説明

分析装置において反応を行う方法

不均一系の化学反応または生化学反応を行うための方法およびシステムを提供する。この方法は、少なくとも1つの液体処理ユニットを含んでなる分析装置であって、この液体処理ユニットが、少なくとも1つの反応チャンバおよびこの反応チャンバと流体接続する少なくとも第1の流入チャネルを含む分析装置を設ける工程を含む。この方法はさらに、第1の流入チャネルまたは第2の流入チャネルを介して分析物捕捉粒子を反応チャンバに供給する工程、第1の流入チャネルまたは第2の流入チャネルを介して少なくとも対象分析物を含む液体試料を反応チャンバに供給する工程、力の平衡によって分析物捕捉粒子を反応チャンバに含まれる粒子の再配列ゾーンに閉じ込める工程、および粒子の再配列ゾーンにおいて、液体試料中に存在する分析物を粒子を用いて捕捉する工程を含み、ここで力は、流れる液体によって生じるけん引力Fdとその反対方向の力Fgとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体外診断の分野に属し、分析物を捕捉する粒子の使用を伴う不均一系の化学反応または生物学的反応を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外診断の分野においては、化学試料および生物学的試料の自動の不均一系アッセイに対する強い需要がある。いくつかの利点により、これらの中でも、少量の試料および試薬必要量、いくつかのアッセイ工程を単一の装置に統合する可能性、反応速度の向上、高速解析時間およびそれゆえのハイスループットに対して強い需要があり、近年マイクロ流体システムを開発するために多大な努力が注がれている。
【0003】
大量のビーズで構成される充填層カラムは周知であり、数十年前から化学分析において、例えばクロマトグラフィーに用いられている。また、診断用途では、多孔性のフリット構造が当該技術において公知である。例えば、液体が遠心力によって駆動される充填層カラムを通って流れている、回転ディスク上での免疫学的検定が開示されている。また小型化されたシステムにおいてビーズまたは粒子でカラムを構築する、種々の方法も公知である。従来の方法は、固定構造物が得られるスラリーを用いるためのものである。通常、ビーズ−液体エマルジョンまたは懸濁液は、ビーズがトラップされているチャンバの中を、またはチャンバに沿って、またはチャンバの上を流れる。このトラップは、浅いスリットなどの小さな流路、例えば焼結多孔性材料などの、フリースまたはフィルターのような多孔性材料、またはより大きなビーズであってもよい。また別の方法は、粒子を磁場内にトラップすることである。通常、これらの方法は全て、粒子が順流(forward flow)の方向でトラップされるという点で共通している。これは、液体が流れる際に流体抵抗が固定または増大されることを意味する。粒子をトラップしつつ充填度を増大させることにより、カラムの流体抵抗は増大し、目詰まりを引き起こすおそれがある。カラムが、流れている分子を結合させるために用いられる場合には、この効果はさらに深刻なものとなり得る。ビーズが、ある場、例えば磁場内にトラップされる場合、けん引力がビーズに対するトラップ力を上回るおそれがあり、これはビーズの損失という結果を招く。狭くなった流路による構造的方法で単一粒子が充填される場合、得られる細孔径はビーズの大きさに依存する。大きな粒子は充分な結合能力を与えないおそれがあるので小さな粒子が好ましいが、これはより小さな細孔を生じるためにより高い流れ抵抗をもたらす。結果として、与えられる流れ圧力範囲に対してどの大きさのビーズが用いられ得るかには、実際的な限界がある。これは例えば、得られうる圧力が小さいことから、フローを駆動するために遠心分離を用いる場合に問題となる場合がある。一度カラムが目詰まりすると、正常な状態に戻すことは非常に難しくなるおそれがある。
【0004】
貫流構成と違って、特許文献1は一対のベローズ・ポンプを含む装置を開示しており、これは、一対のベローズ・ポンプ混合チャンバー間の開口部を通して流体試料および懸濁液中の粒子を移動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0183935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分析物捕捉粒子の使用を伴う不均一系の化学的反応または生物学的反応を行う方法を提供することであって、これは分析物の効率的な捕捉を可能にすると共に、高い流れ抵抗および目詰まりのリスクを回避できる。
【0007】
この目的は、粒子の再配列ゾーンに分析物捕捉粒子を閉じ込めることによって達成され、このゾーンでは、力の平衡により粒子が自ら再配列できるが、粒子がこのゾーンから出ることはできない。
【0008】
本発明の別の利点は、試薬との混合がより効率的になることから、反応速度を向上させ、アッセイの時間および試料および試薬の消費量をさらに減少させることである。
【0009】
さらに別の利点は、分析装置が、製造前または製造中に粒子カラムを前もって充填する必要が無く、粒子がアッセイ時に試薬の形で導入され得る、一般的で単純かつコスト効率のよいものでよいということである。代替的な実施形態では、粒子は、好適には懸濁液として、分析装置の反応チャンバに直接加えられ、分析装置の製造の間にその中で乾燥される。この実施形態の利点は、粒子が分析装置にすでに存在しており、検査実施中に試薬混合という付加的な工程なしに、液体、好適には試料そのものによって自動的に再懸濁されることである。さらに様々な種類および大きさの粒子を用いることができるので、これはアッセイおよび装置のフレキシビリティを格段に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、不均一系の化学反応または生化学反応を行う方法であって、
a)少なくとも1つの液体処理ユニットを含んでなる分析装置であって、この液体処理ユニットが、少なくとも1つの反応チャンバおよびこの反応チャンバと流体接続する少なくとも第1の流入チャネルとを含む分析装置を設ける工程と、
b)第1の流入チャネルまたは第2の流入チャネルを介して、分析物捕捉粒子を反応チャンバに供給する工程、または、好適には分析装置の製造中の、分析物捕捉粒子のプレロードステップによって、分析物捕捉粒子を反応チャンバに提供する工程と、
c)第1の流入チャネルまたは第2の流入チャネルを介して、少なくとも対象分析物を含有する液体試料を反応チャンバに供給する工程と、
d)力の平衡により、分析物捕捉粒子を反応チャンバに含まれる粒子の再配列ゾーンに閉じ込める工程であって、前記力が、第1の流入チャネルを通って流れる液体によって生じるけん引力Fd、およびその反対方向の力Fgを含む閉じ込める工程と、
e)粒子の再配列ゾーンにおいて、液体試料に存在する分析物を粒子を用いて捕捉する工程とを含む。
【0011】
本発明による分析装置は、体外診断のような化学において用いられてもよく、液体の混合および液体試料に含まれる分析物の検出を含む、様々なアッセイ作業を実行するように適合される。この分析装置は例えば、臨床化学アッセイおよび免疫学的検定などの診断アッセイに用いられてもよい。典型的な診断アッセイには例えば、アルブミン、ALP、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アンモニア、アミラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、重炭酸塩、ビリルビン、カルシウム、心臓マーカー、コレステロール、クレアニチンキナーゼ、D−ダイマー、エタノール、g−グルタミルトランスフェラーゼ、グルコース、HBA1c、HDL−コレステロール、鉄、乳酸塩、乳酸デヒドロゲナーゼ、LDL−コレステロール、リパーゼ、マグネシウム、無機リン、カリウム、ナトリウム、総タンパク、トリグリセリド、尿素、尿酸などの分析物の定性分析および/または定量分析が含まれる。このリストは当然網羅的なものではない。
【0012】
本発明によれば、挙げられる液体は、試料および試薬でもよい。試料は、1つまたはそれ以上の対象分析物が潜在的に見つけられ得る溶液である。試料は化学分析物、例えば有機化合物を含んでいてもよく、分析装置は例えば、薬物相互作用スクリーニング、環境分析、有機物質の同定、合成などの1つまたはそれ以上の化学アッセイを実行するように適合され得る。試料は、例えば血液、血清、尿、母乳、唾液、脳脊髄液などの生物学的試料である可能性もあり、これは核酸、タンパク質、ペプチド、脂質、代謝物などの化学分析物および生物学的分析物を含んでいてもよい。
【0013】
本発明によれば、試薬という用語は、例えば反応を起こさせるため、または検出を可能にするために、試料および/または他の試薬と混合される必要のあるあらゆる液体、例えば溶媒または化学溶液を示すために用いられる。試薬は例えば、第1の試料と相互作用する別の試料である場合もある。試薬は、希釈液である場合もあり、これは有機溶媒、界面活性剤を含んでいてもよく、これは緩衝液または洗浄工程を行うための溶液であってもよい。試薬という語はより狭義には、通常、例えば試料中に存在する1つまたはそれ以上の分析物に結合すること、またはその分析物を変換し、最終的には検出可能な結果を生成することができる化合物または作用物質である反応物質を含む溶液であってもよい。反応物質の例は、酵素、酵素基質、共役色素、タンパク質結合分子、核酸結合分子、抗体、キレート剤、プロモーター、阻害剤、エピトープ、抗原、触媒などである。任意には、乾燥試薬が分析装置に存在してもよく、これは試料、他の試薬または希釈液によって溶解されてもよい。
【0014】
通常、試薬は試料と混合され、アッセイは固体担体を利用する不均一反応である。本発明によれば、固体担体はけん引力や場の力などの力に影響を受けやすい粒子であり、そして微粒子のままとどまり、すなわち、接触する液体に懸濁可能ではあるが溶解可能ではない粒子からなる。この粒子は通常、分析物捕捉粒子であって、ここで捕捉する(capturing)という用語は、直接的または、例えば表面コーティングを介してなど、間接的に、試料中に含まれる少なくとも1つの分析物を少なくとも一時的に結合または保持する、および/または特定のまたは選択的な方法でこの分析物と相互作用する、粒子の能力のことをいう。
【0015】
以下は不均一反応の例である。
・不均一免疫アッセイ
・粒子が触媒面を有する可能性のある触媒反応
・核酸の捕捉および精製
・細胞やウイルスなど他の生物学的物質の捕捉
・アフィニティークロマトグラフィー
・固相の化学抽出
【0016】
この粒子は、好適には例えばマイクロメーター範囲で、例えば0.1〜20マイクロメーター、好適には1〜5マイクロメーターの粒径を有する懸濁可能なビーズまたはマイクロスフィアとして構成される。高い感受性を要する用途では、より小さい粒子が好ましい。というのも、このような小さい粒子はより高い表面積対体積比を有し、これはアッセイのより高い感受性に有利であるからである。代替的な実施形態では、種々の密度および種々の分析物捕捉特性を有する粒子が、反応チャンバに加えられ得る。異なる密度および異なる分析物捕捉特性を有する分析物捕捉粒子の使用は、それぞれの分析物捕捉粒子による、複数の分析物の同時検出を可能にする。これは、種々の分析物捕捉粒子は、その密度によって(例えば、遠心力により)検出区画の異なるゾーン内に区分され得るからである。また、その大きさ、形状および密度によって、ビーズへのけん引および場の力は、特定の要望に対して「調整され(turned)」、またはオーダーメイド(tailor made)され得る。また表面粗度および表面多孔性によって、表面積対体積比が適合され得る。固定化された反応物質または反応物質が固定化され得る結合成分を備える、ラテックスビーズや磁性ビーズなどの市販のビーズが、適切な粒子の一例である。いくつかの実施形態においては、透過性粒子の使用が有利である。というのも、少なくとも部分的に透過性である粒子の使用は、充填された粒子層の上側の粒子層が、その下の層を影で覆わないことから、深さ方向(すなわち、3次元空間の全て)での光学検出も可能にするからである。これは結果として、シグナル強度を増大させ、そして感受性を向上させる。
【0017】
分析物捕捉粒子は、液体試薬、例えば液体懸濁液の形で分析装置に供給されるか、または好適には分析装置製造中の、分析物捕捉粒子を前もって導入する(プレロード)ステップによって、すでに反応チャンバ中に備えられ、そして、検査実施中に試薬混合という付加的な工程なしに、液体、好適には試料そのものによって自動的に再懸濁される。
【0018】
本発明によれば、分析装置は、少なくとも1つの液体処理ユニットを含む装置本体を有する。一実施形態によれば、装置本体は1つまたはそれ以上の液体処理ユニットを含むキャリアである。この装置本体および液体処理ユニットは、使用時に互いに結合される別々の構成要素でもよい。この場合、装置本体は、例えば金属、ガラスもしくはセラミックなどの硬質材料、または例えば射出成形されたプラスティック材料で作製でき、これは例えば、液体を受容する区画、処理ユニット、配列ピンおよび/または孔、クランプ、レバー、または液体処理ユニットを固定するネジなどの機能的な特徴を有する。この装置本体は、光学検出を可能にする孔を有するか、または透過性であってもよい。
【0019】
好適な実施形態によれば、装置本体および少なくとも1つの液体処理ユニットは、例えば、好適には射出成形されたプラスティック材料で作製される1つの一体部品を形成する。この装置本体は、好適には少なくとも部分的に透過性である。好適な実施形態によれば、この装置本体は使い捨てである。
【0020】
装置本体は、好適にはディスクのような形状、好適には例えばコンパクトディスク(CD)のフットプリント(footprint)を有する円形を有する。
【0021】
液体処理ユニットは、装置本体に結合され得る分離した要素か、または装置本体の一体部品であって、これは相互に連結したマイクロ流体構造を含み、これにより様々なアッセイ作業の最小化および一体化を達成できる。ここで一体の、との用語は、液体処理ユニットが製造時に、少なくとも部分的に装置本体に作りつけられ、装置本体から分離されないことを示すために用いられる。
【0022】
液体処理ユニットは少なくとも2つの層、すなわち1つの基板層と1つのカバー層とを含む。マイクロ流体構造は、好適には基板の上面に作成され、上部からカバー層によりシールされる。一実施形態によれば、基板層は装置本体である。また別の実施形態によれば、基板層は、装置本体に結合され得る分離した要素である。カバー層は、基板層と同一の材料で作製されてもよいし、例えば、好適には透過性の、薄いポリマー箔などの異なる材料で作製されてもよい。基板層とカバー層との間のシーリングを達成する好適な方法は、熱接合、接着、例えば二色射出成形などの射出成形などの、接着技術の使用である。シーリングは、好適には製造時に生じる。しかしながら、使用前に生じてもよい。ここで上方および上部などの語は、相対的なものであって絶対的なものではない。基板層およびカバー層の位置は例えば、入れ換えられ得る。カバー層は好適には、例えば試料、試薬などの液体、および/または空気の、マイクロ流体構造へのアクセスを可能にする孔またはアクセスポートを含む。
【0023】
好適な実施形態によれば、複数の液体処理ユニットは、装置本体の中央回転軸の周りに対称的に配置される。
【0024】
本発明によれば液体処理ユニットは、少なくとも1つの液体を分析物捕捉粒子と混合する、少なくとも1つの反応チャンバを含む。この反応チャンバは、下壁および上壁をそれぞれ画定する基板層およびカバー層の内部またはその間にあるキャビティーとして画定され、側壁によって区切られるマイクロ流体構造である。この反応チャンバの容量は、反応混合物の最大容量を規定する。この容量はマイクロリットルおよびミリリットル範囲でもよく、例えば1マイクロリットル〜数ミリリットルであって、通常1mLよりも少ない。
【0025】
液体処理ユニットはさらに、少なくとも1つの液体を反応チャンバへと供給するための、反応チャンバと流体接続する少なくとも1つの流入チャネルを含む。好適な実施形態によれば液体処理ユニットは、少なくとも第1の流入チャネルを介して反応チャンバと流体接続する少なくとも1つの流入チャンバを含む。
【0026】
種々の液体処理ユニットがそれらの間に部分的に相互に連結されてもよく、例えば1つのアクセスポートまたは流入チャネルが2つ以上の液体処理ユニットと共通していてもよい。反応チャンバの少なくとも一部は、粒子再配列ゾーン、すなわちその中で粒子が自ら再配列できるが、そこからは粒子が少なくとも一時的に出ることができないゾーンとして設計される。
【0027】
貫流変形例の実施形態においては、粒子再配列ゾーンは力の平衡により画定され、この力は第1の流入チャネルを流れる液体によって生じるけん引力およびその反対方向の力を含む。粒子は、例えば一方の力が他方の力に比べて減少または増加したり、取り除かれたりした場合など、2種類の力の間の平衡が失われた場合、粒子再配列ゾーンから逸脱したり、または自らの再配列を停止したりするおそれがある。
【0028】
けん引力は、流れる液体、例えば少なくとも1つの第1の流入チャネルを介して反応チャンバに流入する液体によって生じる流速に依存し、そして、液体に懸濁されている粒子に、粒子に対して液体フローの方向に作用する流体力である。けん引力は、適切なチャンバのデザインとの組み合わせにより(以下のシェイクモード変形例を参照)、(分析装置の加速によって誘導される)オイラー力によっても誘導され得る。
【0029】
反対方向の力は、重力場、磁場、電磁場、静電場、遠心、並進、回転加速度場を含む加速度場の群から選択される場により引き起こされ、分析物捕捉粒子に作用する力である。
【0030】
すなわち、けん引力とその反対方向の力は、互いに対して対向する。液体フローは粒子をフロー方向に引きずる傾向がある一方で、場に誘導される力は液体フローに対し反対の方向に粒子を移動させる傾向がある。
【0031】
場に誘導される力および/または液体フローの速度を調整することによって、粒子再配列ゾーンの境界は変更され得る。例えば、場に誘導される力が増大しけん引力が減少する場合には、粒子再配列ゾーンが小さくなり、すなわち、粒子は分散されにくくなり、反応チャンバの限られた容量または部分でのみ再配列する。けん引力が停止すると、粒子は最終的に沈殿するかまたは塊となるおそれがあり、この場合再配列はもはやほとんど起こらないか、全く起こらない。この状況は一時的に、例えば新しい液体の添加前に起こる場合があり、またこのような粒子の塊はシグナルの強さおよび感受性の増加という結果を招くことから、検出が最終的に行われる反応の終わりには好ましい。
【0032】
逆に、反対方向の力が減少しけん引力が増大する場合には、粒子再配列ゾーンが大きくなり、すなわち、粒子は分散され、粒子は反応チャンバのより大きな容量または部分において再配列する。反対方向の力がさらに減少する場合には、粒子が最終的に反応チャンバから引き出されるおそれがある。
【0033】
したがって、けん引力および反対方向の力を調整することによって、効果的な粒子濃度、拡散距離および流れ抵抗が決定および調節され得る。
【0034】
上述の貫流変形例の代替的な実施形態、すなわちシェイクモード変形例では、粒子の配列は場の力と、オイラー力により誘導される反対方向のけん引力の相互作用によって達成される。マイクロ流体構造におけるオイラー力の使用は周知であり様々な実施形態で用いられているが、最も好適には、例えば(S. Lutzら)、「遠心式プラットフォーム上で高濡れ性流体を混合するための一方向性のシェイクモード」(“Unidirectional shake-mode for mixing highly wetting fluids on centrifugal platforms”)、(12th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences)、2008年10月12日から16日、サンディエゴに記載されているようにシェイクモードで混合する目的で用いられる。オイラー力は分析装置の加速により生じ、懸濁粒子およびとりわけ反応チャンバ中の液体の両方に影響を及ぼす。オイラー力は、場の力(遠心力)と直交する方向において生じている。反応チャンバの幾何学的デザインによっては、結果として生じる流体フローが他の方向にも生じる場合もある。というのも、反応チャンバの壁は、本来は垂直であるフローを異なる方向に偏向させ得るからである。
【0035】
(例えば、分析装置のシーソー動作による)分析装置の加速度を交互に変えることおよびオイラー力を交互に変えることにより、反応チャンバの片側から反応チャンバの他方の側へと行ったり来たりしながら流れ、また分析装置の加速度の変化の度毎に粒子の配列中を流れる液体フローが誘導される。貫流変形例の別の実施形態と比較すると、シェイクモードも一種のポンプ機能を引き起こし、これは液体を複数回にわたって粒子配列を通して移動させる。それゆえ、貫流変形例に関して記載した全ての利点および選択肢は、シェイクモード変形例でも適用できる。
【0036】
分析装置が遠心式の検査装置として設計される場合、場の力は、好適には一定速度の高速な回転運動によって生み出され得る。この実施形態において、場の力は遠心力である。オイラー力によって誘導される反対方向のけん引力は、回転方向の迅速な変化(シェイクモード)によって生じ得る。シェイクモードでは、粒子は、好適には周囲の液体(例えば、試料)の密度よりも少し高い密度を有する。これは、検出目的での粒子の沈殿または凝集を可能にし(これはシグナル強度および感受性を向上させる)、またシェイクモード変形例における粒子のより良好な再懸濁も可能にする。粒子配列の中を通る、液体の「ポンピング」は、好適には遅い最終回転速度および速い回転加速度を伴うシェイクモードにおいて起こる。これは大きなオイラー力(これは結果として大きなけん引力を導く)をもたらすと共に粒子の配列が緩和されるという結果をもたらし、ゆえに結合効率を高める、粒子の配列に関して最適化された液体の貫流をもたらす。
【0037】
シェイクモード変形例を用いることにより、場の力は、加速の開始におけるゼロ(ゼロ回転速度)から加速段階の最後での最大値(最大回転速度)まで大幅に変わる遠心力となる。これは、最初はビーズは流れに引きずられるが、いったん高い回転速度で遠心力がけん引力よりも大きくなると、ビーズだけでなく流体も後方へ流れるので、ビーズを捕捉ゾーンに閉じ込め、流体を捕捉ゾーンの両側で同じ高さにすることができることを意味している。(この捕捉ゾーンは反応チャンバの、回転軸から最も離れた部分に位置付けられる。記載される実施形態において、捕捉ゾーンは接続区域71c内に位置付けられる。)ビーズは流体よりも高い密度を有するので、これらは遠心力によって、流体よりも強い影響を受ける。したがって、ビーズは流体と比較してより捕捉ゾーンに閉じ込められることになり、これはビーズ床は、交互に変わる方向で、流体によって通過されるという結果を招く。回転加速度および速度プロフィールを決めることによって、オイラー力によるポンピング作用の効果および遠心力によるビーズ捕捉効果が制御され得る。
【0038】
例えば、検出目的の粒子の凝集では、高く一定の回転力が好適である。これによりオイラー力はなくなるが、高い遠心力が、反応チャンバの回転軸から最も離れた側に(液体よりも高い密度を有する)ビーズを凝集させる。
【0039】
どちらの変形例、すなわち貫流変形例およびシェイクモード変形例においても、粒子を緩和または凝集させる上述の方法により、(結合および洗浄効率の向上をもたらす)効率的な大量輸送が、検出のための、(シグナル強度および感受性の向上をもたらす)粒子の凝集されたコンパクトな配置と同時に実現され得る。
【0040】
本発明の方法はさらに以下の工程、すなわち、
f)分析物捕捉粒子によって捕捉される分析物に結合するシグナル発生複合体を含む第1の液体試薬を、第1の流入チャネルを介して反応チャンバに供給する工程、または、好適には分析装置の製造中の、試薬のプレロードステップによって、反応チャンバ(21、71)内に、分析物捕捉粒子によって捕捉される分析物に結合するシグナル発生複合体を含む試薬を提供する工程と、
g)第1の流入チャネルを介して、結合していないシグナル発生複合体を粒子再配列ゾーンの外へ洗い流すための第2の液体試薬を供給する工程と、
h)粒子によって捕捉された、複合体結合分析物により発せられるシグナルを検出する工程と
を含んでいてもよい。
【0041】
効率的な反応および/または効率的な洗浄、すなわち迅速な反応速度および低い消費量のためには、分析物捕捉粒子が自ら再配列することが有利である。粒子の再配列ゾーンにおいて粒子は連続運動の状態にあり、すなわち粒子は連続的に液体内で位置を変え、これにより、より良好な混合がもたらされる。これは、少量の容量を使用しながら、粒子が捕捉すべき分析物を見つけるための、結合した分析物または試薬が溶液中の反応物質を見つけるための、および結合していない試薬が反応後により容易に洗い流される可能性の増加およびそのための時間の短縮を意味する。
【0042】
粒子の再配列ゾーンの境界を画定する際には、反応チャンバの形状が重要な役割を果たす場合がある。
【0043】
貫流変形例の好適な実施形態によれば、少なくとも粒子の再配列ゾーンに対応する反応チャンバは、流れの方向において広がる壁を有する、テーパー構造または漏斗構造を有する。この形状は、第1の流入チャネルを介して反応チャンバ内を流れる液体の、下流方向への流速を徐々に減少させ、ここで第1の流入チャネルは、テーパー構造の細い方の縁部または角部、または漏斗の底側に流体的に接続されている。反応チャンバの幅が大きくなるほどフロー速度および、それに起因する粒子に作用するけん引力は、反対方向の力がけん引力よりも高くなるまで減少し、これは粒子がさらに下流へ移動することを防ぐ。それゆえこの方法は、テーパー形状を備えた反応チャンバをデザインすることによって、第1の流入チャネルを介して反応チャンバに入る液体の、指向性の流速を減少させる工程を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の方法は、反応チャンバ内を流れる液体を複数のストリームに分ける工程を含んでいてもよい。これはフロープロフィールを向上させる効果を有し、例えば、通常は放物線状になりやすいフロープロフィールを平坦化したり、また反応チャンバの中央ではより多くの粒子を分散させ、外壁ではより少なくしたりする。他の実施形態によれば本発明の方法は、反応チャンバを、直列に配置される一連のディフューザのようなコンパートメントに分割する工程を含んでいてもよい。直列のディフューザのようなコンパートメントは、例えば大きさに依存する粒子の画分または粒子の一部分をトラップするために用いられてもよく、および/または他の反応工程に用いられてもよい。
【0045】
また、流速は、流入チャネルの大きさを変更することによって、および/または、フローレジスタを有する流入チャネルをデザインし、例えばフローに水圧抵抗を誘導する断面積を制限して、よりフロー速度を減少させることによって制御され得る。ゆえに本発明の方法は、フローレジスタを介して、第1のチャネルを通る液体の流速を制御する工程を含んでいてもよい。
【0046】
それゆえ理想的には、反応チャンバ全体または反応チャンバの少なくとも液体で充填されている部分は、粒子の再配列ゾーンであって、その結果粒子は液体全体を通して分散される。通常、粒子の再配列ゾーンは反応チャンバの容量の50%未満を占め、これはけん引力または反対方向の力が変化した場合でも安全域に留まるためである。
【0047】
シェイクモード変形例の好適な実施形態によれば、反応チャンバは中央エレメントによって、接続部位で接続される2つのサブチャンバに分割され、この接続部位は、2つのサブチャンバを回転軸から離れたところにあるそれらの端部で接続する。中央エレメントは仕切りとして働き、またシェイクモードにおいて接続部位を通って1つのサブチャンバから別のサブチャンバへと流れる液体の流れを引き起こす。シェイクモードの間、液体は交互に1つのサブチャンバから別のサブチャンバへと「ポンプ」される。また粒子は、その高い密度により、接続部位内に(および任意には、各サブチャンバの隣接部分内にも)配列される。シェイクモードにおいてオイラー力により強いられるポンピング動作は、この部位で粒子の配列を通る液体の複数の貫流を引き起こす。これら複数の液体の粒子に対する動きは、液体中の分析物分子の、粒子の表面に固定されている各結合相手に対する結合能力の向上をもたらす。
【0048】
貫流変形例の好適な実施形態と同様に、シェイクモード変形例のサブチャンバの好適な実施形態も、回転軸に向けられる流れの方向に広がる壁を有する形状の構造を有する。好適な実施形態において、この接続部位へ向かう方向でのテーパーは、全ての空間方向で起こり、すなわち、試薬チャンバの高さも、回転軸から離れた接続部位に向かう方向において減少する。この接続部位は、回転軸から最も離れた反応チャンバの部分であることから、遠心力による粒子の凝集はこの部位内で起こる。この遠心力による粒子の凝集は、反応チャンバのこの好適な形状デザインによって支持される。というのも、反応チャンバのこの部分へと向かう形状寸法の減少は、付加的な毛管力を引き起こし、これは比較的低い回転速度においても反応チャンバのこの部分内に粒子を維持するために有利であるからである。また同時に、このような形状デザインは、反応チャンバのこの部分における粒子の凝集に有利であるので、好適な実施形態においてこの接続部位(および任意には、各サブチャンバの隣接部分)は、凝集された粒子の光学シグナルが検出され得る検出チャンバとしても用いられるであろう。
【0049】
反応チャンバは、(例えば、試料流体、液体試薬または洗浄溶液用の)1つまたはそれ以上の流入チャネルを含んでいてもよい。好適には、これら流入チャネルは、反応チャンバの、接続部位に対して反対側、すなわち回転軸の近くに位置付けられる。
【0050】
また反応チャンバは、1つ(またはそれ以上の)流出チャネルを含んでいてもよい。シェイクモード変形例の好適な実施形態において、流出チャネルは粒子の再配列ゾーンのやや上部に位置付けられる。これは、粒子の損失なしにこのゾーン内の液体をほぼ全て交換または除去でき、これによりこのような実施形態の、非常に効率的な洗浄特性がもたらされる。
【0051】
流出チャネルの好適な実施形態において、流出チャネルは、バルブ機能を含み、またシェイクモードプロセスの間に反応チャンバが空になることを防ぐことによって、チャンバを空にするプロセスを制御できる、マイクロ流体のサイフォンの形でデザインされる。このようなマイクロ流体のサイフォンの形状デザインは周知である(例えば、米国特許第6,235,531号明細書)。
【0052】
好適な実施形態によれば、液体処理ユニットは、反応チャンバと流体接続する流入チャネルを少なくとも2つ含み、ここで第2の流入チャネルは、例えば少なくとも粒子を導入するために用いられ、第1の流入チャネルは、反応チャンバに入ると第2の流入チャネルを介して導入された粒子にけん引力を及ぼす他の液体を導入するために用いられる。これは、とりわけ断面が小さい場合、またはフローレジスタを含む場合に、たとえば第1の流入チャネルの目詰まりを防ぐ場合がある。
【0053】
代替的な実施形態において粒子は、好適には懸濁液として、分析装置の反応チャンバに直接加えられ、分析装置の製造中にそこで乾燥され得る。このために、好適な実施形態において試薬チャンバは、粒子またはほかの試薬の、制御され、かつ定められた、直接的な反応チャンバへの適用および乾燥を可能にする凹部を含む。
【0054】
好適な実施形態によれば、液体処理ユニットは少なくとも1つの流出チャネルを含む。
【0055】
液体処理ユニットはさらに、少なくとも1つの流出チャネルを介して反応チャンバと流体接続する、反応チャンバから流出する液体を受容するための少なくとも1つの廃棄チャンバを含んでいてもよい。この廃棄チャンバは、反応チャンバを順次、および/または連続して流れる液体容量を収容するために、通常反応チャンバよりも大きい。
【0056】
本発明の方法はゆえに、粒子が反応チャンバに保持された状態で、液体が反応チャンバから、流出チャネルを介して反応チャンバと流体接続している廃棄チャンバへと流れるよう誘導する工程を含む。
【0057】
1つの廃棄チャンバは、同一または異なる液体処理ユニットの、1つ以上の反応チャンバから液体を受け取ってもよい。
【0058】
液体処理ユニットはさらに、所定量の液体、例えば試料を反応チャンバに供給する液体投与チャンバを含んでいてもよい。液体投与チャンバは、基板層およびカバー層またはその間にあるキャビティーとして画定されるマイクロ流体構造であり、その容量は、充填された時点で、アッセイに用いられる液体容量を規定する。この容量は通常、1マイクロリットル未満であって、例えば約200ナノリットルである。液体投与チャンバは好適には細長い形状およびそれに接続される少なくとも2つのマイクロチャネル、すなわち、液体を液体投与チャンバに満たすことを可能にする第3の液体流入チャネルと、液体投与チャンバの始点と液体流入チャネルの終点を画定し、余分な液体を廃棄チャンバに誘導することができる1つの液体移送チャネル(liquid decanting channel)を有する。そのおよそ反対側に、試料投与チャンバはマイクロ流体バルブ、例えば、幾何学的な表面特性および表面エネルギーの変化に基づき、幾何学的な、または疎水性のバルブを含む。幾何学的なバルブを実現する方法の1つは、より大きなチャネルまたはチャンバの内縁部で平滑な末端を有する狭い導管によるものである。通常、反対方向の力である駆動力を、バルブのエネルギー障壁を破るために必要な力よりも少なく維持することは、液体をこの位置で停止させ、余分な試料を全て、バルブよりも低いエネルギー障壁を有することによって特徴づけられる移送チャネルにそらす。
【0059】
本発明の方法はゆえに、少なくとも第1の流入チャネルを介して反応チャンバと流体接続する、少なくとも1つの液体投与チャンバを介して、反応チャンバに供給されるべき所定量の液体を投与する工程を含んでいてもよい。
【0060】
第1の流入チャネルと流体接続するバイパスチャネルが、例えば希釈液を含む、他の液体を導入するために用いられてもよい。
【0061】
本発明によれば、反応チャンバは検出チャンバとして機能してもよい。これは、捕捉された分析物の存在および/または定量化が、液体と分析物捕捉粒子との混合の後または混合中に、反応チャンバ内で直接決定されることを意味する。検出とは通常光学検出であって、例えば吸光測定、比濁法、発光、生体発光、化学発光、蛍光、燐光などの測光法に基づく。それゆえ好適な実施形態によれば、反応チャンバは少なくとも部分的に、反応チャンバ内での光学検出を可能にする透過性材料で作製される。
【0062】
本発明の方法は好適には自動化され、例えば少なくとも部分的に、分析システムの一部である自動分析機器によって行われる。
【0063】
本発明はゆえに、不均一系の化学反応または生物学的反応を行うシステムにも向けられ、このシステムは、少なくとも1つの液体処理ユニットを含む分析装置であって、この液体処理ユニットが、少なくとも1つの反応チャンバおよびこの反応チャンバと流体接続する少なくとも第1の流入チャネルを含む分析装置と、液体試料中に含まれる分析物を捕捉するための分析物捕捉粒子と、少なくとも反応チャンバに流入し、分析物捕捉粒子に作用するけん引力Fdを生み出す液体と、分析物捕捉粒子に作用する反対方向の力Fgを生み出す手段を含む分析装置を処理する機器とを含む。
【0064】
一実施形態によれば、分析機器は回転可能な支持装置を含み、分析装置は回転可能な支持装置と共に回転できるように、この回転可能な支持装置の上に置かれる。
【0065】
分析機器はさらに、少なくとも1つの流入チャネルを介して反応チャンバに液体を供給する分注ユニットを含んでもよい。
【0066】
分析機器はさらに、検出ユニット、例えば反応結果を検出する光学ユニットを含んでもよい。
【0067】
回転可能な支持装置は、例えばプラスティックやアルミニウムなどの金属によって作製されても、ディスク形状を有していてもよく、電気モータなどのアクチュエータを用いて駆動される回転軸の周りを回転され得る。
【0068】
分注ユニットは、例えばスチール針などの再利用可能で洗浄可能な針、または使い捨ての分注チップを含んでいてもよい。通常分注ユニットは、分注チップまたは針を分析装置に対して移動させる自動位置決め装置に操作可能に結合され、例えばガイドレールを用いて平面上の2つの移動方向に動かされ、例えばスピンドルドライブを用いて平面に直交する第3の移動方向に動かされ得る移送ヘッドに取り付けられてもよい。
【0069】
検出ユニットは、例えばキサノン・ランプ、レーザまたはLEDなどの光源、光をガイドおよびフィルタリングするための、例えば鏡、レンズ、光学フィルター、光ファイバなどの光学素子、1つまたはそれ以上の参照チャネル、CCDセンサなどを含んでいてもよい。この検出ユニットは例えば、分析物捕捉粒子によって捕捉された分析物を検出するように適合される。例えば検出ユニットは、分析物捕捉粒子によって捕捉された分析物に結合させられる蛍光マーカーから発せられる蛍光を検出する、蛍光検出器として構成されてもよい。
【0070】
分析システムはさらに、所定のプロセスオペレーションプランによって試料の自動分析を制御する制御装置を含んでいてもよく、例えばプログラム可能な論理制御装置として構成されてもよい。これはプロセスオペレーションプランに基づきオペレーションを行うための命令を備えた、コンピュータ読み取り可能なプログラムを実行する。分析システムはさらに、試薬容器を受容する試薬ラック、試料容器を受容する試料ラック、例えば分注針を洗浄する洗浄ステーション、液体試薬容器に含まれる分析物捕捉粒子を懸濁するシェイカーまたはミキシングパドルなどを含んでいてもよい。
【0071】
少なくとも1つの流入チャネルを介した反応チャンバへの液体の供給は、好適には、分析機器に関連して記載されるように分注ユニットを用いて自動的に行われる。
【0072】
シグナル発生分析物により発せられたシグナルの検出は、好適には、分析システムに関連して記載されるように、光学検出ユニットを用いて行われ、これは吸光測定、比濁法、発光、生体発光、化学発光、蛍光、燐光の群から選択される、測光法に基づくものであってもよい。
【0073】
温度は化学反応および生物学的反応において重要な役割を果たす場合があるので、本発明の方法は少なくとも1つの反応チャンバを加熱および/または冷却する工程を含んでいてもよく、ここで加熱および冷却とは、概して反応チャンバに熱を提供すること、または反応チャンバから熱を取り除くことである。これは、反応チャンバ内に含まれる液体を一定の温度に維持すること、および/またはこの液体を、例えば温度勾配や繰り返される温度サイクルなどの温度変化に付すことを含む。
【0074】
他の加熱方法および冷却方法も可能である。これは例えば、反応チャンバと接している温度調節ユニット、例えばジュール加熱素子、赤外線加熱素子またはペルティエ素子を用いて達成されてもよいし、空気の流れを用いて達成されてもよい。全ての分析装置は、例えば調節されたシステムのハウジング内に含まれてもよい。
【0075】
本発明の他のおよびさらなる目的、特徴および利点は、好適な実施形態を記載し、本発明の原理のより詳細な説明を果たす以下の記載および付随する図から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】例示的な分析装置の部分的な斜視上面図であって、考えられる液体処理ユニットの要素を示す。
【図2】貫流変形例による反応チャンバの一実施形態を概略的に示す。
【図3】分析物捕捉粒子を粒子の再配列ゾーンに閉じ込める原理を示す。
【図4】反応チャンバの他の実施形態を概略的に示す。
【図5】投与チャンバを含む実施形態を示す。
【図6】図1に示されるような分析装置を含む分析システムを概略的に示す。
【図7】シェイクモード変形例による反応チャンバの一実施形態を概略的に示す。
【図8】aおよびbはシェイクモード変形例で、オイラー力により生じる流体の動きの原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、不均一系の化学反応または生物学的反応用の分析装置10を示し、これはディスク形状を有する装置本体11を含む。この装置本体11は、複数の液体処理ユニット20を含む。液体処理ユニット20は、少なくとも1つの液体を分析物捕捉粒子と混合するための反応チャンバ21と、2つの流入チャネル、すなわち液体を反応チャンバ21に供給するために反応チャンバ21と流体接続している第1の流入チャネル22および第2の流入チャネル23とを含む。
【0078】
液体処理ユニットはさらに、第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21と流体接続する第1の流入チャンバ26と、第2の流入チャネル23を介して反応チャンバ21と流体接続する第2の流入チャンバ27とを含む。また、液体処理ユニット20は、流出チャネル28と、流出チャネル28を介して反応チャンバ21と流体接続する、反応チャンバ21から流出する液体を受け入れるための1つの廃棄チャンバ29とを含む。この廃棄チャンバ29と流体接続されたベント30は、液体が反応チャンバ21に流入し、最終的に廃棄チャンバ29に流入する時に、空気を逃がすことができる。
【0079】
液体懸濁液の容量を第2の流入チャンバ27に分注した後、分析物捕捉粒子は、第2の流入チャネル23を介して反応チャンバ21に導入される。他の液体は、それぞれの容量を第1の流入チャンバ26に分注した後、第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21に導入される。
【0080】
装置本体10は射出成形されたポリマーで作製され、液体処理ユニット20をシールする薄箔(図示せず)によって覆われる。アクセスポートまたは孔は、液体を導入し、そして空気を排出できるように、流入チャンバ26、27およびベント30に対応して設けられる。
【0081】
反応チャンバ21は粒子の再配列ゾーン24としてデザインされ、ここでは力の平衡により、粒子12が自ら再配列できるが、これら粒子12はここから出ることはできない。前記力は、第1の流入チャネル22を流れる液体によって生じるけん引力Fdと、反対方向の力Fgとを含む。この原理は図2および図3に概略的に描かれている。この場合反対方向の力Fgとは、分析装置10を回転することにより生じる遠心力、すなわち加速力である。けん引力Fdは、分析装置10の回転中の遠心力、および流入チャンバ26から反応チャンバ21への液体の流れに左右される。しかしながら、反応チャンバ内の液体の平均流速は、第1の流入チャネル22の寸法および反応チャンバ21の形状にも左右される。とりわけ、平均流速は、反応チャンバ21の底部(図3のゾーンA)から上部(図3のゾーンC)に向かって次第に低下する。これは例えば、テーパー形状、この場合、流れ方向、すなわちAからCに向かって広がる壁を備えた反応チャンバ21として設計することにより達成される。流速が低下するにつれて、粒子12に作用するけん引力Fdも低下する。平行な壁を用いることも可能ではあるが、広がる壁を有することにより、より広い粒子の再配列ゾーン24を有することが可能となり、また粒子12が流出チャネル28を介して反応チャンバ21から出るリスクを減少する。液体は流出チャネル28を介して反応チャンバ21から溢れる場合もあるが、粒子12は、液体が第1の流入チャネル22を通って流れている間も、動的に自ら再配列しながら、粒子の再配列ゾーン24内にとどまり、第1の流入チャネル22を通る液体の流れが停止すると、反応チャンバ21の底部に凝縮される。最大流速を制限し、力の平衡をより良好に制御するために、細長い第1の流入チャネル22またはフローレジスタ31の存在が用いられる。これは、例えば試薬などの新鮮な液体のゆっくりとした供給、すなわち、生成物形成に向けて反応の平衡をシフトすることにより、反応をより効率的にすると同時に、反応時間を長くするという効果も有する。粒子12に作用する反対方向の力Fgは、粒子12がどの程度までゾーンCの方向に入るかを決定し、これはすなわち、粒子の再配列ゾーン24がどの程度の大きさであるかを決定する。力Fgが増加すると、粒子の再配列ゾーン24は小さくなり、反応チャンバ21の底部に位置付けられるであろう。また力Fgが減少すると、粒子12はより分散され、すなわち、粒子の再配列ゾーン24が反応チャンバ21の大部分または全てを占めるであろう。ゆえに、反応チャンバ21および第1の流入チャネル22の形状を変えること、および分析装置10の回転速度を調節することは、反応チャンバ21において粒子12に作用する力FdおよびFgが平衡に達する地点(図3のゾーンB)を変え、そして粒子の再配列ゾーン24の大きさおよび位置を変える。ゾーンCではFgがFdに勝り、このゾーンに入る全ての粒子12はBに向かって戻る傾向がある。ゾーンAではFdがFgに勝り、このゾーンにある全ての粒子12はBに向かって移動する傾向がある。結果として粒子12は自ら再配列し、力Fdおよび力Fgの両方が保持されるまで粒子の再配列ゾーン24内にトラップされる。
【0082】
反応チャンバ21は、別の方法で流速プロフィールに影響するような、種々の形状および開口角を有していてもよい。広がる形状に加えて、並列または直列に構成される複数のディフューザのようなコンパートメントが導入されてもよい。理想的な形状は、フロー方向でのみ速度勾配の低下を生み出し、その直交する方向においては一定の一様な速度を生み出す。しかしながら実際には、放物線状のフロープロフィールが非常に生じやすい。例えば階段状または急激に広がった壁などでは、懸濁された粒子12は、速度の低いゾーンにおいて、例えば集積したり凝集体を形成したりして集まるおそれがある。この望ましくない効果は、粗い、または帯電された表面により促進されるおそれがある。ゆえにむしろ急勾配および滑らかな外形が好ましく、これは最終的に一様なフロープロフィールを促進する構造を有する。この形状は、懸濁された物質が、図2に示すように例えば検出の目的で、反応の最後に反応チャンバ21の専用領域32に収集されるように設計されてもよい。
【0083】
図4では、少なくとも部分的に粒子の再配列ゾーン24として機能するように設計された反応チャンバ21の別の例を、概略的に示す。図4aでは、対称に広がる反応チャンバ21を示す。図4bでは、非対称に広がる反応チャンバ21を示す。図4cでは、反応チャンバ21はフローを多くの平行なストリームに分割する構造33を含み、これはすなわち、複数の平行な再配列ゾーンを有するようなものである。この構造は、フロープロフィールを平坦にすることにより、より一様なフロープロフィールを提供し、また粒子12を反応チャンバ21の中央でより分散させ、外壁上ではあまり分散させない。図4dでは、各コンパートメント34が例えば大きさによって、粒子12の画分または一部分をトラップする、直列するディフューザのようなコンパートメント34を示す。図4eは、流入チャネル22の位置が変わっている図4aの単なる変形例であって、これは図1および図2で示される実施形態に類似している。
【0084】
他の実施形態では、フィルター(図示せず)が用いられる場合もあるが、本発明の目的の1つは、分析装置を可能な限り単純なまま維持し、製造コストを低くすることである。
【0085】
図5は、所定の容量の液体、例えば試料を反応チャンバ21に供給するための、第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21と流体接続する例示的な投与チャンバ35の構造を示す。液体投与チャンバ35によって規定される容量は、およそ200ナノリットルである。この液体投与チャンバ35は細長い形状およびそれに接続される3つのマイクロチャネル、すなわち、第1の流入チャンバ26(図5には図示せず)と流体接続し、液体を液体投与チャンバに満たすことを可能にする第3の流入チャネル36と、液体投与チャンバ35の始点および第3の流入チャネル36の終点を画定し、余分な液体を廃棄チャンバ(図示せず)に誘導することができるようにする液体移送チャネル37と、反応チャンバ21と流体接続する第1の流入チャネル22とを有する。投与チャンバ35と第1の流入チャネル22との間の接続部には、幾何学的なバルブ38が位置付けられる。この位置で試料の流れは一時的に停止し、余分な試料は全て移送チャネル37にそらされる。その後駆動力、この場合遠心力は、バルブ38のエネルギー障壁を破るのに必要な力を超えて増加し、200ナノリットルの液体試料が第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21に移される。
【0086】
図6は、機器を含む不均一系の化学反応または生物学的反応用の分析システム40を概略的に示し、この機器は回転可能な支持装置41を含む。図1のものと同様の分析装置10は、支持装置41と共に回転するように、この支持装置41に着脱自在に固定される。機器はさらに、分注ユニット(図示せず)の一部であって、流入チャネル22、23を介して反応チャンバ21に液体を供給する針44と、反応の結果を検出する光学ユニット45と、試薬容器を受容する試薬ラック46と、試料容器を入れる試料ラック47と、分注ユニットの針44を洗浄する洗浄ユニット48とを含む。
【0087】
図7は、シェイクモード変形例による反応チャンバの一実施形態を概略的に示す。この反応チャンバ71は、接続部位71cで接続される2つのサブチャンバ71aおよび71bに分割され、接続部位71cは反応チャンバ71の、回転軸から最も離れた側に位置付けられる。この、反応チャンバ71の2つのサブチャンバ71aおよび71bへの分割は、堅固な(solid)突起構造74によって生じられる。このソリッド構造は、2つのサブチャンバ71aおよび71cの間の液体の流れが接続部位71cに向けられることへの誘因となる。反応チャンバ71の、回転軸からより離れた側の接続部位71cに加えて、サブチャンバ71aおよび71cの間の付加的な接続部75が、反応チャンバ71の、回転軸により近い側に設けられる。この付加的な接続部75は、シェイクモードにおいて流体が2つのサブチャンバ71aおよび71bの間を運ばれる際に、容量補償領域として用いられ得る。図7の実施形態において、回転軸は図示される流体構造よりも上に位置付けられている。
【0088】
第1の流入チャネル72および第2の流入チャネル73は、反応チャンバ71と流体接続している。これら流入チャネル72および73は、液体を反応チャンバ内に適用するため、例えば試薬液または洗浄液の適用のために用いられ得る。また、流出チャネル78は、反応チャンバ71から流出した液体を受容するために反応チャンバ71と流体接続している。この流出チャネルは、好ましくは、反応チャンバ71で用いられた全ての液体を受容し、そして保管する廃棄チャンバ(図示せず)と流体接続している。好適な実施形態において、流出チャネル78はマイクロ流体のサイフォン(図7参照)として設計される。
【0089】
図7において、反応チャンバ71と流体接続するベント80は、液体が反応チャンバ71内に流入しているときに、空気を排出させる。
【0090】
図7では凹部76も示されている。これら凹部76は好適には反応チャンバ71の底壁にある陥没部であって、有利には、分析装置の製造の間に、試薬そしてまた粒子の反応チャンバ71への所定の適用のために用いられ得る。好適には、液体試薬または粒子の懸濁液は、分析装置の製造の間にこれら凹部76に供給され、乾燥される。分析装置の使用の間に、試薬または粒子は液体(例えば、試料または緩衝液)との接触により溶解または再懸濁され、これは分析装置使用の間の追加の試薬適用工程を省く。
【0091】
分析物捕捉粒子は、流入チャネル72、73を介して反応チャンバ71内に導入されるか、または、好適には凹部76内で乾燥された状態ですでに存在し、流入チャネル72、73を介して反応チャンバ71に入った液体によって再懸濁される。代替的な実施形態では、分析物捕捉粒子は反応チャンバ71内の他の部位、例えば接続部位71c中に供給され得る。好適には、粒子は周囲の液体よりも高い密度を有する。この高い密度の結果、遠心力が加えられた際に、粒子は反応チャンバ71の、回転軸から最も離れた部位に凝集され、この部位とは接続部位71cである。それゆえ、好適な実施形態においてこの接続部位71cは、検出領域としても用いられる。というのも、この領域内で粒子は高い充填密度で凝集され、これは高いシグナル強度および感度に非常に有利であるからである。これらの理由から、接続部位71cは透過性の材料で作製されるか、または少なくとも、光学的な方法によるシグナル検出を可能にするオプティカル・ウィンドウを含む。
【0092】
他の実施形態の好適なデザイン、例えば図1〜図5に示され、説明された幾何学的特徴が、図7によるシェイクモード変形例においても同じように用いられ得る。
【0093】
図8aおよび図8bは、シェイクモードの加速度プロフィールの使用および実行中に、図7に示される反応チャンバに非常に似た反応チャンバにおいて生じる2つの異なる状態をそれぞれ概略的に示す。この構造体の底部の濃色領域は、この反応チャンバの接続部位内に配置される粒子の配列を表し、濃色の粒子領域の上の淡色領域は、シェイクモードにおいて粒子の配列を通って「ポンプ」される液体を表す。淡色領域に加えて、液体はもちろん濃色領域内にも存在しており、粒子間の空間を満たしている。シェイクモードの間、1つのサブチャンバから別のサブチャンバへの効果的な液体の流れを引き起こすオイラー力が現れている。これら粒子の配列中を通って行ったり来たりする効果的な液体の流れは、分析物の、粒子の結合面への結合効率の向上を招く。
【0094】
以下に、本発明にしたがって不均一系の化学反応または生物学的反応を実行する方法の例を示す。
【0095】
この方法は、
a)図1のような分析装置10をシステム40の機器に取り付ける工程と、
b)第2の流入チャネル23を介して分析物捕捉粒子12を反応チャンバ21に供給する工程、または、好適には分析装置の製造中の、分析物捕捉粒子を前もって導入する工程によって分析物捕捉粒子を反応チャンバ71中に提供する工程と、
c)第1の流入チャネル22、72を介して、少なくとも対象分析物を含有する液体試料を反応チャンバ21、71に供給する工程と、
d)力の平衡により、分析物捕捉粒子12を反応チャンバ21、71に含まれる粒子の再配列ゾーン24に閉じ込める工程であって、前記力は、第1の流入チャネル22を通って流れる液体試料によって生じるか、シェイクモードにおけるオイラー力により誘導されるけん引力Fd、および分析装置10を回転させることによって生じる反対方向の遠心力Fgを含む、閉じ込める工程と、
e)液体試料が流れている間、粒子の再配列ゾーン24において、液体試料中に存在する分析物を、粒子12を用いて捕捉する工程と
を含む。
【0096】
以下に、本発明にしたがって不均一系の化学反応または生物学的反応を実行する方法の、別のより詳細な実施例を示す。この方法は、
a)図1のような分析装置10をシステム40の機器に取り付ける工程と、
b)分注ユニットによって、分析物捕捉粒子12を含む液体懸濁液を第2の流入チャンバ27に供給する工程と、
c)分析装置10を回転させることによって、この第1の液体試薬を、第2の流入チャネル23を介して反応チャンバ21に移動させる工程と、
d)分注ユニットによって液体試料を第1の流入チャンバ26に供給する工程と、
e)分析装置10を回転させることによって、液体試料を、第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21に移動させる工程と、
f)分析物捕捉粒子12を用いて、液体試料中に存在する分析物を捕捉する工程と、
g)分注ユニットにより、分析物捕捉粒子12によって捕捉される分析物に結合するシグナル発生複合体を含む第1の液体試薬を、第1の流入チャンバ26に供給する工程と、
h)分析装置10を回転させることによって、この第1の試薬を、第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21に移動させる工程と、
i)分注ユニットにより、結合していないシグナル発生複合体を洗い流すための洗浄緩衝液を第1の流入チャンバ26に供給する工程と、
j)分析装置10を回転させることによって、この洗浄緩衝液を、第1の流入チャネル22を介して反応チャンバ21に移動させる工程と、
k)反応チャンバ内に含まれる先の液体および過剰な洗浄緩衝液を反応チャンバ21から流出させ、流出チャネル28を介して廃棄チャンバ29内に流入させるのに十分な洗浄のため必要に応じて、工程i)および工程j)を繰り返す工程と、
l)力の平衡により、分析物捕捉粒子12を反応チャンバ21に含まれる粒子の再配列ゾーン24に、少なくとも一時的に工程c)、e)、f)、h)、j)の間閉じ込める工程であって、前記力が、第1の流入チャネル22を流れる液体によって生み出される薬剤の力Fdおよびその反対方向の遠心力Fgを含む、閉じ込める工程と、
m)複合体に結合した分析物を担持する粒子12を、遠心力Fgのみによって領域32内に収集する工程と、
n)粒子12によって捕捉された、複合体に結合した分析物によって生じるシグナルを検出する工程と
を含む。
【0097】
上記記載に照らし、本発明の多様な修正および変更が可能であることは明らかである。ゆえに本発明は、添付の請求項の範囲内で、詳細に示されたもの以外にも実施されてもよいということが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの液体処理ユニット(20)を含んでなる分析装置(10)であって、前記液体処理ユニット(20)が、少なくとも1つの反応チャンバ(21、71)および前記反応チャンバ(21、71)と流体接続する少なくとも第1の流入チャネル(22、72)を含む分析装置を設ける工程と、
b)前記第1の流入チャネル(22、72)または第2の流入チャネル(23、73)を介して、分析物捕捉粒子(12)を前記反応チャンバ(21、71)に供給する工程、または、好適には前記分析装置の製造中の、分析物捕捉粒子のプレロードステップによって、分析物捕捉粒子(12)を前記反応チャンバ(21、71)に提供する工程と、
c)前記第1の流入チャネル(22、72)または前記第2の流入チャネル(23、73)を介して、少なくとも対象分析物を含有する液体試料を前記反応チャンバ(21、71)に供給する工程と、
d)力の平衡により、前記分析物捕捉粒子(12)を前記反応チャンバ(21、71)に含まれる粒子の再配列ゾーン(24)に閉じ込める工程であって、前記力が、前記第1の流入チャネル(22、72)を通って流れる液体によって生じるか、または、前記反応チャンバ(21、71)内でオイラー力により誘導されて流れる液体によって生じるけん引力Fd、およびその反対方向の力Fgを含む閉じ込める工程と、
e)前記粒子の再配列ゾーン(24)において、前記液体試料に存在する分析物を前記粒子(12)を用いて捕捉する工程と
を含んでなる、不均一系の化学反応または生物学的反応を行う方法。
【請求項2】
f)前記分析物捕捉粒子(12)によって捕捉される分析物に結合するシグナル発生複合体を含む第1の液体試薬を、前記第1の流入チャネル(22、72)を介して前記反応チャンバ(21、71)に供給する工程、または、好適には前記分析装置の製造中の、試薬のプレロードステップによって、前記反応チャンバ(21、71)内に、前記分析物捕捉粒子によって捕捉される分析物に結合するシグナル発生複合体を含む試薬を提供する工程と、
g)前記第1の流入チャネル(22、72)を介して、結合していないシグナル発生複合体を前記粒子再配列ゾーン(24)の外へ洗い流すための第2の液体試薬を供給する工程と、
h)前記粒子(12)によって捕捉された、複合体結合分析物により発せられるシグナルを検出する工程と
をさらに含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反対方向の力Fgが、重力場、磁場、電磁場、静電場、遠心、並進および回転加速度場を含む加速度場の群から選択される場により誘導される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記反応チャンバ(21)がテーパー形状を有し、前記第1の流入チャネル(22)を介して前記反応チャンバ(21)へ流入する液体の、下流方向への流速が減少する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記反対方向の力Fgが遠心力によって誘導され、前記けん引力Fdが、前記分析装置(10)の加速によって生じるオイラー力により誘導される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応チャンバ(21、71)内を流れる液体を複数のストリームに分ける工程を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応チャンバ(21、71)を直列のディフューザのようなコンパートメント(34)に分割する工程を含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも前記第1の流入チャネル(22、72)を介して前記反応チャンバ(21、71)と流体接続する少なくとも1つの液体投与チャンバ(35)を介して、前記反応チャンバ(21、71)に供給される所定量の液体を投与する工程を含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
液体を、前記反応チャンバ(21、71)から流出させ、流出チャネル(28、78)を介して前記反応チャンバ(21、71)と流体接続する廃棄チャンバ(29)に流入させることを誘導する工程を含んでなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のチャネル(22、72)が、液体の流速を制御するフローレジスタ(31)を含んでなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記分析装置(10)を回転させる工程を含んでなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記反応チャンバ(21、71)を加熱または冷却する工程を含んでなる請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
遠心力によって前記粒子(12)を、前記反応チャンバ(21、71)内の、遠心力を生み出すために用いられる回転軸から最も離れた検出領域に凝集させる工程を含んでなる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子(12)によって捕捉された、複合体結合分析物により生じるシグナルの検出が、吸光測定、比濁法、発光、生体発光、化学発光、蛍光、燐光の群から選択される、測光法に基づいている請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
不均一系の化学反応または生物学的反応を行うシステムであって、
少なくとも1つの液体処理ユニット(20)を含む分析装置(10)であって、前記液体処理ユニット(20)が、少なくとも1つの反応チャンバ(21、71)および前記反応チャンバ(21、71)と流体接続する少なくとも第1の流入チャネル(22、72)を含む分析装置(10)と、
液体試料中に含まれる分析物を捕捉するための分析物捕捉粒子(12)と、
少なくとも前記反応チャンバ(21、71)に流入し、前記分析物捕捉粒子(12)に作用するけん引力Fdを生み出す液体と、
前記分析物捕捉粒子(12)に作用する反対方向の力Fgを生み出す手段を含む前記分析装置(10)を処理する機器と
を含んでなる、不均一系の化学反応または生物学的反応を行うシステム。
【請求項16】
前記反対方向の力Fgが遠心力によって誘導され、前記反応チャンバ(71)が、前記反応チャンバ(71)の、遠心力を生み出すために用いられる回転軸から最も離れた側に位置付けられる接続部位(71c)で接続される2つのサブチャンバ(71a、71b)に分割されている請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記機器がさらに、液体を前記分析装置(10)に供給するための分注ユニットを含んでなる請求項15または16記載のシステム。
【請求項18】
前記機器が、反応結果を検出するための光学ユニット(45)を含んでなる請求項15〜17のいずれかに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a−8b】
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【公表番号】特表2013−505431(P2013−505431A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529238(P2012−529238)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063477
【国際公開番号】WO2011/032941
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】