説明

分析装置

【課題】 ユーザおよび被験者の負担を増大させることなく、また装置における複雑な制御を必要とすることなく、試料の蒸発を適切に抑制し、分析精度を向上させる。
【解決手段】 試料を試薬と反応させたときの反応相において生じる変化に基づいて、試料における特定成分を分析する装置1において、反応相の周りの湿度を高めるための加湿手段5を設けた。加湿手段5は、反応相の周りの湿度を一定値以上(たとえば相対湿度30%以上)に維持できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を試薬と反応させたときに反応相において生じる変化に基づいて、試料における特定成分を分析する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の分析方法としては、試料を試薬と反応させたときの試薬の発色の程度を測光する方法がよく用いられている。この方法における試料と試薬との反応は、反応容器などを用いて液相において行う場合と、ドライの分析用具を用いて固体担体において行う場合と、に大別することができる。後者の方法は、必要とされる試料の量が少なくてよく、また簡易かつ比較的に精度良く試料を分析できるために汎用されている。この方法においては、分析用具として、たとえば濾紙などの多孔質層に試薬を担持させた1または複数の試薬パッドを設けた分析用具が使用されている。このような分析用具を用いる場合には、通常、試薬パッドに試料を点着した上で、分析装置において試薬パッドの呈色の程度を測光することにより、試料の分析が行われる。また、分析用具としては、多孔質層を含んだ反応ゾーンに対して、試料と試薬を点着した上で反応ゾーンの呈色の程度を測光するように構成されたものもある。
【0003】
上述の方法によって試料の分析を行う場合には、試料と試薬とを反応させている間に、試料が蒸発してしまう。とくに、反応温度を常温よりも高く設定する必要がある場合には、試料の蒸発量が多くなる。そのため、目的とする反応時間内において蒸発した試料の量だけ、被検知成分が少なくなって測定値が低値化してしまう。とくに、分析用具を用いて試料の分析を行う場合には、必要とされる試料の量が少ないために、液相において試料と試薬とを反応させる場合に比べて、試料の蒸発が測定結果に与える影響は大きい。このような問題を解決するため、蒸発量だけプラスした量の試料を用いることが考えられる。しかしながら、測定上必要とされる試料の量が多くなれば、たとえば試料として全血を用いる場合などには被験者の採血の負担が大きくなる。
【0004】
また、試料の蒸発量は、装置内環境によってバラツキがあり、その場合には測定間(分析用具間)誤差として現れる、また、複数の試薬パッド(反応ゾーン)を有する分析用具を用いる場合には、試薬パッド(反応ゾーン)毎に蒸発量が異なることにより、試薬パッド(反応ゾーン)間に誤差が生じてしまう。このような問題を解決するため、装置内に組み込まれた冷却ファンを制御して、装置における送風状態をコントロールし、試料の蒸発量を測定毎、あるいは試薬パッド(反応ゾーン)毎に均一化させることも考えられる。しかしながら、装置内には様々な部品などが組み込まれており、試料の蒸発量を均一化できる程度に送風状態を制御するのは困難であり、また冷却ファンとしての機能を維持したまま試料の蒸発量を均一化できる程度に送風状態を制御するのは困難である。
【0005】
そこで従来より、分析用具を用いる場合には、試薬パッド(反応ゾーン)からの試料の蒸発を抑制し、あるいは試薬パッド(反応ゾーン)から蒸発量を測定毎に一定化させる方法が採用されている。
【0006】
試薬パッド(反応ゾーン)からの試料の蒸発を抑制する方法としては、たとえば試薬パッド(反応ゾーン)を密閉系として試料と試薬とを反応させる方法がある(たとえば特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の方法は、反応ゾーンに試薬および試料を点着した後に反応ゾーンをキャップにより覆うものである。この方法では、キャップは使い捨てとして、あるいは繰り返し使用が可能なように構成される。そのため、キャップを使い捨てとする場合に分析用具の製造コストあるいは測定コストが高くなり、ランニングコストが大きくなってしまう。これに対して、キャップを繰り返し使用する場合には、コンタミネーションが生じる虞があり、また衛生面で問題がある。一方、特許文献2に記載の方法は、インキュベーション室の上部開口を覆う蓋を設け、インキュベーション室における試薬パッドからの試料の蒸発を抑制するものである。この方法では、蓋を着脱する必要があるために測定操作が煩雑なものとなり、ユーザの負担が大きくなる。
【0007】
【特許文献1】特開平6−174728号公報
【特許文献2】特開平8−334507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ユーザおよび被験者の負担を増大させることなく、また装置における複雑な制御を必要とすることなく、試料の蒸発を適切に抑制し、分析精度を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、試料を試薬と反応させたときの反応相において生じる変化に基づいて、試料における特定成分を分析する装置であって、上記反応相の周りの湿度を調整するための湿度コントローラを備えたことを特徴とする、分析装置が提供される。
【0010】
湿度コントローラは、たとえば上記反応相の周りの湿度を高めるための加湿手段を備えたものとされる。湿度コントローラは、加湿手段に加えて、除湿手段を備えたものとして構成することもできる。
【0011】
湿度コントローラは、たとえば上記反応相の周りの湿度を一定値以上に維持できるように構成される。より具体的には、湿度コントローラは、たとえば加湿手段によって上記反応相の周りを加湿する程度を調整するための制御手段をさらに備えたものとされる。
【0012】
制御手段は、たとえば相対湿度が30%以上となるように加湿手段を制御するように構成され、上記反応相の周りにおける相対湿度が60〜90%の範囲から予め選択された特定の相対湿度となるように加湿手段を制御するように構成するのが好ましい。これは、上記反応相の周りにおける相対湿度が60%よりも小さい場合、とくに相対湿度が30%よりも小さい場合には、反応相における試料の蒸発を十分に抑制することができない一方で、上記反応相の周りの相対湿度を90%よりも大きく設定することは、加湿手段のランニングコストが必要以上に大きくなるからである。
【0013】
加湿手段は、たとえば一部が外部に開放しているとともに、液体を保持した液体保持タンクと、上記液体保持タンクに保持された液体を加熱するためのヒータと、を備えたものとして構成される。この場合、制御手段は、たとえばヒータを制御することによって、上記反応系の周りを加湿する程度を調整するように構成される。
【0014】
本発明の分析装置は、たとえば試料と反応させるための試薬(たとえば上記特定成分と反応したときに発色する発色剤)を含んだ1以上の試薬部を含む分析用具を用いて試料の分析を行うように構成される。
【0015】
本発明の分析装置は、たとえば上記反応相において生じる変化を検出するための検出手段と、分析用具を保持するための保持部を有し、かつ上記反応相における変化を検出手段によって検出可能な位置に、分析用具を移動させるための可動トレイと、をさらに備えたものとして構成される。湿度コントローラは、たとえば可動トレイの下方に配置されるとともに、加湿された気体を発生させるための加湿気体発生ユニットを含むものとして構成される。可動トレイは、たとえば加湿気体発生ユニットにおいて発生させられた気体を、保持部に保持された分析用具の1以上の試薬部の周りに積極的に存在させるための1以上の貫通孔を有するものとして構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2に示した分析装置1は、試験片20,21を用いて血液における特定成分の濃度分析を行うように構成されたものであり、筐体3、試験片載置台4、加湿装置5、ピペット装置6、および測光装置7を有している。
【0017】
筐体3は、分析装置1の外観形状を規定するとともに、各種の要素を収容するためのものである。この筐体3は、開口30、収容部31および一対のガイド凸部32を有している。
【0018】
開口30は、試験片載置台4の一部が筐体3の外部に突出することを許容するためのものであり、筐体3の前面33に設けられている。この開口30は、前面蓋34によって開放状態と閉鎖状態とが選択されるようになされている。開口30が開放された状態では、筐体3の内部と外部とが連通し、試験片載置台4が筐体3の内部に収容される状態と、試験片載置台4の大部分が筐体3の外部に突出して第1および複数の第2スリット41,42が露出する状態と、が選択可能とされている。
【0019】
収容部31は、後述する加湿装置5のボトル53を収容するためのものであり、蓋35によって上部開口36を閉鎖することが可能とされている。すなわち、通常時には、収容部31には、ボトル53が収容されて蓋35が閉じた状態とされている一方で、蓋35を開けることにより、収容部31に対するボトル53の出し入れが可能とされている。この収容部31の底面には、後述するボトル53の排水部53Aを挿入するためのジョイント36が固定されている。ジョイント36にはチューブ56Dが連結されており、このチューブ56Dに対してボトル53に保持された水が導入できるように構成されている。
【0020】
一対のガイド凸部32は、後述する試験片載置台4の一対のガイド凹部43に係合させるためのものであるとともに、試験片載置台4の移動経路を規定するためのものである。これらのガイド凸部32は、D1,D2方向に間隔を隔てて設けられているとともに、図面上には明確に表れていないが、D3,D4方向に延びている。各ガイド凸部32には、加湿装置5により発生させられた加湿エアの移動を許容するための複数の貫通孔37が設けられている。
【0021】
筐体3にはさらに、操作パネル38およびディスプレイ39が設けられている。操作パネル38は、測定条件を設定し、あるいは分析装置1の動作を規定するための各種操作ボタン38Aが設けられたものである。ディスプレイ39は、測定結果や操作ボタン38Aの操作結果などを表示するものである。
【0022】
試験片載置台4は、試験片20,21を載置するためのものであるとともに、試験片20,21を目的位置に移動させるためのものである。この試験片載置台4は、筐体3に対して第1および第2停止位置の間をD3,D4方向に往復移動可能とされている。第1停止位置は、試験片載置台4に試験片20,21を載置し、あるいは試験片載置台4から試験片20,21を取り外すための位置であり、試験片載置台4の第1および第2スリット41,42が筐体3の外部に露出する位置である。第2停止位置は、試薬パッド20A,21Aの呈色の程度を測光するための位置であり、試薬パッド20A,21Aが後述する測光装置7の発光要素71と対面する位置である。試験片載置台4は、第1および第2停止位置に加えて、第1および第2停止位置の間にある第3停止位置、すなわち試験片20,21の試薬パッド20A,21Aに試料を点着するための位置に停止可能とされている。
【0023】
このような試験片載置台4は、第1スリット41、複数(本実施形態では3個)の第2スリット42、一対のガイド凹部43、複数の貫通孔44およびギア部45を有している。
【0024】
第1スリット41は、多成分測定用の試験片20を保持するためのものであり、筐体3のD1,D2方向に延びている。多成分測定用の試験片20は、複数(本実施形態では5個)の試薬パッド20Aが設けられたものである。各試薬パッド20Aのそれぞれは、たとえばグルコース、アルブミン、カルシウムなどの特定成分と反応して呈色する試薬を担持させたものである。これに対して、第2スリット42は、単一成分測定用の試験片21を保持するためのものであり、筐体3のD3,D4方向に延びている。単一成分測定用の試験片21は、1つの試薬パッド21Aが設けられたものである。試薬パッド21Aは、たとえばグルコース、アルブミン、カルシウムなどの特定成分と反応して呈色する試薬を担持させたものである。
【0025】
一対のガイド凹部43は、筐体3に設けられた一対のガイド凸部32に係合させるためものである。すなわち、試験片載置台4は、各ガイド凹部43が対応するガイド凸部32と係合することにより、一対のガイド凸部32に沿ってD3,D4方向に移動させられるように構成されている。
【0026】
複数の貫通孔44は、後述する加湿装置5からの加湿エアが、試験片20,21における試薬パッド20A,21Aの周りに集まりやすくするためのものである。これらの貫通孔44は、第1および第2スリット41,42に試験片20,21が載置された状態において、試薬パッド20A,21Aの周囲に位置するように設けられている。
【0027】
ギア部45は、モータ46の回転駆動力を試験片載置台4に入力させるための部分である。このギア部45は、モータ46の出力軸47に固定されたギア48に係合させるための複数の歯(図示略)を有している。したがって、試験片載置台4は、モータ46の出力軸47の回転方向に応じて筐体3に対してD3方向またはD4方向へ移動させられる。これにより、試験片載置台4は、第1停止位置と第2停止位置との間を往復移動可能とされている。
【0028】
図2および図3に示したように、加湿装置5は、試験片20,21の試薬パッド20A,21Aの周りの湿度を一定値以上に維持するためのものであり、制御部50、湿度計51、加湿エア発生ユニット52、ボトル53、およびバルブ54を有している。
【0029】
制御部50は、加湿装置5の動作を制御するためのものである。この制御部50は、たとえばバルブ54の開閉制御、後述する加湿エア発生ユニット52のヒータ58およびファン59の動作制御を行う。
【0030】
湿度計51は、試験片20,21における試薬パッド20A,21Aの周りの湿度を測定するためのものであり、後述する測光装置7のホルダ70に固定されている。湿度計51での観測結果は、制御部50によってモニタリングされている。
【0031】
加湿エア発生ユニット52は、加湿エアを発生させるためのものであり、試験片載置台4の下方に配置されている。この加湿エア発生ユニット52は、ケース55、タンク56、水位センサ57、ヒータ58およびファン59を有している。
【0032】
ケース55は、各種の要素を収容するためのものであり、上壁55Aに複数の貫通孔55Bが設けられたものである。複数の貫通孔55Bは、後述するタンク56から排出された加湿ガスを、加湿エア発生ユニット52の外部に排出するためのものである。
【0033】
タンク56は、空気を加湿するために必要な水を保持したものであり、上壁56Aに複数の貫通孔56Bが設けられたものである。複数の貫通孔56Bは、タンク56の内部において発生した加湿エアを、タンク56の外部に排出するためのものである。タンク56の側壁56Cには、チューブ56Dが固定されており、タンク56の内部がチューブ56Dの内部と連通している。
【0034】
水位センサ57は、タンク56に保持された水の残量を把握するためのものであり、タンク56の上壁56Aに固定されている。この水位センサ57での観測結果は、制御部50によりモニタリングされている。
【0035】
ヒータ58は、タンク56に保持された水を加熱して気化させるためのものであり、制御部50によって動作制御されている。制御部50は、たとえば湿度計51での観測結果をモニタリングし、その湿度計51において観測される湿度が目的の範囲に維持されるようにヒータ58の動作(タンク56の水を加熱する程度)を制御する。より具体的には、制御部50は、湿度計51において観測される湿度が目標値を下回りそうな場合、あるいは下回った場合に、ヒータ58での加熱量を大きくして加湿エアの発生量が大きくなるようにヒータ58を制御する。これに対して、制御部50は、湿度計51において観測される湿度が目標値を上回りそうな場合、あるいは上回った場合に、ヒータ58での加熱量を小さくして加湿エアの発生量が小さくなるようにヒータ58を制御する。制御部50での湿度の目標値は、たとえば相対湿度において30%以上、より好ましくは、60〜90%の範囲から選択される。
【0036】
ファン59は、ケース55の内部の加湿エアを、ケース55の貫通孔55Bに向けて移動させるためのものであり、制御部50によって動作制御されている。制御部50は、たとえば湿度計51のモニタリング結果に応じて、ファン59の動作(ファン59の回転数の増減)を制御する。より具体的には、制御部50は、湿度計51において観測される湿度が目標値を下回りそうな場合、あるいは下回った場合に、ファン59の回転数を増加させて加湿エアの供給量が大きくなるようにファン59を制御する。これに対して、制御部50は、湿度計51において観測される湿度が目標値を上回りそうな場合、あるいは上回った場合に、ファン59の回転数を減少させて加湿エアの供給量が小さくなるようにファン59を制御する。
【0037】
加湿エア発生ユニット52では、ヒータ58によってタンク56の水を加熱した場合に、タンク56の水が積極的に蒸発させられる。このときに発生した水蒸気(加湿エア)は、タンク56の貫通孔56Bを介してタンク56の外部に排出される。その一方で、加湿エア発生ユニット52においては、上方に向けた気流が生成されるようにファン59が駆動されており、加湿エアはケース55の貫通孔55Bを介してケース55(加湿エア発生ユニット52)の外部に排出される。
【0038】
ボトル53は、タンク56に供給すべき水を保持しておくためのものであり、筐体3の収容部31に保持されている。このボトル53は、内部に収容された水を排出するための排出部53Aを有している。この排出部53Aは、収容部31のジョイント36に挿入されており、ボトル53の内部は、ジョイント36を介してチューブ56Dと連通している。チューブ56Dは、上述のようにタンク56の内部に連通している。したがって、ボトル53に収容された水は、収容部31にボトル53を収容した状態において、タンク56に対して供給可能とされている。
【0039】
バルブ54は、タンク56に対して水を供給する状態と供給しない状態とを選択するためのものであり、通常は閉じた状態とされている。バルブ54は、制御部50によって開閉制御されるものである。より具体的には、制御部50は、水位センサ57での観測結果をモニタリングし、そのモニタリング結果によってタンク56の内部の水の残量が一定値以下であると判断されたときにバルブ54を開状態とする。一方、制御部50は、水位センサ57において観測される水位が目的水位となったときに、あるいはバルブ54を開状態としてから一定時間経過が経過したときに、バルブ54が閉状態となるようにバルブ54を制御する。
【0040】
図2に示したピペット装置6は、血液などの試料を吸引し、それを試験片20,21の試薬パッド20A,21Aに点着するためのものである。このピペット装置6は、図面上には明確に表れていないが、上下方向および水平方向に移動可能とされている。
【0041】
測光装置7は、試験片20,21の試薬パッド20A,21Aの呈色状態を把握するためのものである。この測光装置7は、ホルダ70に固定された発光要素71および受光要素72を有している。発光要素71は、試験片20,21の試薬パッド20A,21Aに対して光を照射するためのものであり、たとえばLEDランプなどで構成されている。一方、受光要素72は、試薬パッド20A,21Aからの反射光を受光するためのものであり、たとえばフォトダイオードにより構成されている。
【0042】
次に、分析装置1を用いた試料の分析動作について説明する。
【0043】
分析装置1を用いて試料の分析を行う場合には、まず試験片載置台4に試験片20,21をセットする。試験片20,21のセットは、試験片載置台4を筐体3の手前側に移動させて第1の停止位置に試験片載置台4を停止させ、第1スリット41および第2スリット42のそれぞれが露出した状態で行われる。この状態は、たとえば所定の操作ボタン38Aを押下することにより、あるいは前面蓋34を開けることにより自動的に達成される。また、試験片載置台4に試験片20,21をセットした場合には、試験片載置台4を筐体3の内部に移動させた後に、前面蓋34が閉められる。試験片載置台4の筐体3の内部への移動は、たとえば所定の操作ボタン38Aを押下することにより、あるいは前面蓋34を閉めることにより自動的に達成される。
【0044】
このとき、分析装置1においては、制御部50によって筐体3の内部の湿度がモニタリングされており、そのモニタリング結果に応じて制御部50によって加湿エア発生ユニット52が制御されている。このような制御部50による加湿エア発生ユニット52の制御は、分析装置1の主電源がオフされない限り、あるいはユーザによって加湿エア発生ユニット52の動作が停止させられない限り行われる。すなわち、加湿エア発生ユニット52は、筐体3の内部に試験片20,21が存在するか否かに拘らず、制御部50によって動作制御される。
【0045】
ここで、試験片載置台4にセットすべき試験片20,21は、測定すべき特定成分の種類に応じて選択される。先にも触れたように、所定の複数の特定成分の測定を行う場合には、多成分測定用の試験片20が試験片載置台4における第1スリット41にセットされる。一方、多成分測定用の試験片20では対応できない特定成分について、あるいは多成分測定用の試験片20において測定可能な特定成分のうちの1つの特定成分についてのみ測定を行う場合には、単一成分測定用の試験片21が第2スリット42に個別にセットされる。
【0046】
以上のようにして試験片20,21のセットが完了した場合には、たとえば特定成分の濃度が自動的に測定される。分析装置1における測定は、試薬パッド20A,21Aに試料を点着した後に、試薬パッド20A,21Aの呈色状態を光学的手法により測定することにより行われる。
【0047】
試薬パッド20,21に対する試料の点着は、試験片載置台4を第1停止位置から第3停止位置に移動させた後に、ピペット装置6を用いて行われる。ピペット装置6による点着は、たとえば筐体3の内部にストックされた試料を吸引した後に、その試料を測定すべき試薬パッド20A,21Aに吐出することにより行われる。
【0048】
一方、試薬パッド20A,21Aの呈色状態の測光は、試料の点着後において、試料と試薬パッド20A,21Aの試薬とを一定時間反応させた後に行われる。
【0049】
試料と試薬との反応は、試験片載置台4を第3停止位置に停止させた状態において、試薬パッド20A,21Aの周りの湿度を一定に維持しつつ行われる。試薬パッド20A,21Aの周りの湿度の維持は、制御部50が加湿エア発生ユニット52の動作を制御することにより行われる。すなわち、制御部50は、湿度計51での測定結果をモニタリングし、そのモニタリング結果に応じて、加湿エア発生ユニット52におけるヒータ58での加熱量およびファン59の回転数を制御する。
【0050】
加湿エア発生ユニット52においては、上述したようにケース55の貫通孔55Bから加湿エアが排出される。その一方で、加湿エア発生ユニット52は、試験片載置台4の下方に配置されているとともに、試験片載置台4には複数の貫通孔44が設けられている。そのため、加湿エア発生ユニット52において発生した加湿ガスは、各貫通孔44によって試験片載置台4の上面側に導かれる。また、複数の貫通孔44は、試薬パッド20A,21Aの周りに形成されている。そのため、分析装置1においては、試薬パッド20A,21Aの周りを積極的かつ効率良く加湿することができる。
【0051】
試薬パッド20A,21Aの測光は、試験片載置台4を第3停止位置から第2停止位置に移動させた後に、測光装置7を利用して行われる。測光装置7においては、各発光要素71から対応する試薬パッド20A,21Aに対して光が照射される。その一方で、測光装置7の各受光要素72においては、試薬パッド20A,21Aにおいて反射した光を受光する。そして、各試薬パッド20A,21Aに対応する測光装置7からの出力に応じて各試薬パッド20A,21Aの呈色の程度、ひいては血漿に含まれる特定成分の濃度が演算される。
【0052】
分析装置1では、加湿装置5を備えているために、一回の測定において、複数の試験片20,21を用いて測定する場合、あるいは複数の試薬パッド20Aを有する試験片20を用いて測定する場合に、それぞれの試薬パッド20A,21Aの周りの湿度を同様に維持することができる。したがって、分析装置1では、試薬パッド20A,21A毎の試料の蒸発量のバラツキを抑制することができるため、試薬パッド20A,21A毎の測定誤差のバラツキを抑制することができる。
【0053】
同様に、分析装置1では、各回の分析における湿度が同様なものとされるため、各回の測定における試薬パッド20A,21Aからの蒸発量を同様なものとすることができる。これにより、各回の測定毎のバラツキを抑制することができる。
【0054】
また、分析装置1では、試薬パッド20A,21A間のバラツキの抑制の効果、あるいは複数の測定間のバラツキの抑制効果は、加湿装置5を設けることにより達成することができる。そのため、測定時において、試薬パッド20A,21Aからの試料の蒸発を抑制するために試薬パッド20A,21Aにキャップを被せる必要はない。その結果、ユーザが試薬パッド20A,21Aにキャップを被せる作業を行う必要がなくなるためにユーザの負担が軽減される。その上、キャップを用いる必要がない分だけ、キャップを用いる場合に比べてランニングコストの低減を図ることが可能となる。
【0055】
さらに、分析装置1では、筐体3の内部を高湿度に維持するように加湿エア発生ユニット52を制御することもできる。その場合には、試薬パッド20A,21Aからの蒸発量を小さくすることができる。これにより、試薬パッド20A,21Aに点着すべき試料の量を少なくすることができる。その結果、試料として血液を用いる場合には、被験者の採血の負担が軽減される。
【0056】
本発明は、上述した実施の形態において採用された構成には限定されない。加湿エア発生ユニットの構成は、本実施の形態において説明したものには限定されず、たとえば加湿エア以外の加湿ガスを発生させるもの、あるいは水以外の液体により加湿するものであってもよい。また、加湿エア発生ユニットの配置場所は、必ずしも試験片載置台の下方である必要はない。さらに、本発明は、本実施の形態に示した試験片を用いて試料の分析を行う分析装置に限らず、その他の形態の分析用具を用いて試料の分析を行う分析装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る分析装置の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示した分析装置における加湿エア発生ユニットを説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 分析装置
20,21 試験片(分析用具)
20A,21A (試験片の)試薬パッド(ドライ試薬部)
4 試験片載置台(可動トレイ)
41 (試験片載置台の)第1スリット(可動トレイの保持部)
42 (試験片載置台の)第2スリット(可動トレイの保持部)
5 加湿装置(加湿手段)
50 制御部(制御手段)
52 (加湿装置の)加湿エア発生ユニット(加湿気体発生ユニット)
56 (加湿エア発生ユニットの)タンク(液体保持タンク)
7 測光装置(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を試薬と反応させたときの反応相において生じる変化に基づいて、試料における特定成分を分析する装置であって、
上記反応相の周りの湿度を調整するための湿度コントローラを備えたことを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
上記湿度コントローラは、上記反応相の周りの湿度を高めるための加湿手段を含んでいる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
上記湿度コントローラは、上記反応相の周りの湿度を一定値以上に維持できるように構成されている、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
上記湿度コントローラは、上記加湿手段によって上記反応相の周りを加湿する程度を調整するための制御手段をさらに備えており、
上記制御手段は、相対湿度が30%以上となるように上記加湿手段を制御するように構成されている、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記反応相の周りにおける相対湿度が60〜90%の範囲から予め選択された特定の相対湿度となるように上記加湿手段を制御するように構成されている、請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
上記加湿手段は、一部が外部に開放しているとともに、液体を保持した液体保持タンクと、上記液体保持タンクに保持された液体を加熱するためのヒータと、を備えており、
上記制御手段は、上記ヒータを制御することによって、上記反応系の周りを加湿する程度を調整するように構成されている、請求項4または5に記載の分析装置。
【請求項7】
試料と反応させるための試薬を含んだ1以上の試薬部を含む分析用具を用いて試料の分析を行うように構成されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
上記分析用具として、上記特定成分と反応したときに発色する発色剤を含んだ複数のドライ試薬部を基材上に固定したものを用いて試料の分析を行うように構成されている、請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
上記反応相において生じる変化を検出するための検出手段と、
上記分析用具を保持するための保持部を有し、かつ上記反応相における変化を上記検出手段によって検出可能な位置に、上記分析用具を移動させるための可動トレイと、
をさらに備え、かつ、
上記湿度コントローラは、上記可動トレイの下方に配置されるとともに、加湿された気体を発生させるための加湿気体発生ユニットを含んでおり、
上記可動トレイは、上記加湿気体発生ユニットにおいて発生させられた気体を、上記保持部に保持された分析用具の1以上の試薬部の周りに積極的に存在させるための1以上の貫通孔を有している、請求項7または8に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−125981(P2006−125981A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313964(P2004−313964)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】