説明

分析装置及び分析方法

【課題】新たな手法で試料を分析する技術を提供する。
【解決手段】ハロゲンランプ21から射出される光から、調整部22により特定の波長の光を選択し、導入部23を通して試料3の表面に定常的に照射する。これにより、試料3の表面の分子やポリマーなどが励起され、既定状態から励起状態に遷移する。つぎに、直流高圧電源2から試料へ高電圧を定常的に印加しつつ、導入部23を通してレーザー7からパルスレーザー光を試料3に照射する。これにより、試料に瞬間的に光伝導を誘起し、表面の分子を電界蒸発させる。電界蒸発したイオンは、位置感知型イオン検出器11又はリフレクトロン型質量分析器13により検出され、同定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を分析する技術に関し、とくに、試料表面を原子レベルの分解能で分析可能な分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の表面を原子レベルで分析するための装置に、本発明者が開発した走査型アトムプローブ(Scanning Atom Probe:以下、「SAP」とも表記する)がある(特許文献1参照)。SAPは、漏斗型の微細な引出電極を備えており、この引出電極により平面状の試料を面に沿って走査する。試料面上に数μmの凹凸があり、その突起の先端の位置に引出電極の先端の穴が合うと、先端と穴との間の微細な空間に発生した高電界が、突起先端の原子を電界蒸発させる。このように、試料を表面から個々の原子又は原子団を陽イオンとして電界蒸発させたときに、蒸発した陽イオンを質量分析器に導入して分析することにより、蒸発領域の組成分布を原子レベルの分解能で解明できる。
【特許文献1】特開平7−43373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SAPの開発により、分析可能な試料の幅は飛躍的に広がった。この優れた機能を有する装置が、より多くの研究者に利用され、素晴らしい研究成果を導き出すために、本発明者は、SAPのさらなる改良に努力を重ねている。そして、有機物などを分析対象とする場合に、分析対象の試料を構成する原子間の結合状態を原子レベルで解明することが可能な全く新たな手法を想到するに至った。
【0004】
本発明は、こうした現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな手法で試料を分析する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、分析装置に関する。この分析装置は、試料の表面を走査する電極と、前記試料に電圧を供給する電圧供給部と、試料の表面の原子又は原子団を光伝導により電界蒸発させるための光を射出する第1の光源と、試料の表面の原子又は原子団を励起するための光を射出する第2の光源と、電界蒸発されたイオンを検出するイオン検出部と、を備え、前記第1の光源と第2の光源から射出される光を同時に試料に照射し、前記第2の光源から射出された光により励起された原子又は原子団を、前記第1の光源から射出された光により誘起された光伝導により電界蒸発させて、前記イオン検出部により検出することを特徴とする。
【0006】
分析装置は、前記第2の光源から前記試料の表面に照射する光の波長を可変に調整する調整部を更に備えてもよい。分析装置は、前記第1の光源又は第2の光源から射出される光を収束して前記試料へ導入する導入部を更に備えてもよい。
【0007】
本発明の別の態様は、分析方法に関する。この分析方法は、試料に電圧を供給するステップと、試料の表面の分析領域に電極を位置合わせするステップと、第1の光源と第2の光源から射出される光を同時に試料に照射するステップと、前記第2の光源から射出された光により励起され、前記第1の光源から射出された光により誘起された光伝導により電界蒸発されたイオンを検出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな手法で試料を分析する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(前提技術)
まず、前提技術として、走査型アトムプローブについて説明する。図1は、分析装置の一例である走査型アトムプローブの全体構成を示す図である。走査型アトムプローブ100は、主に、試料に電圧を供給するパルス発生器1および直流高圧電源2、試料3の表面を走査する漏斗型の引出電極5、引出電極5と交換可能に設けられた探針4、試料3から電界放射された電子による像を投影するスクリーン9、引出電極5に入射した電子の電流値を測定する第1の電流計6a、スクリーン9に入射した電子の電流値を測定する第2の電流計6b、試料3の表面にパルスレーザー光を照射するレーザー7、試料3から電界蒸発した陽イオンを検出する位置感知型イオン検出器11、試料3から電界蒸発した陽イオンの質量を分析するリフレクトロン型質量分析器13、イオンの飛行時間を測定するタイマー12、および探針4により試料3の表面形状を分析する表面形状分析部20を備える。
【0011】
この走査型アトムプローブによる試料の分析方法の手順を説明する。まず、試料3に直流高圧電源2から直流バイアス電圧を印加しつつ、接地された引出電極5により試料3の表面を走査し、微細な突起3aを探索する。試料3の表面が研磨されて平坦になっている場合は、ダイシングカッターにより碁盤目状に溝を入れてもよい。溝の深さおよび間隔は、10μm以下であることが好ましい。溝になっていない部分が分析領域となる。試料の腐食効果を研究するために、試料を腐食液またはガス内に置いた後、分析を行ってもよい。腐食領域はくぼむため、分析される領域、すなわちくぼんでいない領域が腐食に強い領域であることが分かる。
【0012】
引出電極5の先端を試料表面に近づけ、試料3に負電圧を印加すると、試料表面の突起3aと引出電極5の穴との間の微細な空間に負の高電界が発生し、突起3aの先端部分から電子が電界放射される。引出電極5の先端の穴5aの中心が、ちょうど突起3aの先端部分の直上にあるときは、ほぼ全ての放射電子8がスクリーン9に向かって飛行し、突起表面をスクリーン9に拡大投影する。このとき、第2の電流計6bに流れる電流は最大となる。引出電極5の先端の穴5aが突起3aの先端部分からずれると、ほぼ全ての放射電子が引出電極5に向かい、第1の電流計6aにより電流が観測される。このとき、第2の電流計6bに流れる電流は減少する。このように、引出電極5が試料3の表面を走査するとき、第1の電流計6aおよび第2の電流計6bにおいて測定される、電界放射された電子による電流は、試料表面の形状を反映して変化する。この現象を利用して、分析すべき突起3aの先端の位置を推測し、その位置に引出電極5の位置を合わせることができる。
【0013】
引出電極5の位置を試料3の突起3aの先端に合わせる別の方法は、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:以下、「STM」とも表記する)、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:以下、「AFM」とも表記する)、または走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:以下、「SPM」とも表記する)の技術を利用する。図1および図2に示した例においては、SAP100は、引出電極5と交換可能に設けられた探針4を備える。試料が導電性材料の場合は、表面形状分析部20としてSTMを、探針4としてSTM用の探針を用い、試料が絶縁性材料の場合は、表面形状分析部20としてAFMを、探針4としてAFM用の探針を用いればよい。
【0014】
引出電極5と探針4を交換し、探針4で試料表面を走査して、表面形状分析部20により試料表面の形状を描写する。探針4により、試料表面の形状のみならず、SAP100により質量分析される突起先端の表面の原子配列も描写される。表面形状を描写した後、引出電極5を所望の突起の直上に位置合わせする。この方法によれば、試料表面の形状および原子配列を取得してから、所望の領域を選択し、一層ごとに質量分析を行うことができるので、分析領域の原子配列と組成との相関関係を知ることができる。
【0015】
引出電極5を表面形状分析部20の探針4として用いてもよい。この場合、引出電極5の先端に、探針4として機能する突起を設けてもよい(例えば、本発明者らによる米国特許第6,797,952号参照)。
【0016】
引出電極5の先端の穴5aの中心と、試料3の突起3aの先端とを位置合わせした後、直流高圧電源2から負のバイアス電圧を試料3に印加し、突起3aの先端から電子を電界放射させる。放射電子8はスクリーン9に入射し、その放射電子による電流値が第2の電流計6bにより測定される。負のバイアス電圧値を変化させて、バイアス電圧値に対する電流値の変化(I−Vプロット)を測定する。これにより、分析領域の電子状態を知ることができる。
【0017】
つづいて、正の直流バイアス電圧を試料3に印加し、それに重畳させて、パルス発生器1により正のパルス電圧を印加する。直流バイアス電圧とパルス電圧の総和が十分に高いと、突起3aの先端部分の表面原子が電界蒸発して陽イオン8となり、放射電子8とほぼ同じ軌跡を描いてスクリーン9に入射する。試料3が絶縁性材料または半導体材料のような導電性の低い材料である場合は、パルス電圧が効率よく突起3aの先端まで伝わらないので、直流電圧が印加されている試料3に、レーザー7によりパルスレーザー光7aを照射し、光励起電界蒸発により表面原子を陽イオンとして脱離させる。これにより、従来のAPでは測定に適さないとされていた低電導性材料であっても、導電性材料と同様に分析することができる。
【0018】
電界蒸発した全ての陽イオン8を質量分析するために、スクリーン9を取り外し、陽イオン8を位置感知型イオン検出器11に入射させる。位置感知型イオン検出器11としては、たとえば、米国特許第5,644,128号に開示された装置が好適である。突起3aから位置感知型イオン検出器11までの陽イオン8の飛行時間は、タイマー12により計測される。タイマー12は、パルス発生器1から開始信号を受けて計測を開始し、位置感知型イオン検出器11からの信号で計測を停止することにより、陽イオン8の飛行時間を計測する。検出されたイオンの質量と電荷との比は、イオンの飛行時間、試料3に印加された電圧値の総和、および試料表面から位置感知型イオン検出器11までの飛行経路により得られる。位置感知型イオン検出器11の入射位置と、電界蒸発する前の原子の位置とは一対一に対応しており、電界蒸発により一層ずつ原子を蒸発させて検出することができるので、分析領域を構成する原子の3次元的な配置を得ることができる。たとえば、一辺が40mmで、位置分解能が0.5mmの位置感知型イオン検出器11を用いた場合、80原子×80原子の領域が分析できることになるが、深さ方向に100原子層分析すると、64万個の原子の立体的な組成分布が得られることになる。
【0019】
飛行時間計測型の質量分析器では、質量の分解能は、イオンの飛行時間計測の正確さに依存する。タイマー12の時間分解能には限界があるので、質量分解能を向上させるには、イオンの飛行経路を長くすることが好ましい。すなわち、飛行経路が長いほど、質量分解能が向上する。本実施の形態のSAP100では、高い質量分解能を実現するために、リフレクトロン型質量分析器13を用いている。分析領域の高分解能質量分析を行うために、位置感知型イオン検出器11を取り外し、スクリーン9を元の位置に戻す。
【0020】
突起3aの先端から電子を電界放射させて、電子状態を反映した像をスクリーン9に投影する。スクリーン9の探査穴10に所望の分析領域の像があるときに、パルス電圧またはパルスレーザー光を試料3に印加して、表面原子を電界蒸発させる。分析領域から電界蒸発した陽イオンは、探査穴10を通り抜けて、リフレクトロン型質量分析器13の飛行空間に入射する。リフレクトロン型質量分析器13は、直線飛行経路の末端に設けられた第1のイオン検出器14と、入射口側に設けられた第2のイオン検出器15を備える。第1のイオン検出器14は、電界蒸発の後に中性化された原子を検出できる。第2のイオン検出器15は、高い質量分解能でイオンを検出できる。第1のイオン検出器14および第2のイオン検出器15によりイオンが検出されたとき、その信号がタイマーに送られ、イオンの飛行時間が計測される。リフレクトロン型質量分析器13により分析される試料面上の領域は、位置感知型イオン検出器11よりも狭く、たとえば直径数nm程度であるが、位置感知型イオン検出器11よりも高い精度でイオンの質量を分析することができるので、用途に応じて、いずれを用いるかを適宜選択すればよい。
【0021】
本実施の形態の走査型アトムプローブ100によれば、以下に列記するような優れた効果が得られる。
1)引出電極5を導入したことにより、試料を針状にする必要がなく、平面状の試料であっても、表面に数μm程度の凹凸があれば分析可能である。
2)試料が平面状であるため、パルスレーザー光の照射が容易であり、光励起電界蒸発を利用して、半絶縁性材料も分析可能である。
3)分析速度とデータ処理能力を向上させることにより、ppmからppb以上の微量分析が可能である。
4)電界放射のI−V特性により、分析領域の電子状態の解明が可能である。
5)電界蒸発の際に、弱い結合ほど切れやすいので、イオン種の統計分布から結合状態を知ることが可能である。
【0022】
また、SAPの利点を、二次イオン質量分析器(SIMS)およびオージェ電子分光器(AES)との比較により列記する。
1)SAPの分解能は、深さ方向では1原子層、横方向では原子レベルであり、組成の3次元分布を原子レベルの高分解能で得ることも可能である。
2)イオン検出器の検出感度は全ての原子、分子について同等であり、AESでは検出できない水素も検出可能である。
3)検出イオン種、とくにクラスターの検出により、試料内部の結合状態の解明が可能である。
4)分析領域からの電界放射電流のI−V特性により、電子状態と組成との関連性を究明することが可能である。
5)検出原子数を増やすことにより、ppmからppb以上の微量分析が可能である。
【0023】
(実施の形態)
金属や一部の半導体を走査型アトムプローブ100で分析すると、通常は、どの原子も同じ結合力で周辺原子と結合しているので、各原子はバラバラになって、単一の原子の陽イオンとして電界蒸発する。しかし、ポリマーや有機分子などは、原子によって周辺原子との結合力が異なるため、強く結合した複数原子がクラスターとなって電界蒸発する。したがって、これらのクラスターイオンを同定することにより、ポリマー、有機分子、生体分子などを構成している原子間の結合力を分析することが可能となる。ポリマーや有機分子などは、一般に電気伝導性が低いので、直流高圧電源2から試料3にパルス電圧を供給しても、効率よく試料表面に達しないので、レーザー7からレーザー光7aを試料に照射して光伝導を誘起することにより、表面原子を電界蒸発させる。
【0024】
これらのポリマーや有機分子は、電子状態、振動状態、回転状態の遷移に伴って特定の波長を吸収したり、吸収後の緩和過程においてその一部のエネルギーを放射する性質を持つものが多い。前述したように、金属や一部の半導体の場合は、単原子イオンが電界蒸発するので、どのような波長のレーザー光を照射したとしても、電界蒸発するイオンの種類に変わりはないが、ポリマーや有機分子などの場合は、照射される光の波長によって、分子の結合状態が変化し、電界蒸発するクラスターイオンの種類が変化する可能性がある。
【0025】
本実施の形態では、試料を構成する分子やポリマーなどの励起エネルギーに相当する光を照射しつつ、同時にレーザー光を照射し、クラスターイオンを電界蒸発させて検出することにより、分子の光特性を原子レベルで分析する技術を提案する。
【0026】
図2は、実施の形態に係る分析装置の一例である走査型アトムプローブ200の構成を示す。図2に示した走査型アトムプローブ200では、図1に示した前提技術の走査型アトムプローブ100の構成に加えて、第2の光源の一例であるハロゲンランプ21と、ハロゲンランプ21から射出される光の波長を可変に調整する調整部22と、光を収束して試料へ導入する導入部23とを更に備える。その他の構成及び動作は、前提技術と同様である。
【0027】
この例では、試料の表面の原子又は原子団を励起するための光を射出する第2の光源として、一般的な有機分子の電子状態の励起エネルギーに相当する紫外から可視の範囲の光を射出することが可能なハロゲンランプを用いている。第2の光源として、その他、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどを用いてもよい。また、分子の振動状態や回転状態を励起させる場合には、赤外線、遠赤外線などを射出することが可能な光源を用いてもよい。
【0028】
調整部22は、ハロゲンランプ21から試料の表面に照射する光の波長を可変に調整する。ハロゲンランプ21から射出される光は、紫外から可視、赤外の範囲の波長の光を含んでおり、特定の波長の光を透過させ、それ以外の波長の光を遮断するフィルターなどを用いて、特定の波長の光を選択することができる。調整部22は、光透過特性の異なる複数のフィルターを、ハロゲンランプ21から射出される光の光路に切替可能に設けることにより、試料の表面に照射する光の波長を調整してもよい。なお、第2の光源として、射出する光の波長が可変な光源を用いる場合には、調整部22を設けなくてもよい。調整部22は、コンピュータ24により制御される。
【0029】
導入部23は、レーザー7又はハロゲンランプ21から射出される光を収束して試料3へ導入する。真空容器中の試料に窓を通して、外部からレーザー7又はハロゲンランプ21から射出される光を直接放射してもよいが、この場合は、光の分散や散乱のため、照射効率が低くなるおそれがある。したがって、本実施の形態では、導入部23の一例として、光ファイバー用のフィードスルーを通し、真空容器内の試料3の直上までファイバーを導いている。この場合、光ファイバーの特性を照射光の波長と整合させることが好ましい。導入部23は、レーザー7とハロゲンランプ21のそれぞれに設けられてもよいし、共用してもよい。
【0030】
つづいて、本実施の形態の分析方法の手順を説明する。まず、ハロゲンランプ21から射出される光から、調整部22により特定の波長の光を選択し、導入部23を通して試料3の表面に定常的に照射する。これにより、試料3の表面の分子やポリマーなどが励起され、既定状態から励起状態に遷移する。つぎに、直流高圧電源2から試料へ高電圧を定常的に印加しつつ、導入部23を通してレーザー7からパルスレーザー光を試料3に照射する。これにより、試料に瞬間的に光伝導を誘起し、表面の分子を電界蒸発させる。つまり、パルスレーザー光により電界蒸発させるタイミングが規定される。パルスレーザー光を照射するタイミングは、コンピュータ24により制御される。なお、レーザー光を定常的に照射しておき、高電圧パルスを印加するようにしてもよい。電界蒸発したイオンは、位置感知型イオン検出器11又はリフレクトロン型質量分析器13により検出され、同定される。
【0031】
様々な波長の光を照射しつつ、電界蒸発したクラスターイオンを同定することにより、試料を構成する原子間の結合状態が光照射によりどのように変わるのかを原子レベルの分解能で直接的に分析することができる。
【0032】
なお、波長可変型のレーザー7を用いれば、ハロゲンランプ21及び調整部22を設けずに、レーザー7から射出される光を変化させつつ、試料の光特性を分析することができる。しかし、一般に、レーザー光の波長は基本波の倍数波に限定され、任意の波長のレーザー光を得るのは容易ではない。図2に示したように、レーザー7とは別に、波長が可変な光源を用意することにより、一般的なレーザー7を利用しつつ、低コストで上述した分析装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】前提技術に係る走査型アトムプローブの全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る走査型アトムプローブの全体構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 パルス発生器、2 直流高圧電源、3 試料、4 探針、5 引出電極、9 スクリーン、10 探査穴、11 位置感知型イオン検出器、12 タイマー、13 リフレクトロン型質量分析器、20 表面形状分析部、21 ハロゲンランプ、22 調整部、23 導入部、24 コンピュータ、100,200 走査型アトムプローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面を走査する電極と、
前記試料に電圧を供給する電圧供給部と、
試料の表面の原子又は原子団を光伝導により電界蒸発させるための光を射出する第1の光源と、
試料の表面の原子又は原子団を励起するための光を射出する第2の光源と、
電界蒸発されたイオンを検出するイオン検出部と、を備え、
前記第1の光源と第2の光源から射出される光を同時に試料に照射し、前記第2の光源から射出された光により励起された原子又は原子団を、前記第1の光源から射出された光により誘起された光伝導により電界蒸発させて、前記イオン検出部により検出することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記第2の光源から前記試料の表面に照射する光の波長を可変に調整する調整部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記第1の光源又は第2の光源から射出される光を収束して前記試料へ導入する導入部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
試料に電圧を供給するステップと、
試料の表面の分析領域に電極を位置合わせするステップと、
第1の光源と第2の光源から射出される光を同時に試料に照射するステップと、
前記第2の光源から射出された光により励起され、前記第1の光源から射出された光により誘起された光伝導により電界蒸発されたイオンを検出するステップと、
を含むことを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−273401(P2007−273401A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100369(P2006−100369)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】