説明

分散型EL素子およびそれを用いた照光式スイッチユニット

【課題】各種電子機器の入力操作部等に使用される分散型EL素子およびそれを用いた照光式スイッチユニットに関し、薄型のものを提供する。
【解決手段】仮基材21上に、順次重ねて印刷形成されたショートバー接点31、絶縁層42、背面電極層43、誘電体層44、発光体層45、光透過性電極層46、保護用絶縁層47を、使用時に一体で上記仮基材21上から剥がして基材レスの分散型EL素子41とし、それをショートバー接点31に対応する櫛歯接点61を備えた配線板71に貼り合わせて照光式スイッチユニット51に構成するようにしたため、薄型構成のものが容易に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部等に使用される分散型EL素子およびそれを用いた照光式スイッチユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下に、従来の分散型EL素子(以下EL素子と表わす)およびそれを用いた照光式スイッチユニット(以下、スイッチユニットと表わす)について図7および図8を用いて説明する。
【0003】
図7は、従来のEL素子の断面図であり、当該従来のEL素子1は、同図に示すように、厚さ約100μmの透明樹脂フィルムからなる絶縁基材2の裏面にスパッタ法等の薄膜形成技術によって透明電極層3を形成し、その上に発光体層4、誘電体層5、背面電極層6、絶縁層7を順次積層して構成されている。なお、図7等の断面図は、判り易くするため、厚み方向側を拡大した表記としている。
【0004】
上記構成の絶縁基材2付きのEL素子1は、透明電極層3と背面電極層6との間に駆動回路(図示せず)を介して交流電圧または直流パルス電圧を印加すると、発光体層4内の蛍光体が発光し、その光をEL素子1の発光面側となる絶縁基材2側に透過させて照光させるものであった。
【0005】
上記構成の絶縁基材2付きのEL素子1を用いた従来のスイッチユニット8の断面図を図8に示す。
【0006】
同図に示すように、当該スイッチユニット8は、下面に可動接点10が印刷形成された樹脂フィルムよりなる厚さ約100μmの上絶縁基板9と、上面に固定接点12が印刷形成された樹脂フィルムよりなる下絶縁基板11とが、可動接点10と固定接点12間に所定の間隔を保って対向するように、スペーサ13の上下に各々粘着固定されて構成されたメンブレンスイッチ部14を有している。
【0007】
そして、メンブレンスイッチ部14とは独立した駆動回路を有する上記絶縁基材2付きのEL素子1(総厚約0.3mm)が、上記メンブレンスイッチ部14上に位置決め配置され、さらに、そのEL素子1の上部には、スペーサ18を介して表面シート17が配されている。そして、上記メンブレンスイッチ部14における個々のスイッチ部の位置に合わせて、表面シート17の下面に粘着材16で押ボタン15が粘着固定されている。押ボタン15の下端面は、EL素子1上に当接しており、それらで従来のスイッチユニット8は構成されている。
【0008】
上記構成の従来のスイッチユニット8は、表面シート17の上から指などで押し下げ操作をすると、その下面部分に配された押ボタン15が下がってEL素子1を押圧していき、押圧を受けた部分の基材2付きのEL素子1が部分的に撓んでいくと共に、その下方に配されたメンブレンスイッチ部14における上絶縁基板9も同様に部分的に撓んでいく。これにより、上絶縁基板9の可動接点10が押し下げられて、その下面が下絶縁基板11の固定接点12に当接することにより、可動接点10と固定接点12とが電気的接続状態のスイッチON状態となる。
【0009】
そして、上記操作力を除くと、上絶縁基板9や基材2付きのEL素子1は自らの復元力で元の位置に戻って、図8に示したスイッチOFF状態に戻るものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−106754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、機器の小型薄型化が進展する中で、上記構成のEL素子1やそれを用いたスイッチユニット8への要望として、特に薄型化への要望が高く、本出願人は、上記要望対応のために、分散型EL素子を用いて構成される照光式スイッチユニットの薄型化構造の検討や提案などを行っている。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、厚み方向の薄型化が図れる構成とした分散型EL素子およびそれを用いた照光式スイッチユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有する。
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明は、印刷後剥離可能な仮基材上に、印刷により順次、ショートバー接点、絶縁層、背面電極層、誘電体層、発光体層、光透過性電極層が重ねて形成され、使用時に上記積み重ね形成された各機能層を一体で上記仮基材上から剥がして使用する構成とした分散型EL素子としたものであり、分散型EL素子としての機能層部分を仮基材から一体で剥がして使用する構成としたため、従来構成のものに対しEL素子の絶縁基材分に相当する厚みの薄型化が図れた状態で使用できるものが実現できるという作用を有する。また、上記仮基材から剥がすと、ショートバー接点が露出するため、それに適合する固定接点を備えた配線板に上記接点どうしを対向させるようにして配するのみで、薄型のスイッチ部が構成でき、しかも機器への装着前までは、上記ショートバー接点部は仮基材で保護された状態に維持できるので、高品質のものが容易に構成できるという作用も有する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、絶縁層と背面電極層の間に、印刷形成されたシールド層と第2の絶縁層とをさらに有するものであり、ELから発生するノイズや静電気が、ショートバー接点を用いて構成されるスイッチ部側に漏洩しにくいものにできるという作用を有する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、ショートバー接点の周囲に、印刷により構成した粘着材層を備えたものであり、その粘着材層を用いて、ショートバー接点に対応する櫛歯接点が構成された配線板等に貼り合わせるという少ない工数のみで、当該分散型EL素子の下方に薄型のスイッチ部が配設されたものに構成できるという作用を有する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明において、光透過性電極層の上面に、印刷形成された光透過性の保護用絶縁層を有するものであり、光透過性電極層の保護が図れると共に、照光スイッチユニットとして組み込んだ際、押圧操作後に、保護用絶縁層による復元動作力の補強作用も得られるという作用を有する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明において、光透過性電極層の上部における所定部分以外の箇所に光不透過性の印刷層が形成されたものであり、所望部分のみが照光できる薄型構成のものが得られるという作用を有する。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の分散型EL素子を仮基材から剥離し、ショートバー接点に対応する櫛歯接点を備えた配線板に対し、上記接点どうしが対向状態になるように配して構成した照光式スイッチユニットとしたものであり、薄型のものを容易に実現できるという作用を有する。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項3記載の分散型EL素子を仮基材から剥離し、ショートバー接点に対応する櫛歯接点を備えた配線板に対し、絶縁スペーサを介在させて上記接点どうしが対向状態になるように、上記分散型EL素子の下面に露出した粘着材層を上記絶縁スペーサに粘着させて構成した照光式スイッチユニットであり、絶縁スペーサとして、絶縁フィルムを所定形状に打ち抜き形成したものや配線板上に一体形成されたものを介在させて、ショートバー接点と櫛歯接点とを対向配置させると、各機能層のみの積み重ね構成とされた当該分散型EL素子であっても、スイッチ接点部間の間隔が安定して維持されたものにでき、しかも当該分散型EL素子に一体形成され、仮基材から剥がすと露出する粘着材層を用いて、絶縁スペーサへの粘着固定を行う当該構成のものであれば、その粘着固定に際する作業工数も少なくて済むという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の分散型EL素子およびそれを用いた照光式スイッチユニットは、剥離可能な仮基材上に、積み重ね構成している分散型EL素子の各機能層を一体で仮基材から剥がして基材レスで使用する構成であると共に、上記仮基材上にあたる当該EL素子の下面側にショートバー接点を一体形成し、上記引き剥がし状態で、そのショートバー接点が露出する構成であるため、引き剥がした当該EL素子を、対応する配線板に装着するのみで薄型の照光式スイッチユニットを容易に構成できるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0023】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態による仮基材上に形成されたショートバー接点付きの分散型EL素子(以下、EL素子と記載する。)の断面図、図2は、同EL素子が仮基材上に所定ピッチで構成された状態を示す斜視図である。なお、図1を含め、以下の各断面図においても、判り易くするため、従来同様に厚み方向側を拡大した表記としている。
【0024】
同図において、21は、上面が剥離処理されたPETなどからなるフープ状の仮基材であり、そのフープ状の長手方向に所定ピッチで、上面側に、ショートバー接点31とEL素子41を構成する各機能層がスクリーン印刷法などによって重ね印刷されて構成されている。
【0025】
その量ね印刷部分の個々の構成について詳細に説明すると、仮基板21の剥離処理された上面に重ねて、所定形状に設定されたショートバー接点31が、導電ペーストを用いて印刷形成されていると共に、ショートバー接点31の外周から所定間隔を空けた周囲部分には、ショートバー接点31を含むようにしてリング状に粘着材層32が印刷形成されている。
【0026】
そして、42は、ショートバー接点31および粘着材層32上面を覆うように形成された絶縁層で、ショートバー接点31および粘着材層32が形成された箇所以外の絶縁層42下面部分は、仮基材21の上面に重ねて形成されている。
【0027】
また、その絶縁層42上に重ねて、背面電極層43、誘電体層44、発光体層45、光透過性電極層46、光透過性の保護用絶縁層47がスクリーン印刷で順次積み重ねて各々印刷形成されている。なお、各機能層における詳細な説明は省略する。
【0028】
当該EL素子41は、上記のように仮基材21上面に印刷形成された絶縁層42および、それより上方に印刷形成された各機能層で構成され、その動作としては、背面電極層43と光透過性電極層46との間に駆動回路(図示せず)を介して交流電圧または直流パルス電圧を印加して、発光体層45内の蛍光体を発光させ、その光を光透過性の保護用絶縁層47側に透過させて照光させる構成のものである。
【0029】
そして、上記構成の仮基材21上に構成されたショートバー接点31付きのEL素子41は、使用時において、仮基材21からショートバー接点31を含む各機能層のみが積み重なった一体状態で引き剥がして基材レス状態で使用する。このとき、仮基材21は、上面側に剥離処理が施されているため、上記引き剥がし時における作業性は良好である。
【0030】
上記引き剥がし後のショートバー接点31付きのEL素子41を用いると、薄型構成の照光式スイッチユニット(以下、スイッチユニットと記載する。)を容易に構成することができ、続いて、そのスイッチユニットについて、図3の断面図および図4の分解斜視図を用いて説明する。
【0031】
同図に示すように、当該スイッチユニット51は、仮基材21から引き剥がしたショートバー接点31付きのEL素子41(総厚は、略100μm程度)を、ショートバー接点31に対応する櫛歯接点61が上面に設けられた配線板71に重ね合わせて構成される。
【0032】
その配置としては、ショートバー接点31と櫛歯接点61とが上下方向で所定間隔を維持する対向状態で位置を合わせ、EL素子41の下面に露出したリング状の粘着材層32の下面を、配線板71上に配された絶縁スペーサ72上に貼り合わせて構成する。なお、図3の断面図においては、判り易い記載とするために、上記櫛歯接点61を模式的に図示している。
【0033】
そして、上記粘着材層32は、個々のショートバー接点31毎に、周囲を囲むリング状で予め形成してあり、かつEL素子41を仮基材21から剥がすと露出する構成としてあるので、その貼り付け作業などは良好に行うことができる。また、その絶縁スペーサ72の高さ設定を適宜行うことにより、各機能層のみの積み重ね構成とされる当該EL素子41であっても、ショートバー接点31と櫛歯接点61との間の接点間隔が安定して維持されたものにできる。
【0034】
なお、絶縁スペーサ72としては、図3に示すように、櫛歯接点61に応じた位置が開口状態に形成された絶縁フィルムそのものを配線板71上に位置決め配置したものとしても良いし、絶縁ペーストなどで配線板71上に一体形成したもの等であってもよい。なお、その絶縁フィルムそのもので構成した絶縁スペーサ72の場合には、櫛歯接点61の周囲を囲むように、その下面を配線板71上に粘着固定して防塵性を向上させる構成とすることが好ましい。
【0035】
そして、上記櫛歯接点61は、一つのショートバー接点31に対し、二つもしくはそれ以上の独立した配線部分からの延出部が各々櫛歯状に形成され、かつそれらの櫛歯状部分61Aどうしを電気的独立状態で並設した構成のものである。
【0036】
なお、ショートバー接点31も、粘着材層32と同様に、上述構成のスイッチユニット51に組み込まれる前までは、仮基材21の上面で覆われた形態であるため、これらのショートバー接点31と粘着材層32に対し、余分な塵埃の付着などが少なく、高品質で防塵性に優れた個々のスイッチ部を備えたスイッチユニット51に容易に構成できる。
【0037】
また、当該EL素子41における絶縁層42の下面側に直接露出状態で配されたショートバー接点31を、個々のスイッチ部における対向接点の一方として構成できるため、スイッチユニット51の薄型化にも寄与できる。
【0038】
次に、以上のように構成された本発明によるEL素子41を用いたスイッチユニット51の動作について説明する。
【0039】
まず、EL素子41の背面電極層43と光透過性電極層46間に所定電圧を印加すると、上述したように発光体層45の蛍光体が発生し、その光は、当該スイッチユニット51の上方にあたる保護用絶縁層47側から透過して照光される。なお、その発光色の設定は、発光体層45に分散させる蛍光体の種類などを適宜設定したり、光透過性電極層46または保護用絶縁層47に対し、光透過性を維持しつつ着色するなどの方法を用いると所望の発光色のものにできる。
【0040】
次に、ショートバー接点31の配設箇所にあたるEL素子41の上面部分に対し、図5の断面図に矢印で示すように、上方から指などで押し下げ操作を行うと、当該箇所が部分的に下方に撓む。このとき、EL素子41の各層は、スクリーン印刷によって形成しているため、樹脂分を多く含有し、操作性などは良好である。また、個々のスイッチ部の接点部間隔として20〜100μmなどの短ストロークのものに設定しておけば、EL素子41の各機能層への負担が軽減される。
【0041】
そして、上記押し下げ操作に伴って下方に下がったショートバー接点31が、櫛歯接点61に接触して、電気的独立状態で配設されている櫛歯状部分61A間を電気的に接続させスイッチON状態とする。
【0042】
その操作力を除くと、EL素子41の撓んだ部分が、自らの復元力で元の上方位置に戻り、ショートバー接点31が櫛歯状部分61Aから離れ、櫛歯接点61は、櫛歯状部分61A間が電気的独立状態のスイッチOFF状態に戻る。
【0043】
なお、上記構成のように、光透過性電極層46の上方に保護用絶縁層47を配したものとすると、押し下げ操作時において光透過性電極層46が保護できる。また、保護用絶縁層47を形成しておくと、押圧操作後における復元力の補強効果も得られ好ましい。さらには、保護用絶縁層47に表示等を設けておくと、操作性向上にもつながる。
【0044】
なお、EL素子41の各機能層を構成するバインダー用の樹脂としては、所望の輝度などのEL特性が得られると共に、上記スイッチング時における動作耐久性なども併せ持つべく材料選択をすることが重要である。また、上記操作後におけるEL素子41の復元特性も、上記樹脂の依存度合いが大きいので、これも上記樹脂の選定条件として考慮する必要がある。
【0045】
以上のように、当該スイッチユニット51は、EL素子41自体が、基材のない各機能層のみの積み重ね構成の薄型で、かつ個々のスイッチ部を構成する対向接点の一方をEL素子41の下面に配設したものを用いて構成するものであるため、薄型構成のものが容易に実現できる。
【0046】
また、ショートバー接点31と粘着材層32は、EL素子41のスイッチユニット51への組み込み前まで仮基材21上面で覆われた保護状態であるため、それらへの塵埃などの付着も大きく低減でき、スイッチユニット51とした際に、個々のスイッチ部として防塵性などに優れたものに構成できる。また、仮基材21上面を剥離処理した面として、その上面にショートバー接点31と粘着材層32を構成したものを用いるため、上記EL素子41の引き剥がし後におけるショートバー接点31と粘着材層32の表面状態も良好な状態が維持され、薄型で高品質な個々のスイッチ部が容易に構成されたものにできる。
【0047】
なお、保護用絶縁層47として、所定部分のみを光透過性のものとし、それ以外の残部を光不透過性の印刷層で形成すると所望箇所のみが照光可能なものに構成できる。また、保護用絶縁層47の形成箇所は任意の箇所であってもよく、個々のスイッチ部に応じた箇所に対し、保護用絶縁層47を形成しない構成とする場合には、絶縁体のボタンなどを介在させてスイッチ操作が可能な構成とすればよい。このときには、光透過性電極層46上を上記ボタンで直接操作する構成となるため、当該ボタンにおける光透過性電極層46との当接面を、例えば大きな曲率の球面状などの形状にしておくことが好ましい。
【0048】
そして、本発明によるEL素子41は、上記構成のみに限られるものではなく、例えば、静電対策を施したものなどへの応用展開を図ることも可能である。
【0049】
その構成事例としては、図6の断面図に示すように、上述の図1のEL素子41に対し、シールド層82と第2の絶縁層83をさらに印刷により形成したEL素子81の構成とすればよい。なお、上述したEL素子41と同一構成部分は、同一符号を付す。
【0050】
さらに、同図を用いて詳述すると、当該構成のEL素子81は、仮基材21の上面に形成された絶縁層42の上方に重ねて銀などの良導電性の導電ペーストを用いてスクリーン印刷でシールド層82を全面に設け、かつ、そのシールド層82上に重ねてスクリーン印刷で絶縁ペーストを用いて第2の絶縁層83を全面で設けている。その第2の絶縁層83上に、上述した背面電極層43、誘電体層44、発光体層45、光透過性電極層46、保護用絶縁層47が順次重ねてスクリーン印刷で形成されている。
【0051】
その他の部分は、上述のEL素子41の構成と同じであるため説明を省略する。また、当該EL素子81の使用状態も上述のEL素子41と同じで、EL素子81自身を仮基材21から一体で引き剥がし、それをショートバー接点31に応じた櫛歯接点61を設けてある配線板71に貼り合わせてスイッチユニットが構成できることなども上述のものと同様である。
【0052】
そして、当該EL素子81は、シールド層82を有する構成であるため、上記スイッチユニットとして組み込んだ際に、そのシールド層82の一端を配線板71のアース部に電気的に接続させておくと、EL素子81側から流入する静電気などをアースに落とす構成にでき、EL素子81の下方に構成される個々のスイッチ部側への静電気の漏洩などがなくせる。
【0053】
また、上記のように、シールド層82を背面電極層43よりも下側の配置位置に設けておくと、EL素子81が駆動される際のノイズなども含んでアースに落とすことができ好ましい。
【0054】
なお、本発明によるEL素子は、上述したように使用時に基材レスの構成にでき薄形化のメリットがあるが、その基材分の絶縁介在物が少なくなる分、当該EL素子の下方に構成される個々のスイッチ部に外部からの静電気などの影響が加わることも考慮され、その対策を個々のスイッチ部で行うようにしてもよいが、当該EL素子81であれば、その対策を容易に講じることができる。
【0055】
なお、上記EL素子81を用いて構成したスイッチユニットのスイッチング動作状態についても、上述のスイッチユニット51の動作と同様であるため詳細な説明は省略するが、印刷形成されたシールド層82や第2の絶縁層83は、樹脂分をも含むため、上記スイッチング動作時におけるEL素子81の復元力の補強効果も増強されたものとなる。
【0056】
なお、当該シールド層82付きのEL素子81であっても、その使用状態としては、仮基材21から各機能層のみが積み重なった一体状態で剥がして基材レス状態で使用するものであるため、静電対策が講じられた薄型のスイッチユニットが容易に実現できる。
【0057】
そして、当該EL素子における他の変形事例としては、上記EL素子41や81に対し、多色発光などが可能なように第2の発光体層などをスクリーン印刷で付加形成したものなどとしてもよく、それを用いることによって、付加した機能層に応じた特性を有する薄型のスイッチユニットを構成することができる。
【0058】
なお、上記には粘着材層32をEL素子41,81に一体形成した事例について詳述したが、EL素子側に粘着材層を形成しない構成としてもよい。この場合には、仮基材から引き剥がしたEL素子を、両面テープなどを用いて、配線板や絶縁スペーサに貼り合わせればよい。また、同様にショートバー接点31もEL素子に一体形成していない構成に展開することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる分散型EL素子およびそれを用いた照光式スイッチユニットは、剥離可能な仮基材上に、積み重ね構成としているEL素子の各機能層を一体で仮基材から剥がして使用する構成とし、しかも上記引き剥がし状態で、ショートバー接点が露出する構成としてあるため、剥がした当該EL素子を、対応する配線板に配するのみで、薄型の照光式スイッチユニットが実現できるという効果を有し、各種電子機器の入力操作部等を構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態による仮基材上に形成されたショートバー接点付きの分散型EL素子の断面図
【図2】同分散型EL素子が仮基材上に所定ピッチで構成された状態を示す斜視図
【図3】同分散型EL素子を用いて構成した照光式スイッチユニットの断面図
【図4】同分散型EL素子と配線板の組み合わせ前の分解斜視図
【図5】同動作状態を示す断面図
【図6】同EL素子の変形事例を示す断面図
【図7】従来のEL素子の断面図
【図8】同分散型EL素子を用いて構成した照光式スイッチユニットの断面図
【符号の説明】
【0061】
21 仮基材
31 ショートバー接点
32 粘着材層
41,81 分散型EL素子
42 絶縁層
43 背面電極層
44 誘電体層
45 発光体層
46 光透過性電極層
47 保護用絶縁層
51 照光式スイッチユニット
61 櫛歯接点
61A 櫛歯状部分
71 配線板
72 絶縁スペーサ
82 シールド層
83 第2の絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷後剥離可能な仮基材上に、印刷により順次、ショートバー接点、絶縁層、背面電極層、誘電体層、発光体層、光透過性電極層が重ねて形成され、使用時に上記積み重ね形成された各機能層を一体で上記仮基材上から剥がして使用する構成とした分散型EL素子。
【請求項2】
絶縁層と背面電極層の間に、印刷形成されたシールド層と第2の絶縁層とをさらに有する請求項1記載の分散型EL素子。
【請求項3】
ショートバー接点の周囲に、印刷により構成した粘着材層を備えた請求項1記載の分散型EL素子。
【請求項4】
光透過性電極層の上面に、印刷形成された光透過性の保護用絶縁層を有する請求項1記載の分散型EL素子。
【請求項5】
光透過性電極層の上部における所定部分以外の箇所に光不透過性の印刷層が形成された請求項1記載の分散型EL素子。
【請求項6】
請求項1記載の分散型EL素子を仮基材から剥離し、ショートバー接点に対応する櫛歯接点を備えた配線板に対し、上記接点どうしが対向状態になるように配して構成した照光式スイッチユニット。
【請求項7】
請求項3記載の分散型EL素子を仮基材から剥離し、ショートバー接点に対応する櫛歯接点を備えた配線板に対し、絶縁スペーサを介在させて上記接点どうしが対向状態になるように、上記分散型EL素子の下面に露出した粘着材層を上記絶縁スペーサに粘着させて構成した照光式スイッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−59670(P2006−59670A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240472(P2004−240472)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】