説明

分析装置及び分析方法

【課題】検体の分析を開始するまでに要する時間が短く、しかも分析装置の消費電力を低減することができる分析装置及び分析方法を提供する。
【解決手段】検体、試薬、又はそれらの混合液を加温する加温部と、加温部に電力を供給する電源部と、該電源部の電力供給を制御する制御部とを備える。制御部は、検体を測定しない場合、加温部の温度が検体測定時の加温部の目標温度である測定時目標温度より低い測定開始前目標温度になるように電源部が電力を供給し、検体を測定する場合、加温部の温度が測定時目標温度となるように電源部が電力を供給するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬容器に収容された試薬を用いて検体を分析する分析装置及び分析方法に関し、特に血液、尿等の臨床検体を分析する分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の臨床検体を分析する分析装置では、臨床検体と試薬とを混合して測定試料を調製し、測定試料を所定の温度で反応させて測定が行われる。そのため、分析装置は、測定試料を所定の温度で反応させるためのヒータを有している。正確な検査結果を迅速に出力することが要求されるため、分析装置ではヒータにより測定試料を常時加温している。これにより、ユーザは、分析を開始したいときには即座に分析を開始することができる。しかし、ヒータを用いて測定試料を所定の温度に維持するには大きな電力が必要となる。
【0003】
ここで、例えば特許文献1では、バーコードプリンタ、バーコードリーダ等のI/O装置をスタンバイ中及び必要のない間、電源を遮断又は電源電流を低減させる省電力型検体前処理システム装置が開示されている。I/O装置の使用電力を節約することができるので、全体として節電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−271309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、消費電力を低減するために、例えばヒータ等の電源を遮断した状態から検体の測定が可能な状態になるまでの時間が比較的長い装置に対して、使用可能な状態とするまでの時間が比較的短いI/O装置の電源を遮断又は電源電流を低減させている特許文献1のように、単に装置への電源を遮断した場合、検体が測定可能な状態になるまでに長い時間を要し、分析を即座に開始することができない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、検体の分析を開始するまでに要する時間が短く、しかも分析装置の消費電力を低減することができる分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1発明に係る分析装置は、検体、試薬、又はそれらの混合液を加温する加温部と、該加温部に電力を供給する電源部と、該電源部の電力供給を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記検体を測定しない場合、前記加温部の温度が検体測定時の前記加温部の目標温度である測定時目標温度より低い測定開始前目標温度になるように前記電源部が電力を供給し、前記検体を測定する場合、前記加温部の温度が前記測定時目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする。
【0008】
また、第2発明に係る分析装置は、第1発明において、前記分析装置が設置されている環境の温度である環境温度を取得する環境温度取得部を備え、前記制御部は、取得された環境温度が所定の温度より高い場合、前記測定開始前目標温度を第一の温度に設定し、取得された環境温度が前記所定の温度以下である場合、前記測定開始前目標温度を前記第一の温度より高い第二の温度に設定し、前記検体を測定しない場合、前記加温部の温度が設定された測定開始前目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする。
【0009】
また、第3発明に係る分析装置は、第1発明において、前記分析装置が設置されている環境の温度である環境温度を取得する環境温度取得部を備え、前記制御部は、取得された環境温度が前記測定開始前目標温度より高い場合、前記電源部から前記加温部への電力の供給を停止することを特徴とする。
【0010】
また、第4発明に係る分析装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、節電効果が異なる複数の節電モードの設定を受け付ける節電モード受付部を備え、前記制御部は、前記節電モード受付部で受け付けた節電モードに応じて、前記測定開始前目標温度を設定することを特徴とする。
【0011】
また、第5発明に係る分析装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、検体の測定開始指示を受け付ける開始指示受付部を備え、前記制御部は、前記開始指示受付部が前記測定開始指示を受け付ける前は、前記加温部の温度が前記測定開始前目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御し、前記測定開始指示を受け付けた場合、前記加温部の温度が前記測定時目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする。
【0012】
また、第6発明に係る分析装置は、第5発明において、前記制御部は、前記測定開始指示を受け付けた場合、検体に試薬が添加される前に前記加温部の温度が前記測定時目標温度に到達したか否かを判断し、前記測定時目標温度に到達していない場合、検体に対する処理を待機させることを特徴とする。
【0013】
また、第7発明に係る分析装置は、第1乃至第6発明のいずれか1つにおいて、前記加温部は複数設けてあり、前記制御部は、検体を測定する場合、測定開始を指示された検体の測定に必要な加温部へのみ、前記測定時目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする。
【0014】
また、第8発明に係る分析装置は、第1乃至第7発明のいずれか1つにおいて、前記分析装置の内部の空気を排気する排気部を備え、前記制御部は、検体を測定しない場合、排気を停止又は低減するように前記排気部を制御することを特徴とする。
【0015】
また、第9発明に係る分析装置は、第8発明において、前記排気部は、内外の通気を許可又は禁止する通気許可部を備え、前記制御部は、検体を測定しない場合、内外の通気を禁止するよう前記通気許可部を制御することを特徴とする。
【0016】
また、第10発明に係る分析装置は、第1乃至第9発明のいずれか1つにおいて、節電効果を出力する出力部を備え、前記制御部は、前記測定開始前目標温度に基づき節電効果を取得し、取得した節電効果を出力するよう出力部を制御することを特徴とする。
【0017】
次に、上記目的を達成するために第11発明に係る分析方法は、検体を測定する分析装置で実行される分析方法であって、検体、試薬、又はそれらの混合液を加温する加温部の温度を取得し、前記検体を測定しない場合、前記加温部の温度が、検体測定時の前記加温部の目標温度である測定時目標温度より低い測定開始前目標温度になるように電源部から前記加温部へ電力を供給し、前記検体を測定する場合、前記加温部の温度が前記測定時目標温度となるように前記電源部から前記加温部へ電力を供給することを特徴とする。
【0018】
第1発明及び第11発明では、検体を測定しない場合、加温部の温度が検体測定時の加温部の目標温度である測定時目標温度より低い測定開始前目標温度になるように電力を供給し、検体を測定する場合、加温部の温度が測定時目標温度となるように電力を供給する。これにより、分析装置の加温部を常時測定時目標温度に維持する必要がなく、消費電力を低減することが可能となる。また、検体を測定しない場合であっても、測定開始前目標温度に維持するよう加温していることから、測定時目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、測定を開始するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0019】
第2発明では、取得された環境温度が所定の温度より高い場合、測定開始前目標温度を第一の温度に設定し、取得された環境温度が所定の温度以下である場合、測定開始前目標温度を前記第一の温度より高い第二の温度に設定し、検体を測定しない場合、加温部の温度が設定された測定開始前目標温度となるように電力を供給することにより、環境温度が比較的高い場合には測定開始前目標温度を低めの第一の設定温度に設定することで加温部への電力の供給を最小限に抑制することができる。また、環境温度が比較的低い場合には測定開始前目標温度を高めの第二の設定温度に設定することで測定時目標温度に到達するまでの時間を可能な限り短縮することが可能となる。
【0020】
第3発明では、取得された環境温度が測定開始前目標温度より高いと判断した場合、加温部への電力の供給を停止することにより、加温することがないので無駄な電力供給を回避することが可能となる。
【0021】
第4発明では、受け付けた節電モードに応じて、測定開始前目標温度を設定することにより、例えば測定開始までの待機時間よりも節電効果を優先する場合と、節電効果より測定開始までの待機時間の短縮を優先する場合とに応じて、測定開始前目標温度を変更することができ、ユーザの多様なニーズに柔軟に対応することが可能となる。
【0022】
第5発明では、測定開始指示を受け付ける前は、加温部の温度が測定開始前目標温度となるように電力を供給し、測定開始指示を受け付けた場合、加温部の温度が測定時目標温度となるように電力を供給することにより、分析装置の加温部を常時測定時目標温度に維持する必要がなく、消費電力を低減することが可能となる。また、検体を測定しない場合であっても、測定開始前目標温度に維持するよう加温していることから、測定時目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、測定を開始するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0023】
第6発明では、測定開始指示を受け付けた場合、検体に試薬が添加される前に加温部の温度が測定時目標温度に到達したか否かを判断し、測定時目標温度に到達していないと判断した場合、検体に対する処理を待機させることにより、検体測定時に一定の精度を維持することができ、試薬を無駄にすることを回避することが可能となる。
【0024】
第7発明では、検体を測定する場合、測定開始を指示された検体の測定に必要な加温部へのみ、測定時目標温度となるように電力を供給することにより、不要な加温部については電力を供給することがなく、一層消費電力を低減することが可能となる。
【0025】
第8発明では、検体を測定しない場合、排気を停止又は低減することにより、排気による装置内の温度低下を軽減することができ、測定前目標温度を維持するための消費電力を抑制することが可能となる。
【0026】
第9発明では、検体を測定しない場合、内外の通気を禁止することにより、装置内の温度低下を軽減することができ、測定前目標温度を維持するための消費電力を抑制することが可能となる。
【0027】
第10発明では、測定開始前目標温度に基づき節電効果を取得し、取得した節電効果を出力することにより、節電効果を目視で確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、分析装置の加温部を常時測定時目標温度に維持する必要がなく、消費電力を低減することが可能となる。また、検体を測定しない場合であっても、測定開始前目標温度に維持するよう加温していることから、測定時目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、測定を開始するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る分析装置の測定装置の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る分析装置の測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る分析装置の制御装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る測定装置の制御対象となるハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る分析装置の電源をオンにした場合の、制御装置の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】制御装置の表示部に表示される、節電モード設定画面の例示図である。
【図8】スタンバイ温度設定の手順を説明するための例示図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る分析装置の測定開始指示を受け付けた場合の、制御装置の制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】排気口を開放又は閉鎖する開放・閉鎖部の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本実施の形態では、分析装置として、血液凝固分析装置を一例とし、図面に基づいて具体的に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。本実施の形態に係る分析装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、検体としては血漿を用いる。本実施の形態に係る分析装置1では、測定方法として凝固時間法、合成基質法及び免疫比濁法を用いて検体の光学的な測定を行う。
【0032】
本実施の形態で用いる凝固時間法は、検体が凝固する過程を透過光の変化として検出する測定方法である。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)、Fbg(フィブリノーゲン量)等がある。また、合成基質法の測定項目としてはATIII等、免疫比濁法の測定項目としてはDダイマー、FDP等がある。
【0033】
図1に示すように、分析装置1は、測定装置2と、測定装置2とデータ通信することが可能に接続してある制御装置4とで構成されている。また、測定装置2は、測定機構部5と、測定機構部5の前面側に配置された搬送機構部6とで構成され、測定機構部5は、筐体5A及びカバー体5Bによって覆われている。カバー体5Bは、筐体5Aの前上部左側に開閉可能に取り付けられている。そして、カバー体5Bを開くことによって測定機構部5の内部を露出することができる。また、設置した周囲環境の温度を取得する室温サーミスタ(環境温度取得手段)7が、測定機構部5の下部に備えられている。測定機構部5の下部に室温サーミスタ7が設けられているので、室温サーミスタ7は測定機構部5から発生する熱の影響を受けにくい。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係る分析装置1の測定装置2の構成を示す平面図である。図2に示すように、測定装置2の搬送機構部6は、測定機構部5に検体を供給するために、検体を収容した複数本の検体容器13が保持された検体ラック14を搬送路6a上で左右方向に搬送し、検体容器13を所定の検体吸引位置15a、15bに位置づける。また、搬送機構部6は、未処理の検体を収容した検体容器13が保持された検体ラック14をセットするためのラックセット領域6bと、処理済みの検体を収容した検体容器13が保持された検体ラック14を収容するためのラック収容領域6cとを搬送路6aの両端に有している。また、搬送機構部6は、検体容器13に貼付されたバーコードを読み取るための検体バーコードリーダ16を備えている。
【0035】
測定機構部5は、搬送機構部6から供給された検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的な情報を取得する。本実施の形態では、搬送機構部6の検体ラック14に保持された検体容器13から測定機構部5のキュベット内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。
【0036】
測定機構部5は、第1試薬テーブル21、第2試薬テーブル22、キュベットテーブル23、加温テーブル24、第1検体分注ユニット25、第2検体分注ユニット26、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、第1キャッチャユニット30、第2キャッチャユニット31、第3キャッチャユニット32、試薬バーコードリーダ33、キュベット搬送器34、希釈液搬送器35、ピペット洗浄器36a〜36e、及び検出ユニット37等を備えている。
【0037】
第1試薬テーブル21、第2試薬テーブル22、キュベットテーブル23、及び加温テーブル24は円形状のテーブルであり、それぞれステッピングモータ等の駆動部によって時計回り及び反時計回りの両方に独立して回転駆動される。また、第1試薬テーブル21及び第2試薬テーブル22は、試薬庫40内に配置され、第1試薬テーブル21及び第2試薬テーブル22上に試薬が収容された試薬容器を保持する第1試薬容器ラック310及び第2試薬容器ラック320がセットされる。
【0038】
第1検体分注ユニット25は、支持部25aと、支持部25aによって基端部側が支持されるアーム25bと、アーム25bの先端部に設けられた分注部25cとを有している。アーム25bは、ステッピングモータ等の駆動部によって基端部を支点として水平方向に回転駆動され、上下方向に昇降駆動される。分注部25cにはピペットが取り付けられており、ピペットを用いて検体等が吸引・吐出される。
【0039】
第2検体分注ユニット26及び第1〜第3試薬分注ユニット27〜29についても、第1検体分注ユニット25と同様の構成を備えている。すなわち、第1〜第3試薬分注ユニット27〜29は、それぞれ支持部、アーム、分注部を有し、アームは駆動部によって回転駆動、昇降駆動される。分注部には、ピペットが取り付けられ、ピペットを用いて検体や試薬が吸引・吐出される。
【0040】
試薬バーコードリーダ33は、試薬庫40内に配置された試薬容器、試薬容器を保持する第1試薬容器ラック310、第2試薬容器ラック320に貼付されたバーコードを読み取る。試薬バーコードリーダ33は、試薬庫40の外側に配置されており、キュベット搬送器34と、希釈液搬送器35は、それぞれレール34a、35a上を左右方向に移動する。
【0041】
ピペット洗浄器36a〜36eは、それぞれ第1検体分注ユニット25、第2検体分注ユニット26、及び第1〜第3試薬分注ユニット27〜29のピペットを洗浄するために用いられる。ピペット洗浄器36a〜36eには、ピペットが挿入される孔が上下方向に形成され、形成された孔に供給された洗浄液によってピペットの外面を洗浄する。
【0042】
検出ユニット37は、上面にキュベットを収容する複数個(図示例では20個)の保持孔371が形成され、下面裏側に検出部(図示略)が配置されている。保持孔371にキュベットがセットされると、検出部によってキュベット中の測定試料に含まれる成分を反映した光学的情報が検出される。また、検出ユニット37の温度を維持するために排気ファン50を備えており、開閉することが可能な排気口51を設けることで温度調節を容易にしている。つまり、排気ファン50と排気口51とで、内部の空気を排気する排気部を構成している。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態に係る分析装置1の測定装置2の構成を示すブロック図である。図3に示すように、図2の第1試薬テーブル21、第2試薬テーブル22、キュベットテーブル23、加温テーブル24、第1検体分注ユニット25、第2検体分注ユニット26、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、第1キャッチャユニット30、第2キャッチャユニット31、第3キャッチャユニット32、及び検出ユニット37の各駆動部97、98、141〜145及び冷却器146は、測定装置2の制御部501に電気的に接続されており、制御部501によって動作が制御される。検出ユニット37は、光源を含み、取得した光学的情報を制御部501に対して送信する。
【0044】
制御部501は、CPU501aと、ROM501bと、RAM501cと、通信インタフェース501dとで構成される。CPU501aは、ROM501bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM501cに読み出したコンピュータプログラムを実行することができる。ROM501bは、CPU501aに実行させるためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ等を記憶している。RAM501cは、ROM501bに記憶しているコンピュータプログラム等の読み出しに用いられ、コンピュータプログラムを実行するときの、CPU501aの作業領域として利用される。
【0045】
通信インタフェース501dは、制御装置4に接続されており、検体の光学的情報を制御装置4に送信し、制御装置4の制御部4aからの信号を受信する。また、通信インタフェース501dは、搬送機構部6及び測定機構部5の各部を駆動するためのCPU501aからの指示を各部へ送信する。
【0046】
制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、図1に示すように、制御部4aと、表示部4bと、情報を入力するためのキーボード4cとで構成される。制御部4aは、測定機構部5の制御部501に測定機構部5の各部の動作を制御する信号を送信するとともに、測定機構部5から送信された検体の光学的情報を分析する。また、表示部4bは、検体中に存在する干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)及びビリルビン)に関する情報、制御部4aで取得した分析結果等を表示する。
【0047】
図4は、本発明の実施の形態に係る分析装置1の制御装置4の制御部4aの構成を示すブロック図である。図4に示すように、制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、入出力インタフェース401eと、通信インタフェース401fと、画像出力インタフェース401gとで構成される。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、入出力インタフェース401e、通信インタフェース401f、及び画像出力インタフェース401gは、バス401hにより接続されている。通信インタフェース401fは、測定装置2に接続されている。
【0048】
ハードディスク401dには、検体測定時に加温する目標温度である測定時目標温度、及び測定時目標温度より低いスタンバイ温度(測定開始前目標温度)を記憶している。ハードディスク401dは、測定時目標温度81を37度として記憶しており、スタンバイ温度として設定可能な温度を37度から3度ごとに記憶している。
【0049】
加温ヒータ73は、複数のヒータ素子を備え、加温テーブル24のヒータ素子24a(加温部)、第1試薬分注ユニット27のヒータ素子27a(加温部)、第2試薬分注ユニット28のヒータ素子28a(加温部)、第3試薬分注ユニット29のヒータ素子29a(加温部)、及び検出ユニット37のヒータ素子37a(加温部)を備える。加温ヒータ73により、検体、試薬、又はそれらを混合した混合液が加温される。従来は装置の電源をオンにすると、人間の体温に近い温度、例えば37度に維持するべく常時通電されていた。消費電力を低減するには、検体を測定するまで加温ヒータ73に通電しなければ足りるが、検体の測定を開始する場合に、人間の体温に近い温度に上昇するまでの長い待機時間が生じ、効率良く測定することができない。
【0050】
そこで、本実施の形態では、分析装置1を設置した周囲の環境温度に応じて、スタンバイ温度(測定開始前目標温度)を設定して、スタンバイ温度で測定対象となる検体の温度を維持するよう加温ヒータ73に電力を供給する。図5は、本発明の実施の形態に係る測定装置2の制御対象となるハードウェア構成を示すブロック図である。
【0051】
図5に示すように、制御部501は制御装置4から受信した指示に応じて、電源ユニット(電源部)201から各ヒータ素子への電力の供給を制御する。加温テーブル24のヒータ素子24aへの電力の供給は、ドライブ基板211により制御される。
【0052】
すなわち、制御部501は、ドライブ基板211の制御回路211bを介してスイッチング素子211aをオンオフ制御する。スイッチング素子211aがオン状態となった場合、加温テーブル24のヒータ素子24aに電力が供給され、加温テーブル24が加温される。加温テーブル24の温度はサーミスタ24bにより取得され、加温テーブル24の温度は一定の温度となるように制御される。
【0053】
同様に、検出ユニット37のヒータ素子37aへの電力の供給は、ドライブ基板212により制御される。すなわち、制御部501は、ドライブ基板212の制御回路212bを介してスイッチング素子212aをオンオフ制御する。スイッチング素子212aがオン状態となった場合、検出ユニット37のヒータ素子37aに電力が供給され、検出ユニット37が加温される。検出ユニット37の温度はサーミスタ37bにより取得され、検出ユニット37の温度は一定の温度に制御される。
【0054】
以下、第1試薬分注ユニット27のヒータ素子27a、第2試薬分注ユニット28のヒータ素子28a、第3試薬分注ユニット29のヒータ素子29aへの電力の供給は、それぞれドライブ基板213、214、215により制御される。すなわち、制御部501は、ドライブ基板213、214、215の制御回路213b、214b、215bを介してそれぞれスイッチング素子213a、214a、215aをオンオフ制御する。スイッチング素子213a、214a、215aがオン状態となった場合、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29のヒータ素子27a、28a、29aにそれぞれ電力が供給され、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29が加温される。第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29の温度はそれぞれサーミスタ27b、28b、29bにより取得され、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29の温度は一定の温度に制御される。また、室温サーミスタ7は、分析装置1の設置された環境の温度を取得する。室温サーミスタ7により取得された環境温度が、所定の温度範囲を外れた場合には、警告メッセージ等が出力される。
【0055】
図6及び図9は、本発明の実施の形態に係る分析装置1の電源をオンにした場合の、制御装置4の制御部4aの処理手順を示すフローチャートである。なお、本実施の形態においては、分析装置1の電源をオンにしてからシャットダウン指示を受け付けるまでの期間で、測定開始指示の受信するステップ(後述するステップS901でYES)から測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過するステップ(後述するステップS907でYES)までの期間を、検体を測定する場合とし、分析装置1の電源をオンにしてからシャットダウン指示を受け付けるまでの期間で、上記の期間を除いた期間を、検体を測定しない場合としている。また、本実施の形態では、冷却器146は、検体を測定する場合でも、検体を測定しない場合でも、試薬を保存するための所定の温度となるように常に電力供給されている。駆動部97、98、141〜144は、検体を測定する場合に電力供給され、検体を測定しない場合には電力供給されない。
【0056】
まず、分析装置1の電源が入った場合、制御装置4の制御部4aは、温度センサ7で取得された環境温度を示す環境温度情報を測定装置2から受信する(ステップS601)。その後、制御部4aは、節電モードの設定を受け付ける(ステップS602)。
【0057】
ここで、節電モードには、節電効果のある範囲で測定開始までの待機時間の短縮を優先するモードである「節電モードB」と、「節電モードB」よりも節電効果を優先するモードである「節電モードA」とがある。節電モードは、節電モード設定画面からユーザにより設定される。図7は、制御装置4の表示部4bに表示される、節電モード設定画面の例示図である。
【0058】
図7に例示する節電モード設定画面には、モードの名称とチェックボックスとが対応して表示される。モードの名称「節電モードA」に対応するチェックボックスにチェックを入力した場合、節電効果を最大とするべく、比較的低い温度にスタンバイ温度(測定開始前目標温度)が設定される。この場合、測定開始時に測定時目標温度まで加温するのにある程度の時間を要するので、検体の測定時に多少の待機時間が生じるおそれはあるが、節電効果は大きくなる。
【0059】
一方、モードの名称「節電モードB」に対応するチェックボックスにチェックを入力した場合、スタンバイ温度が「節電モードA」におけるスタンバイ温度より高い温度に設定される。この場合、節電効果はやや小さくなるものの、測定開始時に測定時目標温度まで加温する時間を短縮することができ、検体の測定時に待機時間が生じないようにすることができる。なお、本実施の形態において、「節電モードB」におけるスタンバイ温度は、後述するように、測定時目標温度よりは低く設定される。
【0060】
つまり、本実施の形態では、節電モード設定画面により、「節電モードA」又は「節電モードB」を選択することで、スタンバイ温度(測定開始前目標温度)を何度にするかが設定でき、節電モード設定画面が温度設定部として機能している。
【0061】
図6に戻って、ステップS602の後、制御装置4の制御部4aは、受信した環境温度情報及び設定を受け付けた節電モードに基づいて、スタンバイ温度を設定する(ステップS603)。図8は、スタンバイ温度設定の手順を説明するための例示図である。本実施形態では、測定時目標温度81が37度としてハードディスク401dに記憶されており、スタンバイ温度として設定可能な温度が37度から3度ごとにハードディスク401dに記憶されている。例えば受信した環境温度情報が示す環境温度82が23度であり、受け付けた節電モードが「節電モードA」である場合、直近で環境温度82より低い温度である22度にスタンバイ温度が設定される。また、受信した環境温度情報が示す環境温度82が23度であり、受け付けた節電モードが「節電モードB」である場合、直近である環境温度82より高い温度である25度にスタンバイ温度が設定される。
【0062】
次に、制御装置4の制御部4aは、設定したスタンバイ温度に近づくように測定装置2の加温ヒータ73を制御するよう測定装置2の制御部501へ制御指示を送信する(ステップS604)。測定装置2の制御部501は、受信した指示に応じて加温ヒータ73への電力の供給を制御して、加温テーブル24、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、及び検出ユニット37を、設定したスタンバイ温度に近づくよう制御する。具体的には、制御部4aは、加温対象となる測定装置2の各ユニット、すなわち加温テーブル24、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、及び検出ユニット37の温度を測定装置2からそれぞれ取得する。そして、各ユニットの温度のうち設定したスタンバイ温度より低い温度のユニットがあった場合は、そのユニットのヒータ素子へ電力を供給するように測定装置2の制御部501に制御指示をし、各ユニットの温度のうち設定したスタンバイ温度以上のユニットがあった場合は、そのユニットのヒータ素子への電力供給を停止するように測定装置2の制御部501に制御指示する。
【0063】
ステップS604の後、制御部4aは、加温対象となる測定装置2の各ユニット、すなわち加温テーブル24、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、及び検出ユニット37の温度を測定装置2からそれぞれ取得し(ステップS605)、取得した全ての温度がスタンバイ温度以上であるか否かを判断する(ステップS606)。制御部4aが、取得した温度の中にスタンバイ温度より低い温度があると判断した場合(ステップS606:NO)、制御部4aは、処理をステップS604へ戻し、上述した処理を繰り返す。制御部4aが、取得した全ての温度がスタンバイ温度以上であると判断した場合(ステップS606:YES)、制御部4aは、ステップS901へ処理を進める。
【0064】
図9は、本発明の実施の形態に係る分析装置1の電源をオンにした場合の、制御装置4の制御部4aの処理手順を示す図6のフローチャートの続きを示すフローチャートである。ステップS606の後、制御装置4の制御部4aは、測定開始指示を測定装置2から受信したか否かを判断する(ステップS901)。本実施の形態では、測定装置2の測定開始ボタンの押し下げにより測定開始指示が測定装置2の制御部501から制御装置4の制御部4aに送信される。
【0065】
制御部4aが、測定開始指示を受信していないと判断した場合(ステップS901:NO)、制御部4aは、処理をステップS909に進める。制御部4aが、測定開始指示を受信したと判断した場合(ステップS901:YES)、制御部4aは、測定時目標温度に近づくように測定装置2の加温ヒータ73を制御するよう測定装置2の制御部501へ制御指示を送信する(ステップS902)。具体的には、制御部4aは、加温対象となる測定装置2の各ユニット、すなわち加温テーブル24、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、及び検出ユニット37の温度を測定装置2からそれぞれ取得する。そして、各ユニットの温度のうち測定時目標温度より低い温度のユニットがあった場合は、そのユニットのヒータ素子へ電力を供給するように測定装置2の制御部501に制御指示をし、各ユニットの温度のうち設定した測定時目標温度以上のユニットがあった場合は、そのユニットのヒータ素子への電力供給を停止するように測定装置2の制御部501に制御指示する。
【0066】
なお、ステップS902における制御部4aから測定装置2の制御部501に送信される制御指示では、すべてのユニットについて測定時目標温度まで加温するような電力供給の制御指示はなされておらず、測定開始指示の対象となる検体の測定に必要なユニットについてのみ、測定時目標温度まで加温するよう電力の供給を制御する制御指示がなされている。例えば測定開始指示の対象となる検体の測定に使用する試薬が第1試薬分注ユニット27のみで供給される場合、第2試薬分注ユニット28及び第3試薬分注ユニット29は測定時目標温度までは加温しない。これにより、不要なユニットについては電力を供給することがなく、一層消費電力を低減することが可能となる。
【0067】
図9に戻って、制御部4aは、加温対象となりうる測定装置2の各ユニット、すなわち加温テーブル24、第1試薬分注ユニット27、第2試薬分注ユニット28、第3試薬分注ユニット29、及び検出ユニット37の温度を測定装置2からそれぞれ取得する(ステップS903)。検体に試薬が添加される前に、ステップS903で取得した、測定開始指示の対象となる検体の測定に必要な全てのユニットの温度が測定時目標温度近傍であるか否かを判断する(ステップS904)。具体的には、測定時目標温度を中心とした所定範囲内、例えば±2度以内であるか否かを判断する。
【0068】
制御部4aが、ステップS903で取得した、測定開始指示の対象となる検体の測定に必要なユニットの温度の中に測定時目標温度近傍ではない温度があると判断した場合(ステップS904:NO)、制御部4aは、検体を吸引するタイミングであるか否かを判断する(ステップS905)。制御部4aが、検体を吸引するタイミングではないと判断した場合(ステップS905:NO)、制御部4aは、処理をステップS902へ戻し、上述した処理を繰り返す。制御部4aが、検体を吸引するタイミングであると判断した場合(ステップS905:YES)、制御部4aは、吸引の対象となる検体の吸引を待機する待機指示を測定装置2へ送信し(ステップS906)、処理をステップS901へ処理を戻す。
【0069】
制御部4aが、ステップS903で取得した、測定開始指示の対象となる検体の測定に必要な全てのユニットの温度が測定時目標温度近傍であると判断した場合(ステップS904:YES)、制御部4aは、測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過したか否かを判断する(ステップS907)。制御部4aが、測定対象となる検体で検出ユニット37を通過していない検体があると判断した場合(ステップS907:NO)、制御部4aは、処理をステップS904へ戻して上述した処理を繰り返す。制御部4aが、測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過したと判断した場合(ステップS907:YES)、制御部4aは、排気ファン50の停止指示及び排気口51の閉鎖指示を測定装置2へ送信する(ステップS908)。
【0070】
排気ファン50の停止指示及び排気口51の閉鎖指示を受信した測定装置2の制御部501は、排気ファン50を停止し、排気口51を閉鎖する。排気口51は、同じ位置に穴部を有する2枚の板をソレノイド等を用いてスライドさせることにより開放又は閉鎖される。
【0071】
図10は、排気口51を開放又は閉鎖する開放・閉鎖部の例示図である。図10に示すように、排気口51は、同じ位置に穴部を有する2枚の閉鎖板111、112がスライドすることが可能にはめ込んであり、例えば制御部501が閉鎖指示を受信した場合、ソレノイド等により一方の閉鎖板111を他方の閉鎖板112上へスライドさせることにより、穴部が塞がり、通気を閉鎖する。
【0072】
図9に戻って、制御装置4の制御部4aは、ユーザからシャットダウンの指示を受け付けたか否かを判断する(ステップS909)。制御部4aが、シャットダウンの指示を受け付けていないと判断した場合(ステップS909:NO)、制御部4aは、処理をステップS604へ戻す。制御部4aが、シャットダウンの指示を受け付けたと判断した場合(ステップS909:YES)、制御部4aは、処理を終了する。
【0073】
なお、スタンバイ温度に基づいて節電効果を算出し(節電効果算出部)、表示部4bへ出力することが好ましい(出力部)。節電効果を目視で確認することができ、スタンバイ温度をより適切に設定することができるからである。
【0074】
節電効果を示す指標は特に限定されるものではない。例えば測定時目標温度を維持するために必要なワット数を基礎として、スタンバイ温度を維持するために必要なワット数の比率として算出しても良い。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、分析装置1の測定装置2内の加温対象となるユニットを常時測定時目標温度に維持する必要がなく、消費電力を低減することが可能となる。また、検体を測定しない場合であっても、スタンバイ温度に維持するよう加温していることから、測定時目標温度に到達するまでの時間を短縮することができ、測定を開始するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、血液凝固分析装置に本発明を適用した例を示したが、血液凝固分析装置に本発明を適用することに限定されず、例えば免疫分析装置、生化学分析装置、血球計数装置等の臨床検体分析装置に本発明を適用してもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態では、図7の例で示したように、設定した節電モードに応じてスタンバイ温度を2段階に変更するようにしているが、複数のスタンバイ温度、例えば3度ごとの段階的なスタンバイ温度を制御装置4のハードディスク401dに記憶しておき、受信した環境温度に応じて適切なスタンバイ温度を設定するようにしても良い。
【0078】
さらに、上述した実施の形態では、図6に示したように、制御装置4の制御部4aは、受信した環境温度及び設定を受け付けた節電モードに基づいて、スタンバイ温度を設定する(ステップS603)が、節電モードの入力を受け付けることなく、受信した環境温度が所定の温度より高いか否かに応じてスタンバイ温度を設定しても良い。
【0079】
この場合、制御部4aは、受信した環境温度情報が示す環境温度が所定の温度より高いか否かを判断し、所定の温度より高いと判断した場合、スタンバイ温度をやや低めである第一の設定温度に設定し、所定の温度以下であると判断した場合、スタンバイ温度を第一の設定温度より高い第二の設定温度に設定することが好ましい。これにより、環境温度が高い場合にはスタンバイ温度を低めの第一の設定温度に設定することで、加温ヒータ73への電力の供給を最小限に抑制することができる。また、環境温度が低い場合にはスタンバイ温度を高めの第二の設定温度に設定することで、加温ヒータ73による測定時目標温度に到達するまでの時間を可能な限り短縮することが可能となる。
【0080】
図8を用いて説明すると、例えば所定の温度83を22度とした場合、第一の設定温度84を25度とし、第二の設定温度85を28度とする。環境温度が22度以上である場合、比較的低い温度である25度まで加温するのは容易であり、消費電力を低減することができる。逆に環境温度が22度より低い場合、比較的高い温度である28度まで加温しておかないと、測定時目標温度81まで所定の時間内に加温することができない。
【0081】
なお、制御装置4の制御部4aが、受信した環境温度がスタンバイ温度より高いと判断した場合、制御部4aが、加温ヒータ73に対して電力を供給しないよう、電源ユニット201からの電力の供給を停止する指示を制御部501へ送信することが好ましい。これにより、環境温度がスタンバイ温度より高い場合には、加温することがないので無駄な電力供給を回避することが可能となる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、測定開始指示は、測定装置2から受信しているが、制御装置4のキーボード4cから入力された指示を受け付けてもよいし、ネットワークを介して接続されている外部コンピュータから受け付けても良い。
【0083】
なお、本実施の形態では、吸引の対象となる検体の吸引を待機する待機指示を測定装置2へ送信しているが、検体の測定処理を待機状態とすれば足り、例えば吸引後の検体への試薬の添加を待機する待機指示を送信しても良い。
【0084】
また、上述した実施の形態では、排気口51は、同じ位置に穴部を有する2枚の板をソレノイド等を用いてスライドさせることにより開放又は閉鎖される。例えば周期的な配置の穴部を有する2枚の板をソレノイド等を用いてスライドさせることにより開放又は閉鎖するようにしても良い。
【0085】
また、上述した実施の形態では、排気口51は、同じ位置に穴部を有する2枚の板をソレノイド等を用いてスライドさせることにより開放又は閉鎖され通気を止めるが、もちろん、完全に通気を止めることに限定されるものではなく、排気ファン50の回転数を下げる、穴部の重なる領域を増やす等により、通気を低減させても良い。
【0086】
また、上述した実施の形態では、制御装置4の制御部4aが、測定装置2の制御部501に制御指示することで、スタンバイ温度及び測定時目標温度へ近づくよう加温ヒータ73を制御しているが、制御装置4の制御部4aからの制御指示を介さずに測定装置2の制御部501が制御しても良い。
【0087】
また、上述した実施の形態では、分析装置1の電源をオンにしてからシャットダウン指示を受け付けるまでの期間で、測定開始指示の受信するステップ(ステップS901でYES)から測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過するステップ(ステップS907でYES)までの期間を、検体を測定する場合とし、分析装置1の電源をオンにしてからシャットダウン指示を受け付けるまでの期間で、上記の期間を除いた期間を、検体を測定しない場合としているが、本発明はこれに限らない。測定開始指示の受信するステップ(後述するステップS901でYES)から測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過するステップ(後述するステップS907でYES)までの期間に測定中止指示があった場合、それ以降の期間を、検体を測定しない場合としても良い。また、全ての検体が検出ユニット37を通過しても、所定時間は再び測定開始されるとみなして、測定開始指示の受信するステップ(ステップS901でYES)から測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過するステップ(ステップS907でYES)が終了して所定時間が経過するまでの期間を、検体を測定する場合としても良い。また、予め設定しておいた日常よく測定を開始する時間を予め設定しておき、その時間になってから、測定対象となる全ての検体が検出ユニット37を通過するステップ(ステップS907でYES)が終了して所定時間が経過するまでの期間を、検体を測定する場合としても良い。
【0088】
また、上述した実施の形態では、節電モード設定画面で、節電モードを受け付けることで、スタンバイ温度(測定開始前目標温度)を変更し、節電効果を優先するか、検体の測定時に待機時間が生じないようにすることを優先するかを変更しているが、本発明はこれに限らない。測定装置2に節電モードごとに機械スイッチが設けられていて、機械スイッチが押されることで、節電効果を優先するか、検体の測定時に待機時間が生じないようにすることを優先するかを変更しても良い。
【0089】
また、上述した実施の形態では、制御部4aが、測定開始指示を受信したと判断した場合(ステップS901:YES)、制御部4aは、測定時目標温度に近づくように測定装置2の加温ヒータ73を制御するよう測定装置2の制御部501へ制御指示を送信する(ステップS902)が、本発明はこれに限らない。測定に関連する入力を受け付けたら、制御部4aは、測定時目標温度に近づくように測定装置2の加温ヒータ73を制御するよう測定装置2の制御部501へ制御指示を送信しても良い。例えば、測定に関連する入力として、検体番号など検体を特定する情報及び測定項目を含む情報である測定オーダの入力を受け付けたら測定時目標温度に近づくように測定装置2の加温ヒータ73を制御するよう測定装置2の制御部501へ制御指示を送信しても良い。
【0090】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。例えば、上述した測定開始指示を受信した時点で、スタンバイ温度から測定時目標温度へと加温時の目標温度を変更しているが、例えば節電モード解除ボタンを別個に備え、節電モード解除ボタンが押し下げられたことを検知した時点で、スタンバイ温度から測定時目標温度へと加温時の目標温度を変更しても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 分析装置
2 測定装置
4 制御装置
4a 制御部
7 室温サーミスタ(環境温度取得部)
24 加温テーブル
27 第1試薬分注ユニット
28 第2試薬分注ユニット
29 第3試薬分注ユニット
37 検出ユニット
40 試薬庫
50 排気ファン(排気部)
51 排気口(排気部)
201 電源ユニット(電源部)
501 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体、試薬、又はそれらの混合液を加温する加温部と、
該加温部に電力を供給する電源部と、
該電源部の電力供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記検体を測定しない場合、前記加温部の温度が検体測定時の前記加温部の目標温度である測定時目標温度より低い測定開始前目標温度になるように前記電源部が電力を供給し、
前記検体を測定する場合、前記加温部の温度が前記測定時目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記分析装置が設置されている環境の温度である環境温度を取得する環境温度取得部を備え、
前記制御部は、
取得された環境温度が所定の温度より高い場合、前記測定開始前目標温度を第一の温度に設定し、取得された環境温度が前記所定の温度以下である場合、前記測定開始前目標温度を前記第一の温度より高い第二の温度に設定し、前記検体を測定しない場合、前記加温部の温度が設定された測定開始前目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記分析装置が設置されている環境の温度である環境温度を取得する環境温度取得部を備え、
前記制御部は、
取得された環境温度が前記測定開始前目標温度より高い場合、前記電源部から前記加温部への電力の供給を停止することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項4】
節電効果が異なる複数の節電モードの設定を受け付ける節電モード受付部を備え、
前記制御部は、前記節電モード受付部で受け付けた節電モードに応じて、前記測定開始前目標温度を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項5】
検体の測定開始指示を受け付ける開始指示受付部を備え、
前記制御部は、
前記開始指示受付部が前記測定開始指示を受け付ける前は、前記加温部の温度が前記測定開始前目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御し、前記測定開始指示を受け付けた場合、前記加温部の温度が前記測定時目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記測定開始指示を受け付けた場合、検体に試薬が添加される前に前記加温部の温度が前記測定時目標温度に到達したか否かを判断し、前記測定時目標温度に到達していない場合、検体に対する処理を待機させることを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記加温部は複数設けてあり、
前記制御部は、検体を測定する場合、測定開始を指示された検体の測定に必要な加温部へのみ、前記測定時目標温度となるように前記電源部が電力を供給するよう制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記分析装置の内部の空気を排気する排気部を備え、
前記制御部は、検体を測定しない場合、排気を停止又は低減するように前記排気部を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記排気部は、内外の通気を許可又は禁止する通気許可部を備え、
前記制御部は、検体を測定しない場合、内外の通気を禁止するよう前記通気許可部を制御することを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
節電効果を出力する出力部を備え、
前記制御部は、前記測定開始前目標温度に基づき節電効果を取得し、取得した節電効果を出力するよう出力部を制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項11】
検体を測定する分析装置で実行される分析方法であって、
検体、試薬、又はそれらの混合液を加温する加温部の温度を取得し、
前記検体を測定しない場合、前記加温部の温度が、検体測定時の前記加温部の目標温度である測定時目標温度より低い測定開始前目標温度になるように電源部から前記加温部へ電力を供給し、
前記検体を測定する場合、前記加温部の温度が前記測定時目標温度となるように前記電源部から前記加温部へ電力を供給することを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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