1つからなる網目状又はストライプ状のパターン層
とを有してなることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記透明導電性層が、
金属酸化物からなる薄膜層及び
金属薄膜層
を有する多層構造であることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
平均球相当径が、1.0μm〜15μmである蛍光体粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2006−73304(P2006−73304A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254116(P2004−254116)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】