説明

分析用光学系及びその光学系を用いた分析装置

【課題】十分なフィードバックのモニタ用光量を確保することで光源の光量安定化を図り,分析精度を高める。
【解決手段】レンズと第1のスリット部品の間に,もしくは前記レンズと前記第1のスリット部品の間で第1の光軸から分岐した第2の光軸上にモニタ用光検出器を配置し,そのモニタ用光検出器に,LED光源から出射する出射光のうち,計測に寄与しない出射光を積極的に集光可能な光学系を用いることで,モニタ光量を増大して光源の光量安定化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,測定対象物に含まれる成分量を検出する分析装置に係わり,検出精度の要である光度計のLED光源の光量を安定化し,分析精度向上を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物中に含まれる成分量を検出する分析装置として,ハロゲンランプ等からの白色光を反応容器に入れた測定対象物である試料溶液に照射し,試料溶液を透過してきた光を回折格子で分光して,目的の波長の吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置が広く用いられている。あるいは,白色光を回折格子で分光した後,試料溶液に照射する場合もある。一例として,特許第3749321号の自動分析装置がある。
【0003】
このような分析装置では,光源からの光に含まれるノイズ成分を低減し,光検出器に照射する光量を多くすることにより,S/Nの向上による高い検出精度確保を可能にする。そのため,光源の温度を一定にすることや,光源からの光を集光し効率良く試料に照射することが重要になり,光源の温度制御やレンズや鏡を用いた光学系が採用される。レンズや鏡を用いた例として,特開2007−225339号公報や特開2007−218883号公報がある。
【0004】
ハロゲンランプに代えて光源にLEDを用いた分析装置として,特許第3964291号や特開2007−198935号公報がある。LEDから出射される光の波長は単色光であるため,光源にハロゲンランプを用いた場合の白色光を分光する回折格子が不要な構成が考えられる等の利点がある。LEDから出射される光量はハロゲンランプに比較して一般に小さいため,光源にLEDを用いた分析装置では光を集光し,多くの光を試料に照射することがより重要となる。LED光を集光するためにレンズを用いた例として,特開2007−225339号公報がある。
【0005】
LEDから出射される光量は,電流や温度により大きく変動し,それがノイズ成分となるため,ハロゲンランプ以上に温度や電流の制御が重要になる。そのため,ファンやペルチエ素子による温度制御や電流を制御する方法が提案されており,一例として特開2005−277879号公報がある。
【0006】
また,光源から出射する光量をモニタし,光源の駆動電流にフィードバックする方法も提案されており,一例として特開2007−292577号公報,光源が半導体レーザではあるが特開2008−286866号公報がある。更に,特開2008−242196号公報,及び,これも光源が半導体レーザではあるが特開2007−328334号公報がある。
【0007】
LEDの光量は電流により変化するため,電流制御により光量安定化を図ることが多く,一般に,電流値を一定に制御する方法をACC(Automatic Current Control),光量をモニタして光源の駆動電流値にフィードバックして制御する方法をAPC(Automatic Power Control)と称している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3749321号
【特許文献2】特開2007−225339号公報
【特許文献3】特開2007−218883号公報
【特許文献4】特許第3964291号
【特許文献5】特開2007−198935号公報
【特許文献6】特開2007−225339号公報
【特許文献7】特開2005−277879号公報
【特許文献8】特開2007−292577号公報
【特許文献9】特開2008−286866号公報
【特許文献10】特開2008−242196号公報
【特許文献11】特開2007−328334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的の成分量を割り出すための吸光度は,単位としてAbs(Absorbance)が用いられる。生化学分析の場合,吸光度は,吸光度を持たない水等の吸光度を0Absとし,検体を通過する光軸の長さが10mmの時に,検体を通過した光量が1/10になる時の吸光度を1Abs,1/100になる時の吸光度を2Absのように対数で表わされる。より具体的には,検体を通過する前の光量をI0,検体を通過した後の光量をIとし,吸光度Aをランバート・ベールの法則から次の式(1)で表わす。
【0010】
【数1】

【0011】
生化学自動分析装置等の分析精度は,0Abs付近で1×10-4 Abs以下の分解能が要求され,近年,更なる分解能の向上が求められるようになっている。そのような高い分解能を得るためには,安定した十分な光量が光検出器に届くようにすることが必要である。
【0012】
分析装置の光源にハロゲンランプを使用した場合,ハロゲンランプが発熱するため,安定した光量を取り出すためには,冷却水等で精度良く温度制御することが必要であり,また,電源投入後,光源及び光学系が一定温度に安定するまでに数十分待ってから測定しなければならないという問題がある。
【0013】
また,分析精度を向上するためには,光検出器に取り込む光量を増やし,S/Nを向上させることが必要であるが,光源にLEDを用いた上記特許第3964291号の分析機器や特開2007−198935号公報の分析装置は,集光のためのレンズや鏡等を積極的に使用していないため,試料溶液に照射される光量,延いては試料溶液を通過する光量が少なく,分析の目的によっては精度良く分析できないという問題がある。
【0014】
分析精度を向上するためには,光量確保以外に光源の温度制御や電流制御によりLEDから出射される光量の変動を減らし,ノイズ成分を低減することも必要である。光源の温度制御や電流制御により光量の変動を減らし,光源からの光量をコントロールする方法として,上記特開2005−277879号公報や特開2007−292577号公報に記載のような方法があるが,より高精度を得るためにはAPCを用いフィードバック制御することが望ましい。
【0015】
その場合,フィードバックのモニタ用光検出器(第2の光検出器)にも,本来の計測用光検出器(第1の光検出器)と同様に十分な光量が必要である。しかし,特開2007−292577号公報や特開2008−286866号公報では迷光やケラレ光の一部をモニタ用に利用しており,積極的に集光していないことから十分なモニタ光量が得られないという問題がある。
【0016】
モニタ用に積極的に集光する方法として,特開2008−242196号公報のように光源とレンズの間に光源からの光を分岐する分岐光学素子を配置し,分岐した光を集光素子で集光してモニタする例があるが,最終的に光を制限するスリットでカットされる分を集められないという点や,分岐した光を集光するための集光素子が必要で,部品のコストや光学調整が複雑になるという問題がある。
【0017】
モニタ用に積極的に集光するもう一つの例として特開2007−328334号公報があるが,半導体レーザから出射される不要な迷光を集光せずにモニタホトダイオードに導いているため,モニタ用の光検出器の受光面積を広く必要とする。ホトダイオード等の光検出器からの暗電流は,光検出器の受光面積が広くなるほど大きくなるため,高精度分析には不利になるという問題がある。
【0018】
本発明は,少ない部品で,十分なフィードバックのモニタ用光量を確保することで,光源の光量安定化を図り,分析装置の分析精度向上に寄与する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は,LED光源から出射された出射光を整形して整形光とするレンズと測定対象物である検体のLED光源側に配置される第1のスリット間,もしくはレンズと検体間で光軸から分岐した光軸上に光源の光量をモニタするモニタ用光検出器を配置し,そのモニタ用光検出器に,光源から出射する出射光のうち,計測に寄与しない出射光を積極的に集光することで,モニタ光量を増大させて光源の光量安定化を図り,分析装置の分析精度向上を可能にする。
【0020】
好ましくは,レンズと検体の間に,レンズにより整形された整形光の照射領域を一定に制御し計測光とするスリット部品を備え,レンズとスリット部品の間に,レンズによる整形光のうちスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を検出するモニタ用光検出器を備える。モニタ用光検出器は,整形光のうちスリット部品を通過する光を通過させる開口を有するのが好ましい。また,モニタ用光検出器は,スリット部品の光源側表面に形成することができる。
【0021】
あるいは,レンズとスリット部品の間で光軸から分岐した別の光軸上に,レンズによる整形光のうちスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を検出するモニタ用光検出器を備える。光軸を分岐する手段は,整形光のうちスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を反射する反射鏡とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,少ない部品で,LED光源からの光量安定化に必要なフィードバックのモニタ用光量を十分に確保することができるため,LED光源からの光量が安定し,分析精度の高い分析装置を低コストで提供することができる。また,LED光源の温度制御をしなくとも光量の安定化が可能であるため,分析装置の電源投入後,早期に分析作業の開始が可能になるという効果もある。光源に消費電力の少ないLEDを用いることで,また,前述のように分析装置の電源投入後早期に分析作業の開始が可能になることで,分析作業に要する消費エネルギーを大きく減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による分析用光学系の一例の基本構成を示す略図である。
【図2】アンプから出力される電圧信号を擬似的にグラフ化した図である。
【図3】理想的に安定したLED光量による信号を擬似的にグラフ化した図である。
【図4】LEDの温度変動による光量の揺らぎ成分を擬似的にグラフ化した図である。
【図5】温度変動が加わったLED光量による信号を擬似的にグラフ化した図である。
【図6】ショットノイズを擬似的にグラフ化した図である。
【図7】アンプの特性に由来するノイズを擬似的にグラフ化した図である。
【図8】波長570nmのLEDの温度を可変し,定格電流である20mAで駆動した時の光量測定値をスペクトルで示した図である。
【図9】現時点で比較的光量の大きいLEDのスペクトルと光量を測定した結果を示すグラフである。
【図10】ノイズ測定実験の構成を示す略図である。
【図11】ノイズ測定実験の結果を示すグラフである。
【図12】迷光やケラレ光を第2の光検出器で検出する構成例を示す略図である。
【図13】図12の構成例でのLEDからの出射光の内訳を示す略図である。
【図14】図13のLEDからの出射光の内訳の光量割合を示すグラフである。
【図15】本発明によるスリット部品の構成例を示す略図である。
【図16】本発明による分析用光学系の他の例の基本構成を示す略図である。
【図17】本発明による分析用光学系の他の例の基本構成を示す略図である。
【図18】本実施例による液体分析システムの例を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお,スリットは細い隙間のことであるが,細い隙間,及び,細い隙間を形成する部品もしくは細い隙間を持つ部品のことを一般にスリットと呼ぶことが多い。本発明では,細い隙間のことをスリット,細い隙間を形成する部品,もしくは細い隙間を持つ部品のことをスリット部品と呼ぶ。また,スリット部品のスリットを通過する光を表す時には,「スリット部品を通過する光」もしくは単に「スリットを通過する光」と表記する。スリットは検体の安定した領域に照射する光の断面を常に一定にするため,また,不要な迷光等を除去するため等の目的で配置され,計測用光検出器に照射する光量を減少してしまうが,必要不可欠な要素である。
【0025】
[実施例1]
図1は,本発明の第1の実施例の分析用光学系の基本構成を示す略図である。この分析用光学系は主に,図1に示した第1の光軸1上に左側から右側に向けて,LED光源2,レンズ3,第1のスリット部品4,第2のスリット部品5,及び,第1の光検出器6が配置され,第1のスリット部品4と第2のスリット部品5との間に測定対象物である検体7を納めた容器8をセットして測定する。
【0026】
次に,本実施例の分析用光学系による測定時の動作を説明する。LED光源2から出射された出射光のうち,レンズ3に取り込み可能な範囲の光9は,レンズ3により整形されて整形光10となり,容器8内に納められた検体7に向けて照射される。この時,整形光10は第1のスリット部品4により照射される領域を一定に制御され,検体7には計測光11が照射される。検体7を通過した計測光11は,検体7中に含まれる目的の成分に吸収もしくは散乱されること等により減衰し,第1の光検出器6によって計測される。計測された信号は信号処理回路12で処理され,その減衰量から目的の成分量が割り出され,データ処理・記憶部13により集計される。
【0027】
なお,本発明での整形とは,レンズや反射鏡等で集光もしくは平行光にする等して,光束を整えることをいう。
【0028】
この時,LED光源2からの出射光の光量を安定化し分析精度を向上するために,次のような機構が付加されている。すなわち,第1のスリット部品4のLED光源2側表面に第2の光検出器14が形成されており,第2の光検出器14は,レンズ3により整形された整形光10のうち,計測光11として用いられない光をモニタ光15として検出する。これにより,モニタ光15は,計測光11と同様にレンズ3により集光されることもあって,多くのモニタ光15を第2の光検出器14で検出することが可能となる。
【0029】
そして第2の光検出器14で検出したモニタ光15の光量が一定になるように,光量制御回路16によりLED光源2の駆動電流をフィードバック制御することで,LED光源2からの光量の揺らぎ等のノイズを低減し,光量を安定化している。
【0030】
次に,ノイズを除去し光量を安定化する方法について述べる。通常,ノイズとして認識されるのは,光検出器が受光した光が電流信号として出力され,トランスインピーダンスアンプ等のアンプで電流を電圧に変換し,アンプから電圧信号として出力された段階である。この電圧信号に含まれるノイズを低減することがS/Nを向上させ,分析精度の向上につながる。
【0031】
アンプから出力される電圧信号に含まれるノイズには,光源由来のノイズ,光検出器に由来するノイズ,アンプに由来するノイズ等がある。光源由来のノイズには,主に光源の駆動電流に含まれるノイズによる光量の変動ノイズと光源の温度変動等による光量の揺らぎ,光検出器に由来するノイズには,主に暗電流とショットノイズ,アンプに由来するノイズは,主に入力換算雑音で表わされるアンプの特性に由来するノイズ等がある。
【0032】
図2に,アンプから出力される電圧信号を擬似的にグラフ化して示す。図3は理想的に安定したLED光量による信号を示し,これに種々のノイズが重畳して図2に示すような電圧信号になる。その中で,影響の大きなノイズ成分として,図4にLEDの温度変動による光量の揺らぎ成分,図6にショットノイズ,図7にアンプの特性に由来するノイズをそれぞれ擬似的にグラフ化して示す。図5は,温度変動が加わったLED光量による信号を示している。
【0033】
LED光量による信号は,LEDを一定電流で駆動した場合,図3の様に一定の値になることが理想的であり,その値を知れば検体中の成分量を測定することができる。しかし実際には,前述のLEDの温度変動による光量の揺らぎ,ショットノイズ,アンプの特性に由来するノイズが加わり,計測精度を低下させる。より具体的に述べると,まず,LED自身の温度変動により,LEDを一定電流で駆動しても光量が変動する。温度による光量の変動に関し,図8に,波長570nmのLEDの温度を可変し,定格電流である20mAで駆動した時の光量測定値をスペクトルで示す。LEDから出力される光量は,図4の変動成分が重畳し,図5のように変動して出射され,検出器で検出される。次に,検出器に入射する光子の,ポアソン分布の性質により発生する図6のようなショットノイズがある。更に,図7に示すアンプの特性に由来するノイズがある。これらの信号とノイズが重畳し,図2のような電圧信号としてアンプから出力される。アンプから出力される電圧信号のノイズ成分を除去することでS/Nが向上し,分析精度を向上することが可能になる。
【0034】
これらのノイズの除去,もしくは低減には次のような方法がある。まず,LEDの温度変動による光量の揺らぎの低減方法として,LEDを恒温状態に制御して使用する方法がある。しかし,恒温状態にするためには,温度が安定するまでに時間が掛かるという問題がある。LEDの温度変動による光量の揺らぎを低減するもう一つの方法として,本実施例によるフィードバック制御がある。LEDの温度変動は,他のノイズに比べてゆっくりしているため,第2の検出器により光量をモニタし,それが一定になるようにLEDの駆動電流をフィードバック制御することで,光量の揺らぎを低減することができる。
【0035】
次に,ショットノイズであるが,ショットノイズは光量を増加することで低減することができる。光量をモニタし,LEDの駆動電流をフィードバック制御する時点で,光量の揺らぎにもショットノイズが含まれるため,ショットノイズ以下に揺らぎを抑えることはできない。十分な光量が得られない場合はその影響が大きくなるため,第1の光検出器とモニタ用の第2の光検出器には,より多くの光量を確保することが重要になる。
【0036】
本実施例の構成によれば,第2の光検出器にも十分な光量が確保可能であり,ショットノイズが低減されたフィードバック信号により,より揺らぎ低減効果のある駆動電流でLEDの光量安定化を可能にし,LEDの出力を図3の信号に近い状態にすることができる。
【0037】
アンプの特性に由来するノイズに関しては,アンプの設計に起因する内容であり,光量とは直接関係しないので割愛する。
【0038】
前述のように,生化学自動分析装置の分析精度は,0Abs付近で1×10-4 Abs以下の分解能が要求され,近年,更なる分解能の向上が求められるようになっている。そのような高い分解能を得るためには,安定した十分な光量が光検出器に届くようにすることが必要である。
【0039】
光源がハロゲンランプの場合,比較的十分な光量が確保可能であるが,ハロゲンランプからの発熱を伴うため,安定した光量を取り出すためには,冷却水等で精度良く温度制御することが必要であり,電源投入後,光源及び光学系が一定温度に安定するまでに数十分待ってから測定しなければならないという問題がある。
【0040】
光源がLEDの場合,ハロゲンランプに比べると発熱量は少ないが,光量はハロゲンランプに比較して一般に小さいため,先に述べたような0Abs付近で1×10-4 Abs以下の分解能を得るためには,少なくとも本実施例に示すように光を集光し,多くの光が試料を通過し光検出器に照射できるようにすることが必要である。また,LEDから出射される光量は,電流や温度により大きく変動し,ノイズ成分となるため,ハロゲンランプ以上に温度や電流の制御が重要になる。一手段として,LEDを恒温状態にしたうえで,定電流駆動で点灯する方法が考えられるが,恒温状態にするためには,温度が安定するまでにハロゲンランプの場合と同様に時間がかかる。
【0041】
前述のように,LEDから出射される光量は,電流や温度により大きく変動しノイズ成分となる。通常ノイズとして認識されるのは,光検出器が受光した光を電流信号として出力し,トランスインピーダンスアンプ等で電流を電圧に変換され,電圧信号として検出した段階である。この電圧信号に含まれるノイズを低減することがS/Nを向上させ,分析精度の向上につながる。
【0042】
光源にLEDを用いた場合,ハロゲンランプに比較して光量が少ないこと等から,光量の揺らぎとショットノイズを低減することが最も重要となる。
【0043】
光量の揺らぎを低減するには,本実施例のように,第2の光検出器14で検出したモニタ光15の光量が一定となるように,光量制御回路16によりLED光源2の駆動電流をフィードバック制御する方法が有効であるが,その場合も,どこまで光量の揺らぎを低減できるかは,主にフィードバック制御された駆動電流に含まれるショットノイズによる。
【0044】
ショットノイズを低減するには,光量を増加することが重要であり,その理由と本実施例による集光方法の光量確保効果について以下に述べる。
【0045】
たとえば,光検出器にシリコンホトダイオードを用い,比較的性能が良いとされるオペアンプを用いて製作したアンプにより計測する場合で,光量が少ない場合,分析性能に最も影響を及ぼすのは前述のショットノイズである。光源由来のノイズを如何に低減しても,電圧信号のノイズはショットノイズ以下に低減することはできない。
【0046】
光検出器(シリコンホトダイオード)が受光した光子数の時間当たりの平均値をnとした時に,nに対するショットノイズNは,ポアソン分布の性質により,次の式(2)で表わされる。
【0047】
【数2】

【0048】
ショットノイズは,n,すなわち光量を増やせば低減することが可能である。生化学自動分析装置等の分析精度は,0Abs付近で1×10-4 Abs以下の分解能が要求されるが,それを達成するために必要な光量を次に述べる。
【0049】
0Abs=log1=0付近で1×10-4 Absという微小な変化を議論するに際し,吸光度Abs=電流の対数であることに注意する。0Abs付近での微小変化を考えた時,吸光度Absの微小変化量と電流の微小変化量は一致するので,前記式(2)のN=1×10-4 すなわちノイズが1×10-4になる時に光検出器(シリコンホトダイオード)に流れる電流Iを必要な光量とすると,
【0050】
【数3】

【0051】
より,n=1×108(個)の光子数が必要となる。電気素量を1.6×10-19クーロンとすると,光検出器に入る電荷Cは,
C=1×108×1.6×10-19
=1.6×10-11(クーロン)
電流=クーロン/秒であるため,計測する時間(積分時間)を0.001秒(生化学自動分析装置では通常この程度の短い時間に1回の計測を行う)とすると,光検出器に流すべき電流Iは,
【0052】
【数4】

【0053】
よって,光検出器に1.6×10-8アンペアの電流が流れるだけの光量が必要である。理論的に第1の光検出器でこれ以上の光量を確保できれば,検出精度を1×10-4すなわち1×10-4 Abs以下にすることが可能であり,第2の光検出器でこれだけの光量を確保できれば,光源からの光量の揺らぎを1×10-4以下にフィードバック制御することが可能な光源の駆動電流を得ることができる。
【0054】
もちろんこれ以外にも,先に述べたような各種ノイズが存在するので,これは最低でも必要な光量である。また,上記例では計測する時間(積分時間)を0.001秒としたが,もっと短時間であればより多くの光量を必要とするし,より高い精度を要求する場合も,より多くの光量を必要とする。
【0055】
生化学自動分析装置では,340nm,376nm,405nm,415nm,450nm,480nm,505nm,546nm,570nm,600nm,660nm,700nm,750nm,800nmなどの波長が用いられ,特にこの中から376nmと415nmを除いた12波長が多く用いられている。これらの波長を主波長とする市販のLEDの中で,現時点で比較的光量の大きいLEDのスペクトルと光量を測定した結果を図9に示す。これらの中では,340nmと570nmのLEDの光量が他の波長に比べて小さい。
【0056】
このうち,570nmのLEDを用い,図10に示すノイズ測定実験の構成で光量を測定し,含まれるノイズ成分を計測した結果を図11に示す。この測定では,2つのスリット部品のスリット開口寸法を変えることにより,ホトダイオードの受光電流で約0.05μA,0.5μA,5.0μAになるように制限し,それぞれの受光電流を20秒間(積分時間0.001秒で20000回)測定した値からノイズ量を割り出した。結果は,受光電流が0.05μA(5×10-8A)の場合で約1.4×10-4 Absのノイズ量であった。先程の計算では,1.6×10-8アンペアで1×10-4 Absになる見積もりであったのに対し,より多くの光量にもかかわらずノイズ量が多いのは,他にも各種ノイズが存在することの表れである。
【0057】
この測定で使用したのは波長570nmのLEDであり,図10のようなレンズで光束を整形する構成である。かつ,ホトダイオードの受光電流を約0.05μAに調整したスリットは,生化学自動分析装置で使用上の制限を受ける程度の大きさであり,現時点で比較的光量の大きいLEDを選択しても,光量の少ない波長のLEDでは,たとえ集光してもノイズ低減に十分な光量を確保するのは難しいことを意味する。生化学自動分析装置で使用する波長には,この570nmのLEDよりもLED出射光量の少ない波長が340nmに存在する。このようなLEDで十分な光量を確保するためには,集光光学系が欠かせず,ましてや,2つ目の検出器である第2の光検出器での光量確保は,迷光やケラレ光からでは不可能である。
【0058】
迷光やケラレ光を第2の光検出器で検出する例を,図1の構成を基に,図12,図13,図14を用いて説明する。
【0059】
図12に示す分析用光学系は主に,図1に示した光学系と同様に,第1の光軸1上に左側から右側に向けて,LED光源2,レンズ3,第1のスリット部品4,第2のスリット部品5,及び,第1の光検出器6を配置している。測定対象物である検体7を納めた容器8の配置,計測の方法も図1の場合と同様であり,LED光源2から出射された出射光のうち,レンズ3に取り込み可能な範囲の光9が,レンズ3により整形され整形光10となり,容器8内に納められた検体7に向けて照射されることも,整形光10が第1のスリット部品4により照射される領域を一定に制御され,検体7に計測光11が照射されることも同じである。
【0060】
図1の例と異なるのは,LED光源2からの出射光の光量を安定化するために用いる第2の光検出器の配置場所である。図12では,第2の光検出器14’をLED光源2の近くに,取り込み可能な範囲の光9の範囲に掛からないように,第1の光軸1に対し約45度の位置に配置している。この時,第2の光検出器14’が取り込み可能なモニタ光15’となるLED光源2からの出射光の角度は,実情に合わせ6度と想定した。また,図1には示していないが,LED光源2から出射される光のうち,レンズ3により蹴られたケラレ光17を追加して図示している。
【0061】
図13は,図12のLED光源2から出射される光の,取り込み可能な範囲の光9,計測光11,及び,モニタ光15’の内訳を実情に合わせた大まかな角度で示した図である。
【0062】
図14は,図13,図12で使用するLED光源として,図9に示した波長570nmの個体の特性を断面してグラフで示した図である。グラフの横軸は,第1の光軸1を0度とした放射角度,縦軸は,LED光源2から出射される光の強度を表わしている。また,図13に示す計測光11,整形光10,モニタ光15’の領域をハッチングと引き出し線の説明で示す。なお,整形光10の領域は,中心部の計測光11の放射角度6度の領域を含まない。
【0063】
図12,図13,図14において,それぞれの図は出射光の断面を示しているため,中心部の計測光11の光量を1とした時に,整形光10の光量は10,モニタ光15’は0.4と,大まかに見積もられる。図14の引き出し線の下に,それぞれの光量の数値を示した。
【0064】
図10の説明の個所で,図10の構成のように集光しても,また,スリットサイズ等の条件を生化学自動分析装置の制限に合わせ,現時点で比較的光量の大きいLEDを選択しても,光量の少ない波長のLEDでは,ノイズ低減に十分な計測光の光量を確保するのは難しいと述べたが,図12に示した条件では,第2の光検出器14’が検出するモニタ光15’は計測光11よりも小さいため,ケラレ光を用いるにしても,何らかの集光手段を用いない限り,計測光と同等の光量を確保することは困難である。また,計測光とモニタ光15’を同等にするだけであれば,第1の光軸1に対しLED光源2の光の出射方向を第2の光検出器14’の方に傾ければ可能であるが,第1の光検出器6,第2の光検出器14’それぞれの受光光量が減少するという問題がある。
【0065】
以上のことから,第2の光検出器での光量確保には,迷光やケラレ光からでは不可能である。それに対し,図1に示した構成では,図12の整形光10をモニタ光15として使用しているため,ノイズ低減に十分な光量を確保することが可能である。
【0066】
このように,第1の光検出器に照射される計測光には,ノイズを低減するために十分な光量が必要であるが,先に述べたように第2の光検出器に照射されるモニタ光にも同レベルの光量が要である。そして,第2の光検出器においては,このような十分な光量を迷光やケラレ光からでは得ることはできない。そのため,本実施例,及び,後述する本発明の他の実施例においても,第1の光検出器だけでなく第2の光検出器にも多くの光を集光することに重点を置き,先に述べたような方法によりフィードバック制御することで,LED光源2からの光量を安定化し,分析精度の向上を図っている。また,電源投入後早期の測定を可能にしている。
【0067】
本実施例では,第1のスリット部品4のLED光源2側表面に第2の光検出器14を形成しているため,レンズ3により整形,集光された整形光10が第2の光検出器14にも照射され,第1の光検出器6と同等の十分なモニタ光量が確保でき,1×10-4 Abs以下の分解能を得るのに十分なLED光源2の光量安定化を可能にしている。この時,光検出器にシリコンホトダイオードを用いた場合,シリコンホトダイオードに流れる暗電流もノイズ成分となる。暗電流は,シリコンホトダイオードの受光面積が大きいほど大きくなるため,できるだけ小さい受光面積の物を用いるのが望ましい。小さい受光面積のシリコンホトダイオードで大きな受光光量を得るためには光を集光すればよく,本実施例では第1のスリット部品4の光源側表面に第2の光検出器14を形成して配置しており,その位置は,図1に示すようにレンズ3により整形され集光された位置に当たるため,第2の光検出器14の受光面積を小さくすることができ,ノイズ成分となる暗電流を少なくした上で十分なモニタ光量を確保できるという効果もある。
【0068】
図15に,本実施例で用いたスリット部品の例を斜視図で示す。図15(a),図15(b),図15(c)それぞれのハッチング部分がホトダイオードの光電膜18である。本実施例において,第2の光検出器は,第1のスリット部品の表面に形成されているとしているが,これは,図15(a)のように,Si基板19などに整形されたホトダイオードにスリットとなる穴20を加工した物や,図15(b)のように,ガラス基板21上に成膜されたホトダイオードの光電膜18のみにエッチング等でスリットとなる窓22を形成した物である。また,図15(c)のように,ホトダイオードなどの光検出器14”を中心部にスリットより大きな穴23を持つ基板24の上に複数個(図では4個)並べて配置し,その隙間をスリットとしたスリット部品が第2の光検出器を兼ねる物でもよい。
【0069】
なお,第2の光検出器14を,第1のスリット部品4の表面に形成せずに,第1のスリット部品4と別体として前記レンズ3と前記第1のスリット部品4間に配置してもよい。その場合には,レンズ3と第1のスリット部材4の間のできるだけ第1のスリット部品4に近い位置,すなわちレンズ3による整形光10の断面が小さな位置に,第2の光検出器14を配置する。第2の光検出器としては,計測光11を遮断することなく通過させる開口を有し,整形光10のうち計測光11として用いられない計測光11の外側の光をモニタ光15として受光できる受光領域を有するものを使用する。
【0070】
[実施例2]
図16は,本発明の第2の実施例の分析用光学系の基本構成を示す略図である。この分析用光学系は主に,図16に示した第1の光軸1上左側から右側に向けて,LED光源2,レンズ3,第1のスリット部品4,第2のスリット部品5,及び,第1の光検出器6を配置し,第1のスリット部品4と第2のスリット部品5との間に測定対象物である検体7を納めた容器8をセットして測定する。
【0071】
次に,本実施例の分析用光学系による測定時の動作を説明する。LED光源2から出射された出射光のうち,前記レンズ3に取り込み可能な範囲の光9は,レンズ3により整形され整形光10となり,容器8内に納められた検体7に向けて照射される。この時,整形光10は第1のスリット部品4により照射される領域を一定に制御され,検体7には計測光11が照射される。検体7を通過した計測光11は,検体7中に含まれる目的の成分に吸収もしくは散乱されること等により減衰し,第1の光検出器6によって計測される。計測された信号は信号処理回路12で処理されその減衰量から目的の成分量が割り出され,データ処理・記憶部13により集計される。
【0072】
この時,LED光源2からの出射光の光量を安定化し分析精度を向上するために,次のような機構が付加されている。すなわち,レンズ3と第1のスリット部品4との間に,計測光11が通過する窓31を持つ反射鏡32が配置され,反射鏡32により第1の光軸1から分岐した第2の光軸33を生成し,第2の光軸33上に第2の光検出器14を配置している。第2の光検出器14は,レンズ3により整形された整形光10のうち,計測光11として用いられない光をモニタ光15として検出する。そして第2の光検出器14で検出したモニタ光15の光量が一定となるように,光量制御回路16によりLED光源2の駆動電流をフィードバック制御することでLED光源2からの光量を安定化している。
【0073】
本実施例では,計測光11が通過する窓31を持つ反射鏡32により,レンズ3で整形,集光された整形光10から計測に使用する計測光11を通過させ,計測には使用されない部分をモニタ光15として第2の光軸33上に分離することで,第1の検出器6と同様にレンズ3で整形,集光されたモニタ光15が第2の光検出器14に照射されるため,第1の光検出器6と同等の十分なモニタ光量が確保でき,1×10-4 Abs以下の分解能を得るのに十分なLED光源2の光量安定化を可能にしている。同様にレンズ3は,モニタ光15も整形,集光し第2の光検出器14に照射するため,第2の光検出器14の受光面積を小さくすることができ,ノイズ成分となる暗電流を少なくした上で,十分なモニタ光量を確保できるという効果もある。
【0074】
本実施例の構成によれば,第2の光検出器にも十分な光量が確保可能であり,ショットノイズが低減されたフィードバック信号により,より揺らぎ低減効果のある駆動電流でLEDの光量安定化を可能にし,LEDの出力を図3の信号に近い状態にすることができる。
【0075】
本実施例において,計測光11が通過する窓31を持つ反射鏡32は,反射鏡に計測光11が通過する窓31を穴加工した物や,光透過性のあるガラス基板上に形成された反射部材のみにエッチング等で計測光11が通過する窓31を形成した物である。また,反射鏡を複数個並べ,その隙間を計測光11が通過する窓31とした物でも良い。これらの事項は,実施例1の光電膜18とスリットの関係を示す図15の,光電膜18を反射部材に置き換えれば説明が可能であるため,図示は省略する。本実施例の反射鏡32の反射膜の代わりに光電膜を成膜し,第2の光検出器とすることも可能である。その場合,部品点数を減らすことができるという効果があるが,本実施例の第2の光検出器に比べて必要とする受光面積が大きくなるため,暗電流が大きくなるという問題がある。
【0076】
反射鏡32がハーフミラーのように透過光と反射光を特定の割合で分離するものであってもよい。その場合,反射鏡に前述のような穴加工をすることや,反射部材へのエッチングによる窓加工が不要となり,反射膜成膜時の膜厚制御のみで簡単に製造できるという効果がある。しかし,透過光と反射光は共に前記特定の割合に従って減衰してしまうため,第1の光検出器6に入射する計測光11と第2の光検出器14に入射するモニタ光15は両方とも減少してしまうという問題がある。
【0077】
[実施例3]
図17は,本発明の第3の実施例の分析用光学系及びその光学系を用いた分析装置の基本構成を示す略図である。実施例1及び実施例2では,第2の光検出器で検出したモニタ光の光量を用いて光量制御回路によりLED光源の駆動電流をフィードバック制御し,LED光源からの光量を安定化することで第1の光検出器に入り込むノイズを低減し分析精度を向上する方法を採っているのに対し,本実施例では,第1の光検出器と第2の光検出器で受光した光量との差により測定値を求めることで,第1の光検出器に入り込むノイズ成分を除去し,分析精度を向上する方法を採っている。
【0078】
本実施例の分析用光学系による測定時の動作は,実施例1もしくは実施例2のいずれかの方法と同じであるため割愛する。
【0079】
図17において,分析用光学系41は実施例1もしくは実施例2のいずれかの分析用光学系の基本構成を示す略図から,光量制御回路を除いた分析用光学系である。一例として,本実施例では実施例2の光学系の図を引用して説明する。分析用光学系41内では,実施例1もしくは実施例2のいずれかの方法により配置されている第1の光検出器6で,検体中に含まれる目的の成分に吸収もしくは散乱されること等により減衰した計測光11が検出される。同様に,分析用光学系41内に配置された第2の光検出器14ではモニタ光15が検出される。
【0080】
この時,第1の光検出器6で検出した計測光11と第2の光検出器14で検出したモニタ光15には,分析用光学系41内に配置されたLED光源2から出射された出射光9に含まれるノイズ成分が同じ割合で含まれている。そのため,第1の光検出器6と第2の光検出器14からの電気信号を信号処理回路42で処理し,ノイズ成分を除去することで分析精度を向上すると同時に目的の成分量を割り出す。信号処理回路42では,第1の光検出器6と第2の光検出器14からの電気信号に含まれるノイズ成分が同じ大きさとなるように両者の増幅率を調整した上で,第1の光検出器6の出力から第2の光検出器14の出力を差し引く処理を行う。その上でデータ処理・記憶部13により集計される。
【0081】
本実施例の構成によれば,第1の光検出器と第2の光検出器に十分な光量を確保し,それぞれの光検出器によるショットノイズを低減した上で,2つの光検出器の差分からLED光源から出射された出射光に含まれるノイズ成分を除去することができ,図2に示すアンプから出力される電圧信号から図3の信号に近い情報を得ることができる。
【0082】
[実施例4]
図18は,本発明による液体分析システムの実施例を示す略図である。液体分析システム50は,恒温槽51,反応容器52を恒温槽51と同心の円周上に複数並べ持つ反応容器ディスク53,測定試料を入れた検体容器54,複数の検体容器54を搬送するラック55,検体容器54内の測定試料を一定量吸引して反応容器52に分注する検体ディスペンサ56,分析項目により選択可能な複数の試薬が入った試薬ボトル57を収めた試薬ディスク58,試薬ボトル57から一定量の試薬を吸引して反応容器52に分注する試薬ディスペンサ59,反応容器52に分注された測定試料と試薬を撹拌する撹拌部60,分析が終了した後の反応容器52を洗浄するための洗浄部61,実施例1,実施例2あるいは実施例3による光度計から成る計測部62,及び,データ処理・記憶部13等から構成されている。
【0083】
図18において,反応容器ディスク53は測定試料の分注,試薬の分注,反応容器52に分注された測定試料と試薬の撹拌,及び,反応容器52の洗浄の動作時に停止し,同動作を次の反応容器52で行うために回転移動する。また,ラック55は複数の検体容器54を搬送するために移動し,試薬ディスク58は,所望の試薬ボトル57を試薬ディスペンサ59が吸引できる位置に回転移動する。通常,反応容器ディスク53は一定方向に回転し,測定試料と試薬が分注され,撹拌されて測定可能になった反応容器52内の測定試料が計測部62の位置に来たときに光度計で計測され,信号を取得する。計測された信号は液体分析システム50内の信号処理回路で処理され,データ処理・記憶部13により集計される。
【0084】
本実施例において,実施例1もしくは実施例2のように,第2の光検出器で検出したモニタ光の光量を光量制御回路によりLED光源の駆動電流としてフィードバック制御しLED光源からの出射光の光量を安定化し分析精度を向上する場合,フィードバック制御はLEDを点灯している時に行われる。そしてLEDは,装置起動に連動して点灯する方式か,もしくは,実施例1もしくは実施例2の,フィードバック制御により早期に光量が安定するという特徴を活かし,計測の時にのみ点灯する方式でも良い。
【0085】
また,本実施例において,実施例3のように第1の光検出器と第2の光検出器からの電気信号を信号処理回路で処理し,ノイズ成分のみを除去することで分析精度を向上する場合,計測が行われる度に電気信号を信号処理回路により処理する。
【符号の説明】
【0086】
1 第1の光軸
2 LED光源
3 レンズ
4 第1のスリット部品
5 第2のスリット部品
6 第1の光検出器
7 検体
8 容器
9 取り込み可能な範囲の光
10 整形光
11 計測光
12 信号処理回路
13 データ処理・記憶部
14 第2の光検出器
14’ 第2の光検出器
14” 第2の光検出器
15 モニタ光
15’ モニタ光
16 光量制御回路
17 ケラレ光
18 光電膜
19 Si基板
20 穴
21 ガラス基板
22 窓
23 穴
24 基板
31 窓
32 反射鏡
33 第2の光軸
41 分析用光学系
50 液体分析システム
51 恒温槽
52 反応容器
53 反応容器ディスク
54 検体容器
55 ラック
56 検体ディスペンサ
57 試薬ボトル
58 試薬ディスク
59 試薬ディスペンサ
60 撹拌部
61 洗浄部
62 計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光軸上に,LED光源,前記LED光源から出射された出射光を整形するレンズ,前記レンズにより整形された整形光の照射領域を一定に制御し計測光とする第1のスリット部品,前記第1のスリット部品を通過し更に測定対象物である検体を通過した前記計測光の領域を一定に制御する第2のスリット部品,前記第2のスリット部品を通過した前記計測光を検出する第1の光検出器が配置された分析用の光学系において,
前記レンズと前記第1のスリット部品の間に,もしくは前記レンズと前記第1のスリット部品の間で前記第1の光軸から分岐した第2の光軸上に,前記整形光のうち前記第1のスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を検出する第2の光検出器を有することを特徴とする分析用光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の分析用光学系において,前記第2の光検出器は,前記整形光のうち前記第1のスリット部品を通過する光を通過させる開口を有することを特徴とする分析用光学系。
【請求項3】
請求項1に記載の分析用光学系において,前記第2の光検出器は,前記第1のスリット部品の前記LED光源側表面に形成されていることを特徴とする分析用光学系。
【請求項4】
請求項1に記載の分析用光学系において,前記レンズと前記第1のスリット部品の間で前記第1の光軸から前記第2の光軸を分岐する手段が,前記整形光のうち前記第1のスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を反射する反射鏡であることを特徴とする分析用光学系。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析用光学系において,前記LED光源の主波長が340nm,376nm,405nm,415nm,450nm,480nm,505nm,546nm,570nm,600nm,660nm,700nm,750nm,800nmのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする分析用光学系。
【請求項6】
複数の検体容器を保持し搬送する手段と,
複数の試薬容器を保持する手段と,
複数の反応容器を保持し搬送する手段と,
前記検体容器中の検体を前記反応容器に分注する検体ディスペンサと,
前記試薬容器中の試薬を前記反応容器に分注する試薬ディスペンサと,
前記反応容器中の溶液の吸光度を測定するための計測部と,
前記計測部で計測された信号を処理する信号処理部とを有する分析装置において,
前記計測部は,第1の光軸上に,LED光源,前記LED光源から出射された出射光を整形するレンズ,前記レンズにより整形された整形光の照射領域を一定に制御し計測光とする第1のスリット部品,前記第1のスリット部品を通過し更に前記反応容器中の溶液を通過した前記計測光の領域を一定に制御する第2のスリット部品,前記第2のスリット部品を通過した前記計測光を検出する第1の光検出器,及び,前記レンズと前記第1のスリット部品の間に,もしくは前記レンズと前記第1のスリット部品の間で前記第1の光軸から分岐した第2の光軸上に,前記整形光のうち前記第1のスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を検出する第2の光検出器を有することを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の分析装置において,前記第2の光検出器の出力によって前記LED光源の光出力をフィードバック制御することを特徴とする分析装置。
【請求項8】
請求項6に記載の分析装置において,前記第1の光検出器の出力と前記第2の光検出器の出力の差を演算して測定値を求めることを特徴とする分析装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の分析装置において,前記第2の光検出器は,前記整形光のうち前記第1のスリット部品を通過する光を通過させる開口を有することを特徴とする分析装置。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の分析装置において,前記第2の光検出器は,前記第1のスリット部品の前記LED光源側表面に形成されていることを特徴とする分析装置。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の分析装置において,前記レンズと前記第1のスリット部品の間で前記第1の光軸から前記第2の光軸を分岐する手段が,前記整形光のうち前記第1のスリット部品を通過する光以外の少なくとも一部を反射する反射鏡であることを特徴とする分析装置。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の分析装置において,前記LED光源の主波長が340nm,376nm,405nm,415nm,450nm,480nm,505nm,546nm,570nm,600nm,660nm,700nm,750nm,800nmのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−237384(P2011−237384A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111277(P2010−111277)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】