説明

分散液およびコーティング剤

【課題】 様々な用途に適用が可能な光触媒である異方性のルチル型酸化チタン粒子を含む分散液およびコーティング剤を提供することを可能とする。
【解決手段】 異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散された分散液ないしコーティング剤であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒にアミンの水溶液が含まれるこを特徴とする分散液ないしコーティング剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散された分散液およびコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、その特異な物理・化学特性から、光触媒、光化学電極、光学材料、顔料、吸着剤等の各種分野から大きな注目を集めている。この酸化チタンの優れた特性を様々な用途に応用するためには、比表面積の高い微粒子にすることで、簡便なプロセスによる薄膜化やコーティング化が必要不可欠となり、更にその為には、酸化チタン微粒子が溶液中に安定に分散したゾルを作製することが必須になる。酸化チタン微粒子としては、アナターゼ型が一般的に用いられることが多い。その理由としては、準安定相のため微粒子化しやすい、気相・液相・固相合成のいずれでも容易に得られること等が挙げられる。
【0003】
一方、酸化チタンの最安定相であるルチル型については、光吸収端がせいぜい400nmのアナターゼ型よりも長波長側(420nm)まで光吸収できる。つまり、太陽光・人工光等の広い領域の光を反応に利用できる高活性な光触媒である。また、ルチル単結晶を用いた光誘起親水化特性が調べられており、ブリッジ酸素のある面(例えば、110面、100面)が光誘起親水化反応には高活性な結晶面であることが明らかにされている(たとえば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】R.Wang et al., J.Phys.Chem.B, 103, 2188 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ルチル型酸化チタンは酸化チタンの最安定相であるため、気相・固相合成においては、四塩化チタン等の前駆体やアナターゼ型酸化チタン等の微結晶を用いて高温での熱処理が必要であるため、数百nmの結晶径を持つような大粒子になったり、液相で合成しても、数十nmの等方性微粒子が凝集した構造体しか得られなかった。さらに、気相・固相・液相反応で作製したルチル型酸化チタンはいずれも粒子同士が互いに強く凝集した構造体を形成している場合が一般的であるために、ゾル化が困難である等の理由から、光触媒材料、もしくは光触媒コーティング剤としての応用は制限されたものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明では異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散された分散液であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒にアミンの水溶液が含まれるこを特徴とする分散液を提供する。本発明の好ましい態様においては、前記アミンが、四級アンモニウム水酸化物であることを特徴とする。本発明の好ましい態様においては、異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散された分散液であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒に酸水溶液が含まれることを特徴とする。
【0006】
本発明では異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散されたコーティング剤であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒にアミンの水溶液が含まれることを特徴とするコーティング剤を提供する。本発明の好ましい態様においては、前記アミンが、四級アンモニウム水酸化物であることを特徴とする。本発明の好ましい態様においては、異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散されたコーティング剤であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒に酸水溶液が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、様々な用途に適用が可能な光触媒である異方性ルチル型酸化チタン粒子を含む分散液およびコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の分散液およびコーティング剤は、長軸と短軸を有する異方性のルチル型酸化チタン粒子を含み、前記ルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向していることを特徴とする。ルチル型酸化チタンのバンドギャップは3.0eVで、アナターゼ型酸化チタンのバンドギャップ(3.2eV)よりも小さい値を持ち、400nm付近の近可視光領域の紫外線を吸収することができる。また、(001)面はブリッジ酸素のない面で酸化分解力や親水化活性が弱い。すなわち、長軸方向の端面が(001)面で、この面の親水化活性が弱い。一方、光触媒活性の高い(100)面や(110)面は長軸に対して平行な面にあり、露出面積も高い。本発明に係るルチル型酸化チタン粒子には光触媒活性の高い(100)面や(110)面が多く存在するため、高度な酸化分解活性、親水化能力を発揮する。本発明に係るルチル型酸化チタン粒子の形状の模式図を図1に示す。
【0009】
本発明における「(001)方向に配向している」とは、(001)方向が長軸と必ずしも180度平行でなくても構わない。結晶方向がランダムな多結晶と比較して、一定の方向性を有していれば良い。配向性は、例えば、透過型電子顕微鏡による電子線回折測定によって確認され、具体的には(株)日立製作所製 H-9000UHR IIIによって測定される。
【0010】
前記アミンとしては、例えば、一級アミン、二級アミン、三級アミンがあり、分散のための溶媒として単独でも、複数混合しても構わない。前記一級アミンとして、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプタアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
前記二級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルオクチルアミン、メチルデシルアミン、メチルドデシルアミン、メチルテトラデシルアミン、メチルヘキサデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、エチルオクチルアミン、エチルデシルアミン、エチルドデシルアミン、エチルテトラデシルアミン、エチルヘキサデシルアミン、エチルオクタデシルアミン、プロピルブチルアミン、プロピルヘキシルアミン、プロピルオクチルアミン、プロピルデシルアミン、プロピルドデシルアミン、プロピルテトラデシルアミン、プロピルヘキサデシルアミン、プロピルオクタデシルアミン、ブチルヘキシルアミン、ブチルオクチルアミン、ブチルデシルアミン、ブチルドデシルアミン、ブチルテトラデシルアミン、ブチルヘキサデシルアミン、ブチルオクタデシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
前記三級アミンとして、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリオクタデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジエチルブチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチルデシルアミン、ジエチルドデシルアミン、ジエチルテトラデシルアミン、ジエチルヘキサデシルアミン、ジエチルオクタデシルアミンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
本発明の特に好ましい態様において、前記アミンは四級アンモニウム水酸化物を用いる。四級アンモニウム水酸化物は解離定数が大きく、イオン半径も大きいため、このイオンを水溶液中に添加すると前記ルチル型酸化チタン粒子が高度に分散する。前記四級アンモニウム水酸化物として、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウム、水酸化テトラデシルアンモニウム、水酸化テトラドデシルアンモニウム、水酸化テトラ(テトラデシル)アンモニウム、水酸化テトラ(ヘキサデシル)アンモニウム、水酸化テトラ(オクタデシル)アンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化プロピルトリメチルアンモニウム、水酸化ブチルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化デシルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクタデシルトリメチルアンモニウム、水酸化プロピルトリエチルアンモニウム、水酸化ブチルトリエチルアンモニウム、水酸化ヘキシルトリエチルアンモニウム、水酸化オクチルトリエチルアンモニウム、水酸化デシルトリエチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリエチルアンモニウム、水酸化テトラデシルトリエチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、水酸化オクタデシルトリエチルアンモニウム、水酸化ブチルトリプロピルアンモニウム、水酸化ヘキシルトリプロピルアンモニウム、水酸化オクチルトリプロピルアンモニウム、水酸化デシルトリプロピルアンモニウム、水酸化ドデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化テトラデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化オクタデシルトリプロピルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化ジプロピルジメチルアンモニウム、水酸化ジブチルジメチルアンモニウム、水酸化ジヘキシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクチルジメチルアンモニウム、水酸化ジデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジ(テトラデシル)ジメチルアンモニウム、水酸化ジ(ヘキサデシル)ジメチルアンモニウム、水酸化ジ(オクタデシル)ジメチルアンモニウム、水酸化ジプロピルジエチルアンモニウム、水酸化ジブチルジエチルアンモニウム、水酸化ジヘキシルジエチルアンモニウム、水酸化ジオクチルジエチルアンモニウム、水酸化ジデシルジエチルアンモニウム、水酸化ジドデシルジエチルアンモニウム、水酸化ジ(テトラデシル)ジエチルアンモニウム、水酸化ジ(ヘキサデシル)ジエチルアンモニウム、水酸化ジ(オクタデシル)ジエチルアンモニウム、水酸化ジブチルジプロピルアンモニウム、水酸化ジヘキシルジプロピルアンモニウム、水酸化ジオクチルジプロピルアンモニウム、水酸化ジデシルジプロピルアンモニウム、水酸化ジドデシルジプロピルアンモニウム、水酸化ジ(テトラデシル)ジプロピルアンモニウム、水酸化ジ(ヘキサデシル)ジプロピルアンモニウム、水酸化ジ(オクタデシル)からなる群より選択される少なくとも一つの化合物が好適に使用できる。
前記四級アンモニウム水酸化物の水溶液の濃度としては、0.0001M以上20M以下が好ましく、より好ましくは0.001M以上10M以下である。ここで、0.0001M未満の濃度条件では、分散が不十分になる恐れがあり、20Mより大きい濃度条件では、異方性ルチル型酸化チタン粒子の溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、より好ましくは、0.001M〜10Mの範囲である。
また、前記アミンの別の態様として、例えば、ジアミノメタン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノウンデカン、ジアミノドデカン、ジアミノトリデカン、ジアミノテトラデカン、ジアミノペンタデカン、ジアミノヘキサデカン、ジアミノヘプタデカン、ジアミノオクタデカンからなる群より選択される少なくとも一つのジアミン類が好適に使用できる。また、前記アミンとして、アミン部位が分子中に多数存在しうる高分子アミンについても、同様に好適に用いることができ、具体的には、ポリジアリルジメチルアミン(PDDA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン(PAA)等の高分子アミンを用いることができる。
【0011】
本発明の分散液およびコーティング剤の別の態様として、分散性を高めるために酸水溶液が含まれていても構わない。前記酸性水溶液に用いる具体的な酸の種類としては、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、フッ酸、臭素酸、沃素酸、亜硝酸、酢酸、蓚酸、リンゴ酸等が挙げられ、好ましくは、硝酸、塩酸、硫酸が用いられ、より好ましくは、硝酸、塩酸が用いられる。酸性水溶液の酸濃度としては、0.0001M以上20M以下が好ましく、より好ましくは0.001M以上10M以下である。ここで、0.0001M未満の濃度条件では、分散が不十分になる恐れがあり、20Mより大きい濃度条件では、異方性ルチル型酸化チタン粒子の溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、より高度に分散させるためには、0.001M〜10Mの範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン粒子の短軸の長さは5〜100nm、長軸の長さは60〜300nmであって、かつ、長軸が短軸よりも長い。この形状にすることで、高い分散性を発現し、塗膜とした場合に可視光の散乱が抑えられ、透明性も高い。
【0013】
本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン粒子の態様として、例えば、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子は柱状の1次粒子が長軸方向に配向して複数会合しており、前記柱状の1次粒子の長軸が(001)方向に配向した形状であっても構わない。このような形状にすることでも、多結晶や球状の粒子と比較して光触媒活性の高い面を露出させることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様において、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の内部には粒界が存在しない。粒界が存在すると電子正孔対の移動を阻害するため、光触媒活性が低下してしまう。
【0015】
本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン粒子において、長軸方向が(001)方向に配向していれば高度な親水化活性を発現するため、粒子の形状は角柱状であっても円柱状であっても構わない。前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が角柱状の場合、長軸に平行な面は4回対称軸を持つ(100)面や(110)面が露出する。また、(100)面と(110)面の双方で構成された八角柱の構造であっても構わない。円柱状の場合、(001)面に垂直な複数の面が露出することになる。また、長軸の端部は長軸に直交していても、角錘状ないし円錐状に尖った形状でも構わない。
【0016】
本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン粒子の別の態様として、板状であっても構わない。好ましくは前記板状粒子の厚み方向が親水化活性の高い(110)方向に配向している。前記「板状」とは、扁平な形態である。このように扁平状にすることで、塗膜化した場合の基材との密着性が高くなる。ここで板状粒子の長さLl,幅Ls(Ll≧Ls),厚みDとすると、Dが2〜30nmであり、アスペクト比(D/Ls)が1以下である。より好ましいDの範囲は10〜25nmである。また、Lsは10〜50nmであることが好ましく、Llは60〜300nmであることが好ましい。ここで、厚み(D)が30nmより大きい場合、粒子径が大きくなる事から、実質比表面積の低下が起こる。更に、アスペクト比(D/Ls)が1より大きい場合、粒子の形態が棒状に近づくことから、塗膜化した際の基板との接触面積が小さくなる。更に、Lsが10nmより小さい、もしくは、Llが60nmより小さい板状ルチル型酸化チタン粒子の作製は困難である。更に、Lsが50nmより大きい、もしくは、Llが300nmより大きい板状ルチル型酸化チタン粒子の作製は困難であり、しかも粒子径が大きくなる事から、実質比表面積の低下が起こる。なお、この板状粒子は必ずしも直方体形状で無くてもよい。例えば角が丸くなっていてもよく、楕円柱形状であってもよい。
【0017】
本発明の分散剤、ないし、コーティング剤の好ましい固形分濃度の範囲は10%以下である。この範囲であれば、分散性が高く、沈殿を生じることなく、室温で長期間安定である。
【0018】
本発明の分散剤、ないし、コーティング剤には更にバインダー成分が含まれていてもよい。バインダー成分を加えることで、塗膜の強度や基材との密着性を向上させることができる。バインダーとして、例えば、シロキサン結合を有する物質を好適に使用することができる。シロキサン結合は化学的な安定性や耐候性も高い。前記シロキサン結合を有する物質としては水ガラス等のアルカリシリケート、コロイダルシリカ、アルミノシリケート化合物を使用することもできる。アルミノシリケート化合物はシリケート化合物のSiの一部をAlで置換した化合物であって、更に電荷を補償するためにH+やLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+などのアルカリ金属イオンやBe2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+などのアルカリ土類金属イオンが含有されていてもよい。前記シリケート結合を有する化合物のSiの一部をAlで置換した物や、ゼオライトなどを使用することができる。また、前記シロキサン結合を有する物質として、更に好ましい態様において、シリコーンエマルジョンを用いることができる。シリコーンエマルジョンとしては、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランの部分加水分解物、脱水宿重合物を好適に使用することができる。
【0019】
バインダー成分として、フッ素樹脂エマルジョンを使用することもできる。フッ素樹脂を含む塗膜は化学的安定性が高く、また、耐候性も高く、柔軟性にも優れている。フッ素樹脂エマルジョンとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレンウレタン架橋体、テトラフルオロエチレンエポキシ架橋体、テトラフルオロエチレンアクリル架橋体、テトラフルオロエチレンメラミン架橋体等フルオロ基を含有するポリマーのエマルジョン等から選択される少なくとも一つが好適に利用できる。
【0020】
本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン粒子を光触媒等の電荷移動媒体として使用する場合、電荷分離を促進させるため、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子にPt, Pd, Ag, Cu, Au, Ni等の金属を担持してもよい。前記金属を担持することによって光励起した電子正孔対が効率的に分離し、光電流が増大する。また、特にAgやCuを担持した場合、抗菌性や防藻性も発揮する。
【0021】
本発明において、前記異方性ルチル型酸化チタン粒子を製造する方法としては、チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバを出発原料として好適に用いることができる。前記チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバは、酸化チタン、チタン水酸化物、チタン酸塩、非晶質の少なくともいずれか一種を含んでいる。本発明に係るチタン元素を含む化合物が酸化チタンの場合、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型、TiO2(B)が好適に使用できる。また、前記酸化チタンとして、Ti2O3やTi3O5などの還元体やマグネリ相を含んでいても構わない。前記チタン元素を含む化合物がチタン酸塩の場合、三チタン酸、四チタン酸、五チタン酸、六チタン酸、七チタン酸、八チタン酸、レピドクロサイト型チタン酸等のプロトンを含む多価チタン酸や、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸セシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の多価チタン酸塩であっても構わない。特に好ましい態様においては、前記チタン元素を含む化合物は巻物状の層状のトリチタン酸で構成されている。前記巻物状の層状のトリチタン酸は、電荷の中性を保つため、層間にプロトンが挿入されており、溶媒中での安定性は極めて高い。前記中空ファイバの作製方法としては、例えば、酸化チタン粒子を水酸化ナトリウム水溶液中において、水熱処理する方法が好ましく用いられる。
【0022】
前記出発原料から本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン微粒子を製造する方法として、前記出発原料の層間にプロトンを挿入することにより層間を拡大させる方法が好ましく用いられる。より具体的には、チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバを酸性水溶液に接触させる方法が好ましく用いられる。こうした酸性水溶液中での処理によって、請求項8、9、20、21に記載の板状のルチル型酸化チタン粒子を作製することができる。
前記異方性のルチル型酸化チタンの結晶性を高めたり、欠陥量を低減させるため、水熱処理した後に大気中で熱処理をしてから分散処理しても構わない。
【0023】
前記中空ファイバにプロトンを付加する方法として、中空ファイバを酸水溶液と接触させる方法が好適に用いられる。ここで用いる酸の種類としては、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、フッ酸、臭素酸、沃素酸、亜硝酸、酢酸、蓚酸などが挙げられる。プロトンの付加を効率的に促進させるため、静置・攪拌・振とうさせてもよく、より好ましくは静置させる方法がある。前記酸水溶液と接触させる時の温度条件としては、0℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは10℃以上50℃以下である。ここで、0℃未満の温度条件では、溶媒である水が凍結してしまい、プロトンの付加反応が阻害される恐れがあり、また100℃以上の温度条件では、水の沸点以上になる為に、溶媒の揮発が顕著になることや中空ファイバの溶解・分解反応が促進される恐れがある。そして、10℃未満の温度では、溶液中の拡散低下により中空ファイバへのプロトン付加反応が遅くなり、50℃より高い温度では、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
【0024】
前記酸水溶液の酸濃度としては、0.1M以上10M以下が好ましく、より好ましくは0.2M以上5M以下である。ここで、0.1M未満の濃度条件では、プロトン量が不十分になる恐れがあり、10Mより大きい濃度条件では、中空ファイバの溶解・分解反応が進む可能性がある。そして、0.2M未満の場合、プロトン付加反応が遅くなる恐れがあり、5Mより大きい場合、中空ファイバの溶解・分解反応が起こる恐れがある。
【0025】
以上に示したように、本発明においては、前記中空ファイバにプロトンを挿入する、より好ましくは前記中空ファイバに酸溶液を接触させることにより、中空ファイバの層間を拡大させることにより、薄片化及びスタック化が起こり、更に酸を触媒として、前記中空ファイバの層同士の加水分解または縮合反応を促進させることにより、異方性のルチル型酸化チタン粒子の作製が可能になると考えられる。加えて、酸水溶液中での反応により、粒子界面に十分な電荷を付与することが可能となるので、このような方法で作製した異方性ルチル型酸化チタン粒子においては溶媒中での高分散性が達成させる。
【0026】
本発明の分散剤、ないし、コーティング剤を製造する方法として、好ましくは、前記中空ファイバを酸水溶液に接触させる工程により板状ルチル型酸化チタン粒子を作製した後、酸性水溶液に分散させる方法、もしくは、前記中空ファイバを酸水溶液に接触させる工程により板状ルチル型酸化チタン粒子を作製した後、アミン水溶液に分散させる方法が挙げられる。特に好ましいのは後者の方法である。酸水溶液に接触させることによって板状ルチル型酸化チタン粒子の表面にプロトンが付加されて安定化し、その後四級アンモニウム水酸化物の水溶液を溶媒にすることによって高度に分散する。
【0027】
本発明の分散剤およびコーティング剤を製造する別の方法として、前記プロトン処理して板状のルチル型酸化チタン粒子を作製した後に、更に水熱処理をおこなう。このときの水熱処理条件によって、粒子の形状を任意に制御することができる。例えば、塩基性水溶液中で水熱処理をおこなうと、請求項6、7、18、19に記載の円柱状、ないし、角柱状の異方性ルチル型酸化チタン粒子を得ることができる。一方、酸性水溶液中で水熱処理をおこなうと、請求項10、22に記載の長軸方向に配列した複数の柱状粒子を束ねた形状の異方性のルチル型酸化チタン粒子を合成することができる。塩基性水溶液として、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、四級アンモニウム水酸化物等の誘起アミン水溶液等が好適に使用することができる。酸性の水溶液としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、フッ酸、臭素酸、沃素酸、亜硝酸、酢酸、蓚酸、リンゴ酸等好適に用いられる。
前記異方性のルチル型酸化チタンの結晶性を高めたり、欠陥量を低減させるため、水熱処理した後に大気中で熱処理をしてから分散処理しても構わない。
【0028】
本発明のコーティング剤は長期間沈殿を生じることなく安定である。本発明に係る板状ルチル型酸化チタン粒子はワイドギャップ型半導体のため、透明性が高く、高屈折率であり、光触媒、塗料、フィラー、紫外線遮蔽材料、顔料、化粧用顔料等の用途に適用することができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
1.チタン元素を含む化合物からなる中空ファイバの作製
酸化チタン粉末(商品名P25、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径約25nm、比表面積約55m2/g)0.96gを10M水酸化ナトリウム水溶液80mlに投入し、ガラス棒にて1分間攪拌することにより、白色懸濁液を得た。この白色懸濁液を100mlフッ素樹脂製容器に入れ、さらにステンレス製容器にこのフッ素樹脂製の容器を入れた。乾燥器の中にこのステンレス容器を入れて、120℃で40時間保持した。反応終了後、室温までステンレス容器を自然放冷させ、白色沈殿物を含む溶液を回収した。洗浄工程として、この白色沈殿物を含む溶液から、上澄み液をまずスポイトにて除去した。残った白色沈殿物に0.1M硝酸水溶液100mlを少量ずつ添加した。硝酸水溶液を全量添加後、室温(20℃)で3時間静置した。静置後、上澄み液を除去した。この洗浄工程を合計3回行い、上澄み液がpH7以下であることを確認した。これらの中和操作の後、残った白色沈殿物を蒸留水で2回洗浄することにより、白色粉末を得た。この白色粉末を走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)製STEM S−5200)で観察したところ、15万倍の倍率において、この方法で得られる白色粉末が中空ファイバの集合体であり、各ファイバの中心部は直径3〜5nmの中空構造になっていることを確認した。
【0030】
2.板状ルチル型酸化チタン粒子の作製
上記の方法で作製した白色粉末を2M硝酸水溶液64ml中に添加、室温で1週間暗所で静置した。静置後、高度に分散した半透明の分散液を得た。得られた半透明溶液を遠心分離機(佐久間製作所(株)製 M200−IVD)により5000rpmで30分遠心分離し、固形分を乾燥した。得られた粉末を#1試料とする。得られた粒子を透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製H−9000UHR III)で観察したところ、図2に示すように、異方性形状を有していることがわかった。単一粒子の電子線回折像により、この粒子はルチル型酸化チタンのスポットと一致し、厚み方向が(110)方向に配向している結晶構造を有することが明らかとなった。
また、前記高度に分散した半透明の溶液をホウ珪酸ガラス基板にスピンコートして乾燥したものの表面を原子間力顕微鏡(Digital Instruments Inc.製 Nanoscope 3a)にて観察した。結果を図3に示したが、厚みが約20nm、幅が50nm、長さが200nmの板状構造であることがわかった。
【0031】
3.柱状ルチル型酸化チタン微粒子の合成
前記2.で得られた板状ルチル型酸化チタン(#1)を更に0.2Mのテトラブチルアンモニウム水酸化物水溶液中で水熱処理した。板状ルチル型酸化チタンの重量は1g、テトラブチルアンモニウムの量は80mLとし、1.と同様の水熱反応容器を用い、200℃×20時間の水熱処理をおこなった。得られたサンプルを1.と同様に、遠心分離、中和、洗浄工程をおこない、白色粉末である#2試料を得た。
得られた粉末の走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)、STEM S−5200)で観察したところ、長軸が50〜200nm、短軸が20〜30nmの柱状構造であった。更に、得られた粉末をエポキシ樹脂に埋包し、のダイヤモンドナイフ35度(Diatome社)を使用し、ウルトラミクロトーム(ライカ製、LEICA EM UC6)で薄片化し、走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)、STEM S−5200)で観察したところ、四角柱状の断片が確認された(図4)。また透過像を観察する限り、粒界が存在しないことも明らかになった。またこの粉末の結晶構造を粉末X線回折(マックサイエンス、MXP18II)で測定したところ、ルチル型酸化チタンであることが明らかになった。
【0032】
4.複数の柱状の1次粒子からなる異方性ルチル型酸化チタン微粒子の合成
前記2.で得られた板状ルチル型酸化チタン(#1)を更に0.2Mの硝酸水溶液中で水熱処理した。板状ルチル型酸化チタンの重量は1g、硝酸の量は80mLとし、1.と同様の水熱反応容器を用い、200℃×20時間の水熱処理をおこなった。得られたサンプルを1.と同様に、遠心分離、洗浄工程をおこない、白色粉末である#3試料を得た。
得られた粉末の走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)、STEM S−5200)で観察した。2次電子像、透過電子像を図5に示したが、長軸が200〜300nm、短軸が40〜90nmで、長軸方向に複数の柱状粒子が束なった形状を有することがわかった。更に、得られた粉末をエポキシ樹脂に埋包し、のダイヤモンドナイフ35度(Diatome社)を使用し、ウルトラミクロトーム(ライカ製、LEICA EM UC6)で薄片化し、走査型透過電子顕微鏡(日立製作所(株)、STEM S−5200)で観察したところ、複数の四角柱状の粒子の断片が確認された。また、この粉末の結晶構造を粉末X線回折(マックサイエンス、MXP18II)で測定したところ、ルチル型酸化チタンであることが明らかになった。
【0033】
5.異方性のルチル型酸化チタン粒子の光触媒特性の評価
得られたサンプルのイソプロパノール分解活性を評価した。得られた粉末をガラス製のシャーレに均一に敷き、このシャーレを800mLのホウ珪酸ガラス製の反応用セル内に設置、セル内を相対湿度50%の合成空気で置換した後にイソプロパノールを注入、暗所で2時間放置した後に光照射した場合のイソプロパノールと分解生成物であるアセトンの濃度変化を測定した。イソプロパノールの濃度は、サンプルを設置しない状態で500ppmとなるような条件に設定した。イソプロパノール、アセトンの濃度はマルチガスモニタ(Innova社、1312)で測定した。光源は10Wの白色蛍光灯(東芝)を用い、紫外線強度が紫外線照度計(トプコン、UVR-2)で計測した値で37μW/cm2になるように設定した。#1試料:板状、#2試料:柱状、#3試料:複数の柱状粒子からなる粉末サンプルをそれぞれ、大気中で400℃熱処理したサンプルについても上記と同様に光触媒活性を評価した。また、比較例として、アナターゼ型の酸化チタン(石原産業、ST-01)についても測定した。
光照射時のアセトンの発生を図6に示した。この結果、本発明の異方性のルチル型酸化チタンはいずれも市販のアナターゼ型酸化チタンよりも高活性であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の分散液およびコーティング剤は、光学薄膜、光触媒、光半導体電極、トランジスタ、発光素子、バイオセンサ電極、化学センサ電極、誘電体材料、導電性材料、絶縁性材料、防錆材料、紫外線遮蔽材料等の広範な用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】

【図1】本発明に係る異方性のルチル型酸化チタン粒子の模式図
【図2】本発明に係る#1試料(板状ルチル型酸化チタン粒子)の透過型電子顕微鏡写真及び電子線回折像を示す図である。
【図3】本発明に係る#1試料(板状ルチル型酸化チタン粒子)の原子間力顕微鏡写真を示す図である。
【図4】本発明に係る#2試料(柱状ルチル型酸化チタン粒子)の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明に係る#3試料(複数の柱状の1次粒子からなる異方性ルチル型酸化チタン粒子)の走査型電子顕微鏡写真および透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】本発明に係る異方性ルチル型酸化チタン粒子の光触媒特性を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散された分散液であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒にアミンの水溶液が含まれるこを特徴とする分散液。
【請求項2】
前記アミンが、四級アンモニウム水酸化物であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項3】
異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散された分散液であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒に酸水溶液が含まれることを特徴とする分散液。
【請求項4】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の短軸の長さが5〜100nm、長軸の長さが60〜300nmであって、かつ、長軸が短軸よりも長いことを特徴とする請求項1〜3に記載の分散液。
【請求項5】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子は柱状の1次粒子が長軸方向に配向して複数会合しており、前記柱状の1次粒子の長軸が(001)方向に配向していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項6】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の内部に粒界が存在しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項7】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が角柱状であることを特徴とする請求項1〜6に記載の分散液。
【請求項8】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が円柱状であることを特徴とする請求項1〜6に記載の分散液。
【請求項9】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が板状であって、板状の厚み方向が(110)方向に配向していることを特徴とする請求項1〜6に記載の分散液。
【請求項10】
請求項9に記載の分散液であって、前記板状の異方性のルチル型酸化チタン粒子の短軸のうち、厚さをD1、幅をLsとし、長軸の長さをLl(Ll≧Ls)としたとき、アスペクト比(D/Ls)が1以下であり、Lsが10〜50nmであり、Llが60〜300nmであることを特徴とする請求項9に記載の分散液。
【請求項11】
固形分濃度が10%以下であることを特徴とする請求項1〜10に記載の分散液。
【請求項12】
バインダー成分が含まれることを特徴とする請求項1〜11に記載の分散液。
【請求項13】
異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散されたコーティング剤であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒にアミンの水溶液が含まれることを特徴とするコーティング剤。
【請求項14】
前記アミンが、四級アンモニウム水酸化物であることを特徴とする請求項13記載のコーティング剤。
【請求項15】
異方性のルチル型酸化チタン粒子が溶媒に分散されたコーティング剤であって、前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の長軸方向が(001)方向に配向しており、かつ前記溶媒に酸水溶液が含まれることを特徴とするコーティング剤。
【請求項16】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の短軸の長さが5〜100nm、長軸の長さが60〜300nmであって、かつ、長軸が短軸よりも長いことを特徴とする請求項13〜15に記載のコーティング剤。
【請求項17】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子は柱状の1次粒子が長軸方向に配向して複数会合しており、前記柱状の1次粒子の長軸が(001)方向に配向していることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項18】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子の内部に粒界が存在しないことを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項19】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が角柱状であることを特徴とする請求項13〜18に記載のコーティング剤。
【請求項20】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が円柱状であることを特徴とする請求項13〜18に記載のコーティング剤。
【請求項21】
前記異方性のルチル型酸化チタン粒子が板状であって、板状の厚み方向が(110)方向に配向していることを特徴とする請求項13〜18に記載のコーティング剤。
【請求項22】
請求項21に記載のコーティング剤であって、前記板状の異方性のルチル型酸化チタン粒子の短軸のうち、厚さをD1、幅をLsとし、長軸の長さをLl(Ll≧Ls)としたとき、アスペクト比(D/Ls)が1以下であり、Lsが10〜50nmであり、Llが60〜300nmであることを特徴とする請求項21に記載のコーティング剤。
【請求項23】
固形分濃度が10%以下であることを特徴とする請求項13〜22に記載のコーティング剤。
【請求項24】
バインダー成分が含まれることを特徴とする請求項13〜23に記載のコーティング剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−225623(P2006−225623A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83900(P2005−83900)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】