説明

分析システムおよびその制御方法

【課題】分析条件の入力作業を削減し、手作業による入力ミスを防止し、試料設置から分析開始までの時間とミスを削減できる分析システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】分離カラムの仕様と分析装置の分析条件とを含む情報を記憶媒体から読み取り、分離カラムを使用するときの分析条件の上下限値を読み出し、情報の中に分析対象の成分に関する分析条件があるかどうかを検索し、ある場合には、当該分析条件を使用して試料の分離された成分を検出し、ない場合には、新たな分析条件を入力するための画面を表示装置へ表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料成分を分離カラムにて分離し検出して、分析情報を取得する分析システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分離カラムを用いる分析システム、例えば液体クロマトグラフ分析装置は、溶離液を分離カラムへ送液しながら分析試料を分離カラムの上流へ注入し、分離カラム内で分離された分析試料の成分が、検出器で検出される構成である。ガスクロマトグラフの場合は、溶離液のかわりに窒素やヘリウム等の不活性ガスを用いる。
【0003】
液体クロマトグラフ分析装置で分析を行う場合、分析者は、個々の分離カラムに固有の分析性能に関するパラメータが記載された分離カラムに添付されているデータシート,メーカが公開しているアプリケーションデータ,論文等を参照して各種分析条件をコンピュータに入力して、ひとつの分析を実行するための手順を表す分析メソッドを作成し、分析動作を実行させている。
【0004】
分離カラムには固定相が充填されており、固定相に分析試料を含ませた溶離液等の移動相を通すことによって、分析試料を分離させ、分離カラムの後流側に設けられた検出器で分離された成分を順に検出する。固定相としては、シリカゲル,ポリスチレンゲル,ポリマ等がある。
【0005】
分離カラムの内径や長さ,固定相の種類,移動相の種類,測定対象試料成分の種類が多岐に渡っているため、それらの組合せの数は膨大になる。さらに、溶離液を流すポンプの流量,溶離液に二液を使用したときの混合比率、この混合比率を時間とともに変化させるグラジエント操作の設定,分離カラムを加熱するオーブンの温度設定などの分析条件も多岐に渡っている。良好な分析結果を得るためには、分析者が適切な分析条件を決定しなければならず、従来は、分析者の経験と知識に頼らざるを得なかった。また、分析条件を決定しても、分析装置に分析条件を入力するときの入力項目が多く、時間がかかり、入力ミスの可能性もある。
【0006】
したがって、分析装置の他にコンピュータやデータベースを準備し、既存の分析条件や過去に入力された分析条件をデータベースに保存し、分析時にデータベースを参照可能とすることで、分析条件の決定を容易にする試みがなされている。
【0007】
たとえば、試料容器に非接触型の記憶媒体としてRFID(Radio Frequency Identification)を付加し、制御装置がこのRFIDに記録された試料の分析条件を読み出してデータ解析処理部へ送信し、データ解析処理部がその情報に基づいた分析条件をデータベースから読み出して制御装置へ送信し、制御装置はその分析条件に基づいて分析装置の分析動作を制御する分析方法および分析装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法および分析装置によれば、分析者は試料容器をセットし分析開始を指示するだけで、分析条件を入力することなしに自動的に分析動作が行われるので、分析条件の入力ミスによる誤分析を防止できる。しかし、未知の試料の場合は、予め分析条件を設定することはできないため、RFIDに記録する情報はなく、分析条件は分析者が手入力せざるをえない。さらに、分析動作前にセットされる分離カラムの性能を示す情報は、個々の分離カラム毎に異なるにもかかわらず、分析者が入力しなければならないため、完全な自動化は実現できていない。
【0008】
これに対し、分離カラムの性能を示す情報についても考慮して分析動作の自動化をはかる先行技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、分離カラムに非接触型タグとしてRFIDを付加し、送受信制御部がRFIDに記録された分離カラムに関する情報を読み取り、データ解析部へ送信する。データ解析部は、読み取られた分離カラムに関する情報に基づいて分析条件を補正し、この分析条件が自動または手動により分析装置に送信され、分析装置は送信された分析条件に従い分析動作を開始する。この先行技術では、予めデータ解析部に格納された分析条件を、読み取った分離カラムの情報に基づいて補正するものであり、前述の溶離液を流すポンプの流量,溶離液に二液を使用したときの混合比率、この混合比率を時間とともに変化させるグラジエント操作の設定,分離カラムを加熱するオーブンの温度設定などの測定条件を含む分析条件までも考慮されたものではない。
【0009】
上述のように、先行技術によれば、分析試料の成分や分離カラムの種類を自動的に特定することができるが、分析条件を自動的に一義的に決めることは困難である。また、分析者が最適と考えて決めた分析条件が、必ずしも最適な分析条件とは限らず、最善の結果が得られない場合もある。このような場合、従来は、最適と決めた分析条件のパラメータを少しずつ変化させた分析メソッドを数種類作成し、その数だけの分析を行って、その中から最善の結果を選ぶという方法が行われており、同じような分析を何回も繰り返すので時間がかかり、試料や溶離液も多く必要とするためコスト上も課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−257548号公報
【特許文献2】特開2008−107136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、分析条件の決定と分析メソッドの作成は、分析者の労力によるところが大きく、煩雑で時間がかかる工程を踏まなければならない上、手作業で分析条件を入力し分析メソッドを作成するため、入力ミスが発生する可能性が低くない。
【0012】
本発明は、分析条件の入力作業を削減し、手作業による入力ミスを防止し、試料設置から分析開始までの時間とミスを削減できる分析システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を解決するために、本発明の実施態様は、分離カラムに取り付けられ、少なくとも分離カラムの仕様と分析装置の分析条件とを有する情報を記憶する記憶媒体に記憶された情報を読み取り、読み取られた情報のうち、当該分離カラムを使用するときの分析条件の上下限値を読み出し、情報の中に分析対象の成分に関する分析条件があるかどうかを検索し、情報の中に分析対象の成分に関する分析条件がある場合は、該分析条件を使用して試料の分離された成分を検出し、情報の中に分析対象の成分に関する分析条件がない場合は、新たな分析条件の入力画面を表示装置へ表示させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施態様によれば、分析条件の入力作業が削減され、手作業による入力ミスが防止され、試料設置から分析開始までの時間とミスを削減することができる分析システムおよびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液体クロマトグラフ分析装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図3】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図4】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図5】複数の分析装置の相互接続を示す構成図である。
【図6】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図7】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図8】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図9】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図10】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図11】データ解析部で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【図12】表示部のディスプレイに表示される画面の例を示す画面図である。
【図13】表示部のディスプレイに表示される画面の例を示す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施例を示し、液体クロマトグラフ分析装置の構成を示す機能ブロック図である。送液部1では、溶離液容器2にはいった単一あるいは複数種類の溶離液が、図示しないバルブで流量を調整されてポンプ3で送液される。試料注入部4では、溶離液中に分析対象である試料が注入され、分離カラム6へ送液される。分離カラム6はカラムオーブン5の中に置かれて加熱される。試料は、分離カラム6中で成分毎に分離されて検出部9で各成分が順番に検出され、ドレインへ排出される。送液部1での溶離液の流量,試料注入部4での試料注入量,カラムオーブン5の温度,検出部9での検出器は、装置制御部10に設けられたプロセッサで制御される。
【0018】
前述のように、分離カラムに充填された固定相には、シリカゲル,ポリスチレンゲル,ポリマ等の多くの種類がある。ガスクロマトグラフ分析装置の場合は、内径の細いキャピラリカラムが使用される場合がある。従来、分析者は、これらの分離カラムの個々に固有の分析性能に関するパラメータ情報が記載された分離カラムに添付されているデータシート,メーカが公開しているアプリケーションデータ,論文等を参照して分析条件を分析装置に手入力するとともに、分析スケジュールも手入力し、ひとつの分析の手順を表す分析メソッドを作成して分析装置へ登録させ、分析動作を実行させていた。したがって、分析者が情報を誤って入力しても訂正されることがないので、誤った分析メソッドで分析が実行されてしまい、データ解析のときに誤った分析結果に基づいて結論を出してしまう可能性が大きい。
【0019】
そこで、本発明の実施例では、上述の特許文献2に記載された構成、すなわち、分離カラムに上述の情報を記憶させたRFID7を取り付け、カラムオーブン5に設けられた送受信部8でその情報を読み取る構成を採用した。送受信部8の動作は送受信制御部11で制御される。この構成により、分離カラム6をカラムオーブン5にセットし、送受信部8を起動させるだけで、当該分離カラム6に関する分析条件を分析装置が自動的に読み取ることができる。
【0020】
図1では、分離カラム6が1個だけ表示されているが、複数個の分離カラムを設定できるカラムオーブン5の場合、それぞれの分離カラム6の情報を区別して読み取れるようにRFID7と送受信部8を構成することは、先行技術の範囲内で容易である。
【0021】
図1に示した本実施例では、非接触型ICタグであるRFIDを記録媒体の一例として挙げている。RFIDは、小型で独自の電源が要らず、データの読み出しだけではなく書き換えも可能で、かつ耐環境性に優れ、水,油,薬品等による汚れや、外乱光に影響されない記録媒体であるが、RFIDに限られず、同様の機能を有するものであればよい。
【0022】
RFID7には、分離カラム6の仕様を記憶させる。具体的には、分離カラムのメーカ名,ブランド名,製造ロット番号あるいは製造番号,分離カラムの内径や長さといった形状の情報,充填剤の材質やサイズ等の種類,使用可能上限圧力,使用可能温度範囲,使用不可薬品情報,注入試料量の上限値といった本分離カラム使用にあたっての分析条件設定における制限事項に関わる部分の情報を記録させておく。さらに、この分離カラムを使用し、試料として標準サンプルを用いて分析したときの分析条件とその結果の情報を記録させたり、分析が終了した後に、その分析条件とその結果を書き込むようにする。
【0023】
RFIDの記録容量に制限がある場合は、上記情報のうち、分析条件設定における制限事項に関わる部分の情報は書き換え不可能とし、分析条件とその結果の情報を書き換え可能としてもよい。
【0024】
RFID7の情報を読み出し、あるいは書き込みを行う送受信部8は、必ずしもカラムオーブン5内にある必要はなく、記録媒体7と送受信できる範囲内に設置されていればよい。送受信部8は送受信制御部11と接続され、読み出し,書き込みが制御される。
【0025】
データ解析部12はプロセッサを有し、検出部9,装置制御部10,送受信制御部11と接続され、図示しない記憶部に送受信制御部11から送信されたRFID7の情報を格納し、また、あらかじめ格納されたプログラムを実行させることで、分析条件に基づく分析メソッドを決定し、分析装置の各部の動作を制御する。また、データ解析部12は、パーソナルコンピュータのキーボードやマウスのような入力部13からの入力を受け付けたり、ディスプレイやプリンタのような表示部14に、分析条件,分析メソッド,分析結果等を表示,印刷させたりする。
【0026】
図2から図4は、データ解析部12で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。
【0027】
図2において、はじめに、分析者は、RFID7が付いた分離カラム6を液体クロマトグラフ分析装置の所定の位置にセットするので、装置制御部10は、分離カラム6が所定の位置に設置されたかどうかを確認する(ステップ201)。確認には、カラムオーブン5の分離カラム6の設置部に接触型等の図示しないセンサーを設け、設置の有無を信号により自動的にセンサーから装置制御部10へ送信するようにしておく。分離カラム6が複数個の場合は、それぞれの分離カラム6毎に設置の状況を確認する。装置制御部10は、所定の位置に分離カラム6が設置されていることが確認できたら、設置完了を表す信号をデータ解析部12へ送信する。分離カラムが所定の位置に設置されていない場合は、その旨を表示部14へ表示させて分析者に注意を促し、分析者が再度分離カラムを設置し直す。
【0028】
データ解析部12は、分離カラム6の設置信号を受信した後、分離カラム6に取り付けられたRFID7に記録された情報の読み出し指令を、送受信制御部11へ送信する。送受信制御部11は、送受信部8を介して、RFID7に記録された情報を読み取り、データ解析部12へ送信する(ステップ202)。
【0029】
RFID7に記録された情報の例として、分離カラムのメーカ名,ブランド名,製造ロット番号または製造番号,分離カラムの内径や長さといった形状の情報,分離カラムの充填剤の材質やサイズ等の種類,使用可能上限圧力,使用可能温度範囲,使用不可の薬品情報,注入試料量上限値といった本分離カラム使用にあたっての分析条件設定における制限事項に関わる部分の情報がある。また、標準サンプルを分析したときの分析条件とその結果の情報、今までの使用履歴や使用した際の分析情報とその分析結果や解析結果等の情報がある。また、溶離液を流すポンプの流量,溶離液に二液を使用したときの混合比率、この混合比率を時間とともに変化させるグラジエント操作の設定,分離カラムを加熱するオーブンの温度設定などの分析条件もある。
【0030】
RFID7の記憶容量に限度があり、上記の情報の全てを格納させることができない場合は、分析条件の基準値をデータ解析部12の図示しない記憶部に格納しておき、基準値と異なるパラメータの値のみをRFID7に格納してもよい。
【0031】
データ解析部12は、RFID7から読み出された分析条件のうち、各種パラメータの上下限値を、図示しない記憶部に予め格納されたパラメータの上下限値と比較し、RFID7から読み出されたパラメータの上下限値の方が厳しい条件の場合は、予め格納されたパラメータの上下限値を書き換えて記憶部へ格納する。分析動作はパラメータの上限値と下限値の間で実行される(ステップ203)。
【0032】
分析装置は、試料の分析対象成分が既知の場合にはその量を測定し、未知の場合は成分を分析して成分名を明らかにしその量を測定する。試料の分析対象成分が既知の場合であっても、分離カラムの種類によっては分析条件が異なる場合がある。したがって、本発明の実施例では、試料の容器に分析条件を格納させたRFIDは取り付けない。
【0033】
次に分析者は、分析対象の成分名が予め決まっている場合は、入力部13から成分名を入力するか選択するかを行い、決まっていない場合は入力しない。したがって、データ解析部12は、分析対象の成分名が入力された場合は決まっている、入力されなかった場合は決まっていないと判断し(ステップ204)、前者の場合は、図3に示すフローチャートへ進んで、成分名をキーワードとした検索を行う。後者の場合は、分析者が分析条件を入力する画面を表示部14へ表示させ、分析者により分析条件が入力される(ステップ205)。分析者が複数の成分名を入力した場合は、各成分の積で検索するか、和で検索するかを分析者が選択できるようにする。
【0034】
データ解析部12は、入力された分析条件が、ステップ203で設定されたパラメータの上下限値を超えていないかどうかを判定し(ステップ206)、超えていた場合は、表示部14にエラー表示をする等の分析者へ再入力を促す画面を表示させることで、分析者は分析条件を入力し直す。超えていない場合は、入力された分析条件に基づいて、分析者の分析開始の指示に従って分析を実行する(ステップ207)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ208)。
【0035】
図3は、図2のステップ204で、分析対象成分名が既知の場合の手順を示し、データ解析部12は、この成分名が、RFID7から読み取られた分析条件の中に含まれているか否かを検索し(ステップ301)、含まれていない場合は、図4に示すフローチャートへ進む。含まれている場合は、含まれている分析条件を抽出し、分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定する(ステップ302)。検索された分析条件が複数の場合は、すべての条件について判定する。
【0036】
分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ303)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ304)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ305)。
【0037】
ステップ302で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ306)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ307)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ303へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が分析条件の変更値を入力するか否かを問い合わせ(ステップ308)、分析者が分析条件の変更値を入力する場合は、ステップ304へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。分析者が分析条件の変更値を設定しない場合は、図4に示す手順へ進む。
【0038】
図4は、図3のステップ308で、分析者が分析条件の変更値を入力しない場合の手順を示し、データ解析部12の記憶部に記憶された分析条件を検索して、対象成分と同じ成分について、今回設置された分離カラム6と同じ種類、同じブランドの分離カラムを用いて分析したときの分析条件があるかどうかを検索し(ステップ401)、ない場合は図6に示すフローチャートへ進む。ある場合は、検索された分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定し(ステップ402)、上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ403)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ404)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ405)。
【0039】
ステップ402で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ406)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ407)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ403へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が分析条件の変更値を入力するか否かを問い合わせ(ステップ408)、分析者が分析条件の変更値を入力する場合は、ステップ404へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。分析者が分析条件の変更値を入力しない場合は、図6に示すフローチャートへ進む。
【0040】
図5は、複数の分析装置の相互接続を示す構成図であり、データ解析部12を含む分析装置15は、データ解析部16を含む分析装置17,データ解析部18を含む分析装置19、あるいは単独のデータ解析装置20とネットワーク21を介して相互接続され、データの通信が行われる。また、さらに、接続器22を介してインターネット23にも接続されている。このように、分析条件を単独の分析装置だけでなく、複数の装置の間で共有できるようにすることにより、所望の分析条件を得る確立を高めることができる。また、分析装置とインターネットとを接続し、分析装置のデータ解析部にインターネットを使用できる環境を設けることにより、分離カラムのメーカが提供しているデータベース,分析装置のメーカや委託分析業者が提供しているデータベース,学術論文のデータベースに接続して、所望の分析条件を検索することができるようになる。
【0041】
図6から図10は、データ解析部12で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートである。図6は、図4のステップ401で分析条件が検索されない場合、またはステップ408で分析者が分析条件の変更値を入力しない場合の手順を示し、図5に示したネットワークを利用した通信を行い、データ解析部12の記憶部以外のデータ解析部16,18の記憶部や、その他の記憶部に格納された分析条件を検索するようにしたものである(ステップ601)。対象成分と同じ成分について、今回設置された分離カラム6と同じ種類,同じブランドの分離カラムを用いて分析したときの分析条件があるかどうかを検索して、分析条件がない場合は図7に示すフローチャートへ進む。分析条件がある場合は、検索された分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定し(ステップ602)、上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ603)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ604)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ605)。
【0042】
ステップ602で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ606)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ607)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ603へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が分析条件の変更値を入力するか否かを問い合わせ(ステップ608)、分析者が分析条件の変更値を入力する場合は、ステップ604へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。分析者が分析条件の変更値を入力しない場合は、図7に示すフローチャートへ進む。
【0043】
図7は、図6のステップ601で分析条件が検索されない場合、またはステップ608で分析者が分析条件の変更値を入力しない場合の手順を示し、図5に示したネットワークを利用した通信を行い、データ解析部12をインターネットに接続して、分析条件を検索するように構成したものである。データ解析部12は、対象成分と同じ成分について、今回設置された分離カラム6と同じ種類,同じブランドの分離カラムを用いて分析したときの分析条件が、インターネット上のホームページ,企業のアプリケーションデータ集ページ,論文データベースなどにあるかどうかを検索する(ステップ701)。検索に際しては、表示部14にインターネット検索が必要であることを表示させ、分析者の指示により、検索を開始する。また、全てのデータベースを解析すると、膨大な時間がかかるので、検索対象のデータベースの候補を表示部14に表示させ、どのデータベースを検索対象とするかも分析者が指示するように構成する。
【0044】
データベースを検索してもない場合は、図8に示すフローチャートへ進む。ある場合は、検索された分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定し(ステップ702)、上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ703)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ704)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ705)。
【0045】
ステップ702で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ706)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ707)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ703へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が分析条件の変更値を入力するか否かを問い合わせ(ステップ708)、分析者が分析条件の変更値を入力する場合は、ステップ704へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。分析者が分析条件の変更値を入力しない場合は、図8に示すフローチャートへ進む。
【0046】
上記実施例では、測定に用いる分析装置に接続されたデータ解析部12と、他のデータ解析部とがネットワークで接続され、かつインターネットにも接続されている。データ解析部12が他のデータ解析部とネットワークで接続されておらず、インターネットにのみ接続されている場合は、図6に示した手順を実行しない。また、他のデータ解析部とネットワークで接続されているが、インターネットに接続していない場合は、図7に示した手順を実行しない。
【0047】
以上によっても、分析条件が見つからない場合、あるいは、図6や図7に示した手順を実行しない場合は、ブランドが異なる分離カラムを対象として検索する。図8は、図7のステップ701で、インターネット上のデータベースでも分析条件が検索できなかった場合、あるいは図7のステップ708で、分析者が分析条件の変更値を入力しない場合の手順を示す。また、図7に示した手順が実行できない場合は、図6のステップ601、またはステップ608から続いて実行される。図6も図7も実行できない場合は、図4のステップ401、またはステップ408から続いて実行される。はじめに、データ解析部12の記憶部に記憶された分析条件を検索して、対象成分と同じ成分について、今回設置された分離カラム6と同じ種類であるが、異なるブランドの分離カラムを用いて分析したときの分析条件があるかどうかを検索し(ステップ801)、ない場合は図9に示すフローチャートへ進む。ある場合は、検索された分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定し(ステップ802)、上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ803)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ804)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ805)。
【0048】
ステップ802で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ806)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ807)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ803へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が分析条件の変更値を入力するか否かを問い合わせ(ステップ808)、分析者が分析条件の変更値を入力する場合は、ステップ804へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。分析者が分析条件の変更値を入力しない場合は、図9に示すフローチャートへ進む。
【0049】
図9は、図8のステップ801、またはステップ808で、分析者が分析条件の変更値を入力しない場合の手順を示し、図5に示したネットワークを利用した通信を行い、データ解析部12の記憶部以外の記憶部に格納された分析条件を検索するようにしたものである(ステップ901)。対象成分と同じ成分について、今回設置された分離カラム6と同じ種類であるが異なるブランドの分離カラムを用いて分析したときの分析条件があるかどうかを検索して、ない場合は図10に示すフローチャートへ進む。ある場合は、検索された分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定し(ステップ902)、上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ903)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ904)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ905)。
【0050】
ステップ902で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ906)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ907)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ903へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が分析条件の変更値を入力するか否かを問い合わせ(ステップ908)、分析者が分析条件の変更値を入力する場合は、ステップ904へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。分析者が分析条件の変更値を入力しない場合は、図10に示すフローチャートへ進む。
【0051】
図10は、図9のステップ901で分析条件が検索されない場合、またはステップ908で分析者が分析条件の変更値を入力しない場合の手順を示し、図5に示したネットワークを利用した通信を行い、データ解析部12をインターネットに接続して、分析条件を検索するように構成したものである。データ解析部12は、対象成分と同じ成分について、今回設置された分離カラム6と同じ種類であるが、異なるブランドの分離カラムを用いて分析したときの分析条件が、インターネット上のホームページ,企業のアプリケーションデータ集ページ,論文データベースなどにあるかどうかを検索する(ステップ1001)。検索に際しては、表示部14にインターネット検索が必要であることを表示させ、分析者の指示により、検索を開始する。また、全てのデータベースを解析すると、膨大な時間がかかるので、検索対象のデータベースの候補を表示部14に表示させ、どのデータベースを検索対象とするかも分析者が指示するように構成する。
【0052】
データベースを検索してもない場合は、分析者が任意の分析条件を設定し(ステップ1006)、図中の記号Hで示されるようにステップ1004へ進む。ある場合は、検索された分析条件のパラメータの値が、図2のステップ203で設定された上下限値内かどうかを判定し(ステップ1002)、上下限値内である場合は、データ解析部12は、その分析条件の各種パラメータの値を分析条件として設定するとともに、分析メソッドを構成し、表示部14の分析条件を表示する領域にその値を表示させる(ステップ1003)。分析者は表示部14に表示された分析条件を含む分析メソッドを確認し、分析を実行させる指示を入力することにより、この分析メソッドで分析が実行される(ステップ1004)。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ1005)。
【0053】
ステップ1002で、分析条件のパラメータが読み込まれたパラメータの上下限値を超えていた場合は、データ解析部12は、表示部14のディスプレイに、例えば「カラム使用条件リミッタを超過」等のエラー表示を行って分析者に対してメッセージを出し(ステップ1007)、次に、分析条件を変更するか否かの確認のメッセージを表示させる(ステップ1008)。分析者が、分析条件を変更しないで分析を実行させる場合は、ステップ1003へ進み、分析が実行される。分析条件を変更する指示が入力された場合は、分析者が任意の分析条件を入力し(ステップ1009)、図中の記号Hで示されるようにステップ1004へ進み、分析者が入力した分析条件に従って分析が実行される。
【実施例2】
【0054】
図11は、データ解析部12で実行される分析実行プログラムの流れの一部を示すフローチャートであり、図4,図6,図7に示した手順の順番を変更したフローチャートである。はじめに、分析者は、RFID7が付いた分離カラム6を液体クロマトグラフ分析装置の所定の位置にセットするので、装置制御部10は、分離カラム6が所定の位置に設置されたかどうかを確認する(ステップ1101)。装置制御部10は、所定の位置に分離カラム6が設置されていることが確認できたら、設置完了を表す信号をデータ解析部12へ送信する。分離カラムが所定の位置に設置されていない場合は、その旨を表示部14へ表示させて分析者に注意を促し、分析者が再度分離カラムを設置し直す。
【0055】
データ解析部12は、分離カラム6の設置信号を受信した後、分離カラム6に取り付けられたRFID7に記録された情報の読み出し指令を、送受信制御部11へ送信する。送受信制御部11は、送受信部8を介して、RFID7に記録された情報を読み取り、データ解析部12へ送信する(ステップ1102)。
【0056】
RFID7に記録された情報の例として、分離カラムのメーカ名,ブランド名,製造ロット番号または製造番号,分離カラムの内径や長さといった形状の情報,分離カラムの充填剤の材質やサイズ等の種類,使用可能上限圧力,使用可能温度範囲,使用不可の薬品情報,注入試料量上限値といった本分離カラム使用にあたっての分析条件設定における制限事項に関わる部分の情報がある。また、標準サンプルを分析したときの分析条件とその結果の情報、今までの使用履歴や使用した際の分析情報とその分析結果や解析結果等の情報がある。また、溶離液を流すポンプの流量,溶離液に二液を使用したときの混合比率,この混合比率を時間とともに変化させるグラジエント操作の設定,分離カラムを加熱するオーブンの温度設定などの分析条件もある。
【0057】
RFID7の記憶容量に限度があり、上記の情報の全てを格納させることができない場合は、分析条件の基準値をデータ解析部12の図示しない記憶部に格納しておき、基準値と異なるパラメータの値のみをRFID7に格納してもよい。
【0058】
データ解析部12は、RFID7から読み出された分析条件のうち、各種パラメータの上下限値を、図示しない記憶部に予め格納されたパラメータの上下限値と比較し、RFID7から読み出されたパラメータの上下限値の方が厳しい条件の場合は、予め格納されたパラメータの上下限値を書き換えて記憶部へ格納する。分析動作はパラメータの上限値と下限値の間で実行される(ステップ1103)。
【0059】
分析装置は、試料の分析対象成分が既知の場合にはその量を測定し、未知の場合は成分を分析して成分名を明らかにしその量を測定する。試料の分析対象成分が既知の場合であっても、分離カラムの種類によっては分析条件が異なる場合がある。したがって、本発明の実施例では、試料の容器に分析条件を格納させたRFIDは取り付けない。
【0060】
次に分析者は、分析対象の成分名が既知の場合は、入力部13から成分名を入力するか選択するかを行い、未知の場合は入力しない。したがって、データ解析部12は、分析対象の成分名が入力された場合は既知、入力されなかった場合は未知と判断する(ステップ1104)。分析対象の成分名が未知の場合は、分析者が任意の分析条件を入力し(ステップ1109)、ステップ1110へ進む。既知の場合は、分離カラム6のRFID7に格納された情報の中に、この分析対象の成分名に関する分析条件があるかどうかを検索する(ステップ1105)。ある場合はステップ1112へ進む。ない場合は、データ解析部12の記憶部に格納された情報の中に、この分析対象の成分名に関する分析条件があるかどうかを検索する(ステップ1106)。ある場合はステップ1112へ進む。ない場合、図5に示したネットワーク21にデータ解析部12が接続されている場合は、他のデータ解析部の記憶部に格納された情報の中に、この分析対象の成分名に関する分析条件があるかどうかを検索する(ステップ1107)。ある場合はステップ1112へ進む。ない場合、インターネット上のホームページ,企業のアプリケーションデータ集ページ,論文データベースなどにあるかどうかを検索する(ステップ1108)。ない場合、ステップ1109へ進む。
【0061】
ステップ1112では、データ解析部12が検索の結果得られた分析条件を自動設定し、ステップ1110へ進む。ステップ1110では、入力された分析条件に基づいて、分析者の分析開始の指示に従って分析を実行する。分析が終了したら、データ解析部12は、分析結果を収集して解析し、表示部14にグラフなどの分析者が理解しやすいような形態で表示させる(ステップ1111)。
【0062】
図12から図13は、図1に示した表示部14のディスプレイに表示される画面の例を示す画面図である。図12は、図2に示したフローチャートのステップ205で、分析者が分析条件を入力するときに表示される画面の一例であり、画面1201に、装置あるいは機能の名称である「ポンプ」,「ポンプグラジエント」,「サンプラ」,「オーブン」,「検出器」がタブ形式で表示され、図に示すように「ポンプ」の場合の項目として、流量とそのパターンが表示されている。
【0063】
画面には、予め入力されているデフォールト値、あるいは前回の値が表示されているので、分析者は、変化させたいパラメータ,分析メソッド数などを入力し、例えば右下の作成ボタン1202をマウス等のクリックで指示することで、分析条件メソッドが作成される。図12の例では、ポンプの流量が1.0mL/minを基準とし、0.1mLずつ減少させる分析メソッドが4パターン作成されることを示している。具体的には、ポンプの流量の分析メソッドが、0.9mL/minの分析条件,0.8mL/minの分析条件,0.7mL/minの分析条件,0.6mL/minの分析条件の4通り作成される。
【0064】
同様に、「ポンプグラジエント」,「サンプラ」,「オーブン」,「検出器」についても、分析条件を設定し、分析メソッドを設定する。その後、連続分析のシーケンステーブルの作成を行う。
【0065】
図13は、シーケンステーブルの作成手順を示し、複数の分析メソッドのファイル名が画面1301に表示される。「Flow」と記載されたものはポンプの流量の分析メソッドに関するファイルであり、「Flow1.0」は、流量が1.0mL/minの分析条件を示し、「Flow0.6」は、流量が0.6mL/minの分析条件を示す。「Gr」は「グラジエント」の分析条件のファイルである。分析シーケンスとして、例えば、基準流量1.0mL/minと基準グラジエント40%から60%への変化とを選択し、この基準から流量を0.6mL/minまで0.1mL/min毎に変化させ、グラジエントを35%から65%まで変化させた分析条件と、グラジエントを30%から70%まで変化させた分析条件とを組み合わせたシーケンスを作成する場合は、「Flow1.0.mtd」,「Flow0.9.mtd」,「Flow0.8.mtd」,「Flow0.7.mtd」,「Flow0.6.mtd」,「Gr40−60.mtd」,「Gr35−65.mtd」,「Gr30−70.mtd」の各ファイル名を指定し、作成ボタン1302の指示で、これらの分析条件をパラメータとする分析シーケンスが作成される。
【0066】
従来の分析装置用の制御ソフトウェアでは、1つのシーケンステーブルで1つの分析メソッドしか選択できないため、分析条件を変更する場合は、1つの分析が終了した後に分析条件を変更し分析を行うという、手間のかかる作業が必要であった。本実施例では、分析シーケンスを作成するときに、分析メソッドを複数選択でき、1回の分析作業で全ての分析を自動的に行うことができるので、分析者にとって手間がかからず使い勝手がよく、作業効率のよい分析システムを得ることができる。
【0067】
上述したように、本発明の望ましい実施形態によれば、RFID等の記録媒体に記憶させた分離カラムの情報と、測定したい成分名の情報から、分析メソッドを作成するのに必要な情報を、装置を制御しているソフトウェアが装置に接続しているコンピュータ内、またそのコンピュータとネットワークを形成しているコンピュータ内を自動で検索するので、過去に行った分析の情報を分析者が検索する手間をなくすことができ、誤入力も防止することができる。
【0068】
また、本発明の望ましい実施形態によれば、記録媒体に記憶させた分離カラムの情報と、測定したい成分名の情報から、分析メソッドを作成するのに必要な情報を、装置を制御しているソフトウェアがインターネット上を自動で検索してくれることから、分析者にとって未知である分析情報を分析者が検索する手間をなくすことができる。
【0069】
また、本発明の望ましい実施形態によれば、記録媒体に記憶させた分離カラムの情報と、測定したい成分名の情報から、装置にセットした分離カラムと外形や充填剤の種類は同じ、同種の分離カラムだが、別ブランド分離カラムに関しても、分析メソッドを作成するのに必要な情報を、装置を制御しているソフトウェアがインターネット上を自動で検索してくれることから、分析者が検索する手間をなくすことができる。
【0070】
また、本発明の望ましい実施形態によれば、記録媒体に記憶させた分離カラムの情報と、測定したい成分名の情報から、装置を制御しているソフトウェアが検索して見つけた分析条件を、自動で分析メソッドに入力し、分析メソッドを作成してくれることから、人による入力ミスを防ぐことができる。また、それによって、入力ミスによる分析メソッドの再作成や分析のやり直しなどの無駄な時間や手間をかけないですむという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 送液部
2 溶離液容器
3 ポンプ
4 試料注入部
5 カラムオーブン
6 分離カラム
7 RFID
8 送受信部
9 検出部
10 装置制御部
11 送受信制御部
12,16,18 データ解析部
13 入力部
14 表示部
15,17,19 分析装置
20 データ解析装置
21 ネットワーク
22 接続器
23 インターネット
1201,1301 画面
1202,1302 作成ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分離カラムで分離することによって該試料の成分に関する分析情報を取得する分析部と、該分析部を制御するデータ解析部とを備えた分析システムにおいて、
前記分離カラムに関する情報を記憶する記憶媒体から該情報を読み出す送受信制御部と、
前記情報と前記成分の名とから、該分離カラムとは別であって同種別の分離カラムを用いて取得した分析情報を検索するデータ解析部と、
該データ解析部で検索された前記同種別ブランドの分離カラムに関する分析情報に含まれる分析条件に従って前記分析部を制御して分析を実行させる制御部と
を備えたことを特徴とする分析システム。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記同種別の分離カラムは、同ブランド,同じ外形,同じ充填剤のうちの少なくともひとつが該当する分離カラムであることを特徴とする分析システム。
【請求項3】
試料を分離カラムで分離し、該試料の分離された成分を検出する分析システムにおいて、
前記分離カラムに取り付けられ、少なくとも該分離カラムの仕様と分析装置の分析条件とを有する情報を記憶する記憶媒体に記憶された前記情報を読み取る送受信制御部、
該送受信制御部から送信された前記情報を記憶する記憶部、
該記憶部に記憶された前記情報のうち、前記分離カラムを使用するときの分析条件の上下限値を読み出し、
該記憶部に記憶された前記情報の中に前記成分に関する分析条件があるかどうかを検索し、
前記情報の中に前記成分に関する分析条件がある場合は、
該分析条件を使用して前記試料の分離された成分を検出し、
前記情報の中に前記成分に関する分析条件がない場合は、
新たな分析条件の入力画面を表示装置へ表示させるデータ解析部
を備えたことを特徴とする分析システム。
【請求項4】
請求項3の記載において、
前記分離カラムの仕様は、該分離カラム使用にあたっての分析条件設定における制限事項に関わる部分の情報であることを特徴とする分析システム。
【請求項5】
請求項3の記載において、
前記分析条件は、前記試料として標準サンプルを用いて分析したときの分析条件であることを特徴とする分析システム。
【請求項6】
請求項3の記載において、
前記記憶媒体はRFIDであり、前記標準サンプルを用いて分析したときの分析条件による分析結果が書き込まれていることを特徴とする分析システム。
【請求項7】
請求項6の記載において、前記新たな分析条件により分析が実行された分析結果が前記RFIDへ追加で書き込みされることを特徴とする分析システム。
【請求項8】
試料を分離カラムで分離し、該試料の分離された成分を検出する分析システムの制御方法において、
前記分離カラムに取り付けられ、少なくとも該分離カラムの仕様と分析装置の分析条件とを有する情報を記憶する記憶媒体に記憶された前記情報を読み取り、
読み取られた前記情報のうち、前記分離カラムを使用するときの分析条件の上下限値を読み出し、
前記情報の中に前記成分に関する分析条件があるかどうかを検索し、
前記情報の中に前記成分に関する分析条件がある場合は、該分析条件を使用して前記試料の分離された成分を検出し、前記情報の中に前記成分に関する分析条件がない場合は、新たな分析条件の入力画面を表示装置へ表示させる
ことを特徴とする分析システムの制御方法。
【請求項9】
請求項8の記載において、
前記分離カラムの仕様は、該分離カラム使用にあたっての分析条件設定における制限事項に関わる部分の情報であることを特徴とする分析システムの制御方法。
【請求項10】
請求項8の記載において、
前記分析条件は、前記試料として標準サンプルを用いて分析したときの分析条件であることを特徴とする分析システムの制御方法。
【請求項11】
請求項8の記載において、
前記記憶媒体はRFIDであり、前記標準サンプルを用いて分析したときの分析条件による分析結果が書き込まれていることを特徴とする分析システムの制御方法。
【請求項12】
請求項11の記載において、前記新たな分析条件により分析が実行された分析結果が前記RFIDへ追加で書き込みされることを特徴とする分析システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−99679(P2011−99679A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252563(P2009−252563)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】