説明

分散液、塗工液および吸収性媒体

− 粉末Aが0.05〜0.7μmの平均粒径および5〜50m/gのBET表面積を有する無定形二酸化ケイ素粉末であり、および
− 粉末Bが成長した一次粒子の凝集物から構成されている金属酸化物粉末または非金属酸化物粉末であり、5〜50nmの一次粒径および50〜400m/gのBET表面積を示す、粉末AおよびBを含有する安定した水性分散液。この分散液および少なくとも1つの親水性結合剤を用いてインキ吸収性コーティングを形成させるための塗工液。この塗工液および支持体を用いる吸収性媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化ケイ素粉末および別の金属酸化物または非金属酸化物粉末を含有する水性分散液を提供する。また、本発明は、この分散液に由来する塗工液およびインキ吸収性媒体を提供する。
【0002】
吸収性支持体の表面は、塗工液で塗布されることができ、この吸収性支持体の印刷特性を改善する。特に重要なのは、例えば吸着、乾燥時間およびインキの付着ならびに吸収性媒体の光沢である。特に、写真型材料にとって、光沢および高いインキ吸収能は、実質的な特徴を表わす。
【0003】
光沢のある吸収性支持体を製造するための塗工液は、一般に顔料の水性分散液、例えば水和された水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタンおよび結合剤、例えばポリビニルアルコールを有し、この場合顔料は、粉末の形で配合されているかまたは粉末の分散液として配合されている。
【0004】
高光沢のコーティングは、例えば微細なシリカ粒子を用いて得ることができる。塗工液に使用される分散液のしばしば低い安定性および高い粘度は、不利である。従って、分散液は、しばしば塗工液に変換する直前に製造されなければならない。よりいっそう高度に充填された分散液は、増加された粘度のために処理するのが困難である。
【0005】
塗工液の充填剤含量は、この塗工液を用いて製造された吸収性媒体の品質および方法の経済的効率にとって重要なパラメーターである。特別な塗布速度を得るために、塗工液が高い充填剤含量を有する場合には、低い充填剤含量を有する塗工液を用いる場合よりも少ない塗工液が必要とされる。付加的に、高い充填剤含量の場合よりも少ない水が蒸発されなければならず、これは、乾燥がよりいっそう早いことを意味する。それ故、この方法は、低い充填剤含量を有する塗工液と比較した場合には、よりいっそう経済的に実施されることができる。
【0006】
塗工液がキャストコーチングによって塗布される場合には、高い光沢および良好なインキ吸収能力は、処理装置によって達成されてもよい。しかし、この方法は、比較的遅速であり、費用が掛かりすぎる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10035054号明細書において、50nm以下の一次粒径を有する陽イオン化された微細なシリカ粒子は、水性分散液中で使用され、高い光沢および良好なインキ吸収能力を有する吸収性媒体を導く塗工液を生じる。
【0008】
米国特許第6284819号明細書には、型および寸法が異なる2つの粒子の水性分散液から得られる比粘度を有する塗工液が記載されている。第1の粉末型は、金属酸化物粒子、例えばシリカ、陽イオン化されたシリカまたは酸化アルミニウムからなる。第1の粉末型は、100nm未満の平均一次粒径および100〜500nmの平均凝集物寸法を有するよりいっそう小さい一次粒径の凝集物からなる。付加的に、第2の粉末型の粒子の平均凝集物直径は、第1の粉末型の平均凝集物直径の少なくとも半分の寸法である。第2の粉末型は、金属酸化物および合成ポリマーからなる。第1の粉末型と第2の粉末型の粒子の質量比は、9〜91質量%である。高い光沢および良好なインキ吸収能力を有する吸収性媒体は、こうして定義された塗工液で製造されてよい。粒子の第1の粉末型は、液体の吸収を決定することを意図するものである。第2の粉末型のよりいっそう小さい凝集物は、間隙を充填することを意図するものである。全体的にコーティングの包装密度は、増加されている。実質的な特徴は、第2の粉末型の粒子の平均凝集物直径が第1の粉末型の平均凝集物直径の少なくとも半分の寸法であることである。実施例に示されているように、塗工液は、結合剤、例えばポリビニルアルコールを2つの水性分散液の物理的に混合物に添加することによって得られ、この場合1つの分散液は、第1の粉末型の粒子を含有し、1つの分散液は、第2の粉末型の粒子を含有する。金属酸化物粒子の比表面電荷にも拘わらず、分散液の所定のpHでの金属酸化物粒子の全ての組み合わせは、米国特許第6284819号明細書中に開示されている。これは、安定でなく、急速なゲル化傾向を示し、それ故に塗工液を製造するのに制限された適性のみを有する分散液を生じうる。
【0009】
実施例は、塗工液ならびに高い光沢、良好なインキ吸収能力および急速な乾燥時間を有する、塗工液で製造された吸収性媒体が著しく重要であることを示す。塗工液のために出発物質として役立つ分散液を記載することは、特に重要である。
【0010】
それ故、本発明の対象は、吸収性支持体に塗布した場合に、高い光沢、良好なインキ吸収能力および良好な乾燥性能を示す吸収性媒体を製造する塗工液を生じさせることができる、高い充填剤含量および低い粘度を有する分散液を提供することである。
【0011】
本発明は、
− 粉末Aが0.05〜0.7μmの平均粒径および5〜50m/gのBET表面積を有する無定形二酸化ケイ素粉末であり、
− 粉末Bが成長した一次粒子の凝集物から構成されている金属酸化物粉末または非金属酸化物粉末であり、5〜50nmの一次粒径および50〜400m/gのBET表面積を示し、
− 分散液の所定のpHで粉末AおよびBが同じ表面電荷徴候を示し、粉末AおよびBが粉末間のファン・デル・ワールス引力よりも大きい粒子間の静電斥力を生じるゼータ電位を有し、分散液中で粉末A群の平均粒径が粉末B群の凝集物の60〜166%であり、
− 粉末AおよびBの総和に対して粉末Aの割合が少なくとも5質量%であることを特徴とする、粉末AおよびBを含有する安定した水性分散液を提供する。
【0012】
前記粉末の一次粒子は、高解像度TEM画像中の最も小さい粒子であり、この粒子は、明らかにもはや破壊することができない。幾つかの一次粒子は、接触点で集合することができ、凝集物を形成する。この凝集物は、分散剤を用いて再び破壊することが不可能であるかまたは破壊することが極めて困難である。幾つかの凝集物は、ゆるく一緒に結合することができ、凝集物を形成し、1つの方法は、適当な分散液によって再び反対に行なうことができる。
【0013】
平均凝集物寸法は、ピーク分析からの体積−重みつき中央値(the volume-weighted median value)と述べられる等価の球直径に帰因する。分散液中で使用される粉末については、動的光散乱法によって、例えばMalvern Zetasizer 3000 HSa装置を用いて計算される。分散液中の粉末AおよびBの凝集体直径の差が60〜166%である場合には、単峰性の分布が前記方法で測定される。これは、粉末AとBの直径が60%〜166%の差異を有する場合に粉末AとBの平均凝集物直径が同じ寸法であると測定されることを意味する。分散液中の2つの粉末の平均凝集物直径は、別々に測定した場合に60%を上廻って差異を有するかまたは166%を上廻って差異を有する場合に、光散乱は、粉末混合物の双峰性の分布を示す。この分布は、特許請求の範囲に記載された範囲外にある。
【0014】
安定したとは、少なくとも1ヶ月間に亘って分散液が沈降せず、底面生成物を形成しないことを意味する。また、この安定したとは、分散液が輸送可能であり、使用直前に製造される必要がないことを意味する。
【0015】
水性とは、液相の主成分が水であることを意味する。
【0016】
安定した分散液を得るために、分散液中に存在する粒子が同じ表面電荷徴候を示すことは、重要である。同じ表面電荷徴候を有する粒子は、互いに排斥しあうであろう。ゼータ電位が十分に高い場合には、斥力は、粉末粒子間のファン・デル・ワールス引力を打ち負かすことができ、粒子の凝集または沈降は、回避される。ゼータ電位は、粒子の表面電荷の1つの測定値である。このゼータ電位は、分散液中の金属酸化物粒子および/または非金属酸化物粒子および電解質の電気化学的二重層内の剪断レベルでの電位である。ゼータ電位は、なかんずく粒子の型、例えば二酸化ケイ素、陽イオン化された二酸化ケイ素または酸化アルミニウムに依存する。ゼータ電位に関連する重要なパラメーターは、粒子についての等電点(IEP)である。IEPは、ゼータ電位が0である場合のpHを示す。酸化アルミニウムまたは陽イオン化された二酸化ケイ素において、IEPは、約9〜10のpHであり、二酸化ケイ素において、IEPは、pH3.8未満である。
【0017】
表面での電荷密度は、包囲している電解質中の電位測定イオンの濃度を変えることによって影響を及ぼすことができる。粒子が表面上で酸部位または塩基部位を有するような分散液中で、電荷は、pHを調節することによって変化されうる。pHとIEPとの差が大きくなればなるほど、分散液は、よりいっそう安定になる。
【0018】
ゼータ電位は、例えば分散液のコロイド振動電流(CVI)を測定することまたは電気泳動度を測定することによって測定されうる。
【0019】
1つの好ましい実施態様において、粉末AおよびBの平均一次粒径は、少なくとも2のファクターによって異なることができ、特殊な実施態様においては、少なくとも2.5のファクターによって異なることができる。
【0020】
1つの特殊な実施態様において、粉末Bの平均凝集物直径は、粉末Aの寸法の80〜125%であることができるかまたはその反対であることができる。粉末AおよびBの凝集物直径は、特に好ましくはほぼ等しい寸法である。
【0021】
分散液の全固体含量は、広い範囲に亘って変動可能である。本発明による分散液中での粉末AおよびBの固体含量は、有利に20〜80質量%であることができる。
【0022】
好ましい実施態様において、本発明による分散液の粘度は、12s−1の剪断速度および23℃の温度で1500mPasの値を下廻ることができる。12s−1の剪断速度および23℃の温度で1000mPasを下廻る値は、特に好ましい。
【0023】
粉末Aの二酸化ケイ素の起源には、制限はない。従って、粉砕されたシリカゲル、例えばSylojet(登録商標)またはSyloid(登録商標)の名称でGrace社によって販売されているシリカゲルは、使用することができる。
【0024】
しかし、熱分解法で得られた二酸化ケイ素粉末は、有利に使用されることができる。
【0025】
本発明の範囲内で熱分解法とは、カナダ国特許第2166844号明細書中の記載のようにケイ素の酸化を意味します。この型の二酸化ケイ素粉末は、例えばMicrosilica(登録商標)の名称でElkem社によって販売されている。
【0026】
また、本発明の範囲内で熱分解法とは、水素と酸素の反応によって発生される火炎内でケイ素およびアルミニウム化合物またはケイ素およびチタン化合物を気相中で加水分解することを意味する。粉末Aの熱分解法で得られた二酸化ケイ素は、特に有利に5〜30m/gのBET表面積および40未満の分散係数Zを示し、この場合Z=Y/2Xであり、但し、Xは、粒径分布の中央値であり、Yは、累積粒径の10〜90%に対する粒径分布の範囲である。粉末Aは、2002年1月9日付けの特開平14−003213号公報の記載と同様に製造される。本明細書中に記載された粉末は、殆んど完全な球形状を有する粒子を示す。図1は、粒径(μmで)の関数としての10m/g(I)および30m/gの比表面積を有する粉末の粒径(%で)の頻度を示す。
【0027】
粉末Bの平均凝集物寸法は、有利に50〜500nmの値であると推測することができる。
【0028】
本発明の粉末Bは、金属酸化物粉末および/または非金属酸化物粉末の二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを有する。前記粉末の表面は、酸部位または塩基部位を示す。金属酸化物および非金属酸化物の起源には、制限がない。熱分解法で得られた金属酸化物および非金属酸化物は、有利に本発明による分散液のために使用されることができる。熱分解法で得られた二酸化ケイ素および酸化アルミニウムは、特に好ましい。粉末のBET表面積は、5〜600m/gである。
【0029】
本発明の有利なさらなる開発において、粉末Bは、混合酸化物粉末であることができる。二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化セリウムまたは酸化ジルコニウムからなる群からの少なくとも2つの酸化物の粉末は、混合酸化物粉末として使用されることができる。
【0030】
混合酸化物とは、混合酸素−金属/非金属結合、例えばSi−O−AlまたはSi−O−Tiを形成させるために原子レベルでの酸化物粉末の緊密な混合物を意味する。付加的に、一次粒子は、酸化物粉末が並んで存在している領域、例えばアルミニウム酸化物に隣接した二酸化ケイ素の領域を示すこともできる。
【0031】
熱分解法で得られた混合酸化物粉末は、有利に使用されてよい。この場合、混合酸化物の前駆体は、別々にかまたは一緒に、バーナーに移動され、火炎内で燃焼され、生じる混合酸化物粉末は、分離される。この粉末の製造は、例えば欧州特許出願公開第585544号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19919635号明細書(2つのSiO−Al混合酸化物)またはドイツ連邦共和国特許出願公開第4235996号明細書(SiO−TiO混合酸化物)中に記載されている。
【0032】
また、本発明は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19650500号明細書中に記載された方法によって製造されたドープされた金属または非金属酸化物を有する。殊に、ケイ素−アルミニウム混合酸化物は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19847161号明細書中に記載されている。
【0033】
また、本発明は、全体的または部分的に異なる金属酸化物または非金属酸化物によって剪断されている、金属酸化物または非金属酸化物をコアとして有する粉末を有する。剪断は、液状媒体中で適用されてよいし、金属酸化物または非金属酸化物の蒸気状前駆体から析出方法により適用されてもよい。
【0034】
粉末AおよびBは、陽イオン化された形で使用されてもよい。これは、分散液媒体中で可溶性である陽イオンポリマーで粉末を処理することによって達成されることができる。100000g/mol未満の質量平均分子量を有するポリマーは、有利に使用されることができる。2000〜50000g/molの範囲は、特に好ましい。
【0035】
陽イオンポリマーは、少なくとも1個のアンモニウム基、ホスホニウム基、第1アミン基、第2アミン基または第3アミン基の酸付加物、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミンもしくはポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド縮合物、ジシアンジアミド−ポリアミン共重縮合物またはポリアミド−ホルムアミド縮合物を有するポリマーであることができる。
【0036】
ジアリルアンモニウム化合物に由来するポリマーは、有利であることができ、特に好ましいのは、ジアリルアミン化合物のラジカル環化反応によって得ることができ、構造式1または2を示すジアルキルジアリル化合物に由来するポリマーである。
【0037】
およびRは、水素原子、1〜4個のC原子を有するアルキル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基または第三ブチル基を表わし、この場合RとRは、同一でも異なっていてもよい。アルキル基からの水素原子は、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。Yは、ラジカル重合可能なモノマー単位、例えばスルホニル、アリールアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸を表わす。Xは、陰イオンを表わす。
【0038】
【化1】

【0039】
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)溶液(水中でのPDADMAC溶液)は、実施例により引用されることができる。
【0040】
陽イオンポリマーの含量は、陽イオンポリマーおよび粉末Aおよび/またはBの量に対して0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは0.8〜5質量%であることができる。
【0041】
本発明による分散液は、pHを調節するための物質、例えば酸、塩基または緩衝系、分散液を安定化するための添加剤、例えば塩、界面活性剤、有機溶剤、殺菌剤および/または殺真菌剤を含有することもできる。
【0042】
また、本発明は、本発明による分散液を製造する方法を提供し、この方法は、粉末AとBを別々に分散装置により水性分散液中に分散させ、次に結合させるかまたは粉末AとBを最初に物理的に混合し、次に一緒に分散させるかまたは粉末AとBを少量ずつ分散装置中に装入し、次に一緒に分散させることによって特徴付けられる。予めの分散は、場合によっては分散前に行なうことができる。
【0043】
例えば、高速混合装置またはノコギリ状ディスクは、予めの分散にとって適当である。回転子−固定子機関、例えばウルトラターラックス(Uitra Turrax)(IKA)またはYstral社によって製造された機関、ならびにボールミルおよび磨砕ミルは、分散に適している。高いエネルギー入力は、遊星型混練機/混合装置を用いて可能である。しかし、前記系の効率は、導入される粒子を破壊するのに必要とされる高い剪断エネルギーのために、処理される混合物の十分に高い粘度に依存する。
【0044】
100nm未満の平均凝集物直径を有する水性分散液は、高圧ホモジェナイザーを用いて得ることができる。この装置中で、高圧下での懸濁液の2つの予め分散された流れは、ノズルを通して分解される。分散液の2つの噴流は、互いに正確に衝突し、粒子それ自体が粉砕される。別の実施態様において、予めの分散は、同様に高圧下で行なわれるが、しかし、粒子は、壁の外装された部分に衝突する。操作は、任意の回数繰り返すことができ、よりいっそう小さな粒径が得られる。
【0045】
また、本発明は、本発明による分散液および少なくとも1つの親水性結合剤を含有する塗工液を提供する。
【0046】
ポリビニルアルコール、主鎖上または側鎖上に第1アミノ基、第2アミノ基もしくは第3アミノ基または第3アンモニウム基を有する、部分的または全体的に鹸化され陽イオン化されたポリビニルアルコールは、結合剤として使用されてよい。互いの前記ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、シラン化ポリビニルアルコール、スチレンアクリレートラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、メラミン樹脂、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリウレタン樹脂、合成樹脂、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエステル樹脂(例えば、不飽和ポリエステル樹脂)、ポリアクリレート、変性澱粉、カゼイン、ゼラチンおよび/またはセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース)の組合せ物は、使用されてもよい。好ましくは、ポリビニルアルコールまたは陽イオン化されたポリビニルアルコールが使用されてよい。
【0047】
また、塗工液は、付加的に1つ以上の他の顔料、例えば炭酸カルシウム、フィロケイ酸塩、珪酸アルミニウム、プラスチック顔料(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン)、シリカ(例えば、コロイド状シリカ、沈降珪酸、シリカゲル、引用されたシリカ化合物の陽イオン化された変形)、アルミニウム化合物(例えば、アルミニウムゾル、コロイド状酸化アルミニウムおよびそのヒドロキシル化合物、例えば擬ベーム石、ベーム石、水酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、炭酸亜鉛、サチンホワイト、リトポン、ゼオライトを含有することができる。
【0048】
塗工液は、全部で10〜60質量%の粉末Aおよび粉末Bの含量を示すことができる。この含量は、好ましくは15質量%よりも大きくともよく、特に好ましくは、25質量%よりも大きくともよい。
【0049】
塗工液は、粉末AおよびBの総和に対して3〜150質量%の結合剤の割合を有することもできる。この割合は、好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは3〜15質量%であることができる。
【0050】
架橋剤、例えば酸化ジルコニウム、硼酸、メラミン樹脂、グリオキサールおよびイソシアネートならびに結合剤系の分枝鎖を一緒に結合する他の分子は、結合剤系、ひいてはコーティングの耐水性を増加させるために使用されてよい。
【0051】
付加的に、助剤、例えば蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝液、UV吸収剤および粘度助剤が使用されてよい。
【0052】
本発明は、本発明による分散液を攪拌しながら親水性結合剤の水溶液に添加し、この水溶液に付加的に添加剤を場合によっては添加してもよく、場合によっては粉末と結合剤の望ましい割合および望ましい全固体含量が確立されるまで希釈することを特徴とする塗工液を製造する方法を提供する。付加的な順序は、実質的ではない。攪拌は、場合によっては定義された時間の間、連続され、次に必要に応じて、真空中で脱気が実施される。添加剤は、例えば顔料、架橋剤、蛍光増白剤、消泡剤、湿潤剤、pH緩衝液、UV吸収剤および粘度助剤である。
また、本発明は、本発明による塗工液および支持体を用いてインキ吸収性コーティングを提供する。使用されうる支持体の例は、紙、コート紙、樹脂フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロファン、セルロイドを含めてポリエステル樹脂およびガラス板である。
【0053】
所謂写真用原紙、即ちポリエチレンフィルムの1つおよび/または複数の層が前面および/または後面に塗布されている紙が好ましい。また、ポリエステルフィルム、PVCフィルムまたはプレコート紙も好ましい。
【0054】
また、本発明による吸収性媒体は、インキ吸収性媒体が同じ型の幾つかのコーティング層または他の層から構成されているような媒体を含む。本発明による塗工液は、まさに1つの層中または幾つかの層中で見出すことができる。従って、例えば付加的なインキ吸収性コーティング、例えば沈降シリカを含有するフィルムは、本発明による塗工液の下方に適用されてもよい。また、1つ以上のポリマー層(例えば、ポリエチレン)は、本発明による塗工液の下方に塗布されてもよい。また、1つ以上のポリマー層(例えば、ポリエチレン)は、コーティングにおける機械的安定性および/または光沢を増加させるために、本発明による支持体および/またはコーティングに塗布されてもよい(例えば、写真用原紙、ラミネーション)。
【0055】
前記支持体は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。支持体の厚さに制限はないが、しかし、50〜250μmの厚さは、有利に使用される。
【0056】
また、本発明は、塗工液が支持体に塗布され、乾燥されることによって特徴付けられる、吸収性媒体の製造法を提供する。塗工液は、全ての常用の塗布方法、例えばロール塗布、ナイフ塗布、エアブラシ、ドクターブレード(異形成形された、平滑で、スロットを備えた)、キャストコーティング、フィルムプレス、サイズプレス、カーテンコーティングおよびスロットダイ塗布(例えば、キャスティングブレード)ならびにこれらの組合せによって塗布されることができる。極めて均一なコーティング、例えばキャストコーティング、カーテンコーティングおよびスロットダイ塗布を可能にする方法は、有利に使用される。
【0057】
塗布された支持体は、全ての常法、例えば空気乾燥または対流乾燥(例えば、熱風通路)、接触乾燥または誘導乾燥、エネルギー照射乾燥(例えば、赤外およびマイクロウェーブ)によって乾燥させることができる。
【0058】
本発明による分散液が低い粘度を有する高い充填剤含量を示すこと、および当該分散液で製造された塗工液が高い光沢を示すことは、驚異的なことである。米国特許第6284819号明細書においては、塗工液は、2つの粉末型の凝集物を含有する水性分散液から得られ、この場合第1の粉末型の凝集物直径は、第2の粉末型の凝集物直径よりも少なくとも50%小さい。第2の粉末型の凝集物直径は、好ましくは実質的に十分に小さく、例えば20nm未満である。よりいっそう大きな凝集物直径を有する粉末型は、液体の吸収を決定することを意図するものであり、第2の粉末型のよりいっそう小さい凝集物直径は、間隙を充填することを意図するものである。全体的にコーティングの包装密度は、増加されている。
【0059】
他面、本発明による分散液および塗工液において、個々の粉末型の凝集物直径における差は、米国特許第6284819号明細書の記載とは異なり、よりいっそう大きな凝集物の60%未満であってはならない。凝集物の直径は、同一であるのが特に好ましい。
【0060】
本発明による分散液および塗工液の極めて良好な性質については、現在の処、説明することができない。図2および3は、可能な解釈を提供するものである。
【0061】
図2は、分散液中の異なる寸法の一次粒子を有する2つの凝集物の配置を示す。より低いBET表面積を有する凝集物は、より小さいBET表面積を有する凝集物の直径の半分の寸法である直径を有する。図2は、米国特許第6284819号明細書中に記載の事実に対応するものである。図2は、明らかに分散液の高い充填剤含量を示し、この場合この分散液は、僅かな体積に対して不利な影響を及ぼすが、しかし、よりいっそう僅かな画像特性を生じる。
【0062】
図3は、2つの型の凝集物を有する、本発明による分散液中での状況を示し、この場合双方の型は、異なる一次粒径を有するにも拘わらず、同じ凝集物寸法を有する。大きな細孔は、高い充填剤含量で形成される。
【0063】
実施例
分析法:分散液の粘度は、0.01〜100s−1の剪断速度で得られる測定値と一緒に、Parr-Physica社からの測定系CC27を有するMCR300装置を用いて測定される。粘度は、1s−1および100s−1ならびに23℃で記載される。塗工液の粘度は、100s−1および23℃でB型RVT回転粘度計で測定される。
【0064】
ゼータ電位は、Dispersion Technology Inc.社からのDT−1200装置でCVI法を用いて測定される。
【0065】
凝集物寸法は、動的光散乱法によって測定される。ゼータ寸法測定器(Zetasizer)3000 HSa装置(Malvern Instruments, UK)が使用された。ピーク分析からの体積−重みつき中央値が記載される。
【0066】
使用された粉末の平均一次粒径は、透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0067】
粉末:Nippon Aerosil社からの熱分解法二酸化ケイ素粉末OX 10(BET表面積約10m2/g)およびOX 30(BET表面積約30m/g)が粉末Aとして使用される。
【0068】
Degussa AG社からの熱分解法酸化物粉末DOX 110(Al 0.25質量%を有するSiO混合酸化物粉末)、AEROSIL(登録商標)200およびAEROSIL(登録商標)300は、粉末Bとして使用される。
【0069】
分散液:分散液についての分析データは、第2表中に記載されている。
【0070】
脱塩水を、引用された実施例のための分散液媒体として使用する。脱塩水を測定し、添加剤を場合によっては脱塩水中に溶解する。次に、粉末Aおよび次に粉末Bを高速型混合装置を用いて連続的に配合する。次に、分散をウルトラターラックス(Uitra Turrax)上で7000rpmで30分間実施する。約24時間の後、試料を粘度、粒径およびゼータ電位について特性決定する。
【0071】
塗工液
配合物:12.33%の固体含量を有するポリビニルアルコール水溶液(PVA Mowiol 40-88, Clariant)をビーカー中に入れ、分散液D2の添加後に望ましい固体含量を有する塗工液が得られるような量の水を添加する。特殊な分散液を高速型ミキサーディスクで500rpmで攪拌しながら、ポリビニルアルコール溶液と水との組合せ物に添加する。添加が完結したら直ちにさらに30分間500rpmで攪拌を継続させる。次に、塗工液をデシケーターおよび水流ポンプを用いて脱気する。
【0072】
塗工液S2−Aは、分散液中の固体に対して分散液D2 18質量%およびPVA Mowiol 40−88 22部を含有する。
【0073】
塗工液S2−Bは、分散液中の固体に対して分散液D2 20質量%およびPVA Mowiol 40−88 6部を含有する。
【0074】
指数Aは、下記に記載されているフィルムのコーティングに帰因し、指数Bは、紙のコーティングに帰因する。
【0075】
塗工液S0_2−AおよびS0_2−Bは、公知技術水準による分散液D0_2から同じ方法で製造される。
【0076】
塗工液の組成、粘度およびpH値は、第3表中に記載されている。
【0077】
インキ吸収性媒体
塗工液S2−Aを湿潤フィルム螺旋形ブレードを用いて厚さ100μmの未処理のポリエステルフィルム(Benn)上に塗布する。乾燥をヘアドライヤーで実施する。得られた塗布速度は、25g/mである。
【0078】
被覆されたフィルムを内部試験画像でEpson Stylus Color 980を用いてPhoto Quality Glossy Film, 1440 dpi, Epson Calibration, ガンマ(D):1.8に設定して印刷する。
【0079】
塗工液S2−Bを湿潤フィルム螺旋形ブレードを用いて無光沢のインクジェット印刷用紙(目的形、No.2576)上に塗布する。乾燥をヘアドライヤーで実施する。次に、塗布された紙を10バールの圧力下および50℃で実験室用カレンダーを用いて梨地化する。得られた塗工液S2−Bの塗布速度は、13g/mである。
【0080】
コート紙を内部試験画像でEpson Stylus Color 980を用いてPremium Glossy Photo Paper, 1440 dpi, 二方向性、Epson Calibration, ガンマ(D):1.8に設定して印刷する。
【0081】
生じたインキ吸収性媒体のための光沢、付着力および試験画像の目視的印象を第4表中に再現する。本発明による媒体M2−AおよびM2−Bは、光沢、付着力および試し刷りについて良好な値を示す。分散液D0_2から生じた吸収性媒体M0_2−AおよびM0_2−Bは、光沢、付着力および試し刷りについて良好ないし満足な値を示す。塗工液の乾燥の実施に関連して、本発明による媒体M2−AおよびM2−Bは、公知技術水準の媒体M0_2−AおよびM0_2−Bよりも明らかに卓越している。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】粒径(μmで)の関数としての10m/g(I)および30m/gの比表面積を有する粉末の粒径(%で)の頻度を示す線図。
【図2】分散液中の異なる寸法の一次粒子を有する2つの凝集物の配置を示す略図。
【図3】2つの型の凝集物を有する、本発明による分散液中での状況を示す図。
【符号の説明】
【0087】
I 10m/gの比表面積を有する粉末、 II 30m/gの比表面積を有する粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末AおよびBを含有する安定した水性分散液において、
− 粉末Aが0.05〜0.7μmの平均粒径および5〜50m/gのBET表面積を有する無定形二酸化ケイ素粉末であり、
− 粉末Bが成長した一次粒子の凝集物から構成されている金属酸化物粉末または非金属酸化物粉末であり、5〜50nmの一次粒径および50〜400m/gのBET表面積を示し、
− 分散液の所定のpHで粉末AおよびBが同じ表面電荷徴候を示し、粉末AおよびBが粉末間のファン・デル・ワールス引力よりも大きい粒子間の静電斥力を生じるゼータ電位を有し、分散液中で粉末A群の平均粒径が粉末B群の凝集物の60〜166%であり、
− 粉末AおよびBの総和に対して粉末Aの割合が少なくとも5質量%であることを特徴とする、粉末AおよびBを含有する安定した水性分散液。
【請求項2】
分散液中の粉末AおよびBの含量が分散液の全体量に対して20〜80質量%である、請求項1記載の分散液。
【請求項3】
分散液の粘度が12s−1の剪断速度および23℃の温度で1500mPasの値を超えない、請求項1または2記載の分散液。
【請求項4】
粉末Aが熱分解法で得られた二酸化ケイ素である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項5】
粉末Aが5〜30m/gのBET表面積および40未満の分散係数Zを示し、この場合Z=Y/2Xであり、但し、Xは、粒径分布の中央値であり、Yは、累積粒径の10〜90%に対する粒径分布の範囲である、請求項4記載の分散液。
【請求項6】
粉末Bの平均凝集物寸法が50〜500nmである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項7】
粉末Bが熱分解法で得られた二酸化ケイ素である、請求項6記載の分散液。
【請求項8】
粉末Bが熱分解法で得られた混合酸化物である、請求項6記載の分散液。
【請求項9】
混合酸化物がケイ素−アルミニウム混合酸化物である、請求項8記載の分散液。
【請求項10】
粉末AおよびBが陽イオン化された形で使用されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項11】
分散液がpHを調節するための物質、例えば酸、塩基または緩衝系、分散液を安定化するための添加剤、例えば塩、界面活性剤、有機溶剤、殺菌剤および/または殺真菌剤を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の分散液を製造する方法において、粉末AとBを別々に分散装置により水性分散液中に分散させ、次に結合させるかまたは粉末AとBを最初に物理的に混合し、次に一緒に分散させるかまたは粉末AとBを少量ずつ分散装置中に装入し、次に一緒に分散させることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の分散液を製造する方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の分散液および少なくとも1つの親水性結合剤を用いてインキ吸収性コーティングを形成させるための塗工液。
【請求項14】
粉末の含量が10〜60質量%、有利に15質量%を超え、特に有利に25質量%を超えている、請求項13記載の塗工液。
【請求項15】
粉末に対する結合剤の割合が3〜150質量%、有利に10〜40質量%、特に有利に3〜15質量%である、請求項13または14記載の塗工液。
【請求項16】
請求項13から15までのいずれか1項に記載の塗工液を製造する方法において、本発明による分散液を攪拌しながら親水性結合剤の水溶液に添加し、この水溶液に付加的に添加剤を場合によっては添加してもよく、場合によっては粉末と結合剤の望ましい割合および望ましい全固体含量が確立されるまで希釈することを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項に記載の塗工液を製造する方法。
【請求項17】
請求項13から15までのいずれか1項に記載の塗工液および支持体を使用する吸収性媒体。
【請求項18】
請求項17記載の吸収性媒体を製造する方法において、塗工液を支持体に塗布し、乾燥することを特徴とする、請求項17記載の吸収性媒体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−508882(P2006−508882A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556152(P2004−556152)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012877
【国際公開番号】WO2004/050377
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】