説明

分散性粘度調整剤

開示される本発明は、グラフト化ポリマーを含む組成物に関する。そのポリマーは、少なくとも1つのオレフィンブロックおよび少なくとも1つのビニル芳香族ブロックを有する主鎖を含む。ポリマーは、ペンダントカルボニル含有基でグラフト化されており、そのグラフト化は、ビニル芳香族ブロックのビニル芳香族炭素をハロゲン化し、次いで、活性化剤の存在下で、ハロゲン化されたビニル芳香族炭素上のカルボン酸またはその誘導体をグラフト化ことによって実施される。そのカルボニル含有基は、エステル、イミドおよび/またはアミド官能基を提供するように任意選択で置換されている。グラフト化ポリマーは、エンジンオイルなどの潤滑組成物における分散性粘度調整剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性粘度調整剤および分散性粘度調整剤を作製するための方法に関する。これらの分散性粘度調整剤は、潤滑組成物、例えばエンジンオイルのための添加剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
エンジンオイルにおける分散性粘度調整剤の使用は公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高い燃料経済性およびより長いドレイン間隔を提供するエンジンオイルに対する市場における重要性が高まっている。既存の乗用車モーター油(PCMO)および大型車両用ディーゼル(HDD)エンジンオイル配合物は、ポリイソブチレン(PIB)をベースとした分散剤などの燃料経済性の妨げとなる成分を、適度に効果的な分散性粘度調整剤(DVM)で部分的または全面的に置き換えることにより、燃料経済性を改善し、またはすす処理性の向上をもたらして、これらの課題の両方に対処することができる。これらのポリマーは、二官能性ポリマーと称することができる。PIBベース分散剤の例には、PIBの末端アルケン基と無水マレイン酸を反応させ、次いで、PIB結合無水物をポリエチレンアミンで処理して得られる生成物が含まれる。
【0004】
この種の二官能性ポリマーに対する動きは、Hitec5777(無水マレイン酸でグラフト化し、さらに4−アミノジフェニルアミンと反応させたエチレン−プロピレンコポリマーと考えられるAftonの製品)などのオレフィンコポリマー(OCP)ベースDVMの商業化をもたらした。しかし、OCPベースDVMの使用に伴う問題は、OCPの分解によって引き起こされると考えられるピストン沈着(deposition)に関するものである。水素化スチレン−ブタジエン樹脂(SBR)は粘度改善物質として使用することができ、OCPベースDVMより少ないピストン沈着をもたらすことが分かっている。しかし、スチレンとブタジエンの非官能基化ランダムコポリマーは典型的に、すす分散性が不十分である。
【0005】
官能基化されると、SBRベースDVMは高いすす分散性を提供することができる。しかし、望ましいレベルのすす分散性を達成するのに十分なレベルの官能基化を提供するのには問題がある。本発明は、この問題に解決を与えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、本発明は:ポリマー主鎖およびペンダントカルボニル含有基を含むグラフト化ポリマーを含む組成物であって、そのポリマー主鎖がブロックAの少なくとも1つおよびブロックBの少なくとも1つを含み、ブロックAがオレフィンブロックを含み、ブロックBがビニル芳香族ブロックを含み、ブロックAとブロックA+ブロックBの組合せとのモル比(すなわち、ブロックA中のモノマー単位とブロックA+ブロックBの組合せ中のモノマー単位とのモル比)が0.5〜0.9の範囲であり;そのペンダントカルボニル含有基がブロックB上でグラフト化されており、そのカルボニル含有基が、エステル、イミドおよび/またはアミド官能基を提供するように任意選択でさらに置換されており、ブロックB上のそのペンダントカルボニル含有基のグラフト化が、ブロックBのビニル芳香族炭素をハロゲン化し、次いで活性化剤の存在下でビニル芳香族炭素上のカルボン酸またはその誘導体をグラフト化することによって実施される組成物に関する。
【0007】
本発明のグラフト化ポリマーでは、すべてまたは実質的にすべてのグラフト化は、ビニル芳香族ブロックにおいて起こる。「実質的にすべて」という用語は、グラフト化の少なくとも70%または少なくとも90%がビニル芳香族ブロックで起こることを指す。
【0008】
本発明の他の態様によれば、ブロックBを、ブロックBをハロゲン含有化合物と接触させて反応混合物を生成させ、反応混合物に放射線照射することによってハロゲン化する。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、ハロゲン含有化合物は臭素含有化合物または塩素含有化合物を含む。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、活性化剤は臭化銅(I)およびプロピル−ピリジン−2−イルメチレンアミンを含む。
【0011】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、テーパー付きコポリマーでないコポリマーを含み、ブロックAは、20モル%〜80モル%または30モル%〜70モル%の分枝状アルキル基、すなわちアルキル分枝またはアルキル分枝基(エチル基など)を含む繰り返し単位を含む。
【0012】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、テーパー型コポリマーであるコポリマーを含み、ブロックAは40モル%〜80モル%または50モル%〜75モル%の分枝状アルキル基すなわちアルキル分枝を含む繰り返し単位を含む。
【0013】
本発明のさらに他の態様によれば、ポリマー主鎖は、脂肪族ジエンから誘導された繰り返し単位とアルケニルアレーンから誘導された繰り返し単位を含む。
【0014】
本発明のさらに他の態様によれば、ポリマー主鎖は、スチレンおよびブタジエンから誘導された繰り返し単位を含む。
【0015】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーはジブロックコポリマーを含む。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは連続ブロックコポリマーを含む。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、カルボン酸誘導体は、無水物、ハロゲン化物またはアルキルエステルを含む。
【0018】
本発明のさらに他の態様によれば、カルボン酸誘導体は無水マレイン酸の反応生成物を含む。
【0019】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、1000〜1,000,000の範囲または10,000〜250,000の範囲の重量平均分子量を有する。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、1〜1.6の範囲または1.01〜1.55の範囲の多分散度を有する。
【0021】
本発明のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、水素化に使用可能な二重結合を含み、水素化に使用可能なその二重結合の50%〜100%、90%〜100%または95%〜100%が水素化されている。
【0022】
本発明のさらに他の態様によれば、カルボニル含有基はアミドおよび/またはイミド官能基を提供するように置換されており、そのアミドおよび/またはイミド官能基は窒素含有モノマーまたはアミンによって提供される。
【0023】
本発明のさらに他の態様によれば、窒素含有モノマーまたはアミンは第一級および/または第二級窒素を含む。
【0024】
本発明のさらに他の態様によれば、アミンは、ファーストバイオレットB、ファーストブルーBB、ファーストブルーRR、アニリン、N−アルキルアニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチレート)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、ベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリン、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、チエニル置換アニリンまたはその2つ以上の混合物を含む。
【0025】
本発明のさらに他の態様によれば、そのアミン官能基は、N−p−ジフェニルアミン;4−アニリノフェニルメタクリルアミド;4−アニリノフェニルマレイミド;4−アニリノフェニルイタコンアミド;4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリレートおよびメタクリレートエステル;p−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンのグリシジルメタクリレートとの反応生成物;p−アミノジフェニルアミンのイソブチルアルデヒドとの反応生成物、p−ヒドロキシジフェニルアミンの誘導体;フェノチアジンの誘導体;ジフェニルアミンのビニル性誘導体またはその2つ以上の混合物の少なくとも1つから誘導される。
【0026】
本発明のさらに他の態様によれば、そのアミンは、アミノジフェニルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノプロピルイミダゾール、ジメチルフェニルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、ファーストブルーRRまたはその2つ以上の混合物を含む。
【0027】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上記組成物および希釈剤を含む濃縮物に関し、そのグラフト化ポリマーと希釈剤の重量比は1:99〜99:1または80:20〜10:90の範囲である。
【0028】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、多量の潤滑粘性油(oil of lubricating viscosity)および少量の分散性粘度調整量の上記組成物を含む潤滑組成物に関する。
【0029】
本発明のさらに他の態様によれば、潤滑組成物は、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤またはその2つ以上の混合物をさらに含む。
【0030】
本発明のさらに他の態様によれば、潤滑組成物はエンジンオイルであり、その潤滑組成物は、(i)0.8重量%以下のイオウ含有量、(ii)0.2重量%以下のリン含有量または(iii)2重量%以下の硫酸塩灰分(sulphated ash)含有量の少なくとも1つを有するオイルである。
【0031】
本発明のさらに他の態様によれば、潤滑組成物はエンジンオイルであり、その潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下のイオウ含有量、(ii)0.1重量%以下のリン含有量および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有量を有する。
【0032】
本発明のさらに他の態様によれば、潤滑組成物は、2ストロークまたは4ストロークの内燃機関用エンジンオイル、ギアオイル、自動変速機オイル、油圧油、タービン油、金属加工油剤(metal working fluid)またはサーキュレーティングオイルとして使用される。
【0033】
本発明のさらに他の態様によれば、潤滑組成物は、2ストロークまたは4ストロークの舶用ディーゼル内燃機関用のエンジンオイルとして使用される。
【0034】
本発明のグラフト化ポリマーを作製するための方法は原子移動ラジカル重合(ATRP)法と称することができる。ATRP法は米国特許第6,610,801号に記載されている。これを参照により本明細書に組み込む。この方法は、遷移金属化合物を、移動可能な基(しばしばハロゲン化物であるが)を含む化合物と反応させることを含む。こうした条件下で、原子の移動可能な基を遷移金属化合物に移動させ、それによって金属を酸化する。エチレン基に付加するラジカルがこの反応で生成する。本発明において、ハロゲン化剤(例えば、N−ブロモスクシンイミド)を用いて、ビニル芳香族ブロックのポリマー主鎖をハロゲン化する(例えば、臭素化する)ことができる。次いでカルボニル含有基を、ATRPで制御した仕方で、ハロゲン化されたビニルブロック上にグラフト化することができる。
【0035】
「ビニル芳香族炭素」という用語は本明細書では、ビニル芳香族ブロックの芳香族環(複数可)(例えば、ベンゼン環(複数可))に直接結合するビニル基の炭素原子を指すのに用いられる。
【0036】
ポリマー主鎖がSBRを含み、そのペンダントカルボニル含有基が、無水マレイン酸(MAA)、1つもしくは複数のアルキル(メタ)アクリレート、1つもしくは複数のアリール(メタ)アクリレート、1つもしくは複数のアルキルイタコネート、1つもしくは複数のアリールイタコネート、1つもしくは複数のアルキル(メタ)アクリルアミド、1つもしくは複数のアリール(メタ)アクリルアミドの1つもしくは複数またはその2つ以上の混合物から誘導される場合、本発明のグラフト化ポリマーは、ATRP媒介グラフト化SBRと称することができる。
【0037】
本発明の利点は、カルボニル含有化合物グラフト化ステップに用いられるATRP法のため、ポリマー主鎖へのペンダントカルボニル含有基のローディングを、制御重合によって比較的高く、例えば0.5〜30重量%または1〜10重量%にすることができることである。これによって、本発明のグラフト化ポリマーのすす分散能力を高めるより高いレベルの官能基化がもたらされる。
【0038】
本発明の他の態様によれば、本発明は:ポリマー主鎖にカルボニル含有基をグラフト化してグラフト化ポリマーを形成させるステップを含む方法であって;そのポリマー主鎖がブロックAの少なくとも1つおよびブロックBの少なくとも1つを含み、ブロックAが少なくとも1つのオレフィンブロックを含み、ブロックBが少なくとも1つのビニル芳香族ブロックを含み、ブロックAとブロックA+ブロックBの組合せとのモル比(すなわち、ブロックA中のモノマー単位とブロックA+ブロックBの組合せ中のモノマー単位とのモル比)が0.5〜0.9の範囲内にあり;そのカルボニル含有基がカルボン酸またはその誘導体から誘導され、その誘導体が無水物、ハロゲン化物またはアルキルエステルであり、そのカルボニル含有基がブロックB上でグラフト化されており、そのカルボニル含有基がエステル、イミドおよび/またはアミド官能基を提供するように任意選択でさらに置換されており;そのカルボニル含有基が、ブロックBのビニル芳香族炭素をハロゲン化し、次いで、活性化剤の存在下で、ブロックBのビニル芳香族炭素上のカルボン酸またはその誘導体をグラフト化することによってブロックB上でグラフト化されている方法に関する。
【0039】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、ブロックBをハロゲン含有化合物と接触させて反応混合物を生成させ、反応混合物を放射線照射することによって、ブロックBをハロゲン化する。
【0040】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、ハロゲン含有化合物は、臭素含有化合物、塩素含有化合物またはその混合物を含む。
【0041】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、活性化剤は、臭化銅(I)およびプロピル−ピリジン−2−イルメチレンアミンを含む。
【0042】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのポリマーは、脂肪族ジエンから誘導された繰り返し単位とアルキレンアレーンから誘導された繰り返し単位を含む。
【0043】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのポリマーは、スチレンおよびブタジエンから誘導された繰り返し単位を含む主鎖を含む。
【0044】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのカルボン酸誘導体は無水物を含む。
【0045】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、その無水物は無水マレイン酸を含む。
【0046】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、1000〜1,000,000の範囲または10,000〜250,000の範囲の重量平均分子量を有する。
【0047】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、グラフト化ポリマーは、1〜1.6の範囲または1.01〜1.55の範囲の多分散度を有する。
【0048】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのグラフト化ポリマーは水素化に使用可能な二重結合を含み、水素化に使用可能なその二重結合の50%〜100%、90%〜100%または95%〜100%が水素化されている。
【0049】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのイミドおよび/またはアミド官能基は窒素含有モノマーまたはアミンによって提供される。
【0050】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、その窒素含有モノマーまたはアミンは第一級および/または第二級窒素を含む。
【0051】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのアミンは、ファーストバイオレットB、ファーストブルーBB、ファーストブルーRR、アニリン、N−アルキルアニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチレート)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、ベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリン、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、チエニル置換アニリンまたはその2つ以上の混合物を含む。
【0052】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのアミン官能基は、N−p−ジフェニルアミン1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド;4−アニリノフェニルメタクリルアミド;4−アニリノフェニルマレイミド;4−アニリノフェニルイタコンアミド;4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリレートおよびメタクリレートエステル;p−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンとグリシジルメタクリレートの反応生成物;p−アミノジフェニルアミンとイソブチルアルデヒドの反応生成物、p−ヒドロキシジフェニルアミンの誘導体;フェノチアジンの誘導体;ジフェニルアミンのビニル含有誘導体またはその2つ以上の混合物の少なくとも1つから誘導される。
【0053】
本発明の方法のさらに他の態様によれば、そのアミンは、アミノジフェニルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノプロピルイミダゾール、ジメチルフェニルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、ファーストブルーRRまたはその2つ以上の混合物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書および特許請求の範囲で開示するすべての範囲および比の限界は、任意の仕方で組み合わせることができる。別段の具体的な言及のない限り、「a」、「an」および/または「the」への参照は、1つまたは2つ以上を含み、ある項目への単数での参照は複数のその項目も含むことができることを理解されたい。
【0055】
「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、その分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、支配的に炭化水素の特徴を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には:
(i)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基および芳香族−、脂肪族−および脂環−置換芳香族置換基ならびに環状置換基であって、その環が分子の他の部分を介して完成されている基(例えば、2つの置換基が一緒に環を形成する);
(ii)置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の関連において、その置換基の支配的に炭化水素の性質を変えない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)を含む置換基;
(iii)ヘテロ置換基、すなわち、支配的に炭化水素の特徴を有するが、本発明の関連において、環または鎖内に炭素以外を含む(その他は炭素原子を含む)置換基が含まれる。ヘテロ原子は、イオウ、酸素、窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。通常、ヒドロカルビル基中に多くて2つ、好ましくは多くて1つの非炭化水素置換基が炭素原子10個ごとに存在する。一般に、非炭化水素置換基はヒドロカルビル基中に存在しない。
【0056】
別段の指定のない限り、分子量は、ポリスチレン標準品を用いたゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。
【0057】
「分枝状アルキル基」という用語は、任意選択でさらに置換された分枝状アルキル基を含む。別途言及するように、ポリマー鎖上のアルキル分枝はそれ自体さらに分枝していてもしていなくてもよい。
【0058】
本明細書で説明する材料のいくつかは最終配合物中で相互作用し、その結果、最終配合物の成分が最初に加えられたものとは異なってくることがあることは公知である。本発明の組成物をその目的とする用途において用いると生成される生成物を含むそれによって形成される生成物は、容易に説明できるものではない。それでも、そうしたすべての改変体および反応生成物は本発明の範囲に含まれ;本発明は、本明細書で説明する成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【0059】
本明細書で参照する文献のそれぞれを参照により本明細書に組み込む。実施例においてまたは他に明瞭に示されている場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを指定する本説明または添付の特許請求の範囲におけるすべての数量は、「約」という単語で修飾されているものと理解されたい。別段の指定のない限り、本明細書で参照される化学品または組成物は、市販グレード品の中に存在すると一般に理解されている異性体、副生成物、誘導体およびそれ以外の物質を含む市販グレードの材料であると解釈されるべきである。しかし、各化学成分の量は、別段の指定のない限り、市販の材料中に慣行的に存在する任意の溶媒または希釈油を除いて示される。本明細書で示す量、範囲および比の限界の上限および下限は独立に組み合わせることができることを理解すべきである。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲および量と一緒に用いることができる。
【0060】
グラフト化ポリマー
グラフト化ポリマーは、ポリマー主鎖およびポリマー主鎖にグラフト化されたペンダントカルボニル含有基を含む。グラフト化ポリマーはブロックAおよびブロックBを含むことができる。これらは次式:
【0061】
【化1】

(式中、aおよびbはその対応するモノマー繰り返し単位についての係数であり、a/(a+b)の比は、0.5〜0.9、0.55〜0.8または0.6〜0.75であってよく;
はHまたはアルキルであり、ただし、R基の5モル%〜95モル%はアルキル基であってよく(一実施形態では、RはHではない);
はアレーン基またはアルキル置換アレーン基であり;
Eはアルキレン基またはアルケニレン基であり(一般にEはC基である);
Xはペンダントカルボニル含有基であり;
Yは水素またはアルキル基であり;
m、nおよびoは、上記した部分についての繰り返し単位数であり、ただし、各繰り返し単位はそのポリマーに妥当な数平均分子量を提供するのに十分な量で存在し、そのポリマーは重合末端基で終了しており、ただし、そのコポリマーがテーパー型コポリマーブロックを含む場合、Aは、38.5モル%超〜95モル%の分枝状の任意選択で置換されたアルキル基(すなわち、アルキル分枝基)を有する繰り返し単位を含む)
で表すことができる。
【0062】
グラフト化ポリマーは次式:
【0063】
【化2】

(式中、aおよびbはその対応するモノマー繰り返し単位についての係数であり、a/(a+b)の比は、0.5〜0.9、0.55〜0.8または0.6〜0.75であってよく;
は、H、t−アルキル、sec−アルキル、CH−、R’N−またはアリールであり;
はHまたはアルキルであり、ただし、ブロック(A)において、R基の5モル%〜95モル%はアルキル基であってよく;
はアレーン基またはアルキル置換アレーン基であり;
は、Hまたはアルキルなどの重合末端基であり;
Eはアルキレン基またはアルケニレン基であり(一般にEはC基である);
Xはペンダントカルボニル含有基であり;
Yは水素またはアルキル基であり;
R’はヒドロカルビル基であり、
m、nおよびoは上記した部分についての繰り返し単位数であり、ただし、各繰り返し単位はその水素化コポリマーに妥当な数平均分子量を提供するのに十分な量で存在し、ただし、そのコポリマーがテーパー型コポリマーを含む場合、ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分枝状の任意選択で置換されたアルキル基(すなわち、アルキル分枝基)を有する繰り返し単位を含む)
で表すことができる。
【0064】
グラフト化ポリマーは:
(a)(i)少なくとも1つのビニル芳香族ブロックと(ii)少なくとも1つのオレフィンブロックを重合するステップであって、そのポリマーが、使用できる二重結合(芳香族不飽和を含まない)の50%〜100%、90%〜100%または95%〜100%で任意選択で水素化されていてよいステップと、続く以下のステップ(b)および任意選択のステップ(c)、すなわち;
(b)ステップ(a)からのポリマー上のカルボニル含有基を、ビニル芳香族ブロックのビニル芳香族炭素の1つまたは複数をハロゲン化(例えば、臭素化または塩素化)し、次いでそのハロゲン化されたビニル芳香族炭素を、活性化剤の存在下でカルボン酸またはその誘導体(例えば、無水マレイン酸、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アルキルイタコネート、アリールイタコネート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アリール(メタ)アクリルアミドまたはその2つ以上の混合物)と反応させることによってグラフト化するステップであって、そのグラフト化ポリマーがポリマー主鎖および1つまたは複数のペンダントカルボニル含有基を含むステップと;
(c)ステップ(b)のグラフト化ポリマーを、アルコール、アミンおよび/または窒素含有モノマーの少なくとも1つと任意選択で反応させて官能基化ポリマーを生成(一般にエステル、アミドおよび/またはイミドを生成)するステップと
を含む方法で作製することができる。
【0065】
ブロックAは、1つまたは複数の脂肪族ジエン、例えばブタジエンから誘導することができる。Aで表されるブロックを形成するのに使用される適切なジエンは、1,4−ブタジエンまたはイソプレンを含むことができる。そのジエンは1,4−ブタジエンを含むことができる。一実施形態では、ブロックAは、イソプレンを実質的に含まないかまたはイソプレンを含まなくてよい。
【0066】
本明細書で用いる「イソプレンを実質的に含まない」という用語は、そのポリマーが、多くて不純物レベル、一般にポリマーの1モル%未満、ポリマーの0.05モル%以下、ポリマーの0.01モル%以下またはポリマーの0モル%でイソプレンを含むことを意味する。
【0067】
ジエンは、1,2付加かまたは1,4付加によって重合することができる。1,2付加の程度は、アルキル基分枝(本明細書ではRとも定義される)を有する繰り返し単位の相対量によって定義することができる。最初に形成された任意のペンダント不飽和基またはビニル基は水素化によって、アルキル分枝(「分枝状アルキル基」)となることができる。
【0068】
ブロックA(テーパー型コポリマーにおいてではない場合)は、20モル%〜80モル%、25モル%〜75モル%、30モル%〜70モル%または40モル%〜65モル%のアルキル基分枝を有する繰り返し単位を含むことができる。
【0069】
テーパー型コポリマーは、40モル%〜80モル%または50モル%〜75モル%の分枝状アルキル基(またはビニル基)の繰り返し単位を含むブロックAを含むことができる。
【0070】
ブロックBは、1つまたは複数のビニル芳香族モノマーから誘導することができる。ビニル芳香族モノマーはアルキレンアレーンであってよい。これらは、スチレンまたはアルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレン、パラ−tert−ブチルスチレン、α−エチルスチレンおよびパラ−低級アルコキシスチレン)を含むことができる。一実施形態では、ビニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0071】
ポリマー主鎖はアニオン重合法で作製することができる。理論に拘泥するわけではないが、アルカリ金属および/または有機金属化合物を含むアニオン重合開始剤は、様々な金属と対イオンおよび/または溶媒との間の相互作用に敏感であると考えられる。多量の1,2付加を含んで重合したジエンをより多く含むポリマーを調製するためには、極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)を使用するのが一般的である。さらに、小さい原子質量を有する開始剤を使用する(例えば、セシウムではなくリチウムを使用する)ことが適切である。異なる実施形態では、ブチルリチウムまたはブチルナトリウムを開始剤として使用することができる。0℃未満または−20℃以下などの一般的なアニオン重合温度を用いることができる。より多い量のジエン1,2付加立体特異性を有するポリマーを調製するのに適した方法のより詳細な説明は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、Third Edition、4巻、316〜317頁またはAnionic Polymerisation、Principles and Practical Applications、Edited by Henry L. Hsieh and Roderic P. Quirk、209および217頁、1996年、Marcel Dekkerに記載されている。
【0072】
オレフィンブロックは、米国特許番号第5,753,778号(段落3、1〜33行に、ポリマーを選択的に水素化するためのアルキルリチウム開始剤を用いる方法を開示);同第5,910,566号(段落3、13〜43行に、共役ジエンを水素化するのに適したプロセス、溶媒および触媒を開示);同第5,994,477号(段落3、24行〜段落4、32行に、ポリマーを選択的に水素化するための方法を開示);同第6,020,439号(段落3、30〜52行に、適切な触媒を開示);および同第6,040,390号(段落9、2〜17行に、適切な触媒を開示)に記載されているプロセスまたは方法を用いることによって、大量の1,2付加(例えば、5モル%〜95モル%の分枝基)により形成させることができる。一般に、これらの特許の実施例に開示されている1,2付加の量は、ブタジエン単位の30〜42%の範囲である)。
【0073】
ポリマー主鎖は、スチレンおよびブタジエンから、5モル%〜95モル%のブタジエンを用いて誘導することができる。そうした材料の例は、120,000の数平均分子量および30重量%のスチレン含有量を有するSBRであるLubrizol(登録商標)7408Aである。
【0074】
ポリマー主鎖は、Dyne623−14またはDyne623−18という名称でDynasolから入手できるSBRの1つから誘導することができる。Dyne623−14は、130,000の数平均分子量および30重量%のスチレン含有量を有する。Dyne623−18は、90,000の数平均分子量および30重量%のスチレン含有量を有する。
【0075】
ポリマー主鎖でのカルボニル含有基のグラフト化は、ポリマー主鎖のビニル芳香族炭素の1つまたは複数をハロゲン化(例えば、臭素化または塩素化)し、続いて、ハロゲン化されたビニル芳香族炭素を、活性化剤の存在下でカルボン酸またはその誘導体と反応させることを含むことができる。カルボン酸誘導体は、無水マレイン酸、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アルキルイタコネート、アリールイタコネート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アリール(メタ)アクリルアミドまたはその2つ以上の混合物を含むことができる。ポリマー主鎖のビニル芳香族炭素のハロゲン化(例えば、臭素化または塩素化)は、ポリマーを溶媒中でハロゲン(例えば、臭素または塩素)含有化合物と混合して反応混合物を生成させ、次いで、その反応混合物を、ハロゲン(例えば、臭素または塩素)原子をポリマー主鎖のビニル芳香族炭素と結合させるのに効果的な時間、熱(任意選択でラジカル開始剤などの活性化剤を用いて)、放射線または超音波にかけることによって実施することができる。ハロゲン含有化合物は、臭素含有化合物または塩素含有化合物であってよい。使用できる臭素含有化合物の例にはN−ブロモスクシンイミド(NBS)が含まれる。使用できる塩素含有化合物の例には、N−クロロスクシンイミド(NCS)、塩素、クロラミンT(N−クロロトシルアミドナトリウム塩)または次亜塩素tert−ブチルが含まれる。使用できる溶媒の例には、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルムまたは四塩化炭素が含まれる。放射線または光は、適切な供給源、例えば加熱ランプで提供することができる。ハロゲン化ステップの間の反応混合物の温度は10℃〜100℃または30℃〜60℃の範囲であってよい。ハロゲン化ステップの間の溶媒中のポリマー濃度は、キログラム当たり10〜500グラム(g/kg)または100〜250g/kgの範囲であってよい。溶媒中のハロゲン含有化合物の濃度は1〜100g/kgまたは5〜50g/kgの範囲であってよい。反応混合物は、所望数のビニル芳香族誘導炭素がハロゲン化されるまで反応させることができる。このプロセスは約30分間から数時間かかる。生成物は、ハロゲン化(例えば、臭素化または塩素化)されたポリマーと見なすことができる。このハロゲン化ポリマーは、イソプロパノール中での沈澱などの慣用的な手法を用いて溶媒から分離し、次いで乾燥することができる。反応は、例えば以下の式で表される。以下の式において、Rは、Hまたは1〜10個の炭素原子もしくは1〜4個の炭素原子のアルキル基であってよい。
【0076】
【化3】

ハロゲン化ポリマーをカルボン酸またはその誘導体と反応させてグラフト化ポリマーを生成させることができる。反応は、活性化剤の存在下、溶媒中で実施することができる。活性化剤は、臭化銅(I)をプロピルピリジン−2−イルメチレン−アミンなどの配位子と一緒に含むことができる。使用できる他の活性化剤は、Fe、Rh、Ru、Mn、NiまたはPdを含有する化合物を含むことができる。使用できる他の配位子は、
【0077】
【化4】

(式中、Rは、H、C〜C12アルキルまたはC〜Cアルキル基であってよく;nは0〜4または0〜2であってよい)
で示すような一般構造を含むことができる。具体的な例には、2,2’−ビピリジン;3−ブチルピリジン;N1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−N1,N2,N2−トリメチルエタン−1,2−ジアミンおよびN1,N1−ビス(2−(ジメチルアミノ)エチル)−N2,N2−ジメチルエタン−1,2−ジアミンまたはその2つ以上の混合物が含まれ得る。
【0078】
その溶媒には、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゼンまたはその2つ以上の混合物が含まれる。
【0079】
そのカルボン酸誘導体には、その無水物、ハロゲン化アシル、低級アルキル(すなわち、最大で7個の炭素原子)エステル、アミド、イミドまたはその2つ以上の混合物が含まれる。これらには、モノカルボン酸(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸)およびエステル、例えばその低級アルキルエステルならびにジカルボン酸、無水物およびエステル、例えばその低級アルキルエステルが含まれる。ジカルボン酸、無水物およびエステルの例には、マレイン酸または無水物、フマル酸またはエステル、例えば低級アルキル、すなわち、アルキルエステル基上に7個以下の炭素原子を含むものが含まれる。
【0080】
ジカルボン酸、無水物およびエステルは以下の式の群:
【0081】
【化5】

【0082】
【化6】

で表すことができる。これらの式において、Rは、水素または最大で8個の炭素原子のヒドロカルビル、例えばアルキル、アルカリルまたはアリールであってよい。各R’は独立に、水素または最大で7個の炭素原子のヒドロカルビル、例えば低級アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチルまたはヘプチル)であってよい。R’’は独立に、芳香族(単環式または縮合多環式)炭化水素であってよく、芳香族アミンまたはポリアミンの代表例は以下で説明する。そのジカルボン酸、無水物またはアルキルエステルは一般に合計で最大で25個の炭素原子または最大で15個の炭素原子を含む。その例には、マレイン酸もしくはその無水物またはスクシンイミド誘導体;ベンジルマレイン酸無水物;クロロマレイン酸無水物;マレイン酸ヘプチル;イタコン酸または無水物;シトラコン酸または無水物;フマル酸エチル;フマル酸;メサコン酸;エチルイソプロピルマレエート;フマル酸イソプロピル;ヘキシルメチルマレエートおよびフェニルマレイン酸無水物が含まれる。これらの誘導体には、無水マレイン酸、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アルキルイタコネート、アリールイタコネート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アリール(メタ)アクリルアミド)またはその2つ以上の混合物が含まれる。無水マレイン酸(MAA)、マレイン酸およびフマル酸ならびにその低級アルキルエステルがしばしば用いられる。
【0083】
グラフト化ステップの間の溶媒中のハロゲン化ポリマーの濃度は、1〜70重量%または10〜50重量%の範囲であってよい。溶媒中のカルボン酸またはその誘導体の濃度は、0.1〜20重量%または0.5〜10重量%の範囲であってよい。ハロゲン含有化合物(例えば、臭化銅(I))の濃度は、0.01〜10重量%または0.2〜5重量%の範囲であってよい。溶媒中の配位子の濃度は、0.01〜10重量%または0.2〜5重量%の範囲であってよい。反応温度は50℃〜200℃または90℃〜150℃の範囲であってよい。反応は、ポリマー主鎖へのカルボニル含有基の所望レベルのローディングが達成されるまで実施することができる。ポリマー主鎖上へのカルボニル含有基のローディングは、0.5〜20重量%または1〜5重量%であってよい。ポリマーは、沈澱などの慣用的な手法を用いて溶媒から分離し、次いで乾燥することができる。
【0084】
ポリマー主鎖上でのカルボニル含有基のグラフト化は以下の反応式:
【0085】
【化7】

によって表すことができる。
【0086】
グラフト化ポリマーの重量平均分子量は、1000〜1,000,000、5,000〜500,000、10,000〜250,000または50,000〜175,000の範囲であってよい。
【0087】
グラフト化ポリマーの多分散度は1〜1.6、1.01〜1.55、1〜1.4または1.01〜1.2の範囲であってよい。
【0088】
グラフト化ポリマーは、5〜70モル%、10モル%〜60モル%または20モル%〜60モル%のアルケニルアレーンモノマー、例えばスチレンから誘導される主鎖を含むことができる。
【0089】
グラフト化ポリマーは、30〜95モル%、40モル%〜90モル%または40モル%〜80モル%のオレフィンモノマー、一般にジエン、例えばブタジエンから誘導される主鎖を含むことができる。
【0090】
グラフト化ポリマーは、ブロックコポリマーであってよく、規則型、ランダム型、テーパー型または交互型の構造を含むことができる。ブロックコポリマーは、ジ−ブロックABコポリマーであってもトリ−ブロックABAコポリマーであってもよい。しばしばそのポリマーはジ−ブロックABコポリマーである。一実施形態では、そのポリマーは、テーパー型コポリマー以外のポリマーである。
【0091】
グラフト化ポリマーは、連続ブロック、ランダムブロックまたは規則型のブロックコポリマーであってよい。一実施形態では、グラフト化ポリマーは連続ブロックコポリマーである。
【0092】
本明細書で用いる「連続ブロックコポリマー」という用語は、そのコポリマーが、それぞれが単一のモノマーでできている離散的なブロック(AおよびB)からなることを意味する。その例は、A−B型またはB−A−B型構造を有するものを含む連続ブロックコポリマーを含む。
【0093】
グラフト化ポリマーは直鎖状または分枝状コポリマーであってよい。
【0094】
グラフト化ポリマーはジブロック連続ブロックコポリマーであってもジブロック直鎖(normal)ジブロックコポリマーであってもよい。
【0095】
一実施形態では、グラフト化ポリマーは、トリブロックまたはより高次のブロックコポリマーではない。
【0096】
アルコール官能基化ポリマー
一実施形態では、本発明のグラフト化ポリマーは、一般に、当業界で公知のエステル生成条件下でのカルボニル含有官能基とアルコールの反応によるエステル基をさらに含む。適切なアルコールは1〜40個または6〜30個の炭素原子を含むことができる。
【0097】
適切なアルコールの例には、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100;ICIのAlphanol(登録商標)79;Condea(現在Sasol)のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810;Ethyl CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810;Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25L;Condea Augusta、MilanのLial(登録商標)125;Henkel KGaA(現在Cognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)ならびにUgine Kuhlmann Linopol(登録商標)7−11およびAcropol(登録商標)91が含まれる。
【0098】
アミン官能基化ポリマー
本発明のグラフト化ポリマーは窒素含有基をさらに含むことができる。グラフト化ポリマーのカルボニル含有基を、当業界で公知のアミドおよび/またはイミド形成条件下で窒素含有モノマーまたはアミンと反応させてアミドおよび/またはイミド基を含むアミン官能基化ポリマーを生成することができる。窒素含有モノマーまたはアミンは、第一級および/または第二級窒素を含むことができる。
【0099】
適切な窒素含有モノマーの例には、(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリレートモノマー(ここで「(メタ)アクリレート」または「(メタ)アクリルアミド」は、アクリル物質またはメタクリル物質の両方を表す)が含まれ得る。一般に、窒素含有化合物は、(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリレートモノマーを含み、次式:
【0100】
【化8】

(式中、
Qは水素またはメチルであり、一実施形態では、Qはメチルであり;
ZはN−H基またはO(酸素)であり;
各R’’’は独立に、水素または1〜2個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、一実施形態では、各R’’’は水素であり;
各Rivは独立に、水素または1〜8個もしくは1〜4個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;
gは1〜6の整数であり、一実施形態では、gは1〜3である)
で表すことができる。
【0101】
適切な窒素含有モノマーの例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカルボンアミド(例えば、N−ビニル−ホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−プロピオンアミド、N−ビニル−i−プロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミンプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドまたはその混合物が含まれる。
【0102】
アミンは芳香族であってよい。芳香族アミンには、一般構造NH−ArまたはT−NH−Ar(Tはアルキルまたは芳香族基であってよく、Arは窒素含有芳香族基を含む芳香族基であり、Ar基は以下の構造:
【0103】
【化9】

ならびに複数の非縮合または結合芳香族環のいずれかを含む)
で表すことができるものが含まれる。これらおよび関連の構造において、R、RviおよびRviiは独立に、本明細書で開示する基の中でとりわけ、−H、−C1〜18アルキル基、ニトロ基、−NH−Ar、−N=N−Ar、−NH−CO−Ar、−OOC−Ar、−OOC−C1〜18アルキル、−COO−C1〜18アルキル、−OH、−O−(CHCH−O)nC1〜18アルキル基および−O−(CHCHO)Ar(nは0〜10である)であってよい。
【0104】
芳香族アミンには、芳香族環構造の炭素原子がアミノ窒素と直接結合しているアミンが含まれる。アミンはモノアミンまたはポリアミンであってよい。芳香族環は一般に単環芳香族環(すなわち、ベンゼンから誘導されたもの)であるが、縮合芳香族環、特にナフタレンから誘導されたものを含むことができる。芳香族アミンの例には、アニリン、N−アルキルアニリン、例えばN−メチルアニリンおよびN−ブチルアニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン(ディスパースオレンジ3)、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチレート)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、種々のベンジルアミン、例えば2,5−ジメトキシベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリンおよびこれらの置換されたバージョンが含まれる。他の例には、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミンおよびチエニル置換アニリンが含まれる。他の適切な芳香族アミンの例には、その中でアミン窒素が芳香族環の一部であるアミノ置換芳香族化合物およびアミン、例えば3−アミノキノリン、5−アミノキノリンおよび8−アミノキノリンが含まれる。芳香族環と直接結合した1つの第二級アミノ基およびイミダゾール環と結合した第一級アミノ基を含む2−アミノベンズイミダゾールなどの芳香族アミンも含まれる。他のアミンには、N−(4−アニリノフェニル)−3−アミノブタンアミドまたは3−アミノプロピルイミダゾールが含まれる。さらに他のアミンには、2,5−ジメトキシベンジルアミンが含まれる。
【0105】
追加的な芳香族アミンおよび関連する化合物は、米国特許第6,107,257号および同第6,107,258号に開示されており;これらのいくつかには、アミノカルバゾール、ベンゾイミダゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノ−インダゾリノン、メルカプトトリアゾール、アミノフェノチアジン、アミノピリジン、アミノピラジン、アミノピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、アミノチアジアゾール、アミノチオチアジアゾールおよびアミノベンゾトリアゾール(aminobenzotriaozle)が含まれる。他の適切なアミンには、3−アミノ−N−(4−アニリノフェニル)−N−イソプロピルブタンアミドおよびN−(4−アニリノフェニル)−3−{(3−アミノプロピル)−(ココアルキル)アミノ}ブタンアミドが含まれる。使用できる他の芳香族アミンには、例えばアミド構造で連結された複数の芳香族環を含む種々の芳香族アミン染料中間体が含まれる。その例には一般構造
【0106】
【化10】

の物質およびその異性体が含まれる。ここでRviiiおよびRixは独立に、メチル、メトキシまたはエトキシなどのアルキルまたはアルコキシ基である。一例では、RviiiとRixはどちらも−OCHであり、この物質は、ファーストブルーRR、[CAS番号6268−05−9]として公知である。
【0107】
他の例では、Rixが−OCHであり、Rviiiが−CHである。この物質はファーストバイオレットB[99−21−8]として公知である。RviiiとRixの両方がエトキシである場合、この物質はファーストブルーBB[120−00−3]である。米国特許第5,744,429号は他の芳香族アミン化合物、具体的にはアミノアルキルフェノチアジンを開示している。米国特許出願第2003/0030033A1号に開示されているものなどのN−芳香族置換酸アミド化合物も本発明のために使用することができる。適切な芳香族アミンには、その中でアミン窒素が芳香族カルボン酸化合物(carboxyclic compound)上の置換基である、すなわち、芳香族環内でその窒素がsp混成していないものが含まれる。
【0108】
芳香族アミンは、ペンダントカルボニル含有基と縮合できるN−H基を有していてよい。特定の芳香族アミンは、酸化防止剤として一般的に使用される。その関連で特に重要なものは、ノニルジフェニルアミンおよびジノニルジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミンである。これらの物質がポリマー鎖のカルボン酸官能基と縮合する限り、それらも、本発明において使用するのに適している。しかし、アミン窒素と結合した2つの芳香族基は、立体障害および反応性の低下をもたらす可能性があると考えられる。したがって、適切なアミンには、ヒドロカルビル置換基の1つが比較的短鎖のアルキル基、例えばメチルである第一級窒素原子(−NH)または第二級窒素原子を有するものが含まれる。そうした芳香族アミンの中には、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノジフェニルアミン、2−アミノベンズイミダゾールおよびN,N−ジメチルフェニレンジアミンがある。これらおよび他の芳香族アミンのいくつかは、分散性や他の特性に加えて酸化防止性能もポリマーに付与することができる。
【0109】
本発明の一実施形態では、反応生成物のアミン成分は、ポリマーのカルボン酸官能基と縮合できる少なくとも2つのN−H基を有するアミンをさらに含む。カルボン酸官能基を含む2つのポリマーを一緒に連結するのに用いることができるので、この物質を以後「連結アミン」と称する。より高分子量の物質の方が向上した性能を提供することができることが分かっており、これは、その物質の分子量を増大させる1つの方法である。連結アミンは、脂肪族アミンであっても芳香族アミンであってもよく;それが芳香族アミンである場合、それは上記の芳香族アミンに加えてかつそれとは別個の要素であると考えられる。ポリマー鎖の過剰な架橋を避けるために、これは一般に1つだけの縮合可能なまたは反応性のNH基しかもたないようにされる。そうした連結アミンの例には、ヘプチレンジアミン、フェニレンジアミンおよび2,4−ジアミノトルエンが含まれ;その他にはプロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよび他のω−ポリメチレンジアミンが含まれる。そうした連結アミン上の反応性官能基の量は、望むなら、化学量論量より少ない量のヒドロカルビル置換コハク酸無水物などのブロッキング物質と反応させることによって減少させることができる。
【0110】
一実施形態では、アミンは、ポリマー主鎖と直接反応することができる窒素含有化合物を含む。適切なアミンの例には、N−p−ジフェニルアミン1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、4−アニリノフェニルメタクリルアミド、4−アニリノフェニルマレイミド、4−アニリノフェニルイタコンアミド、4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリレートおよびメタクリレートエステル、p−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンとグリシジルメタクリレートの反応生成物、p−アミノジフェニルアミンとイソブチルアルデヒドの反応生成物、p−ヒドロキシジフェニルアミンの誘導体;フェノチアジンの誘導体、ジフェニルアミンのビニル性誘導体またはその混合物が含まれる。
【0111】
アミンは、アミノジフェニルアミン(ADPA)、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノプロピルイミダゾール、ジメチルフェニルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、ファーストブルーRRまたはその2つ以上の混合物を含むことができる。
【0112】
グラフト化ポリマーをアミンで官能基化させるための反応は以下の式:
【0113】
【化11】

で表すことができる。
【0114】
濃縮物および潤滑組成物
グラフト化ポリマーは濃縮物の形態で提供することができる。その濃縮物は、グラフト化ポリマーおよび希釈剤を含むことができる。希釈剤は以下で論じるオイルのいずれであってもよい。グラフト化ポリマーは、十分に配合された潤滑組成物で使用することができる。本発明のグラフト化ポリマーが濃縮物の形態である場合(追加のオイルと合わせて、全体的にまたは部分的に十分に配合された潤滑油を形成していてよい)、グラフト化ポリマーと希釈剤の比は、重量で1:99〜99:1または重量で80:20〜10:90であってよい。
【0115】
十分に配合された潤滑組成物は、多量の潤滑粘性油および少量の分散性粘度調整量のグラフト化ポリマーを含むことができる。潤滑組成物中のグラフト化ポリマーの濃度は、100〜100,000パーツパーミリオン(ppm)、5000〜15,000ppmまたは7000〜9000ppmの範囲または8000ppmであってよい。
【0116】
濃縮物および潤滑組成物は任意選択で他の性能添加剤を含むことができる。他の性能添加剤は、金属不活性化剤、慣用的な洗剤(当業界で公知の方法で調製された洗剤)、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、防蝕剤、分散性粘度調整剤、極圧添加剤、抗スカフィング剤(antiscuffing agent)、酸化防止剤、発泡防止剤、乳化破壊剤、流動点降下剤、シール膨張剤およびその混合物の少なくとも1つを含むことができる。一般に、十分に配合された潤滑油はこれらの性能添加剤の1つまたは複数を含む。
【0117】
潤滑粘性油
潤滑粘性油は、天然オイルおよび/または合成オイルであってよい。そのオイルは、水素化分解、水素化、水素処理された未精製、精製または再精製のオイルまたはその2つ以上の混合物を含むことができる。
【0118】
未精製オイルは、天然または合成の供給源から、通常さらなる精製処理を用いない(または殆ど用いない)で直接得られるものである。
【0119】
精製オイルは、1つまたは複数の特性を改善するために1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されていること以外は、未精製オイルと同様である。精製技術は当業界で公知であり、それは、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどを含む。
【0120】
再精製オイルは再生油(reclaimed oil)または再処理油(reprocessed oil)としても公知であり、精製オイルを得るのに用いられるのと同様のプロセスで得られ、しばしば、使用済み添加剤およびオイル分解産物の除去を対象とした技術でさらに処理される。
【0121】
天然オイルには、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、パラフィン系、ナフテン系またはパラフィン−ナフテン混合系の流動パラフィン油(liquid petroleum oil)および溶媒処理または酸処理した鉱物性潤滑油などの鉱物性潤滑油ならびに石炭またはシェールから誘導されたオイルまたはその混合物が含まれる。
【0122】
合成オイルには、重合化およびインターポリマー化したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1−ヘキセン、ポリ(1−オクテン、ポリ(1−デセン)およびその混合物;アルキル−ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにその誘導体、類似体および同族体またはその混合物が含まれる。
【0123】
使用できる他の合成オイルには、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチルおよびデカンリン酸のジエチルエステル)およびポリマーテトラヒドロフランが含まれる。合成オイルは、フィッシャートロプシュ反応で製造することができ、一般に、水素異性化されたフィッシャートロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。一実施形態では、オイルを、フィッシャートロプシュガスツーリキッド合成手順ならびに他のガスツーリキッドオイルにより調製することができる。
【0124】
オイルは、アメリカ石油協会(API)基油互換性指針(American Petroleum Institute(API)Base oil Interchangeability Guidelines)で指定された1つまたは複数のオイルを含むことができる。5つの基油グループは以下の通りである:グループI(イオウ含有量>0.03重量%および/または<90重量%の飽和分、粘度指数80〜120);グループII(イオウ含有量≦0.03重量%および≧90重量%の飽和分、粘度指数80〜120);グループIII(イオウ含有量≦0.03重量%および≧90重量%の飽和分、粘度指数≧120);グループIV(すべてポリアルファオレフィン(PAO));およびグループV(グループI、II、IIIまたはIVに含まれない他のすべてのもの)。潤滑粘性油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVオイルまたはその混合物を含む。潤滑粘性油はしばしば、APIグループI、グループII、グループIII、グループIVオイルまたはその混合物である。あるいは、潤滑粘性油はしばしば、APIグループI、グループII、グループIIIオイルまたはその混合物である。一実施形態では、そのオイルはグループIIIオイルである。
【0125】
分散剤
潤滑油組成物中で混合する前にそれらは灰分生成金属を含まず、かつ潤滑油およびポリマー分散剤に添加されたとき灰分生成金属に通常何ら寄与しないので、分散剤はしばしば無灰型または無灰分散剤として公知である。無灰型分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖と結合した極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤にはN置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、350〜5000または500〜3000の範囲の数平均分子量のポリイソブチレン置換基を有するポリイソブチレンスクシンイミドが含まれる。スクシンイミド分散剤およびその調製は、例えば米国特許第4,234,435号に開示されている。スクシンイミド分散剤は一般にポリアミン、通常ポリエチレンポリアミンから形成されるイミドである。
【0126】
一実施形態では、本発明は、350〜5000または500〜3000の範囲の数平均分子量のポリイソブチレン成分を有するポリイソブチレンスクシンイミドから誘導される少なくとも1つの分散剤をさらに含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは単独でもまた他の分散剤と組み合わせても使用することができる。
【0127】
一実施形態では、本発明は、ポリイソブチレン、アミンおよび酸化亜鉛から誘導されて亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体を形成する少なくとも1つの分散剤をさらに含む。亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体は単独でもまた組み合わせても使用することができる。
【0128】
別の部類の無灰分散剤はマンニッヒ塩基である。マンニッヒ分散剤は、アルキルフェノールとアルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)の反応生成物である。アルキル基は通常少なくとも30個の炭素原子を含む。
【0129】
分散剤は、様々な薬剤のいずれかとの反応による慣用的な方法で後処理されていてもよい。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、リン化合物および/または金属化合物がある。
【0130】
分散剤は、潤滑組成物の0重量%〜20重量%、0.1重量%〜15重量%、0.1重量%〜10重量%、1重量%〜6重量%または7重量%〜12重量%で存在していてよい。
【0131】
洗剤
潤滑組成物は任意選択で他の公知の中性または塩基過剰の洗剤をさらに含む。適切な洗剤基体には、フェネート、イオウ含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ−および/またはジ−チオリン酸、アルキルフェノール、イオウ結合アルキルフェノール化合物またはサリゲニンが含まれる。種々の塩基過剰洗剤およびその調製方法は、WO2004/096957を含む多くの特許公開およびそこに引用されている文献に、より詳細に記載されている。
【0132】
洗剤は、0重量%〜10重量%、0.1重量%〜8重量%もしくは1重量%〜4重量%または4超〜8重量%存在していてよい。
【0133】
酸化防止剤
酸化防止化合物は公知であり、それらには、例えば硫化オレフィン、ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(ジチオカルバミン酸モリブデンなど)およびその混合物が含まれる。酸化防止化合物は単独でもまた組み合わせても使用することができる。酸化防止剤は、潤滑組成物の0重量%〜20重量%、0.1重量%〜10重量%または1重量%〜5重量%の範囲で存在することができる。
【0134】
芳香族アミン酸化防止剤には、次式
【0135】
【化12】

(式中、Rは、フェニル基、ナフチル基またはRで置換されたフェニル基などの芳香族基であってよく、RおよびRは独立に、水素または1〜24個、4〜20個もしくは6〜12個の炭素原子を含むアルキル基であってよい)
からなるものが含まれる。一実施形態では、芳香族アミン酸化防止剤は、次式
【0136】
【化13】

のノニル化ジフェニルアミンまたはジ−ノニル化とモノ−ノニル化ジフェニルアミンの混合物などのアルキル化ジフェニルアミンを含むことができる。
【0137】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基(sterically hindering group)としてsec−ブチルおよび/またはtert−ブチル基をしばしば含む。フェノール基はしばしば、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基と結合している橋掛け基でさらに置換されている。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが含まれる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤はエステルであり、例えばCiba社のIrganox(商標)L−135を含むことができる。適切なエステル含有ヒンダードフェノール酸化防止剤の化学のより詳細な説明は米国特許第6,559,105号に記載されている。
【0138】
酸化防止剤として使用できるジチオカルバミン酸モリブデンの適切な例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan822(商標)およびMolyvan(商標)AならびにAsahi Denka Kogyo K.KからのAdeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165およびS−600などの商標名で販売されている市販の材料ならびにその混合物が含まれる。
【0139】
粘度調整剤
本発明のグラフト化ポリマーは分散性粘度調整剤として働くことができるが、他の種類の追加の粘度調整剤も存在していてよい。これらの粘度調整剤は周知の材料であり、それらには、水素化スチレン−ブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンコポリマー、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリ(メタ)アクリレート(しばしばポリアルキルメタクリレート)、ポリアルキルスチレン、ポリオレフィンおよび無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルまたはその混合物が含まれる。そうした追加の粘度調整剤は、潤滑組成物の0重量%〜15重量%、0.1重量%〜10重量%または1重量%〜5重量%を含む範囲で存在していてよい。
【0140】
摩耗防止剤
潤滑組成物は任意選択で少なくとも1つの他の摩耗防止剤をさらに含む。摩耗防止剤は、潤滑組成物の0重量%〜15重量%、0.1重量%〜10重量%または1重量%〜8重量%を含む範囲で存在していてよい。適切な摩耗防止剤の例には、リン酸エステル、硫化オレフィンが含まれ、イオウ含有無灰耐摩耗添加剤は、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(亜鉛ジアルキルジチオホスフェートなど)、チオカーバメート含有化合物、例えばチオカーバメートエステル、チオカーバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカーバメートおよびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドである。
【0141】
ジチオカーバメート含有化合物は、ジチオカーバメートの酸または塩を不飽和化合物と反応させることによって調製することができる。ジチオカーバメート含有化合物は、アミン、二硫化炭素および不飽和化合物を同時に反応させることによって調製することもできる。一般に、反応は25℃〜125℃の温度を行う。米国特許第4,758,362号および同第4,997,969号は、ジチオカーバメート化合物およびその製造方法を記載している。
【0142】
硫化して硫化オレフィンを生成させることができる適切なオレフィンの例には、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ウンデシル、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン(octadecenene)、ノノデセン(nonodecene)、エイコセンまたはその混合物が含まれる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノノデセン、エイコセンまたはその混合物ならびにその二量体、三量体および四量体は特に有用なオレフィンである。あるいは、オレフィンは、1,3−ブタジエンなどのジエンとブチルアクリレートなどの不飽和エステルのディールスアルダー付加体であってよい。
【0143】
他の部類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は植物油または動物油からしばしば得られ;それらは一般に4〜22個の炭素原子を含む。適切な脂肪酸およびそのエステルの例には、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸またはその混合物が含まれる。しばしば、その脂肪酸は、ラード油、トールオイル、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油またはその混合物から得られる。一実施形態では、脂肪酸および/またはエステルをオレフィンと混合する。
【0144】
代替の実施形態では、無灰摩耗防止剤は、ポリオールと脂肪族カルボン酸、しばしば12〜24個の炭素原子を含む酸とのモノエステルであってよい。しばしば、ポリオールと脂肪族カルボン酸のモノエステルはヒマワリ油または同様のものとの混合物の形態であり、それは摩擦調整剤混合物中に、前記混合物の5〜95重量%、また他の実施形態では10〜90、20〜85または20〜80重量%存在していてよい。エステルを形成する脂肪族カルボン酸(特にモノカルボン酸)は、一般に12〜24個または14〜20個の炭素原子を含む酸である。カルボン酸の例には、ドデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸およびオレイン酸が含まれる。
【0145】
ポリオールには、ジオール、トリオールおよびより多くのアルコール性OH基を有するアルコールが含まれる。多価アルコールには、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールを含むエチレングリコール;ジ−、トリ−およびテトラプロピレングリコールを含むプロピレングリコール;グリセロール;ブタンジオール;ヘキサンジオール;ソルビトール;アラビトール;マンニトール;スクロース;フルクトース;グルコース;シクロヘキサンジオール;エリスリトールならびにジ−およびトリペンタエリスリトールを含むペンタエリスリトールが含まれる。しばしば、ポリオールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールである。
【0146】
「グリセロールモノオレエート」として公知の市販のモノエステルは、60±5重量%の化学種グリセロールモノオレエートを、35±5%のグリセロールジオレエートならびに5%未満のトリオレエートおよびオレイン酸と一緒に含むと考えられる。上記したモノエステルの量は、そうした任意の混合物中に存在するポリオールモノエステルの修正された実際の量をもとにして算出される。
【0147】
抗スカフィング剤
潤滑組成物は抗スカフィング剤も含むことができる。抗スカフィング剤化合物は付着摩耗を減少させると考えられており、それらはしばしばイオウ含有化合物である。一般に、イオウ含有化合物には、有機スルフィドおよびポリスルフィド、例えばジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールスアルダー付加体、アルキルスルフェニルN,N−ジアルキルジチオカーバメート、ポリアミンと多塩基酸エステルの反応生成物、2,3−ジブロモプロポキシイソ酪酸のクロロブチルエステル、ジアルキルジチオカルバミン酸のアセトキシメチルエステルおよびキサントゲン酸のアシルオキシアルキルエーテルならびにその混合物が含まれる。
【0148】
極圧添加剤
オイルに可溶性の極圧(EP)添加剤には、イオウおよびクロロイオウ含有EP添加剤、塩素化炭化水素EP添加剤およびリンEP添加剤が含まれる。そうしたEP添加剤の例には、塩素化ワックス;有機スルフィドおよびポリスルフィド、例えばジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペンおよび硫化ディールスアルダー付加体;ホスホ硫化炭化水素、例えば硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルの反応生成物;リンエステル、例えばジヒドロカーボンおよびトリヒドロカーボンホスファイト、例えばジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイトおよびポリプロピレン置換フェノールホスファイト;金属チオカーバメート、例えば亜鉛ジオクチルジチオカーバメートおよびバリウムヘプチルフェノール二塩基酸;ホスホロジチオ酸の亜鉛塩;例えばジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドおよびPの反応生成物のアミン塩を含むアルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩ならびにその混合物が含まれる。
【0149】
他の添加剤
防蝕剤などの他の性能添加剤には、米国特許出願第05/038319号(McAtee and Boyerという発明者名で2004年10月25日出願)5〜8段に記載されているもの、オクチルアミンオクタノエート、ドデシルコハク酸または無水物およびオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンの縮合生成物が含まれる。一実施形態では、防蝕剤はSynalox(登録商標)防蝕剤を含む。Synalox防蝕剤は一般にプロピレンオキシドのホモポリマーまたはコポリマーである。Synalox(登録商標)防蝕剤は、The Dow Chemical Companyによって刊行されている書式番号118−01453−0702AMSの製品カタログにより詳細に記載されている。この製品カタログは、SYNALOX潤滑油、「厳しい用途のための高性能ポリグリコール(SYNALOX Lubricants, High−Performance Polyglycols for Demanding Applications)」という表題である。
【0150】
ベンゾトリアゾールの誘導体、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含む金属不活性化剤;エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび任意選択の酢酸ビニルのコポリマーを含む発泡防止剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む乳化破壊剤;無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤ならびに脂肪酸誘導体、例えばアミン、エステル、エポキシド、脂肪族イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物およびアルキルリン酸のアミン塩を含む摩擦調整剤も、潤滑組成物において使用することができる。摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%〜10重量%、0.1重量%〜8重量%または1重量%〜5重量%を含む範囲で存在することができる。
【0151】
工業的応用
本発明のグラフト化ポリマーは任意の潤滑組成物に適している。グラフト化ポリマーは、分散性粘度調整剤(しばしばDVMと称される)として用いることができる。
【0152】
一実施形態では、本発明のグラフト化ポリマーは、許容される粘度調整性能、許容される分散性能および/または許容されるすすおよびスラッジ取り扱い性の少なくとも1つを提供することができる。本発明のグラフト化ポリマーをエンジンオイル潤滑組成物において使用する場合、これは、許容される燃料経済性性能および/または許容されるすすおよびスラッジ取り扱い性を提供することができる。
【0153】
潤滑油の例には、2ストロークもしくは4ストローク内燃機関用のエンジンオイル、ギアオイル、自動変速機オイル、油圧油、タービン油、金属加工油剤またはサーキュレーティングオイルが含まれる。
【0154】
一実施形態では、内燃機関は、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジンまたは混合ガソリン/アルコール燃料エンジンであってよい。一実施形態では、内燃機関はディーゼル燃料エンジンであり、他の実施形態では、ガソリン燃料エンジンである。
【0155】
内燃機関は、2ストロークまたは4ストロークエンジンであってよい。適切な内燃機関には、舶用ディーゼルエンジン、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジンならびに自動車およびトラック用エンジンが含まれる。
【0156】
内燃機関用の潤滑組成物は、イオウ、リンまたは硫酸塩灰分(ASTM D−874)含有量に関係なく、任意のエンジン潤滑油に適している。エンジンオイル潤滑油のイオウ含有量は、1重量%以下、0.8重量%以下、0.5重量%以下または0.3重量%以下であってよい。リン含有量は、0.2重量%以下、0.1重量%以下または0.085重量%以下、さらには0.06重量%以下、0.055重量%以下または0.05重量%以下であってよい。合計硫酸塩灰分含有量は、2重量%以下、1.5重量%以下、1.1重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下または0.5重量%以下であってよい。
【0157】
一実施形態では、潤滑組成物はエンジンオイルであり、その潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下のイオウ含有量、(ii)0.1重量%以下のリン含有量および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有量を有する。
【0158】
一実施形態では、潤滑組成物は、2ストロークまたは4ストローク舶用ディーゼル内燃機関に適している。一実施形態では、舶用ディーゼル燃焼エンジンは2ストロークエンジンである。本発明のグラフト化ポリマーは、舶用ディーゼル潤滑組成物に0.01〜20重量%、0.05〜10重量%または0.1〜5重量%加えることができる。
【実施例】
【0159】
(実施例1)
Dyne(商標)623−18の臭素化を、ポリテトラフルオロヘプチレンガスケット、オーバーヘッドスターラー、窒素注入口、水冷凝縮器および反応温度モニター用の熱電対を備えたフランジ蓋を備えた1Lフラスコ中の530gのクロロホルムに90gのDyne(商標)623−18を加えて実施する。得られたポリマー溶液を、窒素(250cc/分)下で1時間攪拌(300RPM)する。6.4gのN−ブロモスクシンイミド(NBS)を加える。反応混合物を10分間攪拌する。反応混合物を、加熱ランプでガラスを通して1.5時間加熱する。反応混合物は10分後に茶色に変わる。反応混合物をさらに1時間攪拌する。1Lのイソプロパノールをブタノール/CO浴中で冷却する。反応混合物を、攪拌しながらイソプロパノールに30分間かけて滴下する。沈殿物が生成する。沈殿物を濾過し、200mlのイソプロパノールで洗浄し、真空オーブン中、60℃で終夜乾燥する。生成物の収量は72.1gである。生成物は薄茶色のゴム状の形態である。反応は以下の式:
【0160】
【化14】

で表すことができる。
【0161】
(実施例2)
40gの実施例1からの生成物、8.78gの臭化銅(I)および20gの無水マレイン酸(MAA)を400gのトルエンに加え、窒素下で攪拌する。完全に溶解し易いように反応混合物を110℃に加熱し、次いで60℃に冷却する。9.04gのプロピル−ピリジン−2−イルメチレン−アミンを、窒素下で30分間かけて加える。反応混合物を110℃に加熱し、終夜攪拌する。反応混合物を室温に冷却する。800gのイソプロパノールをブタノール/CO浴中で冷却する。反応混合物を、攪拌しながら30分間かけてイソプロパノールに加えて懸濁液を生成させる。この懸濁液を濾過してポリマーを集める。ポリマーを、メタノール、イソプロパノールおよびアセトンで洗浄する。ポリマーを真空オーブン中、70℃で終夜かけて乾燥する。生成物の収量は37.5gである。生成物は、暗褐色ゴム状の形態のグラフト化ポリマーである。グラフト化ポリマーは、ATRP媒介SBR−g−MAA樹脂と称することができる。反応は以下の式:
【0162】
【化15】

で表すことができる。
【0163】
(実施例3)
ポリマーサンプルをすすを含む排油に加えることによってポリマーサンプルについてのすすスクリーニング試験を実施する。得られた試験サンプルに振動を与え、そのポリマーが、すすの分子間の会合のビルドアップを低減させる能力を、International Spring Fuels & Lubricants Meeting & Exhibition、Orlando、Florida、2001年5月7〜9日で提示されたSAE Paper 2001−01−1967、「Understanding Soot Mediated Oil Thickening: Rotational Rheology Techniques to Determine Viscosity and Soot Structure in Peugot XUD−11 BTE Drain Oils」、M. Parry、H. George、and J. Edgarに記載されている方法で係数として測定する。この試験はXUD−11試験と称され得る。算出されたパラメーターをG’(Pa)とする。ポリマー添加剤で処理した試験サンプルのG’(Pa)を、添加剤を含まない排油のG’(Pa)と比較する。その後者を1.00と規定する。1.00未満のG’(Pa)値はすす分散での有効性の増大を示す。
【0164】
表1は、ATRP媒介マレイン化SBR−g−MAAのADPAイミド(以下「グラフト化ポリマーA」と称する)対いくつかの市販のベースラインおよび押し出しグラフト化ADPA SBR−g−MAAイミドのすす取り扱い能力を示す。表における順番は、DVMをすす取り扱い性が低下する順に(より低いG’比は、良好なすす取り扱い性に有利である)順位付けしている。
【0165】
【表1】

VM1は、Aftonの市販の製品、Hitec(商標)5777であり、無水マレイン酸でグラフト化し、さらに4−アミノジフェニルアミンと反応させたエチレン−プロピレンオレフィンコポリマーであると考えられる。
【0166】
VM2は、3重量%無水マレイン酸でグラフト化し、3−ニトロアニリンおよびディスパースオレンジ3と反応させて分散性粘度調整剤にしたエチレン−プロピレンオレフィンコポリマー(20,000〜30,000Mw)である。
【0167】
VM3は、3重量%無水マレイン酸でグラフト化し、4−アミノジフェニルアミンスクシンイミドと反応させて分散性粘度調整剤にしたエチレン−プロピレンオレフィンコポリマー(20,000〜30,000Mw)である。
【0168】
ポリマーBは押し出しグラフト化ADPA SBR−g−MAAイミドである。
【0169】
VM4は、2重量%無水マレイン酸でグラフト化し、3−ニトロアニリンおよびディスパースオレンジ3と反応させて分散性粘度調整剤にしたエチレン−プロピレンオレフィンコポリマー(120,000〜150,000Mw)である。
【0170】
結果は、グラフト化ポリマーAとVM1が、1重量%の処理レベルで同程度のすす取り扱い特性を有することを示している。結果は、分散剤官能基のローディングが、ポリマーBよりグラフト化ポリマーAについての方がより高い(全酸価(TAN)分析で判定して)という事実から正当化される。この比較は、本発明のグラフト化ポリマーの手法を用いることによってより高いローディングを容易に達成できることを際立たせている。ATRPグラフト化を用いる本発明の方法は、ハロゲン化(例えば、臭素化または塩素化)レベルおよび続くグラフト化レベルの可能性を選ぶ(dialling in)ことによって大いに調節可能である。
【0171】
本発明を様々な実施形態に関して説明してきたが、本明細書を読めば当業者にはその様々な改変形態が明らかになることを理解されたい。したがって、本明細書で提供する本発明は、そうした改変形態を、添付の特許請求の範囲内に含まれ得るものとして包含すること意図することを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー主鎖およびペンダントカルボニル含有基を含むグラフト化ポリマーを含む組成物であって、前記ポリマー主鎖がブロックAの少なくとも1つおよびブロックBの少なくとも1つを含み、ブロックAがオレフィンブロックを含み、ブロックBがビニル芳香族ブロックを含み、ブロックA中のモノマー単位とブロックA+ブロックBの組合せ中のモノマー単位とのモル比が0.5〜0.9の範囲であり;
前記ペンダントカルボニル含有基がブロックB上でグラフト化されており、前記カルボニル含有基が、エステル、イミドおよび/またはアミド官能基を提供するように任意選択でさらに置換されており、ブロックB上の前記ペンダントカルボニル含有基のグラフト化が、ブロックBのビニル芳香族炭素をハロゲン化し、次いで活性化剤の存在下で前記ビニル芳香族炭素上のカルボン酸またはその誘導体をグラフト化することによって実施される組成物。
【請求項2】
前記グラフト化ポリマーがテーパー型コポリマーではないコポリマーを含み、そしてブロックAが20モル%〜80モル%または30モル%〜70モル%の、アルキル分枝基を含む繰り返し単位を含むか;あるいは、前記グラフト化ポリマーがテーパー型コポリマーであるコポリマーを含み、そしてブロックAが40モル%〜80モル%または50モル%〜75モル%の、アルキル分枝基を含む繰り返し単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマー主鎖が、脂肪族ジエンから誘導された繰り返し単位およびアルケニルアレーンから誘導された繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー主鎖が、スチレンおよびブタジエンから誘導された繰り返し単位を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記グラフト化ポリマーが、ジブロックコポリマー、連続ブロックコポリマーまたはその混合物を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸誘導体が、無水物、ハロゲン化物またはアルキルエステルを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記グラフト化ポリマーが、1000〜1,000,000の範囲または10,000〜250,000の範囲の重量平均分子量および/あるいは1〜1.6の範囲または1.01〜1.55の範囲の多分散度を有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記グラフト化ポリマーが水素化に使用可能な二重結合を含み、そして水素化に使用可能な前記二重結合の50〜100%または90%〜100%または95%〜100%が水素化されている、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記カルボニル含有基がアミドおよび/またはイミド官能基を提供するように置換されており、前記アミドおよび/またはイミド官能基が窒素含有モノマーまたはアミンによって提供されている、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記請求項のいずれかに記載の組成物および希釈剤を含む濃縮物であって、前記グラフト化ポリマーと前記希釈剤の重量比が1:99〜99:1または80:20〜10:90の範囲である濃縮物。
【請求項11】
多量の潤滑粘性油および少量の分散性粘度調整量の請求項1から9のいずれかに記載の組成物を含む潤滑組成物。
【請求項12】
前記組成物が、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤またはその2つ以上の混合物をさらに含む、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記潤滑組成物が、エンジンオイルであり、そして(i)0.8重量%以下のイオウ含有量、(ii)0.2重量%以下のリン含有量または(iii)2重量%以下の硫酸塩灰分含有量の少なくとも1つを有するか;あるいは、前記潤滑組成物が、(i)0.5重量%以下のイオウ含有量、(ii)0.1重量%以下のリン含有量および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有量を有する、請求項11または請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
2ストロークもしくは4ストローク内燃機関、2ストロークもしくは4ストローク舶用ディーゼル内燃機関用のエンジンオイル、ギアオイル、自動変速機オイル、油圧油、タービン油、金属加工油剤またはサーキュレーティングオイルとしての、請求項11から13のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
【請求項15】
ポリマー主鎖上のカルボニル含有基をグラフト化してグラフト化ポリマーを生成するステップを含む方法であって;
前記ポリマー主鎖がブロックAの少なくとも1つおよびブロックBの少なくとも1つを含み、ブロックAが少なくとも1つのオレフィンブロックを含み、ブロックBが少なくとも1つのビニル芳香族ブロックを含み、ブロックA中のモノマー単位とブロックA+ブロックBの組合せ中のモノマー単位とのモル比が0.5〜0.9の範囲であり;
前記カルボニル含有基がカルボン酸またはその誘導体から誘導され、前記誘導体が無水物、ハロゲン化物またはアルキルエステルであり、前記カルボニル含有基がブロックB上でグラフト化されており、前記カルボニル含有基が、エステル、イミドおよび/またはアミド官能基を提供するように任意選択でさらに置換されており;
前記カルボニル含有基が、ブロックBの前記ビニル芳香族炭素をハロゲン化し、次いで活性化剤の存在下で前記ビニル芳香族炭素上のカルボン酸またはその誘導体をグラフト化することによってブロックB上でグラフト化される方法。

【公表番号】特表2012−532957(P2012−532957A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519661(P2012−519661)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/041035
【国際公開番号】WO2011/005739
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】