分析装置
【課題】複数の検出信号を高速に処理することが可能な分析システムを提供する。
【解決手段】この分析システム1は、検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の光電変換素子84aと、複数の光電変換素子84aからそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択する複数のマルチプレクサ111aと、複数のマルチプレクサ111aによってそれぞれ選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数のA/D変換部111dと、複数のA/D変換部111d部による変換後の複数のデジタル信号のうち少なくとも1つに基づいて、分析物の特性を解析する情報処理端末3aとを備える。
【解決手段】この分析システム1は、検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の光電変換素子84aと、複数の光電変換素子84aからそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択する複数のマルチプレクサ111aと、複数のマルチプレクサ111aによってそれぞれ選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数のA/D変換部111dと、複数のA/D変換部111d部による変換後の複数のデジタル信号のうち少なくとも1つに基づいて、分析物の特性を解析する情報処理端末3aとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関し、特に、複数の検出器から出力された複数の信号を処理する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の検出器から出力されたアナログ信号に増幅などの処理を施し、処理したアナログ信号をデジタル信号に変換し、作成したデジタル信号をコンピュータなどの解析手段に入力する受光信号処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数(32個)のフォトセンサにそれぞれ接続された複数(32個)の受光アンプ(増幅器)によって増幅された複数(32個)のアナログ信号を、複数(32個)のアナログスイッチを用いて選択的に取得するとともに、その選択的に取得されたアナログ信号を、積分回路と1つのマルチプレクサとを介して、1つのA/D変換器に入力した後、A/D変換器により得られたデジタル信号をコンピュータ(解析手段)に入力する受光信号処理装置が開示されている。
【0004】
上記特許文献1に開示された受光信号処理装置のように、マルチプレクサとA/D変換器とが直列接続された電気回路を有する装置の場合には、マルチプレクサが複数の入力信号から1つを選択した後のしばらくの間はマルチプレクサの出力信号が安定しない。このため、このような不安定な信号を除去するため、マルチプレクサにより信号が選択されてから所定時間経過後にA/D変換器によるA/D変換処理を開始するように電気回路を構成することが一般的である。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−76430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来の受光信号処理装置では、マルチプレクサにより信号が選択されてから所定期間は実質的に信号処理が行われていないか、行われていたとしてもその間のデータは使用することができない。このため、検出器から出力された信号の処理に無駄が多くなるので、効率的に信号を処理することができなかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の検出信号を高速に処理することが可能な分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による分析装置は、検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の検出器と、複数の検出器からそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択する複数のアナログ信号選択部と、複数のアナログ信号選択部によってそれぞれ選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数の信号変換部と、複数の信号変換部による変換後の複数のデジタル信号のうち少なくとも1つに基づいて、分析物の特性を解析する解析手段とを備えている。
【0009】
この一の局面による分析装置では、上記のように構成することにより、たとえば、1つのアナログ信号選択部によるアナログ信号の選択から所定期間経過後に、1つの信号変換部がアナログ信号選択部によって選択されたアナログ信号をデジタル変換するとともに、上記所定期間内に、他の信号変換部が、他のアナログ信号選択部によって選択されたアナログ信号をデジタル変換することができる。したがって、信号変換部から出力される信号が安定するとともに、効率的に信号を処理することができる。
【0010】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、アナログ信号選択部がアナログ信号を選択してから所定期間経過後に信号変換部が選択された前記アナログ信号を変換したデジタル信号に基づいて、解析手段が分析物の特性を解析するように構成されており、複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにアナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備えている。このように構成すれば、アナログ信号の取得から所定期間経過後にそのアナログ信号がデジタル信号に変換されることにより、解析手段が分析物の特性の解析に使用するデジタル信号が安定した信号になるとともに、複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を取得する時刻をそれぞれ異ならせることにより、上記所定期間内に、他の信号変換部によってデジタル変換された信号を使用して解析することができるので、信号処理の効率を向上させることができる。
【0011】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、解析手段は、複数の信号変換部による信号変換の期間が互いに重複していないデジタル信号に基づいて、分析物の特性を解析する。このように構成すれば、信号変換部の動作を効率化することができる。すなわち、メモリが1つしかないような場合には、複数の信号変換部が重複してデジタル信号を出力しても、メモリはそれらを全て記憶することができないので、信号変換部は、無駄な動作をしてしまうという不都合が生じる。本発明では、信号変換の期間が重複しないデジタル信号に基づいて解析を行うことにより、信号変換部が無駄な動作を行うことがないので、信号変換部の動作を効率化することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにアナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備え、制御部は、複数の信号変換部がデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、信号変換部の動作を制御する。このように構成すれば、たとえば、メモリが1つしかない場合でも、複数の信号変換部から出力されたデジタル信号を効率的にメモリに記憶させることができる。
【0013】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、複数の信号変換部によって変換されたデジタル信号を記憶する記憶手段をさらに備えている。このように構成すれば、複数の信号変換部から出力されたデジタル信号を容易に記憶させることができる。
【0014】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、アナログ信号選択部は、マルチプレクサを含む。このようにマルチプレクサを用いれば、容易に、複数の検出器からそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択することができる。
【0015】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、分析物に試薬を混合する試薬混合部をさらに備え、解析手段は、試薬混合部によって分析物に試薬が混合された後の所定の時刻から、分析物が所定の状態に変化するまでの時間を解析する。この場合に、一の局面による発明では、分析物から取得された光学的情報を複数の検出器により検知して、その検知した光学的情報に基づいて、試薬混合部によって分析物に試薬が混合された後の所定のタイミングから分析物が所定の状態に変化するまでの時間を解析することができる。これにより、分析物が所定の状態に変化するまでの時間を正確に解析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
まず、図1〜図12を参照して、本発明の一実施形態による分析システム1の構成について説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による分析システム1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するためのシステムであり、検体としては血漿を用いる。本実施形態による分析システム1では、凝固時間法を用いて検体の光学的な測定を行っている。本実施形態で用いる凝固時間法は、検体が凝固する過程を透過光の変化として検出する測定方法である。
【0019】
分析システム1は、設置される施設の規模に応じて、構成を変更することができる。例えば、検体数が多くない施設に設置される場合、分析システム1は、図25に示すように、分析装置3と、分析装置3に検体を供給するための搬送装置200とから構成される。一方、検体数が多い施設に設置される場合、分析システム1は、図1に示すように、拡張用分析装置4が増設され、搬送装置200が搬送装置2に取り替えられることにより、搬送機構部2と、分析装置3と、拡張用分析装置4とから構成される。このように、拡張用分析装置4は、分析システム1に増設されることによって、分析システム1の検体処理能力を拡張する。
【0020】
図1に示す搬送機構部2は、分析装置3および拡張用分析装置4に検体を供給するために、検体を収容した複数(本実施形態では、10本)の試験管150が載置されたラック151を分析装置3および拡張用分析装置4の各々の吸引位置2aおよび2b(図1参照)に搬送する機能を有している。また、搬送機構部2は、未処理の検体を収容した試験管150が収納されたラック151をセットするためのラックセット領域2cと、処理済みの検体を収容した試験管150が収納されたラック151を収容するためのラック収容領域2dとを有している。
【0021】
分析装置3および拡張用分析装置4は、搬送機構部2から供給された別々の検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的情報をそれぞれ取得することが可能なように構成されている。本実施形態では、搬送機構部2に位置する試験管150から分析装置3および拡張用分析装置4のキュベット152(図1参照)内に分注された検体に対してそれぞれ光学的な測定が行われる。また、分析装置3は、情報処理端末3aと、ランプユニット5と、制御基板6とを備えている。分析装置3は、さらに、キュベット供給部20と、回転搬送部30と、検体分注アーム40と、2つの試薬分注アーム50と、キュベット移送部60および60aと、第1光学的情報取得部70と、第2光学的情報取得部80と、を備えている。また、拡張用分析装置4は、分析装置3に搭載されているものと同じ制御基板6と、キュベット供給部20と、回転搬送部30と、検体分注アーム40と、2つの試薬分注アーム50と、キュベット移送部60と、第1光学的情報取得部70と、第2光学的情報取得部80と、を備えている。これらのコンポーネントの配置は、分析装置3と、拡張用分析装置4とで同じである。
【0022】
ここで、本実施形態では、情報処理端末3aおよびランプユニット5は、分析装置3にのみ備えられており、拡張用分析装置4には備えられていない。
【0023】
情報処理端末3aは、分析装置3の装置本体のみならず拡張用分析装置4にも通信ケーブルを介して電気的に接続されている。すなわち、分析装置3の情報処理端末3aが、分析装置3および拡張用分析装置4に対して共通に用いられるように構成されている。なお、分析装置3および拡張用分析装置4は、検体から取得した光学的情報を情報処理端末3aに送信する機能を有する。また、情報処理端末3aは、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、図2に示すように、PC本体3bと、表示部3cと、キーボード3dとを含んでいる。PC本体3bは、ランプユニット5から検体(測定用試料)に所定の波長特性を有する光が照射されたときに、制御基板6の後述する信号処理部111および制御部112により取得される信号(光学的情報)に基づいて、検体の特性を解析する機能を有している。なお、本実施形態では、情報処理端末3aのPC本体3bは、検体に試薬が混合された後の所定のタイミングから検体が所定の凝固状態に達するまでの時間(凝固時間)を解析するように構成されている。また、PC本体3bは、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなる制御部(図示せず)を備えている。また、表示部3cは、PC本体3bで得られた分析結果などの情報を表示するために設けられている。なお、上記のように、分析装置3と拡張用分析装置4とは、情報処理端末3aおよびランプユニット5を拡張用分析装置4が含んでいないことを除いて構成が同じであるので、以下の説明では、分析装置3の構成について説明する。
【0024】
また、ランプユニット5は、図3および図4に示すように、光源としての1つのハロゲンランプ11と、2つのミラー12aおよび12bと、2組の集光レンズ13a〜13cおよび13d〜13fと、円盤形状の1つのフィルタ部14と、モータ15と、光透過型のセンサ16と、2セットの光ファイバ17aおよび17bとを有している。なお、ランプユニット5では、ハロゲンランプ11、ミラー12b、集光レンズ13d〜13fおよび光ファイバ17bによって分析装置3用の光学系が構成されているとともに、ハロゲンランプ11、ミラー12a、集光レンズ13a〜13cおよび光ファイバ17aによって拡張用分析装置4用の光学系が構成されている。
【0025】
光ファイバ17bの先端は、分析装置3の第2光学的情報取得部80に接続されている。光ファイバ17aの先端は、拡張用分析装置4が設置されている場合にのみ、拡張用分析装置4の第2光学的情報取得部80に接続される。
【0026】
なお、ミラー12a、集光レンズ13a〜13cおよび光ファイバ17aは、拡張用分析装置4が設置されていない場合にはランプユニット5に設置されておらず、拡張用分析装置4を増設するときに、ミラー12aをミラー取付部12cに、集光レンズ13a〜13cをレンズ取付部13g〜13iに取り付けるようにしてもよい。これによって、拡張用分析装置4が設置されていない場合のランプユニット5のコストを軽減することができる。
【0027】
また、光ファイバ17aおよび17bは、それぞれ、21本の光ファイバ17cおよび17dから構成されている。21本の光ファイバ17cおよび17dは、結束部材17eおよび17fによってそれぞれ束ねられている。ハロゲンランプ11は、図4に示すように、両面から光を照射可能な板状のフィラメント11aを含んでいる。これにより、板状のフィラメント11aの両面からそれぞれ同じ特性の光が照射されるように構成されている。なお、板状のフィラメントは、フィラメントからの光の照射領域内における光量のバラツキが小さいため、板状のフィラメントを使用することにより、測定用試料に光を照射して得られる光(透過光や散乱光)の量が安定し、測定誤差を抑制することができる。また、2つのミラー12aおよび12bは、それぞれ、ハロゲンランプ11から照射される光を反射して所定の光路に光を導くために設けられている。すなわち、ミラー12a、12bは、フィラメント11aを挟んだ両側に配置されており、ミラー12aはフィラメント11aの一方の面に正対する位置に、ミラー12bは、フィラメント11bの他方の面に正対する位置に配置されている。また、ミラー12a、12bは、フィラメント11aから照射された光の進行方向を90度変更するように、フィラメント11aに対して傾斜して配置されている。
【0028】
ミラー12aは、ハロゲンランプ11の板状のフィラメント11aの一方の面から照射された光を反射するとともに、ミラー12bは、板状のフィラメント11aの他方の面から照射された光を反射する。これにより、ミラー12aにより反射された光と、ミラー12bにより反射された光とによって2つの光路が形成される。また、ミラー12aおよび12bは、図3に示すように、それぞれ、ミラー取付部12cおよび12dに着脱可能に取り付けられている。集光レンズ13a〜13cは、図4に示すように、ミラー12aによって進行方向を変更された光の通路に配置されており、ミラー12a側からレンズ13a、13bおよび13dの順で配置されている。集光レンズ13d〜13fは、集光レンズ13a〜13cと同様に、ミラー12bによって進行方向を変更された光の通路に配置されており、ミラー12b側からレンズ13d、13eおよび13fの順で配置されている。また、2組の集光レンズは、集光レンズ13a〜13cの配列方向と、集光レンズ13d〜13fの配列方向とが平行になるように配置されている。
【0029】
また、2組の集光レンズ13a〜13cおよび13d〜13fは、図4に示すように、それぞれ、ミラー12aおよび12bにより反射された2つの光を光ファイバ17aおよび17bに導くために集光する。ミラー12aおよび12bによって反射された2つの光は、それぞれ、集光レンズ13a〜13cおよび13d〜13fにより集光され、光学フィルタ14b〜14fのいずれか1つを透過して光ファイバ17aおよび17bに導かれる。また、集光レンズ13a〜13cは、図3に示すように、それぞれ、レンズ取付部13g〜13iに着脱可能に取り付けられている。また、集光レンズ13d〜13fもそれぞれ対応するレンズ取付部(図示せず)に着脱可能に取り付けられている。
【0030】
また、本実施形態では、ランプユニット5のフィルタ部14は、図5に示すように、軸14aを中心に回転可能に設けられている。このフィルタ部14は、5つの光透過特性(透過波長)のそれぞれ異なる光学フィルタ14b〜14fを有するフィルタ板14gと、フィルタ板14gを光学フィルタ14b〜14fの両面が露出するように保持するフィルタ板保持部材14hとによって構成されている。フィルタ板14gは、フィルタ板保持部材14hに固定されている。フィルタ板14gには、光学フィルタ14b〜14fを設置するための5つの孔14iが設けられている。そして、5つの孔14iには、それぞれ、光透過特性(透過波長)の異なる5つの光学フィルタ14b、14c、14d、14eおよび14fが設置されている。フィルタ板14gには、さらに孔14jが設けられている。孔14jは、光が透過しないように閉塞されている。孔14iおよび14jは、フィルタ部14の回転方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で設けられている。なお、孔14jは、予備の孔であり、フィルタの追加が必要となった場合には、フィルタが装着される。
【0031】
光学フィルタ14b、14c、14d、14eおよび14fは、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長の光を透過し、その他の波長の光は透過しない。従って、光学フィルタ14b、14c、14d、14eおよび14fを透過した光は、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長特性を有する。
【0032】
また、フィルタ板保持部材14hは、円環形状であり、その中心の孔部分にフィルタ板14gが配置されている。フィルタ板保持部材14hには、円周方向に沿って等間隔(60°)に6つのスリットが設けられている。それら6つのスリットのうち1つは、他の5つのスリット14lよりもフィルタ板保持部材14hの回転方向のスリット幅が大きい原点スリット14kである。
【0033】
原点スリット14kおよび通常スリット14lは、隣接する孔14iおよび14j間の中間角度位置(孔14iおよび14jから30°ずれた位置)に60°の等間隔で形成されている。モータ15(図3参照)は、フィルタ部14の軸14aに接続されている。これにより、モータ15の駆動によって、フィルタ部14が軸14aを中心として回転するように構成されている。
【0034】
ここで、本実施形態では、ランプユニット5が、光学フィルタ14b〜14fのいずれか1つを透過した光を照射する際には、フィルタ部14が連続的に回転するように、モータ15の駆動が制御基板6(図1参照)により制御されるように構成されている。フィルタ部14の回転に伴って、集光レンズ13a〜13c(図4参照)により集光された光の通路と、集光レンズ13d〜13f(図4参照)により集光された光の通路とにそれぞれ、光透過特性の異なる5つの光学フィルタ14b〜14fと、1つの遮光された孔14j(図5参照)とが断続的に順次配置される。このため、波長特性の異なる5種類の光が断続的に順次照射される。
【0035】
また、光透過型のセンサ16は、図3に示すように、フィルタ部14の回転に伴う原点スリット14kおよび通常スリット14lの通過を検出するために設けられている。すなわち、センサ16は、フィルタ部14を光源と受光部とで挟むように設置されている。このセンサ16は、原点スリット14kおよび通常スリット14lが通過する位置に対応して設置されている。
【0036】
したがって、センサ16は、原点スリット14kおよび通常スリット14lが通過すると、スリットを介して光源からの光を受光部が検出し、検出信号を出力する。なお、原点スリット14kは、通常スリット14lよりもスリット幅が大きいので、原点スリット14kが通過したときにセンサ16から出力される検出信号は、通常スリット14lが通過したときにセンサ16から出力される検出信号よりも、出力期間が長い。そして、センサ16から出力される検出信号は、制御基板6(図1参照)に送られるとともに、制御基板6の後述するフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの検出信号に基づいてフィルタ部14が正常に回転しているか否かが監視されるように構成されている。
【0037】
また、2セットの光ファイバ17aおよび17bは、それぞれ、ランプユニット5からの光を分析装置3および拡張用分析装置4の第2光学的情報取得部80にセットされるキュベット152内の測定用試料に導くために設けられている。光ファイバ17aは、図1に示すように、ランプユニット5から拡張用分析装置4に設けられた拡張用接続端子7を介して拡張用分析装置4の第2光学的情報取得部80へ延びるように設置されている。光ファイバ17bは、ランプユニット5から分析装置3の第2光学的情報取得部80へ延びるように設置されている。これにより、1つのランプユニット5によって、分析装置3および拡張用分析装置4の各々の第2光学的情報取得部80に光を供給することが可能となる。
【0038】
また、光ファイバ17aおよび17bは、図4に示すように、それぞれ、光学フィルタ14b〜14fのいずれか1つを透過して出射された光が、結束部材17e(17f)によって束ねられている端部から入射されるように構成されている。21本の光ファイバ17cは、それぞれ、拡張用分析装置4(図1参照)の第2光学的情報取得部80の後述する20個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように配置されている。また、21本の光ファイバ17dは、それぞれ、分析装置3(図1参照)の第2光学的情報取得部80の後述する20個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように構成されている。
【0039】
キュベット供給部20は、ユーザによって無造作に投入された複数のキュベット152を整列させ、位置152aに1つずつ配置する。位置152aに配置されたキュベット152は、キュベット移送部60aによって1つずつ回転搬送部30に移送される。回転搬送部30は、円盤形状のテーブル30aを備えており、テーブル30aには、キュベット152を収容するための複数の穴152bと、キュベット152内の検体に添加される試薬を収容した試薬容器(図示せず)を収容するための複数の穴152cとが設けられている。回転搬送部30は、テーブル30aを回転させることにより、キュベット152と、試薬容器とを搬送する。
【0040】
検体分注アーム40は、搬送機構部2により吸引分注位置2a(2b)に搬送された試験管150から検体を吸引するとともに、吸引した検体を回転搬送部30に移送されたキュベット152内に分注する機能を有している。試薬分注アーム50は、回転搬送部30に載置された試薬容器(図示せず)内の試薬を回転搬送部30に保持されたキュベット152に分注することにより、キュベット152内の検体に試薬を混合するために設けられている。キュベット移送部60は、キュベット152を回転搬送部30と、第2光学的情報取得部80の後述するキュベット載置部81との間で移送するために設けられている。
【0041】
第1光学的情報取得部70は、試薬を添加する前の検体中の干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)の有無、種類および含有の度合いなどを検出するために、検体から光学的な情報を取得するように構成されている。この第1光学的情報取得部70による光学的情報の取得は、第2光学的情報取得部80による検体の光学的な測定の前に行われる。第1光学的情報取得部70は、図6に示すように、光源としての発光ダイオード(LED)71と、光電変換素子72と、プリアンプ73と、基板74とを含んでいる。第1光学的情報取得部70は、以下に説明するように、回転搬送部30に保持されたキュベット152に光を照射することによって検体から光学的な情報を取得する。
【0042】
発光ダイオード71は、回転搬送部30に保持されたキュベット152に対して光を照射可能なように設けられている。この発光ダイオード71は、基板74(図6参照)のコントローラ74cにより3種類の波長特性を有する光を周期的に順次出射するように制御される。具体的には、この発光ダイオード71は、430nmの波長特性を有する青色の光と、565nmの波長特性を有する緑色の光と、627nmの波長特性を有する赤色の光とを周期的に順次出射する。光電変換素子72は、キュベット152を透過した発光ダイオード71からの光を検出して、電気信号に変換するための機能を有している。プリアンプ73は、光電変換素子72からの電気信号を増幅するために設けられている。
【0043】
基板74は、光電変換素子72からの電気信号を増幅し、デジタル変換して、情報処理端末3aのPC本体3bに送信する機能を有している。また、基板74には、図6に示すように、増幅部74aと、A/D変換器74bと、コントローラ74cとが設けられている。また、増幅部74aは、アンプ74dと、電子ボリューム74eとを有している。アンプ74dは、プリアンプ73からの電気信号を増幅するために設けられている。また、アンプ74dは、コントローラ74cからの制御信号を電子ボリューム74eに入力することによりアンプ74dのゲイン(増幅率)を調整することが可能なように構成されている。A/D変換器74bは、アンプ74dにより増幅された電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。
【0044】
コントローラ74cは、発光ダイオード71から出射される光の波長特性(430nm、565nmおよび627nm)の周期的な変化に合わせて、アンプ74dのゲイン(増幅率)を変化させるように構成されている。また、コントローラ74cは、PC本体3bに電気的に接続されており、A/D変換器74bにおいてデジタル変換されたデジタル信号をPC本体3bに送信する。これにより、PC本体3bにおいて、第1光学的情報取得部70からのデジタル信号の分析(解析)が行われることにより、発光ダイオード71から出射される3つの光に対するキュベット152内の検体の吸光度(透過光強度)が求められるとともに、検体中の干渉物質の有無や種類、含有の度合いなどが分析される。そして、その分析結果に基づいて、第2光学的情報取得部80による検体の測定を行うか否かが判断されるとともに、第2光学的情報取得部80からの検出信号の解析方法と分析結果の表示方法とが制御される。
【0045】
第2光学的情報取得部80は、検体に試薬を添加して調製された測定用試料の加温を行うとともに、測定用試料から光学的情報を検出するための機能を有している。この第2光学的情報取得部80は、キュベット載置部81と、キュベット載置部81の下方に配置された検出部82(図7参照)とにより構成されている。キュベット載置部81には、図1に示すように、キュベット152を挿入するための20個の挿入孔81aと、キュベット152を挿入せずに参照光を測定するための1つの参照光用測定孔81bとが設けられている。また、キュベット載置部81には、挿入孔81aに挿入されたキュベット152を所定の温度に加温するための加温機構(図示せず)が内蔵されている。
【0046】
検出部82は、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の測定用試料に対して光学的な測定を行うことが可能なように構成されている。この検出部82には、図7および図8に示すように、キュベット152が挿入される各挿入孔81aに対応して、コリメータレンズ83a、光電変換素子84aおよびプリアンプ85aが設けられるとともに、参照光用測定孔81b(図1参照)に対応して、参照光用コリメータレンズ83b、参照光用光電変換素子84bおよび参照光用プリアンプ85bが設けられている。参照光用コリメータレンズ83b、参照光用光電変換素子84bおよび参照光用プリアンプ85bの構成は、それぞれ、コリメータレンズ83a、光電変換素子84aおよびプリアンプ85aの構成と同じである。
【0047】
コリメータレンズ83aは、図8に示すように、ランプユニット5(図1参照)からの光を誘導する光ファイバ17d(17c)の端部と、対応する挿入孔81aとの間に設置されている。このコリメータレンズ83aは、光ファイバ17d(17c)から出射された光を平行光にするために設けられている。また、光電変換素子84aは、挿入孔81aを挟んで光ファイバ17d(17c)の端部に対向するように設置された基板86aの挿入孔81a側の面に取り付けられている。プリアンプ85aは、基板86aの挿入孔81aと反対側の面に取り付けられている。また、光電変換素子84aは、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の測定用試料に光を照射したときに測定用試料を透過する光(以下、透過光という)を検出するとともに、検出した透過光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力する機能を有している。検出部82のプリアンプ85aは、光電変換素子84aからの電気信号(アナログ信号)を増幅するために設けられている。
【0048】
また、参照光用測定孔81bに対応して検出部82に設けられた参照光用コリメータレンズ83b、参照光用光電変換素子84b、参照光用プリアンプ85bおよび参照光用基板86bは、それぞれ、挿入孔81aに対応して検出部82に設けられたコリメータレンズ83a、光電変換素子84a、プリアンプ85aおよび基板86aと同様に構成されている。なお、参照光用光電変換素子84bには、参照光として、光ファイバ17d(17c)から出射された光が参照光用コリメータレンズ83bを透過した後、直接入射されるように構成されている。すなわち、参照光用光電変換素子84bは、測定用試料を収容するキュベット152を介さずに照射される参照光を検出するとともに、検出した参照光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力するように構成されている。
【0049】
制御基板6は、第2光学的情報取得部80の下方に配置されている。この制御基板6は、分析装置3やランプユニット5などの動作の制御や、第2光学的情報取得部80から出力された光学的情報(電気信号)の処理および記憶などを行う機能を有している。また、制御基板6には、図7および図9に示すように、信号処理部111、制御部112、増幅回路113、微分回路114および温度コントローラ115が設けられている。信号処理部111は、ランプユニット5から測定用試料に光が照射されたときに、光電変換素子84aが透過光を検出して出力する信号の処理を行うために設けられている。この信号処理部111は、図9に示すように、3つのマルチプレクサ(MUX)111aと、3つのオフセット回路111bと、3つのアンプ111cと、3つのA/D変換部111dとを有している。そして、それぞれ1つのマルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dによって、1つの信号処理ラインL0が構成されている。信号処理部111には、この信号処理ラインL0に加えて、信号処理ラインL0と同様の構成を有する信号処理ラインL1およびL2が設けられている。すなわち、信号処理部111には、検出部82から出力された複数のアナログ信号の処理を行うための3つの信号処理ラインL0〜L2が設けられている。
【0050】
図10に示すように、マルチプレクサ111aは、複数のプリアンプ85a(参照光用プリアンプ85b)に接続されている。このマルチプレクサ111aは、複数の光電変換素子84a(参照光用光電変換素子84b)からプリアンプ85a(参照光用プリアンプ85b)を介して入力される複数のアナログ信号から1つずつ選択して順次オフセット回路111bへ出力するように構成されている。オフセット回路111bは、マルチプレクサ111aから出力された信号の補正を行う機能を有している。具体的には、オフセット回路111bは、測定に用いられた挿入孔81aまたは参照光用測定孔81bに対応したオフセット値が制御部112(図9参照)から供給される。そして、オフセット回路111bは、マルチプレクサ111aから出力される透過光に対応する信号から上記のオフセット値を減算処理することにより、マルチプレクサ111aから出力される透過光に対応する信号を補正するように構成されている。
【0051】
アンプ111cは、オフセット回路111bから出力されたアナログ信号を増幅する機能を有している。このアンプ111cのゲイン(増幅率)は、Lゲイン、および、Lゲインよりも高い値のHゲインの2種類に切り替えられるように制御部112により制御される。そして、アンプ111cにより増幅されたLゲイン(増幅率)の信号とHゲイン(増幅率)の信号とは、それぞれ、互いに異なるタイミングでA/D変換部111dに入力されるように構成されている。A/D変換部111dは、それぞれ、アンプ111cに接続されており、そのアンプ111cによりLゲインおよびHゲインの信号(アナログ信号)に増幅された処理済アナログ信号をデジタル信号(データ)に変換するために設けられている。
【0052】
なお、本実施形態では、A/D変換部111dからは、図10に示すように、チャンネルCH0〜CH47に対応する48個(1つのA/D変換部につき16個)のデータが出力されるように構成されている。なお、このチャンネルCH0〜CH47の内、チャンネルCH0〜CH41の42個のチャンネルのデータは、それぞれ、各光電変換素子84aまたは参照光用光電変換素子84bから得られた電気信号に基づいたデータに対応している。すなわち、20個の光電変換素子84aから得られた20個のデータは、それぞれ、信号処理部111のアンプ111cによりLゲイン(増幅率)およびHゲイン(増幅率)で増幅されることによって40個のデータになる。また、1つの参照光用光電変換素子84bから得られた1つのデータは、信号処理部111(図9参照)のアンプ111cにおいてLゲイン(増幅率)およびHゲイン(増幅率)で増幅されることにより2つのデータになる。この40個のデータと、参照光に対応する2つのデータとを合計した42個のデータがチャンネルCH0〜CH41のデータに対応している。なお、チャンネルCH0〜CH47の内、残りの6つのチャンネルCH42〜CH47は、本実施形態では使用されない予備のチャンネルであり、このチャンネルCH42〜CH47のデータは、光電変換素子84aまたは参照光用光電変換素子84bからの電気信号には対応していない。
【0053】
また、制御部112は、分析装置3の動作を制御する機能と、A/D変換部111dから出力されるデジタル信号(データ)を取得して記憶する機能とを有している。この制御部112は、図9に示すように、コントローラ112a、フィルタ部回転監視部112b、モータコントローラ112c、マルチプレクサ制御部112d、オフセットインターフェイス112e、アンプインターフェイス112f、A/D変換部インターフェイス112g、ロガー用メモリ112h、設定用メモリ112i、コントローラステータスレジスタ112jおよびローカルバスインターフェイス112kを含んでいる。
【0054】
コントローラ112aは、制御部112による各種の制御を統括する機能を有している。また、フィルタ部回転監視部112bは、ランプユニット5のフィルタ部14が正常に回転しているか否かを監視するために設けられている。このフィルタ部回転監視部112bには、フィルタ部14の回転に伴う原点スリット14k(図5参照)または通常スリット14lの通過を検出するセンサ16からの検出信号が入力されるように構成されている。そして、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16から原点スリット14k(図5参照)の検出信号が出力される時間間隔と、センサ16から通常スリット14l(図5参照)の検出信号が出力される時間間隔と、センサ16から原点スリット14kの検出信号が出力されてから次に再度原点スリット14kの検出信号が出力されるまでの間に通常スリット14lの検出信号が出力される回数とが監視されることによって、フィルタ部14が正常に回転しているか否かが監視される。また、モータコントローラ112cは、フィルタ部14を回転させるモータ15の回転数を制御する機能を有している。また、マルチプレクサ制御部112dは、マルチプレクサ111aの動作を制御する機能を有している。具体的には、マルチプレクサ制御部112dは、複数のマルチプレクサ111aがアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにマルチプレクサ111aの動作を制御している。
【0055】
また、コントローラ112aは、図9に示すように、オフセットインターフェイス112e、アンプインターフェイス112fおよびA/D変換部インターフェイス112gを介してそれぞれ信号処理部111のオフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dの動作の制御を行うように構成されている。具体的には、コントローラ112aは、オフセットインターフェイス112eを介してオフセット回路111bに所定のオフセット値を供給するとともに、オフセット回路111bがマルチプレクサ111aからの信号からそのオフセット値を減算することにより補正処理を行うのを制御する。また、コントローラ112aは、アンプインターフェイス112fを介してアンプ111cがLゲインおよびHゲインになるように制御するとともに、アンプ111cによるオフセット回路111bからの信号の増幅処理を制御する。また、コントローラ112aは、A/D変換部インターフェイス112gを介してA/D変換部111dによるアンプ111cからの信号(アナログ信号)のデジタル信号への変換処理を制御する。また、A/D変換部111dにより取得されたデジタル信号(データ)は、A/D変換部インターフェイス112gおよびコントローラ112aを介してロガー用メモリ112hに入力されるとともに記憶されるように構成されている。この際、コントローラ112aは、複数のA/D変換部111dが複数のデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、A/D変換部インターフェイス112gを介してA/D変換部111dの動作を制御している。
【0056】
また、コントローラ112aは、所定の信号処理ライン(L0からL2のいずれか)のマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによるアナログ信号処理が行われる期間に、その所定の信号処理ラインとは別の信号処理ラインのA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理が行われるように、各信号ラインL0〜L2におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111c、A/D変換部111dおよびロガー用メモリ112hのうち処理を実行するものを切り替える機能を有する。なお、この点については、後の分析動作の説明において詳細に説明する。
【0057】
ロガー用メモリ112hは、所定の光電変換素子84aから出力されたアナログ信号に対応するデジタル信号(データ)を、ロガー用メモリ112hのアドレスによって識別可能に記憶するために設けられている。このロガー用メモリ112hは、図11に示すように、128バイト単位の32個のエリア0〜31によって構成されている。このエリア0〜31には、それぞれ、5つの光学フィルタ14b〜14f(図5参照)の透過光に対応するデータおよび閉塞された孔14jに対応するデータが記憶される。すなわち、フィルタ部14が1回転する毎に、5つの異なる光透過特性を有する光学フィルタ14b〜14fの透過光に対応するデータが発生する。そして、これらの5つのデータがそれぞれロガー用メモリ112h(図11参照)のエリア0から順番にエリア毎に記憶される。また6番目のエリアには、孔14jに対応するデータとして“0”が記憶される。これにより、フィルタ部14の1回転(約100msec)毎にロガー用メモリ112hの6つのエリアが使用されるとともに、エリア31まで使用された後は、エリア0に戻ってデータが上書きされるように構成されている。
【0058】
また、ロガー用メモリ112hの各エリア0〜31は、それぞれ、128個のアドレスを有している。たとえば、エリア0は、000h〜00Fh、010h〜01Fh、020h〜02Fh、030h〜03Fh、040h〜04Fh、050h〜05Fh、060h〜06Fhおよび070h〜07Fhの128個のアドレスを有している。そして、000h〜05Fhの96個のアドレスに上記したチャンネルCH0〜CH47(図10参照)のデータが記憶されるように構成されている。チャンネルCH0〜CH47の各データは、それぞれ、2つのアドレスに記憶されるように構成されている。なお、前述のように本実施形態では、チャンネルCH42〜47からはデータが出力されないので、これらのチャンネルに対応するアドレスには、データは記憶されない。
【0059】
また、図11に示したロガー用メモリ112hのエリア0におけるアドレス060h〜06Fhおよび070h〜07Ehは、本実施形態ではデータの記憶されない予備のアドレスである。また、エリア0の最後のアドレス07Fhには、フィルタ番号(0〜4)が記憶される。このフィルタ番号(0〜4)は、5つの光学フィルタ14b〜14f(図5参照)を識別するための番号である。光学フィルタは、原点スリット14kが通過するタイミングを検出することによって識別できる。この5つの光学フィルタ14b〜14fに対応するフィルタ番号(0〜4)がアドレス07Fhに記憶されることにより、エリア0に記憶されたデータがどの光学フィルタ(14b〜14f)の透過光に対応するデータかが識別されるように構成されている。
【0060】
また、図9に示した設定用メモリ112iは、オフセット回路111bに供給するオフセット値と、アンプ111cに供給するゲイン(増幅率)などの設定値を記憶させるために設けられている。また、コントローラステータスレジスタ112jは、フィルタ部14が正常に回転しているか否か、A/D変換部111dによるアナログ信号からデジタル信号への変換エラーの有無、PC本体3bによるロガー用メモリ112hからのデータの取得状況、および、PC本体3bからの測定開始の指示の有無といった情報を一時的に記憶するために設けられている。また、制御部112は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介して、ロガー用メモリ112hに記憶された測定用試料のデータ(光学的情報)をPC本体3bに送信する機能を有するように構成されている。
【0061】
また、図9に示した制御基板6の増幅回路113は、参照光用光電変換素子84b(図10参照)から参照光用プリアンプ85bを介して出力された信号が入力されるとともに、その入力された信号を増幅する機能を有している。この増幅回路113は、図12に示すように、2つの抵抗113aおよび113bと、1つのオペアンプ113cとによって構成されている。抵抗113aの一方端には、参照光用プリアンプ85bからの参照光に対応する信号が入力されるとともに、他方端は、オペアンプ113cの反転入力端子に接続されている。また、抵抗113bは、オペアンプ113cの出力端子と反転入力端子との間に接続されている。また、オペアンプ113cの非反転入力端子は、接地されている。また、オペアンプ113cの出力は、信号処理部111(図9参照)のマルチプレクサ111aと、微分回路114とにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0062】
制御基板6の微分回路114は、増幅回路113からの参照光に対応する信号(以下、参照信号という)の微分信号を生成する機能を有している。この微分回路114は、図12に示すように、2つの抵抗114aおよび114bと、2つのコンデンサ114cおよび114dと、1つのオペアンプ114eとによって構成されている。抵抗114aの一方端には、増幅回路113からの参照信号が入力されるとともに、他方端は、コンデンサ114cの一方電極に接続されている。また、コンデンサ114cの他方電極はオペアンプ114eの反転入力端子に接続されている。また、抵抗114bおよびコンデンサ114dは、共に、オペアンプ114eの出力端子と反転入力端子との間に接続されている。また、オペアンプ114eの非反転入力端子は、接地されている。また、オペアンプ114eの出力は、図示しないコンパレータを介して制御部112(図9参照)のコントローラ112aへ入力されるように構成されている。
【0063】
また、図9に示した制御基板6の温度コントローラ115は、第2光学的情報取得部80に内蔵された加温機構(図示せず)を制御することによりキュベット152が載置されるキュベット載置部81(図1参照)の温度を制御する機能を有している。この温度コントローラ115は、図9に示すように、インターフェイス116を介してPC本体3bから入力される設定温度(約37°)に応じて、第2光学的情報取得部80の加温機構(図示せず)による加温を制御するように構成されている。
【0064】
次に、図2、図3および図13を参照して、PC本体3bによる分析装置3の制御の概略について説明する。なお、以下の説明において、分析装置3の制御と、拡張用分析装置4の制御とは同じであるので、分析装置3の制御について説明する。
【0065】
分析システム1は、情報処理端末3a、分析装置3の装置本体、および拡張用分析装置4の電源を投入することによって起動する。
【0066】
これらの電源が投入されると、まず、図13に示したステップS1において、PC本体3bにより、初期設定が行われる。この初期設定では、PC本体3bに記憶されているソフトウェアの初期化や、後述するnクロックを分析装置3の制御部112から取得する処理などが行われる。なお、分析装置3の装置本体の電源投入により、ステップS1の初期設定時には、ランプユニット5(図3参照)のハロゲンランプ11から光が照射されるとともに、フィルタ部14が10回転/秒の回転速度での連続回転を開始する。このハロゲンランプ11からの光の照射、および、フィルタ部14の回転は、分析装置3の装置本体の電源がオフ状態にされるまで継続される。そして、ステップS2において、使用者による検体分析情報の入力を受け付ける処理が行われる。すなわち、使用者は、情報処理端末3a(図2参照)のキーボード3dを用いて、情報処理端末3aの表示部3cに出力される検体分析一覧表中の検体番号および測定項目の欄などに情報の入力を行う。これらの検体分析情報は、PC本体3bに保存される。
【0067】
そして、ステップS3において、PC本体3bにより分析処理の指示が行われる。これにより、分析装置3による分析処理が行われる。その後、ステップS4において、PC本体3bにより、分析システム1のシャットダウンの指示が入力されたか否かが判断される。そして、ステップS4において、PC本体3bにより、分析システム1のシャットダウンの指示が入力されていないと判断された場合には、ステップS2に戻り、使用者による他の検体分析情報の入力を受け付ける処理が行われる。一方、ステップS4において、PC本体3bにより、分析システム1のシャットダウンの指示が入力されたと判断された場合には、ステップS5において、シャットダウン処理が行われる。このシャットダウン処理により、分析システム1の電源が自動的にオフ状態になり、分析システム1の動作が終了される。
【0068】
次に、図3、図7〜図9、図14および図15を参照して、制御部112によるnクロックの算出処理の方法について詳細に説明する。
【0069】
図15に示すように、フィルタ部14(図3参照)の連続回転中に、ランプユニット5から参照光用光電変換素子84b(図8参照)に入射される参照光の光量は、「参照光の光量」として示した波形のように変化する。なお、図15中の期間Aは、ランプユニット5(図3参照)において、回転しているフィルタ部14のいずれかの光学フィルタ14b〜14fがハロゲンランプ11からの光の通路に配置される期間である。この期間Aにおいて、ハロゲンランプ11からの光の通路に光学フィルタ14b〜14fが差し掛かると、参照光の光量は徐々に増加し始める。その後、ハロゲンランプ11からの光の通路が完全に光学フィルタ14b〜14f内に収まることにより、参照光の光量は一定となる。その後、ハロゲンランプ11からの光の通路から光学フィルタ14b〜14fが外れ始めると、参照光の光量は徐々に減少し始めるとともに、ハロゲンランプ11からの光の通路から光学フィルタ14b〜14fが完全に外れると参照光の光量は0になる。
【0070】
そして、参照光は、図7に示すように、参照光用光電変換素子84bにより電気信号に変換されるとともに、その変換された電気信号は、参照光用プリアンプ85bおよび増幅回路113により増幅される。そして、増幅回路113から参照光に対応する信号(以下、参照信号という)が出力されるとともに、この参照信号は、微分回路114に入力される。そして、微分回路114により、図15に「参照信号の微分信号」として示した波形を有する参照信号の微分信号が生成される。この参照信号の微分信号は、コンパレータ(図示せず)を介して微分回路114(図9参照)から制御部112に入力される。
【0071】
そして、図14のステップS11において、制御部112により、この参照信号の微分信号が所定の負のしきい値(+)に到達した時点のクロック数N1が検出される。具体的には、図15に示すように、参照光の光量の増加に伴って参照信号の微分信号が立ち上がる。そして、微分信号が所定の正のしきい値(+)に到達するのに応答して、微分回路114(図9参照)から微分信号が入力される図示しないコンパレータにおいてHレベルに立ち上がるパルス信号が出力される。このパルス信号は、制御部112のコントローラ112aに入力されるとともに、コントローラ112aでは、パルス信号がHレベルに立ち上った時点のクロック数N1が検出される。このようにして、制御部112のコントローラ112aにより、参照信号の微分信号が所定の正のしきい値(+)に到達した時点のクロック数N1が検出される。
【0072】
この後、図15に示すように、参照光の光量はさらに増加するとともに、所定の値で一定となる。そして、その後、参照光の光量は徐々に減少する。これに伴って、参照信号の微分信号は、徐々に立ち下がる。そして、図14のステップS12において、制御部112により、参照信号の微分信号が所定の負のしきい値(−)に到達した時点のクロック数(N2)が検出される。具体的には、参照信号の微分信号が徐々に立ち下がるとともに、所定の負のしきい値(−)に到達するのに応答して、微分回路114(図9参照)から微分信号が入力される図示しないコンパレータにおいてHレベルに立ち上がるパルス信号が出力される。このパルス信号は、制御部112のコントローラ112aに入力されるとともに、コントローラ112aでは、パルス信号がHレベルに立ち上った時点のクロック数N2が検出される。このようにして、制御部112のコントローラ112aにより、参照信号の微分信号が所定の負のしきい値(−)に到達した時点のクロック数N2が検出される。
【0073】
そして、図14のステップS13において、制御部112により、クロック数N1からクロック数N2までの間にカウントされるクロック数(Nクロック)がN=N2−N1の式により算出される。そして、ステップS14において、制御部112により、測定用試料の透過光に対応する信号の取得を開始するタイミングを決定するためのクロック数(nクロック)がn=(N−m)/2の式を用いて算出される。なお、この式において、mクロックは、制御部112が測定用試料の透過光に対応する信号を取得する際に要する適切な期間として予め設定されたクロック数である。なお、本実施形態では、測定用試料などによる影響を受けない参照光を用いて、制御部112が透過光に対応する信号の取得を開始するタイミングを算出している。そして、図15からわかるように、N1クロックから上記のように算出したnクロック後に、マルチプレクサ111aによりmクロックの期間だけ測定用試料の透過光に対応する検出部82からの信号の取得を行えば、ランプユニット5からの照射光の光量が安定している期間の信号を取得することができる。
【0074】
次に、図1、図2、図5〜図11、図13および図16〜図18を参照して、上記した図13のステップS3の処理について詳細に説明する。まず、図16のステップS21において、PC本体3bにより一次測定の指示が行われる。これにより、上記した第1光学的情報取得部70による検体中の干渉物質の測定が行われる。そして、第1光学的情報取得部70によって取得された光学的情報は、コントローラ74cを介してPC本体3bに送信される。
【0075】
次に、ステップS22において、PC本体3bにより、送信された光学的情報を解析し、その解析結果に基づいて、一次測定を行った検体が第2光学的情報取得部80による二次測定の対象であるか否かが判断される。そして、その検体が二次測定の対象ではないと判断された場合には、検体に含有される干渉物質の影響が大きいため信頼性の高い解析を行うことが困難である、という内容のメッセージを表示部3cに表示させる(ステップS28)。一方、ステップS22において、検体が二次測定の対象であると判断された場合には、ステップS23において、PC本体3bにより検体の吸引が指示される。これにより、回転搬送部30に保持されたキュベット152から検体分注アーム40により検体が吸引される。
【0076】
そして、ステップS24において、PC本体3bにより測定用試料の調製が指示される。これにより、分析装置3において、検体分注アーム40により吸引された検体が複数のキュベット152に分注されるとともに、試薬分注アーム50により、試薬容器(図示せず)内の血液の凝固を開始させるための試薬がそれらの複数のキュベット152内の検体に添加される。このようにして、測定用試料の調製が行われる。そして、キュベット移送部60により、測定用試料が収容されたキュベット152が第2光学的情報取得部80のキュベット載置部81の挿入孔81aに移動される。
【0077】
そして、ステップS25において、PC本体3bにより二次測定の指示が行われる。これにより、分析装置3において、測定用試料の二次測定が開始される。以下、この二次測定について詳細に説明する。
【0078】
挿入孔81aに移動されたキュベット152には、上記のようにランプユニット5から5種類の異なる波長特性(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光が断続的に順次照射される。そして、キュベット152を透過した光は、光電変換素子84a、プリアンプ85a、マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111c、A/D変換部11dを介して、デジタルデータに変換され、ロガー用メモリ112hに記憶される。
【0079】
ここで、図10を参照して、信号処理部111の動作について説明する。
【0080】
マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dによる電気信号の処理は、マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dからなる3つの信号処理ラインL0〜L2において、部分的に並行して行われる。すなわち、図10に示すように、信号処理ラインL0におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによる電気信号の処理と、信号処理ラインL1におけるA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112h(図9参照)へのデータ記憶処理とが並行して行われる。また、同様に、信号処理ラインL1におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによる電気信号の処理と、信号処理ラインL2におけるA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112h(図9参照)へのデータ記憶処理とが並行して行われる。また、信号処理ラインL2におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによる電気信号の処理と、信号処理ラインL0におけるA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112h(図9参照)へのデータ記憶処理とが並行して行われる。
【0081】
そして、これらの電気信号の部分的な並行処理は、図17に示すように、3つの信号処理ラインL0〜L2を順次使用して48μsec単位で行われる。具体的には、まず、図17に示したステップ0では、信号処理ラインL0においてマルチプレクサ111aによるチャンネルCH0への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理が行われる。このステップS0では、信号処理ラインL1およびL2は、電気信号の安定待ちの状態(信号待ち処理)であり、電気信号の処理は行われない。そして、図17のステップS1では、信号処理ラインL1において、マルチプレクサ111aによるチャンネルCH16への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理が行われる。このステップS1では、信号処理ラインL0およびL2は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0082】
そして、図17のステップS2において、信号処理ラインL0のA/D変換部111dによるチャンネルCH0の電気信号のA/D変換処理およびロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理と、信号処理ラインL2におけるマルチプレクサ111aによるチャンネルCH32への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理とが並行して行われる。このステップS2では、信号処理ラインL1は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0083】
そして、図17のステップS3において、信号処理ラインL0におけるマルチプレクサ111aによるチャンネルCH1への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理と、信号処理ラインL1のA/D変換部111dによるチャンネルCH16の電気信号のA/D変換処理およびロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理とが並行して行われる。このステップS3では、信号処理ラインL2は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0084】
そして、図17のステップS4において、信号処理ラインL1におけるマルチプレクサ111aによるチャンネルCH17への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理と、信号処理ラインL2のA/D変換部111dによるチャンネルCH32の電気信号のA/D変換処理およびロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理とが並行して行われる。このステップS4では、信号処理ラインL0は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0085】
そして、上記のステップS2〜4による処理と同様の並行処理が、信号処理ラインL0〜L2において、ステップS49まで信号処理を行うチャンネルを切り替えながら繰り返し行われる。そして、ステップS50では、信号処理ラインL2においてマルチプレクサ111aによるチャンネルCH32への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理が行われる。このステップS50では、信号処理ラインL0およびL1は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0086】
なお、マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、およびアンプ111cは、いずれも、信号処理の直後は、出力信号が安定しない。本実施形態では、このような不安定な信号が分析物の解析に使用されることを防止するため、上記の電気信号の安定待ちの期間が設けられている。
【0087】
上記のようにして、ステップS0〜50の51個のステップにより全てのチャンネルCH0〜CH47の電気信号の処理が行われる。なお、この51個のステップによる電気信号の処理は、2.45msec(=48μsec×51ステップ)の期間に行われる。また、この51個のステップによる電気信号の処理は、後述するmクロックのデータ取得処理の期間内に1回行われる。
【0088】
ロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理においては、前述のように、ハロゲンランプ11からの光が透過した光学フィルタおよびチャンネルが特定できるように、所定のアドレスにデータが記憶される。このようにしてロガー用メモリ112hに記憶されたデータは、所定のタイミングにPC本体3bに送信される。
【0089】
そして、図16のステップS26において、PC本体3bは、ステップS22において取得した第1光学的情報取得部70からの光学的情報(データ)の分析結果に基づいて、第2光学的情報取得部80からの波長特性および増幅率の異なる10種類の光学的情報(データ)、すなわち、5種類の光学フィルタ14b〜14fにそれぞれ対応するLゲインおよびHゲインのデータのうち、分析に適している光学的情報(データ)を選択し、その光学的情報を解析する。そして、ステップS27において、測定用試料の解析結果(本実施形態では、図18に示すような凝固曲線および凝固時間など)を表示部3cに出力する。
【0090】
次に、図9、図13、図15、図17および図19を参照して、本実施形態の制御部112によるデータ取得処理について説明する。このデータ取得処理は、PC本体3bが分析処理の指示(ステップS3)をすることによって開始される。
【0091】
まず、図19に示したステップS31において、制御部112(図9参照)により、図15のN1に対応する参照信号の微分信号の立ち上がりの検出を待つ処理が実行される。参照信号の微分信号の立ち上がりが検出されると、ステップS32において、制御部112により、参照信号の微分信号の立ち上がりの時点から初期設定において算出したnクロックが経過するのを待つ処理が実行される。
【0092】
そして、ステップS33において、制御部112により、3つのA/D変換部11dからそれぞれ出力されるデジタルデータの取得を開始する処理が実行される。そして、ステップS34において、制御部112により、デジタルデータの取得の開始からmクロックが経過するのを待つ処理が実行される。そして、mクロックが経過すると、ステップS35において、制御部112は、デジタルデータの取得を終了する。そして、ステップS36において、制御部112により、PC本体3から分析指示を受信してから所定時間が経過したか否かを判断する処理が実行される。所定時間が経過していれば、データ取得処理を終了し、経過していなければ、ステップS31の処理に戻る。
【0093】
次に、図1、図9、図11、図18および図20を参照して、本実施形態のPC本体3bによるデータ取得処理について説明する。この処理は、情報処理端末3aの電源が投入されるとともに開始される。
【0094】
ステップS40において、PC本体3bは、ロガー112hに新たにデータが記憶されたか否かを監視し、データが100msec分(フィルタ部14の1回転分)記憶されるまで待つ。具体的には、ロガー112hに、100msec分のデータが蓄積されると、制御部112から、それを知らせる通知が送信されるので、PC本体3bは、その通知が送信されるのを待つ。そして、ステップS41において、PC本体3bにより、ロガー用メモリ112hからその100msec分のデータ(部分時系列データ)がインターフェイス116およびローカルバスインターフェイス112kを介して取得される。すなわち、図11に示すように、ロガー用メモリ112hのエリア0〜5にフィルタ部14の1回転分に対応する100msec分のデータが蓄積されると、このエリア0〜5に蓄積されたデータがPC本体3bにより取得される。
【0095】
そして、ステップS42において、PC本体3bにより、情報処理端末3aがシャットダウン指示を受け付けたか否かの判断が行われる。そして、シャットダウン指示を受け付けていない場合には、ステップS40の処理に戻る。シャットダウン指示を受け付けた場合には、データ取得処理を終了する。なお、ステップS41において、2回目にデータが取得される場合には、1回目にデータが取得されたロガー用メモリ112hのエリア0〜5の次の6つのエリア6〜11のデータが取得される。このように、PC本体3bによりロガー用メモリ112hからデータ取得される際には、6つのエリア毎のデータが順次取得される。
【0096】
なお、PC本体3bでは、ステップS41でロガー用メモリ112hから取得した複数の部分時系列データの内、測定用試料が収容されたキュベット152(図1参照)が第2光学的情報取得部80の挿入孔81aに挿入された時点以降の部分時系列データが時系列順に組み合わされて、所定の時系列データが作成される。そして、PC本体3bでは、その作成された時系列データに基づいて図18に示すような凝固曲線が作成される。そして、PC本体3bでは、その作成された凝固曲線から測定用試料の凝固時間を求める。具体的には、図18に示した凝固曲線のグラフにおいて、透過光の強度が100%と0%との中間の50%になる時点tを求めるとともに、その時点tのスタート時点からの経過時間を凝固時間として算出する。この凝固時間は、前述のように、ステップS27(図16)において、表示部3cに表示される。
【0097】
以下、フィルタ部14の回転の監視について説明する。
【0098】
制御部112は、以下に説明する3つの監視処理を、フィルタ部の回転中に並行かつ継続して実行している。そして、この3つの監視処理のうち1つでもエラーが発生した場合には、フィルタ部14の回転を停止させる。以下、上記のフィルタ部14の回転の3つの監視処理の方法について詳細に 説明する。
【0099】
まず、図2、図3、図9、図21および図22を参照して、原点スリット14kが検出される時間間隔を監視する場合の処理方法について説明する。本実施形態では、分析装置3(図2参照)の電源がオン状態の間は、ランプユニット5(図3参照)のフィルタ部14が停止することなく連続的に回転している。この際、回転するフィルタ部14のスリットを検出するセンサ16からの信号が制御部112(図9参照)のフィルタ部回転監視部112bに入力されている。なお、センサ16は、スリットを検出した場合には、図22の波形図に示すようなON状態に立ち上がる信号を出力する。そして、図21のステップS51において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの信号に基づいてセンサ16がスリットを検出したか否かが判断される。そして、ステップS51において、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出していないと判断された場合は、再度ステップS51において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16がスリットの通過を検出したか否かの判断が繰り返し行われる。
【0100】
一方、図21のステップS51において、制御部112のフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16がスリットを検出したと判断された場合には、ステップS52において、フィルタ部回転監視部112bにより、そのスリットが原点スリット14kであるか否かが判断される。この原点スリット14kであるか否かの判断は、フィルタ部回転監視部112b内のスリット幅カウンタ(図示せず)により生成される信号に基づいて行われる。スリット幅カウンタ(図示せず)は、図22に示すようなセンサ16からの信号の積分信号を生成する。なお、原点スリット14kを検出した際のセンサ16からの信号のON状態の期間は、原点スリット14kの幅が他の通常スリット14lの幅よりも大きいことに起因して、通常スリット14lを検出した際のセンサ16からの信号のON状態の期間に比べて長い。このため、フィルタ部回転監視部112bのスリット幅カウンタ(図示せず)により生成される積分信号は、センサ16が原点スリット14kを検出した場合には、他の通常スリット14lを検出した場合よりも高いレベルまで立ち上がる。これにより、フィルタ部回転監視部112bにおいて、通常スリット14lが検出された場合の積分信号の立ち上がるレベルと、原点スリット14kが検出された場合の積分信号の立ち上がるレベルとの間に所定のしきい値を設定することにより、その所定のしきい値に積分信号が到達した場合には、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kであると判断される一方、所定のしきい値に積分信号が到達しない場合には、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kではない(通常スリット14lである)と判断される。
【0101】
そして、図21のステップS52において、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kではないと判断された場合には、ステップS51の処理に戻る。一方、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS53において、フィルタ部回転監視部112bにより、その原点スリット14kがセンサ16によって検出された時間T1が記憶される。次に、ステップS54において、上記のステップS51と同様にして、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出したか否かの判断が行われる。そして、ステップS54において、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出していないと判断された場合には、ステップS54の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS54において、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出したと判断された場合には、ステップS55において、上記のステップS52と同様のセンサ16が検出したスリットが原点スリット14kであるか否かの判断が行われる。
【0102】
そして、センサ16が検出したスリットが原点スリット14kではないと判断された場合には、ステップS54の処理に戻る。一方、ステップS55において、センサ16が検出したスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS56において、フィルタ部回転監視部112bにより、その原点スリット14kがセンサ16によって検出された時間T(n)が記憶される。ここで、nは、原点スリット14kが検出された回数を表している。したがって、ここでは、原点スリット14kの検出回数は2回であるので、n=2である。
【0103】
次に、ステップS57において、フィルタ部回転監視部112bにより、T(n)−T(n−1)の算出が行われる。ここで、n=2であるので、フィルタ部回転監視部112bによりT2−T1の算出が行われる。すなわち、ステップS57では、1回目の原点スリット14kの検出時間T1と2回目の原点スリット14kの検出時間T2との間の時間間隔が算出される。そして、ステップS58において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS57において算出された時間間隔T2−T1が予め設定されたフィルタ部14が1回転するのに要する所定の時間間隔の範囲内であるか否かが判断される。そして、ステップS58において、時間間隔T2−T1が所定の時間間隔の範囲内ではないと判断された場合には、ステップS59において、フィルタ部回転監視部112bからコントローラ112aを介してコントローラステータスレジスタ112jにフィルタ部14の回転が異常であるというエラー情報が出力される。この際、フィルタ部14の回転は停止される。そして、エラー情報は、コントローラステータスレジスタ112jに一時的に記憶される。そして、コントローラステータスレジスタ112jに記憶されたエラー情報は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介してPC本体3bに送信される。そして、PC本体3bにより、情報処理端末3aの表示部3cにフィルタ部14の回転が異常であるというエラーメッセージが表示される。
【0104】
一方、ステップS58において、時間間隔T2−T1が所定の時間間隔の範囲内であると判断された場合には、ステップS60において、制御部112により、フィルタ板の回転の停止が指示されたか否かが判断される。ステップS60において、フィルタ部14の回転の停止が指示されていないと判断された場合には、ステップS54の処理に戻る。一方、ステップS60において、フィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断された場合には、フィルタ部回転監視部112bによるフィルタ部14の回転の監視処理は終了する。なお、ステップS54〜S60の一連の処理は、ステップS60において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断されるまで繰り返し行われる。
【0105】
次に、図2、図5、図9、図21および図23を参照して、制御部112によるフィルタ部14の回転の監視処理において、隣接する2つのスリット(原点スリットまたは通常スリット)がそれぞれ検出される間の時間間隔を監視する場合の処理について説明する。
【0106】
まず、図23のステップS61において、図21に示したステップS51と同様にして、制御部112(図9参照)のフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの信号に基づいてセンサ16がスリット(原点スリット14k(図5参照)または通常スリット14l)の通過を検出したか否かが判断される。そして、ステップS61において、センサ16(図9参照)がスリットを検出していないと判断された場合は、再度ステップS61の処理が行われる。一方、センサ16がスリットの通過を検出したと判断された場合には、ステップS62において、フィルタ部回転監視部112bにより、そのスリットがセンサ16によって検出された時間t1が記憶される。
【0107】
次に、ステップS63において、上記のステップS61と同様にして、センサ16がスリットの通過を検出したか否かの判断が再度行われる。そして、ステップS63において、センサ16がスリットの通過を検出していないと判断された場合には、ステップS63の処理が繰り返し行われる。一方、ステップS63において、センサ16がスリットの通過を検出したと判断された場合には、ステップS64において、フィルタ部回転監視部112bにより、そのスリットがセンサ16によって検出された時間t(n)が記憶される。ここで、nは、センサ16によりスリットが検出された回数を表している。したがって、ここでは、スリットの検出回数は2回であるので、n=2である。
【0108】
次に、ステップS65において、フィルタ部回転監視部112bにより、t(n)−t(n−1)の算出が行われる。ここで、n=2であるので、フィルタ部回転監視部112bによりt2−t1の算出が行われる。すなわち、ステップS65では、1つ目のスリットの検出時間t1と2つ目のスリットの検出時間t2との間の時間間隔が算出される。そして、ステップS66において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS65において算出された時間間隔t2−t1が、予め設定された隣接する2つのスリットがそれぞれ検出される間の所定の時間間隔の範囲内であるか否かが判断される。なお、この時間間隔には、光学フィルタ14fが通過してから光学フィルタ14eが正常に通過するのに要する第1時間間隔と、光学フィルタ14bが通過してから光学フィルタ14fが正常に通過するのに要する第2時間間隔と、の2種類がある。
【0109】
そして、ステップS66において、時間間隔t2−t1が、上記第1時間間隔の範囲内でもなく、上記第2時間間隔の範囲内でもないと判断された場合には、ステップS67において、フィルタ部回転監視部112bからコントローラ112aを介してコントローラステータスレジスタ112jにフィルタ部14の回転が異常であるというエラー情報が出力される。この際、フィルタ部14の回転は停止される。そして、エラー情報は、コントローラステータスレジスタ112jに一時的に記憶される。そして、コントローラステータスレジスタ112jに記憶されたエラー情報は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介してPC本体3bに送信される。そして、PC本体3bにより、情報処理端末3a(図2参照)の表示部3cにフィルタ部14の回転が異常であるというエラーメッセージが表示される。
【0110】
一方、ステップS66において、時間間隔t2−t1が所定の時間間隔の範囲内であると判断された場合には、ステップS68において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたか否かが判断される。そして、ステップS68において、フィルタ部14の回転の停止が指示されていないと判断された場合には、ステップS63の処理に戻る。一方、ステップS68において、フィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断された場合には、フィルタ部回転監視部112bによるフィルタ部14の回転の監視処理は終了する。なお、ステップS61〜S68の一連の処理は、ステップS68において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断されるまで繰り返し行われる。
【0111】
次に、図2、図5、図9、図21および図24を参照して、本実施形態の制御部112によるフィルタ部14の回転の監視処理において、2つの原点スリット14kが検出される間に検出される通常スリット14lの数を監視する場合の処理について説明する。
【0112】
まず、図24のステップS71において、図21に示したステップS51と同様にして、制御部112(図9参照)のフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの信号に基づいてセンサ16が回転するフィルタ部14(図5参照)のスリットを検出したか否かが判断される。そして、ステップS71において、センサ16(図9参照)がスリットを検出していないと判断された場合は、再度ステップS71の処理が行われる。
【0113】
一方、ステップS71において、センサ16がスリットを検出したと判断された場合には、ステップS72において、図21に示したステップS52と同様にして、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16によって検出されたスリットが原点スリット14kであるか否かが判断される。そして、ステップS72において、検出されたスリットが原点スリット14kではないと判断された場合には、ステップS71の処理に戻る。一方、ステップS72において、検出されたスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS73において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16によって原点スリット14kが検出されたという情報が記憶される。
【0114】
次に、ステップS74において、上記のステップS71と同様にして、センサ16がスリットを検出したか否かの判断が再度行われる。そして、ステップS74において、スリットを検出していないと判断された場合には、ステップS74の処理が再度実行される。一方、ステップS74において、スリットを検出したと判断された場合には、ステップS75において、上記のステップS72と同様にして、検出したスリットが原点スリット14kであるか否かの判断が行われる。そして、ステップS75において、検出したスリットが原点スリット14kではない(通常スリット14lである)と判断された場合には、ステップS76において、ステップS75において検出されたスリット(通常スリット14l)の数がカウントされる。その後、ステップS74の処理に戻る。
【0115】
一方、ステップS75において、検出されたスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS77において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16によって原点スリット14kが検出されたという情報が記憶される。そして、ステップS78において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS76においてカウントされた通常スリット14lの数が2つの原点スリット14kが検出される間に検出された通常スリット14lの数として取得される。そして、ステップS79において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS78において取得された通常スリット14lの数が所定数(5)であるか否かが判断される。そして、ステップS79において、取得された通常スリット14lの数が所定数(5)ではないと判断された場合には、ステップS80において、フィルタ部回転監視部112bからコントローラ112aを介してコントローラステータスレジスタ112jにフィルタ部14の回転が異常であるというエラー情報が出力される。この際、フィルタ部14の回転は停止される。そして、エラー情報は、コントローラステータスレジスタ112jに一時的に記憶される。そして、コントローラステータスレジスタ112jに記憶されたエラー情報は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介してPC本体3bに送信される。そして、PC本体3bにより、情報処理端末3a(図2参照)の表示部3cにフィルタ部14の回転が異常であるというエラーメッセージが表示される。
【0116】
一方、ステップS79において、取得された通常スリット14lの数が所定数(5)であると判断された場合には、ステップS81において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたか否かが判断される。そして、ステップS81において、フィルタ部14の回転の停止が指示されていないと判断された場合には、ステップS74の処理に戻る。一方、ステップS81において、フィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断された場合には、フィルタ部回転監視部112bによるフィルタ部14の回転の監視処理は終了する。なお、ステップS74〜S81の一連の処理は、ステップS81において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断されるまで繰り返し行われる。
【0117】
本実施形態では、上記のように、検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の光電変換素子84aからそれぞれ出力される複数のアナログ信号を1つずつ順次選択する複数のマルチプレクサ111aと、複数のマルチプレクサ111aによって順次選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数のA/D変換部111dとを設けることによって、1つのマルチプレクサ111aによりアナログ信号が選択された時刻から信号待ち処理の期間(48μsec)経過後に、1つのA/D変換部111dがマルチプレクサ111aによって選択されたアナログ信号をデジタル変換することができるとともに、上記信号処理待ち期間(48μsec)内に、他のA/D変換部111dが、他のマルチプレクサ111aによって選択されたアナログ信号をデジタル変換することができる。したがって、A/D変換部111dから出力される信号が安定するとともに、効率的に信号を処理することができる。
【0118】
また、本実施形態では、情報処理端末3aを、複数のA/D変換部111dによるA/D変換処理の期間が互いに重複していないデジタル信号に基づいて、分析物の特性を解析させることによって、A/D変換部111dの動作を効率化することができる。すなわち、本実施形態のようにロガー用メモリ112hが1つしかないような場合には、複数のA/D変換部111dが重複してデジタル信号を出力しても、ロガー用メモリ112hはそれらを全て記憶することができないので、A/D変換部111dは、無駄な動作をしてしまうという不都合が生じる。本実施形態では、電気信号のA/D変換処理の期間が重複しないデジタル信号に基づいて解析を行うことにより、A/D変換部111dが無駄な動作を行うことがないので、A/D変換部111dの動作を効率化することができる。
【0119】
また、本実施形態では、複数のマルチプレクサ111aがアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにマルチプレクサ111aの動作を制御するマルチプレクサ制御部112dを設けるとともに、コントローラ112aに複数のA/D変換部111dがデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、A/D変換部インターフェイス112gを介してA/D変換部111dの動作を制御させることによって、ロガー用メモリ112hが1つしかない場合でも、複数のA/D変換部111dから出力されたデジタル信号を効率的にロガー用メモリ112hに記憶させることができる。
【0120】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0121】
たとえば、上記実施形態では、検出部および信号処理部から出力されるデータを制御部のロガー用メモリに一旦蓄積させた後、ロガー用メモリに蓄積されたデータから、PC本体が所定期間の部分時系列データを順次取得するように構成したが、本発明はこれに限らず、ロガー用メモリに一旦データを蓄積することなく、検出部または信号処理部からデータをPC本体に直接出力するように構成してもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、参照信号の微分信号に基づいて、信号の取得を開始するタイミング(nクロック)を算出するとともに、参照信号の微分信号が所定のしきい値に到達した時点から、算出したnクロック後に制御部によるデータの取得を開始するように構成したが、本発明はこれに限らず、予め設定したタイミングで制御部によるデータの取得を開始するようにしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、参照光に対応する参照信号の微分信号の立ち上がり時点からnクロック後に、制御部によるデータの取得を開始したが、本発明はこれに限らず、センサによりスリットが検出されたタイミングから所定の期間後に制御部によるデータの取得を開始してもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、凝固測定を行う分析装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、凝固測定以外の複数の波長特性を有する光を用いる必要のある種々の測定に使用する分析装置(分析システム)に本発明を適用してもよい。たとえば、生化学分析装置(分析システム)などに本発明を適用してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、情報処理端末を分析装置の装置本体とは別に設けているが、本発明はこれに限らず、情報処理端末と分析装置の装置本体とを一体化してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、検体が増加した場合に対応可能なように、分析装置が拡張用分析装置による拡張が可能なように構成されているが、本発明はこれに限らず、分析装置が拡張用分析装置による拡張ができないように構成されていてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、複数の光電変換素子から出力された複数のアナログ信号から1つずつ選択して順次オフセット回路に出力するマルチプレクサを用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、複数の光電変換素子から出力される複数のアナログ信号から2つ以上のアナログ信号を同時に選択するアナログ信号選択器を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の一実施形態による分析装置および拡張用分析装置を含む分析システムの全体構成を示した平面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による分析装置および拡張用分析装置を含む分析システムを部分的に示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による分析装置に含まれるランプユニットの構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した一実施形態による分析装置に含まれるランプユニットの構成を示した概略図である。
【図5】図3に示した一実施形態による分析装置に含まれるランプユニットのフィルタ部を示した平面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による分析装置の第1光学的情報取得部の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図1に示した一実施形態による分析装置の第2光学的情報取得部の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】図7に示した一実施形態による第2光学的情報取得部の検出部の構成を示した概略図である。
【図9】本発明の一実施形態による分析装置の第2光学的情報取得部および制御基板の構成要素を説明するためのブロック図である。
【図10】本発明の一実施形態による分析装置の検出部および信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態による分析装置の制御基板のロガー用メモリの構成を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施形態による分析装置の制御基板の増幅回路および微分回路の回路構成を示した回路図である。
【図13】本発明の一実施形態のPC本体による制御方法の概略を示したフローチャートである。
【図14】図13のステップS1に示した初期設定において、PC本体により取得されるnクロックの制御部による算出処理の方法を示したフローチャートである。
【図15】図14に示したnクロックの算出処理方法において用いる参照光の光量および参照信号の微分信号の変化を示した波形図である。
【図16】図13のステップS3におけるPC本体による分析処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図17】本発明の一実施形態による分析装置の信号処理部における信号処理の方法を示した図である。
【図18】本発明の一実施形態による分析システムによって作成される凝固曲線を示したグラフである。
【図19】本発明の一実施形態の制御部によるデータ取得処理の方法を説明するためのフローチャートである。
【図20】本発明の一実施形態のPC本体によるデータ取得処理の方法を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の一実施形態の制御部によるフィルタ部の回転の監視処理において、原点スリットが検出される時間間隔を監視する場合の処理を示したフローチャートである。
【図22】回転するフィルタ部のスリットを検出するセンサから出力される信号およびセンサから出力される信号に基づいて生成される積分信号の波形を示した波形図である。
【図23】本発明の一実施形態の制御部によるフィルタ部の回転の監視処理において、隣接する2つのスリット(原点スリットまたは通常スリット)が検出される時間間隔を監視する場合の処理を示したフローチャートである。
【図24】本発明の一実施形態の制御部によるフィルタ部の回転の監視処理において、2つの原点スリットが検出される間に検出される通常スリットの数を監視する場合の処理を示したフローチャートである。
【図25】本発明の一実施形態による拡張用分析装置を含まない分析システムの全体構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0129】
1 分析システム
3a 情報処理端末(解析手段)
50 試薬分注アーム(試薬混合手段)
84a 光電変換素子(検出器)
84b 参照光用光電変換素子(検出器)
111a マルチプレクサ(アナログ信号選択部)
111d A/D変換部(信号変換部)
112a コントローラ(制御部)
112d マルチプレクサ制御部(制御部)
112h ロガー用メモリ(記憶手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関し、特に、複数の検出器から出力された複数の信号を処理する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の検出器から出力されたアナログ信号に増幅などの処理を施し、処理したアナログ信号をデジタル信号に変換し、作成したデジタル信号をコンピュータなどの解析手段に入力する受光信号処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数(32個)のフォトセンサにそれぞれ接続された複数(32個)の受光アンプ(増幅器)によって増幅された複数(32個)のアナログ信号を、複数(32個)のアナログスイッチを用いて選択的に取得するとともに、その選択的に取得されたアナログ信号を、積分回路と1つのマルチプレクサとを介して、1つのA/D変換器に入力した後、A/D変換器により得られたデジタル信号をコンピュータ(解析手段)に入力する受光信号処理装置が開示されている。
【0004】
上記特許文献1に開示された受光信号処理装置のように、マルチプレクサとA/D変換器とが直列接続された電気回路を有する装置の場合には、マルチプレクサが複数の入力信号から1つを選択した後のしばらくの間はマルチプレクサの出力信号が安定しない。このため、このような不安定な信号を除去するため、マルチプレクサにより信号が選択されてから所定時間経過後にA/D変換器によるA/D変換処理を開始するように電気回路を構成することが一般的である。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−76430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来の受光信号処理装置では、マルチプレクサにより信号が選択されてから所定期間は実質的に信号処理が行われていないか、行われていたとしてもその間のデータは使用することができない。このため、検出器から出力された信号の処理に無駄が多くなるので、効率的に信号を処理することができなかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の検出信号を高速に処理することが可能な分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による分析装置は、検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の検出器と、複数の検出器からそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択する複数のアナログ信号選択部と、複数のアナログ信号選択部によってそれぞれ選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数の信号変換部と、複数の信号変換部による変換後の複数のデジタル信号のうち少なくとも1つに基づいて、分析物の特性を解析する解析手段とを備えている。
【0009】
この一の局面による分析装置では、上記のように構成することにより、たとえば、1つのアナログ信号選択部によるアナログ信号の選択から所定期間経過後に、1つの信号変換部がアナログ信号選択部によって選択されたアナログ信号をデジタル変換するとともに、上記所定期間内に、他の信号変換部が、他のアナログ信号選択部によって選択されたアナログ信号をデジタル変換することができる。したがって、信号変換部から出力される信号が安定するとともに、効率的に信号を処理することができる。
【0010】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、アナログ信号選択部がアナログ信号を選択してから所定期間経過後に信号変換部が選択された前記アナログ信号を変換したデジタル信号に基づいて、解析手段が分析物の特性を解析するように構成されており、複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにアナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備えている。このように構成すれば、アナログ信号の取得から所定期間経過後にそのアナログ信号がデジタル信号に変換されることにより、解析手段が分析物の特性の解析に使用するデジタル信号が安定した信号になるとともに、複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を取得する時刻をそれぞれ異ならせることにより、上記所定期間内に、他の信号変換部によってデジタル変換された信号を使用して解析することができるので、信号処理の効率を向上させることができる。
【0011】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、解析手段は、複数の信号変換部による信号変換の期間が互いに重複していないデジタル信号に基づいて、分析物の特性を解析する。このように構成すれば、信号変換部の動作を効率化することができる。すなわち、メモリが1つしかないような場合には、複数の信号変換部が重複してデジタル信号を出力しても、メモリはそれらを全て記憶することができないので、信号変換部は、無駄な動作をしてしまうという不都合が生じる。本発明では、信号変換の期間が重複しないデジタル信号に基づいて解析を行うことにより、信号変換部が無駄な動作を行うことがないので、信号変換部の動作を効率化することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにアナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備え、制御部は、複数の信号変換部がデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、信号変換部の動作を制御する。このように構成すれば、たとえば、メモリが1つしかない場合でも、複数の信号変換部から出力されたデジタル信号を効率的にメモリに記憶させることができる。
【0013】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、複数の信号変換部によって変換されたデジタル信号を記憶する記憶手段をさらに備えている。このように構成すれば、複数の信号変換部から出力されたデジタル信号を容易に記憶させることができる。
【0014】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、アナログ信号選択部は、マルチプレクサを含む。このようにマルチプレクサを用いれば、容易に、複数の検出器からそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択することができる。
【0015】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、分析物に試薬を混合する試薬混合部をさらに備え、解析手段は、試薬混合部によって分析物に試薬が混合された後の所定の時刻から、分析物が所定の状態に変化するまでの時間を解析する。この場合に、一の局面による発明では、分析物から取得された光学的情報を複数の検出器により検知して、その検知した光学的情報に基づいて、試薬混合部によって分析物に試薬が混合された後の所定のタイミングから分析物が所定の状態に変化するまでの時間を解析することができる。これにより、分析物が所定の状態に変化するまでの時間を正確に解析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
まず、図1〜図12を参照して、本発明の一実施形態による分析システム1の構成について説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による分析システム1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するためのシステムであり、検体としては血漿を用いる。本実施形態による分析システム1では、凝固時間法を用いて検体の光学的な測定を行っている。本実施形態で用いる凝固時間法は、検体が凝固する過程を透過光の変化として検出する測定方法である。
【0019】
分析システム1は、設置される施設の規模に応じて、構成を変更することができる。例えば、検体数が多くない施設に設置される場合、分析システム1は、図25に示すように、分析装置3と、分析装置3に検体を供給するための搬送装置200とから構成される。一方、検体数が多い施設に設置される場合、分析システム1は、図1に示すように、拡張用分析装置4が増設され、搬送装置200が搬送装置2に取り替えられることにより、搬送機構部2と、分析装置3と、拡張用分析装置4とから構成される。このように、拡張用分析装置4は、分析システム1に増設されることによって、分析システム1の検体処理能力を拡張する。
【0020】
図1に示す搬送機構部2は、分析装置3および拡張用分析装置4に検体を供給するために、検体を収容した複数(本実施形態では、10本)の試験管150が載置されたラック151を分析装置3および拡張用分析装置4の各々の吸引位置2aおよび2b(図1参照)に搬送する機能を有している。また、搬送機構部2は、未処理の検体を収容した試験管150が収納されたラック151をセットするためのラックセット領域2cと、処理済みの検体を収容した試験管150が収納されたラック151を収容するためのラック収容領域2dとを有している。
【0021】
分析装置3および拡張用分析装置4は、搬送機構部2から供給された別々の検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的情報をそれぞれ取得することが可能なように構成されている。本実施形態では、搬送機構部2に位置する試験管150から分析装置3および拡張用分析装置4のキュベット152(図1参照)内に分注された検体に対してそれぞれ光学的な測定が行われる。また、分析装置3は、情報処理端末3aと、ランプユニット5と、制御基板6とを備えている。分析装置3は、さらに、キュベット供給部20と、回転搬送部30と、検体分注アーム40と、2つの試薬分注アーム50と、キュベット移送部60および60aと、第1光学的情報取得部70と、第2光学的情報取得部80と、を備えている。また、拡張用分析装置4は、分析装置3に搭載されているものと同じ制御基板6と、キュベット供給部20と、回転搬送部30と、検体分注アーム40と、2つの試薬分注アーム50と、キュベット移送部60と、第1光学的情報取得部70と、第2光学的情報取得部80と、を備えている。これらのコンポーネントの配置は、分析装置3と、拡張用分析装置4とで同じである。
【0022】
ここで、本実施形態では、情報処理端末3aおよびランプユニット5は、分析装置3にのみ備えられており、拡張用分析装置4には備えられていない。
【0023】
情報処理端末3aは、分析装置3の装置本体のみならず拡張用分析装置4にも通信ケーブルを介して電気的に接続されている。すなわち、分析装置3の情報処理端末3aが、分析装置3および拡張用分析装置4に対して共通に用いられるように構成されている。なお、分析装置3および拡張用分析装置4は、検体から取得した光学的情報を情報処理端末3aに送信する機能を有する。また、情報処理端末3aは、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、図2に示すように、PC本体3bと、表示部3cと、キーボード3dとを含んでいる。PC本体3bは、ランプユニット5から検体(測定用試料)に所定の波長特性を有する光が照射されたときに、制御基板6の後述する信号処理部111および制御部112により取得される信号(光学的情報)に基づいて、検体の特性を解析する機能を有している。なお、本実施形態では、情報処理端末3aのPC本体3bは、検体に試薬が混合された後の所定のタイミングから検体が所定の凝固状態に達するまでの時間(凝固時間)を解析するように構成されている。また、PC本体3bは、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなる制御部(図示せず)を備えている。また、表示部3cは、PC本体3bで得られた分析結果などの情報を表示するために設けられている。なお、上記のように、分析装置3と拡張用分析装置4とは、情報処理端末3aおよびランプユニット5を拡張用分析装置4が含んでいないことを除いて構成が同じであるので、以下の説明では、分析装置3の構成について説明する。
【0024】
また、ランプユニット5は、図3および図4に示すように、光源としての1つのハロゲンランプ11と、2つのミラー12aおよび12bと、2組の集光レンズ13a〜13cおよび13d〜13fと、円盤形状の1つのフィルタ部14と、モータ15と、光透過型のセンサ16と、2セットの光ファイバ17aおよび17bとを有している。なお、ランプユニット5では、ハロゲンランプ11、ミラー12b、集光レンズ13d〜13fおよび光ファイバ17bによって分析装置3用の光学系が構成されているとともに、ハロゲンランプ11、ミラー12a、集光レンズ13a〜13cおよび光ファイバ17aによって拡張用分析装置4用の光学系が構成されている。
【0025】
光ファイバ17bの先端は、分析装置3の第2光学的情報取得部80に接続されている。光ファイバ17aの先端は、拡張用分析装置4が設置されている場合にのみ、拡張用分析装置4の第2光学的情報取得部80に接続される。
【0026】
なお、ミラー12a、集光レンズ13a〜13cおよび光ファイバ17aは、拡張用分析装置4が設置されていない場合にはランプユニット5に設置されておらず、拡張用分析装置4を増設するときに、ミラー12aをミラー取付部12cに、集光レンズ13a〜13cをレンズ取付部13g〜13iに取り付けるようにしてもよい。これによって、拡張用分析装置4が設置されていない場合のランプユニット5のコストを軽減することができる。
【0027】
また、光ファイバ17aおよび17bは、それぞれ、21本の光ファイバ17cおよび17dから構成されている。21本の光ファイバ17cおよび17dは、結束部材17eおよび17fによってそれぞれ束ねられている。ハロゲンランプ11は、図4に示すように、両面から光を照射可能な板状のフィラメント11aを含んでいる。これにより、板状のフィラメント11aの両面からそれぞれ同じ特性の光が照射されるように構成されている。なお、板状のフィラメントは、フィラメントからの光の照射領域内における光量のバラツキが小さいため、板状のフィラメントを使用することにより、測定用試料に光を照射して得られる光(透過光や散乱光)の量が安定し、測定誤差を抑制することができる。また、2つのミラー12aおよび12bは、それぞれ、ハロゲンランプ11から照射される光を反射して所定の光路に光を導くために設けられている。すなわち、ミラー12a、12bは、フィラメント11aを挟んだ両側に配置されており、ミラー12aはフィラメント11aの一方の面に正対する位置に、ミラー12bは、フィラメント11bの他方の面に正対する位置に配置されている。また、ミラー12a、12bは、フィラメント11aから照射された光の進行方向を90度変更するように、フィラメント11aに対して傾斜して配置されている。
【0028】
ミラー12aは、ハロゲンランプ11の板状のフィラメント11aの一方の面から照射された光を反射するとともに、ミラー12bは、板状のフィラメント11aの他方の面から照射された光を反射する。これにより、ミラー12aにより反射された光と、ミラー12bにより反射された光とによって2つの光路が形成される。また、ミラー12aおよび12bは、図3に示すように、それぞれ、ミラー取付部12cおよび12dに着脱可能に取り付けられている。集光レンズ13a〜13cは、図4に示すように、ミラー12aによって進行方向を変更された光の通路に配置されており、ミラー12a側からレンズ13a、13bおよび13dの順で配置されている。集光レンズ13d〜13fは、集光レンズ13a〜13cと同様に、ミラー12bによって進行方向を変更された光の通路に配置されており、ミラー12b側からレンズ13d、13eおよび13fの順で配置されている。また、2組の集光レンズは、集光レンズ13a〜13cの配列方向と、集光レンズ13d〜13fの配列方向とが平行になるように配置されている。
【0029】
また、2組の集光レンズ13a〜13cおよび13d〜13fは、図4に示すように、それぞれ、ミラー12aおよび12bにより反射された2つの光を光ファイバ17aおよび17bに導くために集光する。ミラー12aおよび12bによって反射された2つの光は、それぞれ、集光レンズ13a〜13cおよび13d〜13fにより集光され、光学フィルタ14b〜14fのいずれか1つを透過して光ファイバ17aおよび17bに導かれる。また、集光レンズ13a〜13cは、図3に示すように、それぞれ、レンズ取付部13g〜13iに着脱可能に取り付けられている。また、集光レンズ13d〜13fもそれぞれ対応するレンズ取付部(図示せず)に着脱可能に取り付けられている。
【0030】
また、本実施形態では、ランプユニット5のフィルタ部14は、図5に示すように、軸14aを中心に回転可能に設けられている。このフィルタ部14は、5つの光透過特性(透過波長)のそれぞれ異なる光学フィルタ14b〜14fを有するフィルタ板14gと、フィルタ板14gを光学フィルタ14b〜14fの両面が露出するように保持するフィルタ板保持部材14hとによって構成されている。フィルタ板14gは、フィルタ板保持部材14hに固定されている。フィルタ板14gには、光学フィルタ14b〜14fを設置するための5つの孔14iが設けられている。そして、5つの孔14iには、それぞれ、光透過特性(透過波長)の異なる5つの光学フィルタ14b、14c、14d、14eおよび14fが設置されている。フィルタ板14gには、さらに孔14jが設けられている。孔14jは、光が透過しないように閉塞されている。孔14iおよび14jは、フィルタ部14の回転方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で設けられている。なお、孔14jは、予備の孔であり、フィルタの追加が必要となった場合には、フィルタが装着される。
【0031】
光学フィルタ14b、14c、14d、14eおよび14fは、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長の光を透過し、その他の波長の光は透過しない。従って、光学フィルタ14b、14c、14d、14eおよび14fを透過した光は、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長特性を有する。
【0032】
また、フィルタ板保持部材14hは、円環形状であり、その中心の孔部分にフィルタ板14gが配置されている。フィルタ板保持部材14hには、円周方向に沿って等間隔(60°)に6つのスリットが設けられている。それら6つのスリットのうち1つは、他の5つのスリット14lよりもフィルタ板保持部材14hの回転方向のスリット幅が大きい原点スリット14kである。
【0033】
原点スリット14kおよび通常スリット14lは、隣接する孔14iおよび14j間の中間角度位置(孔14iおよび14jから30°ずれた位置)に60°の等間隔で形成されている。モータ15(図3参照)は、フィルタ部14の軸14aに接続されている。これにより、モータ15の駆動によって、フィルタ部14が軸14aを中心として回転するように構成されている。
【0034】
ここで、本実施形態では、ランプユニット5が、光学フィルタ14b〜14fのいずれか1つを透過した光を照射する際には、フィルタ部14が連続的に回転するように、モータ15の駆動が制御基板6(図1参照)により制御されるように構成されている。フィルタ部14の回転に伴って、集光レンズ13a〜13c(図4参照)により集光された光の通路と、集光レンズ13d〜13f(図4参照)により集光された光の通路とにそれぞれ、光透過特性の異なる5つの光学フィルタ14b〜14fと、1つの遮光された孔14j(図5参照)とが断続的に順次配置される。このため、波長特性の異なる5種類の光が断続的に順次照射される。
【0035】
また、光透過型のセンサ16は、図3に示すように、フィルタ部14の回転に伴う原点スリット14kおよび通常スリット14lの通過を検出するために設けられている。すなわち、センサ16は、フィルタ部14を光源と受光部とで挟むように設置されている。このセンサ16は、原点スリット14kおよび通常スリット14lが通過する位置に対応して設置されている。
【0036】
したがって、センサ16は、原点スリット14kおよび通常スリット14lが通過すると、スリットを介して光源からの光を受光部が検出し、検出信号を出力する。なお、原点スリット14kは、通常スリット14lよりもスリット幅が大きいので、原点スリット14kが通過したときにセンサ16から出力される検出信号は、通常スリット14lが通過したときにセンサ16から出力される検出信号よりも、出力期間が長い。そして、センサ16から出力される検出信号は、制御基板6(図1参照)に送られるとともに、制御基板6の後述するフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの検出信号に基づいてフィルタ部14が正常に回転しているか否かが監視されるように構成されている。
【0037】
また、2セットの光ファイバ17aおよび17bは、それぞれ、ランプユニット5からの光を分析装置3および拡張用分析装置4の第2光学的情報取得部80にセットされるキュベット152内の測定用試料に導くために設けられている。光ファイバ17aは、図1に示すように、ランプユニット5から拡張用分析装置4に設けられた拡張用接続端子7を介して拡張用分析装置4の第2光学的情報取得部80へ延びるように設置されている。光ファイバ17bは、ランプユニット5から分析装置3の第2光学的情報取得部80へ延びるように設置されている。これにより、1つのランプユニット5によって、分析装置3および拡張用分析装置4の各々の第2光学的情報取得部80に光を供給することが可能となる。
【0038】
また、光ファイバ17aおよび17bは、図4に示すように、それぞれ、光学フィルタ14b〜14fのいずれか1つを透過して出射された光が、結束部材17e(17f)によって束ねられている端部から入射されるように構成されている。21本の光ファイバ17cは、それぞれ、拡張用分析装置4(図1参照)の第2光学的情報取得部80の後述する20個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように配置されている。また、21本の光ファイバ17dは、それぞれ、分析装置3(図1参照)の第2光学的情報取得部80の後述する20個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように構成されている。
【0039】
キュベット供給部20は、ユーザによって無造作に投入された複数のキュベット152を整列させ、位置152aに1つずつ配置する。位置152aに配置されたキュベット152は、キュベット移送部60aによって1つずつ回転搬送部30に移送される。回転搬送部30は、円盤形状のテーブル30aを備えており、テーブル30aには、キュベット152を収容するための複数の穴152bと、キュベット152内の検体に添加される試薬を収容した試薬容器(図示せず)を収容するための複数の穴152cとが設けられている。回転搬送部30は、テーブル30aを回転させることにより、キュベット152と、試薬容器とを搬送する。
【0040】
検体分注アーム40は、搬送機構部2により吸引分注位置2a(2b)に搬送された試験管150から検体を吸引するとともに、吸引した検体を回転搬送部30に移送されたキュベット152内に分注する機能を有している。試薬分注アーム50は、回転搬送部30に載置された試薬容器(図示せず)内の試薬を回転搬送部30に保持されたキュベット152に分注することにより、キュベット152内の検体に試薬を混合するために設けられている。キュベット移送部60は、キュベット152を回転搬送部30と、第2光学的情報取得部80の後述するキュベット載置部81との間で移送するために設けられている。
【0041】
第1光学的情報取得部70は、試薬を添加する前の検体中の干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)の有無、種類および含有の度合いなどを検出するために、検体から光学的な情報を取得するように構成されている。この第1光学的情報取得部70による光学的情報の取得は、第2光学的情報取得部80による検体の光学的な測定の前に行われる。第1光学的情報取得部70は、図6に示すように、光源としての発光ダイオード(LED)71と、光電変換素子72と、プリアンプ73と、基板74とを含んでいる。第1光学的情報取得部70は、以下に説明するように、回転搬送部30に保持されたキュベット152に光を照射することによって検体から光学的な情報を取得する。
【0042】
発光ダイオード71は、回転搬送部30に保持されたキュベット152に対して光を照射可能なように設けられている。この発光ダイオード71は、基板74(図6参照)のコントローラ74cにより3種類の波長特性を有する光を周期的に順次出射するように制御される。具体的には、この発光ダイオード71は、430nmの波長特性を有する青色の光と、565nmの波長特性を有する緑色の光と、627nmの波長特性を有する赤色の光とを周期的に順次出射する。光電変換素子72は、キュベット152を透過した発光ダイオード71からの光を検出して、電気信号に変換するための機能を有している。プリアンプ73は、光電変換素子72からの電気信号を増幅するために設けられている。
【0043】
基板74は、光電変換素子72からの電気信号を増幅し、デジタル変換して、情報処理端末3aのPC本体3bに送信する機能を有している。また、基板74には、図6に示すように、増幅部74aと、A/D変換器74bと、コントローラ74cとが設けられている。また、増幅部74aは、アンプ74dと、電子ボリューム74eとを有している。アンプ74dは、プリアンプ73からの電気信号を増幅するために設けられている。また、アンプ74dは、コントローラ74cからの制御信号を電子ボリューム74eに入力することによりアンプ74dのゲイン(増幅率)を調整することが可能なように構成されている。A/D変換器74bは、アンプ74dにより増幅された電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。
【0044】
コントローラ74cは、発光ダイオード71から出射される光の波長特性(430nm、565nmおよび627nm)の周期的な変化に合わせて、アンプ74dのゲイン(増幅率)を変化させるように構成されている。また、コントローラ74cは、PC本体3bに電気的に接続されており、A/D変換器74bにおいてデジタル変換されたデジタル信号をPC本体3bに送信する。これにより、PC本体3bにおいて、第1光学的情報取得部70からのデジタル信号の分析(解析)が行われることにより、発光ダイオード71から出射される3つの光に対するキュベット152内の検体の吸光度(透過光強度)が求められるとともに、検体中の干渉物質の有無や種類、含有の度合いなどが分析される。そして、その分析結果に基づいて、第2光学的情報取得部80による検体の測定を行うか否かが判断されるとともに、第2光学的情報取得部80からの検出信号の解析方法と分析結果の表示方法とが制御される。
【0045】
第2光学的情報取得部80は、検体に試薬を添加して調製された測定用試料の加温を行うとともに、測定用試料から光学的情報を検出するための機能を有している。この第2光学的情報取得部80は、キュベット載置部81と、キュベット載置部81の下方に配置された検出部82(図7参照)とにより構成されている。キュベット載置部81には、図1に示すように、キュベット152を挿入するための20個の挿入孔81aと、キュベット152を挿入せずに参照光を測定するための1つの参照光用測定孔81bとが設けられている。また、キュベット載置部81には、挿入孔81aに挿入されたキュベット152を所定の温度に加温するための加温機構(図示せず)が内蔵されている。
【0046】
検出部82は、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の測定用試料に対して光学的な測定を行うことが可能なように構成されている。この検出部82には、図7および図8に示すように、キュベット152が挿入される各挿入孔81aに対応して、コリメータレンズ83a、光電変換素子84aおよびプリアンプ85aが設けられるとともに、参照光用測定孔81b(図1参照)に対応して、参照光用コリメータレンズ83b、参照光用光電変換素子84bおよび参照光用プリアンプ85bが設けられている。参照光用コリメータレンズ83b、参照光用光電変換素子84bおよび参照光用プリアンプ85bの構成は、それぞれ、コリメータレンズ83a、光電変換素子84aおよびプリアンプ85aの構成と同じである。
【0047】
コリメータレンズ83aは、図8に示すように、ランプユニット5(図1参照)からの光を誘導する光ファイバ17d(17c)の端部と、対応する挿入孔81aとの間に設置されている。このコリメータレンズ83aは、光ファイバ17d(17c)から出射された光を平行光にするために設けられている。また、光電変換素子84aは、挿入孔81aを挟んで光ファイバ17d(17c)の端部に対向するように設置された基板86aの挿入孔81a側の面に取り付けられている。プリアンプ85aは、基板86aの挿入孔81aと反対側の面に取り付けられている。また、光電変換素子84aは、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の測定用試料に光を照射したときに測定用試料を透過する光(以下、透過光という)を検出するとともに、検出した透過光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力する機能を有している。検出部82のプリアンプ85aは、光電変換素子84aからの電気信号(アナログ信号)を増幅するために設けられている。
【0048】
また、参照光用測定孔81bに対応して検出部82に設けられた参照光用コリメータレンズ83b、参照光用光電変換素子84b、参照光用プリアンプ85bおよび参照光用基板86bは、それぞれ、挿入孔81aに対応して検出部82に設けられたコリメータレンズ83a、光電変換素子84a、プリアンプ85aおよび基板86aと同様に構成されている。なお、参照光用光電変換素子84bには、参照光として、光ファイバ17d(17c)から出射された光が参照光用コリメータレンズ83bを透過した後、直接入射されるように構成されている。すなわち、参照光用光電変換素子84bは、測定用試料を収容するキュベット152を介さずに照射される参照光を検出するとともに、検出した参照光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力するように構成されている。
【0049】
制御基板6は、第2光学的情報取得部80の下方に配置されている。この制御基板6は、分析装置3やランプユニット5などの動作の制御や、第2光学的情報取得部80から出力された光学的情報(電気信号)の処理および記憶などを行う機能を有している。また、制御基板6には、図7および図9に示すように、信号処理部111、制御部112、増幅回路113、微分回路114および温度コントローラ115が設けられている。信号処理部111は、ランプユニット5から測定用試料に光が照射されたときに、光電変換素子84aが透過光を検出して出力する信号の処理を行うために設けられている。この信号処理部111は、図9に示すように、3つのマルチプレクサ(MUX)111aと、3つのオフセット回路111bと、3つのアンプ111cと、3つのA/D変換部111dとを有している。そして、それぞれ1つのマルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dによって、1つの信号処理ラインL0が構成されている。信号処理部111には、この信号処理ラインL0に加えて、信号処理ラインL0と同様の構成を有する信号処理ラインL1およびL2が設けられている。すなわち、信号処理部111には、検出部82から出力された複数のアナログ信号の処理を行うための3つの信号処理ラインL0〜L2が設けられている。
【0050】
図10に示すように、マルチプレクサ111aは、複数のプリアンプ85a(参照光用プリアンプ85b)に接続されている。このマルチプレクサ111aは、複数の光電変換素子84a(参照光用光電変換素子84b)からプリアンプ85a(参照光用プリアンプ85b)を介して入力される複数のアナログ信号から1つずつ選択して順次オフセット回路111bへ出力するように構成されている。オフセット回路111bは、マルチプレクサ111aから出力された信号の補正を行う機能を有している。具体的には、オフセット回路111bは、測定に用いられた挿入孔81aまたは参照光用測定孔81bに対応したオフセット値が制御部112(図9参照)から供給される。そして、オフセット回路111bは、マルチプレクサ111aから出力される透過光に対応する信号から上記のオフセット値を減算処理することにより、マルチプレクサ111aから出力される透過光に対応する信号を補正するように構成されている。
【0051】
アンプ111cは、オフセット回路111bから出力されたアナログ信号を増幅する機能を有している。このアンプ111cのゲイン(増幅率)は、Lゲイン、および、Lゲインよりも高い値のHゲインの2種類に切り替えられるように制御部112により制御される。そして、アンプ111cにより増幅されたLゲイン(増幅率)の信号とHゲイン(増幅率)の信号とは、それぞれ、互いに異なるタイミングでA/D変換部111dに入力されるように構成されている。A/D変換部111dは、それぞれ、アンプ111cに接続されており、そのアンプ111cによりLゲインおよびHゲインの信号(アナログ信号)に増幅された処理済アナログ信号をデジタル信号(データ)に変換するために設けられている。
【0052】
なお、本実施形態では、A/D変換部111dからは、図10に示すように、チャンネルCH0〜CH47に対応する48個(1つのA/D変換部につき16個)のデータが出力されるように構成されている。なお、このチャンネルCH0〜CH47の内、チャンネルCH0〜CH41の42個のチャンネルのデータは、それぞれ、各光電変換素子84aまたは参照光用光電変換素子84bから得られた電気信号に基づいたデータに対応している。すなわち、20個の光電変換素子84aから得られた20個のデータは、それぞれ、信号処理部111のアンプ111cによりLゲイン(増幅率)およびHゲイン(増幅率)で増幅されることによって40個のデータになる。また、1つの参照光用光電変換素子84bから得られた1つのデータは、信号処理部111(図9参照)のアンプ111cにおいてLゲイン(増幅率)およびHゲイン(増幅率)で増幅されることにより2つのデータになる。この40個のデータと、参照光に対応する2つのデータとを合計した42個のデータがチャンネルCH0〜CH41のデータに対応している。なお、チャンネルCH0〜CH47の内、残りの6つのチャンネルCH42〜CH47は、本実施形態では使用されない予備のチャンネルであり、このチャンネルCH42〜CH47のデータは、光電変換素子84aまたは参照光用光電変換素子84bからの電気信号には対応していない。
【0053】
また、制御部112は、分析装置3の動作を制御する機能と、A/D変換部111dから出力されるデジタル信号(データ)を取得して記憶する機能とを有している。この制御部112は、図9に示すように、コントローラ112a、フィルタ部回転監視部112b、モータコントローラ112c、マルチプレクサ制御部112d、オフセットインターフェイス112e、アンプインターフェイス112f、A/D変換部インターフェイス112g、ロガー用メモリ112h、設定用メモリ112i、コントローラステータスレジスタ112jおよびローカルバスインターフェイス112kを含んでいる。
【0054】
コントローラ112aは、制御部112による各種の制御を統括する機能を有している。また、フィルタ部回転監視部112bは、ランプユニット5のフィルタ部14が正常に回転しているか否かを監視するために設けられている。このフィルタ部回転監視部112bには、フィルタ部14の回転に伴う原点スリット14k(図5参照)または通常スリット14lの通過を検出するセンサ16からの検出信号が入力されるように構成されている。そして、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16から原点スリット14k(図5参照)の検出信号が出力される時間間隔と、センサ16から通常スリット14l(図5参照)の検出信号が出力される時間間隔と、センサ16から原点スリット14kの検出信号が出力されてから次に再度原点スリット14kの検出信号が出力されるまでの間に通常スリット14lの検出信号が出力される回数とが監視されることによって、フィルタ部14が正常に回転しているか否かが監視される。また、モータコントローラ112cは、フィルタ部14を回転させるモータ15の回転数を制御する機能を有している。また、マルチプレクサ制御部112dは、マルチプレクサ111aの動作を制御する機能を有している。具体的には、マルチプレクサ制御部112dは、複数のマルチプレクサ111aがアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにマルチプレクサ111aの動作を制御している。
【0055】
また、コントローラ112aは、図9に示すように、オフセットインターフェイス112e、アンプインターフェイス112fおよびA/D変換部インターフェイス112gを介してそれぞれ信号処理部111のオフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dの動作の制御を行うように構成されている。具体的には、コントローラ112aは、オフセットインターフェイス112eを介してオフセット回路111bに所定のオフセット値を供給するとともに、オフセット回路111bがマルチプレクサ111aからの信号からそのオフセット値を減算することにより補正処理を行うのを制御する。また、コントローラ112aは、アンプインターフェイス112fを介してアンプ111cがLゲインおよびHゲインになるように制御するとともに、アンプ111cによるオフセット回路111bからの信号の増幅処理を制御する。また、コントローラ112aは、A/D変換部インターフェイス112gを介してA/D変換部111dによるアンプ111cからの信号(アナログ信号)のデジタル信号への変換処理を制御する。また、A/D変換部111dにより取得されたデジタル信号(データ)は、A/D変換部インターフェイス112gおよびコントローラ112aを介してロガー用メモリ112hに入力されるとともに記憶されるように構成されている。この際、コントローラ112aは、複数のA/D変換部111dが複数のデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、A/D変換部インターフェイス112gを介してA/D変換部111dの動作を制御している。
【0056】
また、コントローラ112aは、所定の信号処理ライン(L0からL2のいずれか)のマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによるアナログ信号処理が行われる期間に、その所定の信号処理ラインとは別の信号処理ラインのA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理が行われるように、各信号ラインL0〜L2におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111c、A/D変換部111dおよびロガー用メモリ112hのうち処理を実行するものを切り替える機能を有する。なお、この点については、後の分析動作の説明において詳細に説明する。
【0057】
ロガー用メモリ112hは、所定の光電変換素子84aから出力されたアナログ信号に対応するデジタル信号(データ)を、ロガー用メモリ112hのアドレスによって識別可能に記憶するために設けられている。このロガー用メモリ112hは、図11に示すように、128バイト単位の32個のエリア0〜31によって構成されている。このエリア0〜31には、それぞれ、5つの光学フィルタ14b〜14f(図5参照)の透過光に対応するデータおよび閉塞された孔14jに対応するデータが記憶される。すなわち、フィルタ部14が1回転する毎に、5つの異なる光透過特性を有する光学フィルタ14b〜14fの透過光に対応するデータが発生する。そして、これらの5つのデータがそれぞれロガー用メモリ112h(図11参照)のエリア0から順番にエリア毎に記憶される。また6番目のエリアには、孔14jに対応するデータとして“0”が記憶される。これにより、フィルタ部14の1回転(約100msec)毎にロガー用メモリ112hの6つのエリアが使用されるとともに、エリア31まで使用された後は、エリア0に戻ってデータが上書きされるように構成されている。
【0058】
また、ロガー用メモリ112hの各エリア0〜31は、それぞれ、128個のアドレスを有している。たとえば、エリア0は、000h〜00Fh、010h〜01Fh、020h〜02Fh、030h〜03Fh、040h〜04Fh、050h〜05Fh、060h〜06Fhおよび070h〜07Fhの128個のアドレスを有している。そして、000h〜05Fhの96個のアドレスに上記したチャンネルCH0〜CH47(図10参照)のデータが記憶されるように構成されている。チャンネルCH0〜CH47の各データは、それぞれ、2つのアドレスに記憶されるように構成されている。なお、前述のように本実施形態では、チャンネルCH42〜47からはデータが出力されないので、これらのチャンネルに対応するアドレスには、データは記憶されない。
【0059】
また、図11に示したロガー用メモリ112hのエリア0におけるアドレス060h〜06Fhおよび070h〜07Ehは、本実施形態ではデータの記憶されない予備のアドレスである。また、エリア0の最後のアドレス07Fhには、フィルタ番号(0〜4)が記憶される。このフィルタ番号(0〜4)は、5つの光学フィルタ14b〜14f(図5参照)を識別するための番号である。光学フィルタは、原点スリット14kが通過するタイミングを検出することによって識別できる。この5つの光学フィルタ14b〜14fに対応するフィルタ番号(0〜4)がアドレス07Fhに記憶されることにより、エリア0に記憶されたデータがどの光学フィルタ(14b〜14f)の透過光に対応するデータかが識別されるように構成されている。
【0060】
また、図9に示した設定用メモリ112iは、オフセット回路111bに供給するオフセット値と、アンプ111cに供給するゲイン(増幅率)などの設定値を記憶させるために設けられている。また、コントローラステータスレジスタ112jは、フィルタ部14が正常に回転しているか否か、A/D変換部111dによるアナログ信号からデジタル信号への変換エラーの有無、PC本体3bによるロガー用メモリ112hからのデータの取得状況、および、PC本体3bからの測定開始の指示の有無といった情報を一時的に記憶するために設けられている。また、制御部112は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介して、ロガー用メモリ112hに記憶された測定用試料のデータ(光学的情報)をPC本体3bに送信する機能を有するように構成されている。
【0061】
また、図9に示した制御基板6の増幅回路113は、参照光用光電変換素子84b(図10参照)から参照光用プリアンプ85bを介して出力された信号が入力されるとともに、その入力された信号を増幅する機能を有している。この増幅回路113は、図12に示すように、2つの抵抗113aおよび113bと、1つのオペアンプ113cとによって構成されている。抵抗113aの一方端には、参照光用プリアンプ85bからの参照光に対応する信号が入力されるとともに、他方端は、オペアンプ113cの反転入力端子に接続されている。また、抵抗113bは、オペアンプ113cの出力端子と反転入力端子との間に接続されている。また、オペアンプ113cの非反転入力端子は、接地されている。また、オペアンプ113cの出力は、信号処理部111(図9参照)のマルチプレクサ111aと、微分回路114とにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0062】
制御基板6の微分回路114は、増幅回路113からの参照光に対応する信号(以下、参照信号という)の微分信号を生成する機能を有している。この微分回路114は、図12に示すように、2つの抵抗114aおよび114bと、2つのコンデンサ114cおよび114dと、1つのオペアンプ114eとによって構成されている。抵抗114aの一方端には、増幅回路113からの参照信号が入力されるとともに、他方端は、コンデンサ114cの一方電極に接続されている。また、コンデンサ114cの他方電極はオペアンプ114eの反転入力端子に接続されている。また、抵抗114bおよびコンデンサ114dは、共に、オペアンプ114eの出力端子と反転入力端子との間に接続されている。また、オペアンプ114eの非反転入力端子は、接地されている。また、オペアンプ114eの出力は、図示しないコンパレータを介して制御部112(図9参照)のコントローラ112aへ入力されるように構成されている。
【0063】
また、図9に示した制御基板6の温度コントローラ115は、第2光学的情報取得部80に内蔵された加温機構(図示せず)を制御することによりキュベット152が載置されるキュベット載置部81(図1参照)の温度を制御する機能を有している。この温度コントローラ115は、図9に示すように、インターフェイス116を介してPC本体3bから入力される設定温度(約37°)に応じて、第2光学的情報取得部80の加温機構(図示せず)による加温を制御するように構成されている。
【0064】
次に、図2、図3および図13を参照して、PC本体3bによる分析装置3の制御の概略について説明する。なお、以下の説明において、分析装置3の制御と、拡張用分析装置4の制御とは同じであるので、分析装置3の制御について説明する。
【0065】
分析システム1は、情報処理端末3a、分析装置3の装置本体、および拡張用分析装置4の電源を投入することによって起動する。
【0066】
これらの電源が投入されると、まず、図13に示したステップS1において、PC本体3bにより、初期設定が行われる。この初期設定では、PC本体3bに記憶されているソフトウェアの初期化や、後述するnクロックを分析装置3の制御部112から取得する処理などが行われる。なお、分析装置3の装置本体の電源投入により、ステップS1の初期設定時には、ランプユニット5(図3参照)のハロゲンランプ11から光が照射されるとともに、フィルタ部14が10回転/秒の回転速度での連続回転を開始する。このハロゲンランプ11からの光の照射、および、フィルタ部14の回転は、分析装置3の装置本体の電源がオフ状態にされるまで継続される。そして、ステップS2において、使用者による検体分析情報の入力を受け付ける処理が行われる。すなわち、使用者は、情報処理端末3a(図2参照)のキーボード3dを用いて、情報処理端末3aの表示部3cに出力される検体分析一覧表中の検体番号および測定項目の欄などに情報の入力を行う。これらの検体分析情報は、PC本体3bに保存される。
【0067】
そして、ステップS3において、PC本体3bにより分析処理の指示が行われる。これにより、分析装置3による分析処理が行われる。その後、ステップS4において、PC本体3bにより、分析システム1のシャットダウンの指示が入力されたか否かが判断される。そして、ステップS4において、PC本体3bにより、分析システム1のシャットダウンの指示が入力されていないと判断された場合には、ステップS2に戻り、使用者による他の検体分析情報の入力を受け付ける処理が行われる。一方、ステップS4において、PC本体3bにより、分析システム1のシャットダウンの指示が入力されたと判断された場合には、ステップS5において、シャットダウン処理が行われる。このシャットダウン処理により、分析システム1の電源が自動的にオフ状態になり、分析システム1の動作が終了される。
【0068】
次に、図3、図7〜図9、図14および図15を参照して、制御部112によるnクロックの算出処理の方法について詳細に説明する。
【0069】
図15に示すように、フィルタ部14(図3参照)の連続回転中に、ランプユニット5から参照光用光電変換素子84b(図8参照)に入射される参照光の光量は、「参照光の光量」として示した波形のように変化する。なお、図15中の期間Aは、ランプユニット5(図3参照)において、回転しているフィルタ部14のいずれかの光学フィルタ14b〜14fがハロゲンランプ11からの光の通路に配置される期間である。この期間Aにおいて、ハロゲンランプ11からの光の通路に光学フィルタ14b〜14fが差し掛かると、参照光の光量は徐々に増加し始める。その後、ハロゲンランプ11からの光の通路が完全に光学フィルタ14b〜14f内に収まることにより、参照光の光量は一定となる。その後、ハロゲンランプ11からの光の通路から光学フィルタ14b〜14fが外れ始めると、参照光の光量は徐々に減少し始めるとともに、ハロゲンランプ11からの光の通路から光学フィルタ14b〜14fが完全に外れると参照光の光量は0になる。
【0070】
そして、参照光は、図7に示すように、参照光用光電変換素子84bにより電気信号に変換されるとともに、その変換された電気信号は、参照光用プリアンプ85bおよび増幅回路113により増幅される。そして、増幅回路113から参照光に対応する信号(以下、参照信号という)が出力されるとともに、この参照信号は、微分回路114に入力される。そして、微分回路114により、図15に「参照信号の微分信号」として示した波形を有する参照信号の微分信号が生成される。この参照信号の微分信号は、コンパレータ(図示せず)を介して微分回路114(図9参照)から制御部112に入力される。
【0071】
そして、図14のステップS11において、制御部112により、この参照信号の微分信号が所定の負のしきい値(+)に到達した時点のクロック数N1が検出される。具体的には、図15に示すように、参照光の光量の増加に伴って参照信号の微分信号が立ち上がる。そして、微分信号が所定の正のしきい値(+)に到達するのに応答して、微分回路114(図9参照)から微分信号が入力される図示しないコンパレータにおいてHレベルに立ち上がるパルス信号が出力される。このパルス信号は、制御部112のコントローラ112aに入力されるとともに、コントローラ112aでは、パルス信号がHレベルに立ち上った時点のクロック数N1が検出される。このようにして、制御部112のコントローラ112aにより、参照信号の微分信号が所定の正のしきい値(+)に到達した時点のクロック数N1が検出される。
【0072】
この後、図15に示すように、参照光の光量はさらに増加するとともに、所定の値で一定となる。そして、その後、参照光の光量は徐々に減少する。これに伴って、参照信号の微分信号は、徐々に立ち下がる。そして、図14のステップS12において、制御部112により、参照信号の微分信号が所定の負のしきい値(−)に到達した時点のクロック数(N2)が検出される。具体的には、参照信号の微分信号が徐々に立ち下がるとともに、所定の負のしきい値(−)に到達するのに応答して、微分回路114(図9参照)から微分信号が入力される図示しないコンパレータにおいてHレベルに立ち上がるパルス信号が出力される。このパルス信号は、制御部112のコントローラ112aに入力されるとともに、コントローラ112aでは、パルス信号がHレベルに立ち上った時点のクロック数N2が検出される。このようにして、制御部112のコントローラ112aにより、参照信号の微分信号が所定の負のしきい値(−)に到達した時点のクロック数N2が検出される。
【0073】
そして、図14のステップS13において、制御部112により、クロック数N1からクロック数N2までの間にカウントされるクロック数(Nクロック)がN=N2−N1の式により算出される。そして、ステップS14において、制御部112により、測定用試料の透過光に対応する信号の取得を開始するタイミングを決定するためのクロック数(nクロック)がn=(N−m)/2の式を用いて算出される。なお、この式において、mクロックは、制御部112が測定用試料の透過光に対応する信号を取得する際に要する適切な期間として予め設定されたクロック数である。なお、本実施形態では、測定用試料などによる影響を受けない参照光を用いて、制御部112が透過光に対応する信号の取得を開始するタイミングを算出している。そして、図15からわかるように、N1クロックから上記のように算出したnクロック後に、マルチプレクサ111aによりmクロックの期間だけ測定用試料の透過光に対応する検出部82からの信号の取得を行えば、ランプユニット5からの照射光の光量が安定している期間の信号を取得することができる。
【0074】
次に、図1、図2、図5〜図11、図13および図16〜図18を参照して、上記した図13のステップS3の処理について詳細に説明する。まず、図16のステップS21において、PC本体3bにより一次測定の指示が行われる。これにより、上記した第1光学的情報取得部70による検体中の干渉物質の測定が行われる。そして、第1光学的情報取得部70によって取得された光学的情報は、コントローラ74cを介してPC本体3bに送信される。
【0075】
次に、ステップS22において、PC本体3bにより、送信された光学的情報を解析し、その解析結果に基づいて、一次測定を行った検体が第2光学的情報取得部80による二次測定の対象であるか否かが判断される。そして、その検体が二次測定の対象ではないと判断された場合には、検体に含有される干渉物質の影響が大きいため信頼性の高い解析を行うことが困難である、という内容のメッセージを表示部3cに表示させる(ステップS28)。一方、ステップS22において、検体が二次測定の対象であると判断された場合には、ステップS23において、PC本体3bにより検体の吸引が指示される。これにより、回転搬送部30に保持されたキュベット152から検体分注アーム40により検体が吸引される。
【0076】
そして、ステップS24において、PC本体3bにより測定用試料の調製が指示される。これにより、分析装置3において、検体分注アーム40により吸引された検体が複数のキュベット152に分注されるとともに、試薬分注アーム50により、試薬容器(図示せず)内の血液の凝固を開始させるための試薬がそれらの複数のキュベット152内の検体に添加される。このようにして、測定用試料の調製が行われる。そして、キュベット移送部60により、測定用試料が収容されたキュベット152が第2光学的情報取得部80のキュベット載置部81の挿入孔81aに移動される。
【0077】
そして、ステップS25において、PC本体3bにより二次測定の指示が行われる。これにより、分析装置3において、測定用試料の二次測定が開始される。以下、この二次測定について詳細に説明する。
【0078】
挿入孔81aに移動されたキュベット152には、上記のようにランプユニット5から5種類の異なる波長特性(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光が断続的に順次照射される。そして、キュベット152を透過した光は、光電変換素子84a、プリアンプ85a、マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111c、A/D変換部11dを介して、デジタルデータに変換され、ロガー用メモリ112hに記憶される。
【0079】
ここで、図10を参照して、信号処理部111の動作について説明する。
【0080】
マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dによる電気信号の処理は、マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、アンプ111cおよびA/D変換部111dからなる3つの信号処理ラインL0〜L2において、部分的に並行して行われる。すなわち、図10に示すように、信号処理ラインL0におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによる電気信号の処理と、信号処理ラインL1におけるA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112h(図9参照)へのデータ記憶処理とが並行して行われる。また、同様に、信号処理ラインL1におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによる電気信号の処理と、信号処理ラインL2におけるA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112h(図9参照)へのデータ記憶処理とが並行して行われる。また、信号処理ラインL2におけるマルチプレクサ111a、オフセット回路111bおよびアンプ111cによる電気信号の処理と、信号処理ラインL0におけるA/D変換部111dによる変換処理および制御部112のロガー用メモリ112h(図9参照)へのデータ記憶処理とが並行して行われる。
【0081】
そして、これらの電気信号の部分的な並行処理は、図17に示すように、3つの信号処理ラインL0〜L2を順次使用して48μsec単位で行われる。具体的には、まず、図17に示したステップ0では、信号処理ラインL0においてマルチプレクサ111aによるチャンネルCH0への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理が行われる。このステップS0では、信号処理ラインL1およびL2は、電気信号の安定待ちの状態(信号待ち処理)であり、電気信号の処理は行われない。そして、図17のステップS1では、信号処理ラインL1において、マルチプレクサ111aによるチャンネルCH16への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理が行われる。このステップS1では、信号処理ラインL0およびL2は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0082】
そして、図17のステップS2において、信号処理ラインL0のA/D変換部111dによるチャンネルCH0の電気信号のA/D変換処理およびロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理と、信号処理ラインL2におけるマルチプレクサ111aによるチャンネルCH32への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理とが並行して行われる。このステップS2では、信号処理ラインL1は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0083】
そして、図17のステップS3において、信号処理ラインL0におけるマルチプレクサ111aによるチャンネルCH1への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理と、信号処理ラインL1のA/D変換部111dによるチャンネルCH16の電気信号のA/D変換処理およびロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理とが並行して行われる。このステップS3では、信号処理ラインL2は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0084】
そして、図17のステップS4において、信号処理ラインL1におけるマルチプレクサ111aによるチャンネルCH17への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理と、信号処理ラインL2のA/D変換部111dによるチャンネルCH32の電気信号のA/D変換処理およびロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理とが並行して行われる。このステップS4では、信号処理ラインL0は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0085】
そして、上記のステップS2〜4による処理と同様の並行処理が、信号処理ラインL0〜L2において、ステップS49まで信号処理を行うチャンネルを切り替えながら繰り返し行われる。そして、ステップS50では、信号処理ラインL2においてマルチプレクサ111aによるチャンネルCH32への切替処理、オフセット回路111bによる補正処理およびアンプ111cによる増幅処理が行われる。このステップS50では、信号処理ラインL0およびL1は、電気信号の安定待ちの状態であり、電気信号の処理は行われない。
【0086】
なお、マルチプレクサ111a、オフセット回路111b、およびアンプ111cは、いずれも、信号処理の直後は、出力信号が安定しない。本実施形態では、このような不安定な信号が分析物の解析に使用されることを防止するため、上記の電気信号の安定待ちの期間が設けられている。
【0087】
上記のようにして、ステップS0〜50の51個のステップにより全てのチャンネルCH0〜CH47の電気信号の処理が行われる。なお、この51個のステップによる電気信号の処理は、2.45msec(=48μsec×51ステップ)の期間に行われる。また、この51個のステップによる電気信号の処理は、後述するmクロックのデータ取得処理の期間内に1回行われる。
【0088】
ロガー用メモリ112hへのデータ記憶処理においては、前述のように、ハロゲンランプ11からの光が透過した光学フィルタおよびチャンネルが特定できるように、所定のアドレスにデータが記憶される。このようにしてロガー用メモリ112hに記憶されたデータは、所定のタイミングにPC本体3bに送信される。
【0089】
そして、図16のステップS26において、PC本体3bは、ステップS22において取得した第1光学的情報取得部70からの光学的情報(データ)の分析結果に基づいて、第2光学的情報取得部80からの波長特性および増幅率の異なる10種類の光学的情報(データ)、すなわち、5種類の光学フィルタ14b〜14fにそれぞれ対応するLゲインおよびHゲインのデータのうち、分析に適している光学的情報(データ)を選択し、その光学的情報を解析する。そして、ステップS27において、測定用試料の解析結果(本実施形態では、図18に示すような凝固曲線および凝固時間など)を表示部3cに出力する。
【0090】
次に、図9、図13、図15、図17および図19を参照して、本実施形態の制御部112によるデータ取得処理について説明する。このデータ取得処理は、PC本体3bが分析処理の指示(ステップS3)をすることによって開始される。
【0091】
まず、図19に示したステップS31において、制御部112(図9参照)により、図15のN1に対応する参照信号の微分信号の立ち上がりの検出を待つ処理が実行される。参照信号の微分信号の立ち上がりが検出されると、ステップS32において、制御部112により、参照信号の微分信号の立ち上がりの時点から初期設定において算出したnクロックが経過するのを待つ処理が実行される。
【0092】
そして、ステップS33において、制御部112により、3つのA/D変換部11dからそれぞれ出力されるデジタルデータの取得を開始する処理が実行される。そして、ステップS34において、制御部112により、デジタルデータの取得の開始からmクロックが経過するのを待つ処理が実行される。そして、mクロックが経過すると、ステップS35において、制御部112は、デジタルデータの取得を終了する。そして、ステップS36において、制御部112により、PC本体3から分析指示を受信してから所定時間が経過したか否かを判断する処理が実行される。所定時間が経過していれば、データ取得処理を終了し、経過していなければ、ステップS31の処理に戻る。
【0093】
次に、図1、図9、図11、図18および図20を参照して、本実施形態のPC本体3bによるデータ取得処理について説明する。この処理は、情報処理端末3aの電源が投入されるとともに開始される。
【0094】
ステップS40において、PC本体3bは、ロガー112hに新たにデータが記憶されたか否かを監視し、データが100msec分(フィルタ部14の1回転分)記憶されるまで待つ。具体的には、ロガー112hに、100msec分のデータが蓄積されると、制御部112から、それを知らせる通知が送信されるので、PC本体3bは、その通知が送信されるのを待つ。そして、ステップS41において、PC本体3bにより、ロガー用メモリ112hからその100msec分のデータ(部分時系列データ)がインターフェイス116およびローカルバスインターフェイス112kを介して取得される。すなわち、図11に示すように、ロガー用メモリ112hのエリア0〜5にフィルタ部14の1回転分に対応する100msec分のデータが蓄積されると、このエリア0〜5に蓄積されたデータがPC本体3bにより取得される。
【0095】
そして、ステップS42において、PC本体3bにより、情報処理端末3aがシャットダウン指示を受け付けたか否かの判断が行われる。そして、シャットダウン指示を受け付けていない場合には、ステップS40の処理に戻る。シャットダウン指示を受け付けた場合には、データ取得処理を終了する。なお、ステップS41において、2回目にデータが取得される場合には、1回目にデータが取得されたロガー用メモリ112hのエリア0〜5の次の6つのエリア6〜11のデータが取得される。このように、PC本体3bによりロガー用メモリ112hからデータ取得される際には、6つのエリア毎のデータが順次取得される。
【0096】
なお、PC本体3bでは、ステップS41でロガー用メモリ112hから取得した複数の部分時系列データの内、測定用試料が収容されたキュベット152(図1参照)が第2光学的情報取得部80の挿入孔81aに挿入された時点以降の部分時系列データが時系列順に組み合わされて、所定の時系列データが作成される。そして、PC本体3bでは、その作成された時系列データに基づいて図18に示すような凝固曲線が作成される。そして、PC本体3bでは、その作成された凝固曲線から測定用試料の凝固時間を求める。具体的には、図18に示した凝固曲線のグラフにおいて、透過光の強度が100%と0%との中間の50%になる時点tを求めるとともに、その時点tのスタート時点からの経過時間を凝固時間として算出する。この凝固時間は、前述のように、ステップS27(図16)において、表示部3cに表示される。
【0097】
以下、フィルタ部14の回転の監視について説明する。
【0098】
制御部112は、以下に説明する3つの監視処理を、フィルタ部の回転中に並行かつ継続して実行している。そして、この3つの監視処理のうち1つでもエラーが発生した場合には、フィルタ部14の回転を停止させる。以下、上記のフィルタ部14の回転の3つの監視処理の方法について詳細に 説明する。
【0099】
まず、図2、図3、図9、図21および図22を参照して、原点スリット14kが検出される時間間隔を監視する場合の処理方法について説明する。本実施形態では、分析装置3(図2参照)の電源がオン状態の間は、ランプユニット5(図3参照)のフィルタ部14が停止することなく連続的に回転している。この際、回転するフィルタ部14のスリットを検出するセンサ16からの信号が制御部112(図9参照)のフィルタ部回転監視部112bに入力されている。なお、センサ16は、スリットを検出した場合には、図22の波形図に示すようなON状態に立ち上がる信号を出力する。そして、図21のステップS51において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの信号に基づいてセンサ16がスリットを検出したか否かが判断される。そして、ステップS51において、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出していないと判断された場合は、再度ステップS51において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16がスリットの通過を検出したか否かの判断が繰り返し行われる。
【0100】
一方、図21のステップS51において、制御部112のフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16がスリットを検出したと判断された場合には、ステップS52において、フィルタ部回転監視部112bにより、そのスリットが原点スリット14kであるか否かが判断される。この原点スリット14kであるか否かの判断は、フィルタ部回転監視部112b内のスリット幅カウンタ(図示せず)により生成される信号に基づいて行われる。スリット幅カウンタ(図示せず)は、図22に示すようなセンサ16からの信号の積分信号を生成する。なお、原点スリット14kを検出した際のセンサ16からの信号のON状態の期間は、原点スリット14kの幅が他の通常スリット14lの幅よりも大きいことに起因して、通常スリット14lを検出した際のセンサ16からの信号のON状態の期間に比べて長い。このため、フィルタ部回転監視部112bのスリット幅カウンタ(図示せず)により生成される積分信号は、センサ16が原点スリット14kを検出した場合には、他の通常スリット14lを検出した場合よりも高いレベルまで立ち上がる。これにより、フィルタ部回転監視部112bにおいて、通常スリット14lが検出された場合の積分信号の立ち上がるレベルと、原点スリット14kが検出された場合の積分信号の立ち上がるレベルとの間に所定のしきい値を設定することにより、その所定のしきい値に積分信号が到達した場合には、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kであると判断される一方、所定のしきい値に積分信号が到達しない場合には、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kではない(通常スリット14lである)と判断される。
【0101】
そして、図21のステップS52において、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kではないと判断された場合には、ステップS51の処理に戻る。一方、センサ16により検出されたスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS53において、フィルタ部回転監視部112bにより、その原点スリット14kがセンサ16によって検出された時間T1が記憶される。次に、ステップS54において、上記のステップS51と同様にして、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出したか否かの判断が行われる。そして、ステップS54において、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出していないと判断された場合には、ステップS54の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS54において、フィルタ部回転監視部112bによりセンサ16がスリットを検出したと判断された場合には、ステップS55において、上記のステップS52と同様のセンサ16が検出したスリットが原点スリット14kであるか否かの判断が行われる。
【0102】
そして、センサ16が検出したスリットが原点スリット14kではないと判断された場合には、ステップS54の処理に戻る。一方、ステップS55において、センサ16が検出したスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS56において、フィルタ部回転監視部112bにより、その原点スリット14kがセンサ16によって検出された時間T(n)が記憶される。ここで、nは、原点スリット14kが検出された回数を表している。したがって、ここでは、原点スリット14kの検出回数は2回であるので、n=2である。
【0103】
次に、ステップS57において、フィルタ部回転監視部112bにより、T(n)−T(n−1)の算出が行われる。ここで、n=2であるので、フィルタ部回転監視部112bによりT2−T1の算出が行われる。すなわち、ステップS57では、1回目の原点スリット14kの検出時間T1と2回目の原点スリット14kの検出時間T2との間の時間間隔が算出される。そして、ステップS58において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS57において算出された時間間隔T2−T1が予め設定されたフィルタ部14が1回転するのに要する所定の時間間隔の範囲内であるか否かが判断される。そして、ステップS58において、時間間隔T2−T1が所定の時間間隔の範囲内ではないと判断された場合には、ステップS59において、フィルタ部回転監視部112bからコントローラ112aを介してコントローラステータスレジスタ112jにフィルタ部14の回転が異常であるというエラー情報が出力される。この際、フィルタ部14の回転は停止される。そして、エラー情報は、コントローラステータスレジスタ112jに一時的に記憶される。そして、コントローラステータスレジスタ112jに記憶されたエラー情報は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介してPC本体3bに送信される。そして、PC本体3bにより、情報処理端末3aの表示部3cにフィルタ部14の回転が異常であるというエラーメッセージが表示される。
【0104】
一方、ステップS58において、時間間隔T2−T1が所定の時間間隔の範囲内であると判断された場合には、ステップS60において、制御部112により、フィルタ板の回転の停止が指示されたか否かが判断される。ステップS60において、フィルタ部14の回転の停止が指示されていないと判断された場合には、ステップS54の処理に戻る。一方、ステップS60において、フィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断された場合には、フィルタ部回転監視部112bによるフィルタ部14の回転の監視処理は終了する。なお、ステップS54〜S60の一連の処理は、ステップS60において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断されるまで繰り返し行われる。
【0105】
次に、図2、図5、図9、図21および図23を参照して、制御部112によるフィルタ部14の回転の監視処理において、隣接する2つのスリット(原点スリットまたは通常スリット)がそれぞれ検出される間の時間間隔を監視する場合の処理について説明する。
【0106】
まず、図23のステップS61において、図21に示したステップS51と同様にして、制御部112(図9参照)のフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの信号に基づいてセンサ16がスリット(原点スリット14k(図5参照)または通常スリット14l)の通過を検出したか否かが判断される。そして、ステップS61において、センサ16(図9参照)がスリットを検出していないと判断された場合は、再度ステップS61の処理が行われる。一方、センサ16がスリットの通過を検出したと判断された場合には、ステップS62において、フィルタ部回転監視部112bにより、そのスリットがセンサ16によって検出された時間t1が記憶される。
【0107】
次に、ステップS63において、上記のステップS61と同様にして、センサ16がスリットの通過を検出したか否かの判断が再度行われる。そして、ステップS63において、センサ16がスリットの通過を検出していないと判断された場合には、ステップS63の処理が繰り返し行われる。一方、ステップS63において、センサ16がスリットの通過を検出したと判断された場合には、ステップS64において、フィルタ部回転監視部112bにより、そのスリットがセンサ16によって検出された時間t(n)が記憶される。ここで、nは、センサ16によりスリットが検出された回数を表している。したがって、ここでは、スリットの検出回数は2回であるので、n=2である。
【0108】
次に、ステップS65において、フィルタ部回転監視部112bにより、t(n)−t(n−1)の算出が行われる。ここで、n=2であるので、フィルタ部回転監視部112bによりt2−t1の算出が行われる。すなわち、ステップS65では、1つ目のスリットの検出時間t1と2つ目のスリットの検出時間t2との間の時間間隔が算出される。そして、ステップS66において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS65において算出された時間間隔t2−t1が、予め設定された隣接する2つのスリットがそれぞれ検出される間の所定の時間間隔の範囲内であるか否かが判断される。なお、この時間間隔には、光学フィルタ14fが通過してから光学フィルタ14eが正常に通過するのに要する第1時間間隔と、光学フィルタ14bが通過してから光学フィルタ14fが正常に通過するのに要する第2時間間隔と、の2種類がある。
【0109】
そして、ステップS66において、時間間隔t2−t1が、上記第1時間間隔の範囲内でもなく、上記第2時間間隔の範囲内でもないと判断された場合には、ステップS67において、フィルタ部回転監視部112bからコントローラ112aを介してコントローラステータスレジスタ112jにフィルタ部14の回転が異常であるというエラー情報が出力される。この際、フィルタ部14の回転は停止される。そして、エラー情報は、コントローラステータスレジスタ112jに一時的に記憶される。そして、コントローラステータスレジスタ112jに記憶されたエラー情報は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介してPC本体3bに送信される。そして、PC本体3bにより、情報処理端末3a(図2参照)の表示部3cにフィルタ部14の回転が異常であるというエラーメッセージが表示される。
【0110】
一方、ステップS66において、時間間隔t2−t1が所定の時間間隔の範囲内であると判断された場合には、ステップS68において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたか否かが判断される。そして、ステップS68において、フィルタ部14の回転の停止が指示されていないと判断された場合には、ステップS63の処理に戻る。一方、ステップS68において、フィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断された場合には、フィルタ部回転監視部112bによるフィルタ部14の回転の監視処理は終了する。なお、ステップS61〜S68の一連の処理は、ステップS68において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断されるまで繰り返し行われる。
【0111】
次に、図2、図5、図9、図21および図24を参照して、本実施形態の制御部112によるフィルタ部14の回転の監視処理において、2つの原点スリット14kが検出される間に検出される通常スリット14lの数を監視する場合の処理について説明する。
【0112】
まず、図24のステップS71において、図21に示したステップS51と同様にして、制御部112(図9参照)のフィルタ部回転監視部112bにより、センサ16からの信号に基づいてセンサ16が回転するフィルタ部14(図5参照)のスリットを検出したか否かが判断される。そして、ステップS71において、センサ16(図9参照)がスリットを検出していないと判断された場合は、再度ステップS71の処理が行われる。
【0113】
一方、ステップS71において、センサ16がスリットを検出したと判断された場合には、ステップS72において、図21に示したステップS52と同様にして、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16によって検出されたスリットが原点スリット14kであるか否かが判断される。そして、ステップS72において、検出されたスリットが原点スリット14kではないと判断された場合には、ステップS71の処理に戻る。一方、ステップS72において、検出されたスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS73において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16によって原点スリット14kが検出されたという情報が記憶される。
【0114】
次に、ステップS74において、上記のステップS71と同様にして、センサ16がスリットを検出したか否かの判断が再度行われる。そして、ステップS74において、スリットを検出していないと判断された場合には、ステップS74の処理が再度実行される。一方、ステップS74において、スリットを検出したと判断された場合には、ステップS75において、上記のステップS72と同様にして、検出したスリットが原点スリット14kであるか否かの判断が行われる。そして、ステップS75において、検出したスリットが原点スリット14kではない(通常スリット14lである)と判断された場合には、ステップS76において、ステップS75において検出されたスリット(通常スリット14l)の数がカウントされる。その後、ステップS74の処理に戻る。
【0115】
一方、ステップS75において、検出されたスリットが原点スリット14kであると判断された場合には、ステップS77において、フィルタ部回転監視部112bにより、センサ16によって原点スリット14kが検出されたという情報が記憶される。そして、ステップS78において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS76においてカウントされた通常スリット14lの数が2つの原点スリット14kが検出される間に検出された通常スリット14lの数として取得される。そして、ステップS79において、フィルタ部回転監視部112bにより、ステップS78において取得された通常スリット14lの数が所定数(5)であるか否かが判断される。そして、ステップS79において、取得された通常スリット14lの数が所定数(5)ではないと判断された場合には、ステップS80において、フィルタ部回転監視部112bからコントローラ112aを介してコントローラステータスレジスタ112jにフィルタ部14の回転が異常であるというエラー情報が出力される。この際、フィルタ部14の回転は停止される。そして、エラー情報は、コントローラステータスレジスタ112jに一時的に記憶される。そして、コントローラステータスレジスタ112jに記憶されたエラー情報は、ローカルバスインターフェイス112kおよびインターフェイス116を介してPC本体3bに送信される。そして、PC本体3bにより、情報処理端末3a(図2参照)の表示部3cにフィルタ部14の回転が異常であるというエラーメッセージが表示される。
【0116】
一方、ステップS79において、取得された通常スリット14lの数が所定数(5)であると判断された場合には、ステップS81において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたか否かが判断される。そして、ステップS81において、フィルタ部14の回転の停止が指示されていないと判断された場合には、ステップS74の処理に戻る。一方、ステップS81において、フィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断された場合には、フィルタ部回転監視部112bによるフィルタ部14の回転の監視処理は終了する。なお、ステップS74〜S81の一連の処理は、ステップS81において、フィルタ部回転監視部112bによりフィルタ部14の回転の停止が指示されたと判断されるまで繰り返し行われる。
【0117】
本実施形態では、上記のように、検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の光電変換素子84aからそれぞれ出力される複数のアナログ信号を1つずつ順次選択する複数のマルチプレクサ111aと、複数のマルチプレクサ111aによって順次選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数のA/D変換部111dとを設けることによって、1つのマルチプレクサ111aによりアナログ信号が選択された時刻から信号待ち処理の期間(48μsec)経過後に、1つのA/D変換部111dがマルチプレクサ111aによって選択されたアナログ信号をデジタル変換することができるとともに、上記信号処理待ち期間(48μsec)内に、他のA/D変換部111dが、他のマルチプレクサ111aによって選択されたアナログ信号をデジタル変換することができる。したがって、A/D変換部111dから出力される信号が安定するとともに、効率的に信号を処理することができる。
【0118】
また、本実施形態では、情報処理端末3aを、複数のA/D変換部111dによるA/D変換処理の期間が互いに重複していないデジタル信号に基づいて、分析物の特性を解析させることによって、A/D変換部111dの動作を効率化することができる。すなわち、本実施形態のようにロガー用メモリ112hが1つしかないような場合には、複数のA/D変換部111dが重複してデジタル信号を出力しても、ロガー用メモリ112hはそれらを全て記憶することができないので、A/D変換部111dは、無駄な動作をしてしまうという不都合が生じる。本実施形態では、電気信号のA/D変換処理の期間が重複しないデジタル信号に基づいて解析を行うことにより、A/D変換部111dが無駄な動作を行うことがないので、A/D変換部111dの動作を効率化することができる。
【0119】
また、本実施形態では、複数のマルチプレクサ111aがアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるようにマルチプレクサ111aの動作を制御するマルチプレクサ制御部112dを設けるとともに、コントローラ112aに複数のA/D変換部111dがデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、A/D変換部インターフェイス112gを介してA/D変換部111dの動作を制御させることによって、ロガー用メモリ112hが1つしかない場合でも、複数のA/D変換部111dから出力されたデジタル信号を効率的にロガー用メモリ112hに記憶させることができる。
【0120】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0121】
たとえば、上記実施形態では、検出部および信号処理部から出力されるデータを制御部のロガー用メモリに一旦蓄積させた後、ロガー用メモリに蓄積されたデータから、PC本体が所定期間の部分時系列データを順次取得するように構成したが、本発明はこれに限らず、ロガー用メモリに一旦データを蓄積することなく、検出部または信号処理部からデータをPC本体に直接出力するように構成してもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、参照信号の微分信号に基づいて、信号の取得を開始するタイミング(nクロック)を算出するとともに、参照信号の微分信号が所定のしきい値に到達した時点から、算出したnクロック後に制御部によるデータの取得を開始するように構成したが、本発明はこれに限らず、予め設定したタイミングで制御部によるデータの取得を開始するようにしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、参照光に対応する参照信号の微分信号の立ち上がり時点からnクロック後に、制御部によるデータの取得を開始したが、本発明はこれに限らず、センサによりスリットが検出されたタイミングから所定の期間後に制御部によるデータの取得を開始してもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、凝固測定を行う分析装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限らず、凝固測定以外の複数の波長特性を有する光を用いる必要のある種々の測定に使用する分析装置(分析システム)に本発明を適用してもよい。たとえば、生化学分析装置(分析システム)などに本発明を適用してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、情報処理端末を分析装置の装置本体とは別に設けているが、本発明はこれに限らず、情報処理端末と分析装置の装置本体とを一体化してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、検体が増加した場合に対応可能なように、分析装置が拡張用分析装置による拡張が可能なように構成されているが、本発明はこれに限らず、分析装置が拡張用分析装置による拡張ができないように構成されていてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、複数の光電変換素子から出力された複数のアナログ信号から1つずつ選択して順次オフセット回路に出力するマルチプレクサを用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、複数の光電変換素子から出力される複数のアナログ信号から2つ以上のアナログ信号を同時に選択するアナログ信号選択器を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の一実施形態による分析装置および拡張用分析装置を含む分析システムの全体構成を示した平面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による分析装置および拡張用分析装置を含む分析システムを部分的に示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による分析装置に含まれるランプユニットの構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した一実施形態による分析装置に含まれるランプユニットの構成を示した概略図である。
【図5】図3に示した一実施形態による分析装置に含まれるランプユニットのフィルタ部を示した平面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による分析装置の第1光学的情報取得部の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図1に示した一実施形態による分析装置の第2光学的情報取得部の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】図7に示した一実施形態による第2光学的情報取得部の検出部の構成を示した概略図である。
【図9】本発明の一実施形態による分析装置の第2光学的情報取得部および制御基板の構成要素を説明するためのブロック図である。
【図10】本発明の一実施形態による分析装置の検出部および信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態による分析装置の制御基板のロガー用メモリの構成を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施形態による分析装置の制御基板の増幅回路および微分回路の回路構成を示した回路図である。
【図13】本発明の一実施形態のPC本体による制御方法の概略を示したフローチャートである。
【図14】図13のステップS1に示した初期設定において、PC本体により取得されるnクロックの制御部による算出処理の方法を示したフローチャートである。
【図15】図14に示したnクロックの算出処理方法において用いる参照光の光量および参照信号の微分信号の変化を示した波形図である。
【図16】図13のステップS3におけるPC本体による分析処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図17】本発明の一実施形態による分析装置の信号処理部における信号処理の方法を示した図である。
【図18】本発明の一実施形態による分析システムによって作成される凝固曲線を示したグラフである。
【図19】本発明の一実施形態の制御部によるデータ取得処理の方法を説明するためのフローチャートである。
【図20】本発明の一実施形態のPC本体によるデータ取得処理の方法を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の一実施形態の制御部によるフィルタ部の回転の監視処理において、原点スリットが検出される時間間隔を監視する場合の処理を示したフローチャートである。
【図22】回転するフィルタ部のスリットを検出するセンサから出力される信号およびセンサから出力される信号に基づいて生成される積分信号の波形を示した波形図である。
【図23】本発明の一実施形態の制御部によるフィルタ部の回転の監視処理において、隣接する2つのスリット(原点スリットまたは通常スリット)が検出される時間間隔を監視する場合の処理を示したフローチャートである。
【図24】本発明の一実施形態の制御部によるフィルタ部の回転の監視処理において、2つの原点スリットが検出される間に検出される通常スリットの数を監視する場合の処理を示したフローチャートである。
【図25】本発明の一実施形態による拡張用分析装置を含まない分析システムの全体構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0129】
1 分析システム
3a 情報処理端末(解析手段)
50 試薬分注アーム(試薬混合手段)
84a 光電変換素子(検出器)
84b 参照光用光電変換素子(検出器)
111a マルチプレクサ(アナログ信号選択部)
111d A/D変換部(信号変換部)
112a コントローラ(制御部)
112d マルチプレクサ制御部(制御部)
112h ロガー用メモリ(記憶手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の検出器と、
前記複数の検出器からそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択する複数のアナログ信号選択部と、
前記複数のアナログ信号選択部によってそれぞれ選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数の信号変換部と、
前記複数の信号変換部による変換後の複数のデジタル信号のうち少なくとも1つに基づいて、分析物の特性を解析する解析手段とを備える、分析装置。
【請求項2】
前記アナログ信号選択部がアナログ信号を選択してから所定期間経過後に前記信号変換部が選択された前記アナログ信号を変換したデジタル信号に基づいて、前記解析手段が分析物の特性を解析するように構成されており、
前記複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるように前記アナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記複数の信号変換部による信号変換の期間が互いに重複していないデジタル信号に基づいて、分析物の特性を解析する、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるように前記アナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記複数の信号変換部がデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、前記信号変換部の動作を制御する、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記複数の信号変換部によって変換されたデジタル信号を記憶する記憶手段をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記アナログ信号選択部は、マルチプレクサを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
分析物に試薬を混合する試薬混合部をさらに備え、
前記解析手段は、前記試薬混合部によって分析物に試薬が混合された後の所定の時刻から、前記分析物が所定の状態に変化するまでの時間を解析する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項1】
検出結果に応じたアナログ信号を出力する複数の検出器と、
前記複数の検出器からそれぞれ出力される複数のアナログ信号のうち一部のアナログ信号を選択する複数のアナログ信号選択部と、
前記複数のアナログ信号選択部によってそれぞれ選択されたアナログ信号を個別にデジタル信号に変換する複数の信号変換部と、
前記複数の信号変換部による変換後の複数のデジタル信号のうち少なくとも1つに基づいて、分析物の特性を解析する解析手段とを備える、分析装置。
【請求項2】
前記アナログ信号選択部がアナログ信号を選択してから所定期間経過後に前記信号変換部が選択された前記アナログ信号を変換したデジタル信号に基づいて、前記解析手段が分析物の特性を解析するように構成されており、
前記複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるように前記アナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記複数の信号変換部による信号変換の期間が互いに重複していないデジタル信号に基づいて、分析物の特性を解析する、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記複数のアナログ信号選択部がアナログ信号を選択する時刻をそれぞれ異ならせるように前記アナログ信号選択部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記複数の信号変換部がデジタル信号を出力する期間が互いに重複しないように、前記信号変換部の動作を制御する、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記複数の信号変換部によって変換されたデジタル信号を記憶する記憶手段をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記アナログ信号選択部は、マルチプレクサを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
分析物に試薬を混合する試薬混合部をさらに備え、
前記解析手段は、前記試薬混合部によって分析物に試薬が混合された後の所定の時刻から、前記分析物が所定の状態に変化するまでの時間を解析する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2007−10560(P2007−10560A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193903(P2005−193903)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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