説明

分析法のためのナノ多孔性基材

ナノ多孔性材料は、試料に含まれる物質のその後の分析に備えて試料を濃縮するために、使用することができる。この方法が、低分子量プロテオーム中の種の収量を濃縮して低ナノモル範囲の小さなペプチドの検出を可能にする事が示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる2005年12月20日出願の米国特許仮出願第60/751,924号の優先権を主張する。また、本出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる2006年12月15日出願の、Mauro Ferrariらへの米国特許仮出願「Nanoporous Substrates for the Analysis of Biological Fluids」(ドケット番号066057-0109)の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金援助を受けた研究に関する声明
本発明の基礎を成す一部の研究は、契約番号NO1-CO-12400の下、合衆国国立衛生研究所・国立癌研究所(National Cancer Institute, National Institutes of Health)からの連邦政府資金によって援助されたものである。合衆国政府は本発明において一定の権利を保有する。
【0003】
分野
本出願は一般に分析装置およびシステムならびにそれらの製造法および使用法に関し、さらに特に、ナノ多孔性材料を使用する分析装置およびシステムならびにそれらの製造法および使用法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
臨床試料中の物質を分析するための様々な技術が利用可能であるが、もっとも一般的な技術は、試料中に豊富にある物質、たとえば血清の場合にはアルブミンによる干渉を解消するために高額な解決手段を要する。この問題に対する一つの解決手段は、抗体を使用して高存在度物質を捕獲し、試料中のその存在を減らして、他の対象物質の分析に干渉しないようにすることである。試料中の物質を分析するためのより良好な方法およびシステムが要望されている。
【発明の開示】
【0005】
概要
一つの態様で、本発明は、
(a) 第一の成分および第二の成分を含む試料を用意する工程、(b) ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、および(c) ナノ多孔性材料を試料に曝露する工程
を含む、分別または分離の方法であって、曝露されると、ナノ多孔性材料は第一の成分を保持し、第二の成分を保持しない、方法を提供する。
【0006】
もう一つの態様で、本発明は、(a) 試料を用意する工程、(b) ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、および(c) ナノ多孔性材料を試料に曝露する工程、およびナノ多孔性材料によって保持された試料の画分を分析する工程を含む、試料を分析する方法を提供する。
【0007】
さらに別の態様で、本発明は、(a) 生理学的状態によって影響される試料を用意する工程、(b) ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、(c) ナノ多孔性材料を試料に曝露する工程、(d) ナノ多孔性材料によって保持された試料の画分を分析する工程、および(e) 分析結果を対照試料の分析結果と比較して、生理学的状態のマーカを検出する工程を含む、生理学的状態のマーカを検出する方法を提供する。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、一つまたは複数の成分を含む試料を採取するための手段、および一つまたは複数の成分を保持するように構成されたナノ多孔性材料を含む基材を含む、キットを提供する。
【0009】
さらに別の態様で、本発明は、分析機器およびナノ多孔性材料を含む基材を含み、基材が、一つまたは複数の分析物に対する分析機器の感度を増強するように構成されている分析システムを提供する。
【0010】
さらに別の態様で、本発明は、ナノ多孔性材料を含み、質量分析計に挿入されるように構成されている基材を含むプローブを提供する。
【0011】
詳細な説明
断りない限り、本明細書で使用される単数形は「一つまたは複数」を意味する。
【0012】
一つの態様で、本発明は、第一の成分および第二の成分を含む試料を用意する工程、ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、およびナノ多孔性材料を試料に曝露する工程を含む方法を提供する。曝露されると、ナノ多孔性材料は第一の成分を保持し、第二の成分を保持しない。
【0013】
好ましくは、試料は、生物学的試料、すなわち、生体分子、たとえばタンパク質、ペプチド、抗原、抗体、タンパク質断片、RNAまたはDNAを含有する試料である。生物学的試料は、植物、哺乳動物、好ましくはヒトをはじめとする動物または細胞培養物からの試料であることができる。生物学的試料は、生物学的流体、たとえば血液、血清、血漿、尿、精液、精漿、胸膜液、腹水、乳頭吸引液、糞便または唾液の試料であることができる。
【0014】
ナノ多孔性材料は、1000nm未満、好ましくは100nm未満に中心を有する孔径分布を有する任意の材料であることもできる。一部の態様では、ナノ多孔性材料はナノ多孔性ケイ素であることができる。さらに、一部の態様では、ナノ多孔性材料は、ナノ多孔性酸化物材料、たとえばナノ多孔性シリカまたはナノ多孔性アルミナであることができる。
【0015】
ナノ多孔性材料は、第一の成分と第二の成分とを分子量によって分離することができる。すなわち、ナノ多孔性材料によって保持される第一の成分は、第二の成分よりも低い平均分子量を有することができる。
【0016】
ナノ多孔性材料によって保持される成分は、ナノ多孔性材料に吸着することができる。すなわち、それは、穏やかな洗浄、たとえば脱イオン水を用いる洗浄によって洗い落とすことができる成分である。
【0017】
ナノ多孔性材料によって保持される第一の成分は、低分子量成分、すなわち、実質すべての分子が20kDa以下または15kDa以下または10kDa以下または5kDa以下または4kDa以下の分子量を有する成分であることができる。
【0018】
ナノ多孔性材料は分子カットオフとして働くことができる。すなわち、ナノ多孔性材料は、分子カットオフと等しいかもしくは分子カットオフ未満の分子量を有する全てまたは実質的に全ての分子を保持することができ、分子カットオフを超える分子量を有する全てまたは実質的に全ての分子を保持しない。ナノ多孔性材料の分子カットオフ分子量は、ナノ多孔性材料の孔径を調節することによって変化させることができる。
【0019】
ナノ多孔性材料の表面は、たとえば、表面に付着される電荷または官能基によって修飾することができる。このような修飾は、試料の特定成分を保持するために使用することができる。たとえば、アミノ含有分子、たとえばアミノシランで表面を修飾することによって正電荷を提供することができる。メルカプト基含有分子、たとえばメルカプトシランで表面を修飾することによって負電荷を提供することができる。表面はまた、長鎖アルキル(C10よりも長い)含有分子、たとえばアルキルシランを付着させることにより、疎水基で修飾することもできる。
【0020】
ナノ多孔性材料の表面はまた、たとえば試料の特定成分、たとえばリン酸化タンパク質に対するナノ多孔性材料の親和性を高めることができる金属、たとえば銅または鉄で修飾することもできる。ナノ多孔性酸化物、たとえばナノ多孔性シリカの表面を修飾する場合には、ナノ多孔性酸化物の合成中に金属の塩を加えることができる。たとえば、ナノ多孔性シリカの場合、様々な量のCu (MeCO2)2H2OをCTAB (臭化セチルトリメチルアンモニウム)およびTEOS (テトラエチルオルトシリケート)およびNa2OおよびH2Oに加えることができる。その後、約200℃および約540℃で高温処理を実施することができる。ナノ多孔性ケイ素の表面は、無電解めっき法を使用することにより、金属で修飾することができる。
【0021】
ナノ多孔性材料を含む基材は、フィルム、ウェーハ、粒子またはマイクロチップをはじめとする多様な形態で提供することができる。
【0022】
一部の態様では、基材は、トップダウン技術、たとえば光リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、X線リソグラフィー、深UVリソグラフィーおよびナノインプリントリソグラフィーを使用して製造することができる。
【0023】
一部の態様では、ナノ多孔性材料によって保持された試料の成分を、たとえばさらなる分析または可視化のために、試料から抽出することができる。
【0024】
さらに一部の態様では、ナノ多孔性材料によって保持された試料の成分に対し、第一の成分を抽出することなく、さらなる分析または可視化を実施することもできる。
【0025】
第一の成分のさらなる分析は、たとえば、ゲル電気泳動法、たとえばSDS-PADE法、クロマトグラフィー法、バイオアッセイ技術または質量分析法、たとえばMALDI-TOF質量分析法、LC/MS質量分析法、電気スプレーイオン化質量分析法、タンデム質量分析法またはSELDI質量分析法によって実施することができる。
【0026】
分析の前に試料をナノ多孔性材料に曝露すると、分析の検出レベルを高めることができる。たとえば、試料をナノ多孔性材料に曝露すると、質量分析法は、1000ng/ml以下または200ng/ml以下、100ng/ml以下または20ng/ml以下または10ng/ml以下または5ng/ml以下または1ng/ml以下の濃度で存在する低分子量分子を検出することができる。
【0027】
ナノ多孔性材料を含む基材はまた、生理学的状態、たとえば疾病または病期のバイオマーカを検出および/または同定するために使用することもできる。疾病は、たとえばがん、たとえば乳癌であることができる。
【0028】
生理学的状態のバイオマーカを検出および/または同定するためには、生理学的状態によって影響された試料を、ナノ多孔性材料を含む基材に曝露し、ナノ多孔性材料によって保持された試料の画分を分析し、分析結果、たとえば質量スペクトルを、対照試料、すなわち、その生理学的状態によって影響されていない試料の同様な分析の結果と比較することができる。
【0029】
また、ナノ多孔性材料を含む基材は、生物学的試料の採取および/または貯蔵に使用することができる。たとえば、一部の態様では、ナノ多孔性材料を含む基材は、生物学的試料を採取するために任意の適用可能なツールをも含むキットの一部であることができる。採取された試料は、ナノ多孔性材料に曝露したのち、その後の分析または可視化のために貯蔵することができる。
【0030】
一つの態様では、ナノ多孔性材料を含む基材は、特定の分析機器に基づく分析システムの一部であることができる。そのような場合、基材は、一つまたは複数の分析物、たとえば低分子量生体分子に対する分析機器の感度を増強するように特異的に構成することができる。
【0031】
そのような用途の場合、基材は、ナノ多孔性材料を含む一つまたは複数の区域を有することができる。そのような区域それぞれは、分析物の吸着に対して抵抗性である領域によって包囲されている。包囲する領域は、好ましくは、非ナノ多孔性領域、すなわち、ナノ多孔性材料を含まない領域である。包囲する領域は、分析物の吸着に対して抵抗性である官能基で修飾することができる。ペプチドおよびタンパク質の場合、包囲する区域は、親水性官能基、たとえばPEG含有ポリマーで修飾することができる。
【0032】
一部の態様では、基材は、分析する試料を、ナノ多孔性材料を含む一つまたは複数の区域に集束または集中させることができる。このような集束または集中は、分析に曝露される試料の量を減らすことができ、それが他方で、分析物に対する感度を増強することができる。
【0033】
一部の態様では、ナノ多孔性材料を含む区域のサイズは、分析機器のイオン化ソースの有効区域のサイズに適合するサイズにすることができる。たとえば、分析機器がイオン化のためのレーザを分析する場合、ナノ多孔性材料を含む区域のサイズは、レーザビームのサイズ(直径)に適合することができる。このような基材は、イオン化のためにレーザを使用する質量分析機器、たとえばMALDI質量分析計またはSELDI質量分析計に特に有用であることができる。
【0034】
一部の態様では、ナノ多孔性材料を含む基材は、質量分析機器、たとえばMALDI質量分析計またはSELDI質量分析計に挿入されるプローブとして構成することができる。
【0035】
以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。
【0036】
実施例1
この実施例におけるかぎ括弧内の参照番号は実施例1の末尾の参考文献一覧を参照する。
【0037】
1. 序文
がんおよび他の疾病の早期発見のためのヒト血漿/血清のプロテオーム分析は、多くの研究グループにとって増大する対象分野である[1、2およびその中の参考文献]。より多くの注目が、バイオマーカ発見に使用される特徴的なMSプロフィールを構成するイオンの大部分を生成し、構成するといわれる担体タンパク質結合低分子量分子に特に寄せられている[3〜5]。したがって、担体タンパク質(たとえばアルブミン)結合を模倣し、低分子量プロテオーム(LMWP)収穫を実行するように操作される粒子の設計および開発は、バイオマーカ発見において非常に衝撃的である[6〜8]。SELDI-TOF質量分析法に基づく、CiphergenのProteinChip Array Systemが、「分子サイン」の発見のための、もっとも広く使用されているプラットフォームであることができる[9、10]。新たに出現する手法を約束する、この分野における最近の技術的進歩としては、小さなペプチドの磁気ベースの自動化固相抽出をMALDI-TOF質量分析読みと組み合わせる新たなペプチドミクスプラットフォーム[11、12]、ケイ素修飾面上での脱離/イオン化(DIOS)[13]およびケイ素ナノワイヤ上での脱離/イオン化(SiNW)[14]がある。プロテオミクスベースのバイオマーカ発見の場合、ナノテクノロジーが機会および挑戦を提供することができる[15]。ナノテクノロジーの潜在能力をプロテオミクスに移し替えるために、より効果的かつ効率的に血漿LMWPを収穫する目標をもって血漿タンパク質をふるい分けするためのナノ多孔性シリカの適用が研究されている。
【0038】
二つの異なるナノ多孔性シリカ面から抽出された血漿タンパク質のマトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析が実施されている。得られた質量スペクトルは、ナノサイズのシリカ粒子が何百種ものペプチドおよび低分子量タンパク質を保持する能力を実証する。
【0039】
2. 材料および方法
2.1 材料および機器
ゲル合成のための試薬としては、ケイ酸ナトリウム溶液(Sigma、St. Louis, MO, USA)、ヒュームドシリカ(Sigma-Aldrich、St. Louis, MO, USA)、ポリオキシエチレン(10)イソノニルフェニルエーテル(Nonfix1O、Condea、Houston, TX, USA)および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTABr、Aldrich、St. Louis, MO, USA)がある。MALDIマトリックスα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)をSigma (St. Louis, MO, USA)から入手した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC:リチウムヘパリン、EDTA、AEBSF、ベスタチン、E-64、ロイペプチンおよびアプロチニン)をSigma (St. Louis, MO, USA)から購入した。ウシ膵臓インスリンをSigma (St. Louis, MO, USA)から入手した。
【0040】
すべての試料を、Applied Biosystems Voyager-DE(商標)STR質量分析計(Framingham、MA, USA)により、窒素レーザからの337nm光を使用して分析した。分析は線形モードで実施した。
【0041】
2.2 合成手順
たとえば[16、17]に記載されている二つの異なる合成手順にしたがってシリカ試料AおよびBを得た。簡潔にいうと、以下のモル組成を有するゲルから出発してシリカ試料AおよびBを得た。シリカA SiO2:0.064Nonfix 10:0.6NaOH:0.8HCl:58H2O、シリカB:SiO2:0.2CTABr:0.2NaOH:0.04Al(OH)3:40H2O。
【0042】
シリカAの場合、界面活性剤溶液(H2O 57.4g中Nonfix 10 2.9gおよびNaOH 4.05g)を完全に溶解させたのち、ケイ酸ナトリウム14.6gを加えた。最後に、37重量%HCl 5.33gを加え、ゲルを室温で24時間熟成させたのち、オーブン中100℃で24時間加熱した。
【0043】
シリカBは、H2O 130g中Al(OH)3 0.52gおよびNaOH1.35gからなる溶液にヒュームドシリカ10gを加えることによって得た。ゲルを室温で2時間熟成させたのち、オーブン中140℃で24時間加熱した。合成ゲルをろ過し、脱イオン水で洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。
【0044】
77Kにおける窒素吸着脱離容積等温線をMicrometritics Asap 2010装置で計測した。試料を真空中300℃で夜通しベーキングし、ベンジル化試料を230℃で同じ残留圧まで処理した。0.005〜0.2p/P0の圧力範囲でのBET (Brunauer-Emmet and Teller)線形化によって試料の表面積を得た[16]。
【0045】
2.3 血漿採取
[18]で提案されたガイドラインにしたがってヒト血漿を得た。簡潔にいうと、PIC300μlを予備装填した8.0mLリチウムヘパリン血漿分離管(PST (商標)Vacutainer (登録商標)367965、Becton Dickinson、Franklin Lakes, NJ, USA)に血液を採取し、採取から15分以内に4℃で15分間、2500gで遠心分離した。遠心分離の30分以内に血漿層のアリコットを1.0mL量で作り、ドライアイス/アルコール浴を使用してすぐに凍結させた。
【0046】
2.4 実験手順
シリカ粒子のアリコット(5mg)をヒト血漿希釈(1:5)試料500μLと混合し、室温で1時間振とうした。懸濁液を2000×gで2分間遠心分離したのち、シリカ粒子を上澄みから分離し、脱イオン水で洗浄した(100μLで4回)。シリカ表面に保持された血漿タンパク質を次のようにして抽出した。シリカ粒子を溶液(4.95:4.95:0.1 水/メタノール/0.1% TFA) 100μLに懸濁させ、すぐに2000×gで5分間遠心分離した。抽出されたタンパク質を含む上澄み溶液をMALDI-TOF-MSによって分析した。上澄み1μLをCHCAマトリックス4μLと合わせたのち、得られた溶液1μLをMALDIプレートにスポット塗布し、空気乾燥させた。
【0047】
2.5 スパイキング実験
血漿試料を四つの異なる濃度:500ng/mL、200ng/mL、30ng/mLおよび15ng/mLのインスリンでスパイキングした。セクション2.3に記載したように、試料をシリカAに後曝露した。最後に、血漿抽出タンパク質5μLをCHCAマトリックス3μL中で溶離させたのち、得られた溶液1μLをMALDIプレートにスポット塗布し、空気乾燥させた。
【0048】
3-4 結果および考察
この研究では、新規なナノ多孔性シリカ粒子がヒト血漿からの低分子量ペプチドおよびタンパク質を捕獲し、濃縮する能力を研究した。このアーカイブは、今や、潜在的な疾病特異的バイオマーカの未開発の宝庫を含むと仮定される[3〜5]。この情報アーカイブを速やかに隔離し、濃縮する効率的な方法は、バイオマーカ発見に対して劇的な影響を及ぼすことができる。
【0049】
図1はシリカAおよびBの形態を示す。窒素吸着脱離等温線が、シリカAの表面積が406m2/gであり、気孔容積が0.3cm3/gであることを示す。等温線の脱離ブランチに適用されたBJH(Barret-Joyner-Halenda) モデルは、26.8および38Åに中心を有する孔径分布を示す多孔系のバイモダリティを実証する。シリカBの場合、表面積は848m2/gであり、気孔容積は1.21cm3/gである。BJH孔径分布は25および390Åに中心を有する。
【0050】
血漿タンパク質、特に低分子量プロテオームタンパク質に対するナノ多孔性シリカの捕獲能力を評価するため、診査的実験を設計した。
【0051】
生物学的試料の潜在的劣化を最小限にすることができる、MSベースの分析の前に試料を前濃縮するための速やかかつ簡単な手法が開発された。未処理の試料と比較して、シリカ粒子で処理されたヒト血漿試料の質量スペクトルは、使用される特定のナノ多孔性シリカ基材に依存する、はっきり認められるLMWPの濃縮を示す。図2を参照。
【0052】
ナノ多孔性シリカで処理された両試料のMALDI-TOFスペクトルは、特に800〜5000ダルトンのLMW範囲で何百個ものピークを明らかにする。シリカのバッチごとに実験を三重反復で実施してアッセイ法の再現精度を評価した。データは、この方法が強いシグナルの再現精度の高い全体的なスペクトルポートレートを生成することを示す(図3A-B-Cおよび図4A-B-Cを参照)。高品質のスペクトルはクリーンアップ処理の産物であるかもしれない。シリカ基材の洗浄(捕獲したタンパク質の抽出の前)は、ひどいシグナル抑制を潜在的に生じさせるおそれがある塩、不揮発性および親水性汚染物質を除去することができる。また、シリカ粒子によって保持される分子の再現精度の高いプロフィール(図3および4)を効果的に生成する能力が、シリカ基材に固有の化学的安定性から生じることができる[16、17]。
【0053】
様々な濃度のインスリン(分子量5733.5Da)による血漿試料のスパイキングを実施して、本明細書に記載する方法の検出限界(LOD)を確立した。ヒト血漿中15ng/mLの低さの濃度のインスリンのMALDI-TOFシグナルを検出した(図5)。
【0054】
MALDI-TOF技術と組み合わせた本手法は、ミリリットル当たり低ナノグラムの範囲の血漿ペプチドを検出するのに十分な感度を有する。今日まで、MSによって同定されるバイオマーカ、たとえばヘマトグロブリン-αサブユニットの最低濃度が1000nmol/Lである[22、23]ことを考慮すると、本LMWP血漿濃縮法は、LODをおよそ400倍低下させた。
【0055】
MSプロフィールに基づくと、異なる孔径を有する二つのシリカ基材それぞれが、同じ血漿試料とでインキュベーションされた場合、異なるレパートリーのペプチド/タンパク質を保持する(図2を参照)。本発明はその作用原理によって限定されないが、認められた違いは下層面性質および静電気的相互作用による親水面へのタンパク質吸着の傾向によって裏付けられると仮定することができる。LMWP結合は、シリカ基材の表面性質をさらなる化学的および構造的修飾によって調節することによって改善することができる。
【0056】
5. 結論
ナノ多孔性シリカ粒子をうまく使用して担体タンパク質様エンティティとして働かせ、血漿/血清または他の生物学的流体内の低分子量分子を濃縮することができるということが実証された。結果は、選択的にLMWPに結合するナノ多孔性シリカ粒子の潜在的な分子選択性および分子分別性を実証する。したがって、質量分析法表面と結合されたこれらの新規な基材は、バイオマーカ成分そのものを速やかに配列決定する手段およびLMWPベースの予測医学のための潜在的プラットフォームの両方を提供することができる。
【0057】
6. 参考文献一覧


【0058】
実施例2
ナノ多孔性基材を使用する血清成分の分別
低分子量循環性プロテオーム内に存在する、これまで特性決定されていない数多くの分子が、生体の現在進行中の病態生理学の現在進行中の状況を提供することができる。近年、質量分析法をバイオインフォマチックスアルゴリズムと併用することによって低分子量分子を含むプロテオームサインが同定されるようになった。これらの実証が、豊富な診断情報源を含む情報アーカイブの存在を指し示した。フィンガプリントを裏付けする分子を配列決定し、同定する試みが現在進行中である。そのような低分子量分子の多くが、循環性担体タンパク質と結合した状態で存在することができるという発見が、質量分析法ベースの分析よりも前の分別および分離技術のための新たな機会を提供することができる。
【0059】
多孔性基材は、低分子量バイオマーカ物質の容易で再現精度の高い分別および選択的結合のための新たな手法となる。アミノプロピルでコートされたナノ多孔性ケイ素は、血清に曝露されると、血清からタンパク質を枯渇させ、異なる変化したMSプロフィールを有する血清を生じさせる。さらには、制御された孔径を有する、アミノプロピルでコートされたナノ多孔性ガラスビーズは、血清タンパク質のサブセットに結合し、激しい溶離とともにそれらを放出することができる。溶離したタンパク質は、ナノ孔のサイズに基づいて異なる、異なるMSプロフィール、ゲル電気泳動プロフィールおよび差別的なペプチド配列アイデンティティを有する。卵巣癌のための二つの潜在的なバイオマーカであるトランスチレチンおよびアポリポタンパク質A-1は、ビーズの孔径に基づいて差別的に隔離された。この新規な血清分別策略の体系的使用が、バイオインフォマチック分析と組み合わされると、患部組織の評価の際、病理学者による無数の組織化学的染色の使用と同様に、診断情報へのアクセスを増大することができる。ナノ多孔性材料面は、血液中の不安定で担体タンパク質に結合した分子の収穫および保存に使用することができる。そのうえ、ナノ多孔性基材を用いるそのような研究から得られる知識は、早期の疾病関連サインの循環をモニタリングすることができる不融性ナノ収穫剤の使用に貢献することができる。
【0060】
序文
病理学は、その中核として、正常組織と患部組織変異体との詳細な比較を通して発見される疾病サインの入念な体系的観察の上に構築された医学の専門分野である。医学部学生すべてが知っている病理診断の古来伝来の技術水準は、基礎にある組織病理学の四つの基本的徴候、すなわち腫瘍、疼痛、熱および発赤の身体的検査に基づく認識であった。同様に、組織の初期検査が目視的および触診的観察で始まることができる。しかし、これは、完全な病理的評価の場合の組織の現代的評価の始まりに過ぎない。顕微鏡および実験法の導入が現代医学の病理学実践を生み出したため、技術進歩がますまず高感度かつ洞察的な疾病プロセスの見方を明らかにした。現代の臨床試験および組織処理を通して、膨大な試験が、診察した医師にとって意味ある診断を提供するためのツールを現代の病理学者に提供する。そのような試験すべてにより、徴候および徴候のパターンを認識し、解釈する能力が病理学者の技能の中心にある。特定の組織学的パターンの相関、たとえば所与の組織によるヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)差別的取り込みは、非特定的疾病状態および予後診断結果とともに、病理学的療法指導の基礎にある絶えず進化するプロセスである。組織化学的方法は、様々な染料、抗体、プローブ等のための組織分別法とみなすことができる。しかし、組織化学的方法は、選択的組織サブコンポーネントを明らかにするだけであり、他のサブコンポーネントが検出を逃れることを許してしまう。
【0061】
病理学が絶えず新たな技術をその実践に組み入れる豊富な伝統ののち、現代病理学は、患者ベースの診断への新規な試験プラットフォームの適用性を評価している。一つには、潜在的な診断サインを求めて患者の体液および組織試料を採取するために、新規でより高感度の質量分析機器が使用されている(Rosenblatt et al., 2004、実施例2の末尾の参考文献一覧を参照)。そのような努力は、患者組織内の分子の多重化した組み合わせの計測値を生成し、疾病状態および予後と相関させる新たな学問分野、すなわち組織プロテオミクスの一部である。組み合わせマーカ手法を使用する場合の特異性および感度における潜在的増大のおかげで、致命的な疾病を、それが腫瘍、疼痛、熱または発赤として顕在化する前に、早期に検出し、捕らえることが可能であるかもしれない。
【0062】
質量分析法をバイオインフォマティックス分析と併用するプロテオームフィンガプリント法が、血液および組織プロテオームの低分子量範囲内の潜在的診断情報内容の存在に関する手がかりを生み出した(Chaurand and Caprioli, 2002;Hingorani et al., 2003;Paweletz et al., 2000;Petricoin et al., 2002a;Petricoin et al., 2002b;Schwartz et al., 2004;Stoeckli et al., 2001;Yanagisawa et al., 2003)。今やそのような情報アーカイブがこれらの研究によって暗示されているため、疾病関連のフィンガプリントの基礎にある成分を配列決定し、特性決定するための努力が現在進行中である。
【0063】
合わさって診断ポートレートを形成する分子は、数多くの組織によって間質液に注ぎ込まれて血管内コンパートメントとで平衡状態が確立されている多様な小さなタンパク質およびタンパク質断片であることができる。体内での細胞によるタンパク質の絶え間ない合成および分解が全体的な健康状態を反映することができる。宿主内で発現するプロテオームは、すべての細胞(正常な細胞および罹患した細胞)の間の複雑な相互作用を表すことができ、そのため、体液、たとえば血清は、疾病バイオマーカの発見および診断試験の開発のための豊富な情報源であるといえる。近年の研究は、疾病フィンガプリントを有する低分子量分子がより大きな担体分子に結合していることを示す(Mehta et al., 2003)。したがって、そのような低分子量分子およびそれらを宿らせ、腎クリアランスから保護する常在性担体タンパク質の単離が、新たなバイオマーカの発見および配列決定のためのMSベースの組織プロテオミクスの目的である。
【0064】
担体タンパク質に結合した低分子量プロテオームのより包括的かつ拡張的分析は、現在のモダリティを使用しても得られない、潜在的に有用な診断情報を明らかにすることができる新規な分別法の開発を要するかもしれない。ナノ多孔性材料面の製造は、循環内に存在するタンパク質およびタンパク質断片の様々なサブセットを方法論的に解析するための一つの策略といえるかもしれない。ナノ多孔性材料は、特異的な化学的誘導体化によって修飾され、機能的に操作されて、選択的かつあつらえ的な結合および分別が続いて起こることができるようにする能力を有する。そのうえ、ナノ多孔性は、選択的分別および結合が潜在的により高い効率および速度で起こることができるように表面積を劇的に増大させる。選択的分別法および材料は、世界中の病理学研究室で日々使用される組織固定液および組織化学的試薬の集積の創製において臨床化学者によって成された革新と同様なやり方で組織プロテオミクスの分野に貢献することができる。
【0065】
この実施例では、血清ベースの分析およびバイオマーカ発見のための分別ツールとしてのナノ多孔性材料面の使用を例示する。一つの実験では、ナノ多孔性シリコンウェーハを使用して、血清から高存在度タンパク質を選択的に枯渇させる。もう一つの方法は、ナノ多孔性孔径制御ガラスビーズを使用して、その後の溶離および評価のために血清から異なるプロテオームプロフィールを収穫する。
【0066】
材料および方法
血清試料
血清試料は、正常なドナーからの単一プールを-80℃で貯蔵したものである。
【0067】
薬品
薬品:
アセトニトリル(ACN)(HPLC用)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、ヨードアセトアミド(97%)、メタノール(99+%)およびジチオトレイトール(DTT)は、Sigma-Aldrich Co. (St. Louis, MO)から購入したものであった。ギ酸(88%)、酢酸(氷酢酸)は、Mallinckrodt Baker (Phillipsburg, NJ)から購入したものであった。H2Oは、社内でKontes High Purity Water Systemによって二重に蒸留した。ブタ配列決定用修飾トリプシンは、Promega (Madison, WI)から購入したものであった。
【0068】
その他の材料:
Sigma-Aldrich Co, (St. Louis, MO)から購入したウシ血清アルブミン。Molecular Probes (Eugene, OR)から購入したSYPRO (登録商標)ルビータンパク質ゲル染料。プレキャストした4〜12%ビストリス1Dゲル、LDS試料および緩衝液、酸化防止剤および予備染色したBenchmarkタンパク質ラダーは、Invitrogen Coから購入したものであった。石英ガラスは、Polymicro Technologies (Phoenix, AZ)から購入する。
【0069】
ナノ多孔性シリコンウェーハ製造
抵抗率<0.005Ω-cmの、Silicon Quest, Incからのホウ素ドープした(100)配向シリコンウェーハを基材として使用した。ウェーハをピラニア溶液(H2SO4:H2O=1:1)中120℃で30分間清浄したのち、HF:H2O=1:10中で酸化物除去し、脱イオン水ですすぎ洗いした。自家製テフロンセル中での電気化学的エッチングによって多孔性ケイ素面を調製した。ウェーハを、テフロンセルの底に、電気接触を提供するためのアルミ箔(厚さ0.1mm)を下にして配置した。白金メッシュを対電極としてセルのキャビティ中に配置した。電解質は、容量比49% HFおよびエタノールの1:1混合物であった。72mA/cm2の定電流密度を65秒間印加した。多孔性ケイ素形成の直後、試料を脱イオン水ですすぎ洗いし、真空下に配置して水分を除去した。多孔性ケイ素を、トルエン中10% APTES(アミノプロピルトリエトキシシラン)でシラン化した。ナノ孔から気泡を除去するため、多孔性ケイ素を真空下に3分間置いた。反応溶液を封止した皿に入れて室温で3時間還流させた。多孔性ケイ素をトルエン、アセトンで数回すすぎ洗いし、N2流中で乾燥させた。等温線の窒素脱離ブランチに適用されたBJH(Barret-Joyner-Halenda)モデルは、2〜20nmに中心を有する孔径分布を示した。
【0070】
ナノ多孔性シリコンウェーハを使用する血清の部分的枯渇
アミノプロピルでコートされたナノ多孔性シリコンウェーハを1.5ml管に入れ、脱イオン水で4回洗浄した。そして、脱イオン水中で1:5に希釈したプール血清試料500μlをウェーハに塗布し、混合物を室温で1.5時間インキュベートした。インキュベーションののち、希釈血清上澄みを取り出し、その後のMS分析に備えて-80℃で貯蔵した。対照として、希釈血清試料を凍結させた。さらなる対照として、希釈血清に代えて脱イオン水を用いてウェーハをインキュベートした。
【0071】
ナノ多孔性孔径制御ガラスビーズを使用するプロテオーム収穫
70nmまたは17nm孔径の、アミノプロピルでコートされた孔径制御ガラスビーズをSigma(St. Louis, MO)から購入した。窒素吸着脱離等温線データは、17nmビーズの表面積が30.8m2/gであり、気孔容積が0.032cm3/gであることを示す。70nmビーズの場合、表面積は130.5m2/gであり、気孔容積は0.93cm3/gである。
【0072】
実験ごとに、ビーズ10mgを1.5ml管中に計量した。ビーズを脱イオン水で4回洗浄した。そして、脱イオン水中で1:5に希釈したプール血清をビーズ試料に塗布し、混合物を室温で1.5時間インキュベートした。インキュベーションののち、希釈血清上澄みを取り出し、保存した。そして、脱イオン水1mlを使用してビーズを2回洗浄した。洗浄後、溶離緩衝液(アセトニトリル5ml、水5ml、トリフルオロ酢酸10μl) 500μlを試料に塗布し、その試料を室温で1/2時間回転させた。その後、溶離物を採取し、その後のMS分析に備えて-80℃で貯蔵した。
【0073】
質量分析法
低解像度質量分析法で生成したスペクトルプロフィールを汎化不偏読みとして使用して分別性能を評価した。Biomek 2000バイオプロセッサ(WCX2 ProteinChip (登録商標)、Ciphergen Biosystems, Inc.)を使用して、弱陽イオン交換表面増強レーザ脱離イオン化(SELDI)チップを処理した。10mM HCl 100μlをチップに塗布したのち、5分間インキュベーションした。そして、HClを吸引によって除去し、水100μlとともに1分間インキュベーションした。水を吸引し、さらに1分間、新鮮な水を適用した。それに続き、10mM酢酸アンモニウム100μlを0.1% Triton Xとともに添加し、チップに塗布して5分間インキュベートした。そして、酢酸アンモニウム混合物を吸引し、捨てたのち、酢酸アンモニウム混合物をもう一度塗布してさらに5分間インキュベーションした。これらの準備ステップののち、真空を使用してチップを乾燥させた。そして、試料、たとえば血漿5μlをチップスポットに塗布し、55分間インキュベートした。チップをリン酸緩衝食塩水150μlで3回洗浄したのち、水150μlで洗浄した。そして、チップを真空乾燥させ、50%(v/v)アセトニトリル、0.5%トリフルオロ酢酸中ケイ皮酸の30%溶液1.0μlを各タンパク質スポットに2回塗布し、塗布の間に乾燥をはさんだ。そして、PBS-II質量分析計(Ciphergen Biosystems, Inc.)を使用してチップをアッセイした。以下の設定を使用して各スポットのスペクトルを採取した。検出器電圧は1,800Vであり、焦点質量は6,000Daであり、質量上限は20,000Daであり、感度ゲイン設定は5であり、レーザ強さは145であり、1ポジションあたり15のレーザスポットを撮り、ポジション数は、5ポジション刻みの増分で20〜80の範囲であった。すべての試料を同一に処理するためのプロトコルを創製した。
【0074】
タンパク質配列決定研究
タンパク質アッセイ:
従来のブラッドフォードアッセイ法により、UV-VIS分光光度計(Spectramax (登録商標)Plus 384、Molecular Devices)上で595nmでモニタリングされる200μg/mL〜1mg/mLの範囲のウシ血清アルブミン(BSA)標準を使用して、17nmおよび70nm孔径ビーズからのビーズ分別試料をアッセイした。
【0075】
1Dゲル分離および消化:
各ビーズ分別試料15gおよび未処理血清3μLをLDS試料緩衝液30μLで希釈し、95℃で5分間煮沸した。画分を1Dプレキャストゲル(4〜12%ビストリス)上で移動させて、複雑なタンパク質混合物の所望の分子量領域を分離させた。ゲルをddH2Oで徹底的に洗浄し、50%メタノール/10%酢酸溶液中で30分間固定し、Sypro (登録商標)ルビー染料で夜通し染色し、ddH2O中で3時間脱染したのちUV励起および可視化した。ゲルを1mm2ゲル領域にスライスし、ゲルバンドを50%メタノール中で脱染した。ゲルバンドを10mMジチオトレイトール(DTT)および55mMヨードアセトアミドで還元し、アルキル化し、トリプシン(20ng/μL)中4℃で1時間インキュベートし、25mM NH4HCO3中37℃で夜通し(16時間)消化させた。翌朝、70% ACN/5% ギ酸溶液の反復インキュベーションによってゲルからタンパク質を抽出した。
【0076】
μLC/MS/MS分析:
質量分析のために、試料をほぼ乾燥状態まで凍結乾燥させ、HPLC緩衝液A(95% H2O、5% ACN、0.1% FA) 6.5μL中で再構成した。DionexのLC Packings液クロマトグラフィーシステムを、修飾ナノスプレーソースを有するThermoFinnigan LCQ Classicイオントラップ質量分析計(San Jose, CA)にオンライン接続したものにより、マイクロ毛管逆相LC/MS/MS分析を実施した。自社製のスラリー充填毛管カラムで逆相分離を実施した。C18シリカ結合カラムは、内径75μm、外径360μm、長さ10cmの石英ガラスに300Å孔を有する5μmビーズを充填したもの(Vydac、Hesperia, CA)である。μ-プレカラムPepMap、5mm、C18カートリッジ(Dionex)が脱塩カラムとして作用する。試料をμLピックアップモードで注入し、緩衝液Aで5分間洗浄したのち、緩衝液B(95% ACN/5% H2O/0.1% ギ酸)で、200nL/分の流量で95分かけて85%まで線形勾配溶離させる。フルMSスキャンののち、もっとも豊富なペプチドイオンの4回のMS/MSスキャンを実施し(データ依存モードで)、衝突誘発解離(CID)を、衝突エネルギー38%、イオンスプレー電圧2.00kV、毛管電圧および温度それぞれ22.80Vおよび180℃で実施する。
【0077】
データ分析:
Sequest Bioworks Browser(ThermoFinnigan)により、Swiss-Prot、TrEMBLおよびEnsemblエントリの非冗長プロテオームセットのEuropean Bioinformatics Instituteに対してMS/MSスペクトルをサーチすることによってデータ分析を実施した。相関スコアのフィルタリング(表1)およびMS/MSデータの手作業の検査ののち、ペプチドを正当なヒットとみなした。データをフィルタリングするために使用した基準は、少なくとも、大部分の引用文献と同じくらい厳格である。
【0078】
(表1)

【0079】
受け入れられたペプチドヒットは、データベース中の他すべてのペプチドに対してXcorrランキング=1を有しなければならない。
【0080】
結果
ナノ多孔性ケイ素を使用する血清枯渇
血清を分別するための一つの策略は、血清からそのタンパク質含有部分を枯渇させたのち、残りのタンパク質種を分析することである。図6を参照。この手法を試みるためには、ナノ多孔性基材をケイ素から製造した。非対称面を有するナノ多孔性シリコンウェーハをプール血清試料とでインキュベートした。1.5時間のインキュベーションののち、ウェーハを取り出し、血清内の残りのタンパク質をMS評価に付した。図7を参照。表面増強レーザ脱離イオン化(SELDI)質量分析法からの新たなイオンピークパターンの出現が分別技術の結果として生じた。非分別血清だけに比較すると、スペクトル全体が劇的に異なるように見えた。枯渇実験の場合、MSスペクトル内の二つのピークが顕著に変化した。8122m/zのピークは、天然の血清試料、すなわち非分別血清試料と比較して、枯渇試料で有意に増強していた。他方、8927m/zピークは、天然血清におけるその優位と比べ、枯渇試料内では顕著に減少していた。したがって、インキュベーションおよびその後のナノ多孔性粒子の除去が血清のスペクトル性を変化させて、以前は小さかったピークのプロフィールを支配的な強さ区域へと増強した。
【0081】
ナノ多孔性孔径制御ガラスを使用する分子収穫
プロテオームサインを求めて枯渇血清を計測する代わりとして、その後の溶離およびプロファイリングに備えて分子種を分離するためのビーズ収穫策略を開発した。図8を参照。選択的分子単離および放出のために、アミノプロピルでコートした異なる孔径(17nm対70nm)のガラスビーズを血清とでインキュベートした。血清とのインキュベーションののち、ビーズを水でやさしく洗浄し、次いで、強い溶液を使用して結合分子を溶離させた。そして、溶離種をSELDI MSによって分析し、非分別血清のスペクトルとで比較した。図9を参照。17nmビーズ溶離物の目視検査は、非処理血清とで比較した場合の独特なMSスペクトルポートレートを明らかにした。ここでもまた、目視検査によって、収穫試料と天然(未処理)血清とを比較した場合、7762のm/zにおける顕著な差を十分に検出することができた。8927m/zのピークが通常の血清におけるスペクトル概観を支配するが、収穫されたサブセットで支配的な役割を担うものは7762m/zピークである。
【0082】
独特なスペクトルサインの生成においてナノ孔径が演じる効果を評価するために、70nm孔径制御多孔性ガラスビーズを同一実験で使用した。印象的に、より大きな孔径制御多孔性ガラスビーズを使用した結果、顕著に異なるSELDI MSスペクトルが生じた。図10を参照。6629m/zで、新たな主ピークがビーズから溶離したスペクトルパターンを支配するようになった。同じm/zにおける通常の血清ピークはほとんど認識不可能であった。対照的に、通常の血清中の8927ピークは、より大きな孔径のビーズから溶離したタンパク質のセット内で副次的な状態を見せた。
【0083】
17nm孔径ビーズまたは70nm孔径ビーズのいずれかから溶離した分子成分をさらに特性決定するために、各試料からのタンパク質15μgを4〜12%ビストリスSDS-PAGEゲル上で移動させたのち、Sypro(登録商標)ルビーレッドで染色した。図11を参照。分子量スペクトルを通じて二つのタイプのビーズからの溶離物の間で明確な違いが認められた。この発見は、SELDIベースの分析で認められた顕著な違いと合致するものであった。一次元電気泳動による溶離物の含有分子の分析は、ビーズが血清の含有分子を差別的に分別しているというさらなる確証を提供した。
【0084】
17nm孔径ビーズからの溶離物と70nm孔径ビーズからの溶離物との間の違いをさらに特徴付けるため、SDS-PAGEゲルからのバンドを切り出し、ゲルスライスの含有タンパク質をトリプシンによって消化した。電気スプレーイオン化質量分析法を使用して、得られたペプチド断片を分析した。スペクトルデータの問い合わせののち、ペプチドアイデンティティをゲルの含有プロテオームに割り当てた。図12を参照。70nm孔径ビーズからの溶離物内では25のペプチド種が同定され、17nm孔径ビーズからの溶離物内では13のペプチド種が同定された。同定されたペプチド種のいくらかの重複があったが(6種が共通)、有意な分別が起こったことを示す違いが認められた。したがって、三つの別個の分析は、異なる孔径のガラスビーズが血清成分分別手段を提供するということを示す。
【0085】
考察
質量分析法をバイオインフォマティックスデータ採取手法と併用するプロテオームプロファイリングは、重要な診断情報を含むかもしれない、循環性プロテオームの低分子量範囲内に含まれる複雑で刺激的な情報アーカイブを明らかにした。ナノ多孔性材料面、たとえばシリコンウェーハおよび孔径制御ガラスビーズが、血清のような体液に含まれる低分子量生物学的情報を分別し、操作するための新たな策略的手段を提供する。MS分析をバイオインフォマティック問い合わせと組み合わせるナノ多孔性材料面の体系的評価が、高められた疾病検出性を有する特定の分別スキームを明らかにし、精密検査のための拡張された分子セットを同定し、分子そのものの精製、分別およびペプチド/タンパク質配列決定のための、より容易でロバストな手段を提供することができる。
【0086】
そのために、この研究では、ナノ孔を有する材料面を使用する血清の分別が、結果として、有意に変化したスペクトルプロフィール、変化した1D電気泳動プロフィールおよび差別的な配列アイデンティティを生じさせることができる。これらのパラメータそれぞれは、17nm孔径ビーズまたは70nm孔径ビーズのいずれかを使用することにより、有意で独特な分別が起こったことを示唆する。ESI MSによって同定されたペプチド種のうち6種はいずれもビーズタイプを使用しても収穫されたが、一つのタイプのビーズを使用してのみ単離される明確なペプチドがあった。配列決定されたペプチドは、高存在度血漿タンパク質および低めの存在度の種を含むものであった。たとえば、70nm孔径ビーズでは、RNAポリメラーゼII転写サブユニット8相同体の媒介物と呼ばれるタンパク質が単離された。孔径17nmビーズの分画では、ヒストン4およびゴルジ自己抗原が収穫された。従来は血清タンパク質とは考えられていなかったこれらの分子種の存在は、生体タンパク質の断片が血清に進入し、その生体の全体状態の潜在的なポートレートを提供するという仮説を裏付けることができる。70nm孔径ビーズを使用して単離された一つのタンパク質であるアポリポタンパク質A-1は、最近、卵巣癌の潜在的なマーカとして報告されている(Zhang et al., 2004)。加えて、今挙げた研究で同じく潜在的な卵巣癌マーカとして報告されているトランスチレチンが、17nm孔径ビーズを使用して収穫された。
【0087】
血液からのバイオマーカ情報回収を高めるための特殊な技術の使用は、解剖学的病理診断における特殊な組織化学的研究の使用に類似しているかもしれない。解剖学的病理は、患部組織標本と正常組織標本との間の差違分析によって差別要素を生成する徴候学である。疾病の指標は、通常に染色された組織切片の困難な目視比較ののち、また、新規な組織化学的技術の適用ののち、見いだされる。病理/組織情報採取を調査するための後者の手法は、ときおり、多くの疾病および症状の帰納的再分類を促すほど実り多いものであった。したがって、多くの病的状態の診断は、組織化学的な特殊な研究ののち本質的に明らかにされる情報に頼るようになった。図13を参照。H&Eスライドのような通常の研究を越える特化された組織分析は組織の情報内容を増大させないが、回収可能な情報を有意に増大させて、疾病分類および予後判定における新規な改善を生じさせ、疾病の起源および基本的な生物学へのさらなる手がかりを提供するかもしれない。
【0088】
血清および循環性プロテオームは、高存在度分子と低存在度分子との混合物であることができ、重要な診断情報を有する大部分のバイオマーカは、濃度範囲の低めの存在度の領域に存在するかもしれない。臨床プロテオミクスにとっての挑戦は、複雑な生物学的試料中でそのような低存在度分子を速やかに同定するツールを開発することである。一つの手法は、高速でロバストで容易な分別および選択的精製のための表面または枯渇アーキテクチャを通過する流れを発生させることである。ナノ多孔性材料は、異なる孔径および電荷特性を孔表面に加えることができるように物理的修飾を施しやすい。これらの差別的性質が、血清内のタンパク質の分別の微調整を可能にすることができる。さらには、基材の分別性をさらに改善するために、アフィニティータンパク質を材料面に加えることもできる。
【0089】
上記実験は、ナノ孔を有する材料面を使用する血清の分別が、分別方法の効果を示す、有意に変化したスペクトルプロフィールを生じさせることができることを示す。ナノ多孔性材料の一つの用途は、血清試料のための採取装置であることができる。血清中の不安定な分子がバイオマーカとしてますます興味深いものになるにつれ、標準化された採取手順を創始することができる。ナノ多孔性基材は、不安定な小分子を隔離する一つの手段を、血清採取手順に適合させやすいフォーマットで提供することができる。このタイプの用途では、特化されたナノ多孔性基材は、その後の分析および/または可視化に備えて特定の組織性質を保存するために選択的ケースで選択される、特化された組織固定剤に似ているともいえる。
【0090】
ケイ素はミクロンサイズの粒子に形成することができるため、ナノ多孔性基材を血液細胞のサイズ範囲で開発することができる。そのような粒子は、豊富な血清タンパク質およびそれらが運ぶ低分子量荷物の分別のための孔径および他の物理化学的性質の範囲を有するように設計することができる。追加的な特徴として、ミクロンサイズの粒子は、差別タグ、たとえば金属タグまたは量子ドットでコードすることができる。そのような策略は、Bruchez et al., 1998;Han et al., 2001;Nicewarner-Pena et al., 2001に記載されている方法と同様にして、血液を収穫し、選別または濃縮プロセスによって粒子を血液細胞から単離することを可能にすることができる。
【0091】
本研究は、循環性プロテオームを選択的に分別し、精製し、分析するための手段として低分子量分子のナノ多孔性ベースの分離および分別の実施可能性を実証する。
【0092】
参考文献



【0093】
実施例3
この実施例における上付き文字の引用番号は、実施例3の末尾の参考文献一覧を参照する。
【0094】
概要
血清/血漿プロテオームの低分子量領域(LMWP)は、疾病のための診断マーカの潜在的なソースとして関心を集めている1-3。質量分析法(MS)による血清LMWタンパク質プロファイリング4は、一般に、特定のチップ表面に事前に吸着された分析物のMSプロファイリングを含む表面増強レーザ脱離/イオン化飛行時間型(SELDI-TOF)5に頼るものであった6-9。しかし、生体流体中に存在する豊富な高分子量タンパク質の干渉が感度を制限するおそれがあり、分析の再現精度に影響するかもしれない10。MS分析の前にLMWポリペプチドの特異的取り込みを可能にする装置を使用することによってMSベースのプロファイリングの選択性を改善すると、そのような干渉を最小化することができる。この報告では、ナノ多孔性面を使用してヒト血漿からLMWペプチド(<15,000Da)を選択的に捕獲した。結合分子を検出し、評価するための手段としてマトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)を使用して、収穫したペプチドの質量分析(MS)を実施した。増大した分析感度のおかげで、ヒト血漿中にng/mL濃度レベルで存在する小さな(<4,000Da)ペプチドの検出を達成した。
【0095】
結果および考察
この研究のねらいは、サイズ排除原理に基づいて体液に含まれるLMWペプチドを単離するための手法を開発することであった。この目標を達成するために、適正な多孔性を有するナノ多孔性面を使用して分子カットオフを作用させた。シリコンチップに厚さ500nmの酸化ケイ素多孔性フィルムでコートすることによって装置を製造した。ローレンツ・ローレンスモデルを使用して、屈折率を計測して、フィルムの多孔率を楕円偏光法によって測定した。推定の多孔率は57%であった。窒素吸着・吸着等温線計測を使用して測定したフィルムのBET (Brunauer-Emmett-Teller)表面積は670m2/gであった。平均孔径は約7nmであった。図14は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して酸化ケイ素ナノ多孔性フィルムの形態を示す。
【0096】
製造したチップを、ヒト血漿からLMWペプチドを収穫するために使用した。ナノ多孔性面をイソプロパノールおよび脱イオン水の連続洗浄で湿潤させたのち、ヒト血漿一滴(5μL)を直接チップ表面に塗布し、続いて、ペプチド/タンパク質種の捕獲のためにインキュベートした。脱イオン水での一連の洗浄ののち、高い割合の有機溶媒(50%v/v)を含有する酸性MALDIマトリックス溶液(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸、CHCA)の添加によって結合種を表面から解放した。抽出溶液の1μLアリコットをMALDIプレートに付着させ、MS分析に使用した。図15では、ナノ多孔性シリカ面を使用して得られたMALDI-TOFスペクトルと、固体非ナノ多孔性シリカの対照面を使用して得られたスペクトルとが比較されている。前者では、インキュベートした血漿中に1μg/mLの濃度でスパイキングされた、ヒトカルシトニンを含む約70種の低Mwペプチドが検出されている。対照的に、対照面の分析から得られたMSスペクトル中ではペプチドが検出されなかった。また、同じナノ多孔性試料に対し、大きなタンパク質に対してより特異性であるマトリックスであるシナピン酸を使用して相補的MALDI-TOF分析を実施した。この場合、他のやり方ではMALDI-TOFスペクトルを支配するであろうアルブミンおよび他いくつかの豊富な血漿タンパク質の極微量抽出物が検出されたが、ほぼすべてのMSシグナルは15,000m/z未満の領域に集中していた。したがって、15kDaが、用いられる実際の実験条件および表面のナノ多孔率によって達成されるおおよそのカットオフ質量値であるといえる。
【0097】
本発明は理論によって制限されないが、図15に示すような血漿からのLMWペプチドの単離および検出は、おそらくは、チップ表面の特異的なナノメートルサイズ多孔性のおかげである。孔を容易に貫通するのに十分な小ささの分析物だけがチップ表面に定量的に吸着することができる。したがって、この手法は、LMW濃縮および分析のために選択的に用いることができる。
【0098】
チップ表面への分析物吸着は、インキュベーションステップ中の捕獲後のチップの徹底的な洗浄に耐えるのに十分な強さでなければならない。この具体的なケースでは、LMW分析物とシリカナノ多孔性層上に存在するシラノール基とのイオン相互作用が分析物結合の原因であるかもしれない。
【0099】
生成されるプロフィールの反復精度を評価するため、同じ血漿試料に対して5回の反復分析を実施した。得られたMALDI-TOFスペクトルが図16に報告されており、図中、LMWプロフィールの反復精度を認めることができる。
【0100】
方法の検出限界(DL)は、市販のペプチドであるカルシトニンを異なる濃度でヒト血漿に加えることによって推定することができる。分析の前に、インビボの条件を模倣するために、ヒトカルシトニンを血漿中にスパイキングした。分析は、スパイキングした血漿をナノ多孔性シリカ面上でインキュベートしたのち、MALDI-TOFプロファイリングすることによって実施した。図17は、20ng/mLまでの四つの異なる濃度レベルでのカルシトニンプロトン化分子に対応するピークの強さ(理論的m/z=3421.0)を示す。この濃度DLは、同様な手法を使用した文献11で報告されている最近のデータに対して劇的な改善を示す。
【0101】
最低のカルシトニン濃度20ng/mLを有するスパイキングされた血漿一滴が絶対量100pgののカルシトニンを含有していた(5μLをナノ多孔性面に塗布)。分析のために抽出溶液の1/3がMALDIプレートに付着したと考えると、最大33pgのカルシトニンがMALDI-TOF検出のために利用可能であった。このような量は、標準条件(標準ペプチド溶液をCHCAマトリックスと混合し、1μLを分析のためにMALDI標的に付着)でのMALDI-TOFによって分析されるカルシトニンの実際のDLに一致する。これは、スパイキングされたカルシトニンの有意部分が、分析した最低濃度でさえ、ナノ多孔性面によって血漿から効率的に収穫され、LMWペプチド抽出ののちMS検出のために利用可能なったことを示す。
【0102】
ケイ素ベースのナノ多孔性面はまた、そのような分子カットオフを創製することが可能であった。ナノ多孔性ケイ素は、電気化学的エッチングにより、メゾスコピックなトポグラフィー(ケイ素のミクロサイズの洞を覆う、ナノ多孔性シリカに似たナノサイズ有孔フィルム)を創製することによって製造した。ナノ多孔性ケイ素は、上記のプロトコルにおいて、シリカコートされたチップの代わりに収穫剤として使用された。大きなタンパク質アルブミンの強い過剰の存在における二つの低MW標準ペプチドの隔離が質量分析法によって観察された。
【0103】
方法
ナノ多孔性面製造
酸化物のナノ多孔性フィルムは次のようにして調製した。界面活性剤EO106PO70EO106 (Pluronic F127、BASF) 8.71gをエタノール23gに加えた。次いで、テトラエチルオルトシリケート(TEOS、Aldrich) 10g、塩酸塩(20%) 0.1006g、エタノール10gおよび水10.629gの混合物を激しく撹拌しながら加えた18。室温で3〜6時間熟成させたのち、前駆体溶液をシリコンウェーハ上に1900rpmで30秒間スピンコートした。スピンコート後、フィルムを炉に入れて100℃で12時間、次いで400℃で2時間ベーキングした。
【0104】
試料調製
イソプロパノールを使用してチップ表面を湿潤させた。水洗ののち、健常なボランティアから合意のうえヒト被験者保護のための施設内倫理委員会(Institutional Review Board)監視の下で得たヒト血漿(公表されているガイドライン19にしたがって採取) 5μLをチップ表面に塗布し、室温で湿度100%中30分間インキュベートした。ピペットを使用して試料を取り出した。そして、表面を水の5μLアリコットで連続5回洗浄して、そのたび小滴を表面上に1分間付着させた。最後の洗浄ののち、アセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)との1:1混合物(v/v)中α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA, Sigma) 3mg/mLからなるMALDIマトリックス溶液3μLを使用して、チップ表面に結合した分析物を抽出した。抽出物1μLをMALDI試料プレートに付着させ、質量分析の前に乾燥させた。
【0105】
質量分析法
337nmで発光する窒素レーザを備えたVoyager-DE (商標)STR MALDI-TOF (Applied Biosystems)質量分析計でMALDI-TOFを実施した。700ナノ秒の遅延抽出時間および20kVの加速電圧を使用して、リニアポジティブモードでスペクトルを取得した。典型的には、500〜600のレーザショットを平均化して最終的な試料スペクトルを生成した。
【0106】
参考文献


【0107】
実施例4
血管形成性タンパク質を収穫し、標的化するためのプロテオームナノチップ
この実施例における括弧内の引用番号は、実施例4の末尾の参考文献一覧を参照する。
【0108】
質量分析法(MS)は、20kDa未満の分子量を有するペプチドの定性的および定量的特性決定のための強力な技術である。感度の点で、最近、レーザ脱離MSが、低アタモルレベルの感度内でペプチドを検出することができることが実証された(7)。したがって、原則的に、MSは、数マイクロリットルの利用可能な試料を使用するだけで、溶液中にpg/mLのレベルで存在するペプチドへの分析アクセスを可能にする。ヒト血清および組織中そのような低レベルのペプチド種の検出は、バイオマーカ発見のためのきわめて強力なツールとなる。そうではあるが、そのようなレベルの感度は、ヒト血清または組織の通常のMS分析によっては未だ達成されていない。これは、主として、せいぜい最大で10,000倍過剰の干渉種、たとえば他のタンパク質/ペプチドの存在でしかペプチド分析物を検出することができないMS分析の限られたダイナミックレンジのせいである。mg/mLレベルで存在する高分子量担体タンパク質の干渉は、最大で3〜4桁低い、すなわち低μg/mL範囲内の濃度で存在するペプチドの検出を可能にする。
【0109】
最近の注目は、診断マーカの潜在的供給源としてのヒト血清内の低分子量プロテオーム(LMWP)に集中している(3、8〜11)。血清および組織中に非常に低いレベルで存在するLMWPの分析のためのMSの使用は、この重要な情報ソースを検出する能力を高めるためには徹底的な試料分別が必要であるかもしれないことを暗示する。分析されるペプチドの複雑さを減らすことができる一つの方法は、特異的な物理化学的特性を有する全プロテオームの画分の単離、たとえばサイズに基づくペプチドの分別である。
【0110】
特定の孔径および多孔率を有するナノ多孔性シリカ/ケイ素ベースの表面は、血清試料中の低分子量ペプチドの吸着を可能にする。規定された特性を有するこのような表面の使用は、分子カットオフまたはふるいを生成する。したがって、LMWPの収穫のために数マイクロリットルの血清をナノ多孔性面に直接塗布することができる。そして、ナノ多孔性面を洗浄したのち、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型MS(MALDI-TOF MS)によって結合分析物を採取し、プロファイリングすることができる。この手法によって提供されるナノ多孔性面を使用する特定のサイズのタンパク質の検出の感度の改善は、血清および組織中にng/mL濃度で存在するLMWPの探索を可能にする。
【0111】
この実施例は、血清および腫瘍組織中に存在するペプチドの捕獲および同定の感度を増強するための手段としてナノ多孔性粒子を開発することに加えて、集積シリカ/ケイ素チップを開発し、改良して感度を改善することを重視する。チップ表面は、不活性で非孔性で非吸着性のチップ表面上に分布したいくつかのパターン化された「有効」ナノ多孔性スポットで構成されている。シリカ/ケイ素チップの表面性質の改変が、チップに付着した血清または組織抽出物の5〜10μL試料に含まれるLMWペプチドを「スポット」領域に吸着させ、集中させ、閉じ込めることを可能にすることができる。MS分析の前の最小量(100〜200nL)の結合分析物の抽出が感度を増強することができる。さらには、ナノ多孔性スポット面を有するチップからの直接MSイオン化がさらなる試料希釈を回避させるであろう。オンチップ濃縮手法を直接「スポット」イオン化と組み合わせることにより、感度の改善は、現在するpg/mL範囲の分析限界を超えることができる。
【0112】
標準条件(たとえば、試料/マトリックス溶液1μLを標的に塗布)の場合、実際には、生成される結晶のごく小さな部分だけがレーザによって攻撃され、MSデータの取得に使用される(通常は0.1〜1%)。感度改善は、チップの表面性質を調節することにより、ペプチド分析物の表面上前濃縮のために達成することができる。ケイ素チップ面は、レーザイオン化のために、いくつかのパターン付けされた「有効」ナノ多孔性スポットおよび非孔性の不活性(したがって、非吸着性)チップ表面を提示するように構成することができる。最初の試料滴下が、不活性面によって包囲された単一のナノ多孔性「スポット」に集中するならば、そのような手法は、チップに付着した5〜10uLの血清試料に含まれるLMWペプチドを閉じ込め領域(すなわち、ナノ多孔性「スポット」)に吸着させ、濃縮させることを可能にすることができる。MS分析の前の最小量(100〜200nL)の結合分析物の抽出はまた、分析物検出感度を増強するのにも有益であることができる。さらには、ナノ多孔性スポット面からの直接MSイオン化は、さらなる試料処理/マトリックスによる希釈を回避させることができる。ナノ多孔性スポットの直径は、i)結合ペプチドをナノ多孔性面から抽出し、MALDI試料ステージに付着させる場合、マイクロピペットによって扱うことができる最小容量、ii)チップから直接イオン化を試みた場合、レーザスポットの直径、のいずれかによって制限されることができる。第一の選択肢では、直径0.5〜1mmの範囲のナノ多孔性スポットを試験することができ、そのためには、数百ナノリットル範囲の抽出溶液量を要することができる。第二の場合には、0.1〜0.2mmのスポット直径を試験することができる。オンチップ濃縮と直接「スポット」イオン化との組み合わせが、血清または組織試料中のLMWPの分析に関して分析物検出感度における桁違いの改善を提供することができ、そのような分析物のMS分析の限界をng/mL範囲未満まで押し下げることができる。
【0113】
実験法
ナノ多孔性面の製造:
ナノ多孔性酸化物フィルムは次のようにして調製した。界面活性剤EO106PO70EO106 (Pluronic (登録商標) F127)8.71gをエタノール23gに加えた。そして、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)10g、塩酸塩(20%) 0.1006g、エタノール10gおよび水10.629gの混合物を激しく撹拌しながら加えた。室温で3〜6時間熟成させたのち、前駆体溶液をシリコンウェーハ上に1900rpmで30秒間スピンコートした。スピンコート後、フィルムを炉に入れて100℃で12時間、次いで400℃で2時間ベーキングした。フィルムの厚さ約500nmであった。多孔率は57%であると推定され、平均孔径は7nmであった。窒素吸着・吸着等温線計測を使用して、BET (Brunauer-Emmett-Teller)表面積は670m2/gであると推定された。
【0114】
プロテオームチップの製造:
ケイ素チップ製造のプロセスは、四つの光リソグラフィーステップおよび柔接触を使用する一つの表面処理を含むことができる。標準的な洗浄ステップののち、反応性イオンエッチング(RIE、Lam Cl2:He=180:400sccm 100W 300mT)を使用して、レーザスポット照射区域をパターン付けし、エッチングした。電子ビームエバポレータ(Denton Vacuum、電流100mA、付着速度0.1nm/min)を使用して10nm/50nmの薄いチタン/金層を付着させ、フォトレジストの剥離によってパターン付けした。前セクションで記載したプロトコルを使用してナノ多孔性面をスピンコートし、400℃でアニールした。リソグラフィーによってナノ多孔性面を画定し、緩衝液酸化物エッチング剤を使用してエッチングした。厚いネガティブ感光性レジストSU-8 (MicroChem Incより) を使用して、試料スポット塗布のためのチップのウェルを製造した。製造者によって推奨されるプロトコルを使用して露光、ベーキング、露光後ベーキングおよび現像したのち、25μmのSU-8ミクロ構造が形成した。ポリエチレングリコール(PEG)の処理の前に酸素プラズマ(MicroRIE 100W、O2 100sscm)を使用して清浄した。前濃縮ステップでPEGを使用して非孔性ケイ素面へのタンパク質吸着を減らした。ウェーハを1% PEG (Mw1000Da、トルエン中)中にトリエチルアミンおよび四塩化ケイ素の添加物とともに浸漬して、シリカ表面上に共有結合を形成させた。ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS, Dow Corning)を、パターンレリーフを有するマスタに対してエラストマースタンプとして流し込んだ。スタンプをトルエン中5%クロロ(ジメチル)オクタデシルシランの溶液に浸漬し、乾燥させ、基材と接触させた。50℃で夜通し加熱し、スタンプを除去した。直鎖状オクタデシル炭化水素鎖(C18)が、レーザスポット区域のための優れた結合能力を提供する。
【0115】
表面修飾:
チップは、特定の表面組成を有する二つの別個の区域をそれぞれが有する別個のウェルで構成されることができる。表面を酸素プラズマ(O2100sccm、50W)中でヒドロキシル化した。イソプロパノール(IPA)中0.5% v/v 3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を室温で30分間用いるシラン化によって正電荷アミン基を表面に導入した。IPA中0.5% v/v 3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)および0.5% v/v H2Oを使用して、負電荷チオール基を表面にコートした。親水性のヒドロキシル基を、トリエチルアミンおよび四塩化ケイ素を添加した1%ポリエチレングリコール(PEG)で処理した。疎水面を5%クロロ(ジメチル)オクタデシルシラン(C18)によって誘導体化した。シラン化ののち、粒子を溶媒中で5回洗浄し、110℃で2時間乾燥させることができる。物理的(電荷)および官能基を計測することができる。たとえば、APTES処理面上の電荷の量は、ゼータ電位計測によって計測することができ、官能性アミノ基の密度は、Fmoc法により、たとえばピペリジン0.4ml、DCM 0.4mlおよびMeOH 1.6 mlを使用して測定することができる。非処理表面および疎水性ナノ多孔性面を、濃縮LMWPに対する官能基の寄与を研究するための対照として使用することができる。
【0116】
組換えタンパク質の生成:
これらの実験はマウス系におけるVEGF転写物の様々な発現の初めての同定であったため、VEGF144およびVEGF2O5*の配列をクローン化し、確認した。組換えタンパク質を生成して、新たに同定されたVEGF144およびVEGF205*スプライス変異体の機能性を分析した。
【0117】
低分子量タンパク質の分別:
イソプロパノールを使用してチップ表面を湿潤させることができる。水洗ののち、血清/腫瘍試料5μLをチップ表面に塗布し、室温で湿度100%中30分間インキュベートすることができる。マイクロピペットを使用して過剰な試料を取り除くことができる。そして、表面を、界面活性剤を含まないHPLC用の無菌脱イオン水の5μLアリコット連続5回の添加によって洗浄して、そのたび小滴を表面上に1分間付着させる。最後の洗浄ののち、アセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)との1:1混合物(v/v)中α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA) 3mg/mLのMALDIマトリックス溶液3μLを使用して、チップ表面に結合した分析物を抽出することができる。質量分析の前に抽出物1μLをMALDI試料プレートに付着させ、乾燥させることができる。
【0118】
質量分析法:
337nmで発光する窒素レーザを備えたVoyager-DE (商標)STR MALDI-TOF (Applied Biosystems)質量分析計を使用してMALDI-TOFを実施することができる。700ナノ秒の遅延抽出時間および20kVの加速電圧を使用して、リニアポジティブモードでスペクトルを取得した。典型的に、500〜600のレーザショットを平均化して最終的な試料スペクトルを生成した。
【0119】
タンパク質配列研究:
タンパク質アッセイ法:
従来のBradfordアッセイ法により、UV-VIS分光光度計(Spectramax (登録商標)Plus 384、Molecular Devices)上で595nmでモニタリングされる200μg/mL〜1mg/mLの範囲のウシ血清アルブミン(BSA)標準を使用して、分別試料をアッセイした。
【0120】
1Dゲル分離および消化:
各ビーズ分別試料15gおよび血清3μLをLDS試料緩衝液30μL中に希釈し、95℃で5分間煮沸することができる。画分を1Dプレキャストゲル(4〜12%ビストリス)上で移動させて、複雑なタンパク質混合物の所望の分子量領域を単離することができる。そして、ゲルをddH2Oで徹底的に洗浄し、50%メタノール/10%酢酸溶液中で30分間固定し、Sypro (登録商標)ルビー染料で夜通し染色し、ddH2O中で3時間脱染したのちUV励起および可視化することができる。そして、ゲルを1mm2ゲル領域にスライスし、ゲルバンドを50%メタノール中で脱染した。ゲルバンドを10mM DTTおよび55mMヨードアセトアミドで還元し、アルキル化し、トリプシン(20ng/μL)中4℃で1時間インキュベートし、25mM NH4HCO3中37℃で夜通し(16時間)消化させることができる。翌朝、70% ACN/5% ギ酸溶液の反復インキュベーションによってゲルからタンパク質を抽出することができる。
【0121】
LC/MS/MS分析:
質量分析のために、試料をほぼ乾燥状態まで凍結乾燥させ、HPLC緩衝液A (95% H2O、5% ACN、0.1% FA) 6.5μL中で再構成することができる。DionexのLC Packings液クロマトグラフィーシステムを、修飾ナノスプレーソースを有するThermoFinnigan LCQ Classicイオントラップ質量分析計(San Jose, CA)にオンライン接続したものにより、マイクロ毛管逆相LC/MS/MS分析を実施することができる。自社製のスラリー充填毛管カラムで逆相分離を実施した。C18シリカ結合カラムは、内径75μm、外径360μm、長さ10cmの石英ガラスに300Å孔を有する5μmビーズを充填したもの(Vydac、Hesperia, CA)である。μ-プレカラムPepMap、5mm、C18カートリッジ(Dionex)が脱塩カラムとして作用する。試料をμLピックアップモードで注入し、緩衝液Aで5分間洗浄したのち、緩衝液B (95% ACN/5% H2O/0.1% ギ酸)で、200nL/分の流量で95分かけて85%まで線形勾配溶離させる。フルMSスキャンののち、もっとも豊富なペプチドイオンの4回のMS/MSスキャンを実施し(データ依存モードで)、衝突誘発解離(CID)を、衝突エネルギー38%、イオンスプレー電圧2.00kV、毛管電圧および温度それぞれ22.80Vおよび180℃で実施する。
【0122】
データ分析:
Sequest Bioworks Browser(ThermoFinnigan)により、Swiss-Prot、TrEMBLおよびEnsemblエントリの非冗長プロテオームセットのEuropean Bioinformatics Instituteに対してMS/MSスペクトルをサーチすることによってデータ分析を実施した。相関スコアのフィルタリング(表2を参照)およびMS/MSデータの手作業の検査ののち、ペプチドを正当なヒットとみなした。データをフィルタリングするために使用した基準は、少なくとも、大部分の引用文献と同じくらい厳格である。
【0123】
(表2)

【0124】
受け入れられるペプチドヒットは、データベース中の他すべてのペプチドに対してXcorrランキング=1を有しなければならない。
【0125】
参考文献



【0126】
実施例5
タンパク質分解断片収穫のためのナノ多孔性粒子
ナノテクノロジーと質量分析法(MS)とを併用する手法の開発は、乳癌患者の血清中に存在する低分子量プロテオーム(LMWP、<20kDaまたは<15kDa) 内の既知および新規タンパク質を高速で同定するのに有望である。そのような作業の挑戦は、より大きな血清担体タンパク質、たとえばアルブミンの隠蔽効果を減らしながらも、一方で乳癌のような疾病の検出および診断に有用であるかもしれない、異なるタイプの治療に対する個々の患者の応答の予後または評価の予測要素としての、低分子量、低存在度タンパク質の濃度を高めることであるといえる。これらの研究では、特定の孔径を有し、特定の表面特性、たとえば正もしくは負の電荷または疎水性を有するナノテキスチャ付きシリカ/ケイ素ベースのチップであって、ヒト乳房腫瘍異種移植片を有するヌードマウスから単離した血清中に存在する、様々な分子量範囲内のタンパク質の吸着を差別的に増強することができるチップを開発した。MCF-7/ベクター対照細胞に比べて50倍レベルのプロスタグラジンE2 (PGE2)および5倍増のエストラジオールレベルを産生するヒトMCF-7/シクロオキシゲナーゼ-2 (MCF-7/Cox-2)乳房腫瘍異種移植片から血清を単離した。MCF-7/Cox-2ヒト乳房腫瘍細胞を、ベータ-エストラジオールの徐放ペレットを埋植された8〜10週齢の卵巣切除雌ヌードマウスの乳房脂肪パッドに注入した。腫瘍細胞注入から15、28、42および60日目に、心穿刺によって血液を単離し、処理して血清試料を単離し、ナノチップ上に溶離させたのち、そのナノチップをマトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)プロテオーム分析および質量分析法/マイクロシーケンシング(MS/MS)と組み合わせた。同じ時点で、プロテオーム分析および組織学的評価のために乳癌腫瘍異種移植片を計測し、単離した。これらの研究は、特定の表面特性を有するシリカ/ケイ素ナノチップとMS手法との併用が、ヒト乳房腫瘍異種移植片を有するマウスの血清中の低分子量タンパク質の高再現精度かつ高感度のスペクトルポートレートならびに発生、浸潤および転移の早期に乳房腫瘍によって産生されるタンパク質の高感度検出を提供することを実証する。これまでのところ、ヒト腫瘍異種移植片を有するマウスから単離された血清のLMWP内で79種の固有のタンパク質が同定されている。
【0127】
実験設計および方法
試験動物の血液は、腫瘍発生に関して確立された以下のスケジュールにしたがってマウスから採取することができる。
【0128】
試料は以下を含む。
対照マウス15匹 ― 血液0.8〜1.5ml(血清0.4〜0.75ml)
ヒト乳房腫瘍異種移植片を28日間有するマウス15匹 ― 血液0.8〜1.5ml(血清0.4〜0.74ml)
ヒト乳房腫瘍異種移植片を42日間有するマウス15匹 ― 血液0.8〜1.5ml(血清0.4〜0.74ml)
ヒト乳房腫瘍異種移植片を60日間有するマウス15匹 ― 血液0.8〜1.5ml(血清0.4〜0.74ml)
【0129】
すべての分析は、血液試料から取得した血清に対して実施することができる。
【0130】
血清採取および貯蔵
血液は、心穿刺によって取得し、上部が赤い管に採取し、4℃で2時間凝固させ、血餅を除去することができる。
【0131】
各マウスからの血清は、遠心分離ののち採取し、以下のようにクリオビル中に分取して-80℃で貯蔵することができる。各タイムポイントからのマウスを、それぞれが5匹のマウスを含む三つのグループA、BおよびCに無作為に分けることができる。血清採取ののち、グループAの各マウス(A1、A2、A3、A4およびA5)から採取した血清の各等量をプールし、100μlアリコットとして貯蔵することができる。グループBおよびCのマウスからも同様な試料のセットを採取することができる。グループA、BおよびCからのプール血清は、分析およびナノビーズとのインキュベーションに使用することができる。すべての分析は、凍結貯蔵物から解凍したばかりの試料に対して実施することができ、二回目または反復凍結解凍サイクルを受けた試料は、これらの研究の一部として考慮することはできない。
【0132】
試料分布および処理
採取したプール血清400μlを実験に使用することができる。残りのプール血清は、-80℃で貯蔵し、その後の分析に使用することができる。
【0133】
試料貯蔵
各マウスからの血清は、遠心分離ののち採取し、以下のようにクリオビル中に分取して-80℃で貯蔵することができる。すべての分析は、凍結貯蔵物から解凍したばかりの試料に対して実施することができる。処理および分析に指定された血清試料は、ドライアイスに載せて輸送することができる。
【0134】
ナノ多孔性ビーズとのインキュベーション(MWカットオフ16kDa)
未処理血清(20μl)のアリコットを解凍し、脱イオン80μlの添加によって希釈(1:5)することができる(合計試料量100μl)。希釈した血清は、脱イオン水で4回予備洗浄しておいたナノビーズ1mgとで室温で1時間インキュベートすることができる(インキュベーション中、ビーズ懸濁に関して試料をモニタリングすることができ、必要に応じて、インキュベーション中15分ごとにナノビーズを希釈血清中に再懸濁させることができる)。インキュベーションののち、微量遠心管遠心分離(30秒間、10,000rpm)によってビーズを血清から分離させることができ、ビーズ枯渇希釈血清を分析および/または-80℃での貯蔵のために取り出し、ビーズを、脱イオン水中0.1% TFA 100μlで3回(各回、室温で5分間)洗浄することができる。最後の洗浄ののち、ビーズをアセトニトリル/0.1% TFA (75:25) 80μlとで室温で30分間インキュベートすることができ、溶離物を取り出し、分取し、-80℃で貯蔵することができる。試験する種々のナノビーズそれぞれに関してこの手順を踏襲することができる。
【0135】
採取した血清試料それぞれを、孔径7nmまたは20nmの粒子;異なる化学酸化物、NH2、PEG-NHSを有する粒子;および孔径5μmまたは20μmの粒子をはじめとする全部で12種の異なるナノビーズ調製物とでインキュベートすることができる。完全な一連のナノビーズとの単一の血清試料の完全な分析には約300μlの血清(ビーズ12種×血清25μl/インキュベーション1回)を要することができる。
【0136】
試料のSELDI分析
各プール血清試料からSELDI-TOF質量スペクトルを得、ナノビーズ枯渇血清およびナノビーズ溶離物のスペクトルと比較することができる。弱陽イオン交換チップ(WCX2 ProteinChips、Ciphergen Biosystems, Inc.)を使用して結合タンパク質のプロフィールを得ることができる。チップは次のように処理することができる。バイオリアクタに入れたチップを10mM HCl 100μlとで室温で5分間インキュベートすることができる。HClの吸引ののち、チップスポットを脱イオン水100μlで1分間それぞれ室温で2回洗浄することができる。そして、チップを、0.1% Triton X-100を含む10mM酢酸アンモニウム100μl中で2回、それぞれ5分間インキュベートする。最終的な酢酸アンモニウムすすぎを吸引し、チップを乾燥させる。そして、試料5μlをチップスポットに塗布し、加湿チャンバ中、室温で55分間インキュベートする。チップをリン酸緩衝食塩水3交換で洗浄したのち(それぞれ150μl)、脱イオン水150μlで1回すすぎ洗いする。乾燥後、50% (v/v)アセトニトリル、0.5%トリフルオロ酢酸中ケイ皮酸の30%溶液1.0μlを各スポットに2回、間に乾燥をはさんで塗布する。チップを乾燥させたのち、PBS-II質量分析計(Ciphergen Biosystems, Inc.)を使用してチップを検査する。比較のため、スペクトルは同一条件下で取得することができる。以下の機器設定を使用してスペクトルを採取することができる。検出器電圧1,800V、焦点質量6,000Da、上限20,000Da、感度ゲイン設定5、レーザ強さ145。1ポジション(範囲20〜80)あたり15のレーザスポットを5ポジション刻みの増分で取得することができる。
【0137】
また、ナノビーズインキュベーションの前の血清と同様に、希釈された未処理血清(脱イオン水で1:5)5μlをスポット塗布したのち、また、各ナノビーズとのインキュベーションののちの希釈血清(ナノビーズ枯渇血清)5μlからSELDIスペクトルを採取して、ビーズインキュベーションの前後での血清タンパク質ピークの強さおよびプロフィールを直接比較することができる。これらのスペクトルを、各ナノビーズ溶離物の等量(合計4μl)から得られたSELDIスペクトルに比較することができる。
【0138】
ビーズ溶離物のタンパク質分析
タンパク質標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用する標準ミクロタンパク質アッセイ法(BradfordまたはBCAアッセイ法)を使用して、ナノビーズ溶離物中のタンパク質濃度を測定することができる。
【0139】
1Dゲル分離
タンパク質測定ののち、1Dゲル分離によって試料を分析することができる。各ナノビーズ溶離画分15μgをSDS試料緩衝液30μl中でインキュベートし、95℃で5分間煮沸することができる。そして、画分を、プレキャストゲル(4〜12%ビストリス)を使用する1D電気泳動法によって分離させることができる。電気泳動ののち、ゲルを脱イオン水で洗浄し、50%メタノール/10%酢酸溶液中で30分間固定し、Sypro (登録商標)ルビー染料で夜通し染色することができる。ゲルを脱イオン水中で3時間脱染したのち、Versadoc 3000画像分析システムを使用して画像処理することができる。20kDa未満のゲルの領域を検査し、BioRadゲルスポットカッタを使用するコアリングのためのバンドを選択することができる。切り出したゲル片を96穴マルチプレートに配置する。LC/MS/MSによる処理および分析に備えてゲル片をCCCプロテオミクスコアに移すことができる。
【0140】
LC/MS/MS
ゲル片を50%メタノール/5%酢酸中で1時間洗浄することができる。ゲル片をアセトニトリル中で脱水する前に洗浄ステップを一度繰り返すことができる。ゲル片を、0.1M炭酸水素アンモニウム中10mMジチオトレイトール(DTT)中で再水和させ、室温で0.5時間還元することができる。DTT溶液を除去し、試料を、室温で0.5時間、0.1M炭酸水素アンモニウム中50mMヨードアセトアミドでアルキル化することができる。ヨードアセトアミド試薬を除去することができ、ゲル片を100mM炭酸水素アンモニウムで洗浄したのち、アセトニトリル中、5分刻みの増分で乾燥させる。ゲルを100mM炭酸水素アンモニウム中で再び5分間洗浄したのち、アセトニトリルで5分間脱水することができる。ゲルを5分間乾燥させることができる。50mM炭酸水素アンモニウム中20μg/mLの配列決定用修飾トリプシン25μL中で10分間ゲル片を再水和させたのち、50mM炭酸水素アンモニウム20μLを加えることにより、プロテアーゼをゲル片に押し込むことができる。試料を40℃で6時間インキュベートする。50%アセトニトリル/5%ギ酸での20分間の洗浄2回により、形成されたペプチドをポリアクリルアミドから抽出する。これらの抽出物を清浄な96穴マルチプレート中で合わせ、90分間乾燥させる。
【0141】
ポジティブイオンモードで作動するナノスプレーソースを備えたThermo Finnigan LTQ質量分析計で、毛管液クロマトグラフィーナノスプレータンデム質量分析法(ナノLC/MS/MS)を実施することができる。LCシステムは、LC-Packings A Dionex Co (Sunnyvale, CA)の、FamousオートサンプラおよびSwitchosカラムスイッチャを備えたUltiMate (商標)Plusシステムであることができる。溶媒Aは、50mM酢酸を含有する水であることができ、溶媒Bはアセトニトリルであることができる。まず、各試料5マイクロリットルをトラッピングカラム(LC-Packings A Dionex Co、Sunnyvale, CA)に注入し、50mM酢酸で洗浄することができる。インジェクタポートを注入に切り換え、ペプチドをトラップからカラムに溶出させることができる。ナノスプレーチップに中に直接装填した5cm 75mm ID ProteoPep II C18カラム(New Objective, Inc. Woburn, MA)をクロマトグラフィー分離に使用することができる。ペプチドは、2〜80%Bの勾配を30分かけて使用して、300nl/minの流量でカラムからLTQシステムへ直接溶出させることができる。合計動作時間は58分であることができる。質量分析計のスキャンシーケンスは、フルスキャン、ペプチドのチャージを測定するためのズームスキャンおよびスペクトル中のもっとも豊富なピークのMS/MSスキャンのためにプログラムすることができる。動的排除を使用して同じペプチドの多数のMS/MSを排除することができる。
【0142】
MS/MSデータからの配列情報は、ピークリストを形成するためにMascot Distillerによって処理することができ、Turbo SEQUESTアルゴリズムをBio Works 3.1ソフトウェアで使用することによって処理することができる。データ処理は、Molec. Cell. Proteomicsのガイドラインにしたがって実施することができる。割り当てられたピークは、最小で10のカウントを有する(3のS/N)。前駆体イオンの質量精度は、C13イオンの偶発的選択を受け入れるために1.5Daにセットすることができ、断片質量精度は0.5Daにセットすることができる。考えられる修飾(変数)は、メチオニン酸化およびカルバミドメチルシステインであった。
【0143】
実験結果
I 質量分析法MALDI-TOF
これらの実験にはナノ多孔性ビーズを使用した。
【0144】
シリカビーズのアリコット4×12個が利用可能であった(四つ異なる表面化学:シリカ小および大孔、APTESならびにMPTMS小孔)。
【0145】
MALDI-TOF分析プロトコル
抽出したペプチドを、50% (v/v)アセトニトリル、0.1% TFA中4mg/mLのα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)溶液と混合した。単一の実験ごとにマトリックス/試料比を指定する。試料/マトリックス溶液1μlをステンレススチール製MALDI標的プレートにスポット塗布し、空気乾燥させた。Voyager-DE (登録商標)STR質量分析計(Applied Biosystems、Framingham, MA)上、以下の設定を使用する遅延抽出リニアポジティブイオンモードでMALDI-TOFスペクトルを取得した。加速電圧20,000V、グリッド電圧91.5%、抽出遅延時間200nsec、取得質量範囲800〜20,000m/z、レーザ強さ範囲2100〜2300。各スペクトルは、連続100回のショットで取得した400〜1000個の個々のレーザショットの平均であった。標準ペプチドの混合物(Applied Biosystems calmix 2+calmix 3)を使用して外部機器較正を毎日実施した。リニア6点較正を使用した(おおよそのMw:1300、2090、3600、5700、8100、11000Da) 。
【0146】
MS MALDIスポット塗布のためのプロトコルの最適化
三つの異なる試料/マトリックス比(i) 1:8、(ii) 1:4および(iii) 5:3を試験した。二つの標準ペプチドであるレニンおよびカルシトニン200ng/mLでスパイキングしたマウス対照血清を分析した。図19の三つのスペクトルは、以下の要因を考慮した場合、5:3の比が最良の実験設定であるかもしれないことを示す:(i) マウス血清からのスペクトル中の検出可能なピークの数;(ii) ピーク全体の絶対強さ;および(iii) スパイキングされたペプチド(カルシトニンおよびレニン)のSN (信号雑音)比。
【0147】
また、感度改善を狙う代替プロトコルを試験した。シリカ小孔ビーズを使用した。最後の洗浄ののち、MALDIマトリックス溶液4μLをビーズに加え、得られた懸濁液1.5μLをMALDI標的プレート上にスポット塗布した。得られたMALDI-TOFスペクトルは、標準的な乾燥小滴調製物の場合よりも優れたシグナル強さを与えた。
【0148】
(i) マトリックス懸濁液中のビーズの存在は、マトリックス結晶化の均一さに影響を及ぼし、計測の質量精度を悪化させるおそれがあり、(ii) シリカ粒子を質量分析計に導入すると、時間とともに、質量分析計の内側(電圧グリッド等)へのそれらの粒子の付着のせいで、いくらか性能損失を生じさせるおそれがあるため、マウス血清のその後の分析のために標準的な抽出条件および5:3の試料/マトリックス比を採用することを決定した。
【0149】
以下、記載した方法で得られた対照マウス血清のMALDI-TOFスペクトルを報告する。他のMALDI調製物との比較のためのさらなる参照ピークを有するために、二つの異なるペプチドスパイキングを実施した。たとえば図20を参照。カルシトニン(100ng/mLをマウス血清中にスパイキング)からのシグナル強さは、標準調製方法を用いた場合よりも高い。
【0150】
ナノ多孔性ビーズとの対照血清試料のインキュベーション
マウス血清分析のために以下のプロトコルを採用した。
ビーズ予備洗浄:H2O 100μlで4回。
インキュベーション:希釈血清100μlをビーズ1mgとで室温で1時間。
ビーズの洗浄:H2O 100μlで2回、次いで0.1% TFA 100μl中で1回。
抽出:75/25 CH3CN/0.1% TFA 80μl、室温で30分間。
MALDI調製:試料/マトリックス比5:3。
MALDI-TOF分析は、この実施例で先に記したとおり。
【0151】
図21に示すスペクトルは、マウス対照血清に対し、四つの異なるビーズ(シリカ小および大孔、APTES小孔ならびにMPTMS小孔)を使用して取得したものである。
【0152】
再現精度に関する実験
ビーズ調製物の再現精度を評価するため、大孔シリカビーズキットを使用して、マウス対照血清の反復インキュベーションを5回実施した。各インキュベーションのための二重反復MALDI-TOF分析が10個のスペクトルを生じさせた。10個のスペクトルすべてに共通であったピーク取得ソフトウェア(Applied Biosystems)によって自動的に検出された28個の最高強さピークを統計的分析に使用した。全シグナル強さ(ピークの高さ)に関して正規化したのち、正規化された強さの変動係数を計算した(28ピーク、10回反復)。結果を、得られた典型的なMSスペクトルとともに表3に報告する。m/z測定値における平均CVは0.02%であった。ピークの高さの平均CVは21.8であった。
【0153】
(表3)シリカビーズLMWP収穫およびMS分析の反復実験10回(5回の反復インキュベーション、二重反復MALDI-TOF分析)のピークの高さ

【0154】
II 質量分析法SELDI
腫瘍を有する動物からの血清の処理
プール血清試料は、12組の動物から次のようにして提供されたものである。
1. 対照血清プールA
2. 対照血清プールB
3. 対照血清プールC
4. 28日目の腫瘍を有する血清(MCF7細胞クローン8由来の腫瘍)
5. 28日目の腫瘍を有する血清(MCF7細胞クローン10由来の腫瘍)
6. 42日目の腫瘍を有する血清(MCF7細胞クローン8由来の腫瘍)
7. 42日目の腫瘍を有する血清(MCF7細胞クローン10由来の腫瘍)
8. 60日目の負の血清対照(マトリゲルを注入された動物)
9. 60日目の腫瘍を有する血清対照1 (細胞株BT-474由来の腫瘍)
10. 60日目の腫瘍を有する血清対照2 (ベースラインMCF7細胞株由来の腫瘍)
11. 60日目の腫瘍を有する血清(MCF7細胞クローン8由来の腫瘍)
12. 60日目の腫瘍を有する血清(MCF7細胞クローン10由来の腫瘍)
【0155】
6個のビーズセットをプール血清試料とのインキュベーションに使用した。各ビーズセットは、12個の血清プールそれぞれに1個ずつ12個のビーズキットを含むものであった。使用したビーズセットは以下のとおりであった。
セットA 直径10μm、小孔、シリカ
セットB 直径10μm、小孔、APTES誘導体化、(+)荷電
セットC 直径10μm、小孔、MPTMS誘導体化、(-)荷電
セットD 直径10μm、大孔、シリカ
セットE 直径10μm、大孔、APTES誘導体化、(+)荷電
セットF 直径10μm、大孔、MPTMS誘導体化、(-)荷電
【0156】
次のようにして血清試料をビーズキットとでインキュベートした。まず、血清とのインキュベーションの前に、すべてのビーズキットをHPLC用水で4回洗浄した。血清試料を解凍し、HPLC用水で1:5に希釈し、希釈血清100μlをビーズキットとで室温で1時間インキュベートした。たとえば、上記の希釈血清試料1 (プール対照血清A) 100μlを6種のビーズタイプA〜Fそれぞれとでインキュベートして、それぞれ試料1〜6を得た(表4を参照)。同様に、残る12の血清試料それぞれも別個のビーズセットそれぞれとでインキュベートして、全部で72個の試料を得た(表4を参照)。
【0157】
血清とのインキュベーションののち、ビーズをペレット化し、枯渇させた血清を取り出した。そして、ビーズを、HPLC用水で2回洗浄し、0.1% TFAで1回洗浄したのち、0.1% TFA/アセトニトリル(25:75)中、室温で30分間溶離させた。最終的な溶離物(約80μl)を採取し(全部で72個の試料、表4を参照)、さらに処理するまで-80℃で貯蔵した。
【0158】
(表4)ビーズ試料および溶離物(試料番号)の検索表

【0159】
インキュベーションから5日目に溶離物を解凍し、溶離物60μlを取り出し、1Dゲル分析のためにSpeedVav中で約25μlの合計量まで濃縮した。濃縮した溶離物および残る当初の溶離物試料の両方を、それぞれ1Dゲル分析およびSELDI分析のためにさらに処理するまで、-80℃で貯蔵した。
【0160】
濃縮したビーズ溶離物すべてをSDS-PAGE試料緩衝液と混合し、8〜16%トリスグリシン勾配ゲル上で分離し、Syproルビーで染色した。脱染したのち、BioRad Versadocシステムを使用してゲルを画像処理した。ゲル結果を図22〜30に提示する。
【0161】
タンデム質量分析法のための溶離物ゲルタンパク質バンドの切り出し
ビーズ溶離物の1D SDS-PAGEゲルは類似したタンパク質バンド化パターンを示した。図22〜27を参照。ゲルの分析は、三つの対照動物試料からのプール血清との比較で、腫瘍を有する動物からの血清に起因することができるタンパク質バンドの新たなパターンを明らかにしなかった。また、タンパク質負荷が試料ごとに変化し、いくつかの個別のレーンが有意に高めの量のタンパク質を含有するということが注目された(ゲル6、レーン8(表4の試料42)を参照)。これらの結果に基づき、タンデム質量分析法による同定のための切り出しおよび提供のために90個のバンドを同定した。
【0162】
大孔MPTMSビーズから得られた溶離物試料を分離したゲル6をもっとも完全な分析のために選択した。各レーンから四つの低分子量バンドを切り出して、バンドのタンパク質組成がビーズおよびレーン8に存在する主要バンドのすべてに対して変化したかどうかを決定した(42日目のクローン10腫瘍を有する動物から採取したプール血清に対応する試料番号42)。さらなる低分子量バンドを、クローン8および10からの60日目腫瘍を有する動物から採取したプール血清にそれぞれ対応するゲル4、大孔APTES修飾ビーズ、レーン12および13から切り出した。最後に、ゲルの上から下までのさらなるバンドを、小孔MPTMSビーズ、試料番号27(28日目クローン10動物から採取した血清)から得られた溶離物に対応するゲル5のレーン6から切り出した。バンドを同定し、BioRadゲル切断ロボットを使用して切り出した。切り出した試料を96穴マイクロタイタプレートの穴の中に付着させ、タンデム質量分析のためにCCICプロテオミクスコアに送った。ゲル切り出しのパターンを表4の検索表とともに図28、29および30に示す。
【0163】
これらの試料のタンデム質量分析から得られたタンパク質同定結果は、この実施例の他の部分ではCCICプロテオミクスコアによって報告する。
【0164】
プール血清のSELDI分析
プール血清試料を-80℃での貯蔵から取り出し、解凍し、未処理血清の150μlアリコットを取り出し、HPLC用水600μlの添加によって希釈して、原料1:5希釈血清試料を得た。希釈した未処理血清25μlを取り出し、液体窒素中で瞬間凍結し、SELDI分析のために処理するまで-80℃で貯蔵した。WCX2チップをバイオリアクタに装填し、試料スポットを10mM HCl 100μlで室温にて5分間洗浄した。溶液を吸引し、HPLC用水100μl中、1回あたり1分間で2回洗浄した。そして、スポットを、10mM酢酸アンモニウム+0.1% Triton X-100 100μl中、1回あたり5分間で2回すすぎ洗いした。最後の緩衝液を吸引したのち、WCX2チップをバイオリアクタから取り出し、室温で空気乾燥させた。乾燥させたWCX2チップをバイオリアクタに入れ、希釈血清試料5μlを試料スポットに加え、チップを加湿チャンバ中、室温で55分間インキュベートした。血清試料との55分間のインキュベーションののち、WCX2チップスポットをPBS 150μlで3回洗浄した。そして、各スポットをHPLC用水150μlですすぎ洗いし、チップをバイオリアクタから取り出し、室温で空気乾燥させた。マトリックス(50%アセトニトリルおよび0.5% TFA中α-CHCA 1μl)を各スポットに塗布し、乾燥させた。マトリックス塗布を繰返し、チップをPBSII SELDI質量分析計で分析した。得られたSELDIスペクトルを図31〜33に示す。
【0165】
ビーズ溶離物のSELDI分析
SELDI GoldChipを使用して、各ビーズインキュベーションから回収した溶離物質を検査した。溶離物試料(1μl)をチップスポットに塗布し、空気乾燥させた。マトリックスを上記のように添加し、以下の機器パラメータを使用して試料を分析した。LMW範囲における溶離物AUチップ読み取りパラメータは、WCX2チップ分析のためのプロトコルで示したものと同じであった。上記1D SDS-PAGE勾配ゲルに適用したものと同じ順序で試料セットを分析した。72種の溶離物試料をすべて分析し、二重反復スペクトルを得た。
【0166】
ビーズ溶離物のSELDIスペクトルの検索表
スペクトルの右側に示された試料番号は、表4に示す試料番号に対応する試料番号を指す。スペクトル中で試料番号x-1および試料番号x-2によって示されるように、ビーズ溶離物それぞれを二重反復で分析した。個々の1Dゲルに塗布された試料の各セット(図22〜27を参照)は、ゲルに塗布した順序で分析した。したがって、図34A、34Bおよび34Cは、ゲル1(図22)に塗布された溶離物試料からのSELDIスペクトルを表し;図35A、35Bおよび35Cは、ゲル番号2(図23)に塗布された溶離物試料からのSELDIスペクトルを表し;図36A、36Bおよび36Cは、ゲル番号3(図24)に塗布された溶離物試料からのSELDIスペクトルを表し;図37A、37Bおよび37Cは、ゲル番号4(図25)に塗布された溶離物試料からのSELDIスペクトルを表し;図38A、38Bおよび38Cは、ゲル番号5(図26)に塗布された溶離物試料からのSELDIスペクトルを表し;図39A、39Bおよび39Cは、ゲル番号6(図27)に塗布された溶離物試料からのSELDIスペクトルを表す。
【0167】
III 質量分析法LC/MS (OSU CCIC)
ゲル内消化およびナノLC/MS/MSタンパク質同定
1D SDS-PAGEからの全部で100個のバンドを消化し、ナノLC/MS/MSによって分析した。詳細な結果を表5にまとめた。検査した100個のバンドから707種のタンパク質が同定された。それらのうち、225種のケラチンまたはケラチン関連タンパク質が同定された。トリプシンを消化に使用し、したがって、トリプシンおよびトリプシン関連タンパク質が試料中で同定され、全部で145種のトリプシンまたはトリプシン関連タンパク質が同定される。最後に、リゾチームを内部標準として使用して、機器性能が80回同定されることを保証した(表6)。ケラチン、リゾチームおよびトリプシンへのマッチを除去したのち、100個のゲルバンドから同定された有意なタンパク質の総数は257である。
【0168】
表5に示すように、タンパク質の大部分が異なるレーン/バンド内で複数回同定された。たとえば、ヘモグロビンβ-1鎖は、異なるレーン/バンドで数回同定されている。各タンパク質IDを一度だけカウントしたのち、154種の固有のタンパク質が同定された(表6を参照)。それらのうち、64種がケラチンまたはケラチン関連タンパク質として同定され、5種がトリプシンまたはトリプシン関連タンパク質として同定され、6種がリゾチームとして同定された。したがって、79種の固有の血清タンパク質が有意に同定された(表7)。
【0169】
Promega(Madison, WI)からの配列決定用トリプシンにより、Millipore (Bedford, MA)からのMontageゲル内消化キットを使用して、製造業者推奨プロトコルにしたがってゲルを消化した。簡潔にいうと、背後のポリアクリルアミド材料を最小化するためにバンドを可能な限り密にトリミングし、2mm×2mmの小片にカットした。そして、ゲル小片を50%メタノール/5%酢酸中で1時間洗浄する。ゲル小片をアセトニトリル中で脱水する前に洗浄ステップを一度繰り返す。ゲルバンドを再水和させ、ジチオトレイトール(DTT)溶液(100mM炭酸水素アンモニウム中5mg/ml)とで30分間インキュベートしたのち、100mM炭酸水素アンモニウム溶液中15mg/mlのヨードアセトアミドを加えた。ヨードアセトアミドをゲルバンドとで暗中30分間インキュベートしたのち、取り出した。ゲルバンドを再びアセトニトリルおよび炭酸水素アンモニウム(100mM)のサイクルで5分の増分で洗浄した。SpeedVacでゲルを乾燥させたのち、配列決定用修飾トリプシン50μL中、50mM炭酸水素アンモニウム中20μg/mLで10分間再水和させることにより、プロテアーゼをゲル小片に押し込んだ。そして、50mM炭酸水素アンモニウム20μLをゲルバンドに加え、混合物を室温で夜通しインキュベートする。50%アセトニトリルおよび5%ギ酸でペプチドをポリアクリルアミドゲル小片から数回抽出し、合わせてプールした。抽出したプールをナノLC/MS/MS分析のためにSpeedVac中で約25μLまで濃縮した。
【0170】
ポジティブイオンモードで作動するナノスプレーソースを備えたThermo Finnigan LTQ質量分析計で、毛管液クロマトグラフィーナノスプレータンデム質量分析法(ナノ-LC/MS/MS)を実施した。LCシステムは、FamousオートサンプラおよびSwitchosカラムスイッチャを備えたUltiMate (商標)Plusシステム(LC-Packings A Dionex Co, Sunnyvale, CA)であった。まず、各試料5マイクロリットルをトラッピングカラム(LC-Packings A Dionex Co, Sunnyvale, CA)に注入し、50mM酢酸で洗浄した。次に、インジェクタポートを注入に切り換え、ペプチドをトラップからカラムに溶出させた。5cm 75μm ID ProteoPep II C18カラム(New Objective, Inc. Woburn, MA)をクロマトグラフィー分離のために使用した。溶媒Aは、5OmM酢酸を含有する水であり、溶媒Bはアセトニトリルであった。ペプチドを300nl/minの流量でカラムからLTQシステムへ直接溶出させた。勾配は、B2%から出発し、最初の3分間、Bを2%に維持した。次いで、3〜30分でBを50%まで増大させ、30〜45分で80%までさらに増大させた。Bをさらに5分間80%に維持したのち、0.1分で2%に戻した。その後、次の注入を実施する前に、カラムAを98%で14.9分間洗浄した。合計動作時間は65分であった。質量分析計のスキャンシーケンスは、フルスキャンおよびスペクトル中の10個のもっとも豊富なペプチドピークのMS/MSスキャンのためにプログラムした。検出し、MS/MSを3回実施したのち、動的排除を使用して同じペプチドの多数のMS/MSを排除した。
【0171】
MS/MSデータからの配列情報は、ピークリスト(.mgfファイル)を形成するためにMascot Batchを使用して処理し、MASCOT MS/MSサーチを使用することによって処理した。データ処理は、Mole. Cell. Proteomicsのガイドラインにしたがって実施した。割り当てられたピークは、最小で10のカウントを有する(3のS/N)。前駆体イオンの質量精度は、C13イオンの偶発的選択を受け入れるために1.8Daにセットし、断片質量精度は0.5Daにセットした。考えられる修飾(変数)はメチオニン酸化およびカルバミドメチルシステインであった。
【0172】
(表5)


















【0173】
(表6)





【0174】
(表7)




【0175】
前記は特定の好ましい態様を参照するが、本発明はそのように限定されないということが理解されよう。開示された態様に対して様々な改変を加えることができ、そのような改変が本発明の範囲に入るということが当業者に理解されよう。
【0176】
本明細書で引用するすべての刊行物、特許出願および特許は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】シリカAおよびBの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【図2】図2A〜2Cは、ヒト血漿希釈試料(図2A)、ナノ多孔性シリカ粒子タイプAに曝露されたのち保持されたヒト血漿タンパク質(図2B)およびナノ多孔性シリカ粒子タイプBに曝露されたのち保持されたヒト血漿タンパク質(図2C)のマトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量スペクトルを示す。
【図3】図3A〜3Cは、ナノ多孔性シリカ粒子タイプAに曝露されたのち保持されたヒト血漿タンパク質のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。A、BおよびCは、三つの独立した実験のセットを表す。
【図4】図4A〜4Cは、ナノ多孔性シリカ粒子タイプBに曝露されたのち保持されたヒト血漿タンパク質のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。A、BおよびCは、三つの独立した実験のセットを表す。
【図5】図5A〜5Dは、四つの異なる濃度、a) 500ng/mL、b) 200ng/mL、c) 30ng/mL、および4) 15ng/mLのインスリンを用いたスパイキング実験の質量スペクトルを示す。
【図6】ナノ多孔性シリコンウェーハを使用した血清の部分的枯渇のための策略を図式的に示す。ナノ多孔性シリコーンウェーハを生成し、血清とでインキュベートする。インキュベーション期間後、ウェーハを除去し、残る血清試料を、表面増強レーザ脱離イオン化(SELDI)質量分析法(MS)分析のための弱陽イオン交換チップ上にスポット塗布し、ナノ多孔性ウェーハに曝露されていない対照血清からのMSスペクトルと比較する。
【図7】ナノ多孔性シリコンウェーハを使用して部分的に枯渇させた血清のMS分析の結果を示す。図6で記載したように、血清を、アミノプロピル基でコートされたナノ多孔性シリコンウェーハとでインキュベートする。インキュベーション後、血清を弱陽イオン交換チップに結合させ、次いで、MS分析に付す。MSフィンガプリントを得る。天然の血清(ナノ多孔性ウェーハに曝露していない血清)をウェーハ枯渇後の血清と比較する。天然の血清では、同様なm/z範囲内の小さめのピーク(青/左矢印)を越える支配的なピーク(赤/右矢印)が存在する。ナノ多孔性ウェーハとのインキュベートによってそのプロテオーム含量を部分的に枯渇させた血清では、青/左矢印によって示されるピークが、赤/右矢印でマークされるピークよりも支配的になる。青/左ピークと赤/右ピークとの間で相対ピーク強さの比を比較すると、天然血清とナノ多孔性シリコンウェーハを使用する枯渇後の血清との間に顕著なシフトが示される。
【図8】ナノ多孔性ガラスビーズを使用して血清から分子を収穫するための策略を図式的に示す。アミノプロピル基でコートされたガラスビーズを血清とでインキュベートする。インキュベート期間後、ビーズを取り出し、洗浄し、結合した分子を溶離させ、SELDI分析のための弱陽イオン交換チップ上にスポット塗布し、ナノ多孔性ビーズに曝露されていない対照血清からのMSスペクトルと比較する。
【図9】ナノ多孔性ガラスビーズによって収穫された分子のMS分析の結果を示す。図8で記載したように、血清を、アミノプロピル基でコートされたガラスビーズとでインキュベートする。インキュベーション後、血清を、まず弱陽イオン交換チップに結合させ、次いで、MS分析に付す。天然の血清(ナノ多孔性ビーズに曝露されていない)を、17nmビーズを使用して収穫された分子と比較する。天然の血清では、支配的なピーク(赤/右矢印)が同様なm/z範囲内のより小さなピーク(青/左矢印)を越えている。溶離血清、すなわち、ナノ多孔性ガラスビーズに曝露された試料では、青/左矢印によって示されるピークが、赤/右矢印でマークされるピークよりも支配的になる。青/左ピークと赤/右ピークとの間の相対ピーク強さの比が、天然血清と、ナノ多孔性ビーズで収穫したのちビーズから溶離させた分子との間の顕著なシフトを示す。
【図10】70nm多孔性ビーズによって収穫された分子のMS分析の結果を示す。図8で記載したように、血清を、70nmの孔を有し、アミノプロピル基でコートされたガラスビーズとでインキュベートする。インキュベーション後、血清を、弱陽イオン交換チップに結合させ、次いで、MS分析に付す。天然の血清(ナノ多孔性ビーズに曝露されていない)を、70nmビーズを使用して収穫された分子と比較する。血清中、主ピーク(赤/右矢印)が同様なm/z範囲内のより小さなピーク(青/左矢印)を越えている。溶離血清では、青矢印によって示されるピークが、赤矢印でマークされるピークよりも支配的なプロフィールを見せる。青/左ピークと赤/右ピークとの間の相対ピーク強さの比が、天然血清と、ナノ多孔性ビーズで収穫したのちビーズから溶離させた分子との間の顕著なシフトを示す。
【図11】ナノ多孔性材料に曝露されていない天然の血清ならびに17nm孔径ガラスビーズおよび70nm孔径ガラスビーズから溶離させた分子に関するドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析の結果を示す。
【図12】17nm孔径ガラスビーズおよび70nm孔径ガラスビーズからの溶離物から得られたタンパク質配列を示すペプチド配列決定結果を示す。
【図13】図13A〜13Cは、ナノ多孔性材料を使用した血清学的分別および精製の増強(A)を従来の組織化学的技術(B、C)と比較して病理学的差別要素を明らかにする。図13(A)は、ナノ多孔性面への血清曝露が特定のタンパク質ピークの検出を増強することを示す。図13(B):マッソン三色染色法(右パネル)が、慢性C型肝炎感染に関連する患者の肝線維症を病期決定するための必要な情報であるコラーゲン付着を実証する(左パネルは通常のH&E染色)。図13(C):Bielchowsky銀含浸が、H&E染色による検出(左パネル)を逃れる主要な病的徴候である、アルツハイマー病脳新皮質組織の神経突起プラーク(右パネル)を明らかにする。
【図14】透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した酸化ケイ素ナノ多孔性フィルムの形態を示す。実施例3の詳細を参照。
【図15】図15(i)〜15(ii)は、特定の表面でインキュベーションした後のヒト血漿のMALDI-TOFプロフィールを示す。(i) ナノ多孔性酸化ケイ素チップとでインキュベートした血漿、(ii) 固形酸化ケイ素チップとでインキュベートした血漿。分析した試料は、1マイクログラム/mLの濃度のカルシトニンでスパイキングしたヒト血漿の5マイクロリットルアリコットであった。カルシトニンピークを星印(*)で印す。
【図16】ナノ多孔性酸化ケイ素チップ収穫を使用することによって得られたMALDI-TOFペプチドプロフィールの反復精度を示す。
【図17】図17(i)〜17(iv)は、ヒトカルシトニンでスパイキングした血漿の低分子量(LMW)収穫を示す。低下するカルシトニン濃度でスパイキングされた血漿に対する四つの実験が示されている(カルシトニンピークの周囲のm/zウィンドウにズーム):(i) 1000ng/mL、(ii) 200ng/mL、(iii) 50ng/mL、(iv) 20ng/mL。インキュベーションおよびMS条件は、実施例3の実験部分で記載したとおりである。
【図18】実施例4で詳細に説明した低分子量プロテオーム(LMWP)の感度を増強するためのシップを設計するための策略を図示的に示す。
【図19】三つの異なる試料/マトリックスMALDI調製物のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。
【図20】対照マウス血清のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。
【図21】四つの異なるナノ多孔性ビーズのマウス対照血清のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。左上パネル:小孔径シリカナノ多孔性ビーズ;右上パネル:大孔径シリカナノ多孔性ビーズ;左下パネル:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)で修飾された小孔径シリカナノ多孔性ビーズ;右下パネル:3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)で修飾された小孔径シリカナノ多孔性ビーズ。
【図22】小孔径シリカビーズ溶離物試料の1Dゲル電気泳動の結果を示す。小孔径シリカビーズとのプール血清インキュベーションから得られたビーズ溶離物のトリスグリシン勾配ゲル(8〜16%アクリルアミド)。もっとも左側のレーンが分子量標準に対応し、残りのレーンが左から右へと順にビーズ溶離物試料 1、7、13、19、25、31、37、43、49、55、61および67に対応する(試料同定のための検索表に関しては実施例5の表4を参照)。
【図23】大孔径シリカビーズ溶離物試料の1Dゲル電気泳動の結果を示す。大孔径シリカビーズとのプール血清インキュベーションから得られたビーズ溶離物のトリスグリシン勾配ゲル(8〜16%アクリルアミド)。もっとも左側のレーンが分子量標準に対応し、残りのレーンが左から右へと順にビーズ溶離物試料 4、10、16、22、28、34、40、46、52、58、64および70に対応する(試料同定のための検索表に関しては実施例5の表4を参照)。
【図24】小孔径APTES修飾シリカビーズ溶離物試料の1Dゲル電気泳動の結果を示す。小孔径APTES修飾ビーズとのプール血清インキュベーションから得られたビーズ溶離物のトリスグリシン勾配ゲル(8〜16%アクリルアミド)。もっとも左側のレーンが分子量標準に対応し、残りのレーンが左から右へと順にビーズ溶離物試料 2、8、14、20、26、32、38、44、50、56、62および68に対応する(試料同定のための検索表に関しては実施例5の表4を参照)。
【図25】大孔径APTES修飾シリカビーズ溶離物試料の1Dゲル電気泳動の結果を示す。大孔径APTES修飾ビーズとのプール血清インキュベーションから得られたビーズ溶離物のトリスグリシン勾配ゲル(8〜16%アクリルアミド)。もっとも左側のレーンが分子量標準に対応し、残りのレーンが左から右へと順にビーズ溶離物試料 5、11、17、23、29、35、41、47、53、59、65および71に対応する(試料同定のための検索表に関しては実施例5の表4を参照)。
【図26】小孔径MPTMS修飾シリカビーズ溶離物試料の1Dゲル電気泳動の結果を示す。小孔径MPTMS修飾ビーズとのプール血清インキュベーションから得られたビーズ溶離物のトリスグリシン勾配ゲル(8〜16%アクリルアミド)。もっとも左側のレーンが分子量標準に対応し、残りのレーンが左から右へと順にビーズ溶離物試料 3、9、15、21、27、33、39、45、51、57、63および69に対応する(試料同定のための検索表に関しては実施例5の表4を参照)。
【図27】大孔径MPTMS修飾シリカビーズ溶離物試料の1Dゲル電気泳動の結果を示す。大孔径MPTMS修飾ビーズとのプール血清インキュベーションから得られたビーズ溶離物のトリスグリシン勾配ゲル(8〜16%アクリルアミド)。もっとも左側のレーンが分子量標準に対応し、残りのレーンが左から右へと順にビーズ溶離物試料 6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66および72に対応する(試料同定のための検索表に関しては実施例5の表4を参照)。
【図28】図27のゲルのタンパク質バンド切り出しプロフィールを示す。ゲル画像は図27のゲルのコピーであるが、タンデム質量分析法のために試料を得るためのバンド切り出しパターンがオーバレイされている。各レーンから低分子量バンドを切り出し、レーン8からすべてのタンパク質バンドを切り出した。試料ナンバリング・同定検索表は以下のとおりである。バンドを各レーンで上から下まで左側のレーン2(レーン1は分子量マーカに対応する)からレーン7まで進んでカットした。レーン8をスキップし、バンドカットをレーン9からレーン13まで続けた。これらのレーンそれぞれから四つのバンドを切り出した。レーン2から出発して、一番上のバンドはウェルA1に対応し、ウェルD1に対応する一番下のバンドに達する。そして、バンドを、レーン8から、一番上のバンド、ウェルE6から出発して一番下のバンドG8までカットした。レーン2、試料ウェルA1〜D1;レーン3、試料ウェルE1〜H1;レーン4、試料ウェルA2〜D2;レーン5、試料ウェルE2〜H2;レーン6、試料ウェルA3〜D3;レーン7、試料ウェルE3〜H3、レーン9、試料ウェルA4〜D4;レーン10、試料ウェルE4〜H4;レーン11、試料ウェルA5〜D5;レーン12、試料ウェルE5〜H5;レーン13、試料ウェルA6〜D6;レーン7、試料ウェルE6〜G8。
【図29】図25のタンパク質バンド切り出しプロフィールを示す。ゲル画像は、図25、レーン10〜13のゲルの低分子量領域のコピーであるが、タンデム質量分析法のためにレーン12および13から試料を得るために使用されるバンド切り出しパターンがオーバレイされている。低分子量バンドをレーン12および13から切り出した。試料ナンバリング・同定検索表は以下のとおりである。バンドを各レーンで上から下まで左側のレーン12からレーン13まで進んでカットした。これらのレーンそれぞれから五つのバンドを切り出した。レーン12から出発して、一番上のバンドは試料ウェルH8に対応し、ウェルD9に対応する一番下のバンドに達する。そして、バンドを、レーン13から、一番上のバンド、ウェルE9から出発して一番下のバンドA10までカットした。
【図30】図26のゲルのタンパク質バンド切り出しプロフィールを示す。ゲル画像は図26のゲルのコピーであるが、タンデム質量分析法のための試料を得るために使用されるバンド切り出しパターンがオーバレイされている。すべてのタンパク質バンドをレーン6のみから切り出した。試料ナンバリング・同定検索表は以下のとおりである。バンドをレーン6から上から下までカットした。このレーンから全部の17のバンドを切り出した。一番上のバンドから出発して、試料はウェルB10に対応し、ウェルB12に対応する一番下のバンドに達する。ゲルの一番上からのバンドは、試料ウェル B10、C10、D10、E10、F10、G10、H10、A11、B11、C11、D11、E11、F11、G11、H11、A12および最後にB12に対応する。
【図31】プール血清のSELDI質量スペクトルを示す。プールされ、希釈された未処理血清のWCX2チップから得られたSELDIスペクトルが示されている。各試料は二重反復スペクトルで表されている。上から:スペクトル1および2、28日目クローン8血清;スペクトル3および4、28日目クローン10;スペクトル5および6、42日目クローン8;ならびにスペクトル7および8、42日目クローン10。
【図32】プール血清のSELDI質量スペクトルを示す。プールされ、希釈された未処理血清のWCX2チップから得られたSELDIスペクトルが示されている。各試料は二重反復スペクトルで表されている。上から:スペクトル1および2、60日目マトリゲル対照血清;スペクトル3および4、60日目BT474対照;スペクトル5および6、60日目MCF7対照細胞株;ならびにスペクトル7および8、60日目クローン8。
【図33】プール血清のSELDI質量スペクトルを示す。プールされ、希釈された未処理血清のWCX2チップから得られたSELDIスペクトルが示されている。各試料は二重反復スペクトルで表されている。上から:スペクトル1および2、60日目クローン10血清;スペクトル3および4、対照プールA;スペクトル5および6、対照プールB;ならびにスペクトル7および8、対照プールC。
【図34】図34A〜34Cは、ビーズ溶離物のSELDIスペクトルを示す。
【図35】図35A〜35Cは、ビーズ溶離物のSELDIスペクトルを示す。
【図36】図36A〜36Cは、ビーズ溶離物のSELDIスペクトルを示す。
【図37】図37A〜37Cは、ビーズ溶離物のSELDIスペクトルを示す。
【図38】図38A〜38Cは、ビーズ溶離物のSELDIスペクトルを示す。
【図39】図39A〜39Cは、ビーズ溶離物のSELDIスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 第一の成分および第二の成分を含む試料を用意する工程、
(b) ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、および
(c) 該ナノ多孔性材料を該試料に曝露する工程
を含む、分別または分離の方法であって、曝露されると、該ナノ多孔性材料は該第一の成分を保持し、該第二の成分を保持しない、方法。
【請求項2】
試料が生物学的流体試料である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
生物学的流体が、血清、血漿、血液、尿、精液、精漿、胸膜液、腹水、乳頭吸引液、糞便または唾液である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第一の成分および第二の成分が、ペプチド、抗原、抗体、タンパク質、タンパク質断片、RNAまたはDNAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第一の成分の分子量が第二の成分の分子量よりも低い、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性ケイ素である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性酸化物材料である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ナノ多孔性酸化物材料がナノ多孔性シリカである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ナノ多孔性材料が分子カットオフである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ナノ多孔性材料が修飾された表面を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ナノ多孔性材料が荷電面を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ナノ多孔性材料が、官能基で修飾された表面を有する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
基材が、フィルム、ウェーハ、粒子またはマイクロチップである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
基材を用意する工程が、トップダウン技術によって基材を製造することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
トップダウン技術が、光リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、X線リソグラフィー、深UVリソグラフィーおよびナノプリントリソグラフィーから選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第一の成分をナノ多孔性材料から抽出する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
曝露時にナノ多孔性材料を洗浄する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ナノ多孔性材料が第一の成分を吸着する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
第一の成分を分析する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
分析が、質量分析法、ゲル電気泳動法、クロマトグラフィー法、バイオアッセイ法またはそれらの組み合わせによる分析である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
質量分析法が、MALDI-TOF質量分析法、LC/MS質量分析法、ESI-MS質量分析法、タンデム質量分析法またはSELDI質量分析法である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
(a) 試料を提供する工程、
(b) ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、および
(c) 該ナノ多孔性材料を該試料に曝露する工程、および
該ナノ多孔性材料によって保持された該試料の画分を分析する工程
を含む、試料を分析する方法。
【請求項23】
試料が生物学的流体試料である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
生物学的流体が、血清、血漿、血液、尿、精液、精漿、胸膜液、腹水、乳頭吸引液、糞便または唾液である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
保持される画分が、ペプチド、抗原、抗体、タンパク質、タンパク質断片、RNA、DNAまたはそれらの組み合わせを含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
保持される画分が、ナノ多孔性材料に吸着する画分である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
保持される画分が材料の低分子量画分である、請求項22記載の方法。
【請求項28】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性ケイ素である、請求項22記載の方法。
【請求項29】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性酸化物材料である、請求項22記載の方法。
【請求項30】
ナノ多孔性材料の表面が修飾された表面である、請求項22記載の方法。
【請求項31】
基材が、フィルム、ウェーハ、粒子またはマイクロチップである、請求項22記載の方法。
【請求項32】
基材を用意する工程が、トップダウン技術によって基材を製造することを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
基材が、第一の区域と、該第一の区域を包囲する第二の区域とを含み、該第一の区域が、ナノ多孔性材料を含み、該第二の区域が、ナノ多孔性材料を含まない、請求項22記載の方法。
【請求項34】
保持される画分が20kDa以下の分子量を有する、請求項22記載の方法。
【請求項35】
保持される画分が15kDa以下の分子量を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
保持される画分が10kDa以下の分子量を有する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
保持される画分が5kDa以下の分子量を有する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
保持される画分が4kDa以下の分子量を有する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
分析が、保持された画分をナノ多孔性材料から抽出することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項40】
分析が、質量分析法、ゲル電気泳動法、クロマトグラフィー法、バイオアッセイ法またはそれらの組み合わせによる分析である、請求項22記載の方法。
【請求項41】
質量分析法が、MALDI-TOF質量分析法、LC/MS質量分析法、ESI-MS質量分析法、タンデム質量分析法またはSELDI質量分析法である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
分析が、少なくとも20ng/mlの低分子量検出限界を有する、請求項22記載の方法。
【請求項43】
分析が、少なくとも5ng/mlの低分子量検出限界を有する、請求項22記載の方法。
【請求項44】
(a) 生理学的状態によって影響される試料を用意する工程、
(b) ナノ多孔性材料を含む基材を用意する工程、
(c) 該ナノ多孔性材料を該試料に曝露する工程、
(d) 該ナノ多孔性材料によって保持された該試料の画分を分析する工程、および
(e) 分析結果を対照試料の分析結果と比較して、該生理学的状態のマーカを検出する工程
を含む、生理学的状態のマーカを検出する方法。
【請求項45】
生理学的状態が疾病または病期である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
疾病ががんである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
試料が生物学的流体試料である、請求項44記載の方法。
【請求項48】
試料が哺乳動物からの試料である、請求項44記載の方法。
【請求項49】
試料がヒトからの試料である、請求項44記載の方法。
【請求項50】
基材が、フィルム、ウェーハ、粒子またはマイクロチップである、請求項44記載の方法。
【請求項51】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性酸化物またはナノ多孔性ケイ素である、請求項44記載の方法。
【請求項52】
分析が、質量分析法、ゲル電気泳動法、クロマトグラフィー法、バイオアッセイ法またはそれらの組み合わせによる分析を含む、請求項44記載の方法。
【請求項53】
一つまたは複数の成分を含む試料を採取するための手段、および
該一つまたは複数の成分を保持するように構成されたナノ多孔性材料を含む基材
を含む、キット。
【請求項54】
試料が生物学的流体試料である、請求項53記載のキット。
【請求項55】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性ケイ素またはナノ多孔性酸化物材料である、請求項53記載のキット。
【請求項56】
一つまたは複数の成分が試料の低分子量画分である、請求項53記載のキット。
【請求項57】
分析機器、および
ナノ多孔性材料を含む基材
を含む分析システムであって、該基材が、一つまたは複数の分析物に対する該分析機器の感度を増強するように構成されている、分析システム。
【請求項58】
基材が、ナノ多孔性材料を含む第一の区域を含み、該第一の区域が一つまたは複数の分析物を吸着することができ、該第一の区域が、該一つまたは複数の分析物の吸着に対して抵抗性である第二の区域によって包囲されている、請求項57記載の分析システム。
【請求項59】
第二の区域が非ナノ多孔性区域である、請求項58記載の分析システム。
【請求項60】
第二の区域の表面が親水性官能基で修飾されている、請求項58記載の分析システム。
【請求項61】
第一の区域の表面が荷電している、請求項58記載の分析システム。
【請求項62】
第一の区域の表面が官能基で修飾されている、請求項58記載の分析システム。
【請求項63】
分析機器がイオン化ソースを含み、第一の区域のサイズが該イオン化ソースの有効区域のサイズに適合する、請求項58記載の分析システム。
【請求項64】
イオン化ソースがレーザであり、第一の区域のサイズが該レーザのビームのサイズに適合する、請求項63記載の分析システム。
【請求項65】
分析機器が質量分析計である、請求項57記載の分析システム。
【請求項66】
質量分析計がレーザ脱離/イオン化質量分析計である、請求項65記載の分析システム。
【請求項67】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性ケイ素である、請求項57記載の分析システム。
【請求項68】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性酸化物材料である、請求項57記載の分析システム。
【請求項69】
一つまたは複数の分析物が、ペプチド、抗原、抗体、タンパク質、タンパク質断片、RNAおよびDNAから選択される、請求項57記載の分析システム。
【請求項70】
一つまたは複数の分析物が20kDa以下の分子量を有する、請求項57記載の分析システム。
【請求項71】
一つまたは複数の分析物が15kDa以下の分子量を有する、請求項57記載の分析システム。
【請求項72】
一つまたは複数の分析物が10kDa以下の分子量を有する、請求項57記載の分析システム。
【請求項73】
一つまたは複数の分析物が4kDa以下の分子量を有する、請求項57記載の分析システム。
【請求項74】
ナノ多孔性材料を含み、質量分析計に挿入されるように構成されている基材
を含むプローブ。
【請求項75】
基材が、第一の区域と、該第一の区域を包囲する第二の区域とを含み、該第一の区域が、ナノ多孔性材料を含み、かつこれは一つまたは複数の分析物を保持することができ、該第二の区域が、該一つまたは複数の分析物の吸着に対して抵抗性である、請求項74記載のプローブ。
【請求項76】
第二の区域が非ナノ多孔性区域である、請求項75記載のプローブ。
【請求項77】
第二の区域の表面が親水性官能基で修飾されている、請求項75記載のプローブ。
【請求項78】
第一の区域の表面が荷電している、請求項75記載のプローブ。
【請求項79】
第一の区域の表面が、一つまたは複数の分析物を保持するために官能基で修飾されている、請求項75記載のプローブ。
【請求項80】
質量分析計がイオン化ソースを含み、第一の区域のサイズが該イオン化ソースの有効区域のサイズに適合する、請求項75記載のプローブ。
【請求項81】
イオン化ソースがレーザであり、第一の区域のサイズが該レーザのビームのサイズに適合する、請求項80記載のプローブ。
【請求項82】
一つまたは複数の分析物が、ペプチド、抗原、抗体、タンパク質、タンパク質断片、RNAおよびDNAから選択される、請求項75記載のプローブ。
【請求項83】
一つまたは複数の分析物が20kDa以下の分子量を有する、請求項75記載のプローブ。
【請求項84】
一つまたは複数の分析物が5kDa以下の分子量を有する、請求項75記載のプローブ。
【請求項85】
ナノ多孔性材料がナノ多孔性ケイ素またはナノ多孔性酸化物材料である、請求項74記載のプローブ。
【請求項86】
質量分析計がマトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析計である、請求項74記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34C】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【図37A】
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【図37B】
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【図37C】
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【図38A】
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【図38B】
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【図38C】
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【図39A】
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【図39B】
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【図39C】
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【公表番号】特表2009−520989(P2009−520989A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547447(P2008−547447)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048460
【国際公開番号】WO2007/120248
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508184996)ザ オハイオ ステイト ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション (1)
【出願人】(508184354)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (1)
【Fターム(参考)】