説明

分析装置とその撹拌装置駆動方法

【課題】撹拌装置を複数備えていても、構造が簡単で、所望の撹拌条件を満たすことが可能な分析装置とその撹拌装置駆動方法を提供すること。
【解決手段】容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を撹拌する撹拌装置を複数備えた分析装置1とその撹拌装置駆動方法。撹拌装置は、撹拌条件が一定である複数の定格撹拌装置30,31と、撹拌条件を調整可能な可変撹拌装置20とを有し、分析項目に応じて1以上の定格撹拌装置30,31及び可変撹拌装置20の中から駆動すべき1以上の撹拌装置を特定し、特定した1以上の撹拌装置に可変撹拌装置が含まれる場合には、可変撹拌装置の撹拌条件を特定する制御部15を備え、制御部が特定した1以上の撹拌装置によって液体を撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体や試薬を音波によって非接触で撹拌する撹拌装置を備えた分析装置とその撹拌装置駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、検体や試薬を撹拌する際のコンタミネーションを回避するため、検体や試薬を音波によって非接触で撹拌する撹拌装置を使用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−250732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析装置は、キュベットホイールの回転による反応容器の搬送が停止された分注動作時に、液体の撹拌を実行する。このため、分析装置においては、液体の撹拌時間が制限されている。これに対して、撹拌対象の液体は、粘性が低く撹拌が容易なものから、粘性が高く撹拌が難しいものまで液体の性質が広汎に亘っている。このため、性質が広汎に亘る液体を単一の撹拌装置で液体の性質に応じて一定時間で撹拌しようとすると、音波発生手段への負荷が大きくなり、また駆動系の制御の点から技術的に難しいという問題がある。この場合、撹拌装置を複数用い、個々に撹拌条件を変えて液体を撹拌することも考えられるが、複雑な制御が必要となるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、撹拌装置を複数備えていても、構造が簡単で、所望の撹拌条件を満たすことが可能な分析装置とその撹拌装置駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を撹拌する撹拌装置を複数備えた分析装置であって、前記撹拌装置は、撹拌条件が一定である1以上の定格撹拌装置と、撹拌条件を調整可能な一つの可変撹拌装置とを有し、分析項目に応じて前記1以上の定格撹拌装置及び前記可変撹拌装置の中から駆動すべき1以上の撹拌装置を特定し、特定した1以上の撹拌装置に前記可変撹拌装置が含まれる場合には、前記可変撹拌装置の撹拌条件を特定する制御手段を備え、前記制御手段が特定した前記1以上の撹拌装置によって前記液体を撹拌することことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記可変撹拌装置の撹拌条件は、前記分析項目に応じて予め設定されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分析装置は、上記の発明において、前記可変撹拌装置の撹拌条件は、キャリブレータを使用して事前に行う分析試験によって決定されることを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置は、前記可変撹拌装置は、前記分析項目に応じた前記液体の撹拌に必要な総撹拌電力と、駆動される前記1又は2以上の撹拌装置に含まれる1又は2以上の定格撹拌装置に供給される定格供給電力との差分を補うように駆動されることを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析装置の撹拌装置駆動方法は、容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を撹拌する撹拌装置を複数備えた分析装置の撹拌装置駆動方法であって、定格撹拌条件の下に駆動される1又は2以上の定格撹拌装置を駆動して前記液体を撹拌する定格撹拌工程と、可変撹拌条件の下に一つの可変撹拌装置を駆動して前記液体を撹拌する可変撹拌工程と、分析項目に応じて前記定格撹拌工程又は前記可変撹拌工程の少なくとも一方を特定する制御工程と、を含み、分析項目に応じて前記定格撹拌工程又は前記可変撹拌工程の少なくとも一方によって前記液体を撹拌することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分析装置の撹拌装置駆動方法は、上記の発明において、前記可変撹拌装置の撹拌条件は、前記分析項目に応じて予め設定されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の分析装置の撹拌装置駆動方法は、上記の発明において、前記可変撹拌装置の撹拌条件は、キャリブレータを使用して事前に行う分析試験によって決定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分析装置の撹拌装置駆動方法は、上記の発明において、前記可変撹拌装置は、前記分析項目に応じた前記液体の撹拌に必要な総撹拌電力と、駆動される前記1又は2以上の撹拌装置に含まれる1又は2以上の定格撹拌装置に供給される定格供給電力との差分を補うように駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1以上の定格撹拌装置の駆動条件を一定とし、一つの可変撹拌装置の駆動条件を可変としたので、撹拌装置を複数備えていても、構造が簡単で、所望の撹拌条件を満たすことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1の自動分析装置で使用する可変撹拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
【図3】図3は、図1の自動分析装置で使用する定格撹拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の分析装置の撹拌装置駆動方法を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、可変撹拌装置を駆動する際の制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の分析装置とその撹拌装置駆動方法にかかる実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で使用する撹拌装置の概略構成を反応容器の斜視図と共に示すブロック図である。
【0017】
自動分析装置1は、図1に示すように、試薬テーブル2,3、反応テーブル4、検体容器移送機構8、光学測定装置12、洗浄機構13、制御部15、可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31を備えている。
【0018】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ駆動手段に回転されて第1試薬を保持した試薬容器2aと第2試薬を保持した試薬容器3aとを周方向に搬送する。
【0019】
反応テーブル4は、図1に示すように、周方向に沿って複数の反応容器5が配列され、複数の反応容器5を所定温度(例えば、37℃)に保温しながら反時計方向へ回転し、反応容器5を周方向に沿って搬送する。反応テーブル4は、例えば、一周期で(1周−1反応容器)/4回転し、四周期で(1周−1反応容器)回転する。そして、反応テーブル4に配列された複数の反応容器5は、反応テーブル4の間欠回転によって周方向に沿って搬送されながら、試薬分注、検体分注、試薬や検体を含む液体試料の撹拌、試薬,検体及び反応液の光学測定並びに洗浄が行われる。また、反応テーブル4は、近傍に試薬分注機構6,7、検体分注機構11、可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31が配置されている。
【0020】
反応容器5は、容量が数μL〜数百μLと微量なキュベットであり、光学測定装置12の光源12aから出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器5は、側壁5a(図2参照)に音波発生素子28が取り付けられ、音波発生素子28と共に撹拌装置20や定格撹拌装置30,31を構成している。反応容器5は、音波発生素子28を半径方向外方へ向けて反応テーブル4に配置され、反応テーブル4の外周近傍に設けた試薬分注機構6,7によって試薬容器2a,3aから第1試薬と第2試薬が順次分注される。
【0021】
試薬分注機構6,7は、図1に示すように、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム6a,7aに試薬を分注するプローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によってプローブ6b,7bを洗浄するプローブ洗浄槽(図示せず)を有している。このとき、試薬分注機構6は、試薬容器2aから第1試薬を反応容器5へ分注し、試薬分注機構7は、試薬容器3aから第2試薬を反応容器5へ分注する。
【0022】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、フィーダ9に配列した複数のラック10を矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック10は、検体を収容した複数の検体容器10aを保持している。ここで、検体容器10aは、検体容器移送機構8によって移送されるラック10の歩進が停止するごとに、水平方向に回動する駆動アーム11aとプローブ11bとを有する検体分注機構11によって検体が各反応容器5へ分注される。このため、検体分注機構11は、洗浄水によってプローブ11bを洗浄するプローブ洗浄手段を有している。
【0023】
光学測定装置12は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体を分析するための分析光を出射するもので、図1に示すように、光源12a,分光部12b及び受光部12cを有している。光源12aから出射された分析光は、反応容器5内の液体を透過し、分光部12bと対向する位置に設けた受光部12cによって受光される。受光部12cは、制御部15と接続され、受光した分析光の光量に対応する光量信号を制御部15へ出力する。ここで、反応容器5は、1つの検体を分析する際、分注された試薬や試薬と検体が反応した反応液が複数回測光される。
【0024】
洗浄機構13は、反応容器5に吐出した洗剤をノズルによって吸引する操作と、洗剤吸引後の反応容器5に吐出した洗浄水をノズルによって吸引する操作を複数回繰り返すことによって、反応液の光学測定を終了した反応容器5を洗浄する。
【0025】
制御部15は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用され、自動分析装置1の各構成部と接続され、これら各構成部の作動を制御すると共に、光源12aの出射光量と受光部12cが受光した光量に基づく反応容器5内の液体の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析する。制御部15は、キーボード等の入力部17やホストコンピュータから入力される分析依頼情報に基づいて自動分析装置1の各構成部の作動を制御しながら分析動作を実行させると共に、分析結果や警告情報の他、入力部17から入力される表示指令に基づく各種情報等をディスプレイパネル等の表示部18に表示する。このとき、制御部15は、前記分析依頼に基づく分析情報から読み出した分析項目に応じて可変撹拌装置20又は定格撹拌装置30,31の中からどの撹拌装置を駆動するかを特定し、特定した撹拌装置中に可変撹拌装置20が含まれる場合には、可変撹拌装置20の撹拌条件を特定する。この撹拌装置を駆動する際の組み合わせや撹拌条件は、分析項目に応じて予め表等として制御部15に登録されている。
【0026】
可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31は、図1に示すように、反応テーブル4の外周近傍に配置されている。可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31は、音波発生素子28を駆動し、発生する音波によって反応容器5に保持された検体や試薬等の液体を非接触で撹拌する撹拌装置である。このとき、可変撹拌装置20は、撹拌条件が変更可能であり、定格撹拌装置30,31は、撹拌条件が一定に設定されている。可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31は、送電体21と配置決定部材22とを有している。そして、制御部15の制御のもとに、可変撹拌装置20は撹拌制御部23(図2参照)によって作動が制御され、定格撹拌装置30,31は撹拌制御部33(図3参照)によって作動が制御される。
【0027】
ここで、可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31に関して撹拌条件とは、音波発生素子28の駆動条件を言い、主に供給電力とその供給時間を言う。但し、撹拌条件には、この他に、例えば、音波発生素子28を駆動する駆動信号の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等が含まれる。この場合、可変撹拌装置20は、供給電力を0〜100%の間で調整する可変撹拌条件の下で駆動される。これに対し、定格撹拌装置30,31は、供給電力を一定(=100%)に保持する定格撹拌条件の下で駆動される。
【0028】
そして、可変撹拌装置20の撹拌条件は、予めキャリブレータを用いた分析試験を通じて分析項目毎に設定し、信号制御部24に分析項目毎に記憶させておく。これは、反応容器5に分注される撹拌対象としての液体について見た場合、検体の量に比べて試薬の量が圧倒的に多い。このため、分析項目が決まると、撹拌対象としての液体の量のみならず、撹拌し易いか否かという液体の性質、即ち、撹拌に必要な音波発生素子28の要求供給電力を含む撹拌条件が決まる。従って、撹拌条件は、分析項目毎に設定し、予め制御部15に記憶しておく。
【0029】
ここで、撹拌条件の設定する際に使用するキャリブレータには、標準検体と試薬が含まれる。
【0030】
送電体21は、数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電源から供給される電力を音波発生素子28に供給するもので、給電時に押し出されて音波発生素子28の入力端子28cに当接するブラシ状の接触子(図示せず)を有している。送電体21は、図1に示すように、配置決定部材22に支持されており、反応テーブル4外周の互いに対向する位置に反応容器5と水平方向に対向させて配置されている。
【0031】
配置決定部材22は、送電体21と音波発生素子28との反応テーブル4の周方向並びに半径方向における相対配置が予め調整されている。配置決定部材22は、送電体21から前記接触子を反応テーブル4に向けて押し出すと、前記接触子が音波発生素子28の入力端子28cに当接して送電体21から音波発生素子28に電力が供給される。
【0032】
撹拌制御部23は、従来から使用されており、図2に示すように、制御部15を介して入力部17から入力される検体の検査項目,液量等の検体情報に応じて撹拌条件を調整して音波発生素子28の駆動を制御する制御手段であり、信号制御部24、信号発生回路25、増幅回路26及び検出回路27を備えている。
【0033】
信号制御部24は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(CPU)が使用され、制御部15と協働して通信回路22、信号発生回路25、増幅回路26及び検出回路27の作動を制御する。ここで、信号制御部24には、上述した分析項目毎の撹拌条件が予め記憶されている。信号制御部24は、信号発生回路25へ制御信号Scを出力することにより増幅回路26が音波発生素子28へ出力する駆動信号の電圧や電流、印加時間等を制御する。これにより、信号制御部24は、例えば、音波発生素子28が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)、音波発生素子28に入力される駆動信号のパワー及び音波発生素子28の駆動時間等を制御する。また、信号制御部24は、内蔵したタイマに従って信号発生回路25が発振する高周波信号の周波数や発振時間を変化させることができる。
【0034】
信号発生回路25は、信号制御部24から入力される制御信号に基づいて発振周波数を変更すると共に、利得を制御可能な発振回路を有しており、例えば、50〜80MHzの駆動信号Sd(アナログ)を増幅回路26へ出力する。信号発生回路25は、増幅回路26へ駆動信号Sdを出力した場合には、出力した駆動信号Sdの周波数を示すロック信号SLを信号制御部24へ出力する。
【0035】
増幅回路26は、信号発生回路25から入力された音波発生素子28の駆動信号Sd(アナログ)を予め設定した増幅率で増幅し、所定の駆動電力を音波発生素子28へ供給する。増幅回路26は、音波発生素子28へ駆動電力を供給した場合には、駆動電力の周波数を示すロック信号SLを信号発生回路25へ出力する。また、増幅回路26は、音波発生素子28へ出力される進行波信号、音波発生素子28から反射される音波発生素子28の温度情報信号や反射波信号を含む素子信号(アナログ信号)Sdvを検出回路27へ出力する。
【0036】
検出回路27は、増幅回路26から出力される駆動電力の進行波(アナログ信号)を電力データとして検出すると共に、音波発生素子28から反射され、増幅回路26を通って入力される音波発生素子28の温度情報信号や反射波信号(アナログ信号)を反射電力データとして検出し、これらのデータ信号Sdaを信号制御部24へ出力すると共に、これらのデータを記憶する。
【0037】
音波発生素子28は、図2に示すように、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等からなる圧電基板28aの表面に櫛型電極(IDT)からなる振動子28bが形成されている。振動子28bは、撹拌制御部21から入力された駆動信号を表面弾性波(音波)に変換する発音部であり、振動子28bを構成する複数のフィンガーが圧電基板28aの長手方向に沿って配列されている。また、音波発生素子28は、一組の入力端子28cによって撹拌制御部21との間が接続されている。振動子28bは、入力端子28cとの間がバスバー28dによって接続されている。音波発生素子28は、エポキシ樹脂等の音響整合層を介して反応容器5の側壁5aに取り付けられる。
【0038】
定格撹拌装置30,31は、構成が同一であるので定格撹拌装置30について説明する。そして、定格撹拌装置31は、以下の説明において定格撹拌装置30と同一の構成要素には同一の符号を使用する。
【0039】
定格撹拌装置30は、図3に示す撹拌制御部33によって供給電力を一定(=100%)に保持する定格撹拌条件の下で駆動される。撹拌制御部33は、定格撹拌条件の下で駆動することから簡単に構成され、信号発生回路35及び増幅回路36を備えている。このため、撹拌制御部33は、撹拌制御部23に比べて構成が簡単なうえ、これに伴って制御も撹拌制御部23よりも容易である。
【0040】
信号発生回路35は、制御部15から入力される制御信号に基づいて発振周波数を変更すると共に、利得を制御可能な発振回路を有しており、例えば、50〜80MHzの駆動信号(アナログ)を増幅回路36へ出力する。
【0041】
増幅回路36は、信号発生回路35から入力された音波発生素子28の駆動信号(アナログ)を予め設定した増幅率で増幅し、所定の駆動電力を音波発生素子28へ供給する。
【0042】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部15の制御の下に作動し、回転する反応テーブル4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注機構6,7及び検体分注機構11によって第1試薬,第2試薬及び検体が順次分注されると共に、可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31によって分注された試薬や検体が順次撹拌される。
【0043】
そして、試薬と検体が撹拌された反応容器5は、光学測定装置12を通過する際に、反応液の光学的特性が受光部12cで測定され、制御部15によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測光が終了した反応容器5は、洗浄機構13によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0044】
このとき、自動分析装置1は、制御手段である制御部15によって分析項目に応じて可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31の中から駆動すべき1又は2以上の撹拌装置が特定され、特定された1又は2以上の撹拌装置によって反応容器5に分注された試薬や検体を含む液体が撹拌される。以下、図4に示すフローチャートを参照しつつ本発明の分析装置の撹拌装置駆動方法を説明する。
【0045】
先ず、制御部15は、分析依頼情報を取得する(ステップS100)。この分析依頼情報は、キーボード等の入力部17から入力された分析依頼情報やホストコンピュータから入力された分析依頼情報を利用する。次に、制御部15は、取得した分析依頼情報から分析項目を取得する(ステップS102)。次いで、分析項目に応じて可変撹拌装置20又は定格撹拌装置30,31の中から駆動すべき撹拌装置を特定する(ステップS104)。このとき、制御部15は、予め登録されている表等から特定する。
【0046】
このとき、駆動すべき撹拌装置を特定する表の一例を表1に示す。このとき、表1は、撹拌の難易度、駆動すべき可変撹拌装置20又は定格撹拌装置30,31の組み合わせ並びに組み合わせた撹拌装置に供給される総撹拌電力比を示している。撹拌難易度は、Aが非常に撹拌し難い、Bが撹拌し難い、Cがやや撹拌し難い、Dが普通、Eがやや撹拌し易い、Fが撹拌し易いという順に分けられている。また、総撹拌電力比は、可変撹拌装置20や定格撹拌装置30,31に供給する供給電力が100%の場合を1として表した比の合計である。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、制御部15は、分析項目、即ち、撹拌の難易度に応じて駆動すべき撹拌装置を特定し、可変撹拌装置20を特定した場合には、供給電力を0〜100%の間で調整する。このとき、制御部15は、図5に示すように、分析項目に応じた前記液体の撹拌に必要な総撹拌電力と、駆動される前記1又は2以上の撹拌装置に含まれる1又は2以上の定格撹拌装置に供給される定格供給電力との差分を補うように電力を連続的に調整して可変撹拌装置20の駆動を制御する。
【0049】
この駆動制御に際し、制御部15は、撹拌難易度がGsの場合には、定格撹拌装置30を単独で駆動し(供給電力100%)、撹拌難易度がGwの場合には定格撹拌装置30,31のみを駆動する(供給電力100%)。そして、制御部15は、可変撹拌装置20に供給する供給電力が100%になった場合には、定格撹拌装置30や定格撹拌装置31を駆動し、総撹拌電力と定格供給電力との差分を補うように可変撹拌装置20を駆動制御する。
【0050】
制御部15は、特定対象に定格撹拌装置30,31があるか否かを判定する(ステップS106)。判定の結果、特定対象に定格撹拌装置30,31がある場合(ステップS106,Yes)、制御部15は、特定対象に可変撹拌装置20があるか否かを判定する(ステップS108)。判定の結果、特定対象に可変撹拌装置20がある場合(ステップS108,Yes)、制御部15は、可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31の中から特定対象の可変撹拌装置20と定格撹拌装置とを駆動する(ステップS110)。これにより、特定対象の可変撹拌装置20と定格撹拌装置によって反応容器5に保持された液体を撹拌する。
【0051】
撹拌終了後、制御部15は、総ての検体の分析が終了したか否かを判定する(ステップS112)。この判定は、先に取得した分析依頼情報をもとに実行する。判定の結果、総ての検体について分析が終了していない場合(ステップS112,No)、制御部15は、ステップS104に戻って引き続く各ステップを実行する。総ての検体について分析が終了している場合(ステップS112,Yes)、制御部15は、分析装置の撹拌装置駆動方法を終了する。
【0052】
一方、特定対象に可変撹拌装置20がない場合(ステップS108,No)、制御部15は、定格撹拌装置30,31のうち特定対象の定格撹拌装置を駆動する(ステップS114)。これにより、特定対象の定格撹拌装置によって反応容器5に保持された液体を撹拌する。撹拌終了後、制御部15は、ステップS112へ移行する。
【0053】
また、ステップS106における判定の結果、特定対象に定格撹拌装置30,31がない場合(ステップS106,No)、制御部15は、特定対象に可変撹拌装置20があるか否かを判定する(ステップS116)。判定の結果、特定対象に可変撹拌装置20がない場合(ステップS116,No)、制御部15は、ステップS112へ移行する。これに対し、特定対象に可変撹拌装置20がある場合(ステップS116,Yes)、制御部15は、可変撹拌装置20を駆動する(ステップS118)。これにより、特定対象の可変撹拌装置20によって反応容器5に保持された液体を撹拌する。撹拌撹拌終了後、制御部15は、ステップS112へ移行する。
【0054】
本発明は、以上のようにして可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31の中から特定した1以上の撹拌装置によって反応容器5に保持された液体を液体の性質に応じて撹拌する。このとき、自動分析装置1は、撹拌条件が一定の定格撹拌装置30,31と撹拌条件を調整可能な可変撹拌装置20とを備えている。このため、自動分析装置1は、撹拌装置を複数備えていても、構造が簡単で、所望の撹拌条件を満たすことができる。
【0055】
しかも、自動分析装置1は、使用する3つの撹拌装置のうち定格撹拌装置30,31を可変撹拌装置20よりも構造が簡単で、安価な撹拌装置とすることができる。即ち、定格撹拌装置30,31は、可変撹拌装置20の半額で製造することができる。このとき、例えば、可変撹拌装置20とすると、定格撹拌装置30,31の価格は0.5Pmとなることから、3つの撹拌装置の合計価格は2Pm(=Pm+0.5Pm×2)となる。従って、可変撹拌装置20及び定格撹拌装置30,31の価格(=2Pm)は、3つの撹拌装置を可変撹拌装置20とした場合(=3Pm)に比べて約33%安価になる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明の分析装置とその撹拌装置駆動方法は、撹拌装置を複数備えていても、複数の定格撹拌装置の駆動条件を一定としたので、構造が簡単で、所望の撹拌条件のもとに液体を撹拌するのに有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
4 反応テーブル
5 反応容器
6,7 試薬分注機構
8 検体容器移送機構
9 フィーダ
10 ラック
11 検体分注機構
12 光学測定装置
13 洗浄機構
15 制御部
20 可変撹拌装置
21 送電体
22 配置決定部材
23 撹拌制御部
24 信号制御部
25 信号発生回路
26 増幅回路
27 検出回路
28 音波発生素子
30,31 定格撹拌装置
33 撹拌制御部
35 信号発生回路
36 増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を撹拌する撹拌装置を複数備えた分析装置であって、
前記撹拌装置は、撹拌条件が一定である1以上の定格撹拌装置と、撹拌条件を調整可能な一つの可変撹拌装置とを有し、
分析項目に応じて前記1以上の定格撹拌装置及び前記可変撹拌装置の中から駆動すべき1以上の撹拌装置を特定し、特定した1以上の撹拌装置に前記可変撹拌装置が含まれる場合には、前記可変撹拌装置の撹拌条件を特定する制御手段を備え、
前記制御手段が特定した前記1以上の撹拌装置によって前記液体を撹拌することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記可変撹拌装置の撹拌条件は、前記分析項目に応じて予め設定されることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記可変撹拌装置の撹拌条件は、キャリブレータを使用して事前に行う分析試験によって決定されることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記可変撹拌装置は、前記分析項目に応じた前記液体の撹拌に必要な総撹拌電力と、駆動される前記1又は2以上の撹拌装置に含まれる前記1以上の定格撹拌装置に供給される定格供給電力との差分を補うように駆動されることを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
容器に取り付けた音波発生手段が発生する音波によって前記容器に保持された液体を撹拌する撹拌装置を複数備えた分析装置の撹拌装置駆動方法であって、
定格撹拌条件の下に駆動される1以上の定格撹拌装置を駆動して前記液体を撹拌する定格撹拌工程と、
可変撹拌条件の下に一つの可変撹拌装置を駆動して前記液体を撹拌する可変撹拌工程と、
分析項目に応じて前記定格撹拌工程又は前記可変撹拌工程の少なくとも一方を特定する制御工程と、
を含み、分析項目に応じて前記定格撹拌工程又は前記可変撹拌工程の少なくとも一方によって前記液体を撹拌することを特徴とする分析装置の撹拌装置駆動方法。
【請求項6】
前記可変撹拌装置の撹拌条件は、前記分析項目に応じて予め設定されることを特徴とする請求項5に記載の分析装置の撹拌装置駆動方法。
【請求項7】
前記可変撹拌装置の撹拌条件は、キャリブレータを使用して事前に行う分析試験によって決定されることを特徴とする請求項6に記載の分析装置の撹拌装置駆動方法。
【請求項8】
前記可変撹拌装置は、前記分析項目に応じた前記液体の撹拌に必要な総撹拌電力と、駆動される前記1又は2以上の撹拌装置に含まれる1以上の定格撹拌装置に供給される定格供給電力との差分を補うように駆動されることを特徴とする請求項7に記載の分析装置の撹拌装置駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−27479(P2011−27479A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171585(P2009−171585)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】