説明

分析装置用連続濃縮装置

【課題】検出限界に達した分析装置に対して適用でき、且つ一定の濃縮比率の分析対象物を連続して得ることができる分析装置用連続濃縮装置を提供する。
【解決手段】分析装置用連続濃縮装置100であり、試料液を試料液供給口1から流入させ、ポンプ3によりを加圧してこれに隣接したROユニット4により透過液と濃縮液とに分離し、さらに前記濃縮液をチェック弁10により再度ポンプ3へ戻すようにした、閉じたループである濃縮ループAを構成するとともに、透過液流量Qと、前記濃縮液の一部を前記濃縮ループAの外部へ取出した濃縮液流量Qとの比率を制御することによって、所望の濃縮比率の濃縮液を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に分析装置において、分析対象物をppb、pptオーダーまで微量分析できるようにした分析装置用連続濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象成分を濃縮する装置は、従来、原子力発電所、火力発電所等の大型のプラント装置で多く採用されていた。この装置の手法としては、主に膜分離法が用いられている。膜分離法では、溶媒は通過するが溶質は透過させにくい半透膜を用いたものが主であり、この方法の一つとして逆浸透膜法がある。逆浸透膜法は超純水を得るための装置などに採用されており、不純物や濾過物等を逆浸透膜で取り去ることを主目的に開発されてきた。
【0003】
特開平1−310703号公報には、膜分離法による濃縮制御方法について開示されている。これによると、透過膜を透過しない一定濃度の濃縮液を濃縮管から得るにあたり、一定流量の原液を原液供給管から膜分離装置に流入するとともに、原液供給管に設けた濃度計により原液濃度を計測して、入力された当該原液濃度と、あらかじめ入力されているある濃度の原液流量から、あらかじめ入力してある濃度の濃縮液を得るための濃縮液流量あるいは透過液流量を演算し、当該演算した濃縮液管あるいは透過液管に設けた流量計と連動する濃縮液管に設けた流量調整機構によって濃縮液流量を調整することが記載されている。この方法については、この公報の第1図で説明されており、原液供給管10に設けた濃度計9より原液濃度Wを計測するとともに、透過液管8に設けた流量計7により透過液流量Dを計測し、両信号を演算制御器11に入力する。ここにあらかじめ入力されている原液流量V1、濃縮液濃度W、および送信されてくる原液濃度Wとから、演算式(2)および(3)により透過液流量Dを求め、当該演算した透過液流量Dと流量計7で計測される実際に流出する透過液流量とを比較し、両値が一致しない場合は、一致するように濃縮液管6に設けたコントロール弁5に信号を送り、この弁の開度を調節することにより、前記両値を一致させるように制御する。前記流量Dより実際に流出する透過液流量が大きい場合は、コントロール弁5の開度を増加させて、濃縮液流量を増加させるとともに透過液流量を減少させ、またその逆の場合は、その開度を減少させて、濃縮液流量を減少させるとともに透過液流量を増大させる。
【特許文献1】特開平1−310703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開平1−310703号公報に開示された方法は、濃縮液管6に設けたコントロール弁5に信号を送り、この弁の開度を調節することにより、前記両値を一致させるように制御するようになっているが、濃縮液管の流量をコントロール弁により正確に制御しないと透過液流量あるいはそこから換算されるある一定濃度の濃縮液を得ることは困難である。また、濃縮液管6、透過液管8にはポンプ3からの圧力を逃がすための弁または配管のような機構はなく、高い圧力がそのままかかってしまい圧力変動の影響を直接受けてしまう。そもそも、この方法は一定の濃度の濃縮液を連続的に得ることが目的であり、原液の濃度に対して一定の濃縮比率の濃縮液を得るというような技術的思想はなかった。
【0005】
また、この前記特開平1−310703には、従来技術として第2図に示すような濃縮装置が示されている。これによると、濃縮液管58に弁63を有する循環配管62に一端を連通するとともに、その他端をポンプ54のサクション側に連通して、コントロール弁60が絞られることによる透過液入口側圧力の上昇を防止することが記載されている。しかしながらこの構成においては、循環配管62、濃縮液管58内の圧力を一定に保つための機構がなく、さらに濃縮液濃度はコントロール弁60のみで制御する必要があり、圧力変動が直接濃縮液管内に伝わることになり濃度を制御するのが困難である。
【0006】
従来、分析装置を対象とした連続濃縮装置は例がなく、例えばイオンクロマトグラフ装置などで見られるようなイオン交換カラムを用いたバッチ式の濃縮などが主であった。しかしながら、最近ではさらに分析対象物をppb、pptオーダーまで微量分析が可能な分析装置が求められるようになってきており、これを実現するためには分析装置の検出部の高性能化、検出精度の向上化などが必要である。このような情勢において、分析対象物を濃縮して流体に対する対象物の濃縮比率を上昇させることによって、検出限界に達した分析装置に対しても検出できるようにすることが考えられるが、今までこのようなことは検討されることはなかった。この場合、分析装置へ流入させる濃縮された分析対象物を含んだ流体はある一定の値の濃度である必要はなく、濃縮前の流体に対して一定の濃縮比率に濃縮された流体を連続的に得ることが重要となる。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、検出限界に達した分析装置に対して適用でき、且つ一定の濃縮比率の分析対象物を含む流体を連続して得ることができる分析装置用連続濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の分析装置用連続濃縮装置は、分析対象物質を含む試料流体を流体供給口から流入させ、ポンプにより前記流体を加圧して分離膜ユニットにより透過流体と濃縮流体とに分離し、さらに前記濃縮流体を定圧弁により再度前記ポンプへ戻すようにした、閉じたループである濃縮ループを構成するとともに、透過流体流量と、前記濃縮流体の一部を前記濃縮ループの外部へ取出した濃縮流体流量との比率を制御することによって、所望の濃縮比率の流体を得ることを特徴としている。このように、逆浸透膜等のような分離膜ユニットを用いるとともに、さらに前記濃縮ループ内に定圧弁を設けた濃縮ループを設けるように構成することにより、濃縮ループ内および濃縮ループ内の濃縮流体の一部を外部へ取出すための経路内の圧力を一定にすることができ、圧力変動の影響をなくすことができる。このような条件により、前記透過流体流量に合せて前記濃縮流体流量の流量制御するだけで目的とする濃縮比率の流体を連続的に得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分析装置用連続濃縮装置により、簡単な装置構成である一定の濃縮比率で濃縮された分析対象物を連続的に得ることができる。一定の濃縮比率を得る方法としては、該連続濃縮装置の分離膜ユニットを透過する流体の流量に合わせて、所望の濃縮比率になるように濃縮される流体の流量を制御するだけでよく、制御性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態の分析装置用連続濃縮装置の一例として、逆浸透膜法による分析装置用連続濃縮装置について以下、説明する。本発明である逆浸透膜法による分析装置用連続濃縮装置100の概略構成図を図1に示す。なお、この装置で用いる試料流体は、液体の試料溶液である。図からわかるように、この装置では逆浸透膜が用いられた逆浸透膜(RO)ユニット4で分離された透過液の流量と、濃縮側にある濃縮物含んだ溶液の流量との比率が、ある所望の値になるように濃縮側に設けた流量制御手段により制御することを特徴としている。この場合、透過液の流量は従来のように正確に制御する必要はなく、あくまでも透過液の現流量に合わせて一定の流量比になるように濃縮液の流量を調整するのみで、所望の濃縮比率の濃縮液を連続して得ることができる。
【0011】
この発明の大きな特徴としては、ポンプ3で加圧され、さらにポンプ3に隣接した逆浸透膜ユニット4により濃縮された濃縮物を含む試料液を、再度ポンプ3へ戻すように閉じたループとなっている濃縮ループAを設けており、このループ経路内には、定圧力発生手段としてのチェック弁10を設けている。この弁は定圧弁であり、これを設けることによって濃縮液経路6、濃縮液取出経路8および濃縮液循環経路9が一定の圧力になるように制御できるようになるとともに、濃縮ループAから濃縮液の一部を連続的にこのループの外である取出ユニットBへ、濃縮液取出経路8を介して取出しできる機構をもたらすことができるようになる。チェック弁10は、一定の圧力がかかると動作し、圧力を逃がすとともに出口の圧力を一定に制御することができる弁である。これにより、濃縮液経路6、濃縮液取出経路8および濃縮液循環経路9内での圧力変動をなくすことができる。
【0012】
ところで、チェック弁10がない場合には、濃縮ループAおよび濃縮液取出経路8内は一定圧力に保たれていないため流量を制御するのが難しく、何よりも濃縮液取出経路8、濃縮液循環経路9での圧力は試料水供給口1と同じ圧力となってしまい、濃縮ループAから外部へ所望の濃縮率の流体を取出せなくなってしまう。また、上記濃縮ループAを設けることによって、ポンプ3からの高い圧力をこのループへ逃がすことができるという利点もあり、これによりROユニット4へ直接全圧力が負荷されてしまうのを防ぐ効果がある。
【0013】
以下、図1に示す分析装置用連続濃縮装置100について具体的に説明する。分析対象物を含んだ試料液が試料液供給口1から濃度計2(試料液供給口1側)を介してある一定の入口溶液流量Qで流入し、濃度計2では流入される溶液の濃度mが計測される。連続濃縮装置100には、ポンプ3、ROユニット4、濃縮液経路6、調整弁7、濃縮液循環経路9、定圧弁であるチェック弁10から成る濃縮ループAが構成され、濃縮ループAは連続濃縮装置100の濃縮ユニットを構成している。なお、本装置では試料液の濃度値をそのまま用いることがないため濃度計2はなくてもよい。
【0014】
調整弁7は、透過液経路5への流量を調整するためのものであり、これを閉じる程透過液経路の流量は増えることとなるが、閉じすぎるとROユニット4のRO膜への負荷が大きくなってしまうので適度に開ける必要がある。ROユニット4は、純水製造装置などにも採用されているRO膜を使っており、材質としては酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン等を用いることができる。また、連続濃縮装置100の各液経路にはフッ素樹脂を用いたが、不純物が発生しないものであれば材質は問わない。分析対象物以外の不純物が混入・濃縮されてしまうと、これが妨害成分となって分析において悪影響を与えるので高純度の材質のものが望ましい。
【0015】
濃縮液取出経路8の先には、流量制御バルブとしてのコントロール弁11が設けられており、これを制御することにより一定の濃縮比率の濃縮液を得ることができる。濃縮液取出経路8、透過液経路5にはそれぞれ流量計12、13が設けられている。上記のようにチェック弁10が設置されていることにより、濃縮液経路6、濃縮液取出経路8および濃縮液循環経路9内では圧力変動がないため、前記各々の経路の流量比が一定の値になるように制御アンプ14によりコントロール弁11の開度を制御することによって、ある一定の濃縮比率の濃縮液を連続的に得ることができるようになる。
【0016】
上記のように、比較的簡単な構成により本発明の分析装置用連続濃縮装置100は構成されており、ポンプ3、ROユニット4、チェック弁10、調整弁7,コントロール弁11、各経路5,6,8,9、各流量計12,13について、適宜適した材質のものを選択することによって不純物の発生が殆ど無く、且つ小型化した分析装置用連続濃縮装置100を得ることができる。
【0017】
次に、実際の所望の濃縮液が得られるまでの経過について説明する。
まず濃縮ループ(濃縮ユニット)Aにおける濃縮過程についてだが、入口溶液流量Q、入口溶液濃度mで試料液供給口1から流入した試料液は、ポンプ3により加圧されてこれに隣接したROユニット4に達し、ここで濾過されて透過液経路5へ行く透過液と、透過せずに濃縮された濃縮物+残液の溶液が通る濃縮液経路6とに分けられる。前記透過液経路5へ行く透過液の流量は、調整弁7の開度を調整することによって行い、残りが濃縮液経路6の流量となる。透過液経路5の流量と、濃縮液経路6の流量の比は、通常1:2にするのが好ましいとされているので、本実施形態においてもこの比率に近くなるように調整弁7を調整する。透過液は、そのまま透過液流量計13で流量を計測した後に透過液出口16から外部へ排出される。
【0018】
一方、濃縮液経路6の溶液は、そのまま調整弁7を通過して濃縮液循環経路9へと導かれる。濃縮液循環経路9を通過する際には、チェック弁10で一定圧力まで減圧されているので、ポンプ3の圧力とチェック弁10の圧力の差圧が調整弁7にかかり、調整弁7よりも先の濃縮液循環経路9にはチェック弁10で設定された圧力がかかることになる。そして、濃縮液循環経路9を通過した溶液がチェック弁10を通過すると、ポンプ3のある経路と合流して再度、ROユニット4へ流入して濾過・濃縮されるといった、この一連の過程が濃縮ループAで循環しながら繰返される。また、本発明の分析装置用連続濃縮装置には濃縮限界があり、後で説明するようにROユニット4のRO膜の透過率によって決まってくる。
【0019】
次に、濃縮ループAから実際の濃縮液を取出する取出ユニットBについて説明する。この部分は図1における濃縮ループA以外の部分であり、具体的には、濃縮液取出経路8、コントロール弁11、濃縮液流量計12、透過液経路5、透過液流量計13、制御アンプ14、濃縮液出口15、透過液出口16によって構成されている。この取出ユニットBでは、透過液流量計13により透過液流量Qを計測し、この値を電気信号として制御アンプ14に送る。制御アンプ14では、後で説明するように、(6)式に基づいて、所望の濃縮比率(N+1)に対応する濃縮液流量を算出し、濃縮液流量計13から得られた濃縮液流量Qの流量と対比して、前記算出値になるようにコントロール弁11の開度を制御する。算出値よりも少ない場合にはコントロール弁11を開いて濃縮液流量Qを増やすようにし、多い場合には逆に閉じて濃縮液流量Qを減らすように制御する。なお、コントロール弁11を制御する方法としては、サーボモータによるパルス制御、ギヤ等の機械的方式等幾つかの方法を用いればよい。
【0020】
次に、一定の濃縮比率の濃縮液を得るための原理について、図1の分析装置用連続濃縮装置100を参照して説明する。入口溶液流量Qの試料液を液体供給口から流入させた後に、ある一定の時間が経過して濃縮ループA内で濃縮が進んだ状態になると、(1)式に示すように、入口溶液流量Qは濃縮液流量Qに透過液流量Qを足したものとなり、この状態が維持されるようになる。以下詳細に説明すると、入口溶液流量Qで流入した試料液は、ROユニット4により透過液流量Qの透過液して大部分が放出され、透過しなかった残りの溶液は濃縮ループA内に残って濃縮ループA内で循環しながら徐々に濃縮されてゆき、ある程度の時間を経て濃縮が十分に進むと、濃縮液取出経路8を介して一部取出ユニットBへ濃縮液流量Qの濃縮液として取出せるようになる。このとき、濃縮ユニットA内は当該濃縮された溶液で満たされていることから、入口溶液流量Qで新たに溶液が流入した場合、ポンプ3で加圧された溶液はROユニット4から透過液流量Qで透過するとともに、さらに濃縮液流量Qだけ濃縮液取出経路8から押し出されることになり、(1)式が成立する。
=Q+Q・・・(1)
【0021】
また、濃縮ループA内での濃縮濃度をM、濃縮ループA自体の体積をV、CをRO膜の透過率、入口溶液濃度をm、濃縮液濃度をm、時間をtとそれぞれすると、次の(2)式が成立する。
M=mt−mt−CVMQt・・・(2)
但し、tを単位時間とした場合、Qに対してVは1/10以下と小さくしておく必要がある。
【0022】
ところで透過率Cは、透過液中の溶質濃度に対する濾過前の試料液中溶質濃度の割合として定義されている。RO膜等の分離膜については、100%完全に溶液中の溶質を濾過できるものはなく僅かな溶質は膜を透過してしまうが、現在、透過率は5%以下のものも開発されている。上記のことを踏まえると、(2)式におけるCVMQtの項は、濃縮ループA内を循環している濃縮物がRO膜から僅かながら透過して透過液経路5へ漏れ出る量となるため、他の項と比べると値が小さく無視することができる。そのため、(2)式は次の(3)式のように近似できる。
M=mt−mt・・・(3)
【0023】
また、濃縮液流量Qと透過液流量Qの流量比をNと(4)式のように定義すると、
/Q=N・・・(4)
上記(1)、(3)、(4)式より、次の(5)式が導かれる。
=m(1+N)−VM/Qt・・・(5)
【0024】
上記(5)式において、濃縮ループA内での濃縮がある時間を経て進んだ場合(tの値が大きくなる)、VM/Qtの項は0値に近づくので無視できるようになる。以上のことから、(5)式は次の(6)式のようになる。この式から、濃縮液濃度mと入口溶液濃度mの比率すなわち濃縮比率は、濃縮液流量Qと透過液流量Qの流量比であるNにより制御できることを示している。なお、前記のように濃縮比率が流量比で制御できるようにするためには、透過率Cが小さい程よくできれば5%以下のものが望ましく、RO膜を含めたROユニット4の選定が重要である。
/m≒(1+N)・・・(6)
【0025】
このように、濃縮ループA内での濃縮がある時間を経て進んだ場合、分析対象物の濃縮比率を高める方法として、本発明である分析装置用連続濃縮装置100のような構成を採用することによって、単にROユニット4の流量比Nが一定の値になるように制御するだけで連続的に一定の濃縮比率の分析対象物を得ることができる。
【0026】
ところで図1において、コントロール弁11を完全に閉じてしまって濃縮液流量Q=0、すなわち濃縮液を取出さずに入口溶液流量Qを単に濃縮ループAで循環させるようにしたことを想定する。この場合、入口溶液流量Q=透過液流量Qとなり、連続濃縮装置100に流入した溶液は、すべて透過液として流出してしまうことになる。この場合、次の(7)式が成立する。なお、(7)式のMは濃縮ループA内での濃縮濃度、Vは濃縮ループA自体の体積、CはRO膜の透過率、mは入口溶液濃度、mは濃縮液濃度、tは時間である。
M=mt−CMQt・・・(7)
【0027】
(7)式を変形すると、(8)式となる。
M=m/(V/Qt+C)・・・(8)となる。
(8)式において、ある程度時間を経て濃縮ループA内での濃縮が進んだものとすると(tの値が大きくなる)、V/Qtの項は0値に近づくので無視すると、(9)式となる。
M≒m/C・・・(9)
【0028】
(9)式からわかるように、入口溶液濃度mに透過率Cの逆数をかけたものが濃縮ループA内での濃縮濃度Mに該当することになる。例えば、ROユニット4のRO膜の透過率が5%(0.05)であるとした場合、M=20mとなり、濃縮ループA内での濃縮濃度溶液濃度は、連続濃縮装置100へ流入させた原液濃度の20倍の値が限界の濃度であることがわかる。つまり、濃縮ループA内での溶液は時間の経過とともに徐々に濃縮されていくが、原液濃度の20倍に達するとそれ以上濃縮が進まなくなってしまって、それ以上になると流入した原液溶質はすべてRO膜から透過してしまうことになる。
【0029】
つまり、(9)式によりRO膜の透過率から濃縮限界を推定することができ、濃縮限界に達しないように濃縮比率を設定することが重要である。なお、本発明の分析装置用連続濃縮装置は、ROユニットに限定されることはなく、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノフィルタ膜を使用したいわゆるクロスフロー膜ユニット、またはカートリッジフィルター、サンドフィルター等のいわゆるクロフィルトレーション膜ユニットも採用することができる。また、透析膜、イオン交換膜を使用した膜ユニットも採用することができる。
【0030】
また、本発明の分析装置用連続濃縮装置は、対象が溶液等の液体に限定されるものではなく、流体として気体(ガス)であってもよい。気体を対象とした分離膜については、酸素を富化して高濃度酸素を供給するもの、水素分離、メタンとCOを分離するものなど用途に応じてさまざまなものが市販あるいは開発されている。
【0031】
以上のように、本発明の分析装置用連続濃縮装置を用いることにより、簡単な装置構成である一定の濃縮比率で濃縮された分析対象物を連続的に得ることができる。一定の濃縮比率を得る方法としては、該連続濃縮装置の分離膜ユニットを透過する流体の流量に合わせて、所望の濃縮比率になるように濃縮される流体の流量を制御するだけでよく、制御性に優れている。また、該連続濃縮装置自体は分析対象、装置に応じて適宜、構成部品を選択すればよく、製造コストの低下、装置の小型化が実現できる。なお、上記RO膜等各種分離膜は、温度変化に伴って膜自体が変形するなどして透過率Cが変わる可能性があるので、このような場合には、分離膜ユニットに温度を一定に制御する、例えばフィードバック制御のような機構を設けるようにして対応することができる。
【実施例】
【0032】
対象とする分析装置は、東亜ディーケーケー株式会社製のシリカ測定装置(型名:SLC−1605)であり、分析装置の検出限界は0.2ppbである。このシリカ測定装置は、JIS K0101に基づくモリブデン青吸光光度法による方法を採用している。この装置に対して、少なくとも一桁小さい10〜100ppt(0.01〜0.1ppb)レベルまで測定できるように、本発明の分析装置用連続濃縮装置をシリカ測定装置の試料液供給口へ接続した。なお、測定対象の試料液は超純水である。
【0033】
上記シリカ(SiO)測定装置に基づき、本実施例における分析装置用連続濃縮装置の条件は以下のとおりとした。
濃縮対象は超純水であり、試料液供給口から前記超純水の入口溶液流量Q:2.0l/minで供給し、ROユニット4へ超純水を送り込むためのポンプ3としては配管、ダイヤフラム等にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のものを用いたダイヤフラムポンプを使用し、0.5MPaの送液圧力で該超純水を送液した。ROユニット4は、RO膜が透過率5%のセルロースアセテート膜であるものを使用した。濃縮ループA内にあるチェック弁10としては、圧力を0.1MPaに保つものを使用したため、濃縮液取出経路8には0.1MPaの圧力がかかることになる。この圧力で濃縮液(分析装置用の試料液)は上記シリカ測定装置へ送液される。調整弁7は手動式のボール弁とし、さらにコントロール弁11はステッピングモータ駆動方式のものを使用し、弁の開閉は制御アンプ11からの信号制御により制御した。また、各液経路としては、PTFE製のチューブを使用し、流量計は出力信号を電気信号として取出せるものを使用した。なお、本発明の分析装置用連続濃縮装置に使用する各構成部材は、出来る限り純度が高く不純物の含有が少ないもの、または分析対象物である流体と反応しないものを採用することが望ましい。
【0034】
以上の条件により、10倍の濃縮比率の超純水を得ることを目的として実際に濃縮を行った。該連続濃縮装置の試料液挿入口から2.0l/minの入口溶液流量Qで送液し、透過液流量計13からの表示が所望の透過液流量Qが1.8l/minになるように調整弁7の開度を調整した。これに対し、濃縮液流量Qが0.2l/minとなるようにアンプ11によりコントロール弁11による制御が行われ、暫くした後に濃縮液流量計12が0.2l/minと表示されるようになり、このことから濃縮比率(N+1)の値は10となり10倍に濃縮されていることが確認された。その後、この濃縮液を0.1MPaの圧力、0.2l/minの流量で上記シリカ測定装置の試料液供給口へ供給してシリカ濃度を測定したところ、測定値が0.6ppbと表示された。なお、実際の測定値は、この測定値よりも十分の一の値であるので60pptとなる。
【0035】
一方、上記超純水と同じ純水を、本発明の分析装置用連続濃縮装置を通さずに上記シリカ測定装置の試料液供給口へ直接供給してシリカ濃度の測定したところ、検出限界を超えており、測定値がばらついて安定しなかった。これにより、本発明の分析装置用連続濃縮装置により超純水を10倍に濃縮することによって、従来、シリカ測定装置単独では測定できなかったシリカ濃度を測定値がばらつくことなく安定して測定できるようになった。
【0036】
なお、本発明の分析装置用連続濃縮装置は、上記シリカ測定装置用に限定されるものではなく、対象とする分析装置の用途、試料液等の流体(気体を含む)の種類、流量他いろいろな条件によって、それに対応した構成部品を採用して適宜構成するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明である分析装置用連続濃縮装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 試料液供給口
2 濃度計(試料液供給口側)
3 ポンプ
4 逆浸透膜(RO)ユニット
5 透過液流路
6 濃縮液流路
7 調整弁
8 濃縮液取出経路
9 濃縮液循環経路
10 チェック弁(定圧弁)
11 コントロール弁
12 濃縮液流量計
13 透過液流量計
14 制御アンプ
15 濃縮液出口(分析装置の試料液供給口へ接続)
16 透過液出口
入口溶液流量
濃縮液流量
透過液流量
入口溶液濃度
濃縮液濃度
A 濃縮ループ(濃縮ユニット)
B 取出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象物質を含む試料流体を流体供給口から流入させ、ポンプにより前記流体を加圧してこれに隣接した分離膜ユニットにより透過流体と濃縮流体とに分離し、さらに前記濃縮流体を定圧弁により再度前記ポンプへ戻すようにした、閉じたループである濃縮ループを構成するとともに、透過流体流量と、前記濃縮流体の一部を前記濃縮ループの外部へ取出した濃縮流体流量との比率を制御することによって、所望の濃縮比率の流体を得ることを特徴とする分析装置用連続濃縮装置。


























【図1】
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【公開番号】特開2008−209396(P2008−209396A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273270(P2007−273270)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】