説明

分散型計算機システム及びその動作制御方法、動作制御装置、端末計算機

【課題】車両内に分散設置される端末計算機と動作制御装置との間を接続するための通信ケーブルが不要で、かつ、各端末計算機にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる分散型計算機システムを提供する。
【解決手段】各車両に設置される無線LANアクセスポイントを介して動作制御装置2に無線で接続されるそれぞれの前記端末計算機4は、自身の車両内における設置位置を特定し、特定した設置位置を動作制御装置2に通知して自身の動作パラメータを取得して動作することで表示制御を行う。一方、動作制御装置2は、端末計算機4の配置パターンを含む列車の編成データに基づいてそれぞれの設置位置に対応する動作パラメータを生成し、端末計算機4からの通知を中継した無線LANアクセスポイントを識別して車両の号車番号を特定し、通知された設置位置に対応する動作パラメータを当該端末計算機4に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両内のドア上部などに設置される表示装置に表示する乗客向けの案内や広告などの内容を、その設置位置に応じてきめ細かく制御するのに好適な、分散型計算機システム及びその動作制御方法、動作制御装置、端末計算機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道などの乗客向け情報サービスとして、車両内の各所にLED(Light Emitting Diode)ディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示装置を設置し、各種案内、ニュース、広告映像などを乗客に提供するシステムが実用化されている。また、乗客の満足度を高めるべく、各表示装置への表示内容を、その設置位置に応じてきめ細かく制御する技術が導入されている。そのような制御を行うためには、それぞれの表示装置を制御する端末計算機に、表示装置の設置位置に応じた表示内容を出力するように動作パラメータを設定する必要があり、この動作パラメータの設定作業を効率的に実施する技術が重要となる。
【0003】
そのような技術として、例えば、特許文献1には、管理装置と車両内に分散設置される複数の端末計算機との間を、LAN(Local Area Network)ケーブルでデイジーチェーン状に接続し、それら各端末計算機が、管理装置からLANケーブルの未使用の信号線を利用して送信される信号に基づいて自身の設置位置を取得することによって、自身の動作を規定する構成情報(動作パラメータ)を自動設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−170989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術を適用するためには、管理装置と車両内に分散設置される端末計算機との間を接続するLANケーブルを、電源ラインや他の信号線と共に、天井裏や壁面内の狭小な空間に敷設する必要があり、配線作業に要する工数が大きくなるという問題があった。さらに、デイジーチェーンの中間にある端末計算機が故障すると、その下流に接続されている端末計算機群を制御できなくなってしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、車両内に分散設置される端末計算機と管理装置(動作制御装置)との間を接続するための通信ケーブルが不要であり、かつ、各端末計算機にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる分散型計算機システム及びその動作制御方法、動作制御装置、端末計算機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、列車を編成する車両内に複数設置される表示装置の表示内容を個別に制御する端末計算機が、前記表示装置に対応付けられて設置され、各車両に設置される無線LANアクセスポイントを介して、前記表示装置に表示させる情報を配信すると共に前記端末計算機の動作を制御する動作制御装置に無線で接続される分散型計算機システムであって、それぞれの前記端末計算機は、自身に対応付けられた前記表示装置の車両内における設置位置を、車両内に設けられる複数の所定位置のなかから特定する位置情報取得手段と、特定した前記設置位置を示す車両内位置情報と自身の端末識別情報とを前記動作制御装置に通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から取得する動作パラメータ取得手段と、取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示装置の表示内容を制御する表示制御手段とを備え、前記動作制御装置は、自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記表示装置の配置パターンとを編成データとして記憶する編成データ記憶部と、前記編成データに基づいて、前記表示装置のそれぞれに対応付けられた端末計算機の表示制御動作を規定する動作パラメータを生成する動作パラメータ群生成手段と、それぞれの前記端末計算機から通知される前記車両内位置情報及び端末識別情報を送信してきた前記無線LANアクセスポイントの識別情報から、前記編成データを参照することによって、当該無線LANアクセスポイントが設置されている車両の号車番号を特定し、特定した前記号車番号と通知された前記車両内位置情報とによって識別される個々の設置位置に対応する前記生成した動作パラメータを当該端末計算機に送信する端末計算機管理手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記の分散型計算機システムにおいて、前記端末計算機は、RFID(Radio Frequency Identification)タグに記録されたID情報を読み取るRFIDタグリーダを備え、それぞれの前記車両内における設置位置を識別するID情報が記録されたRFIDタグが、当該設置位置に設置される前記表示装置に対応付けられた前記端末計算機が備える前記RFIDタグリーダから読み取り可能な位置に貼付されており、前記位置情報取得手段は、前記RFIDタグリーダが読み取った前記RFIDタグに記録されている前記ID情報から前記車両内における設置位置を特定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記の分散型計算機システムにおいて、前記表示装置が一箇所に複数台並設される場合は、前記RFIDタグリーダから読み取り可能な位置に、前記車両内における設置位置を識別するID情報が記録されたRFIDタグと共に、並設される複数台の位置関係を区別するID情報が記録されたRFIDタグが貼付されており、前記位置情報取得手段は、前記RFIDリーダが読み取ったこれら2つのRFIDタグに記録された前記ID情報から、前記車両内の同一箇所に並設されたそれぞれの前記表示装置のさらに詳細な設置位置を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両内に分散設置される端末計算機と動作制御装置との間を接続するための通信ケーブルが不要であり、かつ、各端末計算機にそれぞれの設置位置に応じた表示制御動作を独立して実行させることができる分散型計算機システム及びその動作制御方法、動作制御装置、端末計算機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムの構成例を示す図である。
【図2】車両に搭載される装置の構成とその接続及び配置例とを示す図である。
【図3】進行方向左側と右側とで表示内容が異なる案内画面の表示例である。
【図4】1つの車両に無線LANアクセスポイントを2台設置するときの装置の配置例を示す図である。
【図5】車両への装置の他の配置例を示す図である。
【図6】端末計算機の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7】情報サービス管理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】端末計算機がIPアドレスを取得するまでの動作の流れを示すシーケンス図である。
【図9】端末計算機が動作パラメータを取得して表示制御を行う動作の流れを示すシーケンス図である。
【図10】RFIDタグリーダの動作についての説明図である。
【図11】RFIDタグリーダの読取範囲についての説明図である。
【図12】表示端末が並設される場合の設置位置の識別方法の説明図である。
【図13】位置番号変換テーブルの構成及びデータ例である。
【図14】編成データテーブルの構成及びデータ例である。
【図15】配置パターン定義テーブルの構成及びデータ例である。
【図16】端末計算機を管理するPC管理テーブルの初期状態のデータ例である。
【図17】PC管理テーブルの構成及び端末計算機が登録されたのちのデータ例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両向け分散型計算機システムの構成例を示す図である。図1には、1号車からn号車までのn両(nは1以上の任意の整数)の車両が連結されて編成される列車に搭載された分散型計算機システム10の構成例を示している。
【0013】
図1において、破線の枠は列車を編成する車両を表しており、各車両には、それぞれ無線LANアクセスポイント(以下、AP(Access Point)と略記)3と複数の端末計算機(以下、PC(Personal Computer)と略記)4とが備えられ、この両者の間の通信は無線によって行われる。
【0014】
それぞれのPC4は、車両内のドア上部などに設置されるLEDディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示端末(表示装置)に近接する壁面などに埋め込まれ、この例では、各表示端末(の設置場所)と1対1に対応付けられてその表示内容を個別に制御する計算機である。これらすべてのPC4は、自身に接続されている表示端末に情報サービス用の各種画面を表示させるという同一の機能を有する。ただし、表示端末の仕様や設置位置などに応じて表示内容を変えることができるように、それぞれのPC4は、自身に接続されている表示端末の設置位置に対応して情報サービス管理装置2から配信される所定の動作パラメータによって、各種の表示制御動作を実行できるようにプログラム制御される。これにより、例えば、進行方向右側と左側とで異なる情報を表示させたり、停車駅の階段やエレベータなどの位置を示す案内図を車両毎に変えたり、車両内の位置によって放映する広告映像を変えたりするなどの、きめ細かな表示制御が可能となる。
【0015】
1つの車両に設置される表示端末の数(=PC4の数)は任意であるが、通常は2台(車両の前後両端に設置)から24台(片側6ドアで各ドアの上部に2台並設)の間であることが多く、同じ数の表示端末が設置された車両だけで編成される列車もあるし、異なる数の表示端末が設置された車両を任意に組み合わせて編成される列車もある。図1の例では、1号車にPC#1−1〜PC#1−8の計8台、2号車にPC#2−1〜PC#2−24の計24台のPC4が設置されている。なお、PC#j−kなる標記は、j号車のk番目のPC4を表すものとする。
【0016】
図1に示すように、分散型計算機システム10には、各PC4にIP(Internet Protocol)通信に必要となるIPアドレスなどを割り当てるDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ1と、各PC4にその動作を規定する動作パラメータ並びに情報サービスの提供に必要な各種の情報を配信する情報サービス管理装置2と、車両間を接続するLAN(Local Area Network)5とが備えられる。また、DHCPサーバ1と情報サービス管理装置2と各車両に備えられるAP3とが、LAN5を介して相互に通信可能に接続されることで、PC4を含めた無線LANシステムが構築される。このLAN5には、通常はバス型もしくはループ型などの有線LANを用いるが、PC4を接続する無線LANとは使用する周波数帯域が異なる別方式の無線LANを用いてもよい。なお、DHCPサーバ1は情報サービス管理装置2のなかに実装するようにしてもよい。
【0017】
また、情報サービス管理装置2へは、不図示の列車無線通信手段によって、情報配信センタ70から情報サービスの提供に必要な列車の編成データ、運行管理データ、コンテンツの表示スケジュールなどの各種情報が送信される。
【0018】
図2は、車両に搭載される装置の構成とその接続及び配置例とを示す図である。図2の例は、1号車である車両9にDHCPサーバ1と情報サービス管理装置2とを搭載すると共に、8つのドア91(ドア#1〜ドア#8)の上部の内壁面に各1台ずつ計8台の不図示の表示端末とその制御を行うPC4(PC#1−1〜PC#1−8)とを設置した場合を示している。なお、DHCPサーバ1と情報サービス管理装置2とは、他の任意の車両9に搭載してもよいし、両者を別々の車両9に搭載してもよい。また、図2の例では、車両9のほぼ中央付近の天井裏に1台のAP3(AP#1)を設置した場合を示しているが、1つの車両9に設置するAP3の数は、PC4の設置台数に応じて2台以上に増やすようにしてもよい。
【0019】
また、図2の太線にて示すように、同一の列車内に設置される各PC4と情報サービス管理装置2とを含む各装置は、大もとの電源を共有し同じタイミングで供給電力のオン/オフが行われる各車両9の電源6に接続され、この例では、電源ライン7によりほぼすべて同じタイミングで電源のオン/オフが行われるものとする。また、2つの車両9同士が連結されるときには、電源ライン7及びLAN5用の通信ケーブルも相互に接続されるものとする。
【0020】
ここで、PC4が行う表示制御の動作の概要を説明する。図3は、列車の運行時に車両内の情報サービス用の表示端末に表示される、進行方向左側と右側とで表示内容が異なる案内画面の表示例である。これらは、いずれも列車が次の停車駅に近づいたときに表示される案内画面であり、図3(a)は、ドアが開く側の表示端末に表示される画面の例、図3(b)は、その反対側の表示端末に表示される画面の例である。
【0021】
図3に示すように、運行ガイド表示部61a,61bには、次の停車駅の名前65a,65bを案内するメッセージ、当該表示端末が設置されている自車両の号車番号66a,66b、及び開くドアの方向67a,67bを案内するメッセージなどが表示される。テロップ表示部62a,62bには、列車の運行に伴う案内メッセージなどのほか、ニュースなどのテキストメッセージが次々に右から左方向に移動するように表示される。また、ホーム案内図表示部63a,63bには、次の停車駅のホームにある各種設備の位置を示す案内図が表示され、車両位置表示部64a,64bには、当該表示端末が設置されている自車両の位置が識別可能に図形表示される。
【0022】
図3(a)と図3(b)とを比較して分かるように、同じ列車の同じ車両に設置される表示端末であっても、進行方向左側と右側とでは、画面の構成、表示するメッセージ、案内図などが異なる場合がある。また、同じ列車の同じ進行方向左(右)側に設置される表示端末であっても、自車両の位置によって、表示すべき号車番号や図形などが異なる場合がある。
【0023】
さらには、同じ車両の同じ進行方向左(右)側に設置される表示端末であっても、車両内における設置位置によって流すメッセージや広告の内容を変えたい場合もある。そこで、それぞれの表示端末の表示制御を司る各PC4を、当該表示端末の設置位置に応じて情報サービス管理装置2から配信される動作パラメータに基づいて、各種の表示パターンを切り換えて動作させるようにプログラム制御する。これにより、同一のPC4であっても、それが制御する表示端末の設置位置に応じて、動的に動作を切り換えることが可能となり、表示端末の設置位置に応じたきめ細かい表示制御を行うことができる。
【0024】
次に、1つの車両に無線LANアクセスポイント(AP)3を2台設置するときの装置の配置について説明する。図4は、片側6ドアの1つの車両にAP3を2台設置するときの装置の配置例を示す図であり、図4(a)は、車両の天井裏の閉空間を長手方向に2分割した例、図4(b)は、車両の両側面にそれぞれ無線通信用のダクトを設置した例である。
【0025】
図4(a)の例では、車両の長手方向中央付近の天井裏に電波遮蔽板92を設置することで天井裏の閉空間を2つの天井裏閉空間93に分割して、PC#2−1〜PC#2−6及びPC#2−19〜PC#2−24の計12台がAP#2−1と交信し、PC#2−7〜PC#2−18の計12台がAP#2−2と交信するようにしている。また、図4(b)の例では、車両の両側面に電波遮蔽板92によって覆われた2つの側方ダクト94を設けて、PC#2−1〜PC#2−12の計12台がAP#2−1と交信し、PC#2−13〜PC#2−24の計12台がAP#2−2と交信するようにしている。
【0026】
このように、車両に設置するPC4の数が多いときには、1つの車両にAP3を2台設置することにより、個々のPC4の無線通信のスループットを確保することが望ましい。また、その際には、電波遮蔽板92を利用することなどによって2つに分割した領域間での電波の干渉が発生しないようにすることが好ましい。
【0027】
以上では、主に車両の各ドア毎にそれぞれ1台以上の表示端末を設置する場合について説明してきたが、車両への表示端末の配置方法はこれに限らず、例えば、図5に例示するように、8ドア(片側4ドア)の車両に1つ置きに計4台の表示端末(及びPC4)を設置するようにしてもよい。また、図示は省略するが、表示端末はドアの上部以外に設置してもよいし、さらに、車両の外壁面に埋め込まれている行き先表示用ディスプレイをも表示端末に含めるものとしてもよい。
【0028】
続いて、それぞれの端末計算機(PC)4の構成と機能とについて説明する。
図6は、端末計算機(PC)4の構成例を示す機能ブロック図である。各PC4は、PC識別名及びMAC(Media Access Control)アドレスなどの固有情報を除いて、すべて同一の構成を有する。
【0029】
図6に示すように、PC4は、電源投入検知部41、MACアドレス取得部42、位置情報取得部43、RFIDタグリーダ44、IPアドレス取得部45、動作パラメータ取得部46、端末表示制御部47、表示コンテンツ更新部48、及び無線LAN送受信部49の各処理部と、動作パラメータ記憶部51及び表示コンテンツ記憶部52の各記憶部とを備える。これら各処理部は、PC4が備える不図示のCPU(Central Processing Unit)が、不図示の記憶装置に記憶されている所定のプログラムを不図示の主メモリにロードして実行することによって具現化される。また、各記憶部は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置内に該当する記憶領域を割り当てることによって具現化される。
【0030】
電源投入検知部41は、PC4の電源が投入されたことを検知して、MACアドレス取得部42と位置情報取得部43とを起動する。MACアドレス取得部42は、PC4に搭載されている不図示の無線LANカードに付された固有の識別番号であるMACアドレスを当該無線LANカードから読み取り、読み取ったMACアドレスをIPアドレス取得部45に引き渡す。IPアドレス取得部45は、DHCPサーバ1にMACアドレス取得部42から引き渡されたMACアドレスを通知してIPアドレスを取得するよう無線LAN送受信部49に指示し、無線LAN送受信部49から引き渡されたIPアドレスを動作パラメータ取得部46に引き渡す。
【0031】
位置情報取得部43は、表示端末40を制御するPC4の設置位置に近接して貼付されているRFIDタグ8を読み取るようRFIDタグリーダ44に指示して、RFIDタグリーダ44が読み取ったRFIDタグ8のタグIDを受け取り、受け取ったタグIDに基づいて後記する位置番号を特定し、特定した位置番号を動作パラメータ取得部46に引き渡す。RFIDタグリーダ44は、リーダアンテナを備え、リーダアンテナからRFIDタグ8に電波(質問波)を発信し、RFIDタグ8から送信される応答波からタグIDを受信して、受信したタグIDを位置情報取得部43に引き渡す。
【0032】
動作パラメータ取得部46は、情報サービス管理装置2にIPアドレス取得部45から引き渡されたIPアドレス及び位置情報取得部43から引き渡された位置番号を通知して動作パラメータを取得するよう無線LAN送受信部49に指示し、無線LAN送受信部49から引き渡された動作パラメータを動作パラメータ記憶部51に記憶させる。
【0033】
端末表示制御部47は、動作パラメータ記憶部51に記憶された動作パラメータにしたがって表示端末40に表示させる画面の表示データを生成し、生成した表示データを表示端末40に送信する。また、端末表示制御部47は、情報サービス管理装置2から送信される次駅案内指示などの表示制御情報にしたがって画面の構成や表示内容を切り換えたり、表示コンテンツ記憶部52に記憶された表示スケジュールにしたがって表示コンテンツ記憶部52に記憶された各種の表示コンテンツを表示端末40に表示させたりする。
【0034】
表示コンテンツ更新部48は、無線LAN送受信部49を介して情報サービス管理装置2から送信される表示スケジュールや追加及び更新用の表示コンテンツを受信し、受信した表示スケジュールや表示コンテンツを表示コンテンツ記憶部52に記憶させる。
【0035】
また、無線LAN送受信部49は、不図示の無線LANカードを介して不図示の無線LANアクセスポイント(AP)3と無線で交信することにより、PC4とDHCPサーバ1及び情報サービス管理装置2との間の無線の通信リンクを確立し、IP通信によって情報サービス管理装置2と各種データの送受信を行う。
【0036】
次に、情報サービス管理装置2の構成と機能とについて説明する。
図7は、情報サービス管理装置2の構成例を示す機能ブロック図である。図7に示すように、情報サービス管理装置2は、電源投入検知部21、無線LAN送受信部22、動作パラメータ群生成部23、PC管理部24、表示コンテンツ配信制御部25、表示制御情報配信制御部26、入出力部27、編成データ更新部28、及び情報配信センタ交信部29の各処理部と、PC管理データ記憶部31、編成データ記憶部32、及び配信コンテンツ記憶部33の各記憶部とを備える。これら各処理部は、情報サービス管理装置2が備える不図示のCPUが、不図示の記憶装置に記憶されている所定のプログラムを不図示の主メモリにロードして実行することによって具現化される。また、各記憶部は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置内に該当する記憶領域を割り当てることによって具現化される。
【0037】
電源投入検知部21は、情報サービス管理装置2の電源が投入されたことを検知して、動作パラメータ群生成部23を起動する。動作パラメータ群生成部23は、編成データ記憶部32の編成データテーブル321に記憶されている自列車の編成データ、及び、配置パターン定義テーブル322に記憶されている表示端末40の配置パターンに基づいて、自列車に設置される各PC4に配布すべき動作パラメータ群を生成し、PC管理データ記憶部31に記憶されるPC管理テーブル311の初期設定を行う。編成データテーブル321、配置パターン定義テーブル322、及びPC管理テーブル311の詳細は、図13、図14、図16及び図17を用いて後記する。
【0038】
無線LAN送受信部22は、不図示の無線LANアクセスポイント(AP)3とLAN5(図1参照)を介して交信することにより、PC4とIP通信によって各種データの送受信を行う。なお、情報サービス管理装置2には、予め固定のIPアドレスが割り当てられており、各AP3のIPアドレスは、例えば、列車の編成データの一部として、情報配信センタ70から通知されるものとする。
【0039】
PC管理部24は、無線LAN送受信部22を介して、各PC4から送信されるパラメータ要求を受信し、受信したパラメータ要求に含まれるPC4の位置番号に対応する動作パラメータをPC管理テーブル311から検索して取得し、取得した動作パラメータを当該PC4に返送する。また、受信したパラメータ要求に含まれる当該PC4のPC識別名、MACアドレス、及びIPアドレスをPC管理テーブル311に格納する。
【0040】
表示コンテンツ配信制御部25は、情報配信センタ交信部29を介して情報配信センタ70から送信されるニュースや広告などの各種配信コンテンツを受信し、受信した配信コンテンツを配信コンテンツ記憶部33に格納すると共に、PC管理部24に各PC4への配信コンテンツの配信を依頼する。PC管理部24は、表示コンテンツ配信制御部25から配信を依頼された配信コンテンツを、そのコンテンツの表示を行うすべてのPC4に無線LAN送受信部22を介して送信する。例えば、ニュースの配信を依頼された場合であれば、ニュースを表示するすべてのPC4にそのニュースを送信する。また、配信先が特定された配信コンテンツであれば、該当するPC4だけにそのコンテンツを送信する。
【0041】
表示制御情報配信制御部26は、情報配信センタ交信部29を介して、情報配信センタ70から送信される自列車の位置などの運行管理データを受信し、PC管理部24に各PC4へ次駅案内などの指示を行う表示制御情報を送信するよう依頼する。PC管理部24は、表示制御情報配信制御部26から送信を依頼された表示制御情報を、それに基づいて表示制御を行うすべてのPC4に送信する。
【0042】
入出力部27は、編成データ記憶部32に記憶されている編成データや表示端末40の配置パターンなどの情報を、不図示の入出力機器を用いて乗務員や保守員が確認したり変更したりするための入出力制御を司る。編成データ更新部28は、情報配信センタ70から送信される編成データを受信し、受信した編成データを編成データ記憶部32に格納する。また、入出力部27を介して編成データ記憶部32に記憶されている編成データを変更する操作を受け付け、編成データの更新を行う。また、情報配信センタ交信部29は、情報配信センタ70から列車無線などによって配信される各種情報を受信する。
【0043】
続いて、以上説明した各装置が連携して乗客向けの情報サービスを提供するための動作について詳しく説明する。
図8は、それぞれの端末計算機(PC)4が、IP通信を行うのに必要となるIPアドレスを取得するまでの動作の流れを示すシーケンス図である。以下、図8のシーケンス図に沿って、それぞれのPC4がDHCPサーバ1からIPアドレスを取得するまでの動作の詳細を説明する。
【0044】
まず、電源6が起動され、電源ライン7によって各装置への電力の供給が開始されると、PC4の電源投入検知部41が自装置の電源投入を検知して(ステップS411)、MACアドレス取得部42を起動する。次に、MACアドレス取得部42は、自装置に搭載されている無線LANカードからその固有番号であるMACアドレスを読み込むことによって当該MACアドレスを取得する(ステップS412)。
【0045】
一方、同じく電源が投入されたAP3は、無線LANの規格で定められている所定周期(例えば、100ミリ秒間隔)で自身のMACアドレスなど無線通信を行うために必要な情報を通知するビーコン信号(R11)を送信する(ステップS31)。PC4の無線LAN送受信部49がこのビーコン信号(R11)を検知すると(ステップS413)、当該AP3との間の通信リンクを確立するために自身のMACアドレスや認証情報などを通知するアソシエーション要求(R12)を送信する(ステップS414)。
【0046】
このアソシエーション要求(R12)がAP3によって受信され、必要なクライアント認証が行われた結果(ステップS32)、接続が許可されると、AP3からPC4宛に(PC4のMACアドレスを指定して)接続許可を通知すると共に無線通信を行うときの通信パラメータを通知するアソシエーション応答(R13)が送信される。このアソシエーション応答(R13)を受信したPC4の無線LAN送受信部49が、通知された通信パラメータを無線LANカードに設定することにより(ステップS415)、PC4とAP3との間で無線通信を行うための通信リンク(アソシエーション)が確立し、以後PC4はAP3を介して他の装置と通信できるようになる。
【0047】
PC4とAP3との間のアソシエーションが確立すると、次に、PC4のIPアドレス取得部45は、IPアドレスを取得したい旨と自身のMACアドレスとを通知するブロードキャスト信号であるDHCP DISCOVER(R14)をAP3に送信する(ステップS416)。AP3によって中継されるこのブロードキャスト信号を受信したDHCPサーバ1は、割り当て可能なIPアドレスの候補を1つ選択して(ステップS11)、PC4宛に(PC4のMACアドレスを指定して)そのIPアドレス候補を通知する信号であるDHCP OFFER(R15)を送信する。
【0048】
PC4のIPアドレス取得部45は、無線LAN送受信部49を介して受信されるこのDHCP OFFER(R15)によって通知されたIPアドレス候補を受け入れ(ステップS417)、そのIPアドレス候補を利用したい旨を通知する信号であるDHCP REQUEST(R16)をDHCPサーバ1宛に送信する。AP3によって中継されるこの信号を受信したDHCPサーバ1は、IPアドレス候補として通知したIPアドレスの貸出し処理行い(ステップS12)、貸出しが完了した旨を通知する信号であるDHCP ACK(R17)をPC4宛に送信する。この信号を受信したPC4のIPアドレス取得部45は、当該IPアドレスを自装置のIPアドレスとして設定し(ステップS418)、IPアドレスの取得が完了する。
【0049】
続いて、それぞれのPC4が、取得したIPアドレスを用いて情報サービス管理装置2から自身の動作を規定する動作パラメータを取得して表示制御を行う動作について説明する。図9は、IPアドレスを取得したそれぞれの端末計算機(PC)4が、情報サービス管理装置2から動作パラメータを取得して表示端末40の表示制御を行う動作の流れを示すシーケンス図である。以下、図9のシーケンス図に沿って、各装置の動作を詳細に説明する。
【0050】
前記したように、電源投入検知部41によってPC4の電源が投入されたことが検知されると、位置情報取得部43が起動され、位置情報取得部43は自装置(正確には自装置が制御する表示端末40)の車両内における設置位置を示す位置情報を取得する(ステップS421)。この位置情報の取得動作について、図10〜図13を参照して説明する。
【0051】
車両内における表示端末40の設置位置は、予め車両の種別毎に決められており、この位置情報の取得においては、車両の種別毎に決められている所定の複数の設置位置のいずれに自装置が設置されているかを識別するための位置番号を特定する。これは、前記のように、j号車のk番目のPC4をPC#j−kのように標記するものとすると、kの値を求めることに相当する。
【0052】
各PC4が、その起動時に自身の設置位置を取得するための手段として、本実施形態では、位置番号を特定するためのID情報が記録されたRFIDタグを利用する。そのため、図10に示すように、各PC4にはRFIDタグ8から無線でタグID(ID情報)を読み取るためのリーダアンテナを接続したRFIDタグリーダ44を搭載し、各PC4が所定の位置に設置されて動作するときに形成される読取範囲Aの中に、読み取り対象のRFIDタグ8が入るように、予め車両の壁面95などにその設置位置を特定するためのID情報を記録したRFIDタグ8を貼付しておく。
【0053】
なお、図11に模式的に示すように、それぞれの読取範囲Aは、隣接する他の設置位置を特定するためのRFIDタグ8を読み取ることがないような広さになるように、リーダアンテナから出力する電波の強度や受信感度を事前に調節しておくとよい。また、RFIDタグ8は、車両を形成している鉄やアルミ合金などにも貼付可能な金属対応RFIDタグとすることが好ましい。
【0054】
このように、各車両の種類毎に予め決められているそれぞれの表示端末40の設置位置を識別するために必要なID情報の総数は、基本的には1つの車両に設置される表示端末40の最大数と等しく、例えば、12ドアの車両に1ドア当り3台で最大36台の表示端末40を設置するものとすれば、36種類のID情報が必要となる。
【0055】
使用するID情報の数が増えると、それにともなってRFIDタグ8の製作コストや管理工数なども増えるので、使用するID情報の数は可能な限り少なくすることが望ましい。その1つの方法として、それぞれの設置位置を1つのRFIDタグ8によって識別するのではなく、2つ以上のRFIDタグ8の組合せによって識別することが考えられる。
【0056】
図12は、1つのドアに2台の表示端末40が並設される場合の識別方法を例示したものである。この方法では、ドア#を識別するためのID情報が記録されたドア#IDタグ81と、同じドアの上部に並設されるときの左右の位置を識別するためのID情報が記録された左サブIDタグ82または右サブIDタグ83とを組み合わせて用いる。
【0057】
図12(a)は、並設される2台の表示端末40の設置位置を識別するための左右の読取範囲L,Rに、それぞれドア#IDタグ81と、左サブIDタグ82または右サブIDタグ83との2つを貼付することで、両者を識別可能とする例である。また、図12(b)は、左読取範囲Lにドア#IDタグ81と左サブIDタグ82とを貼付し、右読取範囲Rにはドア#IDタグ81だけを貼付することで、両者を識別可能とする例である。
【0058】
図13は、位置情報取得部43が位置番号を特定するために参照する位置番号変換テーブルの構成及び図12の例に対応したデータ例である。図13に示すように、位置番号変換テーブルには、特定すべきそれぞれの設置位置の位置番号と、それに対応するドア#IDタグ81のID情報であるドア#IDと、左サブIDタグ82または右サブIDタグ83のID情報であるサブIDとを属性としてもつレコードが、特定すべき位置番号の数だけ登録される。位置番号とは、車両内の位置を特定するための番号であり、ここでは便宜的に、車両の各ドアに付される一連番号と左右を表すL(左側)またはR(右側)の文字とを用い、位置番号を「1」、「1L」、「1R」のように標記しているが、これらの位置番号は数字の一連番号であってもよい。また、1つの車両のドアの最大数は12であるものと仮定し、ドア#IDは、ドア番号の順に「id1」、「id2」、・・・、[id12」となっており、左サブIDタグ82のID情報は「id13」、右サブIDタグ83のID情報は「id14」となっているものとする。
【0059】
位置情報取得部43は、RFIDタグリーダ44が読み取ったRFIDタグ8のID情報をこの位置番号変換テーブルの各レコードと照合することにより、対応する位置番号を特定する。例えば、RFIDタグリーダ44が読み取ったRFIDタグ8のID情報が「id1」の1つだけであれば位置番号は「1」、同じくID情報が「id1」と「id13」との2つであれば位置番号は「1L」と特定する。このように、「id1」から「id14」までの14種類のID情報を記録したRFIDタグ8を用いることにより、最大で36個の設置位置が識別可能となる。
【0060】
以上は、サブIDタグのID情報が2つだけの場合であるが、サブIDタグのID情報の数は3以上であってもよく、その場合は、ドア#IDの数とサブIDタグのID情報の数+1とを掛けた値が、識別可能な設置位置の総数となる。
【0061】
図9に戻って説明を続ける。ステップS421にて自装置の車両内における設置位置を示す位置情報を前記の位置番号として取得したのち、動作パラメータ取得部46は、情報サービス管理装置2に取得した位置番号と自身の固有情報であるPC識別名とを通知してパラメータ要求を送信する(ステップS422)。このとき、無線LAN送受信部49は、MACアドレス取得部42によって取得された自装置のMACアドレスと、IPアドレス取得部45によって取得された自装置のIPアドレスとを含んだパラメータ要求(R23)のIPパケットを生成して不図示のAP3に送信し、AP3がこのIPパケットを情報サービス管理装置2に中継送信する。
【0062】
情報サービス管理装置2のPC管理部24は、無線LAN送受信部22を介してIPパケット化されたこのパラメータ要求(R23)を受信すると、編成データテーブル321を参照してこのIPパケットを送信してきたAP3のMACアドレスから、当該AP3(及び当該PC4)が設置されている車両の号車番号を特定して、特定した号車番号と通知された位置番号とによって特定される設置位置に該当するPC管理テーブル311のレコードに、当該PC4から通知されたPC識別名と受信したIPパケットに含まれている当該PC4のMACアドレス及びIPアドレスとを登録する(ステップS22)。続いて、PC管理部24は、当該レコードに対応して生成済みの動作パラメータをPC管理テーブル311から取得して、取得した動作パラメータを含む動作パラメータ(R24)をPC4に送信する(ステップS23)。なお、図9のステップS21については後記する。
【0063】
図14は、編成データ記憶部32に備えられる編成データテーブル321の構成及びデータ例である。図14に示すように、編成データテーブル321には、列車を編成しているそれぞれの車両に対応するレコードが号車番号順に登録される。各レコードは、号車番号、ドア数、PC数、アクセスポイント属性データ、及び配置パターンを属性にもつ。号車番号とは、列車を編成している車両の連結順に各車両に付される一連番号である。ドア数とは、当該車両に設置されている乗降用のドアの数である。PC数とは、当該車両に設置されているPC4の数(=表示端末40の数)である。アクセスポイント属性データとは、当該車両に設置されているAP3の属性データであり、AP3の識別番号、無線通信チャンネル番号、MACアドレス、及びIPアドレスを含む。配置パターンとは、当該車両に表示端末40を配置するパターンの識別名である。
【0064】
図14のデータ例は、8ドアの1号車には、パターンAによって8台のPC4が設置されると共に、識別番号が「AP#1」、無線通信チャンネル番号が「1」、MACアドレスが「0x---abf0」、IPアドレスが「192.168.1.11」であるAP3が1台設置されており、12ドアの2号車には、パターンBによって24台のPC4が設置されると共に、識別番号が「AP#2−1」と「AP#2−2」とである2台のAP3が設置されており、8ドアの3号車には、パターンCによって4台のPC4が設置されていることなどを示している。
【0065】
図15は、編成データ記憶部32に備えられる配置パターン定義テーブル322の構成及びデータ例である。図15に示すように、配置パターン定義テーブル322には、車両に表示端末40を配置するパターンのそれぞれに対応するレコードが登録される。各レコードは、配置パターン、配置、左右、前後、及び表示データ種別を属性にもつ。配置パターンとは、当該配置パターンの識別名である。配置は、表示端末40が単独設置と並設とのいずれであるかを示す。左右は、車両の進行方向左側と右側とに設置された表示端末40に表示する画面同士が、図3の(a)と(b)との関係のように対称であるか、同一であるかを示す。前後は、表示端末40の前後方向の設置位置によって表示する画面がそれぞれ個別となるのか、同一であるのかを示す。表示データ種別は、表示端末40に表示される表示データの種別(表示コンテンツ)の一覧を示す。
【0066】
図15のデータ例は、パターンAでは、各設置位置に単独設置される表示端末40に、号車番号、運行ガイド、テロップ、及びホーム案内図が、進行方向左側と右側とで対称となるように表示され、パターンCでは、各設置位置に単独設置される表示端末40に、すべて同一のテロップが表示されることを示している。また、パターンBでは、各設置位置に並設される表示端末40の一方に、号車番号、運行ガイド、及びホーム案内図が、進行方向左側と右側とで対称となるように表示され、もう一方に、進行方向左側と右側とでは同じであって前後方向の設置位置によって異なる個別の広告、天気予報、テロップが表示されることを示している。
【0067】
図16は、情報サービス管理装置2のPC管理部24が情報配信センタ70から列車の編成データ(R21)を受信したときにPC管理データ記憶部31に生成されるPC管理テーブル311の初期状態のデータ例である。図16に示すように、初期状態のPC管理テーブル311には、当該列車を編成する各車両に設置されるそれぞれのPC4に対応するレコードが号車番号及び位置番号順に登録される。各レコードは、号車番号、位置番号、及びポインタ値を属性にもつ。
【0068】
号車番号とは、当該PC4が設置される車両の号車番号である。位置番号とは、当該PC4に対応付けされた表示端末40の車両内における設置位置を識別するための番号であり、図13で説明した位置番号と同じものである。図16のデータ例は、1号車には計8台のPC4が8つの設置位置に対応してそれぞれ単独設置され、2号車にはそれぞれの設置位置に対応して2台のPC4が並設される場合を示している。
【0069】
ポインタ値には、当該PC4に配信すべき動作パラメータのリストのアドレスを示すポインタ値が登録される。ここで、例えばp(A,1)なる標記は、前記した配置パターンが「パターンA」であるPC4に配信すべき1番目の動作パラメータのリストへのポインタ値を表している。情報配信センタ70から受信した列車の編成データは、編成データ更新部28によって編成データテーブル321(図14)に登録されており、PC管理部24は、この編成データテーブル321と配置パターン定義テーブル(図15)とを参照することによって、各車両の各設置位置に対応するそれぞれのPC4に配布すべき動作パラメータを特定し、特定した動作パラメータのリストへのポインタ値をPC管理テーブル311に登録する。
【0070】
例えば、図14及び図15のデータ例のように、8ドアの1号車の各ドアの上部に表示端末を単独設置し、進行方向右側と左側とで対称な画面を表示させる場合には、図16のデータ例のように、進行方向左側に対応する号車番号が「1」で位置番号が「1」〜「4」の4つのレコードには、1号車の左側の画面を表示させるための動作パラメータのリストへのポインタ値を登録し、続く位置番号が「5」〜「8」の4つのレコードには、1号車の右側の画面を表示させるための動作パラメータのリストへのポインタ値を登録する。
【0071】
これにより、例えば、次駅で開く乗降ドアが進行方向左側であるとき、左右区分の値が「左側」であるPC#1−1〜PC#1−4には「こちらのドアが開きます」という表示を行わせ、左右区分の値が「右側」であるPC#1−5〜PC#1−8には「反対側のドアが開きます」という表示を行わせるというように、動作パラメータによってそれぞれのPC4の表示制御動作を制御することができる。
【0072】
同様に、次の2つのレコードには、2号車のドア番号が「1」であるドアの上部に並設されたときの進行方向左側の画面と右側の画面とをそれぞれ表示させるための動作パラメータのリストへのポインタ値を登録する。
【0073】
そして、図9のステップS22では、パラメータ要求を送信してきたPC4の号車番号と位置番号とに対応するレコードをPC管理テーブル311から検索して、当該レコードにそのPC4のPC識別名などを登録し、続くステップS23では、当該レコードのポインタ値から動作パラメータのリストを取得して、取得した動作パラメータをそのPC4に送信する。
【0074】
このような動作を、パラメータ要求を送信してきたそれぞれのPC4毎に繰り返し実行することにより、図17に例示するように、PC登録後のPC管理テーブル311のそれぞれのレコードには、それに対応するPC4のPC識別名、MACアドレス、及びIPアドレスが追加登録されることになる。なお、図17のデータ例では、号車番号が「2」で位置番号が「1L」であるレコードついては、まだPC識別名などが未登録(「―」)となっているため、このレコードに対応する表示端末40の表示制御は行えないが、PC識別名などが登録済みの他のレコードに対応する表示端末40の表示制御はこれとは独立して実行される。
【0075】
再び図9に戻って説明を続ける。PC4の動作パラメータ取得部46は、無線LAN送受信部49を介して動作パラメータ(R24)を受信すると、受信した動作パラメータを動作パラメータ記憶部51に格納し、端末表示制御部47は、動作パラメータ記憶部51に格納された動作パラメータを参照して自身の動作を制御することによって、表示コンテンツ記憶部52から必要な表示スケジュールやコンテンツを取得して表示端末40に表示させる初期表示データを生成する(ステップS423)。これにより、生成された初期画面の表示データP1は表示端末40に送信され、初期画面が表示される。
【0076】
また、必要に応じて、情報配信センタ70から情報サービス管理装置2に送信される列車の編成データ(R21)と表示コンテンツや表示スケジュールを含む配信コンテンツ(R22)とは、表示コンテンツ配信制御部25によって受信され、配信コンテンツ記憶部33にデータが保存される(ステップS21)。
【0077】
これとは別に、情報配信センタ70から情報サービス管理装置2へは、列車の位置情報などの運行管理データ(R25)が送信され、情報サービス管理装置2の表示制御情報配信制御部26は、受信した運行管理データに基づいて、例えば次駅案内のテロップを流すよう指示する表示制御情報の配信をPC管理部24に依頼する。依頼を受けたPC管理部24は、編成データテーブル321(図14)、配置パターン定義テーブル(図15)、PC管理テーブル311(図17)、動作パラメータのリスト(図16)などを参照することによって、その表示制御情報を配信すべき対象のPC4を抽出して、抽出したPC4のそれぞれにその表示制御情報(R26)を配信する(ステップS24)。これにより、例えばテロップ表示を行わない表示端末40に対応するPC4への不要な表示制御情報の配信を抑止する。
【0078】
この表示制御情報(R26)を受信したPC4の端末表示制御部47は、動作パラメータ記憶部51格納されている動作パラメータを参照して自身の動作を制御することによって、受信した表示制御情報に対応した表示データの更新を行い(ステップS424)、これにより、例えば次駅案内のテロップの表示データP2を生成して表示端末40に送信する。以後同様にして、新たな運行管理データ(R27)に基づいて、情報サービス管理装置2からPC4への表示制御情報(R28)の送信が行われ(ステップS25)、PC4が受信した表示制御情報に対応した表示データの更新を行うことで(ステップS425)表示データPiを生成して表示端末40に送信する。
【0079】
また、情報配信センタ70から送信され、配信コンテンツ記憶部33に保存された例えば最新のニュースや天気予報などの配信コンテンツは、表示コンテンツ配信制御部25によって、その情報を必要とするそれぞれのPC4に更新コンテンツ(R29)として適宜配信される。この更新コンテンツ(R29)を受信した各PC4の表示コンテンツ更新部48は、受信したコンテンツや表示スケジュールを表示コンテンツ記憶部52に保存する(ステップS426)。
【0080】
以後、端末表示制御部47は、表示コンテンツ記憶部52に保存されている最新の表示スケジュールにしたがって更新されたコンテンツを表示するための表示データ更新を行う(ステップS427)。これにより、更新された表示データPjを生成して表示端末40に送信する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る分散型計算機システムによれば、車両に設置される表示端末を制御するそれぞれの端末計算機を接続するためのLANケーブルを敷設する必要がなくなる。また、それぞれの端末計算機は、他の端末計算機の状態には依存せずに独立して動作するので、一部の端末計算機が故障して動作不能となった場合においても、他の端末計算機は継続してサービスを提供することができる。さらに、それぞれの端末計算機は、自身が設置された位置を自分で特定し、その位置に対応した動作を行うための動作パラメータを動作制御装置から取得して動作するので、それぞれの端末計算機の動作パラメータを予め設定しておく必要がなく、端末計算機の初期の設置作業や入れ替え作業などが容易となる。
【0082】
以上にて実施形態の説明を終えるが、本発明の実施の態様はこれに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、前記した各処理部は、その一部または全部を、集積回路等によりハードウェアで実現してもよい。また、列車の編成データは情報配信センタから配信されるものとしたが、記憶媒体を用いて編成データを情報サービス管理装置に読み込ませるようにしてもよい。運行管理データは情報配信センタから配信されるものとしたが、運行管理システムから直接受信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 DHCPサーバ
10 分散型計算機システム
2 情報サービス管理装置(動作制御装置)
21 電源投入検知部
22 無線LAN送受信部
23 動作パラメータ群生成部(動作パラメータ群生成手段)
24 PC管理部(端末計算機管理手段)
25 表示コンテンツ配信制御部
26 表示制御情報配信制御部
27 入出力部
28 編成データ更新部
29 情報配信センタ交信部
3 無線LANアクセスポイント(AP)
31 PC管理データ記憶部
311 PC管理テーブル
32 編成データ記憶部
321 編成データテーブル
322 配置パターン定義テーブル
33 配信コンテンツ記憶部
4 端末計算機(PC)
40 表示端末(表示装置)
41 電源投入検知部
42 MACアドレス取得部
43 位置情報取得部(位置情報取得手段)
44 RFIDタグリーダ
45 IPアドレス取得部
46 動作パラメータ取得部(動作パラメータ取得手段)
47 端末表示制御部(表示制御手段)
48 表示コンテンツ更新部
49 無線LAN送受信部
5 LAN
51 動作パラメータ記憶部
52 表示コンテンツ記憶部
6 電源
7 電源ライン
70 情報配信センタ
8 RFIDタグ
81 ドア#IDタグ(RFIDタグ)
82 左サブIDタグ(RFIDタグ)
83 右サブIDタグ(RFIDタグ)
9 車両
91 ドア
92 電波遮蔽板
93 天井裏閉空間
94 側方ダクト
95 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車を編成する車両内に複数設置される表示装置の表示内容を個別に制御する端末計算機が、前記表示装置に対応付けられて設置され、各車両に設置される無線LANアクセスポイントを介して、前記表示装置に表示させる情報を配信すると共に前記端末計算機の動作を制御する動作制御装置に無線で接続される分散型計算機システムであって、
それぞれの前記端末計算機は、
自身に対応付けられた前記表示装置の車両内における設置位置を、車両内に設けられる複数の所定位置のなかから特定する位置情報取得手段と、
特定した前記設置位置を示す車両内位置情報と自身の端末識別情報とを前記動作制御装置に通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から取得する動作パラメータ取得手段と、
取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示装置の表示内容を制御する表示制御手段と
を備え、
前記動作制御装置は、
自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記表示装置の配置パターンとを編成データとして記憶する編成データ記憶部と、
前記編成データに基づいて、前記表示装置のそれぞれに対応付けられた端末計算機の表示制御動作を規定する動作パラメータを生成する動作パラメータ群生成手段と、
それぞれの前記端末計算機から通知される前記車両内位置情報及び端末識別情報を送信してきた前記無線LANアクセスポイントの識別情報から、前記編成データを参照することによって、当該無線LANアクセスポイントが設置されている車両の号車番号を特定し、特定した前記号車番号と通知された前記車両内位置情報とによって識別される個々の設置位置に対応する前記生成した動作パラメータを当該端末計算機に送信する端末計算機管理手段と
を備える
ことを特徴とする分散型計算機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散型計算機システムにおいて、
前記端末計算機は、RFIDタグに記録されたID情報を読み取るRFIDタグリーダを備え、
それぞれの前記車両内における設置位置を識別するID情報が記録されたRFIDタグが、当該設置位置に設置される前記表示装置に対応付けられた前記端末計算機が備える前記RFIDタグリーダから読み取り可能な位置に貼付されており、
前記位置情報取得手段は、前記RFIDタグリーダが読み取った前記RFIDタグに記録されている前記ID情報から前記車両内における設置位置を特定する
ことを特徴とする分散型計算機システム。
【請求項3】
請求項2に記載の分散型計算機システムにおいて、
前記表示装置が一箇所に複数台並設される場合は、前記RFIDタグリーダから読み取り可能な位置に、前記車両内における設置位置を識別するID情報が記録されたRFIDタグと共に、並設される複数台の位置関係を区別するID情報が記録されたRFIDタグが貼付されており、
前記位置情報取得手段は、前記RFIDタグリーダが読み取ったこれら2つのRFIDタグに記録された前記ID情報から、前記車両内の同一箇所に並設されたそれぞれの前記表示装置のさらに詳細な設置位置を特定する
ことを特徴とする分散型計算機システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の分散型計算機システムにおいて、
前記動作制御装置は、それぞれの前記端末計算機に送信した前記動作パラメータに基づいて、当該端末計算機に対応付けられた表示装置に表示される情報を選択して当該端末計算機に配信する
ことを特徴とする分散型計算機システム。
【請求項5】
列車を編成する車両内に複数設置される表示装置のそれぞれに対応付けられ、前記表示装置の表示内容を制御する端末計算機が、各車両のそれぞれに設置される無線LANアクセスポイントを介して、列車の運行に関する情報、ニュース、広告などを配信すると共に前記端末計算機の動作を制御する動作制御装置に無線で接続される分散型計算機システムの動作制御方法であって、
前記動作制御装置は、
自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記表示装置の配置パターンとを編成データとして記憶する編成データ記憶部を備えており、
前記動作制御装置が、前記編成データに基づいて、当該列車に設置されている表示装置のそれぞれに対応する端末計算機の表示制御動作を規定する動作パラメータを生成するステップと、
前記端末計算機のそれぞれが、自身に対応付けられた前記表示装置の車両内における設置位置を、車両内に設けられる複数の所定位置のなかから特定するステップと、
前記端末計算機のそれぞれが、特定した前記設置位置を示す車両内位置情報を前記動作制御装置に通知するステップと、
前記動作制御装置が、それぞれの前記端末計算機から通知される前記車両内位置情報を送信してきた前記無線LANアクセスポイントを識別することによって、当該端末計算機が設置されている車両の号車番号を特定し、特定した前記号車番号と通知された前記車両内設置位置とによって識別される個々の設置位置に対応して生成された前記動作パラメータを当該端末計算機に送信するステップと、
前記端末計算機のそれぞれが、前記動作制御装置から送信された前記動作パラメータを受信し、受信した前記動作パラメータにしたがって前記表示装置の表示内容を制御するステップと
を含むことを特徴とする分散型計算機システムの動作制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の分散型計算機システムの動作制御方法において、
前記端末計算機が備えるRFIDタグリーダから読み取り可能な位置に、前記車両内における設置位置を識別するID情報が記録されたRFIDタグが貼付されており、
前記端末計算機のそれぞれが、車両内における設置位置を特定する前記ステップでは、前記RFIDタグに記録された前記ID情報を前記RFIDタグリーダで読み取ることで前記車両内における設置位置を特定する
ことを特徴とする分散型計算機システムの動作制御方法。
【請求項7】
列車を編成する車両内に複数設置される表示装置のそれぞれに対応付けられ、前記表示装置の表示内容を制御する端末計算機に、各車両のそれぞれに設置される無線LANアクセスポイントを介した無線通信によって、列車の運行に関する情報、ニュース、広告などを配信すると共に前記端末計算機の動作を制御する分散型計算機システムの動作制御装置であって、
自身が搭載されている列車を編成している車両の号車番号ごとに、当該車両に設置されている前記無線LANアクセスポイントの識別情報と、前記表示装置の配置パターンとを編成データとして記憶する編成データ記憶部と、
前記編成データに基づいて、当該列車に設置されている表示装置のそれぞれに対応する前記端末計算機の表示制御動作を規定する動作パラメータを生成する動作パラメータ群生成手段と、
それぞれの前記端末計算機から通知される車両内における設置位置の情報を送信してきた前記無線LANアクセスポイントを識別することによって、当該端末計算機が設置されている車両の号車番号を特定し、特定した前記号車番号と通知された前記車両内における設置位置とによって識別される個々の設置位置に対応して生成された前記動作パラメータを当該端末計算機に送信する端末計算機管理手段と
を備える
ことを特徴とする分散型計算機システムの動作制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の分散型計算機システムの動作制御装置において、
それぞれの前記端末計算機に送信した前記動作パラメータに基づいて、当該端末計算機に対応付けられた表示装置に表示される情報を選択して当該端末計算機に配信する
ことを特徴とする分散型計算機システムの動作制御装置。
【請求項9】
列車を編成する車両内に複数設置される表示装置のそれぞれに対応付けられ、前記表示装置の表示内容を制御する端末計算機であって、
各車両のそれぞれに設置される無線LANアクセスポイントを介して、列車の運行に関する情報、ニュース、広告などを配信すると共に前記端末計算機の動作を制御する動作制御装置に無線で接続され、
自身に対応付けられた前記表示装置の車両内における設置位置を、車両内に設けられる複数の所定位置のなかから特定する位置情報取得手段と、
特定した前記設置位置を示す車両内位置情報と自身の端末識別情報とを前記動作制御装置に通知して、自身の動作を規定する動作パラメータを前記動作制御装置から取得する動作パラメータ取得手段と、
取得した前記動作パラメータにしたがって動作することによって前記表示装置の表示内容を制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする端末計算機。
【請求項10】
請求項9に記載の端末計算機において、
前記端末計算機が備えるRFIDタグリーダから読み取り可能な位置に、前記車両内における設置位置を識別するID情報が記録されたRFIDタグが貼付されており、
前記位置情報取得手段は、前記RFIDタグに記録された前記ID情報を前記RFIDタグリーダで読み取ることで前記車両内における設置位置を特定する
ことを特徴とする端末計算機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−76681(P2012−76681A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225696(P2010−225696)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】