説明

分析方法、分析装置および分析プログラム

【課題】単位時間あたりの検体処理数を高めることができる分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、磁性試薬を分注する前に金粒子51によるラマン散乱光Lfwを測光し、複合体53生成後に分析対象である抗原50と結合しなかった磁性粒子52と複合体53とを反応容器11から除去した状態で分析対象の抗原50と結合しなかった金粒子51によるラマン散乱光を測光し、磁性試薬分注前の測光値を磁性試薬分注後の金粒子51の濃度に対応するように補正した後、この補正値と反応後の測光値との差を演算することによって、複合体53そのものによるラマン散乱光を測定せずとも、複合体によるラマン散乱光の強度を取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、検体を分析する分析方法、分析装置および分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光分析は、検体にレーザ光を照射することにより発生するラマン散乱光を検出する分析法であり、検出対象物の分子構造に関する情報を得ることができるため、ウィルス、蛋白質等の生化学物質や環境化学物質の検出、バイオセンサ等に有効な分析方法として知られている。このラマン分光分析では、原子レベルの粗さを持つ金、銀などの金属表面における吸着種のラマン散乱強度が非吸着種に比較して10−10倍増強される場合があることが知られており、この現象は表面増強ラマン散乱(SERS)と呼ばれている。
【0003】
このようなSERS分光分析法を用いた分析装置として、分析対象の抗原と表面増強ラマン粒子とのいずれかと結合可能である抗体を設けた基板を用い、この抗体と表面増強ラマン粒子とが会合した場合のラマン散乱光の強度と、表面増強ラマン粒子と分析対象の抗原とが接触し表面増強ラマン散乱粒子の代わりに分析対象の抗原が抗体と会合した場合のラマン散乱光の強度との差を検出することによって、分析対象の抗原を検出する分析方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に記載された分析方法では、測定ごとに分析対象の抗原と会合可能である抗体を設けた複雑な構造の基板を用いる必要がある上に、各分析処理を各基板にそれぞれ対して同一の装置内で並行して実行するには非常に複雑な分析装置構成が必要となるという問題があった。
【0004】
これに対し、近年、金属ナノ粒子を凝集させることによって、非吸着種と比較してラマン散乱強度を1014倍程度まで増強させることができることが発見された。そこで、原子レベルの粗さを持つ金・銀などの金属ナノ粒子を標識物質として用い、これに加え、この標識物質と検出対象物との複合体を凝集させてラマン散乱強度を増強させることによって、検出対象物を分析する分析方法が注目されている。たとえば、標識物質である金属ナノ粒子を含む試薬に加えて、検体内の検出対象物と反応する磁性粒子を含んだ試薬をさらに検体内に注入する分析装置が提案されている(特許文献2参照)。この分析装置では、磁性粒子と、検出対象物と、標識物質との複合体を、反応容器外部から先端が尖形状を有する磁石を近接させることによって所定の大きさに凝集させ、生成した凝集体にレーザ光を照射し、表面増強されたラマン散乱光を測定することによって、複雑な装置構成を取ることなく検体内の検出対象物を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−526488号公報
【特許文献2】国際公開第2008/014223号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された分析装置では、複合体を凝集させるために先端が尖った磁石を用いることから反応容器に近接する磁石面積が小さくなるため、ラマン散乱光を検出できる大きさにまで複合体を凝集させるには長い時間が必要となり、分析処理全体の処理時間が長時間化してしまうという問題があった。また、特許文献2に記載された分析装置では、常に一定の形状の凝集体が形成されるのではなく、複合体の分散状態などに応じて複合体の凝集形状にばらつきが生じる。この結果、この凝集体へのレーザ光の照射状態にも凝集形状によって差が生じることから、測光器が測定するラマン散乱光の強度もばらついてしまい、高精度の分析を行うことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分析処理時間の短縮および分析精度の向上が可能である分析方法および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる分析方法は、検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析方法において、前記標識試薬および前記検体を反応容器内に分注する第1の分注ステップと、前記第1の分注ステップで前記標識試薬および前記検体が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光ステップと、前記磁性試薬を前記反応容器内に分注する第2の分注ステップと、前記反応容器内で前記磁性粒子、前記分析対象物および標識物質が特異的に結合した複合体を生成する反応を促進させる反応促進ステップと、磁界を発生する集磁棒を前記複合体が生成された反応容器内に挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁棒を前記反応容器外に移送することによって、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去ステップと、前記除去ステップで前記集磁棒を移送した後の前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光ステップと、前記第1の測光ステップにおける測光値を、前記第2の分注ステップ後の前記標識試薬の濃度に対応するように補正する補正ステップと、前記補正ステップにおいて補正された補正値と前記第2の測光ステップにおける測光値との差または比を演算することによって前記複合体の標識物質によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体の標識物質によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析方法は、検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析方法において、前記磁性試薬、前記標識試薬および前記検体を反応容器内に分注する分注ステップと、前記分注ステップで前記磁性試薬、前記標識試薬および前記検体が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光ステップと、前記反応容器内で前記磁性粒子、前記分析対象物および標識物質が特異的に結合した複合体を生成する反応を促進させる反応促進ステップと、磁界を発生する集磁棒を前記複合体が生成された反応容器内に挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁棒を前記反応容器外に移送することによって、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去ステップと、前記除去ステップで前記集磁棒を移送した後の前記反応容器内にレーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光ステップと、前記第1の測光ステップにおける測光値を、前記磁性粒子による前記レーザ光の遮蔽度に応じて補正する補正ステップと、前記補正ステップにおいて補正された補正値と前記第2の測光ステップにおける測光値との差または比を演算することによって前記複合体によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算ステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析方法は、前記第1の測光ステップは、前記反応促進ステップの前に行なわれることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析方法は、前記第1の測光ステップは、前記反応促進ステップの後に行われ、前記反応容器内の複合体と結合した標識物質および前記分析対象物と結合しなかった前記標識物質によるラマン散乱光を測定することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析装置において、前記反応容器内にレーザ光を照射して前記標識物質によるラマン散乱光を測定する測光手段と、前記反応容器内に挿入され磁界を発生する集磁部材を有し、該集磁部材を前記反応容器内または前記反応容器外に移送する集磁部材移送手段と、前記測光手段による測光値をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算手段と、を備え、前記集磁部材移送手段は、前記磁性粒子、前記標識物質および前記分析対象物が特異的に結合することによって複合体が生成された反応容器内に前記集磁棒を挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁部材を前記反応容器外に移送することによって、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去処理を行ない、前記測光手段は、前記検体および前記標識試薬が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光処理と、前記集磁部材移送手段による除去処理後の前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光処理とを行い、前記演算手段は、前記測光手段による前記第1の測光処理における測光値を、前記検体、前記磁性試薬および前記標識試薬が分注された後の前記標識試薬の濃度に対応するように補正した後に、該補正値と前記第2の測光処理における測光値との差または比を演算することによって前記複合体によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求めることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分析方法は、検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析装置において、前記反応容器内にレーザ光を照射して前記標識物質によるラマン散乱光を測定する測光手段と、前記反応容器内に挿入され磁界を発生する集磁部材を有し、該集磁部材を前記反応容器内または前記反応容器外に移送する集磁部材移送手段と、前記測光手段による測光値をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算手段と、を備え、前記集磁部材移送手段は、前記磁性粒子、前記標識物質および前記分析対象物が特異的に結合することによって複合体が生成された反応容器内に前記集磁棒を挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁部材を前記反応容器外に移送することによって、分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去処理を行ない、前記測光手段は、前記検体、前記磁性試薬および前記標識試薬が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光処理と、前記集磁部材移送手段による除去処理後の前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光処理とを行い、前記演算手段は、前記測光手段による前記第1の測光処理における測光値を、前記磁性粒子による前記レーザ光の遮蔽度に応じて補正した後に、該補正値と前記第2の測光処理における測光値との差または比を演算することによって前記複合体によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求めることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる分析方法は、上記いずれか一つに記載の分析方法を分析装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、磁性試薬を分注する前に標識物質によるラマン散乱光を測光し、複合体生成後に複合体と分析対象である抗原または抗体と結合しなかった磁性粒子とを反応容器から除去した状態で分析対象の抗原または抗体と結合しなかった標識物質によるラマン散乱光を測光し、磁性試薬分注前の測光値を磁性試薬分注後の標識試薬の濃度に対応するように補正した後、この補正値と反応後の測光値との差または比を演算することによって、複合体そのものによるラマン散乱光を測定せずとも、複合体によるラマン散乱光の強度を取得できるため、複合体を凝集させた凝集体を形成する必要がなく、分析処理時間の短縮および分析精度の向上が可能である。
【0016】
また、本発明は、磁性試薬、検体および標識試薬の分注後に標識物質によるラマン散乱光を測光し、複合体生成後に複合体と分析対象である抗原または抗体と結合しなかった磁性粒子とを反応容器から除去した状態で分析対象の抗原または抗体と結合しなかった標識物質によるラマン散乱光を測光し、磁性粒子除去前の測光値を磁性粒子によるレーザ光の遮蔽度に応じて補正した後、この補正値と反応後の測光値との差または比を演算することによって、複合体そのものによるラマン散乱光を測定せずとも、複合体によるラマン散乱光の強度を取得できるため、複合体を凝集させた凝集体を形成する必要がなく、分析処理時間の短縮および分析精度の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す集磁棒移送部および集磁棒洗浄部の概略を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す測光部の構成を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す分析装置1による分析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、図1に示す分析装置による分析処理を説明する図である。
【図6】図6は、図4に示す演算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、図1に示す分析装置において得られるラマンスペクトル図である。
【図8】図8は、従来の分析処理を説明する図である。
【図9】図9は、図4に示す演算処理の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施の形態2にかかる分析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、図10に示す分析処理を説明する図である。
【図12】図12は、図10に示す演算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、図10に示す分析処理にて得られるラマンスペクトル図である。
【図14】図14は、実施の形態2の変形例にかかる分析処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図15は、図14に示す分析処理を説明する図である。
【図16】図16は、図14に示す分析処理にて得られるラマンスペクトル図である。
【図17】図17は、図10に示す演算処理の他の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施の形態である分析装置について、血液、尿または唾液などの体液検体に対してSERS分光分析法を用いて分析を行なう分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0019】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる分析装置1は、標識物質が含まれた反応容器内にレーザ光を発し、標識物質による表面増強されたラマン散乱光を測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構4とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体に対する分析を自動的に行なう。
【0020】
測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して、反応テーブル10、検体移送部19、検体分注部20、磁性試薬庫21、磁性試薬分注部22、プローブ洗浄部23、標識試薬庫24、標識試薬分注部25、プローブ洗浄部26、攪拌部27および測光部30を備える。
【0021】
反応テーブル10は、反応容器11を恒温保持しながら、反応容器11への検体や試薬の分注、反応容器11の攪拌、測光、集磁を行うために反応容器11を所定の位置まで移送する。この反応テーブル10は、後述する制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル10の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。
【0022】
検体移送部19は、血液、尿または唾液等の液体検体を収容した複数の検体容器19aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック19bを備える。検体移送部19上の検体吸引位置に移送された検体容器19a内の検体は、検体分注部20によって、反応テーブル10上に配列して搬送される反応容器11に分注される。
【0023】
検体分注部20は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、検体の吸引および吐出を行う検体プローブが取り付けられている。検体分注部20は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注部20は、上述した検体移送部19上の所定位置に移送された検体容器19aの中から検体プローブによって検体を吸引し、アームを図中反時計回りに旋回させ、反応テーブル10上の反応容器11内に検体を吐出する。
【0024】
磁性試薬庫21は、磁性試薬が収容された磁性試薬ボトル21aを複数収納できる。標識試薬庫24は、標識試薬が収容された標識試薬ボトル24aを複数収納できる。この磁性試薬ボトル21a内の磁性試薬、および、標識試薬ボトル24a内の標識試薬は、反応テーブル10の反応容器11内にそれぞれ分注される。磁性試薬庫21および標識試薬庫24は、図示しない駆動機構が駆動することによって、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬ボトルを磁性試薬分注部22または標識試薬分注部25による試薬吸引位置まで移送する。ここで、検体内の分析対象物は、たとえば、抗体、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、細菌、DNA、RNA、細胞、ウィルスに加え、任意の抗原物質、ハプテン、抗体およびこれらの組み合わせなどがある。磁性試薬は、分析対象である検体内の分析対象物と結合する抗原または抗体を固相した磁性粒子を含む試薬である。この磁性粒子は、磁界が及ぶ領域に位置する場合には、この磁界において磁力を有し、磁界発生源に引き寄せられる。標識試薬は、検体内の分析対象物と結合する標識物質を含む試薬である。標識物質は、原子レベルの表面粗さを持つ金、銀、銅または白金などの金属を含むナノ粒子であり、この粒子の表面には、分析対象物と結合可能である抗原または抗体がコーティングされている。この標識物質は、標識物質単体、あるいは、分析対象物と結合した複合体の状態であっても、レーザ光を照射された場合には、表面増強されたラマン散乱光を発する。以後の説明では、標識物質として金粒子を用いた場合を例に説明する。
【0025】
磁性試薬分注部22は、磁性試薬の吸引および吐出を行なう試薬プローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。磁性試薬分注部22は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。磁性試薬分注部22は、磁性試薬庫21によって所定位置に移動された磁性試薬ボトル21a内の試薬を、試薬プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル10によって磁性試薬吐出位置に搬送された反応容器11に分注する。標識試薬分注部25は、磁性試薬分注部22と同様の構成を有し、標識試薬庫24によって所定位置に移動された標識試薬ボトル24a内の試薬を、試薬プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル10によって標識試薬吐出位置に搬送された反応容器11に分注する。
【0026】
プローブ洗浄部23,26は、磁性試薬分注部22の試薬プローブの軌跡上、標識試薬分注部25の試薬プローブの軌跡上にそれぞれ配置され、試薬プローブの内側と外側との洗浄を行う。試薬分注が終了した試薬プローブは、プローブ洗浄部23,26によって洗浄された後、次の試薬の分注処理を行なう。
【0027】
攪拌部27は、反応容器11に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。反応容器11内に分注された検体、磁性試薬および標識試薬に含まれる磁性粒子、分析対象の抗体または抗原および標識物質は、攪拌部27によって攪拌されることによって反応が促進され、所定の反応時間を経過することによって、検体に含まれる分析対象物と磁性粒子と標識物質とが結合して複合体を生成する。この複合体は、磁性粒子を有する。また、この複合体は、標識物質を有するため、レーザ光が照射された場合には、この標識物質による表面増強されたラマン散乱光を発する。
【0028】
集磁棒移送部28は、図1および図2に示すように、磁界の発生が可能である集磁棒28aが先端部に取り付けられ昇降および回転を自在に行なうアーム28bを有する。集磁棒移送部28は、検体および試薬を収容し反応テーブル10の所定の集磁位置に位置する反応容器11の内部、または、後述する集磁棒洗浄部29による洗浄位置に集磁棒28aを移送する。具体的には、集磁棒移送部28は、所定の軌跡L2にしたがって、反応テーブル10に移送される反応容器11であって軌跡L1上の所定の集磁位置に位置する反応容器11の内部、または、集磁棒洗浄部29の洗浄槽29a内部に、集磁棒28aを移送する。
【0029】
集磁棒移送部28は、図2に示すように、アーム28bの他端に接続し、このアーム28bの他端を通過する鉛直線が中心軸である支柱28cを有する。そして、集磁棒移送部28は、この支柱28cを回転させる回転機構28dと支柱28cを昇降させる昇降機構28eとを有する。
【0030】
回転機構28dは、プーリ282dに接続するとともに装置本体の不動部分に固定された回転用モータ281dと、支柱28cに一体となって設けられたプーリ284dと、プーリ282dおよびプーリ284dに掛け渡された回転用ベルト283dとを備える。回転用モータ281dが時計回りまたは反時計回りに対応する向きで回転した場合、回転用モータ281dの回転がプーリ282d、回転用ベルト283d、プーリ284dに順次伝達することによって支柱28cが中心軸の周りを時計回りまたは反時計回りに回転する。この支柱28cの回転によって、支柱28cが接続するアーム28bが矢印Y5のように軌跡L2に沿って回転する。
【0031】
昇降機構28eは、プーリ282eに接続するとともに分析装置1内部の不動部分に固定された昇降用モータ281eと、支柱28c下端に一体となって設けられた昇降板286eと、支柱28cと平行となるように分析装置1内部の不動部分に固定され下端にプーリ284eが設けられたネジ軸285eと、プーリ282eおよびプーリ284eに掛け渡された昇降用ベルト283eとを備える。ネジ軸285eは、昇降板286e内を貫通しており、昇降板286eとネジ軸285eとは、たとえばボールねじ機構を構成している。昇降用モータ281eが上昇方向または下降方向に対応する向きで回転した場合、昇降用モータ281eの回転がプーリ282e、昇降用ベルト283e、プーリ284eに順次伝達することによってネジ軸285eが回転し、このネジ軸285eの回転にともない昇降板286eが上昇または下降することによって、支柱28cが上昇または下降する。この支柱28cの昇降によって、支柱28cが接続するアーム28bも矢印Y6のように昇降する。
【0032】
集磁棒移送部28は、検体、磁性試薬および標識試薬が分注され、複合体が生成された反応容器11内に集磁棒28aを挿入する。反応容器11内に挿入された集磁棒28aは、反応容器11内に磁界を発生することによって、集磁棒28a表面に反応容器11内の磁性粒子、複合体における磁性粒子を吸着して集磁する。その後、集磁棒移送部28は、アーム28bを上昇させ、さらにアーム28bを回転させて、集磁棒28aを反応容器11に移送することによって、反応容器11内の磁性粒子、複合体を反応容器11外に除去する。次いで、集磁棒移送部28は、後述する集磁棒洗浄部29における洗浄槽29a上に集磁棒28aを移送した後、アーム28bを下降することによって洗浄槽29a内に集磁棒28aを挿入する。これによって、集磁棒28aは、洗浄槽29a内で洗浄される。
【0033】
集磁棒洗浄部29は、図2に示すように、洗浄槽29aと、洗浄槽29a側面に接続され、洗浄液タンクと接続し洗浄液を供給する洗浄液供給管29bと、洗浄槽29a底面に接続され、排液タンクと接続し洗浄液等を排出する排液管29cとを有し、集磁棒28aを洗浄する。
【0034】
測光部30は、反応容器11内にレーザ光を照射して、反応容器11内の標識物質である金または銀粒子からの表面増強されたラマン散乱光を測定する。測光部30は、たとえば図3に示すように、レーザ光源30a、ラマン分光計30bおよびレンズ30d,30e,30f,30gを備え、反応容器11側面に対し斜め方向からレーザ光を入射する構成を有する。レーザ光源30aから照射されたレーザ光Liは、レンズ30dによって平行光に揃えられた後、レンズ30eによって集光されて、反応容器11の側面に対し斜め方向から反応容器11内に入射する。このレーザ光Liは、反応容器11内の照射領域S1に位置する金粒子51に照射する。これによって、金粒子51表面で増強されたラマン散乱光Lfは、レンズ30fによって平行光に揃えられ、レンズ30gで集光された後、ラマン分光計30bに入射する。ラマン分光計30bの測定結果は、制御部41に出力され、分析部43は、この測定結果をもとに検体を分析する。
【0035】
なお、分析処理が終了した反応容器11は、分析処理ごとに図示しない廃棄機構によって廃棄される。また、分析装置1は、図示しない容器洗浄機構を設けて、分析処理が終了した反応容器11を洗浄した後、再度分析処理に使用してもよい。この場合、容器洗浄機構は、ノズルによって、反応容器11内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで反応容器11を洗浄する。
【0036】
次に、制御機構4について説明する。制御機構4は、制御部41、入力部42、分析部43、記憶部44および出力部45を備える。測定機構2および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
【0037】
制御部41は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。入力部42は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部43は、測光部30から取得したラマン分光測光値に基づいて検体の分析を行う。記憶部44は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部44は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体から情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部45は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。出力部45は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報を外部装置に出力してもよい。
【0038】
以上の構成を有する分析装置1においては、検体に含まれる分析対象物と磁性粒子と標識物質との複合体そのものによるラマン散乱光の強度を測定するのではない。分析装置1では、磁性試薬の分注前に、分注された標識物質の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定し、さらに、磁性試薬を分注し、反応促進処理によって複合体を生成した後に、この複合体および抗原と結合しなかった磁性粒子を除去した状態で、分析対象物と結合しなかった標識物質のラマン散乱光の強度を測定している。そして、分析装置1では、磁性粒子分注前の標識物質によるラマン散乱光の強度を磁性試薬分注後の標識試薬濃度に対応するように補正した後に、補正したラマン散乱光の強度と、磁性体除去後における分析対象物と結合しなかった標識物質によるラマン散乱光との差分値を求めることによって、間接的に複合体そのもののラマン散乱光の強度を取得し、この差分値をもとに検体中の分析対象物濃度を検出している。
【0039】
そこで、図4および図5を参照し、分析装置1の分析処理について詳細に説明する。図4は、図1に示す分析装置1による分析処理の処理手順を示すフローチャートであり、図5は、図1に示す分析装置1による分析処理を説明する図である。
【0040】
分析装置1では分析処理の開始が指示されることによって、図4および図5(1)に示すように、標識試薬分注部25は、標識試薬庫24によって予定位置に移動された標識試薬ボトル24a内から、分析対象の抗原50と結合可能である金粒子51を含む標識試薬を、反応テーブル10の標識試薬分注位置に位置する反応容器11内に分注する標識試薬分注処理を行なう(ステップS1)。そして、図5(2)に示すように、検体分注部20は、検体容器19a内から分析対象の検体を、標識試薬が分注された反応容器11内に分注する(ステップS2)。検体内には、分析対象である抗原50が含まれるほか、抗原50以外の夾雑物55も含まれており、検体分注処理においては、この夾雑物55も抗原50と一緒に反応容器11内に分注される。その後、反応テーブル10は、標識試薬および検体が分注された反応容器11を攪拌部27による攪拌位置に移送し、攪拌部27は、この反応容器11内の液体を攪拌する攪拌処理を行なう(ステップS3)。
【0041】
攪拌処理終了後、反応テーブル10は、この抗原50、夾雑物55、および、抗原50と結合する前の金粒子51のみが含まれる反応容器11を測光部30の測光位置に移送する。
【0042】
続いて、図5(3)に示すように、測光部30においては、レーザ光源30aが反応容器11内にレーザ光Liを照射し、ラマン分光計30bは、分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光Lfwの強度を測光する磁性粒子分注前測光処理(ステップS4)が行われる。この磁性粒子分注前測光処理では、検体と標識試薬のみが分注された反応容器11に対して測光処理を行なう。このため、磁性粒子分注前測光処理においては、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された液体Wuの容積(図5(7)参照。)よりも小さい容積の液体Wb(図5(3)参照。)内に分散する金粒子51のラマン散乱光を測光する。言い換えると、磁性粒子分注前測光処理においては、検体、標識試薬および磁性試薬の全ての液体が分注された場合における金粒子51の濃度よりも、高い濃度の金粒子51によるラマン散乱光を測定することとなる。なお、図5(3)では、測光部30における集光機構の図示を省略する。
【0043】
次に、図5(4)に示すように、磁性試薬分注部22は、磁性試薬庫21によって所定位置に移送された磁性試薬ボトル21a内から磁性粒子52を含む磁性試薬を、反応テーブル10の磁性試薬分注位置に位置する反応容器11内に分注する磁性試薬分注処理を行なう(ステップS5)。そして、攪拌部27は、この反応容器11に対して再度攪拌処理を行ない(ステップS6)、反応を促進させる。その後、分析装置1は、所定の時間、反応容器内で金粒子51、抗原50および磁性粒子52を特異的に結合させる抗原抗体反応を促進させる反応促進処理を行い(ステップS7)、図5(5)に示すように、反応容器11内に、磁性粒子52、抗原50および金粒子51が特異的に結合した複合体53を生成する。そして、集磁棒移送部28は、この反応容器11から、磁性粒子52および複合体53の磁性粒子を除去する磁性体除去処理を行なう(ステップS8)。具体的には、集磁棒移送部28は、磁性粒子52、抗原50、夾雑物55、金粒子51および複合体53が分散する反応容器11内部に、図5(5)の矢印Y10に示すように集磁棒28aを挿入する。そして、図5(6)に示すように、集磁棒28aによる反応容器11内に発生した磁界によって、集磁棒28a表面に磁性粒子52および複合体53の磁性粒子が引き寄せられて吸着する。このように集磁棒28a表面に磁性粒子52および複合体53の磁性粒子を集磁した状態で、集磁棒移送部28は、図5(6)の矢印Y11に示すように、集磁棒28aを引き上げ、この集磁棒28aを反応容器11外に移送する。この結果、図5(7)に示すように、この反応容器11内には、夾雑物55、および分析対象物である抗原50と結合しなかった金粒子51のみが含まれることとなる。なお、この磁性体除去処理では、反応容器11の液体内に直接集磁棒28aを挿入して磁性粒子52の集磁を行うため、効率的な集磁処理が可能となり、集磁棒28aによる集磁時間は約10秒程度の短時間で足りる。
【0044】
次いで、反応テーブル10は、磁性体除去処理が終了した反応容器11であって夾雑物55、および、分析対象物である抗原50と結合しなかった金粒子51のみが含まれる反応容器11を測光部30の測光位置に移送する。図5(7)に示すように、測光部30においては、磁性粒子分注前測光処理と同様に、レーザ光源30aが反応容器11内にレーザ光Liを照射し、ラマン分光計30bは、抗原50と結合しなかった金粒子51によるラマン散乱光Lfuの強度を測光する反応後測光処理(ステップS9)が行われる。この磁性体除去後測光処理においては、複合体53および磁性粒子52が反応容器11外に除去されている。このため、磁性体除去後測光処理においては、反応容器11内の照射領域内に夾雑物55、および、抗原50と結合しなかった金粒子51のみが存在する状態で、抗原50と結合しなかった金粒子51に相当するラマン散乱光を正確に測定できる。なお、図5(7)では、測光部30における集光機構の図示を省略する。
【0045】
そして、分析部43は、磁性粒子分注前測光処理(ステップS4)における測光値と、磁性体除去後測光処理における測光値をもとに、分析対象の抗原50の検体における濃度を求める演算処理を行なう(ステップS10)。その後、出力部45が、分析部43が求めた抗原50の濃度を出力する出力処理を行なう(ステップS11)。その後、分析装置1における分析処理を終了する。なお、制御部41は、分析部43が求めた抗原50の濃度を記憶部44に記憶させてもよい。
【0046】
次に、図4に示す演算処理について、図6を参照して説明する。図6は、図4に示す演算処理の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、分析部43は、磁性粒子分注前測光処理における磁性粒子分注前測光値を取得する(ステップS20)。
【0047】
ここで、ラマン分光計30bでラマン散乱光を測定することによって、測定結果として、図7に示すような縦軸にラマン散乱強度、横軸にラマンシフトをとるラマンスペクトルを得ることができる。この図7に示す曲線Lwは、磁性粒子分注前測光処理において得られたラマンスペクトルである。この磁性粒子分注前測光処理における測光値は、前述したように、反応容器11内に分注された金粒子51全量のラマン散乱光の強度に相当する。そして、前述したように、この磁性粒子分注前測光処理では、検体と標識試薬のみが分注された反応容器11に対して測光処理を行なうため、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された液体Wu(図5(7)参照。)の容積よりも小さい容積の液体Wb(図5(3)参照。)内に分散する金粒子51のラマン散乱光を測光する。言い換えると、磁性粒子分注前測光処理においては、反応容器11内の金粒子51の濃度は、検体、標識試薬および磁性試薬の全ての液体が分注された場合における金粒子51の濃度よりも高くなる。ラマン散乱光は、散乱源となる金粒子51が多く分散するほど強度が大きくなることから、磁性粒子分注前測光値は、実際に検体、標識試薬および磁性試薬の全ての液体が分注された場合におけるラマン散乱光の強度よりも高くなっている。
【0048】
したがって、分析部43は、磁性粒子分注前測光値を、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合における金粒子51の濃度に対応するように補正する補正処理を行なう(ステップS21)。具体的には、予め、各濃度で金粒子51を含む反応容器11それぞれに対しラマン散乱光の強度を測定し、金粒子51の濃度とラマン散乱光の強度との関係を求め、この関係をたとえば記憶部44に記憶させておく。そして、分析部43は、この関係をもとに得られる補正式と、検体と標識試薬のみが分注された磁性粒子分注前測光処理時の金粒子51の濃度と、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合における金粒子51の濃度とを用いて、磁性粒子分注前測光値を分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合における金粒子51の濃度に対応する値に補正する。この結果、図7の磁性粒子分注前測光処理において得られたラマンスペクトルである曲線Lwは、矢印のように、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合における金粒子51の濃度に対応するラマンスペクトルとして曲線Lwcに補正される。この曲線Lwから曲線Lwcへの補正として、磁性粒子分注前のボリュームをVa、磁性粒子の分注量をVbとして、シグナルにVa/(Va+Vb)を乗じる補正をする。そして、分析部43は、曲線Lwcにおける最大強度値から基底値を減算した値Iwcを、磁性粒子分注前測光値の補正値として取得する。
【0049】
次いで、分析部43は、磁性体除去後測光処理における磁性体除去後測光値を取得する(ステップS22)。図7に示す曲線Luは、磁性体除去後測光処理において得られたラマンスペクトルである。分析部43は、曲線Luにおける最大強度値から基底値を減算した値Iuを磁性体除去後測光値として取得する。
【0050】
分析部43は、補正処理において演算した補正値と、磁性体除去後測光値との差分値を演算する(ステップS24)。この補正処理において演算した補正値は、前述したように、反応容器11内に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度であって、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合における金粒子51の濃度に対応する。また、磁性体除去後測光値は、前述したように、複合体53および磁性粒子52が反応容器11外に除去された後のラマン散乱光の強度であり、抗原50と結合しなかった金粒子51に相当する。これらの各値は、いずれも分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合の容積に対応する値となっている。このため、補正処理において演算した補正値と磁性体除去後測光値との差分値は、磁性体除去処理において反応容器11外から除去された、抗原50と結合し複合体53を構成する金粒子51によるラマン散乱光の強度に相当する。分析装置1においては、分析部43が補正処理において演算した補正値と磁性体除去後測光値との差分値を演算することによって、複合体53によるラマン散乱光の強度を間接的に取得している。
【0051】
そして、分析部43は、複合体53によるラマン散乱光の強度に相当する差分値をもとに、この差分値に対応した分析値を演算して(ステップS26)、制御部41に演算結果を出力し、演算処理を終了する。
【0052】
このように、分析装置1においては、検体に含まれる分析対象物と磁性粒子と標識物質との複合体そのものによるラマン散乱光の強度を測定するのではなく、磁性粒子分注前の標識物質によるラマン散乱光の強度を測定し、該測定値を磁性試薬分注後の標識試薬濃度に対応するように補正した後に、補正したラマン散乱光の強度と、磁性体除去後における分析対象物と結合しなかった標識物質によるラマン散乱光との差分値を求めることによって、間接的に複合体そのもののラマン散乱光の強度を取得している。
【0053】
ここで、従来の分析処理について説明する。従来では、図8(1)〜図8(3)に示すように、磁性粒子52、抗原50および夾雑物55を含む検体、および、金粒子51をそれぞれ分注した後、図8(4)に示すように、これらを反応させて、複合体53を形成する。次いで、従来では、図8(5)に示すように、先端が尖った永久磁石130cを反応容器11底面に近接させて複合体53を凝集させた凝集体54を反応容器11底面に形成する。そして、図8(6)に示すように、この凝集体54にレーザ光源130aからのレーザ光Li0を照射し、凝集体54による表面増強されたラマン散乱光Lf0をラマン分光計130bが測定していた。
【0054】
このような従来の分析処理では、常に一定の形状の凝集体が形成されるのではなく、複合体53の分散状態などに応じて凝集体54の形および大きさにばらつきが生じる。この凝集体54の形状ばらつきの結果、この凝集体54へのレーザ光Li0の照射にも差が生じることから、測光器が測定するラマン散乱光Lf0の強度もばらついてしまい、高精度の分析を行うことができないという問題があった。
【0055】
これに対し、本実施の形態1にかかる分析装置1は、従来のように凝集形状にばらつきが生じる凝集体54からのラマン散乱光、すなわち、複合体53そのものによるラマン散乱光を測定していない。分析装置1では、磁性試薬を分注する前に、反応容器11内に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定し、さらに、反応促進処理による複合体生成後であって複合体53および分析対象物と結合しなかった磁性粒子52を除去した状態で、分析対象物と結合しなかった金粒子51のラマン散乱光の強度を測定している。すなわち、分析装置1は、金粒子51の10倍以上の直径を有する上にレーザ光Liを吸収する性質も有する磁性粒子52が存在しておらず、検体由来の夾雑物55と測定対象となる金粒子51のみが分散する状態で、測定対象となる金粒子51によるラマン散乱光を測定する。言い換えると、分析装置1は、金粒子51へのレーザ光の到達が磁性粒子52阻害されることない状態で、分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光と、分析対象物と結合しなかった金粒子51のラマン散乱光とを測定することができる。このため、分析装置1では、分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度と、分析対象物と結合しなかった金粒子51のラマン散乱光の強度とを正確に取得することができる。
【0056】
さらに、分析部43は、磁性粒子分注前の金粒子51によるラマン散乱光の強度である磁性粒子分注前測光値を、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合における金粒子51の濃度に対応するように補正している。言い換えると、分析部43は、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された状態で測定される磁性体除去後測光値に合わせて、磁性粒子分注前測光値を、分注対象である検体、標識試薬および磁性試薬の全てが分注された場合の容積に対応する値に補正している。すなわち、分析部43は、補正処理を行なうことによって、磁性体除去後測光値との容積差のない金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を正しく取得している。
【0057】
分析装置1は、この補正値と、分析対象物と未結合の標識物質によるラマン散乱光の強度との差分値を求めることによって、間接的に複合体のラマン散乱光の強度を取得し、この差分値をもとに検体中の分析対象物濃度を検出している。したがって、分析装置1は、反応容器11に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度と、分析対象物と未結合の標識物質によるラマン散乱光の強度とを正確に取得することができるため、複合体そのもののラマン散乱光の強度についても正確な値を取得することができる。この結果、分析装置1は、複合体53そのもののラマン散乱光の正確な強度を演算処理によって取得することができるため、従来と比較し、分析精度を向上させることができる。
【0058】
また、従来の分析方法では、図8(5)に示すように、複合体53を凝集させるために先端が尖った永久磁石130cを用いることから反応容器11に近接する磁石面積が小さくなるため、ラマン散乱光を検出できる大きさにまで複合体53を凝集させるには長い時間が必要となり、分析処理全体の処理時間が長時間化してしまうという問題があった。具体的には、従来の分析処理では、複合体53形成のための反応時間として、約40分の時間が必要であるうえに、凝集体54を形成する集磁処理に約2分もの処理時間が必要であった。したがって、従来の分析装置においては、単位時間あたりの検体処理数を高めることに限界があり、分析処理の処理能力を向上させることができなかった。
【0059】
これに対し、分析装置1では、複合体53そのもののラマン散乱光を測定しているわけではなく、複合体53および分析対象と結合しなかった磁性粒子52を除去した後の反応容器11に対して磁性体除去後測光処理を行なっている。このため、分析装置1においては、集磁形状に関係なく磁性粒子52、複合体53の磁性粒子を反応容器11外に除去できれば足りることから、反応容器11の液体内に直接集磁棒28aを挿入して磁性粒子52の集磁を行うことが可能になる。この結果、分析装置1では、反応容器11の液体内に直接集磁棒28aを挿入するため、反応容器11内の磁性粒子52、複合体53の磁性粒子52を効率よく集磁し、反応容器11外に除去することができる。実際に、分析装置1が行う磁性体除去処理における集磁時間は、前述したように約10秒程度の短時間で足りる。したがって、分析装置1では、従来よりも確実に分析処理全体の処理時間を短縮が可能になり、単位時間あたりの検体処理数を高めて分析処理の処理能力を向上させることができる。もちろん、分析装置1は、図1に示すように、複雑な装置構成を取らずとも、複数の反応容器11に対して複数の各分析処理を同一の装置内で並行して実行可能であるため、各処理を停滞させることなく速やかに進めることができる。
【0060】
なお、本実施の形態1では、図2に示した構成を有する測光部30を例として説明したが、もちろん図2に示す構成に限らない。測光部30は、たとえば、反応容器11底面に対し斜め方向からレーザ光を入射する構成であってもよい。
【0061】
また、実施の形態1では、分析部43は、磁性粒子分注前測光値の補正値と磁性体除去後測光値との差分値を演算することによって、複合体の標識物質のラマン散乱光の強度を取得したが、磁性粒子分注前測光値の補正値と磁性体除去後測光値との比を演算することによって、複合体53の標識物質のラマン散乱光の相対強度を取得して、検体中の分析対象物濃度を検出してもよい。この場合、図9のフローチャートに示すように、分析部43は、図6に示すステップS20〜ステップS23と同様に、磁性粒子分注前測光値を取得し(ステップS120)、この磁性粒子分注前測光値に対する補正処理を行ない(ステップS121)、磁性体除去後測光処理における磁性体除去後測光値を取得する(ステップS122)。そして、分析部43は、補正処理において演算した補正値と、磁性体除去後測光値との比を演算し(ステップS124)、この演算した比に対する分析値を演算して(ステップS126)、制御部41に演算結果を出力し、演算処理を終了する。この演算した比は、反応容器11内に分注された標識試薬の濃度に対する複合体53の標識物質のラマン散乱光の相対強度に相当し、分析部43は、反応容器11内に分注された標識試薬の濃度と、演算した比の値とをもとに、検体における分析対象の抗原または抗体の濃度を演算する。
【0062】
また、本実施の形態1においては、予め、磁性粒子分注前測光処理に対応させて、標識試薬の反応容器11内における濃度を変えた測光処理をそれぞれ行ない、各標識試薬の濃度に対する各磁性粒子分注前測光値を取得し、標識試薬の濃度と磁性粒子分注前測光値との関係を示す検量線を作成することによって、磁性粒子分注前測光処理を省略することも可能である。この場合、分析部43は、磁性粒子分注前測光値として、検量線から標識試薬の反応容器11内における濃度に対応する測光値を取得して演算処理を行なえばよい。
【0063】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1では、反応容器11内に分注された標識物質全量のラマン散乱光の測定を、検体および標識試薬が分注された後であって磁性試薬分注前のタイミングで測定したが、実施の形態2では、検体、標識試薬および磁性試薬が全て反応容器内に分注された後であって複合体が生成された後のタイミングで測定する場合について説明する。なお、本実施の形態2にかかる分析装置は、図1に示す分析装置1と同じ構成を有する。
【0064】
図10および図11を参照し、本実施の形態2にかかる分析装置の分析処理について詳細に説明する。図10は、実施の形態2にかかる分析装置による分析処理の処理手順を示すフローチャートであり、図11は、実施の形態2にかかる分析装置による分析処理を説明する図である。
【0065】
本実施の形態2にかかる分析装置では、分析処理の開始が指示されることによって、図10および図11(1)の矢印Y21〜Y23に示すように、磁性試薬分注部22が反応容器11内に磁性粒子52を含む磁性試薬を分注する磁性試薬分注処理(ステップS201)と、検体分注部20が反応前測光処理用の反応容器11内に抗原50および夾雑物55を含む検体を分注する検体分注処理(ステップS202)と、標識試薬分注部25が反応前測光処理用の反応容器11内に金粒子51を含む標識試薬を分注する標識試薬分注処理(ステップS203)とを行う。そして、攪拌部27は、磁性試薬、検体および標識試薬が分注されたこの反応容器11内の液体を攪拌する攪拌処理を行ない(ステップS204)、反応を促進させる。その後、所定の時間、反応容器内で金粒子51、抗原50および磁性粒子52を特異的に結合させる抗原抗体反応を行う反応が促進される反応促進処理が行われ(ステップS205)、図11(2)に示すように、反応容器11内には、磁性粒子52、抗原50および金粒子51が特異的に結合した複合体53が生成される。
【0066】
そして、攪拌部27が反応容器11内を攪拌する攪拌処理(ステップS206)を行なった後、反応テーブル10は、反応促進処理が終了した反応容器11を測光部30の測光位置に移送する。そして、図11(3)に示すように、測光部30においては、レーザ光源30aが反応容器11内にレーザ光Liを照射し、ラマン分光計30bは、反応容器11内の金粒子51および複合体53に結合する金粒子によるラマン散乱光Lfw2の強度を測光する磁性体除去前測光処理(ステップS207)が行われる。この磁性体除去前測光処理では、複合体53と、分析対象である抗原50と結合しなかった金粒子51と、分析対象である抗原50と結合しなかった磁性粒子52と、検体由来の夾雑物55が混在した状態で測光処理を行なう。このため、磁性体除去前測光処理においては、反応容器11に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定することとなる。なお、図11(3)では、測光部30における集光機構の図示を省略する。
【0067】
次に、集磁棒移送部28は、この反応容器11から、磁性粒子52および複合体53の磁性粒子を除去する磁性体除去処理を行なう(ステップS208)。具体的には、集磁棒移送部28は、磁性粒子52、抗原50、夾雑物55、金粒子51および複合体53が分散する反応容器11内部に、図11(4)に示すように集磁棒28aを挿入する。そして、図11(4)に示すように、集磁棒28aによる反応容器11内に発生した磁界によって、集磁棒28a表面に磁性粒子52および複合体53の磁性粒子が引き寄せられて吸着する。このように集磁棒28a表面に磁性粒子52および複合体53の磁性粒子を集磁した状態で、集磁棒移送部28は、図11(6)の矢印Y26に示すように、集磁棒28aを引き上げ、この集磁棒28aを反応容器11外に移送する。この結果、図11(5)に示すように、この反応容器11内には、夾雑物55、および、分析対象物である抗原50と結合しなかった金粒子51のみが含まれることとなる。なお、この磁性体除去処理では、反応容器11の液体内に直接集磁棒28aを挿入して磁性粒子52の集磁を行うため、効率的な集磁処理が可能となり、集磁棒28aによる集磁時間は約10秒程度の短時間で足りる。
【0068】
次いで、反応テーブル10は、磁性体除去処理が終了した反応容器11であって夾雑物55、および、分析対象物である抗原50と結合しなかった金粒子51のみが含まれる反応容器11を測光部30の測光位置に移送する。そして、図11(5)に示すように、測光部30においては、磁性粒子分注前測光処理と同様に、レーザ光源30aが反応容器11内にレーザ光Liを照射し、ラマン分光計30bは、抗原50と結合しなかった金粒子51によるラマン散乱光Lfu2の強度を測光する反応後測光処理(ステップS209)が行われる。この磁性体除去後測光処理においては、複合体53および磁性粒子52が反応容器11外に除去されているため、反応容器11内の照射領域内に夾雑物55と、抗原50と結合しなかった金粒子51のみが存在する状態で、抗原50と結合しなかった金粒子51に相当するラマン散乱光を正確に測定できる。なお、図11(5)では、測光部30における集光機構の図示を省略する。
【0069】
そして、分析部43は、磁性体除去前測光処理(ステップS207)における測光値と、磁性体除去後測光処理(ステップS209)における測光値をもとに、分析対象の抗原50の検体における濃度を求める演算処理を行なう(ステップS210)。その後、出力部45が、分析部43が求めた抗原50の濃度を出力する出力処理を行ない(ステップS211)、分析処理を終了する。
【0070】
次に、図10に示す演算処理について、図12を参照して説明する。図12は、図10に示す演算処理の処理手順を示すフローチャートである。図12に示すように、分析部43は、まず、磁性体除去前測光処理における磁性体除去前測光値を取得する(ステップS220)。
【0071】
磁性体除去前測光処理において、たとえば図13の曲線Lw2に示すラマンスペクトルを得ることができる。この磁性体除去前測光処理における測光値は、前述したように、反応容器11内に分注された金粒子51全量のラマン散乱光の強度に相当し、反応促進処理によって生成した複合体53と、分析対象である抗原50と結合しなかった金粒子51と、分析対象である抗原50と結合しなかった磁性粒子52と、検体由来の夾雑物55が混在した状態で測定されたものである。そして、磁性粒子52は、標識物質である金粒子51の10倍以上の直径を有する上に、レーザ光Liを吸収する性質も有する。このため、磁性体除去前測光処理では、磁性粒子52によって遮蔽され、レーザ光の一部が金粒子51に到達できず、測光値が本来のラマン散乱光の強度よりも低くなる。また、磁性粒子52は、金粒子51表面で増強されたラマン散乱光も遮蔽する場合もある。このため、磁性体除去前測光処理では、金粒子51によるラマン散乱光が磁性粒子によって遮蔽され、ラマン散乱光の一部がラマン分光計30bに到達できず、測光値が本来のラマン散乱光の強度よりも低くなる。
【0072】
そこで、分析部43は、磁性体除去前測光値を、磁性粒子52によるレーザ光の遮蔽度に応じて補正する磁性体除去前測光値補正処理を行なう(ステップS221)。具体的には、予め、金粒子51の濃度を一定とし、磁性粒子52の濃度をそれぞれ変えた反応容器11それぞれに対して、ラマン散乱光の強度を測定し、磁性粒子52の濃度とラマン散乱光の強度との関係を求める。さらに、各濃度で金粒子51を含む反応容器11それぞれに対しラマン散乱光の強度を測定し、金粒子51の濃度とラマン散乱光の強度との関係を求める。そして、これらの関係を比較することによって、磁性粒子52による遮蔽度を予め求めておく。そして、分析部43は、予め求めた遮蔽度を用いて、複合体53と、抗原50と結合しなかった金粒子51と、抗原50と結合しなかった磁性粒子52と、検体由来の夾雑物55が混在した状態で測定された磁性体除去前測光値を、磁性粒子52による遮蔽が発生しない場合の値に補正する。この結果、図13の磁性体除去前測光処理において得られたラマンスペクトルである曲線Lw2は、矢印のように、磁性粒子52の遮蔽による影響を除外したラマンスペクトルである曲線Lwc2に補正される。曲線Lw2から曲線Lwc2への補正として、実際の分析条件での磁性粒子濃度および標識粒子濃度で、磁性粒子の無い状態と磁性粒子のある状態の信号比Kを求め、シグナルに信号比Kを乗じる補正をする。そして、分析部43は、曲線Lwc2における最大強度値から基底値を減算した値Iwc2を、磁性体除去前測光値の補正値として取得する。
【0073】
次いで、分析部43は、磁性体除去後測光処理における磁性体除去後測光値を取得する(ステップS222)。図13に示す曲線Luは、磁性体除去後測光処理において得られたラマンスペクトルである。分析部43は、実施の形態1と同様に、曲線Luにおける最大強度値から基底値を減算した値Iuを磁性体除去後測光値として取得する。
【0074】
分析部43は、磁性体除去前測光値補正処理において演算した補正値と、磁性体除去後測光値との差分値を演算する(ステップS224)。この磁性体除去前測光値補正処理において演算した補正値は、前述したように、反応容器11内に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度であって、磁性粒子52の遮蔽による影響を除外した値に対応する。また、磁性体除去後測光値は、前述したように、複合体53および磁性粒子52が反応容器11外に除去された後のラマン散乱光の強度であり、抗原50と結合しなかった金粒子51に相当する。これらの各値は、いずれも同容積に対応する値となっている。このため、磁性体除去前測光値補正処理において演算した補正値と磁性体除去後測光値との差分値は、磁性体除去処理において反応容器11外から除去された、抗原50と結合し複合体53を構成する金粒子51によるラマン散乱光の強度に相当する。分析装置1においては、分析部43が補正処理において演算した補正値と磁性体除去後測光値との差分値を演算することによって、複合体53によるラマン散乱光の強度を間接的に取得している。
【0075】
そして、分析部43は、複合体53によるラマン散乱光の強度に相当する差分値をもとに、この差分値に対応した分析値を演算して(ステップS225)、制御部41に演算結果を出力し、演算処理を終了する。
【0076】
このように、本実施の形態2においては、磁性体除去前測光処理として、複合体53が形成された後であって複合体53、分析対象である抗原50と結合しなかった金粒子51と、抗原50と結合しなかった磁性粒子52と、検体由来の夾雑物55が混在した状態で、反応容器11内に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定し、この測定値を、補正処理において、磁性粒子の遮蔽による影響を除去した値に補正している。このため、分析部43は、補正処理を行なうことによって、金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を正しく取得することができる。さらに、本実施の形態2では、磁性体除去後測光処理として、分析対象物と結合しなかった磁性粒子52と複合体53とを除去した状態で、分析対象物と結合しなかった金粒子51のラマン散乱光の強度を測定している。実施の形態2では、磁性体除去後測光処理において、金粒子51の10倍以上の直径を有する上にレーザ光Liを吸収する性質も有する磁性粒子52が存在しない状態で、分析対象物と結合しなかった金粒子51のラマン散乱光とを正確に測定することができる。実施の形態2では、この補正値と、分析対象物と未結合の標識物質によるラマン散乱光の強度とを正確に求めることができるため、これらの値の差分値である複合体そのもののラマン散乱光の強度についても正確な値を取得することができ、分析精度を向上させることができる。
【0077】
また、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、反応容器11の液体内に直接集磁棒28aを挿入して磁性粒子52の集磁を行うため、反応容器11内の磁性粒子52、複合体53の磁性粒子を効率よく集磁することができ、従来よりも確実に分析処理全体の処理時間を短縮が可能になる。
【0078】
(実施の形態2の変形例)
次に、実施の形態2の変形例について説明する。実施の形態2では、反応促進処理による複合体形成後に磁性体除去前測光処理を行なった場合を例に説明したが、磁性体除去前測光値として反応容器11に分注された標識物質の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定できれば足りる。そこで、実施の形態2の変形例として、検体、標識試薬及び検体が分注された後であって反応促進処理を行なう前に磁性体除去測光処理を行なってもよい。場合について説明する。図14は、実施の形態2の変形例にかかる分析処理の処理手順を示すフローチャートであり、図15は、図14に示す分析処理を説明する図である。
【0079】
図14および図15(1)の矢印Y31〜Y33に示すように、分析処理の開始が指示されることによって、磁性試薬分注部22が反応容器11内に磁性粒子52を含む磁性試薬を分注する磁性試薬分注処理(ステップS301)と、検体分注部20が反応前測光処理用の反応容器11内に抗原50および夾雑物55を含む検体を分注する検体分注処理(ステップS302)と、標識試薬分注部25が反応前測光処理用の反応容器11内に金粒子51を含む標識試薬を分注する標識試薬分注処理(ステップS303)とを行う。そして、攪拌部27は、磁性試薬、検体および標識試薬が分注されたこの反応容器11内の液体を攪拌する攪拌処理を行なう(ステップS304)。そして、図15(2)に示すように、測光部30においては、反応容器11内の金粒子51によるラマン散乱光Lfw3の強度を測光する磁性体除去前測光処理(ステップS305)が行われる。この磁性体除去前測光処理は、抗原50、夾雑物55、磁性粒子52および金粒子51が混在した状態で測光処理を行なわれ、反応容器11に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定する。なお、図15(2)では、測光部30における集光機構の図示を省略する。
【0080】
次いで、攪拌部27による攪拌処理が行われ(ステップS306)、所定の時間、反応容器内で金粒子51、抗原50および磁性粒子52を特異的に結合させる抗原抗体反応を促進させる反応促進処理が行われた結果(ステップS307)、図15(3)に示すように、反応容器11内には、磁性粒子52、抗原50および金粒子51が特異的に結合した複合体53が生成される。
【0081】
そして、図15(4)に示すように、図11(4)に示す場合と同様に、集磁棒移送部28は、この反応容器11から、磁性粒子52および複合体53の磁性粒子を除去する磁性体除去処理を行なう(ステップS308)。具体的には、集磁棒移送部28は、磁性粒子52、抗原50、夾雑物55、金粒子51および複合体53が分散する反応容器11内部に、集磁棒28aを挿入し、磁性粒子52および複合体53の磁性体を集磁した後、矢印36に示すように、集磁棒28aを引き上げ、この集磁棒28aを反応容器11外に移送する。
【0082】
次いで、図15(5)に示すように、測光部30においては、磁性粒子分注前測光処理と同様に、レーザ光源30aが反応容器11内にレーザ光Liを照射し、ラマン分光計30bは、抗原50と結合しなかった金粒子51によるラマン散乱光Lfu3の強度を測光する磁性体除去後測光処理(ステップS309)が行われる。この磁性体除去後測光処理においては、反応容器11内の照射領域内に夾雑物55、および抗原50と結合しなかった金粒子51のみが存在する状態で、抗原50と結合しなかった金粒子51に相当するラマン散乱光を正確に測定できる。
【0083】
そして、分析部43は、磁性体除去前測光処理(ステップS305)における測光値と、磁性体除去後測光処理(ステップS309)における測光値をもとに、分析対象の抗原50の検体における濃度を求める演算処理を行なう(ステップS310)。その後、出力部45が、分析部43が求めた抗原50の濃度を出力する出力処理を行ない(ステップS311)、分析処理を終了する。
【0084】
そして、分析部43は、図14に示す演算処理として、図12と同様の処理手順を行う。分析部43は、図12のステップS220と同様の処理手順を行なうことによって、磁性体除去前測光値を取得する。そして、磁性体除去前測光値は、抗原50、夾雑物55、金粒子51および磁性粒子52が混在した状態で測定されたものであるため、分析部43は、ステップS222と同様の処理手順を行なうことによって、この磁性体除去前測光値を、磁性粒子52によるレーザ光の遮蔽度に応じて補正する磁性体除去前測光値補正処理を行なう。この結果、図16の磁性体除去前測光処理において得られたラマンスペクトルである曲線Lw3は、矢印のように、磁性粒子52の遮蔽による影響を除外したラマンスペクトルである曲線Lwc3に補正される。そして、分析部43は、曲線Lwc3における最大強度値から基底値を減算した値Iwc3を、磁性体除去前測光値の補正値として取得する。次いで、分析部43は、ステップS223〜ステップS225と同様に、磁性体除去後測光値を取得し、演算した補正値と磁性体除去後測光値との差分値を演算し、この差分値に対応した分析値を演算して、制御部41に演算結果を出力し、演算処理を終了する。
【0085】
本実施の形態2の変形例にかかる場合も、磁性体除去前測光処理として、抗原50、夾雑物55、金粒子51および磁性粒子52が混在した状態で、反応容器11内に分注された金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を測定し、この測定値を、補正処理において、磁性粒子の遮蔽による影響を除去した値に補正しているため、金粒子51の全量に相当するラマン散乱光の強度を正しく取得することができ、分析精度を向上させることができる。
【0086】
なお、実施の形態2および実施の形態2にかかる変形例では、分析部43は、磁性体除去前測光値の補正値と磁性体除去後測光値との差分値を演算することによって、複合体の標識物質のラマン散乱光の強度を取得したが、磁性体除去前測光値の補正値と磁性体除去後測光値との比を演算することによって、複合体の標識物質のラマン散乱光の相対強度を取得して、検体中の分析対象物濃度を検出してもよい。この場合、図17のフローチャートに示すように、分析部43は、図12に示すステップS220〜ステップS223と同様に、磁性体除去前測光値を取得し(ステップS420)、この磁性体除去前測光値に対する補正処理を行ない(ステップS421)、磁性体除去後測光処理における磁性体除去後測光値を取得する(ステップS422)。そして、分析部43は、補正処理において演算した補正値と、磁性体除去後測光値との比を演算し(ステップS424)、この演算した比に対する分析値を演算して(ステップS425)、制御部41に演算結果を出力し、演算処理を終了する。この演算した比は、反応容器11内に分注された標識試薬の濃度に対する複合体の標識物質のラマン散乱光の相対強度に相当し、分析部43は、反応容器11内に分注された標識試薬の濃度と、演算した比の値とをもとに、検体における分析対象の抗原または抗体の濃度を演算する。
【0087】
また、本実施の形態2および実施の形態2にかかる変形例においては、予め、磁性体除去前測光処理に対応させて、標識試薬の反応容器11内における濃度を変えた測光処理をそれぞれ行ない、各標識試薬の濃度に対する各磁性体除去前測光値を取得し、標識試薬の濃度と磁性体除去前測光値との関係を示す検量線を作成することによって、磁性体除去前測光処理を省略することも可能である。この場合、分析部43は、磁性体除去前測光値として、検量線から標識試薬の反応容器11内における濃度に対応する測光値を取得して演算処理を行なえばよい。
【0088】
また、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態2にかかる変形例においては、ラマンピークがそれぞれ異なる複数種の標識物質を含む標識試薬を使用して一連の分析処理を行なうことによって、複数項目の分析結果を取得することも可能である。また、分析装置1の装置レイアウトは一例であり、このレイアウトによって分注順序が拘束されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
1 分析装置
2 測定機構
4 制御機構
10 反応テーブル
11 反応容器
19 検体移送部
19a 検体容器
19b 検体ラック
20 検体分注部
21 磁性試薬庫
22 磁性試薬分注部
23,26 プローブ洗浄部
24 標識試薬庫
25 標識試薬分注部
27 攪拌部
28 集磁棒移送部
28a 集磁棒
29 集磁棒洗浄部
30 測光部
41 制御部
42 入力部
43 分析部
44 記憶部
45 出力部
50 抗原
51 金粒子
52 磁性粒子
53 複合体
55 夾雑物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析方法において、
前記標識試薬および前記検体を反応容器内に分注する第1の分注ステップと、
前記第1の分注ステップで前記標識試薬および前記検体が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光ステップと、
前記磁性試薬を前記反応容器内に分注する第2の分注ステップと、
前記反応容器内で前記磁性粒子、前記分析対象物および標識物質が特異的に結合した複合体を生成する反応を促進させる反応促進ステップと、
磁界を発生する集磁棒を前記複合体が生成された反応容器内に挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁棒を前記反応容器外に移送することによって、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去ステップと、
前記除去ステップで前記集磁棒を移送した後の前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光ステップと、
前記第1の測光ステップにおける測光値を、前記第2の分注ステップ後の前記標識試薬の濃度に対応するように補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された補正値と前記第2の測光ステップにおける測光値との差または比を演算することによって前記複合体の標識物質によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体の標識物質によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算ステップと、
を含むことを特徴とする分析方法。
【請求項2】
検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析方法において、
前記磁性試薬、前記標識試薬および前記検体を反応容器内に分注する分注ステップと、
前記分注ステップで前記磁性試薬、前記標識試薬および前記検体が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光ステップと、
前記反応容器内で前記磁性粒子、前記分析対象物および標識物質が特異的に結合した複合体を生成する反応を促進させる反応促進ステップと、
磁界を発生する集磁棒を前記複合体が生成された反応容器内に挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁棒を前記反応容器外に移送することによって、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去ステップと、
前記除去ステップで前記集磁棒を移送した後の前記反応容器内にレーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光ステップと、
前記第1の測光ステップにおける測光値を、前記磁性粒子による前記レーザ光の遮蔽度に応じて補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された補正値と前記第2の測光ステップにおける測光値との差または比を演算することによって前記複合体によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算ステップと、
を含むことを特徴とする分析方法。
【請求項3】
前記第1の測光ステップは、前記反応促進ステップの前に行なわれることを特徴とする請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記第1の測光ステップは、前記反応促進ステップの後に行われ、前記反応容器内の複合体と結合した標識物質および前記分析対象物と結合しなかった前記標識物質によるラマン散乱光を測定することを特徴とする請求項2に記載の分析方法。
【請求項5】
検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析装置において、
前記反応容器内にレーザ光を照射して前記標識物質によるラマン散乱光を測定する測光手段と、
前記反応容器内に挿入され磁界を発生する集磁部材を有し、該集磁部材を前記反応容器内または前記反応容器外に移送する集磁部材移送手段と、
前記測光手段による測光値をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算手段と、
を備え、
前記集磁部材移送手段は、前記磁性粒子、前記標識物質および前記分析対象物が特異的に結合することによって複合体が生成された反応容器内に前記集磁棒を挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁部材を前記反応容器外に移送することによって、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去処理を行ない、
前記測光手段は、前記検体および前記標識試薬が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光処理と、前記集磁部材移送手段による除去処理後の前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光処理とを行い、
前記演算手段は、前記測光手段による前記第1の測光処理における測光値を、前記検体、前記磁性試薬および前記標識試薬が分注された後の前記標識試薬の濃度に対応するように補正した後に、該補正値と前記第2の測光処理における測光値との差または比を演算することによって前記複合体によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求めることを特徴とする分析装置。
【請求項6】
検体中の分析対象物と特異的に結合する磁性粒子を含む磁性試薬と、レーザ光が照射されることにより表面増強されたラマン散乱光を発するとともに前記分析対象物と特異的に結合する標識物質を含む標識試薬とを使用し、前記検体を分析する分析装置において、
前記反応容器内にレーザ光を照射して前記標識物質によるラマン散乱光を測定する測光手段と、
前記反応容器内に挿入され磁界を発生する集磁部材を有し、該集磁部材を前記反応容器内または前記反応容器外に移送する集磁部材移送手段と、
前記測光手段による測光値をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求める演算手段と、
を備え、
前記集磁部材移送手段は、前記磁性粒子、前記標識物質および前記分析対象物が特異的に結合することによって複合体が生成された反応容器内に前記集磁棒を挿入し、前記分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記集磁棒に集磁させた状態で該集磁部材を前記反応容器外に移送することによって、分析対象物と結合しなかった磁性粒子と前記複合体とを前記反応容器から除去する除去処理を行ない、
前記測光手段は、前記検体、前記磁性試薬および前記標識試薬が分注された前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第1の測光処理と、前記集磁部材移送手段による除去処理後の前記反応容器内に前記レーザ光を照射して、前記反応容器内の前記標識物質によるラマン散乱光を測定する第2の測光処理とを行い、
前記演算手段は、前記測光手段による前記第1の測光処理における測光値を、前記磁性粒子による前記レーザ光の遮蔽度に応じて補正した後に、該補正値と前記第2の測光処理における測光値との差または比を演算することによって前記複合体によるラマン散乱光の強度を取得し、該取得した前記複合体によるラマン散乱光の強度をもとに前記分析対象物の前記検体における濃度を求めることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の分析方法を分析装置に実行させることを特徴とする分析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−158333(P2011−158333A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19455(P2010−19455)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】