説明

分析装置、分析方法、及びプログラム

【課題】測定電極の間に浸入した液体又は固体による異常な導通の発生のみを確実に検知し得る、分析装置、分析方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】分析装置10は、センサ電極115及び116と試薬層114とを有するセンサ110を用いて試料の分析を行う。分析装置10は、各センサ電極に接続される測定電極21及び22を有し、且つ、測定電極の間を流れる電流を検出する、検出部20と、各センサ電極に各測定電極が接続されているかどうかを判定する、判定部30と、演算処理部40とを備える。演算処理部40は、各センサ電極が各測定電極に接続されている場合は、検出部20が検出した電流の電流値に基づいて、試料中の特定成分の量を測定し、各センサ電極と各測定電極とが接続されていない場合は、検出部20が検出した電流の電流値に基づいて、測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学式のセンサを用いて試料を分析するための分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血糖値の測定には、利便性の点から、携帯型の血糖値計が利用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このような血糖値計では、試料となる血液は、センサと呼ばれる板状の分析用具を介して供給される。ここで、図5を用いて、従来からの血糖値計とセンサとについて説明する。図5は、従来からの血糖値計及びセンサの外観を示す図である。
【0003】
図5に示すように、血糖値計100は、筐体104において、測定結果を表示する表示画面101と、センサ110を挿入するための挿入口102と、操作ボタン103とを備えている。センサ110は、短冊状の基板111と板状のカバー112とを貼り合わせて形成されている。また、基板111上には、試料と反応する試薬を含む試薬層114と、一対のセンサ電極115及び116が設けられている。
【0004】
なお、血糖値計100は、センサ110の挿入により起動し、及びセンサ110の抜き取りによって停止する仕様とすることができる。この場合は、血糖値計100においては、操作ボタン103は設けられていなくても良い。また、センサ110が、一対以上のセンサ電極を備える場合もある。
【0005】
センサ電極115及び116は、両者の一方の端部によって試薬層114が挟み込まれ、且つ、両者の他方の端部が基板111上の端(挿入側の端)に到達するように、基板上に形成されている。カバー112には、カバー112を基板111に貼り合わせたときに、試料を試薬層114へと導くための導入口113及び流路117が形成されるように溝が形成されている。
【0006】
そして、図5に示すように、センサ110を、血糖値計100の挿入口102に挿入すると、センサ電極115及び116それぞれは、血糖値計100の内部に設けられた一対の測定電極(図5において図示せず)に接続される。
【0007】
また、血糖値計100は、挿入口102へのセンサ110の挿入によって起動し、測定可能な状態となる。その後、センサ110の導入口113から試薬層114へと、試料となる血液を導入すれば、血糖値計100は血糖値の測定を行い、測定結果を表示画面101上に表示する。測定が終了すると、センサ110は、ユーザによって引き抜かれ、廃棄される。なお、血糖値計の筐体104には、センサ110を引き抜くためのレバーが設けられていても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】再公表2004−072632号公報
【特許文献2】再公表2005−100968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
また、図5に示した血糖値計100においては、操作ミスなどにより、挿入口102から、血液、消毒液、異物が血糖値計100の内部に浸入してしまうことがある。このような場合、血糖値計100の内部の測定電極間に余分な電流が流れ、正しく測定を行うことが不可能になる。このため、血糖値計100には、エラー検出機能が付与されている。
【0010】
具体的には、血糖値計100は、挿入口102にセンサ110が挿入されると、そのタイミングで、血糖値計110の内部に設けられた一方の測定電極、センサ電極115、試薬層114、センサ電極116、及び、他方の測定電極を流れる電流の電流値を測定する。このとき、センサ110には血液が導入されておらず、センサ110は絶縁体として機能するため、測定電極間が正常であれば電流値の値は略ゼロとなる。一方、測定された電流値が閾値を超えた場合は、測定電極間に異常な導通が発生していると判断され、表示画面101には「エラー」と表示される。
【0011】
しかしながら、上述したエラー検出機能では、ユーザが誤って使用済みのセンサ110を再び挿入口102に挿入してしまった場合に、正しくエラーを検出できないという問題がある。即ち、使用済みのセンサ110は、絶縁体として機能せず、測定電極間の電流の電流値は閾値を超えてしまう。従って、測定電極間に異常な導通が発生していないにも拘わらず、表示画面101に「エラー」と表示されてしまう。
【0012】
このため、血糖値計に対しては、内部に浸入した液体又は固体によって測定電極の間に異常な導通が発生しているのか、それとも、使用済みのセンサ110が挿入されただけなのかを区別して、エラー表示を行うことが求められている。
【0013】
また、内部に浸入した液体によって測定電極の間に異常な導通が発生している場合は、液体が蒸発すると、導通は解消されるが、液体に含まれていた成分の一部が固化して、測定電極とセンサ電極との間に、接触不良が生じることがある。この場合、接触不良がエラーには至らない程度のものであっても、測定精度の低下が生じてしまう可能性がある。従って、この点からも、測定電極の間に異常な導通が発生しているのか、使用済みのセンサ110が挿入されただけなのかを区別することは、重要である。
【0014】
本発明の目的は、上記問題を解消し、測定電極の間に浸入した液体又は固体による異常な導通の発生のみを確実に検知し得る、分析装置、分析方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明における分析装置は、一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサを用いて試料の分析を行う分析装置であって、前記センサ電極それぞれに接続される測定電極を有し、且つ、前記測定電極の間を流れる電流を検出する、検出部と、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されているかどうかを判定する、判定部と、前記判定部が、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されていると判定した場合に、前記検出部が検出した電流の電流値に基づいて、前記試料中の特定成分の量を測定し、そして、前記判定部が、前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定した場合に、前記検出部が検出した電流の電流値に基づいて、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、演算処理部と、を備えている、ことを特徴とする。
【0016】
以上の特徴により、本発明の分析装置では、センサ電極と測定電極とが接続されていないことを条件に、測定電極間において異常な導通が発生しているかどうかの判定が行われる。従って、使用済みのセンサが挿入された場合に誤ってエラーとなってしまう事態の発生が回避されるため、測定電極の間に浸入した液体又は固体による異常な導通の発生のみが確実に検知される。
【0017】
上記本発明における分析装置においては、前記演算処理部が、前記判定部によって前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定されたタイミングで、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、のが好ましい。この場合は、異常な導通に対する復旧処理を迅速に行うことが可能となる。また、この場合は、前記演算処理部が、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、判定の直後に、当該当該分析装置の外部に向けて警告を行う、のが好ましい。
【0018】
また、上記本発明における分析装置においては、前記演算処理部が、前記判定部によって前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定された後、設定された時刻が到達したタイミングで、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、のも好ましい。この場合は、定期的に判断されるため、分析装置の状態を常に最良に保つことが容易となる。
【0019】
更に、上記本発明における分析装置においては、前記演算処理部が、外部からの指示によらずに、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、のが好ましい。この場合は、利用者における利便性の更なる向上が図られる。
【0020】
また、上記本発明における分析措置においては、前記演算処理部が、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、前記試料中の特定成分の量の測定の度に、当該測定が実行される直前のタイミングで、当該当該分析装置の外部に向けて警告を行う、のも好ましい。この場合は、ユーザに、より確実に異常な導通を通知することができる。
【0021】
また、上記目的を達成するため、本発明における分析方法は、一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサと、前記センサ電極それぞれに接続される測定電極を有する電流検出回路とを用いて、試料の分析を行うための分析方法であって、(a)前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されているかどうかを判定する、ステップと、(b)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されていると判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記試料中の特定成分の量を測定する、ステップと、(c)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、ステップと、を有する、ことを特徴とする。
【0022】
上記本発明における分析方法では、前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定されたタイミングで、前記(c)のステップが実行される、のが好ましい。この場合、(e)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、判定の直後に、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に有している、のが特に好ましい。
【0023】
また、上記本発明における分析方法では、前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定された後、設定された時刻が到達したタイミングで、前記(c)のステップが実行される、のも好ましい。
【0024】
更に、上記本発明における分析方法では、前記(c)のステップにおいて、外部からの指示によらずに、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、のも好ましい。
【0025】
また、上記本発明における分析方法では、(d)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、その後に前記(b)のステップが実行される度に、当該(b)のステップの実行直前のタイミングで、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に有している、のも好ましい。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明におけるプログラムは、一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサと、前記センサ電極それぞれに接続される測定電極を有する電流検出回路とを用いた、試料の分析を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータに、(a)前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されているかどうかを判定する、ステップと、(b)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されていると判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記試料中の特定成分の量を測定する、ステップと、(c)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、ステップと、を実行させる、ことを特徴とする。
【0027】
上記本発明におけるプログラムでは、前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定されたタイミングで、前記(c)のステップが実行される、のが好ましい。この場合、(e)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、判定の直後に、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に前記コンピュータに実行させる、のが特に好ましい。
【0028】
また、上記本発明におけるプログラムでは、前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定された後、設定された時刻が到達したタイミングで、前記(c)のステップが実行される、のも好ましい。
【0029】
更に、上記本発明におけるプログラムでは、前記(c)のステップにおいて、外部からの指示によらずに、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、のも好ましい。
【0030】
また、上記本発明におけるプログラムでは、(d)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、その後に前記(b)のステップが実行される度に、当該(b)のステップの実行直前のタイミングで、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に前記コンピュータに実行させる、のも好ましい。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明における分析装置、分析方法、及びプログラムによれば、測定電極の間に浸入した液体又は固体による異常な導通の発生のみを確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した検出部の具体的構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における分析装置の基本的動作を示すフロー図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態における分析装置にて定期的に行われる異常判定動作を示すフロー図である。
【図5】図5は、従来からの血糖値計及びセンサの外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、分析装置、分析方法、及びプログラムについて、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0034】
[装置構成]
最初に、本実施の形態における分析装置の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態における分析装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示した検出部の具体的構成の一例を示す図である。
【0035】
図1に示す分析装置10は、センサ110を用いて試料の分析を行う装置である。本実施の形態では、分析装置10は、血液の分析を行って、血液中のグルコースの量(又は濃度)を測定する血糖値計である。センサ110は、図5に示したセンサと同様のセンサである。図1においては、センサ110は、回路図で表現されており、試薬層114、センサ電極115及びセンサ電極116のみが図示されている。
【0036】
図1に示すように、分析装置10は、検出部20と、判定部30と、演算処理部40と、記憶部50と、表示部60とを備えている。また、図1には図示していないが、分析装置10は、図5に示した例と同様に、筐体11を備えている。また、筐体は、その内部にセンサ110を挿入するための挿入口12も備えている。更に、検出部20、判定部30、演算処理部40、及び記憶部50は、筐体11の内部に収容される。なお、図1においては、筐体11及び挿入口12は、模式的に表しているが、実際は、図5に示した例と同様に構成されている。
【0037】
検出部20は、センサ電極115及び116それぞれに接続される測定電極21及び22を有している。また、検出部20は、測定電極21と測定電極22との間(以下「測定電極間」とする。)を流れる電流を検出する。本実施の形態では、検出部20としては、図2に示す電流検出回路が用いられている。
【0038】
図2の例では、検出部20は、電流電圧変換回路23と、A/D変換器25とを備えている。電流電圧変換回路23は、オペアンプ24と、オペアンプ24の正の入力端子に接続された電源25とを主に備えている。よって、測定電極間に電流が流れると、電流電圧変換回路23からは、電流の電流値に応じて電圧レベルが変動するアナログ信号が出力される。そして、このアナログ信号は、A/D変換器25によってデジタル信号に変換された後、演算処理部40(図1参照)に入力される。
【0039】
このように図2に示す検出部20は、測定電極間、即ち、電流電圧変換回路23を流れる電流の電流値を検出することができる。従って、測定電極21にセンサ電極115が接続され、測定電極22にセンサ電極116が接続された場合、検出される電流値は、試薬層114における試料と試薬との反応の程度に応じて変化することとなる。よって、A/D変換器25から出力されたデジタル信号を用いることで、血糖値の測定が可能となる。
【0040】
判定部30は、センサ電極と測定電極とが接続されているかどうか(即ち、センサ電極115と測定電極21が接続され、センサ電極116と測定電極22が接続されている状態であるかどうか)を判定する。
【0041】
本実施の形態では、判定部30は、挿入口12内に設置されたリミットスイッチ31のオン・オフによって、センサ電極と測定電極とが接続されているかどうかを判定する。具体的には、リミットスイッチ31は、センサ110が挿入口12内の所定位置に配置され、そして、センサ電極と測定電極とが接続されたときに、オンとなるように設置されている。よって、リミットスイッチ31のオン・オフにより、センサ電極と測定電極とが接続されているか、言い換えると、センサ110が挿入口12内に挿入されているかどうかの判定が可能となる。
【0042】
また、演算処理部40は、判定部30がセンサ電極と測定電極とが接続されていると判定した場合は、検出部20が検出した電流の電流値に基づいて、試料中の特定成分の量を測定する。即ち、演算処理部40は、センサ110が筐体の挿入口(図5参照)に挿入されると、通常の測定を実行する。
【0043】
一方、演算処理部40は、判定部30がセンサ電極と測定電極とが接続されていないと判定した場合は、検出部20が検出した電流の電流値に基づいて、測定電極の間に導通が発生しているかどうかを判定する。即ち、演算部40は、センサ110が筐体11の挿入口12から抜かれると、測定電極間に、血液、消毒液、異物などが浸入していないかどうかを判定する。
【0044】
具体的には、センサ110が存在しない状態では、測定電極間は導通していないため、測定電極間を流れる電流の電流値は0(ゼロ)又は0に近い値となる。しかし、0とならず、電流値が閾値を超えていた場合は、測定電極間に異常な導通が発生していると考えられる。よって、演算処理部40は、判定部30がセンサ電極と測定電極とが接続されていないと判定した場合は、検出部20が検出した電流の電流値が閾値以上であるかどうかを判定する。
【0045】
そして、判定の結果、閾値以上である場合は、測定電極間に、血液、消毒液、異物などが浸入していると考えられるので、演算処理部40は、異常な導通が発生していると判定する。また、検出部20が検出した電流の電流値が閾値未満である場合は、演算処理部40は、測定電極間に異常な導通は生じていないと判定する。なお、以降において「異常な導通」とは、測定電極がセンサ電極に接続されていないにも拘わらず、測定電極間が導通している状態をいう。
【0046】
また、本実施の形態では、演算処理部40は、測定電極間に導通が生じていると判定した場合は、そのことを特定する情報を、履歴として記憶部50に格納させる。更に、上述したように、演算処理部40は、センサ110が存在しないことを条件に、導通が生じていないかどうかを判定しているが、この判定のタイミングとしては、以下のタイミングが挙げられる。
【0047】
1つのタイミングは、判定部30によってセンサ電極と測定電極とが接続されていないと判定されたタイミング、即ち、センサ110が筐体11から抜き取られた直後のタイミングである。具体的には、「抜き取られた直後」とは、抜き取られた時点からユーザが測定結果を確認し終わるまでの間、更には、ユーザが測定結果を確認してから分析装置10をケース等に収容するまでの間をいい、例えば、抜き取られてから1分間程度を意味する。
【0048】
また、別のタイミングは、判定部30によってセンサ電極と測定電極とが接続されていないと判定された後であって、設定された時刻が到達したタイミングである。前者の場合は、ユーザの使用後すぐに異常な導通が生じているかどうかが判定されるため、異常な導通に対する復旧処理を迅速に行うことが可能となる。また、後者の場合は、異常な導通の発生が定期的に判断されるため、分析装置10の状態を常に最良に保つことが容易となる。更に、後者の場合は、判定のタイミングは、一日に一回設定されていれば良い。
【0049】
更に、本実施の形態では、演算処理部40は、判定の結果を、表示部60に出力する。表示部60は、表示装置であり、判定の結果を表示画面に表示する。なお、表示部60の表示画面は、図5の例と同様に、筐体の面上に露出されている。
【0050】
また、演算処理部40は、測定電極の間に導通が生じていると判定した場合は、表示部60の表示画面には、判定の結果として警告を表示させる。具体的には、警告としては、分析装置の内部に異常が生じていることを示す表示、自己復帰不能なダメージが発生している可能性があることを示す表示、分析装置をサービスセンターに持ち込むことを促す表示などが挙げられる。更に、演算処理部40は、分析装置10に設けられたスピーカ(図1及び図2において図示せず)を介して、警告音を出力することもできる。
【0051】
更に、警告を行うタイミングとしては、例えば、演算処理部40が、センサ110が筐体から抜き取られた直後のタイミングで判定を行った場合は、判定の直後のタイミングが挙げられる。このようなタイミングで警告を行えば、ユーザに、確実に異常な導通の発生を伝えることができる。なお、ここでいう「抜き取られた直後」も、上述した意味である。
【0052】
その他の警告を行うタイミングとしては、試料中の特定成分の量の測定、即ち、血糖値測定の実行直前のタイミングが挙げられる。そして、このタイミングでの警告は、測定の度に、毎回行われるのが好ましく、また、演算処理部40による判定のタイミングとは関係無く行われるのが好ましい。このようなタイミングで警告を行えば、ユーザに、より確実に異常な導通の発生を伝えることができる。
【0053】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態における分析装置10の動作について図3及び図4を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態における分析装置の基本的動作を示すフロー図である。図4は、本発明の実施の形態における分析装置にて定期的に行われる異常判定動作を示すフロー図である。
【0054】
なお、以下の説明においては、適宜図1及び図2を参酌する。また、本実施の形態では、分析装置を動作させることによって、本実施の形態における分析方法が実施される。よって、本実施の形態における分析方法の説明は、以下の分析装置10の動作説明に代える。
【0055】
先ず、図3を用いて分析装置10の基本動作について説明する。図3に示すように、最初に、ユーザがセンサ110を分析装置10の筐体11に挿入すると、リミットスイッチ31がオンとなり、分析装置10が起動する(ステップA1)。
【0056】
次に、演算処理部40は、記憶部50にアクセスして、格納されている履歴を調べ、過去に異常な導通が発生しているかどうかを判定する(ステップA2)。ステップA2の判定の結果、異常な導通が発生している場合は、演算処理部40は、表示部60の表示画面に、警告を表示させる(ステップA3)。
【0057】
一方、ステップA2の判定の結果、異常な導通が発生していない場合、及びステップA3の処理が終了した場合は、演算処理部40は、検出部20に、測定電極間を流れる電流の検出を行わせ、検出された電流の電流値に基づいて、試料中の特定成分の量を測定する(ステップA4)。具体的には、演算処理部40は、検出部20が出力するデジタル信号から電流値を特定し、特定した電流値を予め作成された検量線に当てはめ、血糖値を特定する。なお、検量線は、記憶部50に格納されている。
【0058】
次に、判定部30は、センサ110が筐体11から抜き取られたかどうか、具体的にはリミットスイッチ31がオフになっているかどうかを判定する(ステップA5)。ステップA5の判定の結果、センサ110が未だ筐体11から抜き取られていない場合は、判定部30は、待機状態となる。一方、ステップA5の判定の結果、センサ110が筐体11から抜き取られている場合は、判定部30は、そのことを演算処理部40に通知する。
【0059】
次に、演算処理部40は、センサ110が抜き取られていることの通知を判定部30から受け取ると、検出部20に、測定電極間を流れる電流の検出を行わせ、検出された電流の電流値に基づいて、測定電極の間に導通が発生しているかどうかを判定する(ステップA6)。具体的には、演算処理部40は、検出部20が検出した電流の電流値が閾値以上であるかどうかを判定する。このときの導通は、異常な導通である。
【0060】
また、ステップA6は、外部からの指示によらずに自動的に実行される。ここでいう「外部からの指示」とは、ユーザが、センサ110の抜き取りを確認した後に、導通判定の実行のために行う指示を意味する。よって、センサ110を抜き取る行為が、「外部からの指示」に該当しないことは言うまでもない。
【0061】
ステップA6の判定の結果、導通が発生していない場合は、分析装置10における処理は終了する。一方、ステップA6の判定の結果、導通が発生している場合は、演算処理部40は、判定の直後のタイミングで、ステップA3と同様に、表示部60の表示画面に、警告を表示させる(ステップA7)。
【0062】
次に、ステップA7の実行後、演算処理部40は、測定電極間に導通が生じていることを特定する情報を、履歴として記憶部50に格納させる(ステップA8)。ステップA8が実行された場合も、分析装置10における処理は終了する。
【0063】
続いて、図4を用いて、分析装置10にて定期的に行われる異常判定動作について説明する。図4に示すように、最初に、現在の時刻が、設定された時刻、例えば、午前0:00などに到達すると、分析装置10は起動する(ステップB1)。
【0064】
次に、判定部30は、センサ110が筐体から抜き取られているかどうか、具体的にはリミットスイッチ31がオフになっているかどうかを判定する(ステップB2)。ステップB2の判定の結果、センサ110が未だ筐体11から抜き取られていない場合は、分析装置10における処理は終了し、分析装置10は起動を停止する。一方、ステップB2の結果、センサ110が筐体11から抜き取られている場合は、判定部30は、そのことを演算処理部40に通知する。
【0065】
次に、演算処理部40は、センサ110が抜き取られていることの通知を判定部30から受け取ると、検出部20に、測定電極間を流れる電流の検出を行わせ、検出された電流の電流値に基づいて、測定電極の間に導通が発生しているかどうかを判定する(ステップB3)。ステップB3は、図3に示したステップA6と同様のステップである。
【0066】
ステップB3の判定の結果、導通が発生していない場合は、分析装置10における処理は終了し、分析装置10は起動を停止する。一方、ステップB3の判定の結果、導通が発生している場合は、演算処理部40は、測定電極間に導通が生じていることを特定する情報を、履歴として記憶部50に格納させる(ステップB4)。このときの導通は、異常な導通である。また、ステップB4が実行された場合も、分析装置10における処理は終了する。なお、ステップB4は、図3に示したステップA8と同様のステップである。
【0067】
以上のように本実施の形態では、センサ110が筐体11に挿入されていないこと、即ち、センサ電極と測定電極とが接続されていないことを条件にして、測定電極間において導通が発生しているかどうかの判定が行われる。このため、使用済みのセンサが挿入された場合に誤ってエラーとなってしまう事態の発生が回避される。本実施の形態によれば、測定電極の間に浸入した液体又は固体による異常な導通の発生のみが確実に検知される。
【0068】
また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、図3に示すステップA1〜A8、図4に示すB1〜B4を実行させるプログラムであれば良い。この場合のコンピュータとしては、血糖値計などの医療機器に組み込まれたマイクロコンピュータが挙げられる。そして、このプログラムをマイクロコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における分析装置10と分析方法とを実現することができる。
【0069】
この場合、上述のマイクロコンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、判定部30、及び演算処理部40として機能し、処理を行なう。また、上述のマイクロコンピュータには、検出部20として機能する電流検出回路が組み込まれていても良い。更に、上述のマイクロコンピュータに備えられたメモリ等の記憶装置、又はマイクロコンピュータに外付けされる外部メモリ等の外部記憶装置が、記憶部50として機能する。
【0070】
なお、上述した例では、分析装置10は血糖値計であるが、本実施の形態において、分析装置10は、血糖値計に限定されるものではない。分析装置10は、一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサを用いて試料の分析を行う装置であれば良い。その他、分析装置は、乳酸値計、ケトン体測定装置、尿試験紙計、脂質測定装置などであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、分析装置の測定電極の間に浸入した液体又は固体による異常な導通の発生を、分析装置に使用済みのセンサが挿入された場合と区別して確実に検知できる。本発明は、センサを用いて試料の分析を行う分析装置、分析方法に有用である。
【符号の説明】
【0072】
10 分析装置
11 筐体
12 挿入口
20 検出部
21 測定電極
22 測定電極
23 電流電圧変換回路
24 オペアンプ
25 電源
26 A/D変換器
30 判定部
31 リミットスイッチ
40 演算処理部
50 記憶部
60 表示部(表示装置)
100 分析装置(従来)
101 表示画面
102 挿入口
103 操作ボタン
104 筐体
110 センサ
111 基板
112 カバー
113 導入口
114 試薬層
115 センサ電極
116 センサ電極
117 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサを用いて試料の分析を行う分析装置であって、
前記センサ電極それぞれに接続される測定電極を有し、且つ、前記測定電極の間を流れる電流を検出する、検出部と、
前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されているかどうかを判定する、判定部と、
前記判定部が、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されていると判定した場合に、前記検出部が検出した電流の電流値に基づいて、前記試料中の特定成分の量を測定し、そして、前記判定部が、前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定した場合に、前記検出部が検出した電流の電流値に基づいて、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、演算処理部と、
を備えている、ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記演算処理部が、前記判定部によって前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定されたタイミングで、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記演算処理部が、前記判定部によって前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定された後、設定された時刻が到達したタイミングで、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記演算処理部が、外部からの指示によらずに、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、請求項1〜3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
前記演算処理部が、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、判定の直後に、当該当該分析装置の外部に向けて警告を行う、請求項2に記載の分析装置。
【請求項6】
前記演算処理部が、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、前記試料中の特定成分の量の測定の度に、当該測定が実行される直前のタイミングで、当該当該分析装置の外部に向けて警告を行う、請求項1〜5のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサと、前記センサ電極それぞれに接続される測定電極を有する電流検出回路とを用いて、試料の分析を行うための分析方法であって、
(a)前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されているかどうかを判定する、ステップと、
(b)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されていると判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記試料中の特定成分の量を測定する、ステップと、
(c)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、ステップと、
を有する、ことを特徴とする分析方法。
【請求項8】
前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定されたタイミングで、前記(c)のステップが実行される、請求項7に記載の分析方法。
【請求項9】
前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定された後、設定された時刻が到達したタイミングで、前記(c)のステップが実行される、請求項7に記載の分析方法。
【請求項10】
前記(c)のステップにおいて、外部からの指示によらずに、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、請求項7〜9のいずれかに記載の分析方法。
【請求項11】
(d)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、判定の直後に、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に有している、請求項8に記載の分析方法。
【請求項12】
(e)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、その後に前記(b)のステップが実行される度に、当該(b)のステップの実行直前のタイミングで、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に有している、
請求項7〜11のいずれかに記載の分析方法。
【請求項13】
一対のセンサ電極と試薬層とを有するセンサと、前記センサ電極それぞれに接続される測定電極を有する電流検出回路とを用いた、試料の分析を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
(a)前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されているかどうかを判定する、ステップと、
(b)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれに前記測定電極が接続されていると判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記試料中の特定成分の量を測定する、ステップと、
(c)前記(a)のステップで、前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定した場合に、前記電流検出回路が検出した電流値に基づいて、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項14】
前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定されたタイミングで、前記(c)のステップが実行される、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記(a)のステップにおいて前記センサ電極それぞれと前記測定電極とが接続されていないと判定された後、設定された時刻が到達したタイミングで、前記(c)のステップが実行される、請求項13に記載のプログラム。
【請求項16】
前記(c)のステップにおいて、外部からの指示によらずに、前記測定電極の間に導通が生じているかどうかを判定する、請求項13〜15のいずれかに記載のプログラム。
【請求項17】
(d)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、判定の直後に、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に前記コンピュータに実行させる、請求項14に記載のプログラム。
【請求項18】
(e)前記(c)のステップにおいて、前記測定電極の間に導通が生じていると判定した場合に、その後に前記(b)のステップが実行される度に、当該(b)のステップの実行直前のタイミングで、ユーザに対して警告を行う、ステップを、更に前記コンピュータに実行させる、請求項13〜17のいずれかに記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98031(P2012−98031A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243140(P2010−243140)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)