分析物分析に関する方法、混合物、キット、および組成物
本発明は、固有の標識化試薬もしくは固有の標識化試薬からなるセットを用いた質量分析よって分析物を測定するための方法、混合物、キット、および/または組成物に関する。標識化試薬は、異性体的または同重体的であり、標識分析物の多重化分析に適した混合物の生成に用いることができる。分析物の標識は、該分析物を式RP−X−LK−Y−RGの化合物またはその塩である標識化試薬と反応させておこなうことができる。複数のセットの異性体的または同重体的標識化試薬を用いて、2種類以上の異なる試料からなる分析物を標識することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/443,612号(2003年1月30日出願)の優先権を主張するもので、該米国特許出願は本明細書において参考として援用される。
本発明は、質量分析による分析物測定の分野に関する。
【0002】
(1.序論)
本発明は、1つの分析物または複数の分析物を質量分析によって測定するための方法、混合物、キットおよび/または組成物に関する。分析物は、目的とする任意の分子とすることができる。分析物の非限定的例として、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭化水素、脂質、ステロイド、および分子量が1,500ダルトン未満の低分子が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
分析物の標識は、該分析物を式RP−X−LK−Y−RGの化合物またはその塩である標識化試薬と反応させておこなうことができる。ここで、式中、RGは分析物と反応する反応基であり、RP、X、LK、およびYは、以下でより詳細に記載される。したがって、標識分析物は、一般式:RP−X−LK−Y−分析物を持つことができる。複数のセットの異性体的または同重体的標識化試薬を用いて、2種類以上の異なる試料からなる分析物を標識することができる。ここで、それらの標識化試薬は、各々の異なる試料に対して異なるものとし、また標識分析物をもたらす試料と結合しうる固有のレポータ(RP)を該標識化試薬が含むものとすることができる。したがって、情報(例えば、レポーターの有無および/または量)を試料中の分析物の有無および/または量(しばしば濃度および/または分量)に相関させることができ、このことは異なる試料を標識して得られた複数の産物を混合することよって生じた複数の標識分析物の複合混合物を分析して得られる情報であっても、言える。そのような複合混合物の分析は、単一の試料または多重式に多数の試料から1種類または複数の分析物を測定することを可能とさせる。したがって、本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物は、複合試料混合物の多重化分析に、特によく適している。例えば、それらを、プロテオーム分析および/またはゲノム分析、同様にゲノムおよびプロテオーム分析に関連した相関研究に用いることができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(2.定義)
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用されるとともに、単数形で用いられた用語は、適当でる場合は常に、複数形をも包含するものであり、その逆もあてはまる。すなわち、
a.本明細書で用いられる「分析物(analyte)」とは、測定すべき目的とする分子をいう。分析物の非限定的例として、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸(DNAまたはRNAの両方)、炭化水素、脂質、ステロイド、および/または分子量が1,500ダルトン未満の低分子を挙げることができる。上記分析物または上記分析物を含む試料の源として、限定されるものではなく、どのような源に由来するものでもよい。1つの分析物または複数の分析物を、天然のものまたは合成したものとすることができる。分析物または該分析物を含む試料の源の非限定的な例として、限定されるものではないが、細胞もしくは組織、またはそれらの培養物(または継代培養物)が挙げられる。分析物源の非限定的例として、限定されるものではないが、粗または加工済みの細胞溶解物、体液、組織抽出物、または細胞抽出物が挙げられる。上記分析物源のさらに別の非限定的例として、限定されるものではないが、クロマトグラフィー分離または電気泳動分離等の分離プロセスから得られる分画が挙げられる。体液として、限定されるものではないが、血液、尿、大便、髄液、脳脊髄液、羊水、リンパ液、または腺分泌液が挙げられる。加工済み溶解物(processed cell lysate)が意味することは、細胞を溶解する上で必要とされる処理に加えて、回収された材料に対してさらに加工を施すために、細胞溶解物が処理されることである。例えば、試料は、ペプチドである1種類以上の分析物を含む細胞溶解物であり、該ペプチドは粗細胞溶解物の全タンパク質成分をタンパク質分解酵素処理し、前駆タンパク質またはタンパク質を消化することによって形成される。
【0005】
b.本明細書で用いられる「フラグメンテーション(fragmentation)」とは、共有結合の破壊をいう。
【0006】
c.本明細書で用いられる「フラグメント(fragment)」とは、フラグメンテーション(名詞)の産物またはフラグメンテーションを起こす(動詞)操作の産物をいう。
【0007】
d.原子または分子の質量が、多くの場合、最も近い整数原子質量単位または原子質量単位のもっと近い0.1位もしくは0.001位に近似しうることは、十分に認められている。本明細書で用いられるように、「総質量(gross mass)」とは、絶対質量のことをいうとともに、一定の範囲内の近似質量のこともいう。ここで、一定の範囲とは、使用した異なる同位体種での質量の非常にわずかな差がが検出されようがなかろうが、レポーターおよび/またはリンカー部分の質量を釣り合わせる目的に対してそれらの同位体が機能的に等価である範囲であるように(レポーター/リンカー組み合わせの総重量が一セットまたはキットの同重体的または異性体的標識化試薬となるように)、異なる原子種の同位体の使用が質量の点で近似していることをいう。
【0008】
例えば、酸素の一般的な同位体は、総質量が16.0(実際の質量15.9949)および18.0(実際の質量17.9992)であり、炭素の一般的な同位体は、総質量が12.0(実際の質量12.00000)および13.0(実際の質量13.00336)であり、さらに窒素の一般的な同位体は、総質量が14.0(実際の質量14.0031)および15.0(実際の質量15.0001)である。これらの値が近似値であるのに対して、当業者は、もしあるセットの1レポーターに18O同位体を使用する場合、さらに2質量単位(総質量が16.0である酸素の同位体上に)を補うことができ、例えば、そのセットの16Oから構成される異なるレポーターにおいて、該レポーターのどこか他のところに、12C原子2つの代わりに13C原子2つ、14N原子2つの代わりに15N原子2つ、さもなければ12Cおよび14Nのかわりに13C原子1つおよび15N原子1つを取り込むことで、18Oを補うことができることを当業者ならば理解する。このようにして、上記セットの2つの異なるレポーターが機能的質量等価である(すなわち、同一総質量を持つ)。なぜなら、13C原子を2つ(12C原子2つの代わりに)、15N原子を2つ(14N原子2つの代わりに)、13C原子を1つと15Nを1つ(12C原子と14N原子の代わりに)、もしくは18O原子1つ(16O原子1つの代わりに)を使用する際に、セットもしくはキットの標識物の全てで、2ダルトンの質量の増加が生ずる質量の実際の違いが僅かであることは、分析の性質に対して障害とはならない。
【0009】
このことは、図8を参照して例証することができる。図8では、化合物XVIIのレポーター/リンカー組み合わせ(図8、化学式:C513CH1015N2O)は、2つの15N原子と1つの13C原子とを有し、全理論質量が129.138である。比較してみると、同重体XV(図8、化学式C513CH10N218O)は、1つの18O原子と1つの13C原子とを有し、全理論質量が129.151である。化合物XVIIおよびXVは、同重体であり、重原子同位体含有量以外は構造的および化学的に見分けはつかないが、わずかながら絶対質量に差異がある(それぞれ、質量129.138対質量129.151)。しかし、本発明の目的のために、化合物XVIIおよびXVの総質量は129.1である。なぜなら、この総質量は、同重体XVIIの絶対質量と同重体XVの絶対的質量とのあいだの小さな違いを測定するのに質量分析計が十分な感度であるかどうかにかかわらず、分析の妨げとはならない。
【0010】
図8から、同一重原子同位体の1つの構造内での分布が、異性体的および/または同重体的標識化試薬のセットを生成する上で検討すべき唯一のことではないことが明らかである。所望の総重量の異性体または同重体を達成するために、重原子同位体種を混合することが可能である。これによって、重原子同位体の選択(組み合わせ)とそれらの分布との両方が、本発明の実施形態にとって有用な異性体的および/または同重体的標識化試薬の生産の際の検討に利用可能である。
【0011】
e.本明細書で用いられる「同位体的にエンリッチされた(isotopically enriched)」は、1つ以上の重原子同位体(例えば、重水素、13C、15N、18O、37Cl、または81Br)により合成的にエンリッチされた化合物(例えば、標識化試薬)をいう。同位体的エンリッチメントは、100%有効であるわけではないので、エンリッチメントの状態が劣る化合物の不純物が存在し、質量がより低くなる。同様に、過剰なエンリッチメント(不要なエンリッチメント)のため、また天然同位体が豊富なため、より質量の大きな不純物が存在しうる。
【0012】
f.本明細書で用いられるように、「標識化試薬(labeling reagent)」は測定のために分析物に印を付けるのに適した部分をいう。標識(label)という用語は、タグおよびマーク、さらに他の等価な用語や句と同義である。例えば、標識分析物(labeled analyte)もまた、タグ付き分析物またはマーク付き分析物とも呼ばれる。したがって、用語「標識」、「タグ」、「マーク」、およびそれらの用語の派生物は、相互に置き換え可能であり、印を付けるのに適した部分、または印が付けられた部分である測定のための分析物のことをいう。
【0013】
g.本明細書で用いられるように、「支持体(support)」、「固体支持体(solid 支持体)」、または「固体担体(solid carrier)」は、任意の固相材料を意味するもので、該固相材料上に標識化試薬が固定化される。固定化は、例えば、支持体上で標識がおこなわれるかどうかにかかわりなく、分析物を標識するのに用いられ、あるいは標識化試薬を調製するのに用いられる。固体支持体は、「樹脂」、「合成支持体」、「固相」、「表面」、「膜」、および/または「支持体」を包含する。固体支持体を、有機ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、同様にそれらのコポリマーおよびグラフト)から構成することができる。同様に、固体をガラス、シリカ、制御多孔性ガラス(CPG)、または逆相シリカ等、無機的なものにすることができる。固体支持体の形態は、ビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、膜、または面状である。面は、平面的、実質的に平面的、または非平面的である。固体支持体は、多孔性または非多孔性であり、膨潤または非膨潤特性を持つことができる。固体支持体をウエル、凹部、または他の入れ物、容器、外観または配置とすることができる。複数の固体支持体を、試薬のロボティック送達にとってアドレス可能な種々の位置で、または検出方法および/もしくは器具によって、一つの配列に構成することができる。
【0014】
h.本明細書で用いられるように、「天然同位体存在比」とは、自然界での1種類の同位体または複数の同位体が天然に広く行き渡っていることに基づく、化合物に見いだされる1種類以上の同位体のレベル(または分布)のことをいう。例えば、生きている植物から得た天然化合物は、代表的には、約0.6%13Cを含む。
【0015】
(3.概要)
(反応基)
方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態で用いる反応基「RG」または試薬は、求電子試薬または求核試薬のいずれかであり、一試料の1種類以上の反応性分析物と反応することが可能である。反応基は事前に存在しうるか、もしくは該反応基をin−situで調製することができる。反応基のin−situ調製は、反応性分析物の不在下で進行することができ、または反応性分析物の存在下で進行することができる。例えば、カルボン酸基の修飾は、水溶性カルボジイミド(例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドハイドロクロライド;EDC)によりin−situでおこなうことができ、それによってアミノ基等の求核試薬と反応しうる救電子性試薬を調製する。いくつかの実施形態では、標識化試薬のカルボン酸基をEDCにより活性化させることは、分析物を含むアミン(求核試薬)の存在したでおこなうことができる。いくつかの実施形態で、分析物を含むアミン(求核試薬)もまた、EDCによる初期反応がおこなわれた後に付加することができる。いくつかの実施形態では、反応基は、保護基をin−situで取り除くことで、in−situで生成することができる。その結果、求核試薬および/または求電子試薬の反応によって分析物の誘電体化をもたらしうる任意に存在または新たに生成された試薬または複数の試薬は、本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態によって、検討される。
【0016】
標識化試薬の反応基が求電子試薬である場合、該反応基は1つの分析物または複数の分析物の適当な求核性基と化学反応することができる。標識化試薬の反応基が求核試薬である場合、該反応基は1つの分析物または複数の分析物の適当な救電子性試薬と反応することができる。適当な求核性基と救電子性試薬との数多くの対が知られており、化学的および生化学的技術分野でしばしば使われている。分析物(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、ステロイド、または1,500ダルトン未満の他の低分子)と連結することでそれらの誘電体化を起こすことができる適当な求核性または求電子性試薬を含む試薬の非限定的例が、文献(Pierce Life Science & Analytical Research Products Catalog & Handbook (a Perstorp Biotec Company), Rockford, IL 61105, USA)に記載されている。他の適当な試薬は当該技術分野で周知であり、Sigma−Aldrich等、数多くの他のベンダーから市販されている。
【0017】
標識化試薬の反応基を、アミン反応基とすることができる。例えば、アミン反応基を活性エステルとすることができる。活性エステル(active ester)とは、ペプチド合成で周知であり、ペプチド合成で一般に使用される条件下でアミノ酸のN−αアミンと容易に反応を起こす特定のエステルのことをいう。アミン反応性の活性エステルを、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、または2,4−ジハロフェニルエステルとすることができる。例えば、活性エステルのアルコールまたはチオール基は、以下の式を持つことができる。すなわち、
【0018】
【化33】
式中、XはOまたはS、しかし好ましくはOである。前述のすべてがアルコールまたはチオール基になっており、該アルコールまたはチオール基はペプチド化学の分野で活性エステルを形成することが知られており、アミノ酸のN−αアミノとエステルのカルボニル炭素との反応によって置換される。本明細書に記載した任意の適当な標識化/タグ化試薬の活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)が周知の方法を用いて調製可能であることが明らかにならなければならない(Greg T. Hermanson(1996). ”The Chemistry of Reactive Groups” in ”Bioconjugate Techniques” Chapter 2 pages 137−165, Academic Press, (NewYork)を参照のこと。同様に、Innovation And Perspectives In Solid Phase Synthesis, Editor:Roger Epton, SPCC (UK) Ltd, Birmingham, 1990)を参照のこと)。一般式:RP−X−LK−Y−RGの標識化試薬の代表例であるN−置換ビペラジン酢酸化合物の活性エステルを形成する方法は、米国特許出願第10/751,354号(本明細書に援用)に記載されている。
【0019】
別の実施形態では、混合無水物がアミノ基と効率的に反応してアミド結合を生ずることから、標識化試薬の反応基を混合無水物にすることができる。
【0020】
標識化試薬の反応基を、チオール反応基にすることができる。例えば、チオール反応基を、α−ハロアシルのハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキル、またはマレイミドとすることができる。ハロゲン化もしくはハロゲン化物(halide)またはハロ(halo)は、フッ素、塩素、ホウ素、またはヨウ素の原子を意味するものとする。
【0021】
標識化試薬の反応基を、ヒドロキシル反応基とすることができる。例えば、ヒドロシキル反応基を、トリチル−ハロゲン化物(trityl−halide)部分またはシリル−ハロゲン化物(silyl−halide)部分とすることができる。トリチル−ハロゲン化物反応性部分を、置換されたもの(例えば、Y−メトキキシトリチル、Y−ジメトキシトリチル、Y−トリメトキシトリチル等)または非置換のものとすることができ、ここでYは以下のように定義される。シリル反応性部分を、アルキル置換シリル・ハロゲン化物、例えばY−ジメチルシリル、Y−ジトリエチルシリル、Y−ジプロピルシリル、Y−ジイソプロピルシリル等)とすることができ、ここでYは以下のように定義される。
【0022】
標識化試薬の反応基を、アミン基、ヒドロキシ基、またはチオール基等の求核試薬とすることができる。
【0023】
(レポーター部分)
方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態で用いられる1つの標識化試薬または複数の標識化試薬のレポーター部分は、測定しうる固有の質量(または質量と電荷との比(質量電荷比))を持つ基である。したがって、一つのセットの各々のレポーターは、固有の総質量を持つことができる。異なるレポーターは、1種類以上の重原子同位体を持つことで固有の質量を達成することができる。例えば、炭素の同位体(12C、13C、および14C)、窒素の同位体(14Nおよび15N)、酸素の同位体(16Oおよび18O)、または水素の同位体(水素、重水素、および三重水素)が存在し、レポーター部分の多様な群の調製に用いることができる。安定した重原子同位体の例として、13C、15N、18O、および重水素が挙げられる。他の軽および重原子同位体もレポーターで用いることができるので、これらに限定されるものではない。軽および重原子同位体を含むレポーターの調製に適した出発原料は、種々の市販元、例えばCambridge Isotope Laboratories, Andover, MA (
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でリストまたは「出発原料」を参照のこと) およびIsotec (Sigma−Aldrichの一事業部)から入手可能である。Cambridge Isotope LaboratoriesおよびIsotecは、特注合成契約のもとで所望の化合物も調製する。同上(Id)。
【0024】
固有のレポーターを目的とする試料に対応づけることで、その試料の1つまたは複数の分析物にレポーターを標識することができる。このように、レポーターに関する情報に、上記試料の1つまたはすべてに関する情報を対応づけることができる。しかし、レポーターを測定する際に、レポーターが分析物に物理的に連結する必要はない。むしろ、レポーターの固有の総質量を、例えば、標識分析物のイオンをフラグメント化して娘フラグメント・イオンおよび検出可能なレポーターを生成した後、タンデム質量分析器の第2の質量分析で測定することができる。測定されたレポーターは、測定された分析物が由来する試料の同定に用いることができる。さらに、他のレポーターの量と比較した場合または較正基準(例えば、特定のレポーターで標識した分析物)と比較した場合の固有のレポーターの量を用いて、1つの試料または複数の試料に含まれる分析物の相対量または絶対量(しばしば、濃度および/または分量として表現される)を測定することができる。したがって、情報(例えば特定の試料に含まれる1種類以上の分析物の量)を、各特定の試料標識することにレポーター部位を対応づけることができる。1つの分析物または複数の分析物の同一性も測定する場合、その情報を異なるレポーターに関連する情報と相関させることで、1つの試料または複数の試料に含まれる各々の標識分析物の同一性および量の測定が促進される。
【0025】
レポーターは、固定された電荷を含むものか、もしくはイオン化することが可能なものであるかのいずれかである。レポーターが固定化された電荷を含むか、もしくはイオン化することが可能なものであるかのいずれかであることから、標識化試薬を単離するか、または塩類または双性イオンの形状で反応性分析物の標識に用いることが可能である。レポーターのイオン化は、質量分析計での該レポーターの測定を促進する。したがって、レポーターをイオン(時々、サイン・イオン(signature ion)とも呼ばれる)として測定することができる。イオン化した時、レポーターは正味の正または負電荷を1つ以上含むことができる。したがって、レポーターは1種類以上の酸性基または塩基性基を含むことができる。なぜなら、そのような基は質量分析計内で容易にイオン化しうるからである。例えば、レポーターは、1種類以上の塩基性窒素原子(正荷電)または1種類以上のイオン性の酸性基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、またはリン酸基(負電荷)を含むことができる。塩基性窒素を含むレポーターの非限定的例として、置換または非置換のモルホリリン、ピペリジン、またはピペラジンが挙げられる。
【0026】
レポーターを、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含み、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環とすることができる。複素環を、置換または非置換のものとすることができる。複素環を、脂肪族または芳香族のものとすることができる。複素環部分の可能な置換基として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、支持体に分析物を結合させるのに適した保護または非保護基、例えばアミン、ヒドロキシ、またはチオール基を含むことができる。複素環は、一つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子をさらに含むことができる。
【0027】
レポーターの選択は、分析物の分析にとって典型的な条件下で、実質的にサブ・フラグメント化(sub−fragment)が起こらないように、おこなうことができる。レポーターの選択は、質量分析計で少なくとも標識分析物の選択されたイオンの少なくとも一部の結合XおよびYの両方でフラグメンテーションを起こさせるために印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブ・フラグメント化が起こらないように、おこなうことができる。「実質的にサブ・フラグメント化を起こさない(does not substantially sub−fragment)」は、レポーターのフラグメントが、目的とする分析物の好結果の分析に適用した場合に、バックグラウンド・ノイズよりも高く検出することが困難または不可能であることを意味する。レポーターの総質量は、測定されようとする分析物の質量と比較して、または該分析物の予想フラグメントのいずれかの質量と比較して、意図的に異なるように選択される。例えば、タンパク質またはペプチドが分析物である場合、任意の天然に生ずるアミノ酸もしくはアミノ酸、あるいはその予測フラグメントと比較してレポーターの総質量を選択することが困難である。このことは、分析物の測定を促すことができる。なぜなら、分析物に依存して、同一一致(same coincident)質量を持つ試料の任意の可能な構成要素の欠如は任意の分析の結果に対して信頼を加えることができる。
【0028】
レポーターを、ポリマーではない低分子とすることができる。レポーターはバイオポリマー(例えば、ペプチド、タンパク質、または核酸)またはバイオポリマーの構成要素(例えば、アミノ酸、ヌクレオシド、またはヌクレオチド)である必要はない。レポーターの総質量は、250ダルトン未満である。そのような低分子は、第2の質量分析で容易に測定することができる。この文脈において、第2の質量分析を、一般的にはタンデム質量分析計で、第1の質量分析で測定される選択されたイオンに対しておこなうことができる。特定の質量電荷比を持つイオンを、起こりうるフラグメンテーションとさらなる質量分析とのために、第1の質量分析から特異的に選択することができるので、第1の質量分析からの非選択イオンが第2の質量分析に持ち込まれず、そのため第2の質量分析のスペクトラムにコンタミが生ずることはない。さらに、質量分析計の感度および直線性(定量化を目的として)を、この低質量範囲でかなり強くすることができる。さらに質量分析計技術の現状は、この質量範囲で1ダルトン未満の基腺質量解像度を可能にさせることができる(例えば、図6参照)。これらの因子が、当該技術分野の状態に対して有用な前進であると判明される可能性がある。
【0029】
(リンカー部分)
方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態で用いる1つの標識試薬または複数の標識試薬のリンカー部分は、分析物による反応が生じたかどうかに応じて、レポーターを分析物に結合させるか、あるいはレポーターを反応基に結合させる。リンカーの選択は、結合XおよびYの両方がフラグメント化した場合に中性種を生成するためにおこなうことができる(結合XおよびYの両方のフラグメンテーションに対して、ニュートラル・ロス(neutral loss)を起こす)。リンカーは、非常に小さな部分であり、例えばカルボニルまたはチオカルボニル基である。例えば、リンカーは少なくとも1種類の重原子同位体を含み、かつ下記の式を有する。すなわち、
【0030】
【化34】
式中、R1は同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とすることができ、該アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここでアルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。リンカーを、より大きな部分とすることもできる。リンカーを、ポリマーまたはバイオポリマーとすることができる。リンカーが解離エネルギー・レベルにさらされた場合(リンカーの天然フラグメントのみを生成するサブ・フラグメンテーションを含む)に、サブ・フラグメント化するようにリンカーを設計することができ、それによってリンカーの中性フラグメントのみが生成される。
【0031】
リンカー部分は、その質量が、混合物の各々の分析物に対するレポーター間、または試薬のセットおよび/もしくはキットに対するレポーター間の総重量における差異を補正するように、1種類以上の重原子同位体を含むことができる。
【0032】
さらに、レポーター/リンカー組み合わせの統合総質量(aggregate gross mass)(すなわち、全体として得た総質量)は、混合物の各標識分析物にとって、またはセットおよび/もしくはキットとなった試薬にとって、同一であることができる。さらに具体的には、リンカー部分は、異なる試料から得た標識分析物のレポーター間での総質量の違いを補正することができる。レポーターの固有総質量は標識分析物が由来する試料と相関し、またレポーター/リンカー組み合わせの統合総質量は、それが由来する試料に関わりなく試料混合物の各標識分析物について同一である。このようにして、2つ以上の異なる試料中の同一分析物の総質量は、標識およびその後の混合によって試料混合物を生成する時に、同一総質量を持つことができる。
【0033】
例えば、標識分析物または分析物を標識するためのセットおよび/またはキットの試薬を、異性体または同重体とすることができる。したがって、もし試料混合物の初期質量分析から特定の質量電荷比(試料混合物から得た)のイオンが選択される場合(すなわち、選択されたイオン)、試料混合物を構成する別の試料から得た同一の分析物は、同じ混合物での各々の濃度および/または分量に比例して、選択されたイオンで表現される。したがって、リンカーはレポーターを分析物に結合させるだけではなく、固有のレポーター部分の異なる質量を補正することもでき、それによって種々の質量の標識分析物内のレポーター/リンカー組み合わせの総質量を調和する。
【0034】
リンカーは標識化試薬内でレポーターの質量平衡として作用することができるので、レポーター/リンカー組み合わせの統合総質量がセットまたはキットのすべての試薬に対して同一であるように、リンカーの原子の数が多くなればなるほど、セットおよび/またはキットの異なる異性体的/同重体的標識化試薬の予測数が大きくなる。別の言い方をすれば、一般に、リンカーが含む原子の数が増えれば、存在する潜在的なレポーター/リンカーの組み合わせの数が増える。なぜなら、同位体を、多くてもリンカーの任意の場所で置換することができ、それによってリンカー部分の異性体または同重体が生成されるからであり、リンカー部分がレポーター部分の異なる質量をオフセットするのに用いられ、それによって1セットのレポーター/リンカー異性体または同重体を生成する。そのような複数の標識試薬からなる多様なセットは、同一の試料および/または異なる試料の分析物を多重化分析するのに、特に十分適している。
【0035】
セットおよび/またはキットの標識化試薬の総数は2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。セットまたはキットの標識化試薬の多様性は、レポーターおよびリンカー部分の原子の数、軽同位体を置換するのに利用される重原子同位体、および同位体が合成的に置かれる種々の合成的形態によってのみ制限される。しかし、すでに示唆したように、同位体的にエンリッチされた数多くの出発原料を、Cambridge Istope Laboratories およびIsotec等の製造元から容易に入手可能である。そのような同位体的にエンリッチされた出発原料は、同重体的および異性体的標識化試薬のセットを生産するために使われる、または同位体的にエンリッチされた出発原料を生成するために使われる合成プロセスで使うことができるか、あるいは同重体的および異性体的標識化試薬のセットを生産するために使われる合成プロセスで使用することができる同位体的にエンリッチされた出発原料を生産するために使うことができる。1セットの標識試薬での使用に適した同重体的標識化試薬の調製のいくつかの例は、後述の実施例の欄で見いだすことができる。
【0036】
(レポーター/リンカー組み合わせ)
本明細書に記載した標識化試薬は、レポーターとリンカーとから構成され、これらは結合Xを介して結合している。上記したように、レポーター/リンカー組み合わせは、1セットおよび/またはキットの標識化試薬の各構成要素に対して総質量が同じである。さらに、標識化試薬のレポーター/リンカー組み合わせの結合Xを、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、選択されたイオンの少なくとも一部分でフラグメント化するように設計することができ、それによって、分析物からレポーターが放出される。したがって、レポーター(m/s比として)の総質量およびその強度をMS/MS分析で観察することができる。
【0037】
レポーター/リンカー組み合わせは、セットまたはキットのさまざまな標識化試薬の間に、同一または異なる重原子同位体の種々の組み合わせを含むことができる。科学文献では、科学文献では、このことは時にはコーディングまたは同位体コーディングと呼ばれていた。例えば、Abersold他は同位体コード化親和性タグ(isotope coded affinity tag)(ICAT; WO00/11208を参照のこと)。ある点で、Abersold他の試薬は、Abersoldが異性体的または同重体的標識化試薬等の2つ以上の同質量の標識化試薬を教示していないことから、本発明の標識化試薬とは異なる。
【0038】
(質量分析計/質量分析法(MS))
本発明の方法は、タンデム質量分析計と分子イオンを選択してフラグメント化する能力を有する他の質量分析計とを用いて、実施することができる。タンデム質量分析計(および低度1段式(lesser degree single−stage)質量分析計)は、質量電荷(m/z)比にもとづいて分子イオンの選択およびフラグメント化をおこなって、結果として得られたフラグメント(娘)イオン・スペクトラムを記録する能力を有する。より具体的には、選択されたイオンが解離エネルギー・レベル(例えば、衝突誘起解離(CID))を受けることによって、娘フラグメント・イオン・スペクトルを生成することができる。例えば、特定のm/z比の標識化ペプチドに対応するイオンを、第1の質量分析から選択し、フラグメント化し、さらに第2の質量分析で再度分析することができる。そのようなタンデム質量分析を実行することができる代表的装置として、限定されるものではないが、磁場4セクタ、タンデム飛行時間、三連四重極、イオン・トラップ、およびハイブリッド四重極飛行時間(Q−TOF)質量分析が挙げられる。
【0039】
これらのタイプの質量分析計を、種々のイオン化源とともに用いてもよい。そのようなイオン化原として、限定されるものではないが、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)が挙げられる。イオン化源は、第1の質量分析に対して、電荷種を生成するために用いられ、前々から固定電荷を持つものではない。追加の質量分析機器およびフラグメンテーション方法として、MALDI−MS機器での遅延引き出し機構(post−source decay)とMALDI−TOF(飛行時間型)−TOF MSを用いた高エネルギーCIDとが挙げられる。タンデム質量分析計についての最近の概説については、R. Aebersold and D. Goodlett, Mass Spectrometry in Proteomics. Chem. Rev. 101: 269−295 (2001)を参照されたい。また、TOF−TOF質量分析技術の議論について、米国特許第6,319,476号(本明細書に援用)を参照のこと。
【0040】
(解離エネルギー・レベルによるフラグメンテーション)
結合が質量分析計で起こるプロセスの結果として、フラグメント化することができることがよく理解されている。さらに、結合フラグメンテーションは、イオンを解離エネルギー・レベルにさらすことで質量分析計で得られる結果である。例えば、解離エネルギー・レベルを、衝突誘起解離(CID)によって質量分析計内に生成することができる。質量分析法の当業者は、フラグメンテーションを引き起こす解離エネルギーを改善するための他の典型的な技術として、限定されるものではないが、光解離、電子捕獲、および表面誘起解離が挙げられる。
【0041】
衝突誘起解離によって結合をフラグメント化するプロセスは、不活性ガスによる衝突を介して、選択されたイオンの運動エネルギー状態を結合フラグメンテーションが起こる点に高めることがともなう。例えば、衝突セル内で不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、またはアルゴン)による衝突によって、運動エネルギーを移すことができる。イオンに移されうる運動エネルギーの量は、衝突セルに入るのを許された気体分子の数に比例する。より多くの気体分子が存在する場合、選択されたイオンに対して、より多くの運動エネルギーが移り、より少ない気体分子が存在する場合、より低い運動エネルギーが移される。
【0042】
したがって、質量分析計での解離エネルギー・レベルを制御できることが明らかである。また、ある種の結合が他の結合よりも不安定であることが十分に認められる。分析物またはレポーター/リンカー部分での結合の不安定性は、分析物の性質またはレポーター/リンカー部分の分析物に依存する。したがって、分析物および/または標識(例えば、レポーター/リンカー組み合わせ)を、測定可能とする方法で、フラグメント化することができる。そのようなルーチンの調整を質量分析計の構成要素にどのようにおこなうかは、当業者に理解されることであり、それによって、解離エネルギーの適当なレベルが達成され、標識分析物のイオンの少なくとも一部分がイオン化レポーター部分および娘フラグメント・イオンにフラグメント化される。
【0043】
例えば、解離エネルギーを、第1の質量分析から選択/分離されるイオンに適用することができる。タンデム質量分析計では、抽出イオンが解離エネルギー・レベルを受けて、第2の質量分析計へ移される。選択されたイオンは、選択された質量電荷比を持つことができる。質量電荷比を、質量分析計の特性によって質量電荷比の範囲内にすることができる。解離エネルギーを印加することできる衝突セルにイオンを通すことで、第1の質量分析計から第2の質量分析計に、該イオンを移すことができ、それによってフラグメント・イオンが発生する。例えば、分析のために第2の質量分析計に送られるイオンは、いくつかの、または一部の残留する(フラグメント化していない)選択されたイオンを、標識分析物の娘フラグメント・イオンおよびレポーター・イオン(サイン・イオン)と同様に、含むことができる。
【0044】
(コンピュータ支援データベース分析による分析物測定)
いくつかの実施形態では、娘イオン・フラグメンテーション・パターンに基づいて分析物を測定することができる。ここで、フラグメンテーション/パターンは、既知または「理論上」の分析物のスペクトルとコンピュータ支援で比較することによって分析される。例えば、低エネルギーCIDの条件下でフラグメント化したペプチド・イオンの娘フラグメント・イオン・スペクトラムは、多くの離散的なフラグメンテーション・イベントの合計と考えられる。一般の命名法は、分解するアミド結合と結合分裂後の電荷を保持するペプチド・フラグメントにもとづいて、娘フラグメント・イオンを区別する。分裂性アミド結合のN末端側の電荷保持は、b−型イオンの形成をもたらす。もし、壊れたアミド結合のC末端側に電荷が残るならば、フラグメント・イオンをy型イオンと呼ぶ。bおよびy型イオンに加えて、CID質量スペクトルは、他の診断用フラグメント・イオン(娘フラグメント・イオン)を含むものであってもよい。これらは、グルタミン、リジン、およびアルギニンからのアンモニア(−17amu)のニュートラル・ロスあるいはセリンおよびスレオニン等のヒドロキシル含有アミノ酸からの水(−18aum)の喪失によって生成されたイオンを含む。ある種のアミノ酸が、他のものよりも低エネルギーCIDの条件下で、より容易にフラグメント化することが観察されている。このことは、特に、プロリンまたはアスパラギン酸残基を含むペプチドであきらかであり、さらにアスパルチル−プロリン結合でなおさらそうである(Mak, M. et al., Rapid Commun. Mass Spectrom., 12: 837−842) (1998)。したがって、Z−proダイマーまたはZ−aspダイマーのペプチド結合(ここで、Zha任意の天然アミノ酸、proはプロリン、およびaspはアスパラギン酸)は、すべての他のアミノ酸ダイマー組み合わせの間でのペプチド結合と比較して、よりいっそう不安定となる傾向にある。
【0045】
したがって、ペプチドおよびタンパク質試料に関して、低エネルギーCIDスペクトラムは、重複b−およびY−系イオン、同一ペプチド由来の内部フラグメント・イオン、ならびにイモニウムおよび他のニュートラル・ロス・イオンの冗長配列特異的情報を含む。新たに両親ペプチドのアミノ酸配列を組み立てるためにそのようなCIDスペクトラムを解釈することは、挑戦的で時間がかかる。ペプチド配列を同定する上で最も顕著な進歩は、ペプチドCIDスペクトラムを、タンパク質およびDNA配列データベースにすでに存在するペプチド配列で補正するコンピュータ・アルゴリズムの発達であった。そのようなアプローチは、SEQUEST (Eng,J.et al. J.Anx. Soc. Mass Spectrom., 5:976−989 (1994))およびMASCOT(Perkins,D.et al. Electrophoresis, 20:3551−3567(1999))等のプログラムによって例示される。
【0046】
手短に言えば、実験的ペプチドCIDスペクトラム(MS/MSスペクトラム)は、タンパク質またはゲノム配列データベースから得たペプチド配列から計算により生成した「理論的」娘フラグメント・イオン・スペクトラムと一致または相関する。一致または相関は、MS/MSモードでの娘フラグメント・イオンの予測質量と観測質量との類似性に基づいている。潜在的一致または相関は、実験的フラグメント・パターンと「理論的」フラグメント・パターンとがどれぐらいよく一致するかにもとづいて記録される。所定のペプチド・アミノ酸配列をサーチするデータベース上の制約は、シングル・ペプチドCIDスペクトラムが全ゲノムまたは発現配列タグ(EST)データベースの任意の所定のタンパク質の同定に適切になるほど、見分けられている。他の概説については、Yates, J.R. Trends, Genetics, 16: 5−8 (2000) and Yates, J.R., Electrophoresis 19: 893−900 (1998)を参照されたい。
【0047】
したがって、MS/MSスペクトラムの娘フラグメント・イオン分析は、標識分析物の分析物を測定することだけではなく、測定された分析物が由来する分析物を測定することにも用いられる。例えば、MS/MSスペクトラムの娘フラグメント・イオン分析は、タンパク質の酵素的消化の結果としてペプチドが開裂したタンパク質の測定に用いることができる。そのような分析が他の分析物、例えば核酸に適用しうることが考えられる。
【0048】
(結合XおよびY)
Xは、レポーターの原子とリンカーの原子とのあいだの結合である。Yは、リンカーの原子と、反応基もしくは標識化試薬が反応性分析物と反応している場合は該分析物のいずれかとのあいだの結合である。本発明の実施形態で使用しうる種々の標識化試薬(すなわち、RP−X−LK−Y−RG)の結合XおよびYは、解離エネルギー・レベルにさらされた場合、選択されたイオンの少なくとも一部分で、フラグメント化することができる。したがって、結合XおよびYが標識分析物(すなわち、RP−X−LK−Y−分析物)の選択されたイオンの少なくとも一部分にフラグメント化されるように、解離エネルギー・レベルを質量分析計で調節することができる。結合Xのフラグメンテーションは、レポーターを別個に分析物から測定することができるように、該分析物からレポーターを離す。結合Yのフラグメンテーションは、結合Xがすでにフラグメント化されているかどうかに依存して、分析物からレポーター/リンカー組み合わせを、または分析物からリンカーを離す。結合Yを結合Xよりも不安定化させることができる。結合Xを結合Yよりも不安定化させることができる。結合XおよびYの両方を同じく相対的に不安定なものとすることができる。
【0049】
目的とする分析物がタンパク質またはペプチドである場合、結合XおよびYの相対的不安定性は、アミド(ペプチド)結合に関して調節することができる。結合X、結合Y、または結合Xおよび結合Yの両方を、典型的なアミド(ペプチド)結合と比較して、よりいっそう、等しく、またはより少なく不安定化させることができる。例えば、解離エネルギーの条件下で、結合Xおよび/または結合Yが、z−proダイマーまたはz−aspダイマー(ここで、Zは任意の天然アミノ酸結合、proはプロリン、およびaspがアスパラギン酸である)のペプチド結合と比較して、フラグメンテーションがより劣る傾向にある。いくつかの実施形態では、結合XおよびYが、典型的なアミド結合と比較して、解離エネルギーがほぼ等しい。いくつかの実施形態で、結合XおよびYは、典型的なアミド結合と比較して、解離エネルギーのレベルがよりいっそう大きい。
【0050】
結合XおよびYは、結合Yのフラグメンテーションが結合Xのフラグメンテーションを誘導し、またその逆も起こるようにして、存在することもできる。このようにして、結合XおよびYの両方が、相当量の分析物またはその娘フラグメント・イオンが第2の質量分析で部分的標識を含まないようにして、実質的にフラグメント化することができる。「相当量の分析物(substantial amount of analyte)」とは、25%未満、好ましくは10%未満、部分的に標識された分析物がMS/MSスペクトルで測定されることを意味する。
【0051】
分析物の標識フラグメントと非標識フラグメントとのあいだの明瞭な区分が第2の質量分析(MS/MS)のスペクトラムにあることから、この特徴によって、娘フラグメント・イオン・スペクトラムのコンピュータ支援分析からの分析物の同定を単純化することができる。さらに、いくつかの実施形態では、分析物のフラグメント・イオンを、レポーター/リンカー部分により完全標識または非標識(しかし部分的標識ではない)することができるので、分裂した結合にわたって同位体分布によって生じた娘フラグメント・イオンの質量がほとんど散乱またはまったく散乱することがなく、例えば、第2の質量分析で通常決定される部分的に標識された分析物の不安定な単一の結合の各々の側に、同位体が存在する場合が考えられる。
【0052】
(試料の加工)
本発明のいくつかの実施形態では、分析物の標識後と同様に、該標識に先立って、試料を加工することができる。この加工によって分析物の標識を促進することができる。この加工で試料の構成要素の分析を促進することができる。この加工によって、試料の取り扱いを簡素化することができる。この加工は、前述したことの2つ以上を促進することができる。
【0053】
例えば、試料を酵素で処理することができる。酵素は、プロテアーゼ(タンパク質およびペプチドを分解するため)、ヌクレアーゼ(核酸を分解するため)、または何らかの他の酵素である。酵素の選択は、かなり予測可能な分解パターンを持つように、おこなうことができる。2種類以上のプロテアーゼおよび/または2種類以上のヌクレアーゼ酵素も一緒にもちいてもよく、あるいは他の酵素も一緒に用いてもよく、それによって試料構成要素の分解が生ずる。
【0054】
例えば、タンパク質分解酵素であるトリプシンは、リジンまたはアルギニンと非特異的なアミノ酸とのあいだのペプチド結合を切断して、アミン末端(N−末端)とリジンまたはアルギニン・カルボキシル末端アミノ酸(C−末端)とを有するペプチドを生成する。このようにして、タンパク質の切断により生じるペプチドが予測可能であり、その存在および/または分量によって、トリプシン消化の試料では、該試料が由来するタンパク質の存在および/または分量を示すことができる。さらに、ペプチドの遊離アミン末端は、標識化を促進する良好な求核試薬となりうる。他の典型的なタンパク質分解酵素として、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、およびカルボキシペプチダーゼCが挙げられる。
【0055】
例えば、あるタンパク質(例えば、タンパク質Z)は、トリプシン等のプロテアーゼによる消化を受けた場合、3種類のペプチド(例えば、ペプチドB、C、およびD)を生ずる可能性がある。したがって、トリプシン等のタンパク質分解酵素によって消化を受けており、また分析によってペプチドB、C、およびDを含むことが確認された試料は、本来はタンパク質Zを構成したものであるといえる。ペプチドB、C、およびDの量もまた、消化した試料に含まれるタンパク質Zの量と相関する。このようにして、1つの試料に含まれるペプチドB、C、およびDの1種類以上を同定および/または定量するいずれの測定も、元の試料(またはその分画)に含まれるタンパク質Zの同定および/または定量に用いることができる。
【0056】
酵素の活性を予測することが可能であることから、配列が既知のタンパク質を分解することで生ずるペプチドの配列を、予測することができる。この情報によって、「理論的」ペプチド情報が生成される。したがって、実際の試料の質量分析から得られた娘フラグメント・イオン(上記したとおり)のコンピュータ支援分析での「理論的」ペプチド・フラグメントの測定を、1種類以上の未知の試料に含まれる1種類以上のペプチドまたはタンパク質の測定に用いることができる。
【0057】
(分離および試料混合)
いくつかの実施形態では、標識分析物の試料または試料混合物の加工に、分離を含むことができる。例えば、複数の異なる試料由来の複数の差異的標識分析物を含む1つの試料混合物を、調製することができる。差異的標識(differentially labeled)とは、標識の各々が同定可能な固有の性質を持つことを意味する(例えば、MS/MS分析で固有の「サイン・イオン」を作る固有のレポーター部分を含む)。試料混合物を分析するために、試料混合物の構成要素を分離して、質量分析を該試料混合物の一分画のみに実施することができる。このようにして、分離された分析物の質量を個々に分析して分析プロセスの感度を高めることができるので、分析の複雑性を実質的に減らすことができる。もちろん、この分析を上記試料混合物の1種類以上の別の分画に対して1回以上繰り返して、該試料混合物のすべての分画を分析することが可能となる。
【0058】
同一の複数の差異的標識分析物が、試料混合物での存在量に比例した濃度または量で、共溶出する分離条件を、試料混合物に加えられる各資料の量が知られているという条件で試料混合物を含む各々の試料での各標識分析物の量を測定するために、用いることができる。したがって、いくつかの実施形態では、試料混合物の分離によって分析を簡素化することができる一方で、試料混合物で複数の差異的標識分析物による質量分析(例えば、MS/MS分析)で測定されたシグナル間の相関を保つことができる。
【0059】
上記分離はクロマトグラフィーによっておこなうことができる。例えば、液体クロマグログラフィ/質量分析法(LC/MS)を用いて、そのような試料の分離および質量分析をおこなうことができる。さらに、目的とする分析物の分離に適した任意のクロマトグラフィー分離プロセスを用いることができる。例えば、クロマトグラフィーによる分離を、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、または親和性クロマトグラフィーとすることができる。
【0060】
上記分離を電気泳動的におこなうことができる。使用しうる電気泳動的分離技術の非限定的例として、限定されるものではないが、1次元電気泳動による分離、2次元電気泳動による分離、および/またはキャピラリー電気泳動による分離が挙げられる。
【0061】
1種類の同重体的標識化試薬または1セットの試薬を用いて、1つの試料の複数の分析物を標識することができる。分離工程を実行する場合、複数の同重体的標識化試薬が有用である。なぜなら、1セットの標識化試薬の同重体的標識は、構造的および化学的に識別可能である(また、フラグメンテーションが分析物からレポーターを除去するまで、総質量によって識別可能である)。したがって、異なる同重体的標識により標識される同一組成物のすべての分析物を、正確に同じ方法でクロマトグラフィーにかけることができる(すなわち、共溶出)。なぜなら、それらは構造的および化学的に識別可能であり、分離プロセスによって生じた溶出液は、試料混合物に含まれる標識分析物の量に比例している一定量の各々の同重体標識された分析物を含むことができる。さらに、どのようにして試料混合物を調製したかの知見から(試料の一部分、試料混合物を得るために加えられた他の任意の構成要素(例えば、較正基準))、試料混合物に含まれる標識分析物の量を、それが由来する試料に含まれるその標識分析物のもとの量に対応させることが可能である。
【0062】
標識化試薬を、異性体的なものにすることもできる。同位体をクロマトグラフィーにより分離することも時には可能ではあるが、条件依存的である状況が存在し、該状況では分離プロセスを実行して複数の同一差異的標識分析物のすべてを共溶出させることができ、ここでは、標識分析物全ての量が試料混合物中でのそれらの濃度および/または分量に比例して存在する。
【0063】
本明細書で用いられるように、同重体は同位体と異なる。同重体が名目総質量(例えば、図1参照)が同じ化合物(同位体含有量および/または分布を除く)と構造的および化学的に識別することができない。それに対して、異性体は名目総質量が同じではあっても構造的および化学的に該異性体同士を区別することができる。
【0064】
(分析物の相対的および絶対的定量化)
いくつかの実施形態では、1つの試料で同一の差異的標識分析物の相対的定量化が可能である。同一の差異的標識分析物の相対的定量化は、第1の質量分析で観察された選択標識分析物に対する第2の質量分析で測定されるレポーターの相対量(例えば、報告されたピークの面積または高さ)と比較することによって、可能である。言い換えれば、試料混合物を生成するために用いられる特定の試料に対する情報と各レポーターとを相関させることができる場合には、第2の質量分析で観察された他のレポーターに関して、そのレポーターの相対量は試料混合物に含まれるその分析物の相対量である。試料混合物を形成するために組み合わされた構成要素が既知である場合には、試料混合物を調製するために用いられる各試料に含まれる分析物の相対量を、第1の質量分析から選択された標識分析物のイオンに対して観察されたレポーターのもとの相対量に基づいて、計算することができる。このプロセスを、第1の質量分析で観察された異なる標識分析物の全てに対して、繰り返すことができる。このようにして、試料混合物を生成するために用いる複数の異なる試料の各々に含まれる各反応性分析物の相対量(しばしは、濃度および/または分量で表現される)を、測定することができる。
【0065】
他の実施形態では、分析物の絶対定量を測定することができる。これらの実施形態のために、1種類以上の差異的標識分析物の既知量(1つの構成基準または複数の構成基準)を試料混合物に添加することができる。較正基準は、期待される分析物であり、この分析物は試料混合物の分析物を標識するのに用いられる標識セットで標識される試料混合物を形成するために用いられる複数の試料のうちの任意のものと比較して、較正基準用のレポーターが固有なものであるという条件で、試料混合物の分析物を標識するのに用いられる標識セットで標識される。較正基準あるいは基準用のレポーターの相対量が、試料混合物の差異的標識分析物のレポーターの相対量に関して、ひとたび測定されると、該試料混合物に含まれる差異的標識分析物のすべての絶対量(しばしば、濃度および/または分量で表現される)を計算することが可能である。このようにして、各々の差異的標識分析物(分析物が由来する試料に較正基準がある)もまた、どのようにして試料混合物が調製されたかの知見に基づいて、測定される。
【0066】
前述のことにもかかわらず、必要に応じて、天然に生じた、または人工的に創出したレポーター内の同位体含有量について、レポーター(サイン・イオン)の強度に対する補正をおこなうことができる。そのような補正の一例を実施例3に見いだすことができる。そのような補正の洗練された例もまた、「回旋状スペクトルを脱回旋状にするための方法および装置(Method and Apparatus For De−Convoluting A Convoluted Spectrum)」と題された同時係属かつ共有の米国仮特許出願第60/524,844号(2003年11月26日出願)に見いだすことができる。各レポーターの強度を正確に定量するためによりいっそう注意を払うことで、もとの試料での分析物の相対量および絶対量の定量がよりいっそう正確になる。
【0067】
(プロテオミックス分析)
本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物を複合分析に用いることができる。なぜなら、質量分析技術を用いて、素早くかつ繰り返して、試料を多重化し、分析し、さらに再分析することができるからである。例えば、試料混合物の分析を、1つ以上の試料に含まれる個々の分析物の量について実施することができる。上記試料混合物を構成する試料に対して、これらの分析物の量(しばしば、濃度および/または分量で表される)を測定することができる。試料加工および質量分析を素早くおこなうことができることから、これらの方法を数多く繰り返すことで、試料混合物の多くの差異的標識分析物の量を、分析物が由来する試料中でのそれらの相対量および/または絶対量に関して、測定することができる。
【0068】
そのような急速多重化分析が有用な1つの応用として、プロテオミックス分析の領域がある。プロテオミクスを、構造、機能、および生物学的プロセスの調節に関してゲノム配列にコード化される情報を説明するための実験的なアプローチとして見ることができる。このことは、細胞または組織によって発現される総タンパク質構成要素の系統的分析によって達成可能性である。本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態と組み合わせて使用される質量分析は、そのような全体的なタンパク質分析にとって、考えられるツールの1つである。
【0069】
例えば、4種類の同重体的標識化試薬からなるセットによって、1回の実験で、タンパク質の上方制御および下方制御を測定するために、例えば特定の刺激物に対する増殖細胞の応答に基づいて、4時点を得ることが可能である。より少ない時点で実行することも可能ではあるが、1種類または2種類の対照群を組み込むことが可能である。すべての場合において、タンパク質の上方または下方制御を、必要に応じて対照群に関して、単一多重化実験で測定することができる。さらに、加工が平行して実行されるので、結果は直接比較可能である。なぜなら、プロトコールでのわずかな変化が結果に影響を及ぼしかねないというリスクがないためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
(4.本発明の種々の実施形態の説明)
(A.方法)
本発明の方法によれば、測定すべき分析物を標識する。標識分析物、分析物それ自体、分析物の1つ以上のフラグメントおよび/または標識のフラグメントを、質量分析によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、2種類以上の異なる試料に含まれる複数の同一および/または異なる分析物の多重化分析のためにと同様に、同一資料に含まれる複数の異なる分析物の分析のために、用いられる。2種類以上の試料を混合して、1つの試料混合物とすることができる。多重化分析では、標準化試料を用いて、試料混合物のどの試料から分析物が由来するかを測定することができる。分析物の絶対および/または相対(異なる試料に含まれる同一の分析物に関して)量(しばしば濃度または分量で表される)を、試料混合物を形成するために組み合わされた2種類以上の試料で、測定することができる。さらに、分析物のフラグメント(例えば、娘フラグメント・イオン)の質量分析は、分析物および/または該分析物に対する前駆体の同定、例えば分析物に対する前駆体が分解された場合、に用いられる。
【0071】
記載されたアプローチの特徴の1つに、異なる試料からの複数の分析物が、化学的異性体または同重体(等しい質量を持つ)的でありかつ分析物が由来する試料を同定する固有の標識による差異的に同位体標識(すなわち、同位体によるコード化)されうるという事実にある。差異的標識分析物は、MSモードの質量分析計では区別がつかない。なぜなら、該差異的標識分析物はすべて同一の(総)質量電荷比を持つからである。しかし、解離エネルギー・レベルを受けた場合、例えば衝突誘起解離(CID)を介して、標識がフラグメント化して、質量分析計で質量(質量電荷比)により分解しうる固有のレポーターを生ずることができる。質量スペクトルで観察されたレポーターの相対量と、試料混合物に含まれる標識分析物の相対量、また含蓄的に、分析物が由来する試料に含まれる該分析物の量とを、相関させることができる。したがって、レポーター(すなわち、サイン・イオン)の相対的強度を用いて、試料混合物を形成するために組み合わさった2種類以上の試料に含まれる1種類の分析物または複数の分析物の相対量を測定することができる。
【0072】
レポーター情報から、2種類以上の試料に含まれる1つの分析物または複数の分析物の絶対量(しばしば濃度および/または分量で表される)を、絶対的定量化が望まれる各々の分析物に対する較正基準が試料混合物に取り込まれる場合、誘導することができる。
【0073】
例えば、分析物は、試料を処理するために酵素の消化反応を使用しているタンパク質の分解から生じたペプチドであってもよい。タンパク質分解は、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼC)で試料を処理することで達成することができる。試料混合物に含まれるペプチドの同一性および量を測定することで、またそれが由来する試料を同定することで、任意にその試料から得た他のペプチドの測定と結びつけて、分解ペプチドに対する前駆体タンパク質を、それが由来する試料について、同定および/または定量することができる。この方法は複数の試料(すなわち、試料混合物から)でのタンパク質の多重測定を可能とすることから、多重方法である。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明は、1種類以上の反応性分析物を各々が含む2種類以上の試料の各々を、標識化試薬セットの異なる標識化試薬と反応させる工程を含み、上記標識化試薬セットの異なる標識化試薬の各々が式:RP−X−LK−Y−RGを有する方法に関する。その結果、各試料の1種類以上の分析物が、異なる標識化試薬の各々の求電子性または求核性の反応基(RG)と分析物の求核試薬または求電子試薬との反応によって、「RP−X−LK−Y−」部分により標識される。この標識化プロセスによって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差異的標識試料が生成される。上記セットの標識化試薬を、異性体的または同重体的なものにすることができる。各標識化試薬のレポーターを、各標識分析物が由来する試料によって同定することができ、またそのことにより、該試料を同定するために使うことができる。
【0075】
RGは反応基であり、その特性はすでに記載されている。RPはレポーター部分であり、その特性はすでに記載されている。上記セットの各々の試薬に関して、各レポーターの総質量が異なる。LKはリンカー部分であり、その特性はすでに記載されている。リンカーの総質量は、レポーター/リンカー組み合わせの統合総質量が上記セットの各試薬について同一であるように、異なる標識化試薬に対するリンカー間の総質量における差異を補正することができる。Xは、レポーターの原子とリンカーの原子とのあいだの結合である。Yは、リンカーの原子と反応基とのあいだの結合である(または分析物との反応後、Yはリンカーの原子と分析物の原子とのあいだの結合である)。結合XおよびYは、質量分析計で解離エネルギー・レベルを受けた場合、標識分析物の少なくとも一部分でフラグメント化する。結合XおよびYの特徴はすでに説明されている。
【0076】
ひとたび各々の試料の分析物が、該試料に固有の標識化試薬によって標識されると、2種類以上の異なる標識試料またはその一部分を混合して試料混合物を生成することができる。定量化が必要な場合、該試料混合物を生成するために組み合わされた各々の試料の容積および/または分量を記録することができる。試料混合物の全試料容積および/または分量に対する各試料の容積および/または分量は、試料混合物の分析から得た各試料に含まれる同定された分析物の量(しばしば濃度および/または分量として表される)を測定するために必要な比の測定に用いることができる。したがって、試料混合物は複合混合物を含むことができ、同一および/または異なる分析物の相対量を、2種類以上の試料の各々に含まれる分析物の量を相対的に定量すること、または較正基準も試料混合物に加えて絶対的に定量することのいずれかによって、同定および/または定量化することができる。
【0077】
次に、混合物をスペクトロメトリー技術にかける。この技術では、第1の質量計を用いて、第1の質量分析を試料混合物またはそのフラクション上で実行することができる。第1の質量分析から得た特定の質量電荷比のイオンを、次に選択することができる。続いて、選択されたイオンを解離エネルギー・レベル(例えば、衝突誘起解離(CID))にさらして、選択されたイオンのフラグメンテーションを誘導する。特定の質量電荷比の、標識分析物の、選択されたイオンを、解離エネルギー・レベルにさらすことで、結合XおよびYの両方が、選択されたイオンの少なくとも一部分でフラグメント化することができる。結合XおよびYの両方のフラグメンテーションは、耐電またはイオン化したレポーターを分析物から離すととともに、レポーター/リンカー部分のフラグメンテーションを引き起こすことができる。解離エネルギー・レベルにさらされたイオンもまた、分析物のフラグメンテーションを引き起こすことができ、それによって分析物の娘フラグメント/イオンを生成する。イオン(残留の選択されたイオン、娘フラグメント・イオン、または耐電もしくはイオン化レポーター)、あるいはそのフラクションを、第2の質量分析計に向けることができる。
【0078】
第2の質量分析では、第2の質量分析は選択されたイオンおよびそのフラグメント上で実行される。第2の質量分析は、試料混合物の少なくとも1つの反応性分析物の娘フラグメント/イオンの総質量と同様に、選択された質量電荷比で存在する各々の固有のレポーターの総質量(またはm/z)および相対量を測定することができる。選択された質量電荷比で存在する各分析物について、娘フラグメントイオンを用いて、選択された質量電荷比で存在する1種類の分析物または複数の分析物を同定することができる。例えば、この分析は、すでに「コンピュータ支援データベース分析よる分析物測定」と題されたセクションで説明していように、おこなうことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、プロセスのいくつかの工程を1回以上繰り返すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の質量分析による分析から、すでに選択されたいずれかの質量電荷比とは異なる、選択された質量電荷比のイオンは、解離エネルギー・レベルに対して処理され、すでに説明したように、選択されたイオンの少なくともいくつかのイオン化娘フラグメント・イオンとイオン化レポーター部分とが形成される。選択されたイオン、イオン化したレポーター部分、および娘フラグメント・イオン、またはそれらのフラクションの第2の質量分析を実行することができる。第2の質量分析での各レポーター部分の総質量および相対量と娘フラグメント・イオンの総質量とを測定することもできる。このように、第1の質量分析から1種類以上の別の分析物を同定および定量化することに利用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、プロセス全体を1回以上繰り返すことができる。例えば、試料混合物がフラクション化した場合(例えば、クロマトグラフィーまたは電気泳動によって分離)、プロセスを1回以上繰り返すことが有用であると思われる。各試料に対してプロセスを繰り返すことで、試料混合物全体のすべてを分析することが可能である。いくつかの実施形態で、プロセス全体が1回以上繰り返され、これらの繰り返しの各々の範囲内で、特定の工程も上記したように1回以上繰り返されることが、考えられる。このようにして、試料混合物の含有量を問い合わせ、十分に可能な範囲で測定することができる。
【0081】
質量分析の当業者は、第1および第2の質量分析がタンデム質量分析計で実行できることを理解する。タンデム質量分析を実行する上で適当な機器は、本明細書ですでに説明されている。タンデム質量分析計が好ましいが、1段質量分析計を用いてもよい。例えば、分析物フラグメンテーションは、コーン電圧フラグメンテーションによって、続いて得られたフラグメントを1段四重極もしくは飛行時間型質量分析計を用いて質量分析することででの、結果であってもよい。別の実施例では、レーザ源を用いて分析物を解離エネルギー/レベルにさらすことが可能であり、その結果得られたフラグメントは、以下の時間飛行またはタンデム時間飛行(TOF−TOF)でのポスト・ソース分解を記録した。
【0082】
先に開示した多重方法にもとづくと、いくつかの実施形態で、結合Xは、分析物の結合(例えば、ペプチド骨格にあるアミド(ペプチド)結合)のフラグメンテーションと比較して、フラグメンテーションする傾向がより高い、もしくは低い、または実質的に等しい。いくつかの実施形態で、結合Yは、分析物の結合(例えば、ペプチド骨格にあるアミド(ペプチド)結合)のフラグメンテーションと比較して、フラグメンテーションする傾向がより高い、もしくは低い、または実質的に等しい。いくつかの実施形態で、上記セットの各試薬に対するリンカーは、結合XおよびYのフラグメンテーション後に電荷が中性である(すなわち、リンカーがフラグメント化して質量のニューラル・ロスを生じ、そのためMS/MSスペクトラムでは観察されない)。さらにいくつかの別の実施形態では、結合XおよびYは、1つのセットの複数の標準化試薬内で、1つの混合物の複数の標識分析物内で、あるいは1つのキットの複数の標識化試薬内で、変化しない。さらにいくつかの別の実施形態では、上記セットの各試薬に対するレポーターは、分析物(例えば、ペプチド骨格のアミド(ペプチド)結合)をフラグメント化するのに用いられる条件下では、実質的にサブ・フラグメント化しない。さらにいくつかの他の実施形態では、結合Xは、結合Yと比較してフラグメンテーションする傾向が少ない。さらにいくつかの他の実施形態では、結合Yは、結合Xと比較して、フラグメンテーションする傾向が少ない。いくつかの別の実施形態では、結合XおよびYは、おおよそ同一の不安定性を持つものであり、さもなければ、結合XまたはYの一方のフラグメンテーションが結合XまたはYの他方のフラグメンテーションを含むようにして、選択される。標識分析物のRP−X−LK−Y−部分に対する基の別の特性は、すでに説明されている。
【0083】
いくつかの実施形態で、各同重体的標識分析物の標識は、環状窒素原子を含む5、6、または7員複素環であり、該環状窒素原子は置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化されており、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する。ここで、各々の異なる標識は1種類以上の重原子同位体を含むことができる。複素環を置換または非置換させることができる。複素環を脂肪族または芳香族とすることができる。複素環部分の置換基の有力な候補として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、保護基または脱保護基、例えば、アミン、ヒドロキシル、またはチオール基を含むことができ、これらは分析物を支持体に結合させるのに適している。複素環は、さらに、1つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、試料混合物に含まれる標識分析物を同重体とすることができ、各々が以下の一般式を持つ。すなわち、
【0085】
【化35】
式中、Zは、O、S、NH、またはNR1であり;各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり;Wは、環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSであり;複素環の各炭素は、式CJ2を有し;各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含む炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み;さらに、R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含むものであってもよく、さらにアルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。
【0086】
例えば、試料混合物が以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。
【0087】
【化36】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0088】
この一般的構造の標識分析物を生成するのに適したモルホリン標識化試薬は、多数の合成経路によって調製することができる。例えば、実施例1に記載したような、同位体標識したブロモ酢酸化合物である。同様に明らかにしなければならないことは、環置換モルホリンおよび/または置換ブロモ酢酸出発原料もまた、過度の実験を行うことなしに(上記した方法または当業者に周知の他の方法に対してほとんど変化を加えることなく)、当業者によって選択かつ使用され、それによってモルホリンをベースとする種々の異なる標識化試薬を生成することができ、該標識化試薬は重原子同位体含有量が異なり(すなわち、同位体的にコード化された)、本発明のセットまたはキットに用いることができるということである。
【0089】
モルホリンの代わりに、所望の同位体的分布の置換または比置換ピペリジンを選択することが可能である。ピペリジンを選択した場合、同位体D(重水素)、13C、または15NがH、12C、および14Nとそれぞれ置換することができ、ピペリジンの場合に18Oが環原子として用いられないことを除いて、モルホリンについて説明した場合と類似の方法で、標識化試薬の試薬の総質量を変えるために用いることができる。典型的なピペリジン合成は、任意に同位体的にエンリッチされた出発原料を用いるもので、実施例6に記載されている。
【0090】
試料混合物は、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。
【0091】
【化37】
式中、炭素13、酸素18,および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。この一般的構造の標識分析物を生成するのに適したピペリジン標識化試薬は、多数の合成経路によって調製することができる。例えば、重または軽ピペリジン化合物を、実施例7に記載したように、重または軽標識ブロモ酢酸化合物と反応させることができる。図9Aおよび9Bは、容易に入手可能な重または軽出発材料を用いた同位体的にエンリッチされたピペリジンに対する2つの異なる合成経路を示す。
【0092】
特に図9Aを参照すると、15N標識グリシン1の2等価物を縮合してビス−同位体標識ジ・ケト・ピペラジン2(図中、同位体標識は*で示す)を形成することができる。次に、ジ・ケト・ピペラジン2を還元して同位体標識ピペラジンとする。同位体標識ピペラジンをブロモ酢酸と反応させ、実施例7に示すように、活性エステル3に変換させる。
【0093】
特に図9Bを参照すると、ビス−15N−標識エチレンジアミン4をシュウ酸5と縮合させて、ビス−同位体標識ジ・ケトピペラジン6とすることができる(図中、同位体標識は*で示す)。次に、ジ・ケトピペラジンを還元して同位体標識ピペラジンにすることができる。さらに、同位体標識ピペラジンをブロモ酢酸と反応させて、実施例7に示すように、活性エステル3に変換させる。
【0094】
同様に明らかにすべきことは、環置換ピペラジンを、適当に置換された出発原料を単に選択することで、上記方法を用いて作ることができるということである。適切な場合は、置換ブロモ酢酸(重または軽のいずれか)を同様に用いることができる。重(heavy)とは、1つ以上の重原子同位体によって化合物が同位体的にエンリッチされていることを意味する。軽(light)とは、同位体的にエンリッチされていないことを意味する。
【0095】
したがって、適当に置換した出発原料を選択することで、本発明のセットで用いることができる種々の異なるピペリジン系標識試薬が生成できる。
【0096】
例えば、試料混合物は、以下の式で表される1種類以上の同位体標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0097】
【化38】
式中、炭素13、酸素18,および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。ここで、
(1)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み;また(2)各Kは、別々に、水素またはアミノ酸側鎖として選択される。この一般構造の標識分析物を生成するのに適した置換ピペラジン標識化試薬は、多くの合成経路によって調製することができる。
【0098】
例えば、図10を参照すると、N−アルキル置換ピペラジン試薬を、図示した手順にもとづいて合成することができる。t−ブチルオキシカルボニル(t−boc)保護グリシン10をN−メチル−グリシン11のエステル(例えば、エチルエステル)と縮合させることで、t−boc保護グリシン−N−メチル−グリシン二量体12を形成することができる。次に、t−boc保護基を除去してグリシン二量体12を環状化し、その後に縮合をおこない、N−メチル−ジ−ケトピペラジン13の酸塩を形成することができる。13の酸塩を中和および還元してN−メチル−ピペラジン14を形成する。次に、N−メチル−ピペラジン14をブロモ酢酸15(またはその置換バージョン)と反応させ、実施例7に示すように、活性エステル16に変換することができる。
【0099】
明らかにすべきことは、環置換ピペラジンを、グリシン以外のアミノ酸またはN−メチルアミノ酸(またはそのエステル)(例えば、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸等)を単に選択することで、上記方法を用いて作ることができるということである。同様に明らかにすべきことは、アミノ酸を、同重体的標識化試薬のセットを調整するために必要な同位体の所望の分布を持つ環置換ピペラジンの調製に適した方法で、同位体標識することができるということである。
【0100】
N−アルキル置換ピペラジン試薬は、さらに別の図示した手順によって調製することができる。図11を参照すると、グリシンメチルエステル21をブロモ酢酸22のエチルエステルと反応させて、ジエチルイミノジアセテート23を形成することができる。ジエチルイミノジアセテート23のジエステルを、適当な試薬(例えば、塩化チオニル)処理によって、二酸塩化物24に変換することができる。次に、二酸塩化物24を、例えば、アルキルアミン(例えば、メチルアミン)と反応させて、N−アルキルージ−ケトピペラジン25を形成することができる。次に、N−アルキル−ジ−ケトピペラジン25を還元してN−アルキル−ピペラジン26を形成することができる。次に、N−アルキル−ピペラジンをブロモ酢酸と反応させて、実施例7に示すように、活性エステル27に変換することができる。
【0101】
明らかにすべきことは、環置換ピペラジンを、グリシン以外のアミノ酸のエステル(例えば、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸等)またはブロモ酢酸の置換バージョンを単に選択することで、上記方法を用いて作ることができるということである。同様に明らかにすべきことは、アミノ酸ならびにブロモ酢酸(およびその置換誘導体)を、同重体的標識化試薬のセットを調整するために必要な同位体の所望の分布を持つ環置換ピペラジンの調製に適した方法で、同位体標識することができるということである。さらに明らかにすべきことは、アルキルジアミン、ヒドロキシルアルキルアミン、またはチオアルキルアミン、あるいはそれらの同位体標識されたバージョンを、アルキルアミンの代わりに選択することは、以下にさらに詳細に説明するように、支持体結合標識化試薬を生成するために用いることができるということである。
【0102】
方法のさらに別の実施形態では、試料混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式から構成される。すなわち、
【0103】
【化39】
式中、Zは、O、S、NH、またはNR1であり;各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素からなる群から選択され;各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含む炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。
【0104】
例えば、試料混合物は、以下の式で表される2種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0105】
【化40】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。この一般構造の標識分析物を生成するのに適した置換標識化試薬を、実施例8に記載した一般プロセスによって調製することができる。
【0106】
本発明のさらに別の実施形態では、標識化試薬のセットまたはキットを構成する各々の異なる標識化試薬が、各々の異なる試料が、異なる標識化試薬を担持する支持体と反応することができるように、切断可能なリンカーを介して支持体に結合することができる。いくつかの実施形態では、支持体は、それ自体、反応性分析物の標識化に用いられる。いくつかの実施形態では、標識化試薬を支持体から取り除き、いくつかの場合ではそれに続く加工の後(例えば、反応基の保護)、反応性分析物の標識化に用いることができる。
【0107】
いくつかの実施形態にもとづくと、試料の分析物が固体支持体と反応することができ(異なる固形の支持体と、したがって異なるレポーターと反応を起こしている各々の試料)、反応基と反応しない試料の樹脂結合構成要素を任意に洗い流すことができる。次に、1種類の標識分析物または複数の標識分析物を、切断可能なリンカーによって切断される条件下で支持体を処理することで、各固体支持体から除去し、それによって該支持体からレポーター/リンカー/分析物複合体を放出することができる。各支持体は、切断可能なリンカーを切断する条件下で同様に処理することができるので、それによって2種類以上の異なる試料が得られ、各々の試料が1種類以上の標識分析物を含んでいる。ここで、特定の試料に対応づけられた標識分析物は、それに結合した固有のレポーターによって同定および/または定量化される。次に、すでに述べたように、回収された試料を混合して試料混合物を形成することができる。
【0108】
例えば、すでに述べた方法で用いるセットの各々の異なる標識化試薬を、式:E−F−RP−X−LK−Y−RGの固体支持体とすることができる。式中、RG、X、Y、RP、およびLKについてはすでに説明している。Eは固体支持体であり、またFはレポーターに対して切断可能に結合し、かつ該固体支持体に結合した切断可能なリンカーである。この一般式の支持体は、実施例9に記載したように、調製することができる。
【0109】
いくつかの実施形態で、支持体結合標識化試薬のセットは、標識N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体をベースとすることができる。重および軽ピペラジン誘導体の両方を調製することができる。標識N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体は、例えば、N−アルキルアミンとしてアルキルジアミン、チオアルキルアミン、またはヒドロキシアルキルアミンにより開始される図11に示した手順を用いて、形成することができる(図11の議論を参照のこと。上記)。アルキルジアミン、チオアルキルアミン、またはヒドロキシアルキルアミンは、所望のN−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体の合成にとって適当である場合に、重または軽である。N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体のアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を必要に応じて保護することができる。アルキルジアミン、チオアルキルアミン、またはヒドロキシアルキルアミンを用いる場合、ピペラジンは、N−アミノアルキル、N−チオアルキル、またはN−ヒドロキシアルキル部分を含むことができる。ここで、この部分のアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を支持体上の切断可能なリンカーと反応させることで、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体から調製したピペラジンを切断可能なかたちで支持体に結合させることができる。
【0110】
標識化試薬を含む支持体を、いくつかの方法のいずれかによって調製することができる。いくつかの実施形態では、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジンのアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を、適当な辞したいの切断可能なリンカーと反応させることができる。切断可能なリンカーは、「立体的に込み合った切断可能なリンカー(sterically hindered cleavable linker)」(実施例9を参照)である。ピペラジンを、標識化試薬のセットに求められる性質に依存している同位体標識または非同位体標識ハロ酢酸(置換または非置換)と、反応させることができる。その後、カルボン酸を活性エステルに変換することができる。活性エステルは、試料の分析物と反応して、支持体の標識化試薬によって分析物を標識することができる。切断可能なリンカーが切断されると、支持体から標識分析物が放出される。このプロセスは、標識化支持体のセットを構成する異なる支持体を調製するために、固有のピペラジンをベースとした標識化試薬により、繰り返される。
【0111】
いくつかの実施形態では、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジンは、同位体標識または非同位体標識されたハロ酢酸(置換または非置換)、もしくはそのエステルと最初に反応することができる。好ましくは、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジンのアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を、適当な保護試薬によって保護することができる(適当な保護基のリストについては、Green et al., Protecting Groups In Organic Synthesis, Third Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999を参照のこと)。結果として得られるビス−アルキル化ピペラジンの脱保護アミノ、チオール、またはヒドロキシル基は、次に適当な支持体の切断可能なリンカーと反応することができる。その後、カルボン酸が活性エステルに変換される。もしハロ酢酸化合物がエステルであったら、該エステルを活性エステルへの変換前に鹸化することができる。活性エステルを、試料の分析物と反応させて、支持体の標識化試薬で分析物を標識することができる。切断可能なリンカーが切断されると、支持体から標識分析物が放出される。このプロセスは、標識化支持体のセットを構成する異なる支持体を調製するために、固有のピペラジンをベースとした標識化試薬により、繰り返される。
【0112】
したがって、いくつかの実施形態では、標識化試薬のセットは1種類以上の以下の支持体結合標識試薬を含むことができる。すなわち、
【0113】
【化41】
式中、RG,E、およびFについては、すでに説明されている。本方法によれば、Gはアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、切断可能なリンカーに対して切断可能に結合しており、ここで、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を含み、ヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここでアルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。複素環の各炭素は、式CJ2を有し、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含む炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、標識分析物は、切断可能なリンカーを介して支持体と切断可能に結合した標識化試薬を含む支持体に、分析物を最初に反応させて、該標識分析物を支持体から切断することで、生成することができる。したがって、試料混合物は、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0115】
【化42】
式中、G’は、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素および/または重水素を含む。複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択される。各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。ここで、アルキルアミン基、ヒドロキシアルキル基、またはチオアルキル基を、固体支持体の切断可能なリンカーに結合した部分とすることができる。本明細書に記載の方法によって、各切断反応の産物を結合させて、標識分析物の分析に適した試料混合物を生成することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、試料の分析物を標識する前に、該試料の構成要素を部分的または完全に分解する少なくとも1種類の酵素によって、各試料を消化する工程を、さらに含むことができる(「試料加工」と題された上記セクションも参照のこと)。例えば、酵素を、プロテアーゼ(タンパク質およびペプチドを分解するため)またはヌクレアーゼ(核酸を分解するため)とすることができる。また、複数の酵素を一緒に用いることで、試料構成要素を分解してもよい。酵素を、タンパク質分解酵素、例えばトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCとすることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の質量分析の実施に先立って、試料混合物を分離する工程を、さらに含むことができる(「試料混合物の分離」と題された上記セクションも参照のこと)。このようにして、第1の質量分析は、試料混合物のフラクションのみで実行される。任意の分離方法で、上記分離を実施することができ、該分離方法として、クロマトグラフィーまたは電気泳動が挙げられる。例えば、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いて、そのような試料分離および質量分析をおこなうことができる。さらに、目的とする分析物を分離するのに適した任意のクロマトグラフィー分離プロセスを用いることができる。本明細書では、適当なクロマトグラフィーおよび電気泳動分離プロセスの非限定的例を説明している。
【0118】
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、試料構成要素を分解する酵素処理および分離工程の両方を含むことができる。
【0119】
すでに説明したように、娘フラグメント・イオンの総質量を分析することで、選択されたイオンが対応づけられた分析物を測定することが可能である。そのような測定方法の一つは、「コンピュータ支援データベース分析による分析物測定」と題されたセクションで説明されている。ひとたび分析物が測定されると、第2の質量分析での各レポーター部分の総質量および相対量と娘フラグメント・イオンの総質量とに関する情報が、試料混合物に関する他の情報を判断する基礎を提供する。レポーターの量を、質量スペクトルでのピーク強度によって測定することができる。いくつかの実施形態では、質量分析計を用いて得られるレポーター(サイン・イオン)のピーク高さまたはピーク幅の分析よって、レポーター量を測定することができる。各試料を異なる標識化試薬で標識することができ、また各標識化試薬が特定の試料と相関することができる固有のレポーターを含むことができることから、第2の質量分析での異なるレポーターの測定が、選択された分析物のイオンが由来する試料を同定する。多数のレポーターが見つかる場合(例えば、本発明の多重方法にもとづく)、他のレポーターに関する各レポーターの相対量を決定することができる。第2の質量分析で測定された各レポーターの相対量は、試料混合物に含まれる分析物の相対量と相関するので、試料混合物を形成するために組み合わさった各試料での分析物の相対量(しばしば濃度および/または分量で表される)を測定することができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、先に述べたように、自然に生ずる、または人工的に生成される同位体存在度について、実施することができる。より具体的には、試料混合物に結合される各試料の容積および/または分量が知られている場合、各試料の相対量(しばしば濃度および/または分量として表される)を、第2の質量分析で測定された各レポーターの相対量に基づいて計算することができる。この分析は、異なる質量電荷比の選択されたイオン上で1回以上繰り返され、それによって、組み合わさって試料混合物を形成する各試料に含まれる1種類以上の別の分析物の相対量を得ることができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、天然に生ずる、または人工的に生成した同位体存在度について、実行される。
【0120】
あるいは、選択された質量電荷比を持つ分析物に結合した固有のレポーターを含む較正基準が既知量(しばしば濃度/または分量として表される)で試料混合物に加えられる場合、較正基準に対応づけられた固有のレポーターの量は、組み合わさって試料混合物を形成する試料の各分析物の絶対量(しばしば濃度および/または分量として表される)を決定するために用いることができる。このことは可能である。なぜなら、較正基準用のレポーターに対応づけられた分析物の量が知られており、また他のレポーターのすべての相対量を、選択されたイオンに対応づけられた標識分析物に対して、測定することができる。固有のレポーター(較正基準用のレポーターを含む)の各々に対して測定されたレポーターの相対量が、組み合わさって試料混合物を形成する各試料に対応づけられた分析物の量に比例することから、各々の試料に含まれる分析物の絶対量(しばしば濃度および/または分量として表される)を、試料混合物を生成するために用いられる処方に対して計算された比率に応じて、測定することができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、天然に生じる、または人工的に生成した同位体対依存度について、実行される。
【0121】
この分析を、異なる質量電荷比の選択されたイオンに対して1回以上繰り返すことで、組み合わさって試料混合物を形成する各々の試料に含まれる1種類以上の別の分析物の絶対量を得ることができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、天然に生じる、または人工的に生成した同位体対依存度について、実行される。
【0122】
いくつかの実施形態では、上記方法は、消化および/または分離工程でおこなうことができる。いくつかの実施形態で、消化および/または分離工程を含む、または含まない方法の工程を1回以上繰り返して、1つの試料に含まれる1種類以上の分析物あるいは2つ以上の試料(支持体結合標識化試薬で標識された試料を含む)に含まれる1種類以上の分析物を同定および/または定量することができる。較正基準が特定の分析物の試料混合物に存在するか否かに応じて、定量が他の標識分析物に関連づけられること、またはそれが絶対的である。そのような分析方法は、1つの複合的性質の多重試料のプロテオミックス分析にとって特に有用であり、特に標識分析物の予備的分離(例えば、液体クロマトグラフィーまたは電気泳動分離)が第1の質量分析に先立つ場合である。
【0123】
いくつかの実施形態では、試料または試料混合物に含まれるペプチドを分析物とすることができる。試料または試料混合物に含まれるペプチドの分析は、試料または試料混合物に含まれる識別可能なタンパク質の量(しばしば濃度および/または分量として表される)を測定するために用いられ、1種類以上の試料に含まれるタンパク質が第1の質量分析に先立って分解される。さらに、異なる試料から得た情報を、測定をおこなうために、例えば細胞増殖に影響する可能性のある物質の濃度を変えて培養する細胞内のタンパク質の量に対する効果の比較のために、比較することができる。他の非限定的例として、罹患または健康な組織または細胞培養物の発現タンパク質成分の比較が挙げられる。このことは、細菌もしくはウイルス等の病原体または他の疾患状態(例えば癌)等による感染後、細胞、組織、または生物学的液体の発現タンパク質レベルの比較を包含することが可能である。他の例では、時間経過(経時変化)に伴ったタンパク質濃度の変化に関する研究をおこなって、細胞または組織の発現タンパク質成分に対する薬物療法の効果を調べることが可能である。さらに別の例では経時的に採取された異なる試料から得られる情報を用いて、組織、器官、または生物学的液体の濃度を、疾患(例えば、癌)または感染の結果として、検出および監視することが可能である。
【0124】
いくつかの実施形態では、分析物は試料または試料混合物に含まれる核酸フラグメントである。核酸フラグメント上の情報は、試料または試料混合物に含まれる識別可能な核酸分子の量(しばしば濃度および/または分量として表される)を決定するために、用いられ、該試料を第1の質量分析に先立って分解した。さらに、異なる試料から得た情報は、上記したように測定をおこなう目的で比較することができる。
【0125】
(B.混合物)
いくつかの実施形態では、本発明は混合物(すなわち、試料混合物)に関する。混合物は、少なくとも2種類の差異的標識分析物を含むことができ、これら2種類の標識分析物の各々は異なる試料から生ずることができ、また式RP−X−LKーY−分析物を有する。各々の異なる標識について、混合物の標識分析物のいくつかが同一であり、該標識分析物のいくつかが異なる。原子、部分または結合、X、Y、RP、およびLKについては、すでに説明されており、またそれらの特性が開示された。混合物は、2種類以上の標識化反応の産物のすべてまたは一部を混合することによって、形成される。ここで、各標識化反応では、一般式RP−X−LK−Y−RGの異なる標識化試薬が用いられ、式中、原子、部分、または結合X、Y、RP、LK、RGについてはすでに説明されており、またそれらの特性が開示されている。標識化試薬は、同位体的にコード化された異性体的または同重体的標識化試薬である。各々の異なる標識化試薬の固有のレポーターは、2種類以上の標識分析物の各々がどの標識反応に由来するかについて指示することができる。標識化試薬は、異性体的または同重体的である。それゆえ、混合物の2種類以上の標識分析物は、異性体的または同重体的である。上記方法のいずれかに開示されるように、混合物は試料混合物である。それらの方法に対応づけられた1つの標識化試薬および複数の標識分析物の特性はすでに述べられている。
【0126】
混合物の分析物をペプチドとすることができる。混合物の分析物をタンパク質とすることができる。混合物の分析物をペプチドおよびタンパク質とすることができる。混合物の分析物を核酸分子とすることができる。混合物の分析物を炭水化物とすることができる。混合物の分析物を脂質とすることができる。混合物の分析物をステロイドとすることができる。混合物の分析物を1,500ダルトン未満の低分子とすることができる。混合物の分析物は、2種類以上の分析物種を含む。分析物種は、例えば、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、ステロイド、および/または1,500ダルトン未満の低分子から選択される。
【0127】
いくつかの実施形態では、各同重体的標識分析物の標識が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環であり、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む。複素環を、置換または非置換のものとすることができる。複素環を、脂肪族または芳香族のものとすることができる。複素環部分の可能な置換基として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、支持体に分析物を結合させるのに適した保護または非保護基、例えばアミン、ヒドロキシ、またはチオール基を含むことができる。複素環は、一つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子をさらに含むことができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、混合物の標識分析物は同重体および各々が以下の式を有する。すなわち、
【0129】
【化43】
式中、Z、J、およびWはすでに説明されており、それらの特性が開示されている。例えば、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含む。すなわち、
【0130】
【化44】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0132】
【化45】
式中、炭素13、酸素18、および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。いくつかの実施形態では、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0133】
【化46】
式中、炭素13、酸素18、および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられ、式中、(1)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、また(2)各Kは、別々に、水素またはアミノ酸側鎖である。
【0134】
いくつかの実施形態では、混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式を有する。すなわち、
【0135】
【化47】
式中、Z、J、およびR1についてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。例えば、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0136】
【化48】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0137】
別の実施形態では、標識分析物は、切断可能なリンカーを介して支持体と切断可能に結合した標識化試薬を含む支持体に、分析物を最初に反応させて、該標識分析物を支持体から切断することで、生成することができる。例えば、混合物の標識分析物は、以下の一般式を有する1種類以上の同重体である。すなわち、
【0138】
【化49】
式中、G’についてはすでに説明されており、その特性も開示されている。
【0139】
(C.キット)
いくつかの実施形態では、本発明はキットに関する。キットは、式:RP−X−LK−Y−RGの2種類以上の標識化試薬のセットおよび1種類以上の試薬、容器、酵素、緩衝液、および/または取扱説明書を含むことができる。原子、部分、結合X、Y、RP、LK、RGについてはすでに説明されており、またそれらの特性も開示されている。キットの標識化試薬を異性体的または同重体的なものとすることができる。キットの標準化試薬の他の特性も同様に開示されている。例えば、キットは、同一試料または2種類以上の異なる試料に含まれる1種類以上の分析物の多重化分析にとって有用である。
【0140】
いくつかの実施形態では、各同重体的標識分析物の標識が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環であり、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む。複素環を、置換または非置換のものとすることができる。複素環を、脂肪族または芳香族のものとすることができる。複素環部分の可能な置換基として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、支持体に分析物を結合させるのに適した保護または非保護基、例えばアミン、ヒドロキシ、またはチオール基を含むことができる。複素環は、一つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子をさらに含むことができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式を有する。すなわち、
【0142】
【化50】
式中、RG、Z、J、およびWについてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。例えば、キットの試薬は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0143】
【化51】
式中、RGは反応基であり、炭素13および酸素18の同重体が、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0144】
いくつかの実施形態では、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識試薬を含むことができる。すなわち、
【0145】
【化52】
式中、RGは反応基であり、炭素13、酸素18、および窒素15の同重体が、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識試薬を含むことができる。すなわち、
【0147】
【化53】
式中、炭素13、酸素18、および窒素15の同重体が、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられ、式中、(1)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、また(2)各Kは、別々に、水素またはアミノ酸側鎖である。さらに別の実施形態では、混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式を有する。すなわち、
【0148】
【化54】
式中、RG、Z、J、およびR1についてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。例えば、キットの試薬は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0149】
【化55】
式中、RGは反応基であり、炭素13および酸素18の同位体が、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本発明は、支持体のセット1種類以上を含む複数のキットに関するもので、各支持体は、切断可能なリンカーを介して支持体に切断可能に結合した異なる標識化試薬を含む。例えば、切断可能なリンカーは、化学的または光分解的に切断可能である。支持体は、異なる試料と反応することができ、それによって試料の分析物を同一のレポーター/リンカーで標識することができ、また異なる試料の分析物を異なるレポーター/リンカー組み合わせで標識することができる。本発明の実施形態で使用しうるセットの支持体は、一般式:E−F−G−RP−X−LK−Y−RGを有し、識名か、E、F、G、RP、X、LK、Y、およびRGについてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。上記セットの各々の異なる支持体は、固有のレポーターを含むことができる。
【0151】
例えば、キットの支持体は以下の式で表される2種類以上の試薬支持体を含むことができる。すなわち、
【0152】
【化56】
式中、E、F、G、およびRGについてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、キットはタンパク質分解酵素を含む。タンパク質分解酵素をトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCとすることができる。いくつかの実施形態では、キットは、標識化試薬を用いて異なる試料の分析物を差異的に標識するための取扱説明書を含むことができる。
【0154】
(D.組成物)
複数の実施形態では、本発明は、標識化試薬として用いることができる組成物に関する。該組成物は、式RP−X−LK−Y−RGの標識化試薬でありえ、式中、原子、部分、または結合X,Y、RP、LK、RGは、先述しており、それらの特性は開示した。標識化試薬は、異性体的または同重体的でありうる。標識化試薬の他の特性も同様に開示した。例えば、標識化試薬は、同じ試料中または2種類以上の異なる試料中の1種類以上の分析物の多重化分析に有用である。
【0155】
標識化試薬は、少なくとも1種類の重原子同位体で同位体的にエンリッチ(コード)されうる。標識化試薬は、同位体的にエンリッチされ、2種類以上の重原子同位体を含むことができる。標識化試薬は、同位体的にエンリッチされ、3種類以上の重原子同位体を含むことができる。標識化試薬は、同位体的にエンリッチされ、4種類以上の重原子同位体を含むことができる。複数の実施形態では、少なくとも1種類の重原子同位体を標識化試薬のカルボニルまたはチオカルボニル基に組み込み、少なくとも1種類の他の重原子同位体を標識化試薬のレポーターの基に組み込む。
【0156】
組み込まれる重原子同位体の各々は、少なくとも80%の同位体純度で存在することができる。組み込まれる重原子同位体の各々は、少なくとも93%の同位体純度で存在することができる。組み込まれる重原子同位体の各々は、少なくとも96%の同位体純度で存在することができる。
【0157】
標識化試薬は、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター基を含む。したがって、レポーター基は、容易にイオン化される塩基性または酸性部分を含むことができる。複数の実施形態では、レポーターは、モルホリン、ピペリジン、またはピペラジン化合物でありうる。複数の実施形態では、レポーターは、カルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基含有化合物でありうる。したがって、複数の実施形態では、標識化試薬をそれらの塩形態で単離することができる。例えば、ピペラジン含有標識化試薬をモノTFA塩、モノHCl塩、ビスTFA塩、またはビスHCl塩として得ることができる。標識化試薬中に存在する対イオンの数は、標識化試薬中に存在する酸性および/または塩基性基の数に依存しうる。
【0158】
複数の実施形態では、標識化試薬は、カルボニルまたはチオカルボニル・リンカーを含むことができる。カルボニルまたはチオカルボニル・リンカーを含む標識化試薬を、分析物の標識のために、活性エステル形態で用いることができる。活性エステルでは、アルコール基は、脱離基(LG)を形成する。複数の実施形態では、活性エステルのアルコール(LG)は、式
【0159】
【化57】
を有することができ、式中、Xは、OまたはSである。活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルでありうる。
【0160】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して活性エステルのアルコール部分が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環でありえ、ここで、該化合物は、1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされる。活性エステルの複素環は、1個以上の置換基で置換されうる。1個以上の置換基は、アルキル、アルコキシ、またはアリール基でありうる。1個以上の置換基は、アルキルアミン、アルキルヒドロキシ、またはアルキルチオ基でありうる。1個以上の置換基は、保護または非保護のアミン基、ヒドロキシ基、またはチオール基でありうる。複素環は、脂肪族でありうる。複素環は芳香族でありうる。複素環は、1個以上の付加的な窒素、酸素、またはイオウ原子を含むことができる。
【0161】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、式
【0162】
【化58】
のN−置換モルホリン酢酸活性エステル化合物またはその塩でありえ、式中、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素でありうる。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、メチル、またはメトキシでありうる。複数の実施形態では、Xは、16Oまたは18Oである。モルホリンの環の窒素原子は、14Nまたは15Nでありうる。複数の実施形態では、活性エステルは、式
【0163】
【化59】
を含む化合物であり、式中、各C*は、別々に、12Cまたは13Cであり、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。
【0164】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、式
【0165】
【化60】
のN−置換ピペリジン酢酸活性エステル化合物またはその塩でありえ、式中、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素でありうる。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、メチル、またはメトキシでありうる。複数の実施形態では、Xは、16Oまたは18Oである。ピペリジンの環の窒素原子は、14Nまたは15Nでありうる。複数の実施形態では、活性エステルは、式
【0166】
【化61】
を含む化合物であり、式中、各C*は、別々に、12Cまたは13Cであり、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。
【0167】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、式
【0168】
【化62】
のN−置換ピペリジン酢酸活性エステル化合物またはその塩であり、式中、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、Pgは、アミン保護基であり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素でありうる。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、メチル、またはメトキシでありうる。複数の実施形態では、Xは、16Oまたは18Oである。ピペラジンの環の窒素原子は、14Nまたは15Nでありうる。複数の実施形態では、活性エステルは、式
【0169】
【化63】
を含む化合物であり、式中、各C*は、別々に、12Cまたは13Cであり、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、Pgは、アミン保護基であり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。
【0170】
本発明の実施形態を説明してきたが、この概念を包含した他の実施形態を用いることが可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、これらの実施形態は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、むしろ本発明の精神および範囲によってのみ限定されるべきものであると考えられる。
【実施例】
【0171】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0172】
(実施例1 モルホリン酢酸の合成)
ブロモ酢酸(2g、14.4mole)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、テトラヒドロフラン(THF、20mL)中のモルホリン(3.76g、43.2mole)の攪拌した溶液に滴下した。溶液を室温で3日間攪拌した。白色の固体(4.17g)を濾過し、THF(100mL)で洗浄し、温エタノール(EtOH)から再結晶化した(収率2.59g、IR1740cm−1)。2種類の異なる同重体型のモルホリン酢酸に対して、ブロモアセティック−1−13Cアシッド(bromoacetic−1−13C acid)(Aldrich PN 27,933−1)またはブロモアセティック−2−13Cアシッド(bromoacetic−2−13C acid)(Aldrich PN 27,935−8)のいずれかをブロモ酢酸と置換した。
【0173】
(実施例2 モルホリン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成)
ジメチルホルムアミド(乾燥、1.75g、0.024M)をテトラヒドロフラン(乾燥、30mLs)に溶解した。この溶液を、テトラヒドロフラン(乾燥、20mLs)に溶解した塩化チオニル(2.85g、0.024M)の攪拌した溶液に滴下し、氷浴で冷却した。添加の完了および氷上での30分後に、氷浴を除去し、固形N−ヒドロキシスクシンイミド(2g、0.017M)を添加(完全に溶解させる)し、その後即座に、固形粉末前モルホリン酢酸(または1−13Cもしくは−2−13Cモルホリン酢酸)(3.64g、0.016M)を添加した。モルホリン酢酸は徐々に溶解し、急速に白濁する均一な溶液を得た。室温で一晩、激しく攪拌しながら反応させた。白色固体をテトラヒドロフランで洗浄し、真空乾燥させた(重量3.65g(67%)、IRスペクトル1828.0cm−1、1790.0cm−1、1736.0cm−1)。
【0174】
(実施例3 2種類の試料での分析物測定および相対的定量化)
氷上で30分間、氷冷0.5M MOPS緩衝液(NaOHを有してpH7.8、)中で、凍結乾燥Glu−フィブリノペプチドB(Glu−Fibrinopeptide B)(Sigma)100pmole量を、IまたはII(構造に関しては図1A、調製に関しては実施例1および2を参照)いずれかの新たに作製した2%w/v溶液200μlと反応させた。0.5%v/v最終濃度になるようにTFAを添加して、反応を停止させた。その後、修飾ペプチドを、差次的標識ペプチドの1:1ないし10:1範囲をほぼ網羅する種々の所定の比率で混合した。ミリポアC18ジップ−チップ(Millipore C18 Zip−Tip)を用いた逆相脱塩によって、各ペプチド混合物を個々に精製した。過剰な試薬および緩衝液は、逆相パッキング上に保持されないので、MS分析前に効率的に除去された。その後、混合物(0.5μl)をMALDIターゲット・プレート上にスポッティングし、50%中の水性アセトニトリル中で1%w/vα−シアノケイ皮酸0.5μlを用いてオーバー・スポッティングし、QTOF分析計に装着したMALDI源を用いて各試料を分析した。
【0175】
図2は、試薬IおよびIIで修飾されたGlu−フィブリノペプチドの1:1混合から得られたMSスペクトルの拡大プロットである。m/z1699でのピークは、Glu−フィブリノペプチドのN−末端修飾質量を表し、予想したように、2種類の異なる形態のペプチド(図1A(III)および1A(IV)参照)のm/zでは観測可能な差異はない。修飾ペプチドは同重体的である。ピークに対して観測された同位体クラスタは、厳密に、単一種に関して予測したとおりである。
【0176】
その後、m/z1699の単一荷電前駆イオンを低エネルギーCID(約−70Vの衝突オフセット)によるフラグメンテーション用に選択し、図3で見出されるMS/MSスペクトルを生成した。予想したように、観測されたイオン系列は、圧倒的に、b型およびy型であった。これらのイオン全ては、差次的標識ペプチド種の1:1混合物を含むことは確認されずに、単一種として生じた。例えば、m/z1056.5で有数のyイオンの拡大を図4として拡大プロットに示し、m/z886.3での有数のbイオンを図5として拡大プロットに示す。
【0177】
しかし、約100m/zでのスペクトル(図6)の精密検査によって、種VIIおよびVIII(図1B)両方の存在が明らかになり、それらはそれぞれ、種VおよびVI(図1B)のフラグメンテーション産物である。m/z128.1でピークが観測されないことによって、種VおよびVIは観測するために十分に安定していないことが示される。したがって、この例では、ペプチドのカルボニル基とアミノ末端アミノ酸との間のアミド結合(例えば、結合Y)のフラグメンテーションによって、レポーター/リンカー部分(結合X)のその後のフラグメンテーションおよびニュートラルCOとしてのカルボニル部分のロスを生じる可能性がある。機器に備わった計測手段を用いてピーク統合を実行した。約6%の天然に生ずる第2のC−13同位体の寄与に対する補正後に、VIII/VII(101/100)の測定された相対比は1.03であった(予測値1.00)。表1は、天然に生ずる第2のC−13の寄与に対する補正で調整した追加の実験混合物に対する実測比対観測比を示す(強度m/z101/m/z100として表される比)。このデータを図7でグラフとしても表す。観測値と予測値との間には平均誤差<10%の優れた一致がある。
【0178】
【表1】
(実施例4 プロテオーム分析)
実践上は、代表的なプロテオーム分析を以下のように実行することができる。比較のための全細胞タンパク質抽出物(例えば、試料AおよびB)を、別々に、トリプシンまたは別のタンパク質分解酵素で消化する。得られたペプチド混合物を、別々に、異なる異性体または同重体標識化試薬(例えば、化合物IおよびII)と反応させ、ペプチドのN末端およびリジンアミンの完全修飾をおこなう。例えば、試料Aを化合物Iと反応させることができ、試料Bを化合物IIと反応させることができる。その後、修飾ペプチド/タンパク質を含有する試料の各々をまとめて混合した後、クロマトグラフィー分離(多くの場合、多次元HPLCを用いて)をおこない、MSおよびMS/MS技術によって分析する。基が同重体的であるとき、単一の標識処理(第2の試薬を用いたリジン基の事前のブロッキングは必要ではない)を用いて標識を実行することができる。
その後、標識タンパク質/ペプチドの混合物をクロマトグラフィーによって分離し、溶出物またはその分画を上記実施例3に記載したように質量分析によって分析する。三連四重極質量分析計またはQトラップ質量分析計を用いて、有効な感度を有意に増加させることも可能であり、ここで、100よび101のm/z領域を前駆イオン・モードでモニタリングする。2つの「署名(signature)」ピークの相対比を、試料AおよびB各々の中の目的とするペプチド/タンパク質分析物各々の比と直接相関させる。本明細書で使用するように「署名(signature)」ピークとは、レポーターに対するピークである。
【0179】
(実施例5 内部基準を基準にした分析物測定および定量化)
比較のための全細胞タンパク質抽出物(例えば、試料AおよびB)を、別々に、トリプシンで消化する。得られたペプチド混合物を、別々に、XおよびXI(図8)と反応させ、上述のように、N末端およびリジンアミンの実質的に完全な修飾をおこなう。例えば、試料AペプチドをXと反応させ、試料BペプチドをXIと反応させる。その後、実質的に修飾されたペプチドを含有する試料AおよびBの既知量または各々をまとめて混合する。組み合わされたAおよびBの混合物に、試料AおよびBの混合物中に存在する可能性のあるペプチド(群)にアミノ酸配列および/または翻訳後修飾(例えば、リン酸化)で厳密に対応する合成ペプチド(群)のセット(1種類以上)を正確に測定された量で添加し、ここで、該合成ペプチド(群)を同重体標識化試薬のセットの別の構成要素(例えば、化合物XIIまたはXIII、図8参照)で標識する。試料A、試料B、および合成内部基準ペプチドに由来する組み合わされたペプチド混合物を、任意で、例えば多次元HPLCによってクロマトグラフィー分離するか、または電気泳動分離し、その後、MSおよびMS/MS技術によって、上述のように分析することができる。試料A、試料B,および同一配列の合成対応物に由来する等価物標識ペプチドの全ては、同重体的であり、実質的に同一のクロマトグラフィー特性を有する。「実質的に同一のクロマトグラフィー特性(substantially identical chromatographic property)」とは、差次的に標識されているが同一なペプチドの分離がたとえあるとしても、ほとんどおこなわれないことを意味する。MS/MS分析に続いて、同重体セットの付加的な構成要素(例えば、XIIまたはXIII)で標識された基準ペプチドに起因するレポーターの強度(「署名ピーク(signature peak)」を基準にして、X(試料A)およびXI(試料B)に対するレポーターの相対強度の比較によって、試料AおよびBに由来するペプチドの絶対濃度を正確に測定することが可能である。
【0180】
前述の事項は、2種類の試料(すなわち、試料AおよびB)に関する説明であるが、このプロセスは、多くの実用的な方法に当てはめることが可能である。例えば、標識化試薬の十分に幅広いセットがある場合、多数の試料を同時に分析することが可能である。
【0181】
二重(または、より多くの分析すべき試料がある場合は二重以上)の内部基準を存在させることが可能である(例えば、試料Aペプチドを、試薬XIIで標識された合成ペプチドで「スパイクする(spiked)」ことが可能であり、試料Bペプチドを、試薬XIII(既知の絶対濃度の)で標識された合成ペプチドでスパイクすることが可能である)。全てを上述のように組み合わせ、分離し、かつ分析する際は、試料Aペプチドを化合物XIIに対する署名ピークを基準にして定量化することができ、試料Bペプチドを化合物XIIIに対する署名ピークを基準にして定量化することができる。
【0182】
(実施例6 ピペリジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの典型的な合成)
ブロモ酢酸をテトラヒドロフラン(または別の好適な非求核性溶剤)に溶解し、テトラヒドロフラン(THF、またはたは別の好適な非求核性溶剤)中の過度のピペリジンを含有する攪拌した溶液に滴下する。溶液を室温で1ないし3日間攪拌する。固体を濾過し、THE(または別の好適な非求核性溶剤)で洗浄し、任意で再結晶化する。2種類の異なる同重体型のピペリジン酢酸に対して、ブロモアセティック−1−13Cアシッド(bromoacetic−1−13C acid)(Aldrich PN 27,933−1)またはブロモアセティック−2−13Cアシッド(bromoacetic−2−13C acid)(Aldrich PN 27,935−8)のいずれかをブロモ酢酸と置換する。異性体置換ピペリジンを好適な出発材料から調製することができ、またはケンブリッジ・アイソトープ・ラボラトリーズ(Cambridge Isotope Laboratories)またはアイソテック(Isotec)等のソースから特別注文ベースで入手することができる。
【0183】
N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル等の酢酸に酢酸誘導体を変換するために、ジメチルホルムアミド(DMF)をテトラヒドロフラン(または別の好適な非求核性溶剤)に溶解する。この溶液を、テトラヒドロフラン(または別の好適な非求核性溶剤)に溶解した等モル量の塩化チオニル(DMFのモル量にもとづいて)の攪拌した溶液に滴下し、氷浴で冷却する。添加の完了および氷上での30分後に、氷浴を除去し、固形N−ヒドロキシスクシンイミドを添加し、その後即座に、ピペリジン酢酸(または1−13Cもしくは−2−13Cピペリジン酢酸)を添加する。室温で一晩、激しく攪拌しながら反応させる。その後、産物ピペリジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、可能であれば濾過のみによって、反応混合物から単離する。任意で、再結晶化および/またはクロマトグラフィーを用いて、粗産物を精製することができる。
【0184】
(実施例7 ピペラジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの典型的な合成)
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した2等価物のピペラジンのを含有する溶液を、テトラヒドロフランに溶解した1等価物のブロモ酢酸(ピペラジンの量に対して)を含有する溶液に滴下する。この2つの溶液は、実用的であるように濃縮すべきである。得られた反応溶液を室温で1ないし3日間攪拌する。固体を濾過し、THEで洗浄し、任意で再結晶化する。2種類の異なる同重体型のピペリジン酢酸に対して、ブロモアセティック−1−13Cアシッド(bromoacetic−1−13C acid)(Aldrich PN 27,933−1)またはブロモアセティック−2−13Cアシッド(bromoacetic−2−13C acid)(Aldrich PN 27,935−8)のいずれかをブロモ酢酸と置換する。
【0185】
N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル等の活性エステルに酢酸誘導体を変換するために、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF、1.75g、0.024M)をテトラヒドロフランに溶解することができる。この溶液を、テトラヒドロフランに溶解した等モル量の塩化チオニル(DMFのモル量にもとづいて)の攪拌した溶液に滴下し、氷浴で冷却することができる。添加の完了および氷上での30分後に、氷浴を除去し、固形N−ヒドロキシスクシンイミドを添加し、その後即座に、ピペラジン酢酸(または1−13Cもしくは−2−13Cピペリジン酢酸)を添加することができる。室温で一晩、激しく攪拌しながら反応させることができる。その後、産物ピペラジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、可能であれば濾過のみによって、反応混合物から単離することができる。その後、再結晶化および/またはクロマトグラフィーを用いて、粗産物を精製することができる。
【0186】
(実施例8 N,N′−(2−メトキシエチル)−グリシン活性エステルの典型的な合成(米国特許第6,326,479号からの転写))
ビス(2−メトキシエチル)アミン(Aldrich Chemical)1.1moleに、tert−ブチルクロロアセテート(Aldrich Chemical)500mmolを滴下した。3日間攪拌して、その後反応を生じさせた。最終反応内容物に、ジクロロメタン(DCM)250mLおよび水200mLを添加した。この攪拌溶液に、部分的に、固形炭酸カリウム(K2CO3)300mmolを添加した。混合が完了した後に、層を分離した。DCM層を1容量の水で1回洗浄して、乾燥させ(Na2SO4)、濾過および気化し、非常に薄黄色の油66.3gを得た。この粗産物を60℃でKugelrohrで蒸留し(200ないし500μM Hg)、無色透明の油58.9g(238mmol、95%)を得た。
【0187】
精製した(攪拌)N,N′−(2−メトキシエチル)−グリシン−tert−ブチルエステルに、濃縮した塩酸12.1mLを徐々に添加した。一晩攪拌して、反応させ、その後、副産物(例えば、水、HCl、イソブチレン)を真空蒸発によって除去した。1H−MNR分析によって、t−ブチルエステルは加水分解されたことが示されたが、水およびHClは依然として存在していると考えられた。粗産物をアセトニトリル(ACN)から2回共気化したが、水およびHClは依然存在した。夾雑物を除去するために、4.4gアリコートを粗産物から取り出し、135ないし155℃でKugelrohrで蒸留した(蒸留開始後に急速に圧力が下降する100ないし200μM Hg)。収率4.2g(18.4mmol、濃縮の無色透明の油の95%回収)。蒸留した産物は、いずれの水またはHClも含有していなかった。
【0188】
その後、任意の好適な同位体的に標識された置換または非置換のN,N′−(2−メトキシエチル)−グリシンの活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を本明細書に記載される方法等の当該技術分野で公知の方法によって調製することができる。
【0189】
(実施例9 標識化/タグ化試薬を含む固体支持体を調製するための典型的な方法)
「立体障害された切断可能なリンカー(sterically hindered cleavable linker)」を含む市販のペプチド合成樹脂を、少なくとも2倍過剰なアミノアルキルピペラジン(例えば、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、Aldrich P/N A5,520−9、本明細書内の記載と組合させて図11に説明されるプロセスによって異性体型を作製することができる)と反応させる。「立体障害された切断可能なリンカー(sterically hindered cleavable linker)」とは、リンカーが、固体支持体と切断可能なリンカーに反応する原子または基との間の切断可能な共有結合を形成する第2級または第3級原子を含むことを意味する。立体障害された固体支持体の非限定的例としては、塩化トリチル樹脂(トリチル−Cl、Novabiochem,P/N 01−64−0074)、2−クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0021)、DHPP(Bachem,P/N Q−1755)、MBHA(Applied Biosystems P/N 400377)、4−メチルトリチルクロリド樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0075)、4−メトキシトリチルクロリド樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0076)、ヒドロキシ−(2−クロロフェニル)メチル−PS(Novabiochem,P/N 01−64−0345)、リンク・アシッド樹脂(Rink Acid Resin)(Novabiochem,P/N 01−64−0380および01−64−0202)、ノバシンTGT(NovaSyn TGT)アルコール樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0074)が挙げられる。その後、支持体を洗浄することによって、過剰な試薬を除去する。その後、トリエチルアミン等の第3級アミンの存在下で、支持体結合ピペラジンの第2級アミンを過度のブロモ酢酸と反応させる。その後、支持体を洗浄することによって、過剰な試薬を除去する。カルボン酸の活性エステルを生成するために使用する方法(例えば、活性エステルの合成に、カルボン酸の塩が必要であるか否か)に応じて、ビス−アルキル化ピペラジンの支持体結合カルボン酸基をプロトン化するために調整されるpHを有するように洗浄を選択することができる。その後、上記に記載される方法等の、カルボン酸の活性エステルの生成のための当該技術分野で公知の手順を用いて、支持体結合ピペラジンのカルボン酸基を活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)に変換する。その後、得られた固体支持体を用いて、求核性官能基を有する試料の分析物(例えば、ペプチド)を標識することができる。その後、製造元の製品指示書に記載されるように、標識分析物を支持体から遊離させることができる。その後、各切断反応の産物を組み合わせて、試料混合物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1A】図1Aは、分析物と2種類の同重体的標識化試薬(例えば、化合物IおよびII)との反応を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した標識分析物のフラグメンテーションを示すもので、該フラグメンテーションによって、同重体的標識分析物から異なる質量のレポーター部分(例えば、サイン・イオンとしての化合物VIIおよびVIII)が生成される。
【図2】図2は、標識分析物の質量スペクトル拡大プロットである。
【図3】図3は、図2の拡大プロットで同定された選択標識分析物の第2の質量分析から得られた完全な質量スペクトルである。
【図4】図4は、第2の質量分析で測定された分析物の優勢yイオン娘フラグメント・イオンの質量スペクトルの拡大プロットである。
【図5】図5は、第2の質量分析で測定された分析物の優勢bイオン娘フラグメント・イオンの質量スペクトルの拡大プロットである。
【図6】図6は、第2の質量分析で測定された2つのレポーター(すなわち、サイン・イオン)の質量スペクトルの拡大プロットである。
【図7】図7は、標識ペプチドの種々の混合物に対する第2の質量分析によって測定されたレポーターの観察比対予測比のプロットであり、その混合物の各々のペプチドが2つの異なるレポーターのいずれか1つを含む。
【図8】図8は、同一の同位体(化合物X〜XIII)と異なる同位体(化合物XV〜XVIII)とを用いた2通りの同重体的標識化試薬セットを示すもので、それによって、該セット内で総質量が異なるレポーター部分を有するが、同一総質量のレポーター/リンカー部分が達成されえる。
【図9A】図9Aは、元の出発原料から同位体標識ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。このルートは、非同位体標識出発原料が用いられる非同位体標識ピペラジン試薬の調製に用いることもできる。
【図9B】図9Bは、元の出発原料から同位体標識ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。このルートは、非同位体標識出発原料が用いられる非同位体標識ピペラジン試薬の調製に用いることもできる。
【図10】図10は、元の出発原料から同位体標識および非同位体標識N−アルキル・ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。
【図11】図11は、元の出発原料から同位体標識および非同位体標識N−アルキル・ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。
【図12】図12は、出発原料から同位体標識および非同位体標識ピペラジン標識化試薬を合成する固相をベースとした合成経路を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/443,612号(2003年1月30日出願)の優先権を主張するもので、該米国特許出願は本明細書において参考として援用される。
本発明は、質量分析による分析物測定の分野に関する。
【0002】
(1.序論)
本発明は、1つの分析物または複数の分析物を質量分析によって測定するための方法、混合物、キットおよび/または組成物に関する。分析物は、目的とする任意の分子とすることができる。分析物の非限定的例として、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭化水素、脂質、ステロイド、および分子量が1,500ダルトン未満の低分子が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
分析物の標識は、該分析物を式RP−X−LK−Y−RGの化合物またはその塩である標識化試薬と反応させておこなうことができる。ここで、式中、RGは分析物と反応する反応基であり、RP、X、LK、およびYは、以下でより詳細に記載される。したがって、標識分析物は、一般式:RP−X−LK−Y−分析物を持つことができる。複数のセットの異性体的または同重体的標識化試薬を用いて、2種類以上の異なる試料からなる分析物を標識することができる。ここで、それらの標識化試薬は、各々の異なる試料に対して異なるものとし、また標識分析物をもたらす試料と結合しうる固有のレポータ(RP)を該標識化試薬が含むものとすることができる。したがって、情報(例えば、レポーターの有無および/または量)を試料中の分析物の有無および/または量(しばしば濃度および/または分量)に相関させることができ、このことは異なる試料を標識して得られた複数の産物を混合することよって生じた複数の標識分析物の複合混合物を分析して得られる情報であっても、言える。そのような複合混合物の分析は、単一の試料または多重式に多数の試料から1種類または複数の分析物を測定することを可能とさせる。したがって、本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物は、複合試料混合物の多重化分析に、特によく適している。例えば、それらを、プロテオーム分析および/またはゲノム分析、同様にゲノムおよびプロテオーム分析に関連した相関研究に用いることができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(2.定義)
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用されるとともに、単数形で用いられた用語は、適当でる場合は常に、複数形をも包含するものであり、その逆もあてはまる。すなわち、
a.本明細書で用いられる「分析物(analyte)」とは、測定すべき目的とする分子をいう。分析物の非限定的例として、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、核酸(DNAまたはRNAの両方)、炭化水素、脂質、ステロイド、および/または分子量が1,500ダルトン未満の低分子を挙げることができる。上記分析物または上記分析物を含む試料の源として、限定されるものではなく、どのような源に由来するものでもよい。1つの分析物または複数の分析物を、天然のものまたは合成したものとすることができる。分析物または該分析物を含む試料の源の非限定的な例として、限定されるものではないが、細胞もしくは組織、またはそれらの培養物(または継代培養物)が挙げられる。分析物源の非限定的例として、限定されるものではないが、粗または加工済みの細胞溶解物、体液、組織抽出物、または細胞抽出物が挙げられる。上記分析物源のさらに別の非限定的例として、限定されるものではないが、クロマトグラフィー分離または電気泳動分離等の分離プロセスから得られる分画が挙げられる。体液として、限定されるものではないが、血液、尿、大便、髄液、脳脊髄液、羊水、リンパ液、または腺分泌液が挙げられる。加工済み溶解物(processed cell lysate)が意味することは、細胞を溶解する上で必要とされる処理に加えて、回収された材料に対してさらに加工を施すために、細胞溶解物が処理されることである。例えば、試料は、ペプチドである1種類以上の分析物を含む細胞溶解物であり、該ペプチドは粗細胞溶解物の全タンパク質成分をタンパク質分解酵素処理し、前駆タンパク質またはタンパク質を消化することによって形成される。
【0005】
b.本明細書で用いられる「フラグメンテーション(fragmentation)」とは、共有結合の破壊をいう。
【0006】
c.本明細書で用いられる「フラグメント(fragment)」とは、フラグメンテーション(名詞)の産物またはフラグメンテーションを起こす(動詞)操作の産物をいう。
【0007】
d.原子または分子の質量が、多くの場合、最も近い整数原子質量単位または原子質量単位のもっと近い0.1位もしくは0.001位に近似しうることは、十分に認められている。本明細書で用いられるように、「総質量(gross mass)」とは、絶対質量のことをいうとともに、一定の範囲内の近似質量のこともいう。ここで、一定の範囲とは、使用した異なる同位体種での質量の非常にわずかな差がが検出されようがなかろうが、レポーターおよび/またはリンカー部分の質量を釣り合わせる目的に対してそれらの同位体が機能的に等価である範囲であるように(レポーター/リンカー組み合わせの総重量が一セットまたはキットの同重体的または異性体的標識化試薬となるように)、異なる原子種の同位体の使用が質量の点で近似していることをいう。
【0008】
例えば、酸素の一般的な同位体は、総質量が16.0(実際の質量15.9949)および18.0(実際の質量17.9992)であり、炭素の一般的な同位体は、総質量が12.0(実際の質量12.00000)および13.0(実際の質量13.00336)であり、さらに窒素の一般的な同位体は、総質量が14.0(実際の質量14.0031)および15.0(実際の質量15.0001)である。これらの値が近似値であるのに対して、当業者は、もしあるセットの1レポーターに18O同位体を使用する場合、さらに2質量単位(総質量が16.0である酸素の同位体上に)を補うことができ、例えば、そのセットの16Oから構成される異なるレポーターにおいて、該レポーターのどこか他のところに、12C原子2つの代わりに13C原子2つ、14N原子2つの代わりに15N原子2つ、さもなければ12Cおよび14Nのかわりに13C原子1つおよび15N原子1つを取り込むことで、18Oを補うことができることを当業者ならば理解する。このようにして、上記セットの2つの異なるレポーターが機能的質量等価である(すなわち、同一総質量を持つ)。なぜなら、13C原子を2つ(12C原子2つの代わりに)、15N原子を2つ(14N原子2つの代わりに)、13C原子を1つと15Nを1つ(12C原子と14N原子の代わりに)、もしくは18O原子1つ(16O原子1つの代わりに)を使用する際に、セットもしくはキットの標識物の全てで、2ダルトンの質量の増加が生ずる質量の実際の違いが僅かであることは、分析の性質に対して障害とはならない。
【0009】
このことは、図8を参照して例証することができる。図8では、化合物XVIIのレポーター/リンカー組み合わせ(図8、化学式:C513CH1015N2O)は、2つの15N原子と1つの13C原子とを有し、全理論質量が129.138である。比較してみると、同重体XV(図8、化学式C513CH10N218O)は、1つの18O原子と1つの13C原子とを有し、全理論質量が129.151である。化合物XVIIおよびXVは、同重体であり、重原子同位体含有量以外は構造的および化学的に見分けはつかないが、わずかながら絶対質量に差異がある(それぞれ、質量129.138対質量129.151)。しかし、本発明の目的のために、化合物XVIIおよびXVの総質量は129.1である。なぜなら、この総質量は、同重体XVIIの絶対質量と同重体XVの絶対的質量とのあいだの小さな違いを測定するのに質量分析計が十分な感度であるかどうかにかかわらず、分析の妨げとはならない。
【0010】
図8から、同一重原子同位体の1つの構造内での分布が、異性体的および/または同重体的標識化試薬のセットを生成する上で検討すべき唯一のことではないことが明らかである。所望の総重量の異性体または同重体を達成するために、重原子同位体種を混合することが可能である。これによって、重原子同位体の選択(組み合わせ)とそれらの分布との両方が、本発明の実施形態にとって有用な異性体的および/または同重体的標識化試薬の生産の際の検討に利用可能である。
【0011】
e.本明細書で用いられる「同位体的にエンリッチされた(isotopically enriched)」は、1つ以上の重原子同位体(例えば、重水素、13C、15N、18O、37Cl、または81Br)により合成的にエンリッチされた化合物(例えば、標識化試薬)をいう。同位体的エンリッチメントは、100%有効であるわけではないので、エンリッチメントの状態が劣る化合物の不純物が存在し、質量がより低くなる。同様に、過剰なエンリッチメント(不要なエンリッチメント)のため、また天然同位体が豊富なため、より質量の大きな不純物が存在しうる。
【0012】
f.本明細書で用いられるように、「標識化試薬(labeling reagent)」は測定のために分析物に印を付けるのに適した部分をいう。標識(label)という用語は、タグおよびマーク、さらに他の等価な用語や句と同義である。例えば、標識分析物(labeled analyte)もまた、タグ付き分析物またはマーク付き分析物とも呼ばれる。したがって、用語「標識」、「タグ」、「マーク」、およびそれらの用語の派生物は、相互に置き換え可能であり、印を付けるのに適した部分、または印が付けられた部分である測定のための分析物のことをいう。
【0013】
g.本明細書で用いられるように、「支持体(support)」、「固体支持体(solid 支持体)」、または「固体担体(solid carrier)」は、任意の固相材料を意味するもので、該固相材料上に標識化試薬が固定化される。固定化は、例えば、支持体上で標識がおこなわれるかどうかにかかわりなく、分析物を標識するのに用いられ、あるいは標識化試薬を調製するのに用いられる。固体支持体は、「樹脂」、「合成支持体」、「固相」、「表面」、「膜」、および/または「支持体」を包含する。固体支持体を、有機ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、同様にそれらのコポリマーおよびグラフト)から構成することができる。同様に、固体をガラス、シリカ、制御多孔性ガラス(CPG)、または逆相シリカ等、無機的なものにすることができる。固体支持体の形態は、ビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、膜、または面状である。面は、平面的、実質的に平面的、または非平面的である。固体支持体は、多孔性または非多孔性であり、膨潤または非膨潤特性を持つことができる。固体支持体をウエル、凹部、または他の入れ物、容器、外観または配置とすることができる。複数の固体支持体を、試薬のロボティック送達にとってアドレス可能な種々の位置で、または検出方法および/もしくは器具によって、一つの配列に構成することができる。
【0014】
h.本明細書で用いられるように、「天然同位体存在比」とは、自然界での1種類の同位体または複数の同位体が天然に広く行き渡っていることに基づく、化合物に見いだされる1種類以上の同位体のレベル(または分布)のことをいう。例えば、生きている植物から得た天然化合物は、代表的には、約0.6%13Cを含む。
【0015】
(3.概要)
(反応基)
方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態で用いる反応基「RG」または試薬は、求電子試薬または求核試薬のいずれかであり、一試料の1種類以上の反応性分析物と反応することが可能である。反応基は事前に存在しうるか、もしくは該反応基をin−situで調製することができる。反応基のin−situ調製は、反応性分析物の不在下で進行することができ、または反応性分析物の存在下で進行することができる。例えば、カルボン酸基の修飾は、水溶性カルボジイミド(例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドハイドロクロライド;EDC)によりin−situでおこなうことができ、それによってアミノ基等の求核試薬と反応しうる救電子性試薬を調製する。いくつかの実施形態では、標識化試薬のカルボン酸基をEDCにより活性化させることは、分析物を含むアミン(求核試薬)の存在したでおこなうことができる。いくつかの実施形態で、分析物を含むアミン(求核試薬)もまた、EDCによる初期反応がおこなわれた後に付加することができる。いくつかの実施形態では、反応基は、保護基をin−situで取り除くことで、in−situで生成することができる。その結果、求核試薬および/または求電子試薬の反応によって分析物の誘電体化をもたらしうる任意に存在または新たに生成された試薬または複数の試薬は、本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態によって、検討される。
【0016】
標識化試薬の反応基が求電子試薬である場合、該反応基は1つの分析物または複数の分析物の適当な求核性基と化学反応することができる。標識化試薬の反応基が求核試薬である場合、該反応基は1つの分析物または複数の分析物の適当な救電子性試薬と反応することができる。適当な求核性基と救電子性試薬との数多くの対が知られており、化学的および生化学的技術分野でしばしば使われている。分析物(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、ステロイド、または1,500ダルトン未満の他の低分子)と連結することでそれらの誘電体化を起こすことができる適当な求核性または求電子性試薬を含む試薬の非限定的例が、文献(Pierce Life Science & Analytical Research Products Catalog & Handbook (a Perstorp Biotec Company), Rockford, IL 61105, USA)に記載されている。他の適当な試薬は当該技術分野で周知であり、Sigma−Aldrich等、数多くの他のベンダーから市販されている。
【0017】
標識化試薬の反応基を、アミン反応基とすることができる。例えば、アミン反応基を活性エステルとすることができる。活性エステル(active ester)とは、ペプチド合成で周知であり、ペプチド合成で一般に使用される条件下でアミノ酸のN−αアミンと容易に反応を起こす特定のエステルのことをいう。アミン反応性の活性エステルを、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、または2,4−ジハロフェニルエステルとすることができる。例えば、活性エステルのアルコールまたはチオール基は、以下の式を持つことができる。すなわち、
【0018】
【化33】
式中、XはOまたはS、しかし好ましくはOである。前述のすべてがアルコールまたはチオール基になっており、該アルコールまたはチオール基はペプチド化学の分野で活性エステルを形成することが知られており、アミノ酸のN−αアミノとエステルのカルボニル炭素との反応によって置換される。本明細書に記載した任意の適当な標識化/タグ化試薬の活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)が周知の方法を用いて調製可能であることが明らかにならなければならない(Greg T. Hermanson(1996). ”The Chemistry of Reactive Groups” in ”Bioconjugate Techniques” Chapter 2 pages 137−165, Academic Press, (NewYork)を参照のこと。同様に、Innovation And Perspectives In Solid Phase Synthesis, Editor:Roger Epton, SPCC (UK) Ltd, Birmingham, 1990)を参照のこと)。一般式:RP−X−LK−Y−RGの標識化試薬の代表例であるN−置換ビペラジン酢酸化合物の活性エステルを形成する方法は、米国特許出願第10/751,354号(本明細書に援用)に記載されている。
【0019】
別の実施形態では、混合無水物がアミノ基と効率的に反応してアミド結合を生ずることから、標識化試薬の反応基を混合無水物にすることができる。
【0020】
標識化試薬の反応基を、チオール反応基にすることができる。例えば、チオール反応基を、α−ハロアシルのハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキル、またはマレイミドとすることができる。ハロゲン化もしくはハロゲン化物(halide)またはハロ(halo)は、フッ素、塩素、ホウ素、またはヨウ素の原子を意味するものとする。
【0021】
標識化試薬の反応基を、ヒドロキシル反応基とすることができる。例えば、ヒドロシキル反応基を、トリチル−ハロゲン化物(trityl−halide)部分またはシリル−ハロゲン化物(silyl−halide)部分とすることができる。トリチル−ハロゲン化物反応性部分を、置換されたもの(例えば、Y−メトキキシトリチル、Y−ジメトキシトリチル、Y−トリメトキシトリチル等)または非置換のものとすることができ、ここでYは以下のように定義される。シリル反応性部分を、アルキル置換シリル・ハロゲン化物、例えばY−ジメチルシリル、Y−ジトリエチルシリル、Y−ジプロピルシリル、Y−ジイソプロピルシリル等)とすることができ、ここでYは以下のように定義される。
【0022】
標識化試薬の反応基を、アミン基、ヒドロキシ基、またはチオール基等の求核試薬とすることができる。
【0023】
(レポーター部分)
方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態で用いられる1つの標識化試薬または複数の標識化試薬のレポーター部分は、測定しうる固有の質量(または質量と電荷との比(質量電荷比))を持つ基である。したがって、一つのセットの各々のレポーターは、固有の総質量を持つことができる。異なるレポーターは、1種類以上の重原子同位体を持つことで固有の質量を達成することができる。例えば、炭素の同位体(12C、13C、および14C)、窒素の同位体(14Nおよび15N)、酸素の同位体(16Oおよび18O)、または水素の同位体(水素、重水素、および三重水素)が存在し、レポーター部分の多様な群の調製に用いることができる。安定した重原子同位体の例として、13C、15N、18O、および重水素が挙げられる。他の軽および重原子同位体もレポーターで用いることができるので、これらに限定されるものではない。軽および重原子同位体を含むレポーターの調製に適した出発原料は、種々の市販元、例えばCambridge Isotope Laboratories, Andover, MA (
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でリストまたは「出発原料」を参照のこと) およびIsotec (Sigma−Aldrichの一事業部)から入手可能である。Cambridge Isotope LaboratoriesおよびIsotecは、特注合成契約のもとで所望の化合物も調製する。同上(Id)。
【0024】
固有のレポーターを目的とする試料に対応づけることで、その試料の1つまたは複数の分析物にレポーターを標識することができる。このように、レポーターに関する情報に、上記試料の1つまたはすべてに関する情報を対応づけることができる。しかし、レポーターを測定する際に、レポーターが分析物に物理的に連結する必要はない。むしろ、レポーターの固有の総質量を、例えば、標識分析物のイオンをフラグメント化して娘フラグメント・イオンおよび検出可能なレポーターを生成した後、タンデム質量分析器の第2の質量分析で測定することができる。測定されたレポーターは、測定された分析物が由来する試料の同定に用いることができる。さらに、他のレポーターの量と比較した場合または較正基準(例えば、特定のレポーターで標識した分析物)と比較した場合の固有のレポーターの量を用いて、1つの試料または複数の試料に含まれる分析物の相対量または絶対量(しばしば、濃度および/または分量として表現される)を測定することができる。したがって、情報(例えば特定の試料に含まれる1種類以上の分析物の量)を、各特定の試料標識することにレポーター部位を対応づけることができる。1つの分析物または複数の分析物の同一性も測定する場合、その情報を異なるレポーターに関連する情報と相関させることで、1つの試料または複数の試料に含まれる各々の標識分析物の同一性および量の測定が促進される。
【0025】
レポーターは、固定された電荷を含むものか、もしくはイオン化することが可能なものであるかのいずれかである。レポーターが固定化された電荷を含むか、もしくはイオン化することが可能なものであるかのいずれかであることから、標識化試薬を単離するか、または塩類または双性イオンの形状で反応性分析物の標識に用いることが可能である。レポーターのイオン化は、質量分析計での該レポーターの測定を促進する。したがって、レポーターをイオン(時々、サイン・イオン(signature ion)とも呼ばれる)として測定することができる。イオン化した時、レポーターは正味の正または負電荷を1つ以上含むことができる。したがって、レポーターは1種類以上の酸性基または塩基性基を含むことができる。なぜなら、そのような基は質量分析計内で容易にイオン化しうるからである。例えば、レポーターは、1種類以上の塩基性窒素原子(正荷電)または1種類以上のイオン性の酸性基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、またはリン酸基(負電荷)を含むことができる。塩基性窒素を含むレポーターの非限定的例として、置換または非置換のモルホリリン、ピペリジン、またはピペラジンが挙げられる。
【0026】
レポーターを、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含み、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環とすることができる。複素環を、置換または非置換のものとすることができる。複素環を、脂肪族または芳香族のものとすることができる。複素環部分の可能な置換基として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、支持体に分析物を結合させるのに適した保護または非保護基、例えばアミン、ヒドロキシ、またはチオール基を含むことができる。複素環は、一つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子をさらに含むことができる。
【0027】
レポーターの選択は、分析物の分析にとって典型的な条件下で、実質的にサブ・フラグメント化(sub−fragment)が起こらないように、おこなうことができる。レポーターの選択は、質量分析計で少なくとも標識分析物の選択されたイオンの少なくとも一部の結合XおよびYの両方でフラグメンテーションを起こさせるために印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブ・フラグメント化が起こらないように、おこなうことができる。「実質的にサブ・フラグメント化を起こさない(does not substantially sub−fragment)」は、レポーターのフラグメントが、目的とする分析物の好結果の分析に適用した場合に、バックグラウンド・ノイズよりも高く検出することが困難または不可能であることを意味する。レポーターの総質量は、測定されようとする分析物の質量と比較して、または該分析物の予想フラグメントのいずれかの質量と比較して、意図的に異なるように選択される。例えば、タンパク質またはペプチドが分析物である場合、任意の天然に生ずるアミノ酸もしくはアミノ酸、あるいはその予測フラグメントと比較してレポーターの総質量を選択することが困難である。このことは、分析物の測定を促すことができる。なぜなら、分析物に依存して、同一一致(same coincident)質量を持つ試料の任意の可能な構成要素の欠如は任意の分析の結果に対して信頼を加えることができる。
【0028】
レポーターを、ポリマーではない低分子とすることができる。レポーターはバイオポリマー(例えば、ペプチド、タンパク質、または核酸)またはバイオポリマーの構成要素(例えば、アミノ酸、ヌクレオシド、またはヌクレオチド)である必要はない。レポーターの総質量は、250ダルトン未満である。そのような低分子は、第2の質量分析で容易に測定することができる。この文脈において、第2の質量分析を、一般的にはタンデム質量分析計で、第1の質量分析で測定される選択されたイオンに対しておこなうことができる。特定の質量電荷比を持つイオンを、起こりうるフラグメンテーションとさらなる質量分析とのために、第1の質量分析から特異的に選択することができるので、第1の質量分析からの非選択イオンが第2の質量分析に持ち込まれず、そのため第2の質量分析のスペクトラムにコンタミが生ずることはない。さらに、質量分析計の感度および直線性(定量化を目的として)を、この低質量範囲でかなり強くすることができる。さらに質量分析計技術の現状は、この質量範囲で1ダルトン未満の基腺質量解像度を可能にさせることができる(例えば、図6参照)。これらの因子が、当該技術分野の状態に対して有用な前進であると判明される可能性がある。
【0029】
(リンカー部分)
方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態で用いる1つの標識試薬または複数の標識試薬のリンカー部分は、分析物による反応が生じたかどうかに応じて、レポーターを分析物に結合させるか、あるいはレポーターを反応基に結合させる。リンカーの選択は、結合XおよびYの両方がフラグメント化した場合に中性種を生成するためにおこなうことができる(結合XおよびYの両方のフラグメンテーションに対して、ニュートラル・ロス(neutral loss)を起こす)。リンカーは、非常に小さな部分であり、例えばカルボニルまたはチオカルボニル基である。例えば、リンカーは少なくとも1種類の重原子同位体を含み、かつ下記の式を有する。すなわち、
【0030】
【化34】
式中、R1は同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とすることができ、該アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここでアルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。リンカーを、より大きな部分とすることもできる。リンカーを、ポリマーまたはバイオポリマーとすることができる。リンカーが解離エネルギー・レベルにさらされた場合(リンカーの天然フラグメントのみを生成するサブ・フラグメンテーションを含む)に、サブ・フラグメント化するようにリンカーを設計することができ、それによってリンカーの中性フラグメントのみが生成される。
【0031】
リンカー部分は、その質量が、混合物の各々の分析物に対するレポーター間、または試薬のセットおよび/もしくはキットに対するレポーター間の総重量における差異を補正するように、1種類以上の重原子同位体を含むことができる。
【0032】
さらに、レポーター/リンカー組み合わせの統合総質量(aggregate gross mass)(すなわち、全体として得た総質量)は、混合物の各標識分析物にとって、またはセットおよび/もしくはキットとなった試薬にとって、同一であることができる。さらに具体的には、リンカー部分は、異なる試料から得た標識分析物のレポーター間での総質量の違いを補正することができる。レポーターの固有総質量は標識分析物が由来する試料と相関し、またレポーター/リンカー組み合わせの統合総質量は、それが由来する試料に関わりなく試料混合物の各標識分析物について同一である。このようにして、2つ以上の異なる試料中の同一分析物の総質量は、標識およびその後の混合によって試料混合物を生成する時に、同一総質量を持つことができる。
【0033】
例えば、標識分析物または分析物を標識するためのセットおよび/またはキットの試薬を、異性体または同重体とすることができる。したがって、もし試料混合物の初期質量分析から特定の質量電荷比(試料混合物から得た)のイオンが選択される場合(すなわち、選択されたイオン)、試料混合物を構成する別の試料から得た同一の分析物は、同じ混合物での各々の濃度および/または分量に比例して、選択されたイオンで表現される。したがって、リンカーはレポーターを分析物に結合させるだけではなく、固有のレポーター部分の異なる質量を補正することもでき、それによって種々の質量の標識分析物内のレポーター/リンカー組み合わせの総質量を調和する。
【0034】
リンカーは標識化試薬内でレポーターの質量平衡として作用することができるので、レポーター/リンカー組み合わせの統合総質量がセットまたはキットのすべての試薬に対して同一であるように、リンカーの原子の数が多くなればなるほど、セットおよび/またはキットの異なる異性体的/同重体的標識化試薬の予測数が大きくなる。別の言い方をすれば、一般に、リンカーが含む原子の数が増えれば、存在する潜在的なレポーター/リンカーの組み合わせの数が増える。なぜなら、同位体を、多くてもリンカーの任意の場所で置換することができ、それによってリンカー部分の異性体または同重体が生成されるからであり、リンカー部分がレポーター部分の異なる質量をオフセットするのに用いられ、それによって1セットのレポーター/リンカー異性体または同重体を生成する。そのような複数の標識試薬からなる多様なセットは、同一の試料および/または異なる試料の分析物を多重化分析するのに、特に十分適している。
【0035】
セットおよび/またはキットの標識化試薬の総数は2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。セットまたはキットの標識化試薬の多様性は、レポーターおよびリンカー部分の原子の数、軽同位体を置換するのに利用される重原子同位体、および同位体が合成的に置かれる種々の合成的形態によってのみ制限される。しかし、すでに示唆したように、同位体的にエンリッチされた数多くの出発原料を、Cambridge Istope Laboratories およびIsotec等の製造元から容易に入手可能である。そのような同位体的にエンリッチされた出発原料は、同重体的および異性体的標識化試薬のセットを生産するために使われる、または同位体的にエンリッチされた出発原料を生成するために使われる合成プロセスで使うことができるか、あるいは同重体的および異性体的標識化試薬のセットを生産するために使われる合成プロセスで使用することができる同位体的にエンリッチされた出発原料を生産するために使うことができる。1セットの標識試薬での使用に適した同重体的標識化試薬の調製のいくつかの例は、後述の実施例の欄で見いだすことができる。
【0036】
(レポーター/リンカー組み合わせ)
本明細書に記載した標識化試薬は、レポーターとリンカーとから構成され、これらは結合Xを介して結合している。上記したように、レポーター/リンカー組み合わせは、1セットおよび/またはキットの標識化試薬の各構成要素に対して総質量が同じである。さらに、標識化試薬のレポーター/リンカー組み合わせの結合Xを、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、選択されたイオンの少なくとも一部分でフラグメント化するように設計することができ、それによって、分析物からレポーターが放出される。したがって、レポーター(m/s比として)の総質量およびその強度をMS/MS分析で観察することができる。
【0037】
レポーター/リンカー組み合わせは、セットまたはキットのさまざまな標識化試薬の間に、同一または異なる重原子同位体の種々の組み合わせを含むことができる。科学文献では、科学文献では、このことは時にはコーディングまたは同位体コーディングと呼ばれていた。例えば、Abersold他は同位体コード化親和性タグ(isotope coded affinity tag)(ICAT; WO00/11208を参照のこと)。ある点で、Abersold他の試薬は、Abersoldが異性体的または同重体的標識化試薬等の2つ以上の同質量の標識化試薬を教示していないことから、本発明の標識化試薬とは異なる。
【0038】
(質量分析計/質量分析法(MS))
本発明の方法は、タンデム質量分析計と分子イオンを選択してフラグメント化する能力を有する他の質量分析計とを用いて、実施することができる。タンデム質量分析計(および低度1段式(lesser degree single−stage)質量分析計)は、質量電荷(m/z)比にもとづいて分子イオンの選択およびフラグメント化をおこなって、結果として得られたフラグメント(娘)イオン・スペクトラムを記録する能力を有する。より具体的には、選択されたイオンが解離エネルギー・レベル(例えば、衝突誘起解離(CID))を受けることによって、娘フラグメント・イオン・スペクトルを生成することができる。例えば、特定のm/z比の標識化ペプチドに対応するイオンを、第1の質量分析から選択し、フラグメント化し、さらに第2の質量分析で再度分析することができる。そのようなタンデム質量分析を実行することができる代表的装置として、限定されるものではないが、磁場4セクタ、タンデム飛行時間、三連四重極、イオン・トラップ、およびハイブリッド四重極飛行時間(Q−TOF)質量分析が挙げられる。
【0039】
これらのタイプの質量分析計を、種々のイオン化源とともに用いてもよい。そのようなイオン化原として、限定されるものではないが、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)が挙げられる。イオン化源は、第1の質量分析に対して、電荷種を生成するために用いられ、前々から固定電荷を持つものではない。追加の質量分析機器およびフラグメンテーション方法として、MALDI−MS機器での遅延引き出し機構(post−source decay)とMALDI−TOF(飛行時間型)−TOF MSを用いた高エネルギーCIDとが挙げられる。タンデム質量分析計についての最近の概説については、R. Aebersold and D. Goodlett, Mass Spectrometry in Proteomics. Chem. Rev. 101: 269−295 (2001)を参照されたい。また、TOF−TOF質量分析技術の議論について、米国特許第6,319,476号(本明細書に援用)を参照のこと。
【0040】
(解離エネルギー・レベルによるフラグメンテーション)
結合が質量分析計で起こるプロセスの結果として、フラグメント化することができることがよく理解されている。さらに、結合フラグメンテーションは、イオンを解離エネルギー・レベルにさらすことで質量分析計で得られる結果である。例えば、解離エネルギー・レベルを、衝突誘起解離(CID)によって質量分析計内に生成することができる。質量分析法の当業者は、フラグメンテーションを引き起こす解離エネルギーを改善するための他の典型的な技術として、限定されるものではないが、光解離、電子捕獲、および表面誘起解離が挙げられる。
【0041】
衝突誘起解離によって結合をフラグメント化するプロセスは、不活性ガスによる衝突を介して、選択されたイオンの運動エネルギー状態を結合フラグメンテーションが起こる点に高めることがともなう。例えば、衝突セル内で不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、またはアルゴン)による衝突によって、運動エネルギーを移すことができる。イオンに移されうる運動エネルギーの量は、衝突セルに入るのを許された気体分子の数に比例する。より多くの気体分子が存在する場合、選択されたイオンに対して、より多くの運動エネルギーが移り、より少ない気体分子が存在する場合、より低い運動エネルギーが移される。
【0042】
したがって、質量分析計での解離エネルギー・レベルを制御できることが明らかである。また、ある種の結合が他の結合よりも不安定であることが十分に認められる。分析物またはレポーター/リンカー部分での結合の不安定性は、分析物の性質またはレポーター/リンカー部分の分析物に依存する。したがって、分析物および/または標識(例えば、レポーター/リンカー組み合わせ)を、測定可能とする方法で、フラグメント化することができる。そのようなルーチンの調整を質量分析計の構成要素にどのようにおこなうかは、当業者に理解されることであり、それによって、解離エネルギーの適当なレベルが達成され、標識分析物のイオンの少なくとも一部分がイオン化レポーター部分および娘フラグメント・イオンにフラグメント化される。
【0043】
例えば、解離エネルギーを、第1の質量分析から選択/分離されるイオンに適用することができる。タンデム質量分析計では、抽出イオンが解離エネルギー・レベルを受けて、第2の質量分析計へ移される。選択されたイオンは、選択された質量電荷比を持つことができる。質量電荷比を、質量分析計の特性によって質量電荷比の範囲内にすることができる。解離エネルギーを印加することできる衝突セルにイオンを通すことで、第1の質量分析計から第2の質量分析計に、該イオンを移すことができ、それによってフラグメント・イオンが発生する。例えば、分析のために第2の質量分析計に送られるイオンは、いくつかの、または一部の残留する(フラグメント化していない)選択されたイオンを、標識分析物の娘フラグメント・イオンおよびレポーター・イオン(サイン・イオン)と同様に、含むことができる。
【0044】
(コンピュータ支援データベース分析による分析物測定)
いくつかの実施形態では、娘イオン・フラグメンテーション・パターンに基づいて分析物を測定することができる。ここで、フラグメンテーション/パターンは、既知または「理論上」の分析物のスペクトルとコンピュータ支援で比較することによって分析される。例えば、低エネルギーCIDの条件下でフラグメント化したペプチド・イオンの娘フラグメント・イオン・スペクトラムは、多くの離散的なフラグメンテーション・イベントの合計と考えられる。一般の命名法は、分解するアミド結合と結合分裂後の電荷を保持するペプチド・フラグメントにもとづいて、娘フラグメント・イオンを区別する。分裂性アミド結合のN末端側の電荷保持は、b−型イオンの形成をもたらす。もし、壊れたアミド結合のC末端側に電荷が残るならば、フラグメント・イオンをy型イオンと呼ぶ。bおよびy型イオンに加えて、CID質量スペクトルは、他の診断用フラグメント・イオン(娘フラグメント・イオン)を含むものであってもよい。これらは、グルタミン、リジン、およびアルギニンからのアンモニア(−17amu)のニュートラル・ロスあるいはセリンおよびスレオニン等のヒドロキシル含有アミノ酸からの水(−18aum)の喪失によって生成されたイオンを含む。ある種のアミノ酸が、他のものよりも低エネルギーCIDの条件下で、より容易にフラグメント化することが観察されている。このことは、特に、プロリンまたはアスパラギン酸残基を含むペプチドであきらかであり、さらにアスパルチル−プロリン結合でなおさらそうである(Mak, M. et al., Rapid Commun. Mass Spectrom., 12: 837−842) (1998)。したがって、Z−proダイマーまたはZ−aspダイマーのペプチド結合(ここで、Zha任意の天然アミノ酸、proはプロリン、およびaspはアスパラギン酸)は、すべての他のアミノ酸ダイマー組み合わせの間でのペプチド結合と比較して、よりいっそう不安定となる傾向にある。
【0045】
したがって、ペプチドおよびタンパク質試料に関して、低エネルギーCIDスペクトラムは、重複b−およびY−系イオン、同一ペプチド由来の内部フラグメント・イオン、ならびにイモニウムおよび他のニュートラル・ロス・イオンの冗長配列特異的情報を含む。新たに両親ペプチドのアミノ酸配列を組み立てるためにそのようなCIDスペクトラムを解釈することは、挑戦的で時間がかかる。ペプチド配列を同定する上で最も顕著な進歩は、ペプチドCIDスペクトラムを、タンパク質およびDNA配列データベースにすでに存在するペプチド配列で補正するコンピュータ・アルゴリズムの発達であった。そのようなアプローチは、SEQUEST (Eng,J.et al. J.Anx. Soc. Mass Spectrom., 5:976−989 (1994))およびMASCOT(Perkins,D.et al. Electrophoresis, 20:3551−3567(1999))等のプログラムによって例示される。
【0046】
手短に言えば、実験的ペプチドCIDスペクトラム(MS/MSスペクトラム)は、タンパク質またはゲノム配列データベースから得たペプチド配列から計算により生成した「理論的」娘フラグメント・イオン・スペクトラムと一致または相関する。一致または相関は、MS/MSモードでの娘フラグメント・イオンの予測質量と観測質量との類似性に基づいている。潜在的一致または相関は、実験的フラグメント・パターンと「理論的」フラグメント・パターンとがどれぐらいよく一致するかにもとづいて記録される。所定のペプチド・アミノ酸配列をサーチするデータベース上の制約は、シングル・ペプチドCIDスペクトラムが全ゲノムまたは発現配列タグ(EST)データベースの任意の所定のタンパク質の同定に適切になるほど、見分けられている。他の概説については、Yates, J.R. Trends, Genetics, 16: 5−8 (2000) and Yates, J.R., Electrophoresis 19: 893−900 (1998)を参照されたい。
【0047】
したがって、MS/MSスペクトラムの娘フラグメント・イオン分析は、標識分析物の分析物を測定することだけではなく、測定された分析物が由来する分析物を測定することにも用いられる。例えば、MS/MSスペクトラムの娘フラグメント・イオン分析は、タンパク質の酵素的消化の結果としてペプチドが開裂したタンパク質の測定に用いることができる。そのような分析が他の分析物、例えば核酸に適用しうることが考えられる。
【0048】
(結合XおよびY)
Xは、レポーターの原子とリンカーの原子とのあいだの結合である。Yは、リンカーの原子と、反応基もしくは標識化試薬が反応性分析物と反応している場合は該分析物のいずれかとのあいだの結合である。本発明の実施形態で使用しうる種々の標識化試薬(すなわち、RP−X−LK−Y−RG)の結合XおよびYは、解離エネルギー・レベルにさらされた場合、選択されたイオンの少なくとも一部分で、フラグメント化することができる。したがって、結合XおよびYが標識分析物(すなわち、RP−X−LK−Y−分析物)の選択されたイオンの少なくとも一部分にフラグメント化されるように、解離エネルギー・レベルを質量分析計で調節することができる。結合Xのフラグメンテーションは、レポーターを別個に分析物から測定することができるように、該分析物からレポーターを離す。結合Yのフラグメンテーションは、結合Xがすでにフラグメント化されているかどうかに依存して、分析物からレポーター/リンカー組み合わせを、または分析物からリンカーを離す。結合Yを結合Xよりも不安定化させることができる。結合Xを結合Yよりも不安定化させることができる。結合XおよびYの両方を同じく相対的に不安定なものとすることができる。
【0049】
目的とする分析物がタンパク質またはペプチドである場合、結合XおよびYの相対的不安定性は、アミド(ペプチド)結合に関して調節することができる。結合X、結合Y、または結合Xおよび結合Yの両方を、典型的なアミド(ペプチド)結合と比較して、よりいっそう、等しく、またはより少なく不安定化させることができる。例えば、解離エネルギーの条件下で、結合Xおよび/または結合Yが、z−proダイマーまたはz−aspダイマー(ここで、Zは任意の天然アミノ酸結合、proはプロリン、およびaspがアスパラギン酸である)のペプチド結合と比較して、フラグメンテーションがより劣る傾向にある。いくつかの実施形態では、結合XおよびYが、典型的なアミド結合と比較して、解離エネルギーがほぼ等しい。いくつかの実施形態で、結合XおよびYは、典型的なアミド結合と比較して、解離エネルギーのレベルがよりいっそう大きい。
【0050】
結合XおよびYは、結合Yのフラグメンテーションが結合Xのフラグメンテーションを誘導し、またその逆も起こるようにして、存在することもできる。このようにして、結合XおよびYの両方が、相当量の分析物またはその娘フラグメント・イオンが第2の質量分析で部分的標識を含まないようにして、実質的にフラグメント化することができる。「相当量の分析物(substantial amount of analyte)」とは、25%未満、好ましくは10%未満、部分的に標識された分析物がMS/MSスペクトルで測定されることを意味する。
【0051】
分析物の標識フラグメントと非標識フラグメントとのあいだの明瞭な区分が第2の質量分析(MS/MS)のスペクトラムにあることから、この特徴によって、娘フラグメント・イオン・スペクトラムのコンピュータ支援分析からの分析物の同定を単純化することができる。さらに、いくつかの実施形態では、分析物のフラグメント・イオンを、レポーター/リンカー部分により完全標識または非標識(しかし部分的標識ではない)することができるので、分裂した結合にわたって同位体分布によって生じた娘フラグメント・イオンの質量がほとんど散乱またはまったく散乱することがなく、例えば、第2の質量分析で通常決定される部分的に標識された分析物の不安定な単一の結合の各々の側に、同位体が存在する場合が考えられる。
【0052】
(試料の加工)
本発明のいくつかの実施形態では、分析物の標識後と同様に、該標識に先立って、試料を加工することができる。この加工によって分析物の標識を促進することができる。この加工で試料の構成要素の分析を促進することができる。この加工によって、試料の取り扱いを簡素化することができる。この加工は、前述したことの2つ以上を促進することができる。
【0053】
例えば、試料を酵素で処理することができる。酵素は、プロテアーゼ(タンパク質およびペプチドを分解するため)、ヌクレアーゼ(核酸を分解するため)、または何らかの他の酵素である。酵素の選択は、かなり予測可能な分解パターンを持つように、おこなうことができる。2種類以上のプロテアーゼおよび/または2種類以上のヌクレアーゼ酵素も一緒にもちいてもよく、あるいは他の酵素も一緒に用いてもよく、それによって試料構成要素の分解が生ずる。
【0054】
例えば、タンパク質分解酵素であるトリプシンは、リジンまたはアルギニンと非特異的なアミノ酸とのあいだのペプチド結合を切断して、アミン末端(N−末端)とリジンまたはアルギニン・カルボキシル末端アミノ酸(C−末端)とを有するペプチドを生成する。このようにして、タンパク質の切断により生じるペプチドが予測可能であり、その存在および/または分量によって、トリプシン消化の試料では、該試料が由来するタンパク質の存在および/または分量を示すことができる。さらに、ペプチドの遊離アミン末端は、標識化を促進する良好な求核試薬となりうる。他の典型的なタンパク質分解酵素として、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、およびカルボキシペプチダーゼCが挙げられる。
【0055】
例えば、あるタンパク質(例えば、タンパク質Z)は、トリプシン等のプロテアーゼによる消化を受けた場合、3種類のペプチド(例えば、ペプチドB、C、およびD)を生ずる可能性がある。したがって、トリプシン等のタンパク質分解酵素によって消化を受けており、また分析によってペプチドB、C、およびDを含むことが確認された試料は、本来はタンパク質Zを構成したものであるといえる。ペプチドB、C、およびDの量もまた、消化した試料に含まれるタンパク質Zの量と相関する。このようにして、1つの試料に含まれるペプチドB、C、およびDの1種類以上を同定および/または定量するいずれの測定も、元の試料(またはその分画)に含まれるタンパク質Zの同定および/または定量に用いることができる。
【0056】
酵素の活性を予測することが可能であることから、配列が既知のタンパク質を分解することで生ずるペプチドの配列を、予測することができる。この情報によって、「理論的」ペプチド情報が生成される。したがって、実際の試料の質量分析から得られた娘フラグメント・イオン(上記したとおり)のコンピュータ支援分析での「理論的」ペプチド・フラグメントの測定を、1種類以上の未知の試料に含まれる1種類以上のペプチドまたはタンパク質の測定に用いることができる。
【0057】
(分離および試料混合)
いくつかの実施形態では、標識分析物の試料または試料混合物の加工に、分離を含むことができる。例えば、複数の異なる試料由来の複数の差異的標識分析物を含む1つの試料混合物を、調製することができる。差異的標識(differentially labeled)とは、標識の各々が同定可能な固有の性質を持つことを意味する(例えば、MS/MS分析で固有の「サイン・イオン」を作る固有のレポーター部分を含む)。試料混合物を分析するために、試料混合物の構成要素を分離して、質量分析を該試料混合物の一分画のみに実施することができる。このようにして、分離された分析物の質量を個々に分析して分析プロセスの感度を高めることができるので、分析の複雑性を実質的に減らすことができる。もちろん、この分析を上記試料混合物の1種類以上の別の分画に対して1回以上繰り返して、該試料混合物のすべての分画を分析することが可能となる。
【0058】
同一の複数の差異的標識分析物が、試料混合物での存在量に比例した濃度または量で、共溶出する分離条件を、試料混合物に加えられる各資料の量が知られているという条件で試料混合物を含む各々の試料での各標識分析物の量を測定するために、用いることができる。したがって、いくつかの実施形態では、試料混合物の分離によって分析を簡素化することができる一方で、試料混合物で複数の差異的標識分析物による質量分析(例えば、MS/MS分析)で測定されたシグナル間の相関を保つことができる。
【0059】
上記分離はクロマトグラフィーによっておこなうことができる。例えば、液体クロマグログラフィ/質量分析法(LC/MS)を用いて、そのような試料の分離および質量分析をおこなうことができる。さらに、目的とする分析物の分離に適した任意のクロマトグラフィー分離プロセスを用いることができる。例えば、クロマトグラフィーによる分離を、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、または親和性クロマトグラフィーとすることができる。
【0060】
上記分離を電気泳動的におこなうことができる。使用しうる電気泳動的分離技術の非限定的例として、限定されるものではないが、1次元電気泳動による分離、2次元電気泳動による分離、および/またはキャピラリー電気泳動による分離が挙げられる。
【0061】
1種類の同重体的標識化試薬または1セットの試薬を用いて、1つの試料の複数の分析物を標識することができる。分離工程を実行する場合、複数の同重体的標識化試薬が有用である。なぜなら、1セットの標識化試薬の同重体的標識は、構造的および化学的に識別可能である(また、フラグメンテーションが分析物からレポーターを除去するまで、総質量によって識別可能である)。したがって、異なる同重体的標識により標識される同一組成物のすべての分析物を、正確に同じ方法でクロマトグラフィーにかけることができる(すなわち、共溶出)。なぜなら、それらは構造的および化学的に識別可能であり、分離プロセスによって生じた溶出液は、試料混合物に含まれる標識分析物の量に比例している一定量の各々の同重体標識された分析物を含むことができる。さらに、どのようにして試料混合物を調製したかの知見から(試料の一部分、試料混合物を得るために加えられた他の任意の構成要素(例えば、較正基準))、試料混合物に含まれる標識分析物の量を、それが由来する試料に含まれるその標識分析物のもとの量に対応させることが可能である。
【0062】
標識化試薬を、異性体的なものにすることもできる。同位体をクロマトグラフィーにより分離することも時には可能ではあるが、条件依存的である状況が存在し、該状況では分離プロセスを実行して複数の同一差異的標識分析物のすべてを共溶出させることができ、ここでは、標識分析物全ての量が試料混合物中でのそれらの濃度および/または分量に比例して存在する。
【0063】
本明細書で用いられるように、同重体は同位体と異なる。同重体が名目総質量(例えば、図1参照)が同じ化合物(同位体含有量および/または分布を除く)と構造的および化学的に識別することができない。それに対して、異性体は名目総質量が同じではあっても構造的および化学的に該異性体同士を区別することができる。
【0064】
(分析物の相対的および絶対的定量化)
いくつかの実施形態では、1つの試料で同一の差異的標識分析物の相対的定量化が可能である。同一の差異的標識分析物の相対的定量化は、第1の質量分析で観察された選択標識分析物に対する第2の質量分析で測定されるレポーターの相対量(例えば、報告されたピークの面積または高さ)と比較することによって、可能である。言い換えれば、試料混合物を生成するために用いられる特定の試料に対する情報と各レポーターとを相関させることができる場合には、第2の質量分析で観察された他のレポーターに関して、そのレポーターの相対量は試料混合物に含まれるその分析物の相対量である。試料混合物を形成するために組み合わされた構成要素が既知である場合には、試料混合物を調製するために用いられる各試料に含まれる分析物の相対量を、第1の質量分析から選択された標識分析物のイオンに対して観察されたレポーターのもとの相対量に基づいて、計算することができる。このプロセスを、第1の質量分析で観察された異なる標識分析物の全てに対して、繰り返すことができる。このようにして、試料混合物を生成するために用いる複数の異なる試料の各々に含まれる各反応性分析物の相対量(しばしは、濃度および/または分量で表現される)を、測定することができる。
【0065】
他の実施形態では、分析物の絶対定量を測定することができる。これらの実施形態のために、1種類以上の差異的標識分析物の既知量(1つの構成基準または複数の構成基準)を試料混合物に添加することができる。較正基準は、期待される分析物であり、この分析物は試料混合物の分析物を標識するのに用いられる標識セットで標識される試料混合物を形成するために用いられる複数の試料のうちの任意のものと比較して、較正基準用のレポーターが固有なものであるという条件で、試料混合物の分析物を標識するのに用いられる標識セットで標識される。較正基準あるいは基準用のレポーターの相対量が、試料混合物の差異的標識分析物のレポーターの相対量に関して、ひとたび測定されると、該試料混合物に含まれる差異的標識分析物のすべての絶対量(しばしば、濃度および/または分量で表現される)を計算することが可能である。このようにして、各々の差異的標識分析物(分析物が由来する試料に較正基準がある)もまた、どのようにして試料混合物が調製されたかの知見に基づいて、測定される。
【0066】
前述のことにもかかわらず、必要に応じて、天然に生じた、または人工的に創出したレポーター内の同位体含有量について、レポーター(サイン・イオン)の強度に対する補正をおこなうことができる。そのような補正の一例を実施例3に見いだすことができる。そのような補正の洗練された例もまた、「回旋状スペクトルを脱回旋状にするための方法および装置(Method and Apparatus For De−Convoluting A Convoluted Spectrum)」と題された同時係属かつ共有の米国仮特許出願第60/524,844号(2003年11月26日出願)に見いだすことができる。各レポーターの強度を正確に定量するためによりいっそう注意を払うことで、もとの試料での分析物の相対量および絶対量の定量がよりいっそう正確になる。
【0067】
(プロテオミックス分析)
本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物を複合分析に用いることができる。なぜなら、質量分析技術を用いて、素早くかつ繰り返して、試料を多重化し、分析し、さらに再分析することができるからである。例えば、試料混合物の分析を、1つ以上の試料に含まれる個々の分析物の量について実施することができる。上記試料混合物を構成する試料に対して、これらの分析物の量(しばしば、濃度および/または分量で表される)を測定することができる。試料加工および質量分析を素早くおこなうことができることから、これらの方法を数多く繰り返すことで、試料混合物の多くの差異的標識分析物の量を、分析物が由来する試料中でのそれらの相対量および/または絶対量に関して、測定することができる。
【0068】
そのような急速多重化分析が有用な1つの応用として、プロテオミックス分析の領域がある。プロテオミクスを、構造、機能、および生物学的プロセスの調節に関してゲノム配列にコード化される情報を説明するための実験的なアプローチとして見ることができる。このことは、細胞または組織によって発現される総タンパク質構成要素の系統的分析によって達成可能性である。本発明の方法、混合物、キット、および/または組成物実施形態と組み合わせて使用される質量分析は、そのような全体的なタンパク質分析にとって、考えられるツールの1つである。
【0069】
例えば、4種類の同重体的標識化試薬からなるセットによって、1回の実験で、タンパク質の上方制御および下方制御を測定するために、例えば特定の刺激物に対する増殖細胞の応答に基づいて、4時点を得ることが可能である。より少ない時点で実行することも可能ではあるが、1種類または2種類の対照群を組み込むことが可能である。すべての場合において、タンパク質の上方または下方制御を、必要に応じて対照群に関して、単一多重化実験で測定することができる。さらに、加工が平行して実行されるので、結果は直接比較可能である。なぜなら、プロトコールでのわずかな変化が結果に影響を及ぼしかねないというリスクがないためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
(4.本発明の種々の実施形態の説明)
(A.方法)
本発明の方法によれば、測定すべき分析物を標識する。標識分析物、分析物それ自体、分析物の1つ以上のフラグメントおよび/または標識のフラグメントを、質量分析によって測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、2種類以上の異なる試料に含まれる複数の同一および/または異なる分析物の多重化分析のためにと同様に、同一資料に含まれる複数の異なる分析物の分析のために、用いられる。2種類以上の試料を混合して、1つの試料混合物とすることができる。多重化分析では、標準化試料を用いて、試料混合物のどの試料から分析物が由来するかを測定することができる。分析物の絶対および/または相対(異なる試料に含まれる同一の分析物に関して)量(しばしば濃度または分量で表される)を、試料混合物を形成するために組み合わされた2種類以上の試料で、測定することができる。さらに、分析物のフラグメント(例えば、娘フラグメント・イオン)の質量分析は、分析物および/または該分析物に対する前駆体の同定、例えば分析物に対する前駆体が分解された場合、に用いられる。
【0071】
記載されたアプローチの特徴の1つに、異なる試料からの複数の分析物が、化学的異性体または同重体(等しい質量を持つ)的でありかつ分析物が由来する試料を同定する固有の標識による差異的に同位体標識(すなわち、同位体によるコード化)されうるという事実にある。差異的標識分析物は、MSモードの質量分析計では区別がつかない。なぜなら、該差異的標識分析物はすべて同一の(総)質量電荷比を持つからである。しかし、解離エネルギー・レベルを受けた場合、例えば衝突誘起解離(CID)を介して、標識がフラグメント化して、質量分析計で質量(質量電荷比)により分解しうる固有のレポーターを生ずることができる。質量スペクトルで観察されたレポーターの相対量と、試料混合物に含まれる標識分析物の相対量、また含蓄的に、分析物が由来する試料に含まれる該分析物の量とを、相関させることができる。したがって、レポーター(すなわち、サイン・イオン)の相対的強度を用いて、試料混合物を形成するために組み合わさった2種類以上の試料に含まれる1種類の分析物または複数の分析物の相対量を測定することができる。
【0072】
レポーター情報から、2種類以上の試料に含まれる1つの分析物または複数の分析物の絶対量(しばしば濃度および/または分量で表される)を、絶対的定量化が望まれる各々の分析物に対する較正基準が試料混合物に取り込まれる場合、誘導することができる。
【0073】
例えば、分析物は、試料を処理するために酵素の消化反応を使用しているタンパク質の分解から生じたペプチドであってもよい。タンパク質分解は、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼC)で試料を処理することで達成することができる。試料混合物に含まれるペプチドの同一性および量を測定することで、またそれが由来する試料を同定することで、任意にその試料から得た他のペプチドの測定と結びつけて、分解ペプチドに対する前駆体タンパク質を、それが由来する試料について、同定および/または定量することができる。この方法は複数の試料(すなわち、試料混合物から)でのタンパク質の多重測定を可能とすることから、多重方法である。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明は、1種類以上の反応性分析物を各々が含む2種類以上の試料の各々を、標識化試薬セットの異なる標識化試薬と反応させる工程を含み、上記標識化試薬セットの異なる標識化試薬の各々が式:RP−X−LK−Y−RGを有する方法に関する。その結果、各試料の1種類以上の分析物が、異なる標識化試薬の各々の求電子性または求核性の反応基(RG)と分析物の求核試薬または求電子試薬との反応によって、「RP−X−LK−Y−」部分により標識される。この標識化プロセスによって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差異的標識試料が生成される。上記セットの標識化試薬を、異性体的または同重体的なものにすることができる。各標識化試薬のレポーターを、各標識分析物が由来する試料によって同定することができ、またそのことにより、該試料を同定するために使うことができる。
【0075】
RGは反応基であり、その特性はすでに記載されている。RPはレポーター部分であり、その特性はすでに記載されている。上記セットの各々の試薬に関して、各レポーターの総質量が異なる。LKはリンカー部分であり、その特性はすでに記載されている。リンカーの総質量は、レポーター/リンカー組み合わせの統合総質量が上記セットの各試薬について同一であるように、異なる標識化試薬に対するリンカー間の総質量における差異を補正することができる。Xは、レポーターの原子とリンカーの原子とのあいだの結合である。Yは、リンカーの原子と反応基とのあいだの結合である(または分析物との反応後、Yはリンカーの原子と分析物の原子とのあいだの結合である)。結合XおよびYは、質量分析計で解離エネルギー・レベルを受けた場合、標識分析物の少なくとも一部分でフラグメント化する。結合XおよびYの特徴はすでに説明されている。
【0076】
ひとたび各々の試料の分析物が、該試料に固有の標識化試薬によって標識されると、2種類以上の異なる標識試料またはその一部分を混合して試料混合物を生成することができる。定量化が必要な場合、該試料混合物を生成するために組み合わされた各々の試料の容積および/または分量を記録することができる。試料混合物の全試料容積および/または分量に対する各試料の容積および/または分量は、試料混合物の分析から得た各試料に含まれる同定された分析物の量(しばしば濃度および/または分量として表される)を測定するために必要な比の測定に用いることができる。したがって、試料混合物は複合混合物を含むことができ、同一および/または異なる分析物の相対量を、2種類以上の試料の各々に含まれる分析物の量を相対的に定量すること、または較正基準も試料混合物に加えて絶対的に定量することのいずれかによって、同定および/または定量化することができる。
【0077】
次に、混合物をスペクトロメトリー技術にかける。この技術では、第1の質量計を用いて、第1の質量分析を試料混合物またはそのフラクション上で実行することができる。第1の質量分析から得た特定の質量電荷比のイオンを、次に選択することができる。続いて、選択されたイオンを解離エネルギー・レベル(例えば、衝突誘起解離(CID))にさらして、選択されたイオンのフラグメンテーションを誘導する。特定の質量電荷比の、標識分析物の、選択されたイオンを、解離エネルギー・レベルにさらすことで、結合XおよびYの両方が、選択されたイオンの少なくとも一部分でフラグメント化することができる。結合XおよびYの両方のフラグメンテーションは、耐電またはイオン化したレポーターを分析物から離すととともに、レポーター/リンカー部分のフラグメンテーションを引き起こすことができる。解離エネルギー・レベルにさらされたイオンもまた、分析物のフラグメンテーションを引き起こすことができ、それによって分析物の娘フラグメント/イオンを生成する。イオン(残留の選択されたイオン、娘フラグメント・イオン、または耐電もしくはイオン化レポーター)、あるいはそのフラクションを、第2の質量分析計に向けることができる。
【0078】
第2の質量分析では、第2の質量分析は選択されたイオンおよびそのフラグメント上で実行される。第2の質量分析は、試料混合物の少なくとも1つの反応性分析物の娘フラグメント/イオンの総質量と同様に、選択された質量電荷比で存在する各々の固有のレポーターの総質量(またはm/z)および相対量を測定することができる。選択された質量電荷比で存在する各分析物について、娘フラグメントイオンを用いて、選択された質量電荷比で存在する1種類の分析物または複数の分析物を同定することができる。例えば、この分析は、すでに「コンピュータ支援データベース分析よる分析物測定」と題されたセクションで説明していように、おこなうことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、プロセスのいくつかの工程を1回以上繰り返すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の質量分析による分析から、すでに選択されたいずれかの質量電荷比とは異なる、選択された質量電荷比のイオンは、解離エネルギー・レベルに対して処理され、すでに説明したように、選択されたイオンの少なくともいくつかのイオン化娘フラグメント・イオンとイオン化レポーター部分とが形成される。選択されたイオン、イオン化したレポーター部分、および娘フラグメント・イオン、またはそれらのフラクションの第2の質量分析を実行することができる。第2の質量分析での各レポーター部分の総質量および相対量と娘フラグメント・イオンの総質量とを測定することもできる。このように、第1の質量分析から1種類以上の別の分析物を同定および定量化することに利用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、プロセス全体を1回以上繰り返すことができる。例えば、試料混合物がフラクション化した場合(例えば、クロマトグラフィーまたは電気泳動によって分離)、プロセスを1回以上繰り返すことが有用であると思われる。各試料に対してプロセスを繰り返すことで、試料混合物全体のすべてを分析することが可能である。いくつかの実施形態で、プロセス全体が1回以上繰り返され、これらの繰り返しの各々の範囲内で、特定の工程も上記したように1回以上繰り返されることが、考えられる。このようにして、試料混合物の含有量を問い合わせ、十分に可能な範囲で測定することができる。
【0081】
質量分析の当業者は、第1および第2の質量分析がタンデム質量分析計で実行できることを理解する。タンデム質量分析を実行する上で適当な機器は、本明細書ですでに説明されている。タンデム質量分析計が好ましいが、1段質量分析計を用いてもよい。例えば、分析物フラグメンテーションは、コーン電圧フラグメンテーションによって、続いて得られたフラグメントを1段四重極もしくは飛行時間型質量分析計を用いて質量分析することででの、結果であってもよい。別の実施例では、レーザ源を用いて分析物を解離エネルギー/レベルにさらすことが可能であり、その結果得られたフラグメントは、以下の時間飛行またはタンデム時間飛行(TOF−TOF)でのポスト・ソース分解を記録した。
【0082】
先に開示した多重方法にもとづくと、いくつかの実施形態で、結合Xは、分析物の結合(例えば、ペプチド骨格にあるアミド(ペプチド)結合)のフラグメンテーションと比較して、フラグメンテーションする傾向がより高い、もしくは低い、または実質的に等しい。いくつかの実施形態で、結合Yは、分析物の結合(例えば、ペプチド骨格にあるアミド(ペプチド)結合)のフラグメンテーションと比較して、フラグメンテーションする傾向がより高い、もしくは低い、または実質的に等しい。いくつかの実施形態で、上記セットの各試薬に対するリンカーは、結合XおよびYのフラグメンテーション後に電荷が中性である(すなわち、リンカーがフラグメント化して質量のニューラル・ロスを生じ、そのためMS/MSスペクトラムでは観察されない)。さらにいくつかの別の実施形態では、結合XおよびYは、1つのセットの複数の標準化試薬内で、1つの混合物の複数の標識分析物内で、あるいは1つのキットの複数の標識化試薬内で、変化しない。さらにいくつかの別の実施形態では、上記セットの各試薬に対するレポーターは、分析物(例えば、ペプチド骨格のアミド(ペプチド)結合)をフラグメント化するのに用いられる条件下では、実質的にサブ・フラグメント化しない。さらにいくつかの他の実施形態では、結合Xは、結合Yと比較してフラグメンテーションする傾向が少ない。さらにいくつかの他の実施形態では、結合Yは、結合Xと比較して、フラグメンテーションする傾向が少ない。いくつかの別の実施形態では、結合XおよびYは、おおよそ同一の不安定性を持つものであり、さもなければ、結合XまたはYの一方のフラグメンテーションが結合XまたはYの他方のフラグメンテーションを含むようにして、選択される。標識分析物のRP−X−LK−Y−部分に対する基の別の特性は、すでに説明されている。
【0083】
いくつかの実施形態で、各同重体的標識分析物の標識は、環状窒素原子を含む5、6、または7員複素環であり、該環状窒素原子は置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化されており、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する。ここで、各々の異なる標識は1種類以上の重原子同位体を含むことができる。複素環を置換または非置換させることができる。複素環を脂肪族または芳香族とすることができる。複素環部分の置換基の有力な候補として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、保護基または脱保護基、例えば、アミン、ヒドロキシル、またはチオール基を含むことができ、これらは分析物を支持体に結合させるのに適している。複素環は、さらに、1つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、試料混合物に含まれる標識分析物を同重体とすることができ、各々が以下の一般式を持つ。すなわち、
【0085】
【化35】
式中、Zは、O、S、NH、またはNR1であり;各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり;Wは、環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSであり;複素環の各炭素は、式CJ2を有し;各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含む炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み;さらに、R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含むものであってもよく、さらにアルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。
【0086】
例えば、試料混合物が以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。
【0087】
【化36】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0088】
この一般的構造の標識分析物を生成するのに適したモルホリン標識化試薬は、多数の合成経路によって調製することができる。例えば、実施例1に記載したような、同位体標識したブロモ酢酸化合物である。同様に明らかにしなければならないことは、環置換モルホリンおよび/または置換ブロモ酢酸出発原料もまた、過度の実験を行うことなしに(上記した方法または当業者に周知の他の方法に対してほとんど変化を加えることなく)、当業者によって選択かつ使用され、それによってモルホリンをベースとする種々の異なる標識化試薬を生成することができ、該標識化試薬は重原子同位体含有量が異なり(すなわち、同位体的にコード化された)、本発明のセットまたはキットに用いることができるということである。
【0089】
モルホリンの代わりに、所望の同位体的分布の置換または比置換ピペリジンを選択することが可能である。ピペリジンを選択した場合、同位体D(重水素)、13C、または15NがH、12C、および14Nとそれぞれ置換することができ、ピペリジンの場合に18Oが環原子として用いられないことを除いて、モルホリンについて説明した場合と類似の方法で、標識化試薬の試薬の総質量を変えるために用いることができる。典型的なピペリジン合成は、任意に同位体的にエンリッチされた出発原料を用いるもので、実施例6に記載されている。
【0090】
試料混合物は、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。
【0091】
【化37】
式中、炭素13、酸素18,および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。この一般的構造の標識分析物を生成するのに適したピペリジン標識化試薬は、多数の合成経路によって調製することができる。例えば、重または軽ピペリジン化合物を、実施例7に記載したように、重または軽標識ブロモ酢酸化合物と反応させることができる。図9Aおよび9Bは、容易に入手可能な重または軽出発材料を用いた同位体的にエンリッチされたピペリジンに対する2つの異なる合成経路を示す。
【0092】
特に図9Aを参照すると、15N標識グリシン1の2等価物を縮合してビス−同位体標識ジ・ケト・ピペラジン2(図中、同位体標識は*で示す)を形成することができる。次に、ジ・ケト・ピペラジン2を還元して同位体標識ピペラジンとする。同位体標識ピペラジンをブロモ酢酸と反応させ、実施例7に示すように、活性エステル3に変換させる。
【0093】
特に図9Bを参照すると、ビス−15N−標識エチレンジアミン4をシュウ酸5と縮合させて、ビス−同位体標識ジ・ケトピペラジン6とすることができる(図中、同位体標識は*で示す)。次に、ジ・ケトピペラジンを還元して同位体標識ピペラジンにすることができる。さらに、同位体標識ピペラジンをブロモ酢酸と反応させて、実施例7に示すように、活性エステル3に変換させる。
【0094】
同様に明らかにすべきことは、環置換ピペラジンを、適当に置換された出発原料を単に選択することで、上記方法を用いて作ることができるということである。適切な場合は、置換ブロモ酢酸(重または軽のいずれか)を同様に用いることができる。重(heavy)とは、1つ以上の重原子同位体によって化合物が同位体的にエンリッチされていることを意味する。軽(light)とは、同位体的にエンリッチされていないことを意味する。
【0095】
したがって、適当に置換した出発原料を選択することで、本発明のセットで用いることができる種々の異なるピペリジン系標識試薬が生成できる。
【0096】
例えば、試料混合物は、以下の式で表される1種類以上の同位体標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0097】
【化38】
式中、炭素13、酸素18,および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。ここで、
(1)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み;また(2)各Kは、別々に、水素またはアミノ酸側鎖として選択される。この一般構造の標識分析物を生成するのに適した置換ピペラジン標識化試薬は、多くの合成経路によって調製することができる。
【0098】
例えば、図10を参照すると、N−アルキル置換ピペラジン試薬を、図示した手順にもとづいて合成することができる。t−ブチルオキシカルボニル(t−boc)保護グリシン10をN−メチル−グリシン11のエステル(例えば、エチルエステル)と縮合させることで、t−boc保護グリシン−N−メチル−グリシン二量体12を形成することができる。次に、t−boc保護基を除去してグリシン二量体12を環状化し、その後に縮合をおこない、N−メチル−ジ−ケトピペラジン13の酸塩を形成することができる。13の酸塩を中和および還元してN−メチル−ピペラジン14を形成する。次に、N−メチル−ピペラジン14をブロモ酢酸15(またはその置換バージョン)と反応させ、実施例7に示すように、活性エステル16に変換することができる。
【0099】
明らかにすべきことは、環置換ピペラジンを、グリシン以外のアミノ酸またはN−メチルアミノ酸(またはそのエステル)(例えば、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸等)を単に選択することで、上記方法を用いて作ることができるということである。同様に明らかにすべきことは、アミノ酸を、同重体的標識化試薬のセットを調整するために必要な同位体の所望の分布を持つ環置換ピペラジンの調製に適した方法で、同位体標識することができるということである。
【0100】
N−アルキル置換ピペラジン試薬は、さらに別の図示した手順によって調製することができる。図11を参照すると、グリシンメチルエステル21をブロモ酢酸22のエチルエステルと反応させて、ジエチルイミノジアセテート23を形成することができる。ジエチルイミノジアセテート23のジエステルを、適当な試薬(例えば、塩化チオニル)処理によって、二酸塩化物24に変換することができる。次に、二酸塩化物24を、例えば、アルキルアミン(例えば、メチルアミン)と反応させて、N−アルキルージ−ケトピペラジン25を形成することができる。次に、N−アルキル−ジ−ケトピペラジン25を還元してN−アルキル−ピペラジン26を形成することができる。次に、N−アルキル−ピペラジンをブロモ酢酸と反応させて、実施例7に示すように、活性エステル27に変換することができる。
【0101】
明らかにすべきことは、環置換ピペラジンを、グリシン以外のアミノ酸のエステル(例えば、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸等)またはブロモ酢酸の置換バージョンを単に選択することで、上記方法を用いて作ることができるということである。同様に明らかにすべきことは、アミノ酸ならびにブロモ酢酸(およびその置換誘導体)を、同重体的標識化試薬のセットを調整するために必要な同位体の所望の分布を持つ環置換ピペラジンの調製に適した方法で、同位体標識することができるということである。さらに明らかにすべきことは、アルキルジアミン、ヒドロキシルアルキルアミン、またはチオアルキルアミン、あるいはそれらの同位体標識されたバージョンを、アルキルアミンの代わりに選択することは、以下にさらに詳細に説明するように、支持体結合標識化試薬を生成するために用いることができるということである。
【0102】
方法のさらに別の実施形態では、試料混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式から構成される。すなわち、
【0103】
【化39】
式中、Zは、O、S、NH、またはNR1であり;各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素からなる群から選択され;各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含む炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。
【0104】
例えば、試料混合物は、以下の式で表される2種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0105】
【化40】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。この一般構造の標識分析物を生成するのに適した置換標識化試薬を、実施例8に記載した一般プロセスによって調製することができる。
【0106】
本発明のさらに別の実施形態では、標識化試薬のセットまたはキットを構成する各々の異なる標識化試薬が、各々の異なる試料が、異なる標識化試薬を担持する支持体と反応することができるように、切断可能なリンカーを介して支持体に結合することができる。いくつかの実施形態では、支持体は、それ自体、反応性分析物の標識化に用いられる。いくつかの実施形態では、標識化試薬を支持体から取り除き、いくつかの場合ではそれに続く加工の後(例えば、反応基の保護)、反応性分析物の標識化に用いることができる。
【0107】
いくつかの実施形態にもとづくと、試料の分析物が固体支持体と反応することができ(異なる固形の支持体と、したがって異なるレポーターと反応を起こしている各々の試料)、反応基と反応しない試料の樹脂結合構成要素を任意に洗い流すことができる。次に、1種類の標識分析物または複数の標識分析物を、切断可能なリンカーによって切断される条件下で支持体を処理することで、各固体支持体から除去し、それによって該支持体からレポーター/リンカー/分析物複合体を放出することができる。各支持体は、切断可能なリンカーを切断する条件下で同様に処理することができるので、それによって2種類以上の異なる試料が得られ、各々の試料が1種類以上の標識分析物を含んでいる。ここで、特定の試料に対応づけられた標識分析物は、それに結合した固有のレポーターによって同定および/または定量化される。次に、すでに述べたように、回収された試料を混合して試料混合物を形成することができる。
【0108】
例えば、すでに述べた方法で用いるセットの各々の異なる標識化試薬を、式:E−F−RP−X−LK−Y−RGの固体支持体とすることができる。式中、RG、X、Y、RP、およびLKについてはすでに説明している。Eは固体支持体であり、またFはレポーターに対して切断可能に結合し、かつ該固体支持体に結合した切断可能なリンカーである。この一般式の支持体は、実施例9に記載したように、調製することができる。
【0109】
いくつかの実施形態で、支持体結合標識化試薬のセットは、標識N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体をベースとすることができる。重および軽ピペラジン誘導体の両方を調製することができる。標識N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体は、例えば、N−アルキルアミンとしてアルキルジアミン、チオアルキルアミン、またはヒドロキシアルキルアミンにより開始される図11に示した手順を用いて、形成することができる(図11の議論を参照のこと。上記)。アルキルジアミン、チオアルキルアミン、またはヒドロキシアルキルアミンは、所望のN−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体の合成にとって適当である場合に、重または軽である。N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体のアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を必要に応じて保護することができる。アルキルジアミン、チオアルキルアミン、またはヒドロキシアルキルアミンを用いる場合、ピペラジンは、N−アミノアルキル、N−チオアルキル、またはN−ヒドロキシアルキル部分を含むことができる。ここで、この部分のアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を支持体上の切断可能なリンカーと反応させることで、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジン誘導体から調製したピペラジンを切断可能なかたちで支持体に結合させることができる。
【0110】
標識化試薬を含む支持体を、いくつかの方法のいずれかによって調製することができる。いくつかの実施形態では、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジンのアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を、適当な辞したいの切断可能なリンカーと反応させることができる。切断可能なリンカーは、「立体的に込み合った切断可能なリンカー(sterically hindered cleavable linker)」(実施例9を参照)である。ピペラジンを、標識化試薬のセットに求められる性質に依存している同位体標識または非同位体標識ハロ酢酸(置換または非置換)と、反応させることができる。その後、カルボン酸を活性エステルに変換することができる。活性エステルは、試料の分析物と反応して、支持体の標識化試薬によって分析物を標識することができる。切断可能なリンカーが切断されると、支持体から標識分析物が放出される。このプロセスは、標識化支持体のセットを構成する異なる支持体を調製するために、固有のピペラジンをベースとした標識化試薬により、繰り返される。
【0111】
いくつかの実施形態では、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジンは、同位体標識または非同位体標識されたハロ酢酸(置換または非置換)、もしくはそのエステルと最初に反応することができる。好ましくは、N−(アミノアルキル)、N−(チオアルキル)、またはN−(ヒドロキシアルキル)−ピペラジンのアミノ、ヒドロキシル、またはチオール基を、適当な保護試薬によって保護することができる(適当な保護基のリストについては、Green et al., Protecting Groups In Organic Synthesis, Third Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999を参照のこと)。結果として得られるビス−アルキル化ピペラジンの脱保護アミノ、チオール、またはヒドロキシル基は、次に適当な支持体の切断可能なリンカーと反応することができる。その後、カルボン酸が活性エステルに変換される。もしハロ酢酸化合物がエステルであったら、該エステルを活性エステルへの変換前に鹸化することができる。活性エステルを、試料の分析物と反応させて、支持体の標識化試薬で分析物を標識することができる。切断可能なリンカーが切断されると、支持体から標識分析物が放出される。このプロセスは、標識化支持体のセットを構成する異なる支持体を調製するために、固有のピペラジンをベースとした標識化試薬により、繰り返される。
【0112】
したがって、いくつかの実施形態では、標識化試薬のセットは1種類以上の以下の支持体結合標識試薬を含むことができる。すなわち、
【0113】
【化41】
式中、RG,E、およびFについては、すでに説明されている。本方法によれば、Gはアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、切断可能なリンカーに対して切断可能に結合しており、ここで、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を含み、ヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここでアルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。複素環の各炭素は、式CJ2を有し、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含む炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合された水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、標識分析物は、切断可能なリンカーを介して支持体と切断可能に結合した標識化試薬を含む支持体に、分析物を最初に反応させて、該標識分析物を支持体から切断することで、生成することができる。したがって、試料混合物は、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0115】
【化42】
式中、G’は、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素および/または重水素を含む。複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択される。各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む。ここで、アルキルアミン基、ヒドロキシアルキル基、またはチオアルキル基を、固体支持体の切断可能なリンカーに結合した部分とすることができる。本明細書に記載の方法によって、各切断反応の産物を結合させて、標識分析物の分析に適した試料混合物を生成することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、試料の分析物を標識する前に、該試料の構成要素を部分的または完全に分解する少なくとも1種類の酵素によって、各試料を消化する工程を、さらに含むことができる(「試料加工」と題された上記セクションも参照のこと)。例えば、酵素を、プロテアーゼ(タンパク質およびペプチドを分解するため)またはヌクレアーゼ(核酸を分解するため)とすることができる。また、複数の酵素を一緒に用いることで、試料構成要素を分解してもよい。酵素を、タンパク質分解酵素、例えばトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCとすることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の質量分析の実施に先立って、試料混合物を分離する工程を、さらに含むことができる(「試料混合物の分離」と題された上記セクションも参照のこと)。このようにして、第1の質量分析は、試料混合物のフラクションのみで実行される。任意の分離方法で、上記分離を実施することができ、該分離方法として、クロマトグラフィーまたは電気泳動が挙げられる。例えば、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いて、そのような試料分離および質量分析をおこなうことができる。さらに、目的とする分析物を分離するのに適した任意のクロマトグラフィー分離プロセスを用いることができる。本明細書では、適当なクロマトグラフィーおよび電気泳動分離プロセスの非限定的例を説明している。
【0118】
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、試料構成要素を分解する酵素処理および分離工程の両方を含むことができる。
【0119】
すでに説明したように、娘フラグメント・イオンの総質量を分析することで、選択されたイオンが対応づけられた分析物を測定することが可能である。そのような測定方法の一つは、「コンピュータ支援データベース分析による分析物測定」と題されたセクションで説明されている。ひとたび分析物が測定されると、第2の質量分析での各レポーター部分の総質量および相対量と娘フラグメント・イオンの総質量とに関する情報が、試料混合物に関する他の情報を判断する基礎を提供する。レポーターの量を、質量スペクトルでのピーク強度によって測定することができる。いくつかの実施形態では、質量分析計を用いて得られるレポーター(サイン・イオン)のピーク高さまたはピーク幅の分析よって、レポーター量を測定することができる。各試料を異なる標識化試薬で標識することができ、また各標識化試薬が特定の試料と相関することができる固有のレポーターを含むことができることから、第2の質量分析での異なるレポーターの測定が、選択された分析物のイオンが由来する試料を同定する。多数のレポーターが見つかる場合(例えば、本発明の多重方法にもとづく)、他のレポーターに関する各レポーターの相対量を決定することができる。第2の質量分析で測定された各レポーターの相対量は、試料混合物に含まれる分析物の相対量と相関するので、試料混合物を形成するために組み合わさった各試料での分析物の相対量(しばしば濃度および/または分量で表される)を測定することができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、先に述べたように、自然に生ずる、または人工的に生成される同位体存在度について、実施することができる。より具体的には、試料混合物に結合される各試料の容積および/または分量が知られている場合、各試料の相対量(しばしば濃度および/または分量として表される)を、第2の質量分析で測定された各レポーターの相対量に基づいて計算することができる。この分析は、異なる質量電荷比の選択されたイオン上で1回以上繰り返され、それによって、組み合わさって試料混合物を形成する各試料に含まれる1種類以上の別の分析物の相対量を得ることができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、天然に生ずる、または人工的に生成した同位体存在度について、実行される。
【0120】
あるいは、選択された質量電荷比を持つ分析物に結合した固有のレポーターを含む較正基準が既知量(しばしば濃度/または分量として表される)で試料混合物に加えられる場合、較正基準に対応づけられた固有のレポーターの量は、組み合わさって試料混合物を形成する試料の各分析物の絶対量(しばしば濃度および/または分量として表される)を決定するために用いることができる。このことは可能である。なぜなら、較正基準用のレポーターに対応づけられた分析物の量が知られており、また他のレポーターのすべての相対量を、選択されたイオンに対応づけられた標識分析物に対して、測定することができる。固有のレポーター(較正基準用のレポーターを含む)の各々に対して測定されたレポーターの相対量が、組み合わさって試料混合物を形成する各試料に対応づけられた分析物の量に比例することから、各々の試料に含まれる分析物の絶対量(しばしば濃度および/または分量として表される)を、試料混合物を生成するために用いられる処方に対して計算された比率に応じて、測定することができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、天然に生じる、または人工的に生成した同位体対依存度について、実行される。
【0121】
この分析を、異なる質量電荷比の選択されたイオンに対して1回以上繰り返すことで、組み合わさって試料混合物を形成する各々の試料に含まれる1種類以上の別の分析物の絶対量を得ることができる。必要に応じて、レポーターに対応づけられたピーク強度の補正は、天然に生じる、または人工的に生成した同位体対依存度について、実行される。
【0122】
いくつかの実施形態では、上記方法は、消化および/または分離工程でおこなうことができる。いくつかの実施形態で、消化および/または分離工程を含む、または含まない方法の工程を1回以上繰り返して、1つの試料に含まれる1種類以上の分析物あるいは2つ以上の試料(支持体結合標識化試薬で標識された試料を含む)に含まれる1種類以上の分析物を同定および/または定量することができる。較正基準が特定の分析物の試料混合物に存在するか否かに応じて、定量が他の標識分析物に関連づけられること、またはそれが絶対的である。そのような分析方法は、1つの複合的性質の多重試料のプロテオミックス分析にとって特に有用であり、特に標識分析物の予備的分離(例えば、液体クロマトグラフィーまたは電気泳動分離)が第1の質量分析に先立つ場合である。
【0123】
いくつかの実施形態では、試料または試料混合物に含まれるペプチドを分析物とすることができる。試料または試料混合物に含まれるペプチドの分析は、試料または試料混合物に含まれる識別可能なタンパク質の量(しばしば濃度および/または分量として表される)を測定するために用いられ、1種類以上の試料に含まれるタンパク質が第1の質量分析に先立って分解される。さらに、異なる試料から得た情報を、測定をおこなうために、例えば細胞増殖に影響する可能性のある物質の濃度を変えて培養する細胞内のタンパク質の量に対する効果の比較のために、比較することができる。他の非限定的例として、罹患または健康な組織または細胞培養物の発現タンパク質成分の比較が挙げられる。このことは、細菌もしくはウイルス等の病原体または他の疾患状態(例えば癌)等による感染後、細胞、組織、または生物学的液体の発現タンパク質レベルの比較を包含することが可能である。他の例では、時間経過(経時変化)に伴ったタンパク質濃度の変化に関する研究をおこなって、細胞または組織の発現タンパク質成分に対する薬物療法の効果を調べることが可能である。さらに別の例では経時的に採取された異なる試料から得られる情報を用いて、組織、器官、または生物学的液体の濃度を、疾患(例えば、癌)または感染の結果として、検出および監視することが可能である。
【0124】
いくつかの実施形態では、分析物は試料または試料混合物に含まれる核酸フラグメントである。核酸フラグメント上の情報は、試料または試料混合物に含まれる識別可能な核酸分子の量(しばしば濃度および/または分量として表される)を決定するために、用いられ、該試料を第1の質量分析に先立って分解した。さらに、異なる試料から得た情報は、上記したように測定をおこなう目的で比較することができる。
【0125】
(B.混合物)
いくつかの実施形態では、本発明は混合物(すなわち、試料混合物)に関する。混合物は、少なくとも2種類の差異的標識分析物を含むことができ、これら2種類の標識分析物の各々は異なる試料から生ずることができ、また式RP−X−LKーY−分析物を有する。各々の異なる標識について、混合物の標識分析物のいくつかが同一であり、該標識分析物のいくつかが異なる。原子、部分または結合、X、Y、RP、およびLKについては、すでに説明されており、またそれらの特性が開示された。混合物は、2種類以上の標識化反応の産物のすべてまたは一部を混合することによって、形成される。ここで、各標識化反応では、一般式RP−X−LK−Y−RGの異なる標識化試薬が用いられ、式中、原子、部分、または結合X、Y、RP、LK、RGについてはすでに説明されており、またそれらの特性が開示されている。標識化試薬は、同位体的にコード化された異性体的または同重体的標識化試薬である。各々の異なる標識化試薬の固有のレポーターは、2種類以上の標識分析物の各々がどの標識反応に由来するかについて指示することができる。標識化試薬は、異性体的または同重体的である。それゆえ、混合物の2種類以上の標識分析物は、異性体的または同重体的である。上記方法のいずれかに開示されるように、混合物は試料混合物である。それらの方法に対応づけられた1つの標識化試薬および複数の標識分析物の特性はすでに述べられている。
【0126】
混合物の分析物をペプチドとすることができる。混合物の分析物をタンパク質とすることができる。混合物の分析物をペプチドおよびタンパク質とすることができる。混合物の分析物を核酸分子とすることができる。混合物の分析物を炭水化物とすることができる。混合物の分析物を脂質とすることができる。混合物の分析物をステロイドとすることができる。混合物の分析物を1,500ダルトン未満の低分子とすることができる。混合物の分析物は、2種類以上の分析物種を含む。分析物種は、例えば、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、ステロイド、および/または1,500ダルトン未満の低分子から選択される。
【0127】
いくつかの実施形態では、各同重体的標識分析物の標識が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環であり、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む。複素環を、置換または非置換のものとすることができる。複素環を、脂肪族または芳香族のものとすることができる。複素環部分の可能な置換基として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、支持体に分析物を結合させるのに適した保護または非保護基、例えばアミン、ヒドロキシ、またはチオール基を含むことができる。複素環は、一つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子をさらに含むことができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、混合物の標識分析物は同重体および各々が以下の式を有する。すなわち、
【0129】
【化43】
式中、Z、J、およびWはすでに説明されており、それらの特性が開示されている。例えば、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含む。すなわち、
【0130】
【化44】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0132】
【化45】
式中、炭素13、酸素18、および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。いくつかの実施形態では、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0133】
【化46】
式中、炭素13、酸素18、および窒素15の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられ、式中、(1)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、また(2)各Kは、別々に、水素またはアミノ酸側鎖である。
【0134】
いくつかの実施形態では、混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式を有する。すなわち、
【0135】
【化47】
式中、Z、J、およびR1についてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。例えば、試料混合物は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0136】
【化48】
式中、炭素13および酸素18の同位体は、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0137】
別の実施形態では、標識分析物は、切断可能なリンカーを介して支持体と切断可能に結合した標識化試薬を含む支持体に、分析物を最初に反応させて、該標識分析物を支持体から切断することで、生成することができる。例えば、混合物の標識分析物は、以下の一般式を有する1種類以上の同重体である。すなわち、
【0138】
【化49】
式中、G’についてはすでに説明されており、その特性も開示されている。
【0139】
(C.キット)
いくつかの実施形態では、本発明はキットに関する。キットは、式:RP−X−LK−Y−RGの2種類以上の標識化試薬のセットおよび1種類以上の試薬、容器、酵素、緩衝液、および/または取扱説明書を含むことができる。原子、部分、結合X、Y、RP、LK、RGについてはすでに説明されており、またそれらの特性も開示されている。キットの標識化試薬を異性体的または同重体的なものとすることができる。キットの標準化試薬の他の特性も同様に開示されている。例えば、キットは、同一試料または2種類以上の異なる試料に含まれる1種類以上の分析物の多重化分析にとって有用である。
【0140】
いくつかの実施形態では、各同重体的標識分析物の標識が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環であり、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む。複素環を、置換または非置換のものとすることができる。複素環を、脂肪族または芳香族のものとすることができる。複素環部分の可能な置換基として、アルキル、アルコキシ、およびアリール基が挙げられる。置換基は、支持体に分析物を結合させるのに適した保護または非保護基、例えばアミン、ヒドロキシ、またはチオール基を含むことができる。複素環は、一つ以上の窒素、酸素、またはイオウ原子等のヘテロ原子をさらに含むことができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式を有する。すなわち、
【0142】
【化50】
式中、RG、Z、J、およびWについてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。例えば、キットの試薬は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0143】
【化51】
式中、RGは反応基であり、炭素13および酸素18の同重体が、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0144】
いくつかの実施形態では、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識試薬を含むことができる。すなわち、
【0145】
【化52】
式中、RGは反応基であり、炭素13、酸素18、および窒素15の同重体が、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、以下の式で表される1種類以上の同重体的標識試薬を含むことができる。すなわち、
【0147】
【化53】
式中、炭素13、酸素18、および窒素15の同重体が、異なる標識化試薬のモルホリン・レポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられ、式中、(1)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、また(2)各Kは、別々に、水素またはアミノ酸側鎖である。さらに別の実施形態では、混合物の標識分析物は同重体であり、各々が以下の式を有する。すなわち、
【0148】
【化54】
式中、RG、Z、J、およびR1についてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。例えば、キットの試薬は以下の式で表される1種類以上の同重体的標識分析物を含むことができる。すなわち、
【0149】
【化55】
式中、RGは反応基であり、炭素13および酸素18の同位体が、異なる標識化試薬のレポーターとカルボニル・リンカーとのあいだの総質量を釣り合わせるために用いられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本発明は、支持体のセット1種類以上を含む複数のキットに関するもので、各支持体は、切断可能なリンカーを介して支持体に切断可能に結合した異なる標識化試薬を含む。例えば、切断可能なリンカーは、化学的または光分解的に切断可能である。支持体は、異なる試料と反応することができ、それによって試料の分析物を同一のレポーター/リンカーで標識することができ、また異なる試料の分析物を異なるレポーター/リンカー組み合わせで標識することができる。本発明の実施形態で使用しうるセットの支持体は、一般式:E−F−G−RP−X−LK−Y−RGを有し、識名か、E、F、G、RP、X、LK、Y、およびRGについてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。上記セットの各々の異なる支持体は、固有のレポーターを含むことができる。
【0151】
例えば、キットの支持体は以下の式で表される2種類以上の試薬支持体を含むことができる。すなわち、
【0152】
【化56】
式中、E、F、G、およびRGについてはすでに説明されており、それらの特性も開示されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、キットはタンパク質分解酵素を含む。タンパク質分解酵素をトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCとすることができる。いくつかの実施形態では、キットは、標識化試薬を用いて異なる試料の分析物を差異的に標識するための取扱説明書を含むことができる。
【0154】
(D.組成物)
複数の実施形態では、本発明は、標識化試薬として用いることができる組成物に関する。該組成物は、式RP−X−LK−Y−RGの標識化試薬でありえ、式中、原子、部分、または結合X,Y、RP、LK、RGは、先述しており、それらの特性は開示した。標識化試薬は、異性体的または同重体的でありうる。標識化試薬の他の特性も同様に開示した。例えば、標識化試薬は、同じ試料中または2種類以上の異なる試料中の1種類以上の分析物の多重化分析に有用である。
【0155】
標識化試薬は、少なくとも1種類の重原子同位体で同位体的にエンリッチ(コード)されうる。標識化試薬は、同位体的にエンリッチされ、2種類以上の重原子同位体を含むことができる。標識化試薬は、同位体的にエンリッチされ、3種類以上の重原子同位体を含むことができる。標識化試薬は、同位体的にエンリッチされ、4種類以上の重原子同位体を含むことができる。複数の実施形態では、少なくとも1種類の重原子同位体を標識化試薬のカルボニルまたはチオカルボニル基に組み込み、少なくとも1種類の他の重原子同位体を標識化試薬のレポーターの基に組み込む。
【0156】
組み込まれる重原子同位体の各々は、少なくとも80%の同位体純度で存在することができる。組み込まれる重原子同位体の各々は、少なくとも93%の同位体純度で存在することができる。組み込まれる重原子同位体の各々は、少なくとも96%の同位体純度で存在することができる。
【0157】
標識化試薬は、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター基を含む。したがって、レポーター基は、容易にイオン化される塩基性または酸性部分を含むことができる。複数の実施形態では、レポーターは、モルホリン、ピペリジン、またはピペラジン化合物でありうる。複数の実施形態では、レポーターは、カルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基含有化合物でありうる。したがって、複数の実施形態では、標識化試薬をそれらの塩形態で単離することができる。例えば、ピペラジン含有標識化試薬をモノTFA塩、モノHCl塩、ビスTFA塩、またはビスHCl塩として得ることができる。標識化試薬中に存在する対イオンの数は、標識化試薬中に存在する酸性および/または塩基性基の数に依存しうる。
【0158】
複数の実施形態では、標識化試薬は、カルボニルまたはチオカルボニル・リンカーを含むことができる。カルボニルまたはチオカルボニル・リンカーを含む標識化試薬を、分析物の標識のために、活性エステル形態で用いることができる。活性エステルでは、アルコール基は、脱離基(LG)を形成する。複数の実施形態では、活性エステルのアルコール(LG)は、式
【0159】
【化57】
を有することができ、式中、Xは、OまたはSである。活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルでありうる。
【0160】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して活性エステルのアルコール部分が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環でありえ、ここで、該化合物は、1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされる。活性エステルの複素環は、1個以上の置換基で置換されうる。1個以上の置換基は、アルキル、アルコキシ、またはアリール基でありうる。1個以上の置換基は、アルキルアミン、アルキルヒドロキシ、またはアルキルチオ基でありうる。1個以上の置換基は、保護または非保護のアミン基、ヒドロキシ基、またはチオール基でありうる。複素環は、脂肪族でありうる。複素環は芳香族でありうる。複素環は、1個以上の付加的な窒素、酸素、またはイオウ原子を含むことができる。
【0161】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、式
【0162】
【化58】
のN−置換モルホリン酢酸活性エステル化合物またはその塩でありえ、式中、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素でありうる。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、メチル、またはメトキシでありうる。複数の実施形態では、Xは、16Oまたは18Oである。モルホリンの環の窒素原子は、14Nまたは15Nでありうる。複数の実施形態では、活性エステルは、式
【0163】
【化59】
を含む化合物であり、式中、各C*は、別々に、12Cまたは13Cであり、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。
【0164】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、式
【0165】
【化60】
のN−置換ピペリジン酢酸活性エステル化合物またはその塩でありえ、式中、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素でありうる。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、メチル、またはメトキシでありうる。複数の実施形態では、Xは、16Oまたは18Oである。ピペリジンの環の窒素原子は、14Nまたは15Nでありうる。複数の実施形態では、活性エステルは、式
【0166】
【化61】
を含む化合物であり、式中、各C*は、別々に、12Cまたは13Cであり、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。
【0167】
複数の実施形態では、活性エステル化合物は、式
【0168】
【化62】
のN−置換ピペリジン酢酸活性エステル化合物またはその塩であり、式中、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、Pgは、アミン保護基であり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素でありうる。複数の実施形態では、Zは、別々に、水素、メチル、またはメトキシでありうる。複数の実施形態では、Xは、16Oまたは18Oである。ピペラジンの環の窒素原子は、14Nまたは15Nでありうる。複数の実施形態では、活性エステルは、式
【0169】
【化63】
を含む化合物であり、式中、各C*は、別々に、12Cまたは13Cであり、LGは、活性エステルの脱離基であり、Xは、OまたはSであり、Pgは、アミン保護基であり、各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む。
【0170】
本発明の実施形態を説明してきたが、この概念を包含した他の実施形態を用いることが可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、これらの実施形態は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、むしろ本発明の精神および範囲によってのみ限定されるべきものであると考えられる。
【実施例】
【0171】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0172】
(実施例1 モルホリン酢酸の合成)
ブロモ酢酸(2g、14.4mole)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、テトラヒドロフラン(THF、20mL)中のモルホリン(3.76g、43.2mole)の攪拌した溶液に滴下した。溶液を室温で3日間攪拌した。白色の固体(4.17g)を濾過し、THF(100mL)で洗浄し、温エタノール(EtOH)から再結晶化した(収率2.59g、IR1740cm−1)。2種類の異なる同重体型のモルホリン酢酸に対して、ブロモアセティック−1−13Cアシッド(bromoacetic−1−13C acid)(Aldrich PN 27,933−1)またはブロモアセティック−2−13Cアシッド(bromoacetic−2−13C acid)(Aldrich PN 27,935−8)のいずれかをブロモ酢酸と置換した。
【0173】
(実施例2 モルホリン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成)
ジメチルホルムアミド(乾燥、1.75g、0.024M)をテトラヒドロフラン(乾燥、30mLs)に溶解した。この溶液を、テトラヒドロフラン(乾燥、20mLs)に溶解した塩化チオニル(2.85g、0.024M)の攪拌した溶液に滴下し、氷浴で冷却した。添加の完了および氷上での30分後に、氷浴を除去し、固形N−ヒドロキシスクシンイミド(2g、0.017M)を添加(完全に溶解させる)し、その後即座に、固形粉末前モルホリン酢酸(または1−13Cもしくは−2−13Cモルホリン酢酸)(3.64g、0.016M)を添加した。モルホリン酢酸は徐々に溶解し、急速に白濁する均一な溶液を得た。室温で一晩、激しく攪拌しながら反応させた。白色固体をテトラヒドロフランで洗浄し、真空乾燥させた(重量3.65g(67%)、IRスペクトル1828.0cm−1、1790.0cm−1、1736.0cm−1)。
【0174】
(実施例3 2種類の試料での分析物測定および相対的定量化)
氷上で30分間、氷冷0.5M MOPS緩衝液(NaOHを有してpH7.8、)中で、凍結乾燥Glu−フィブリノペプチドB(Glu−Fibrinopeptide B)(Sigma)100pmole量を、IまたはII(構造に関しては図1A、調製に関しては実施例1および2を参照)いずれかの新たに作製した2%w/v溶液200μlと反応させた。0.5%v/v最終濃度になるようにTFAを添加して、反応を停止させた。その後、修飾ペプチドを、差次的標識ペプチドの1:1ないし10:1範囲をほぼ網羅する種々の所定の比率で混合した。ミリポアC18ジップ−チップ(Millipore C18 Zip−Tip)を用いた逆相脱塩によって、各ペプチド混合物を個々に精製した。過剰な試薬および緩衝液は、逆相パッキング上に保持されないので、MS分析前に効率的に除去された。その後、混合物(0.5μl)をMALDIターゲット・プレート上にスポッティングし、50%中の水性アセトニトリル中で1%w/vα−シアノケイ皮酸0.5μlを用いてオーバー・スポッティングし、QTOF分析計に装着したMALDI源を用いて各試料を分析した。
【0175】
図2は、試薬IおよびIIで修飾されたGlu−フィブリノペプチドの1:1混合から得られたMSスペクトルの拡大プロットである。m/z1699でのピークは、Glu−フィブリノペプチドのN−末端修飾質量を表し、予想したように、2種類の異なる形態のペプチド(図1A(III)および1A(IV)参照)のm/zでは観測可能な差異はない。修飾ペプチドは同重体的である。ピークに対して観測された同位体クラスタは、厳密に、単一種に関して予測したとおりである。
【0176】
その後、m/z1699の単一荷電前駆イオンを低エネルギーCID(約−70Vの衝突オフセット)によるフラグメンテーション用に選択し、図3で見出されるMS/MSスペクトルを生成した。予想したように、観測されたイオン系列は、圧倒的に、b型およびy型であった。これらのイオン全ては、差次的標識ペプチド種の1:1混合物を含むことは確認されずに、単一種として生じた。例えば、m/z1056.5で有数のyイオンの拡大を図4として拡大プロットに示し、m/z886.3での有数のbイオンを図5として拡大プロットに示す。
【0177】
しかし、約100m/zでのスペクトル(図6)の精密検査によって、種VIIおよびVIII(図1B)両方の存在が明らかになり、それらはそれぞれ、種VおよびVI(図1B)のフラグメンテーション産物である。m/z128.1でピークが観測されないことによって、種VおよびVIは観測するために十分に安定していないことが示される。したがって、この例では、ペプチドのカルボニル基とアミノ末端アミノ酸との間のアミド結合(例えば、結合Y)のフラグメンテーションによって、レポーター/リンカー部分(結合X)のその後のフラグメンテーションおよびニュートラルCOとしてのカルボニル部分のロスを生じる可能性がある。機器に備わった計測手段を用いてピーク統合を実行した。約6%の天然に生ずる第2のC−13同位体の寄与に対する補正後に、VIII/VII(101/100)の測定された相対比は1.03であった(予測値1.00)。表1は、天然に生ずる第2のC−13の寄与に対する補正で調整した追加の実験混合物に対する実測比対観測比を示す(強度m/z101/m/z100として表される比)。このデータを図7でグラフとしても表す。観測値と予測値との間には平均誤差<10%の優れた一致がある。
【0178】
【表1】
(実施例4 プロテオーム分析)
実践上は、代表的なプロテオーム分析を以下のように実行することができる。比較のための全細胞タンパク質抽出物(例えば、試料AおよびB)を、別々に、トリプシンまたは別のタンパク質分解酵素で消化する。得られたペプチド混合物を、別々に、異なる異性体または同重体標識化試薬(例えば、化合物IおよびII)と反応させ、ペプチドのN末端およびリジンアミンの完全修飾をおこなう。例えば、試料Aを化合物Iと反応させることができ、試料Bを化合物IIと反応させることができる。その後、修飾ペプチド/タンパク質を含有する試料の各々をまとめて混合した後、クロマトグラフィー分離(多くの場合、多次元HPLCを用いて)をおこない、MSおよびMS/MS技術によって分析する。基が同重体的であるとき、単一の標識処理(第2の試薬を用いたリジン基の事前のブロッキングは必要ではない)を用いて標識を実行することができる。
その後、標識タンパク質/ペプチドの混合物をクロマトグラフィーによって分離し、溶出物またはその分画を上記実施例3に記載したように質量分析によって分析する。三連四重極質量分析計またはQトラップ質量分析計を用いて、有効な感度を有意に増加させることも可能であり、ここで、100よび101のm/z領域を前駆イオン・モードでモニタリングする。2つの「署名(signature)」ピークの相対比を、試料AおよびB各々の中の目的とするペプチド/タンパク質分析物各々の比と直接相関させる。本明細書で使用するように「署名(signature)」ピークとは、レポーターに対するピークである。
【0179】
(実施例5 内部基準を基準にした分析物測定および定量化)
比較のための全細胞タンパク質抽出物(例えば、試料AおよびB)を、別々に、トリプシンで消化する。得られたペプチド混合物を、別々に、XおよびXI(図8)と反応させ、上述のように、N末端およびリジンアミンの実質的に完全な修飾をおこなう。例えば、試料AペプチドをXと反応させ、試料BペプチドをXIと反応させる。その後、実質的に修飾されたペプチドを含有する試料AおよびBの既知量または各々をまとめて混合する。組み合わされたAおよびBの混合物に、試料AおよびBの混合物中に存在する可能性のあるペプチド(群)にアミノ酸配列および/または翻訳後修飾(例えば、リン酸化)で厳密に対応する合成ペプチド(群)のセット(1種類以上)を正確に測定された量で添加し、ここで、該合成ペプチド(群)を同重体標識化試薬のセットの別の構成要素(例えば、化合物XIIまたはXIII、図8参照)で標識する。試料A、試料B、および合成内部基準ペプチドに由来する組み合わされたペプチド混合物を、任意で、例えば多次元HPLCによってクロマトグラフィー分離するか、または電気泳動分離し、その後、MSおよびMS/MS技術によって、上述のように分析することができる。試料A、試料B,および同一配列の合成対応物に由来する等価物標識ペプチドの全ては、同重体的であり、実質的に同一のクロマトグラフィー特性を有する。「実質的に同一のクロマトグラフィー特性(substantially identical chromatographic property)」とは、差次的に標識されているが同一なペプチドの分離がたとえあるとしても、ほとんどおこなわれないことを意味する。MS/MS分析に続いて、同重体セットの付加的な構成要素(例えば、XIIまたはXIII)で標識された基準ペプチドに起因するレポーターの強度(「署名ピーク(signature peak)」を基準にして、X(試料A)およびXI(試料B)に対するレポーターの相対強度の比較によって、試料AおよびBに由来するペプチドの絶対濃度を正確に測定することが可能である。
【0180】
前述の事項は、2種類の試料(すなわち、試料AおよびB)に関する説明であるが、このプロセスは、多くの実用的な方法に当てはめることが可能である。例えば、標識化試薬の十分に幅広いセットがある場合、多数の試料を同時に分析することが可能である。
【0181】
二重(または、より多くの分析すべき試料がある場合は二重以上)の内部基準を存在させることが可能である(例えば、試料Aペプチドを、試薬XIIで標識された合成ペプチドで「スパイクする(spiked)」ことが可能であり、試料Bペプチドを、試薬XIII(既知の絶対濃度の)で標識された合成ペプチドでスパイクすることが可能である)。全てを上述のように組み合わせ、分離し、かつ分析する際は、試料Aペプチドを化合物XIIに対する署名ピークを基準にして定量化することができ、試料Bペプチドを化合物XIIIに対する署名ピークを基準にして定量化することができる。
【0182】
(実施例6 ピペリジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの典型的な合成)
ブロモ酢酸をテトラヒドロフラン(または別の好適な非求核性溶剤)に溶解し、テトラヒドロフラン(THF、またはたは別の好適な非求核性溶剤)中の過度のピペリジンを含有する攪拌した溶液に滴下する。溶液を室温で1ないし3日間攪拌する。固体を濾過し、THE(または別の好適な非求核性溶剤)で洗浄し、任意で再結晶化する。2種類の異なる同重体型のピペリジン酢酸に対して、ブロモアセティック−1−13Cアシッド(bromoacetic−1−13C acid)(Aldrich PN 27,933−1)またはブロモアセティック−2−13Cアシッド(bromoacetic−2−13C acid)(Aldrich PN 27,935−8)のいずれかをブロモ酢酸と置換する。異性体置換ピペリジンを好適な出発材料から調製することができ、またはケンブリッジ・アイソトープ・ラボラトリーズ(Cambridge Isotope Laboratories)またはアイソテック(Isotec)等のソースから特別注文ベースで入手することができる。
【0183】
N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル等の酢酸に酢酸誘導体を変換するために、ジメチルホルムアミド(DMF)をテトラヒドロフラン(または別の好適な非求核性溶剤)に溶解する。この溶液を、テトラヒドロフラン(または別の好適な非求核性溶剤)に溶解した等モル量の塩化チオニル(DMFのモル量にもとづいて)の攪拌した溶液に滴下し、氷浴で冷却する。添加の完了および氷上での30分後に、氷浴を除去し、固形N−ヒドロキシスクシンイミドを添加し、その後即座に、ピペリジン酢酸(または1−13Cもしくは−2−13Cピペリジン酢酸)を添加する。室温で一晩、激しく攪拌しながら反応させる。その後、産物ピペリジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、可能であれば濾過のみによって、反応混合物から単離する。任意で、再結晶化および/またはクロマトグラフィーを用いて、粗産物を精製することができる。
【0184】
(実施例7 ピペラジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの典型的な合成)
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した2等価物のピペラジンのを含有する溶液を、テトラヒドロフランに溶解した1等価物のブロモ酢酸(ピペラジンの量に対して)を含有する溶液に滴下する。この2つの溶液は、実用的であるように濃縮すべきである。得られた反応溶液を室温で1ないし3日間攪拌する。固体を濾過し、THEで洗浄し、任意で再結晶化する。2種類の異なる同重体型のピペリジン酢酸に対して、ブロモアセティック−1−13Cアシッド(bromoacetic−1−13C acid)(Aldrich PN 27,933−1)またはブロモアセティック−2−13Cアシッド(bromoacetic−2−13C acid)(Aldrich PN 27,935−8)のいずれかをブロモ酢酸と置換する。
【0185】
N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル等の活性エステルに酢酸誘導体を変換するために、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF、1.75g、0.024M)をテトラヒドロフランに溶解することができる。この溶液を、テトラヒドロフランに溶解した等モル量の塩化チオニル(DMFのモル量にもとづいて)の攪拌した溶液に滴下し、氷浴で冷却することができる。添加の完了および氷上での30分後に、氷浴を除去し、固形N−ヒドロキシスクシンイミドを添加し、その後即座に、ピペラジン酢酸(または1−13Cもしくは−2−13Cピペリジン酢酸)を添加することができる。室温で一晩、激しく攪拌しながら反応させることができる。その後、産物ピペラジン酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、可能であれば濾過のみによって、反応混合物から単離することができる。その後、再結晶化および/またはクロマトグラフィーを用いて、粗産物を精製することができる。
【0186】
(実施例8 N,N′−(2−メトキシエチル)−グリシン活性エステルの典型的な合成(米国特許第6,326,479号からの転写))
ビス(2−メトキシエチル)アミン(Aldrich Chemical)1.1moleに、tert−ブチルクロロアセテート(Aldrich Chemical)500mmolを滴下した。3日間攪拌して、その後反応を生じさせた。最終反応内容物に、ジクロロメタン(DCM)250mLおよび水200mLを添加した。この攪拌溶液に、部分的に、固形炭酸カリウム(K2CO3)300mmolを添加した。混合が完了した後に、層を分離した。DCM層を1容量の水で1回洗浄して、乾燥させ(Na2SO4)、濾過および気化し、非常に薄黄色の油66.3gを得た。この粗産物を60℃でKugelrohrで蒸留し(200ないし500μM Hg)、無色透明の油58.9g(238mmol、95%)を得た。
【0187】
精製した(攪拌)N,N′−(2−メトキシエチル)−グリシン−tert−ブチルエステルに、濃縮した塩酸12.1mLを徐々に添加した。一晩攪拌して、反応させ、その後、副産物(例えば、水、HCl、イソブチレン)を真空蒸発によって除去した。1H−MNR分析によって、t−ブチルエステルは加水分解されたことが示されたが、水およびHClは依然として存在していると考えられた。粗産物をアセトニトリル(ACN)から2回共気化したが、水およびHClは依然存在した。夾雑物を除去するために、4.4gアリコートを粗産物から取り出し、135ないし155℃でKugelrohrで蒸留した(蒸留開始後に急速に圧力が下降する100ないし200μM Hg)。収率4.2g(18.4mmol、濃縮の無色透明の油の95%回収)。蒸留した産物は、いずれの水またはHClも含有していなかった。
【0188】
その後、任意の好適な同位体的に標識された置換または非置換のN,N′−(2−メトキシエチル)−グリシンの活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を本明細書に記載される方法等の当該技術分野で公知の方法によって調製することができる。
【0189】
(実施例9 標識化/タグ化試薬を含む固体支持体を調製するための典型的な方法)
「立体障害された切断可能なリンカー(sterically hindered cleavable linker)」を含む市販のペプチド合成樹脂を、少なくとも2倍過剰なアミノアルキルピペラジン(例えば、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、Aldrich P/N A5,520−9、本明細書内の記載と組合させて図11に説明されるプロセスによって異性体型を作製することができる)と反応させる。「立体障害された切断可能なリンカー(sterically hindered cleavable linker)」とは、リンカーが、固体支持体と切断可能なリンカーに反応する原子または基との間の切断可能な共有結合を形成する第2級または第3級原子を含むことを意味する。立体障害された固体支持体の非限定的例としては、塩化トリチル樹脂(トリチル−Cl、Novabiochem,P/N 01−64−0074)、2−クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0021)、DHPP(Bachem,P/N Q−1755)、MBHA(Applied Biosystems P/N 400377)、4−メチルトリチルクロリド樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0075)、4−メトキシトリチルクロリド樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0076)、ヒドロキシ−(2−クロロフェニル)メチル−PS(Novabiochem,P/N 01−64−0345)、リンク・アシッド樹脂(Rink Acid Resin)(Novabiochem,P/N 01−64−0380および01−64−0202)、ノバシンTGT(NovaSyn TGT)アルコール樹脂(Novabiochem,P/N 01−64−0074)が挙げられる。その後、支持体を洗浄することによって、過剰な試薬を除去する。その後、トリエチルアミン等の第3級アミンの存在下で、支持体結合ピペラジンの第2級アミンを過度のブロモ酢酸と反応させる。その後、支持体を洗浄することによって、過剰な試薬を除去する。カルボン酸の活性エステルを生成するために使用する方法(例えば、活性エステルの合成に、カルボン酸の塩が必要であるか否か)に応じて、ビス−アルキル化ピペラジンの支持体結合カルボン酸基をプロトン化するために調整されるpHを有するように洗浄を選択することができる。その後、上記に記載される方法等の、カルボン酸の活性エステルの生成のための当該技術分野で公知の手順を用いて、支持体結合ピペラジンのカルボン酸基を活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)に変換する。その後、得られた固体支持体を用いて、求核性官能基を有する試料の分析物(例えば、ペプチド)を標識することができる。その後、製造元の製品指示書に記載されるように、標識分析物を支持体から遊離させることができる。その後、各切断反応の産物を組み合わせて、試料混合物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1A】図1Aは、分析物と2種類の同重体的標識化試薬(例えば、化合物IおよびII)との反応を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した標識分析物のフラグメンテーションを示すもので、該フラグメンテーションによって、同重体的標識分析物から異なる質量のレポーター部分(例えば、サイン・イオンとしての化合物VIIおよびVIII)が生成される。
【図2】図2は、標識分析物の質量スペクトル拡大プロットである。
【図3】図3は、図2の拡大プロットで同定された選択標識分析物の第2の質量分析から得られた完全な質量スペクトルである。
【図4】図4は、第2の質量分析で測定された分析物の優勢yイオン娘フラグメント・イオンの質量スペクトルの拡大プロットである。
【図5】図5は、第2の質量分析で測定された分析物の優勢bイオン娘フラグメント・イオンの質量スペクトルの拡大プロットである。
【図6】図6は、第2の質量分析で測定された2つのレポーター(すなわち、サイン・イオン)の質量スペクトルの拡大プロットである。
【図7】図7は、標識ペプチドの種々の混合物に対する第2の質量分析によって測定されたレポーターの観察比対予測比のプロットであり、その混合物の各々のペプチドが2つの異なるレポーターのいずれか1つを含む。
【図8】図8は、同一の同位体(化合物X〜XIII)と異なる同位体(化合物XV〜XVIII)とを用いた2通りの同重体的標識化試薬セットを示すもので、それによって、該セット内で総質量が異なるレポーター部分を有するが、同一総質量のレポーター/リンカー部分が達成されえる。
【図9A】図9Aは、元の出発原料から同位体標識ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。このルートは、非同位体標識出発原料が用いられる非同位体標識ピペラジン試薬の調製に用いることもできる。
【図9B】図9Bは、元の出発原料から同位体標識ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。このルートは、非同位体標識出発原料が用いられる非同位体標識ピペラジン試薬の調製に用いることもできる。
【図10】図10は、元の出発原料から同位体標識および非同位体標識N−アルキル・ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。
【図11】図11は、元の出発原料から同位体標識および非同位体標識N−アルキル・ピペラジン標識化試薬を合成する合成経路を示す。
【図12】図12は、出発原料から同位体標識および非同位体標識ピペラジン標識化試薬を合成する固相をベースとした合成経路を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RG
またはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成し、ここで、RPは、
i)250ダルトン未満の総質量を有し、かつ/または、
ii)質量分析計で標識分析物の結合XおよびY両方の少なくとも一部のフラグメンテーションを起こさせるために印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブ・フラグメント化が起こらず、かつ/または、
iii)ポリマーではないか、または生体ポリマーではない、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RGまたはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成し、ここで、前記リンカーLKは、質量分析計で結合XおよびY両方のフラグメンテーションを起こす印加された解離エネルギーの条件下で、ニュートラル・ロスを受ける工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RGまたはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合することによって、試料混合物を生成する工程、
を包含し、
質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合XまたはYの一方のフラグメンテーションが結合XまたはYの他方のフラグメンテーションを誘導することを特徴とする、方法。
【請求項4】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、ここで、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:RP−X−LK−Y−RG
またはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成する工程、
を包含し、
i)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、結合Yに比べてフラグメンテーションの傾向が少なく、かつ/または
ii)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、Z−proアミノ酸ダイマーまたはZ−aspアミノ酸ダイマーのペプチド結合と比べて、フラグメンテーションの傾向が少なく、ここで、Zは、任意の天然アミノ酸であり、proは、プロリンであり、aspは、アスパラギン酸であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RGまたはその塩、
(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、
a)前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、かつ
b)前記リンカーは、少なくとも1種類の重原子同位体を含み、以下の式:
【化1】
を有し、
式中、R1は、同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とし、前記アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここで前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させる)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成する工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
以下:
c)前記試料混合物またはその分画上で第1の質量分析を実行する工程;
d)前記第1の質量分析で選択された標識分析物のイオンを解離エネルギー・レベルにさらすことによって、イオン化されたレポーター部分と、少なくとも複数の前記選択されたイオンのイオン化された娘フラグメント・イオンとを形成する工程;ならびに
e)前記選択されたイオン、前記イオン化されたレポーター部分、および前記娘フラグメント・イオン、またはそれらの分画上で第2の質量分析を実行する工程、
をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下:
f)前記第2の質量分析で、各レポーター部分の総質量および相対量と、前記娘フラグメント・イオンの総質量とを測定する工程、
をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)ないし(f)を1回以上繰り返し、各回が前記試料混合物の異なる分画を用いることをさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記2種類以上の試料が酵素的消化反応の産物である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記2種類以上の試料がタンパク質分解酵素的消化反応の産物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各試料が粗または加工済みの細胞溶解物、体液、組織抽出物、あるいは細胞抽出物である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
各試料が分離プロセスから得た分画である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記分離プロセスがクロマトグラフィー分離または電気泳動分離である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記体液が血液、尿、髄液、脳脊髄液、羊水、リンパ液、または腺分泌液である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記1種類以上の分析物がタンパク質、核酸分子、炭化水素、脂質、ステロイド、または1500ダルトン未満の低分子である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記1種類以上の分析物がペプチドである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドが少なくとも1種類のタンパク質の消化によって形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが粗細胞溶解物の全タンパク質成分の消化によって形成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記セットの各試薬の前記反応基が前記反応性分析物との反応のためにin situで調製される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記セットの前記各試薬の前記反応基が、水溶性カルボジイミドで活性化されたカルボン酸基である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶性カルボジイミドが1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3エチルカルボジイミドハイドロクロリド(EDC)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記セットの各試薬の前記反応基がアミン反応性の活性エステル基である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記活性エステルがN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、または2,4−ジハロフェニルエステルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記セットの各試薬の前記反応基がチオール反応求電子性基である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記チオール反応基がマレイミド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、およびα−ハロアシルからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記セットの各試薬の前記反応基がヒドロキシル反応求電子性基である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
各試薬の前記反応基がアミン基、ヒドロキシル基、またはチオール基からなる群から選択される求核性試薬である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記レポーターが置換または非置換のモルホリン、ピペリジン、またはピペラジン化合物、あるいはそれらの塩である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記レポーターがカルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基含有化合物、あるいはそれらの塩である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記レポーター部分が、前記分析物を測定するために用いられる条件下で、実質的にサブ・フラグメント化を起こさないことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記レポーター部分が生体ポリマーではないことを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記レポーター部分がポリマーではないことを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記リンカーがカルボニルまたはチオカルボニル基である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記リンカーがポリマーまたはバイオポリマー部分である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリマー部分がサブ・フラグメント化することができる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1種類以上の差次的標識分析物の各々が、前記差次的標識分析物をもたらす前記試料を同定する異性体的標識を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1種類以上の差次的標識分析物の各々が、前記差次的標識分析物をもたらす前記試料を同定する同重体的標識を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
各同重体的標識分析物の前記標識が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して前記分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環であり、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記試料混合物中の前記同重体的標識分析物の各々が、以下の式:
【化2】
を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、
c)Wは、前記環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSであり、
d)前記複素環の各炭素は、式CJ2を有し、
e)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
f)R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または前記試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記同重体的標識分析物がペプチドである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記試料混合物が、以下の式:
【化3】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記試料混合物が、以下の式:
【化4】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記試料混合物が、以下の式:
【化5】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記試料混合物が、以下の式:
【化6】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、
a)G’は、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基であり、ここで、前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
b)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記試料混合物中の前記同重体的標識分析物の各々が、以下の式:
【化7】
を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記同重体的標識分析物がペプチドである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記試料混合物が、以下の式:
【化8】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記セットの各異なる標識化試薬が支持体結合性であり、異なる標識化試薬を保持する支持体と各異なる試料を反応させるように切断可能なリンカーを介して前記支持体に結合され結合され、かつ、前記方法は、工程(b)を実行する前に、
i)任意で樹脂を洗浄し、前記標識化試薬の前記反応基と反応しない前記試料の成分を除去する工程;および
ii)前記切断可能なリンカーを切断する工程であって、該工程によって、各々の試料が1種類以上の標識分析物を含む前記2種類以上の差次的標識試料を回収する、工程、
をさらに包含し、
特定の試料に関連する前記標識分析物が、そこに結合する固有の前記レポーターによって同定可能および/定量可能である、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記セットの各異なる標識化試薬が、以下の式:
E−F−RP−X−LK−Y−RG
の固体支持体であり、
式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
vii)Eは、固体支持体であり、
viii)Fは、前記固体支持体へ結合され、かつ前記レポーターへ切断可能に結合される切断可能なリンカーである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
標識化試薬の前記セットが、1種類以上の以下の支持体結合標識化試薬、すなわち、
【化9】
を含み、
式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)Eは、固体支持体であり、
iii)Fは、前記固体支持体へ結合され、かつ前記レポーターへ切断可能に結合される切断可能なリンカーであり、
iv)Gは、前記切断可能なリンカーに切断可能に結合させるアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
v)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
vi)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記支持体がポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、ガラス、シリカ、制御多孔性ガラス(CPG)、または逆相シリカから構成される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記固体支持体がビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、膜、または面状である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
以下:
c)工程a)を実行する前に、各試料を少なくとも1種類の酵素で消化して、前記試料の成分を部分的または完全に分解する工程、をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記酵素がタンパク質分解酵素である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記タンパク質分解酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記方法が、以下:
c)前記試料混合物を分離する工程、
をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記分離がクロマトグラフィーによって実行される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記クロマトグラフィー分離の方法が順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記分離が電気泳動によっておこなわれる、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記電気泳動分離が1次元電気泳動分離、2次元電気泳動分離、またはキャピラリー電気泳動分離である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記方法が、以下:
c)工程a)を実行する前に、各試料を少なくとも1種類の酵素で消化して、前記試料の成分を部分的または完全に分解する工程;および
d)前記試料混合物を分離する工程、
をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記酵素がタンパク質分解酵素である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記タンパク質分解酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記分離がクロマトグラフィーによって実行される、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記クロマトグラフィー分離の方法が順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記分離が電気泳動分離である、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記電気泳動分離が1次元電気泳動分離、2次元電気泳動分離、またはキャピラリー電気泳動分離である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
電荷比に対する選択された質量に関連する前記標識分析物の同一性が前記娘フラグメント・イオンの分析によって測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項71】
前記第2の質量分析での各レポーターの相対量が他のレポーターを基準にして測定される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記同定された分析物に関連する各レポーターの相対量を、前記試料混合物を形成するために添加される各試料の量に相関させることによって、前記混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記分析物の相対量を測定する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
(i)前記試料混合物が前記同定された分析物に対する既知量の較正基準を含み、各レポーターの絶対量が前記較正基準に関連するレポーターの量を基準にして測定され、
(ii)前記試料混合物の各異なる試料中の前記同定された分析物の絶対量が各レポーターの量を基準にして測定される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の相対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の絶対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および相対量にもとづいて測定される、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および絶対量にもとづいて測定される、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
以下:
c)工程(a)を実行する前に、各試料を少なくとも1種類の酵素で消化して、前記試料の成分を部分的または完全に分解する工程;および
d)工程(c)を実行する前に、前記試料混合物を分離する工程、
をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項79】
前記酵素がタンパク質分解酵素である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記タンパク質分解酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記分離がクロマトグラフィーによって実行される、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記クロマトグラフィー分離の方法が順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記分離が電気泳動分離である、請求項78に記載の方法。
【請求項84】
前記電気泳動分離が1次元電気泳動分離、2次元電気泳動分離、またはキャピラリー電気泳動分離である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
電荷比に対する選択された質量に関連する前記標識分析物の同一性が前記娘フラグメント・イオンの分析によって測定される、請求項78に記載の方法。
【請求項86】
前記第2の質量分析での各レポーターの相対量が他のレポーターを基準にして測定される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記同定された分析物に関連する各レポーターの相対量を、前記試料混合物を形成するために添加される各試料の量に相関させることによって、前記混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記分析物の相対量を測定する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
(i)前記試料混合物が前記同定された分析物に対する既知量の較正基準を含み、各レポーターの絶対量が前記較正基準に関連するレポーターの量を基準にして測定され、
(ii)前記試料混合物の各異なる試料中の前記同定された分析物の絶対量が各レポーターの量を基準にして測定される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の相対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の絶対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および相対量にもとづいて測定される、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および絶対量にもとづいて測定される、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、RPは、
i)250ダルトン未満の総質量を有し、かつ/または、
ii)質量分析計で標識分析物の結合XおよびY両方の少なくとも一部のフラグメンテーションを起こさせるために印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブ・フラグメント化が起こらず、かつ/または、
iii)ポリマーではないか、または生体ポリマーではない、混合物。
【請求項94】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、前記リンカーLKは、質量分析計で結合XおよびY両方のフラグメンテーションを起こす印加された解離エネルギーの条件下で、ニュートラル・ロスを受ける、混合物。
【請求項95】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合XまたはYの一方のフラグメンテーションが結合XまたはYの他方のフラグメンテーションを誘導する、混合物。
【請求項96】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、
i)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、結合Yに比べてフラグメンテーションの傾向が少なく、かつ/または
ii)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、Z−proアミノ酸ダイマーまたはZ−aspアミノ酸ダイマーのペプチド結合と比べて、フラグメンテーションの傾向が少なく、ここで、Zは、任意の天然アミノ酸であり、proは、プロリンであり、aspは、アスパラギン酸であることを特徴とする混合物。
【請求項97】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、
i)前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、かつ
ii)前記リンカーは、少なくとも1種類の重原子同位体を含み、以下の式:
【化10】
を有し、
式中、R1は、同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とし、前記アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここで前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であることを特徴とする混合物。
【請求項98】
前記1種類以上の分析物がペプチドである、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項99】
前記1種類以上の分析物がタンパク質である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項100】
前記1種類以上の分析物が核酸分子である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項101】
前記レポーターが置換または非置換のモルホリン、ピペリジン、またはピペラジン化合物、あるいはそれらの塩である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項102】
前記レポーターがカルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基含有化合物、あるいはそれらの塩である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項103】
前記リンカーがカルボニルまたはチオカルボニル基である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項104】
前記少なくとも2種類の標識分析物の各々が異性体的標識を含む、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項105】
前記少なくとも2種類の標識分析物の各々が同重体的標識を含む、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項106】
前記少なくとも2種類の標識分析物の各々が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して前記分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環である同重体的標識を含み、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む、請求項105に記載の混合物。
【請求項107】
前記混合物中の前記少なくとも2種類の同重体的標識分析物の各々が、以下の式:
【化11】
を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、
c)Wは、前記環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSであり、
d)前記複素環の各炭素は、式CJ2を有し、
e)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
f)R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または前記試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項106に記載の混合物。
【請求項108】
前記混合物が、以下の式:
【化12】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項107に記載の混合物。
【請求項109】
前記混合物が、以下の式:
【化13】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項07に記載の混合物。
【請求項110】
前記混合物が、以下の式:
【化14】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、
a)G’は、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
b)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項107に記載の混合物。
【請求項111】
前記混合物が、以下の式:
【化15】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項105に記載の混合物。
【請求項112】
1種類以上の較正基準をさらに包含する、請求項93ないし97のいずれかに記載の混合物。
【請求項113】
N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して活性エステルのアルコール部分が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環である活性エステル化合物であって、前記化合物が1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされていることを特徴とする化合物。
【請求項114】
前記化合物が3種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされている、請求項113に記載の化合物。
【請求項115】
前記複素環が1種類以上の置換基で置換されている、請求項113に記載の化合物。
【請求項116】
前記1種類以上の置換基がアルキル、アルコキシ、またはアリール基である、請求項115に記載の化合物。
【請求項117】
前記1種類以上の置換基が保護または非保護のアミン基、ヒドロキシル基、またはチオール基である、請求項116に記載の化合物。
【請求項118】
前記複素環が脂肪族である、請求項113に記載の化合物。
【請求項119】
前記複素環が芳香族である、請求項113に記載の化合物。
【請求項120】
前記複素環が1個以上の付加的な窒素、酸素、またはイオウ原子を含む、請求項113に記載の化合物。
【請求項121】
前記活性エステルがN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである、請求項113に記載の化合物。
【請求項122】
前記化合物が塩である、請求項113に記載の化合物。
【請求項123】
前記化合物がモノTFA塩、モノHCl塩、ビスTFA塩、またはビスHCl塩である、請求項113に記載の化合物。
【請求項124】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項113に記載の化合物。
【請求項125】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項113に記載の化合物。
【請求項126】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項113に記載の化合物。
【請求項127】
以下の式:
【化16】
のN−置換モルホリン酢酸活性エステル化合物またはその塩であって、
式中、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含み、
ここで、前記N−置換モルホリン酢酸活性エステルが1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされることを特徴とする化合物。
【請求項128】
前記N−置換モルホリン酢酸活性エステルが3種類以上の重原子同位体でエンリッチされる、請求項127に記載の化合物。
【請求項129】
LGが
【化17】
であり、XがOまたはSである、請求項127に記載の化合物。
【請求項130】
LGがN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項127に記載の化合物。
【請求項131】
各Zが別々に水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項127に記載の化合物。
【請求項132】
各Zが別々に水素、メチル、またはメトキシである、請求項127に記載の化合物。
【請求項133】
Xが16Oまたは18Oである、請求項127に記載の化合物。
【請求項134】
前記モルホリンの環の窒素原子が14Nまたは15Nである、請求項127に記載の化合物。
【請求項135】
以下の式:
【化18】
の前記化合物であり、
式中、
各C*は、別々に12Cまたは13Cであり、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む、請求項127に記載の化合物。
【請求項136】
前記化合物がモノTFA塩またはモノHCl塩である、請求項127に記載の化合物。
【請求項137】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項127に記載の化合物。
【請求項138】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項127に記載の化合物。
【請求項139】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項127に記載の化合物。
【請求項140】
以下の式:
【化19】
のN−置換ピペリジン酢酸活性エステル化合物またはその塩であって、
式中、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含み、
ここで、前記N−置換ピペリジン酢酸活性エステルが1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされることを特徴とする化合物。
【請求項141】
前記N−置換ピペリジン酢酸活性エステルが3種類以上の重原子同位体でエンリッチされる、請求項140に記載の化合物。
【請求項142】
LGが
【化20】
であり、XがOまたはSである、請求項140に記載の化合物。
【請求項143】
LGがN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項140に記載の化合物。
【請求項144】
各Zが別々にて水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項140に記載の化合物。
【請求項145】
各Zが別々に水素、メチル、またはメトキシである、請求項140に記載の化合物。
【請求項146】
Xが16Oまたは18Oである、請求項140に記載の化合物。
【請求項147】
前記ピペリジンの環の窒素原子が14Nまたは15Nである、請求項140に記載の化合物。
【請求項148】
以下の式:
【化21】
の前記化合物であり、
式中、
各C*は、別々に12Cまたは13Cであり、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む、請求項140に記載の化合物。
【請求項149】
前記化合物がモノTFA塩またはモノHCl塩である、請求項140に記載の化合物。
【請求項150】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項140に記載の化合物。
【請求項151】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項140に記載の化合物。
【請求項152】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項40に記載の化合物。
【請求項153】
以下の式:
【化22】
のN−置換ピペラジン酢酸活性エステル化合物またはその塩であって、
式中、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含み、
ここで、前記N−置換ピペラジン酢酸活性エステルが1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされることを特徴とする化合物。
【請求項154】
前記N−置換ピペラジン酢酸活性エステルが3種類以上の重原子同位体でエンリッチされる、請求項153に記載の化合物。
【請求項155】
LGが
【化23】
であり、XがOまたはSである、請求項153に記載の化合物。
【請求項156】
LGがN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項153に記載の化合物。
【請求項157】
各Zが別々に水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項153に記載の化合物。
【請求項158】
各Zが別々に水素、メチル、またはメトキシである、請求項153に記載の化合物。
【請求項159】
Xが16Oまたは18Oである、請求項153に記載の化合物。
【請求項160】
前記ピペラジンの環の各窒素原子が14Nまたは15Nである、請求項153に記載の化合物。
【請求項161】
以下の式:
【化24】
の前記化合物であり、
式中、
各C*は、別々に12Cまたは13Cであり、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む、請求項153に記載の化合物。
【請求項162】
前記化合物がモノTFA塩、モノHCl塩、ビスTFA塩、またはビスHCl塩である、請求項153に記載の化合物。
【請求項163】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項153に記載の化合物。
【請求項164】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項153に記載の化合物。
【請求項165】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項153に記載の化合物。
【請求項166】
a)セットの各々の試薬が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RG
またはその塩を含む分析物の標識に適した2種類以上の試薬の前記セットと、
(式中、
i)RGは、求電子試薬である反応基であり、前記試料の1種類以上の前記反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、
a)前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの異なる前記標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、かつ
b)前記リンカーは、少なくとも1種類の重原子同位体を含み、以下の式:
【化25】
を有し、
式中、R1は、同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とし、前記アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここで前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させる。)
b)1種類以上の試薬、容器、酵素、緩衝剤、または指示書と、
を含む、キット。
【請求項167】
前記キットがタンパク質分解酵素を含む、請求項166に記載のキット。
【請求項168】
前記セットの各試薬の前記反応基が活性エステルである、請求項166に記載のキット。
【請求項169】
前記活性エステルのアルコール部分が、以下の式:
【化26】
の基であり、式中、XはOまたはSである、請求項168に記載のキット。
【請求項170】
前記活性エステルがN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである、請求項168に記載のキット。
【請求項171】
前記レポーターが置換または非置換のモルホリン、ピペリジン、またはピペラジンである、請求項166に記載のキット。
【請求項172】
前記レポーターがカルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基を含む、請求項166に記載のキット。
【請求項173】
前記リンカーがカルボニルまたはチオカルボニル基である、請求項166に記載のキット。
【請求項174】
前記セットの各試薬が、別々に、切断可能なリンカーを介して固体支持体に結合する、請求項166に記載のキット。
【請求項175】
前記セットの全ての試薬が異性体的である、請求項166に記載のキット。
【請求項176】
前記セットの全ての試薬が同重体的である、請求項166に記載のキット。
【請求項177】
前記セットの全ての試薬が、以下の式:
【化27】
を含み、
式中、
a)RGは、求電子試薬である反応基であり、
b)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
c)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
d)Wは、前記環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSからなる群から選択され、
e)前記複素環の各炭素は、式CJ2を有し、
f)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
g)R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または前記試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項176に記載のキット。
【請求項178】
前記セットが、以下の4種類の試薬、すなわち、
【化28】
の1種類以上を含み、式中、RGは、前記反応基である、請求項177に記載のキット。
【請求項179】
前記セットが、以下の4種類の試薬、すなわち、
【化29】
の1種類以上を含み、式中、RGは、前記反応基である、請求項177に記載のキット。
【請求項180】
前記セットが、以下の4種類の支持体結合試薬、すなわち、
【化30】
の1種類以上を含み、
式中、
a)RGは、前記反応基であり、
b)Eは、固体支持体であり、
c)Fは、前記固体支持体へ結合される切断可能なリンカーであり、
d)Gは、切断可能なリンカーに切断可能に結合させるアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の記炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
e)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
f)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項177に記載のキット。
【請求項181】
前記セットの全ての試薬が、以下の式:
【化31】
を含み、
式中、
a)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、
b)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
c)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
d)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項176に記載のキット。
【請求項182】
前記セットが、以下の4種類の試薬、すなわち、
【化32】
の1種類以上を含み、式中、RGは前記反応基である、請求項181に記載のキット。
【請求項1】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RG
またはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成し、ここで、RPは、
i)250ダルトン未満の総質量を有し、かつ/または、
ii)質量分析計で標識分析物の結合XおよびY両方の少なくとも一部のフラグメンテーションを起こさせるために印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブ・フラグメント化が起こらず、かつ/または、
iii)ポリマーではないか、または生体ポリマーではない、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RGまたはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成し、ここで、前記リンカーLKは、質量分析計で結合XおよびY両方のフラグメンテーションを起こす印加された解離エネルギーの条件下で、ニュートラル・ロスを受ける工程、
を包含する、方法。
【請求項3】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RGまたはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合することによって、試料混合物を生成する工程、
を包含し、
質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合XまたはYの一方のフラグメンテーションが結合XまたはYの他方のフラグメンテーションを誘導することを特徴とする、方法。
【請求項4】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、ここで、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:RP−X−LK−Y−RG
またはその塩(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化する)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成する工程、
を包含し、
i)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、結合Yに比べてフラグメンテーションの傾向が少なく、かつ/または
ii)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、Z−proアミノ酸ダイマーまたはZ−aspアミノ酸ダイマーのペプチド結合と比べて、フラグメンテーションの傾向が少なく、ここで、Zは、任意の天然アミノ酸であり、proは、プロリンであり、aspは、アスパラギン酸であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
以下:
a)各々の試料が1種類以上の反応性分析物を含む2種類以上の試料を、標識化試薬のセットの異なる標識化試薬と反応させる工程であって、該工程によって、各々が1種類以上の標識分析物を含む2種類以上の差次的標識試料を生成し、前記セットの前記異なる標識化試薬の各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RGまたはその塩、
(式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、
a)前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、かつ
b)前記リンカーは、少なくとも1種類の重原子同位体を含み、以下の式:
【化1】
を有し、
式中、R1は、同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とし、前記アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここで前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させる)を含む、工程;ならびに
b)前記2種類以上の差次的標識試料またはその部分と、任意で1種類以上の較正基準とを混合する工程であって、該工程によって、試料混合物を生成する工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
以下:
c)前記試料混合物またはその分画上で第1の質量分析を実行する工程;
d)前記第1の質量分析で選択された標識分析物のイオンを解離エネルギー・レベルにさらすことによって、イオン化されたレポーター部分と、少なくとも複数の前記選択されたイオンのイオン化された娘フラグメント・イオンとを形成する工程;ならびに
e)前記選択されたイオン、前記イオン化されたレポーター部分、および前記娘フラグメント・イオン、またはそれらの分画上で第2の質量分析を実行する工程、
をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下:
f)前記第2の質量分析で、各レポーター部分の総質量および相対量と、前記娘フラグメント・イオンの総質量とを測定する工程、
をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)ないし(f)を1回以上繰り返し、各回が前記試料混合物の異なる分画を用いることをさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記2種類以上の試料が酵素的消化反応の産物である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記2種類以上の試料がタンパク質分解酵素的消化反応の産物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各試料が粗または加工済みの細胞溶解物、体液、組織抽出物、あるいは細胞抽出物である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
各試料が分離プロセスから得た分画である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記分離プロセスがクロマトグラフィー分離または電気泳動分離である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記体液が血液、尿、髄液、脳脊髄液、羊水、リンパ液、または腺分泌液である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記1種類以上の分析物がタンパク質、核酸分子、炭化水素、脂質、ステロイド、または1500ダルトン未満の低分子である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記1種類以上の分析物がペプチドである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドが少なくとも1種類のタンパク質の消化によって形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドが粗細胞溶解物の全タンパク質成分の消化によって形成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記セットの各試薬の前記反応基が前記反応性分析物との反応のためにin situで調製される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記セットの前記各試薬の前記反応基が、水溶性カルボジイミドで活性化されたカルボン酸基である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶性カルボジイミドが1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3エチルカルボジイミドハイドロクロリド(EDC)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記セットの各試薬の前記反応基がアミン反応性の活性エステル基である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記活性エステルがN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、または2,4−ジハロフェニルエステルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記セットの各試薬の前記反応基がチオール反応求電子性基である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記チオール反応基がマレイミド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、およびα−ハロアシルからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記セットの各試薬の前記反応基がヒドロキシル反応求電子性基である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
各試薬の前記反応基がアミン基、ヒドロキシル基、またはチオール基からなる群から選択される求核性試薬である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記レポーターが置換または非置換のモルホリン、ピペリジン、またはピペラジン化合物、あるいはそれらの塩である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記レポーターがカルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基含有化合物、あるいはそれらの塩である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記レポーター部分が、前記分析物を測定するために用いられる条件下で、実質的にサブ・フラグメント化を起こさないことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記レポーター部分が生体ポリマーではないことを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記レポーター部分がポリマーではないことを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記リンカーがカルボニルまたはチオカルボニル基である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記リンカーがポリマーまたはバイオポリマー部分である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリマー部分がサブ・フラグメント化することができる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記1種類以上の差次的標識分析物の各々が、前記差次的標識分析物をもたらす前記試料を同定する異性体的標識を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記1種類以上の差次的標識分析物の各々が、前記差次的標識分析物をもたらす前記試料を同定する同重体的標識を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
各同重体的標識分析物の前記標識が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して前記分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環であり、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記試料混合物中の前記同重体的標識分析物の各々が、以下の式:
【化2】
を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、
c)Wは、前記環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSであり、
d)前記複素環の各炭素は、式CJ2を有し、
e)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
f)R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または前記試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記同重体的標識分析物がペプチドである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記試料混合物が、以下の式:
【化3】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記試料混合物が、以下の式:
【化4】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記試料混合物が、以下の式:
【化5】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記試料混合物が、以下の式:
【化6】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、
a)G’は、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基であり、ここで、前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
b)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記試料混合物中の前記同重体的標識分析物の各々が、以下の式:
【化7】
を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記同重体的標識分析物がペプチドである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記試料混合物が、以下の式:
【化8】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記セットの各異なる標識化試薬が支持体結合性であり、異なる標識化試薬を保持する支持体と各異なる試料を反応させるように切断可能なリンカーを介して前記支持体に結合され結合され、かつ、前記方法は、工程(b)を実行する前に、
i)任意で樹脂を洗浄し、前記標識化試薬の前記反応基と反応しない前記試料の成分を除去する工程;および
ii)前記切断可能なリンカーを切断する工程であって、該工程によって、各々の試料が1種類以上の標識分析物を含む前記2種類以上の差次的標識試料を回収する、工程、
をさらに包含し、
特定の試料に関連する前記標識分析物が、そこに結合する固有の前記レポーターによって同定可能および/定量可能である、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記セットの各異なる標識化試薬が、以下の式:
E−F−RP−X−LK−Y−RG
の固体支持体であり、
式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させ、
vi)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
vii)Eは、固体支持体であり、
viii)Fは、前記固体支持体へ結合され、かつ前記レポーターへ切断可能に結合される切断可能なリンカーである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
標識化試薬の前記セットが、1種類以上の以下の支持体結合標識化試薬、すなわち、
【化9】
を含み、
式中、
i)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、前記試料の前記1種類以上の反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)Eは、固体支持体であり、
iii)Fは、前記固体支持体へ結合され、かつ前記レポーターへ切断可能に結合される切断可能なリンカーであり、
iv)Gは、前記切断可能なリンカーに切断可能に結合させるアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
v)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
vi)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記支持体がポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、ガラス、シリカ、制御多孔性ガラス(CPG)、または逆相シリカから構成される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記固体支持体がビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、膜、または面状である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
以下:
c)工程a)を実行する前に、各試料を少なくとも1種類の酵素で消化して、前記試料の成分を部分的または完全に分解する工程、をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記酵素がタンパク質分解酵素である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記タンパク質分解酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記方法が、以下:
c)前記試料混合物を分離する工程、
をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記分離がクロマトグラフィーによって実行される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記クロマトグラフィー分離の方法が順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記分離が電気泳動によっておこなわれる、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記電気泳動分離が1次元電気泳動分離、2次元電気泳動分離、またはキャピラリー電気泳動分離である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記方法が、以下:
c)工程a)を実行する前に、各試料を少なくとも1種類の酵素で消化して、前記試料の成分を部分的または完全に分解する工程;および
d)前記試料混合物を分離する工程、
をさらに包含する、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記酵素がタンパク質分解酵素である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記タンパク質分解酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記分離がクロマトグラフィーによって実行される、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記クロマトグラフィー分離の方法が順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記分離が電気泳動分離である、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記電気泳動分離が1次元電気泳動分離、2次元電気泳動分離、またはキャピラリー電気泳動分離である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
電荷比に対する選択された質量に関連する前記標識分析物の同一性が前記娘フラグメント・イオンの分析によって測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項71】
前記第2の質量分析での各レポーターの相対量が他のレポーターを基準にして測定される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記同定された分析物に関連する各レポーターの相対量を、前記試料混合物を形成するために添加される各試料の量に相関させることによって、前記混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記分析物の相対量を測定する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
(i)前記試料混合物が前記同定された分析物に対する既知量の較正基準を含み、各レポーターの絶対量が前記較正基準に関連するレポーターの量を基準にして測定され、
(ii)前記試料混合物の各異なる試料中の前記同定された分析物の絶対量が各レポーターの量を基準にして測定される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の相対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の絶対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および相対量にもとづいて測定される、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および絶対量にもとづいて測定される、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
以下:
c)工程(a)を実行する前に、各試料を少なくとも1種類の酵素で消化して、前記試料の成分を部分的または完全に分解する工程;および
d)工程(c)を実行する前に、前記試料混合物を分離する工程、
をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項79】
前記酵素がタンパク質分解酵素である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記タンパク質分解酵素がトリプシン、パパイン、ペプシン、キモトリプシン、またはカルボキシペプチダーゼCである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記分離がクロマトグラフィーによって実行される、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記クロマトグラフィー分離の方法が順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティー・クロマトグラフィーである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記分離が電気泳動分離である、請求項78に記載の方法。
【請求項84】
前記電気泳動分離が1次元電気泳動分離、2次元電気泳動分離、またはキャピラリー電気泳動分離である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
電荷比に対する選択された質量に関連する前記標識分析物の同一性が前記娘フラグメント・イオンの分析によって測定される、請求項78に記載の方法。
【請求項86】
前記第2の質量分析での各レポーターの相対量が他のレポーターを基準にして測定される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記同定された分析物に関連する各レポーターの相対量を、前記試料混合物を形成するために添加される各試料の量に相関させることによって、前記混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記分析物の相対量を測定する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
(i)前記試料混合物が前記同定された分析物に対する既知量の較正基準を含み、各レポーターの絶対量が前記較正基準に関連するレポーターの量を基準にして測定され、
(ii)前記試料混合物の各異なる試料中の前記同定された分析物の絶対量が各レポーターの量を基準にして測定される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の相対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
電荷比に対する異なる選択された質量で選択された標識分析物のイオン上で、工程(d)ないし(f)を1回以上繰り返すことによって、前記試料混合物を形成するために組み合わされた前記2種類以上の試料の各々中の1種類以上の他の分析物の絶対量を同定および/または測定することをさらに包含する、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および相対量にもとづいて測定される、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記分析物がペプチドであり、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の1種類以上のタンパク質の同一性および相対量が、前記試料混合物を形成するために組み合わされる前記2種類以上の試料の各々の中の前記1種類以上のペプチドの同一性および絶対量にもとづいて測定される、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、RPは、
i)250ダルトン未満の総質量を有し、かつ/または、
ii)質量分析計で標識分析物の結合XおよびY両方の少なくとも一部のフラグメンテーションを起こさせるために印加される解離エネルギーの条件下で、実質的にサブ・フラグメント化が起こらず、かつ/または、
iii)ポリマーではないか、または生体ポリマーではない、混合物。
【請求項94】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、前記リンカーLKは、質量分析計で結合XおよびY両方のフラグメンテーションを起こす印加された解離エネルギーの条件下で、ニュートラル・ロスを受ける、混合物。
【請求項95】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合XまたはYの一方のフラグメンテーションが結合XまたはYの他方のフラグメンテーションを誘導する、混合物。
【請求項96】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記分析物と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が各標識分析物に対して同じものであるように前記異なるレポーター間の総質量での差異を補正し、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であり、
e)結合Xおよび結合Yは、解離エネルギー・レベルを受けた場合に、前記標識分析物の少なくとも部分でフラグメント化し、
ここで、
i)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、結合Yに比べてフラグメンテーションの傾向が少なく、かつ/または
ii)質量分析計で印加された解離エネルギーの条件下で、結合Xは、Z−proアミノ酸ダイマーまたはZ−aspアミノ酸ダイマーのペプチド結合と比べて、フラグメンテーションの傾向が少なく、ここで、Zは、任意の天然アミノ酸であり、proは、プロリンであり、aspは、アスパラギン酸であることを特徴とする混合物。
【請求項97】
少なくとも2種類の標識分析物を含む混合物であって、前記2種類の標識分析物の各々が前記混合物を形成するために組み合わされる異なる試料から発生し、各々が、以下の式:
RP−X−LK−Y−分析物
またはその塩を含み、
式中、
a)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、各試料に対して異なるものとし、
b)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、
i)前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの前記異なる標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、かつ
ii)前記リンカーは、少なくとも1種類の重原子同位体を含み、以下の式:
【化10】
を有し、
式中、R1は、同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とし、前記アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここで前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
c)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
d)Yは、前記リンカーの原子と前記分析物の原子との間の結合であることを特徴とする混合物。
【請求項98】
前記1種類以上の分析物がペプチドである、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項99】
前記1種類以上の分析物がタンパク質である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項100】
前記1種類以上の分析物が核酸分子である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項101】
前記レポーターが置換または非置換のモルホリン、ピペリジン、またはピペラジン化合物、あるいはそれらの塩である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項102】
前記レポーターがカルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基含有化合物、あるいはそれらの塩である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項103】
前記リンカーがカルボニルまたはチオカルボニル基である、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項104】
前記少なくとも2種類の標識分析物の各々が異性体的標識を含む、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項105】
前記少なくとも2種類の標識分析物の各々が同重体的標識を含む、請求項93ないし97のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項106】
前記少なくとも2種類の標識分析物の各々が、N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して前記分析物が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環である同重体的標識を含み、各々の異なる標識が1種類以上の重原子同位体を含む、請求項105に記載の混合物。
【請求項107】
前記混合物中の前記少なくとも2種類の同重体的標識分析物の各々が、以下の式:
【化11】
を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、
c)Wは、前記環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSであり、
d)前記複素環の各炭素は、式CJ2を有し、
e)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
f)R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または前記試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項106に記載の混合物。
【請求項108】
前記混合物が、以下の式:
【化12】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項107に記載の混合物。
【請求項109】
前記混合物が、以下の式:
【化13】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含む、請求項07に記載の混合物。
【請求項110】
前記混合物が、以下の式:
【化14】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、
a)G’は、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
b)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項107に記載の混合物。
【請求項111】
前記混合物が、以下の式:
【化15】
の1種類以上の同重体的標識分析物を含み、
式中、
a)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
b)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
c)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項105に記載の混合物。
【請求項112】
1種類以上の較正基準をさらに包含する、請求項93ないし97のいずれかに記載の混合物。
【請求項113】
N−アルキル酢酸部分のカルボニル炭素を介して活性エステルのアルコール部分が結合する置換または非置換酢酸部分によってN−アルキル化される環状窒素原子を有する5、6、または7員複素環である活性エステル化合物であって、前記化合物が1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされていることを特徴とする化合物。
【請求項114】
前記化合物が3種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされている、請求項113に記載の化合物。
【請求項115】
前記複素環が1種類以上の置換基で置換されている、請求項113に記載の化合物。
【請求項116】
前記1種類以上の置換基がアルキル、アルコキシ、またはアリール基である、請求項115に記載の化合物。
【請求項117】
前記1種類以上の置換基が保護または非保護のアミン基、ヒドロキシル基、またはチオール基である、請求項116に記載の化合物。
【請求項118】
前記複素環が脂肪族である、請求項113に記載の化合物。
【請求項119】
前記複素環が芳香族である、請求項113に記載の化合物。
【請求項120】
前記複素環が1個以上の付加的な窒素、酸素、またはイオウ原子を含む、請求項113に記載の化合物。
【請求項121】
前記活性エステルがN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである、請求項113に記載の化合物。
【請求項122】
前記化合物が塩である、請求項113に記載の化合物。
【請求項123】
前記化合物がモノTFA塩、モノHCl塩、ビスTFA塩、またはビスHCl塩である、請求項113に記載の化合物。
【請求項124】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項113に記載の化合物。
【請求項125】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項113に記載の化合物。
【請求項126】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項113に記載の化合物。
【請求項127】
以下の式:
【化16】
のN−置換モルホリン酢酸活性エステル化合物またはその塩であって、
式中、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含み、
ここで、前記N−置換モルホリン酢酸活性エステルが1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされることを特徴とする化合物。
【請求項128】
前記N−置換モルホリン酢酸活性エステルが3種類以上の重原子同位体でエンリッチされる、請求項127に記載の化合物。
【請求項129】
LGが
【化17】
であり、XがOまたはSである、請求項127に記載の化合物。
【請求項130】
LGがN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項127に記載の化合物。
【請求項131】
各Zが別々に水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項127に記載の化合物。
【請求項132】
各Zが別々に水素、メチル、またはメトキシである、請求項127に記載の化合物。
【請求項133】
Xが16Oまたは18Oである、請求項127に記載の化合物。
【請求項134】
前記モルホリンの環の窒素原子が14Nまたは15Nである、請求項127に記載の化合物。
【請求項135】
以下の式:
【化18】
の前記化合物であり、
式中、
各C*は、別々に12Cまたは13Cであり、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む、請求項127に記載の化合物。
【請求項136】
前記化合物がモノTFA塩またはモノHCl塩である、請求項127に記載の化合物。
【請求項137】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項127に記載の化合物。
【請求項138】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項127に記載の化合物。
【請求項139】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項127に記載の化合物。
【請求項140】
以下の式:
【化19】
のN−置換ピペリジン酢酸活性エステル化合物またはその塩であって、
式中、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含み、
ここで、前記N−置換ピペリジン酢酸活性エステルが1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされることを特徴とする化合物。
【請求項141】
前記N−置換ピペリジン酢酸活性エステルが3種類以上の重原子同位体でエンリッチされる、請求項140に記載の化合物。
【請求項142】
LGが
【化20】
であり、XがOまたはSである、請求項140に記載の化合物。
【請求項143】
LGがN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項140に記載の化合物。
【請求項144】
各Zが別々にて水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項140に記載の化合物。
【請求項145】
各Zが別々に水素、メチル、またはメトキシである、請求項140に記載の化合物。
【請求項146】
Xが16Oまたは18Oである、請求項140に記載の化合物。
【請求項147】
前記ピペリジンの環の窒素原子が14Nまたは15Nである、請求項140に記載の化合物。
【請求項148】
以下の式:
【化21】
の前記化合物であり、
式中、
各C*は、別々に12Cまたは13Cであり、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む、請求項140に記載の化合物。
【請求項149】
前記化合物がモノTFA塩またはモノHCl塩である、請求項140に記載の化合物。
【請求項150】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項140に記載の化合物。
【請求項151】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項140に記載の化合物。
【請求項152】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項40に記載の化合物。
【請求項153】
以下の式:
【化22】
のN−置換ピペラジン酢酸活性エステル化合物またはその塩であって、
式中、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含み、
ここで、前記N−置換ピペラジン酢酸活性エステルが1種類以上の重原子同位体で同位体的にエンリッチされることを特徴とする化合物。
【請求項154】
前記N−置換ピペラジン酢酸活性エステルが3種類以上の重原子同位体でエンリッチされる、請求項153に記載の化合物。
【請求項155】
LGが
【化23】
であり、XがOまたはSである、請求項153に記載の化合物。
【請求項156】
LGがN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項153に記載の化合物。
【請求項157】
各Zが別々に水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項153に記載の化合物。
【請求項158】
各Zが別々に水素、メチル、またはメトキシである、請求項153に記載の化合物。
【請求項159】
Xが16Oまたは18Oである、請求項153に記載の化合物。
【請求項160】
前記ピペラジンの環の各窒素原子が14Nまたは15Nである、請求項153に記載の化合物。
【請求項161】
以下の式:
【化24】
の前記化合物であり、
式中、
各C*は、別々に12Cまたは13Cであり、
LGは、活性エステルの脱離基であり、
Xは、OまたはSであり、
各Zは、別々に、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ酸側鎖、あるいは任意で置換または非置換のアリール基を含んでもよい直鎖または分岐鎖状C1ないしC6アルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、それぞれ別々に、結合した水素、重水素、またはフッ素原子を含む、請求項153に記載の化合物。
【請求項162】
前記化合物がモノTFA塩、モノHCl塩、ビスTFA塩、またはビスHCl塩である、請求項153に記載の化合物。
【請求項163】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも80%の同位体純度で存在する、請求項153に記載の化合物。
【請求項164】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも93%の同位体純度で存在する、請求項153に記載の化合物。
【請求項165】
組み込まれる重原子同位体の各々が少なくとも96%の同位体純度で存在する、請求項153に記載の化合物。
【請求項166】
a)セットの各々の試薬が、以下の式:
RP−X−LK−Y−RG
またはその塩を含む分析物の標識に適した2種類以上の試薬の前記セットと、
(式中、
i)RGは、求電子試薬である反応基であり、前記試料の1種類以上の前記反応性分析物と反応することが可能であり、
ii)RPは、固定された電荷を含むか、またはイオン化することが可能なレポーター部分であり、ここで、各レポーターの質量は、前記セットの各試薬に対して異なるものとし、
iii)LKは、前記反応基と前記レポーターの基とを結合させるリンカー部分であり、ここで、
a)前記リンカーの質量は、前記レポーターとリンカーとの組合せの統合総質量が前記セットの各試薬に対して同じものであるように前記セットの異なる前記標識化試薬に対する前記レポーター間の総質量での差異を補正し、かつ
b)前記リンカーは、少なくとも1種類の重原子同位体を含み、以下の式:
【化25】
を有し、
式中、R1は、同一または異なるものであり、1ないし8個の炭素原子を含むアルキル基とし、前記アルキル基はヘテロ原子または置換もしくは非置換アリール基を任意に含むものであってもよく、ここで前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
iv)Xは、前記レポーターの原子と前記リンカーとの間の結合であり、
v)Yは、前記リンカーの原子と前記反応基の原子との間の結合であり、ここで、前記標識化試薬が前記反応性分析物と反応したら、結合Yは前記分析物に前記リンカーを結合させる。)
b)1種類以上の試薬、容器、酵素、緩衝剤、または指示書と、
を含む、キット。
【請求項167】
前記キットがタンパク質分解酵素を含む、請求項166に記載のキット。
【請求項168】
前記セットの各試薬の前記反応基が活性エステルである、請求項166に記載のキット。
【請求項169】
前記活性エステルのアルコール部分が、以下の式:
【化26】
の基であり、式中、XはOまたはSである、請求項168に記載のキット。
【請求項170】
前記活性エステルがN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである、請求項168に記載のキット。
【請求項171】
前記レポーターが置換または非置換のモルホリン、ピペリジン、またはピペラジンである、請求項166に記載のキット。
【請求項172】
前記レポーターがカルボン酸、スルホン酸、またはリン酸基を含む、請求項166に記載のキット。
【請求項173】
前記リンカーがカルボニルまたはチオカルボニル基である、請求項166に記載のキット。
【請求項174】
前記セットの各試薬が、別々に、切断可能なリンカーを介して固体支持体に結合する、請求項166に記載のキット。
【請求項175】
前記セットの全ての試薬が異性体的である、請求項166に記載のキット。
【請求項176】
前記セットの全ての試薬が同重体的である、請求項166に記載のキット。
【請求項177】
前記セットの全ての試薬が、以下の式:
【化27】
を含み、
式中、
a)RGは、求電子試薬である反応基であり、
b)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
c)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
d)Wは、前記環状窒素にオルト、メタ、またはパラで位置する原子または基であり、NH、N−R1、N−R2、P−R1、P−R2、O、またはSからなる群から選択され、
e)前記複素環の各炭素は、式CJ2を有し、
f)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
g)R2は、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル基、または前記試薬を固体支持体に切断可能に結合させる切断可能なリンカーであり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項176に記載のキット。
【請求項178】
前記セットが、以下の4種類の試薬、すなわち、
【化28】
の1種類以上を含み、式中、RGは、前記反応基である、請求項177に記載のキット。
【請求項179】
前記セットが、以下の4種類の試薬、すなわち、
【化29】
の1種類以上を含み、式中、RGは、前記反応基である、請求項177に記載のキット。
【請求項180】
前記セットが、以下の4種類の支持体結合試薬、すなわち、
【化30】
の1種類以上を含み、
式中、
a)RGは、前記反応基であり、
b)Eは、固体支持体であり、
c)Fは、前記固体支持体へ結合される切断可能なリンカーであり、
d)Gは、切断可能なリンカーに切断可能に結合させるアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基であり、ここで、前記アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、またはチオアルキル基は、1ないし8個の炭素原子を有し、かつ任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよく、さらに前記アルキルおよびアリール基の記炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含み、
e)前記複素環の各炭素は式CJ2を有し、ここで、各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
f)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項177に記載のキット。
【請求項181】
前記セットの全ての試薬が、以下の式:
【化31】
を含み、
式中、
a)RGは、求核試薬または求電子試薬である反応基であり、
b)Zは、O、S、NH、またはNR1であり、
c)各Jは、同一または異なるものであり、H、重水素(D)、R1、OR1、SR1、NHR1、N(R1)2、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され、
d)各R1は、同一または異なるものであり、任意でヘテロ原子または置換もしくは非置換のアリール基を含んでもよい炭素原子数1ないし8個のアルキル基であり、ここで、前記アルキルまたはアリール基の炭素原子は、別々に、結合した水素、重水素、および/またはフッ素原子を含む、請求項176に記載のキット。
【請求項182】
前記セットが、以下の4種類の試薬、すなわち、
【化32】
の1種類以上を含み、式中、RGは前記反応基である、請求項181に記載のキット。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−525639(P2007−525639A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503013(P2006−503013)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/002077
【国際公開番号】WO2004/070352
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/002077
【国際公開番号】WO2004/070352
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
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