説明

分析装置のための注入ポート、注入ポートを作動させるための機構および注入ポートを備える分析装置

【課題】 分析装置のための注入ポートであって、注入ポート(10)が分析装置に規定通りに取り付けられた状態では分析装置の分析室への入口を形成し、この入口を通って、分析すべき試料を有する試料供給装置のカニューレが導入され得る、注入ポートにおいて、注入ポートが少なくとも制御下で開閉可能な弾性弁部材(24)を有し、この弁部材によって分析室への入口がカニューレがない場合にも注入ポートを通ってカニューレが通っている場合にも封止され得るようになっている。本発明はさらに、対応の注入ポートが設けられている分析装置と、注入ポートを作動させるための機構とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析すべき試料が試料供給装置によって分析室に放出される分析装置のための注入ポートに関する。本発明はまた、注入ポートを作動させるための機構および対応の注入ポートを備える分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで話題になっている分析装置では、分析すべき液体試料が基本的に自動的に試料供給装置によって、分析すべき試料を含んでいる容器からカニューレを通じて吸引され、試料供給装置を相応に新しく位置決めした後で、分析室に注入され、それに続いて分析される。ここで、分析室は、試料が蒸発されるたとえば反応器であり得る。
【0003】
さまざまな理由から、分析室を、分析前、分析中および分析後に外気にさらすのを制限することが望ましい。したがって、たとえば、外気が分析前に分析室に侵入して場合によっては測定の品質を落とすことがないことが望ましくあり得る。分析すべき試料を分析室で蒸発させる場合、その際に生じるガスは可能な限り完全に対応のセンサに供給されるべきであり、制御されずに周囲に逃げていくことがないようにすべきである。分析後、分析室は、たとえば不活性ガスで洗浄することができる。この不活性ガスもまた、制御されずに周囲に逃げるべきではない。他方、試料供給装置のカニューレを分析室に導入することができなくてはならないので、分析室へのカニューレの入口が必要となる。
【0004】
これまで、分析室への上記の入口は、隔壁によって実現されていた。この隔壁は、試料供給装置のカニューレから単に突出しており、少なくとも新しい状態では、カニューレが導入された場合もカニューレが引き抜かれた後でも、分析室を十分に封止する。しかしながら、自動試料供給装置は通常極めて正確に機能するので、隔壁の突出は常に同じ場所で行われるので、結果として隔壁の老化が早く進行し、よって隔壁を頻繁に取り換えなければならない。監視されることなく長時間連続して機能し、理論的には人間の保守作業を必要とせずに数千の試料を分析することができる自動分析装置では、これまで隔壁の交換は手動でのみ実行されており、それによって効率が損なわれるとともに少なからぬコスト要因が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、分析装置のための注入ポートと、対応の注入ポートを備える分析装置を提案することである。この分析装置では、試料供給装置のカニューレのための所望の閉止可能な入口が隔壁なしで実現されるとともに保守コストが顕著に軽減される。本発明の課題はまた、本発明に係る注入ポートを作動させるための機構を提案することである。この機構によって、特に安全でかつ経済的な注入ポートの運転が保証され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1に係る注入ポートと、請求項10に係る機構と、請求項12に係る分析装置とによって解決される。有利な構成及び変形形態は、各従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、制御下で開閉可能な弾性弁部材によって分析室へのカニューレの入口を、カニューレがない場合およびカニューレが導入されている場合の両方において封止することができるという大きな利点を有する。カニューレを導入する際に、弁部材を広く開放して、カニューレが非接触式に注入ポートを横切るようにすることで、摩擦が生じることがなく弁部材が極めて長い耐久年数を有するようにすることができる。
【0008】
本発明のさらなる詳細および利点は、図面と関連する一実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る注入ポートを極めて概略的に示す側面断面図である。
【図2】Oリングおよびホースアダプタなしで示す図1に係る注入ポートの概略上面図である。
【図3】本発明に係る注入ポートの弁部材の制御された開閉のための装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2には、全体を符号10で示した注入ポートが示されている。この注入ポートは、この実施例の場合には、ケーシング上部12およびケーシング下部14のツーピースから成るケーシングを備える。ケーシング下部14は、いわゆるルーアピン16の形態の接続部を備える。ケーシング下部14は、このルーアピンによって、ここでは詳細には示されていない分析装置の分析室に接続され得る。
【0011】
ケーシング上部12は、さらに、接続部18を備える。この接続部を介して、注入ポートが、圧力源、特に圧縮空気源に接続され得る。ケーシング内部は、これによって、請求項4に記載の加圧可能な室を構成する。注入ポートの機能方法については、図3の説明に関連してもう一度記載する。
【0012】
ケーシング上部においては、ここでは詳しく示さないそれ自体公知の試料供給装置のカニューレのための、円錐形にテーパ状になっておりよって芯出しガイドを形成する開口部20の形態の入口が設けられている。ルーアピン16は、カニューレの出口に合流するとともに開口部20の延長上で装着されているケーシング上部12において存在する貫通孔22を有する。これによって、注入ポートを使用する際には、試料供給装置のカニューレが供給開口部20を介して注入ポート10を通過して通され得る。
【0013】
ケーシング上部12は、この実施例では気密にケーシング下部14にねじ止めされている。この目的のために、この実施例では、ケーシング下部14のある部分が雄ねじを有しており、ケーシング上部12のある部分がそれを相補する雌ねじを有している。当然、ケーシング部分をその他の方法で固定することも可能である。たとえば、フランジ接続である。ケーシング上部12およびケーシング下部14の示したねじ接続は、しかしながら、一方ではさらなる接続箇所なしで実現可能であり、かつ脱着可能であるという大きな利点を有し、それによって、ケーシング上部12のねじを解除することによってケーシング内に設けられている注入ポートの部分に手を入れることが可能になる。
【0014】
ケーシングでは、入口20とルーアピン16との間に、弾性弁部材、ここではホースピース24の形態の弁部材が、支持管26によって、支持管26の開放端部両方に設けられている2つのホースアダプタ28とホースアダプタ28およびケーシングの間の2つのOリング30との間に設けられており、それによって、ホースピース24が自身の長手方向において開口部20を通ってルーアピン16まで延びている試料供給装置のカニューレによって横切られ得るようになっている。ここで、図2においては、上部12、上側Oリング30および上側ホースアダプタ28の画定線が示されていないという極めて概略化した上面図が示されているということを指摘しておく。
【0015】
支持管26には、少なくとも、線32によって示されている切り欠き部が、ホースピース24がケーシング内を占めている圧力比に直接さらされるように設けられている。ホースアダプタ28およびOリング30は、ホースピース24とともにケーシング内部をケーシングの外側から封止している。それによって、たとえば、接続部18を介してケーシング内部に導入されるガスまたは流体が開口部20または孔22を介して逃げることができないようになっている。この構成によって、ホースピース24をケーシング内の内圧を高めることによって圧搾して、それによって注入ポートによって形成されている、ここでは示していない分析装置の分析室への入口を閉鎖し、それによって大気が分析室に侵入することもなければたとえば分析の際に生じたガスが分析室から注入ポートを介して外へ侵出することもないようにすることが可能になる。ここで、入口は、カニューレがない場合にも、また、試料供給装置のカニューレが注入ポートを通じて導入されている場合にも、閉止され得る。その際、後者の場合には、ホースがカニューレの外側に緊密に当接しており、分析室は、当然カニューレを介して試料供給装置に接続される。この試料供給装置は、しかしながら、通常、分析室からのガスが試料供給装置を介して制御されずに逃げることがないようになっている。
【0016】
ホースピース24の内径は、好適には、通常用いられるカニューレの外径よりも大きい寸法になっている。この場合、こうすることによって、ホースピースに圧力が印加されない場合、カニューレを非接触式にホースピースに通すことが可能になる。これによって、摩耗が生じることはない。このことによって、摩擦が生じることはなく、それによって、ホースピースの耐久年数が相当延長される。この構成において分析室はカニューレを導入している間に暫定的に注入ポートによって気密に閉止されていないことは、たいていの用途において損傷を与えない。カニューレを導入している際に実際に気密の閉止が所望の場合には、ケーシング内部の圧力を低減して、ホースピースが導入中にもカニューレに当接するようにし、しかしながらカニューレとホースピースとの間に過度に高い摩擦力が生じないようにする。
【0017】
図3には、概略的に、注入ポート10の作動のための、詳細には、注入ポートに設けられている弁部材の作動のための可能な機構が示されている。この機構は、ここでは圧縮空気タンク40の形態の圧力源を有する。この圧縮空気タンクは、ここでは導管42の形態の流量制限装置と、バッファタンク44と、3/2ウェイバルブ46とを介して、注入ポート10の接続部18に接続されている。3/2ウェイバルブと対応のそれ自体公知の制御装置を介して、注入ポート10に設けられている弾性弁部材、すなわち図1に示したホースピースに、圧力を印加するかまたは負荷を軽減することによって弁部材が開閉する。弁部材を閉止するために過大な圧力を必要としないので、バッファタンク44を介して供給することができる。このことは、流量制限装置42とあいまって、機構をたとえば故障した弾性弁部材の場合に注入ポートにおいて過度の圧縮空気消費がないように保証することを可能にする。通常の分析装置のための注入ポートの寸法において約100mlの容量を有するバッファタンクには、流量制限装置によって、非常に制限された量の容量流しか注ぎたされない。これによって、注入ポート内の故障した弁部材において最大でも1時間当たり30lの空気量しか逃げないように保証される。
【0018】
本発明の思想の範疇において、無数の変更と変形形態が可能である。これらは、たとえば、使用される弁部材の種類に関するものである。したがって、たとえば、外部圧力によって所望のやり方で圧搾される図示のホースピースの代わりに、弾性の二重壁の管部材を使用することが可能である。この管部材は、膨張または流体によって充填され、それによって自身の内径が所望のやり方で減少し、それによって、カニューレありまたはなしでの注入ポートに後置されている分析室への入口を閉止する。また、図示の開端した支持管のかわりに、たとえばU字形にホースピースを張設することも可能である。当業者にとっては、さらに、弾性弁部材の開閉の所望の効果が、弁部材が圧縮空気またはガスではなくて流体を供給された場合にも生じるということが明らかである。多くの場合には、しかしながら、ここで話題になっている形式の分析装置には、圧縮空気源が提供されているので、この圧縮空気源は注入ポートの弁部材の作動のために有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置のための注入ポートであって、当該等出ポートは、分析装置に規定通りに取り付けられた状態では分析装置の分析室への入口を構成し、この入口を分析すべき試料を有する試料供給装置のカニューレが通ることができるようになっている、注入ポートにおいて、
当該注入ポートは、少なくとも、制御下に開閉可能な弾性弁部材を有し、この弾性弁部材によって、分析室への入口が、カニューレが存在しない場合も注入ポートにカニューレが導入されている場合も封止され得るようになっていることを特徴とする、注入ポート。
【請求項2】
請求項1に記載の注入ポートであって、
制御可能な弾性弁部材が水圧式にまたは空気圧式に作動可能であることを特徴とする、注入ポート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の注入ポートであって、
弁部材は、二重壁を有する管部材であり、この管部材を通って試料供給装置のカニューレが導入され得るとともにこの管部材の内径はガスまたは流体を充填することによって減少可能であることを特徴とする、注入ポート。
【請求項4】
請求項1または2に記載の注入ポートであって、
弁部材はホースピースであり、このホースピースを通って試料供給装置のカニューレが導入され得、ここで、ホースピースは、注入ポート内に設けられている流体またはガスによって加圧可能な室内に設けられており、それによって、ホースピースの内側が規定通りの取り付け状態において試料供給装置のカニューレのための入口を構成し、室を加圧することによって、カニューレがない場合に、分析室への入口を、ホースピースの圧搾によって閉止することができ、また、カニューレが導入されている場合に、ホースピースがカニューレに緊密に押し付けられることができるようになっていることを特徴とする、注入ポート。
【請求項5】
請求項4に記載の注入ポートであって、
ホースピースが、開端した支持管またはU字状に張設されていることを特徴とする、注入ポート。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の注入ポートであって、
注入ポートは、試料供給装置のカニューレのための入口および出口を備えるケーシングを備えることを特徴とする、注入ポート。
【請求項7】
請求項6に記載の注入ポートであって、
ケーシングはツーピースで構成されており、ケーシングの一部を取り外すことができ、その際、注入ポートの全体が分析装置から取り外されることはなく、それによって弾性弁部材への入口を確保することを特徴とする、注入ポート。
【請求項8】
請求項6または7に記載の注入ポートであって、ケーシング内に、ガスまたは流体入口が設けられており、それによって弁部材を作動させることを特徴とする、注入ポート。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の注入ポートであって、弁部材が、試料供給装置のカニューレのための入口および出口の間でケーシング内に設けられており、ここで、弁部材と入口との間に、および、弁部材と出口との間に、それぞれOリングが設けられていることを特徴とする、注入ポート。
【請求項10】
請求項2ないし5のいずれか1項に記載の注入ポートの作動のための機構において、
弁部材は、3/2ウェイ弁を介して、弁部材に加圧された流体またはガスを印加するための圧力源に接続されており、
圧力源と3/2ウェイ弁の間に流量画定装置が設けられており、
流量画定装置と3/2ウェイ弁との間に加圧された流体またはガスのためのバッファタンクが挿入されていることを特徴とする、機構。
【請求項11】
請求項10に記載の機構において、
圧力源は、圧縮空気源であり、流量画定装置は、導管であることを特徴とする、機構。
【請求項12】
分析室を備える分析装置であって、分析室には、カニューレを備える試料供給装置を用いて分析すべき試料が導入され得、カニューレのために分析室への入口が注入ポートを通じて形成されている、分析装置において、
注入ポートは、少なくとも制御下で開閉可能な弁部材を有しており、この弁部材によって、分析室への入口が、カニューレがない場合も注入ポートをカニューレが通っている場合も封止され得ることを特徴とする、分析装置。
【請求項13】
請求項12に記載の分析装置において、
注入ポートは請求項2ないし9に記載したように形成されていることを特徴とする、分析装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の分析装置において、
さらに、請求項10または11に記載の注入ポートを作動させるための機構を有することを特徴とする、分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535327(P2010−535327A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518493(P2010−518493)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001259
【国際公開番号】WO2009/015656
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510028578)ダイマテク アナリセンテクニク ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】