説明

分散電源システム

【課題】 電力系統の停電時に素早く且つ信頼性高く電力変換器側に運転切換えを行うことが可能な分散電源システムを提供する。
【解決手段】 電源系統1と負荷3の間に接続された半導体スイッチ2と、負荷3と並列に接続され蓄電装置4からの直流を交流に変換する電力変換器5と、系統電圧検出器7と、半導体スイッチの1次側電圧と2次側電圧の差電圧を検出する差電圧検出手段8A及び8Bと、半導体スイッチの電流を検出する電流検出手段9と、半導体スイッチ及び電力変換器を運転制御するための制御手段6とで構成し、制御手段6は、系統電圧検出器7の出力電圧が停電レベルと判断されたとき半導体スイッチにオフ指令を与える手段と、差電圧検出手段8A及び8Bと電流検出手段9の出力によって半導体スイッチ2が開になったことを判定する開判定手段64を有し、開判定手段64の出力によって電力変換器5の運転を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統と連系運転を行うように構成された分散電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分散電源システムは、電力系統から、半導体素子を用いた系統連系スイッチを介して負荷に給電し、この負荷と並列に電力変換器が接続される構成となっているのが通常である。
【0003】
電力系統が正常であれば、系統連系スイッチは閉となっており、電力系統から負荷に電力が供給され、同時に電力系統は電力変換器の直流部に接続された2次電池等の蓄電装置を充電する。
【0004】
電力系統に電圧変動等が発生して電圧が低下した場合、或いは停電となった場合には、系統連系スイッチには開の指示が出される。このとき、負荷への給電を継続するため、電力変換器をインバータ動作させ、2次電池等の蓄電装置から電力を負荷に供給する。
【0005】
系統連系スイッチにはサイリスタ等自己消弧能力を持たない半導体素子が用いられる場合が多い。これは、自己消弧能力を持つ半導体素子に比べ、過負荷耐量を大きくできる等の理由による。このような自己消弧能力を持たない半導体素子が開となるためには、系統連系スイッチに開の指令が出され、ゲートパルスが無くなってから最大、電力系統の周波数換算で半サイクル待つ必要がある。このため、より速く系統連系スイッチを開とするため、系統連係スイッチに開指令を与えると同時に、系統連系スイッチに流れる電流が減少するように電力変換器を制御する提案が為されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−341686号公報(第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された方法によれば、系統連系スイッチに流れる電流が減少するように電力変換器を制御しているので、系統連系スイッチが開となる遅れ時間を短縮することが可能となる。しかしながら、この特許文献1に示された分散電源システムにおいては、電力変換器から負荷への給電を開始するにあたって、系統連系スイッチが確実に開になったことを検出していない。
【0007】
負荷を安定に運用するためには、電力系統に停電や電圧変動が発生した場合、速やかに電力変換器からの給電を開始する必要がある。しかし、系統連系スイッチが確実に開になったことを検出しないで電力変換器からの給電を開始すると、電力変換器から電力系統に異常電流が流れる等の不具合が生じる恐れがある。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、電力系統の停電時に素早く且つ信頼性高く電力変換器側に運転切換えを行うことが可能な分散電源システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係る分散電源システムは、一端が電源系統に接続され、他端が負荷に接続された半導体スイッチと、前記負荷と並列に接続され前記電力系統と連系運転を行う電力変換器と、前記電力変換器の直流側に接続された充放電可能な蓄電装置と、前記電源系統の電圧を検出する系統電圧検出器と、前記半導体スイッチの1次側電圧と2次側電圧の差電圧を検出する差電圧検出手段と、前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流検出手段と、前記半導体スイッチ及び前記電力変換器を運転制御するための制御手段とを備え、前記制御手段は、前記系統電圧検出器の出力電圧が停電レベルと判断されたとき前記半導体スイッチにオフ指令を与える手段と、前記差電圧検出手段と前記電流検出手段の出力によって前記半導体スイッチが開になったことを判定する開判定手段を有し、前記開判定手段の出力によって前記電力変換器の運転を開始するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、系統連系スイッチに流れる電流と、系統連系スイッチの1次側と2次側の電位差を検出し、この検出信号によって系統連系スイッチが開となったことを判定するようにしたので、電力系統の停電時に素早く且つ信頼性高く電力変換器側に運転切換えを行うことが可能な分散電源システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1は本発明に係る分散電源システムを示すブロック構成図である。電力系統1は系統連系スイッチ2を介して負荷3に電力を供給している。負荷3と並列に直流電源である蓄電装置4の直流を交流に変換する電力変換器5の交流出力が接続されている。系統連系スイッチ2は自己消弧能力を持たない半導体スイッチであり、制御部6からのオンオフ指令で動作している。また、電力変換器5の運転指令も制御部6から与えられている。
【0013】
電力系統1の電圧は電圧検出器7で検出され、この出力は制御部6に与えられている。系統連系スイッチ2の入力電圧は電圧検出器8Aにより、また系統連系スイッチ2の出力電圧は電圧検出器8Bにより検出され、その出力は制御部6に与えられている。更に系統連系スイッチ2の出力電流は、電流検出器9によって検出され、その出力も制御部6に与えられている。尚この電流検出器9は系統連系スイッチ2の入力側に設けるようにしても良い。
【0014】
以下制御部6の内部構成について説明する。尚、制御部6は系統連系スイッチ2及び電力変換器5の運転制御に係る多くの機能を有しているが、図1においては、本発明の運転制御に関する部分のみを図示し、他の機能についての図示は省略している。
【0015】
電圧検出器7で検出された電圧信号は停電検出回路61に与えられ、電源系統1が停電になったか否かを検出する。停電検出回路61によって電源系統1が停電になったと判断されたときは、停電検出回路61は系統連系スイッチ2に対し、オフ指令を出力する。
【0016】
電圧検出器8A、電圧検出器8B及び電流検出器9の出力信号は状態検出回路62に与えられる。状態検出回路62において、電圧検出器8Aと電圧検出器8Bの出力信号の差が所定値以上あるか、また電流検出器9の出力信号が所定値以下であるかどうかを検出する。この状態検出回路62の出力信号はOFF判定回路63に与えられる。そしてOFF判定回路63においては、後述する手法によって系統連系スイッチ2が開(オフ)となったかどうか判定する。詳細は後述するが、この判定のため、OFF判定回路63が電力変換器5にパイロット電圧印加指令を出力する場合もある。
【0017】
そして、OFF判定回路63が系統連系スイッチ2の開(オフ)を判定したとき、この判定出力と前述した停電検出回路61からのオフ指令の論理積をAND回路64でとり、このAND回路64の出力によって電力変換器5にオン指令を与える。これによって電力変換器5はゲートブロックが解除され、負荷3への給電を開始する。
【0018】
次に動作の詳細について図1及び図2を参照して説明する。図2は制御部6の動作フローチャートである。
【0019】
図2のステップST1において、停電検出回路61が停電を検出すると、停電検出回路61は系統連系スイッチ2をオフさせるオフ指令を出力する(ST2)。この状態で、状態検出回路62は電流検出器9で検出された電流Isが所定の電流値Ith以下であるかを検出する。若し、電流Isが所定の電流値Ith以下でなければ、電流Isが所定の電流値Ith以下になるまでこの検出動作を繰り返す(ST3)。この結果、電流Isが所定の電流値Ith以下となったとき、電圧検出器8Aと電圧検出器8Bの出力信号の差電圧ΔVが所定の電圧値Vth以上であるかの検出動作を行う(ST4)。ステップST4において差電圧ΔVが所定の電圧値Vth以上であれば、OFF判定回路63は系統連系スイッチ2が開(オフ)になったと判断し、電力変換器5にオン指令を与える(ST5)。
【0020】
ステップST4において、差電圧ΔVが所定の電圧値Vth以上でないときは、電源系統1がオープンとなるような停電が生じたか、或いは印加されている交流電圧がゼロクロス付近の場合が考えられる。このときは、OFF判定回路63は電力変換器5にパイロット電圧印加指令を出力する(ST6)。このパイロット電圧は上述の電圧値Vthより十分大きい電圧とする。このステップST6の動作によって通常の場合は瞬時に差電圧ΔVが所定の電圧値Vth以上となるので、OFF判定回路63のステップST4における判断結果はYESとなり、従ってステップST5で電力変換器5にオン指令を与えて電力変換器5から負荷3への給電を開始することができる。
【0021】
上記において、所定の電流値Ithは系統連系スイッチ2を構成する自己消弧能力を持たない半導体素子の漏洩電流よりはるかに大きい微小電流とし、また所定の電圧値Vthは系統連系スイッチ2を構成する自己消弧能力を持たない半導体素子のオン電圧よりはるかに大きい微小電圧としておくのが良い。
【0022】
図3に示すのは、系統連系スイッチ2の各相の電圧、電流検出回路の一例である。図3に示すように、系統連系スイッチ2の各相は、系統連系スイッチ2U、2V及び2Wで構成される。そして電圧検出器8Aと8Bは、電圧差ΔVを求めることが主眼であるので、図3に示したように各相の線間電圧の差を求めることが可能な電圧検出器8UV、8VW及び8WVの各々の出力を制御部6に与えるようにすれば良い。
【0023】
また電流検出器9は、3相であれば各相に設けるようにするが、図3に示したように、電流検出器9V及び9Wの2相分だけを使用することも可能である。
【0024】
このような図3に示した電圧、電流検出回路の構成において、図2に示したステップST3における電流Isが所定の電流値Ith以下であるかの判定は、V相及びW相の2つの相について行い、この2つの相の電流が共に所定の電流値Ith以下となったとき、ステップST−3の判定はYESとなる。同様にステップST−4における差電圧ΔVが所定の電圧値Vth以上かどうかの判定は3相全ての差電圧が所定の電圧値Vth以上となったときステップST−4の判定がYESとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る分散電源システムを示すブロック構成図。
【図2】本発明に係る分散電源システム制御部の動作フローチャート。
【図3】系統連系スイッチの各相の電圧、電流検出回路の一例を示す回路構成図。
【符号の説明】
【0026】
1 電力系統
2、2U、2V、2W 系統連系スイッチ
3 負荷
4 蓄電装置
5 電力変換器
6 制御部
61 停電検出回路
62 状態検出回路
63 OFF判定回路
64 AND回路
7 電圧検出器
8A、8B、8UV、8VW、8WU 電圧検出器
9、9V、9W 電流検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源系統に接続され、他端が負荷に接続された半導体スイッチと、
前記負荷と並列に接続され前記電力系統と連系運転を行う電力変換器と、
前記電力変換器の直流側に接続された充放電可能な蓄電装置と、
前記電源系統の電圧を検出する系統電圧検出器と、
前記半導体スイッチの1次側電圧と2次側電圧の差電圧を検出する差電圧検出手段と、
前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記半導体スイッチ及び前記電力変換器を運転制御するための制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記系統電圧検出器の出力電圧が停電レベルと判断されたとき前記半導体スイッチにオフ指令を与える手段と、
前記差電圧検出手段と前記電流検出手段の出力によって前記半導体スイッチが開になったことを判定する開判定手段
を有し、
前記開判定手段の出力によって前記電力変換器の運転を開始するようにしたことを特徴とする分散電源システム。
【請求項2】
前記開判定手段は、
前記電流検出手段で検出された電流が所定値以下で、
且つ前記差電圧検出手段で検出された差電圧が所定値以上のとき、
前記半導体スイッチが開になったと判定することを特徴とする請求項1に記載の分散電源システム。
【請求項3】
前記開判定手段は、
前記電流検出手段で検出された電流が所定値以下で、
且つ前記差電圧検出手段で検出された差電圧が所定値未満のとき、
前記電力変換器が所定の電圧で運転されるようにパイロット電圧印加指令を前記電力変換器に与えるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の分散電源システム。
【請求項4】
前記電流検出手段は少なくとも2つの相の電流を検出し、
前記差電圧検出手段は3相全ての差電圧を検出し、
前記開判定手段は、
前記少なくとも2つの相の電流が共に所定値以下で、
前記3相各々の差電圧が全て所定値以上のとき、
前記半導体スイッチが開になったと判定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の分散電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−60832(P2007−60832A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244098(P2005−244098)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】