説明

分析用基板および分析装置

【課題】バックグラウンド光を低減された測定が可能となり、試料保持部に保持された試料からの発光のみを感度よく測定することが可能な分析用基板を実現する。
【解決手段】試料の光学分析が可能な分析用基板1は、基板2に設けられたくぼみと当該くぼみを覆うように形成されたカバー層3により形成される流路状セル5を有している。さらに、分析用基板1は、流路状セル5に保持される試料に光を照射した際に生じる発光を検出する側の表面に反射防止層4を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料の光学分析を行うための分析用基板および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNA、RNAおよびタンパク質などの生体試料の分析技術が著しく発展している。これら生体試料の検出法としては、例えば、蛍光法、吸収法、化学発光法およびラジオアイソトープ法などが挙げられる。これらの中で、多くの研究者に使用されているのは主に蛍光法である。これは、蛍光法が検出感度の高い、取り扱い易い方法であることによる。
【0003】
蛍光法において、より検出感度の高い測定を行うためには、試料が発する蛍光シグナルに混入する恐れのある、種々の原因によって発生するバックグラウンド光の量を減らすことが重要である。
【0004】
例えば、非特許文献1には、チップ表面にピンホールとマイクロレンズとを設け、これらが励起光のうちの透過光と試料からの蛍光との光路を空間的に分離することで、励起光によるバックグラウンド光の蛍光シグナルへの混入を減らす方法が開示されている。
【0005】
図8に、非特許文献1に記載されているチップ200を用いた蛍光検出の様子を示す。チップ200は、内部に試料の通るマイクロチャネル201を備え、さらにチップ200の表面にはクロム層202a・bを備えている。励起光入射側のクロム層202aの開口部であるピンホールには、励起光をチップ200内に透過させるためのマイクロレンズ203aが備えられており、蛍光検出側のクロム層202bの開口部であるピンホールには、試料から発生した蛍光を透過させるためのマイクロレンズ203bが備えられている。励起光204は、チップ200の表面に対して45度の角度から平行光として入射される。励起光204のうち励起光入射側のレンズ203aを透過した光成分は、マイクロチャネル201上の一点に集光される。これによりマイクロチャネル201を流れる試料は蛍光206を発する。このうち、蛍光検出側のマイクロレンズ203bを透過するものだけが発光検出器により検出される。一方、マイクロチャネル201を透過した透過光207はチップの蛍光検出側のクロム層202bを透過しない。よって試料の蛍光206と透過光207は空間的に分離される。その結果、励起光のうちの透過光によって生じるバックグラウンド光が、試料の発する蛍光シグナルへ混入するのを減らすことができる。
【非特許文献1】「Performance of an Integrated Microoptical System for Fluorescence Detection in Microfluidic Systems」, Jean-Christophe Roulet et al, Anal. Chem. 2002, 74,3400-3407
【特許文献1】特開平11−30703号公報(1999年2月2日公開)
【特許文献2】特開2003−66003号公報(平成15年3月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、励起光204の光束は、励起光入射側のクロム層202aにおいてマイクロレンズ203aが占める範囲よりも広い範囲に照射されている。このことにより、励起光204の一部は、マイクロレンズ203aの占める範囲外に照射されているので、以下の問題が生じる。
【0007】
具体的に説明すると、マイクロレンズ203aの占める範囲外に照射された励起光204の一部は、励起光入射側のクロム層202aで反射され、その後測定装置内を幾重にも反射する。前記反射光はその後測定装置内において迷光となり、バックグラウンド光の原因となる可能性が高い。バックグラウンド光の原因には、前記反射光以外にも、チップ200内を乱反射し、蛍光検出側のクロム層202a・bの開口部であるピンホールを透過してチップ外に飛び出し、再び反射を繰り返す反射光も含まれる。上述した反射によって発生したバックグラウンド光は発光検出器に入射し、検出感度を低下させる恐れがある。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、発光検出器に到達するバックグラウンド光の量を低減させ、より検出感度の良い発光検出を可能とする分析用基板と分析装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分析用基板は、上記課題を解決するために、基礎基板表面に設けられたくぼみと、当該くぼみを覆うように形成されたカバー層とにより形成される試料保持部を有し、当該試料保持部に保持される試料の光学分析が可能な分析用基板において、前記分析用基板表面に反射防止手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、分析用基板の表面には、反射防止手段が備えられている。よって、分析用基板表面で光の反射を抑えることができ、試料を光学分析する際には、分析用基板の表面にて反射され、発光を検出する機器へ入射するバックグラウンド光量を少なくすることができる。
【0011】
よって、上記構成によると、バックグラウンド光の少ない測定が可能となり、分析用基板中の試料保持部に保持された試料からの発光のみを感度よく測定することが可能な分析用基板を実現することができる。
【0012】
また、本発明の分析用基板では、前記基礎基板と前記反射防止手段との間に反射層を備える構成としてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、反射層を備えているので、例えば、入射光を集光するためのレンズの端で生じる散乱光などの一部が分析用基板内を透過しても、それを反射させて、発光を検出する側に透過するのを低減させることができる。よって、反射防止手段に加えて反射層を設けることにより、バックグラウンド光の量を低減させ、発光のみを感度よく測定することを、より確実に可能なものとすることができる。
【0014】
また、例えば反射手段が膜状のものであり、その厚さの薄い場合であっても、反射層を併用することにより、バックグラウンド光の量を低減させ、感度のよい測定を行うことのできる分析用基板の実現をすることができる。
【0015】
また、本発明の分析用基板では、前記反射防止手段は、黒色炭素化合物層、無発光性顔料含有層のいずれかである構成としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、高い光吸収機能を持つ優れた反射防止機能を有する反射防止手段を得ることができる。
【0017】
また、本発明の分析用基板では、前記反射防止手段は、自身の表面に形成された、微細な凹凸構造、または微細な多孔質構造であってもよい。
【0018】
上記構造によると、分析用基板の厚みを大きくすることなく反射防止手段を形成することができる。
【0019】
また、本発明の分析用基板において、前記試料保持部上に位置する反射防止手段に開口部が設けられている構成としてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、前記試料保持部上に位置する反射防止手段に設けられた開口部により、試料保持部に保持された試料からの発光を、反射防止手段によって減光されることなく分析用基板外に取り出すことが可能となる。これにより、より検出感度の優れた発光検出を実現することができる。
【0021】
また、本発明の分析用基板では、前記反射防止手段は、無機酸化物の多層膜からなる反射防止膜であってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、上記のような開口部を反射防止手段に設けることなく、分析用基板外に試料からの発光を取り出すことができるとともに、分析用基板表面での光の反射を抑えることが可能となる。
【0023】
また、本発明の分析用基板では、前記反射層に、光学分析用の入射光をガイドするための案内手段を備えている構成としてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、例えば光ピックアップを用いて前記分析用基板上の案内手段に入射光を案内する場合、上記試料保持部の位置に正確に入射光を導くことができる。
【0025】
これにより、前記試料保持部の位置以外に光が入射された場合でも、試料保持部の位置に正確に入射光を導き、試料からの発光検出することが可能となる。
【0026】
また本発明の分析装置は、上記課題を解決するために、上記のいずれかの分析用基板を分析用基板に対して、入射光を入射させる光照射手段と、前記分析用基板をはさんで前記光照射手段とは反対側に位置し、かつ前記入射光の光路外に配置された光検出手段とを備えていることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、分析装置に備えられる光検出手段は入射光の光路外に配置されているため、分析用基板を透過した透過光が光検出手段に入射されるのを防ぐことができる。したがって、分析用基板を透過した透過光によるバックグラウンドノイズを低く抑えることができ、試料からの発光を高感度に測定することができる。
【0028】
また、本発明分析装置は、上記案内手段を有する分析用基板に対して入射光を入射させるとともに、当該分析用基板からの反射光を検出する光ピックアップと、前記光ピックアップを前記案内手段に沿った方向に移動させる駆動手段と、前記光ピックアップにより出力される検出信号に基づき、前記入射光を前記案内手段に追従して入射するように前記光ピックアップを制御する制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0029】
上記の構成によれば、前記分析用基板上の案内手段を前記光ピックアップが読み取ることで、分析用基板上の正確な位置に入射光の焦点を合わせることができる。また、入射する際に生じる前記反射層での反射光を、さらに前記案内手段に追従させることができる。
【0030】
これにより、試料保持部中の試料に的確に励起光を照射することができ、試料からの光学的な変化を検出感度良く、さらには自動的かつ正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明に係る分析用基板は、上記試料保持部に保持される試料に光を照射した際に生じる発光を検出する側の、自身の表面に反射防止手段を備えている。
【0032】
上記の構成によれば、分析用基板の表面には、反射防止手段が備えられている。よって、分析用基板表面で光の反射を抑えることができ、試料を光学分析する際には、分析用基板の表面にて反射され、発光を検出する機器へ入射するバックグラウンド光量を少なくすることができる。
【0033】
よって、上記構成によると、バックグラウンド光の少ない測定が可能となり、分析用基板中の試料保持部に保持された試料からの発光のみを感度よく測定することが可能な分析用基板を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図1と図2とに基づいて、以下に説明する。本実施の形態においては、分析用基板に設けられた試料を保持する試料保持部の例として、流路状セルを用いることとする。なお、試料を保持する試料保持部には、例えば、電気泳動やクロマトグラフィーに用いられる流路状セルや、DNAハイブリダイゼーションに使用されるマイクロセル等が挙げられる、特に限定はされない。
【0035】
図1は、本実施の形態における分析用基板1の斜視図である。図1に示すように、分析用基板1は、垂直断面形状が矩形である溝状のくぼみを有する基板2(基礎基板)と、基板2の表面を覆うカバー層3と、カバー層3上に形成された反射防止層4とを備えている。また、分析用基板1は、基板2とカバー層3との間の前記くぼみにより形成される試料溶液(試料)の保持が可能な流路状セル5と、さらに、流路状セル5上の反射防止層4の一部に設けられた開口部6とを備えている。
【0036】
基板2は、プラスチックやガラスなどの光透過性をもつ材料によって形成される。これら以外の材料でできていてもかまわない。基板2は、流路状セル5の伸張方向に対しての垂直断面形状が矩形である溝状のくぼみを表面に有しており、溝状のくぼみは、基板の厚みにもよるが、深さ数μm〜数百μm、幅数十μm〜数mmの範囲内の大きさで形成される。
【0037】
カバー層3は、上記溝状のくぼみを有する基板2の表面を覆う層である。カバー層3は、基板2と同様にプラスチックやガラスなどの光透過性をもつ材料によって形成されるが、例えば、厚さが200μm以下のフィルム状プラスチックを用いてもよい。また、カバー層3と基板2とを接着する方法には、UV硬貨樹脂等の接着剤を用いる方法、熱圧着による接着法等があるが、少なくとも流路状セル5中を流れる試料溶液が流路外に漏れ出さない接着方法であれば、いずれの方法を用いてもよい。
【0038】
反射防止層4は、カバー層3の上、すなわち分析用基板1の表面を覆うように形成される。ここにおいて、反射防止層4は、分析装置内で発生する迷光などに伴うバックグラウンド光を吸収するために形成される。反射防止層4の材料は、無発光性で吸光度の高い物質であればよいが、特に黒色炭素化合物や、無発光性顔料が、耐久性がよいことから好ましい。また、反射防止層4の作成方法としては、これらの反射防止剤と、該反射防止剤を分散又は溶解させることのできる溶剤と、この溶剤に溶解させることが可能な高分子とを混ぜ合わせた溶液を、上記カバー層3上に塗布して、乾燥させる方法を用いればよい。反射防止剤の塗布方法は前記方法以外の方法を用いてもよい。
【0039】
流路状セル5は、基板2の表面に備えられた溝状のくぼみがカバー層3で覆われることにより形成される。それにより、流路状セル5は、溝状のくぼみと同じ、すなわち深さ数μm〜数百μm、幅数十μm〜数mmの範囲で規定される大きさとなる。
【0040】
また、流路状セル5上に位置する反射防止層4の一部には、開口部6が形成されており、反射防止層が形成されていない状態となっている。後に詳細に説明するが、この開口部6を形成することにより、入射光により励起された流路状セル5中の試料からの発光を、分析用基板1の反射防止層4が形成されている面側に配置された発光検出器方向へ透過させることができる。
【0041】
本実施の形態における分析用基板1の特徴は反射防止層4にあり、この効果について図2を用いて説明する。
【0042】
図2は、分析用基板1を用いる本実施の形態における分析装置の概略図であり、同図に示される分析用基板1は、流路状セル5の伸張方向に沿って切断した、図1に示される点線で囲まれた部分の断面図である。図2には、入射光11と、これを分析用基板1の流路状セル5に集光させるレンズ12と、集光された入射光11によって流路状セル5中の試料から発せられる発光13と、分析用基板1を透過した透過光14の光路外に設置された光学フィルター15と、光学フィルター15の背面側に配置された発光検出器16が図示されている。本実施の形態における分析装置は、少なくとも、図示しない入射光学系の装置(光照射手段)、発光検出系の各装置である発光検出器(光検出手段)16を備えており、分析用基板1に光を照射し、流路状セル5に保持された試料からの発光を分析するものである。
【0043】
なお、図2の最外枠の点線は、分析用基板1の試料を分析する本実施の形態の分析装置を構成する入射光学系、発光検出系の各装置又は各装置の構成部品を包含する容器18を示している。なお、入射光学系の装置は、従来公知のものを使用でき、説明および図示は省略する。
【0044】
光学フィルター15は、入射光11に含まれる波長の光の透過率が低く、試料からの発光13に含まれる波長の光の透過率が高い性質を持つ光学部品である。発光検出器16は、従来公知のものを使用することができる。
【0045】
上記の構造によれば、発光検出器16は透過光14の光路外に配置されているので、透過光14によるバックグラウンド光を低減することができ、試料の発光13を感度よく、検出することができる。
【0046】
一方で、発光検出器16には、試料から発せられる発光13以外にもさまざまな迷光がバックグラウンド光として混入するため、発光検出感度の低下を招くおそれがある。例えば、透過光14は、光路外に設置されている発光検出器に直接入射することは無いものの、分析装置全体を包含する容器18の中で幾重にも反射することにより、その一部が迷光17aとなって発光検出器16に入射する可能性はある。この発光検出器16に入射する迷光17aは、図示したように最終的には分析用基板1の表面で反射し、発光検出器16に入射する。しかしながら、本実施の形態における分析用基板1の発光検出器16側の表面には反射防止層4が形成されているため、迷光17aは分析用基板1の表面で反射されず、発光検出器16には到達しない(図中では×で示される)。
【0047】
このように発光検出器16は、試料から発せられる発光13を捕らえるために分析用基板面に向かうようにして配置されているが、基板表面の反射防止層4によって迷光の反射を防ぐことにより、迷光を発光検出器16に到達させないようにすることができる。その結果、発光検出器16に混入する迷光の量を低減させることが可能となる。
【0048】
迷光の原因は入射光11の透過光14だけではない。例えば入射光11を収束させるレンズ12に光が照射されると、一部の光はレンズの端の部分で散乱される。この散乱光は流路状セル5中に保持された試料の励起には使用されず、その一部は分析装置全体を包含する容器18の中で幾重にも反射し、迷光17bとして発光検出器16に向かう可能性がある。
【0049】
しかしながら、上述のように本実施の形態に係る分析用基板1の表面には反射防止層4が形成されているため、迷光17bは発光検出器16に混入することなく(図2の中では×で示される)、検出感度のよい発光測定が可能である。
【0050】
さらに、迷光の発生源としては、上記発生源以外にも入射光の入射に係る光学部品など様々な部品が発生源となる可能性がある。上記のように発光検出器16が分析用基板1の基板表面側に向かうようにして配置される場合には、この基板表面で反射した迷光が発光検出器16に入る可能性が高いため、本実施の形態のように分析用基板1の表面に反射防止層4を形成することが有効である。反射防止層4によって、迷光を発光検出器16に進行させないようにすることが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施の形態での分析用基板1では分析装置内で発生する迷光を低減させ、感度のよい発光検出が可能である。
【0052】
なお、図2を用いた説明では、入射光11はレンズ12により集光され流路状セル5に入射されるものとして説明したが、入射光11の入射方法はこれに限ったものではない。例えば平行光が流路状セル5に入射される場合でも本願は有効である。
【0053】
なお、上記では、本発明に係る反射防止手段の一例として、反射防止層4を分析用基板1上に形成することによって検出感度を向上させる例を示した。しかし、これに限らず一般に良く知られている反射防止構造(例えば微細な凹凸構造や、微細な多孔質構造など)を分析用基板表面に形成することによりバックグラウンド光を低減するようにしても構わない。ここで、微細構造の凹凸の大きさは100〜300nm、ピッチは100〜1000nmが好ましいが、これらの数値に限定はされない。
【0054】
また上記の例では、反射防止層4はカバー層3のほぼ全面を覆う構成となっているが、必ずしも全面を覆う必要はなく、図2における開口部6よりも発光検出器16に近接した基板表面300のみを覆う構造としてもよい。この場合基板全面を覆う場合に比べて反射防止機能はやや低下するものの、発光検出器16に近く、反射光が最も発光検出器16に入りやすい基板上の部分を覆うため、被覆面積に対する反射防止機能は非常に大きい。
【0055】
また本実施の形態での分析用基板1上には、流路状セル5に保持された試料からの発光13を発光検出器16方向へ取り出すための開口部6が形成されているが、これは必ずしも形成される必要はない。例えば、よく知られているレンズの反射防止膜を上記反射防止層4の代わりに使用すると、開口部6は不要となる。なぜなら、この反射防止膜は一般に無機酸化物の多層膜からなる構造を備えており、光を透過するが反射は抑制されるという性質を有するからである。このような反射防止膜における構造は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1によると、反射防止膜は、高屈折率膜と低屈折率膜を交互に多層に積層することによって成膜される。例として、前記高屈折率膜を形成するZrO(高屈折物質)と上記低屈折率膜を形成するSiO(低屈折物質)からなる多層膜構造を有する反射防止膜が開示されている。この反射防止膜を使うと、流路状セル5内の試料からの発光13は、反射防止膜を透過して発光検出器16側に透過し発光検出器16に到達する。一方、迷光17は、分析用基板の表面では反射されないため、発光検出器16には到達しない。よって、このように反射防止膜を基板表面に備えた場合には、開口部6は不要となる。
【0056】
また、本実施の形態では、流路状セルの垂直断面形状を矩形としたが、それに限らず、他の形状であってもよい。
〔実施の形態2〕
本発明の実施のその他の形態について図3と図4とに基づいて、以下に説明する。以下の実施の形態においても上記実施の形態1と同様に、分析用基板に設けられた試料を保持するセルの例として流路状セルを用いて説明する。
【0057】
図3(a)は、本実施の形態における分析用基板21の斜視図であり、図3(b)は、分析用基板21が保持する流路状セル25の伸張方向に沿った断面図(図3(a)では点線で表した部分)である。
【0058】
図3(a)に示すように、分析用基板21は、垂直断面形状が矩形である溝状のくぼみを有する基板(基礎基板)22と、基板22の前記溝状のくぼみを有する表面を覆うカバー層23と、カバー層23上に形成された反射層28とさらにその上に形成された反射防止層24とを備えている。また分析用基板21は、基板22とカバー層23との間の溝状のくぼみにより形成される試料の保持が可能な流路状セル25と、さらに流路状セル25上の反射防止層24の一部に設けられた開口部26とを備えている。
【0059】
本実施の形態における分析用基板21と、実施の形態1に示した分析用基板1との違いは、分析用基板21にはカバー層23と反射防止層24の間に反射層28が形成されている点である。分析用基板21のカバー層23上に形成される反射層28は、例えばアルミニウムや銀をはじめとする金属薄膜から成り、厚さは数〜数百nmでよい。またこれらの金属からなる反射層の代わりに、誘電体多層膜からなる反射層を使用してもよい。なお、反射層28以外の構成は、図1に示した実施の形態1の構成と同様であり、基板22は基板2、カバー層23はカバー層3、反射防止層24は反射防止層4、流路状セル25は流路状セル25、開口部26は開口部6、にそれぞれ対応するため、これらの説明は省略する。
【0060】
図4を用いて、本実施の形態で新たに加わった反射層28の効果について、以下に説明する。
【0061】
図4は、分析用基板21を用いた分析装置の概略図であり、上記実施の形態1にて示した分析装置と同様に、入射光31と、これを分析用基板21の流路状セル25に集光させるレンズ32と、集光された入射光11によって流路状セル25中の試料から発せられる発光33と、分析用基板21を透過した透過光34の光路外に設置された光学フィルター35と、光学フィルター35の背面側に配置された発光検出器36が図示されている。なお、図中の最外枠の点線は、分析装置を構成する入射光学系、発光検出系の各装置の構成部品を包含する容器38を示している。また、同図で示した分析用基板21は、図3(b)と同じように、分析用基板21中の流路状セル25の伸張方向に沿って切断した、図3(a)に示される点線部で囲まれた部分の断面図である。本実施の形態における分析装置は、少なくとも、図示しない入射光学系の装置(光照射手段)、発光検出系の各装置である発光検出器(光検出手段)36を備えており、分析用基板21に光を照射し、流路状セル25に保持された試料からの発光を分析するものである。
【0062】
実施の形態1と同様に、光学フィルター35は、入射光31に含まれる波長の光の透過率が低く、試料から発せられる発光33に含まれる波長の光の透過率が高い性質を持つ光学部品である。
【0063】
本実施の形態の分析装置では、上記の構造によれば、実施の形態1で説明したように、発光検出器36は透過光34の光路外に配置されているので、透過光34によるバックグラウンド光を低減することができ、試料から発せられる発光33を感度よく検出することができる。また、基板表面の反射防止層24が基板表面上での迷光の反射を抑えることにより、迷光が発光検出器36に向かって進行するのを防ぐことができる。その結果、発光検出器36に混入する迷光の量を低減させることが可能となる。
【0064】
分析用基板21に備えられた反射層28は以下に説明するような役割を果たす。実施の形態1にて図2を用いて説明したとおり、入射光31を集光するレンズ32の端では入射光31は散乱される。この一部は、発光検出器36の設置された方向に直接向かう散乱光37となる。発光検出の測定を高感度に行うためには、散乱光37を発光検出器36に向かって透過させないようにしなければならない。ここで金属薄膜などからなる反射層28を上記カバー層23上に形成させることにより、前記反射層28がたとえ薄い膜厚(数〜数百nm)であっても、効率よく散乱光37を反射させることができる。よって反射防止層24が非常に薄く、散乱光37を発光検出器36の方向に透過させてしまうような場合には、反射層28を併用することにより、この散乱光37の透過を低減することができる。
【0065】
以上のように、本実施の形態での分析用基板21では、分析装置内で発生する迷光や発光検出器36の方向に透過する光を低減させ、感度のよい発光検出が可能である。
【0066】
〔実施の形態3〕
本発明の実施のさらにその他の形態を図5から図7に基づいて、以下に説明する。以下の実施の形態では、分析用基板として円形の分析用ディスク41を使用し、電気泳動を用いて試料の分析を行う場合について説明する。また、本実施の形態では、電気泳動を行う試料からの蛍光を検出する場合について説明を行う。
【0067】
図5(a)は、電気泳動による測定が可能な分析用ディスク41を示す正面図であり、また円形の分析用ディスクの概要図でもある。図5(a)に示すように、分析用ディスク41は、分析装置のターンテーブルの中心に分析用ディスク41を固定するための中心穴42と、電気泳動による試料の分析を行う分析用チップ43と、案内溝44と、番地情報記録部45とを備えている。本実施の形態では、分析用ディスク41は、分析チップ43を4つ備えているものとして説明するが、この数に限定はされない。なお、分析ディスク41の断面の構造(層構造)については後述する。
【0068】
各分析用チップ43は、液溜・注入口46a〜46dおよび泳動路(流路状セル)47を有する。また、図5(a)において灰色に塗りつぶされている部分は反射防止層48が形成されている部位である。泳動路47上の反射防止層48の一部には開口部49が形成されている。この反射防止層48は、実施の形態1の反射防止層4と同様のものであるため、また、開口部49は、実施の形態1の開口部6と同様のものであるため、説明を省略する。
【0069】
分析用チップ43の泳動路47は、長さの長い第1泳動路47aと短い第2泳動路47bとが十文字型に形成されている。この分析用チップ43の構造は、電気泳動による分析において一般に用いられている構造であり、例えば特許文献2に分析例と共に開示されている。
【0070】
第1泳動路47aは分析用ディスク41の径方向に延び、第2泳動路47bは第1泳動路47aに直交して延びている。液溜・注入口46a〜46dは、泳動路47の4個の端部に連通するように各1個が配置されている。即ち、第2泳動路47bの一端部に液溜・注入口46a、他端部に液溜・注入口46cが配置され、第1泳動路47aの一端部に液溜・注入口46b、他端部に液溜・注入口46dが配置されている。
【0071】
図5(b)は、分析用ディスク41の図5(a)で示された点線部で切断した断面図、即ち開口部49の形成部位における、第1泳動路47aの伸張方向に垂直な面の断面図である。また、分析用ディスク41の層構造を示す図でもある。分析用ディスク41は、垂直断面形状が矩形である溝状のくぼみを有する基板(基礎基板)51と、基板51における前記くぼみ以外の部分に形成された反射層52と、反射層52を覆う絶縁性を有する保護層53とを有している。さらに、保護層53上に形成された案内溝44と、基板51の前記溝状のくぼみを有する表面を覆うカバー層54と、カバー層54上に形成された反射防止層48と、基板51とカバー層54との間の前記くぼみにより形成される試料の保持が可能な泳動路47とを有している。また図中の矢印は、本実施の形態における光源となるCDやDVD等に使用される光ピックアップ101(後に図7で図示)から分析用ディスク41内に入射した入射光102を示す。
【0072】
上記構造の分析用ディスク41を用いて蛍光検出を行えば、ディスク表面が反射防止層48で覆われているため、実施の形態1や実施の形態2の分析用基板を用いた発光検出と同様に、分析装置内で発生する迷光を低減することができるため、感度のよい蛍光検出が可能である。
【0073】
また上記反射層52に金属薄膜を用いて電気泳動測定を行う場合、絶縁性の保護層53なしでは金属薄膜が泳動路47に露出するため、電気泳動測定における偽電極ができる。そこで絶縁体の保護層53で覆うことにより、偽電極の発生を阻止できる。その理由は以下のとおりである。反射層52が導電性の物質であると、泳動路47に沿って導体が存在する。そこに電気泳動用の電圧を印加しても、この導体のため流路内には電場がかからなかったり、流路内に偽電極が形成される。つまり、良好な電気泳動が困難となる。
【0074】
したがって、絶縁体(誘電体)からなる保護層53によって導電性の反射層52を覆うことにより、流路内の電場が均一となり電気泳動が可能となる。しかし、上述したとおり、金属薄膜を使用すると電気泳動用の電界がかかりにくいため、なるべく流路と金属薄膜との距離をとる必要がある。この距離は電界強度との兼ね合いで決まる。なお、反射層52として、金属膜に代えて誘電体多層膜を使用する場合は、反射層52と泳動路47間の距離をとる必要が無く、また保護層53を省略できる。
【0075】
以下では、分析用ディスク41を用いた電気泳動法の詳細について説明する。
【0076】
上記の分析用ディスク41での分析プロセス(電気泳動プロセス)では、バッファであるゲル溶液を液溜・注入口46dから注入し、泳動路47aと47bに充填させる。次に46b、46cにもバッファであるゲル溶液を注入する。その後分析の試料であるサンプルを溶かしたサンプル溶液を液溜・注入口46aに注入する。
【0077】
サンプルには例えばDNA断片を使用する。このDNA断片は末端への蛍光色素導入、またはインターカレーター型蛍光色素との混合等の方法で蛍光標識する必要がある。例えば前述のバッファであるゲル溶液にインターカレーター型蛍光色素を添加することで、流路をDNAが通過する際に蛍光染色をする方法をとってもよい。
【0078】
次に、分析装置の電源から供給される電極を各液溜・注入口46a〜46dに配置し、それら電極を次のように接続する。まず、液溜・注入口46cに配置した電極を+電圧電源(数十〜数百ボルト)に接続し、液溜・注入口46a、46b、46dに配置された電極をグランドに接続する。これにより、液溜・注入口46cに+電圧(数十〜数百ボルト)が印加され、液溜・注入口46aにゼロボルトが印加され、泳動路47に注入されたサンプル(DNA断片:マイナスに帯電)は第2泳動路47bの中を液溜・注入口46a(−電極)から液溜・注入口46c(+電極)に向かって泳動する。
【0079】
次に、泳動させたサンプルが泳動路47における十文字の交点に到達した後、液溜・注入口46dに配置された電極を+電圧電源(数十ボルト〜数キロボルト)に接続する。一方、液溜・注入口46a、46cに配置された電極は液溜・注入口46dに配置された電極の電圧よりも低い電圧を出力する+電圧電源(数ボルト〜数キロボルト)に接続し、液溜・注入口46bに配置された電極をグランドに接続する。これらにより、液溜・注入口46dの電極に+電圧(数十ボルト〜数キロボルト)が印加され、液溜・注入口46bの電極にゼロボルトが印加され、泳動路47に注入されたサンプルは第1泳動路47aの中を十文字の交点から液溜・注入口46dに向かって泳動する。このときサンプル(DNA)の移動度は、充填されたゲルによる分子ふるい効果のために分子量により異なるので、各分子量断片のフラグメントに分けることができる。このようなマイクロキャピラリにおける電気泳動分析の原理は、上述の特許文献2に開示されているようによく知られているため、詳細な説明は省略する。
【0080】
分析用ディスク41は、上記分析用チップ43と、光ピックアップ101からの入射光102を案内するための案内溝44と、番地情報を記録した番地情報記録部45とを備えている。分析用ディスク41が回転すると、光ピックアップ101は、分析用ディスク41の番地情報に含まれる半径位置を読み出しながら、分析用ディスク41の所望の半径位置に入射光102をアクセスする。したがって、一つの分析用チップ43内の所望の位置、すなわち泳動路47上の開口部49にて試料からの蛍光を検出することができる。
【0081】
また、分析用チップ43は全部で4つ形成され、それぞれが90度の角度の間隔で配置されている。さらに、隣り合う分析用チップ43の間には、案内溝44と番地情報記録部45とが周方向に並んで形成されている。入射光は、番地情報記録部45の番地情報に含まれる分析用チップ43の番号を読み出しながら、周方向に並ぶ分析用チップ43にアクセスするため、4つの分析用チップ43のうち、所望の分析用チップにおいて試料の分析(蛍光検出)を行うことができる。このとき、入射光102が1つのトラック(案内溝44)を周方向に走査すると、案内溝44のトラッキング領域→番地情報記録部45→案内溝44のトラッキング領域→泳動路47の順にこれらを繰り返し走査することになる。
【0082】
図6は、分析用ディスク41を用いた入射光102のトラッキングにおいて、入射光102が開口部49を通り過ぎて、案内溝44のトラッキング領域に移った状態を示す分析用ディスク41の縦断面図である。
【0083】
同図に示すように、入射光102は図に示す光路を通って案内溝44に集光される。また、入射光102は反射層52によって反射され、反射光63となってレンズ71へ戻る。この過程において、入射光102は、案内溝44において回折し、反射光63には回折光の分布が反映されるので、光ピックアップ101を制御することによって入射光102を案内溝44に追従させることができる。したがって、案内溝44を泳動路47の所望の検出位置を横切るように(だだし、泳動路47自体には存在しないように)形成しておけば、入射光は案内溝44の延長上にある泳動路47の所望の位置を横切り、その位置で試料の蛍光を検出(分析)できる。また、上記のように、入射光102が泳動路47を通過する期間においてトラッキング制御は入射光102が泳動路47を通過する直前の状態に保持されているので、泳動路47自体に案内溝が存在しなくても、泳動路47の通過前の案内溝44aからその延長上にある案内溝44bへ連続して安定なトラッキングが行われる。なお、上述の例では、案内手段として案内溝44を例に挙げて説明したが、これに限らずたとえばウォブルピットを案内手段としてもかまわない。
【0084】
図7は、上記分析装置における入射光制御装置70および光ピックアップ(光照射手段)101の主要部の構成を示すブロック図である。光ピックアップ101は、レンズ71およびこのレンズ71を駆動するアクチュエータ101aを備えている。さらに、半導体レーザーやフォトディテクタ、ビームスプリッタなどの光学部品により構成される光学系101bを備えている。入射光制御装置70は、番地再生回路72、コントローラ73(制御手段)、およびサーボ回路74(制御手段)を備えている。
【0085】
上記の制御装置70において、光ピックアップ101から出射された入射光102は、レンズ71によって集光され、分析用ディスク41へ入射される。この入射光102は、分析用ディスク41の案内溝44または番地情報記録部45に照射される。案内溝44または番地情報記録部45からの反射光は再び光ピックアップ101に戻り、光ピックアップ101はフォーカス誤差信号・トラック誤差信号75を出力する。
【0086】
フォーカス誤差信号・トラック誤差信号75はサーボ回路74を介してアクチュエータ101aにフィードバックされる。これにより、サーボ回路74は、案内溝44または番地情報記録部に入射光が新たな入射光102として、案内されるようにアクチュエータ101aを制御する。また、光量検出信号76は番地再生回路72に入力され、番地再生回路72は光量検出信号76から番地情報77を検出し、この番地情報77をコントローラ73に送る。コントローラ73では、番地情報77を確認しながら制御信号78をサーボ回路74に出力し、入射光102を所望の案内溝44にアクセスさせる処理を行う。これにより、入射光102を分析用基板41の所望の位置に移動させ、泳動路47に的確に入射させることができる。
【0087】
なお、案内溝44の開口部49の位置では、直前の案内溝44でのトラッキング状態が保持される。このためには、開口部49を横切る時間がサーボの応答時間(サーボ帯域の逆数に比例)よりも十分に短ければよい。あるいは、開口部49を横断するときにサーボ動作を一時的に保持すればよい(ホールド動作)。これにより、入射光102が泳動路47を横断してもトラッキングが乱されること無く、試料に的確に入射光102を照射しすることができる。そして、その後前記入射光102は、再び案内溝44に到達してトラッキング動作に復帰することができる。
【0088】
以上のように、本実施の形態においても、分析用ディスク41の表面が反射防止層48で覆われているため、実施の形態1や実施の形態2で解説したとおり、分析装置内で発生する迷光を低減することができ、感度のよい蛍光検出が可能である。
【0089】
また、分析用ディスク41を用いれば電気泳動を用いた試料の測定が可能である。
【0090】
さらに、本実施の形態における分析装置は、反射層52に形成された案内溝44を読み取る光ピックアップ101を備え、入射光102を案内溝44に追従させることができる。したがって、入射光102は案内溝44の延長上にある泳動路47を正確に照射することができる。これにより、分析装置では、試料からの光学的な変化を検出感度良く、さらに自動的かつ正確に検出することができる。
【0091】
上記の実施の形態においては、電気泳動における蛍光検出の場合について示したが、これに限らず、例えばクロマトグラフィーなどの蛍光検出にも応用可能である。また、分析用基板はディスク形状(分析用ディスク41)に限らず他の形状であってもよい。また、以上の説明では、試料からの蛍光検出の例を示したが、燐光など、外部光源により励起されて発光を放つ試料を検出するための装置にも適用可能である。
【0092】
上記実施の形態において、電気泳動を行うための電極の配線方法や、電源を供給する装置や、蛍光を検出する回路などの詳細は記載していないが、これらの方法や装置等は、従来公知のものを用いることができる。これらの方法や装置等は、例えば、特開2006−58250に記載されている方法や装置等と同様であるため、説明は省略する。
【0093】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の分析用基板及び分析装置は、微量な試料を分析する分野に適用することができる。例えば、医療機器分野、測定装置分野等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1における分析用基板の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における分析用基板を用いた分析装置の概略図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態2における分析用基板の斜視図であり、(b)は同図(a)の分析用基板が保持する流路状セルの伸張方向に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2における分析用基板を用いた分析装置の概略図である。
【図5】(a)は電気泳動による測定が可能な分析用ディスクを示す正面図であり、(b)は同図(a)の分析用ディスクの開口部の形成部位における、第1泳動路の伸張方向に垂直な面の断面図である。
【図6】図5に示した分析用ディスクを使用する分析装置において、入射光が流路を通り過ぎて案内溝のトラッキング領域に移った状態を分析用ディスクの縦断面を用いて示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3における分析装置の入射光照射装置が備える入射光制御装置および光ピックアップの主要部の構成を示すブロック図である。
【図8】従来の分析用チップの断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1、21 分析用基板
2、22、51 基板(基礎基板)
3、23、54 カバー層
4、24、48 反射防止層(反射防止手段)
5、25 流路状セル
6、26、49 開口部
11、31、102,207 入射光
12、32、71 レンズ
13、33 発光
14、34 透過光
15、35 光学フィルター
16、36 発光検出器
17a、17b 迷光
18、38 容器
28、52 反射層
37 散乱光
41 分析用ディスク(分析用基板)
42 中心穴
43 分析用チップ
44,44a,44b 案内溝
45 番地情報記録部
46a・b・c・d 液溜・注入口
47 泳動路
47a 第1泳動路
47b 第2泳動路
53 保護層
63 反射光
70 入射光制御装置
72 番地再生回路
73 コントローラ
74 サーボ回路
75 フォーカス誤差信号・トラック誤差信号
76 光量検出信号
77 番地情報
78 制御信号
101 光ピックアップ
101a アクチュエータ
101b 光学系
300 発光検出器16に近接した基板表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎基板表面に設けられたくぼみと、当該くぼみを覆うように形成されたカバー層とにより形成される試料保持部を有し、当該試料保持部に保持される試料の光学分析が可能な分析用基板において、
前記分析用基板表面に反射防止手段を備えたことを特徴とする分析用基板。
【請求項2】
前記基礎基板と前記反射防止手段との間に反射層を備えることを特徴とする請求項1に記載の分析用基板。
【請求項3】
前記反射防止手段は、黒色炭素化合物層、または無発光性顔料含有層のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析用基板。
【請求項4】
前記反射防止手段は、自身の表面に形成された、微細な凹凸構造、または微細な多孔質構造であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析用基板。
【請求項5】
前記試料保持部上に位置する反射防止手段に開口部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用基板。
【請求項6】
前記反射防止手段は、無機酸化物の多層膜からなる反射防止膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用基板。
【請求項7】
前記反射層に、光学分析用の入射光をガイドするための案内手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の分析用基板。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の分析用基板に対して、
入射光を入射させる光照射手段と、
前記分析用基板をはさんで前記光照射手段とは反対側に位置し、かつ、前記入射光の光路外に配置された光検出手段とを備えていることを特徴とする分析装置。
【請求項9】
請求項7に記載の分析用基板に対して入射光を入射させるとともに、当該分析用基板からの反射光を検出する光ピックアップと、
前記光ピックアップを前記案内手段に沿った方向に移動させる駆動手段と、
前記光ピックアップにより出力される検出信号に基づき、前記入射光を前記案内手段に追従して入射するように前記光ピックアップを制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−157814(P2008−157814A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348317(P2006−348317)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】