説明

分析用の流体を取り扱う装置および方法

【課題】従来の自動化装置の1つまたは複数の問題の解決。
【解決手段】選択された圧力の掛かっていない流体のヘッドを流体の表面張力によって支持する、底部排液開口部を有する反応容器。この装置の処理ゾーンは、反応容器の間隔を開けた列用の支持部、支持された容器のそれらの排液開口部と連通する通路、および前記排液開口部を介して選択的に流体を放出させるための圧力源を含む。水平な棒磁石が容器列間の選択された垂直移動のために支持される。分配ヘッドは、X個の選択される反応容器上に選択的に配置可能なX個の放出開口部を有する。計量ポンプ機構が、(Xは少なくとも4)X個の選択された流体量を大量供給部から選択的に計量し、この計量され選択された量を排液開口部を介して選択された反応容器に選択的にポンプ輸送する。圧力源を使用して容器から流体を引き出す方法、および検体のペレットを形成させるために磁石を移動させる方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料(specimen)の検査に関し、特に試料の処理中に試薬などの流体を加えることを含む、検査中の試料を処理する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な試料サンプルの検査は、例えば問題の項目の存在を点検するために一般に行われ、それらの項目は、DNA、RNA、またはそれらの断片の特定の領域の全てもしくは部分、補体(complement)、ペプチド、ポリペプチド、酵素、プリオン、蛋白質、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、ミトコンドリアRNAもしくはDNA、抗体、抗原、アレルゲン、細胞などの生物学的なエンティティ(entity)の一部分、ビリオンなど、表面蛋白、あるいは上記と機能的均等物などであり、またはそれらを含むことができる。患者の体液(例えば、血清、全血、尿、スワッブ(swab)、血漿、脳−脊髄液、リンパ液、組織固体(tissue solid))などの試料は、患者の健康に関する情報をもたらすように、いくつかの異なる検査を使用して分析することができる。
【0003】
そのような検査では、外側環境からであろうと試料間であろうと、試料に汚染物質が導入されることを防止するように試料を取り扱うことが絶対に必要である。例えば、1つの試料からのHIVウイルスが、不注意に異なる患者の試料を汚染してしまう場合は、誤った陽性の検査結果は、たとえ引き続く検査が後でこの誤りを発見したとしても、結果的に患者に壊滅的な精神的影響を招く潜在的な可能性がある。さらに、そのような検査は極めて敏感であるため、最小限の量の汚染物でさえ、誤った検査結果を引き起こす可能性がある。端的に言えば、試料は適切に取り扱われることが絶対に必要である。
【0004】
そのような高度な検査では、検査に使用することができる様々な試薬も同様に、汚染を防止するのみならず適切な量の適切な試薬が必要に応じた時間に確実に使用されるように、適切に取り扱われることが絶対に必要である。
【0005】
一般に、そのような検査は、複数の試料および流体(通常は、試薬)を取り扱う自動化された装置を使用して行われる。そのような自動化装置は通常、様々な流体を、それらの当初の容器(通常は蓋なしのチューブなどのレセプタクル)とその中で試料が処理されるべき容器の間を移動させるためにピペットのセットを使用する。例えば、装置のラックに装着された8つのチューブまたは他のレセプタクル内に8つの試料のセットを収容することができ、8つのピペットを運ぶヘッドが、プログラムされた動作によってこれら8つのチューブ内にピペットを移動させ、そこで各試料の選択された量をそのチューブからピペット内に抽出するためにバキュームが印加される。次いでヘッドは、チューブからピペットを後退させ、処理ステーションに配置された別のチューブのセットに移動させ、各試料の抽出された量をピペットから検査チューブのセット内に入れる。
【0006】
そのような自動化装置では、複数のチューブのラックまたはトレーは通常、処理の異なる段階のために、1つのステーションから次のステーションに移動される。例えば、1つのステーションに加熱要素が設けられ、別のステーションでチューブに磁場を導入する磁気要素が設けられている場合がある。さらにそのような状況では、複数のチューブの複数のトレーが異なる複数のステーションで能動的に、連続してかつ同時に処理される場合がある。しかしながら、それが通常の場合であるが1つのステーションでの処理時間が別のステーションでの処理時間と異なるとき、そのような処理は結果として、チューブの1つのラックをあるステーションに配置するのが遅れ、一方チューブの別のラックがそのステーションでの処理を完了するリソースの争い(resource contention)になる場合がある。例えば、1つのステーションで処理を完了したチューブのトレーが、次のステーションでチューブの別のトレーがそこでの処理を完了させるまで、そのステーションでの処理を遅らされる場合がある。鎖のほんの1つの環ほどしか強くない鎖のように、そのような自動化装置は、最も遅いステーションでの処理時間の関数である全体的な処理時間をもたらす。勿論、全体的な遅い処理時間は、所与の日中に行われる検査量を減少させる場合があり、それによって検査の完了を遅延させるか、または所望の検査能力レベルを可能にするために、追加装置のための相当な資本追加投資を要するかのいずれかとなる。
【0007】
そのような自動化装置の処理ステーションでは、試料は(例えば、培養、下処理、溶解、抽出など)検査の目的に従って様々に取り扱われる。例えば、例として試料からDNAまたはRNAを単離することによって、試料が分析のために下処理される場合がある。この試料も、または代わりになるべきものとして分析される場合がある。一般に、そのような処理は各チューブ内の試料に様々な流体(通常は試薬)を加えることを含む。例えば、最初のステップで、1つの試薬が試料を洗浄するためにチューブのそれぞれに加えられる場合があり、第2および第3の(およびそれ以上の)試薬が試料に、例えば、引き続く検査のために各チューブ内の試料から抽出できるように問題のDNAまたはRNAをばらす、かつ/または単離するために、別の処理を行う過程で加えられる場合がある。同じまたは異なる試薬がチューブに加えられる、かつ/またはチューブから抜き取る同様な処理が、下処理された試料を分析するための一部として、試料が下処理された後でも行われる場合がある。
【0008】
いくつかの処理では、磁場がチューブ内の流体から問題の検体を単離するのを助けるために使用されてきた。例えば、問題の検体は試薬内の磁気微粒子に拘束されており、付加される磁場が微粒子を引っ張り、検体をチューブの片側に拘束し、チューブの中に検体の濃縮物を残すように試薬がチューブから引き出されることができる。(例えば、検体が引かれるべき位置を変更するために)チューブ内の磁場を調整することが必要となった場合は、チューブ内の磁場の所望の向きを達成するために、チューブが移動されてきた。
【0009】
上記で説明した自動化装置による試薬および他の流体の取扱いは、問題のある可能性がある。試薬は、レセプタクルから処理ステーションの試料を含むチューブに、言及したようにヘッドおよびピペットを使用することによって自動的に移動させることができるが、先ず第1に、ヘッドおよびピペットがこの過程で適切な試薬を適切な時間に、適切な試料を含むチューブに加えていることを保証するために、適切な試薬を装置の適切なレセプタクル内に装入することが必要である。さらに、考え得る汚染物を除去するため、または異なる処理に関連する異なる流体の使用ができるようにするためのいずれかで、レセプタクルは容易に清浄化される必要があることを理解されたい。そのような要件の結果として、レセプタクルは通常そのような処置のために装置から容易に着脱可能とされる。
【0010】
今までは、適切な試薬の適切なレセプタクル内への装入はいくつかの異なる方法で行われてきた。そのような手順の1つでは、装置を制御する個人が手動で試薬を測定し、レセプタクルに加え、次いでそれらのレセプタクルを装置に配置する。別のそのような手順では、試薬の装入は、試薬を装置に設けられた試薬の大量供給部から移動させるための(前に説明したヘッドおよび1つまたは複数のピペットなどの)いくつかの移送装置を使用する装置自体によって自動的に行われる。
【0011】
チューブからの試薬の取除きは、ピペットをチューブ内に配置し、流体をチューブからピペット内に真空によって引き込むヘッドを使用することなどによって、同様に行われる。そのようなプロセスは時間が掛かり、かつ、特にチューブ間の汚染を防止するため各チューブに新しいピペットを使用することが必要な場合、ヘッドの他の使用を妨げる。そのような場合は、流体がチューブから引き込まれる毎に、ピペットを空にし、捨て、かつ新しいピペットを取り上げるためにヘッドを繰り返し移動させることが必要である可能性がある(例えば、8個のピペットを運ぶヘッドは、48個のチューブのトレーが使用されるとき6回サイクルを繰り返さなければならない可能性があり、各サイクルは、使用したピペットを空にし、捨て、かつ新しいピペットを取り上げることを要する)。勿論、そのような場合は、多数のピペットがかなりのコストで消費される。米国特許第6117398号明細書は、別法として流体をサンプル容器の底から引くことを開示し、バルブが全てのサンプル処理容器と廃液格納器の間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6117398号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記で述べた1つまたは複数の問題を克服するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様では、流体中の検体を検査するための反応容器が提供される。この容器は開いた頂部と該容器の底部の排液開口部とを有する容器を備え、この排液開口部は、流体の選択されたヘッドを支持し、かつ、流体の頂部と容器の底部の間に選択された差圧が存在するとき該排液開口部を通り流体を放出するようになされている。
【0015】
本発明のこの態様の一形態では、流体の頂部と容器の底部の間の差圧が選択された差圧より小さいとき、流体の表面張力が流体の選択されたヘッドを支持する。
【0016】
本発明のこの態様の別の形態では、疎水性のフリットを排液開口部に伴う。
【0017】
本発明のこの態様の別の形態では、流体の頂部と排液開口部の間の相対的圧力が少なくともある選択された大きさであるときのみ、排液開口部により流体の放出が可能になる。
【0018】
さらに別の形態では、容器の外側の排液開口部の周りに非濡れ性(non−wettable)表面が設けられる。
【0019】
さらに別の形態では、排液開口突起部が容器の底部表面を越えて延びる。
【0020】
本発明の別の態様では、底部に排液開口部を有する複数の反応容器用の支持部と、支持された反応容器の底部排液開口部と連通するようになされた通路と、支持された反応容器の排液開口部を介して選択的に流体を放出させるようになされた非大気圧の空気源とを含む、試料取扱装置用の処理ゾーンが提供される。この排液開口部は容器内の流体の選択されたヘッドを支持するようになされている。
【0021】
本発明のこの態様の1つの形態では、非大気圧の空気源が、通路内に真空を引くための真空源である。
【0022】
本発明のこの態様の別の形態では、処理ゾーンに支持された反応容器を加熱するためのヒーターが提供される。
【0023】
さらに別の形態では、反応容器は、排液開口部を通る流体の放出なしに、流体の選択されたヘッドを支持するのに十分な表面張力を有する流体を選択的に収容するようになされ、非大気圧の空気源が、流体表面張力に打ち勝ち、排液開口部を介して流体を選択的に放出させるように、排液開口部で流体の頂部より相対的により低い圧力を選択的に作り出すようになされている。
【0024】
さらに別の形態では、支持部は、各列が少なくとも1つの隣接する列から画成された間隔を有する、少なくとも2つの列の複数の反応容器を支持するようになされる。別の形態では、列間の画成された間隔は、全体的に垂直な長手方向スロットであり、棒磁石が全体的に水平に延び、スロット内の選択された垂直移動のために支持される。さらに別の形態では、支持部は、少なくとも4列の複数の反応容器を支持するようになされ、画成された間隔は、第1のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第1の棒磁石と第2のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第2の棒磁石である棒磁石を有する、第1および第2の列の間の全体的に垂直な長手方向の第1のスロットと第3および第4の列の間の全体的に垂直な長手方向の第2のスロットである。さらに別の形態では、第1および第2の棒磁石は垂直移動のために一緒に支持される。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、(1)反応容器が容器内の流体の選択されたヘッドを流体の表面張力によって支持することが可能な排液開口部をその底部に有する、流体内に検体を含む反応容器を支持するステップと、(2)排液開口部から離れて検体を濃縮するように、検体を容器の側面に引くステップと、(3)流体の表面張力に打ち勝ち、流体を排液開口部を介して放出させるのに十分な差圧を流体の頂部と排液開口部の底部の間に選択的に作り出すステップとを含む反応容器内の流体内の検体を処理する方法が提供される。
【0026】
本発明のこの態様の1つの形態では、選択的に差圧を作り出すステップが、排液開口部の下に真空を選択的に作り出すステップを含む。
【0027】
本発明のこの態様の別の形態では、引くステップが、検体を磁気微粒子に拘束するステップと、磁気微粒子および拘束された検体を容器の側面に引く磁場を容器内に導入するステップとを含む。別の形態では、この磁場は、磁気微粒子および拘束された検体を反応容器内で一緒に引きペレットにするように、反応容器の高さに沿って垂直に移動させる。さらに別の形態では、この移動させるステップは、反応容器内の流体の頂部に近い上側位置から反応容器の底部に近い位置に前記磁場を下側に移動させ、それによってペレットが反応容器の底部側近くに形成される。
【0028】
本発明のさらに別の態様では、反応容器を全体的に垂直な向きに支持するようになされた支持部と、支持された反応容器の片側に沿って選択された垂直移動のために支持される磁石とを含む試料取扱装置用の処理ゾーンが提供される。
【0029】
本発明のこの態様の1つの形態では、支持部が、各列が少なくとも1つの隣接する列から画成される間隔を有する、少なくとも2つの列の複数の反応容器を支持するようになされ、磁石が全体的に水平に延び、画成された間隔内で選択された垂直移動のために支持される。別の形態では、列間の画成された間隔が全体的に垂直な長手方向スロットを備え、磁石は棒磁石または電磁石である。さらに別の形態では、(1)支持部は、全体的に平行第1、第2、第3および第4の列の複数の反応容器を支持するようになされ、(2)画成される間隔は、第1および第2の列の間の全体的に垂直な長手方向の第1のスロットと第3および第4の列の間の全体的に垂直な長手方向の第2のスロットであり、(3)棒磁石は、第1のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第1の棒磁石および第2のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第2の棒磁石を含む。さらに別の形態では、第1および第2の棒磁石は一緒に垂直移動するように支持される。
【0030】
本発明のさらに別の態様では、(1)流体中に検体を含む反応容器を支持するステップと、(2)検体を磁気微粒子に拘束するステップと、(3)磁気微粒子および拘束された検体を容器の側面に引く磁場を前記容器内に導入するステップと、(4)磁気微粒子および拘束された検体を一緒に反応容器内でペレットの中に引くように、磁場を反応容器の高さに沿って垂直に移動させるステップとを含む反応容器内の流体内の検体を処理する方法が提供される。
【0031】
本発明のこの態様の1つの形態では、この移動させるステップは、反応容器内の流体の頂部近くの上側位置から反応容器の底部近くの位置に下側に前記磁場を移動させ、それによってペレットが反応容器の底部側近くに形成される。
【0032】
本発明のさらに別の態様では、中に上側に面する開口部を有して支持される複数の反応容器を有する処理ゾーンを持つデッキを含む検体検査装置用の流体取扱機構が提供される。この流体取扱機構は、第1の流体の第1の大量供給部と、Xが少なくとも4である、X個の選択された反応容器の上側に面する開口部上に、放出開口部のそれぞれを選択的に配置可能なX個の放出開口部を有する分配ヘッドとを含む。計量ポンプ機構が第1の大量供給部から流体の選択された量のX個のユニットを選択的に計量し、流体の計量され選択された量のX個のユニットを、放出開口部を介して選択された反応容器に選択的にポンプ輸送するようになされている。
【0033】
本発明のこの態様の1つの形態では、デッキは、各パターンがX個の反応容器を含む繰り返しのパターンで複数の反応容器を支持し、分配ヘッドの放出開口部はこのパターンで配置される。別の形態では、この繰り返しパターンは、反応容器の複数の列を含む。さらに別の形態では、列は少なくとも8個の反応容器を含み、Xは少なくとも8である。
【0034】
本発明のこの態様の別の形態では、第2の流体の第2の大量供給部が設けられ、計量ポンプ機構は、前記第1および第2の大量供給部の選択された1つから流体の選択された量のXユニットを選択的に計量するようになされる。別の形態では、計量ポンプ機構はX個のピストンポンプを含み、さらにX個のバルブ構造体も設けられ、各バルブ構造体はピストンポンプの1つを伴い、(1)第1および第2の大量供給部のうちの選択された1つへの接続をもたらすか、(2)関連する放出開口部への接続をもたらすかを選択的に切替可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の様々な態様による処理ゾーンおよび1つの反応容器の斜視図である。
【図2a】本発明の一態様による、磁石を異なる位置に示す複数の反応容器を支持する処理ゾーンの断面図である。
【図2b】本発明の一態様による、磁石を異なる位置に示す複数の反応容器を支持する処理ゾーンの断面図である。
【図2c】本発明の一態様による、磁石を異なる位置に示す複数の反応容器を支持する処理ゾーンの断面図である。
【図3a】本発明を含む処理ゾーンの斜視、断面図である。
【図3b】処理ゾーンに支持される2つの反応容器を示す拡大部分断面図である。
【図4a】本発明の一態様による反応容器の断面図である。
【図4b】本発明の一態様を組み込んだ異なる反応容器の拡大部分断面図である。
【図4c】本発明の一態様を組み込んだ異なる反応容器の拡大部分断面図である。
【図4d】本発明の一態様を組み込んだ異なる反応容器の拡大部分断面図である。
【図4e】本発明の一態様を組み込んだ異なる反応容器の拡大部分断面図である。
【図4f】本発明のいくつかの態様に使用可能な、受動的なバルブを有して使用される、反応容器の拡大部分断面図である。
【図4g】本発明のいくつかの態様に使用可能な、能動的なバルブを有して使用される反応容器の拡大部分断面図である。
【図5】排液開口部での流体ビードの直径に基づいて保持されるであろう具体的な流体の理論的なヘッドまたは高さを示すグラフである。
【図6】異なる直径の穴を有する反応容器内に保持されるであろう具体的な流体のヘッドまたは高さの試験結果を示すグラフである。
【図7】異なる排液開口部を介して3.5mLサンプルを空にするのに要する予想時間を示すグラフである。
【図8】本発明の一態様による、流体取扱機構の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明による、かつ適切な自動化検査装置(図示せず)によって使用可能な2つの処理ゾーン20、22が図1に示されている。本発明の説明を簡単にするために、図には検査装置全体は示されていない(かつ、示す必要はない)。例えば、適切な自動化検査装置は、生物学的なサンプルからの核酸の単離および検査を含む、生物学的サンプルからの核酸の実質的な単離用に構成されることができる。
【0037】
そのような用途のための適切な自動化検査装置では、ゾーン20、22が配置されている環境からの汚染に対して保護するために、例えば、この分野で知られているように、外側の汚染物質が環境内に入るのを防止するためにフードを設けることができる。そのような自動化検査装置は、1つまたは複数の以下の特徴も有利に含むことができる。(1)使用済の先端からの汚染を最小限にするように、使用されたピペット先端を保持し、サンプルおよび試薬から隔離するレセプタクル。(2)エアゾール制御装置、例えば、限定ではなく、(a)サンプルチューブまたは試薬チューブ密封剤、(b)核酸を改変する能力のある電流を有する、表面および/または液体を処理するための電極、(c)核酸を分解または改変する能力のある紫外線光源、(d)自動化検査装置内またはその周囲に層流の空気流を起こさせる装置、および(3)光吸収度または処理サンプルの蛍光性を測定するための光学検出器(例えば、蛍光光度計)。Tecan AGは、本発明の説明される様々な態様に使用することができる、汎用の研究室用ピペット機器を製造している。しかしながら、そのような機器の多くの特徴は、本発明に使用可能であるが、本発明の一部分を形成せず、したがって、図には示されていないことを理解されたい。本発明の理解を得たこの分野の技術者は、例えば、2003年2月7日出願の、「Apparatus and Method for Handling Fluids for Analysis」という名称の米国特許出願第10/360956号明細書、「Structure and Method for Performing a Determination of an Item of Interest in a Sample」という名称の米国特許第6413780号明細書、および同様に「Structure and Method for Performing a Determination of an Item of Interest in a Sample」という名称の米国特許公開第2002−0127727号に開示されているものなどの、そのような特徴を理解するであろう。それらの全体の開示は本明細書で参考として援用されている。
【0038】
さらに、図1に示すような本発明の実施態様である複数の処理ゾーン20、22のみならず、処理または試料取扱いの異なる種類のための追加の処理ゾーン(図示せず)を含む複数の処理ゾーンを、図示された検査装置などの単一の検査装置に使用することができる。例えば、所望の処理の前に試料を加えるなどによって反応容器を下処理することができる、追加の処理ゾーンを設けることができる。図1に示す複数の処理ゾーン20、22は、リソースの争い(すなわち、反応容器の1つのグループを使用する処理が、反応容器の別のグループが次の必要とされる処理ゾーン20での処理を完了するまで遅らされることがある場合に起こる争い)を最小限にするのを助ける。
【0039】
図1は、試料サンプルの検査を行うことができる処理ゾーン20を全体的に示す。本明細書で論じる処理ゾーン20、22が使用できる適切な検査装置では、検査のための試料を収容する(図1にその1つのみが示されている)反応容器26を、各ゾーン20、22の支持部30、32の上に装填することができる。この支持部30、32は、それぞれが上側に開口する頂部を有する、例えば、その中に反応容器26を支持することができる列を画成する支持ブラケットまたはラックとすることができる。支持部30、32は、使用者をその下の(以下で説明する)熱ブロックから保護する熱遮蔽材として働くことができる。所望の場合、反応容器の取扱いを容易にするために、処理ゾーン20、22へ、かつ、20、22から(例えば手動で、または適切なロボットの腕で)輸送可能な適切な移動可能運搬器も使用することができる。
【0040】
図1に示す支持部30、32は、8個の反応容器26の1列からなる1つのパターンが6回繰り返される繰り返しパターンで反応容器26を支持し、それによって全部で48個の反応容器26が1つの処理ゾーン20または22で同時に処理することができる。したがって本説明では、この処理は問題の検体を48個までの試料(例えば、DNAまたはRNA)から単離することができ、その処理の後で、単離された検体をさらに適切なプロトコルに従って検査することができる。しかしながら、本発明はそのような処理に決して限定されず、異なる処理またはプロトコルが行われる装置に容易に使用することができることを理解されたい。
【0041】
図示の実施形態では、処理ゾーン20、22のそれぞれは、行われる処理または手順によって要求されるいかなる温度、いかなる期間に対しても反応容器を加熱するように適切に制御することができる熱ブロック40を含む。この熱ブロック40は、適切なヒーター42からの熱を処理ゾーン20、22内の反応容器26全体に均一に分散するように、反応容器26を取り囲むように構成することができる。
【0042】
熱ブロック40は、反応容器26の隣接する列の間に長手方向の、垂直なスロットも有するように配置することができる。例えば、図2a〜2cに示すように、容器26の左側2つの列の間にスロット46があり、容器26の右側2つの列の間にスロット48があり、容器26の中央2つの列の間にスロット50がある。
【0043】
本発明の一態様によれば、適切な棒磁石60、62、64が反応容器26の列の間のスロット46、48、50内に移動するように支持されることができる。この棒磁石60、62、64は、垂直案内ロッド72上をクロスサポート(cross−support)70を移動させる制御された駆動部68によって、スロット46、48、50内を一緒の選択された垂直移動のために適切に支持されている。しかしながら、反応容器26内の磁場76(図2a参照)を移動させるために、以下で説明するように棒磁石60、62、64の垂直な移動を適切に制御する任意の構造を使用することは、本発明のこの態様の範囲内である。さらに、電磁石などのさらに別の適切な磁石を使用することも本発明の範囲内である。さらに、(例えば本発明のいくつかの態様が、一例として、問題の検体がシリカ膜に拘束されている非磁気サンプル下処理を含む、流体から問題の検体を磁気的に単離しない処理に使用される場合)磁石を全然使用しないことも本発明のいくつかの態様の範囲内であることを理解されたい。
【0044】
特に、反応容器26内での試料の処理中、反応容器26内に分散された問題の検体は、この分野で知られている適切な方法で磁気材料または微粒子に適切に拘束することができる。その後の処理中に、磁石60、62、64は、この磁気微粒子(および問題の拘束された検体)を容器28の片側に引くように、スロット46、48、50内を垂直に選択的に移動させることができる。さらに、磁石60、62、64を容器26の側面に沿ってスロット内を選択的に移動させて、容器内容物にその高さ全体にわたって均一な磁力を実質的に受けさせることによって、反応容器26内の磁気微粒子および問題の拘束された検体を容器26の高さ全体にわたって容器26の側面に強く引くことができる。さらに、磁石60、62、64を図2cに示すような上側(溶解物捕捉(lyse capture))位置から図2bに示すような底部(洗浄液捕捉(wash capture))位置に移動させることによって、磁気微粒子および問題の検体が容器26の側面に引かれるのみならず、磁石60、62、64が下側に動くとき、その結果、容器26の側面に沿って引き下ろされる可能性があり、それによって、そのような材料の所望のペレットが容器26の底部隅に形成される。
【0045】
複数の容器26を有する、棒磁石を使用する上記で説明した構造は、特に効率的に使用することができるが、さらに広く本発明の態様は、単一の反応容器26に関し説明したような1つの磁石の使用、すなわち、磁石を1個の容器26の側面に沿って移動させ、容器26の側面に磁気微粒子および拘束された問題検体を、下に引き寄せて、容器26の底部隅にペレットを形成させることも含むことができることを理解されたい。
【0046】
図3a〜3bは、本発明のさらに別の態様を示す。特に、各処理ゾーン20、22は、反応容器26の底部を、例えば、熱ブロック40で受けるための凹状の収容部78(図3b参照)を含むことができる。水平の排液通路または導管80が熱ブロック40の長さに沿って容器26の各列の下に延びることができ、垂直な通路82が水平の通路80に接続される。(図3aの86に概略的に示す)適切な真空源を、以下に説明するように容器26から流体を選択的に引く/放出させるために通路80、82に付加することができる。ここでは真空源86が説明されるが、重要な特徴は、容器26の頂部での流体の圧力に対し、(詳細に以下で説明するように)容器26の底部の放出または排液開口部の下がより低い圧力であることを理解されたい。したがって、本発明のこの態様は、例えば、通路80、82が大気圧である反応容器26の頂部に高圧を加えること、または圧力と真空の組合せによっても達成可能であることを理解されたい。
【0047】
特に、図4aに示すように、反応容器26が深さ(または高さまたはヘッド)Hを有する流体90およびサンプルを備えることは、一例として企図している。
【0048】
放出または排液開口部92が反応容器26の底部に設けられており、この排液開口部92は、流体90の表面張力が処理ゾーン20、22でのその状態において、流体が排液開口部92を通り放出されずに流体の高さを支持するに十分であるように構成されている。図4aに単一の開口部92が示されているが、容器26の底部を通る複数の開口部によって排液開口部を画成することも有利に本発明の範囲内であることを理解されたい。
【0049】
図4bは、排液開口部92の1つの構造を有する反応容器26を示し、流体90は、開口部92の周りにビード94を形成するように排液開口部92を通過している。開口部92が、流体90の表面張力が維持することができる寸法と同じくらいの寸法のビード94を維持するのに十分なだけ小さい限り、(すなわち、追加の力、流体90の頂部と底部の間の相対的圧力が、容器26の下の通路80、82内へのバキュームの導入によって選択的に作り出されるまで)流体90は、容器26内に支持されるであろう。
【0050】
図4cは、排液開口部92aの周りに適切な非濡れ性被覆または表面96が備えられた、反応容器26aの代替の実施形態を開示する。そのような非濡れ性被覆96は、流体90の容器26a内の流体90の所望の高さを支持する表面張力の能力を依然として維持しながら、より大きな寸法の排液開口部92aを使用できるように、ビードが出て被覆の上に広がることを防止する(図4bは、容器26を出て外側表面上に広がるビード94を示す)。
【0051】
図4dは、排液開口部92bの周りの突き出したチューブまたはフランジ98が備えられた、反応容器26bのさらに別の実施形態を開示する。このフランジ98も、ビードが出てフランジ98よりずっと大きな領域に広がることを防止することができ、それによって、図4cに対して説明したように、流体90を支持する流体90の表面張力の能力を依然として維持しながら、より大きな排液開口部92bの使用ができるようなる。
【0052】
図4eは、疎水性のフリット99または(Porex Corporation of Fairburn,Georgiaから得ることができるような)他の適切な疎水性の多孔質材料が排液開口部92cを画成するように容器26cに連結された、反応容器26cのさらに別の実施形態を開示する。この疎水性のフリット99は、流体に基づいて有利に選択することができ、フリット99は、容器26c内の流体90の所望の高さを支持し、選択された差圧が容器26cの頂部とフリット99/排液開口部92cの下の間に導入されるとき、流体がそこを通過できるようにする。したがって、流体の所望の高さが所望どおりに支持されることを可能にするために、低い表面張力特性を有する流体(例えば、アルコール)が使用されるとき、このフリット材料の空隙率は、より高い表面張力特性を有する流体に使用される材料より有利に小さくすることができる。
【0053】
上記で説明した容器26、26a、26b、26cは、そのような容器は低コストで廃棄可能なので特に有利である。しかしながら、本発明の態様は、その流体が容器26の下の通路80、82にバキュームを導入することにより作り出される選択された差圧に応答して容器から選択的に放出されることができる、流体の表面張力以外によって流体90のヘッドを支持する排液開口部を有するさらに別の容器を包含することを理解されたい。
【0054】
例えば、容器26の開口部のみならず適切な受動的バルブからなる排液開口部を所望の流体の流れをもたらすように設けることができ、この受動的バルブは、バルブの両端間に選択された差圧が作り出されるまでは流体の流れを遮断するように付勢される。図4fは、通路80、82内の真空の結果として起こる選択された差圧によって引いて開口される適切なバルブの一例として、ダックビルバルブ100を有する反応容器26dを示す。この分野の技術者なら、例えば、アンブレラバルブ、フラッパーバルブおよびばね付勢されたボールチェックバルブを含む、そのような動作をもたらす多数の他のバルブ構造体が適しており、かつ、本発明のいくつかの態様に有利に使用することもできることを理解するであろう。
【0055】
能動的バルブも、本発明のいくつかの態様に有利に使用することができる。図4gは、適切なピンチバルブ104、および動作が所望されるときに通路80’を選択的に閉または開にするための適切な制御器106を有する、通路80’、82’への適切な接続部102を有する反応容器26eを示す。疎水性のフリット99’も、容器26eの底部開口部に設けることができる。流体の所望の高さを支持し、差圧による助けなしに容器26eから流体を放出できるように開くことができる能動的バルブは、有利に選択することができる。しかしながら、能動的バルブ104が開いているときそのような放出を助けるバキュームを追加的に設けることは、本発明のいくつかの態様の範囲内である。
【0056】
上記で説明したようなバルブは、反応容器の一部、または容器の下の真空通路80、82の一部であることができる。
【0057】
図5は、通常一例として遭遇するような、以下の流体90の理論的な保持高さHを示す。
【表1】

図5の曲線106を見れば分かるように、そのような流体に対しては、60ダイン/cmの表面張力は、ビード直径が0.0508cm(0.02インチ)にわずか達しない(または、より小さい)場合は流体の5cmの高さHを支持するのに十分なはずである。したがって、ビード直径が、0.0508cm(0.02インチ)にわずかに達しない直径を超えないビード直径を形成する任意の排液開口部92は、真空部86を介して相対的な圧力が導入されるまで、反応容器26内の流体90を保持することができるはずである。
【0058】
しかしながら、図4bおよび6に示すように、図4bの排液開口部92は、ビードが開口部92の周りに広がりそうである限りは、許容できるビード寸法と同じ大きさでない可能性がある。図6は、22℃で(72.7ダイン/cmの表面張力σを有する)DI水を使用した実験の結果110、112、114を示し、ここで分かるように、所与の穴直径に対し支持される流体90の実際の高さ(一般に約1から2cm)は、それと同じ直径を有するそのような水のビードに対する理論的液体保持最大高さ118のはるかに下であった。そのような不足は、開口部92の周りのビードの広がり(図4bの94参照)に大部分起因すると考えることができる。前に論じたように、図4cおよび4dの実施形態は、開口部92a、92b周りのビードの広がりを制限することによってこの問題に対処している。
【0059】
図7は、穴直径に基づく3.5mLサンプル(例えば、従来型の反応容器26で5cm流体高さ)を空にする予想時間を示す。図5の(50℃の温度で0.87cPの流体粘度μを有する)サンプル流体を使用した異なる理論的な条件が示されている。穴長さ0.1016cm(0.040インチ)および0.2032cm(0.080インチ)、ならびに−25.4cm(−10インチ)Hgおよび−50.8cm(−20インチ)Hgの真空が示されている。特に、−25.4cm(−10インチ)Hg真空を使用した穴長さ0.2032cm(0.080インチ)に対する理論的放出時間が120に示され、−25.4cm(−10インチ)Hg真空を使用した穴長さ0.1016cm(0.040インチ)に対する理論的放出時間が122に示され、−50.8cm(−20インチ)Hg真空を使用した穴長さ0.2032cm(0.080インチ)に対する理論的放出時間が124に示され、−50.8cm(−20インチ)Hg真空を使用した穴長さ0.1016cm(0.040インチ)に対する理論的放出時間が126に示されている。
【0060】
図7の曲線120、122、124、126から分かるように、穴長さは、予想される放出時間に対し理論的に小さな影響力しか持たない。真空助力量は、時間に対しより大きな影響を有するが、依然として比較的小さい。約0.0127cm(0.005インチ)よりずっと小さな穴は図示の真空レベルで流体を放出するのが理論的に不可能であり、約0.0254cm(0.01インチ)以下の小さな穴直径は、極めて大きな放出時間を有するであろうことを示すことが特に重要である。放出時間がその結果、サンプルの処理を潜在的に極めて遅くする可能性があるので、0.0254cm(0.01インチ)より上のより大きな穴直径が、より小さな穴直径に対し有利な処理速度をもたらすであろうことを理解されたい。したがって、反応容器26a、26bが、例えば、前に説明したような、より大きな寸法の放出開口部92a、92bを有し、流体90の所望の高さを保持することができるようにする図4cおよび4dの実施形態は、本発明に特に有利に使用することができる。
【0061】
したがって、流体90を反応容器26から放出させるこの方法は、迅速かつ便利であることを理解されたい。さらに、そのような放出は廃棄可能なピペットの最小限のコストで行うことができることを理解されたい。さらに、説明したような底部放出開口部92を有する反応容器26の使用は、磁石60、62、64が、磁気微粒子を引き、問題の検体を容器26の底部側に拘束し、それによってそのような材料のペレットが放出開口部92から離れているように動作する限り、前に説明した移動可能な磁石60、62、64と共に有利に使用することができる。
【0062】
図8は、本発明の別の態様を開示し、それは、それによって所望の量の流体を容器26(図8に図示せず)のセットに加えることができる、流体の大量供給部に接続された移動ヘッド200を使用する。
【0063】
特に、このヘッド200は、2セットの出口204、206を含み、1つの出口セット204は、例えば、洗浄のために使用され、第2の出口セット206は、洗浄およびピペットの初期充填(prime)のために使用される。第2の(または追加の)出口セット206は、例えば、異なる種類の放出(例えば、スプレイノズル)が所望される可能性がある場合に、設けることができる。図示の実施形態では、出口セット204、206は、処理ゾーン20、22に支持される容器26のパターンに一致するように一列に配置された8つの出口を含む。したがって、ヘッド200は、処理ゾーン20、22の8つの容器26の任意の選択された列上にも配置することができ、それによって選択されたセット204、206の8つの出口が、ヘッド出口から放出される流体が選択された容器26に入るように、選択された8つの容器26上に整列される。
【0064】
ヘッド200は、セット204、206の出口のそれぞれに対する、(さらに以下で説明する)選択された流体の所望の量を計量することができる適切なポンプ220を伴う。そのような適切な計量ポンプ220の1つを、8つの2.5mLピストンポンプ222を含むCavro 24V、48V信号モータとして図8に示す。Cavro Scientific Instruments Inc.は、2450 Zanker Road,San Jose,California,USA 95131にある。さらに本明細書で説明するように、このポンプ220は、各出口セット204、206のXの数(図示の実施形態では8)の出口のそれぞれに対し大量供給部から所望の流体量(例えば、2.5mL)を計量することができる。しかしながら、ポンプ220の詳細は本発明の一部をなすものではなく、選択された出口セット204、206の出口を介しての放出には、選択された量(例えば、2.5mL)の流体の選択された数(X、例えば、8)を計量する任意のポンプおよびバルブシステムが適切であり得ることを理解されたい。
【0065】
適切な大量供給部230、232を、検査の要求される必要性に従って設けることができる。図示の例では、洗浄用の大量供給部230およびシングルステップ溶解緩衝液(single step lysis buffer)(SSLB)の大量供給部232がある。図8に示すように、各大量供給部230、232は、密閉された分配タンク240、242に接続された詰め替え可能なタンク236、238を含むことができる。バルブ246、248は、分配タンク236、238内の流体の所望のレベルを維持するのを助け、かつ、所望の場合流体を分配タンク240、242の頂部から抜くことができるように、分配タンク240、242を真空源(真空貯蔵庫254および真空ポンプ256)に選択的に接続することができる。別の真空バルブ260を、そのような材料を廃液容器262に選択的に引くために使用することができる。しかしながら、図示の大量供給部構造は本発明のこの態様に使用することができる構造の単に1つの適切な例であり、必要とされる流体が計量ポンプ220によってポンプ輸送されることができる任意の適切な大量供給部も本発明のこの態様に使用することができることを理解されたい。
【0066】
分配タンク236、238は、フレキシブルホース270、272などによって、移動ヘッド200に適切に接続される。
【0067】
適切なバルブ構造体が、選択された量(例えば、2.5mL)のX(例えば、8)ユニットを得るために計量ポンプ220を選択された流体の大量供給部に選択的に接続させることを可能にするために設けられており、その後で、選択された流体のXユニットは、ヘッド200によって選択された出口セット204、206がその上に配置される反応容器26の選択されたセット内に放出するために、選択された出口セット204、206に送られることができる。
【0068】
2つの大量供給部236、238に接続され、2つの出口セット204、206を有するヘッド200に対し適切であろうバルブ構造体の1つは、図8に示されている三バルブ構造体である。そのようなバルブ構造体の1つが、図示のピストンポンプ222のそれぞれに伴う。図示の実施形態は本発明のこの態様に有利に使用することができるが、本発明のこの態様は異なるバルブ構造体で容易に実施できることを理解されたい。
【0069】
特に、図示の三バルブ構造体は、それぞれが選択的に通路Aおよび通路B間を切り替えることが可能なバルブ280、282、284を含む。例えば、単一のサイクル中、バルブ280が通路Aに接続され、その後で計量ポンプ220が洗浄流体の2.5mLを大量供給部230からホース270を介してピストンポンプ222内に引き込むように作動させることができる。次いで、バルブ280が通路Bに切り替える。バルブ282が通路Aに切り替えられ、かつバルブ284が通路Bに切り替えられる。そしてそれによって、ピストンポンプ222を次いで、8つの洗浄流体2.5mLユニットを出口セット284の8つの出口を介してそれらの出口の下に配置された容器26(図示せず)内に放出させるように作動させることができる。
【0070】
前に説明したような8つの反応容器26の6つの列がある処理ゾーン20、22について使用されるときは、全部で48の反応容器26に洗浄流体を供給するために、上記の工程を6回繰り返すことができる。
【0071】
洗浄流体が選択された反応容器26の全ての中に放出された後、必要な場合、実施されている検査に基づいて、バルブ構造体の動作を異なる流体を供給するために変更することができる。例えば、その後でSSLB流体が所望される場合、バルブ280が通路Bに配置され、バルブ282が通路Aに配置され、バルブ284が通路Aに配置される。そしてそれによって、ピストンポンプ222を次いで、2.5mLのSSLB流体を大量供給部32からホース272を介してピストンポンプ222内に引き込むように作動させることができる。次いで、バルブ280が通路Bに維持され、バルブ282が通路Bに切り替えられ、それによって、ピストンポンプ222が次いで、8つの2.5mLユニットのSSBL流体を出口セット284の8つの出口を介してそれらの出口の下に配置された容器26(図示せず)内に放出するように作動される。この処理は次いで、SSLB流体を選択された反応容器26の全てに供給するのに必要に応じて繰り返される。
【0072】
本発明の図8の態様は、処理ゾーン20、22を効率的に、かつ信頼性高く使用できるようにすることを理解されたい。所望の量の流体が容易にかつ信頼性高く所望の量に計量されることができる。さらにこれは、迅速に、かつ、反応容器のセットがそのような流体を必要とする度に処理ゾーンと大量供給部を行ったり来たり移動する分配ヘッドによって必要とされるであろう遅れ時間なしに実行することができる。
【0073】
本明細書で説明した本発明の様々な態様は、効率的に、かつ迅速にサンプルを処理するために有利に動作することができる処理ゾーンを提供するために組み合わせることができることも理解されたい。
【0074】
本発明のさらに別の態様、目的、および利点は、明細書、図面および添付の特許請求の範囲を検討することから得ることができる。しかしながら、本発明は、上記で説明したような本発明および好ましい実施形態の目的および利点の全てに満たない目的および利点が得られるであろう別の形態も使用できることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液開口部が流体の選択されたヘッドを支持するように、かつ、流体の頂部と容器の底部の間に選択された差圧が存在するとき該排液開口部を通り流体を放出するようになされた、開口する頂部と該容器の底部の排液開口部とを有する容器を備える、流体中の検体を検査するための反応容器。
【請求項2】
流体の頂部と容器の底部の間の差圧が前記選択された差圧より小さいとき、流体の表面張力が流体の選択されたヘッドを支持する請求項1に記載の反応容器。
【請求項3】
前記排液開口部に伴う疎水性のフリットをさらに備える請求項1に記載の反応容器。
【請求項4】
流体の頂部と排液開口部の間の相対的圧力が少なくともある選択された大きさであるときのみ、前記排液開口部により前記流体の放出が可能になる請求項1に記載の反応容器。
【請求項5】
容器の外側の排液開口部の周りに非濡れ性表面をさらに備える請求項1に記載の反応容器。
【請求項6】
容器の底部表面を越えて延びる排液開口突起部をさらに備える請求項1に記載の反応容器。
【請求項7】
排液開口部が容器内の流体の選択されたヘッドを支持するようになされた、前記排液開口部を底部に有する複数の反応容器用の支持部と、
支持された反応容器の底部排液開口部と連通するようになされた通路と、
支持された反応容器の排液開口部を介して選択的に流体を放出させるようになされた、非大気圧の空気源とを備える試料取扱装置用の処理ゾーン。
【請求項8】
前記非大気圧の空気源が、前記通路内に真空を引くための真空源である請求項7に記載の処理ゾーン。
【請求項9】
前記処理ゾーンに支持された反応容器を加熱するためのヒーターをさらに備える請求項7に記載の処理ゾーン。
【請求項10】
前記反応容器が前記排液開口部を通る流体の放出なしに、流体の選択されたヘッドを支持するのに十分な表面張力を有する流体を選択的に収容するようになされ、前記非大気圧の空気源が、前記流体表面張力に打ち勝ち、流体を排液開口部を介し選択的に放出させるように、流体の頂部より相対的により低い圧力を排液開口部で選択的に作り出すようになされた請求項7に記載の処理ゾーン。
【請求項11】
前記支持部が、各列が少なくとも1つの隣接する列から画成される間隔を有する、少なくとも2つの列の複数の反応容器を支持するようになされた請求項7に記載の処理ゾーン。
【請求項12】
列間の前記画成された間隔が全体的に垂直な長手方向スロットを備え、
前記スロット内の選択された垂直移動のために全体的に水平に延び、かつ支持される磁石をさらに備える請求項11に記載の処理ゾーン。
【請求項13】
前記支持部が少なくとも4つの列の複数の反応容器を支持するようになされ、前記画成された間隔が第1と第2の列の間に全体的に垂直な長手方向の第1のスロットを、第3と第4の列の間に全体的に垂直な長手方向の第2のスロットを備え、前記磁石が第1のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第1の棒磁石および第2のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第2の棒磁石を備える請求項12に記載の処理ゾーン。
【請求項14】
前記第1および第2の棒磁石が一緒に垂直移動するように支持される請求項13に記載の処理ゾーン。
【請求項15】
反応容器が、流体の表面張力によって前記容器内の流体の選択されたヘッドを支持することが可能な排液開口部をその底部に有する、前記流体内に検体を含む前記反応容器を支持するステップと、
前記排液開口部から離れて前記検体を濃縮するように、前記検体を前記容器の側面に引くステップと、
前記流体の表面張力に打ち勝ち、流体を排液開口部を介して放出させるのに十分な差圧を流体の頂部と排液開口部の底部の間に選択的に作り出すステップとを含む反応容器内の流体内の検体を処理する方法。
【請求項16】
前記選択的に差圧を作り出すステップが、前記排液開口部の下に真空を選択的に作り出すステップを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記引くステップが、
前記検体を磁気微粒子に拘束するステップと、
磁気微粒子および拘束された検体を容器の側面に引く磁場を前記容器内に導入するステップとを含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記磁気微粒子および拘束された検体を一緒に引き、前記反応容器内でペレットにするように、前記反応容器の高さに沿って垂直に前記磁場を移動させるステップをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記移動させるステップが、反応容器内の流体の頂部に近い上側位置から反応容器の底部に近い位置に前記磁場を下側に移動させ、それによって前記ペレットが前記反応容器の底部側近くに形成される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
反応容器を全体的に垂直な向きに支持するようになされた支持部と、
支持された反応容器の片側に沿って選択された垂直移動のために支持される磁石とを備える試料取扱装置用の処理ゾーン。
【請求項21】
前記支持部が、各列が少なくとも1つの隣接する列から画成される間隔を有する、少なくとも2つの列の複数の反応容器を支持するようになされ、
前記磁石が全体的に水平に延び、前記画成された間隔内での選択された垂直移動のために支持される請求項20に記載の処理ゾーン。
【請求項22】
列間の前記画成された間隔が全体的に垂直な長手方向スロットを備え、前記磁石が電磁石である請求項21に記載の処理ゾーン。
【請求項23】
列間の前記画成された間隔が全体的に垂直な長手方向スロットを備え、前記磁石が棒磁石である請求項21に記載の処理ゾーン。
【請求項24】
前記支持部が、全体的に平行な第1、第2、第3および第4の列の複数の反応容器を支持するようになされ、
前記画成された間隔が、第1および第2の列の間の全体的に垂直な長手方向の第1のスロットと第3および第4の列の間の全体的に垂直な長手方向の第2のスロットを備え、
前記棒磁石が、第1のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第1の棒磁石と第2のスロット内の選択された垂直移動のために支持される第2の棒磁石を備える請求項23に記載の処理ゾーン。
【請求項25】
前記第1および第2の棒磁石が一緒の垂直移動のために支持される請求項24に記載の処理ゾーン。
【請求項26】
流体中に検体を含む反応容器を支持するステップと、
前記検体を磁気微粒子に拘束するステップと、
磁気微粒子および拘束された検体を容器の側面に引く磁場を前記容器内に導入するステップと、
前記磁気微粒子および拘束された検体を一緒に引き、前記反応容器内でペレットにするように、前記反応容器の高さに沿って前記磁場を垂直に移動させるステップとを含む反応容器内の流体内の検体を処理する方法。
【請求項27】
前記移動させるステップが、反応容器内の流体の頂部に近い上側位置から反応容器の底部に近い位置に前記磁場を下側に移動させ、それによって前記ペレットが前記反応容器の底部側近くに形成される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第1の流体用の第1の大量供給部と、
Xが少なくとも4である、X個の選択された反応容器の上側に面する開口部上に、放出開口部のそれぞれを選択的に配置可能なX個の前記放出開口部を有する分配ヘッドと、
前記第1の大量供給部から流体の選択された量のX個のユニットを選択的に計量し、
流体の計量され選択された量の前記X個のユニットを、前記放出開口部を介して前記選択された反応容器に選択的にポンプ輸送するようになされた計量ポンプ機構とを備える、中に上側に面する開口部を有して支持される複数の反応容器を有する処理ゾーンを持つデッキを含む、検体検査装置用の流体取扱機構。
【請求項29】
前記デッキが、各パターンがX個の反応容器を含む繰り返しのパターンで複数の反応容器を支持し、
前記分配ヘッドの放出開口部が前記パターンで配置される請求項28に記載の流体取扱機構。
【請求項30】
前記繰り返しパターンが反応容器の複数の列を含む請求項29に記載の流体取扱機構。
【請求項31】
Xが少なくとも8であり、前記列が少なくとも8個の反応容器を含む請求項30に記載の流体取扱機構。
【請求項32】
第2の流体の第2の大量供給部をさらに備え、前記計量ポンプ機構が前記第1および第2の大量供給部の選択された1つから流体の前記選択された量の前記X個のユニットを選択的に計量するようになされた請求項28に記載の流体取扱機構。
【請求項33】
前記計量ポンプ機構がX個のピストンポンプを含み、さらにX個のバルブ構造体を備え、各バルブ構造体が前記ピストンポンプの1つを伴い、(1)前記第1および第2の大量供給部のうちの選択された1つへの接続をもたらすか、または(2)関連する放出開口部への接続をもたらすかを選択的に切替可能である請求項32に記載の流体取扱機構。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−221030(P2011−221030A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132043(P2011−132043)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2006−517287(P2006−517287)の分割
【原出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】