説明

分析チップおよび分析装置

タンパク質や核酸などを分析するために用いられる分析チップにおいて、基板に試料が導入される流路を設ける。その流路の中には、特定成分の存在を検知することができ、かつ発色等により当該特定成分の存在を示すことができる試薬が含有された試薬層を形成する。試料は試料導入口から流路に導入され、試薬層に展開される。このときの反応の様子は、マイクロレンズによって拡大されて容易に観察される。こうした分析チップにより、検出・分析のための特別な外部機器を必要とすることなく、かつ検体を適用後、その場で迅速に目視により分析結果が確認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、特定の物質を検出すること、またはその物質の濃度を測定することが可能な分析チップおよび分析装置に関する。
【背景技術】
近年、タンパク質や核酸などの分析機能をチップ上に備えた分析チップの研究開発が活発に行われている(日経バイオビジネス 2002年2月号 25−27頁)。これらの分析用チップには、微細加工技術を用いて微細な分析用流路等が設けられており、極めて少量の試料を当該チップに載せ、専用の自動分析機器により迅速に分析結果を得ることができるようになっている。
従来の分析チップを用いた分析においては、試料を載せた当該分析チップを、検出機能・分析機能を有する大型の外部機器を備えた施設内へ搬送し、それらの外部機器を用いて当該分析チップを分析することにより、試料の分析結果が得られる。たとえば、特許文献1に記載の技術においては、マイクロチップと熱レンズ顕微鏡等などの外部機器とを併用することにより分析結果が得られる。
分析・検査には様々な種類の項目が存在する。分析チップは、それらの項目毎に作製されている。これらの分析チップは、分析・検査の項目毎に異なる外部機器をもちいることにより分析結果が得られる。
特開2001−4628号公報は、免疫分析装置に関する発明を開示している。その発明による免疫分析装置は、反応固相としての直径1mm以下の固体微粒子とともに、この固体微粒子の径よりも大きい縦断面積を有するマイクロチャンネル反応槽部と、固体微粒子の径よりも小さい縦断面積を有するマイクロチャンネル分離部と、抗原および標識抗体を別々に反応槽部へと導く導入部もしくはマイクロチャンネル流入部とを有しているマイクロチップとを備えていることを特徴としている。
特開平1−250809号公報は、電子部品を搭載する又は電子部品が搭載されたプリント配線板の反り量測定用装置において、再現性の良い測定を簡単に行うことを可能にすることを目的とする装置を開示している。
特開昭57−084402号公報は、被覆をもつ光ファイバの被覆除去と切断を同一の工具で行うことを可能にする光ファイバ心線端末形成器を開示している。
特開昭62−100641号公報は、細胞の性質、構造等を解析するフローサイトメータにおいて、サンプル液中の検体粒子濃度に左右されることなく、効率良く高精度の粒子解析を行うために、サンプル液の流径を測定する手段を備えた粒子解析装置を開示している。
特開2002−116145号公報は、被検溶液中の特定成分の濃度を計測する際に、試薬溶液の光学特性を計測することにより、濃度計測の精度を確保する溶液濃度計測方法を開示している。
特開平09−121838号公報は、食品の衛生検査や生化学検査で対象となる微生物を、シャーレ内の培地に適当な時間培養し、培養前より少なくとも数倍以上の大きさに成長したコロニーの数を自動的に計測する装置が知られている。そうした装置においてさらに、シャーレ全体を計測できる位置に配置されたCCDカメラと、レンズと、レンズの位置を変化させる駆動装置とを備え、シャーレ全体の計測と、シャーレの一部分を拡大した計測を可能とする装置を開示している。
特開平04−136742号公報は、高速で流れる細胞浮遊液体に半導体レーザーのレーザー光を照射し、その散乱光・蛍光による光電信号を検出し、細胞の性質・構造を解明するフローサイトメータにおいて、照射されるレーザー光を安定化させたことを特徴とする粒子解析装置を開示している。
特開昭63−241451号公報は、散乱光測光系と照射ビームの形状、位置等をモニターする観察光学系とを光分割する粒子解析装置を開示している。
【発明の開示】
本発明の目的は、他に検出機能あるいは分析機能を有する機器を必要とせずに目視により分析結果を知ることが可能な分析チップを提供することである。
本発明の他の目的は、より短い時間で分析結果を得ることを可能にする分析チップを提供することである。
こうした分析チップによれば、診断の基となるデータなどの測定結果が迅速に入手できるため、臨床の現場において効果的に用いられる。さらに、こうした分析チップによれば、専門の施設に行かなくても個人が容易に分析結果を知ることができる。
本発明によれば、流路が設けられた基板と、流路の一部に設けられ、流路に特定の物質が流れたとき外観の変化を起こす検出部と、検出部を覆うレンズとを具備する分析チップが提供される。外観の変化とは、例えば特定の物質が検出部で起こす化学変化による発色、発光、変色、脱色または消光である。
本発明の分析チップは、検出部の外観の変化を拡大するためのレンズを備えていることから、検出部における外観の変化の視認性が向上する。したがって、検出部が微少であっても発色、発光、変色、脱色または消光などの外観の変化を正確に視認することができるため、分析チップ全体を縮小化することが可能となる。またその場合、分析に必要な試料の量も少量化することが可能となる。
さらに、上記特定成分の濃度と、上記発光または色彩との関係をあらかじめ把握しておくことにより、試料中に含まれる特定成分の濃度を知ることも可能となる。
なお、本発明におけるレンズとは、微小なマイクロレンズであって、像を拡大することのできるものをいう。フレネル型レンズなどもマイクロレンズに含まれる。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて、レンズと一体成形され、流路を覆う被覆部材を具備する分析チップが提供される。
こうした分析チップによれば、製造工程において、被覆部材とマイクロレンズとを接合する工程が省略される。また、接着剤、融着あるいは超音波による圧着による接合の場合、被覆部材やマイクロレンズの屈折率が接合面において変化する可能性があり、上記流路内の視認性が低下することも考えられるが、本発明の分析チップにおいてはそのような懸念が少ない。
また本発明によれば、検出部に光を照射する第一の照明部材とを具備する分析チップが提供される。
照明部材によって検出部に光が照射されることにより、検出部の視認性が向上する。したがって、目視により正確な分析結果を求めることが可能となる。さらに、検出・分析用機器が必要とされないため、場所によらずに分析を実施し、迅速に分析結果を得ることが可能となる。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて第一の照明部材は検出部に紫外線を照射する。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて基板は可視光を透過する材料で形成され、第一の照明部材は、光を基板の側面から照射する。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて第一の照明部材は、流路の底面の側から光を照射する。
こうした分析チップにおいては、上記流路の底が上記第一の照明部材により当該分析チップの下面方向から照らされる。そのため、上記検出領域の視認性が向上し、正確な分析結果を求めることが可能となる。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて、第一の照明部材は、光導波路である。
本発明の分析チップに設けられた光導波路に光が供給されると、当該光導波路から滲み出す間接光により上記検出部が照明される。したがって、分析チップ全体を直接光により照明する場合と比較して、上記検出部の像をコントラストの高い状態で得ることができる。よって、上記検出部の視認性が向上し、正確な分析結果を求めることが可能となる。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて、検出部は、特定成分と反応することにより外観が変化する試薬を含む。外観の変化とは、例えば発色、発光、変色、脱色または消光である。
本発明の分析チップは上記のような試薬を備えているため、正確かつ迅速な分析を実現することが可能となる。
試薬は、検出部において均一に分布している。
こうした分析チップにおいては、上記検出部における発色、発光、変色、脱色または消光した領域の距離あるいは面積を計測することにより、上記試料中に含まれている上記特定成分を定量することができる。このとき、定量結果は連続量として得られるため、上記試料中の上記特定成分の濃度を正確に求めることが可能となる。
本発明によれば、検出部に沿ってスケールが設けられている。
こうした分析チップによれば、上記スケールを用いることにより上記検出部における反応領域を簡便かつ迅速に測定できるため、瞬時に上記試料中の上記特定成分の濃度を求めることが可能となる。
本発明によれば、上記の分析チップにおける試薬は、酵素、抗体、抗原および蛍光物質からなる群から選択される1種以上を含む。
本発明の分析チップは、上記のような試薬を有しているため、上記特定成分のみを選択性よく、かつ効率的に検出することが可能となる。
また本発明によれば、上記の分析チップと、分析チップの側面から検出部に光を照射する第二の照明部材を具備する分析装置が提供される。
こうした分析装置によれば、上記流路が上記第二の照明部材により照明されるため、上記検出部の視認性が向上する。したがって、より正確に分析結果を求めることが可能となる。
また本発明によれば、第二の照明部材が検出部に照射する光は、紫外線である。
また本発明によれば、第二の照明部材は、検出部に光を集める集光レンズを含んでいる。
本発明の分析装置は、太陽光や電灯など、随時利用可能な照明による光を上記集光レンズにより集光して利用する。このため、大がかりな装置を必要とせず、上記発色、変色、脱色反応の視認性を簡単に向上させることができる。
また本発明によれば、第二の照明部材は、発光部材である。特に、電球、LEDまたはブラックライトのいずれかである。
本発明の分析装置によれば、たとえば電球やLED(Light Emitting Diode)など通常の発光部材による補助照明により、極めて光量の少ない環境であっても分析を実行し、その結果を得ることが可能となる。
また本発明によれば、試料の通る流路が設けられた基板と、流路に試料を導入するための導入口と、流路の導入口より下流側に設けられ、特定の成分と特異的に結合する標識物質の配置された反応部と、流路の反応部より下流側に設けられ、特定の成分と結合した標識物質を捕捉する捕捉部と、を備えることを特徴とする分析チップが提供される。この分析チップによれば、特定成分と結合した標識物質が捕捉部に捕捉されたことを確認することにより簡潔に特定成分を検出することが可能となる。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて、流路のうち捕捉部が設けられた領域の流路の幅が、当該流路の進行方向へ向かって次第に狭くなっていることを特徴とする分析チップが提供される。
また本発明によれば、上記の分析チップにおいて、捕捉部における標識物質の密度が、流路の下流側へ向かうにつれて高くなっていることを特徴とする分析チップが提供される。これらの分析チップによれば、上記特定成分の検出に加え、定量分析をすることも可能となる。
また本発明によれば、下流側に向って次第に狭くなる流路が設けられた基板と、流路の壁面に沿って配置され、特定の物質を吸収すると膨張することにより特定の物質の量に応じて異なる位置において流路を閉鎖するヒドロゲル層とを具備する分析チップが提供される。
また本発明によれば、下流側に向って次第に狭くなる流路が設けられた基板と、所定の初期閉鎖位置において流路を閉鎖し、特定の物質を吸収すると収縮することにより流路を閉鎖する位置が初期閉鎖位置よりも下流側に移動するヒドロゲル層とを具備する分析チップが提供される。
また本発明によれば、下流側に向って次第に狭くなる流路が設けられた基板と、流路の中に配置され、特定の成分を吸収すると体積が変化するヒドロゲルによって表面が形成されたビーズとを具備する分析チップが提供される。流路に液体が流されるとき、ビーズは液体に押し流され、体積に応じて流路の異なる位置で停止する。
また本発明によれば、流路が設けられた基板と、流路の内部に配置され、特定の物質と反応して粘度が変化するポリマー溶液と、流路の内部に配置されたターゲットビーズと、流路の内部の所定の位置に設けられ、所定の大きさよりも小さい力がターゲットビーズにかけられたときにターゲットビーズを所定の位置に保持する仮保持部とを具備する分析チップが提供される。
こうした分析チップにおいて、ターゲットビーズは、強磁性体であることがある。こうした分析チップに、一定の磁力を有する磁石を近づけると、ターゲットビーズはポリマー溶液の粘度に応じて異なる速度で流路を移動する。その移動速度を測定することにより、特定の物質の量を定量的に測定することが可能である。
こうした分析チップはさらに、流路の端部に設けられた一対の電極と、一対の電極の間に電位差を発生させる電池とを具備し、ターゲットビーズは、所定のpHの溶液中で表面が帯電する材質で形成されていることがある。こうした分析チップによれば、一対の電極の間に電位差を発生させることにより、ターゲットビーズはポリマー溶液の粘度に応じて異なる速度で流路を移動する。その移動速度を測定することにより、特定の物質の量を定量的に測定することが可能である。
また本発明によれば、流路が設けられた基板と、流路に設けられ、毛細管引力により溶液を備える溶液保持部と、毛細管引力により溶液保持部に溶液を導入する導入路と、流路の一部に設けられ、流路に特定の物質が流れたとき外観の変化を起こす検出部とを具備する分析チップが提供される。
こうした分析チップによれば、溶液の量を測定するための他の器具を用いることなく、検査対象の試料を決まった量だけ分析チップ内に保持することが可能である。
また本発明によれば、第1流路と第2流路とが設けられた基板と、第1流路に設けられた第1溶液保持部と、第2流路に設けられた第2溶液保持部とを具備する分析チップが提供される。こうした分析チップにおいて、第1溶液保持部は毛細管引力により第1所定量の溶液を保持する。第2溶液保持部は毛細管引力により第1所定量と異なる第2所定量の溶液を保持する。基板には、第1所定量と第2所定量とに対応する数値が表示されていることが好ましい。
また本発明によれば、流路が基板の表面側に設けられた矩形の溝であり、基板の底面に沿って配置され、可視光を反射する反射板を具備する分析チップが提供される。こうした分析チップによれば、基板の屈折率と、流路の内部に満たされている物質の屈折率の違いにより、適当な角度から見た場合、溶液が入っている箇所が銀紙の反射光により明るく、他の部分が暗く見える。こうした分析チップは、溶液が入っている部分を目視により測定することが容易である。
また本発明の分析チップにおいて、流路の壁面は、屈折率が水の屈折率以下の材料によって覆われている。こうした分析チップによれば、流路に満たされる溶液が光ファイバーのコア、流路がクラッドに相当する屈折率の関係となり、流路を観察する方向によっては流路の表面と水溶液との界面で全反射が起こる。そのため、水溶液のある流路部分が、無い部分に比べて明るく見える。こうした分析チップは、溶液が入っている部分を目視により測定することが容易である。
また本発明による分析チップは、流路が設けられた基板と、流路を覆う透明な蓋とを具備している。流路の底面と蓋との距離は流路の延長方向に連続的に変化している。底面と蓋との間の光の反射により、蓋の外側に、流路に満たされる物質の屈折率に応じて位置が異なる干渉縞が表示される。その干渉縞を観察することにより、流路を満たしている物質の屈折率に関する情報が目視によって容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
図1Aないし図1Cは、本発明の分析チップを表す図である。
図2Aないし図2Cは、本発明の分析チップを表す図である。
図3Aないし図3Cは、本発明の分析チップを表す図である。
図4Aないし図4Cは、本発明の分析チップの試薬層付近を拡大した図である。
図5Aないし図5Bは、本発明の分析チップに光を照射した場合について説明するための図である。
図6は、本発明の分析チップの側方に集光レンズを配置した場合について説明するための図である。
図7Aないし図7Bは、本発明の分析チップの側方に光源を配置した場合について説明するための図である。
図8Aないし図8Cは、本発明の分析チップを表す図である。
図9Aないし図9Cは、本発明の分析チップを表す図である。
図10Aないし図10Bは、乾燥試薬ビーズを流路に充填する方法について説明するための図である。
図11は、本発明の分析チップを表す図である。
図12は、図11の分離領域を説明するための図である。
図13Aないし図13Bは、本発明の分析チップを表す図である。
図14Aないし図14Bは、本発明の分析チップを用いた検出法について説明するための図である。
図15は、本発明の分析チップを表す図である。
図16は、ラテックスビーズが検出部内壁に捕捉される原理について説明するための図である。
図17Aないし図17Bは、本発明の分析チップを用いた定量法について説明するための図である。
図18Aないし図18Bは、本発明の分析チップを用いた定量法について説明するための図である。
図19Aないし図19Bは、本発明による分析チップを表す図である。
図20Aないし図20Bは、本発明による分析チップを表す図である。
図21Aないし図21Cは、本発明による分析チップを表す図である。
図22Aないし図22Bは、本発明による分析チップを表す図である。
図23は、本発明に用いる電池の配線を示す。
図24は、置換基の種類、pH及び帯電する電荷の関係を示す。
図25Aないし図25Cは、本発明による分析チップを示す。
図26Aないし図26Cは、本発明による分析チップを示す。
図27Aないし図27Bは、本発明による分析チップを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(実施の第1形態)
図1Aは、本実施形態にかかる分析チップ100の上面図である。また、図1Bおよび図1Cは、それぞれ図1A中のA−A’断面図およびB−B’断面図を表している。
分析チップ100は、流路102が設けられた基板101上に、透明な被覆106が設けられており、被覆106の上にはさらにマイクロレンズ103が設けられている。また、被覆106には、分析対象の試料を流路102に導入するための試料導入口104と、分析試料を導入したときに流路102内の空気を排気できるようにするための排気口105が設けられている。
次に、分析チップ100の使用方法について説明する。分析対象の試料は、試料導入口104から注入し、毛細管効果あるいはポンプを用いた圧入などにより流路102に展開させる。流路102には、分析対象の試料中に含まれる特定成分と相互作用することにより発色、発光、変色、脱色または消光する物質ないし試薬が設けられる。こうすることにより、流路102において当該特定成分を検出することができる。また、後述するように、当該試料に含まれる特定成分の濃度を知ることが可能となる。
分析チップ100にマイクロレンズ103が設けられていることにより、流路102内の様子が拡大して観察される。したがって、流路102中における発色、発光、変色、脱色または消光をより詳細に視認することが可能である。さらに、流路102が極めて細い場合でも当該発色、発光、変色、脱色または消光を視認することができる。マイクロレンズ103を通して目視により流路102内の様子を観察するためには、流路102の幅は10μm〜100μm程度あればよい。このように、流路102が細くても足りるため、分析チップ100による分析では、分析に供する試料を少量化することができる。また、流路を複数とすることもでき、この場合、流路が細いことから多数の流路を集積することが可能である。したがって、1つの分析チップで多数の項目にかかる分析を同時に実施することが可能となる。尚、マイクロレンズ103が用いられない場合、目視により流路102内の様子を観察するためには、流路102の幅は50μm〜1mm程度あることが好ましい。
ここで、被覆106としては、上記のように全体が透明なものを用いてもよいが、基板101に接合したときに流路102の上方に位置する領域のみを透明としたものを採用してもよい。この場合、流路102以外の部分からの迷光が遮断されることから、流路102内の視認性が向上する。
分析チップ100の流路102には、図3に示されるように、上記特定成分と相互作用することにより発色する試薬を含有する試薬層107が設けられている。図3Aは分析チップ100の上面図を示し、図中のA−A’断面図、B−B’断面図がそれぞれ図3B、図3Cである。図3Bおよび図3Cに示されるように、試薬層107が流路102中に詰められている。そして、試料導入口104から分析対象の試料を注入すると、当該試料は試薬層107に浸透していくこととなる。
次に、上記試料が試薬層107に浸透する際の動作について図4を参照して説明する。図4は、図3における試薬層107付近を拡大して示している。図4Aは、試料108が試薬層107の左端へ到達して間もない状態を示している。この状態から試料108は、時間の経過とともに図中の矢印の方向へと展開していく。図4Bは、図4Aの状態からある程度の時間が経過した時点の状態を示している。試料が試薬層107中を展開した結果、試料界面110が試薬層107の中程まで到達している。そして、試薬層107の左端から試料界面110までの領域は、試料に含まれる特定成分と試薬層107中に含有される試薬とが吸着して反応することにより発色領域109が形成されている。図4Cは、図4Bの状態からさらに時間が経過した時点の状態が示されている。試料界面110は図4Bの状態よりも右方へ移動しているが、発色領域109の右端は試料界面110とは一致しておらず、図中の点線までに留まっている。これは、試料界面110が当該点線に到達したときに、試料中に含有されていたすべての特定成分が試薬層107中の試薬と吸着して反応し尽くしたことから、点線より右方の領域においては発色しないためである。
さらに、本実施形態では、試薬層107に単位体積あたり一定量の試薬を含有させておき、発色領域109が右方に展開した距離を測定することにより、試料中に含まれている特定成分を定量することが可能となっている。たとえば図4Cにおいては、試薬層107の左端から発色領域109の右端の距離をスケール111を使用し、目視により知ることができる。なお、スケール111については、実際にはたとえば図3Aに示されるように、被覆106上にプリントされる。そして、マイクロレンズ103を通じて、試薬層107とスケール111とを拡大した状態で同時に視認できるようになっている。ここで、スケール111については、図3Aのように配置する形態に限らず、たとえば被覆106上にマイクロレンズ103に沿って設けることもできる。
以上より、本実施形態の分析チップによれば、他の分析用機器を用いずに特定成分の定量分析を迅速に実施することが可能となる。
本実施形態の分析チップは、様々な物質を検出・定量することに応用できるが、グルコース、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルブミン、アルカリ性フォスファターゼ、アミラーゼ、カルシウムイオン、総コレステロール、過酸化脂質、クレアチニン、カリウムイオン、ビリルビン、総蛋白などの血液生化学検査;Hbs抗原・抗体、HCV抗原・抗体、HIV抗体などの免疫血清学的検査;CEA、CA19−9、PSA、CA−125などの腫瘍マーカーの分析への応用が例示される。
たとえばグルコースの定量の場合、試薬層107として、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4−アミノアンチピリンおよびN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウムの混合微粒子またはこれらを含有する乾燥試薬ビーズを使用し、発色する領域を計測することにより実施することができる。この場合の原理は以下のとおりである。水分を吸収してゲル化した上記試薬ビーズ内に1分子のグルコースが移行すると、グルコースオキシダーゼの作用により1分子のグルコン酸と1分子の過酸化水素とに分解される。次に、当該試薬ビーズ内において、この過酸化水素がペルオキシダーゼの作用により、それぞれ1分子の4−アミノアンチピリンおよびN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウムと反応し、キノン系色素が生成し、赤紫色に発色する。つまり、1分子のグルコースの存在が1分子のキノン系色素の生成により検出されることになる。したがって、試薬層107の単位体積あたりの当該粒子含有量を一定とすることにより、試薬層107の単位体積あたりのグルコース検出量を設定し、当該検体中のグルコースの絶対量が測定できる。よって、当該検体のグルコース濃度を求めることが可能となる。
なお、上記の乾燥試薬ビーズは次のようにして作製することができる。まずバインダとして、アガロースやポリアクリルアミド、メチルセルロースなどの吸水性ポリマーを含むゾルを調製する。こうしたゾルは時間とともに自然にゲル化する。このゾルと、所定量のグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4−アミノアンチピリンおよびN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウムを混合する。こうして得られたゾルを乾燥空気中に噴霧することにより液滴とする。当該液滴は落下中にゲル化しつつ乾燥するため、目的の乾燥試薬ビーズを得ることができる。
また、上記の乾燥試薬ビーズの作製方法として、次の方法を採用することもできる。フラスコなどの表面において、上記の試薬を含有するゾルをゲル化させた後、真空凍結乾燥させる。その結果、多数の空胞を有する固形物が得られる。この固形物は容易に粉砕でき、ビーズないしパウダーとすることが可能である。
ここで、三層構造を有する乾燥試薬ビーズ、すなわちグルコースオキシダーゼを含有する芯部と、この芯部の表面を覆うように形成されるペルオキシダーゼを含有する層と、さらにその層を覆うように形成される4−アミノアンチピリンおよびN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウムを含有する層とからなる乾燥試薬ビーズを採用することもできる。このような乾燥試薬ビーズにおいては、過酸化水素はグルコースオキシダーゼが存在する芯部において生成し、芯部を覆うペルオキシダーゼを含有する層に移行すると瞬時に消費される。このため、過酸化水素は当該ビーズ外へ流出しにくいため、他の試薬ビーズの発色に影響を与えることが少なくなる。したがって正確な検出・測定を実施することが可能となる利点を有する。
こうした三層構造を有する乾燥試薬ビーズは、グルコースオキシダーゼを上記ゾルに混合したものを原料として流動層造粒法により芯部を作製する。その後、この芯部の表面を、ペルオキシダーゼを上記ゾルに混合したもので、同じく流動層造粒法によりコーティングを施す。次いで、4−アミノアンチピリンおよびN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン・ナトリウムを上記ゾルに混合したもので、さらにコーティングを施し、目的の乾燥試薬ビーズを得ることができる。なお、たとえばホソカワミクロン社製の流動層造粒装置であるアグロマスタ(登録商標)AGM−SDにより上記試薬ビーズを作製することができる。
また、試料中のHCV抗体を検出することを目的として、たとえば固層免疫定量法やELISA法(Enzyme−Linked immuno−sorbent Assay)を利用することができる。この場合、たとえばHCVの構造蛋白であるコア蛋白を流路102(図1)の底面に付着させる。具体的には、基板101にポリスチレンを材料として採用した場合、バッファーに当該コア蛋白を分散させたものを流路102に導入することにより、流路102の底面に当該コア蛋白を簡単に付着させることができる。その後、当該コア蛋白を認識するHCV抗体が試料中に含まれるときは、当該抗体が上記コア蛋白と結合し、抗体−抗原複合体を形成する。ついで、バッファーを試料導入口104より導入し、当該バッファーを流路102内に流通させることにより流路102内を洗浄する。そして上記HCV抗体を認識するポリクローナル抗体(二次抗体)を流路102へ導入し、二次抗体を上記抗体−抗原複合体にさらに結合させ、再度流路102内を上記と同様にして洗浄する。このとき、二次抗体に蛍光標識またはアルカリホスファターゼなどの酵素を結合させておくことにより、HCV抗原の高感度な検出が実現する。蛍光標識を二次抗体に結合させた場合は、ブラックライトなどで流路102内を照射することにより、HCV抗体の存在を確認することができる。一方、アルカリホスファターゼを二次抗体に結合させた場合、p−ニトロフェニルフォスフェートなどの発色基質を流路102へ導入すると、アルカリホスファターゼによる酵素反応が生じ、発色するため、これによりHCV抗体を検出することができる。
上記では、試料中に含まれる抗体の検出について、HCV抗体の例を用いて述べたが、試料中の特定の蛋白、たとえばHCVの構造蛋白であるコア蛋白を検出することを目的として、次のような手法を採用することもできる。HCVの構造蛋白であるコア蛋白のN末端の領域を認識するモノクローナル抗体(一次抗体)を流路102(図1)の底面に結合させておく。試料導入口104から試料を導入し、毛細管効果により流路102へ移動させる。当該試料に上記コア蛋白が含まれているときは、一次抗体とコア蛋白とが抗体−抗原複合体を形成する。次いで、上記と同様にして流路102内を洗浄する。そして上記コア蛋白のN末端以外の領域を認識するモノクローナル抗体(二次抗体)を流路102へ導入し、二次抗体を上記抗体−抗原複合体にさらに結合させ、再度流路102内を上記と同様にして洗浄する。このとき、二次抗体に蛍光標識またはアルカリホスファターゼなどの酵素を結合させておくことにより、上記HCV抗体の場合と同様の手法でHCV抗原についても高感度な検出が可能である。
上記の方法は、流路の洗浄工程が不可欠であるが、こうした洗浄の必要がない方法として以下の方法を挙げることができる。この方法では、試料導入口の下流側に、試料中の特定成分と特異的に結合する標識物質を配置した反応部を設け、さらにこの下流側に、特定成分と結合した標識物質を捕捉する捕捉部を設けた構成の分析チップを用いる。ここでは、HCV抗体を検出する場合を例として説明する。
図15に示された分析チップ700は、基板701上に試料導入口702、反応室703、検出口704が設けられており、それぞれが図中に示されているように流路705で連結された構成となっている。また、反応室703中には着色したラテックスビーズが充填されており、その表面にはHCVのコア蛋白がコートされている。さらに、反応室703および検出口704の流路705には検出部706が設けられており、この検出部706の内壁には、HCV抗体を認識することが可能な二次抗体が固定されている。
なお、この場合、HCV抗体が上記特定成分に相当し、表面にHCVコア蛋白がコートされたラテックスビーズが、上記特定成分と結合した上記標識物質に相当する。また検出部706および後述の検出管707(図17)は、上記特定成分と結合した上記標識物質を捕捉する捕捉部に相当する。
次に、分析チップ700を使用したHCV抗体の検出の操作および原理について説明する。まず、試料は試料導入口702より注入され、毛細管効果や圧入等により反応室703へ送られる。反応室703において、反応室703中のラテックスビーズと試料とが混和される。当該試料中にHCV抗体が含まれる場合、反応室703中のラテックスビーズ表面にコートされたHCVのコア蛋白にHCV抗体が結合するため、当該ラテックスビーズ表面に抗体−抗原複合体が形成される。この抗体−抗原複合体を表面に有するラテックスビーズは、やがて反応室703から検出口704の方向へあふれ出し、検出部706へ移動するのであるが、前述したように検出部706の内壁には二次抗体が設けられていることから、当該ラテックスビーズは図16に示されるようにHCV抗体を介して捕捉されることとなる。このようにして複数のラテックスビーズが検出部706(図15)の内壁に捕捉されると、図14Aのように検出部706の部分において流路705が詰まることから、反応室703から検出部706にかけての領域が着色される一方で、検出部706から検出口704の領域に関しては着色が認められない結果となる。他方、試料中にHCV抗体が存在しない場合は、検出部706におけるラテックスビーズの捕捉が生じない。したがって、ラテックスビーズは検出部706を通過することができ、図14Bのように反応室703から検出口704までの領域すべてが着色することとなる。つまり、検出部706から検出口704の領域の着色の有無により上記試料中にHCV抗体が存在したか否かを判定することが可能となる。
また、図15における検出部706の代わりに、図17Aのように反応室703と検出口704との間に検出管707を採用することもできる。検出管707は、その内壁に二次抗体が所定の密度勾配でコートされており、反応室703から検出口704へ向かうにしたがって二次抗体の密度が高くなっている。このような構成とすることにより、試料中のHCV抗体濃度の測定が可能となる。その原理を以下説明する。抗体−抗原複合体を表面に有するラテックスビーズが検出管707の内壁に吸着する際の吸着力は、当該ラテックスビーズに結合したHCV抗体の密度と、検出管707の内壁の密度とが関係する。たとえば、試料中のHCV抗体濃度が高い場合、ラテックスビーズには多数のHCV抗体が結合するため、二次抗体の密度が小さい領域においてラテックスビーズの吸着が生じ、流路の堰き止めが起こる。逆に、試料中のHCV抗体の濃度が低い場合、ラテックスビーズに結合するHCV抗体は少数であるため、二次抗体の密度が小さい領域においては、HCV抗体と二次抗体との結合が生じにくい。そのため、ラテックスビーズは検出管707の高濃度側へ移動し、吸着することとなる。このように、試料中のHCV抗体濃度により、ラテックスビーズが検出管707の内壁に吸着する箇所が異なる。したがって、たとえば図17Aに示されているように反応室703から当該吸着する箇所までに着色が認められることとなるため、着色された領域の長さにより試料中のHCV濃度を知ることが可能となる。
図17Aの検出管707に代えて、図17Bのように複数の検出管708を有する構成を採用しても、上記と同様にHCV抗体の定量が可能である。この場合、たとえば図中の左の検出管708から順次、内壁にコートする二次抗体の密度を高くしておく。こうすることにより、前述した原理により、一定密度以上の二次抗体が内壁にコートされた検出管708内には詰まりが生じることとなる。詰まりが生じた検出管708は、図中、左から4〜6本目の検出管708のように着色領域が部分的であったり、全く着色しない。図17Bの場合、吸着が生じ始めたのは4本目の検出管708であると判断できることから、このことに基づき試料中のHCV抗体濃度を見積もることができる。
また、ラテックスビーズの詰まり易さは、流路内壁との吸着力のみならず、流路の幅も関係する。そこで、たとえば図18Aのように次第に幅が狭くなる検出管709を有する構成、もしくは図18Bのように幅の異なる複数の検出管710を有する構成を採用することによっても試料中のHCV濃度を求めることができる。すなわち、試料のHCV抗体濃度が比較的高い場合、表面にHCV抗体が結合したラテックスビーズが多量となるため、検出管の流路幅が広い場合であっても、流路に詰まりを生じせしめるのに十分な量の吸着が生じる。一方、試料のHCV抗体濃度が低い場合には、表面にHCV抗体が結合したラテックスビーズが少量であるため、流路幅が広い箇所において詰まりが生じにくく、より下流の流路幅が狭い箇所において詰まりが生じることとなる。このことを利用することによってもHCV抗体濃度を見積もることが可能である。
上記では、HCV抗体を例に、抗体の検出について述べたが、抗原の検出にも応用することができる。この場合、検出対象の抗原の特定領域を認識するモノクローナル抗体をラテックスビーズ上にコートし、検出部ないし検出管には、当該抗原の別の領域を認識するモノクローナル抗体を固定することにより実現できる。
また、CEA、PSAなどの腫瘍マーカーに関しても、上記で説明した固層免疫定量法やELISA法、あるいはラテックスビーズを用いる方法により検出・定量することが可能である。さらには、尿中のhCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)に上記の方法を適用することにより、妊娠の成立を判定することができる分析チップを得ることができる。また、異常プリオン(PrPSc)に対する抗体、βアミロイドまたはp97タンパク質に対する抗体に上記の方法を適用することにより、それぞれ狂牛病、アルツハイマー症の迅速な診断に資する分析チップが実現する。
本実施形態の分析チップ100の基板101(図1)の材料としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)のようなプラスチック材料、ガラス、シリコン基板が例示される。基板101のサイズは特に限定されないが、たとえば、縦・横とも2〜3cmとすることができる。厚さについても特に限定されないが、たとえば0.2〜0.7cmとすることができる。また流路102は、たとえばエッチングにより設けたり、射出成形により成形するなど基板101の材料に適した公知の方法により設けることができる。また、流路102を備える基板101を次のようにして作製することもできる。マイクロメートルオーダーの流路を形成できるような金型を精密加工機(たとえばFANUC ROBOnanoUi(ファナック社製))により作製し、この金型と高精度射出成形機(たとえばFANUC ROBOSHOT α−50iAP(ファナック社製))とによりプラスチック射出成形を行う。これにより、精度よく基板101を量産することが可能となる。
また、流路102の内壁は、試料が通過しやすいようにするために親水性処理を施してもよい。親水性処理としては、リン脂質に類似した構造を有する物質、たとえば2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成単位とする水溶性ポリマー(リピジュア(登録商標、日本油脂社製))を用いて行うことができる。この場合、リピジュア(登録商標)を例えば0.5wt%となるようにTBEバッファ(89mM Tris、89mM ホウ酸、2mM EDTA)等の緩衝液に溶解させ、この溶液で流路102内を満たし、数分間放置した後、液体をエアガン等で除去、乾燥させることによって流路102の内壁を親水性処理することができる。また、流路102のサイズについては特に限定されないが、たとえば、幅50〜200μm、深さ50〜500μmとすることができる。
被覆106およびマイクロレンズ103はそれぞれを別個に作製し、その後両者を接着あるいは融着、超音波により圧着することもできるが、両者を一体成形することが好ましい。一体成形することにより、被覆106およびマイクロレンズ103を接合する工程を省略することができる。また、接着剤あるいは融着、超音波による圧着による接合の場合、被覆106やマイクロレンズ103の屈折率が接合面において変化する可能性があることから、流路102内の視認性が低下することも考えられるが、一体成形によればそのような懸念が少ない。
被覆106およびマイクロレンズ103の材料としては、たとえばPMMA、PET、PCのようなプラスチック材料やガラス等、流路102を観察できるようにするために透明な材料が選択される。マイクロレンズ103のサイズとしては図1Bにおいて、たとえばHを0.25mm〜1.0mm、Wを0.50〜2.0mmとすることができる。
被覆106と基板101との接合は、それらに適切な接着剤により行うことができる。また、融着、超音波による圧着や嵌め込みにより接合してもよい。接着剤を用いる場合、接着剤が流路102に浸入することを防ぐため、接着剤は流路102から離れた箇所、たとえば基板101の周縁部に塗布することが望ましい。この場合、流路102と被覆106との間に極めて僅かな隙間が生じるが、被覆106の材料として例えばシリコーンゴム膜などの疎水性物質を採用するか、または被覆106の下面を例えばシリコーンコーティング剤などにより疎水性加工することで流路102からの水の漏れ出しを完全に防ぐことができる。
被覆106および基板101の接合を強固なものとするという観点からは、両者の材料を同じものとすることが好ましい。また、分析チップ100の軽量化という観点からは、被覆106および基板101の材料としてプラスチック材料を選択することが好ましい。プラスチック材料の中でもPMMAを選択することがより好ましい。PMMAは、優れた透明度および強度を兼ね備えているからである。
図3における試薬層107は、たとえば試薬およびバインダを溶剤に溶解ないし均一に懸濁させ、その溶液ないし懸濁液を流路102に流し込み、乾燥窒素ガスや乾燥アルゴンガス雰囲気下で乾燥させることにより設けることができる。また、上記の乾燥試薬ビーズを用いる場合、たとえば次のようにして試薬層107を設けることができる。被覆106を接合していない状態で、乾燥試薬ビーズ、バインダおよび水の混合体を流路102に流し込む。このとき、流路102に第一堰き止め部材を設けておき、当該混合体が試薬層107を設けるべき領域以外の領域に流れ出さないようにしておく。この状態で、当該混合体を乾燥、固化させることにより試薬層107を設けることが可能である。上記バインダとしては、たとえばアガロースゲルやポリアクリルアミドゲルなどの吸水性ポリマーを含むゾルが例示される。これらの吸水性ポリマーを含むゾルを用いれば、自然にゲル化することから乾燥させる必要がない。なお、試薬層107は図3Bに示されるように流路を塞ぐように設けてもよいし、流路底面上に薄く層状に設けてもよい。
上記では、バインダを用いて試薬層107を設ける方法を述べたが、バインダを用いず、上記乾燥試薬ビーズを水のみに懸濁させたものを用い、乾燥試薬ビーズを流路に充填することも可能である。たとえば図10Aに示されるように、流路102内に第一堰き止め部材112を設けておき、水に懸濁させた乾燥試薬ビーズを毛細管効果を利用して流路102へ流し込む。こうすることにより、水は第一堰き止め部材112を通過する一方、乾燥試薬ビーズ113は第一堰き止め部材112により堰き止められるため、図10Bに示されるように流路102に充填されることとなる。こうして乾燥試薬ビーズ113を充填したのち、第二堰き止め部材114により充填した乾燥試薬ビーズ113の逆流を防ぎつつ、乾燥窒素ガスや乾燥アルゴンガス雰囲気下で乾燥させることにより試薬層107(図3)とすることができる。なお、第二堰き止め部材114としては、たとえばバッファーにより膨潤し、かつ粘着性のでるようなゲル(たとえばポリメチルセルロース)の乾燥ビーズが挙げられる。この乾燥ビーズにより第二堰き止め部材114を形成するにあたっては、上記のようにして乾燥試薬ビーズ113を充填したのち、バッファーに分散させた当該乾燥ビーズを充填する。充填された当該乾燥ビーズは、互いに吸着したり、流路102の内壁に吸着することにより乾燥試薬ビーズ113を支持することとなる。なお、より効果的に当該乾燥ビーズを流路102に充填させるためには、十分に圧縮し乾燥させたビーズを用いることが好ましい。こうすることにより、当該乾燥ビーズが膨潤するのに要する時間が長くなるため、確実に第二堰き止め部材を形成することができる。
図3においては試薬層107が被覆106に達するまで満たされた状態としたが、必ずしもこのようにする必要はなく、たとえば試薬層107を流路102の底面に薄く設けてもよい。
(実施の第2形態)
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。図2Aは、本実施形態にかかる分析チップ200の上面図ある。また、図2Bおよび図2Cは、それぞれ図2A中のA−A’断面図およびB−B’断面図を表している。
分析チップ200は、反応槽202および流路203が設けられた基板201上に、透明な被覆206が設けられ、被覆206の上にはさらにマイクロレンズ207が設けられている。また、反応槽202の底面には試薬層210が設けられている。そして、被覆206には、マイクロレンズ207と、分析試料を流路203を通じて反応槽202へ導入するための試料導入口204と、分析試料を導入したときに流路203内などの空気を排気できるようにするための排気口205が設けられている。
次に、分析チップ200の使用方法について説明する。分析対象の試料は、試料導入口204から注入され、毛細管効果、ポンプによる圧入、あるいは電気浸透流などにより流路203を通じて反応槽202へと導入される。特定成分が当該試料中に含まれる場合、反応槽202には特定成分と相互作用することにより発色ないし発光する試薬を含有する試薬層210が設けられているため、特定成分の存在が検出され、発色ないし発光を視認することによりその存在を知ることができる。また、後述するように、当該試料に含まれる特定成分の濃度を求めることが可能となる。
この分析チップ200には、マイクロレンズ207が設けられているため、反応槽202中で生じる発色、発光、変色、脱色または消光をより詳細に視認することができるようになっている。そのため、反応槽202が微少な場合でも当該発光または発色を視認することができる。したがって、反応槽202の容積が小さくても足りるため、分析チップ200による分析においては、分析に供する試料を少量化することができる。
本実施形態の分析チップは、種々の物質の検出・定量などに応用できるが、グルコース、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルブミン、アルカリ性フォスファターゼ、アミラーゼ、カルシウムイオン、総コレステロール、過酸化脂質、クレアチニン、カリウムイオン、ビリルビン、総蛋白などの血液生化学検査;Hbs抗原・抗体、HCV抗体、HIV抗体などの免疫血清学的検査;CEA、CA19−9、PSA、CA−125などの腫瘍マーカーの分析への応用が例示される。
たとえば過酸化脂質の検出の場合、試薬層210にチトクロムCおよびルミノールを含有させておくことにより実施することができる。この場合の原理は以下のとおりである。試料中に含まれる過酸化脂質がチトクロムCと反応し、活性酸素が生成する。この活性酸素によりルミノールが酸化される際に発光する。したがって、この際の発光により過酸化脂質の検出を行うことができる。また、グルコースの場合は、実施の第1形態において説明したように、キノン系色素の生成反応を利用したグルコースの検出が可能である。さらに、HCV抗原、CEA、PSA、hCG、異常プリオンに対する抗体、βアミロイドまたはp97タンパク質に対する抗体などの場合についても、実施の第1形態において説明した固層免疫定量法やELISA法、またはラテックスビーズを利用した方法に基づき検出することが可能である。
発色反応を利用して定量を行う場合、たとえば試料中に所定量a、b、cの特定物質が存在するときに呈する色彩と同じ色彩を有する色彩見本A、B、Cを反応槽202の近傍に配置しておき、反応槽202における発色反応の色彩と色彩見本A、B、Cとを比色することにより、当該特定物質の定量を簡便かつ迅速に実施することが可能となる。当該色彩見本は、実際の反応液である必要はなく、たとえば透明塗料等の同じ色彩を有する液体、エナメルペンキなど透明な状態で固化するもの、着色したアクリル板などを使用することができる。
以上より、本実施形態の分析チップ200によれば、他の分析用機器を用いず、本分析チップのみで特定成分の定量分析を迅速に実施することが可能となる。
本実施形態の分析チップ200の基板201(図2)の材料としては、たとえばガラス、シリコン基板、あるいはPMMA、PET、PCなどのプラスチック材料が例示される。なお、特定成分の検出に発色反応を利用する場合、後述する補助照明(図5〜9)を効果的に使用する観点から、ガラス、PMMA、PET、PCなどの透明なものを選択することが好ましい。
基板201のサイズは特に限定されないが、たとえば、縦・横とも2〜3cmとすることができる。厚さについても特に限定されないが、たとえば0.2〜0.7cmとすることができる。また反応槽202および流路203は、たとえばエッチングにより設けたり、型にプラスチック樹脂を流し込むことにより成形するなど基板201の材料に適した公知の方法により設けることができる。反応槽202および流路203の内壁は、試料が通過しやすいようにするために親水性処理を施してもよい。親水性処理としては、たとえば、リピジュア(登録商標、日本油脂社製)を用いて行うことができる。この場合、リピジュア(登録商標)を0.5wt%となるようにTBEバッファ等の緩衝液に溶解させ、この溶液で反応槽202および流路203内を満たし、数分間放置した後、液体をエアガン等で除去、乾燥させることによって反応槽202および流路203の内壁を親水性処理することができる。反応槽202のサイズについては特に限定されないが、たとえば、a、bともに100〜300μm、Dを100〜400μmとすることができる。また、流路203のサイズについても特に限定されないが、たとえばcを50〜200μm、dを50〜100μmとすることができる。被覆206およびマイクロレンズ207の材料としては、ガラスあるいはPETなどのプラスチック材料等、反応槽202内を観察できるようにするために透明な材料が選択される。マイクロレンズ207のサイズとしては、たとえばHを0.25mm〜1.0mm、Rを0.25〜1.0mmとすることができる。
また、試薬層210はたとえば次のようにして作製することができる。バインダとしてのCMC(カルボキシメチルセルローズ)を適量の水に溶かし、この溶液に対して所定量の試薬を混合する。こうして得られた混合物を反応槽202に流し込み、乾燥アルゴンまたは乾燥窒素雰囲気下において乾燥させ、試薬層210を設けることができる。
また、次のようにして試薬層210を設けることも可能である。バインダとしてアガロースやポリアクリルアミド、メチルセルロースなどの吸水性ポリマーを含むゾルを調製し、このゾルと、所定量の試薬とを混合する。こうして得られたゾルを反応槽202に流し込み、自然硬化させることにより試薬層210とする。ここで、自然硬化させたのち、さらに乾燥空気等で乾燥させてもよい。このようにすることにより、試薬層210を長寿命化することが可能となる。
(実施の第3形態)
次に、本発明の実施の第3形態について説明する。暗い室内など十分な光量を確保できない環境において、第1形態または第2形態で示した分析チップにより分析を行う場合、流路または反応槽が微少であるため、マイクロレンズによる拡大だけでは十分に発色が視認できない場合が考えられる。そこで、本実施形態では、十分な光量が確保できない環境下でも、視認性を向上させることが可能となる形態について説明する。
本実施形態の原理について、図5を参照して説明する。図5に示された分析チップ300は、実施の第1形態で示した分析チップと同様の構成を有するものであるが、基板301の材料として透明なものを用いる。そして、図5に示されるように、基板301の側方から光310を照射する。照射された光310の一部が流路302中に存在する色素に当たり、乱反射が生じ散乱光320となる。その散乱光320はマイクロレンズ303を通して観測される。この散乱光320により、流路302内の視認性が向上する。
なお、流路302中の様子を拡大しなくとも視認可能である場合、マイクロレンズを備えない図13のような構成を採用することも可能である。この図の分析チップについても上記の分析チップ300の場合と同様に、光310による散乱光320が流路302内の視認性向上に寄与する。
ここで、図5Aにおいて、紙面上面から光を照射した場合を考える。この場合、照射された光は流路内の色素のみならず、マイクロレンズ303や被覆306も光を反射するため、流路内の像のコントラストは低くなってしまう。これに対し、本実施形態の分析チップ300の場合、マイクロレンズ303や被覆306からの反射光は観測されず、散乱光320のみを観測することになることから、流路302内の像のコントラストは高いものとなる。したがって分析チップ300においては優れた視認性を得ることができる。
ここで、実施の第2形態で述べたような色彩見本を利用する定量を行う場合、基板301上の流路302に沿った領域に微小な凹部を設け、その凹部に色彩見本を配置しておくことができる。このようにすることにより、流路302内における発色反応の色彩および色彩見本の両方を散乱光320による照明の下で比色することができる。したがって濃度を正確に判定することが可能となる。
光310の供給方法は特に限定されないが、たとえば図6に示されるような集光レンズ330を分析チップ300の側方に配置することにより光310を供給することができる。
また、図7Aのように、光源340およびソケット350を有する側方照明ユニット370に分析チップ300をセットし、光源340から光を供給することも可能である。図7Bは、分析チップ300を側方照明ユニット370にセットした状態の断面図であり、光源340から光310が分析チップ300に供給されている様子が示されている。光源340の発する光量を予め最適な条件に設定しておくことにより、常に安定して分析・測定を行うことが可能となる。なお、光源340としては、たとえば通常の電灯(蛍光灯や電球など)、LEDなど種々の光源を使用することができる。また、蛍光を利用して特定物質を検出する場合においては、光源340として近紫外線を照射できるブラックライト等を用いることができる。さらにこの場合、基板301としては、近紫外線を透過させるため、UV透過性プラスチックやUV用石英などを用いることが好ましい。なお、集光レンズ330および側方照明ユニット370は上記第二の照明部材に相当する。
(実施の第4形態)
本実施形態においては、実施の第3形態とは異なる手法により、流路の視認性を向上させる形態を示す。
図8は、本実施形態にかかる分析チップ400を表した図であり、図8Aは分析チップ400の上面図である。また、図8Bおよび図8Cは、それぞれ図8A中のA−A’断面図およびB−B’断面図を表している。
分析チップ400には、上記第一の照明部材に相当する光導波路430が基板401に包まれるように設けられており、流路402の底面は光導波路430の表面により構成されている。また、実施の第1形態において示した分析チップと同様に、基板401は透明な被覆406を備え、その上にさらにマイクロレンズ403を備える。
図8に示すように、分析チップ400に対して光導波路430の先端部から光410を入射すると、その光は光導波路430を通過するが、一部の光は屈折光420として光導波路430から出射し、流路402、被覆406およびマイクロレンズ403を通過する。そのため、流路402内の像が明瞭なものとなる。また、屈折光420は流路402付近のみを照らす間接光であるため、分析チップ400の背面からバックライトにより光を照射するような場合と比較してコントラストの高い像が得られる。
光導波路430の材料の絶対屈折率は、基板401の材料の絶対屈折率よりも大きくすることが好ましい。こうすることにより光410を効率良く導くことが可能となり、より多くの屈折光420が得られるからである。このような効果を得るために、たとえば基板401の材料をPMMA(絶対屈折率1.49)とし、光導波路430の材料をPET(絶対屈折率1.79)あるいはPC(絶対屈折率1.73)とすることができる。
基板401内に光導波路430を設ける方法としては、たとえば基板401を切削することにより中空を設け、その中空に光導波路430の材料である溶融した樹脂を流し込み、その後冷却して光導波路430とする方法が挙げられる。こうして基板401内に光導波路430を設けたのち、流路402が基板401に設けられる。なお、被覆406およびマイクロレンズ403については、実施の第1形態と同様の構成とすることができる。
光410を供給する光源は、特に限定されないが、実施の第3形態同様、たとえば通常の電灯(蛍光灯や電球など)、LED、ブラックライトなど種々の光源を使用することができる。
また、光導波路を有する形態の変形例として、図9に示されるような分析チップ500を挙げることもできる。図9Aは分析チップ500の上面図である。また、図9Bおよび図9Cは、それぞれ図9A中のA−A’断面図およびB−B’断面図を表している。分析チップ500は、その底面に保護層540を有している点で分析チップ400と異なっている。その他の構成は、基本的には図8に示される分析チップ400と同様の構成を採用しており、光510を光導波路530へ照射し、屈折光520を生じさせることにより、マイクロレンズ503を通して流路502内の像を視認性良く観察することが可能となっている。
分析チップ500の場合、光導波路530は次のようにして設けることができる。流路502を有する基板501の底面に、光導波路530を備え付けるための溝を切削により設ける。次に、当該溝に光導波路530の材料である溶融した樹脂を流し込み、その後冷却、固化させて光導波路530とする。その後、融着、超音波による圧着あるいは接着剤による接着等により基板501と保護層540とを接合する。上記溝は、切削により設ける方法の他、実施の第1形態で示した方法を応用することによっても実現することができる。すなわち精密加工機により、上記溝および流路502を備えた基板を形成できるような金型を予め作製し、この金型と高精度射出成形機とによるプラスチック射出成形により、流路502および上記溝を備える基板501を得ることができる。また、光導波路530の材料として、紫外線硬化樹脂(たとえばJ−91(サマーズオプティカル社製))を用いることもできる。この場合、紫外線硬化樹脂をモノマー状態で上記溝に塗布することにより充填し、紫外線を照射することにより重合硬化させる。このようにすることにより簡便に光導波路530を設けることが可能である。
保護層540の材料としては、たとえばPMMA、PET、PCのようなプラスチック材料やガラス等が例示される。なお、被覆506およびマイクロレンズ503については、実施の第1形態と同様の構成とすることができる。
以上、本発明の実施の形態にかかる分析チップについて説明したが、これらの分析チップは単独で用いることができるほか、他のマイクロチップと組み合わせて使用することも可能である。たとえば、分離機能を備えたマイクロチップと本発明の分析チップとをシームレスに接続することにより、試料の分離・精製、検出・測定をチップのみで迅速に実施することが可能となる。また、たとえば上記いずれかの実施の形態において示した分析チップ上に分離機能を追加することによって、試料の分離・精製、検出・測定を一つのチップのみで迅速に実施することが可能となる。こうした分析チップの一例を図11に示す。分析チップ600は、流路161aおよび161bを有し、これら2本の流路の間に隔壁125が介在している。隔壁125の所定箇所には分離領域124が設けられており、この分離領域124により分離された特定物質を検出するための試薬層122a、122bが、それぞれ流路161a、161bの所定箇所に設けられている。また、試薬層122a、122bを拡大して視認できるようにそれぞれマイクロレンズ123a、123bが設けられている。
次に、分析チップ600の使用方法について図11および図12を参照して説明する。図12は図11における分離領域124付近を拡大して示した図である。試料は試料導入部120から注入され、毛細管効果、空気圧による圧入、電気浸透流などにより流路161b内を液溜め126へ向かって流動する。一方、緩衝液は緩衝液導入部121より注入され、毛細管効果、空気圧による圧入、電気浸透流などにより流路161aを液溜め127へ向かって流動する。したがって、図12に示されるように、流路161aおよび161bの流れの方向は互いに対向することとなる。
ここで、分離領域124における分離の原理について図12を参照して説明する。小粒子151と大粒子152とを含有する試料150が流路161bを図中下向きに通過する際、試料150に含まれる小粒子151が図の中央に示される隔壁に設けられた分離流路を通過し、隣接する流路161aへ移行する。流路161aに移行した小粒子151は、流路161aを図中上向きに流れる緩衝液とともに同方向へ運搬される。一方、上記分離流路を通過することができない大粒子152はそのまま流路161bに留まり、図中下方向へ流れていくこととなる。こうして小粒子151と大粒子152とが分離領域124において分離される。分離された小粒子151および大粒子152は、それぞれ試薬層122a、122bにおいて検出され、それらの変化はマイクロレンズ123a、123bにより拡大して視認することができる。
なお、分析チップ600の被覆の材料としては、疎水性のものを採用することが好ましい。こうすることにより流路161aおよび161bの内壁の親水性度が低下するため、以下の点で操作上好都合となる。分析チップ600による分離を実現するためには、緩衝液および試料を、所定の流路以外にあふれ出すことなく流通させることが必要である。したがって、緩衝液および試料を分離領域124に同時に到達させることが理想であるが、通常困難である。この点、流路内壁の親水性度を適度に低下させると緩衝液あるいは試料の流路内の進行が緩徐となる。そのため、たとえば緩衝液を流路161aに先に導入しても、当該緩衝液は流路161bにあふれ出すことはない。この状態で試料を161bに導入することにより、流路161a、161b中にそれぞれ緩衝液、試料が流通した状態を保ちつつ、図12の中央に示される隔壁に設けられた分離流路において分離が実現する。
図11の分析チップ600は、たとえば血液の分析に応用することができる。この場合、比較的大きい血球成分が大粒子152に相当し、血球以外の成分が小粒子151に相当することになる。そして、血中の特定物質を検出できる試薬を試薬層122a中に含有させておくことにより、遠心分離操作等の前処理をすることなく、血液から直接当該特定物質を分析することが可能となる。なお、この場合、試料としての血液は試料導入部120(図11)から導入することとなる。
なお、図11においては流路を二本備えた分析チップを示したが、三本以上とすることにより三種類以上の大きさの分子に分離できるようにすることも可能である。また、試薬層に関しては、図11の分析チップのように流路それぞれに試薬層を設けてもよいし、いずれかの流路にのみ設ける形態を採ってもよい。
以上説明したように本発明の分析チップは、試料を検出する検出部とその検出部を覆うように形成されたマイクロレンズとを備えているため、他に検出・分析のための特別な外部機器を必要とせず、なおかつ検体を適用後、その場で迅速に目視により分析結果を得ることが可能となる。
(実施の第5形態)
図19Aは、本実施の形態における分析チップの構成を説明するための上面図である。分析チップ800は、基板801を備えている。基板801には、流路803が設けられている。流路803は、実施の第1形態において基板101に流路102を形成する方法と同じ方法によって形成することが可能である。流路803は、幅が連続的に単調増加あるいは単調減少するように形成されている。
流路803の少なくとも一つの側面には、ヒドロゲル802の層が設けられている。ヒドロゲル802は、化学物質感受性ヒドロゲル(CSG)であり、特定の種類の物質(例示:グルコース)に触れると体積が増加する。体積の増加分は、その物質の量が多いほど大きい。流路803の側には、目盛り804が設けられている。
流路803の上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。流路803に光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
こうした構成を備えた分析チップ800は、次のように使用される。流路803の一方に設けられた導入口(図示せず)から、定量の溶液が流路に導入される。溶液には、視認性を向上させるために色素が混入されていることが好ましい。溶液は流路803を一方から他方に向って流れる。
溶液が、ヒドロゲル802が感受性を有する特定の成分を含んでいると、ヒドロゲル802は膨張する。図19Bは、ヒドロゲル802が膨張したときの分析チップ800を示している。膨張したヒドロゲル802は、流路803の幅が狭い部分を閉塞し、溶液の侵入を止めている。溶液の侵入が止められている位置は、停止位置805に図示されている。溶液に含まれる特定の成分が多いほど、停止位置805は流路803の幅が広い側(図の右側)になる。溶液に含まれる特定の成分が少ないほど、停止位置805は流路803の幅が狭い側(図の左側)になる。停止位置805は、目盛り804により肉眼で定量的に測定することができる。そのため、溶液に含まれる特定の成分の分量を肉眼で確認することが可能である。
次に、本実施の形態の変形例について説明する。この変形例における分析チップ800の構成は、図19Bによって示される。先の例と異なり、図19Bは導入口から溶液を導入する前の分析チップ800を示している。流路803の少なくとも一つの側面には、ヒドロゲル802の層が設けられている。ヒドロゲル802は、化学物質感受性ヒドロゲル(CSG)であり、特定の種類の物質(例示:グルコース)に触れると体積が減少する。体積の減少分は、その物質の量が多いほど大きい。
こうした構成を備えた分析チップ800は、次のように使用される。流路803の一方に設けられた導入口(図示せず)から、定量の溶液が流路に導入される。溶液は流路803を一方から他方に向って流れる。
溶液が、ヒドロゲル802が感受性を有する特定の成分を含んでいると、ヒドロゲル802は収縮する。その特定の成分の分量が多いほど、ヒドロゲル802が収縮する体積は大きい。収縮した体積が大きいほど、ヒドロゲル802が流路803を塞いでいる部分が減少し、停止位置805は流路803の幅が狭い側(図の左側)に移動する。そのため、停止位置805を目盛り804で読取ることにより、溶液に含まれる特定の成分の分量を視認することが可能である。
本実施の形態における分析チップに使用可能なヒドロゲルに関して記述されている文献について以下に述べる。
検出対象となる成分のpHに依存して体積が変化するpH感受性ヒドロゲルの例は、次の文献に示されている。
(1)Iio,K.,Minoura,N.,Nagaura,M.(1995)Swelling characteristics of ablend hydrogel made of poly(allylbiguanido−co−allylamine)and Poly(vinylalchol),Polymer 36:2579−2583,
(2)Beebe,D.J.et.al.(2000)Functional hydrogel structures for autonomous flow control inside microfluidic channels,Nature 588−590.
検出対象となる成分のグルコースの量に依存して体積が変化するグルコース感受性ポリマーの例は、次の文献に示されている。
(1)Cartier,S.,Horbert,T.A.,Ratner,B.D.(1995)Glucose−sensitive membrane coated porous filters for control of hydraulic permiability,and insulin delivery from a pressurized reservoir,Journal of Membrane Science 106:17−24,
(2)Podual,K.,Doyle,F.J.,and Peppas,N.A.(2000)Preparation and dynamic response of catalytic copolymer hydrogels containing glucose oxidase.Polymer 41:3975−3983.
こうしたポリマーは、特定の物質を分解して酸もしくは過酸化水素などを発生させる酵素が混ぜてある。その酵素が作用した結果生じるpH変化や過酸化水素濃度に応じて、ポリマーの体積変化あるいは穴サイズの変化が生じる。混ぜる酵素や薬品の種類を変えることで、より多くの物質に反応するポリマーゲルを作ることが可能である。
(実施の第6形態)
図20Aは、本実施の形態における分析チップの構成を説明するための上面図である。分析チップ800aは、基板801を備えている。基板801には、流路803aが設けられている。流路803aは、実施の第1形態において基板101に流路102を形成する方法と同じ方法によって形成することが可能である。流路803aは、幅が連続的に単調増加あるいは単調減少するように形成されている。流路803aの側には、目盛り804が設けられている。
流路803の中には、ビーズ806が入れられている。ビーズ806の表面は、視認性が良くなるように派手な色が着色されている。ビーズ806は、表面がヒドロゲルにより形成されている。そのヒドロゲルは、化学物質感受性ヒドロゲル(CSG)であり、特定の種類の物質(例示:グルコース)に触れると体積が増加する。体積の増加分は、その物質の量が多いほど大きい。
流路803aの上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。流路803aに光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
こうした構成を備えた分析チップ800aは、次のように使用される。流路803aの幅が広い側の端部に設けられた導入口(図示せず)から、定量の溶液が流路803aに導入される。溶液には、視認性を向上させるために色素が混入されていることが好ましい。溶液は流路803aを一方から他方に向って流れる。ビーズ806は溶液に押し流され、流路803aの幅がビーズ806の直径と同じになる位置で停止する。
溶液が、ビーズ806の表面を形成しているヒドロゲルが感受性を有する特定の成分を含んでいると、そのヒドロゲルは膨張し、ビーズ806のサイズが大きくなる。図20Bは、ビーズ806のサイズが大きくなったときの分析チップ800aを示している。ビーズ806のサイズが大きくなるほど、ビーズ806はより流路803の幅が広い位置で停止する。特定の成分の量が多いほど、ビーズ806はより流路の幅が広い位置で停止する。そのため、ビーズ806の停止位置を目盛り804で読取ることにより、あるいは着色された溶液の停止位置を目盛り804で読取ることにより、溶液中の特定の成分の量が定量的に測定できる。
(実施の第7形態)
図21Aを参照すると、本実施の形態における検出チップ800の上面図が示されている。分析チップ810は、基板815を具備している。基板815には、流路811が設けられている。流路811の側には、目盛り814が設けられている。流路811の内部には、ビーズ812が入れられている。ビーズ812の大きさは、流路811の最小幅よりも小さい。
ビーズ812は、視認可能な大きさである。ビーズ812が蛍光色の着色をされているか、あるいは蛍光物質を用いて形成されている場合、視認性を保ちつつビーズの大きさを若干小さくすることが可能である。蛍光色のビーズ812を用いた場合、流路811の内部の様子を目視により観察するためには、流路811の幅は10μm〜100μm程度、ビーズ812はそれよりも若干小さいサイズであればよい。
ビーズ812は、鉄、鉛に例示される重い金属の芯を有している。ビーズ812の外側は、視認性の良い派手な色のついた樹脂でコーティングされている。ビーズ812の形状は、球、回転楕円体、棒状、螺旋状、プロペラ状などである。
流路811の内部には、ポリマー溶液817が充填されている。ポリマー溶液817は、特定の物質の濃度に反応して粘度が変化する。そのようなポリマー溶液817として、実施の第5形態における分析チップ800に使用された化学物質感受性ヒドロゲル(CSG)の希薄溶液、あるいは重合度を下げた溶液を用いることが可能である。
流路811の上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。流路811に光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
流路811の一端の近くには、仮固定部813が設けられている。図21Bを参照すると、仮固定部813の付近を構成を示す側面から見た断面図が示されている。基板815に流路811が設けられ、流路811は蓋816で封止されている。蓋816は透明な材質でできている。流路811の内部にはビーズ812が入れられている。仮固定部813には、段差817が設けられている。段差817は、分析チップ810を平らに静置している状態ではビーズ812が容易に越えることができない程度に高く、分析チップ810を大きく傾けたときにビーズ812が容易に越えることができる程度に低く設けられていることが好ましい。
図21Cを参照すると、仮固定部813の付近の他の構成を示す側面から見た断面図が示されている。この構成においては、仮固定部813には、くぼみ818が設けられている。くぼみ818は、分析チップ810を平らに静置している状態ではビーズ812が容易に移動することができない程度に深く、分析チップ810を大きく傾けたときにビーズ812が容易に越えることができる程度に浅く設けられていることが好ましい。
こうした構成を備えた分析チップ810は、次のように使用される。分析チップ810は平らな場所に静置される。ビーズ812は、仮固定部813に仮固定されている。流路811の一端に設けられた導入口(図示せず)から溶液が導入される。溶液は、流路811を流れる。ポリマー溶液817は、溶液に含まれる特定の物質の濃度に応じて、粘度を変化させる。
分析チップ810の使用者により、流路811の延長方向が鉛直方向となるように分析チップ810の姿勢が変えられる。ビーズ812は仮固定部813を離れ、鉛直方向に落下を開始する。ビーズ812の落下速度は、ポリマー溶液817の粘度によって変化する。一定時間にビーズ812が落下する距離を測定することにより、ポリマー溶液817の粘度が定量的に測定される。あるいは、ビーズ812が所定の位置にまで到達する時間を測定することにより、ポリマー溶液817の粘度が定量的に測定される。測定されたポリマー溶液817の粘度から、溶液に含まれる特定の物質の濃度が分かる。
次に、本実施の形態の変形例における分析チップについて説明する。変形例における分析チップは、図21Aに示されている分析チップ810において、ビーズ812が鉄、フェライト磁石に例示される強磁性体で形成された芯を有している。その他の構成は上記の説明と同一である。
こうした分析チップは、所定の磁力を有する磁石と共に使用される。こうした分析チップが使用されるとき、ビーズ811は、仮固定部813に仮固定されている。流路811の一端に設けられた導入口(図示せず)から溶液が導入される。溶液は、流路を流れる。ポリマー溶液817は、溶液に含まれる特定の物質の濃度に応じて、粘度を変化させる。
分析チップ810の使用者により、流路811の仮固定部813と反対側の端の延長線上の位置に、所定の磁力を有する磁石が設置される。ビーズ812は仮固定部813を離れ、磁石が設置された方向に移動を開始する。ビーズ812の移動速度は、ポリマー溶液817の粘度によって変化する。一定時間にビーズ812が移動する距離を測定することにより、ポリマー溶液817の粘度が定量的に測定される。あるいは、ビーズ812が所定の位置にまで到達する時間を測定することにより、ポリマー溶液817の粘度が定量的に測定される。測定されたポリマー溶液817の粘度から、溶液に含まれる特定の物質の濃度が分かる。
本実施の形態の他の変形例における分析チップは、反応槽と定量槽とを具備している。反応槽は内部に特定の物質に反応して粘度が変化するポリマー溶液が充填されており、被験物質を導入するための導入口が設けられている。反応槽と定量槽の間には弁を備えた搬送路が設けられており、反応槽の内部に蓄積された溶液を定量槽の内部に搬送することが可能である。定量槽は、図21Aに示されている分析チップ810の構成に加えて、流路811に開口する搬送路の出口が設けられている。
こうした分析チップは、次のように使用される。導入口から被験物質が導入される。ポリマー溶液は、被験物質に含まれる特定の成分の濃度に応じて粘度を変化させる。
ポリマー溶液は、搬送路を通って反応槽から定量槽へ搬送される。定量槽は、ポリマー溶液で満たされる。ポリマー溶液の粘度は、上記した方法により測定される。測定された粘度から、被験物質に含まれる特定の成分の濃度が定量的に測定される。これにより、被験物質に含まれる特定の成分の濃度が目視により定量的に測定される。
(実施の第8形態)
本実施の形態における分析チップ820の上面図が図22Aに示されている。分析チップ820は、基板825を具備している。基板825には、流路821が設けられている。流路821には、ポリマー溶液827が充填されている。ポリマー溶液827は、実施の第7形態におけるポリマー溶液817と同じものである。流路821の側には、目盛り824が設けられている。基板825にはさらに、電解液導入口826が設けられている。
流路821の内部には、ビーズ822が入れられている。ビーズ822の大きさは、流路821の最小幅よりも小さい。ビーズ822は、樹脂などの軽い物質で形成され、表面はバッファーのpHで帯電する材質で形成されている。
流路821の一端の近くには、仮固定部823が設けられている。仮固定部823の構成は、実施の第7形態における分析チップ810の仮固定部813と同じである。
流路821の上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。流路821に光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
図22Bは、分析チップ820を側面から見た断面図である。基板825には、第1金属箔827、ナイロンメッシュ828及び第2金属箔829が積層化されている。第1金属箔827と第2金属箔829とは種類の異なる金属である。例えば第1金属箔は銅であり、第2金属箔は亜鉛である。ナイロンメッシュ828の一部は、電界液導入口826に露出している。
このような構成の分析チップ820は、プラスチックチップを2層構造とし、下層のプラスチックチップに設けられた空所に第1金属箔827、ナイロンメッシュ828及び第2金属箔829を積層し、その上に上層のプラスチックチップを貼り合わせることにより製造することができる。
流路821の両端には白金により形成された電極830が設けられている。両端の電極830の各々は、第1金属箔827と第2金属箔829とに接続されている。
こうした分析チップ820は、次のように使用される。初期状態において、ビーズ822は、仮固定部823に仮固定されている。流路821の一端に設けられた導入口(図示せず)から溶液が導入される。溶液は、流路821を流れる。ポリマー溶液827は、溶液に含まれる特定の物質の濃度に応じて、粘度を変化させる。
分析チップ820の使用者により、電解液導入口826に電解液が導入される。電解液は、毛細管現象などによりナイロンメッシュ828に沿って展開される。第1金属箔827、電解液を含んだナイロンメッシュ828及び第2金属箔828により、ボルタ型の電池が構成され、流路830の両端の電極830の間に電位差が発生する。
発生した電位差により、ビーズ822は流路821の中を移動する。ビーズ822の移動速度は、ポリマー溶液827の粘度によって変化する。一定時間にビーズ822が移動する距離を測定することにより、ポリマー溶液827の粘度が定量的に測定される。あるいは、ビーズ822が所定の位置にまで到達する時間を測定することにより、ポリマー溶液827の粘度が定量的に測定される。測定されたポリマー溶液827の粘度から、溶液に含まれる特定の物質の濃度が分かる。
第1金属箔827が銅で第2金属箔829が亜鉛である場合、起電力は約0.7ボルトである。軽いプラスチックで形成されたビーズ822を駆動するためには、両端の電極830の間に7ボルト程度の電位差があることが好ましい。ボルタ型の電池を10段直列につなぐことにより、7ボルト程度の電圧を得ることが可能になる。図23を参照すると、ボルタ型の電池を直列に配線する構成が示されている。第1金属箔827、ナイロンメッシュ828及び第2金属箔829が積層されたボルタ型電池が10個設けられ、絶縁層(図示せず)を介して互いに側面が隣り合うように並置される。隣り合うボルタ型電池は、第1金属箔827と第2金属箔829の積層の順序が逆になっている。一つのボルタ型電池の第1金属箔827と、それに隣接するボルタ型電池の第2金属箔829とは、導電部材830で電気的に接続されている。このような配線により直列接続されたボルタ型電池が基板825の内部に形成されることにより、両端の電極830の間に7ボルト程度の電位差を得ることができる。
本実施の形態の変形例として、多数の交換基を持つポリマービーズを使用する分析チップが可能である。この変形例における分析チップは、図22A及び図22Bに示される分析チップ820において、特定の物質に反応して粘度の変化するポリマー溶液827を必ずしも必要としない。さらに、図22A及び図22Bに示されるビーズ822は、イオン交換樹脂のように酸性もしくは塩基性の残基を多数持つポリマーによって形成されている。こうしたビーズ822は、溶液のpHに応じて残基の一部が電離し、残りは電離しない状態になるため、表面電荷が溶液のpHに応じて変化する。その他の構成は、図22A及び図22Bに示される分析チップ820と同じである。
図24を参照すると、溶液のpHの変化に応じたビーズ822の表面電荷の変化が示されている。ビーズ822が多数の弱塩基性置換基を持つポリマーで形成されている場合、pHが高い溶液中ではビーズ822は小さい正の表面電荷を持つ。pHが低い溶液中ではビーズ822はより大きい正の表面電荷を持つ。ビーズ822が多数の弱酸性置換基を持つポリマーで形成されている場合、pHが高い溶液中ではビーズ822は大きい負の表面電荷を持つ。pHが低い溶液中ではビーズ822はより小さい負の表面電荷を持つ。
そのため、ビーズ822は、適切なイオン交換性のポリマーを選ぶことで、あるpH範囲内でpHに応じた表面電荷となる。そこで流路821の両端の電極830の間に電位差が加えられると、ビーズ822はその表面電荷に比例する力を受けるため、表面電荷に応じてビーズ822の移動速度は変化する。このビーズ822の移動速度の変化を検出することにより、pHの変化が測定され、検出対象となる成分の量に関する定量的な情報が目視により得られる。
(実施の第9形態)
実施の第9形態における分析チップは、十分な試薬があっても試料の濃度が不十分であると反応が起こらなくなるような種類の反応を利用して実現される。例えば、所定量の抗原をコートした酵素免疫測定(ELISA)の反応槽をアレー状に複数並べ、各々に抗体の希釈倍率が異なる試料を導入すると、希釈倍率が一定以上大きい試料に対しては着色反応がまったく見られなくなる。そのため、反応槽アレーを試料の希釈倍率の順に並べておき、反応槽アレーのどこで着色の有無が変化しているかを見ることにより、試料中の抗体の濃度を定量的に検出することが可能である。
同様に、血清中の酵素(例えば、AST)の濃度を計測する場合、ASTがあると発色する試薬を同じ量だけ入れた反応槽をアレー状に複数並べておく。各々の反応槽に、希釈倍率の異なる血清を導入すると、希釈倍率が一定以上の血清が導入された反応槽には発色が見られない。
こうした原理を利用することにより、目視によって試料の濃度を定量的に計測することが可能な分析チップを実現することができる。図25Aを参照すると、そうした分析チップ840の構成が示されている。分析チップ840は、基板841を備えている。基板841には、複数の反応ユニット842がアレー状に配列されている。基板841には、反応ユニット842の各々に対応して、希釈倍率843が書き込まれている。
図25Bを参照すると、反応ユニット842の構成が示されている。反応ユニット842は、基板841に設けられた試料導入路851を有している。反応ユニット842はさらに、基板841に設けられた試薬導入路853を有している。試料導入路851の一端は、試薬導入路853に開口している。
反応ユニット842はさらに、基板841に設けられた試薬導入口852と反応槽854とを有している。反応槽854には空気穴857が設けられている。試薬導入路853の一端は試薬導入口852に開口している。試薬導入路853の他端は反応槽854に開口している。
図25Bにおいて、点線で囲った部分Cの詳細な構成が図25Cに示されている。試料導入路851の途中には、逆流防止弁855が設けられている。逆流防止弁855の内部には、吸水することにより体積が増大する吸水性ポリマービーズが設置されている。
試薬導入路853の中には、試料導入路851と交わる付近に、試料保持部856が設けられている。試料保持部856には、多数の細いピラーが形成されているか、あるいは多数の細い溝が形成されている。試料保持部856は、表面が親水性である。試料保持部856は、試料導入路851の延長する方向に沿って長さLを有する。試料保持部856は、毛細管効果によって、長さLに比例する量の溶液を保持し、試料保持部856の外部にその溶液がしみ出すのを抑制する。
再び図25Aを参照して、分析チップ840が有する複数の反応ユニット842の各々は、試料保持部856の長さLが異なる。図の最も右側の反応ユニット842の長さLに比べて右から2番目の反応ユニット842の長さLは10倍である。図の右から2番目の反応ユニット842の長さLに比べて右から3番目の反応ユニット843の長さLは10倍であり、以下同様である。
試薬導入路853の上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。試薬導入路853に光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
こうした構成を備えた分析チップ840は、次のように使用される。分析チップ840が備える各々の反応ユニット842に対して、試料導入路851から試料である溶液が導入される。導入は、試料導入路851あるいは試料保持部856による毛細管引力を用いて行われる。試料保持部856が所定量の試料を含んだ時点で、毛細管引力による導入は自動的に停止される。導入された試料は、試料保持部856に保持される。
保持される試料の量は、試料保持部856の長さLに比例している。そのため、図25Aに示される複数の反応ユニット842は、左側のものほどより多くの試料を試料保持部856に保持している。
試料が導入されると、逆流防止弁855に充填されている吸水性ポリマービーズが膨潤することにより、試料導入路851が閉鎖される。それにより、これ以後のプロセスにおいて、試薬導入路3から試料導入路1へ溶液が流入することが防止される。
試薬導入口852から試薬溶液が強制的に導入される。試薬溶液に押された試薬導入路853の内部の空気は、空気穴857から押し出される。試薬溶液は、試料保持部856に保持されている試料を押し流し出しながら試薬導入路3の中を反応槽854の方へ流入する。空気穴857のサイズは小さいため、試料を含んだ試薬溶液が空気穴857を塞ぐと、それ以上の試薬溶液を試薬導入路853に導入することは困難となる。
反応槽854の内部には試薬溶液と試料との混合溶液が溜まる。複数の反応ユニット842の各々の試料保持部856の長さLが異なることにより、反応槽854における試料の希釈倍率は各々の反応ユニット842で異なる。分析チップ820には各々の反応ユニット842に対応する位置にその希釈倍率843が書き込まれている。希釈倍率843は例えば、左端の反応ユニット842から順に10倍、10倍、10倍、10倍、10倍である。
試薬は、試料に含まれる特定の成分に反応して発色反応を生じる。その発色反応は、一定時間ののちに終了する。反応が終了した時点で分析チップ840において、希釈倍率の低い反応ユニット842の反応槽854は発色しており、希釈倍率の高い反応ユニット842の反応槽854は発色していないことが目視される。例えば、希釈倍率が10以上の反応ユニット842の反応槽854は発色しており、希釈倍率が10以上の反応ユニット842の反応槽854は発色していないことが目視される。分析チップ840にアレー状に配列された反応ユニット842のうちのどの位置の反応ユニット842まで発色しているかを目視することによって、試料の濃度が定量的に分かる。
こうした分析チップ840は、感染症に対する抗体価のように、100倍、1000倍、10000倍など、飛び飛びの値で表される場合に好適に用いられる。
(実施の第10形態)
実施の第10形態における分析チップは、溶液に色素を混入することなしに、流路内における溶液の有無を目視で容易に確認できるように構成されている。
図26Aには、分析チップの断面図が示されている。分析チップ860は、基板861を備えている。基板861は、ガラスに例示される透明な材質で形成されている。基板861には、流路862が設けられている。基板861の底面は銀紙864によって覆われている。基板861の上面は蓋863によって覆われている。蓋863は透明な材質でできている。
流路862の上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。流路862に光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
図26Aを参照すると、流路862の底面と側面とがなす隅角部と、他の側面の上端点とを結んで、斜めに補助線が描かれている。この補助線と基板861の表面に垂直な線とは角θをなしている。
こうした構成を備えた分析チップは、次のように使用される。
図26Aを参照すると、分析チップ860の使用者が流路862を見る視線と、基板861の表面に垂直な線とがなす角度がθで表されている。0<θ<θ(θは分析チップの形状及び材質により決まる値、今の場合θ≒θ)のとき、使用者には流路862の底面を通して銀紙864が見えるため、流路862が明るく見える。一方、θ>θのとき、使用者には流路862の壁面を通して遠方の基板861の底面、あるいは分析チップ860の側面が見えるため、流路862が暗く見える。なぜなら、基板861は屈折率が空気あるいは水よりも高いために、流路862の側面から基板861の内部に延長する光路は、壁面への入射角よりも小さい角度、すなわち基板861の底面に平行に近い角度に伸びるためである。
図26Bを参照すると、流路862が溶液に満たされているときの分析チップ860が示されている。分析チップ860の使用者が流路862を見る視線と、基板861の表面に垂直な線とがなす角度がθで表されている。0<θ<θのとき、使用者には流路862の底面を通して銀紙864が見えるため、流路862が明るく見える。溶液の屈折率は、水(屈折率1.333)に例示されるように空気よりも大きいことにより、θ>θである。すなわち、流路862が溶液で満たされている場合は、流路862が空気で満たされている場合と比較して、流路862の底面を通して銀紙864が見える角度範囲が広い。
図26Cを参照すると、流路862の一部分が溶液で満たされ、他の部分には溶液がないときの分析チップ860の上面図が示されている。使用者がθ<θ<θを満たす角度θから流路862を見るとき、溶液が満たされている部分865は流路862の底面を通して銀紙が見えるため明るく見え、溶液がない部分866はより暗く見える。明るい部分と暗い部分との境目を目盛り867により読取ることで、溶液が流路862のどの部分まで満たされているかを目視することができる。
目視がより容易にできるためには、θとθとの差がより大きいことが好ましい。従って、流路862の形状は、以下に示す方法によって、θとθとの差がより大きくなるように形成されていることが好ましい。
空気の屈折率をn、流路内の溶液の屈折率をnとするとき、次式で表されるスネルの法則が成り立つ。

したがって、θ(≒θ)とθとの差Δθは次式で表される。

Δθは、次式が成り立つとき最大値を取る。

Δθは、流路の溶液が入っている部分が明るく見え、溶液が入っていない部分が暗く見える角度の幅を示す。したがって、溶液の視認性を良くするためには、Δθがより大きくなるようにθが決められることが好ましい。特に、特定の溶液を分析対象とする分析チップにおいては、その溶液の屈折率nを用いて、Δθがより大きくなるようにθが決められることが好ましい。
例として、流路内の溶液が水(屈折率1.333)であるとき、n=1、n=1.333を代入すると、θ=48.6度のときΔθは最大値41.4度となる。従って、流路の断面において、底面の隅と反対側の壁面の上端とを結ぶ線が垂線となす角度が48.6度である矩形流路を設ければ、最も視認性よく、流路内の水(または屈折率が水に近い溶液)の有無が広い角度から視認できる。
このような分析チップによれば、溶液に視認を容易にするための色素を混入しなくても、流路に溶液が存在するか否か、あるいは溶液が流路のどの位置まで存在するのかを容易に視認することが可能である。このような分析チップ860によれば、反応液中に色素を混在させることが好ましくない場合でも、反応後の溶液に色素を混合する手間をかけることなく、溶液を視認することが容易にできる。
次に、本実施の形態の変形例について説明する。変形例における分析チップは、図26Aに示される分析チップ860の構成において、必ずしも銀紙864を必要としない。さらに、流路862の壁面が、屈折率が水と同程度か、それよりも小さい材料により形成されている。
こうした構成の分析チップは、次のように使用される。流路862が水よりも低い屈折率の材料で形成されている場合には、流路862に水溶液が満たされると、水が光ファイバーのコア、流路がクラッドに相当する屈折率の関係となり、流路862を観察する方向によっては流路の表面と水溶液との界面で全反射が起こる。そのため、水溶液のある流路部分が、無い部分に比べて明るく見える。
光が入射する側の材料の屈折率nが、出射側の材料の屈折率nよりも高い場合、出射側の屈折角θは、次式で表されるスネルの法則により、θが一定の角度よりも大きい場合には、90度を超える。

このような範囲のθにおいては、全反射が起こるため、流路862は明るく見える。
流路862の周囲が水と同等の屈折率の材料により形成されている場合には、溶液に屈折率上昇剤を混ぜることにより、上記と同じ効果が得られる。そのような屈折率上昇剤として、しょ糖、カルボキシセルロース、ポリビニルアルコールが例示される。
流路873を形成するために用いられる、屈折率が水と同程度か、それよりも小さい材料として、テフロン系樹脂が例示される。テフロン系樹脂は、光ファイバーのクラッドの材料として使われている。クラッドと、より屈折率が高いファイバーの中心部分(コア)との屈折率の差が大きいと、光損失が少なくなり好ましい。そのため、より屈折率の低いテフロン系樹脂の開発が進められている。現在、屈折率が1.38程度のものが開発されており、将来さらに低屈折率のものが開発される可能性が高い。
こうした分析チップによれば、反応液中に色素を混在させることが好ましくない場合でも、反応後の溶液に色素を混合する手間をかけることなく、溶液を視認することが容易にできる。
(実施の第11形態)
実施の第11形態における分析チップを側面から見た断面図が図27Aに示されている。分析チップ870は、基板871を備えている。基板871には流路873が設けられている。流路873は、基板871に垂直な方向の高さが、可視光線の波長の数波長分(10−6mのオーダー)である。流路873は透明な蓋872によって覆われている。流路873は、基板871に垂直な方向の高さが、流路873の延長方向に連続的に変化している。こうした流路873の高さの変化は、例えば蓋872を基板871に対して設置する際に、適当な厚み(数ミクロン)のスペーサを蓋872の一端に設置することにより実現される。
流路873の上には、拡大用のマイクロレンズが設置されていることが好ましい。流路873に光を当てる照明器具が設置されていることがさらに好ましい。
こうした構成を備えた分析チップ870は、次のように使用される。
使用者が流路873を蓋872の上から見ると、流路の底面と、流路の上部を覆う蓋872との間に挟まれた空間で光が干渉を起こす。そのため、図27Bに示されるように、使用者には干渉縞874が見える。例えば、流路の底面と流路の上部を覆う蓋872との間で光が強めあう部分874では明縞が生じ、光が弱めあう部分875では暗縞が生じる。
流路873の高さが流路873の延長方向に変化していることにより、干渉縞874が見える位置は、流路873に満たされている物質の屈折率に応じて変化する。例えば、より屈折率が高い溶液が流路873に満たされると、光の波長がわずかに短くなるため、干渉縞874の位置は、より流路873の高さが低い方、すなわち図の左方向に移動する。逆に、より屈折率が低い溶液が流路873に満たされると、光の波長がわずかに長くなるため、干渉縞874の位置は、より流路873の高さが高い方、すなわち図の右方向に移動する。
そのため、干渉縞874の位置を目盛り876によって読取ることにより、流路873に満たされている溶液の屈折率を目視により知ることができる。
このような分析チップ870によれば、生体高分子を含む溶液の濃度を目視により測定することが可能になる。生体高分子などを含む溶液は、濃度が高いほど屈折率が大きく、そのため、干渉縞874の位置から溶液の濃度を知ることが可能だからである。





【図6】





【図11】

【図12】



【図15】

【図16】








【図23】

【図24】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が設けられた基板と、
前記流路の一部に設けられ、前記流路に特定の物質が流れたとき外観の変化を起こす検出部と、
前記検出部を覆うレンズ
とを具備する
分析チップ。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記レンズと一体成形され、前記流路を覆う被覆部材
を具備する
分析チップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載された分析チップにおいて、
さらに、前記検出部に光を照射する第一の照明部材
を具備する
分析チップ。
【請求項4】
流路が設けられた基板と、
前記流路の一部に設けられ、特定の物質と接触すると外観が変化する検出部と、
前記検出部に光を照射する第一の照明部材
とを具備する
分析チップ。
【請求項5】
請求項3または4に記載された分析チップにおいて、
前記光は紫外線である
分析チップ。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載された分析チップにおいて、
前記基板は可視光線を透過する材料で形成され、
前記第一の照明部材は、前記光を前記基板の側面から照射する
分析チップ。
【請求項7】
請求項3から5のいずれかに記載された分析チップにおいて、
前記第一の照明部材は、前記流路の底面の側から前記光を照射する
分析チップ。
【請求項8】
請求項3から7のいずれかに記載された分析チップにおいて、
前記第一の照明部材は、光導波路である
分析チップ。
【請求項9】
請求項1から9のいずれかに記載された分析チップにおいて、
前記検出部は、前記特定の物質と化学反応することにより外観が変化する試薬を含む
分析チップ。
【請求項10】
請求項9に記載された分析チップにおいて、
前記試薬は、前記検出部において均一に分布している
分析チップ。
【請求項11】
請求項10に記載された分析チップにおいて、
さらに、前記検出部に沿って設けられたスケール
を具備する
分析チップ。
【請求項12】
流路が設けられた基板と、
前記流路の一部に設けられ、特定の物質と化学反応することにより外観が変化する試薬が均一に分布している検出部と、
前記検出部に沿って設けられたスケール
とを具備する
分析チップ。
【請求項13】
請求項9から12のいずれかに記載された分析チップにおいて、
前記試薬は、酵素、抗体、抗原および蛍光物質からなる群から選択される1種以上を含む
分析チップ。
【請求項14】
請求項1から13のうちのいずれかにおいて、
さらに、前記流路に設けられ、特定の成分と特異的に結合する標識物質が配置された反応部と、
前記流路の前記反応部より下流側に設けられ、前記特定の成分と結合した前記標識物質を捕捉する捕捉部
とを具備する
分析チップ。
【請求項15】
流路が設けられた基板と、
前記流路に設けられ、特定の成分と特異的に結合する標識物質が配置された反応部と、
前記流路の前記反応部より下流側に設けられ、前記特定の成分と結合した前記標識物質を捕捉する捕捉部
とを具備する
分析チップ。
【請求項16】
請求項14または15において、
前記流路のうち前記捕捉部が設けられた領域の流路の幅が、下流側に向かって次第に狭くなっている
分析チップ。
【請求項17】
請求項14から16のうちのいずれかにおいて、
前記捕捉部における前記標識物質の密度が、前記流路の下流側に向かって高くなっている
分析チップ。
【請求項18】
請求項1から17のうちのいずれか1項において、
前記検出部における前記流路は、下流側に向って次第に狭くなっており、
前記検出部における前記流路の壁面には、前記特定の物質を吸収すると体積が変化するヒドロゲル層が配置され、
前記外観の変化は、着色された前記特定の物質が前記流路に流れたとき、前記ヒドロゲル層の体積が変化することにより、前記特定の物質の量に応じて異なる位置において前記流路が閉塞されることによって生じる
分析チップ。
【請求項19】
請求項1から17のうちのいずれか1項において、
さらに、前記流路の中に配置され、前記特定の成分を吸収すると体積が変化するヒドロゲルによって表面が形成されたビーズ
を具備し、
前記検出部における前記流路は、下流側に向って次第に狭くなっており、
前記外観の変化は、前記流路に液体が流されるとき、前記ビーズが前記液体に押し流され、前記ビーズの体積に応じて前記流路の異なる位置で停止することによって生じる
分析チップ。
【請求項20】
下流側に向って次第に狭くなる流路が設けられた基板と、
前記流路の壁面に沿って配置され、特定の物質を吸収すると膨張することにより前記特定の物質の量に応じて異なる位置において前記流路を閉鎖するヒドロゲル層
とを具備する
分析チップ。
【請求項21】
下流側に向って次第に狭くなる流路が設けられた基板と、
所定の初期閉鎖位置において前記流路を閉鎖し、特定の物質を吸収すると収縮することにより前記流路を閉鎖する位置が前記初期閉鎖位置よりも下流側に移動するヒドロゲル層
とを具備する
分析チップ。
【請求項22】
下流側に向って次第に狭くなる流路が設けられた基板と、
前記流路の中に配置され、特定の成分を吸収すると体積が変化するヒドロゲルによって表面が形成されたビーズ
とを具備し、
前記流路に液体が流されるとき、前記ビーズは前記液体に押し流され、前記体積に応じて前記流路の異なる位置で停止する
分析チップ。
【請求項23】
請求項1から22のうちのいずれか1項において、
さらに、前記流路の内部に配置され、前記特定の物質と反応して粘度が変化するポリマー溶液と、
前記流路の内部に配置されたターゲットビーズと、
前記流路の内部の所定の位置に設けられ、所定の大きさよりも小さい力が前記ターゲットビーズにかけられたときに前記ターゲットビーズを前記所定の位置に保持する仮保持部
とを具備する
分析チップ。
【請求項24】
流路が設けられた基板と、
前記流路の内部に配置され、特定の物質と反応して粘度が変化するポリマー溶液と、
前記流路の内部に配置されたターゲットビーズと、
前記流路の内部の所定の位置に設けられ、所定の大きさよりも小さい力が前記ターゲットビーズにかけられたときに前記ターゲットビーズを前記所定の位置に保持する仮保持部と
を具備する
分析チップ。
【請求項25】
請求項23または24において、
前記ターゲットビーズは強磁性体を含む
分析チップ。
【請求項26】
請求項23から25のうちのいずれか1項において、
さらに、前記流路の端部に設けられた一対の電極と、
前記一対の電極の間に電位差を発生させる電池
とを具備し、
前記ターゲットビーズは、所定のpHの溶液中で表面が帯電する
分析チップ。
【請求項27】
請求項1から26のうちのいずれかにおいて、
前記流路は、
毛細管引力により溶液を保持する溶液保持部と、
毛細管引力により前記溶液保持部に溶液を導入する導入路
とを備える
分析チップ。
【請求項28】
請求項27において、
前記流路は複数であり、
複数の前記流路の各々が備える前記溶液保持部は、保持する溶液の量が異なる
分析チップ。
【請求項29】
流路が設けられた基板と、
前記流路に設けられ、毛細管引力により溶液を備える溶液保持部と、
毛細管引力により前記溶液保持部に溶液を導入する導入路と、
前記流路の一部に設けられ、前記流路に特定の物質が流れたとき外観の変化を起こす検出部
とを具備する
分析チップ。
【請求項30】
第1流路と第2流路とが設けられた基板と、
前記第1流路に設けられた第1溶液保持部と、
前記第2流路に設けられた第2溶液保持部
とを具備し、
前記第1溶液保持部は毛細管引力により第1所定量の溶液を保持し、
前記第2溶液保持部は毛細管引力により前記第1所定量と異なる第2所定量の溶液を保持する
分析チップ。
【請求項31】
請求項30において、
前記基板には、前記第1所定量と前記第2所定量とに対応する数値が表示されている
分析チップ。
【請求項32】
請求項1から31のうちのいずれかにおいて、
前記流路は前記基板の表面側に設けられた矩形の溝であり、
さらに、前記基板の底面に沿って配置され、可視光を反射する反射板
を具備する
分析チップ。
【請求項33】
請求項1から32のうちのいずれかにおいて、
前記流路の壁面は、屈折率が水の屈折率以下の材料によって覆われている
分析チップ。
【請求項34】
請求項1から33のいずれかにおいて、
さらに、前記流路を覆う透明な蓋
を具備し、
前記流路の底面と前記蓋との距離は前記流路の延長方向に連続的に変化し、
前記底面と前記蓋との間の光の反射により、前記蓋の外側に、前記流路に満たされる物質の屈折率に応じて位置が異なる干渉縞が表示される
分析チップ。
【請求項35】
流路が設けられた基板と、
前記流路を覆う透明な蓋
とを具備し、
前記流路の底面と前記蓋との距離は前記流路の延長方向に連続的に変化し、
前記底面と前記蓋との間の光の反射により、前記蓋の外側に、前記流路に満たされる物質の屈折率に応じて位置が異なる干渉縞が表示される
分析チップ。
【請求項36】
請求項1から35のいずれかに記載された分析チップと、
前記分析チップの側面から前記検出部に光を照射する第二の照明部材
とを具備する
分析装置。
【請求項37】
請求項36において、
前記第二の照明部材が照射する光は紫外線である
分析装置。
【請求項38】
請求項36または37に記載された分析装置において、
前記第二の照明部材は、前記検出部に光を集める集光レンズを備えている
分析装置。
【請求項39】
請求項36または37に記載された分析装置において、
前記第二の照明部材は、発光部材である
分析装置。
【請求項40】
請求項36に記載された分析装置において、
前記発光部材は、電球、LEDまたはブラックライトのいずれかである
分析装置。

【国際公開番号】WO2004/036194
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544731(P2004−544731)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009855
【国際出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】