説明

分析のためのイオン移動のためのシステムおよび方法

本発明は、概して、分析のためにイオンを移動させるためのシステムおよび方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するためのイオン化源と、イオン分析装置と、気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材とを含み、気体流生成装置は、イオン移動部材を通してイオン分析装置の入口に気相イオンを移動させる層状気体流を産生する、試料を分析するためのシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年10月13日に出願された米国仮特許出願第61/104793号の利益を主張し、この仮特許出願に関連している。この仮特許出願の開示は、その全体が本明細書において参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
分析化学の分野において、周囲条件下での直接試料採取に対する需要が増加し、これは、種々の周囲イオン化源の開発につながった。周囲イオン化源は、試料調製に固有の条件を必要としない周囲環境(原位置)で、検体をイオン化する。この利点は、実時間、現場検出、時間の節約、および資源の節約を可能にする。
【0003】
試料からイオンを分析するために周囲イオン化源を使用する典型的な設定は、イオン化源が、質量分析計(MS)等の質量分析器から外されるように構成される。質量分析計は、生成されるイオンが質量分析計の入口へと移動するように、イオン化源に十分に近接して位置付けされる必要がある(約2cm以下)。真空は、イオンが質量分析される多岐管内に維持される必要があるため、MS入口の開口部は、典型的に700μmより小さい。イオンがMS入口から離れて生成される(約5cm)用法において、不可能ではないにしても、イオンを質量分析器に移動させるのは困難である。したがって、周囲イオン化源と質量分析器との間の距離は、これらの周囲イオン化源の使用を制限する。
【0004】
さらに、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)または脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)等の、大気圧のイオン化源から生成されるイオンは、広角度分散でもある。小開口部のMS入口によるイオンの摂取は、比較的非効率的である。広範囲にわたる検体が同時に分析または監視される必要がある用法において、生成されたイオンが、高効率でMS入口の中に移動されることが非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周囲イオン化源から質量分析計の入口へのイオンの移動を容易にすることができる装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イオンを限定された空間の中に移動させ、イオンを集束する層状気体流を生成する気体流を使用し、周囲イオン化源から質量分析計等のイオン分析装置の入口へのイオンの移動を容易にするシステムを提供する。本発明のシステムは、長距離(例えば、少なくとも約5cm)にわたるイオンの移動を可能にし、広範囲(例えば、少なくとも約4cm×3cmもしくは10cm×10cmの範囲)にわたる試料採取も可能にする。例えば、本発明のシステムは、イオン化源が、試料から生成されたイオン収集のために、イオン分析装置の入口に十分に近接して位置付けすることが不可能である状態下の周囲イオン化源の使用を可能にする。
【0007】
本発明の態様は、ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するためのイオン化源と、イオン分析装置と、気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材とを含み、気体流生成装置は、イオン移動部材を通してイオン検出装置の入口に気相イオンを移動させる層状気体流を産生する、試料を分析するためのシステムを提供する。
【0008】
周囲イオン化源を使用する典型的な従来技術の設定は、イオン化源がイオン分析装置の入口の約2cmもしくはそれに近接して位置付けられる。イオン化源とイオン分析装置の入口との間が2cm以上の距離は、イオンを大気中に拡散し、信号の劣化をもたらす、すなわち、イオンが効率的にイオン分析装置に移動されない、もしくは全く移動されない。本発明のシステムおよび方法は、層状気体流を生成し、したがって、信号強度の著しい損失なしに、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約20cm、少なくとも約50cm、少なくとも約100cm、少なくとも約500cm、少なくとも約1m、少なくとも約3m、少なくとも約5m、少なくとも約10mの距離、および他の距離等の長距離にわたるイオンの効率的な移動を可能にする。
【0009】
特定の実施形態において、イオン分析装置は、質量分析計である。他の実施形態において、イオン分析装置は、イオン移動度分析計である。他の実施形態において、イオン分析装置は、ファラデーカップ等の単純なイオン検出器である。特定の実施形態において、イオンは、移動後に検出もしくは分析される。他の実施形態において、イオンは、移動後に再収集される。
【0010】
特定の実施形態において、気体流生成装置は、イオンをイオン分析装置の入口に移動させるための層状気体流を生成するように、イオン移動部材に連結される室内真空等の高流速および低圧縮率を有するポンプである。他の実施形態において、気体流生成装置は、周囲イオン化源である。例えば、脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)に使用される供給源は、イオン移動部材を通して層状流を産生するのに十分な気体流を生成し、したがって、気相イオンをイオン分析装置の入口に移動させる層状気体を産生する。他の実施形態において、気体流生成装置は、ポンプと周囲イオン化源の気体噴流との組み合わせである。
【0011】
システムはさらに、イオンのイオン分析装置の入口への移動を容易にするように、イオン移動部材に動作可能に連結される電気集束レンズ装置を収容してもよい。システムはさらに、イオン分析装置の入口への重イオンの集束を容易にするように、イオン移動部材に動作可能に連結される空気動的レンズ装置を収容してもよい。システムはさらに、イオン移動部材に動作可能に連結される電気−流体力学的レンズ装置を収容してもよい。システムはさらに、イオン検出装置に連結される、少なくとも1つの真空ポンプを収容してもよい。システムはさらに、システムに動作可能に連結されるコンピュータを収容してもよい。システムはさらに、試料を受容するための台を収容してもよい。
【0012】
特定の実施形態において、イオン移動部材は、イオン移動効率を強化するように、誘電性バリア放電と連結される。他の実施形態において、イオン移動部材の遠位端は、複数の場所からイオン分析装置の入口にイオンを移動させるための複数の入口を収容する。
【0013】
イオン移動部材は、その内で層状流の産生を可能にし、イオン電流の著しい損失なしにイオンの移動を容易にする、任意のコネクタであってもよい。代表的なイオン移動部材は、チューブである。チューブは、金属もしくはガラス等の剛性材料から成るか、またはTYGONチューブ等の可撓性材料から成ってもよい。イオン移動部材は、形状がその内で層状流の産生を可能にし、イオン電流の著しい損失なしにイオンの移動を容易にするならば、どのような形状であってもよい。例えば、イオン移動部材は、直線形状を有してもよい。代替的に、イオン移動部材は、湾曲であるか、または多数の曲線を有してもよい。
【0014】
イオン化源は、実質的に大気圧で試料の分子を気相イオンに変換することが可能である、任意の技法によって動作してもよい、すなわち、大気圧イオン化源もしくは周囲イオン化源である。代表的な技法としては、エレクトロスプレーイオン化法、ナノエレクトロスプレーイオン化法、大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化法、大気圧化学イオン化法、脱離エレクトロスプレーイオン化法、大気圧誘電性バリア放電イオン化法、大気圧低温プラズマ脱離イオン化法、およびエレクトロスプレー支援レーザ脱離イオン化法が挙げられる。
【0015】
イオン化源から生成されたイオンは、イオン移動部材を通して送られ、イオン分析装置の入口に移動される。代表的なイオン分析装置としては、質量分析計およびイオン移動度分析計が挙げられる。代表的な質量分析計としては、イオントラップ、四重極フィルタ、飛行時間、セクタ、イオンサイクロトロン共鳴トラップ、およびorbitrap質量分析計が挙げられる。
【0016】
本発明のシステムは、例えば、固相、液相、もしくは気相等のあらゆる段階で試料を分析してもよい。試料は、生物起源もしくは非生物起源等の、あらゆる起源であってもよい。代表的な試料としては、工業加工対象物、医薬製品または成分、食品または食品成分、毒素、薬物、爆発物、細菌、または生物組織もしくは流体が挙げられる。
【0017】
本発明の別の態様は、ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するように試料をイオン化するステップと、イオン移動部材を通してイオン検出装置の入口に気相イオンを移動させる層状気体流を産生するように、気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材を提供するステップと、イオンを分析するステップとを含む、試料を分析するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、周囲イオン化源からイオン分析装置の入口にイオンを移動させるためのシステムの実施形態を示す図面である。
【図2】図2は、長距離イオン移動のための設定を示す写真である。
【図3】図3は、LTPヘリウムを介して脱離/イオン化され、可撓性TYGONチューブを使用して4フィート移動されたガラス上の1.7μgのコカインのタンデム型質量スペクトルである。
【図4】図4は、LTPヘリウムを介して脱離/イオン化され、可撓性TYGONチューブを使用して4フィート移動されたガラス上の2μgのTNTのタンデム型質量スペクトルである。
【図5】図5は、LTPヘリウムを介して脱離/イオン化され、ステンレススチールの3/4インチ径の導管で10フィート移動されたガラス上の1.7μgのコカインのタンデム型質量スペクトルである。
【図6】図6は、LTPプローブを介して広範囲分析を使用した、長距離イオン移動のための設定を示す写真である。
【図7A】図7のパネルAは、長距離イオン移動計測手段と連結された4つのLTPプローブを有するLTP広範囲試料採取漏斗(面積=33cm)を示す写真である。図7のパネルBは、漏斗がガラススライド上の2μgのTNTを横切る時を示す、4フィード移動されたm/z226の総イオンクロノグラムである。
【図7B】図7のパネルAは、長距離イオン移動計測手段と連結された4つのLTPプローブを有するLTP広範囲試料採取漏斗(面積=33cm)を示す写真である。図7のパネルBは、漏斗がガラススライド上の2μgのTNTを横切る時を示す、4フィード移動されたm/z226の総イオンクロノグラムである。
【図8】図8は、複数の場所で試料から生成されたイオンが、同時に、もしくは順次に分析されるために質量分析計に移動され得ることを示す図面である。
【図9】図9は、移動チューブの中心に向かって帯電粒子を集束するように実装され得るチューブ電気レンズを示す図面である。
【図10】図10は、重粒子を集束するように空気動的作用を使用し、中心に向かって帯電粒子を集束するように電界を使用するために実装され得る、電気−空気動的レンズシステムを示す図面である。
【図11】図11のパネルAは、誘電性バリア放電(DBD)チューブの図面である。図11のパネルBは、二本鎖スピーカワイヤから作製されるDBDチューブを示す写真である。図11のパネルCは、高電圧ACが印加されたチューブ内のDBDを示す写真である。
【図12】図12は、脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)の長距離輸送設定を示す図面である。
【図13】図13は、試料採取距離とともにTICの変形を示すグラフである。ローダミンインク点は、検体として使用された。信号低下率が40mmを過ぎて減少することが認められた。完全に発達した層状流は、ドリフトチューブの40mmと50mmとの下流の間で生成され得る。
【図14】図14は、CFDシミュレーションを示す図式であり、完全に発達した層状流が、約55mmで達成されることを示す。
【図15】図15は、図12に示される装置を使用した、MS入口から10cm離れたガラススライド上で検出された10pgのコカインの質量スペクトルである。MS/MSスペクトルは、差し込み図で示される。LTQ(Thermo Fisher Scientific)質量分析計が使用された。
【図16】図16は、背景信号強度に対する検体の相対強度における相違を示す、異なるドリフトチューブの質量スペクトル一式である。スペクトルは、図12に示される装置、およびLTQ質量分析計を使用して収集された。
【図17】図17は、DESI源を伴う広範囲試料採取構成の図面である。
【図18】図18は、広範囲試料採取DESI源を用いた実験の構成を示す図式である。
【図19】図19は、広範囲試料採取DESI源の位置1に対応する質量スペクトルである。
【図20】図20は、DESI構成の各移動チューブで達成されたピーク信号強度を示すグラフである。
【図21】図21は、DESI集束源を有するMini10機器上で検出されたコカインを示す、質量スペクトル一式である。
【図22】図22は、イオン移動部材および気体流生成装置を通して連結される、不連続大気圧インターフェースを有するLTPプローブおよび小型質量分析計を示す概略図である。
【図23A】図23は、LTP/Mini10.5を使用した、異なるマトリクスにおけるメラミンの典型的なスペクトルを示す。試料:A)300ng/mLメラミン含有水/メタノール(v:v=1:1)のMSスペクトル、3μLの充填量(0.9ngの絶対メラミン量)。B)5μg/mLメラミン含有全乳、3μLの充填量(15ngの絶対メラミン量)。C)5μg/gメラミン含有粉乳、5mgの充填量(25ngの絶対メラミン量)。D)1μg/mLメラミン含有合成尿、3μLの充填量(3ngの絶対メラミン量)。挿入物:プロトン化分子のMS/MS生成物イオンスペクトル。
【図23B】図23は、LTP/Mini10.5を使用した、異なるマトリクスにおけるメラミンの典型的なスペクトルを示す。試料:A)300ng/mLメラミン含有水/メタノール(v:v=1:1)のMSスペクトル、3μLの充填量(0.9ngの絶対メラミン量)。B)5μg/mLメラミン含有全乳、3μLの充填量(15ngの絶対メラミン量)。C)5μg/gメラミン含有粉乳、5mgの充填量(25ngの絶対メラミン量)。D)1μg/mLメラミン含有合成尿、3μLの充填量(3ngの絶対メラミン量)。挿入物:プロトン化分子のMS/MS生成物イオンスペクトル。
【図23C】図23は、LTP/Mini10.5を使用した、異なるマトリクスにおけるメラミンの典型的なスペクトルを示す。試料:A)300ng/mLメラミン含有水/メタノール(v:v=1:1)のMSスペクトル、3μLの充填量(0.9ngの絶対メラミン量)。B)5μg/mLメラミン含有全乳、3μLの充填量(15ngの絶対メラミン量)。C)5μg/gメラミン含有粉乳、5mgの充填量(25ngの絶対メラミン量)。D)1μg/mLメラミン含有合成尿、3μLの充填量(3ngの絶対メラミン量)。挿入物:プロトン化分子のMS/MS生成物イオンスペクトル。
【図23D】図23は、LTP/Mini10.5を使用した、異なるマトリクスにおけるメラミンの典型的なスペクトルを示す。試料:A)300ng/mLメラミン含有水/メタノール(v:v=1:1)のMSスペクトル、3μLの充填量(0.9ngの絶対メラミン量)。B)5μg/mLメラミン含有全乳、3μLの充填量(15ngの絶対メラミン量)。C)5μg/gメラミン含有粉乳、5mgの充填量(25ngの絶対メラミン量)。D)1μg/mLメラミン含有合成尿、3μLの充填量(3ngの絶対メラミン量)。挿入物:プロトン化分子のMS/MS生成物イオンスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
周囲イオン化源を使用する典型的な従来技術の設定は、イオン化源がイオン分析装置の入口の約2cmもしくはそれに近接して位置付けられる。質量分析計の入口の中へのイオンの移動は、分析計の真空および周辺部の電界の影響下での、入口の中への気体の流れに依存する。気体流量は、大気と真空多岐管との間の伝導性バリアとして作用する入口の低伝導性のため、典型的に低い。イオン化源とイオン分析装置の入口との間が2cm以上の距離は、イオンを大気中に拡散し、信号の劣化をもたらす、すなわち、イオンが効率的にイオン分析装置の中に移動されない、もしくは全く移動されない。本発明のシステムおよび方法は、信号強度の著しい損失なしに、少なくとも約5cm、少なくとも約10cm、少なくとも約20cm、少なくとも約50cm、少なくとも約100cm、少なくとも約500cm、少なくとも約1m、少なくとも約3m、少なくとも約5m、少なくとも約10mの距離、および他の距離等の長距離にわたりイオンの効率的な移動を可能にする、層状気体流を生成する。
【0020】
本発明のシステムおよび方法は、機器および対象物が、異なる位置で検証されることが重要である状況での化学分析に有用である。例えば、本明細書のシステムおよび方法は、例えば、外来性物質の検出のために荷物表面を取り調べるための、空港のセキュリティチェックポイントもしくは道端でのチェックポイント等の、セキュリティチェックポイントでのスクリーニングに有用である。
【0021】
本発明の態様は、ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するためのイオン化源と、イオン分析装置と、気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材とを含み、気体流生成装置は、イオン分析装置の入口に気相イオンを移動させる層状気体流を産生する、試料を分析するためのシステムを提供する。
【0022】
本発明のシステムは、離れた試料から質量分析計の入口等のイオン分析装置の入口にイオンを運ぶための、増大された流量を提供する。輸送装置に使用される基本原理は、気体およびイオンをイオン移動部材の中に誘導し、イオン移動部材を通して気体およびイオンを移動させながら、壁からイオンを遠ざけるようにイオン移動部材内に層状流を形成するための気体流の使用である。関心の検体イオンは、イオン移動部材に沿った下流のある点で試料採取される。層状流は、流入気体流と流出気体流を平衡することにより達成される。したがって、再循環領域および/または乱流は避けられる。したがって、生成された層状流は、長距離にわたる高効率のイオン輸送、または広範囲にわたるイオンの試料採取を可能にする。
【0023】
本発明のシステムは、イオン源から、入口に小さなポンプシステムおよび中継された気体摂取機能を有する小型質量分析計の入口にイオンを運ぶための増大された流量も提供する。イオン移動部材に接続された小型試料ポンプにより提供される追加の気体流は、周囲イオン化源から小型質量分析計の入口付近へのイオンの移動を容易にする。したがって、関心の検体のイオン強度は、質量分析において増大される。
【0024】
図1に示す、イオン移動部材、例えば、内径が約10mm以上のチューブは、イオン化源からイオン分析装置、例えば質量分析計の入口にイオンを移動するために使用される。イオン分析装置の入口の開口部と比較して、イオン移動部材の広い開口部は、広い空間、例えば、広範囲の表面上で生成された試料イオンの収集に役立つ。イオン移動部材の大量の流れ伝導性は、イオンを保有する気体が高流速でイオン分析装置の入口に向かって移動することを可能にする。イオン移動部材は、気体流生成装置に連結される。気体流生成装置は、イオン移動部材内で気体流を産生する。イオン分析装置の入口は、周囲イオン化源から移動されたイオンを受容する。
【0025】
イオン移動部材は、その内部で層状流の産生を可能にし、イオン電流の著しい損失なしにイオンの移動を容易にする、任意のコネクタであってもよい。代表的なイオン移動部材としては、チューブ、毛細管、蓋付きチャネル、無蓋チャネル等が挙げられる。特定の実施形態において、イオン移動部材は、チューブである。イオン移動部材は、金属もしくはガラス等の剛性材料から成るか、またはプラスチック、ゴムもしくは重合体等の可撓性材料から成ってもよい。代表的な可撓性材料は、TYGONチューブである。
【0026】
イオン移動部材は、イオンが中性になる恐れがあるイオン移動部材の内側面にイオンが達するのを防ぐような流れの産生を可能にする形状であれば、いかなる形状であってもよい。例えば、イオン移動部材は、直線形状を有してもよい。代替的に、イオン移動部材は、湾曲であるか、または多数の曲線を有してもよい。
【0027】
イオン移動部材は、気体流生成装置に連結される。気体流生成装置は、イオン移動部材を通して気体流を生成することが可能である、そのような装置である。気体流生成装置は、周囲イオン化源からイオン分析装置の入口へのイオンの移動を容易にする。特定の実施形態において、気体流生成装置は、高流速および低圧縮率を有するポンプである。このようなポンプの例は、工場の真空に見られるもの、または小型試料ポンプである。連結に使用される適切なポンプは、質量分析計に使用されるもの、例えば、ポンプが高圧縮率を有する、回転羽根式ポンプもしくはターボ分子ポンプとは異なる。質量分析計の高圧縮率ポンプは、本明細書に記載される伝導性の開口部を通して大気に接続することができない。例えば、Cotte−Rodriguezら(Chem.Commun.,2006,2968−2970)は、質量分析計の入口が伸長され、質量分析計内のポンプにより生成された気体流が、最大1mの距離にわたりイオンを移動するために使用される設計を説明する。イオンは、大気から約1トルの領域に移動された。Cotte−Rodriguezに記載される設定を使用するイオンの移動に生じた信号、および広範囲にわたり生成されたイオンの著しい損失は、入口に効率的に収集され得ない。
【0028】
他の実施形態において、気体流生成装置は、周囲イオン化源である。例えば、脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)に使用される供給源は、イオン移動部材を通して層状流を産生するのに十分な気体流を生成し、したがって、気相イオンを長距離にわたりイオン分析装置の入口に移動させる層状気体を産生する。
【0029】
多数の追加装置が、周囲イオン化源からイオン分析装置の入口へのイオンの移動をさらに容易にするように、イオン移動部材と連結されてもよい。例えば、気体流生成装置が中性気体をポンプで除去する一方、電気レンズは、イオン移動部材の中心に向かってイオンを集束するために使用されてもよい(図9を参照のこと)。他の実施形態において、電気−流体力学的レンズシステムは、重粒子を集束するように空気動的作用を使用し、イオン移動部材の中心に向かって帯電粒子を集束するように電界を使用するように実装されてもよい(図10を参照のこと)。
【0030】
他の実施形態において、イオン移動部材の遠位端は、複数の場所からイオン分析装置の入口にイオンを移動させるための複数の入口を収容してもよい。図8は、複数の場所で試料から生成されたイオンが、同時に、もしくは順次的様式で分析されるように質量分析計に移動され得ることを示す図面である。
【0031】
また他の実施形態において、イオン移動部材は、イオンが内壁上に吸着されるのを防ぐためのさらなる特徴を含む。図11に示す、誘電性バリア放電(DBD)チューブは、二本鎖スピーカワイヤから作製される。ワイヤの絶縁体は、誘電性バリアとしての機能を果たし、DBDは、高電圧ACが二本鎖のワイヤ間に印加される時に生じる。チューブ内のDBDは、イオンが壁上に吸着されるのを防ぎ、イオンを気相に保つために電荷が強化された環境を提供する。このDBDチューブは、生成されたイオンをイオン分析装置の入口に移動する間、気体試料をイオン化するためにも使用されてもよい。DBDチューブは、生成されたイオンをイオン分析装置の入口に移動する間、イオン反応にも使用されてもよい。
【0032】
イオン移動部材に入る前に、試料のイオンは、周囲イオン化源または大気圧イオン化源を使用してイオン化される。代表的な周囲イオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化法(Fenn,J.B.;Mann,M.;Meng,C.K.;Wong,S.F.;Whitehouse,C.M.Science 1989,246,64−71、Yamashita,M.;Fenn,J.B.J.Phys.Chem.1984,88,4451−4459)、ナノエレクトロスプレーイオン化法(Karas et al.,Fresenius J Anal Chem,366:669−676,2000)、大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化法(Laiko,V.V.;Baldwin,M.A.;Burlingame,A.L.Anal.Chem.2000,72,652−657、およびTanaka,K.;Waki,H.;Ido,Y.;Akita,S.;Yoshida,Y.;Yoshida,T.;Matsuo,T.Rapid Commun.Mass Spectrom.1988,2,151−153)、大気圧化学イオン化法(Carroll,D.L;Dzidic,L;Stillwell,R.N.;Haegele,K.D.;Horning,E.C.Anal.Chem.1975,47,2369−2373)、脱離エレクトロスプレーイオン化法(Takats et al.、米国特許第7,335,897号、およびTakats,Z.;Wiseman,J.M.;Gologan,B.;Cooks,R.G.Science 2004,306,471−473)、大気圧誘電性バリア放電イオン化法(Shiea,J.;Huang,M.Z.;Hsu,H.J.;Lee,C.Y.;Yuan,C.H.;Beech,L;Sunner,J.Rapid Commun.Mass Spectrom.2005,19,3701−3704)、大気圧低温プラズマ脱離イオン化法(Ouyang et al.国際特許公開第WO2009/102766号)、およびエレクトロスプレー支援レーザ脱離イオン化法(Shiea,J.;Huang,M.Z.;Hsu,H.J.;Lee,C.Y.;Yuan,C.H.;Beech,L;Sunner,J.Rapid Commun.Mass Spectrom.2005,19,3701−3704)が挙げられる。試料のイオンは、その後、イオン移動部材を通して移動する。
【0033】
イオン移動部材を通して移動した後、イオンは、次いで、その質量/電荷比もしくはその移動度、またはその質量/電荷比および移動度の両方に基づき単離される。例えば、イオンは、四重極イオントラップ(ポールトラップ)、円筒イオントラップ(Wells,J.M.;Badman,E.R.;Cooks,R.G.,Anal.Chem.,1998,70,438−444)、線形イオントラップ(Schwartz,J.C;Senko,M.W.;Syka,J.E.P.,J.Am.Soc.Mass Spectrom,2002,13,659−669),、イオンサイクロトロン共鳴(ICR)トラップ、orbitrap(Hu et al.,J.Mass.Spectrom.,40:430−433,2005)、セクタ、または飛行質量分析計等のイオン分析装置に集積され得る。さらなる分離は、イオンドリフト装置を使用して移動度に基づくか、2つの工程が統合され得る。
【0034】
本発明のシステムは、例えば、固相、液相、もしくは気相等のあらゆる段階で試料を分析することができる。試料は、生物起源もしくは非生物起源等の、あらゆる起源であってもよい。代表的な試料としては、工業加工対象物、医薬製品または成分、食品または食品成分、毒素、薬物、爆発物、細菌、または生物組織もしくは流体が挙げられる。
【0035】
試料は、例えば、ヒト組織もしくは体液等の哺乳類からであり得る。組織は、例えば、ヒトもしくは他の哺乳類起源の、例えば、皮膚組織、鼻腔組織、CNS組織、神経組織、眼組織、肝組織、腎組織、胎盤組織、乳腺組織、胃腸管組織、筋骨格組織、尿生殖組織、骨髄等の多量の接続細胞および/または細胞外マトリクス材料であり、細胞および/または組織に関連する接続細胞および液状物質を含む。体液は、例えば、ヒトもしくは他の哺乳類起源の液状物質である。このような体液は、粘液、血液、血漿、血清、血清誘導体、胆汁、痰、唾液、汗、羊水、乳房液、および腰部もしくは心室CSF等の髄液(CSF)を含むが、これらに限定されない。試料はまた、微細針吸引液もしくは生検組織であってもよい。試料は、細胞および生物物質を含有する培地であってもよい。
【0036】
参照による援用
特許、特許出願、特許公開、ジャーナル、書籍、論文、ウェブ内容物等の他の文献の参照および引用は、本開示全体にわたってなされる。全てのこのような文献は、全ての目的において、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0037】
均等物
発明は、その意図または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実現されてもよい。前述の実施形態は、したがって、本明細書に記載される発明を制限するのではなく、あらゆる点で例示的であると考えられる。発明の範囲は、したがって、前述の説明ではなく付属の特許請求の範囲により示され、特許請求の等価物の意味および範囲に入る全ての変更は、したがって、そこに包含されるものとする。
【実施例】
【0038】
実施例1:長距離のイオン移動
Thermo Scientific LTQは、外部の低温プラズマ(LTP)源から補助真空を介して長距離イオン移動を可能にするように改造された。改造されたIon Max源(LTQ質量分析計のイオン源、ThermoFisher,San Jose,CA)は、長距離からのイオンをLTQ質量分析計の入口の中に誘導するように使用された。長距離にわたってイオンを運ぶために、補助流を提供するように、一般的な工場用真空を真空装置として使用した。使用された設定を図2に示す。イオン移動部材をMS入口に繋げる調節可能な導入管は、イオン信号の最適化を可能にした。この実施例において、剛性チューブ(金属導管およびガラス)ならびに可撓性(tygonチューブ)の両方を使用し、全てが長距離イオン移動能を示した。
【0039】
放電気体としてヘリウムを有する脱離イオン化源として、LTPプローブを利用した。この設定は、最初に薬物および爆発物のイオン移動に使用された。1.7μgのコカインおよび2μgのTNTをガラススライド上に配置し、質量分析計の入口から4フィートの台にスライドを設置した。4フィートのTygonチューブは、LTPプローブから質量分析計の入口にイオンを移動するためのイオン移動部材として使用された。本明細書のデータは、図3に示す陽性MS/MSモードで、コカインの良好な検出を示す。本明細書のデータは、図4に示す陰性MS/MSモードで、TNTの良好な検出も示す。
【0040】
コカイン試料は、その後、10フィートの金属導管(図5)、15フィートのTygonチューブ、および30フィートのTygonチューブでの検査のために数時間にわたり使用され、全て陽性MS/Mモードでのコカインの陽性結果をもたらした。チューブは直線である必要がなく、湾曲チューブでも、例えば、質量分析計の入口にイオンを良好に移動することも認められた。
【0041】
実施例2:広範囲かつ長距離のイオン移動
図2に示される装置を利用し、広範囲を試料採取するために3つのLTPプローブを使用して、広範囲分析を行った。図6は、長距離移動のために4フィート(1.2m)のTygonチューブを利用した、3つのLTPプローブの設定を示す。1.7μgのコカインおよび1μgのアトラジンをガラススライド上に配置し、LTPプローブ設定を介して分析した。段ボール箱上の黒色マーカーで外形が描かれた楕円形状は、長距離移動装置を利用した、1.7μgのコカインおよび1μgのアトラジンの両方のおおよその検出範囲であり、>>100cmである。陽性モードタンデム質量分析法は、4フィートの距離にわたる分子の移動を確認するために使用された。
【0042】
4フィートのtygonチューブを介して、LTP広範囲漏斗を図2に示される装置に連結した。放電気体としてヘリウムを利用し、図7の上方に示される、ガラススライド上の2μgのTNTを分析した。図7の下方は、4フィートのTygonチューブを通して移動されたm/z226(脱プロトン化TNT)の総イオン電流(TIC)を示し、これは、漏斗が試料の上に設置された時のTNTの検出を明らかに示している。漏斗が試料から除去された時、TICは、ゼロに近かった。表面とガラススライドの間の距離が>1”に維持され得、検出範囲が、漏斗範囲(33cm)により限定されれば、良好な検出が生じ得る。
【0043】
実施例3:脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)を用いたイオン輸送
DESI源のイオン種の輸送は、上記の実施例に記載される同様のシステムを使用することにより、長距離(少なくとも1m)にわたり達成された。しかしながら、DESI源から生成される気体の高流速のため、システムは、ポンプを除去し、気体流生成装置としてDESI源を使用するように改造された。DESI源からの放出気体は、脱離表面との衝突後、長い0.25”金属チューブを通過させられた。気体流のある程度の適切な下流でイオンを試料採取するために、MS毛細管が使用された。この設定の図面を図12に示す。気密封止を使用した以前に報告された開発と比較して(Venter,A.;Cooks,R.G.Anal.Chem.,2007,79(16),pp6398−6403;米国特許出願第2008/0156985号)、遠位端の広い開口部は、DESI気体流が層状流の形成を可能にするように流出し、イオン移動部材内の再循環および乱流を避けることを可能にする。
【0044】
実施例4:長距離イオン移動−DESI
気体流生成装置がDESI源である設定において、DESI源自体から放出された気体噴流は、イオン輸送に使用された、すなわち、長距離イオン輸送が、ポンプがないイオン輸送部材を使用して達成された。DESI源から放射された気体噴流は、イオンを輸送するために使用された。
【0045】
ローダミンインクは、検体として使用された。赤色インク点は、Sharpieインクを使用してガラススライド上に作製され、分析中のTICは、信号強度に対してプロットされた(図13)。開始時、毛細管は、脱離表面に近接していた(数ミリメートル)。試料表面とMS入口との間の距離が増大すると、信号低下率は、最初は高いが、最終的には低下し、その後、ほぼ一定の信号強度が試料とMS入口との間の距離に関係なく得られる、安定したレベルに達する(図13)。
【0046】
いかなる特定の論理または動作機構に拘束されることなく、安定したレベルは、ドリフトチューブの下流のある一定距離での、完全に発達した層状流の開始により達成されたと考えられる。完全に発達した流状態が達成されると、イオンはイオン移動部材の中心に集束され、いかなる損失もなく質量分析計の入口に送出された。イオンの拡散損失は低かった。したがって、ある一定距離を超えて、イオンの損失は非常に低かった。0.24”IDの10cmドリフトチューブを使用した流集束のこの技法は、Mini10機器を用いても実証された(図21を参照のこと)。市販のCFDパッケージ(Ansys CFX)を使用して、DESIスプレーによるドリフトチューブの流れ発生を計算した。完全に発達した層状流状態は、信号の速度低下が低いと認められた距離を超えた、ほぼ同じ距離でドリフトチューブにおいて達成された(図14を参照のこと)。
【0047】
コカインのスペクトルを収集するために異なるドリフトチューブ長を使用し、対応するピーク強度を比較した。5cm、10cm、15cm、20cm、50cm、および100cm移動チューブの信号強度を、LTQ質量分析計(Thermo Fisher Scientific,Inc.)を使用して記録した。移動チューブのそれぞれで達成されたピーク信号強度をプロットした(図20を参照のこと)。これらのデータは、試料採取距離の増加に伴う信号の減少が、それほど有意ではなかったことを示す。これは、イオンの層状流集束および後続の効率的な輸送によるものである。10cm移動チューブで、ガラススライド上の10pgのコカインについての非常に良好な信号が、10倍も低い検出限界の可能性を伴い検出された(図15)。背景ピークの相対強度は、より長い移動チューブにおいてより低かったことが認められた(図16)。より長いドリフトチューブは、短いドリフトチューブよりも効率的に背景イオンを除去し、したがって、より長いドリフトチューブは、試料から関心のイオンを得る補助をしたという結論に達した。これは、予備濃縮法および選択的検体試料採取に類似した(Cotte−Rodriguez et al,Chem.Commun.,2006,2968−2970)。
【0048】
実施例5:広範囲
DESI構成において、広範囲分析は、ドリフトチューブおよび試料採取範囲を再設計することにより行われた。試料採取範囲を増大するために、4分の1インチのチューブを二側で45°の角度に曲げ、中央は4cmの直線チューブのままにした。この部分の底部を切断し、試料採取範囲を作製した。図17に図面および図形を示す。新しい試料採取表面は、試料採取範囲が4cm×3.5mmであった。細い試料採取範囲は、気体流に制限された範囲を可能にするように使用された。DESI構成において、外部ポンプは、イオンの移動を補助するために使用されず、代わりに層状流の発達を確実にするために、気体噴流が、狭い領域を通してイオンを輸送するために使用された。
【0049】
試料採取領域の検体の位置の信号強度への影響を検査した。MDMA(3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン)およびコカインの2つの検体を使用した。コカインの位置は円形形状、MDMAは三角形で示されるように固定された。コカインは、DESIスプレー端に近接した。MDMAは、MS試料採取入口に近接した。実施された実験の図的表現を図18に示す。データは、システムが、1.5μgのコカインおよびMDMAの両方を明確に検出することができたことを示す(図19の質量スペクトルを参照のこと)。
【0050】
実施例6:長距離イオン移動−低温プラズマ(LTP)
質量分析計は、典型的に、周囲イオン化源から生成されるイオンをシステムに引き込むための真空を生成する、システムの真空ポンプに依存する。このようなシステムの真空ポンプは、標準的な質量分析計システムのものより強力ではないため、これは、小型の質量分析計では困難である。このような機器の低減された真空力により、周囲イオン化源を小型質量分析計と連結することは、特に難しい。本発明のシステムは、イオンの移動の効率を増大し、したがって、周囲イオン化源から生成されたイオンの効率的で集束された移動、および小型質量分析計の入口への移動を提供する増大された気体流を生成する。
【0051】
携帯用質量分析計(Mini10.5)と連結された低温プラズマ(LTP)周囲イオン化源が、全乳および関連製品におけるメラミン汚染の決定に使用された(図22)。熱的支援された検体の脱離およびイオン化をLTPプローブを用いて達成した。小型で低消費電力、かつ前処理の必要がない直接試料採取の機能は、LTPを手持ち式質量分析計とともに使用するための適切なイオン化法にする。大気圧イオン源を小型質量分析計に接続するために使用される標準的な不連続な大気圧インターフェース(Gao et al.Analytical Chemistry,2008,80,4026−4032)を、イオン移動の効率を増大するように、補助ポンプを有するイオン移動部材と連結した。メラミンと混合された全乳、魚、粉乳および他の複合マトリクスは、真空入口に近接するガラススライド上に設置され、試料の前処理なしに分析された。250ng/mLまでの低いメラミンレベルが、0.5〜50μg/mLの線形動的領域および7.6%〜16.2%の相対標準偏差の全乳で検出されると同時に、1分当りの2つの試料の分析速度が達成された(図23)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析するためのシステムであって、
ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するためのイオン化源と、
イオン分析装置と、
気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材であって、前記気体流生成装置は、前記イオン移動部材を通して前記イオン分析装置の入口に前記気相イオンを移動させる層状気体流を産生する、イオン移動部材と
を備える、システム。
【請求項2】
前記イオンは、長距離にわたり移動させられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記イオンは、広範囲にわたり試料採取される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記気体流生成装置は、高流速および低圧縮率を産生するポンプである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記気体流生成装置は、前記イオン化源の気体噴流である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記イオン分析装置の前記入口へのイオンの移動を容易にするように、前記イオン移動部材に動作可能に連結される、電気集束レンズ装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気集束要素は、前記移動中に、前記移動部材の中心でのイオンの集束を容易にする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記分析装置の前記入口への重イオンの集束を容易にするように、前記イオン移動部材に動作可能に連結される、空気動的レンズ装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記イオン移動部材に動作可能に連結される、電気流体力学的レンズ装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記イオン移動部材は、イオン移動効率を強化するように、誘電性バリア放電と連結される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記イオン移動部材の遠位端は、複数の場所から前記イオン分析装置の前記入口にイオンを移動させるための複数の入口を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記イオン移動部材は、チューブである、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記チューブは、剛性材料から成る、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記剛性材料は、金属またはガラスである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記チューブは、可撓性材料から成る、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記可撓性材料は、TYGONである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記イオン化源は、エレクトロスプレーイオン化法、ナノエレクトロスプレーイオン化法、大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化法、大気圧化学イオン化法、脱離エレクトロスプレーイオン化法、大気圧誘電性バリア放電イオン化法、大気圧低温プラズマ脱離イオン化法、およびエレクトロスプレー支援レーザ脱離イオン化法から成る群より選択される、技法により動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記イオン分析装置は、質量分析計、手持ち式質量分析計、およびイオン移動度イオン分析装置の群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記質量分析計は、四重極イオントラップ、直線イオントラップ、円筒イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴トラップ、orbitrap、セクタ、および飛行時間型質量分析計から成る群より選択される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記試料材料は、固相、液相、および気相から成る群より選択される、少なくとも1つの状態にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記試料は、生物起源である、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記試料は、非生物起源である、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記試料は、工業加工対象物、医薬製品または成分、食品または食品成分、毒素、薬物、爆発物、細菌、および生物組織から成る群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
試料を分析するためのシステムであって、
ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するためのイオン化源と、
イオン分析装置と、
気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材であって、前記気体流生成装置は、イオンを前記気体移動部材の中に収集し、前記イオン移動部材を通して前記イオン分析装置の入口に前記気相イオンを移動させる気体流を産生する、イオン移動部材と
を備える、システム。
【請求項25】
試料を分析する方法であって、
ほぼ大気圧の領域の中で試料の分子を気相イオンに変換するように前記試料をイオン化するステップと、
前記イオン分析装置の入口に前記気相イオンを移動させる層状気体流を産生するように、気体流生成装置に動作可能に連結されるイオン移動部材を提供するステップと、
前記イオンを分析するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
試料は、エレクトロスプレーイオン化法、ナノエレクトロスプレーイオン化法、大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化法、大気圧化学イオン化法、脱離エレクトロスプレーイオン化法、大気圧誘電性バリア放電イオン化法、大気圧低温プラズマ脱離イオン化法、およびエレクトロスプレー支援レーザ脱離イオン化法から成る群より選択される、技法によりイオン化される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記イオン分析装置は、質量分析計、手持ち式質量分析計の質量分析器、および中間段階格納装置から成る群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記質量分析器は、四重極イオントラップ、直線イオントラップ、円筒イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴トラップ、およびorbitrapから成る群より選択される、請求項27に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23A】
image rotate

【図23B】
image rotate

【図23C】
image rotate

【図23D】
image rotate


【公表番号】特表2012−505519(P2012−505519A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531090(P2011−531090)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/059514
【国際公開番号】WO2010/045049
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】