分析装置、及び分析方法
【課題】マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図り得る、分析装置及び分析方法を提供する。
【解決手段】分析装置10は、流路が設けられたマイクロチップ30を用いて電気泳動を行う装置である。分析装置10は、マイクロチップ30を冷却する冷却部(電子冷却素子12及び駆動回路13)と、マイクロチップ30の流路32に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部(電極14a、14b、電源回路15)と、マイクロチップ30を介して、流路32に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部(光源16、受光素子17、分析部18)と、冷却部、電圧印加部、及び光学分析部を制御する制御部20とを備える。制御部20は、冷却部にマイクロチップ30の冷却を開始させ、マイクロチップ30が冷却されてから、電圧印加部及び光学分析部を動作させる。
【解決手段】分析装置10は、流路が設けられたマイクロチップ30を用いて電気泳動を行う装置である。分析装置10は、マイクロチップ30を冷却する冷却部(電子冷却素子12及び駆動回路13)と、マイクロチップ30の流路32に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部(電極14a、14b、電源回路15)と、マイクロチップ30を介して、流路32に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部(光源16、受光素子17、分析部18)と、冷却部、電圧印加部、及び光学分析部を制御する制御部20とを備える。制御部20は、冷却部にマイクロチップ30の冷却を開始させ、マイクロチップ30が冷却されてから、電圧印加部及び光学分析部を動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動を利用した分析装置、及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分析生物学及び生化学の分野においては、電気泳動が利用されている。電気泳動の代表的な例としては、キャピラリ電気泳動が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。キャピラリ電気泳動では、緩衝液を満たしたキャピラリ(微少細管)が用いられ、その内部に試料が注入される。また、キャピラリの両端は緩衝液に浸され、その状態でキャピラリ内部に電圧が印加される。
【0003】
電圧が印加されると、試料はキャピラリ内部を移動しながら、分離する。そして、キャピラリの途中に設けられた窓を介して、キャピラリの内部に紫外線、可視光、または赤外線などが照射される。また、キャピラリを透過した光は、受光素子によって受光され、その後、受光された光に基づいて、吸光光度分析方法による試料の分析が行われる。
【0004】
また、近年においては、キャピラリの代わりに、マイクロチップを利用した電気泳動も提案されている。マイクロチップは、一般に、微細な溝が設けられたガラス基板と、溝を覆うようにしてガラス基板に接合されたカバーとで構成されている。また、マイクロチップにおいて、ガラス基板への溝の形成は、半導体製造技術を応用して行われており、溝の幅、深さ、及び本数の設定は容易である。このため、マイクロチップは、今後、電気泳動において主役となる可能性がある。
【0005】
また、電気泳動においては、分子の泳動速度は温度に影響されるため、電圧印加時において、緩衝液の温度を最適な範囲に管理する必要がある。このため、電気泳動を行うための装置(電気泳動装置)には、多くの場合、電圧の印加による温度上昇を抑制するため、冷却装置が備えられる。冷却装置としては、送風機、ペルチェ素子等が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−99813号公報
【特許文献2】特開2003−166976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、キャピラリ電気泳動の場合は、キャピラリは熱容量が小さいことから、冷却装置を動作させるだけで、簡単に、キャピラリの内部を最適な温度範囲に保つことができる。しかしながら、マイクロチップはキャピラリに比べて熱容量が大きいため、単に、冷却装置を配置して動作させるだけでは、マイクロチップ内部の温度を最適な温度範囲に保つことは困難である。
【0008】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図り得る、分析装置及び分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明における分析装置は、流路が設けられたマイクロチップを用いて電気泳動を行う分析装置であって、前記マイクロチップを冷却する冷却部と、前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部と、前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部と、前記冷却部、前記電圧印加部、及び前記光学分析部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させ、前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、ことを特徴とする。
【0010】
以上の特徴により、本発明では、電気泳動の実行前に、マイクロチップは予め十分に冷却され、その後、電気泳動が実行される。本発明によれば、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図ることが可能となる。
【0011】
上記本発明における分析装置は、前記制御部が、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させてから、設定時間の経過後に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる態様であるのが好ましい。この態様によれば、マイクロチップの冷却を確実に行うことができる。
【0012】
上記本発明における分析装置は、当該分析装置が、前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを更に備え、前記制御部は、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、態様であるのが好ましい。この態様では、マイクロチップの温度に基づいて、冷却が十分であるかどうかが判定できるので、より確実にマイクロチップの冷却を行うことができる。
【0013】
また、上記本発明における分析装置は、前記制御部が、前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却部に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、態様とすることもできる。マイクロチップの流路内の温度が低下し過ぎると、試料の粘性が高くなり、電気泳動が困難となるが、上記態様によれば、このような事態を回避できる。
【0014】
また、上記本発明における分析装置は、前記制御部が、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる直前に、前記冷却部の出力を増加させ、前記電圧印加部及び前記光学分析部の動作の終了後に、前記冷却部の出力を低下させる、態様であるのも好ましい。上記態様によれば、マイクロチップの温度上昇をより強力に抑えることができるので、マイクロチップの発熱量の増加に容易に対応できる。
【0015】
更に、上記本発明における分析装置は、当該分析装置が、前記マイクロチップを載置するための第1のステージ及び第2のステージを更に備え、前記冷却部が、前記第1のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第1の冷却部と、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第2の冷却部と、を備え、前記電圧印加部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、電圧を印加し、前記光学分析部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、前記試料の光学分析を行い、前記制御部は、前記第1のステージに前記マイクロチップが載置されている場合に、前記第1の冷却部による前記マイクロチップの冷却を行い、その後、前記マイクロチップが前記第2のステージに載置されると、前記第2の冷却部によって前記マイクロチップを冷却しながら、前記電圧印加部による電圧の印加と前記光学分析部による光学分析とを実行する、態様とするのも好ましい。上記態様によれば、測定対象となるマイクロチップが複数個ある場合に、次に測定対象となるマイクロチップを予め冷却することができ、測定を効率良く行うことができる。
【0016】
上記本発明における分析装置において、前記冷却部は、送風装置、電子冷却素子、及びヒートパイプのうち、少なくとも1つあれば良い。
【0017】
また、上記本発明における分析装置においては、前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分と、前記本体部分の表面に設けられた放熱部材とを備え、前記放熱部材は、前記本体部分を形成する材料よりも熱伝導性が高い材料によって形成されている、のが好ましい。この場合は、マイクロチップにおける冷却効率の向上が図られる。
【0018】
更に、上記本発明における分析装置においては、前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分を備え、前記本体部分には、更に、前記流路に沿って、冷媒を流すための第2の流路が形成されている、のが好ましい。この場合も、マイクロチップにおける冷却効率の向上が図られる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明における分析方法は、流路が設けられたマイクロチップを冷却する冷却装置と、前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加装置と、前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析装置と、を用いて、電気泳動による前記試料の分析を行うための方法であって、(a)前記冷却装置によって前記マイクロチップを冷却する、ステップと、(b)前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、ステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
上記本発明における分析方法は、前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを用い、前記(b)のステップにおいて、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、態様であるのが好ましい。また、この態様では、(c)前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却装置に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、ステップを更に有するのが良い。
【0021】
また、上記本発明における分析方法は、前記(a)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる直前に、前記冷却装置の出力を増加させ、前記(b)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置の動作の終了後に、前記冷却装置の出力を低下させる、態様であるのも好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明における分析装置及び分析方法によれば、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における分析装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1において用いられるマイクロチップの一例を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における分析装置の動作を示すフロー図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2における分析装置の動作を示すフロー図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。
【図7】図7は、マイクロチップの上面温度、流路温度、ステージ上の温度の時間経過を示す図である。
【図8】図8は、状態1におけるマイクロチップをモデル化した例を示している。
【図9】図9は、状態1にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示している。
【図10】図10は、状態2におけるマイクロチップをモデル化した例を示している。
【図11】図11は、状態2にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示している。
【図12】図12は、状態3及び状態4におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。
【図13】図13は、状態3または状態4にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。
【図14】図14は、状態5におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。
【図15】図15は、状態5にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。
【図16】図16は、変形例1における分析装置の構成を示す図である。
【図17】図17は、変形例2におけるマイクロチップの構成の一例を示す図であり、図17(a)は平面図、図17(b)は底面図、図17(c)は側面図である。
【図18】図18は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は底面図、図18(c)は側面図である。
【図19】図19は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図19(a)はカバー部材の平面図、図19(b)は基板の平面図である。
【図20】図20は、変形例3における分析装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における分析装置及び分析方法について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0025】
[分析装置の構成]
最初に、本発明の実施の形態1における分析装置10の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における分析装置の構成を示す構成図である。図1に示すように、本実施の形態1における分析装置10は、マイクロチップ30を用いて電気泳動を行う分析装置10である。マイクロチップ30は、後述するように流路32を備えており、流路32内には緩衝液が充填され、更に、分析対象となる試料が注入される。
【0026】
また、図1に示すように、分析装置10は、マイクロチップ30を冷却する冷却部と、流路32に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部と、マイクロチップ30を介して、流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部と、制御部20とを備えている。本実施の形態1では、分析装置10は、マイクロチップ30を載置するためのステージ11も備えている。
【0027】
冷却部は、本実施の形態1では、ステージ11とマイクロチップ30との間に配置された電子冷却素子12と、電子冷却素子12を駆動する駆動回路13とを備えた冷却装置である。電子冷却素子12の具体例としては、ペルチェ素子が挙げられる。また、駆動回路13が、制御部20の指示に応じて電子冷却素子12に電流を供給すると、電子冷却素子12による吸熱が起こり、マイクロチップ30は冷却される。
【0028】
なお、本実施の形態1では、冷却部としては、電子冷却素子12の代わりに、送風装置、またはヒートパイプが用いられていても良い。更に、本実施の形態1は、冷却部として、電子冷却素子12、送風装置、ヒートパイプのうち2つ以上が組み合わせられている態様であっても良い。
【0029】
電圧印加部は、本実施の形態1では、流路32の各端部に配置される一対の電極14a及び14bと、これらの間に電圧を印加する電源回路15とを備えた電圧印加装置である。電源回路15が、制御部20の指示に応じて、電極14aと電極14bとの間に電圧を印加すると、流路32内で電気泳動が発生する。また、このとき、流路32内では熱が発生し、マイクロチップ30の温度は上昇する。
【0030】
光学分析部は、本実施の形態では、マイクロチップ30の流路32に向けて光を照射する光源16と、流路32を透過した光を受光し、受光した光の光量に応じて信号を出力する受光素子17と、分析部18とを備えた光学分析装置である。また、受光素子17は、受光面がマイクロチップ30を向くようにしてステージ11上に配置されている。光源16は出射面が、ステージ11上のマイクロチップ30に向くようにして、マイクロチップ30の上方に配置されている。
【0031】
分析部18は、受光素子17が出力した信号に基づき、ターゲット成分の成分量又は成分比を測定し、測定結果を外部に出力する。具体的には、本実施の形態では、分析部18は、演算装置を備えており、例えば、受光素子17が出力した信号に基づいて、吸光光度分析法を実行し、ターゲット成分の成分量を算出する。
【0032】
制御部20は、冷却部、電圧印加部、及び光学分析部を制御する。具体的には、制御部20は、駆動回路13に対する電流供給の指示、電源回路15に対する電圧印加の指示、光源16に対する光の照射の指示を行う。
【0033】
また、制御部20は、冷却部にマイクロチップ30の冷却を開始させ、マイクロチップ30が冷却されてから、電圧印加部および光学分析部を動作させる具体的には、分析装置10の電源がオンとされると、制御部20は、まず、冷却部を構成する駆動回路13に電流供給を行わせる。その後、マイクロチップ30が十分冷却されてから、制御部20は、電源回路15に電圧を印加させ、更に、光源16に光を照射させる。これにより、分析部18は、マイクロチップ30を介して、ターゲット成分の成分量の測定を実行する。
【0034】
また、本実施の形態1では、マイクロチップ30が十分冷却されているかどうかの判断は、例えば、後述する温度センサ19によってマイクロチップの温度を測定することによって行われる。即ち、温度センサ19によって測定された温度が、設定温度(第1の設定温度)以下となった場合に、マイクロチップ30は十分冷却されていると判断される。
【0035】
また、本実施の形態では、分析装置10は、マイクロチップ30の温度を測定するための温度センサ19を更に備えることができる。実際には、温度センサ19は、温度を特定する信号を出力する。この場合、制御部20は、温度センサ19からの信号に基づき、マイクロチップ30の温度が予め設定された下限値(下限温度(第2の設定温度):図4参照)より低いかどうかを判定する。そして、判定の結果、マイクロチップ30の温度が下限温度よりも低いと判定した場合は、制御部20は、冷却部に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる。これは、マイクロチップ30の流路32内の温度が低下し過ぎると、試料の粘性が高くなり、電気泳動が困難となるからである。なお、上述の第1の設定温度は、上述の第2の設定温度よりも高い温度に設定される。
【0036】
ここで、図2を用いて、本実施の形態1において用いられるマイクロチップ30の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態1において用いられるマイクロチップの一例を示す分解斜視図である。
【0037】
図2に示すように、マイクロチップ30は、基板31aと、それを覆うカバー部材31bとを備えている。基板31a及びカバー部材31bは、共に、光透過性の材料、例えば、透明な樹脂材料、ガラスによって形成されている。
【0038】
また、基板31aは、一対の凹部34a及び34bと、これらを繋ぐ溝32aとを備えている。カバー部材31bは、それと重ね合わされた基板31aの凹部34a及び34bそれぞれの開口と整合する位置に、貫通穴33a及び33bを備えている。
【0039】
そして、基板31aとカバー部材31bとを重ね合わせると、溝32aの上面が塞がれ、図1に示す流路32が形成される。また、この場合、凹部34aと貫通穴33aとの整合によって形成された部分と、凹部34bと貫通穴33bとの整合によって形成された部分とが、緩衝液の液溜となり、それぞれに、電極14a又は電極14bが配置される。
【0040】
また、図2の例では、光源16による光の照射が行われる位置と受光素子17による透過光の受光が行われる位置とは、共に、流路32に面する位置であれば特に限定されるものではない。但し、照射効率の点から、カバー部材31bの光源16に面する部分には凹みが設けられているのが好ましい。また、受光効率の点から、基板31aの受光素子17に面する部分にも凹みが設けられているのが好ましい。
【0041】
更に、このような凹みを設ける場合は、使用前において凹みへの塵及び埃の浸入を防ぐため、マイクロチップ30の主面には、予め、フィルムが貼付されているのが好ましい。なお、カバー部材31bに貼付するフィルムは、この凹みに加え、貫通穴33a及び33bも同時に覆うように形成されているのが好ましい。
【0042】
[分析装置の動作]
次に、本発明の実施の形態1における分析装置10の動作について図3及び図4を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1における分析装置の動作を示すフロー図である。図4は、本発明の実施の形態1における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。なお、以下の説明では、適宜図1及び図2を参酌する。また、本実施の形態1では、分析装置10を動作させることにより、分析方法が実施される。このため、本実施の形態1における分析方法の説明は、分析装置10の動作説明に代える。
【0043】
図3に示すように、まず、制御部20は、分析装置10の電源がオンとされると、冷却部にマイクロチップ30への冷却を開始させる(ステップS1)。具体的には、制御部20は、駆動回路13に、電子冷却素子12への電流供給を開始させる。また、このとき、冷却部における設定温度を一定にするため、電子冷却素子12に供給される電流値は一定に設定されている。ステップS1の実行により、図4に示すように、マイクロチップ30の温度は徐々に下降し始める。
【0044】
次に、制御部20は、温度センサ19が測定した温度が設定温度以下になっているかどうかを判定する(ステップS2)。ステップS2の判定の結果、設定温度以下でない場合は、制御部20は、待機状態となる。一方、ステップS2の判定の結果、設定温度以下である場合は、制御部20は、ステップS3を実行する。
【0045】
ステップS3では、操作者によってマイクロチップ30の流路32に試料が注入されると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを開始させる(ステップS3)。具体的には、制御部20は、電源回路15によって電極14aと電極14bとの間に電圧を印加させ、更に、光源16に光を照射させる。これにより、マイクロチップ30の温度は上昇するが、冷却部による冷却は継続されているため、上限温度を超えることはない。
【0046】
また、ステップS3が実行されると、受光素子17が、受光した光の光量に応じた信号を出力するので、分析部18は、出力された信号に基づいて、ターゲット成分の成分量を測定する。分析部18は、測定が終了した場合は、そのことを制御部20に通知する。通知を受けると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを停止する。
【0047】
次に、制御部20は、測定が全て終了しているかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、ステップS4では、制御部20は、操作者から全ての測定終了を指示する入力が行われているかどうかを判定する。ステップS4の判定の結果、測定が全て終了していない場合は、操作者は、新たな試料をマイクロチップ30内に注入するので、制御部20は、ステップS3を再度実行する。一方、ステップS4の判定の結果、測定が全て終了している場合は、制御部20は、処理を終了する。
【0048】
以上のように本実施の形態1では、電気泳動の実行前に、マイクロチップ30が予め十分に冷却され、その後、電気泳動が実行される。このため、本実施の形態1によれば、マイクロチップ30を用いた電気泳動において、マイクロチップ30の温度の最適化を図ることが可能となる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における分析装置及び分析方法について説明する。本実施の形態2における分析装置は、図1に示した実施の形態1における分析装置10と同様に構成されているが、制御部による処理の点で、実施の形態1における分析装置と異なっている。なお、本実施の形態2においても、図1及び図2に示したマイクロチップ30が用いられる。
【0050】
以下、実施の形態1との相違点を中心に図5及び図6を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態2における分析装置の動作を示すフロー図である。図6は、本発明の実施の形態2における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。なお、以下の説明では、適宜、図1及び図2も参照する。
【0051】
図5に示すように、まず、制御部20は、分析装置10の電源がオンとされると、冷却部にマイクロチップ30への冷却を開始させる(ステップS11)。ステップS11は、図3に示したステップS1と同様のステップである。この場合、設定温度とマイクロチップの温度との関係は、図6に示すように、実施の形態1で説明した図4の場合と同様となる。
【0052】
次に、制御部20は、温度センサ19が測定した温度が設定温度以下になっているかどうかを判定する(ステップS12)。ステップS12の判定の結果、設定温度以下でない場合は、制御部20は、待機状態となる。一方、ステップS12の判定の結果、設定温度以下である場合は、制御部20は、ステップS13を実行する。
【0053】
ステップS13では、制御部20は、冷却部による出力を増加させ、冷却を強力にする。本実施の形態2では、制御部20は、駆動回路13から、電子冷却素子12に供給する電流値をアップさせる。
【0054】
次に、操作者によってマイクロチップ30の流路32に試料が注入されると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを開始させる(ステップS14)。ステップS14は、図3に示したステップS3と同様のステップである。
【0055】
また、ステップS14が実行されると、受光素子17が、受光した光の光量に応じた信号を出力するので、分析部18は、出力された信号に基づいて、ターゲット成分の成分量を測定する。また、本実施の形態2においても、分析部18は、測定が終了した場合は、そのことを制御部20に通知する。
【0056】
次に、分析部18からの通知を受けると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを停止すると同時に、冷却部に出力を低下させる(ステップS15)。ステップS15により、マイクロチップ30の温度が下限温度より低くなってしまう事態の発生が抑制される。
【0057】
次に、制御部20は、測定が全て終了しているかどうかを判定する(ステップS16)。ステップS16は、図3に示したステップS4と同様のステップである。ステップS16においても、制御部20は、操作者から全ての測定終了を指示する入力が行われているかどうかを判定する。ステップS16の判定の結果、測定が全て終了していない場合は、操作者は、新たな試料をマイクロチップ30内に注入するので、制御部20は、ステップS13を再度実行する。一方、ステップS16の判定の結果、測定が全て終了している場合は、制御部20は、処理を終了する。
【0058】
このように、本実施の形態2では、制御部20は、電圧印加部及び光学分析部を動作させる直前(ステップS14の直前)に、冷却部の出力を増加させ、そして、電圧印加部及び光学分析部の動作の終了後に、冷却部の出力を低下させる。このため、本実施の形態2によれば、図6に示すように、実施の形態1に比べて、マイクロチップ30の温度上昇をより強力に抑えることができる。近年、マイクロチップ30の小型化の要請によって流路32の長さが短くなり、発熱量が増える傾向にあるが、本実施の形態2は、このような場合に特に有効である。
【0059】
[温度分析]
ここで、実施の形態2に示した分析装置及び分析方法を用いた場合のマイクロチップの温度分析について図7〜図15を用いて説明する。図7は、マイクロチップの上面温度、流路温度、ステージ上の温度の時間経過を示す図である。
【0060】
図7に示すグラフでは、横軸は時間tを示し、縦軸は温度Tを示している。また、図7において、開始(t=0)からt1までを状態1(予備冷却)、t1〜t2までを状態2(保冷)、t2〜t3までを状態3(測定直前)、t3〜t4までを状態4(測定開始)、t4以降を状態5(測定中)と定義する。そして、状態4及び状態5においては、マイクロチップ30の流路32(図1及び図2参照)内で電気泳動が発生している。
【0061】
図7においてステージ上の温度の変化グラフが示すように、開始(t=0)からt2までは、冷却部の出力は一定であり、t3の時点で、冷却部の出力が高められ、その後、徐々に出力は低下される。そして、冷却部の出力の調整は、マイクロチップ上面の温度、および流路温度に基づいて行う必要がある。以下に、状態毎に、各温度の分析手法について説明する。
【0062】
[温度分析:状態1]
状態1について図8及び図9を用いて説明する。図8は、状態1におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図8において、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0063】
図9は、状態1にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図9では、初期条件及び境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図9において、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示し、「α」はマイクロチップ表面から大気中への熱伝達率(材料と大気の状態に依存)を示している。
【0064】
また、図9の各式では、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、それによってX軸方向の温度分布はないものと考えられること(図8中のy軸方向のみを考慮)、が前提条件となる。なお、状態1は非定常状態にある。
【0065】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図9に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態1における温度をシミュレーションできる。結果、状態1において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0066】
[温度分析:状態2]
状態2について図10及び図11を用いて説明する。図10は、状態2におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図10においても、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0067】
図11は、状態2にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図11では、境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図11においても、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示し、「α」はマイクロチップ表面から大気中への熱伝達率(材料と大気の状態に依存)を示している。
【0068】
また、図11の各式でも、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、それによってx軸方向の温度分布はないものと考えられること(図10中のy軸方向のみを考慮)、が前提条件となる。なお、状態2は定常状態にある。
【0069】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図11に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態2における温度をシミュレーションできる。結果、状態2において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0070】
[温度分析:状態3−4]
状態3及び4について図12及び図13を用いて説明する。図12は、状態3及び状態4におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図12においても、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0071】
図13は、状態3または状態4にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図13では、初期条件及び境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図13においても、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示し、「α」はマイクロチップ表面から大気中への熱伝達率(材料と大気の状態に依存)を示している。
【0072】
また、図13の各式では、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、が前提条件となる。また、この状態では流路からの発熱が生じるため、X軸方向にも温度分布が生じる。そのため、状態3から状態4は2次元の非定常状態にあると考えられる。
【0073】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図13に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態3から状態4における温度をシミュレーションできる。結果、状態3から状態4において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0074】
[温度分析:状態5]
状態5について図14及び図15を用いて説明する。図14は、状態5におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図14においても、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0075】
図15は、状態5にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図15では、境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図15においても、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示している。
【0076】
また、図15の各式では、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、が前提条件となる。また、この状態では流路からの発熱が生じるため、X軸方向にも温度分布が生じる。そのため、状態5は2次元の非定常状態にあると考えられる。
【0077】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図15に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態5における温度をシミュレーションできる。結果、状態5において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0078】
なお、マイクロチップとして、図2に示したマイクロチップ30以外が用いられる場合は、マイクロチップの形状、材質、大きさなどを考慮して、上述した状態方程式(図9、図11、図13、図15)に変更を加える必要がある。
【0079】
また、上述した実施の形態1〜実施の形態2は、上述した例に限定されるものではなく、以下の変形例1〜変形例3を含む態様であっても良い。以下に説明する。
【0080】
[変形例1]
図16を用いて、実施の形態1〜実施の形態2における変形例1について説明する。図16は、変形例1における分析装置の構成を示す図である。図16に示すように、変形例1では、分析装置40は、図1に示した分析装置10の構成に加え、更に、ステージ41と、電子冷却素子42とを備えている。なお、図16では、図1に示されていた駆動回路13、電源回路15、分析部18、制御部20についての図示は省略している。
【0081】
この構成において、制御部20は、ステージ41にマイクロチップ30が載置されている場合は、駆動回路13(図1参照)に対して電子冷却素子42への電流供給を行わせ、ステージ41上でマイクロチップ30を冷却させる。
【0082】
そして、マイクロチップ30が、ステージ41からステージ11へと移動され、ステージ11上に載置されると、制御部20は、マイクロチップ30を冷却しながら、電圧の印加と光学分析とを実行する。つまり、制御部20は、駆動回路13(図1参照)に対する電子冷却素子12への電流供給、電源回路15に対する電極14aと電極14bとの間への電圧印加、光源16に対する光の照射を指示する。
【0083】
このように、変形例1では、マイクロチップ30に対して、測定開始前の冷却はステージ41上で行われ、測定、及び測定時における冷却はステージ11上で行われる。変形例1によれば、測定対象となるマイクロチップ30が複数個ある場合に、次に測定対象となるマイクロチップを予め冷却することができ、測定を効率良く行うことができる。
【0084】
[変形例2]
図17〜図19を用いて、実施の形態1〜実施の形態2における変形例2について説明する。図17は、変形例2におけるマイクロチップの構成の一例を示す図であり、図17(a)は平面図、図17(b)は底面図、図17(c)は側面図である。図18は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は底面図、図18(c)は側面図である。図19は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図19(a)はカバー部材の平面図、図19(b)は基板の平面図である。
【0085】
変形例2においては、マイクロチップとして、図2に示したマイクロチップ30よりも放熱性に優れたマイクロチップが用いられる。図17(a)〜(c)に示す例では、マイクロチップ35は、図2に示したマイクロチップ30と同様に、基板31aと、それを覆うカバー部材31bとを備えているが、更に、放熱部材36も備えている。放熱部材36は、マイクロチップの本体部分(基板31a及びカバー部材31b)を形成する材料よりも熱伝導性が高い材料、例えば金属材料によって形成されている。
【0086】
また、図17(a)及び(b)に示すように、放熱部材36は、光源16(図1参照)から流路32への光の照射と、受光素子17(図1参照)による透過光の受光とが、妨げられないように形成されている。具体的には、放熱部材36は、主面上において流路32を遮蔽しないように形成さえている。また、放熱部材36は、電極14a及び電極14b(図1参照)との接触を回避するため、カバー部材31bに設けられた貫通穴33a及び貫通穴33bの近傍を避けるようにも形成されている。
【0087】
図18(a)〜(c)に示す例でも、マイクロチップ37は、図17(a)〜(c)に示した例と同様に、基板31aと、それを覆うカバー部材31bとに加えて、放熱部材38を備えている。但し、図18(a)〜(c)の例では、放熱部材38は、図18(b)及び図18(c)に示すように、底面側に複数のフィン39を備えており、その放熱能力が更に高められている。図18(a)〜(c)に示すマイクロチップ37は、冷却部として、電子冷却素子12の代わりに、送風装置を用いる場合に有用である。
【0088】
また、図19(a)及び(b)に示す例では、マイクロチップ50は、基板51aと、それを覆うカバー部材51bとを備えている。このうち、カバー部材51bは、図2に示したカバー部材31bと同様のものであり、貫通穴53a及び貫通穴53bを備えている。
【0089】
一方、基板51aは、図2に示した基板31aと同様に、流路を形成する溝52と、液溜めとなる凹部54a及び凹部54bとを備えているが、これらに加えて、更に、外周溝55も備えている。外周溝55は、溝52、凹部54a及び凹部54bに沿って、これらを囲むように形成されている。そして、基板51aとカバー部材51bとを重ね合わせると、外周溝55の上面が塞がれ、外周溝55によっても、溝52と同様に流路が形成される。
【0090】
このように、図19(a)及び(b)に示す例では、緩衝液が充填される流路の周辺を囲むように、外周溝55による別の流路が設けられている。よって、この流路に冷却液などの冷媒を流すことにより、マイクロチップ50の冷却が図られる。また、図19(a)及び(b)に示すマイクロチップ50が用いられる場合は、冷却部としては、電子冷却素子12の代わりに、冷媒を供給するポンプが用いられる。
【0091】
[変形例3]
図20を用いて、実施の形態1〜実施の形態2における変形例3について説明する。図20は、変形例3における分析装置の構成を示す図である。
【0092】
図20に示す変形例3においては、図1に示した分析装置10は、空気循環システムが備えられた部屋60に配置されている。空気循環システムは、空気の取り入れ側に、防塵フィルター61、除電ブロアー62、及び加湿フィルター63を備え、空気の排出側に、排気用ファン64を備えている。なお、図20において、65及び66はダクトである。
【0093】
この構成によれば、空気は、防塵フィルター61、除電ブロアー62、及び加湿フィルター63を介して、マイクロチップ30へと到達する。従って、変形例3においては、マイクロチップ30の内部への塵及び埃の混入が大きく軽減される。結果、更なる測定精度の向上が図られることになる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明によれば、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図ることができる。本発明は、マイクロチップを採用する電気泳動装置に有用である。
【符号の説明】
【0095】
10 分析装置
11 ステージ
12 電子冷却素子
13 駆動回路
14a、14b 電極
15 電源回路
16 光源
17 受光素子
18 分析部
19 温度センサ
20 制御部
30 マイクロチップ
31a 基板
31b カバー部材
32 流路
32a 溝
33a、33b 貫通孔
34a、34b 凹部
35 マイクロチップ
36 放熱部材
37 マイクロチップ
38 放熱部材
39 フィン
40 分析装置
41 ステージ
42 電子冷却素子
50 マイクロチップ
51a 基盤
51b カバー部材
52 溝
53a、53b 貫通穴
54a、54b 凹部
55 外周溝
61 防塵フィルター
62 除電ブロアー
63 加湿フィルター
64 排気用ファン64
65、66 ダクト
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動を利用した分析装置、及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分析生物学及び生化学の分野においては、電気泳動が利用されている。電気泳動の代表的な例としては、キャピラリ電気泳動が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。キャピラリ電気泳動では、緩衝液を満たしたキャピラリ(微少細管)が用いられ、その内部に試料が注入される。また、キャピラリの両端は緩衝液に浸され、その状態でキャピラリ内部に電圧が印加される。
【0003】
電圧が印加されると、試料はキャピラリ内部を移動しながら、分離する。そして、キャピラリの途中に設けられた窓を介して、キャピラリの内部に紫外線、可視光、または赤外線などが照射される。また、キャピラリを透過した光は、受光素子によって受光され、その後、受光された光に基づいて、吸光光度分析方法による試料の分析が行われる。
【0004】
また、近年においては、キャピラリの代わりに、マイクロチップを利用した電気泳動も提案されている。マイクロチップは、一般に、微細な溝が設けられたガラス基板と、溝を覆うようにしてガラス基板に接合されたカバーとで構成されている。また、マイクロチップにおいて、ガラス基板への溝の形成は、半導体製造技術を応用して行われており、溝の幅、深さ、及び本数の設定は容易である。このため、マイクロチップは、今後、電気泳動において主役となる可能性がある。
【0005】
また、電気泳動においては、分子の泳動速度は温度に影響されるため、電圧印加時において、緩衝液の温度を最適な範囲に管理する必要がある。このため、電気泳動を行うための装置(電気泳動装置)には、多くの場合、電圧の印加による温度上昇を抑制するため、冷却装置が備えられる。冷却装置としては、送風機、ペルチェ素子等が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−99813号公報
【特許文献2】特開2003−166976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、キャピラリ電気泳動の場合は、キャピラリは熱容量が小さいことから、冷却装置を動作させるだけで、簡単に、キャピラリの内部を最適な温度範囲に保つことができる。しかしながら、マイクロチップはキャピラリに比べて熱容量が大きいため、単に、冷却装置を配置して動作させるだけでは、マイクロチップ内部の温度を最適な温度範囲に保つことは困難である。
【0008】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図り得る、分析装置及び分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明における分析装置は、流路が設けられたマイクロチップを用いて電気泳動を行う分析装置であって、前記マイクロチップを冷却する冷却部と、前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部と、前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部と、前記冷却部、前記電圧印加部、及び前記光学分析部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させ、前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、ことを特徴とする。
【0010】
以上の特徴により、本発明では、電気泳動の実行前に、マイクロチップは予め十分に冷却され、その後、電気泳動が実行される。本発明によれば、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図ることが可能となる。
【0011】
上記本発明における分析装置は、前記制御部が、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させてから、設定時間の経過後に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる態様であるのが好ましい。この態様によれば、マイクロチップの冷却を確実に行うことができる。
【0012】
上記本発明における分析装置は、当該分析装置が、前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを更に備え、前記制御部は、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、態様であるのが好ましい。この態様では、マイクロチップの温度に基づいて、冷却が十分であるかどうかが判定できるので、より確実にマイクロチップの冷却を行うことができる。
【0013】
また、上記本発明における分析装置は、前記制御部が、前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却部に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、態様とすることもできる。マイクロチップの流路内の温度が低下し過ぎると、試料の粘性が高くなり、電気泳動が困難となるが、上記態様によれば、このような事態を回避できる。
【0014】
また、上記本発明における分析装置は、前記制御部が、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる直前に、前記冷却部の出力を増加させ、前記電圧印加部及び前記光学分析部の動作の終了後に、前記冷却部の出力を低下させる、態様であるのも好ましい。上記態様によれば、マイクロチップの温度上昇をより強力に抑えることができるので、マイクロチップの発熱量の増加に容易に対応できる。
【0015】
更に、上記本発明における分析装置は、当該分析装置が、前記マイクロチップを載置するための第1のステージ及び第2のステージを更に備え、前記冷却部が、前記第1のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第1の冷却部と、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第2の冷却部と、を備え、前記電圧印加部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、電圧を印加し、前記光学分析部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、前記試料の光学分析を行い、前記制御部は、前記第1のステージに前記マイクロチップが載置されている場合に、前記第1の冷却部による前記マイクロチップの冷却を行い、その後、前記マイクロチップが前記第2のステージに載置されると、前記第2の冷却部によって前記マイクロチップを冷却しながら、前記電圧印加部による電圧の印加と前記光学分析部による光学分析とを実行する、態様とするのも好ましい。上記態様によれば、測定対象となるマイクロチップが複数個ある場合に、次に測定対象となるマイクロチップを予め冷却することができ、測定を効率良く行うことができる。
【0016】
上記本発明における分析装置において、前記冷却部は、送風装置、電子冷却素子、及びヒートパイプのうち、少なくとも1つあれば良い。
【0017】
また、上記本発明における分析装置においては、前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分と、前記本体部分の表面に設けられた放熱部材とを備え、前記放熱部材は、前記本体部分を形成する材料よりも熱伝導性が高い材料によって形成されている、のが好ましい。この場合は、マイクロチップにおける冷却効率の向上が図られる。
【0018】
更に、上記本発明における分析装置においては、前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分を備え、前記本体部分には、更に、前記流路に沿って、冷媒を流すための第2の流路が形成されている、のが好ましい。この場合も、マイクロチップにおける冷却効率の向上が図られる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明における分析方法は、流路が設けられたマイクロチップを冷却する冷却装置と、前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加装置と、前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析装置と、を用いて、電気泳動による前記試料の分析を行うための方法であって、(a)前記冷却装置によって前記マイクロチップを冷却する、ステップと、(b)前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、ステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
上記本発明における分析方法は、前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを用い、前記(b)のステップにおいて、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、態様であるのが好ましい。また、この態様では、(c)前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却装置に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、ステップを更に有するのが良い。
【0021】
また、上記本発明における分析方法は、前記(a)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる直前に、前記冷却装置の出力を増加させ、前記(b)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置の動作の終了後に、前記冷却装置の出力を低下させる、態様であるのも好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明における分析装置及び分析方法によれば、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における分析装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1において用いられるマイクロチップの一例を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における分析装置の動作を示すフロー図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2における分析装置の動作を示すフロー図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。
【図7】図7は、マイクロチップの上面温度、流路温度、ステージ上の温度の時間経過を示す図である。
【図8】図8は、状態1におけるマイクロチップをモデル化した例を示している。
【図9】図9は、状態1にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示している。
【図10】図10は、状態2におけるマイクロチップをモデル化した例を示している。
【図11】図11は、状態2にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示している。
【図12】図12は、状態3及び状態4におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。
【図13】図13は、状態3または状態4にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。
【図14】図14は、状態5におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。
【図15】図15は、状態5にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。
【図16】図16は、変形例1における分析装置の構成を示す図である。
【図17】図17は、変形例2におけるマイクロチップの構成の一例を示す図であり、図17(a)は平面図、図17(b)は底面図、図17(c)は側面図である。
【図18】図18は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は底面図、図18(c)は側面図である。
【図19】図19は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図19(a)はカバー部材の平面図、図19(b)は基板の平面図である。
【図20】図20は、変形例3における分析装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における分析装置及び分析方法について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0025】
[分析装置の構成]
最初に、本発明の実施の形態1における分析装置10の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における分析装置の構成を示す構成図である。図1に示すように、本実施の形態1における分析装置10は、マイクロチップ30を用いて電気泳動を行う分析装置10である。マイクロチップ30は、後述するように流路32を備えており、流路32内には緩衝液が充填され、更に、分析対象となる試料が注入される。
【0026】
また、図1に示すように、分析装置10は、マイクロチップ30を冷却する冷却部と、流路32に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部と、マイクロチップ30を介して、流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部と、制御部20とを備えている。本実施の形態1では、分析装置10は、マイクロチップ30を載置するためのステージ11も備えている。
【0027】
冷却部は、本実施の形態1では、ステージ11とマイクロチップ30との間に配置された電子冷却素子12と、電子冷却素子12を駆動する駆動回路13とを備えた冷却装置である。電子冷却素子12の具体例としては、ペルチェ素子が挙げられる。また、駆動回路13が、制御部20の指示に応じて電子冷却素子12に電流を供給すると、電子冷却素子12による吸熱が起こり、マイクロチップ30は冷却される。
【0028】
なお、本実施の形態1では、冷却部としては、電子冷却素子12の代わりに、送風装置、またはヒートパイプが用いられていても良い。更に、本実施の形態1は、冷却部として、電子冷却素子12、送風装置、ヒートパイプのうち2つ以上が組み合わせられている態様であっても良い。
【0029】
電圧印加部は、本実施の形態1では、流路32の各端部に配置される一対の電極14a及び14bと、これらの間に電圧を印加する電源回路15とを備えた電圧印加装置である。電源回路15が、制御部20の指示に応じて、電極14aと電極14bとの間に電圧を印加すると、流路32内で電気泳動が発生する。また、このとき、流路32内では熱が発生し、マイクロチップ30の温度は上昇する。
【0030】
光学分析部は、本実施の形態では、マイクロチップ30の流路32に向けて光を照射する光源16と、流路32を透過した光を受光し、受光した光の光量に応じて信号を出力する受光素子17と、分析部18とを備えた光学分析装置である。また、受光素子17は、受光面がマイクロチップ30を向くようにしてステージ11上に配置されている。光源16は出射面が、ステージ11上のマイクロチップ30に向くようにして、マイクロチップ30の上方に配置されている。
【0031】
分析部18は、受光素子17が出力した信号に基づき、ターゲット成分の成分量又は成分比を測定し、測定結果を外部に出力する。具体的には、本実施の形態では、分析部18は、演算装置を備えており、例えば、受光素子17が出力した信号に基づいて、吸光光度分析法を実行し、ターゲット成分の成分量を算出する。
【0032】
制御部20は、冷却部、電圧印加部、及び光学分析部を制御する。具体的には、制御部20は、駆動回路13に対する電流供給の指示、電源回路15に対する電圧印加の指示、光源16に対する光の照射の指示を行う。
【0033】
また、制御部20は、冷却部にマイクロチップ30の冷却を開始させ、マイクロチップ30が冷却されてから、電圧印加部および光学分析部を動作させる具体的には、分析装置10の電源がオンとされると、制御部20は、まず、冷却部を構成する駆動回路13に電流供給を行わせる。その後、マイクロチップ30が十分冷却されてから、制御部20は、電源回路15に電圧を印加させ、更に、光源16に光を照射させる。これにより、分析部18は、マイクロチップ30を介して、ターゲット成分の成分量の測定を実行する。
【0034】
また、本実施の形態1では、マイクロチップ30が十分冷却されているかどうかの判断は、例えば、後述する温度センサ19によってマイクロチップの温度を測定することによって行われる。即ち、温度センサ19によって測定された温度が、設定温度(第1の設定温度)以下となった場合に、マイクロチップ30は十分冷却されていると判断される。
【0035】
また、本実施の形態では、分析装置10は、マイクロチップ30の温度を測定するための温度センサ19を更に備えることができる。実際には、温度センサ19は、温度を特定する信号を出力する。この場合、制御部20は、温度センサ19からの信号に基づき、マイクロチップ30の温度が予め設定された下限値(下限温度(第2の設定温度):図4参照)より低いかどうかを判定する。そして、判定の結果、マイクロチップ30の温度が下限温度よりも低いと判定した場合は、制御部20は、冷却部に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる。これは、マイクロチップ30の流路32内の温度が低下し過ぎると、試料の粘性が高くなり、電気泳動が困難となるからである。なお、上述の第1の設定温度は、上述の第2の設定温度よりも高い温度に設定される。
【0036】
ここで、図2を用いて、本実施の形態1において用いられるマイクロチップ30の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態1において用いられるマイクロチップの一例を示す分解斜視図である。
【0037】
図2に示すように、マイクロチップ30は、基板31aと、それを覆うカバー部材31bとを備えている。基板31a及びカバー部材31bは、共に、光透過性の材料、例えば、透明な樹脂材料、ガラスによって形成されている。
【0038】
また、基板31aは、一対の凹部34a及び34bと、これらを繋ぐ溝32aとを備えている。カバー部材31bは、それと重ね合わされた基板31aの凹部34a及び34bそれぞれの開口と整合する位置に、貫通穴33a及び33bを備えている。
【0039】
そして、基板31aとカバー部材31bとを重ね合わせると、溝32aの上面が塞がれ、図1に示す流路32が形成される。また、この場合、凹部34aと貫通穴33aとの整合によって形成された部分と、凹部34bと貫通穴33bとの整合によって形成された部分とが、緩衝液の液溜となり、それぞれに、電極14a又は電極14bが配置される。
【0040】
また、図2の例では、光源16による光の照射が行われる位置と受光素子17による透過光の受光が行われる位置とは、共に、流路32に面する位置であれば特に限定されるものではない。但し、照射効率の点から、カバー部材31bの光源16に面する部分には凹みが設けられているのが好ましい。また、受光効率の点から、基板31aの受光素子17に面する部分にも凹みが設けられているのが好ましい。
【0041】
更に、このような凹みを設ける場合は、使用前において凹みへの塵及び埃の浸入を防ぐため、マイクロチップ30の主面には、予め、フィルムが貼付されているのが好ましい。なお、カバー部材31bに貼付するフィルムは、この凹みに加え、貫通穴33a及び33bも同時に覆うように形成されているのが好ましい。
【0042】
[分析装置の動作]
次に、本発明の実施の形態1における分析装置10の動作について図3及び図4を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1における分析装置の動作を示すフロー図である。図4は、本発明の実施の形態1における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。なお、以下の説明では、適宜図1及び図2を参酌する。また、本実施の形態1では、分析装置10を動作させることにより、分析方法が実施される。このため、本実施の形態1における分析方法の説明は、分析装置10の動作説明に代える。
【0043】
図3に示すように、まず、制御部20は、分析装置10の電源がオンとされると、冷却部にマイクロチップ30への冷却を開始させる(ステップS1)。具体的には、制御部20は、駆動回路13に、電子冷却素子12への電流供給を開始させる。また、このとき、冷却部における設定温度を一定にするため、電子冷却素子12に供給される電流値は一定に設定されている。ステップS1の実行により、図4に示すように、マイクロチップ30の温度は徐々に下降し始める。
【0044】
次に、制御部20は、温度センサ19が測定した温度が設定温度以下になっているかどうかを判定する(ステップS2)。ステップS2の判定の結果、設定温度以下でない場合は、制御部20は、待機状態となる。一方、ステップS2の判定の結果、設定温度以下である場合は、制御部20は、ステップS3を実行する。
【0045】
ステップS3では、操作者によってマイクロチップ30の流路32に試料が注入されると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを開始させる(ステップS3)。具体的には、制御部20は、電源回路15によって電極14aと電極14bとの間に電圧を印加させ、更に、光源16に光を照射させる。これにより、マイクロチップ30の温度は上昇するが、冷却部による冷却は継続されているため、上限温度を超えることはない。
【0046】
また、ステップS3が実行されると、受光素子17が、受光した光の光量に応じた信号を出力するので、分析部18は、出力された信号に基づいて、ターゲット成分の成分量を測定する。分析部18は、測定が終了した場合は、そのことを制御部20に通知する。通知を受けると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを停止する。
【0047】
次に、制御部20は、測定が全て終了しているかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、ステップS4では、制御部20は、操作者から全ての測定終了を指示する入力が行われているかどうかを判定する。ステップS4の判定の結果、測定が全て終了していない場合は、操作者は、新たな試料をマイクロチップ30内に注入するので、制御部20は、ステップS3を再度実行する。一方、ステップS4の判定の結果、測定が全て終了している場合は、制御部20は、処理を終了する。
【0048】
以上のように本実施の形態1では、電気泳動の実行前に、マイクロチップ30が予め十分に冷却され、その後、電気泳動が実行される。このため、本実施の形態1によれば、マイクロチップ30を用いた電気泳動において、マイクロチップ30の温度の最適化を図ることが可能となる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における分析装置及び分析方法について説明する。本実施の形態2における分析装置は、図1に示した実施の形態1における分析装置10と同様に構成されているが、制御部による処理の点で、実施の形態1における分析装置と異なっている。なお、本実施の形態2においても、図1及び図2に示したマイクロチップ30が用いられる。
【0050】
以下、実施の形態1との相違点を中心に図5及び図6を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態2における分析装置の動作を示すフロー図である。図6は、本発明の実施の形態2における分析装置を動作させた場合のマイクロチップの温度変化を示す図である。なお、以下の説明では、適宜、図1及び図2も参照する。
【0051】
図5に示すように、まず、制御部20は、分析装置10の電源がオンとされると、冷却部にマイクロチップ30への冷却を開始させる(ステップS11)。ステップS11は、図3に示したステップS1と同様のステップである。この場合、設定温度とマイクロチップの温度との関係は、図6に示すように、実施の形態1で説明した図4の場合と同様となる。
【0052】
次に、制御部20は、温度センサ19が測定した温度が設定温度以下になっているかどうかを判定する(ステップS12)。ステップS12の判定の結果、設定温度以下でない場合は、制御部20は、待機状態となる。一方、ステップS12の判定の結果、設定温度以下である場合は、制御部20は、ステップS13を実行する。
【0053】
ステップS13では、制御部20は、冷却部による出力を増加させ、冷却を強力にする。本実施の形態2では、制御部20は、駆動回路13から、電子冷却素子12に供給する電流値をアップさせる。
【0054】
次に、操作者によってマイクロチップ30の流路32に試料が注入されると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを開始させる(ステップS14)。ステップS14は、図3に示したステップS3と同様のステップである。
【0055】
また、ステップS14が実行されると、受光素子17が、受光した光の光量に応じた信号を出力するので、分析部18は、出力された信号に基づいて、ターゲット成分の成分量を測定する。また、本実施の形態2においても、分析部18は、測定が終了した場合は、そのことを制御部20に通知する。
【0056】
次に、分析部18からの通知を受けると、制御部20は、電圧印加部による電圧の印加と光学分析部による光学分析とを停止すると同時に、冷却部に出力を低下させる(ステップS15)。ステップS15により、マイクロチップ30の温度が下限温度より低くなってしまう事態の発生が抑制される。
【0057】
次に、制御部20は、測定が全て終了しているかどうかを判定する(ステップS16)。ステップS16は、図3に示したステップS4と同様のステップである。ステップS16においても、制御部20は、操作者から全ての測定終了を指示する入力が行われているかどうかを判定する。ステップS16の判定の結果、測定が全て終了していない場合は、操作者は、新たな試料をマイクロチップ30内に注入するので、制御部20は、ステップS13を再度実行する。一方、ステップS16の判定の結果、測定が全て終了している場合は、制御部20は、処理を終了する。
【0058】
このように、本実施の形態2では、制御部20は、電圧印加部及び光学分析部を動作させる直前(ステップS14の直前)に、冷却部の出力を増加させ、そして、電圧印加部及び光学分析部の動作の終了後に、冷却部の出力を低下させる。このため、本実施の形態2によれば、図6に示すように、実施の形態1に比べて、マイクロチップ30の温度上昇をより強力に抑えることができる。近年、マイクロチップ30の小型化の要請によって流路32の長さが短くなり、発熱量が増える傾向にあるが、本実施の形態2は、このような場合に特に有効である。
【0059】
[温度分析]
ここで、実施の形態2に示した分析装置及び分析方法を用いた場合のマイクロチップの温度分析について図7〜図15を用いて説明する。図7は、マイクロチップの上面温度、流路温度、ステージ上の温度の時間経過を示す図である。
【0060】
図7に示すグラフでは、横軸は時間tを示し、縦軸は温度Tを示している。また、図7において、開始(t=0)からt1までを状態1(予備冷却)、t1〜t2までを状態2(保冷)、t2〜t3までを状態3(測定直前)、t3〜t4までを状態4(測定開始)、t4以降を状態5(測定中)と定義する。そして、状態4及び状態5においては、マイクロチップ30の流路32(図1及び図2参照)内で電気泳動が発生している。
【0061】
図7においてステージ上の温度の変化グラフが示すように、開始(t=0)からt2までは、冷却部の出力は一定であり、t3の時点で、冷却部の出力が高められ、その後、徐々に出力は低下される。そして、冷却部の出力の調整は、マイクロチップ上面の温度、および流路温度に基づいて行う必要がある。以下に、状態毎に、各温度の分析手法について説明する。
【0062】
[温度分析:状態1]
状態1について図8及び図9を用いて説明する。図8は、状態1におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図8において、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0063】
図9は、状態1にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図9では、初期条件及び境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図9において、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示し、「α」はマイクロチップ表面から大気中への熱伝達率(材料と大気の状態に依存)を示している。
【0064】
また、図9の各式では、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、それによってX軸方向の温度分布はないものと考えられること(図8中のy軸方向のみを考慮)、が前提条件となる。なお、状態1は非定常状態にある。
【0065】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図9に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態1における温度をシミュレーションできる。結果、状態1において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0066】
[温度分析:状態2]
状態2について図10及び図11を用いて説明する。図10は、状態2におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図10においても、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0067】
図11は、状態2にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図11では、境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図11においても、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示し、「α」はマイクロチップ表面から大気中への熱伝達率(材料と大気の状態に依存)を示している。
【0068】
また、図11の各式でも、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、それによってx軸方向の温度分布はないものと考えられること(図10中のy軸方向のみを考慮)、が前提条件となる。なお、状態2は定常状態にある。
【0069】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図11に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態2における温度をシミュレーションできる。結果、状態2において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0070】
[温度分析:状態3−4]
状態3及び4について図12及び図13を用いて説明する。図12は、状態3及び状態4におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図12においても、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0071】
図13は、状態3または状態4にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図13では、初期条件及び境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図13においても、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示し、「α」はマイクロチップ表面から大気中への熱伝達率(材料と大気の状態に依存)を示している。
【0072】
また、図13の各式では、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、が前提条件となる。また、この状態では流路からの発熱が生じるため、X軸方向にも温度分布が生じる。そのため、状態3から状態4は2次元の非定常状態にあると考えられる。
【0073】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図13に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態3から状態4における温度をシミュレーションできる。結果、状態3から状態4において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0074】
[温度分析:状態5]
状態5について図14及び図15を用いて説明する。図14は、状態5におけるマイクロチップをモデル化した例を示す図である。図14においても、マイクロチップ30は、短辺側の側面(図2参照)から見た状態で表されている。
【0075】
図15は、状態5にあるマイクロチップにおいて成立する状態方程式を示す図である。図15では、境界条件が与えられた場合の状態方程式も示されている。また、図15においても、「λ」はマイクロチップ30の熱伝導率(材料固有のもの)を示している。
【0076】
また、図15の各式では、流路32の径(または幅)がマイクロチップ30の大きさに比べて極めて小さく、流路32を点とみなせること、マイクロチップ30の厚みが薄く、その側面からの放熱は無視できること、が前提条件となる。また、この状態では流路からの発熱が生じるため、X軸方向にも温度分布が生じる。そのため、状態5は2次元の非定常状態にあると考えられる。
【0077】
マイクロチップとして、図2に示すマイクロチップ30が用いられる場合は、図15に示す式に、差分法または有限要素法などの解析的手法を適用すれば、マイクロチップ30の状態5における温度をシミュレーションできる。結果、状態5において、冷却部の出力を適切な値に設定できる。
【0078】
なお、マイクロチップとして、図2に示したマイクロチップ30以外が用いられる場合は、マイクロチップの形状、材質、大きさなどを考慮して、上述した状態方程式(図9、図11、図13、図15)に変更を加える必要がある。
【0079】
また、上述した実施の形態1〜実施の形態2は、上述した例に限定されるものではなく、以下の変形例1〜変形例3を含む態様であっても良い。以下に説明する。
【0080】
[変形例1]
図16を用いて、実施の形態1〜実施の形態2における変形例1について説明する。図16は、変形例1における分析装置の構成を示す図である。図16に示すように、変形例1では、分析装置40は、図1に示した分析装置10の構成に加え、更に、ステージ41と、電子冷却素子42とを備えている。なお、図16では、図1に示されていた駆動回路13、電源回路15、分析部18、制御部20についての図示は省略している。
【0081】
この構成において、制御部20は、ステージ41にマイクロチップ30が載置されている場合は、駆動回路13(図1参照)に対して電子冷却素子42への電流供給を行わせ、ステージ41上でマイクロチップ30を冷却させる。
【0082】
そして、マイクロチップ30が、ステージ41からステージ11へと移動され、ステージ11上に載置されると、制御部20は、マイクロチップ30を冷却しながら、電圧の印加と光学分析とを実行する。つまり、制御部20は、駆動回路13(図1参照)に対する電子冷却素子12への電流供給、電源回路15に対する電極14aと電極14bとの間への電圧印加、光源16に対する光の照射を指示する。
【0083】
このように、変形例1では、マイクロチップ30に対して、測定開始前の冷却はステージ41上で行われ、測定、及び測定時における冷却はステージ11上で行われる。変形例1によれば、測定対象となるマイクロチップ30が複数個ある場合に、次に測定対象となるマイクロチップを予め冷却することができ、測定を効率良く行うことができる。
【0084】
[変形例2]
図17〜図19を用いて、実施の形態1〜実施の形態2における変形例2について説明する。図17は、変形例2におけるマイクロチップの構成の一例を示す図であり、図17(a)は平面図、図17(b)は底面図、図17(c)は側面図である。図18は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は底面図、図18(c)は側面図である。図19は、変形例2におけるマイクロチップの構成の他の例を示す図であり、図19(a)はカバー部材の平面図、図19(b)は基板の平面図である。
【0085】
変形例2においては、マイクロチップとして、図2に示したマイクロチップ30よりも放熱性に優れたマイクロチップが用いられる。図17(a)〜(c)に示す例では、マイクロチップ35は、図2に示したマイクロチップ30と同様に、基板31aと、それを覆うカバー部材31bとを備えているが、更に、放熱部材36も備えている。放熱部材36は、マイクロチップの本体部分(基板31a及びカバー部材31b)を形成する材料よりも熱伝導性が高い材料、例えば金属材料によって形成されている。
【0086】
また、図17(a)及び(b)に示すように、放熱部材36は、光源16(図1参照)から流路32への光の照射と、受光素子17(図1参照)による透過光の受光とが、妨げられないように形成されている。具体的には、放熱部材36は、主面上において流路32を遮蔽しないように形成さえている。また、放熱部材36は、電極14a及び電極14b(図1参照)との接触を回避するため、カバー部材31bに設けられた貫通穴33a及び貫通穴33bの近傍を避けるようにも形成されている。
【0087】
図18(a)〜(c)に示す例でも、マイクロチップ37は、図17(a)〜(c)に示した例と同様に、基板31aと、それを覆うカバー部材31bとに加えて、放熱部材38を備えている。但し、図18(a)〜(c)の例では、放熱部材38は、図18(b)及び図18(c)に示すように、底面側に複数のフィン39を備えており、その放熱能力が更に高められている。図18(a)〜(c)に示すマイクロチップ37は、冷却部として、電子冷却素子12の代わりに、送風装置を用いる場合に有用である。
【0088】
また、図19(a)及び(b)に示す例では、マイクロチップ50は、基板51aと、それを覆うカバー部材51bとを備えている。このうち、カバー部材51bは、図2に示したカバー部材31bと同様のものであり、貫通穴53a及び貫通穴53bを備えている。
【0089】
一方、基板51aは、図2に示した基板31aと同様に、流路を形成する溝52と、液溜めとなる凹部54a及び凹部54bとを備えているが、これらに加えて、更に、外周溝55も備えている。外周溝55は、溝52、凹部54a及び凹部54bに沿って、これらを囲むように形成されている。そして、基板51aとカバー部材51bとを重ね合わせると、外周溝55の上面が塞がれ、外周溝55によっても、溝52と同様に流路が形成される。
【0090】
このように、図19(a)及び(b)に示す例では、緩衝液が充填される流路の周辺を囲むように、外周溝55による別の流路が設けられている。よって、この流路に冷却液などの冷媒を流すことにより、マイクロチップ50の冷却が図られる。また、図19(a)及び(b)に示すマイクロチップ50が用いられる場合は、冷却部としては、電子冷却素子12の代わりに、冷媒を供給するポンプが用いられる。
【0091】
[変形例3]
図20を用いて、実施の形態1〜実施の形態2における変形例3について説明する。図20は、変形例3における分析装置の構成を示す図である。
【0092】
図20に示す変形例3においては、図1に示した分析装置10は、空気循環システムが備えられた部屋60に配置されている。空気循環システムは、空気の取り入れ側に、防塵フィルター61、除電ブロアー62、及び加湿フィルター63を備え、空気の排出側に、排気用ファン64を備えている。なお、図20において、65及び66はダクトである。
【0093】
この構成によれば、空気は、防塵フィルター61、除電ブロアー62、及び加湿フィルター63を介して、マイクロチップ30へと到達する。従って、変形例3においては、マイクロチップ30の内部への塵及び埃の混入が大きく軽減される。結果、更なる測定精度の向上が図られることになる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明によれば、マイクロチップを用いた電気泳動において、マイクロチップの温度の最適化を図ることができる。本発明は、マイクロチップを採用する電気泳動装置に有用である。
【符号の説明】
【0095】
10 分析装置
11 ステージ
12 電子冷却素子
13 駆動回路
14a、14b 電極
15 電源回路
16 光源
17 受光素子
18 分析部
19 温度センサ
20 制御部
30 マイクロチップ
31a 基板
31b カバー部材
32 流路
32a 溝
33a、33b 貫通孔
34a、34b 凹部
35 マイクロチップ
36 放熱部材
37 マイクロチップ
38 放熱部材
39 フィン
40 分析装置
41 ステージ
42 電子冷却素子
50 マイクロチップ
51a 基盤
51b カバー部材
52 溝
53a、53b 貫通穴
54a、54b 凹部
55 外周溝
61 防塵フィルター
62 除電ブロアー
63 加湿フィルター
64 排気用ファン64
65、66 ダクト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が設けられたマイクロチップを用いて電気泳動を行う分析装置であって、
前記マイクロチップを冷却する冷却部と、
前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部と、
前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部と、
前記冷却部、前記電圧印加部、及び前記光学分析部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させ、前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させてから、設定時間の経過後に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
当該分析装置が、前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを更に備え、
前記制御部は、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却部に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる直前に、前記冷却部の出力を増加させ、前記電圧印加部及び前記光学分析部の動作の終了後に、前記冷却部の出力を低下させる、請求項1〜4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
当該分析装置が、前記マイクロチップを載置するための第1のステージ及び第2のステージを更に備え、
前記冷却部が、前記第1のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第1の冷却部と、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第2の冷却部と、を備え、
前記電圧印加部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、電圧を印加し、
前記光学分析部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、前記試料の光学分析を行い、
前記制御部は、前記第1のステージに前記マイクロチップが載置されている場合に、前記第1の冷却部による前記マイクロチップの冷却を行い、
その後、前記マイクロチップが前記第2のステージに載置されると、前記第2の冷却部によって前記マイクロチップを冷却しながら、前記電圧印加部による電圧の印加と前記光学分析部による光学分析とを実行する、
請求項1〜4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記冷却部が、送風装置、電子冷却素子、及びヒートパイプのうち、少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分と、前記本体部分の表面に設けられた放熱部材とを備え、
前記放熱部材は、前記本体部分を形成する材料よりも熱伝導性が高い材料によって形成されている、
請求項1〜7のいずれかに記載の分析装置。
【請求項9】
前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分を備え、
前記本体部分には、更に、前記流路に沿って、冷媒を流すための第2の流路が形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の分析装置。
【請求項10】
流路が設けられたマイクロチップを冷却する冷却装置と、前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加装置と、前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析装置と、を用いて、電気泳動による前記試料の分析を行うための方法であって、
(a)前記冷却装置によって前記マイクロチップを冷却する、ステップと、
(b)前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、ステップと、
を有することを特徴とする分析方法。
【請求項11】
前記(b)のステップにおいて、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させてから、設定時間の経過後に、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、請求項10に記載の分析方法。
【請求項12】
前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを用い、
前記(b)のステップにおいて、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、請求項10に記載の分析方法。
【請求項13】
(c)前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却装置に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、ステップを更に有する、請求項12に記載の分析方法。
【請求項14】
前記(a)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる直前に、前記冷却装置の出力を増加させ、
前記(b)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置の動作の終了後に、前記冷却装置の出力を低下させる、請求項10〜13のいずれかに記載の分析方法。
【請求項1】
流路が設けられたマイクロチップを用いて電気泳動を行う分析装置であって、
前記マイクロチップを冷却する冷却部と、
前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加部と、
前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析部と、
前記冷却部、前記電圧印加部、及び前記光学分析部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させ、前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させてから、設定時間の経過後に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
当該分析装置が、前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを更に備え、
前記制御部は、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却部に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記電圧印加部及び前記光学分析部を動作させる直前に、前記冷却部の出力を増加させ、前記電圧印加部及び前記光学分析部の動作の終了後に、前記冷却部の出力を低下させる、請求項1〜4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
当該分析装置が、前記マイクロチップを載置するための第1のステージ及び第2のステージを更に備え、
前記冷却部が、前記第1のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第1の冷却部と、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを冷却する第2の冷却部と、を備え、
前記電圧印加部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、電圧を印加し、
前記光学分析部は、前記第2のステージに載置された前記マイクロチップを対象として、前記試料の光学分析を行い、
前記制御部は、前記第1のステージに前記マイクロチップが載置されている場合に、前記第1の冷却部による前記マイクロチップの冷却を行い、
その後、前記マイクロチップが前記第2のステージに載置されると、前記第2の冷却部によって前記マイクロチップを冷却しながら、前記電圧印加部による電圧の印加と前記光学分析部による光学分析とを実行する、
請求項1〜4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
前記冷却部が、送風装置、電子冷却素子、及びヒートパイプのうち、少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分と、前記本体部分の表面に設けられた放熱部材とを備え、
前記放熱部材は、前記本体部分を形成する材料よりも熱伝導性が高い材料によって形成されている、
請求項1〜7のいずれかに記載の分析装置。
【請求項9】
前記マイクロチップが、内部に前記流路が形成された本体部分を備え、
前記本体部分には、更に、前記流路に沿って、冷媒を流すための第2の流路が形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の分析装置。
【請求項10】
流路が設けられたマイクロチップを冷却する冷却装置と、前記マイクロチップの流路に充填された緩衝液に電圧を印加する電圧印加装置と、前記マイクロチップを介して、前記流路に導入された試料に対して光学分析を行う光学分析装置と、を用いて、電気泳動による前記試料の分析を行うための方法であって、
(a)前記冷却装置によって前記マイクロチップを冷却する、ステップと、
(b)前記マイクロチップが冷却されてから、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、ステップと、
を有することを特徴とする分析方法。
【請求項11】
前記(b)のステップにおいて、前記冷却部に前記マイクロチップの冷却を開始させてから、設定時間の経過後に、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、請求項10に記載の分析方法。
【請求項12】
前記マイクロチップの温度を測定するための温度センサを用い、
前記(b)のステップにおいて、前記温度センサによって測定された温度が、第1の設定温度以下である場合に、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる、請求項10に記載の分析方法。
【請求項13】
(c)前記温度センサによって測定された温度が、第2の設定温度以下である場合に、前記冷却装置に、冷却の停止又は出力の低下を行わせる、ステップを更に有する、請求項12に記載の分析方法。
【請求項14】
前記(a)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置を動作させる直前に、前記冷却装置の出力を増加させ、
前記(b)のステップにおいて、前記電圧印加装置及び前記光学分析装置の動作の終了後に、前記冷却装置の出力を低下させる、請求項10〜13のいずれかに記載の分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−211894(P2012−211894A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−43555(P2012−43555)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
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