説明

分析用試料液の自動濾過方法及び分析用試料液の自動濾過装置

【課題】濾過時間を大幅に短縮することができ、濾過工程中にフィルターの交換を行う必要がなく、必要量の濾液(検液)を短時間で得ることができる作業性、省資源性に優れた分析用試料液の自動濾過方法の提供。
【解決手段】分析用試料液を目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルターで加圧濾過する一次濾過工程と、一次濾過工程で得られた一次濾液を目標とする孔径を有する二次濾過フィルターで減圧濾過する二次濾過工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用試料液を連続的に処理して分析に用いる検液を作製するための分析用試料液の自動濾過方法及び濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有害物質による土壌汚染の増加が著しく、土壌汚染による健康影響の懸念や対策の確立への社会的要請から、土壌汚染の状況把握、土壌汚染による人の健康被害の防止に関する措置等の土壌汚染対策を実施するための土壌汚染対策法が制定されている。
また、土壌汚染の未然防止のため、事業者等に対し、土地の改変に際しては、その土地の調査を義務付けており、その測定方法は、公定法として環境省告示(環境庁告示第46号、環境庁告示第13号、環境省告示第16号、環境省告示第19号)等に規定されている。
例えば、土壌の溶出試験法においては、ガラス製容器又は測定対象とする物質が吸着しない容器に試料を採取し、風乾する。試料の混合比が重量体積比で10%となるように溶媒を混合し、得られた試料液(混合液)を6時間振とうさせる。この試料液を10〜30分程度静置し、毎分3000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過する。そして、定量に必要な量の濾液を計り取って検液としている。
【0003】
試料液から得られる上澄み液の濾過には、一般的に吸引濾過(真空濾過)が採用されているが、フィルターの孔径が小さいため、濾過に多くの時間がかかり作業性に欠けるという問題がある。特に、粘土質の土壌(特に0.1〜0.2μm程度の粒子を多く含むもの)を試験する場合には、フィルターが目詰まりし易く、頻繁にフィルターを交換する必要があり、メンテナンス性、省資源性に欠けるという問題がある。また、フィルターの交換を怠ると、濾過時間が非常に長くなるだけでなく、目詰まりによりフィルターの実効的な孔径が小さくなり、濾液の性状が変化して正確な分析値を行うことができず、分析の信頼性に欠けるという問題も発生する。
これらの問題点を解決するために、様々な検討がなされており、例えば(特許文献1)には、「分析用試験液を濾過する方法において、フィルターの閉塞状況をモニターし、閉塞の度合いが決められた基準を超えた場合に自動的にフィルターを送ることを特徴とする分析用試験液の濾過装置。」が開示されている。
【特許文献1】特開2005−265413号公報
【非特許文献1】環境庁告示第46号
【非特許文献2】環境庁告示第13号
【非特許文献3】環境省告示第16号
【非特許文献4】環境省告示第19号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術は、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)の分析用試験液の濾過装置は、フィルターの閉塞状況をモニターし、閉塞の度合いが決められた基準を超えた場合に自動的にフィルターを送ることにより、フィルター交換に要する手間をなくし、フィルターの閉塞を未然に防ぎ、継続的に安定した濾過を行って、濾液(検液)の性状の安定化を図り、確度の高い分析値を得ようとするものであるが、濾過に用いるフィルターの孔径が小さく、短時間で閉塞してしまうので、必要な量の濾液を得るために、1回の濾過工程中に繰り返しフィルターを送って交換する必要があり、濾過時間も長期化し、省資源性、作業性に欠けるという課題を有していた。
(2)また、公定法と比べ、簡便で短時間に分析でき、一定の精度、感度が確保されている方法については、簡易分析法として調査に利用できることになっており、土壌中の有害物質の調査費用の低減化、調査時間の短縮化を実現するための分析用試料液の自動濾過方法と濾過装置の開発が強く望まれていた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、濾過時間を大幅に短縮することができ、濾過工程中にフィルターの交換を行う必要がなく、必要量の濾液(検液)を短時間で得ることができる作業性、省資源性に優れた分析用試料液の自動濾過方法の提供、及び簡素な構造で短時間に濾過作業を行うことができると共に、濾過作業中に並行して分析用試料液の調整を行うことができ、連続的に自動で濾過作業を行うことが可能で、全体の作業時間を短縮することができる効率性、使用性に優れた分析用試料液の自動濾過装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために本発明の分析用試料液の自動濾過方法及び分析用試料液の自動濾過装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の分析用試料液の自動濾過方法は、分析用試料液を連続的に処理して分析に用いる検液を作製するための前記分析用試料液の自動濾過方法であって、前記分析用試料液を目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルターで加圧濾過する一次濾過工程と、前記一次濾過工程で得られた一次濾液を前記目標とする孔径を有する二次濾過フィルターで減圧濾過する二次濾過工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルター(目の粗いフィルター)で分析用試料液を加圧濾過する一次濾過工程を有することにより、目標とする孔径を有する二次濾過フィルター(目の細かいフィルター)を用いて二次濾過工程を行う前に、大きな粒子と共に若干の小さな粒子を取り除くことができるので、二次濾過工程の負荷を低減することができ、短時間で必要量の濾液(検液)を得ることが可能で濾過作業性に優れる。
(2)一次濾過工程で大きな粒子と共に若干の小さな粒子が取り除かれた一次濾液を二次濾過工程で減圧濾過することにより、二次濾過工程で用いる目の細かい二次濾過フィルターに目詰まりが発生し難く、一度の二次濾過工程で必要量の濾液(検液)を得ることができ、従来のように二次濾過フィルター15bを交換しながら、二次濾過工程を複数回に分けて行う必要がなく、メンテナンス性に優れ、作業時間を短縮できると共に、フィルターの使用量を大幅に削減することができ、省資源性に優れる。
(3)一次濾過工程で加圧濾過を行うことにより、一次濾過工程の時間を大幅に短縮することができ、短時間で大量の一次濾液を得ることが可能で、濾過作業の効率性に優れる。
(4)二次濾過部で減圧濾過を行うことにより、構造を簡素化することができ、省スペース性、設計自在性、量産性に優れると共に、漏れが発生した場合でも外部に濾液が飛散することがなく、取扱い性に優れる。
【0007】
ここで、分析用試料液としては、土壌溶出液、廃棄物溶出液、粉流体や樹脂などの溶解液、スラリーなどが挙げられる。
二次濾過工程で使用する二次濾過フィルターの孔径は検査、分析対象物質の種類や分析方法で要求されるものを適宜、選択することができる。また、一次濾過工程で使用する一次濾液フィルターの孔径は、分析用試料液に含まれる試料や分析対象物質の種類、必要とされる濾液(検液)の量、二次濾過工程で使用する二次濾過フィルターの孔径(目標とする孔径)などとの組合せにより、適宜、選択することができるが、一次濾液フィルターの孔径は、二次濾過フィルターの孔径の3倍〜20倍が好ましい。一次濾液フィルターの孔径が、二次濾過フィルターの孔径の3倍より小さくなるにつれ、粒径の小さな粒子によって一次濾液フィルターが目詰まりし易くなり、一次濾過工程の時間が長くなる傾向があり、二次濾過フィルターの孔径の20倍より大きくなるにつれ、一次濾液フィルターで粒径の大きな粒子を十分に取り除くことが困難になり、二次濾過フィルターへの負荷が増大し、二次濾過工程の時間が長くなる傾向があり、いずれも加圧濾過による時間短縮の効果が不十分となるため好ましくない。
【0008】
一次濾過工程において、二次濾過フィルターの孔径の3倍〜20倍の孔径を有する一次濾過フィルターを用いて加圧濾過を行うことにより、減圧濾過よりも極めて大きな圧力差で濾過を行うことができ、濾過時間を大幅に短縮でき、一次濾過工程の作業性、効率性に優れる。一次濾過工程における加圧圧力は、一次濾過フィルターの孔径や濾過対象となる分析用試料液の種類などによっても異なるが、0.3MPa〜0.8MPa、好ましくは0.4MPa〜0.6MPaが望ましい。加圧圧力が0.4MPaよりも低くなるにつれ、濾過時間が長くなり、加圧濾過の効果が低下し易くなる傾向があり、0.6MPaよりも高くなるにつれ、濾過時の一次濾過フィルターへの負荷が増加し、耐久性が低下し易くなる傾向が見られる。また、0.3MPaよりも低くなると、加圧濾過による時間短縮の効果が不十分となり、0.8MPaよりも高くなると、圧力の管理、制御が困難となって、取り扱い性に欠け、いずれも好ましくない。
【0009】
二次濾過工程では、一次濾液に含まれる所望の粒径以上の粒子を取り除くために、目標とする孔径を有する二次濾過フィルター(目の細かいフィルター)を用いる。一次濾過工程では、二次濾過工程で用いる目の細かい二次濾過フィルターよりも粒径の大きな粒子と共に、若干ではあるが二次濾過フィルターよりも粒径の小さな粒子も、一緒に取り除かれているので、目の細かい二次濾過フィルターでは目詰まりが発生し難くなっている。二次濾過工程で、加圧濾過を行うことも可能ではあるが、減圧濾過とすることにより、装置のコンパクト性、設計自在性、量産性に優れる。
尚、一次濾過工程及び二次濾過工程で用いるフィルターの材質や種類は、分析用試料液に含まれる試料や分析対象物質の種類などに応じて、適宜、選択することができる。特に、土壌の分析用試料液を濾過する場合、二次濾過工程では、従来の公定法に則って、定められた孔径を有するメンブレンフィルターを用いることが好ましい。
【0010】
一次濾過工程の前工程として分析用試料液中に分析対象物質を溶出させる溶出工程を備えた場合、一次濾過工程及び二次濾過工程で濾過されて得られた濾液を検液として、分析対象物質の溶出量などを確実に定量分析することができる。
例えば、試料(土壌)中にカドミウム,鉛,砒素,水銀などの重金属等が含まれている場合、予め溶出工程を行うことにより、それらを分析用試料液中に溶出させることができる。二次濾過工程まで終了した濾液を後工程の分析工程で分析することにより、試料(土壌)中に含まれる分析対象物質の種類や溶出量を知ることができる。
【0011】
溶出工程としては、分析用試料液に超音波振動を与える超音波振動工程と、分析用試料液を攪拌する攪拌工程と、を備えたものが好適に用いられる。
溶出工程が、分析用試料液に超音波振動を与える超音波振動工程と分析用試料液を攪拌する攪拌工程を有することにより、短時間で簡便かつ確実に試料に含まれる分析対象物質を溶出させることができる。
超音波振動の周波数は、分析対象物質の種類などによっても異なるが、20kHz〜500kHz、好ましくは30kHz〜100kHzが望ましい。超音波振動の周波数が30kHzよりも低くなるにつれ、分析対象物質の溶解、溶出に斑が生じ易くなる傾向があり、100kHzよりも高くなるにつれ、分析対象物質の溶解、溶出が抑えられ、工程時間が長くなる傾向が見られる。また、20kHzよりも低くなると、騒音が大きくなり、使用性に欠け、500kHzよりも高くなると、分析対象物質の溶解、溶出量が不十分となり、正確な分析が困難になるため、いずれも好ましくない。
【0012】
攪拌工程において分析用試料液を撹拌する際の回転数は、分析用試料液に含まれる試料や分析対象物質の種類や量などによっても異なるが、20rpm〜500rpm、好ましくは30rpm〜300rpmが望ましい。分析用試料液を撹拌する回転数が、30rpmよりも遅くなるにつれ、分析対象物質の溶解、溶出が抑えられ、分析結果が低めに出易くなる傾向があり、300rpmよりも速くなるにつれ、分析用試料液中にエアーを巻き込み易くなり、超音波振動で得られる効果が低減する傾向が見られる。また、20rpmよりも遅くなると、十分な溶解、溶出を行うことが困難となり、500rpmよりも速くなると、超音波振動で得られる効果が不十分となり、いずれも分析の正確性に欠け、好ましくない。
尚、超音波振動工程と攪拌工程を別々に行う場合は、いずれを先に行ってもよい。また、超音波振動工程と攪拌工程を同時に行ってもよく、その場合、溶出工程を短時間で効率的に行うことができ、溶出の作業性に優れる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の分析用試料液の自動濾過装置は、分析用試料液を連続的に処理して分析に用いる検液を作製するための前記分析用試料液の自動濾過装置であって、前記分析用試料液を貯留する試料液貯留部と、前記試料液貯留部に接続された試料液供給管と、前記試料液供給管から供給される前記分析用試料液を目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルターで加圧濾過する一次濾過部と、前記一次濾過部で濾過された一次濾液を排出する一次濾液排出管と、前記一次濾液排出管から排出された一次濾液を貯留する一次濾液貯留部と、前記一次濾液貯留部に接続された一次濾液供給管と、前記一次濾液供給管の開閉を制御する一次濾液供給バルブと、前記一次濾液供給管から供給される一次濾液を目標とする孔径を有する二次濾過フィルターで減圧濾過する二次濾過部と、前記二次濾過部で濾過された濾液を排出する濾液排出管と、前記濾液排出管から排出された濾液を貯留する濾液貯留部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルター(目の粗いフィルター)で分析用試料液の加圧濾過を行う一次濾過部を有することにより、目標とする孔径を有する二次濾過フィルター(目の細かいフィルター)を用いて二次濾過部で減圧濾過を行う前に、大きな粒子と共に、大きな粒子で形成されたブリッジに入り込んだ若干の小さな粒子も一緒に取り除くことができるので、二次濾過部の負荷を低減することができ、短時間で必要量の濾液(検液)を得ることが可能で濾過作業性に優れる。
(2)一次濾過部での加圧濾過で大きな粒子と共に若干の小さな粒子が取り除かれた一次濾液を二次濾過部で減圧濾過することにより、二次濾過部で用いる目の細かい二次濾過フィルターに目詰まりが発生し難く、二次濾過部での一度の濾過で必要量の濾液(検液)を得ることができ、濾過工程中にフィルターを交換する必要がなく、メンテナンス性に優れると共に、フィルターの使用量を大幅に削減することができ、省資源性に優れる。
(3)一次濾過部で加圧濾過を行うことにより、一次濾過部での濾過時間を大幅に短縮することができ、短時間で大量の一次濾液を得ることが可能で、濾過作業の効率性に優れる。
(4)二次濾過工程で減圧濾過を行うことにより、漏れが発生した場合でも外部に濾液が飛散することがなく、取扱い性に優れる。
(5)一次濾過部の上流側に分析用試料液を貯留する試料液貯留部を有することにより、試料液貯留部に予め秤量された分析用試料液を保存することができ、作業開始時に直ちに試料液貯留部から一次濾過部へ所定量の分析用試料液を確実に供給して一次濾過部での濾過を開始することができ、濾過作業の効率性、信頼性に優れる。
(6)一次濾過部と二次濾過部の間に、一次濾過部で濾過された一次濾液を貯留する一次濾液貯留部を有することにより、一次濾過部での濾過終了後に、二次濾過部における減圧濾過に備えることができ、一次濾液供給管に配設された一次濾液供給バルブを開くだけで、二次濾過部に一次濾液を供給して、直ちに二次濾過部での減圧濾過を行うことができ、一次濾過部での濾過と二次濾過部での濾過を連続的かつ効率的に行うことができ、濾過作業の効率性を向上させることができる。
(7)二次濾過部の下流側に二次濾過部で濾過された濾液を貯留する濾液貯留部を有することにより、分析工程やその他の後工程に使用するまでの間、濾液を貯留しておくことができ、所望のタイミングで濾液貯留部から濾液を取り出して濾液の分析などを行うことができ、使用性に優れる。
【0014】
ここで、一次濾過部で行われる加圧濾過及び二次濾過部で行われる減圧濾過については、請求項1で説明した通りである。
自動濾過装置が、分析用試料液中に分析対象物質を溶出させる溶出部を有する場合、一次濾過工程及び二次濾過工程が終了して最終的に得られた濾液を検液として、分析対象物質の溶出量などの分析に用いることができる。また、一次濾過部及び二次濾過部で濾過を行っている最中に、溶出部で分析用試料液中に分析対象物質を溶出させて次の濾過作業に備えることができ、各々の工程を同時に並行処理することができるので、連続的に溶出、濾過、分析の作業が可能であり、全体の作業時間を大幅に短縮することができ、作業効率を向上させることができる。
【0015】
溶出部は、分析用試料液中に分析対象物質を溶出させることができるものであればよいが、分析用試料液に超音波振動を与える超音波振動器と分析用試料液を攪拌する攪拌器を有する場合、短時間で簡便かつ確実に試料に含まれる分析対象物質を溶出させることができる。
超音波振動器としては、分析用試料液が入った容器に超音波振動を与えることができるものであればよい。超音波振動の振動数や超音波振動を与える時間は、請求項1で説明した通りであるので説明を省略する。
攪拌器としては、容器に入った分析用試料液を攪拌できるものであればよいが、攪拌翼をモータで回転させるものが好適に用いられる。分析用試料液を攪拌する時間は、請求項1で説明した通りであるので説明を省略する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の分析用試料液の自動濾過装置であって、前記一次濾過部が、前記試料液供給管から供給される分析用試料液の加圧を行う試料液加圧部と、前記試料液加圧部で加圧された分析用試料液を排出する加圧液排出管と、前記加圧液排出管から排出される分析用試料液を前記一次濾過フィルターの表面側に供給する加圧液供給部と、前記一次濾過フィルターで濾過された一次濾液を前記一次濾過フィルターの裏面側で受容し前記一次濾液排出管に接続された一次濾液受容部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)試料液加圧部で加圧された分析用試料液を加圧液排出管から加圧液供給部に供給することができ、一次濾過フィルターで濾過された一次濾液を一次濾過フィルターの裏面側に配設された一次濾液受容部で受容し、一次濾液排出管から排出して一次濾液貯留部に貯留することができる。
【0017】
ここで、一次濾過部は、試料液加圧部を上下動させる加圧部上下動駆動部及び/又は一次濾液受容部を上下動させる受容部上下動駆動部を有することにより、濾過を行う時は、試料液加圧部と一次濾液受容部の間に一次濾過フィルターを挟んで密閉、固定し、確実に加圧濾過を行うことができ、濾過の信頼性に優れる。また、メンテナンスを行う時は、試料液加圧部と一次濾液受容部の間を拡げて一次濾過フィルターを開放し、一次濾過フィルターや各部の部品の交換や洗浄などを行うことができ、取り扱い性、メンテナンス性に優れる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の分析用試料液の自動濾過装置であって、前記二次濾過部が、前記一次濾液供給管から供給される一次濾液を前記二次濾過フィルターの表面側に供給する一次濾液供給部と、前記濾液排出管に接続され前記二次濾過フィルターの裏面側から真空ポンプにより一次濾液を吸引する一次濾液吸引部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2又は3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)一次濾液供給管を通って一次濾液供給部に供給される一次濾液を、二次濾過フィルターの裏面側から一次濾液吸引部で吸引することにより、減圧濾過することができ、濾過された濾液を濾液排出管から排出して濾液貯留部に確実に貯留することができる。
【0019】
ここで、二次濾過部は、一次濾液供給部を上下動させる供給部上下動駆動部及び/又は一次濾液吸引部を上下動させる吸引部上下動駆動部を有することにより、濾過を行う時は、一次濾液供給部と一次濾液吸引部の間に二次濾過フィルターを挟んで密閉、固定し、確実に減圧濾過を行うことができ、濾過の信頼性に優れる。また、メンテナンスを行う時は、一次濾液供給部と一次濾液吸引部の間を拡げて二次濾過フィルターを開放し、二次濾過フィルターや各部の部品の交換や洗浄などを行うことができ、取り扱い性、メンテナンス性に優れる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の分析用試料液の自動濾過装置であって、前記一次濾液排出管に接続され前記一次濾過部と前記一次濾液貯留部との間に配設された一次濾液移送部と、前記一次濾液移送部と前記一次濾液貯留部の間を接続する一次濾液移送管と、前記一次濾液移送管の途中に配設され前記一次濾液移送管の開閉を制御する一次濾液移送バルブと、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2乃至4の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)一次濾過部と、二次濾過部に一次濾液を供給するための一次濾液貯留部の間に、一次濾液移送部を設け、一次濾液移送部と一次濾液貯留部を接続する一次濾液移送管の途中に一次濾液移送バルブを配設することにより、一次濾過部で濾過され一次濾液移送部に貯留された一次濾液を一次濾液貯留部に移送して貯留することができるので、一次濾過工程と二次濾過工程を完全に分離して独立させることができ、一次濾過工程及び二次濾過工程の進行状況が互いに影響を与えることがなく、両者の工程を並行して行うことができ、濾過の作業性、汎用性に優れる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5の内いずれか1項に記載の分析用試料液の自動濾過装置であって、前記試料液加圧部が、前記分析用試料液が貯留される加圧容器と、前記加圧容器の上端部に配設され前記加圧容器の中に加圧気体を供給する加圧気体供給口と、前記加圧容器の上端部に形成された試料液供給口と、前記試料液供給口に連通しボール弁が配設されたボール弁通路と、前記試料液供給管に接続され前記ボール弁通路に挿抜自在に配設され前記ボール弁の弁体に穿設された開口部を貫通して前記試料液供給口から前記加圧容器に前記分析用試料液を注入する試料液注入ノズルと、前記試料液注入ノズルを上下動させる注入ノズル上下動駆動部と、前記加圧容器の底部に形成され前記加圧液排出管と接続されて加圧された前記分析用試料液が排出される加圧液排出口と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3乃至5の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)分析用試料液が貯留される加圧容器の上端部に、加圧容器の中に加圧気体を供給する加圧気体供給口が配設されているので、加圧容器の中に容易に加圧気体を供給して、加圧容器の中に貯留された分析用試料液を加圧することができ、加圧の作業性に優れる。
(2)加圧容器の上端部に形成された試料液供給口に連通しボール弁が配設されたボール弁通路を有するので、試料液供給口から加圧容器の中に分析用試料液を供給した後、ボール弁通路をボール弁で閉塞することにより、加圧容器を確実に密閉することができ、加圧気体供給口から供給される加圧気体が加圧容器から漏れることがなく、加圧の信頼性、効率性に優れる。
(3)試料液供給管に接続されボール弁通路に挿抜自在に配設されボール弁の弁体に穿設された開口部を貫通して試料液供給口から加圧容器に分析用試料液を注入する試料液注入ノズルを有するので、加圧容器に分析用試料液を注入する際に、分析用試料液がボール弁の弁体やボール弁通路に接触することがなく、分析用試料液に含まれる土壌の砂などの試料の粒子が弁体やボール弁通路に付着することがないので、ボール弁の破損を確実に防止することができ、ボール弁の耐久性及び試料液加圧部における加圧の信頼性に優れる。
(4)試料液注入ノズルを上下動させる注入ノズル上下動駆動部を有するので、試料液注入ノズルを容易に上下動させてボール弁通路への挿抜を行うことができ、加圧容器への分析用試料液の注入作業と、加圧容器への加圧気体の供給作業の切り替えを短時間で効率的に行うことができ、使用性に優れる。
(5)加圧容器の底部に形成され加圧液排出管と接続されて、加圧された分析用試料液が排出される加圧液排出口を有するので、加圧容器の中で加圧された分析用試料液を漏れなく確実に加圧液排出口から排出することができ、加圧された所定量の分析用試料液を加圧液排出管を通して加圧液供給部に供給して加圧濾過を行うことができ、加圧濾過工程の信頼性に優れる。
【0022】
ここで、注入ノズル上下動駆動部は、試料液注入ノズルを上下動させることができればよい。例えば、油圧、水圧、空気圧を利用したピストンシリンダの他に、モータを用いた送り螺子機構を有するもの等が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の分析用試料液の自動濾過方法及び分析用試料液の自動濾過装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルター(目の粗いフィルター)で分析用試料液の加圧濾過を行う一次濾過工程と、一次濾過工程で得られた一次濾液を目標とする孔径を有する二次濾過フィルターで減圧濾過する二次濾過工程を有することにより、一次濾過工程で大きな粒子と共に若干の小さな粒子も取り除かれて二次濾過工程の負荷を低減することができ、二次濾過工程での目詰まりが発生し難く、一度の二次濾過工程によって短時間で必要量の濾液(検液)を得ることが可能で濾過作業性に優れ、濾過工程中に二次濾過フィルターを交換する必要がなく、メンテナンス性に優れると共に、フィルターの使用量を大幅に削減することができる省資源性に優れた分析用試料液の自動濾過方法を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)目標とする孔径よりも大きな孔径を有するフィルター(目の粗いフィルター)で分析用試料液の加圧濾過を行う一次濾過部と、目標とする孔径を有する一次濾過フィルターで一次濾過部で濾過された一次濾液の減圧濾過を行う二次濾過部を有することにより、一次濾過部で大きな粒子と共に若干の小さな粒子も取り除かれて二次濾過部の負荷を低減することができ、二次濾過部で用いる目の細かい二次濾過フィルターフィルターに目詰まりが発生し難く、二次濾過部での一度の濾過によって短時間で必要量の濾液(検液)を得ることが可能で濾過作業性に優れ、濾過工程中に二次濾過フィルターフィルターを交換する必要がなく、メンテナンス性に優れると共に、フィルターの使用量を大幅に削減することができる省資源性に優れた分析用試料液の自動濾過装置を提供することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)試料液加圧部で加圧された分析用試料液を加圧液排出管から加圧液供給部に供給することにより、分析用試料液を容易に一次濾過することができ、濾過された一次濾液を一次濾液受容部で受容し、一次濾液排出管に接続された一次濾液貯留部に確実に貯留して二次濾過に備えることができる一次濾過作業の信頼性に優れた分析用試料液の自動濾過装置を提供することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)一次濾液貯留部から供給される一次濾液を、二次濾過フィルターの裏面側から一次濾液吸引部で吸引することにより、短時間で減圧濾過することができ、濾過された濾液を濾液貯留部に確実に貯留して分析に備えることができる使用性、取り扱い性に優れた分析用試料液の自動濾過装置を提供することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)一次濾液移送部に貯留された一次濾液を一次濾液貯留部に移送して貯留することができるので、一次濾過工程と二次濾過工程を完全に分離して独立させることができ、一次濾過工程及び二次濾過工程の進行状況が互いに影響を与えることがなく、両者の工程を並行して行うことができる自動濾過の作業性、信頼性に優れた分析用試料液の自動濾過装置を提供することができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、請求項3乃至5の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)試料液供給管に接続された試料液注入ノズルが、ボール弁通路に挿抜自在に配設されており、ボール弁の弁体に穿設された開口部を貫通して試料液供給口から加圧容器に分析用試料液を注入することができるので、加圧容器に分析用試料液を注入する際に、分析用試料液がボール弁の弁体やボール弁通路に接触せず、分析用試料液に含まれる土壌の砂などの試料の粒子が弁体やボール弁通路に付着することがなく、ボール弁の破損を確実に防止することができるボール弁の耐久性及び試料液加圧部における加圧の信頼性に優れた分析用試料液の自動濾過装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態における分析用試料液の自動濾過方法(以下、自動濾過方法という)及びそれを備えた分析用試料液の自動濾過装置(以下、自動濾過装置という)について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の自動濾過装置の要部模式正面図である。
図1中、1は実施の形態1における分析用試料液の自動濾過装置、2は濾過を行う分析用試料液31を貯留する自動濾過装置1の試料液貯留部、2aは試料液貯留部2に接続され試料液貯留部2に貯留された分析用試料液31を後述する自動濾過装置1の一次濾過部3に供給する試料液供給管、3は分析用試料液31の一次濾過を行う自動濾過装置1の一次濾過部、3aは分析用試料液31の加圧を行う一次濾過部3の試料液加圧部、3bは試料液加圧部3aで加圧された分析用試料液31を排出する一次濾過部3の加圧液排出管、4は加圧液排出管3bから排出される分析用試料液31を一次濾過フィルター15aの表面側に供給する一次濾過部3の加圧液供給部、5は加圧液供給部4と一次濾液受容部6との間で挟持される一次濾過フィルター15aの間欠輸送を行うためにピストンシリンダにより後述する一次濾液受容部6を上下動させる一次濾過部3の受容部上下動駆動部、6は一次濾過フィルター15aで濾過された一次濾液を一次濾過フィルター15aの裏面側で受容する一次濾過部3の一次濾液受容部、6aは一次濾液受容部6に接続され一次濾液受容部6に貯留された一次濾液を排出する一次濾液排出管、6bは一次濾過部3で濾過され一次濾液排出管6aから排出された一次濾液を一時的に貯留して後述する一次濾液貯留部7に移送するための一次濾液移送部、6cは一次濾液移送部6bに接続され一次濾液移送部6bに貯留された一次濾液を移送する一次濾液移送管、6dは一次濾液移送管6cの途中に配設され一次濾液移送管6cの開閉を制御するための一次濾液移送バルブ、7は後述する二次濾過部8に供給する一次濾液を貯留する一次濾液貯留部、7aは一次濾液貯留部7に接続され一次濾液貯留部7に貯留された一次濾液を二次濾過部8に供給するための一次濾液供給管、7bは一次濾液供給管7aの途中に配設され一次濾液供給管7aの開閉を制御するための一次濾液供給バルブ、8は一次濾液供給管7aから供給される一次濾液を減圧濾過する自動濾過装置1の二次濾過部、9は一次濾液供給管7aから供給される一次濾液を二次濾過フィルター15bの表面側に供給する一次濾液供給部、10はピストンシリンダにより一次濾液供給部9を上下動させて一次濾液供給部9と後述する一次濾液吸引部11との間で挟持される二次濾過フィルター15bの固定と開放を切り替える二次濾過部8の供給部上下動駆動部、11は二次濾過フィルター15bの裏面側から真空ポンプにより一次濾液を吸引する二次濾過部8の一次濾液吸引部、11aは一次濾液吸引部11に接続され一次濾液吸引部11で吸引されて濾過された濾液を排出する濾液排出管、12は二次濾過部8で濾過され濾液排出管11aから排出された濾液を貯留する濾過装置1の濾液貯留部、15aは図示しないフィルター送り機構で繰り出しと巻き取りを行うことにより間欠的に一次濾過部3に供給され目標とする孔径よりも大きな孔径を有する目の粗い帯状の一次濾過フィルター、15bは図示しないフィルター送り機構で繰り出しと巻き取りを行うことにより間欠的に二次濾過部8に供給され目標とする孔径を有する目の細かい帯状の二次濾過フィルターである。
【0030】
以上のように構成された実施の形態1における自動濾過装置の動作に基づいて、実施の形態1における自動濾過方法を説明する。
まず、試料液加圧部の詳細について説明する。
図2(a)は実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における試料液加圧部での分析用試料液の供給状態を示す要部断面図であり、図2(b)は実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における試料液加圧部での分析用試料液の加圧状態を示す要部断面図である。
図2中、25は分析用試料液31が貯留される試料液加圧部3aの加圧容器、25aは加圧容器25の上端部に配設され加圧容器25の中に空気などの加圧気体を供給するための加圧気体供給口、25bは加圧容器25の上端部に形成された試料液供給口、25cは加圧容器25の底部に形成され加圧液排出管3bと接続されて加圧された分析用試料液31が排出される加圧液排出口、26は試料液供給口25bに連設されたボール弁、26aはボール弁26の弁体、26bは弁体26aを貫通する開口部(図2(b)参照)、26cはボール弁通路、27はボール弁通路26cに挿通され試料液供給口25bから加圧容器25に分析用試料液31を注入する試料液注入ノズル、27aは試料液注入ノズル27の端部に配設され試料液供給管2aに接続された試料液注入ノズル27のノズル支持部、28はノズル支持部27aと後述する注入ノズル上下動駆動部29のピストン29aの間を連結する連結部、29はシリンダ29bに対してピストン29aを摺動させて試料液注入ノズル27を上下動させる注入ノズル上下動駆動部である。
【0031】
以上のように構成された試料液加圧部の動作について説明する。
試料液貯留部2(図1参照)に貯留された分析用試料液31は、試料液供給管2aを通って一次濾過部3の試料液加圧部3aに供給される。このとき、まず、図2(a)に示したように、弁体26aの開口部26bがボール弁通路26cと平行になるように弁体26aを回転させてボール弁通路26cを開放する。続いて注入ノズル上下動駆動部29のピストン29aにより試料液注入ノズル27を下降させ、ボール弁通路26cに試料液注入ノズル27を挿通する。試料液注入ノズル27が弁体26aの開口部26bを貫通して加圧容器25の試料液供給口25bまで達したところで分析用試料液31を加圧容器25に注入する。これにより、分析用試料液31がボール弁26の弁体26aやボール弁通路26cに接触せず、分析用試料液31に含まれる土壌の砂などの試料の粒子が付着することがないので、ボール弁26の破損を確実に防止することができ、ボール弁26の耐久性及び試料液加圧部3aにおける加圧の信頼性に優れる。
【0032】
次に、試料液加圧部3aで分析用試料液31を加圧する場合には、図2(b)に示したように、注入ノズル上下動駆動部29のピストン29aにより試料液注入ノズル27を上昇させ、弁体26aの開口部26bから抜き出す。続いて弁体26aの開口部26bがボール弁通路26cと直交するように弁体26aを回転させてボール弁通路26cを閉塞する。加圧気体供給口25aから加圧容器25の中に加圧気体を供給し、分析用試料液31を加圧する。加圧された分析用試料液31は、加圧液排出口25cから排出され加圧液排出管3bを通って加圧液供給部4(図1参照)に供給される。
尚、注入ノズル上下動駆動部29は、試料液注入ノズル27を上下動させることができればよく、油圧、水圧、空気圧を利用したピストンシリンダの他に、モータによる送り螺子機構を用いてもよい。尚、注入ノズル上下動駆動部29のピストン29aと試料液注入ノズル27を直接接続してもよい。
【0033】
ここで、加圧液供給部及び一次濾液受容部の詳細について説明する。
図3は実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における加圧液供給部及び一次濾液受容部の要部拡大断面図である。
図3中、41は加圧液供給部4の加圧液溜部、41aは加圧液溜部41の液溜空間、41bは液溜空間41aに連通して加圧液溜部41の上部に形成され加圧液排出管3bに接続された加圧液供給孔、42は加圧液溜部41の底部の液溜空間41aの外周部に配設されたシリコンなどの合成樹脂製のシール用のOリング、61はステンレスで形成され一次濾過フィルター15aを支持する一次濾液受容部6のフィルターホルダー、61aは円形の凹状に形成され一次濾過フィルター15aで濾過された一次濾液を受けるフィルターホルダー61の一次濾液受け凹部、61bは一次濾液受け凹部61aの外周を囲繞するフィルターホルダー61のフィルター支持凸部、61cはフィルターホルダー61に一次濾液受け凹部61aと連通して形成され一次濾液排出管6aに接続された一次濾液受容部6の一次濾液排出孔、62は一次濾液受け凹部61aに収容されたステンレスなどの金属製のサポートリング、62aは直径の異なる環状に形成され同心円状に配置されたサポートリング62の複数の環状部材、62bは環状部材62aの下面側に放射状に配置され複数の環状部材62aを接続するサポートリング62の環状部材固定部、63はフィルター支持凸部61bの内周に配設されたポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂製のガスケット、64は複数の微小貫通孔を有しサポートリング62及びガスケット63で支持されて一次濾過フィルター15aで濾過された一次濾液を一次濾液受け凹部61aに導くサポートスクリーンである。
【0034】
図3では、一次濾液受容部6が下降して、帯状の一次濾過フィルター15aが開放された状態を示しているが、前述した試料液加圧部3aへの分析用試料液31の供給や分析用試料液31を加圧して一次濾過工程を行う際には、一次濾液受容部6が上昇し、加圧液供給部4の加圧液溜部41と一次濾液受容部6のフィルターホルダー61の間に一次濾過フィルター15aが挟持された状態となっている。このとき、一次濾過フィルター15a及びサポートスクリーン64がOリング42とガスケット63で挟まれ、加圧液溜部41の液溜空間41aとフィルターホルダー61の一次濾液受け凹部61aは密閉状態となっている。
【0035】
試料液加圧部3a(図2参照)で加圧され、加圧液排出管3bを通って加圧液供給部4に供給された分析用試料液31は、加圧液供給孔41bから液溜空間41aに流入し、一次濾過フィルター15aで濾過される。一次濾過フィルター15aで濾過された一次濾液は、サポートスクリーン64に形成された複数の微小孔を通過し、サポートリング62の開口部を通って、一次濾液排出孔61cから一次濾液排出管6aへと排出される。このとき、一次濾過フィルター15a及びサポートスクリーン64がサポートリング62で支持されているので、加圧による変形を防止することができ、確実に加圧濾過を行うことができる。
【0036】
本実施の形態では、一次濾過フィルター15aとして孔径が3μmのメンブレンフィルターを使用し、0.3MPa〜0.8MPaの圧力で加圧した。一次濾過部3における一次濾過工程の加圧圧力は、一次濾過フィルター15aの孔径や濾過対象となる分析用試料液31の種類などによっても異なるが、加圧圧力が0.3MPaよりも低くなると、加圧濾過による時間短縮の効果が不十分となり、0.8MPaよりも高くなると、圧力の管理、制御が困難となって、取り扱い性に欠けることがわかったためである。尚、サポートスクリーン64の微小貫通孔の孔径は、0.2mm〜2mmとし、一次濾過フィルター15aで濾過された一次濾液が、全面から速やかに通過できるようにした。
一次濾液排出管6aから排出された一次濾液は、図1に示すように、一時的に一次濾液移送部6bに貯留される。一次濾液移送部6bに貯留された一次濾液は、一次濾液移送バルブ6dを開くことにより、一次濾液移送管6cを通って一次濾液貯留部7に貯留され、一次濾過工程が終了する。
【0037】
尚、一次濾過工程で使用する一次濾液フィルター15aの孔径は、分析用試料液31に含まれる試料や分析対象物質の種類、必要とされる濾液(検液)の量、二次濾過工程で使用する二次濾過フィルター15bの孔径(目標とする孔径)などとの組合せにより、二次濾過フィルター15bの孔径の3倍〜20倍の範囲で適宜、選択することができる。一次濾液フィルター15aの孔径が、二次濾過フィルター15bの孔径の3倍より小さくなるにつれ、粒径の小さな粒子によって一次濾液フィルター15aが目詰まりし易くなり、一次濾過工程の時間が長くなる傾向があり、二次濾過フィルター15bの孔径の20倍より大きくなるにつれ、一次濾液フィルター15aで粒径の大きな粒子を十分に取り除くことが困難になり、二次濾過フィルター15bへの負荷が増大し、二次濾過工程の時間が長くなる傾向があることがわかったためである。
一次濾過工程において、二次濾過フィルター15bの孔径の3倍〜20倍の孔径を有する一次濾過フィルター15aを用いて加圧濾過を行うことにより、減圧濾過よりも極めて大きな圧力差で濾過を行うことができ、濾過時間を大幅に短縮でき、一次濾過工程の作業性、効率性に優れる。
【0038】
次に、一次濾過工程に続いて二次濾過工程を開始する。
一次濾液貯留部7に貯留された一次濾液は、一次濾液供給バルブ7bを開くことにより、一次濾液供給管7aを通って二次濾過部8の一次濾液供給部9に供給される(図1参照)。
ここで、一次濾液供給部及び一次濾液吸引部の詳細について説明する。
図4は実施の形態1の自動濾過装置の二次濾過部における一次濾液供給部及び一次濾液吸引部の要部拡大断面図である。
図4中、91は一次濾液供給部9の液溜部、91aは液溜部91の液溜空間、91bは液溜空間91aに連通して液溜部91の上部に形成され一次濾液供給管7aに接続された一次濾液供給孔、111は二次濾過フィルター15bを支持する一次濾液吸引部11のフィルターホルダー、111aは円形の凹状に形成され二次濾過フィルター15bで濾過された濾液を受けるフィルターホルダー111の濾液受け凹部、111bは濾液受け凹部111aの外周を囲繞するフィルターホルダー111のフィルター支持凸部、111cは濾液受け凹部111aに連通してフィルターホルダー111の下部に形成された減圧空間、111dは減圧空間111cの底部に形成され濾液排出管11aに接続された一次濾液吸引部11の濾液排出孔、112は濾液受け凹部111aに収容され複数の貫通孔を有し二次濾過フィルター15bで濾過された濾液を濾液受け凹部111aに導くポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂製の濾過プレート、113はフィルター支持凸部111bの上面の濾液受け凹部111aの外周部に配設されたシリコンなどの合成樹脂製のシール用のOリング、115は減圧空間111cに接続され一次濾液を吸引する一次濾液吸引部11の真空ポンプ、115aは真空ポンプ115の電磁弁である。
【0039】
図4では、一次濾液供給部9が上昇して、帯状の二次濾過フィルター15bが開放された状態を示しているが、一次濾液供給管7aから一次濾液を供給し、一次濾液吸引部11の真空ポンプ115で減圧空間111cを減圧して二次濾過工程を行う際には、一次濾液供給部9が下降し、一次濾液供給部9の液溜部91と一次濾液吸引部11のフィルターホルダー111の間に二次濾過フィルター15bが挟持された状態となっている。このとき、二次濾過フィルター15bが液溜部91とOリング113で挟まれ、液溜部91の液溜空間91aとフィルターホルダー111の減圧空間111cは密閉状態となっている。
【0040】
一次濾液供給部9に供給された一次濾液は一次濾液供給孔91bから液溜空間91aに流入する。電磁弁115aを開いて真空ポンプ115で吸引することにより、減圧空間111cが減圧され、二次濾過フィルター15bで一次濾液が減圧濾過される。二次濾過フィルター15bで濾過された濾液は、濾過プレート112に形成された複数の貫通孔を通過し、減圧空間111cへ流入し、濾液排出孔111dに接続された濾液排出管11aから排出される。濾液排出管11aから排出された濾液は、濾液貯留部12に貯留され、二次濾過工程が終了する。このとき、二次次濾過フィルター15bが濾過プレート112で支持されているので、減圧による変形を防止することができ、確実に減圧濾過を行うことができる。
また、分析対象物質に応じて予め設定された孔径(公定法で定められた孔径)を有する二次濾過フィルター15bを用いることにより、所望の濾液を得ることができる。本実施の形態では、二次濾過フィルター15bとして孔径が0.45μmのメンブレンフィルターを使用し、0.1MPaの圧力(1気圧)で減圧(真空濾過)した。また、濾過プレート112の貫通孔の孔径は、1mm〜6mmとし、二次濾過フィルター15bで濾過された濾液が、全面から速やかに通過できるようにした。尚、減圧濾過を行う二次濾過部8の濾過プレート112に加わる力が、加圧濾過を行う一次濾過部3のサポートスクリーン64に加わる力に比べて小さいので、濾過プレート112の貫通孔の孔径をサポートスクリーン64の微小貫通孔の孔径より大きくすることができる。
濾液貯留部12から、適宜、必要量の濾液を採取することにより、各種分析や調査を行うことができる。
【0041】
一次濾過部3の一次濾液受容部6と、二次濾過部8に一次濾液を供給するための一次濾液貯留部7の間に、一次濾液移送部6bを設け、一次濾液移送部6bと一次濾液貯留部7を接続する一次濾液移送管6cの途中に一次濾液移送バルブ6dを配設することにより、一次濾過部3で濾過され一次濾液移送部6bに貯留された一次濾液を一次濾液貯留部7に移送して貯留することができるので、一次濾過工程と二次濾過工程を完全に分離して独立させることができる。その結果、一次濾過工程及び二次濾過工程の進行状況が互いに影響を与えることがなく、両者の工程を並行して行うことができ、作業性、汎用性に優れる。
尚、種類の異なる分析用試料液31を濾過する前には、コンタミを防止するために、純水での洗浄を行う。試料液貯留部2に純水を注入し、一次濾過工程及び二次濾過工程と同様の工程を行うことにより、各部を洗浄することができる。
【0042】
尚、一次濾過工程及び二次濾過工程の終了後は、受容部上下動駆動部5及び供給部上下動駆動部10によって一次濾液受容部6及び一次濾液供給部9をそれぞれ下降及び上昇させて帯状の一次濾過フィルター15a,二次濾過フィルター15bを開放し、それぞれフィルター送り機構(図示せず)で順送りして交換を行う。
受容部上下動駆動部5及び供給部上下動駆動部10としては、油圧、水圧、空気圧を利用したピストンシリンダの他に、モータによる送り螺子機構を用いてもよい。
本実施の形態では、受容部上下動駆動部5及び供給部上下動駆動部10により一次濾液受容部6及び一次濾液供給部9のみを上下動させたが、これに限定されるものではなく、加圧液供給部4及び一次濾液吸引部11を上下動させてもよい。
【0043】
分析用試料液31が土壌を懸濁させたものであり、土壌に含まれる物質の分析を目的としている場合、自動濾過装置1の一次濾過部3で濾過工程を行う前に、まず、溶出部での溶出工程を行う。
図5は、実施の形態1の自動濾過装置の溶出部を示す要部模式正面図である。
図5中、20は分析用試料液31中に分析対象物質を溶出させる濾過装置1の溶出部、21は容器30に入った分析用試料液31に超音波振動を与える溶出部20の超音波振動器、22は回転軸23aの下端に配設された攪拌翼23で容器30に入った分析用試料液31を攪拌する溶出部20の攪拌器、24は回転軸23aの上端に連結され回転軸23aを回転させる攪拌器22の駆動モータである。
【0044】
溶出工程では、分析用試料液31に超音波振動器で超音波振動を与える超音波振動工程と、攪拌器で分析用試料液31を攪拌する攪拌工程を行う。これにより、分析用試料液31中に分析対象物質を溶出させることができる。尚、溶媒は公定法などに則って、分析対象物質に応じたものを選択する。
超音波振動工程における超音波振動の周波数は、分析対象物質の種類などによっても異なるが、20kHz〜500kHzとした。超音波振動の周波数が20kHzよりも低くなると、騒音が大きくなり、使用性に欠け、500kHzよりも高くなると、物質の溶解、溶出量が不十分となり、正確な分析が困難になることが分かったためである。
【0045】
また、攪拌工程において分析用試料液31を撹拌する際の回転数は、分析用試料液31の種類や量などによっても異なるが、20rpm〜500rpmとした。分析用試料液31を撹拌する回転数が、20rpmよりも遅くなると、十分な溶解、溶出を行うことが困難となり、500rpmよりも速くなると、超音波振動で得られる効果が不十分となり、いずれも分析の正確性に欠けることが分かったためである。
尚、超音波振動工程と攪拌工程は別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。特に、超音波振動工程と攪拌工程に要する時間が同等の場合、両者を同時に行うことにより、溶出工程を短時間で効率的に行うことができ、溶出の作業性に優れる。
【0046】
溶出工程終了後、搬送部(図示せず)により、容器を試料液貯留部2まで移動させ、容器から自動濾過装置1の試料液貯留部2へ分析用試料液31を供給することにより、前述の一次濾過工程を開始することができる。
尚、一次濾過工程及び二次濾過工程に要する時間を溶出工程に要する時間とほぼ同等とすることにより、一次濾過工程及び二次濾過工程と並行して溶出工程を行うことができ、複数種類の分析用試料液31を連続的に濾過することが可能で濾過作業の効率性に優れる。
【0047】
試料液貯留部2と溶出部との間で容器を自動的に搬送する搬送部や、容器を保持して、試料液貯留部2と搬送部の間或いは溶出部と搬送部の間で容器の移動を行ったり、容器を傾動させて容器内の分析用試料液31を試料液貯留部2に移液したりする容器操作部を有することにより、全ての工程を自動化して短時間で連続的に行うことができ使用性に優れる。
搬送部としては、ターンテーブルが好適に用いられる。ターンテーブルを一方向に回転させるだけで試料液貯留部2と溶出部の間で容器を移動させることができ、機構を簡素化することができ、省スペース性に優れるためである。特に、ターンテーブルに複数の容器保持部を設けた場合、溶出部20での溶出工程が終了した複数の容器を容器保持部に保持して分析用試料液31を作り置きしておき、まとめて分析を行うこともできる。また、溶出工程と濾過工程を並行して連続的に行うことができ、作業時間を短縮することができる。
【0048】
以上のように実施の形態1における自動濾過方法は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルター15a(目の粗いフィルター)で分析用試料液31の加圧濾過を行う一次濾過工程を有することにより、目標とする孔径を有する二次濾過フィルター15b(目の細かいフィルター)を用いて二次濾過工程を行う前に、大きな粒子と共に若干の小さな粒子も取り除くことができるので、二次濾過工程の負荷を低減することができ、短時間で必要量の濾液(検液)を得ることが可能で濾過作業性に優れる。
(2)一次濾過工程で大きな粒子と共に若干の小さな粒子が取り除かれた一次濾液を二次濾過工程で減圧濾過することにより、二次濾過工程で用いる目の細かい二次濾過フィルター15bに目詰まりが発生し難く、一度の濾過工程で必要量の濾液(検液)を得ることができ、従来のように二次濾過フィルター15bを交換しながら、二次濾過工程を複数回に分けて行う必要がなく、メンテナンス性に優れ、作業時間を短縮できると共に、二次濾過フィルター15bの使用量を大幅に削減することができ、省資源性に優れる。
(3)一次濾過工程で加圧濾過を行うことにより、一次濾過工程の時間を大幅に短縮することができ、短時間で大量の一次濾液を得ることが可能で、濾過作業の効率性に優れる。
(4)二次濾過部8で減圧濾過を行うことにより、構造を簡素化することができ、省スペース性、設計自在性、量産性に優れると共に、漏れが発生した場合でも外部に濾液が飛散することがなく、取扱い性に優れる。
【0049】
以上のように実施の形態1における自動濾過装置は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルター15a(目の粗いフィルター)で分析用試料液31の加圧濾過を行う一次濾過部3を有することにより、目標とする孔径を有する二次濾過フィルター15b(目の細かいフィルター)を用いて二次濾過部8で減圧濾過を行う前に、大きな粒子と共に若干の小さな粒子も取り除くことができるので、二次濾過部8の負荷を低減することができ、短時間で必要量の濾液(検液)を得ることが可能で濾過作業性に優れる。
(2)一次濾過部3での加圧濾過で大きな粒子と共に若干の小さな粒子が取り除かれた一次濾液を二次濾過部8で濾過することにより、二次濾過部8で用いる目の細かい二次濾過フィルター15bに目詰まりが発生し難く、一度の濾過工程で必要量の濾液(検液)を得ることができ、従来のように二次濾過フィルター15bを交換しながら、二次濾過工程を複数回に分けて行う必要がなく、メンテナンス性に優れ、作業時間を短縮できると共に、二次濾過フィルター15bの使用量を大幅に削減することができ、省資源性に優れる。
(3)一次濾過部3で加圧濾過を行うことにより、一次濾過部3での濾過時間を大幅に短縮することができ、短時間で大量の一次濾液を得ることが可能で、濾過作業の効率性に優れる。
(4)二次濾過工程で減圧濾過を行うことにより、漏れが発生した場合でも外部に濾液が飛散することがなく、取扱い性に優れる。
(5)一次濾過部3の上流側に分析用試料液31を貯留する試料液貯留部2を有することにより、試料液貯留部2に予め秤量された分析用試料液31を保存することができ、作業開始時に直ちに試料液貯留部2から一次濾過部3へ所定量の分析用試料液31を確実に供給して一次濾過部3での濾過を開始することができ、濾過作業の効率性に優れると共に、することができ、濾過作業の信頼性に優れる。
(6)一次濾過部3と二次濾過部8の間に、一次濾過部3で濾過された一次濾液を貯留する一次濾液貯留部7を有することにより、一次濾過部3での濾過終了後に、二次濾過部8における減圧濾過に備えることができ、一次濾液供給管7aに配設された一次濾液供給バルブ7bを開くだけで、二次濾過部8に一次濾液を供給して、直ちに二次濾過部8での減圧濾過を行うことができるので、一次濾過部3での濾過と二次濾過部8での濾過を連続的かつ効率的に行うことができ、濾過作業の効率性を向上させることができる。
(7)二次濾過部8の下流側に二次濾過部8で濾過された濾液を貯留する濾液貯留部12を有することにより、分析工程やその他の後工程に使用するまでの間、濾液を貯留しておくことができ、所望のタイミングで濾液貯留部12から濾液を取り出して濾液の分析などを行うことができ、使用性に優れる。
(8)試料液加圧部3aで加圧された分析用試料液31を加圧液排出管3bから加圧液供給部4に供給することができ、一次濾過フィルター15aで加圧濾過された一次濾液を一次濾過フィルター15aの裏面側に配設された一次濾液受容部6で確実に受容して、一次濾過を行うことができ、得られた一次濾液を一次濾液移送部6bに一時的に貯留してから後工程の二次濾過工程に送ることができ、一次濾過工程と二次濾過工程の連続作業性に優れる。
(9)一次濾液供給管7aを通って一次濾液供給部9に供給される一次濾液を、二次濾過フィルター15bの裏面側から一次濾液吸引部11の減圧空間111dに接続された真空ポンプ115で吸引することにより、減圧濾過することができ、濾過された濾液を濾液排出管11aから排出して濾液貯留部12に確実に貯留することができ、得られた濾液を検液として様々な分析に用いることができる。
(10)一次濾過部3と、二次濾過部8に一次濾液を供給するための一次濾液貯留部7の間に、一次濾液移送部6bを設け、一次濾液移送部6bと一次濾液貯留部7を接続する一次濾液移送管6cの途中に一次濾液移送バルブ6dを配設することにより、一次濾過部3で濾過され一次濾液移送部6bに一時的に貯留された一次濾液を一次濾液貯留部7に移送して貯留することができるので、一次濾過工程と二次濾過工程を完全に分離して独立させることができ、一次濾過工程及び二次濾過工程の進行状況が互いに影響を与えることがなく、両者の工程を並行して行うことができ、濾過の作業性、汎用性に優れる。
(11)分析用試料液31が貯留される加圧容器25の上端部に、加圧容器25の中に加圧気体を供給する加圧気体供給口25aが配設されているので、加圧容器25の中に容易に加圧気体を供給して、加圧容器25の中に貯留された分析用試料液31を加圧することができ、加圧の作業性に優れる。
(12)加圧容器25の上端部に形成された試料液供給口25bに連通しボール弁26が配設されたボール弁通路26cを有するので、試料液供給口25bから加圧容器25の中に分析用試料液31を供給した後、ボール弁通路26cをボール弁26で閉塞することにより、加圧容器25を確実に密閉することができ、加圧気体供給口25aから供給される加圧気体が加圧容器25から漏れることがなく、加圧の信頼性、効率性に優れる。
(13)試料液供給管2aに接続されボール弁通路26cに挿抜自在に配設されボール弁26の弁体26aに穿設された開口部26bを貫通して試料液供給口25bから加圧容器25に分析用試料液31を注入する試料液注入ノズル27を有するので、加圧容器25に分析用試料液31を注入する際に、分析用試料液31がボール弁26の弁体26aやボール弁通路26cに接触することがなく、分析用試料液31に含まれる土壌の砂などの試料の粒子が付着することがないので、ボール弁26の破損を確実に防止することができ、ボール弁26の耐久性及び試料液加圧部3aにおける加圧の信頼性に優れる。
(14)試料液注入ノズル27を上下動させる注入ノズル上下動駆動部29を有するので、試料液注入ノズル27を容易に上下動させてボール弁通路26cへの挿抜を行うことができ、加圧容器25への分析用試料液31の注入作業と、加圧容器25への加圧気体の供給作業の切り替えを短時間で効率的に行うことができ、使用性に優れる。
(15)加圧容器25の底部に形成され加圧液排出管3bと接続されて、加圧された分析用試料液31が排出される加圧液排出口25cを有するので、加圧容器25の中で加圧された分析用試料液31を漏れなく確実に加圧液排出口25cから排出することができ、加圧された所定量の分析用試料液31を加圧液排出管3bを通して加圧液供給部4に供給して加圧濾過を行うことができ、加圧濾過工程の信頼性に優れる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施の形態1で説明した自動濾過装置及び自動濾過方法を用いて試料として土壌を懸濁させた分析用試料液の連続的な自動濾過を行った。
各工程の条件は以下の通りであった。
ここでは、土壌に含まれる物質を分析するため、一次濾過工程の前工程として溶出工程を行った。
溶出工程の超音波振動工程における超音波振動の周波数は30kHz〜40kHz、攪拌工程において分析用試料液を撹拌する際の回転数は30rpm〜300rpmとし、超音波振動工程と攪拌工程を同時に行った。尚、超音波振動工程及び攪拌工程に要した時間は5分〜15分であった。また、溶媒の選択、溶質と溶媒の割合は、土壌分析の公定法に則って行った。
このようにして得られた分析用試料液31を一次濾過部3において一次濾過した。
一次濾過部3の一次濾過フィルター15aとして孔径が3μmのメンブレンフィルターを使用し、0.4〜0.6MPaの圧力で加圧濾過による一次濾過工程を行ったところ、2分〜4分で50mLの一次濾液を得ることができた。
続いて、一次濾過工程で得られた一次濾液を二次濾過部8で二次濾過した。
二次濾過部8の二次濾過フィルター15bとして孔径が0.45μmのメンブレンフィルターを使用し、0.1MPaの圧力(1気圧)で減圧(真空)濾過による二次濾過工程を行ったところ、1分〜2分の短時間で50mLの濾液を得ることができた。
(比較例1)
実施例1と同様の分析用試料液を用いて、従来の減圧(真空)濾過のみで濾過工程を行った。
濾過工程の条件は実施例1の二次濾過工程と同一であり、フィルターとして孔径が0.45μmのメンブレンフィルターを使用し、0.1MPaの圧力(1気圧)で減圧(真空)濾過を行ったところ、50mLの分析用試料液を濾過するのに20分〜40分かかった。
【0051】
比較例1の従来の濾過方法では、20分〜40分かかっていた濾過工程を、実施例1では、一次濾過工程と二次濾過工程を合わせても3分〜6分という極めて短い時間で行うことができ、濾過時間を大幅に短縮できることが確認された。
また、比較例1及び実施例1で得られた濾液をICP(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)により分析したところ、それぞれの濾液に溶出したカドミウムや六価クロムの量は同等であるという結果が得られた。これにより、実施例1の濾過方法が、分析用試料液に溶出した分析対象物質の分析に影響を与えることはなく、従来の公定法の代わりに、簡易分析法として土壌の調査に利用できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、濾過時間を大幅に短縮することができ、濾過工程中にフィルターの交換を行う必要がなく、必要量の濾液(検液)を短時間で得ることができる作業性、省資源性に優れた分析用試料液の自動濾過方法の提供、及び簡素な構造で短時間に濾過作業を行うことができると共に、濾過作業中に並行して分析用試料液の調整を行うことができ、連続的に濾過作業を行うことが可能で、全体の作業時間を短縮することができる効率性、使用性に優れた分析用試料液の自動濾過装置の提供を行うことができ、分析作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態1の自動濾過装置の要部模式正面図
【図2】(a)実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における試料液加圧部での分析用試料液の供給状態を示す要部断面図(b)実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における試料液加圧部での分析用試料液の加圧状態を示す要部断面図
【図3】実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における加圧液供給部及び一次濾液受容部の要部拡大断面図
【図4】実施の形態1の自動濾過装置の二次濾過部における一次濾液供給部及び一次濾液吸引部の要部拡大断面図
【図5】実施の形態1の自動濾過装置の一次濾過部における加圧液供給部及び一次濾液受容部の要部拡大断面図
【符号の説明】
【0054】
1 濾過装置
2 試料液貯留部
2a 試料液供給管
3 一次濾過部
3a 試料液加圧部
3b 加圧液排出管
4 加圧液供給部
5 受容部上下動駆動部
6 一次濾液受容部
6a 一次濾液排出管
6b 一次濾液移送部
6c 一次濾液移送管
6d 一次濾液移送バルブ
7 一次濾液貯留部
7a 一次濾液供給管
7b 一次濾液供給バルブ
8 二次濾過部
9 一次濾液供給部
10 供給部上下動駆動部
11 一次濾液吸引部
11a 濾液排出管
12 濾液貯留部
15a 一次濾過フィルター
15b 二次濾過フィルター
20 溶出部
21 超音波振動器
22 攪拌器
23 攪拌翼
23a 回転軸
24 駆動モータ
25 加圧容器
25a 加圧気体供給口
25b 試料液供給口
25c 加圧液排出口
26 ボール弁
26a 弁体
26b 開口部
26c ボール弁通路
27 試料液注入ノズル
27a ノズル支持部
28 連結部
29 注入ノズル上下動駆動部
29a ピストン
29b シリンダ
31 分析用試料液
41 加圧液溜部
41a 液溜空間
41b 加圧液供給孔
42,113 Oリング
61,111 フィルターホルダー
61a 一次濾液受け凹部
61b,111b フィルター支持凸部
61c 一次濾液排出孔
62 サポートリング
62a 環状部材
62b 環状部材接続部
63 ガスケット
64 サポートスクリーン
91 液溜部
91a 液溜空間
91b 一次濾液供給孔
111a 濾液受け凹部
111c 減圧空間
111d 濾液排出孔
112 濾過プレート
115 真空ポンプ
115a 電磁弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析用試料液を連続的に処理して分析に用いる検液を作製するための前記分析用試料液の自動濾過方法であって、
前記分析用試料液を目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルターで加圧濾過する一次濾過工程と、前記一次濾過工程で得られた一次濾液を前記目標とする孔径を有する二次濾過フィルターで減圧濾過する二次濾過工程と、を備えたことを特徴とする分析用試料液の自動濾過方法。
【請求項2】
分析用試料液を連続的に処理して分析に用いる検液を作製するための前記分析用試料液の自動濾過装置であって、
前記分析用試料液を貯留する試料液貯留部と、前記試料液貯留部に接続された試料液供給管と、前記試料液供給管から供給される前記分析用試料液を目標とする孔径よりも大きな孔径を有する一次濾過フィルターで加圧濾過する一次濾過部と、前記一次濾過部で濾過された一次濾液を排出する一次濾液排出管と、前記一次濾液排出管から排出された一次濾液を貯留する一次濾液貯留部と、前記一次濾液貯留部に接続された一次濾液供給管と、前記一次濾液供給管の開閉を制御する一次濾液供給バルブと、前記一次濾液供給管から供給される一次濾液を目標とする孔径を有する二次濾過フィルターで減圧濾過する二次濾過部と、前記二次濾過部で濾過された濾液を排出する濾液排出管と、前記濾液排出管から排出された濾液を貯留する濾液貯留部と、を備えたことを特徴とする分析用試料液の自動濾過装置。
【請求項3】
前記一次濾過部が、前記試料液供給管から供給される分析用試料液の加圧を行う試料液加圧部と、前記試料液加圧部で加圧された分析用試料液を排出する加圧液排出管と、前記加圧液排出管から排出される分析用試料液を前記一次濾過フィルターの表面側に供給する加圧液供給部と、前記一次濾過フィルターで濾過された一次濾液を前記一次濾過フィルターの裏面側で受容し前記一次濾液排出管に接続された一次濾液受容部と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の分析用試料液の自動濾過装置。
【請求項4】
前記二次濾過部が、前記一次濾液供給管から供給される一次濾液を前記二次濾過フィルターの表面側に供給する一次濾液供給部と、前記濾液排出管に接続され前記二次濾過フィルターの裏面側から真空ポンプにより一次濾液を吸引する一次濾液吸引部と、を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の分析用試料液の自動濾過装置。
【請求項5】
前記一次濾液排出管に接続され前記一次濾過部と前記一次濾液貯留部との間に配設された一次濾液移送部と、前記一次濾液移送部と前記一次濾液貯留部の間を接続する一次濾液移送管と、前記一次濾液移送管の途中に配設され前記一次濾液移送管の開閉を制御する一次濾液移送バルブと、を備えたことを特徴とする請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の分析用試料液の自動濾過装置。
【請求項6】
前記試料液加圧部が、前記分析用試料液が貯留される加圧容器と、前記加圧容器の上端部に配設され前記加圧容器の中に加圧気体を供給する加圧気体供給口と、前記加圧容器の上端部に形成された試料液供給口と、前記試料液供給口に連通しボール弁が配設されたボール弁通路と、前記試料液供給管に接続され前記ボール弁通路に挿抜自在に配設され前記ボール弁の弁体に穿設された開口部を貫通して前記試料液供給口から前記加圧容器に前記分析用試料液を注入する試料液注入ノズルと、前記試料液注入ノズルを上下動させる注入ノズル上下動駆動部と、前記加圧容器の底部に形成され前記加圧液排出管と接続されて加圧された前記分析用試料液が排出される加圧液排出口と、を備えたことを特徴とする請求項3乃至5の内いずれか1項に記載の分析用試料液の自動濾過装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−261743(P2008−261743A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104953(P2007−104953)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【特許番号】特許第4031817号(P4031817)
【特許公報発行日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(591013805)株式会社石川鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】