説明

分析素子、分析装置、および分析方法

【課題】分析の目的とする物質を含むサンプルを正確に検出することを目的とする。
【解決手段】標識された捕捉物質の活性のみを検出する参照検出部を設ける。参照検出部では必ず最大捕捉量に相当する信号値が検出されるため、製造後の時間経過、保存状態、使用環境(温度、湿度)などの要因のみに依存した信号値を得ることができるため、当該信号値と検出部の信号値とを比較することで、上記要因の影響を排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析素子、分析装置および分析方法に関する。本発明は、特に、血液中に含まれている特定の成分(例えば抗原、抗体、酵素、基質、サイトカインなど)を検出および分析する分析素子(チップ)、分析装置、および上記成分を検出および分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を用いた免疫分析法は、医療分野、生化学分野、またはアレルゲン等を測定する分野などにおける分析および計測に使用される方法として有用である。しかし、従来の免疫分析法は、分析に長時間を要する、操作が煩雑であるなどの問題を有している。
【0003】
近年、半導体の微細加工技術などを応用したマイクロ化技術(Micro Electro Mechanical System、MEMS)が開発されている。そして、タンパク質、遺伝子などの生化学分野における分析においては、抗原抗体反応を用いたマイクロ化技術(Micro Total Analytical System、μ−TAS)が急速に発展している。
【0004】
例えば、特許文献1には、幅がマイクロメートルオーダーの長さである微細流路(以下、「マイクロチャネル」ともいう。)が表面上に形成された基板を有するマイクロチャネル型の分析装置が開示されている。特許文献1に記載の分析装置は、マイクロチャネルに固定化された抗体または人工抗体などを用いて、抗原などの検出対象の物質(以下、「対象物質」ともいう。)を分析するというものであり、このような分析装置を用いて分析時間の短縮化または分析操作の簡略化を実現することが提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された分析装置の構造を図7に示す。図7に示すように、このマイクロチャネル型分析装置は、ガラス、プラスチックなどの透光性材料からなる基板110の表面に、マイクロチャネル111、溶液をマイクロチャネル111に導入する導入孔112、溶液を溜める液溜め部113、および、溶液を分析装置から排出する排出孔114が形成されている。導入孔112および排出孔114は、それぞれマイクロチャネル111の両端に設けられており、排出孔114には液溜め部113が連結されている。マイクロチャネル111内には、抗体固定部115が設けられている。抗体固定部115には、溶液中の対象物質と特異的に結合する抗体が周知の固定化方法(例えば、物理的な吸着を用いて固定する方法、抗体が有するアミノ基と固定部の官能基との間に共有結合を形成して固定する方法など)によって固定化されている。なお、抗体とは、対象物質に対して特異的な親和性を有する物質である。
【0006】
図8は、図7に示す分析装置を使用した、対象物質の分析方法を説明するための図である。図8に示すように、対象物質120を含むサンプル溶液と、標識抗体123を含む溶液とを混合する。標識抗体123は、光学的に検出可能な標識物質121と、対象物質120に結合可能な抗体122とが結合して形成されたものである。この標識抗体123と対象物質120とが結合して、免疫複合体124(標識抗体123と対象物質120との反応によって生じた複合体)が形成される。
【0007】
次いで、この免疫複合体124を含む溶液を、図7に示す導入孔112から外部ポンプを用いて導入し、マイクロチャネル111内に流通させる。免疫複合体124を含む溶液が抗体固定部115に到達すると、図8に示すように、溶液中の免疫複合体124と、抗体固定部115に固定化された抗体125とが結合する。これにより、抗体固定部115において、「固定化された抗体125−対象物質120−標識抗体123」から構成される複合体126が形成される。
【0008】
その後、抗体固定部115にて形成された複合体126中の標識抗体123に結合されている標識物質121を光学的に検出することによって、対象物質120を検出する。標識物質121の検出には、例えば、使用する標識物質121の種類に応じて、紫外可視分光分析、蛍光分析、化学発光分析、熱レンズ分析などの所定の分析機器が用いられて、標識物質121の光吸収、蛍光または発光などを検出することによって実施される。
【0009】
濃度が既知の対象物質120を含む標準溶液に対して上述の対象物質の分析方法を適用して、対象物質120の濃度についての検量線を作製する。この検量線を用いて、対象物質120の濃度が不明の溶液における、対象物質120の濃度を測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2006/054689号パンフレット(2006年5月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されたようなマイクロチャネルチップを用いて簡易な検査チップを作製した場合、チップ内に二次抗体及び基質を保存することで、ユーザーは試薬を装置にセットすることなく簡易に検査を行うことが可能となる。しかしながら、チップ製造後の保存状態、製造後から使用するまでの期間の差異、および/または、使用する環境(温度、湿度など)の差異により、測定結果の値が実際の値とは異なるものになる。そのためユーザーが、実際の値とは異なる値を正しい検査結果であると誤認してしまう危険性が生じる。保存状態、使用するまでの期間、使用環境に関しては、全てユーザー側に起因している条件であり、マイクロチャネルチップの製造者側が制御不可能な条件である。そのためマイクロチャネルチップの製造者は、正しい検査結果の値をユーザーに提供することが非常に困難であった。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、試薬を保存したマイクロチャネルチップを使用する際、保存状態、使用するまでの期間、使用環境に関してユーザーが気にすることなく、正しい値を検出結果として提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る分析素子は、上記課題を解決するために、流体、および、上記流体中の検出すべき物質を捕捉するとともに標識物質が結合している第一の捕捉物質、を流すための流路と、上記流路内に設けられているとともに、上記流体中の検出すべき物質を捕捉するための第二の捕捉物質が配置されている検出部と、上記流路内に設けられているとともに、上記第一の捕捉物質を捕捉するための第三の捕捉物質が配置されている参照検出部と、が設けられた分析素子であって、上記第三の捕捉物質は、飽和吸着にて上記第一の捕捉物質を捕捉することを特徴としている。換言すれば、上記構成では、上記第三の捕捉物質が、当該第三の捕捉物質が吸着し得る最大量の第一の捕捉物質を捕捉するように、上記流路に対して第一の捕捉物質が流されている。
【0014】
検出部の信号値は、サンプル中に含まれる対象物質(検出すべき物質)の濃度により値が上下する以外に、保存環境や使用環境により値が実際の信号値から差異を生じる。しかしながら、上記構成であれば、参照検出部の信号値は、必ず飽和吸着で捕捉された第一の捕捉物質の量(常に一定の量)に相当する信号値が検出されるため、参照検出部の信号値を参照することで上記要因の影響を排除することが可能になる。
【0015】
例えば、第一の捕捉物質に結合している標識物質が発する信号(例えば、蛍光)は、様々な条件によって変化する。例えば、標識物質が古くなれば、当該標識物質が発する信号は、時間が経つのに伴って弱くなる。つまり、一定量の標識物質が発する信号は、常に一定であるわけではない。このとき、上記構成であれば、第三の捕捉物質が常に一定量の第一の捕捉物質を結合することができるので、たとえ標識物質が古くなっていたとしても、検出を行う時点における、一定量の第一の捕捉物質あたりの信号(例えば、蛍光の強度)を検出することができる。そして、当該信号(一定量の第一の捕捉物質あたりの信号)に基づいて、上記検出部にて検出される信号を補正することによって、上記検出部で捕捉されている第一の捕捉物質の量を正確に算出することができる。第一の捕捉物質は、流体中の検出すべき物質を捕捉するものなので、検出部に捕捉されている第一の捕捉物質の量を正確に算出することができれば、検出部に捕捉されている検出すべき物質の量も正確に算出することができる。
【0016】
本発明に係る分析素子では、上記参照検出部は、上記検出部の下流側に設けられていることが好ましい。
【0017】
上記構成であれば、第一の捕捉物質は検出部を通過した後、参照検出部に送液されるため、検出部の反応(第二の捕捉物質による、検出すべき物質の捕捉)を優先させることが可能となる。また、対象物質も参照検出部を通過する前に検出部で反応させることができるため、参照検出部に対する非特異吸着などの影響を少なくすることができる。
【0018】
本発明に係る分析素子では、上記流路に流される上記第一の捕捉物質の量は、上記第二の捕捉物質の量と上記第三の捕捉物質の量との和以上の量であることが好ましい。
【0019】
上記構成であれば、第一の捕捉物質の量は、参照検出部において必ず飽和吸着になるように捕捉される条件が成り立つため、第一の捕捉物質の量の調整を簡易的に行うことができる。また、上記構成によれば、より正確に、対象物質を測定することができる。
【0020】
本発明に係る分析素子では、上記流路は、分岐しており、上記分岐した流路の1つに、上記検出部が設けられており、上記分岐した流路とは別の流路に、上記参照検出部が設けられていることが好ましい。
【0021】
上記構成であれば、参照検出部と検出部とがそれぞれ独立して反応できるため、お互いに影響することなく検出することが可能となる。
【0022】
本発明に係る分析素子では、上記流路に流される上記第一の捕捉物質の量は、上記検出部における上記第二の捕捉物質の量または上記参照検出部における上記第三の捕捉物質の量の2倍以上であることが好ましい。
【0023】
上記構成であれば、第一の捕捉物質の量は参照検出部において必ず飽和吸着になるように捕捉される条件が成り立つため、第一の捕捉物質の量の調整を簡易的に行うことができる。また、上記構成によれば、より正確に、対象物質を測定することができる。
【0024】
本発明に係る分析素子は、上記第一の捕捉物質を保存するとともに、当該第一の捕捉物質を上記流路内へ導入するための第一の保存部が設けられていることが好ましい。
【0025】
上記構成であれば、ユーザーは第一の捕捉物質を別に用意することなく検出を行うことができる。チップ内に第一の捕捉物質を保存することで、検出信号が分析素子製造後の時間経過や保存状態に依存することになるが、本発明の分析素子であれば参照検出部により、その影響を無視することが可能となる。
【0026】
本発明に係る分析素子は、上記標識物質と反応する化学物質を保存するとともに、当該化学物質を上記流路内へ導入するための第二の保存部が設けられていることが好ましい。
【0027】
上記構成であれば、ユーザーは、標識物質と反応する化学物質を別に用意することなく検出を行うことができる。上記のように、検出信号は分析素子製造後の時間経過や保存状態などに依存するが、参照検出部により簡易に校正することが可能である。
【0028】
本発明に係る分析素子では、上記流体を受容するとともに、当該受容した流体を上記流路へ導入するための導入部が設けられていることが好ましい。
【0029】
上記構成であれば、分析素子内に導入部が存在するため、容易に送液することが可能となる。
【0030】
本発明に係る分析素子では、上記参照検出部および上記検出部は、同一の検出手段を備えていることが好ましい。
【0031】
上記構成であれば、同一の検出手段で検出するため、例えば熱などの使用環境の変化により検出器自身が影響を受けても、その影響を排除することができる。
【0032】
本発明に係る分析素子では、上記参照検出部および上記検出部は、それぞれ作用電極および参照電極を備えていることが好ましい。
【0033】
上記構成を用いれば、検出部において、対象物質を電気化学的に検出することが可能となる。電気化学的に検出される対象物質は、それ自身が電気化学的に活性なものであってもよいし、電気化学的に活性な物質で修飾されたものであってもよい。対象物質を電気化学的に検出する方法としては、電気化学的に活性な物質から得られる電流値を検出電極にて測定すればよい。
【0034】
本発明に係る分析素子では、上記作用電極および上記参照電極は、大きさが同一であることが好ましい。
【0035】
上記構成であれば、同一の大きさの電極を用いるので、電極界面に拡がる拡散層の大きさを考慮しなくとも、簡易に信号値同士を比較することが可能となる。
【0036】
本発明に係る分析素子では、上記検出部および上記参照検出部は、光透過性を有する材料によって形成されていることが好ましい。
【0037】
上記構成によれば、検出部において対象物質を光学的に検出することが可能となる。光学的に検出される対象物質は、自身が光学特性を有しているものであってもよいし、光学特性を有する物質で修飾されたものであってもよい。光学特性としては、例えば、吸光特性、発光特性および発色特性が挙げられる。なお、発光には蛍光が包含される。光学特性を有する物質としては、例えば、吸光色素、発光色素および発色色素が挙げられる。対象物質を光学的に検出する方法としては、上述の光学特性を検出する方法であればよい。このような方法としては、例えば、紫外可視分光分析法、蛍光分析法、化学発光分析法、または熱レンズ分析法などの従来公知の方法が挙げられる。光学特性を有している対象物質を用いれば、その光学特性を測定(化学発光量変化や蛍光変化、吸光度変化を測定)することによって定量的な測定が可能となる。
【0038】
本発明に係る分析素子では、上記第一の捕捉物質が、上記検出すべき物質に対する抗体であることが好ましい。
【0039】
生化学的な分析に用いられるマイクロチャネル型の分析装置の検出対象となる物質は、生体内タンパク質であることが多い。変性しにくい抗体は、捕捉物質として使用するには最適な物質である。
【0040】
本発明に係る分析素子では、上記第二の捕捉物質が、上記検出すべき物質に対する抗体であることが好ましい。
【0041】
生化学的な分析に用いられるマイクロチャネル型の分析装置の検出対象となる物質は、生体内タンパク質であることが多い。変性しにくい抗体は、捕捉物質として使用するには最適な物質である。
【0042】
本発明に係る分析素子では、上記第三の捕捉物質が、上記第一の捕捉物質に対する抗体であることが好ましい。
【0043】
生化学的な分析に用いられるマイクロチャネル型の分析装置の検出対象となる物質は、生体内タンパク質であることが多い。変性しにくい抗体は、捕捉物質として使用するには最適な物質である。
【0044】
本発明に係る分析素子では、上記標識物質が、酵素であることが好ましい。
【0045】
上記構成であれば、酵素を標識物質として使用するため、第一の捕捉物質の量を酵素基質反応させることで簡便に検出することができる。
【0046】
本発明に係る分析素子では、上記標識物質が、蛍光材料であることが好ましい。
【0047】
上記構成であれば、蛍光材料を標識物質として使用するため、直接蛍光検出することで簡便に検出することが可能となる。
【0048】
本発明に係る分析素子では、上記化学物質が、酵素と反応する基質であることが好ましい。
【0049】
上記構成であれば、対象物質を簡易的に、酵素基質反応により検出することが可能となる。
【0050】
本発明に係る分析素子では、上記検出部の信号値および上記参照検出部の信号値から導出される検出信号値と、上記検出すべき物質の濃度との相関関係に関する情報が書き込まれたバーコードまたはICタグが設けられていることが好ましい。
【0051】
上記構成であれば、チップに予め情報を書き込んでおくことができる。なお、製造時のロットや試薬のロットに応じ、書き込む情報を変えることが可能となる。
【0052】
本発明に係る分析装置は、上記課題を解決するために、本発明に係る分析素子を備えることを特徴としている。
【0053】
上記構成であれば、参照検出部の信号値は、必ず飽和吸着になるように捕捉された第一の捕捉物質に相当する値が検出されるため、参照検出部の信号値を参照することで、使用環境などの影響を排除することが可能となる。
【0054】
本発明に係る分析装置では、上記検出部の信号値と上記参照検出部の信号値とを比較した相対信号値から、上記検出すべき物質の濃度を算出することが好ましい。
【0055】
上記構成であれば、チップ製造後の時間経過や保存状態、使用環境による影響を、例えば参照検出部の信号値との比をとり相殺することで、対象物質の濃度に依存した信号値のみ得ることが可能となる。比の他にも差や補正係数を掛けるなど補正手段は問わない。
【0056】
本発明に係る分析装置は、上記参照検出部の信号値が基準値以下の場合に、警告を発することが好ましい。
【0057】
上記構成であれば、信頼の無いデータをユーザーに表示することなく、警告を発することで、ユーザーに検出エラーが生じたことを伝えることができる。
【0058】
本発明に係る分析装置は、上記検出部の信号値および上記参照検出部の信号値を検出する検出手段が同じであることが好ましい。
【0059】
上記構成であれば、同一の検出手段を用いるため、上記検出部の信号値および上記参照検出部の信号値に対して、共通の検出器を用いることができ、分析装置の構成を簡易化することができる。
【0060】
本発明に係る分析装置は、バーコードまたはICタグ用のリーダーが設けられていることが好ましい。
【0061】
上記構成であれば、分析素子に設けられたバーコードまたはICタグから情報を読み取ることが可能となる。そして、読み取った情報を校正などに使用できる。
【0062】
本発明に係る分析方法は、上記課題を解決するために、本発明の分析素子を用い、上記参照検出部の信号値と上記検出部の信号値とを比較して、検出信号値を算出することを特徴としている。
【0063】
上記構成であれば、チップ製造後の時間経過や保存状態、使用環境による影響を、参照検出部の信号値と検出部の信号値との比などをとって相殺することで、対象物質の濃度に依存した信号値のみを得ることが可能となる。
【0064】
本発明に係る分析方法では、上記検出信号値は、上記検出部の信号値と上記参照検出部の信号値との比から算出されることが好ましい。
【0065】
上記構成であれば、チップ製造後の時間経過や保存状態、使用環境による影響を、参照検出部の信号値と検出部の信号値との比をとり相殺することで、対象物質の濃度に依存した信号値のみ得ることが可能となる。
【0066】
本発明に係る分析方法では、上記参照検出部の信号値が基準値以下である場合に、検出エラーと判断することが好ましい。
【0067】
上記構成であれば、信頼の無いデータをユーザーに表示することなく、ユーザーに検出エラーを伝えることができる。
【0068】
発明に係る分析方法では、上記検出信号値と上記検出すべき物質の濃度との相関関係を予め上記分析素子へ入力し、上記検出信号値と上記相関関係とから、上記検出すべき物質の濃度を算出することが好ましい。
【0069】
上記構成であれば、参照検出部と検出部とを用いて検出信号値を算出するため、実際の値に近い値を出力とすることが可能となる。
【0070】
本発明に係る分析方法では、上記分析素子の製造ロットおよび試薬ロットの少なくとも一方に関する情報に基づいて、上記相関関係を補正することが好ましい。
【0071】
上記構成であれば、製造ロットおよび試薬ロットの差異により生じた上記相関関係の差異を補正することが可能となる。
【0072】
本発明に係る分析方法では、上記情報を、上記分析素子に設けられたバーコードまたはICタグから読み取ることが好ましい。
【0073】
上記構成であれば、ユーザーに手間をかけさせること無く、簡便に補正を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、マイクロチャネルチップを製造した後の保存状態、使用するまでの期間または使用環境に依存することなく、本来の正確な値を検出することができる。
【0075】
本発明によれば、簡便な構成を有する素子または装置によって、本来の正確な値を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図7】従来のマイクロチャネル型の分析装置を示す概略図である。
【図8】従来のマイクロチャネル型の分析装置に設けられた抗体の固定部での反応を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、本発明に係る分析装置の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明は、これらに限定されない。なお、以下ではマイクロチャネル型の分析装置を例にして本発明を説明しているが、本発明に係る分析装置はマイクロチャネル型に限定されず、例えば、マイクロキャピラリ型の分析装置もまた本発明の範囲に含まれる。
【0078】
本明細書において、用語「サンプル」とは、分析装置の導入部に導入される検体(被検物)をいい、検出の対象としている目的物質(対象物質)を含んでいても、いなくてもよい。
【0079】
本明細書において、用語「捕捉物質」とは、対象物質と特異的に相互作用することによって、この対象物質と共有結合または非共有結合を形成する物質をいう。捕捉物質は、具体的に、対象物質との間でホストとゲストとの関係を有する物質であり、捕捉物質としては、例えば、抗原、抗体、酵素、基質、リガンド、レセプター、DNA、糖、ペプチド、合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)などが挙げられる。
【0080】
本明細書において、用語「上流」および「下流」は、微小流路内における流体の流れを基準とした概念であり、液体が流れていく方向を「下流」、液体の流れと逆方向を上流と呼ぶ。特に説明を加えない限り、流路における導入部方向が「上流」である。
【0081】
〔実施の形態1〕
図1に基づいて、本発明の実施の形態1について説明する。図1、図2および図3は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【0082】
<1.マイクロチャネル型分析装置>
本実施形態に係るマイクロチャネル型分析装置(マイクロチャネルチップ)は、基板100、および基板100と重ね合わせる蓋101(図示なし)を備えており、基板100の表面には、凹状の微細な溝(マイクロチャネル2)が形成されている。また、蓋101無しで、基板100に微細な貫通穴(マイクロチャネル2)を形成してもよい。なお、本明細書中において、「微細」とは、μmオーダーの径を有していることが意図され、具体的には、半導体の微細加工技術を用いて形成され得る程度のサイズが意図される。
【0083】
マイクロチャネル2は、本実施形態に係る分析装置の流路を規定する。基板100の表面には、導入すべき流体を受容する導入部1、および流路から流体を排出する排出部7がさらに形成されており、それぞれマイクロチャネル2の両端と連結している。すなわち、マイクロチャネル2は、導入部1と排出部7とを基板100の表面上にて接続している。導入部1は、マイクロチャネル2へ導入する流体を貯留する部位であり得、排出部7は、マイクロチャネル2から排出される流体を貯留する部位であり得る。なお、本明細書中では、必要に応じて、マイクロチャネル2と導入部1または排出部7との境界部を、導入孔または排出孔(図示せず)と称する。
【0084】
このような基板100に蓋101を重ね合わせることによって、マイクロチャネル2は、基板の外部から隔離される。ただし、基板100または蓋101を貫通する第1および第2の貫通孔(図示せず)が、それぞれ導入部1および排出部7と基板の外部とを連通する。これにより、基板の外部からマイクロチャネル2へ流体を供給したり、マイクロチャネル2から基板の外部へ流体を排出したりすることができる。
【0085】
さらに、マイクロチャネル2内には、マイクロチャネル2内を流れる流体中の物質を検出するための検出部3が設けられている。この検出部3には、検出および分析の対象となる物質を捕捉する第二の捕捉物質4が固定化されている。さらに、マイクロチャネル2内には、分析装置内に保存された標識された第一の捕捉物質および化学物質の活性を評価するための参照検出部5が設けられている。この参照検出部5には、第一の捕捉物質を捕捉する第三の捕捉物質6が固定化されている。検出部3と参照検出部5とは、マイクロチャネル2内であれば何処に設けられても構わないが、好ましくは、導入部1側に検出部3、排出部7側に参照検出部5を設けることが反応性の観点から好ましい。
【0086】
なお、図示していないが、本実施形態に係る分析装置は、マイクロチャネル2内の流体の、導入部1から排出部7への移動を促進する駆動手段が、導入部1および排出部7の少なくとも一方に連結されていてもよい。このような駆動手段としては、例えば、押出しポンプおよび吸引ポンプが挙げられる。押出しポンプを用いて流体をマイクロチャネル2内へ送り込む場合は、押出しポンプを導入部1に連結すればよく、吸引ポンプを用いて流体をマイクロチャネル2内から引き出す場合は、吸引ポンプを排出部7に連結すればよい。また、上述したようなポンプを用いる以外に、従来公知の方法(例えば、毛管現象を用いた方法、または、吸水物質を用いた方法)で溶液を流すこともできる。
【0087】
本実施形態に係る分析装置に提供される流体は、気体であっても液体であってもよいが、マイクロ化技術による生化学的な分析に用いられる場合は、液体であることが好ましい。
【0088】
以下、本実施形態に係る分析装置が備えている部材について詳細に説明する。
【0089】
<1.1 基板>
基板100および蓋101として、例えば、絶縁性を有する基板を用いることができる。絶縁性を有する基板としては、例えば、表面に酸化膜などの絶縁性材料が形成されたシリコン基板、石英基板、酸化アルミニウム基板、ガラス基板またはプラスチック基板などが挙げられる。
【0090】
物質を光学的に検出する場合には、光透過性の基板を基板100または蓋101として用いることができる。光透過性の基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板または光透過性樹脂から作成された基板などが挙げられる。
【0091】
また、化学発光を利用して物質を検出する場合には、自発蛍光が小さく且つ透明性のあるガラスまたはプラスチック材料(例えば、ポリイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンまたはポリフェニレンサルファイトなど)を、基板100または蓋101として用いることもできる。
【0092】
なお、マイクロチャネル型の分析装置に用いるに好ましい、基板100の厚みは0.1〜5mm程度である。なお、蓋101は、基板100と同一の厚みを有していても、基板100よりも薄くてもよい。
【0093】
<1.2 マイクロチャネル>
基板100の表面上に形成されるマイクロチャネル2の深さは0.1〜1000μm程度であることが好ましく、幅は0.1〜1000μm程度であることが好ましいが、これらに限定されない。また、マイクロチャネル2の長さは、基板100の大きさに従って適宜設計可能であり、50〜800μm程度であることが好ましい。
【0094】
マイクロチャネル2の流路は、流体が流れる方向に沿って、角柱形状であっても円柱形状であってもよい。すなわち、マイクロチャネル2の、流体が流れる方向に対して垂直な断面の形状は、矩形、台形または円形(半円形)であり得る。
【0095】
マイクロチャネル2は、例えば基板100上に凹凸を形成することによって作製することができる。例えば、基板100上に凹部を形成し、この凹部をマイクロチャネル2としてもよいし、基板100上に複数の凸部を形成し、これらの凸部で囲まれた領域をマイクロチャネル2としてもよい。また、凹部と凸部と形成し、凹部と凸部との組合せからマイクロチャネル2を作製してもよい。
【0096】
基板100上に凹凸を形成する方法としては、例えば、直接加工する方法としての機械加工による方法、レーザー加工による方法、金型を用いた射出成型、プレス成型、および鋳造による方法などが挙げられる。金型を用いた射出成型は、量産性に優れ、形状の再現性が高いので、特に好適に利用される。また、基板100の材料がシリコンまたはガラス等である場合、基板100上のマイクロチャネル2のパターンを、フォトリソグラフィ法またはエッチング法により形成することができる。
【0097】
導入部1および排出部7は、予め基板100上に形成されている態様を図示したが、導入部1および排出部7を介してマイクロチャネル2と基板外部とを連絡する構成であれば限定されず、例えば、第1および第2の貫通孔として形成されてもよい。導入部1および排出部7の大きさは、マイクロチャネル2の大きさおよび形状に従って適宜変更可能であるが、本実施形態に係る分析装置をマイクロチャネル型の分析装置として用いるためには、径が10μm以上であることが好ましい。なお、基板100と別の部材として形成した導入部1および排出部7を基板の外部に配置して、それぞれを、第1の貫通孔および第2の貫通孔を介して導入孔および排出孔に連結させた態様であってもよい。
【0098】
<1.3 検出部>
検出部3は、上述したように、マイクロチャネル2を流れる流体中の物質を検出する部位であり、図1に示すように、検出部3には、検出および分析の対象となる物質(以下、対象物質とも称する。)を捕捉する第二の捕捉物質4が固定化されている。第二の捕捉物質4は、対象物質とホスト−ゲストの関係にある物質(例えば、抗体、抗原、ペプチド、DNA、糖、合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)、酵素、基質、リガンドまたはレセプターなど)であればよく、特に、抗体または合成高分子は、活性が安定しているので好ましい。また、第二の捕捉物質4を固定化する方法としては、物理的吸着法、化学結合法または共有結合法などの公知の方法が適宜採用され得る。
【0099】
検出部3の構成は、特に限定されず、対象物質の検出方法によって適宜決定され得る。吸光度または発光(蛍光を含む)などに基づいて、対象物質を光学的に検出する場合、マイクロチャネル2の光透過性を有する部分を検出部3とすればよい。分析装置の製造を簡便にするためには、基板100全体または蓋101全体を、例えば、ガラス、石英または光透過性樹脂などの光透過性の材料にて形成することが好ましい。このような場合は、図示するように、検出部3として機能するマイクロチャネル2の一領域の内壁面上に、第二の捕捉物質4を固定化すればよい。
【0100】
また、対象物質を電気化学的に検出する場合、検出部3は、マイクロチャネル2内に形成された検出電極を有する検出手段を備えていればよい。検出電極は、少なくとも参照電極および作用電極の2電極から構成されていればよいが、参照電極および作用電極に加えて対向電極を備えている3電極から構成されていることが好ましい。図1〜3には、検出部3として機能するマイクロチャネル2の一領域の内部壁面に第二の捕捉物質4が固定化されている構成を示しているが、検出電極を用いる場合には、第二の捕捉物質4が少なくとも作用電極上に固定化されていればよい。
【0101】
参照電極、作用電極および対向電極は、従来のフォトリソグラフィ技術を利用した微細加工技術によってマイクロチャネル2に形成することができる。電極の導電性材料として、例えば金、白金、銀、クロム、チタン、イリジウム、銅またはカーボンなどを用いることができる。参照電極には、基準電位の安定性の観点から、銀/塩化銀電極を用いることが好ましい。
【0102】
<1.4 参照検出部>
参照検出部5は、上述したように、チップ内に保存された標識された第一の捕捉物質および化学物質の活性を評価する部位である。図1に示すように、検出部3と排出部7との間に設けられた参照検出部5には、第一の捕捉物質を捕捉するための第三の捕捉物質6が固定化されている。
【0103】
第三の捕捉物質6は、第二の捕捉物質4と同様に、第一の捕捉物質とホスト−ゲストの関係にある物質(例えば、抗原、抗体、酵素、基質、リガンド、レセプター、DNA、糖、ペプチドまたは合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)など)であればよく、特に、抗体または合成高分子は、活性が安定しているので好ましい。第三の捕捉物質6を固定化する方法もまた、物理的吸着法、化学結合法または共有結合法などの公知の方法が適宜採用され得る。
【0104】
参照検出部5の構成は検出部3と同様であって、特に限定されず、第一の捕捉物質の検出方法によって適宜決定され得る。吸光度または発光(蛍光を含む)などに基づいて、第一の捕捉物質を光学的に検出する場合、マイクロチャネル2の光透過性の部分を参照検出部5とすればよい。分析装置の製造を簡便にするために、基板100全体または蓋101全体を、例えば、ガラス、石英および光透過性樹脂などの光透過性の材料にすることが好ましい。このような場合は、図示するように、参照検出部5として機能するマイクロチャネル2の一領域の内壁面上に第三の捕捉物質6を固定化すればよい。また、第一の捕捉物質を電気化学的に検出する場合、参照検出部5は、マイクロチャネル2内に形成された検出電極を有する検出手段を備えていればよい。検出電極は、少なくとも参照電極および作用電極の2電極から構成されていればよいが、参照電極および作用電極に加えて対向電極を備えている3電極から構成されていることが好ましい。
【0105】
また、参照検出部5の構成は、好ましくは検出部3と同じ検出手段および/または検出構造を用いることが好ましい。同一の検出手段および/または検出構造であれば検出のバラつきの影響を無視することができる。また、検出信号値も温度により変動するため、検出手段および/または検出構造が同一であれば、変動幅も同一とみなすことが可能となる。
【0106】
<1.5 標識された第一の捕捉物質>
流体中の物質を検出するための標識された第一の捕捉物質の標識物質は、色素、蛍光色素(または蛍光たんぱく質)、酵素または放射性物質など、ラベル化剤として使用できる物質であればよい。捕捉物質としては上記のように対象物質とホスト−ゲストの関係がある物質(例えば、抗原、抗体、酵素、基質、リガンド、レセプター、DNA、糖、ペプチドまたは合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)など)であればよく、特に、抗体または合成高分子は、活性が安定しているので好ましい。
<1.5.1 標識された第一の捕捉物質の保存方法>
標識された第一の捕捉物質のチップ内での保存方法は液中保存、乾燥保存などいずれでもよく、適宜チップの形状や試薬の特性に応じて選択できる。また保存する場所(第一の保存部)は、導入部1から検出部3の間であればいずれでもよい。例えば、流路内、導入部1内または検出部3上などに保存部(第一の保存部)を設けてもよい。第一の捕捉物質の保存手順としてはチップ内の壁面にブロッキング剤で処理後または処理中に行うことが好ましい。ブロッキング方法としては既存の方法を使用することができる。例えば、流路基板自身がブロッキング能の高い材質であってもよいし、BSAなどのブロッキング溶液に浸漬することでブロッキング処理を行うことができる。
【0107】
<1.5.2 流路構造>
流路構造として、図2のようにマイクロチャネルに分岐流路を作製し、分岐した第一の捕捉物質用流路10内に、標識された第一の捕捉物質を保存してもよい。この構造であれば、サンプル液と第一の捕捉物質とがコンタミネーションすることなく、検出部3および参照検出部5に送液することが可能となる。また、第一の捕捉物質用流路10にバルブ9を設けることが好ましい。上記構成であれば、サンプル送液時のコンタミネーションをより良く防ぐことが可能となる。ただし、図2に記載したバルブ9の位置には特に限定されない。導入部1からサンプルが送液される際、分岐した第一の捕捉物質用流路10に液体が流れ込むのを防ぐ機能が発揮できればよい。例えば、第一の捕捉物質用流路10内の流体の流れを物理的に停止させる構造、第一の捕捉物質用流路10内の流体を切断する構造、第一の捕捉物質用流路10内の流体を分離する構造などを有し得、必要に応じて全ての機能を備えていてもよい。好ましいバルブ9の例としては、回転ねじ式バルブ、出し入れ自在の堰板、圧力による閉鎖または気体制御による液体の切断などが挙げられる。
【0108】
<1.5.3 標識された第一の捕捉物質の量>
標識された第一の捕捉物質の保存量は、検出部3で第一の捕捉物質が十分に反応する量であり、かつ、参照検出部5でほぼ飽和で反応できる量とする。
【0109】
具体的には、検出部3における第二の捕捉物質4の固定化量がデータとして得られている場合、第一の捕捉物質の量は、下記の式で表すことが可能である。
【0110】
(第一の捕捉物質の保存量)≧(第二の捕捉物質4の固定化量)+(第三の捕捉物質6の固定化量)
ただし、第一の捕捉物質としてポリクローナル抗体など1つの対象物質に対し多数のエピトープで捕捉する捕捉物質を用いる場合、上記式の3倍量程度標識された第一の捕捉物質を保存することが望ましい。
【0111】
(第一の捕捉物質の保存量)≧{(第二の捕捉物質4の固定化量)+(第三の捕捉物質6の固定化量)}×3
検出部3における第二の捕捉物質の固定化量データが得られていない場合、第一の捕捉物質は下記のように調製可能である。具体的な調製例を下記に示す。
(1)参照検出部5の確認
濃度既知の第一の捕捉物質(標準物質)を用いて、参照検出部5における第一の捕捉物質の検出範囲を調べる。得られた飽和濃度と送液した容量との積を導出することで、参照検出部5において第一の捕捉物質が飽和吸着するために必要な量を算出できる。
(2)検出部3の確認
濃度既知の対象物質(標準物質)を用いて、検出部3において必要な第一の捕捉物質の最大量を調べる。具体的には想定される対象物質の最大濃度で反応させた検出部3において、検出部3上に捕捉された対象物質に対し飽和吸着するために必要な第一の捕捉物質濃度を調べる。得られた飽和濃度と容量との積を導出することで、第一の捕捉物質が飽和吸着するために必要な量を算出できる。
【0112】
以上、(1)、(2)から得られた第一の捕捉物質の量の和以上をマイクロチャネル内の保存部(第一の保存部)に保存する。
【0113】
<1.6 分析方法>
本実施形態に係る分析チップを用いた分析方法の例を、以下に示す。なお、マイクロチャネル2内にて流体を流す駆動手段は、導入部1に連結した押出ポンプを用いる方法、排出部7に連結した吸引ポンプを用いる方法、毛管力および/または吸水物質を用いる方法のいずれでもよい。
【0114】
(1)サンプルの導入と反応
1つ目の例として、図1に記載のマイクロチャネルチップにおいて、標識された第一の捕捉物質が保存された保存部(第一の保存部)を、導入部1中に設けたチップに関して分析例を説明する。サンプルを導入部1からマイクロチャネル2内に導入する。サンプル中の対象物質は、まず導入部1内に保存された第一の捕捉物質と反応しながら、検出部3に流れ込む。流れたサンプル中の対象物質は検出部3上の第二の捕捉物質4とも反応するため、結果として検出部3上の第二の捕捉物質4は第一の捕捉物質が結合した対象物質を捕捉することとなる。その一方で、参照検出部5に流れた過剰な第一の捕捉物質は、参照検出部5上の第三の捕捉物質6により捕捉される。
【0115】
2つ目の例として、図2に記載のマイクロチャネルチップにおいて、第一の捕捉物質が保存された保存部(第一の保存部)を、第一の捕捉物質用流路10中に設けたチップに関して説明する。サンプルを導入部1からマイクロチャネル2内に導入する。検出部3に流れ込んだ対象物質は検出部3上の第二の捕捉物質4に捕捉される。この際、バルブ9は閉じておき、第一の捕捉物質用流路10内に液が流れないようにすることが好ましい。次にバルブ9を開け、導入部11からバッファーを送液し、第一の捕捉物質用流路10中に保存された第一の捕捉物質をマイクロチャネル2に送液する。送液された第一の捕捉物質は、検出部3上に捕捉された対象物質、および、参照検出部5上の第三の捕捉物質6と反応し、それぞれによって捕捉される。また、サンプル送液後と第一の捕捉物質を送液する前とに、マイクロチャネル2を洗浄するための洗浄操作を入れてもよい。マイクロチャネル2を洗浄するための洗浄操作では、マイクロチャネル2に対して、導入部1から洗浄液を送液してもよいし、新たに設けたマイクロチャネル2の分岐流路(図示せず)から洗浄液を送液してもよい。
【0116】
(2)対象物質の検出
第一の捕捉物質の標識物質が、蛍光色素などの、直接測定可能な標識物質である場合、第一の捕捉物質を導入後、当該標識物質を検出することが可能である。また、導入部1から洗浄液を送液した後、当該標識物質の検出を行ってもよい。上記と同様に、専用の洗浄流路(図示せず)から洗浄液を送液してもよい。
【0117】
第一の捕捉物質の標識物質が、酵素などの場合、検出するために化学物質(酵素の場合、基質に相当)との反応が必要な標識物質である。その場合、例えば図3に記載のマイクロチャネルチップにおいて、化学物質が保存された第二の保存部が設けられた化学物質用流路13から、化学物質を含む溶液を送液することで、検出するための反応を行うことが可能である。また、化学物質を含む溶液を送液する前に、洗浄操作を入れてもよい。例えば、第一の捕捉物質の標識物質がALP酵素であり、基質としてpAPPを用いる場合、酵素と基質との反応によりpAPPがpAPに変化する。なお、pAPは、電気化学的に活性な物質である。そして、基質が電気化学的に活性な物質に変化するため、電流値として信号値を取得可能となる。
【0118】
検出は、検出部3および参照検出部5で行う。検出部3では検出部3上で捕捉された第一の捕捉物質の量(捕捉された対象物の量に相応)を検出し、参照検出部5では参照検出部5上で捕捉された第一の捕捉物質の量を検出する。
<1.7 信号値の補正>
従来のマイクロチャネルチップの場合、検出部3の信号値から検量を行う。検出信号値は下記のようにあらわされる。
【0119】
・検出信号∝捕捉物質(第二の捕捉物質)の固定化量×対象物質の反応率×標識された捕捉物質(第一の捕捉物質)の反応率×酵素基質反応率(酵素基質反応を利用する場合)×検出効率
固定化量、反応率、および検出効率は、(A)製造ロット(捕捉物質や標識物質など)、(B)固定化量または保存量、(C)使用環境(湿度、温度、製造後時間)により信号値が変化することがあり、実際の値と相違が生じる可能性がある。
【0120】
下記に具体的に信号値を変化させる要因の例を記す。
【0121】
【表1】

【0122】
上記の(A)、(B)に関しては製造上の条件によるため、予めマイクロチャネルチップを検出するための装置を補正することで対応できる。しかし、(C)使用環境に関しては、ユーザーに依存する条件であるため、マイクロチャネルチップの製造者は制御できない。
【0123】
検出部3の信号値は、上記要因の他に、サンプル中に含まれる対象物質の濃度によって信号値が上下するが、参照検出部5の信号値は、必ず飽和吸着に相当する信号値が検出されるため、上記要因の影響のみを考慮することが可能となる。具体的には参照検出部5の信号値は下記のように表され得る。
【0124】
・参照検出部の信号値∝捕捉物質(第三の捕捉物質)の固定化量×標識された捕捉物質(第一の捕捉物質)の反応率×酵素基質反応率(酵素基質反応を利用する場合)×検出効率
上記の検出部3の信号値の式と比較すると使用環境に影響を受ける因子に関して相殺できるため、検出部3の信号値と参照検出部5の信号値とを比較することで、実際の値との相違を小さくすることが可能となる。補正の方法は、比をとることで可能であるが、その他、差や補正係数をかけるなど補正手段は問わない。
【0125】
例えば、保存時間により酵素活性が2割減少していた場合、検出部3の信号値は最大2割減少することが考えられるが、参照検出部5の信号値も同じく減少するため、信号値で比較した場合、酵素活性の影響は無視できる。
【0126】
上記(A)、(B)の補正に関しては、製造チップのロットにより信号値が変化する可能性がある。そのため、ロット変更に伴い、ユーザーが、マイクロチャネルチップを検出するための装置またはソフトウェアに予め補正情報を入力しておくことで対応可能となる。また、チップにICタグやバーコードなどを付加することで情報をチップに埋設しておき、検出装置側で当該情報を読みとり、自動で補正を行うことが可能である。例えば、検量線やデータ情報などをあらかじめ装置側に入力しておくことで、検出結果として得られた検出信号値から検量することが可能となるが、製造時のロットの違いや試薬のロットの違いにより検量線が異なる可能性があるため、検量するための情報を手入力またはバーコードやICタグに入力しておくことができる。装置は、入力された情報を基に、検量線またはデータの補正を行うことが可能となる。装置によるバーコードやICタグの読み取り方法は、あらゆる周知の技術を用いることが可能である。
【0127】
<1.8 検出エラー>
参照検出部5は、マイクロチャネルチップでの検出が失敗していないか否か判定することにも使用可能である。参照検出部5では、標識された第一の捕捉物質が飽和吸着したときの信号値が検出されるが、当該信号値が所定の値以下で検出された際に、測定自身の信頼性が低いと判断することが可能である。当該所定の値を基準値とすることができる。検出時に参照検出部5の信号値が基準値を下回った場合、ユーザーに警告を発するとともに、検量値の表示を行わないようにすることで、ユーザーに誤った検量値を伝えることを防止することが可能になる。警告は光による警告でもよいし、音による警告であってもよく、従来周知の方法を用いることが可能である。ただし、検出部および参照検出部において、光による検出が行われる場合、それらに影響を及ぼさないように、音による警告が好ましい。
【0128】
〔実施の形態2〕
図4、5および6に基づいて、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同じ構成については、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0129】
実施の形態1においては、参照検出部5と検出部3とは、同じマイクロチャネル内に直列に配置されるが、実施の形態2においては、図4のように、参照検出部5’と検出部3’とは、分岐したマイクロチャネル内に並列に配置される。並列に配置することで、「標識された第二の捕捉物質の保存量」の項目が実施の形態1とは異なるが、その他の項目に関しては実施の形態1に従う。例えば図5、図6に記載したように、第一の捕捉物質用流路10’、基質用流路13’、洗浄用流路(図示せず)など設けることができる。これらは、実施の形態1と同様の構成を用いることが可能である。
【0130】
図4〜6に示すように、マイクロチャネル2は、導入孔1’よりも下流側で、複数の流路に分岐する。当該分岐点の位置は特に限定されないが、第一の捕捉物質用流路10’および基質用流路13’の少なくとも1つが設けられている場合には、これらの流路がマイクロチャネル2へ接続される箇所よりも下流側に分岐点が存在することが好ましい。
【0131】
1本のマイクロチャネル2が分岐する流路の数としては特に限定されず、適宜設定され得る。例えば、2本であってもよく、3本であってもよく、4本であってもよく、それよりも多くても良い。分岐する流路の数を2本よりも多くする場合には、例えば、流路の数を偶数個(例えば、4、6、8、・・・)にすることが可能である。分岐する流路の数を2本よりも多くする場合には、例えば、検出部3’が設けられた流路を複数設けると共に、参照検出部5’が設けられた流路を複数設けることが可能である。なお、この場合、各検出部3’と各参照検出部5’とが対をなすように、同じ数の検出部3’と参照検出部5’とを設けることが好ましい。上記構成によれば、1つのマイクロチャネルチップによって、複数種類の物質を同時に検出および分析することが可能になる。この場合、各検出部3’および参照検出部5’は、検出および分析したい物質に合わせた構成にすることが可能である。つまり、複数の検出部3’は、各々が同じ構成を有する検出部3’であっても良いが、各々が異なる構成を有する検出部3’であっても良い。同様に、複数の参照検出部5’は、各々が同じ構成を有する参照検出部5’であっても良いが、各々が異なる構成を有する参照検出部5’であっても良い。
【0132】
分岐した各々の流路の、流体が移動する方向に対して垂直な方向における断面の大きさおよび形状は特に限定されないが、同じ大きさおよび形状であることが好ましい。上記構成によれば、精度よく物質を検出および分析することが可能である。分岐した各流路の大きさ及び形状は、例えば、実施の形態1にて説明したマイクロチャネル2と同様にすることが可能である。
【0133】
また、流路の分岐点と参照検出部5’との間に、バルブ(図示せず)を設けることもできる。図4に示される導入孔1’にサンプルを導入した場合、サンプルは分岐した流路の両方に流れる。バルブを設けた場合、バルブを閉めた状態でサンプルを導入すれば、対象物質は参照検出部5’側に流れることなく検出部3’に流れ、第二の捕捉物質4’に捕捉される。その後、当該バルブを開いた状態で第一の捕捉物質を流路内に導入すれば、検出部3’上に捕捉された対象物質および参照検出部5’上の第三の捕捉物質6’と反応し、それぞれによって第一の捕捉物質が捕捉される。上記構成であれば、対象物質を確実に検出部3’で反応させることができる。
【0134】
<2.1 標識された第一の捕捉物質の量>
標識された第一の捕捉物質の保存量は、実施の形態1と同様に、検出部3’で第一の捕捉物質が十分反応する量であり、かつ、参照検出部5’でほぼ飽和で反応できる量とする。
【0135】
具体的には、検出部3’における第二の捕捉物質4’の固定化量がデータとして得られている場合、第一の捕捉物質の量は下記の式で表すことが可能である。
【0136】
(第二の捕捉物質4’の固定化量)≧(第三の捕捉物質6’の固定化量)の場合
(第一の捕捉物質の保存量)≧(第二の捕捉物質4’の固定化量)×2
(第三の捕捉物質6’の固定化量)≧(第二の捕捉物質4’の固定化量)の場合
(第一の捕捉物質の保存量)≧(第三の捕捉物質6’の固定化量)×2
図4は2分岐流路であるためチップ全体として2倍保存する。n分岐の場合はn倍行う。
【0137】
ただし、第一の捕捉物質として、ポリクローナル抗体など1つの対象物質に対し多数のエピトープで捕捉する捕捉物質を用いる場合、上記式の3倍程度第一の捕捉物質を保存することが望ましい。
【0138】
検出部3’における第二の捕捉物質4’の固定化量データが得られていない場合、第一の捕捉物質は下記のように調製可能である。具体的な調製例を下記に示す。
(1)参照検出部5’の確認
濃度既知の第一の捕捉物質(標準物質)を用いて参照検出部5’における第一の捕捉物質の検出範囲を調べる。得られた飽和濃度から容量との積を導出することで、参照検出部5‘において第一の捕捉物質が飽和吸着するために必要な量を算出できる。
(2)検出部3’の確認
濃度既知の対象物質(標準物質)を用いて検出部3’において必要な第一の捕捉物質の最大量を調べる。具体的には想定される対象物質の最大濃度で反応させた検出部3’において、検出部3’上に捕捉された対象物質に対し飽和吸着するために必要な第一の捕捉物質濃度を調べる。得られた飽和濃度と容量との積を導出することで、第一の捕捉物質が飽和吸着するために必要な量を算出できる。
【0139】
以上、(1)、(2)から得られた第一の捕捉物質の量を比較し、多かった方の2倍量保存する。
【0140】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0141】
本発明の分析素子は、流路中に流体中の物質を検出する検出部が設けられており、検出部には検出すべき物質を捕捉する第二の捕捉物質が配置され、検出すべき物質を捕捉し、かつ標識物質が結合した第一の捕捉物質を用いる分析素子において、流路中に上記第一の捕捉物質を検出する参照検出部が設けられており、参照検出部には、第一の捕捉物質を捕捉する第三の捕捉物質が配置され、参照検出部上の第三の捕捉物質に対し第一の捕捉物質が最大量捕捉されることを特徴としている。
【0142】
本発明の分析素子では、上記参照検出部は、上記検出部の下流側にあることが好ましい。
【0143】
本発明の分析素子では、上記第一の捕捉物質の必要量は、検出部における第二の捕捉物質の量と参照検出部における第三の捕捉物質の量の和以上であることが好ましい。
【0144】
本発明の分析素子では、上記流路は、上記注入部の下流側で分岐しており、分岐した一方の流路に、上記検出部が設けられており、分岐したもう一方の流路に、上記参照検出部が設けられていることが好ましい。
【0145】
本発明の分析素子では、上記第一の捕捉物質の必要量は、検出部における第二の捕捉物質の量または参照検出部における第三の捕捉物質の量の2倍以上であることが好ましい。
【0146】
本発明の分析素子では、上記第一の捕捉物質が、チップ内に保存されていることが好ましい。
【0147】
本発明の分析素子では、上記標識物質と反応する化学物質が、チップ内に保存されていることが好ましい。
【0148】
本発明の分析素子では、上記流路において注入すべき流体を受容する注入部を備えることが好ましい。
【0149】
本発明の分析素子では、上記参照検出部と上記検出部は、同一の検出手段で検出することが好ましい。
【0150】
本発明の分析素子では、上記検出部と上記参照検出部は、それぞれ作用電極と参照電極から構成されていることが好ましい。
【0151】
本発明の分析素子では、上記作用電極と参照電極の大きさが同一であることが好ましい。
【0152】
本発明の分析素子では、上記検出部と上記参照検出部は、透過性のある材料から構成されていることが好ましい。
【0153】
本発明の分析素子では、上記第一の捕捉物質が、検出すべき物質に対する抗体であることが好ましい。
【0154】
本発明の分析素子では、上記第二の捕捉物質が、上記検出すべき物質に対する抗体であることが好ましい。
【0155】
本発明の分析素子では、上記第三の捕捉物質が、標識された捕捉物質に対する抗体であることが好ましい。
【0156】
本発明の分析素子では、上記第一の捕捉物質に結合した標識物質が酵素であることが好ましい。
【0157】
本発明の分析素子では、上記第一の捕捉物質に結合した標識物質が、蛍光材料であることが好ましい。
【0158】
本発明の分析素子では、上記標化学物質が、酵素と反応する基質であることが好ましい。
【0159】
本発明の分析素子では、検出部の信号値と参照検出部の信号値から導出した検出信号値と検出すべき物質の濃度との相関関係に関する情報が書き込まれたバーコードまたはICタグを設けることが好ましい。
【0160】
本発明の分析装置は、本発明の分析素子を用いて、検出部の信号値と参照検出部の信号値を比較した相対信号値から検出すべき物質の濃度を算出することを特徴としている。
【0161】
本発明の分析装置は、本発明の分析素子を用いて、参照検出部の信号値が基準値以下の場合、警告を発することを特徴としている。
【0162】
本発明の分析装置は、本発明の分析素子を検出するための分析装置であって、上記検出部と上記参照検出部を検出する検出手段が同じであることを特徴としている。
【0163】
本発明の分析装置は、本発明の分析素子を用いて、バーコードまたはICタグ用のリーダーが設けられていることを特徴としている。
【0164】
本発明の分析方法は、本発明の分析素子を用いて、検出信号値を算出する際、参照検出部の信号値と検出部の信号値を比較することを特徴としている。
【0165】
本発明の分析方法では、検出信号値は、検出部の信号値と参照検出部の信号値との比から算出することが好ましい。
【0166】
本発明の分析方法では、参照検出部の信号値が基準値以下の場合、検出エラーと判断することが好ましい。
【0167】
本発明の分析方法では、検出部の信号値と参照検出部の信号値から算出した検出信号値と検出すべき物質の濃度との相関関係が予め入力されており、検出チップから得られた検出信号値から検出すべき物質の濃度を出力することが好ましい。
【0168】
本発明の分析方法では、測定前にチップ情報を入力することで上記相関関係を補正することが好ましい。
【0169】
本発明の分析方法では、上記チップ情報をチップに設けられたバーコードまたはICタグから読み取ることで入力され、上記相関関係を補正することが好ましい。
【0170】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の分析装置を用いれば、使用環境などの差異にかかわらず精度の良い測定結果をユーザーに表示することが可能となる。このため、本発明は、微小な化学物質などの検出に用いる化学マイクロデバイス(例えば、マイクロチャネルチップおよびマイクロリアクター)、およびバイオセンサー(例えば、アレルゲンセンサー)などの、μ−TAS技術を用いたマイクロチャネルチップを利用する分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0172】
1、1’ 導入孔
2、2’ マイクロチャネル
3、3’ 検出部
4、4’ 第二の捕捉物質
5、5’ 参照検出部
6、6’ 第三の捕捉物質
7、7’ 排出部
9、9’ バルブ
10、10’ 第一の捕捉物質用流路
11、11’ 導入孔
12、12’ バルブ
13、13’ 基質用流路
14、14’ 導入孔
100、100’ 基板
101 蓋
110 基板
111 マイクロチャネル
112 導入部
113 液溜め部
114 排出部
115 抗体固定部
120 対象物質
121 標識物質
122 抗体
123 標識抗体
124 免疫複合体
125 固定化された抗体
126 複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体、および、上記流体中の検出すべき物質を捕捉するとともに標識物質が結合している第一の捕捉物質、を流すための流路と、
上記流路内に設けられているとともに、上記流体中の検出すべき物質を捕捉するための第二の捕捉物質が配置されている検出部と、
上記流路内に設けられているとともに、上記第一の捕捉物質を捕捉するための第三の捕捉物質が配置されている参照検出部と、が設けられた分析素子であって、
上記第三の捕捉物質は、飽和吸着にて上記第一の捕捉物質を捕捉することを特徴とする分析素子。
【請求項2】
上記参照検出部は、上記検出部の下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分析素子。
【請求項3】
上記流路に流される上記第一の捕捉物質の量は、上記第二の捕捉物質の量と上記第三の捕捉物質の量との和以上の量であることを特徴とする請求項2に記載の分析素子。
【請求項4】
上記流路は、分岐しており、
上記分岐した流路の1つに、上記検出部が設けられており、
上記分岐した流路とは別の流路に、上記参照検出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分析素子。
【請求項5】
上記流路に流される上記第一の捕捉物質の量は、上記検出部における上記第二の捕捉物質の量または上記参照検出部における上記第三の捕捉物質の量の2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の分析素子。
【請求項6】
上記第一の捕捉物質を保存するとともに、当該第一の捕捉物質を上記流路内へ導入するための第一の保存部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5に何れか1項に記載の分析素子。
【請求項7】
上記標識物質と反応する化学物質を保存するとともに、当該化学物質を上記流路内へ導入するための第二の保存部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項8】
上記流体を受容するとともに、当該受容した流体を上記流路へ導入するための導入部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項9】
上記参照検出部および上記検出部は、同一の検出手段を備えていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項10】
上記参照検出部および上記検出部は、それぞれ作用電極および参照電極を備えていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項11】
上記作用電極および上記参照電極は、大きさが同一であることを特徴とする請求項10に記載の分析素子。
【請求項12】
上記検出部および上記参照検出部は、光透過性を有する材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項13】
上記第一の捕捉物質が、上記検出すべき物質に対する抗体であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項14】
上記第二の捕捉物質が、上記検出すべき物質に対する抗体であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項15】
上記第三の捕捉物質が、上記第一の捕捉物質に対する抗体であることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項16】
上記標識物質が、酵素であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項17】
上記標識物質が、蛍光材料であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項18】
上記化学物質が、酵素と反応する基質であることを特徴とする請求項7〜16の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項19】
上記検出部の信号値および上記参照検出部の信号値から導出される検出信号値と、上記検出すべき物質の濃度との相関関係に関する情報が書き込まれたバーコードまたはICタグが設けられていることを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載の分析素子。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1項に記載の分析素子を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項21】
上記検出部の信号値と上記参照検出部の信号値とを比較した相対信号値から、上記検出すべき物質の濃度を算出することを特徴とする請求項20に記載の分析装置。
【請求項22】
上記参照検出部の信号値が基準値以下の場合に、警告を発することを特徴とする請求項20または21に記載の分析装置。
【請求項23】
上記検出部の信号値および上記参照検出部の信号値を検出する検出手段が同じであることを特徴とする請求項20〜22に記載の分析装置。
【請求項24】
バーコードまたはICタグ用のリーダーが設けられていることを特徴とする請求項20〜23の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項25】
請求項1〜19の何れか1項に記載の分析素子を用い、
上記参照検出部の信号値と上記検出部の信号値とを比較して、検出信号値を算出することを特徴とする分析方法。
【請求項26】
上記検出信号値は、上記検出部の信号値と上記参照検出部の信号値との比から算出されることを特徴とする請求項25に記載の分析方法。
【請求項27】
上記参照検出部の信号値が基準値以下である場合に、検出エラーと判断することを特徴とする請求項25または26に記載の分析方法。
【請求項28】
上記検出信号値と上記検出すべき物質の濃度との相関関係を予め上記分析素子へ入力し、
上記検出信号値と上記相関関係とから、上記検出すべき物質の濃度を算出することを特徴とする請求項25〜27の何れか1項に記載の分析方法。
【請求項29】
上記分析素子の製造ロットおよび試薬ロットの少なくとも一方に関する情報に基づいて、上記相関関係を補正することを特徴とする請求項28に記載の分析方法。
【請求項30】
上記情報を、上記分析素子に設けられたバーコードまたはICタグから読み取ることを特徴とする請求項29に記載の分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−113690(P2013−113690A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259624(P2011−259624)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】