分散液の製造方法

【課題】気泡の混入を抑制することのできる中空粒子を含有する分散液の製造方法およびその分散液を含む塗工液を塗工した塗工シートを提供する。
【解決手段】水系溶媒に中空粒子を添加し、攪拌、分散した後、ポンプで塗工液タンクに送り、低速攪拌脱泡する分散液の製造方法であって、該ポンプによる送液後の分散液の比重が0.97≦ρ/ρ≦1.03を満足する分散液の製造方法およびその分散液を含む塗工液を塗工した塗工シート。
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後24時間以上脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液の製造方法に係り、特に中空粒子を含有する分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーマルプリントが注目されており、販売レシート用の単色の感熱プリンターから、鮮明なフルカラー画像がプリント可能な写真用染料熱転写プリンターまで、様々な用途で使用されている。サーマルプリンターは、熱により記録シートに含有された発色剤を発色させるか、または、インクシート上の染料を熱によって、溶融もしくは昇華させ、記録シート上へ転写させることによって、印画を行うものである。
【0003】
サーマルプリントで使用される記録シートは、天然パルプを主原料とする紙類やポリエステル、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムが使用されるが、低コストやリサイクルが容易であることから紙類が広く一般に使用されている。
【0004】
サーマルプリントには、高速化、低消費電力化が求められており、記録シートにもサーマルプリンターから与えられる熱を効率良く利用することが求められている。そのため、記録シートとして紙に断熱性を有する材料を塗工した塗工シートを利用することが多い。
【0005】
特許文献1には、支持体上に平均粒子径が2.0〜20μmで、かつ、その中空度が80%以上のプラスチック球状もしくは楕円球状中空粒子を含有する断熱層としてのアンダーコート層を有する高感度でドット再現性に優れた感熱記録材料が開示されている。
【0006】
特許文献2には、平滑性、断熱性、クッション性等の性能を発揮する中空粒子を含有する中間層を設けた、濃淡ムラや白抜けなどの画像欠陥がなく、低コストで、高感度、高画質の受容シートが開示されている。
【0007】
特許文献3および4には、断熱性およびクッション性を向上させるために中空粒子を含有する下塗り層を有する、高い印画濃度と良好な画像均一性とを有する熱転写受容シートが開示されている。
【0008】
一方、特許文献5は、中空ポリマーをはじめとするポリマーラテックスの水分散物は凝集が生じやすく、それに起因する凝集物や気泡、不純物が断熱層塗布液の中に存在すると平滑な面を得ることが難しくなり、画像故障が生じることを指摘している。そして、特許文献5には、断熱層塗布液をフィルターでろ過した後に超音波照射してから塗布する、凝集物、気泡の混入しない優れた特性を有する感熱転写受像シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−573号公報
【特許文献2】特開2004−345289号公報
【特許文献3】特開2011−68043号公報
【特許文献4】特開2011−115948号公報
【特許文献5】特開2008−246928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
中空粒子、特に中空構造が発泡した気体により形成されている中空粒子は、比重が軽いため、特許文献5に記載の方法のように超音波を照射すると気泡と共に塗工液の上部へと移動し、塗料の均一性が失われ、形成された塗工層の品質が一定しない問題がある。
【0011】
通常、中空粒子を含有する塗工液は、溶媒に中空粒子および接着剤を含有する。前述のように、塗工液に気泡が混入すると、塗工層形成後、塗工欠陥が生じ、印画欠陥の原因となるという問題がある。このため、混入した気泡を除去するための脱泡処理が行われるのが一般的である。
【0012】
従来、脱泡処理は、塗工液として仕上がったもので行っていたが、溶媒に中空粒子を分散させた分散液を製造した段階で脱泡処理を行うと、脱泡に要する時間を短縮できることが分かった。しかし、分散液の段階で脱泡処理を行ったとしても、完全に脱泡させるためには長時間放置しなければならない。
【0013】
なお、本発明において、分散液とは、最終的な塗工液として仕上がる前の段階のものを言う。分散液は、溶媒に中空粒子を分散したものであり、必要に応じて、仕上げに添加する接着剤、助剤等の一部を含んでいても構わない。
【0014】
そこで本発明は、気泡の混入を抑制することのできる中空粒子を含有する分散液およびそれを含む塗工液を塗工した塗工シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、分散液中に生じる気泡について検討した結果、まず以下の(A)〜(G)の知見を得た。
【0016】
(A)分散液中に生じる気泡について詳細に検証した。その結果、気泡は2種類存在することが分かった。1つは液面または液中に発生する比較的大きい気泡であり、もう1つは液中に発生する微細な気泡である。
【0017】
(B)前者の気泡は放置しているだけで消失するのに対して、後者の微細な気泡は長時間放置しなければ完全には消失せず、この気泡が脱泡処理に長時間を要する原因であることが分かった。
【0018】
(C)分散液は、分散用タンクにおいて中空粒子を溶媒に添加してから、攪拌、分散し、その後ポンプで塗工液タンクに移送し、さらに塗工液タンク内で低速攪拌脱泡処理することによって製造される。それぞれの過程において生じる気泡について詳細な検証を行ったところ、分散用タンクでの分散処理後の分散液には、比較的大きな気泡は認められるものの、微細な気泡は生じていなかった。一方、塗工液タンクに移送された直後の分散液には、比較的な大きな気泡はほとんどなく、微細な気泡が発生していた。そして、一定時間脱泡処理を行った後の分散液中には、比較的な大きな気泡は完全に消失していたが、微細な気泡は残存していた。
【0019】
(D)各過程における分散液をさらに詳しく観察した結果、微細な気泡が生じている分散液では、中空粒子が破損していることが見出された。以上の検証から、比較的大きな気泡は、撹拌、分散処理に伴い大気から混入する気泡であり、微細な気泡は、中空粒子の破損に伴って発生する気泡であることが明らかになった。
【0020】
(E)さらに、各過程で採取された分散液について、比重を測定して、理論値との比較を行った。その結果、分散処理直後のものは、比重が理論値より減少していたのに対して、ポンプによる移送直後のものは、ほぼ理論値通りであり、一定時間脱泡処理を行った後のものは、増加していた。
【0021】
(F)分散処理直後の比重の減少は、大気からの気泡の混入を反映しているものと解釈できる。一方、ポンプによる移送直後では、中空粒子が破損したものの、中空粒子内の気体が分散液中に微細な気泡として残存するため、比重に変化がなく、その後の脱泡に伴って比重が増加するものと解釈できる。
【0022】
(G)分散液の比重の変化からも、比較的大きな気泡が、撹拌、分散処理に伴い大気から混入する気泡であり、微細な気泡が、中空粒子の破損に伴って発生する気泡であることが裏付けられる結果となった。
【0023】
本発明者らは、中空粒子が破損する原因について検討し、さらに以下の(H)〜(J)の知見を得た。
【0024】
(H)上述のように、微細な気泡は、分散用タンクから塗工液タンクに移送した後に発生する。したがって、分散液を製造するに際して、タンク移送時に使用されるポンプによって中空粒子が破壊されるおそれがあることが分かった。
【0025】
(I)中空粒子の破損は、せん断の少ないタイプのポンプを選択することによって防止することが可能である。
【0026】
(J)中空粒子の破損に伴い、内包されている気体が抜け、分散液の比重が上昇する。すなわち、ポンプ処理の前後における分散液の密度が以下の式を満たすようなポンプを使用する必要がある。
0.97≦ρ/ρ≦1.03
ただし、ρは、分散液の真の比重であり、ρは、ポンプによる移送後24時間以上脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値である。
【0027】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、下記(1)〜(7)の分散液の製造方法および下記(8)の塗工シートを要旨とする。
【0028】
(1)水系溶媒に中空粒子を添加し、攪拌、分散した後、ポンプで塗工液タンクに送り、低速攪拌脱泡する分散液の製造方法であって、該ポンプによる送液後の分散液の比重が下式(i)を満足することを特徴とする分散液の製造方法。
0.97≦ρ/ρ≦1.03・・・(i)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後24時間以上脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値
【0029】
(2)上記ポンプによる送液後の分散液の比重が下式(ii)を満足することを特徴とする前記(1)に記載の分散液の製造方法。
0.95≦ρ/ρ・・・(ii)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後1時間脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値
【0030】
(3)上記ポンプによる送液後の分散液の比重が下式(iii)を満足することを特徴とする前記(2)に記載の分散液の製造方法。
0.90≦ρ/ρ・・・(iii)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送直後の分散液の比重の測定値
【0031】
(4)上記中空粒子が気体を内包、封止した中空粒子であることを特徴とする前記(1)から(3)までのいずれかに記載の分散液の製造方法。
【0032】
(5)上記水系溶媒が水であることを特徴とする前記(1)から(4)までのいずれかに記載の分散液の製造方法。
【0033】
(6)上記水系溶媒が水および水溶性樹脂を含むことを特徴とする前記(1)から(4)までのいずれかに記載の分散液の製造方法。
【0034】
(7)上記水溶性樹脂が、質量部で、中空粒子1部に対して、0.7部以下含まれることを特徴とする前記(6)に記載の分散液の製造方法。
【0035】
(8)前記(1)から(7)までのいずれかに記載の方法により得られた分散液を含む塗工液を支持体に塗工したことを特徴とする塗工シート。
【発明の効果】
【0036】
本発明の方法によって得られた分散液は、気泡が生じることがないため、本発明の分散液を含む塗工液を支持体に塗工した塗工シートは、中空粒子を均一に含有し塗工欠陥のない塗工層を有するので、記録シート等として用いた場合、印画不良がなく、印画濃度等の品質が安定した高画質の記録シートとなる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る分散液は、分散用タンクにおいて水系溶媒に中空粒子を添加してから、攪拌、分散し、その後ポンプで塗工液タンクに移送し、さらに塗工タンク内で低速攪拌脱泡することで製造される。以下に各要素について詳しく説明する。
【0038】
1.分散処理
本発明の分散液は、水系溶媒に中空粒子を添加し攪拌、分散させたものであり、この時、必要に応じて、仕上げに用いる接着剤、助剤等の一部を添加しても良い。なお、本発明で言う水系溶媒とは、水またはさらに水溶性樹脂を含有する溶媒を指す。その他、塗工紙用塗料で使用される界面活性剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、着色剤、染料、顔料等も適宜使用可能である。
【0039】
水溶性樹脂については特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、変性デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、カルボキシル基またはスルホン基等の親水基を導入した水溶性ポリエステルまたは水溶性ポリウレタン等が挙げられる。中でもポリビニルアルコールは、保護コロイドとして中空粒子を保護する効果を有する。
【0040】
上述のように、水溶性樹脂は概して中空粒子の破損を防止する効果を有するため、本発明に係る分散液の製造方法は、特に水溶性樹脂の割合が低い場合に効果を発揮する。具体的には、水溶性樹脂が、質量部で、中空粒子1部に対して、0.7部以下の際に高い効果を発揮し、0.4部以下の際により高い効果を発揮し、0.25部以下の際にさらに高い効果を発揮する。
【0041】
中空粒子についても特に制限はないが、例えば、発泡性中空粒子、中空エマルジョン等が挙げられる。
【0042】
発泡性中空粒子は、例えばn−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ネオペンタン等の低沸点炭化水素を核(コア)として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル等のモノマーの単独重合体樹脂、あるいはこれらの共重合体樹脂を壁(シェル)として、マイクロカプセル化し、加熱により低沸点炭化水素を気化、膨張させることによって、粒子に気体を内包、封止し、粒子内部に空間を形成するものである。
【0043】
中空エマルジョンは、重合体形成性材料をシェル形成用材料として用い、かつ揮発性液体を気孔形成用材料として用いて、マイクロカプセル重合方法により製造されたマイクロカプセルから、前記気孔形成用材料を揮発逃散させて得られたマイクロカプセル状中空粒子である。
【0044】
中空粒子の体積中空率としては、60〜97%とするのが好ましく、65〜90%とするのがさらに好ましい。体積中空率を60%以上とすることにより、塗工シートを記録シートとして用いた場合、高感度、高画質の記録シートを得ることができ、体積中空率を97%以下とすることで、中空粒子の強度を確保し、高感度、高画質の記録シートを安定した品質で得ることができる。
【0045】
本発明の中空粒子は、気体を内包、封止した中空粒子、すなわち発泡性中空粒子であることが好ましい。発泡性中空粒子は、中空エマルジョンに比べて、体積中空率を60%以上とすることが容易であり、かつ安定した品質を得ることができる。
【0046】
なお、中空粒子の体積中空率とは粒子体積に対する中空部分の体積の割合を示したものである。発泡性中空粒子および中空エマルジョンの体積中空率は、例えば電子顕微鏡による拡大映像から、中空部の体積および中空粒子全体の体積を算出し、(中空部の体積)/(中空粒子全体の体積)から求めることが可能である。
【0047】
ただし、中空粒子の体積中空率が高く、断面試料作成の際に変形しやすい、または中空粒子の形状が一定でないと、前記電子顕微鏡による拡大映像から体積中空率を求めることが困難な場合がある。このような場合、発泡性中空粒子の体積中空率は、中空粒子と貧溶媒からなる中空粒子分散液の比重、分散液における中空粒子の質量分率、中空粒子のシェル(壁)を形成する重合体樹脂の真比重、および貧溶媒の比重から求めることができる。なお、貧溶媒とは中空粒子の壁を形成する樹脂を溶解および/または膨潤させない溶媒であり、例えば水、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0048】
中空粒子の分散は、適切な容量の分散用タンクにおいで行えば良く、例えば、カウレス分散機を用いて適宜分散処理を行うことができる。
【0049】
2.ポンプによる移送
上記のように分散処理を行った分散液は、ポンプを用いて塗工液タンクに移送される。この際に、中空粒子が破損するおそれがあるため、せん断の少ないポンプを選択する必要がある。前述のように、中空粒子が破損すると内包されている気体が抜け、分散液の比重が上昇する。一方、上記の分散処理により比較的大きな気泡が混入すると分散液の比重が減少するが、比較的大きな気泡は短時間で消失することから、一定時間経過した後の分散液の比重は、中空粒子の破損の影響のみを反映しているものと考えることができる。そのため、ポンプ処理後の分散液の比重を真の比重と比較することによって、中空粒子の破損の度合いを見積もることが可能である。中空粒子の破損に起因した気泡の発生を抑制するためには、ポンプ処理後の比重増加が小さくなるようにする必要があり、具体的には下式(i)を満たすようなポンプを使用する必要がある。
0.97≦ρ/ρ≦1.03・・・(i)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後24時間以上脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値
【0050】
また、上記の分散処理が過剰であると、それに伴って発生する気泡が短時間では消えないようになる。その場合、ポンプ処理後の比重が真の比重と比較して低くなる。分散処理に伴う比較的大きな気泡も極力発生を抑制することが製造時間短縮の観点から望ましいため、ポンプ処理後の比重について、上式(i)に加えて下式(ii)を満たすのが好ましく、下式(iii)をさらに満たすのがより好ましい。
0.95≦ρ/ρ・・・(ii)
0.90≦ρ/ρ・・・(iii)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後1時間脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値
ρ:ポンプによる移送直後の分散液の比重の測定値
【0051】
分散液の比重は、各段階で採取した分散液をあらかじめ重量を測定した1L目盛りが付いたメスシリンダー容器に注ぎ入れ、体積量(L)および重量(kg)を求めることで得られる。また、分散液の真の比重としては、分散処理後、そのまま20時間以上放置したものの測定値を用いた。
【0052】
上式を満たすようなポンプであれば特に制限はないが、例えば、スクリューコンベア付2軸スクリューポンプ(伏虎金属工業株式会社製)、3−Screw Pumps(IMO社製)または偏心ディスクポンプ(MOUVEX社製)等を用いるのが好ましい。
【0053】
分散液を塗工液タンクに移送する際に、必要に応じて、フィルターを介しても良い。フィルターを用いる場合、ポンプを用いて移送した分散液を、目開きが30〜250μmのフィルターでろ過するとよい。例えば、目開き100〜250μmのフィルターでろ過した後、より小さい目開き30〜150μmのフィルターでろ過することもできる。フィルターは大気開放型のものを用いて自重でろ過すれば良い。
【0054】
3.脱泡処理
塗工液タンクに移送された分散液は、塗工液タンク内で低速攪拌することによって脱泡する。塗工液タンク内での攪拌は、起泡しない程度の低速で1時間以上行うのが望ましい。そのため、塗工液タンクは、回転制御の可能な攪拌羽根を備えていることが好ましい。攪拌羽根の回転数は、多過ぎると液面より空気を抱き込んで、かえって分散液中の気泡を増加させ、少な過ぎると気泡の大気中への放出を促進させる効果が少ない。最適な攪拌羽根の回転数は、分散液の固形分濃度、粘度、保水度等によって異なり、使用する分散液によって適宜調整される。分散液の状態で十分に脱泡しておくことによって、高品質の塗工液を製造することができる。
【0055】
4.塗工液
本発明の方法により製造された分散液は、塗工タンク内においてさらに接着剤等を添加することで、最終的な塗工液となる。仕上げに用いられる接着剤としては、水分散性樹脂を用いるのが好ましい。
【0056】
水分散性樹脂は、各種樹脂を各種乳化剤によりエマルジョン化した所謂ラテックスであり、例えば、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリル系ラテックス、塩化ビニル−アクリル酸共重合樹脂エマルジョン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン等が挙げられる。接着剤等を添加した後、塗工液タンク内で十分に攪拌し、その後に再度低速攪拌することによって脱泡するのが望ましい。
【0057】
5.塗工シート
上記のようにして製造された塗工液は、シート状支持体に塗工することによって塗工シートを得ることができる。以下に詳細を述べる。
【0058】
本発明の塗工シートに用いられるシート状支持体としては、ポリエチレンテレフタレートやポリオレフィンからなるフィルム基材、合成繊維や天然繊維からなる不織布基材、パルプを主成分として抄造される紙基材等またはこれら基材を貼り合せた積層基材が使用される。
【0059】
例えば、パルプを主成分とする基材としては上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙が挙げられる。さらに、パルプを主成分とした基紙の画像受像層面側を樹脂ラミネートしたシート状支持体または合成樹脂を主成分としたシート類を積層貼合したシート状支持体を使用しても良い。
【0060】
シート状支持体への塗工液の塗工は、コーターヘッドを用いて行われるのが好ましい。コーターヘッドとしては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドビードコーター等の公知の塗工機のヘッドが挙げられる。
【0061】
コーターヘッドには、予め計量された量の塗工液を支持体上に塗工する前計量型塗工ヘッドと塗工したい量を上回る量の塗工液を支持体上に塗工した直後に、余分な塗工液を掻き落とし、掻き落とした塗工液(戻り塗工液)をタンクへ循環させる後計量型塗工ヘッドがある。掻き落とした塗工液は、気泡を巻き込むことが多いため、戻り塗工液を生じない前計量型塗工ヘッドが好ましい。前計量型塗工ヘッドとしては、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドビードコーターが挙げられる。
【0062】
また、塗工液を支持体上に塗工するに際して、必要に応じて気泡検知機を用いることができる。気泡検知機としては、インラインで使用可能であれば、いずれの方式でも使用可能であるが、塗工液に照射した近赤外線の透過光及び散乱光の強度を測定する方式は、高濃度の塗工液でも測定が可能なため好ましく使用できる。前記方式の気泡検知機としては、センサテクノロジー社製のアピアランスモニター等が一般に入手可能である。また、その他の方式の気泡検知機としては、超音波測定方式のパルサーレシーバー(GNES社製)が挙げられる。
【0063】
以上の方法によって製造される塗工シートは、そのまま記録シートとしても良く、塗工液よりなる層の上に昇華転写受容層や感熱記録層を設けても良い。この場合、塗工層は、断熱クッション層の役割を有する。
【実施例1】
【0064】
以下に、具体例を挙げて本発明を説明するが、それらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0065】
(本発明例1)
カウレス分散機内で、水200部にポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製)7部加え、次いで、ポリ塩化ビニリデン系既発泡中空粒子(体積中空率93%、平均粒子径4μm、最大粒子径20μm)35部をゆっくり、攪拌機でかき混ぜながら添加し、その後カウレス分散機の最大回転数にて1時間攪拌分散した。
【0066】
これを、スクリューポンプ(伏虎金属工業株式会社製、ラジアルスクリューポンプSQ−40EH−MGA)を用い、流速17.8(L/min)で塗工液タンクに送り、1時間以上起泡しない程度に十字パドル型攪拌機を用いて低速攪拌脱泡して中空粒子を含有する分散液を得た。
【0067】
(本発明例2)
本発明例1において、中空粒子を配合した後の攪拌時間を1時間30分とした以外は本発明例1と同様にした。
【0068】
(本発明例3)
本発明例1において、中空粒子を配合した後の攪拌時間を2時間とした以外は本発明例1と同様にした。
【0069】
(本発明例4)
本発明例1において、ポリビニルアルコールを7部から15部に変更した以外は本発明例1と同様にした。
【0070】
(比較例1)
本発明例1において、スクリューポンプに代えて、モーノ式ポンプを用いた以外は本発明例1と同様にした。
【0071】
上記本発明例および比較例で得られた分散液について、外観観察による評価を行い、その結果を表1に示した。また、分散液の比重の理論値および各工程における比重の測定値を合わせて示した。なお、ρは分散液の比重の理論値、ρは分散処理直後でポンプによる移送直前の比重の測定値、ρはポンプによる移送直後の比重の測定値、ρはポンプによる移送後1時間脱泡処理を行った後の比重の測定値、ρはポンプによる移送後24時間以上脱泡処理を行った後の比重の測定値である。
【0072】
【表1】

【0073】
本発明例1〜3のρを比較すると、分散時間の増加に伴い、比較的な大きな気泡の混入量が増加することを反映して比重が減少した。しかし、ρ、ρおよびρの値から分かるように、十分な時間が経過した後は、比重がほぼ理論値の値へと戻り、中空粒子の破損が生じていなかったことが分かる。また、分散液の組成が異なる本発明例4においても、ポンプ移送が1時間後には比重が理論値の値へと戻り、中空粒子の破損が生じなかった。一方、比較例1においては、ポンプ移送後に時間と共に比重が上昇し、中空粒子の破損に伴い、内包されている気体が抜けていることが分かる。本発明で規定する式を満足する本発明例1〜4では、気泡の混入がない高品質な分散液が得られたのに対して、比較例1では、ポンプ移送後24時間以上経過後であっても微細な気泡の混入が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の方法によって得られた分散液は、気泡が生じることがないため、本発明の分散液を含む塗工液を支持体に塗工した塗工シートは、中空粒子を均一に含有し塗工欠陥のない塗工層を有するので、記録シート等として用いた場合、印画不良がなく、印画濃度等の品質が安定した高画質の記録シートとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒に中空粒子を添加し、攪拌、分散した後、ポンプで塗工液タンクに送り、低速攪拌脱泡する分散液の製造方法であって、該ポンプによる送液後の分散液の比重が下式(i)を満足することを特徴とする分散液の製造方法。
0.97≦ρ/ρ≦1.03・・・(i)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後24時間以上脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値
【請求項2】
上記ポンプによる送液後の分散液の比重が下式(ii)を満足することを特徴とする請求項1に記載の分散液の製造方法。
0.95≦ρ/ρ・・・(ii)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送後1時間脱泡処理を行った後の分散液の比重の測定値
【請求項3】
上記ポンプによる送液後の分散液の比重が下式(iii)を満足することを特徴とする請求項2に記載の分散液の製造方法。
0.90≦ρ/ρ・・・(iii)
なお、式中の各記号の意味は下記の通りである。
ρ:分散液の真の比重
ρ:ポンプによる移送直後の分散液の比重の測定値
【請求項4】
上記中空粒子が気体を内包、封止した中空粒子であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の分散液の製造方法。
【請求項5】
上記水系溶媒が水であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の分散液の製造方法。
【請求項6】
上記水系溶媒が水および水溶性樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の分散液の製造方法。
【請求項7】
上記水溶性樹脂が、質量部で、中空粒子1部に対して、0.7部以下含まれることを特徴とする請求項6に記載の分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の方法により得られた分散液を含む塗工液を支持体に塗工したことを特徴とする塗工シート。

【公開番号】特開2013−111497(P2013−111497A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257925(P2011−257925)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】