説明

分散性医薬組成物

(a)水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、(b)マイクロクリスタリンワックス、及び(c)薬学的に許容できる非水性担体を含み、かつ、ビヒクル中に安定的に分散された抗菌上有効な量の抗菌物質を有するビヒクルを含有する、医薬組成物を提供する。該組成物は、乳産生動物への乳房炎又は乳房の他の疾患の治療及び/又は予防用の乳房内注入による投与及び耳の感染の治療及び/又は予防用の耳の投与に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗菌剤を含有する安定な医薬組成物に関し、具体的には体液に容易に分散性である組成物に関する。本発明は、そのような組成物の調製方法、及び組成物の液体含有器官への投与を含む乳産生動物の乳房又は耳などの液体含有器官の細菌感染により引き起こされる疾患の治療及び/又は予防方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
乳房炎は、ほとんどの場合が細菌感染によって引き起こされる乳産生動物(例えば、乳牛)の乳腺の炎症である。細菌は、動物の乳頭管を介して進入し、急性、臨床型、あるいは潜在性乳房炎を引き起こすことができる。135を超える生物がウシ乳房炎の原因となる病原体として実証されている。病原体の3つの主要な群は、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、及びグラム陽性桿菌である。衛生、環境因子、及び乳の高生産量に由来する代謝の乱れが合わさって乳房炎の発症に好ましい状態が作り出される。乳房炎と関連する体細胞数の増加は、感染と正に相関し、乳の産生と負に相関する。感染した乳牛は、しばしば、群れから取り除いて絶たなければならない。疾患を正しく治療しない限り、乳房炎はしばしば生涯にわたって乳牛を冒し、極端な場合には、動物は死んでしまうほど重度の感染に至ることもある。感染率は、典型的な群では平均10%〜30%であり、1頭あたりの損失は、1頭あたり年間185ドル〜250ドルの範囲である。ウシ乳房炎は乳業にとって経済上費用が最もかかる疾患であり、損失は米国だけでも年間20億ドルと見積もられる。これらの損失の大部分は、乳の産生の減少に因るものである。
【0003】
乳産生動物での乳房炎の予防及び治療用の抗生物質を含有する組成物の乳房内投与は周知である。そのような投与に好適ないくつかの組成物は、水性基剤のビヒクル中で製剤化される。
【0004】
例えば、英国特許出願第2,273,655号は、乳房内使用のための懸濁水溶液中に不溶性抗生物質を含有する乳房炎治療用の組成物を開示している。
【0005】
国際特許公開公報第WO95/31180号は、水性基剤中に抗生物質クロキサシリンベンザチンを含有する組成物を開示し、乳房内投与用注射器中の乳頭封印剤組成物をさらに開示している。
【0006】
欧州特許出願第0797988号は、乳房内投与に有用な抗菌剤を含有する水性ゲル形態の乳房炎の予防及び治療用の獣医用組成物を開示している。
【0007】
しかしながら、多くの抗生物質の化学的安定性は、水性基剤の組成物では大きく制限される。したがって、油を基剤とした乳房炎の治療及び/又は予防用の製剤が多数開発されてきた。
【0008】
英国特許出願第1,456,349号は、鉱油、又は不乾性、半乾性、若しくは乾性植物油、又は乾性及び半乾性植物油の混合物以外のそれらの混合物、並びに12〜20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和モノカルボン酸から得られる0.5重量%〜5重量%の脂肪酸エステル、及びグリセリン、ポリエチレングリコール、1〜12個の炭素原子を有する一価又は二価アルコール、又は200〜6000の分子量を有するポリエチレングリコールを含有するゲル化ビヒクル中に分散された抗乳房炎薬物の組成物を開示している。そのような組成物は、短い搾乳外時間(milkout time)を提供すると言われている。
【0009】
欧州特許出願第0058015号は、許容できる担体中にイソキサゾリルペニシリン及びリファンピシンを含有する乳房内製剤を開示している。この製剤は、細胞内ブドウ球菌を実質的に排除すると言われている。
【0010】
Daleyらによる米国特許第5,342,612号は、相乗作用量又は安全量の水性界面活性剤を腫瘍壊死因子と組み合わせて含有する組成物を記載し、該界面活性剤は、ステロール、n−ドデシルグルコシド、デカノイルn−メチルグルカミド、ドデシルB−D−マルトシド、又はオクタノイルn−メチルグルカミドである。そのような組成物は、廃棄される乳を最小限にして、乳房炎用の有効な治療を提供すると言われている。
【0011】
Dowrickによる米国特許第4,073,920号は、8〜10個の炭素原子を含有する脂肪酸のトリグリセリド又はポリエチレングリコールジエステルを含有する油状ビヒクル中に半固体合成ペニシリンの懸濁液を含有する乳房内組成物を開示している。そのような組成物は、短い搾乳外時間並びに良好な安定性及び貯蔵期間を提供すると言われている。
【0012】
Szentmiklosiらによる米国特許第5,064,815号は、5〜30%のプリマイシン及び95〜70%のN−メチル−2−ピロリドンを含有するプリマイシン含有コロイド状ゲル基剤に関する。
【0013】
国際特許公開公報第WO88/01504号は、薬学的に許容できるビヒクル及び乳房感染に対して活性な物質を含有する第1の投与量単位並びに活性物質(該活性物質の粒子は、崩壊可能な膜内にマイクロカプセル化されている)の任意選択による第2の投与量単位を含有する乳房内注入を開示している。
【0014】
国際特許公開公報第WO87/03876号は、ベンザチンセファロチン及び獣医学的に許容できる担体を含有する乳房障害及び角結膜炎治療用の獣医用組成物を開示している。
【0015】
英国特許出願第2,273,443号は、抗菌薬及びポリエチレンゲルを含有する封印剤を含有する乳房炎治療用の組成物を開示している。
【0016】
英国特許出願第2,273,441号は、抗菌薬及び重金属塩を含むゲル基剤を含有する封印剤を含有する乳房炎治療用の組成物を開示している。
【0017】
英国特許出願第1,089,523号は、疎水性かつ粘稠な又はゲルの基剤中に抗生物質を含有し、平均粒子サイズが50ミクロン未満である固体かつ細粒かつ生理学的に無害の非ゲル化水溶性化合物を少なくとも10重量%さらに含有する組成物を開示している。
【0018】
Reuter&Tsukによる米国特許第4,011,312号は、グリコール酸及び乳酸の低分子量ポリエステルのマトリクス中に分散された抗菌剤からなり、かつ、乳頭管への挿入用の円柱状坐剤として成形された乳房炎治療用の持続性放出剤形を開示している。
【0019】
英国特許第1,589,917号は、クラブラン酸メチルエーテルの結晶性ナトリウム塩及び薬学的に許容できる担体を含有する組成物を開示している。薬物の高い組織レベルが投与後に生ずると言われている。
【0020】
欧州特許出願第0271306号は、油及びゲル化剤を含有する疎水性の油状ビヒクル中に分散された粒子形態の抗菌薬(該抗菌薬の少なくとも65%は0〜5ミクロンの範囲のサイズを有する)を投与することを含む乳房障害の治療方法を開示している。薬物の持続性放出が達成されると言われている。
【0021】
Rhodesによる米国特許第4,172,138号は、任意選択によりネオマイシンを含む徐放基剤中の限定された溶解性を有するペニシリン塩の注入を開示している。
【0022】
Parizeauによる米国特許第3,636,194号は、抗生物質、植物油、乳中での油の分散を促進するための天然レシチンリン脂質材料のアルコール可溶性分画(該リン脂質は、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミン及びそれらの混合物からなる群から選択され、油中に少なくとも0.25%の量で存在する)を含有する乳房内注入による乳房炎治療用の組成物を開示している。そのような組成物は、乳への速やかな分散及び短い搾乳外時間を提供すると言われている。
【0023】
英国特許出願第1,181,527号は、活性物質及び薬学的に許容できる油基剤を含有する乳房炎治療用の組成物(該組成物は、乳中での組成物の分散を促進するためのアルコール可溶性材料から実質的に全てなるリン脂質材料を含有する)を開示している。
【0024】
欧州特許出願第0222712号は、ポリオキシエチレン化セチルアルコール及びステアリルアルコールをともに用いたパルミチン酸及びステアリン酸のトリグリセリドの混合物からなる油中に分散され、かつ、鉱物、植物、合成又は混合抽出物の油状媒体中に保持された1つ以上の抗菌剤を含有する組成物を開示している。そのような組成物は、乳房中での抗菌剤の放出を速め、その生物学的電位を増大し、搾乳外時間を減少すると言われている。
【0025】
ガッテホセ社(Gattefosse Corporation)のラブラフィル(Labrafil)製品パンフレット(注記:OL0050/第5版)は、外耳道でのラブラフィル(登録商標)M−1944CSの特徴を論じたValette(1957)による論文からの抜粋を含む。同論文は、ゲンチアナ紫と混合したラブラフィル(登録商標)M−1944CSを乳牛の乳頭に注射することを伴った実験を記載している。ラブラフィル(登録商標)は乳房柔組織部位の表面全体を湿らせ、乳房後方の神経節に達することが示された。
【0026】
非水性エーロゾル乳腺用炎製剤は、以下で個々に引用する特許に開示されている。
【0027】
米国特許第3,135,658号
【0028】
米国特許第,3,144,386号
【0029】
米国特許第3,347,743号
【0030】
カナダ特許第670,254号
【0031】
英国特許第980,282号
【0032】
さらに、水分散性の両親媒性油は、乳房炎の乳房内治療及び/又は予防用に特に開発されたものではない多くの医薬組成物の調製で利用されてきた。
【0033】
欧州特許出願第0982035号は、ポリエチレングリコール、天然植物油トリグリセリド及びポリアルキレンポリオールのエステル交換反応生成物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油製品、及びトリアセチンを含有する親水性担体媒体中にシクロスポリンを含有するアルコールなしの透明溶液を開示している。
【0034】
国際特許公開公報第WO00/48571号は、N−ベンゾイル−スタウロスポリン、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリソルベートからなる群から選択される界面活性剤、並びに共同界面活性剤としてのエステル交換反応したエトキシ化植物油を含有する自発的分散性の経口投与用組成物を開示している。
【0035】
Tyleらによる米国特許第5,314,685号は、少なくとも1つの親油性の薬学的活性剤を可溶化している少なくとも1つの親水性ビヒクルを含有する無水親水性相を調製し、少なくとも1つの疎水性ビヒクルと部分的に混和性である少なくとも1つの油状成分を含有する油相を調製し、油相を無水親水性相と合わせて無水製剤を形成することによる、無水製剤の製造方法を開示している。
【0036】
欧州特許第0356325号は、25%の量の水溶性に乏しい活性剤及び少なくとも1つのセルロースポリマーでゲル化された少なくとも1つのグリセリドを含有する経口、局所、又は非経口投与用の医薬組成物を開示している。
【0037】
国際特許公開公報第WO96/06598号は、薬物、非クロロフルオロ炭素噴射剤、及びポリグリコール化グリセリド又はその誘導体を含有するエーロゾル送達用の医薬組成物を記載している。
【0038】
米国特許第5,614,491号は、シクロスポリン、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸モノエステル、及び一価及び/又は多価アルコールを含有する経口及び非経口投与用の液体製剤に関する。
【0039】
国際特許公開公報第WO99/61025号は、ピペリジン物質Pアンタゴニストを含むマイクロエマルジョン予備濃縮物を開示している。
【0040】
米国特許第6,054,136号は、有効成分、脂肪酸エステル、及びグリセリドの混合物からなる親油性相、界面活性剤、共界面活性剤、並びに親水性相を含有するマイクロエマルジョン形成可能な組成物を開示している。
【0041】
国際特許公開公報第WO99/56727号は、水溶性に乏しい活性剤、有効な量の低HLB油成分、及び約10〜20のHLBを有する少なくとも1つの界面活性剤から本質的になる界面活性剤系を含有し、かつ、少量の親水性溶媒系を含有するかあるいは親水性溶媒系を実質的に欠く、自己乳化マイクロエマルジョン又は乳剤予備濃縮物組成物を開示している。
【0042】
欧州特許出願第1004294号は、酸化窒素供与化合物、粘膜付着性化合物、及び水を添加した際にマイクロエマルジョンを形成することが可能な乳化剤を含有する実質的に無水の医薬組成物を開示している。
【0043】
欧州特許出願第0265044号は、自己免疫疾患治療用の(Nva)2−シクロスポリン組成物を開示している。
【0044】
Cavanakによる米国特許第4,388,307号は、活性単環式ペプチド、並びに、トリグリセリド及びポリアルキレンポリオールの非イオン性エステル、飽和脂肪酸トリグリセリド、及び向上した物理特性及び吸収特性を有するモノグリセリド又はジグリセリドの少なくとも1つを含有する医薬組成物を開示している。
【0045】
Gao et al. (1995) in Pharmaceutical Research 12 (6), 857-868, "Controlled release of a contraceptive steroid from biodegradable and injectable gel formulations: in vitro evaluation" and "Controlled release of a contraceptive steroid from biodegradable and injectable gel formulations : in vivo evaluation"による2つの文献は、レボノルゲストレル、ラブラフィル(登録商標)M−1944CS、及びグリセリルパルミトステアレートを含有するゲルの製剤を記載している。
【0046】
耳の状態を治療するために耳投与に好適であると言われている抗菌剤及び抗炎症剤を含有する製剤は、以下で個々に引用する特許及び公表物に開示されている。
【0047】
米国特許公開公報第2002/142999号
【0048】
Cagleらによる米国特許第6,395,746号
【0049】
Cagleらによる米国特許第6,440,964号
【0050】
Cagleらによる米国特許第6,509,327号
【0051】
国際特許出願第WO01/89495号
【0052】
国際特許出願第WO01/89496号
【0053】
欧州特許第0592348号
【0054】
上記の特許及び文献を参照により本明細書に取り入れる。
【0055】
乳産生動物での乳房炎を治療及び/又は予防するための乳房内投与を意図した組成物及び耳感染を治療するための耳投与用の組成物に最も汎用されているパッケージング容器及び送達器具は、酸素透過性プラスチック材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど、及びそれらの混合物から構成される。抗乳房炎製剤及び耳感染治療及び予防用組成物のための酸素透過性パッケージング容器及び送達器具の使用は、酸化的分解が起こり易い成分、例えば、活性な薬物又は賦形剤を含有する組成物の長期にわたる化学的及び/又は物理的安定性について深刻な問題をもたらす。
【0056】
上記で引用した参照は乳房炎及び他の疾患状態の治療用の組成物を多数開示しているが、酸素透過性容器中にパッケージングされた酸化的分解が起こり易い薬学的に活性な物質を含有する組成物の拡張された化学的及び/又は物理的安定性の問題にはいずれも対処していない。上記の教示に関わらず、乳房内注入による乳房炎の治療及び予防で用いる先行技術組成物よりも有利な以下の点を1つ以上有する医薬組成物が未だ当該技術分野で必要とされている:(a)特に組成物が酸化的分解が起こり易い薬学的に活性な物質を含む場合、酸素透過性の容器及び送達器具中にパッケージングしたときでさえも拡張された化学的及び/又は物理的安定性、(b)非常に広範な感染性生物に対する有効性、(c)有効な薬物レベルを感染部位で達成するための乳及び乳房液体中での速やかな分散性、(d)泌乳期の乳牛について短い搾乳外時間、(e)ゼロ日の肉解体処理停止期間、(f)乾乳期の乳牛の治療後の出産後における短い搾乳留保時間、及び(g)投与後に刺激が最小限か全くない。
【発明の開示】
【0057】
発明の概要
上記の有利な特性のいくつか又はすべてを有する新規な医薬組成物を開発した。したがって、(a)水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、(b)マイクロクリスタリンワックス、及び(c)薬学的に許容できる非水性担体を含むビヒクルを含有し、かつ、該ビヒクルが該ビヒクル中で安定的に分散された抗菌上有効な量の抗菌物質を有する、医薬組成物を提供する。
【0058】
一実施態様では、抗菌物質は酸化的分解が起こり易く、組成物は酸素透過性の容器又は送達器具にパッケージングされたときに拡張された化学的及び/又は物理的安定性を示す。そのような組成物は、例えば、乳産生動物での乳房炎又は乳房の他の疾患の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与することができ、非常に広範な感染性の生物に有効である。
【0059】
新規な抗乳房炎組成物は、水性液体中で低い界面張力を有し、それにより慣用の油を基剤とした製剤と比較して乳及び乳房液体中での組成物の分散性が増加する。これにより、組成物が乳房全体に速やかに分布することとなり、それにより抗菌物質が感染組織に早く到達することが可能となり、有効なレベルの抗菌物質が感染部位で提供される。水性液体中の組成物の界面張力により、液体中で組成物が分散及び拡散するのに必要なエネルギー及び組成物中の懸濁粒子が油/乳又は油/乳房液体の界面境界を横断するのに必要なエネルギーが決定される。
【0060】
組成物は、好適に短い搾乳外時間を生ずるものであることが好ましい。泌乳期の乳牛での搾乳外時間は、乳房炎治療の処置から売りに出せる乳の産生再開までの期間である。組成物の投与後、乳がヒトの消費に好適であると判断する前には、乳中の活性物質の濃度を保険機関に受け入れられるレベルまで低下させなければならない。好適に短い搾乳外時間は、乳房炎の急な発生によって生ずる酪農業者の金銭的損失を少なくする。
【0061】
組成物は、子孫に抗生物質の残留物を残すことなく、乾乳期の乳牛の治療後の出産後における短い搾乳留保時間を提供するものであることが好ましい。
【0062】
組成物は、ゼロ日の肉解体処理停止期間を提供するものであることが好ましい。この特性により酪農家が治療した乳牛をいつでも処分することが可能となり、乳房炎治療後に特定の期間乳牛を飼って餌を与える必要はなくなり、財政上有利であるので、この特性は特に重要である。
【0063】
あるいは又はさらに、本発明の組成物は耳感染の治療及び/又は予防に有用であり、その目的のため、該組成物をヒト、コンパニオン動物、ウマ、家畜などの外耳道への注入により投与する。そのような組成物は、非常に広範な感染性生物に対して有効である。
【0064】
したがって、上記の医薬組成物は耳感染の治療及び/又は予防用に提供され、該組成物部は水性液体中で低い界面張力を有し、それにより慣用の組成物と比較して耳の蝋質湿性環境中での組成物の分散性が増加する。外耳道の粘膜及び蝋を含有する液体の全体にわたる組成物の速やかな分布が得られることにより、抗菌物質が感染組織に早く到達することが可能となり、有効なレベルの抗菌物質が感染部位で提供される。そのような医薬組成物は、耳の炎症性粘膜のための保護コーティングも生ずる。
【0065】
そのような組成物は、耳中での蝋沈着物の溶解を助けることが好ましく、したがって抗菌物質のより良好な透過が可能になる。
【0066】
本発明の組成物は、慣用の油及び水性組成物と比較して、例えば向上した組成物再懸濁性による向上した物理的安定性を有することが好ましい。本発明の組成物は、ある種の薬物の綿状化を引き起すことが示されており、それによって再分散性が向上し、懸濁液のケーキングの問題及び通常の効力より弱いかあるいは有効でない用量の可能性がある送達が排除される。
【0067】
本発明の組成物は、投与後に刺激が最小限か全くないことが好ましい。
【0068】
本発明の医薬組成物の調製方法を提供する。該方法は、水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、マイクロクリスタリンワックス、薬学的に許容できる非水性担体、及び抗菌物質を任意の好適な順序で混合し、本明細書中に記載される拡張された化学的及び/又は物理的安定性を有する組成物を提供することを含む。
【0069】
本明細書中に記載した組成物を器官の生来の外側開口部を介して被検体の液体含有器官へ投与することを含み、そのような投与の際に組成物が液体に分散する、被検体での細菌感染の治療又は予防の治療学的方法も提供する。例えば、投与が乳頭管を介した注入又は注射による場合には、器官は乳産生動物の乳房であることができる。あるいは、投与が外側の耳道を介した注入又は注射による場合には、器官は耳であることができる。
【0070】
したがって、一実施態様では、本明細書中で提供する組成物の乳房内注入を含む、乳産生動物での乳房の感染性疾患、例えば、乳房炎の治療及び/又は予防用の方法を提供する。
【0071】
より具体的には、本明細書中で提供する組成物を例えば注入又は注射によって動物の乳房へ乳房内投与することを含む、乳産生動物での乳房炎感染部位への抗菌物質の標的化送達を行う方法を提供する。
【0072】
別の実施態様では、本明細書中で提供する組成物の耳への注入又は注射を含む、被検体での耳の感染性疾患の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0073】
より具体的には、本明細書中に記載された組成物の被検体の耳への注入又は注射を含む、被検体での耳感染部位への抗菌物質の標的化送達を行う方法を提供する。
【0074】
本発明は、当該技術分野における長年のいくつかの問題に対する解決法を提供し、従前技術の組成物よりも有利な点を1つ以上有する。本発明の他の特徴、利点、及び利益は、は、以下に続く説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
本発明の詳細な説明
本発明は、水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、マイクロクリスタリンワックス、及び薬学的に許容できる非水性担体を含むビヒクルを含有し、かつ、該ビヒクルが該ビヒクル中で安定的に分散された抗菌上有効な量の抗菌物質を有する、医薬組成物を提供する。「エタノール不溶性」との用語は、両親媒性油が20℃でエタノールに本質的に不溶性であることを意味する。
【0076】
本発明の特定の実施態様では、抗菌物質は酸化的分解が起こり易い。この実施態様によれば、組成物は、酸素透過性の容器又は送達器具中にパッケージングされたときでさえ拡張された化学的及び/又は物理的安定性を示す。本明細書中の「拡張された化学的及び/又は物理的安定性」との用語は、同じ抗菌物質を同じ濃度で含有する参照組成物よりも本発明の組成物がより大きい化学的及び/又は物理的安定性を有することを意味する。この関連における「参照組成物」は、両親媒性油及びマイクロクリスタリンワックスの一方又は双方を欠くが他の点では本発明の組成物と同様の組成物を意味する。
【0077】
酸素透過性の容器又は送達器具は、限定するものではないが、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、及び特にポリオレフィンのポリマー及びコポリマーを含むが任意の好適な熱可塑性材料で作成することができる。ポリオレフィンには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリペンテン、それらのコポリマーなど、及びそれらの混合物が含まれる。
【0078】
乳房内投与用の組成物は、筋状管を介して乳腺に直接に押し出すことを可能とする乳頭挿入用のカニューレノズルを備える注射器に一般的にパッケージングされる。薬物粒子がカニューレノズル中で沈降して、ノズルのつまりが生じ、組成物の押し出しが不完全になってしまうこと防ぐため、乳房内懸濁液製剤を厚くしたビヒクル中に一般に調製する。
【0079】
セファロスポリンは、多くがグラム陽性及びグラム陰性細菌の双方に対して広域スペクトル活性を有する抗菌物質のクラスである。
【0080】
セファロスポリンセフチオフルの乳房内懸濁液を開発するための初期の試みでは、12.5mg/mlの塩酸セフチオフルをラッカセイ油中の20mg/mlのモノステアリン酸グリセリルを含有する厚くしたビヒクル中に懸濁した。臨床的には有効であるが、この組成物の力価は、ポリエチレン注射器中にパッケージングしたときに、室温で18ヶ月未満貯蔵した後では90%未満の表示に低下する。塩酸セフチオフルの酸化的分解がこの力価の減少の主な原因であると決定された。少なくとも90%の表示力価が最小の24ヶ月の期間保持されることとなる室温貯蔵寿命が、乳房内懸濁液には望ましい。
【0081】
次いで、多数の塩酸セフチオフル懸濁液組成物を種々の厚くしたビヒクル中に調製し、酸素透過性ポリエチレン注射器中にパッケージングした。12.5mg/mlの濃度の塩酸セフチオフル製剤を製造した。すべてのビヒクルは綿実油を基剤とし、以下の追加の成分を有した:
(1)50mg/mlマイクロクリスタリンワックス、
(2)70mg/mlマイクロクリスタリンワックス+1.0mg/ml没食子酸プロピル
(3)100mg/mlマイクロクリスタリンワックス+50mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS
(4)40mg/mlゲルシレ(Gelucire)(登録商標)62/05+10mg/mlゲルシレ(登録商標)33/01
(5)70mg/mlレキセムル(Lexemul)(登録商標)AR
(6)2.5mg/mlコーアギュラン(Coagulan)(登録商標)GP−1
(7)10mg/mlマイクロクリスタリンワックス+5mg/mlヒドロホルグリセリド(Hydrofol Gryceride)T57L
(8)30mg/mlドリューポル(Drewpol)(登録商標)10−10−S
(9)15mg/ml蜜蝋ブレンド
(10)60mg/mlドリューポル(登録商標)10−10−S
(11)10mg/ml蜜蝋ブレンド+50mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS
(12)100mg/mlマイクロクリスタリンワックス+1.0mg/ml没食子酸プロピル.
(13)70mg/mlマイクロクリスタリンワックス+100mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS
(14)70mg/mlマイクロクリスタリンワックス+100mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+0.2mg/mlブチル化ヒドロキシトルエン
(15)70mg/mlマイクロクリスタリンワックス+50mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+1.0mg/ml没食子酸プロピル
(16)70mg/mlマイクロクリスタリンワックス+50mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+0.2mg/mlブチル化ヒドロキシトルエン
(17)50mg/mlマイクロクリスタリンワックス+1.0mg/ml没食子酸プロピル
(18)100mg/mlマイクロクリスタリンワックス+100mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+1.0mg/ml没食子酸プロピル
(19)100mg/mlマイクロクリスタリンワックス+100mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+0.2mg/mlブチル化ヒドロキシトルエン
(20)100mg/mlマイクロクリスタリンワックス+50mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+1.0mg/ml没食子酸プロピル
(21)100mg/mlマイクロクリスタリンワックス+50mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+0.2mg/mlブチル化ヒドロキシトルエン
(22)50mg/mlマイクロクリスタリンワックス+100mg/mlラブラフィル(登録商標)M−1944CS+0.2mg/mlブチル化ヒドロキシトルエン。
【0082】
ラブラフィル(登録商標)M−1944CSは、水分散性の両親媒性油であり、20℃でエタノールに本質的に不溶性である。ゲルシレ(登録商標)62/05及びゲルシレ(登録商標)33/01は、天然食用品硬化油脂及び油に由来する本質的に不活性な賦形剤である。レキセムル(登録商標)ARは、酸安定カチオン性の自己乳化モノステアリン酸グリセリルである。「蜜蝋ブレンド」とは、白蜜蝋、カルナウバ蝋、及びカンデリラ蝋を含有するブレンドをいう。コーアギュラン(登録商標)GP−1は、油用のアミノ酸ゼラチン化剤であるN−アシルグルタミン酸ジアミドである。ドリューポルは、修飾グリセリドである。
【0083】
最も驚くべきことに、酸素透過性ポリエチレン注射器中で室温において24ヶ月貯蔵した後、ラブラフィル(登録商標)M−1944CS及びマイクロクリスタリンワックスの双方を含有するそれらの塩酸セフチオフル組成物だけが、少なくとも90%の表示力価を維持した製剤を提供することを発見した。綿実油中のラブラフィル(登録商標)M−1944CS及びマイクロクリスタリンワックスの双方を含有する塩酸セフチオフル製剤の評価された室温貯蔵寿命は、ラブラフィル(登録商標)M−1944CSを含有しない相当する製剤の評価された室温貯蔵寿命より2.4〜3.7倍大きかった。さらに、綿実油中にラブラフィル(登録商標)M−1944CS及び蜜蝋ブレンドを含有する塩酸セフチオフル組成物は、酸素透過性ポリエチレン注射器中で室温において24ヶ月貯蔵した後に90%未満の力価を有していた一方、綿実油中にラブラフィル(登録商標)M−1944CS及びマイクロクリスタリンワックスを含有する相当する粘稠性の塩酸セフチオフル製剤は、同じ貯蔵条件で24ヶ月後に90%より大きい表示力価を示した。
【0084】
セファロスポリン、水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、マイクロクリスタリンワックス、及び非水性担体を含有する組成物は、拡張された化学的及び/又は物理的安定性を提供することに加えて、非常に広範な感染性生物に対する有効性、有効な薬物レベルを感染部位で達成するための乳及び乳房液体中での組成物の速やかな分散、泌乳期の乳牛での短い搾乳外時間、ゼロ日の解体処理肉使用中止期間、乾乳期の乳牛治療後における出産後の短い搾乳留保時間、及び投与後に刺激が最小限か全くないことも提供する。
【0085】
本発明に適用可能な抗菌物質には、乳房障害及び/又は耳の感染の治療及び/又は予防に効果的なそのような物質がいずれも含まれる。好適な抗菌物質には、ペニシリン、合成ペニシリン、セファロスポリンなどのベータ−ラクタム抗菌薬、マクロライド(タイロシン、チルミコシン、アイブロシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、スピラマイシン、ジョサマイシン、キタサマイシンなど)、リンコサミド(リンコマイシン、クリンダマイシン、プリマイシンなど)、プルエロマルチリン(pleuromutilins)(チアムリン、バルネムリンなど)、ペナム系ペニシリン(ベンジルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、コキサシリン、ナフシリン、メチシリン、オキサシリン、アモキシシリン、テモシリン、チカルシリンなど)、ポリペプチド、ペニシリナーゼに安定なペニシリン、アシルアミノ、及びカルボキシペニシリン(ピペラシリン、アズロシリン、メズロシリン、カルベニシリン、テモシリン、チカルシリンなど)、広域スペクトルペニシリン(ストレプトマイシン、ネオマイシン、フラマイセチン、ゲンタマイシン、アプラマイシン、アミカシン、スペクチノマイシン、アモキシシリン、アンピシリンなど)、ポリミキシン(ポリミキシンB、ポリミキシンEなど)、スルホンアミド(スルファメタジン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファトロキサゾールなどの単独あるいはトリメトプリムとの組み合わせ)、クロラムフェニコール、チアムフェニコール、フロルフェニコール、テトラサイクリン及びその誘導体(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)、キノロン、フルオロキノロン、チアムリン、シプロフロキサシン、コリスチン、ドメクロサイクリン、マフェニド、メタサイクリン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ピリメタミン、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルフィソキサゾール、トブラマイシン、バネムリン、オキサゾリジノン((S)−N−((3−(3−フルオロ−4−(4−(ヒドロキシアセチル)−1−ピペラジニル)フェニル)−2−オキソ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド(エペレゾリド)、(S)−N−((3−(3−フルオロ−4−(4−(モルホリニル)フェニル)−2−オキソ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド(リネゾリド)、N−((5S)−3−(3−フルオロ−4−(4−(2−フルオロエチル)−3−オキシ−1−ピペラジニル)フェニル−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド、(S)−N−((3−(5−(3−ピリジル)チオフェン−2−イル)−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド、(S)−N−((3−(5−(4−ピリジル)ピリド−2−イル)−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド塩酸塩など)、アミノグリコシド、及びアミノシクリトール、アムフェニコール、アンサマイシン、カルバペネム、セファマイシン、バンコマイシン、モノバクタム、オキサセフェム、全身性抗菌薬(2,4−ジアミノピリミジンなど)、ニトロフランスルホン、マルボフロキサシンなど、並びにそれらの組み合わせが含まれるが、限定するものではない。
【0086】
特定の薬物化合物に対する本明細書中の参照はいずれも、その化合物の互変異性体、立体異性体、鏡像異性体、塩、水和物、及びプロドラッグを含み、薬物のいずれか1つの固体状態の形態に特有のものではないと理解すべきである。
【0087】
本発明の好ましい抗菌剤は、限定するものではないが、塩酸セフチオフル、セフチオフル結晶性遊離酸、セフチオフルナトリウム、その他のセフチオフル塩、セファレキシン、セフラジン、セフキノム、セファセトリル、セファロニウム、セフロキシム、セファジジム、セフォペラゾン、結晶性ナトリウムセフェムエトカルボキシレート(crystalline sodium cephemethcarboxylate)、結晶性セフェム七水和物、結晶性セファロスポリン二水和物又は三水和物、セファドロキシル一水和物、セファゾリンナトリウム一水和物、セフィキシム、セフタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、結晶性o−ホルミルセファマンドール、3−アセトキシメチル−7−(イミノセタミノ)−セファロスポラニン酸誘導体の塩、7−(D−アルファ−アミノ−アルファ−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミノ)−3−メチル−3−セフェム−1−カルボン酸の結晶性一水和物、syn−7−((2−アミノ−1−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル)アミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸の結晶性塩酸塩、結晶性セフェム酸付加塩、結晶性(ピバロイルオキシ)メチル7−ベータ−(2−(2−アミノ−4−チアゾリル)アセトアミド)−3−(((1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−1H−テトラゾル−5−イル)チオ)メチル)−3−セフェム−4−カルボキシレート、結晶性セファレキシン、結晶性セファレキシン一水和物、結晶性7−(D−2−ナフチグリシルアミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸四水和物などを含むセファロスポリンである。セファロスポリン抗生物質化合物の例は、以下に列記した特許及び公表物に記載され、各々を参照により個々に本明細書に取り入れる。
【0088】
Pfeifferによる米国特許第3,531,481号
【0089】
Yangらによる米国特許第4,006,138号
【0090】
Cise&Osborneらによる米国特許第4,104,470号
【0091】
Stablesらによる米国特許第4,298,732号
【0092】
Heitmanらによる米国特許第4,318,852号
【0093】
Yangによる米国特許第4,400,503号
【0094】
lchihashiらによる米国特許第4,442,101号
【0095】
Labeeuw&Montpellierによる米国特許第4,464,367号
【0096】
Daughertyによる米国特許第4,474,780号
【0097】
Bouzardらによる米国特許第4,504,657号
【0098】
Nishihataらによる米国特許第4,555,404号
【0099】
Chou&Lakinによる米国特許第4,616,080号
【0100】
Durckheimerによる米国特許第4,624,94S号
【0101】
Naitoらによる米国特許第4,692,519号
【0102】
Hamashimaらによる米国特許第4,812,561号
【0103】
Crispらによる米国特許第4,820,833号
【0104】
Cazers&Koshyによる米国特許第4,877,782号
【0105】
Marsiliによる米国特許第4,898,938to
【0106】
Amin&Campbellによる米国特許第4,902,683号
【0107】
Bonfantiによる米国特許第4,912,211号
【0108】
Ochiaiらによる米国特許第4,912,212号
【0109】
Hamashimaらによる米国特許第4,933,443号
【0110】
Sacksらによる米国特許第4.937,330号
【0111】
Ochiaiらによる米国特許第4,973,684号
【0112】
Hamashimaらによる米国特許第5,017,380号
【0113】
Putmanによる米国特許第5,079,007号
【0114】
Heymes&Lutzによる米国特許第5,103,012号
【0115】
Cazersらによる米国特許第5,143,137号
【0116】
Dunnらによる米国特許第5,721,359号
【0117】
Foster&Kieferによる米国特許第5,736,151号
【0118】
欧州特許第0278656号
【0119】
カナダ特許出願第2,018,794号
【0120】
Chemical Abstracts 84: 184895j (1976)
【0121】
Chemical Abstracts 97: 38761q (1982)
【0122】
Chemical Abstracts 110: 212490z (1989)
【0123】
本発明による使用に最も好ましいセファロスポリンは、セフチオフル及びその薬学的に許容できる塩である。
【0124】
抗生物質がセフチオフル又はその薬学的に許容できる塩である場合、本発明の組成物の好ましい濃度範囲は、約1〜約1000mg/ml、より好ましくは約5〜約750mg/ml、さらにより好ましくは約10〜約100mg/mlである。セフチオフル以外の抗菌については、抗菌上同等である好適な濃度範囲は公表されたデータに基づいて当業者によって決定することができる。
【0125】
「両親媒性油」との用語は、明瞭に極性を有する領域及び明瞭に非極性を有する領域を有する物質と定義される。構造上、両親媒性油のこれらの2つの領域は、2つの領域の特有の性質は明瞭に分離されるほど十分に離れている。
【0126】
本発明に適用可能な両親媒性油には、水分散性かつエタノール不溶性であるすべての両親媒性油が含まれる。
【0127】
好ましいそのような両親媒性油は、天然トリグリセリドとポリエチレングリコールとのアルコール分解反応によって調製されるポリグリコール化グリセリドであり、その例には、以下のガッテホセ社(Gattefosse)の油又は別の製造者の実質的に同等の油が含まれるが、限定するものではない:ラブラフィル(登録商標)M−1944CS、ラブラフィル(登録商標)M−1966CS、ラブラフィル(登録商標)M−1969CS、ラブラフィル(登録商標)M−1980CS、ラブラフィル(登録商標)M−2125CS、ラブラフィル(登録商標)WL−2609BS、ラブラフィル(登録商標)ISO、及びそれらの組み合わせ。
【0128】
さらにより好ましい両親媒性油は、オレイン酸又はリノール酸のいずれかの主脂肪酸成分を含有する上記の通りに調製されたポリグリコール化グリセリドであり、その例には、以下のガッテホセ社(Gattefosse)の油又は別の製造者の実質的に同等な油が含まれるが、限定するものではない:ラブラフィル(登録商標)M−1944CS、ラブラフィル(登録商標)M−1966CS、ラブラフィル(登録商標)M−1969CS、ラブラフィル(登録商標)M−1980CS、ラブラフィル(登録商標)M−2125CS、ラブラフィル(登録商標)WL−2609BS、及びそれらの組み合わせ。
【0129】
さらにより好ましい両親媒性油は、オレイン酸の主脂肪酸成分を含有する上記の通りに調製されたポリグリコール化グリセリドであり、その例には、以下のガッテホセ社(Gattefosse)の油又は別の製造者の実質的に同等な油が含まれるが、限定するものではない:ラブラフィル(登録商標)M−1944CS、ラブラフィル(登録商標)M−1966CS、ラブラフィル(登録商標)M−1980CS、及びそれらの組み合わせ。
【0130】
最も好ましい両親媒性油は、ペジコール5−オレエート、例えば、ガッテホセ社(Gattefosse)のラブラフィル(登録商標)M−1944CSである。
【0131】
本発明の組成物中の両親媒性油の好ましい濃度範囲は、約0.01重量/体積%〜約99%重量/体積%、より好ましくは約1重量/体積%〜約80重量/体積%、さらにより好ましくは約3重量/体積%〜約25重量/体積%である。
【0132】
マイクロクリスタリンワックスは、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd ed. or in National Formulary, 19th ed. (NF 19)に記載され、ウイトコ社(Witco Corporation)を含む多数の製造者から得ることができる。
【0133】
本発明の組成物中のマイクロクリスタリンワックスの好ましい濃度範囲は、約0.01重量/体積%〜約50重量/体積%、より好ましくは約1重量/体積%〜約40重量/体積%、さらにより好ましくは約3重量/体積%〜約15重量/体積%である。
【0134】
本発明の薬学的に許容できる非水性担体は、十分飽和であるか、あるいは一部又は十分不飽和であることができる。非水性担体の例には、植物油(綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ダイズ油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ヒマワリ油、サフラワー油、扁桃油、アボカード油、パーム油、パーム核油、ババス油、ブナ油、アマニ油、ナタネ油など)、鉱油、合成油、及びそれらの組み合わせが含まれるが、限定するものではない。十分飽和である非水性担体の例には、中鎖から長鎖の脂肪酸のエステル(約C6個〜約C24の鎖長を有する脂肪酸トリグリセリドなど)が含まれるが、限定するものではない。脂肪酸の混合物は、天然油(例えば、ヤシ油、パーム核油、ババス油など)から分離され、精製される。いくつかの実施態様では、約C8〜約C12の中鎖の脂肪酸トリグリセリドが有用である。例示的な飽和非水性担体は、カプリン酸(担体の約20重量%〜約45重量%)及びカプリル酸(担体の約45重量%〜約80重量%)を含む。他の全部飽和である非水性担体には、ハルス社(Huls)のミグリオール(Miglyol)(登録商標)の商標の下で販売され商品指定番号810、812、829、及び840を有するものを含む飽和ヤシ油(典型的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、カプリン酸、及びカプリン酸の混合物が含まれる)が含まれるが、限定するものではない。ドリュー・ケミカルズ社(Drew Chemicals)から販売されているネオビー(NeoBee)(登録商標)製品も注記する。ミリスチン酸イソプロピルは、本発明の組成物で有用な非水性担体の別の例である。合成油の例には、例えば、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ヘプタデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、及びリグノセリン酸などの6〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸のトリグリセリド及びポリエチレングリコールジエステルが含まれる。不飽和カルボン酸の例には、オレイン、リノール、及びリノレン酸などが含まれる。非水性担体は、グリセロールの少なくとも1つの分子が種々の炭素原子長さの脂肪酸でエステル化されている脂肪酸のモノグリセリルエステル、ジグリセリルエステル、及びトリグリセリルエステル、又はグリセリド混合物、及び/又はポリエチレングリコールジエステルを含むと理解する。本発明の「油でないもの」の非限定的な例は、ポリエチレングリコールである。
【0135】
好ましい非水性担体は、綿実油、トウモロコシ油、落花生油、ゴマ油、ダイズ油、オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、クヘントウ油、アボカード油、パーム油、パーム核油、ババス油、ブナ油、アマニ油、ナタネ油、及びヤシ油からなる群から選択される。
【0136】
最も好ましい非水性担体は綿実油である。単なる例示として、綿実油は、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Co.)の70%不飽和脂肪酸の製剤から入手可能である。
【0137】
本発明の組成物中の非水性担体の好ましい濃度範囲は、約0.5重量/体積%〜約99重量/体積%、より好ましくは約10重量/体積%〜約95重量/体積%、さらにより好ましくは約40重量/体積%〜約90重量/体積%である。
【0138】
本発明の組成物は、限定するものではないが、酸化防止剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、着色剤、アルコール剤、緩衝剤、他の慣用の薬学的添加剤、及びそれらの組み合わせを含む、組成物と有害となる反応をしない任意の慣用の薬学的添加剤と混合することができる。例には、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、安息香酸、安息香酸誘導体、エチレンジアミン、重亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、マレイン酸、没食子酸プロピル、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、糖質(ラクトース、アミロース、及びデンプンなど)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、限定するものではない。
【0139】
本発明の組成物の投与方法は、「注入」又は「注入する」工程を伴うとして本明細書中に記載される。本明細書中の「注入」又は「注入する」との用語は、液体含有器官に液体組成物を直接送達する方法をいい、非常に短い時間内で完了し、かつ、より持続性の送達である例えば注射器を用いた注射を包含する。
【0140】
本発明の組成物は、乳房炎注射器のカニューレノズルを乳産生動物の乳房の筋状管の外側開口部に挿入して組成物を乳房に注入することにより、乳房炎の治療又は予防用に投与することができる。
【0141】
本発明の組成物は、耳注射器、耳滴下ディスペンサー、又は他の適切な耳送達器具のノズルを被検体の外側の耳道に挿入して組成物を耳に注入することにより、耳感染の治療又は予防用に投与することができる。
【0142】
特定の場合で投与される組成物の好ましい量は、用いる特定の組成物、適用形式、治療する特定の原位置及び/又は生物、又はその他の要因によって変わることは十分に理解されるであろう。所与の目的にのための投与量は、慣用の考慮すべき事項を用いて、例えば、対象組成物及び既知の剤の示差的な活性の通例の比較により、例えば、適切な慣用の薬学的プロトコルにより決定することができる。
【0143】
抗菌物質として塩酸セフチオフルを含有する例示的な本発明の懸濁液は、以下の組成物を有する:
抗菌物質 1〜1000mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1944CS 0.01〜99%
マイクロクリスタリンワックス 0.01〜50%
綿実油 0.5〜99%
(パーセンテージはすべて、重量/体積である)
【実施例】
【0144】
実施例
以下の実施例は本発明の態様を例証したものであるが、限定するもと解してはならない。
【0145】
実施例1
泌乳期の乳牛の乳房炎の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製した:
塩酸セフチオフル(微粉状にしたもの) 12.5mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1944CS 50mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 70mg/ml
綿実油NF 十分
【0146】
マイクロクリスタリンワックス及び合計量約27%の綿実油を鍋中で混合しながら85〜98℃に加熱した。残りの綿実油を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱した。マイクロクリスタリンワックスが完全に融解した後、鍋中のマイクロクリスタリンワックス/綿実油の混合物を綿実油を含有する製造タンクに移し、十分に混合した。得られた混合物を38〜45℃に冷却し、ラブラフィル(登録商標)M−1944CSを混合しながら製造タンクに加え、ビヒクルを形成した。次いで、塩酸セフチオフルをビヒクルに加え、得られた組成物を混合し、均一な懸濁液を形成した。懸濁液を篩にかけ、12mlの高密度ポリエチレン乳房炎用注射器に充填した。最後に、パッケージングした生成物を25〜40kGyの線量のガンマ照射により滅菌した。
【0147】
滴下体積技術を用い、綿実油中の70mg/mlのマイクロクリスタリンワックスを用いて調製したがラブラフィル(登録商標)M−1944CSを用いずに調製した参照懸濁液の界面張力と比較することにより、上記の懸濁液の界面張力を決定した。綿実油中にラブラフィル(登録商標)M−1944CS及びマイクロクリスタリンワックスの双方を含有する懸濁液の界面張力は、参照懸濁液の界面張力より3.4倍低かった。
【0148】
実施例2
泌乳期の乳牛の乳房炎の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製した:
塩酸セフチオフル(微粉状にしたもの) 12.5mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1944CS 50mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 100mg/ml
綿実油NF 十分
【0149】
マイクロクリスタリンワックス及び綿実油綿実油を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱した。マイクロクリスタリンワックスを完全に溶融した後、混合物を38〜45℃に冷やし、ラブラフィル(登録商標)M−1944CSを製造タンクに混合しながら加えた。次いで、塩酸セフチオフルを得られたビヒクルに加え、混合し、均一な懸濁液を形成した。懸濁液を篩にかけ、12mlの高密度ポリエチレン乳房炎用注射器に充填した。最後に、パッケージングした生成物を25〜40kGyの線量のガンマ照射により滅菌した。
【0150】
滴下体積技術を用い、綿実油中の100mg/mlのマイクロクリスタリンワックスを用いて調製したがラブラフィル(登録商標)M−1944CSを用いずに調製した参照懸濁液の界面張力と比較することにより、上記の懸濁液の界面張力を決定した。綿実油中にラブラフィル(登録商標)M−1944CS及びマイクロクリスタリンワックスの双方を含有する懸濁液の界面張力は、参照懸濁液の界面張力より4.0倍低かった。
【0151】
実施例3
泌乳期の乳牛の乳房炎の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製した:
塩酸セフチオフル(微粉状にしたもの) 12.5mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1944CS 200mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 100mg/ml
綿実油NF 十分
【0152】
マイクロクリスタリンワックス及び綿実油を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱した。マイクロクリスタリンワックスを完全に溶融した後、混合物を38〜45℃に冷やし、ラブラフィル(登録商標)M−1944CSを製造タンクに混合しながら加えた。次いで、塩酸セフチオフルを得られたビヒクルに加え、混合し、均一な懸濁液を形成した。懸濁液を篩にかけ、12mlの高密度ポリエチレン乳房炎用注射器に充填した。最後に、パッケージングした生成物を25〜40kGyの線量のガンマ照射により滅菌した。
【0153】
滴下体積技術を用い、綿実油中の100mg/mlのマイクロクリスタリンワックスを用いて調製したがラブラフィル(登録商標)M−1944CSを用いずに調製した参照懸濁液の界面張力と比較することにより、上記の懸濁液の界面張力を決定した。綿実油中にラブラフィル(登録商標)M−1944CS及びマイクロクリスタリンワックスの双方を含有する懸濁液の界面張力は、参照懸濁液の界面張力より28倍低かった。
【0154】
実施例4
泌乳期の乳牛及び乾乳期の乳牛の乳房炎の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製する:
セフチオフル結晶性遊離酸(微粉状にしたもの) 25.0mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1966CS 100mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 50mg/ml
トウモロコシ油NF 十分
【0155】
マイクロクリスタリンワックス及びトウモロコシ油を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱する。マイクロクリスタリンワックスを完全に溶融した後、混合物を30〜45℃に冷やし、ラブラフィル(登録商標)M−1966CSを製造タンクに混合しながら加える。セフチオフル結晶性遊離酸をビヒクルに加え、混合した、均一な懸濁液を形成する。懸濁液を篩にかけ、12mlの高密度ポリエチレン乳房炎用注射器に充填する。最後に、パッケージングした生成物を25〜40kGyの線量のガンマ照射により滅菌する。
【0156】
実施例5
イヌ外耳炎の治療及び/又は予防用に耳注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製する:
塩酸セフチオフル(微粉状にしたもの) 25mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1980CS 500mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 1.0mg/ml
没食子酸プロピル 1.0mg/ml
鉱油 十分
【0157】
マイクロクリスタリンワックス及び合計量約27%の鉱油を鍋中で混合しながら85〜98℃に加熱する。残りの鉱油を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱する。マイクロクリスタリンワックスを完全に溶融した後、鍋中のマイクロクリスタリンワックス/鉱油混合物を鉱油を含有する製造タンクに移し、十分に混合する。得られた混合物を38〜45℃に冷やし、ラブラフィル(登録商標)M−1980CSを製造タンクに混合しながら加える。次いで、塩酸セフチオフルを得られたビヒクルに加え、混合し、均一な懸濁液を形成する。懸濁液を篩にかけ、20mlのポリプロピレン容器に充填する。
【0158】
実施例6
乾乳期の乳牛の乳房炎の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製した:
塩酸セフチオフル(微粉状にしたもの) 50mg/ml
ラブラフィル(登録商標)M−1944CS 50mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 70mg/ml
綿実油NF 十分
【0159】
マイクロクリスタリンワックス及び合計量約27%の綿実油を鍋中で混合しながら85〜98℃に加熱した。残りの綿実油を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱した。マイクロクリスタリンワックスを完全に溶融した後、鍋中のマイクロクリスタリンワックス/綿実油の混合物を綿実油を含有する製造タンクに移し、十分に混合した。得られた混合物を38〜45℃に冷やし、ラブラフィル(登録商標)M−1944CSを製造タンクに混合しながら加えた。次いで、塩酸セフチオフルを得られたビヒクルに加え、混合し、均一な懸濁液を形成した。懸濁液を篩にかけ、12mlの高密度ポリエチレン乳房炎用注射器に充填した。最後に、パッケージングした生成物を25〜40kGyの線量のガンマ照射により滅菌した。
【0160】
実施例7
泌乳期の乳牛の乳房炎の治療及び/又は予防用に乳房内注入によって投与するための以下の組成物を有する懸濁液を調製する:
セフチオフルナトリウム(微粉状にしたもの) 20mg/ml
ラブラフィル(登録商標)WL−2609BS 75mg/ml
マイクロクリスタリンワックスNF 100mg/ml
ミグリオール(登録商標)812 十分
【0161】
マイクロクリスタリンワックス及び合計量約30%のミグリオール(登録商標)812を鍋中で混合しながら85〜98℃に加熱する。残りのミグリオール812を製造タンク中で混合しながら85〜98℃に加熱する。マイクロクリスタリンワックスを完全に溶融した後、鍋中のマイクロクリスタリンワックス/ミグリオール(登録商標)812混合物を鉱油を含有する製造タンクに移し、十分に混合する。得られた混合物を38〜45℃に冷やし、ラブラフィル(登録商標)WL−2609BSを製造タンクに混合しながら加える。セフチオフルナトリウムを得られたビヒクルに加え、混合し、均一な懸濁液を形成する。懸濁液を篩にかけ、12mlの高密度ポリエチレン乳房炎用注射器に充填する。最後に、パッケージングした生成物を25〜40kGyの線量のガンマ照射により滅菌する。
【0162】
本発明をその好ましい実施態様を参照して詳細に記載したが、付随する特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく改変及び変型が可能であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、(b)マイクロクリスタリンワックス、及び(c)薬学的に許容できる非水性担体を含むビヒクルを含有し、かつ、該ビヒクルが該ビヒクル中で安定的に分散された抗菌上有効な量の抗菌物質を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗菌物質がエペレゾリド、リネゾリド、N−((5S)−3−(3−フルオロ−4−(4−(2−フルオロエチル)−3−オキシ−1−ピペラジニル)フェニル−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド、(S)−N−((3−(5−(3−ピリミジル)チオフェン−2−イル)−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド、及び(S)−N−((3−(5−(4−ピリミジル)ピリド−2−イル)−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド塩酸塩からなる群から選択されるオキサゾリジノンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗菌物質がセフチオフル及びその塩、セファレキシン、セフラジン、セフキノム、セファセトリル、セファロニウム、セフロキシム、セファジジム、セフォペラゾン、ナトリウムセフェムエトカルボキシレート、セフェム七水和物、セファロスポリン二水和物及び三水和物、セファドロキシル一水和物、セファゾリンナトリウム一水和物、セフィキシミン、セフタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、o−ホルミルセファマンドール、3−アセトキシメチル−7−(イミノセタミド)−ファロスポラン酸誘導体の塩、7−(D−α−アミノ−α−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミノ)−3−メチル−3−セフェム−1−カルボン酸の一水和物、syn−7−((2−アミノ−1−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル)−アミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸の塩酸塩、結晶性セフェム酸付加塩、(ピバロイルオキシ)メチル−7−ベータ−(2−(2−アミノ−4−チアゾリル)アセトアミド)−3−(((1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−1H−テトラゾル−5−イル)チオ)メチル)−3−セフェム−4−カルボキシレート、セファレキシン、セファレキシン一水和物、7−(D−2−ナフチグリシルアミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸四水和物からなる群から選択されるセファロスポリン、その互変異性体、立体異性体、鏡像異性体、塩、水和物、及びプロドラッグ、並びにそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌物質がセフチオフル及びその薬学的に許容できる塩並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記両親媒性油が天然トリグリセリドとポリエチレングリコールとのアルコール分解反応によって調製されるポリグリコール化グリセリドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリグリコール化グリセリドがオレイン酸又はリノール酸の主脂肪酸成分を含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項7】
前記非水性担体が植物油、鉱油、中鎖から長鎖の脂肪酸及びそのアルキルエステル、中鎖から長鎖の脂肪酸のポリエチレングリコールジエステル、脂肪酸のモノグリセリルエステル、ジグリセリルエステル、及びトリグリセリルエステル、ポリエチレングリコール、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記両親媒性油が前記組成物の約0.01%〜約99%、好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約3%〜約25%重量/体積からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記マイクロクリスタリンワックスが前記組成物の約0.01%〜約50%、好ましくは約1%〜40%、より好ましくは約3%〜約15%重量/体積からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記非水性担体が前記組成物の約0.5%〜約99%、好ましくは約10%〜約95%、より好ましくは約40%〜約90%重量/体積からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
酸素透過性の壁を有する容器又は送達器具を含み、かつ、中に請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を含有する、物品。
【請求項12】
前記組成物が、前記両親媒性油及び前記マイクロクリスタリンワックスの一方又は双方を欠くが他の点では同様である参照組成物と比較して拡張された化学的及び/又は物理的安定性を示す、請求項12に記載の物品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を前記被検体の液体含有器官に該器官の生来の外側開口部を介して投与することを含み、該投与の際に前記組成物が前記液体中に分散する、被検体中の細菌感染の治療又は予防方法。
【請求項14】
前記細菌感染が乳産生動物の乳房に存在し、前記投与が乳房内注入による、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌感染が乳房炎として現れる、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
前記細菌感染が耳に存在し、前記投与が耳の注入又は注射による、請求項14に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水分散性かつエタノール不溶性である両親媒性油、(b)マイクロクリスタリンワックス、及び(c)薬学的に許容できる非水性担体を含むビヒクルを含有し、かつ、該ビヒクルが該ビヒクル中で安定的に分散された抗菌上有効な量の抗菌物質を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗菌物質がエペレゾリド、リネゾリド、N−((5S)−3−(3−フルオロ−4−(4−(2−フルオロエチル)−3−オキシ−1−ピペラジニル)フェニル−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド、(S)−N−((3−(5−(3−ピリミジル)チオフェン−2−イル)−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド、及び(S)−N−((3−(5−(4−ピリミジル)ピリド−2−イル)−2−オキシ−5−オキサゾリジニル)メチル)アセトアミド塩酸塩からなる群から選択されるオキサゾリジノンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗菌物質がセフチオフル及びその塩、セファレキシン、セフラジン、セフキノム、セファセトリル、セファロニウム、セフロキシム、セファジジム、セフォペラゾン、ナトリウムセフェムエトカルボキシレート、セフェム七水和物、セファロスポリン二水和物及び三水和物、セファドロキシル一水和物、セファゾリンナトリウム一水和物、セフィキシミン、セフタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、o−ホルミルセファマンドール、3−アセトキシメチル−7−(イミノセタミド)−ファロスポラン酸誘導体の塩、7−(D−α−アミノ−α−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミノ)−3−メチル−3−セフェム−1−カルボン酸の一水和物、syn−7−((2−アミノ−1−チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル)−アミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸の塩酸塩、結晶性セフェム酸付加塩、(ピバロイルオキシ)メチル−7−ベータ−(2−(2−アミノ−4−チアゾリル)アセトアミド)−3−(((1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−1H−テトラゾル−5−イル)チオ)メチル)−3−セフェム−4−カルボキシレート、セファレキシン、セファレキシン一水和物、7−(D−2−ナフチグリシルアミノ)−3−メチル−3−セフェム−4−カルボン酸四水和物からなる群から選択されるセファロスポリン、その互変異性体、立体異性体、鏡像異性体、塩、水和物、及びプロドラッグ、並びにそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌物質がセフチオフル及びその薬学的に許容できる塩並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記両親媒性油が天然トリグリセリドとポリエチレングリコールとのアルコール分解反応によって調製されるポリグリコール化グリセリドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリグリコール化グリセリドがオレイン酸又はリノール酸の主脂肪酸成分を含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項7】
前記非水性担体が植物油、鉱油、中鎖から長鎖の脂肪酸及びそのアルキルエステル、中鎖から長鎖の脂肪酸のポリエチレングリコールジエステル、脂肪酸のモノグリセリルエステル、ジグリセリルエステル、及びトリグリセリルエステル、ポリエチレングリコール、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記両親媒性油が前記組成物の約0.01%〜約99%、好ましくは約1%〜約80%、より好ましくは約3%〜約25%重量/体積からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記マイクロクリスタリンワックスが前記組成物の約0.01%〜約50%、好ましくは約1%〜40%、より好ましくは約3%〜約15%重量/体積からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記非水性担体が前記組成物の約0.5%〜約99%、好ましくは約10%〜約95%、より好ましくは約40%〜約90%重量/体積からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
酸素透過性の壁を有する容器又は送達器具を含み、かつ、中に請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を含有する、物品。
【請求項12】
前記組成物が、前記両親媒性油及び前記マイクロクリスタリンワックスの一方又は双方を欠くが他の点では同様である参照組成物と比較して拡張された化学的及び/又は物理的安定性を示す、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
被検体中の細菌感染の治療又は予防用の請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物であって、当該組成物は、前記被検体の液体含有器官に該器官の生来の外側開口部を介して投与され、該投与の際に前記組成物が前記液体中に分散する前記組成物。
【請求項14】
前記細菌感染が乳産生動物の乳房に存在し、前記投与が乳房内注入による、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記細菌感染が乳房炎として現れる、請求項14に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記細菌感染が耳に存在し、前記投与が耳の注入又は注射による、請求項14に記載の医薬組成物

【公表番号】特表2006−514955(P2006−514955A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565402(P2004−565402)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/039508
【国際公開番号】WO2004/060345
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】