説明

分散型発電システム

【課題】電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段を設けることで、演算後の電力値の和をゼロとすることにより、計測電力のゼロ点(オフセット値)のずれを補正することができる分散型発電システムを提供することを目的とする。
【解決手段】制御手段112は、通常電流信号と信号反転手段109による反転電流信号とを、信号積算手段110において互いに同じ期間積算した値が実質的にゼロになる場合に、通常電流信号と電圧信号とに基づく第1電力と、反転電流信号と電圧信号とに基づく第2電力とを、互いに同じ期間演算し、第1電力と第2電力との和をゼロにすることにより、電力演算回路111における電力値のゼロ点補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統と連系して、電力系統、および需要家内負荷へ交流電力を供給する分散型発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の分散型発電システムは、例えば図4に示す構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下に、特許文献1に示されている分散型発電システムについて説明する。
【0004】
図4は、従来の分散型発電システムのブロック図である。
【0005】
図4に示すように、商用電源系統1は、受電点2、電力計測器3、分電盤11を介して負荷9に接続され、商用電源系統1から受電点2に受電電力P1が供給され、分電盤11内の漏電ブレーカ13、さらに分岐ブレーカ14bを介して負荷9に電力が供給されている。
【0006】
発電装置4は、燃料電池を備えた発電部5、インバータ6、制御装置7および補機10を備え、インバータ6は発電部5で発電された電力を調整し、出力電力P2として、分電盤11内の分岐ブレーカ14a、14bを介して負荷9に出力するものである。制御装置7は、電力計測器3から計測信号S1を受け取り、これに基づいて制御信号S4によるインバータ6の出力動作、制御信号S3による負荷9の駆動、補機10の駆動等をそれぞれ制御する。補機10は、インバータ6からの出力電力P3により駆動され、制御装置7の制御信号S2により制御される。
【0007】
また、負荷9で消費される電力を把握するために電力計測器3を受電点2またはその近傍に配置し、受電電力P1および発電電力P2をそれぞれ計測するようにしている。
【0008】
ここで、発電装置4が運転中の場合、電力計測器3から送られてくる計測信号S1に基づいて受電点2の電力が一定期間の間に変化しない場合は、電力計測器3が断線等により故障しているものと判断し、発電部5および補機10に停止信号を送り、発電装置4の運転を停止させる。またインバータ6の出力を変化させたり、インバータ6を短時間ゲートブロックしたり、補機10の出力を変化させたり、負荷9を変化させたりした場合、電力計測器3から送られてくる計測信号S1に基づく受電点2の電力が、前述のように変化させる前後の一定期間の間に変化しない場合も、同様の判断をして発電装置4の運転を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−79935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、電力計測器(電流センサ)そのものの異常は検出できるが、電力演算回路における計測電力のゼロ点(オフセット値)のずれについては検出できていないという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段を設けることで、通常電流信号と、信号反転手段を動作して得られる反転電流信号により演算後の電力値の和をゼロとすることにより、電力演算回路において演算する電力のゼロ点のずれを補正することで、計測電力のゼロ点を自動補正できるので常に正確な電力計測ができる分散型発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
電力系統と複数の電線を介して連系する分散型発電システムであって、直流電力を発電する発電装置と、前記発電装置が生成した直流電力を交流電力に変換して需要家内負荷に供給する直流交流電力変換手段と、前記需要家内負荷より系統側の前記電線の電流を検出する電流センサと、前記電線の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電流センサからの電流信号と前記電圧検出手段からの電圧信号とに基づいて計測電力を演算する電力演算回路と、前記電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段と、前記電流センサからの電流信号を積算する信号積算手段と、少なくとも前記発電装置と前記直流交流電力変換手段と前記信号反転手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記信号反転手段を動作させない場合の通常電流信号と前記信号反転手段を動作させた場合の反転電流信号とを、前記信号積算手段において互いに同じ期間積算した値が実質的にゼロになる場合に、前記通常電流信号と前記電圧信号とに基づいて演算される第1電力と、前記反転電流信号と前記電圧信号とに基づいて演算される第2電力とを、互いに同じ期間演算し、前記第1電力と前記第2電力との和をゼロにすることにより、前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。
【0013】
これによって、全波での歪みのない、なめらかな交流電力の場合のみに限定して、計測電力のゼロ点を自動補正できるので常に正確な電力計測ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の分散型発電システムは、電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段を設けることで、通常電流信号と、信号反転手段を動作して得られる反転電流信号により演算後の電力値の和をゼロとすることにより、電力演算回路において演算する電力のゼロ点のずれを補正することで、計測電力のゼロ点を自動補正できるので常に正確な電力計測ができる。
【0015】
さらに、電流センサからの電流信号を積算する信号積算手段を設けることで、家庭内の特殊な負荷、例えば半波整流された電気器具などが使用されていた場合はゼロ点補正せず、全波での歪みのない、なめらかな交流電力の場合のみに限定してゼロ点補正することで正確な補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における分散型発電システムのブロック図
【図2】同実施の形態1における電力演算回路の詳細図と周辺図
【図3】同実施の形態1における検出電圧、電流および演算後の電力波形図
【図4】従来の分散型発電システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、電力系統と複数の電線を介して連系する分散型発電システムであって、直流電力を発電する発電装置と、前記発電装置が生成した直流電力を交流電力に変換して需要家内負荷に供給する直流交流電力変換手段と、前記需要家内負荷より系統側の前記電線の電流を検出する電流センサと、前記電線の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電流センサからの電流信号と前記電圧検出手段からの電圧信号とに基づいて計測電力を演算する電力演算回路と、前記電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段と、前
記電流センサからの電流信号を積算する信号積算手段と、少なくとも前記発電装置と前記直流交流電力変換手段と前記信号反転手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記信号反転手段を動作させない場合の通常電流信号と前記信号反転手段を動作させた場合の反転電流信号とを、前記信号積算手段において互いに同じ期間積算した値が実質的にゼロになる場合に、前記通常電流信号と前記電圧信号とに基づいて演算される第1電力と、前記反転電流信号と前記電圧信号とに基づいて演算される第2電力とを、互いに同じ期間演算し、前記第1電力と前記第2電力との和をゼロにすることにより、前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。これにより、全波での歪みのない、なめらかな交流電力の場合のみに限定して、計測電力のゼロ点を自動補正できるので常に正確な電力計測ができる。
【0018】
第2の発明は、特に第1の発明の分散型発電システムに加え、前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正の内容を記憶する記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正の内容を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段が記憶している電力値のゼロ点補正の内容に基づいて、前記電力演算回路における計測電力の演算を行うものである。これにより、何らかの原因で制御手段の電源が遮断され電源オフ状態となっても、電力値のゼロ点補正の内容が記憶手段において記憶されているので、常に正確な電力計測ができる。
【0019】
第3の発明は、特に第2の発明の分散型発電システムに加え、前記制御手段に信号を送るための操作手段と、前記制御手段から信号を受けるための表示手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記操作手段の操作指令に連動して、前記記憶手段に記憶された電力値のゼロ点補正の内容を前記表示手段に表示するよう制御するものである。これにより、サービスマンやメンテ作業者が確認したい時はいつでも、ゼロ点補正のための記憶されている内容やその内容に対応する電力値を直接的に目で確認できるので、電力計測値の現状を把握することができる。
【0020】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1項の発明の制御手段は、深夜の時間帯に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。これにより、消費電力が小さく、電力の変動が小さい深夜の時間帯にゼロ点補正を正確に実施でき、家庭内の特殊な負荷、例えば半波整流された電気器具の影響もなく、全波での歪みのない交流電力におけるゼロ点の補正を実施することが可能となる。
【0021】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか1項の発明の制御手段は、前記発電装置の起動中に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。これにより、起動指令から発電に入るまでの間に、ゼロ点の補正を実施するので、発電中の計測電力の演算に十分活用することができる。
【0022】
第6の発明は、特に第5の発明の制御手段は、前記発電装置の起動毎に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。これにより、起動指令から発電に入るまでの間、毎回ゼロ点の補正を実施するので、毎回の発電中において正確な電力計測が実施できる。
【0023】
第7の発明は、特に第5の発明の制御手段は、前記発電装置が所定期間以上停止した場合に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。これにより、発電システムが長期停止し、その間に電力計測のゼロ点がずれた場合であっても、発電前の起動中にゼロ点の補正を実施するので、発電中の正確な電力計測が可能となる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態1における分散型発電システムについて、詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1における分散型発電システムのブロック図である。
【0027】
図1には、電力系統101と、分散型発電システム102と、需要家内負荷104を図示している。ここで、電力系統101は、U相、O相、W相から成る単相三線式の交流電源であり、連系点103で電力系統101と分散型発電システム102は連系する。需要家内負荷104は、一般家庭で使用されるテレビ、エアコン等などで、電力系統101または分散型発電システム102から供給される交流電力を消費する機器である。
【0028】
そして、分散型発電システム102は、発電装置105と、直流交流電力変換手段106と、電圧検出手段107と、第1の電流センサ108aと、第2の電流センサ108bと、信号反転手段109と、信号積算手段110と、電力演算回路111と、制御手段112と、記憶手段113と、操作手段114、表示手段115から少なくとも構成される。
【0029】
ここで、発電装置105は、燃料電池などで構成され直流電力を生成する。
【0030】
直流交流電力変換手段106は、絶縁トランスを含む構成を有し、発電装置105が生成する直流電圧を変圧した後、需要家内負荷104で消費可能な交流へ変換する。
【0031】
電圧検出手段107は、U相―O相間、W相―O相間の電圧を検出する。
【0032】
第1の電流センサ108a、第2の108bはカレントトランスなどで、電力系統101の電線に取付けられ、取付けられた位置に流れる電流の大きさおよび正負の方向を検出する(本実施の形態では、第1の電流センサ108aをU相の連系点103、第2の電流センサ108bをW相の連系点103に取付ける)。ここで電力系統101から需要家内負荷104に流れる電力を正とし、順潮流と呼ぶ。また分散型発電システム102から電力系統101に流れる電力を負として逆潮流と呼んでいる。
【0033】
信号反転手段109は、FET等のスイッティング素子で構成され、制御手段112からのパルス出力によりFET等のスイッティング素子をドライブすることにより第1の電流センサ108aおよび第2の電流センサ108bからの電流信号の正負を1周期単位(全波)のタイミングで反転することができる。また信号反転手段109は、第1の電流センサ108aあるいは第2の電流センサ108bが逆向きに電線に取付けられていると判断された場合に、自動的に電流信号の正負を反転して正しく受電電力を計測するためにも利用され、回路を共有している。ここでは、全波(1周期)単位で電流信号を反転しているが、制御手段112からの信号を制御して、半波(半周期)単位で、きめ細かく、電流信号を反転してしてもよい。
【0034】
信号積算手段110は、積分回路で構成され、信号反転手段109により信号の正負を反転された第1の電流センサ108aおよび第2の電流センサ108bからの電流信号と、同じ期間の正負を反転されない通常の電流信号を積分するものである。
【0035】
電力演算回路111は、電圧検出手段107で検出される電圧値と電流センサ108で検出される電流値の積により電力値を演算する。電力値のゼロ点を補正する場合は、信号
積算手段110による電流信号の積分値がゼロになる場合に限り、通常電流信号と電圧信号とに基づいて演算される第1電力と、信号反転手段109により信号の正負を反転された反転電流信号と電圧信号とに基づいて演算される第2電力とを、互いに同じ期間演算し、第1電力と第2電力との和を計算して電力値をゼロとする。これにより電力演算回路111における電力値のゼロ点補正を行うができる。
【0036】
制御手段112は、電力演算回路111において算出される電力値をもとに発電装置105、直流交流電力変換手段106の出力を制御する。また、信号反転手段109への信号を制御することにより電流センサ108からの電流信号の正負を反転する。この実施例では電流信号の全波を反転しているが、半波単位で電流信号を反転してもよい。そして交流の電力演算回路111において電圧検出手段107からの電圧値との積である電力値をゼロとすることにより、電力演算回路111における電力値のゼロ点を補正する。
記憶手段113は、EEPROM等の不揮発性メモリで構成され、電力演算回路111においてゼロ点補正された電力オフセット値を記憶する。
【0037】
操作手段114は、タクトスイッチやメンブレンスイッチなどで構成され、サービスマンやメンテ作業者が所定の操作を行う手段である。
【0038】
表示手段115は、LCDや7セグメント等のLEDなどで構成され、記憶手段113において記憶された電力オフセット値および、そのオフセット値に対応する電力値を表示する手段である。
【0039】
以上のように構成された分散型発電システムの動作および作用について、図1,図2、図3を用いて説明する。まず、連系点103における電圧信号および電流信号から、電力演算回路111における電力演算および制御手段112への流れを説明する。
【0040】
図2は電力計測するための電力演算回路111の詳細図とその周辺を表す図である。また図3は、(a)通常の電力計測時の場合での、連系点103における電圧信号vaおよび通常電流信号iaをもとに、電力演算回路111における乗算器111aでの演算後の電力信号wa、およびフィルタ回路111b後の電力信号と、(b)電力値のゼロ点補正時の場合での、連系点103における電圧信号vbおよび反転電流信号ibをもとに、電力演算回路111における乗算器111aでの演算後の電力信号wb、およびフィルタ回路111b後の電力信号の波形図である。
【0041】
まず、図2および図3の(a)通常の電力計測時の場合において、連系点103における電圧検出手段107から信号増幅回路を経た電圧信号(v=Vp・sinωt)と電流センサ108から信号増幅回路を経た電流信号(i=Ip・sinωt)は、まず電力演算回路111中の演算回路にある乗算器111aにおいて積算されて、図3の(a)−(2)乗算器後の電力信号waに示す、ゼロ以上の正の交流信号となり、フィルタ回路111bを経ることにより、図3の(a)−(3)フィルタ回路後の電力信号に示す、直流信号となる。これが通常の電力計測値となる。(P=(1/T)∫vidt)(Tは周期)この直流信号の電力値は信号増幅回路111cにて、制御手段112のA/D入力ポートに入力可能なように増幅される。そして信号増幅回路111dを経て大レンジの値は制御手段112の大レンジ用A/D入力ポートに入力される。さらに小レンジの値は信号増幅回路111eを経て制御手段112の小レンジ用A/D入力ポートに入力される。ここで制御手段112に入力された電力値は、記憶手段113に随時記憶される。
【0042】
そして電力演算回路111において、連系点103における電圧検出手段107のU相−O相間電圧値と第1の電流センサ108aからの電流値との積からU相の電力値を演算し、また連系点103における電圧検出手段107のW相−O相間電圧値と第2の電流セ
ンサ108bからの電流値との積からW相の電力値を演算して、それぞれU相およびW相を合算して電力値とする。ここで電流センサ108からの電流値の正負については、順潮流であれば正、逆潮流であれば負として計算される。
【0043】
次に、電力値のゼロ点補正の手順について説明する。図2および図3の(b)電力値のゼロ点補正時の場合において、制御手段112は信号反転手段109に信号を送って動作させることにより、図3(b)−(1)に示すように、電流センサ108からの電流信号をもとに反転電流信号ibを生成出力する。これは1周期の通常電流信号と1周期の反転電流信号から成り、この2周期分を最小単位とし、通常は整数倍で構成される。したがって2周期ずつ合計4周期でもよく、3周期ずつ合計6周期でもよい。
【0044】
ここでは、この最小単位の2周期分について説明するものとする。反転電流信号ibと同じ期間の連系点103における電圧検出手段107の電圧信号vbとを、電力演算回路111中の演算回路にある乗算器111aに入力して積算することにより、図3の(b)−(2)乗算器後の電力信号wbに示す交流信号を得ることになる。
【0045】
この電力信号wbは、1周期の電圧信号と、信号反転手段109を動作させない場合の1周期の通常電流信号を乗算した第1電力および、1周期の電圧信号と、信号反転手段109を動作させた場合の1周期の反転電流信号を乗算した第2電力とで構成される。つまり同じ期間(ここでは1周期ずつ)の第1電力と第2電力で構成され、1周期ずつの場合を最小単位とするものである。したがって、2周期分の第1電力と2周期分の第2電力でもよく、それぞれその整数倍でもよい。そしてこれがフィルタ回路111bを経ることにより、図3の(b)−(3)フィルタ回路後の電力信号に示すように、電力信号が0[W]となる。そして電力演算回路111において、演算する電力のゼロ点を補正する。この時の数値データをゼロ点として制御手段112のメモリに格納するものである。
【0046】
ただし、この数値データが有効な値となるのは、信号積算手段110において反転電流信号ibを積分した値が実質的にゼロとなった場合のみに限る。制御手段112は、常に信号積算手段110において、反転電流信号ib(最小単位としての2周期)の整数倍の信号をトレースして積分し、積分値がゼロかどうかを判断している。需要家内負荷104には、高周波ノイズが発生しやすい、正の半波のみの負荷や負の半波のみの負荷が存在する。その場合は積分してもゼロとはならず、したがって第1電力と第2電力との和もゼロとはならないので、電力演算回路111における電力値のゼロ点補正は無効とすることで区別が可能となる。つまり全波での歪みのない、なめらかな交流電力の場合のみ、積分してゼロとなるので、その場合に限定して、計測電力のゼロ点を補正するように歯止めをかけるものである。
【0047】
そして電力信号が0[W]である場合、電力値のゼロ点補正の一例として、例えば、電力0[W]に対応する数値データが「1050」であったとする。実施の形態では電力値の0[W]に相当する規格値が「1024」であるので、1050−1024=26となる。ここでは数値データ「1」に対応する電力値は「1[W]」に相当するので、26Wずれていることになる。つまり電力が0[W]の状態でも26[W]の順潮流が流れていると認識していることになる。そこで、電力の数値データを「−26」として「1024」が0[W]に相当するように制御手段112のメモリを書き換える。さらにこの0[W]に相当する電力オフセット値を記憶手段113に記憶するものである。
【0048】
また別の場合、電力0[W]に対応する数値データが「990」であったとする。ここでは990−1024=−34となり、電力が0[W]の状態でも34[W]の逆潮流が流れていると認識していることになる。そこで、電力の数値データを「+34」として「1024」が0[W]に相当するように制御手段112のメモリを書き換え、この0[W
]に相当する電力オフセット値を記憶手段113に記憶するものである。
【0049】
そして記憶手段113が記憶している電力値のゼロ点補正の内容に基づいて、電力演算回路111における通常発電時の計測電力の演算を行うものである。
【0050】
上記の補正は、U相−O相間電圧値と第1の電流センサ108aからの電流値との積からのU相の電力値、さらにW相−O相間電圧値と第2の電流センサ108bからの電流値との積からのW相での電力値の両相においてそれぞれ数値データをもち、それぞれ補正を実施するものである。
【0051】
これにより、全波での歪みのない、なめらかな交流電力の場合のみに限定して、計測電力のゼロ点を自動補正できるので常に正確な電力計測ができる。
【0052】
そして、制御手段112は、操作手段114の操作指令に連動して、記憶手段113に記憶された電力値のゼロ点補正の内容、つまり前述の電力オフセット値および電力オフセット値に対応する電力値のうちの少なくとも一方を表示手段115に表示するよう制御するものである。サービスマンやメンテ作業者は、その時点での電力オフセット値やそのオフセット値に対応する電力値を、操作手段114のスイッチ操作により、表示手段115に数値として確認できるので、メンテナンスおよび修理の時に有効である。
【0053】
また、制御手段112は、深夜の時間帯に電力演算回路111における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。「深夜の時間帯」とは12時〜3時、より好ましくは1時〜2時である。深夜の時間帯は消費電力が少なく、電力の変動が小さいから、ゼロ点補正の実行に好ましい。また需要家内負荷104も常時通電されているのは一般的な冷蔵庫等のみで、特殊な負荷、具体的には高周波ノイズが発生しやすい正の半波のみの負荷や負の半波のみの負荷や半波整流している負荷、あるいは波形が変形している負荷が動作している確率が低いので、ゼロ点補正の実行に好ましいと言える。また正の半波と負の半波が微妙に同じではない波形の場合も適当ではない。いかなる場合も信号積算手段110において反転電流信号ibを積分した値が実質的にゼロとなった場合のみに限るものである。したがって「深夜の時間帯」は、全波での歪みのない、なめらかな交流電力におけるゼロ点の補正を実施することが可能となる。
【0054】
また、制御手段112は、発電装置105の起動中に電力演算回路111における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。制御手段112からの起動指令から発電に入るまでの起動中、つまり起動指令後、燃料処理器(図示せず)で点火、昇温を行い、各部の温度条件が整い、発電装置105での発電に移行するまでの間で電力のゼロ点補正をすることにより、発電装置105や直流交流電力変換手段106を制御するために必要な電力情報を事前に取得でき、発電中の計測電力の演算に活用することができる。
【0055】
また、制御手段112は、発電装置105の起動毎に電力演算回路111における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。制御手段112からの起動指令から発電に入るまでの起動中、毎回ゼロ点の補正を実施するので、毎回の発電において正確な電力計測が実施できる。
【0056】
また、制御手段112は、発電装置105が所定期間以上停止した場合に電力演算回路111における電力値のゼロ点補正を行うよう制御するものである。使用者が長期不在などのため、発電システムが長期停止し、その間に電力計測のゼロ点がずれた場合であっても、発電前の起動中にゼロ点の補正ができるので、長期停止後も安心して発電中の正確な電力計測が実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる分散型発電システムは、電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段を設けることで、通常電流信号と、信号反転手段を動作して得られる反転電流信号により演算後の電力値の和をゼロとする。これにより、電力演算回路において演算する電力のゼロ点のずれを補正することで、計測電力のゼロ点を自動補正できるので常に正確な電力計測ができるため、燃料電池発電システム、太陽光発電システム、風力発電システム、太陽熱発電システムなどの分散型発電システム等の用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
101 電力系統
102 分散型発電システム
103 連系点
104 需要家内負荷
105 発電装置
106 直流交流電力変換手段
107 電圧検出手段
108a 第1の電流センサ
108b 第2の電流センサ
109 信号反転手段
110 信号積算手段
111 電力演算回路
112 制御手段
113 記憶手段
114 操作手段
115 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と複数の電線を介して連系する分散型発電システムであって、
直流電力を発電する発電装置と、
前記発電装置が生成した直流電力を交流電力に変換して需要家内負荷に供給する直流交流電力変換手段と、
前記需要家内負荷より系統側の前記電線の電流を検出する電流センサと、
前記電線の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流センサからの電流信号と前記電圧検出手段からの電圧信号とに基づいて計測電力を演算する電力演算回路と、
前記電流センサからの電流信号の正負を反転する信号反転手段と、
前記電流センサからの電流信号を積算する信号積算手段と、
少なくとも前記発電装置と前記直流交流電力変換手段と前記信号反転手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記信号反転手段を動作させない場合の通常電流信号と前記信号反転手段を動作させた場合の反転電流信号とを、前記信号積算手段において互いに同じ期間積算した値が実質的にゼロになる場合に、前記通常電流信号と前記電圧信号とに基づいて演算される第1電力と、前記反転電流信号と前記電圧信号とに基づいて演算される第2電力とを、互いに同じ期間演算し、前記第1電力と前記第2電力との和をゼロにすることにより、前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御する分散型発電システム。
【請求項2】
前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正の内容を記憶する記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正の内容を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段が記憶している電力値のゼロ点補正の内容に基づいて、前記電力演算回路における計測電力の演算を行う請求項1に記載の分散型発電システム。
【請求項3】
前記制御手段に信号を送るための操作手段と、前記制御手段から信号を受けるための表示手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記操作手段の操作指令に連動して、前記記憶手段に記憶された電力値のゼロ点補正の内容を前記表示手段に表示するよう制御する請求項2に記載の分散型発電システム。
【請求項4】
前記制御手段は、深夜の時間帯に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散型発電システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記発電装置の起動中に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御する請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散型発電システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記発電装置の起動毎に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御する請求項5に記載の分散型発電システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記発電装置が所定期間以上停止した場合に前記電力演算回路における電力値のゼロ点補正を行うよう制御する請求項5に記載の分散型発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220330(P2012−220330A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86026(P2011−86026)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】