分析用具およびその製造方法
【課題】 比色センサなどの分析用具相互のロット間差に起因する分析精度のバラつきを、使用者の負担を軽減しつつ確実に抑制する。
【解決手段】 試料が点着される1以上の試薬含有層15を有し、かつ光学的手法を利用して試料の分析を行うめに使用される分析用具1において、分析用具1に入射する光の量または分析用具1から出射する光の量を規定することによって、分析用具1の感度を調整するための感度調整手段16を備えた。
【解決手段】 試料が点着される1以上の試薬含有層15を有し、かつ光学的手法を利用して試料の分析を行うめに使用される分析用具1において、分析用具1に入射する光の量または分析用具1から出射する光の量を規定することによって、分析用具1の感度を調整するための感度調整手段16を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法により試料中の特定成分を分析する際に使用される分析用具、およびこの分析用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的手法により血糖値を測定する際に利用される分析用具としては、たとえば図22および図23に示した比色センサ9がある。この比色センサ9は、血糖値測定装置に装着して使用するものであり、第1および第2透明板91,92を、一対のスペーサ93を介して接合した形態を有している。比色センサ9では、各要素91〜93により、キャピラリ94が規定されている。キャピラリ94の内部には、血液が供給されたときに溶解する試薬部95が設けられている。この試薬部95は、発色剤、酸化還元酵素および電子伝達物質などの試薬類を含むものとして構成される。
【0003】
このような比色センサ9では、開口96を介してキャピラリ94に血液を導入した場合、キャピラリ94の内部において生じる毛細管力により血液が開口97に向けて移動する。これにより、試薬部95が溶解し、キャピラリ94の内部には、グルコース、発色剤、酸化還元酵素および電子伝達物質を含む液相反応系が構築される。液相反応系においては、試薬部95に含まれる反応成分やグルコースが拡散して反応が生じ、グルコースから取り出された電子が、電子伝達物質を介して発色剤に供給される。発色剤は、電子が供給されることにより発色し、この発色により液相反応系が着色される。着色の程度は、光学的手法により検知され、この検知結果に基づいて血糖値を演算することができる。
【0004】
ところで、比色センサ9の感度は、試薬部95に含まれる試薬類の量、試薬部95の溶解性、あるいは酸化還元酵素の活性などの影響を受ける。このような比色センサ9の感度に影響を与える影響の程度は、たとえば比色センサ9を製造するときの環境(使用する製造ライン、使用する試薬類のロット、製造時の温度や湿度など)によって異なってくる。そのため、同一感度の比色センサ9を繰り返し製造するのは困難であり、いわゆる比色センサ9相互においてロット間差として現れる。このようなロット間差は、測定精度のバラつきを生じさせるため、測定精度を向上させるためには、ロット間差が測定結果に与える影響を何等のかたちで除外する必要がある。
【0005】
ロット間差が測定結果に与える影響を除外する方法としては、たとえば比色センサ9の製造時にセンサ感度を検査した上で、そのセンサ感度を血糖値測定装置に認識させ、血糖値測定装置においてセンサ感度に応じた濃度演算を行わせる方法がある。血糖値測定装置にセンサ感度を認識させるための方法としては、使用すべき比色センサ9のセンサ感度を使用者が血糖値測定装置に手入力する方法、あるいはセンサ感度に応じた補正チップを作成し、この補正チップによって血糖値測定装置に装着する方法がある(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
いずれの方法においても、比色センサ9を使用する際に使用者が血糖値測定装置を操作し、あるいは血糖値測定装置に対して補正チップを着脱させる必要があるために使用者の負担が大きい。また、測定に際して、使用者が血糖値測定装置に対してセンサ感度を入力し忘れ、あるいは補正チップを使用し忘れたりすることがある。そのため、上述の方法では、センサ感度を血糖値測定装置に認識させることを使用者に委ねているために、ロット間差の影響を確実に除外することができない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−156358号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、比色センサなどの分析用具相互のロット間差に起因する分析精度のバラつきを、使用者の負担を軽減しつつ確実に抑制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面においては、試料が点着される1以上の試薬含有層を有し、かつ光学的手法を利用して試料の分析を行うめに使用される分析用具であって、当該分析用具に入射する光の量または当該分析用具から出射する光の量を規定することによって、当該分析用具の感度を調整するための感度調整手段を備えていることを特徴とする、分析用具が提供される。
【0010】
本発明の分析用具は、たとえば試薬含有層を支持するための支持基板を有するものとして構成される。この場合、感度調整手段は、支持基板に接合した状態で、あるいは支持基板自体に設けられる。
【0011】
本発明の分析用具は、支持基板に対して一定間隔隔てた状態で対面して接合され、かつ上記支持基板との間に上記試薬含有層が設けられた板状部材をさらに備えたものとして構成することもできる。この場合、感度調整手段は、上記支持基板または板状部材における光透過性を規定するものとして形成される。
【0012】
試薬含有層は、たとえば多孔質体に試薬を担持させた構成とされる。多孔質体としては、紙状物、フォーム(発泡体)、織布状物、不織布状物、および編物状物が挙げられる。多孔質体を形成するための材料としては、たとえば綿、麻、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンおよびポリオレフィンが挙げられる。
【0013】
好ましくは、感度調整手段は、開口部を有しており、かつ上開口部の開口面積の大きさにより上記光透過性を規定するマスクである。このマスクは、たとえばリング状に形成されている。
【0014】
感度調整手段は、光吸収剤を含んだ膜として形成することもできる。この場合、感度調整手段は、たとえば上記膜における光吸収剤の含有量または上記膜の厚みよって透過率が調整される。
【0015】
本発明の第2の側面においては、光学的手法を利用して試料の分析を行うように構成された複数の分析用具を製造する方法であって、板材上に複数の試薬含有層を形成する試薬含有層形成工程と、上記複数の試薬含有層のうちの少なくとも1つの試薬含有層を利用して、製造されるべき分析用具の感度を検査する検査工程と、上記感度に対応した量の光を透過させるための感度調整手段を形成する感度調整工程と、含むことを特徴とする、分析用具の製造方法が提供される。この製造方法においては、板材に対して一定間隔離間させた状態に他の板材を接合する接合工程さらに含んでいてもよく、その場合、感度調整工程においては、板材および他の板材のうちの少なくとも一方に、感度調整手段が設けられる。
【0016】
好ましくは、感度調整手段は、透過光量を制限するための複数の開口部を有するものとして形成される。この場合、感度調整工程においては、開口部は、上記検査工程において得られる感度に応じた開口面積を有するものとして形成される。
【0017】
感度調整手段は、たとえば各分析用具に対応させて個別に形成され、かつ開口部を有する複数のマスクからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、第1ないし第3の実施の形態として、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0019】
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図10を参照しつつ説明する。
【0020】
図1ないし図3に示した比色センサ1は、使い捨てとして構成されたものであり、光学的手法により試料(たとえば尿、血液および唾液などの生化学的試料)における特定成分(たとえばグルコース、コレステロールあるいは乳酸)の濃度を測定することができるように構成されたものである。この比色センサ1は、長矩形の第1および第2透明板11,12を、一対のスペーサ13を介して接合した形態を有しており、各要素11〜13により、第1および第2板材11,12の長手方向に延びるキャピラリ14が規定されている。
【0021】
第1および第2透明板11,12は、PDMS、PS、PET、PMMA、ビニロンなどにより透明に形成されている。第1透明板11には、キャピラリ14の内部に収容された状態で試薬含有層15が設けられている。一方、第2透明板12には、マスク16が形成されている。
【0022】
試薬含有層15は、試料に対して溶解しやすい固体状に形成されており、発色剤を含んだものとして構成されている。
【0023】
発色剤としては、公知の種々のものを用いることができるが、電子授受により発色したときの吸収波長が、試料の吸収波長からずれたものを用いるのが好ましい。発色剤としては、たとえばMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)、4AA(4-Aminoantipyrine)を用いることができる。
【0024】
試薬含有層15は、電子伝達物質あるいは酸化還元酵素を含んだものとして構成してもよい。そうすれば、試料における特定成分と発色剤との間の電子授受をより速く行うことができるようになるため、測定時間を短くすることが可能となる。
【0025】
酸化還元酵素としては、たとえば比色センサ1をグルコース濃度を測定するように構成する場合にはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)やグルコースオキシダーザ(GOD)を用いることができる。また、発色剤として4AAを用いる場合には、酸化還元酵素としてGODとPODを併用してもよい。電子伝達物質としては、たとえば [Ru(NH3)6]Cl3、K3[Fe(CN)6]あるいはmethoxy-PMS(5-methylphenazinium methylsulfate)を使用することができる。
【0026】
マスク16は、比色センサ1の内部に入射する光の量、あるいは比色センサ1の内部から外部に出射する光の量を制限するためのものである。このマスク16は、開口部16Aにおいてのみ光を透過させるように形成されている。開口部16Aは、試薬含有層15に対応する部分に設けられている。このようなマスク16は、黒色顔料(たとえばカーボンブラック)を含んだ膜として形成されている。もちろん、マスク16は、比色センサ1への入射光または比色センサからの出射光の光量を制限できればよく、黒色以外の顔料を含ませた膜、たとえば白色の顔料を含ませた膜として構成することもできる。
【0027】
比色センサ1では、この比色センサ1の内部に入射する光の量あるいは比色センサ1から出射する光の量が開口部16Aの開口面積の大きさによって規制される。そして、開口部16Aの開口面積の大きさが比色センサ1の感度に応じて決定されている。すなわち、比色センサ1の感度が低い場合には開口部16Aの面積が大きく設定される一方で、比色センサ1の感度が高い場合には開口部16Aの面積が小さく設定される。たとえば、比色センサ1の感度を「低い」、「普通」、「高い」の3段階に分けた場合には、それらの感度に応じて図4(a)〜図4(c)に示したように開口面積の異なる3種類の開口部16Aa,16Ab,16Acの中から感度に対応した開口部16Aa,16Ab,16Acが選択される。もちろん、比色センサ1の感度と開口部16Aa,16Ab,16Acの開口面積の関係は、図4(a)〜図4(c)に示した3段階には限定されず、また開口部の形状も円形には限定されない。
【0028】
一対のスペーサ13は、第1および第2透明板11,12の間の距離、すなわちキャピラリ14の高さ寸法を規定し、かつキャピラリ4の幅寸法を規定するためのものである。これらスペー1サ3は、たとえば両面に粘着性を有する粘着テープにより構成される。
【0029】
キャピラリ14は、その内部が開口14A,14Bを介して外部と連通している。開口14Aは、キャピラリ4の内部に試料を導入するためのものであり、開口14Bは、キャピラリ14の内部の空気を排出するためのものである。このようなキャピラリ14では、キャピラリ14の内部において生じる毛細管力により、開口14Aを介してキャピラリ14に導入された試料を開口14Aに向けて移動することができる。
【0030】
以上に説明した比色センサ1は、次のようにして製造することができる。
【0031】
まず、図5に示したように、透明シート2に複数の撥水線20を形成する。透明シート2としては、たとえばPDMS、PS、PET、PMMA、ビニロンにより、複数の比色センサ1(図1ないし図3参照)を同時に製造できる程度の大きさを有するように形成されたものが使用される。図5においては、一点鎖線によって囲まれた矩形領域21が1つの比色センサ1(図1ないし図4参照)を形成するための領域に対応している。一方、撥水線20は、後述する試薬含有層22を形成するための領域を粘着テープ3とともに規定するためのものであり(図7参照)、たとえばノズルなどを用いて撥水剤を透明シート2上に塗布した後に乾燥させることにより形成される。撥水剤としては、たとえばフッ素系化合物あるいはシリコン系化合物を含むものを使用することができる。
【0032】
次に、図6に示したように、透明シート2に対して粘着シート3を貼着する。粘着シート3は、両面に粘着性を有するものであり、後において比色センサ1のスペーサ13(図1ないし図3参照)を構成するものである。粘着シート3としては、予め複数のスリット30が形成されたものが使用される。スリット30は、後において比色センサ1のキャピラリ14(図1および図2参照)を構成するものであり、透明シート2の表面および撥水線の一部を露出させている。すなわち、スリット30の内部には、透明シート2上において、スリット30の内面および撥水線20によって矩形領域31が規定されている。この矩形領域31は、次の工程において試薬含有層22を形成するためのものである。
【0033】
続いて、図7に示したように、矩形領域31に試薬含有層22を形成する。試薬含有層22は、酸化還元酵素および電子伝達物質を含む材料液を、矩形領域に分注した後に材料液を乾燥させることにより形成することができる。矩形領域31は、撥水線20によってその一部が規定されているため、撥水線20によって材料液が拡がってしまうことを回避することができる。
【0034】
次に、図8に示したように、複数のスリット30を覆うように粘着テープ3上に透明シート4を接合し、センサ集合体5を形成する。この透明シート4としては、たとえば透明シート2と同様なものが使用される。
【0035】
続いて、図9に示したように、センサ集合体5から1つの比色センサ50を打ち抜き、その比色センサ50の感度の検査を行う。感度の検査は、特定成分の濃度が既知の試料を用いて、通常の濃度測定の場合と同様な手法により行われる。
【0036】
次に、図10に示したように、開口部60を有する複数のマスク6を、1つの比色センサにつき1つが対応するように透明シート4上に設ける。各マスク6は、開口部60においてのみ光をさせるものとして形成される。各マスク6の開口部60の開口面積は、先に説明した感度の検査の結果に基づいて設定される。すなわち、予めセンサ感度の複数の範囲に分ける一方で、それぞれに範囲に対応させて開口面積を決定しておいた上で、検査された感度が属する範囲に対応する開口面積の開口部60を決定する。たとえばセンサ感度を「低い」、「普通」、「高い」の3つの範囲に分けた場合には、それらの感度に応じて、開口面積が「大きい」、「普通」、「小さい」の中から選択される(図4(a)および図4(b)参照)。
【0037】
ここで、マスク6を形成する方法としては、スクリーン印刷をはじめとする公知の成膜方法を採用することができる。また、マスク6を形成するための材料としては、たとえばカーボンペーストなどの黒色顔料を含むものを使用することができる。ただし、マスク6は、必ずしも黒色に形成する必要はなく、測光時に使用する波長の光を吸収または反射できればよく、その他の色に形成してもよい。また、マスク6は、予め開口部60を形成しておいたテープを貼着することにより設けてもよい。
【0038】
最後に、マスク形成後の中間体に打ち抜き加工を施すことにより、図1ないし図3に示した比色センサ1が得られる。
【0039】
このようにして得られる比色センサ1では、開口14Aを介してキャピラリ14に試料を供給した場合には、キャピラリ14において生じる毛細管現象により、試料がキャピラリ14の内部を移動する。試料の移動過程においては、試料により試薬含有層15が溶解させられ、キャピラリ14の内部に液相反応系が構築される。試料の移動は、試料が開口14Bに到達したときに停止する。
【0040】
液相反応系においては、試料における特定成分から取り出された電子が発色剤に供給されて発色剤が発色し、液相反応系が着色される。試薬含有層15に酸化還元酵素および電子伝達物質が含まれている場合には、酸化還元酵素が試料中の特定成分と特異的に反応して特定成分から電子が取り出され、その電子が電子伝達物質に供給された後に発色剤に供給される。したがって、発色剤の発色の程度(液相反応系の着色の程度)は、特定成分から取り出された電子の量、すなわち特定成分の濃度に相関している。
【0041】
液相反応系の着色の程度は、測定装置(図示略)に比色センサ1を装着することにより把握される。より具体的には、測定装置(図示略)においては、比色センサ1の測光領域(開口部16Aが形成されている部分)に対して上方から第2透明板12に向けて光を照射し、そのときに液相反応系を透過して第1透明板11から出射する光を受光することにより検知される。液相反応系に照射する光は、発色剤の発現色に対する吸収の大きな波長の光が採用される。最終的な特定成分の濃度は、たとえば液相反応系に対して入射させた入射光の強度と、液相反応系を透過した透過光の強度と、の比に基づいて演算される。
【0042】
ここで、測光領域への光照射は、下方から第1透明板11に向けて行ってもよく。この場合には、第2透明板12から出射される光の量がマスク16によって制限される。また、マスク16が形成された側から比色センサ1に光を照射する場合には、反射光を受光し、その反射光の受光量に基づいて液相反応系の着色の程度を把握するようにしてもよい。
【0043】
比色センサ1では、開口部16Aを有するマスク16を形成することにより、測光領域に入射する光あるいは測光領域から出射する光の量が制限されている。その一方で、開口部16Aの開口面積は比色センサ1の感度に応じて設定されている。そのため、比色センサ1では、センサ感度についてロット間差が生じているとしても、開口部16Aの開口面積をセンサ感度に対応したものとすることにより、実質的なセンサ感度のバラつきが低減されている。そのため、ロット間差に起因する測定精度のバラつきを低減することができる。
【0044】
また、本発明では、センサ感度が測定結果に与える影響は、比色センサ1の形態を工夫することにより低減されている。そのため、センサ感度を測定装置に認識させる必要がないために、使用する比色センサ1のセンサ感度を使用者が測定装置に手入力し、あるいはセンサ感度に応じた補正チップを測定装置に装着する必要もない。その結果、使用者の操作負担が軽減される。その一方で、使用者が測定装置に対してセンサ感度を把握させるのを忘れるといった事態は生じなくなるため、ロット間差の影響を確実に低減することができるようになる。
【0045】
本発明に係る分析用具は、上述した実施の形態に示した比色センサには限定されない。たとえば比色センサに入射する光あるいは比色センサから出射する光の量を調整するための手段としては、図11ないし図14に示した構成を採用することもできる。
【0046】
図11および図12に示した比色センサ1′は、第2透明板材12′の測光領域(試薬含有層15に対応する部分)に対してリング状のマスク16′を設けたものである。このマスク16′においても、開口部16′の開口面積がセンサ感度に対応したものとして形成されている。
【0047】
この比色センサ1′では、マスク16′を形成する領域が小さいために、マスク16′を形成するのに必要な材料の量を少なくすることができる。そのため、比色センサ1′では、製造コストを低減することができる。
【0048】
図13および図14に示した比色センサ1″は、第2透明板材12′の測光領域(試薬含有層15に対応する部分)に対して円形状の透過率調整膜16″を設けたものである。透過率調整膜16″は、内部に光吸収剤を分散させたものであり、光吸収剤の量および種類、厚みを選択することにより、透過率が調整されたものである。
【0049】
光吸収剤の種類は、吸収すべき光の波長に応じて選択され、光吸収剤の量は主としてセンサ感度に応じて選択される。すなわち、比色センサ1″では、透過率調整膜16″によって測光領域に入射する光あるいは測光領域から出射する光の量が規定されている。したがって、透過率調整膜16″の透過率を比色センサ1″の感度に応じて設定することにより、上述した比色センサ1(図1〜図3参照)と同様な効果を得ることができる。
【0050】
ここで、透過率調整膜16″は、たとえば公知の成膜方法により第2透明板材12″に形成してもよく、またフィルムを貼着することにより設けてもよい。また、透過率調整膜は、その形状については円形には限定されず、その他の形状であってもよい。
【0051】
図15(a)〜(c)に示したように、マスク16、16′あるいは透過率調整膜16″などの感度調整手段は、第2透明板材12,12′,12″に限らず、第1透明板材11,11′,11″に設けてもよく、また第1および第2透明板材の双方に設けてもよい。
【0052】
また、感度調整手段としては、第1および第2透明板材のうちの少なくとも一方の表面を、少なくとも測光領域に対応する部分について粗面化した構成を採用することもできる。すなわち、粗面化の程度を選択することにより測光領域での光透過性を比色センサの感度に対応させることができる。ここで、第1および第2透明板材の表面を粗面化する方法としては、ブラスト処理あるいはエッチング処理を採用することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図16および図17を参照しつつ説明する。
【0054】
図16および図17に示したドライ試験片7は、光を照射したときの反射光に基づいて試料の分析を行うように構成されたものであり、支持基板70に対して複数の試験紙71を貼着した構成を有している。
【0055】
試験紙71は、発色剤などの試薬をろ紙などの多孔質体に担持させたものであり、支持基板70の長手方向に並んで設けられている。
【0056】
支持基板70は、顔料を含有させるなどして全体が光非透過性を有するものとして形成されているとともに、複数の貫通孔72を有するものとして形成されている。顔料としては、黒色や白色のものが好ましく使用される。
【0057】
各貫通孔72は、試験紙71の貼着位置に対応して設けられており、試験紙71の一部を露出させている。各貫通孔72は、その開口面積が対応する試験紙71の感度に応じて決定されている。すなわち、支持基板70自体が先の比色センサ1におけるマスク16としての機能を有している。
【0058】
ドライ試験片7では、試験紙71に試料を点着する一方で、支持基板70の側から光を照射し、そのときに試験紙71において反射した光を受光することにより、その受光量から試料における特定成分を分析することができる。そして、ドライ試験片7においては、試験紙71の感度に応じて開口面積の決定された貫通孔72を介し、光の照射および反射光の受光を行うために、先に説明した比色センサ1と同様な効果を奏することができる。
【0059】
なお、ドライ試験片7では、支持基板70に貫通孔72を形成していたが、支持基板70を透明に形成する一方で、支持基板70に先に説明した比色センサ1と同様なマスク16(図1ないし図3)を設けてもよい。また、支持基板に貼着すべき試験紙の数は図示された数には限定されず、その他の数あってもよい。
【0060】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図18および図19を参照しつつ説明する。
【0061】
図18および図19に示したドライ試験片8は、光を照射したときの反射光に基づいて試料の分析を行うように構成されたものであり、透明基板80上に、試薬含有層81および展開層82を積層した構造を有している。複数の試薬含有層81は、透明基板80上において、マトリックス状に配置されている。展開層82は、複数の試薬含有層81を一括して覆っている。
【0062】
透明基板80には、マスク83が設けられている。マスク83は、感度調整手段に相当するものであり、顔料を含有させるなどして全体が光非透過性を有するものとして形成されているとともに、複数の貫通孔84を有するものとして形成されている。顔料としては、黒色や白色のものが好ましく使用される。
【0063】
各貫通孔84は、試薬含有層81の直下に設けられており、対応する試薬含有層81の感度に応じた開口面積を有している。すなわち、各貫通孔84は、その開口面積の大きさにより、試薬含有層81に照射される光の量および試薬含有層81から反射してくる光の量が制限するものである。
【0064】
ドライ試験片8では、展開層82に試料を点着する一方で、マスク83(透明基板80)の側から光を照射し、そのときに試薬含有層81において反射した光を受光することにより、その受光量から試料における特定成分を分析することができる。そして、ドライ試験片8においては、試薬含有層81の感度に応じて開口面積の決定された貫通孔84を介し、光の照射および反射光の受光を行うために、先に説明した比色センサ1と同様な効果を奏することができる。
【0065】
なお、ドライ試験片8では、マスク基板80に代えて、積層構造体81における透明基板83に対して、先に説明した比色センサ1と同様なマスク16(図1ないし図3)を設け構成を採用することもできる。
【実施例1】
【0066】
本実施例においては、比色センサに開口部を有するマスクを形成した場合に、マスクの開口部の面積が透過光量に与える影響について検討する。
【0067】
比色センサとしては、図1ないし図3を参照して説明した比色センサと同様の構成ものサンプル(NO.1〜NO.4)を形成し、それぞれのサンプルにおける透過光量を測定した。
【0068】
各サンプルにおいては、図20に示したように、マスクに矩形の開口部を形成した。それぞれのサンプルの開口部における比色センサの短手方向の寸法aおよび長手方向の寸法bは、下記表1の通りとした。マスクは、日本アチソン株式会社製のカーボンペースト(商品名「Electrodag」)を用いたスクリーン印刷により厚みが5μmとなるように形成した。
【0069】
透過光量は、マスク上におけるスポット径が2mmとなるように比色センサの開口部に対して光を照射したときの受光センサでの受光量を、マスクを形成していない比色センサに対して同様な条件で光を照射したときの受光センサでの受光量を100とし、その相対値(%)として測定した。透過光量の測定結果については、表1および図21に示した。
【0070】
【表1】
*短手方向の寸法aおよび長手方向の寸法bは投影機を用いて実測した寸法である。
【0071】
表1および図21に示した通り、マスクにおける開口部の面積と透過光量との間には比例関係がある。すなわち、第1板材または第2板材に開口部を有するマスクを形成する一方で、マスクにおける開口部の面積(大きさ)を調整することにより、比色センサにおける第1板材または第2板材での透過光量を調整することができる。換言すれば、比色センサの感度に応じてマスクの開口の面積を調整(透過光量を調整)することにより、本来的には感度にバラツキのあるロット相互において、最終的なバラツキを抑制することができるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る比色センサの一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示した比色センサの分解斜視図である。
【図4】図1に示した比色センサにおけるマスクの例を説明するための平面図である。
【図5】図1に示した比色センサの製造方法を説明するためのものであり、透明シートに撥水線を形成した状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示した状態の透明シートに粘着シートを貼着した状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示した状態の透明シートに試薬含有層を形成した状態を示す斜視図である。
【図8】粘着シートに透明シートを接合した状態を示す斜視図である。
【図9】検査のための比色センサを打ち抜いた状態を示す斜視図である。
【図10】透明シートにマスクを形成した状態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る比色センサの他の例を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】本発明に係る比色センサのさらに他の例を示す斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】比色センサのさらに他の例を示す図2に相当する断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るドライ試験片の全体斜視図である。
【図17】図16のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係るドライ試験片の全体斜視図である。
【図19】図10のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【図20】実施例1で用いた比色センサの平面図である。
【図21】実施例1におけるマスクの開口部の面積と透過光量との関係を示すグラフである。
【図22】従来の比色センサの一例を示す全体斜視図である。
【図23】図22のXXIII−XXIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1,1′,1″ 比色センサ(分析用具)
11,11′,11″ (比色センサの)第1透明板(板状部材)
12,12′,12″ (比色センサの)第2透明板(支持基板)
15 (比色センサの)試薬含有層
16,16′ マスク(感度調整手段)
16″ 透過率調整膜(感度調整手段)
16A,16A′ (マスクの)開口部
2 透明シート(板材)
22 (透明シート上の)試薬含有層
4 透明シート(他の板材)
6 マスク(感度調整手段)
60 (マスクの)開口部
7,8 ドライ試験片(分析用具)
70 支持基板
72 (支持基板の)貫通孔
83 マスク
84 (マスクの)貫通孔(開口部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法により試料中の特定成分を分析する際に使用される分析用具、およびこの分析用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的手法により血糖値を測定する際に利用される分析用具としては、たとえば図22および図23に示した比色センサ9がある。この比色センサ9は、血糖値測定装置に装着して使用するものであり、第1および第2透明板91,92を、一対のスペーサ93を介して接合した形態を有している。比色センサ9では、各要素91〜93により、キャピラリ94が規定されている。キャピラリ94の内部には、血液が供給されたときに溶解する試薬部95が設けられている。この試薬部95は、発色剤、酸化還元酵素および電子伝達物質などの試薬類を含むものとして構成される。
【0003】
このような比色センサ9では、開口96を介してキャピラリ94に血液を導入した場合、キャピラリ94の内部において生じる毛細管力により血液が開口97に向けて移動する。これにより、試薬部95が溶解し、キャピラリ94の内部には、グルコース、発色剤、酸化還元酵素および電子伝達物質を含む液相反応系が構築される。液相反応系においては、試薬部95に含まれる反応成分やグルコースが拡散して反応が生じ、グルコースから取り出された電子が、電子伝達物質を介して発色剤に供給される。発色剤は、電子が供給されることにより発色し、この発色により液相反応系が着色される。着色の程度は、光学的手法により検知され、この検知結果に基づいて血糖値を演算することができる。
【0004】
ところで、比色センサ9の感度は、試薬部95に含まれる試薬類の量、試薬部95の溶解性、あるいは酸化還元酵素の活性などの影響を受ける。このような比色センサ9の感度に影響を与える影響の程度は、たとえば比色センサ9を製造するときの環境(使用する製造ライン、使用する試薬類のロット、製造時の温度や湿度など)によって異なってくる。そのため、同一感度の比色センサ9を繰り返し製造するのは困難であり、いわゆる比色センサ9相互においてロット間差として現れる。このようなロット間差は、測定精度のバラつきを生じさせるため、測定精度を向上させるためには、ロット間差が測定結果に与える影響を何等のかたちで除外する必要がある。
【0005】
ロット間差が測定結果に与える影響を除外する方法としては、たとえば比色センサ9の製造時にセンサ感度を検査した上で、そのセンサ感度を血糖値測定装置に認識させ、血糖値測定装置においてセンサ感度に応じた濃度演算を行わせる方法がある。血糖値測定装置にセンサ感度を認識させるための方法としては、使用すべき比色センサ9のセンサ感度を使用者が血糖値測定装置に手入力する方法、あるいはセンサ感度に応じた補正チップを作成し、この補正チップによって血糖値測定装置に装着する方法がある(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
いずれの方法においても、比色センサ9を使用する際に使用者が血糖値測定装置を操作し、あるいは血糖値測定装置に対して補正チップを着脱させる必要があるために使用者の負担が大きい。また、測定に際して、使用者が血糖値測定装置に対してセンサ感度を入力し忘れ、あるいは補正チップを使用し忘れたりすることがある。そのため、上述の方法では、センサ感度を血糖値測定装置に認識させることを使用者に委ねているために、ロット間差の影響を確実に除外することができない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−156358号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、比色センサなどの分析用具相互のロット間差に起因する分析精度のバラつきを、使用者の負担を軽減しつつ確実に抑制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面においては、試料が点着される1以上の試薬含有層を有し、かつ光学的手法を利用して試料の分析を行うめに使用される分析用具であって、当該分析用具に入射する光の量または当該分析用具から出射する光の量を規定することによって、当該分析用具の感度を調整するための感度調整手段を備えていることを特徴とする、分析用具が提供される。
【0010】
本発明の分析用具は、たとえば試薬含有層を支持するための支持基板を有するものとして構成される。この場合、感度調整手段は、支持基板に接合した状態で、あるいは支持基板自体に設けられる。
【0011】
本発明の分析用具は、支持基板に対して一定間隔隔てた状態で対面して接合され、かつ上記支持基板との間に上記試薬含有層が設けられた板状部材をさらに備えたものとして構成することもできる。この場合、感度調整手段は、上記支持基板または板状部材における光透過性を規定するものとして形成される。
【0012】
試薬含有層は、たとえば多孔質体に試薬を担持させた構成とされる。多孔質体としては、紙状物、フォーム(発泡体)、織布状物、不織布状物、および編物状物が挙げられる。多孔質体を形成するための材料としては、たとえば綿、麻、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンおよびポリオレフィンが挙げられる。
【0013】
好ましくは、感度調整手段は、開口部を有しており、かつ上開口部の開口面積の大きさにより上記光透過性を規定するマスクである。このマスクは、たとえばリング状に形成されている。
【0014】
感度調整手段は、光吸収剤を含んだ膜として形成することもできる。この場合、感度調整手段は、たとえば上記膜における光吸収剤の含有量または上記膜の厚みよって透過率が調整される。
【0015】
本発明の第2の側面においては、光学的手法を利用して試料の分析を行うように構成された複数の分析用具を製造する方法であって、板材上に複数の試薬含有層を形成する試薬含有層形成工程と、上記複数の試薬含有層のうちの少なくとも1つの試薬含有層を利用して、製造されるべき分析用具の感度を検査する検査工程と、上記感度に対応した量の光を透過させるための感度調整手段を形成する感度調整工程と、含むことを特徴とする、分析用具の製造方法が提供される。この製造方法においては、板材に対して一定間隔離間させた状態に他の板材を接合する接合工程さらに含んでいてもよく、その場合、感度調整工程においては、板材および他の板材のうちの少なくとも一方に、感度調整手段が設けられる。
【0016】
好ましくは、感度調整手段は、透過光量を制限するための複数の開口部を有するものとして形成される。この場合、感度調整工程においては、開口部は、上記検査工程において得られる感度に応じた開口面積を有するものとして形成される。
【0017】
感度調整手段は、たとえば各分析用具に対応させて個別に形成され、かつ開口部を有する複数のマスクからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、第1ないし第3の実施の形態として、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0019】
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図10を参照しつつ説明する。
【0020】
図1ないし図3に示した比色センサ1は、使い捨てとして構成されたものであり、光学的手法により試料(たとえば尿、血液および唾液などの生化学的試料)における特定成分(たとえばグルコース、コレステロールあるいは乳酸)の濃度を測定することができるように構成されたものである。この比色センサ1は、長矩形の第1および第2透明板11,12を、一対のスペーサ13を介して接合した形態を有しており、各要素11〜13により、第1および第2板材11,12の長手方向に延びるキャピラリ14が規定されている。
【0021】
第1および第2透明板11,12は、PDMS、PS、PET、PMMA、ビニロンなどにより透明に形成されている。第1透明板11には、キャピラリ14の内部に収容された状態で試薬含有層15が設けられている。一方、第2透明板12には、マスク16が形成されている。
【0022】
試薬含有層15は、試料に対して溶解しやすい固体状に形成されており、発色剤を含んだものとして構成されている。
【0023】
発色剤としては、公知の種々のものを用いることができるが、電子授受により発色したときの吸収波長が、試料の吸収波長からずれたものを用いるのが好ましい。発色剤としては、たとえばMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)、4AA(4-Aminoantipyrine)を用いることができる。
【0024】
試薬含有層15は、電子伝達物質あるいは酸化還元酵素を含んだものとして構成してもよい。そうすれば、試料における特定成分と発色剤との間の電子授受をより速く行うことができるようになるため、測定時間を短くすることが可能となる。
【0025】
酸化還元酵素としては、たとえば比色センサ1をグルコース濃度を測定するように構成する場合にはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)やグルコースオキシダーザ(GOD)を用いることができる。また、発色剤として4AAを用いる場合には、酸化還元酵素としてGODとPODを併用してもよい。電子伝達物質としては、たとえば [Ru(NH3)6]Cl3、K3[Fe(CN)6]あるいはmethoxy-PMS(5-methylphenazinium methylsulfate)を使用することができる。
【0026】
マスク16は、比色センサ1の内部に入射する光の量、あるいは比色センサ1の内部から外部に出射する光の量を制限するためのものである。このマスク16は、開口部16Aにおいてのみ光を透過させるように形成されている。開口部16Aは、試薬含有層15に対応する部分に設けられている。このようなマスク16は、黒色顔料(たとえばカーボンブラック)を含んだ膜として形成されている。もちろん、マスク16は、比色センサ1への入射光または比色センサからの出射光の光量を制限できればよく、黒色以外の顔料を含ませた膜、たとえば白色の顔料を含ませた膜として構成することもできる。
【0027】
比色センサ1では、この比色センサ1の内部に入射する光の量あるいは比色センサ1から出射する光の量が開口部16Aの開口面積の大きさによって規制される。そして、開口部16Aの開口面積の大きさが比色センサ1の感度に応じて決定されている。すなわち、比色センサ1の感度が低い場合には開口部16Aの面積が大きく設定される一方で、比色センサ1の感度が高い場合には開口部16Aの面積が小さく設定される。たとえば、比色センサ1の感度を「低い」、「普通」、「高い」の3段階に分けた場合には、それらの感度に応じて図4(a)〜図4(c)に示したように開口面積の異なる3種類の開口部16Aa,16Ab,16Acの中から感度に対応した開口部16Aa,16Ab,16Acが選択される。もちろん、比色センサ1の感度と開口部16Aa,16Ab,16Acの開口面積の関係は、図4(a)〜図4(c)に示した3段階には限定されず、また開口部の形状も円形には限定されない。
【0028】
一対のスペーサ13は、第1および第2透明板11,12の間の距離、すなわちキャピラリ14の高さ寸法を規定し、かつキャピラリ4の幅寸法を規定するためのものである。これらスペー1サ3は、たとえば両面に粘着性を有する粘着テープにより構成される。
【0029】
キャピラリ14は、その内部が開口14A,14Bを介して外部と連通している。開口14Aは、キャピラリ4の内部に試料を導入するためのものであり、開口14Bは、キャピラリ14の内部の空気を排出するためのものである。このようなキャピラリ14では、キャピラリ14の内部において生じる毛細管力により、開口14Aを介してキャピラリ14に導入された試料を開口14Aに向けて移動することができる。
【0030】
以上に説明した比色センサ1は、次のようにして製造することができる。
【0031】
まず、図5に示したように、透明シート2に複数の撥水線20を形成する。透明シート2としては、たとえばPDMS、PS、PET、PMMA、ビニロンにより、複数の比色センサ1(図1ないし図3参照)を同時に製造できる程度の大きさを有するように形成されたものが使用される。図5においては、一点鎖線によって囲まれた矩形領域21が1つの比色センサ1(図1ないし図4参照)を形成するための領域に対応している。一方、撥水線20は、後述する試薬含有層22を形成するための領域を粘着テープ3とともに規定するためのものであり(図7参照)、たとえばノズルなどを用いて撥水剤を透明シート2上に塗布した後に乾燥させることにより形成される。撥水剤としては、たとえばフッ素系化合物あるいはシリコン系化合物を含むものを使用することができる。
【0032】
次に、図6に示したように、透明シート2に対して粘着シート3を貼着する。粘着シート3は、両面に粘着性を有するものであり、後において比色センサ1のスペーサ13(図1ないし図3参照)を構成するものである。粘着シート3としては、予め複数のスリット30が形成されたものが使用される。スリット30は、後において比色センサ1のキャピラリ14(図1および図2参照)を構成するものであり、透明シート2の表面および撥水線の一部を露出させている。すなわち、スリット30の内部には、透明シート2上において、スリット30の内面および撥水線20によって矩形領域31が規定されている。この矩形領域31は、次の工程において試薬含有層22を形成するためのものである。
【0033】
続いて、図7に示したように、矩形領域31に試薬含有層22を形成する。試薬含有層22は、酸化還元酵素および電子伝達物質を含む材料液を、矩形領域に分注した後に材料液を乾燥させることにより形成することができる。矩形領域31は、撥水線20によってその一部が規定されているため、撥水線20によって材料液が拡がってしまうことを回避することができる。
【0034】
次に、図8に示したように、複数のスリット30を覆うように粘着テープ3上に透明シート4を接合し、センサ集合体5を形成する。この透明シート4としては、たとえば透明シート2と同様なものが使用される。
【0035】
続いて、図9に示したように、センサ集合体5から1つの比色センサ50を打ち抜き、その比色センサ50の感度の検査を行う。感度の検査は、特定成分の濃度が既知の試料を用いて、通常の濃度測定の場合と同様な手法により行われる。
【0036】
次に、図10に示したように、開口部60を有する複数のマスク6を、1つの比色センサにつき1つが対応するように透明シート4上に設ける。各マスク6は、開口部60においてのみ光をさせるものとして形成される。各マスク6の開口部60の開口面積は、先に説明した感度の検査の結果に基づいて設定される。すなわち、予めセンサ感度の複数の範囲に分ける一方で、それぞれに範囲に対応させて開口面積を決定しておいた上で、検査された感度が属する範囲に対応する開口面積の開口部60を決定する。たとえばセンサ感度を「低い」、「普通」、「高い」の3つの範囲に分けた場合には、それらの感度に応じて、開口面積が「大きい」、「普通」、「小さい」の中から選択される(図4(a)および図4(b)参照)。
【0037】
ここで、マスク6を形成する方法としては、スクリーン印刷をはじめとする公知の成膜方法を採用することができる。また、マスク6を形成するための材料としては、たとえばカーボンペーストなどの黒色顔料を含むものを使用することができる。ただし、マスク6は、必ずしも黒色に形成する必要はなく、測光時に使用する波長の光を吸収または反射できればよく、その他の色に形成してもよい。また、マスク6は、予め開口部60を形成しておいたテープを貼着することにより設けてもよい。
【0038】
最後に、マスク形成後の中間体に打ち抜き加工を施すことにより、図1ないし図3に示した比色センサ1が得られる。
【0039】
このようにして得られる比色センサ1では、開口14Aを介してキャピラリ14に試料を供給した場合には、キャピラリ14において生じる毛細管現象により、試料がキャピラリ14の内部を移動する。試料の移動過程においては、試料により試薬含有層15が溶解させられ、キャピラリ14の内部に液相反応系が構築される。試料の移動は、試料が開口14Bに到達したときに停止する。
【0040】
液相反応系においては、試料における特定成分から取り出された電子が発色剤に供給されて発色剤が発色し、液相反応系が着色される。試薬含有層15に酸化還元酵素および電子伝達物質が含まれている場合には、酸化還元酵素が試料中の特定成分と特異的に反応して特定成分から電子が取り出され、その電子が電子伝達物質に供給された後に発色剤に供給される。したがって、発色剤の発色の程度(液相反応系の着色の程度)は、特定成分から取り出された電子の量、すなわち特定成分の濃度に相関している。
【0041】
液相反応系の着色の程度は、測定装置(図示略)に比色センサ1を装着することにより把握される。より具体的には、測定装置(図示略)においては、比色センサ1の測光領域(開口部16Aが形成されている部分)に対して上方から第2透明板12に向けて光を照射し、そのときに液相反応系を透過して第1透明板11から出射する光を受光することにより検知される。液相反応系に照射する光は、発色剤の発現色に対する吸収の大きな波長の光が採用される。最終的な特定成分の濃度は、たとえば液相反応系に対して入射させた入射光の強度と、液相反応系を透過した透過光の強度と、の比に基づいて演算される。
【0042】
ここで、測光領域への光照射は、下方から第1透明板11に向けて行ってもよく。この場合には、第2透明板12から出射される光の量がマスク16によって制限される。また、マスク16が形成された側から比色センサ1に光を照射する場合には、反射光を受光し、その反射光の受光量に基づいて液相反応系の着色の程度を把握するようにしてもよい。
【0043】
比色センサ1では、開口部16Aを有するマスク16を形成することにより、測光領域に入射する光あるいは測光領域から出射する光の量が制限されている。その一方で、開口部16Aの開口面積は比色センサ1の感度に応じて設定されている。そのため、比色センサ1では、センサ感度についてロット間差が生じているとしても、開口部16Aの開口面積をセンサ感度に対応したものとすることにより、実質的なセンサ感度のバラつきが低減されている。そのため、ロット間差に起因する測定精度のバラつきを低減することができる。
【0044】
また、本発明では、センサ感度が測定結果に与える影響は、比色センサ1の形態を工夫することにより低減されている。そのため、センサ感度を測定装置に認識させる必要がないために、使用する比色センサ1のセンサ感度を使用者が測定装置に手入力し、あるいはセンサ感度に応じた補正チップを測定装置に装着する必要もない。その結果、使用者の操作負担が軽減される。その一方で、使用者が測定装置に対してセンサ感度を把握させるのを忘れるといった事態は生じなくなるため、ロット間差の影響を確実に低減することができるようになる。
【0045】
本発明に係る分析用具は、上述した実施の形態に示した比色センサには限定されない。たとえば比色センサに入射する光あるいは比色センサから出射する光の量を調整するための手段としては、図11ないし図14に示した構成を採用することもできる。
【0046】
図11および図12に示した比色センサ1′は、第2透明板材12′の測光領域(試薬含有層15に対応する部分)に対してリング状のマスク16′を設けたものである。このマスク16′においても、開口部16′の開口面積がセンサ感度に対応したものとして形成されている。
【0047】
この比色センサ1′では、マスク16′を形成する領域が小さいために、マスク16′を形成するのに必要な材料の量を少なくすることができる。そのため、比色センサ1′では、製造コストを低減することができる。
【0048】
図13および図14に示した比色センサ1″は、第2透明板材12′の測光領域(試薬含有層15に対応する部分)に対して円形状の透過率調整膜16″を設けたものである。透過率調整膜16″は、内部に光吸収剤を分散させたものであり、光吸収剤の量および種類、厚みを選択することにより、透過率が調整されたものである。
【0049】
光吸収剤の種類は、吸収すべき光の波長に応じて選択され、光吸収剤の量は主としてセンサ感度に応じて選択される。すなわち、比色センサ1″では、透過率調整膜16″によって測光領域に入射する光あるいは測光領域から出射する光の量が規定されている。したがって、透過率調整膜16″の透過率を比色センサ1″の感度に応じて設定することにより、上述した比色センサ1(図1〜図3参照)と同様な効果を得ることができる。
【0050】
ここで、透過率調整膜16″は、たとえば公知の成膜方法により第2透明板材12″に形成してもよく、またフィルムを貼着することにより設けてもよい。また、透過率調整膜は、その形状については円形には限定されず、その他の形状であってもよい。
【0051】
図15(a)〜(c)に示したように、マスク16、16′あるいは透過率調整膜16″などの感度調整手段は、第2透明板材12,12′,12″に限らず、第1透明板材11,11′,11″に設けてもよく、また第1および第2透明板材の双方に設けてもよい。
【0052】
また、感度調整手段としては、第1および第2透明板材のうちの少なくとも一方の表面を、少なくとも測光領域に対応する部分について粗面化した構成を採用することもできる。すなわち、粗面化の程度を選択することにより測光領域での光透過性を比色センサの感度に対応させることができる。ここで、第1および第2透明板材の表面を粗面化する方法としては、ブラスト処理あるいはエッチング処理を採用することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図16および図17を参照しつつ説明する。
【0054】
図16および図17に示したドライ試験片7は、光を照射したときの反射光に基づいて試料の分析を行うように構成されたものであり、支持基板70に対して複数の試験紙71を貼着した構成を有している。
【0055】
試験紙71は、発色剤などの試薬をろ紙などの多孔質体に担持させたものであり、支持基板70の長手方向に並んで設けられている。
【0056】
支持基板70は、顔料を含有させるなどして全体が光非透過性を有するものとして形成されているとともに、複数の貫通孔72を有するものとして形成されている。顔料としては、黒色や白色のものが好ましく使用される。
【0057】
各貫通孔72は、試験紙71の貼着位置に対応して設けられており、試験紙71の一部を露出させている。各貫通孔72は、その開口面積が対応する試験紙71の感度に応じて決定されている。すなわち、支持基板70自体が先の比色センサ1におけるマスク16としての機能を有している。
【0058】
ドライ試験片7では、試験紙71に試料を点着する一方で、支持基板70の側から光を照射し、そのときに試験紙71において反射した光を受光することにより、その受光量から試料における特定成分を分析することができる。そして、ドライ試験片7においては、試験紙71の感度に応じて開口面積の決定された貫通孔72を介し、光の照射および反射光の受光を行うために、先に説明した比色センサ1と同様な効果を奏することができる。
【0059】
なお、ドライ試験片7では、支持基板70に貫通孔72を形成していたが、支持基板70を透明に形成する一方で、支持基板70に先に説明した比色センサ1と同様なマスク16(図1ないし図3)を設けてもよい。また、支持基板に貼着すべき試験紙の数は図示された数には限定されず、その他の数あってもよい。
【0060】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図18および図19を参照しつつ説明する。
【0061】
図18および図19に示したドライ試験片8は、光を照射したときの反射光に基づいて試料の分析を行うように構成されたものであり、透明基板80上に、試薬含有層81および展開層82を積層した構造を有している。複数の試薬含有層81は、透明基板80上において、マトリックス状に配置されている。展開層82は、複数の試薬含有層81を一括して覆っている。
【0062】
透明基板80には、マスク83が設けられている。マスク83は、感度調整手段に相当するものであり、顔料を含有させるなどして全体が光非透過性を有するものとして形成されているとともに、複数の貫通孔84を有するものとして形成されている。顔料としては、黒色や白色のものが好ましく使用される。
【0063】
各貫通孔84は、試薬含有層81の直下に設けられており、対応する試薬含有層81の感度に応じた開口面積を有している。すなわち、各貫通孔84は、その開口面積の大きさにより、試薬含有層81に照射される光の量および試薬含有層81から反射してくる光の量が制限するものである。
【0064】
ドライ試験片8では、展開層82に試料を点着する一方で、マスク83(透明基板80)の側から光を照射し、そのときに試薬含有層81において反射した光を受光することにより、その受光量から試料における特定成分を分析することができる。そして、ドライ試験片8においては、試薬含有層81の感度に応じて開口面積の決定された貫通孔84を介し、光の照射および反射光の受光を行うために、先に説明した比色センサ1と同様な効果を奏することができる。
【0065】
なお、ドライ試験片8では、マスク基板80に代えて、積層構造体81における透明基板83に対して、先に説明した比色センサ1と同様なマスク16(図1ないし図3)を設け構成を採用することもできる。
【実施例1】
【0066】
本実施例においては、比色センサに開口部を有するマスクを形成した場合に、マスクの開口部の面積が透過光量に与える影響について検討する。
【0067】
比色センサとしては、図1ないし図3を参照して説明した比色センサと同様の構成ものサンプル(NO.1〜NO.4)を形成し、それぞれのサンプルにおける透過光量を測定した。
【0068】
各サンプルにおいては、図20に示したように、マスクに矩形の開口部を形成した。それぞれのサンプルの開口部における比色センサの短手方向の寸法aおよび長手方向の寸法bは、下記表1の通りとした。マスクは、日本アチソン株式会社製のカーボンペースト(商品名「Electrodag」)を用いたスクリーン印刷により厚みが5μmとなるように形成した。
【0069】
透過光量は、マスク上におけるスポット径が2mmとなるように比色センサの開口部に対して光を照射したときの受光センサでの受光量を、マスクを形成していない比色センサに対して同様な条件で光を照射したときの受光センサでの受光量を100とし、その相対値(%)として測定した。透過光量の測定結果については、表1および図21に示した。
【0070】
【表1】
*短手方向の寸法aおよび長手方向の寸法bは投影機を用いて実測した寸法である。
【0071】
表1および図21に示した通り、マスクにおける開口部の面積と透過光量との間には比例関係がある。すなわち、第1板材または第2板材に開口部を有するマスクを形成する一方で、マスクにおける開口部の面積(大きさ)を調整することにより、比色センサにおける第1板材または第2板材での透過光量を調整することができる。換言すれば、比色センサの感度に応じてマスクの開口の面積を調整(透過光量を調整)することにより、本来的には感度にバラツキのあるロット相互において、最終的なバラツキを抑制することができるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る比色センサの一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示した比色センサの分解斜視図である。
【図4】図1に示した比色センサにおけるマスクの例を説明するための平面図である。
【図5】図1に示した比色センサの製造方法を説明するためのものであり、透明シートに撥水線を形成した状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示した状態の透明シートに粘着シートを貼着した状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示した状態の透明シートに試薬含有層を形成した状態を示す斜視図である。
【図8】粘着シートに透明シートを接合した状態を示す斜視図である。
【図9】検査のための比色センサを打ち抜いた状態を示す斜視図である。
【図10】透明シートにマスクを形成した状態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る比色センサの他の例を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】本発明に係る比色センサのさらに他の例を示す斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】比色センサのさらに他の例を示す図2に相当する断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るドライ試験片の全体斜視図である。
【図17】図16のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係るドライ試験片の全体斜視図である。
【図19】図10のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【図20】実施例1で用いた比色センサの平面図である。
【図21】実施例1におけるマスクの開口部の面積と透過光量との関係を示すグラフである。
【図22】従来の比色センサの一例を示す全体斜視図である。
【図23】図22のXXIII−XXIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1,1′,1″ 比色センサ(分析用具)
11,11′,11″ (比色センサの)第1透明板(板状部材)
12,12′,12″ (比色センサの)第2透明板(支持基板)
15 (比色センサの)試薬含有層
16,16′ マスク(感度調整手段)
16″ 透過率調整膜(感度調整手段)
16A,16A′ (マスクの)開口部
2 透明シート(板材)
22 (透明シート上の)試薬含有層
4 透明シート(他の板材)
6 マスク(感度調整手段)
60 (マスクの)開口部
7,8 ドライ試験片(分析用具)
70 支持基板
72 (支持基板の)貫通孔
83 マスク
84 (マスクの)貫通孔(開口部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が点着される1以上の試薬含有層を有し、かつ光学的手法を利用して試料の分析を行うめに使用される分析用具であって、
当該分析用具に入射する光の量または当該分析用具から出射する光の量を規定することによって、当該分析用具の感度を調整するための感度調整手段を備えていることを特徴とする、分析用具。
【請求項2】
上記試薬含有層を支持するための支持基板を有しており、
上記感度調整手段は、上記支持基板に接合した状態で、あるいは上記支持基板自体に設けられている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項3】
上記支持基板に対して一定間隔隔てた状態で対面して接合され、かつ上記支持基板との間に上記試薬含有層が設けられた板状部材をさらに備えており、
上記感度調整手段は、上記支持基板または板状部材における光透過性を規定するものとして形成されている、請求項2に記載の分析用具。
【請求項4】
上記試薬含有層は、多孔質体に試薬を担持させた構成を有している、請求項2に記載の分析用具。
【請求項5】
上記感度調整手段は、開口部を含んでおり、かつ上記開口部の開口面積の大きさにより上記光透過性を規定する構成を有している、請求項2ないし4のいずれかに記載の分析用具。
【請求項6】
上記感度調整手段は、マスクである、請求項5に記載の分析用具。
【請求項7】
上記マスクは、リング状に形成されている、請求項6に記載の分析用具。
【請求項8】
上記感度調整手段は、光吸収剤を含んだ膜として、または上記支持基板に光吸収剤を含ませることにより形成されている、請求項2ないし7のいずれかに記載の分析用具。
【請求項9】
上記感度調整手段は、上記光吸収剤の含有量または上記膜の厚みよって透過率が調整されたものである、請求項8に記載の分析用具。
【請求項10】
光学的手法を利用して試料の分析を行うように構成された複数の分析用具を製造する方法であって、
板材上に複数の試薬含有層を形成する試薬含有層形成工程と、
上記複数の試薬含有層のうちの少なくとも1つの試薬含有層を利用して、製造されるべき分析用具の感度を検査する検査工程と、
上記感度に対応した量の光を透過させるための感度調整手段を形成する感度調整工程と、
含むことを特徴とする、分析用具の製造方法。
【請求項11】
上記板材に対して一定間隔離間させた状態に他の板材を接合する接合工程さらに含んでおり、かつ、
上記感度調整工程においては、上記板材および上記他の板材のうちの少なくとも一方に上記感度調整手段が設けられる、請求項10に記載の析用具の製造方法。
【請求項12】
上記感度調整手段は、透過光量を制限するための複数の開口部を有するものであり、
上記感度調整工程においては、上記開口部は、上記感度に応じた開口面積を有するものとして形成される、請求項10または11に記載の分析用具の製造方法。
【請求項13】
上記感度調整手段は、上記各分析用具に対応させて個別に形成され、かつ上記開口部を有する複数のマスクからなる、請求項12に記載の分析用具の製造方法。
【請求項1】
試料が点着される1以上の試薬含有層を有し、かつ光学的手法を利用して試料の分析を行うめに使用される分析用具であって、
当該分析用具に入射する光の量または当該分析用具から出射する光の量を規定することによって、当該分析用具の感度を調整するための感度調整手段を備えていることを特徴とする、分析用具。
【請求項2】
上記試薬含有層を支持するための支持基板を有しており、
上記感度調整手段は、上記支持基板に接合した状態で、あるいは上記支持基板自体に設けられている、請求項1に記載の分析用具。
【請求項3】
上記支持基板に対して一定間隔隔てた状態で対面して接合され、かつ上記支持基板との間に上記試薬含有層が設けられた板状部材をさらに備えており、
上記感度調整手段は、上記支持基板または板状部材における光透過性を規定するものとして形成されている、請求項2に記載の分析用具。
【請求項4】
上記試薬含有層は、多孔質体に試薬を担持させた構成を有している、請求項2に記載の分析用具。
【請求項5】
上記感度調整手段は、開口部を含んでおり、かつ上記開口部の開口面積の大きさにより上記光透過性を規定する構成を有している、請求項2ないし4のいずれかに記載の分析用具。
【請求項6】
上記感度調整手段は、マスクである、請求項5に記載の分析用具。
【請求項7】
上記マスクは、リング状に形成されている、請求項6に記載の分析用具。
【請求項8】
上記感度調整手段は、光吸収剤を含んだ膜として、または上記支持基板に光吸収剤を含ませることにより形成されている、請求項2ないし7のいずれかに記載の分析用具。
【請求項9】
上記感度調整手段は、上記光吸収剤の含有量または上記膜の厚みよって透過率が調整されたものである、請求項8に記載の分析用具。
【請求項10】
光学的手法を利用して試料の分析を行うように構成された複数の分析用具を製造する方法であって、
板材上に複数の試薬含有層を形成する試薬含有層形成工程と、
上記複数の試薬含有層のうちの少なくとも1つの試薬含有層を利用して、製造されるべき分析用具の感度を検査する検査工程と、
上記感度に対応した量の光を透過させるための感度調整手段を形成する感度調整工程と、
含むことを特徴とする、分析用具の製造方法。
【請求項11】
上記板材に対して一定間隔離間させた状態に他の板材を接合する接合工程さらに含んでおり、かつ、
上記感度調整工程においては、上記板材および上記他の板材のうちの少なくとも一方に上記感度調整手段が設けられる、請求項10に記載の析用具の製造方法。
【請求項12】
上記感度調整手段は、透過光量を制限するための複数の開口部を有するものであり、
上記感度調整工程においては、上記開口部は、上記感度に応じた開口面積を有するものとして形成される、請求項10または11に記載の分析用具の製造方法。
【請求項13】
上記感度調整手段は、上記各分析用具に対応させて個別に形成され、かつ上記開口部を有する複数のマスクからなる、請求項12に記載の分析用具の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−64657(P2007−64657A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247557(P2005−247557)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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