説明

分析装置用サンプラおよび分析装置

【課題】他の装置に接続して検体ラックの受け渡しを行なうように使用する場合と、そのような接続を行なうことなく使用する場合とのいずれであっても、適切に対処可能な分析装置用サンプラを提供する。
【解決手段】検体ラック3を一定の経路で移送可能な移送路20A,20Bと、この移送路の周囲に位置する枠部21と、を備えている、分析装置用サンプラ2であって、枠部21には、この枠部21から分離除去可能であり、かつ枠部21から分離除去されることによって枠部21に切欠き部を開口させた状態に設けることが可能な分離除去可能部24A,24Bが設けられており、枠部21に前記切欠き部が開口した状態に設けられたときには、この切欠き部を介して検体ラック3を枠部21の外部側方から移送路20A,20B上に入退出させることが可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの分析を行なう分析装置の所定位置に検体ラックを移送するのに用いられる分析装置用サンプラ、およびこれを備えた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液などの検体の分析を行なうための分析装置としては、検体の分析処理が可能とされた分析装置本体に、検体ラックを一定の経路で移送するサンプラ(移送装置)を組み合わせたものがある。このような構成によれば、複数の検体ラックを分析装置本体の所定箇所に順次移送する動作を自動化し、検体の分析処理の容易化および迅速化を図ることができる。
【0003】
一方、分析装置は、それ単独で使用されることに代えて、他の分析装置と接続され、かつこれらの分析装置間において検体ラックの受け渡しが行なわれるようにして用いられる場合もある(たとえば、特許文献1,2を参照)。このような構成によれば、複数項目の分析処理を連続して行なうことができるために、分析処理効率がよい。
【0004】
しかしながら、従来においては、次に述べるように、改善すべき点があった。
【0005】
すなわち、分析装置は、前記したように、単独で使用されるだけではなく、他の分析装置と組み合わされて使用される場合もあるため、この後者の場合にも好適に対処できるように構成することが要望される。このような要望に的確に応えるには、分析装置に具備されているサンプラを他の分析装置のサンプラなどに容易に接続できるようにし、かつこれらのサンプラ間において検体ラックの受け渡しが適切に行なわれるようにする必要がある。
【0006】
これに対し、従来においては、前記したような要望に的確に対応し得る分析装置用サンプラは提案されていないのが実情であった。すなわち、分析装置用サンプラは、検体ラックの移送路の周囲に枠部が設けられた構成とされ、検体ラックを移送させる際にこの検体ラックを枠部によってガイドさせたり、あるいは検体ラックの移送路上に他の物品類などが不用意に入り込むことを枠部によって防止させているのが一般的である。ところが、このような構成のサンプラは、他のサンプラに接続した場合に、前記した枠部が邪魔となり、2つのサンプラ間において検体ラックの受け渡しを適切に実行させることが困難となる。このようなことから、従来においては、単独で使用されていた分析装置を他の分析装置などと組み合わせて使用するといったことを容易に実現することができず、不便を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3616744号公報
【特許文献2】特開平7−92171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、他の装置に接続して検体ラックの受け渡しを行なわせるようにして使用する場合と、そのような接続を行なうことなく使用する場合とのいずれであっても、好適に対処することが可能な分析装置用サンプラ、およびこれを備えた分析装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供される分析装置用サンプラは、検体ラックを一定の経路で移送可能な移送路と、この移送路の周囲に位置する枠部と、を備えている、分析装置用サンプラであって、前記枠部には、この枠部から分離除去可能であり、かつ前記枠部から分離除去されることによって前記枠部に切欠き部を開口させた状態に設けることが可能な分離除去可能部が設けられており、前記枠部に前記切欠き部が開口した状態に設けられたときには、この切欠き部を介して前記検体ラックを前記枠部の外部側方から前記移送路上に進入させ、または前記移送路上から前記枠部の外部に排出させることが可能とされ、前記移送路の始端領域は、前記枠部の幅方向一端寄りに位置し、かつ前記移送路の終端領域は、前記枠部の幅方向他端寄りに位置しており、前記分離除去可能部は、前記枠部の幅方向両端のそれぞれに設けられていることにより、前記枠部の幅方向一端には、前記検体ラックを前記枠部の外部一側方から前記始端領域に進入可能とする第1の切欠き部を形成可能であるとともに、前記枠部の幅方向他端には、前記検体ラックを前記終端領域から前記枠部の他側方に排出可能とする第2の切欠き部を形成可能とされており、前記枠部を他の分析装置用サンプラに接続可能とし、かつこの接続時において前記第1の切欠き部または第2の切欠き部を通過する検体ラックを移送ガイド可能な移送路を有する接続部材をさらに備え、前記終端領域の近傍において前記枠部の幅方向に往復動自在な可動部材を備え、前記終端領域に移送されてきた検体ラックを前記可動部材によって前記第2の切欠き部に向けて移動させることが可能とされており、前記接続部材が、前記第2の切欠き部を通過する検体ラックを移送ガイドするように前記枠部に接続されたときには、前記可動部材が前記終端領域の近傍からこの接続部材の移送路内まで進行可能な構成とされていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、本発明に係る分析装置用サンプラを、他の分析装置用サンプラなどに接続して使用する場合には、分離除去可能部を枠部から分離除去し、枠部に切欠き部を開口した状態に設けることによって、好適に対処することができる。検体ラックの受け渡しを行なう場合には、前記切欠き部に検体ラックを通過させればよく、枠部が検体ラックの受け渡しの邪魔になることが適切に回避される。一方、本発明に係る分析装置用サンプラを、他の分析装置用サンプラなどに接続することなく使用する場合には、分離除去可能部を分離除去させないことにより、枠部に切欠き部が開口した状態で設けられていない構成にしておくことができる。このような構成にしておけば、たとえば検体ラック以外の物品類が切欠き部を通過して検体ラックの移送路上に不用意に入り込み易くなるといった不具合を生じないようにすることができ、体裁もよい。このように、本発明によれば、他の分析装置用サンプラなどに接続して使用する場合と、そうではない場合とのいずれであっても、好適に使用することが可能である。
【0012】
また、このような構成によれば、この分析装置用サンプラの上流側および下流側のいずれにも他の分析装置用サンプラなどの所望の装置を接続することが可能となる。すなわち、上流側に接続された他の装置からは第1の切欠き部を利用して検体ラックを移送路の始端領域に受け入れるとともに、移送路の終端領域に到達した検体ラックについては、下流側に接続された他の装置に対して第2の切欠き部を利用して検体を引き渡すことが可能となる。
【0013】
また、このような構成によれば、前記接続部材を利用して本発明の分析装置用サンプラを他の分析装置用サンプラと適切に接続し、これらのサンプラどうしが位置ずれしないように相対的な位置決めを図ることができる。また、検体ラックが前記接続部材によって移送ガイドされるために、検体ラックの安定的な受け渡しも実現される。
【0014】
また、このような構成によれば、移送路の終端領域から検体ラックを外部に排出する動作を、可動部材および第2の切欠き部を利用して好適に行なわせることができる。
【0015】
また、このような構成によれば、可動部材によって検体ラックを枠部の外部に排出する場合に、この可動部材を接続部材の移送路内まで進行させて、そのストロークを大きくすることができる。このため、検体ラックが可動部材によって積極的に移動させられる距離も大きくなり、たとえば下流側の他の装置に対する検体ラックの引き渡し動作などが確実化される。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記枠部には、上下方向に延びて水平方向に間隔を隔てた一対のスリットが設けられていることにより、前記枠部のうち、前記一対のスリットによって挟まれている部分は脆弱部とされており、この脆弱部が、前記分離除去可能部である。
【0017】
このような構成によれば、分離除去可能部を枠部から分離除去する作業を容易に行なうことが可能となる。また、分離除去可能部の形成に際して、別部材を用いるような必要も無いため、製作コストも廉価にすることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記枠部には、この枠部に予め設けられている切欠き部を塞ぐようにして前記枠部とは別体の閉鎖部材が取り外し可能に取り付けられており、前記閉鎖部材が、前記分離除去可能部である。
【0019】
このような構成によれば、分離除去可能部を枠部から分離除去させる際に、枠部の一部を破断させるような必要がなく、枠部に切欠き部を開口状態に設ける作業を的確に行なうことができる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記分離除去可能部には、検体ラックが所定箇所に存在するか否かを検出するためのセンサが取り付けられており、前記分離除去可能部が前記枠部から分離除去されたときには、前記センサを前記分離除去可能部から取り外して前記所定箇所の近傍に配置可能とされ、検体ラックが前記所定箇所に存在するか否かの判断に再利用できるように構成されている。
【0021】
このような構成によれば、前記センサが有効に利用されることとり、無駄を無くし、または少なくすることができる。
【0022】
本発明の第2の側面により提供される分析装置は、本発明の第1の側面により提供される分析装置用サンプラを備えていることを特徴としている。
【0023】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される分析装置用サンプラについて述べたのと同様な効果が得られ、本発明が適用された分析装置を単独で使用する場合のみならず、他の分析装置やその他の装置と接続して使用する場合にも好適に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用された分析装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す分析装置の分解斜視図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す分析装置を使用した分析システムの一例を示す概略斜視図である。
【図5】図4の概略平面図である。
【図6】図4に示す分析システムの動作状態の一例を示す要部平面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】(a),(b)は、本発明の他の例を示す要部斜視図である。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は、本発明が適用された分析装置の一実施形態を示している。本実施形態の分析装置A1は、分析装置本体1と、この分析装置本体1の前面下部に連結されたサンプラ2とを有している。
【0028】
分析装置本体1は、たとえば血液中のヘモグロビンA1cなどのグリコヘモグロビン濃度を測定可能な機器(図示略)を有しており、昇降自在な吸引ノズル10の直下領域に採血管30が配置されることにより、この採血管30内の血液を吸引ノズル10によってサンプリングし、前記したグリコヘモグロビン濃度の測定処理を実行可能である。
【0029】
サンプラ2は、複数の採血管30を起立保持する検体ラック3を一定の経路で移送するためのものであり、仕切台23により仕切られた2つの移送路20A,20Bと、これらの移送路20A,20Bの手前側および両側方の三方を囲む枠部21とを有している。移送路20A,20Bは、その上面に1または複数の駆動ベルト22a,22bが配されていることにより検体ラック3の移送が可能である。駆動ベルト22aは、たとえば図3に示すように、一対の回転自在なプーリ29に掛け回され、一定の経路で循環駆動自在とされている。駆動ベルト22bもこれと同様な構成である。
【0030】
このサンプラ2においては、移送路20Aの最も手前の始端領域Saに検体ラック3が供給されると、この検体ラック3が矢印N1〜N3で示す経路で移送可能とされている。より詳細には、検体ラック3は、始端領域Saから矢印N1方向に移送されて、移送路20Aの奥部に移送された後に、図2および図3に示されたプッシャ28によって矢印N2方向に押圧移送され、この移送過程において吸引ノズル10によるサンプリングが行なわれる。その後、検体ラック3は移送路20Bを矢印N3方向に移送されて、この移送路20Bの最も手前側の終端領域Eaに到達する。
【0031】
枠部21は、合成樹脂製であり、移送路20A,20Bよりも手前側に位置する前壁部21cと、この前壁部21cの左右幅方向両端に繋がって移送路20A,20Bの側方に位置する側壁部21a,21bとを有している。これら側壁部21a,21b、および前壁部21cの各上面部は、移送路20A,20Bの上面(移送面)よりも高い高さである。側壁部21a,21bのそれぞれには、一対のスリット240が設けられており、これら一対のスリット240に挟まれた部分が、脆弱部24A,24Bとされている。これらの脆弱部24A,24Bの下部は、枠部21の他の部分に繋がっているが、この部分を破断させることにより、脆弱部24A,24Bを枠部21から分離除去可能である。これらの脆弱部24A,24Bは、本発明でいう分離除去可能部の一例に相当し、後述するように、切欠き部25A,25Bを形成するための部分である。なお、切欠き部25A,25Bは、本発明でいう第1および第2の切欠き部の一例に相当する。脆弱部24Aには、始端領域Saに検体ラック3が供給された際に、これをたとえば光学的な手段を用いて検知するためのセンサ90が取り付けられている。
【0032】
サンプラ2には、プッシャ26も設けられている。このプッシャ26は、後述するように、脆弱部24Bを分離除去させて切欠き部25Bを形成した場合に、終端領域Eaに位置する検体ラック3をサンプラ2の外部に排出するのに利用される。このプッシャ26は、前壁部21cに沿って矢印N10方向に往復動自在である。この往復動作時においては、プッシャ26の先端部(図1および図2の左端側)を、前壁部21cの幅方向一側方にはみ出す位置まで移動させることが可能である。これは、後述するように、検体ラック3を押動する際のストロークを大きくし、検体ラック3の排出などを的確に行なわせるのに役立つ。図3に示すように、このプッシャ26の基部は、前壁部21cの内部空間に配置され、このプッシャ26を往復動させるための図示されていない駆動機構に連結されている。これに対し、このプッシャ26の先端部は、前壁部21cに設けられているスリット210を通過して前壁部21cの外部に露出している。
【0033】
分析装置本体1は、前記した血液分析処理に必要な動作制御やデータ処理制御を実行するとともに、サンプラ2の動作をも制御する制御部4を備えている。この制御部4は、CPUや各種のメモリを具備して構成されており、通信線Lを利用して他の分析装置との間でデータ通信を行なうための信号入出力部40も有している。制御部4は、この分析装置A1が他の分析装置と接続されたときには、この分析装置との間で検体ラック3の受け渡しを適切に実行させるための制御を実行可能である。
【0034】
次に、分析装置A1の作用について説明する。
【0035】
まず、この分析装置A1は、単独で使用できることは勿論であるが、他の分析装置と組み合わせて用いることもできる。この分析装置A1を単独で使用する場合には、図1に示すように、脆弱部24A,24Bが枠部21に設けられたままとしておく。この状態においては、移送路20A,20Bの三方が、枠部21によって適切に囲まれているために、体裁が良く、また検体ラック3以外の物品が移送路20A,20B上に不用意に入り込むことも適切に抑制される。
【0036】
次いで、分析装置A1を他の分析装置と組み合わせて使用する場合の一例として、たとえば図4および図5に示すように、分析装置A2と組み合わせて分析システムASを構築することができる。ここで、分析装置A2は、たとえば血液中のグルコース濃度を測定可能なものであり、その分析内容は分析装置A1とは相違するものの、この分析装置A2も本発明が適用されたものであって、血液の分析処理に直接関連する構成以外は、分析装置A1と同様な構成である。分析装置A2のうち、分析装置A1と同一または類似の要素の符号は、分析装置A1の符号に「’」を付したものとしており、その説明は省略する。
【0037】
分析システムASは、次のようにして構築することが可能である。
【0038】
まず、分析装置A1,A2のそれぞれのサンプラ2,2’には、検体ラック3を通過させるための切欠き部25A,25B,25A’,25B’を形成する。切欠き部25A,25Bは、図1および図2に示した脆弱部24A,24Bを枠部21から分離除去することにより容易に形成することができる。サンプラ2’には、サンプラ2の脆弱部24A,24Bと同様な脆弱部が予め設けられており、この部分を除去することによって、切欠き部25A’,25B’を容易に形成することができる。
【0039】
脆弱部24Aを枠部21から取り外した際には、この脆弱部24Aからセンサ90を取り外し、このセンサ90をたとえば適当なブラケットを利用して仕切台23の上部に取り付けて、始端領域Saに検体ラック3が存在するか否かの検出用途に再利用する。好ましくは、仕切台23には、センサ90またはセンサ90を支持するブラケットを取り付けるための適当な加工(たとえば、ネジ止め用のネジ孔など)が予め施されており、センサ90の取り付けを容易に行なうことができるようにされている。これらの点については、サンプラ2’のセンサ90’についても同様である。
【0040】
サンプラ2,2’については、接続部材5を用いて接続する。この接続部材5は、図4の仮想線で示すように、上部に凹溝状の移送路50を有するものであり、この接続部材5の両端部をサンプラ2,2’にネジ止め手段などを用いて連結する。この連結に際しては、移送路50の左右両端の開口部が切欠き部25B,25A’に一致し、かつこの移送路50の上向き底面と移送路20B、20A’の上面との間に段差を生じないように設定する。また、図6に示すように、接続部材5は、プッシャ26の先端部が移送路50内まで進行してくることを許容可能な構成とされている。これは、図7に示すように、接続部材5の移送路50を規定する内壁に、スリット51を形成しておき、このスリット51内にプッシャ26の先端部を進入させることにより実現される。スリット51は、図3で示したスリット210に繋がるように設けられている。
【0041】
図5に示すように、サンプラ2には、切欠き部25Aを介して複数の検体ラック3を始端領域Saに向けて順次供給するための手段として、補助サンプラ8Aが接続されている。この補助サンプラ8Aは、その上面上に複数の検体ラック3が順次投入された場合に、これらを矢印N20方向に移送させてから待機させておき、始端領域Saに検体ラック3が存在しない状態になると、この始端領域Saに向けて矢印N21に示すように検体ラック3を供給するように構成されている。
【0042】
サンプラ2’には、切欠き部25B’を介してサンプラ2’の外部に排出される複数の検体ラック3を順次受け取るための補助サンプラ8Bが接続される。この補助サンプラ8Bは、検体ラック3を受けると直ちにこれを矢印N23方向に移送させるように構成されており、複数の検体ラック3をストックさせておくことが可能である。
【0043】
前記した分析システムASにおいては、検体ラック3の移送は、次のようにしてなされる。まず、補助サンプラ8Aから始端領域Saに検体ラック3が供給されると、その旨がセンサ90を利用して検知され、その後は、既に述べたように、矢印N1〜N3で示した経路で検体ラック3が移送されて終端領域Eaに到達する。その後、この検体ラック3は、プッシャ26によって矢印N4に示す方向に押動されて、切欠き部25B,接続部材5の移送路50、および切欠き部25A’を通過して分析装置A2の始端領域Sa’に供給される。その際、検体ラック3は、接続部材5によって移送ガイドされるために、分析装置A1,A2間における検体ラック3の受け渡しを安定させることができる。また、図6および図7を参照して説明たように、プッシャ26は、接続部材5の移送路50内まで進行するために、検体ラック3を始端領域Sa’に向けて大きなストロークで押動し、始端領域Sa’に検体ラック3を適切に供給することができる。図6には、プッシャ26の先端部に補助具26aを取り付け、かつこの補助具26aを利用して検体ラック3を押動させる構成が示されているが、このような構成によれば、検体ラック3を始端領域Sa’に適正に供給することが簡易な手段によって確実化される。
【0044】
分析装置A2においては、始端領域Sa’に供給されてきた検体ラック3が、矢印N5〜N7に示す経路で順次移送されて終端領域Ea’に到達するが、この検体ラック3については、プッシャ26’の動作によって切欠き部25B’から補助サンプラ8Bに適切に供給することができる。
【0045】
上記したように、分析装置A1は、それ単独で好適に使用できることに加え、脆弱部24A,24Bを分離除去して切欠き部25A,25Bを形成することにより、他の分析装置A2や補助サンプラ8Aと組み合わせて、これらの間で検体ラック3の受け渡しを適切に行なうことが可能である。したがって、分析装置A1を使用する際の融通性に優れ、分析装置A1を他の装置と組み合わせて使用する場合に、サンプラ2を他の構成のサンプラと交換するといった必要はない。
【0046】
図8は、本発明の他の実施形態を示している。本実施形態においては、同図(a)に示すように、サンプラ2の枠部21の側壁部21aに、切欠き部25Cが予め形成されている。ただし、同図(b)に示すように、この切欠き部25Cは、閉鎖部材7によって塞がれている。閉鎖部材7は、本発明でいう分離除去可能部の他の一例に相当し、枠部21に対してたとえばネジ体79を用いて取り付けられている。好ましくは、閉鎖部材7は、切欠き部25Aに嵌入する嵌入部70を有しており、切欠き部25Cを体裁良く塞ぐことができるように構成されている。
【0047】
本実施形態によれば、このサンプラ2を他の装置と接続しない場合には、図8(b)に示すように、切欠き部25Cを閉鎖部材7によって塞いでおく。これに対し、このサンプラ2を他の装置と接続する場合には、同図(a)に示すように、閉鎖部材7を取り外して切欠き部25Cを開口させ、この部分に検体ラックを通過させる。したがって、前記実施形態と同様に、本発明が意図する目的を適切に達成することができる。
【0048】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る分析装置用サンプラ、および分析装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0049】
本発明でいう分離除去可能部は、枠部にスリットが形成されていることによって枠部の一部を脆弱部とした構成に代えて、たとえば枠部の一部分を薄肉にしたり、あるいは材質を変化させるなどして、枠部の一部分を破断させ易くした構成とすることもできる。分離除去可能部のサイズや具体的な位置などは、サンプラの移送路の具体的な構成に応じて種々に変更することができる。また、本発明では、サンプラの上流側と下流側とのそれぞれに他の装置を接続して検体ラックの受け渡しを行なうことができるように、分離除去可能部を少なくとも2箇所設けることが好ましいものの、やはりこれに限定されない。分離除去可能部が、たとえば1箇所のみ設けられている場合も、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0050】
本発明が適用される分析装置は、血液の特定成分の濃度測定を行なうものに限らず、たとえば尿の特定成分の濃度測定を行なうものとすることもでき、検体の具体的な種類や、分析処理の具体的な内容は、限定されない。
【符号の説明】
【0051】
A1,A2 分析装置
Sa 始端領域
Ea 終端領域
1 分析装置本体
2 サンプラ
3 検体ラック
5 接続部材
7 閉鎖部材(分離除去可能部)
20A,20B 移送路
21 枠部
24A,24B 脆弱部(分離除去可能部)
25A,25B 切欠き部(第1および第2の切欠き部)
25C 切欠き部
26 プッシャ(可動部材)
40 信号入出力部
50 移送路(接続部材の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体ラックを一定の経路で移送可能な移送路と、
この移送路の周囲に位置する枠部と、
を備えている、分析装置用サンプラであって、
前記枠部には、この枠部から分離除去可能であり、かつ前記枠部から分離除去されることによって前記枠部に切欠き部を開口させた状態に設けることが可能な分離除去可能部が設けられており、
前記枠部に前記切欠き部が開口した状態に設けられたときには、この切欠き部を介して前記検体ラックを前記枠部の外部側方から前記移送路上に進入させ、または前記移送路上から前記枠部の外部に排出させることが可能とされ、
前記移送路の始端領域は、前記枠部の幅方向一端寄りに位置し、かつ前記移送路の終端領域は、前記枠部の幅方向他端寄りに位置しており、
前記分離除去可能部は、前記枠部の幅方向両端のそれぞれに設けられていることにより、前記枠部の幅方向一端には、前記検体ラックを前記枠部の外部一側方から前記始端領域に進入可能とする第1の切欠き部を形成可能であるとともに、前記枠部の幅方向他端には、前記検体ラックを前記終端領域から前記枠部の他側方に排出可能とする第2の切欠き部を形成可能とされており、
前記枠部を他の分析装置用サンプラに接続可能とし、かつこの接続時において前記第1の切欠き部または第2の切欠き部を通過する検体ラックを移送ガイド可能な移送路を有する接続部材をさらに備え、
前記終端領域の近傍において前記枠部の幅方向に往復動自在な可動部材を備え、
前記終端領域に移送されてきた検体ラックを前記可動部材によって前記第2の切欠き部に向けて移動させることが可能とされており、
前記接続部材が、前記第2の切欠き部を通過する検体ラックを移送ガイドするように前記枠部に接続されたときには、前記可動部材が前記終端領域の近傍からこの接続部材の移送路内まで進行可能な構成とされていることを特徴とする、分析装置用サンプラ。
【請求項2】
前記枠部には、上下方向に延びて水平方向に間隔を隔てた一対のスリットが設けられていることにより、前記枠部のうち、前記一対のスリットによって挟まれている部分は脆弱部とされており、
この脆弱部が、前記分離除去可能部である、請求項1に記載の分析装置用サンプラ。
【請求項3】
前記枠部には、この枠部に予め設けられている切欠き部を塞ぐようにして前記枠部とは別体の閉鎖部材が取り外し可能に取り付けられており、
前記閉鎖部材が、前記分離除去可能部である、請求項1に記載の分析装置用サンプラ。
【請求項4】
前記分離除去可能部には、検体ラックが所定箇所に存在するか否かを検出するためのセンサが取り付けられており、
前記分離除去可能部が前記枠部から分離除去されたときには、前記センサを前記分離除去可能部から取り外して前記所定箇所の近傍に配置可能とされ、検体ラックが前記所定箇所に存在するか否かの判断に再利用できるように構成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の分析装置用サンプラ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の分析装置用サンプラを備えていることを特徴とする、分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−233924(P2012−233924A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193631(P2012−193631)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2008−74509(P2008−74509)の分割
【原出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【復代理人】
【識別番号】100152342
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 益史
【Fターム(参考)】