説明

分析装置

【課題】分析処理の処理能力および分析処理の精度を低下させることなく、反応容器に分注する検体量の低減を可能とする分析装置を提供すること。
【解決手段】反応容器7内における液体試料を透過した光の光量をもとに液体試料を分析する分析装置において、複数の液体試料を収容する反応容器7の移動および停止を行う容器ホルダー62と、光を発する光源112と光源112から発せられ液体試料を透過した光を受光するフォトダイオードアレイ117とを固定配置し、容器ホルダー62とは別に独立して各反応容器7の位置に沿った移動および停止を行う測光部ステージ111と、容器ホルダー62の移動および停止に対応して測光部ステージ111の移動制御を行い、複数の液体試料を透過した光量を測定する制御部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を発光する発光手段と発光手段から発光され試料を透過した光を受光する受光手段とを有し、受光手段による受光量をもとに試料を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や尿等の液体に対して自動的かつ連続的に各種化学分析を行う分析装置が提案されている(特許文献1参照)。このような分析装置においては、回転テーブル上に複数の反応容器を環状に配置し、回転テーブルの回転によって反応容器を回転させることによって、回転テーブルに沿って配置された検体分注装置、試薬分注装置、攪拌装置、測定装置および洗浄装置のそれぞれに搬送する。ここで、検体分注装置による反応容器への検体分注処理、試薬分注装置による反応容器への試薬分注処理、攪拌装置による反応容器内の液体の攪拌処理および反応容器の洗浄処理は、回転テーブルの回転によって反応容器が処理対象となる各装置に搬送された後、回転テーブルの回転の停止によって反応容器が静止した状態で行われる。一方、測定装置による反応容器内の検体に対する測定処理は、検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理および洗浄処理の各処理が終了し、次の処理を行う装置に搬送される間に行われる。測定装置は光を発光する発光部と光を受光する受光部とを備え、発光部は、通過する反応容器に対して光を発し、受光部は、通過する反応容器内を透過した光を受光する。分析装置は、この受光量をもとに反応容器内の検体における所定物質の濃度分析などの化学分析処理を行う。
【0003】
【特許文献1】特開平5−164763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の分析装置においては、反応容器に対する検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理および洗浄処理は、たとえば反応容器が約4秒間静止する間に行われる。一方、測定処理は、反応容器の移動時間である約1秒の間に、測定部を通過するすべての反応装置に対して行われる。ここで、人体への負担軽減などのため、人体から摂取する検体量の低減が求められており、少量の検体量であっても高い精度の分析処理を行うことができる分析装置が求められている。しかしながら、従来の分析装置においては、反応容器に分注する検体量を減らし反応容器幅を狭くした場合、測定部を通過する通過時間が減少する。この結果、従来の分析装置においては、測定部を通過する通過時間の減少に伴って測定時間も減少するため、精度の高い分析処理を実現することができないという問題があった。また、従来の分析装置においては、分析装置における高精度化を実現するために測定部を通過する通過速度を遅くし測定部の測定時間を長くした場合、反応容器の移動速度が低下し、分析処理の処理能力を高く維持することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、分析処理の処理能力および分析処理の処理精度を低下させることなく、反応容器に分注する検体量の低減を可能とする分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明は、試料を保持した容器を透過した光の光量をもとに前記試料を分析する分析装置において、複数の前記容器を収納するとともに該容器の移動および停止を行う容器移動機構と、発光手段と該発光手段から発せられ前記容器を透過した光を受光する受光手段とを固定配置し、前記容器移動機構とは独立した移動および停止を可能とする前記発光手段と前記受光手段の光学測定移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記光学測定移動機構が、前記容器移動機構の停止時に移動され、前記容器移動機構に収納された各容器に対して相対的に移動されつつ、各容器を透過した光の光量を測定することを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記発光手段から発せられた光を前記容器中の所定位置に集光する第1の集光手段と、前記容器を透過した光を前記受光手段に対して集光する第2の集光手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を前記光学測定移動機構に備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を前記容器移動機構に備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を前記容器に備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記発光手段と前記第1の集光手段との間であって該第1の集光手段の焦点位置に絞りを設けたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記発光手段と該発光手段に対応する前記受光手段とを有した光学対を複数配置したことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、記光学対の前記発光手段は、それぞれ異なる波長帯の光を発光することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記第1の集光手段および前記第2の集光手段は、偏心光学系を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる分析装置によれば、複数の前記試料を収容する容器の移動および停止を行う容器移動機構と、前記光を発する発光手段と該発光手段から発せられ前記試料を透過した光を受光する受光手段とを固定配置し、前記容器移動機構とは独立した移動および停止を可能とする光学測定移動機構とを設け、測光処理にかかる時間的制限を緩和しているので、分析処理の処理能力および分析処理の処理精度を低下させることなく、反応容器に分注する検体量の低減が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明にかかる分析装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係は、現実のものとは異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる分析装置について説明する。実施の形態1にかかる分析装置は、反応容器が静止している間に、発光部と受光部とが一体となって各反応容器に対して相対移動を行って測定を行うものである。
【0019】
図1は、実施の形態1にかかる分析装置の概略構成図である。実施の形態1にかかる分析装置1は、図1に示すように、検体テーブル3、検体分注機構5、反応テーブル6、攪拌部8、測光部10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13および読取装置15が設けられた作業テーブル2と、制御部16と、分析部17と、入力部18と、表示部19とを備える。分析装置1は、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応テーブル6及び試薬テーブル13が互いに離間してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられている。また、分析装置1は、検体テーブル3と反応テーブル6との間に検体分注機構5が設けられ、反応テーブル6と試薬テーブル13との間には試薬分注機構12が設けられている。また、制御部16は、分析装置1の各構成部位を制御する。
【0020】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられており、各収納室3aには、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。検体分注機構5は、検体を後述する反応容器7に分注する手段であり、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0021】
反応テーブル6は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室が複数設けられている。各収納室には、検体を試薬と反応させる反応容器7が着脱自在に収納される。また、反応テーブル6には、攪拌部8、測光部10および洗浄装置11が設けられている。攪拌部8は、反応容器7に分注された検体と試薬とを攪拌する。
【0022】
測光部10は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射し、反応容器7内の液体試料を透過した光を受光し、受光量を制御部16に出力する。
【0023】
洗浄装置11は、図示しない排出ノズルを備えており、反応容器7から反応終了後の液体試料を排出ノズルによって吸引し、排出容器(図示せず)に排出する。そして、洗浄装置11は、液体試料が排出された反応容器7を洗浄し、再度、新たな検体の分析に使用可能とする。
【0024】
試薬テーブル13の外周には、試薬容器14に貼付したバーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。
【0025】
制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応テーブル6、攪拌部8、測光部10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19の各処理または動作を制御する。制御部16は、測光部10、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。制御部16は、後述する測光部10の光源112に対する発光処理、フォトダイオードアレイ117における受光処理、光源112およびフォトダイオードアレイ117を反応容器7に対して相対移動させる測光部テーブル118の移動処理を制御する。
【0026】
以上のように構成される分析装置1は、回転する反応テーブル6によって周方向に沿って搬送されてくる反応容器7内に、検体分注機構5が検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次分注する。検体が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって試薬分注機構12の近傍へ搬送されて所定の試薬容器14から試薬が分注される。そして、試薬が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって攪拌部8に搬送され、攪拌部8の攪拌処理によって試薬と検体とが攪拌されて反応する。そして、試薬と検体とが攪拌された反応容器7は、反応テーブル6によって測光部10に搬送され、測光部10によって受光量が測定される。この受光量をもとに、分析部17において検体の成分や濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置11によって反応終了後の液体試料の排出および洗浄が行われた後、再度検体の分析に使用される。検体分注機構5による反応容器7に対する検体分注処理、試薬分注機構12による試薬分注処理、攪拌部8による攪拌処理、洗浄装置11による洗浄処理は、反応テーブル6の移動を停止し、反応容器7を静止させた状態で行われる。
【0027】
さらに、本実施の形態1にかかる分析装置1においては、検体分注機構5による検体分注処理、試薬分注機構12による試薬分注処理、攪拌部8による攪拌処理、洗浄装置11による洗浄処理が行われる反応容器7の静止時に、測光部10による測定処理を行っている。この測光部10は、反応容器7の配列に沿って移動可能であり、この移動は、反応テーブル6の回転移動とは別個独立に制御される。
【0028】
具体的には、図2に示したタイムチャートのように、反応テーブル6が1/4(90度)回転毎に停止する移動処理を行う場合、制御部16は、反応テーブル6を4秒間停止させ、この4秒間の反応容器7の静止時に、検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理、および洗浄処理を行わせるとともに、測光部10を1/4逆回転させつつ反応テーブル6上に配列された反応容器7のうちの1/4分の反応容器に対する測光処理を行う。その後、制御部16は、1秒間で反応テーブル6を1/4回転させて移動させるとともに、測光部10を1/4逆回転させて初期位置に移動させる。その後、上述したように制御部16は、4秒間の反応容器の静止時に、検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理、および洗浄処理を行わせるとともに、測光部10を反応テーブル6に対して相対的に1/4逆回転させつつ静止した各反応容器内の試薬に対する測光処理を行い、さらに反応テーブル6および測光部10をそれぞれ1/4回転させる処理を繰り返す。なお、測光部10の回転方向は、図2に示した回転の逆方向であってもよい。すなわち、測光部10を、反応テーブル6が静止時に反応テーブル6の回転方向と同じ方向に1/4正回転し、反応テーブル6が1/4回転時に反応テーブル6の回転方向とは逆方向に1/4逆回転させるようにしてもよい。また、測光部10が、検体分注機構5、試薬分注機構12、攪拌部8、および洗浄装置11の各処理に干渉しないように全周回転移動が可能である場合であって、反応テーブル6も1回転毎に停止する場合には、反応テーブル6の停止時に測光部10を1回転させつつ全反応容器7に対する測光処理を行ってもよい。要は、反応テーブル6の回転移動量に合わせて反応テーブル6の停止時に、測光部10を、反応テーブル6に対して反応テーブルの回転移動量分、相対移動させつつ測光処理を行うようにすればよい。もちろん、反応テーブル6の回転移動時を含めて測光処理を行うようにしてもよい。
【0029】
つぎに、図1に示した測光部10について詳細に説明する。図3は、図1に示す測光部10の構成および測光部10を通過する反応テーブル6の一部構成を模式的に示した平面図である。図3においては、説明の容易化のため、測光部10内部に備わる構成部位を実線で示している。また、図4は、図3に示した測光部10のX−X線断面図である。
【0030】
図3および図4に示すように、反応テーブル6は容器ホルダー62を環状に形成し、各容器ホルダー62は、反応容器7を着脱自在に等間隔で収納可能であり、各反応容器7は、この容器ホルダー62内に収納される。また、図4に示すように、容器ホルダー62の底部には、反応容器7内の液体試料を一定温度に保持するための恒温液65が保持されており、反応容器7内の液体試料の温度変化を防止している。なお、容器ホルダー62には後述する光源112から発せられた光の通過経路に対応させて光が透過する領域が設けられており、反応容器7への光の入射および反応容器7を透過した光の出射が可能となっている。
【0031】
測光部10は、反応テーブル6と同心円で反応テーブル6とは別個独立して回動する測定部テーブル118と、測定テーブル118上に固定配置された測定部ステージ111とを有し、測定部ステージ111上に、光源112、レンズ113,114、スリット115、凹面グレーティング116、およびフォトダイオードアレイ117を有した測定光学系が固定配置される。ここで、レンズ113,114間には、容器ホルダー62が通過する空間が形成される。
【0032】
光源112は、340〜800nmの波長域を有する光を発する。レンズ113は、光源112から発せられた光を反応容器7内における液体試料に対して集光する。レンズ114、スリット115、凹面グレーティング116は、反応容器7内における液体試料を透過した光をフォトダイオードアレイ117に対して集光する。レンズ114は、反応容器7内における試料を透過した光を集光し、スリット115に入射する。スリット115は、レンズ114から入射された光を絞り、凹面グレーティング116に入射する。凹面グレーティング116は、入射光を分光し、所定波長域の光をフォトダイオードアレイ117上に反射出力する。フォトダイオードアレイ117は、凹面グレーティング116から反射された所定波長域の光を配列された各フォトダイオードによって受光し、この所定波長域内の複数の所望波長光の受光量を測定し、測定結果を制御部16に出力する。
【0033】
上述したように、容器ホルダー62を配置した反応テーブル6と測光部ステージ111を配置した測光部テーブル118とは、それぞれ別個独立した移動が可能であり、反応テーブル6が停止している間に、測光部テーブル118が回転し測定光学系によって静止した各反応容器7内の試料に対する測光処理を行う。なお、上述した実施の形態1では、測光部テーブル118が回転可能であったが、これに限らず、測定部テーブル118が固定され、測定部ステージ111が測定テーブル118に対して独立して移動できるようにしてもよい。この場合、測定部テーブル118上に測定部ステージ111の移動用のガイドを設けるとよい。あるいは、測定部テーブル118と反応テーブル6とを一体とした構成としてもよい。要は、測定部ステージ111が、反応テーブル6の各反応容器に対して独立した相対移動を行うものであればよい。
【0034】
これに対し、本実施の形態1にかかる分析装置1では、制御部16、測光部ステージ111および測光部テーブル118は、反応容器7が静止している間に、反応容器7内における試料の位置に沿って光源112、レンズ113,114、スリット115、凹面グレーティング116、フォトダイオードアレイ117を一体として相対移動させて各試料の測光処理を行うようにしている。この結果、分析装置1は、従来の分析装置と比較し、測光部10による反応容器7内の液体試料に対する測光処理を、検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理および洗浄処理の各処理が終了し、次の処理を行う装置に各反応容器7が搬送される短時間の間に行う必要がない。
【0035】
分析装置1は、たとえば約4秒間静止する間に行われる検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理および洗浄処理の間に、測光部10による測光処理も行うことができ、反応容器の移動時間である約1秒間の間に測光処理を行っていた従来の分析装置と比較し、約4倍程度の時間を測光処理時間として確保することができる。このため、分析装置1は、従来と同様の測光時間を確保した場合であっても、反応容器幅を約1/4まで狭くすることができる。したがって、分析装置1は、反応容器に分注する検体量の低減を可能にすることができる。また、分析装置1は、十分な測光時間を確保することもできるため、分析装置の精度を維持することも可能となる。さらに、分析装置1は、反応容器7が静止している間に測定処理を行うため、反応容器の移動速度を変更する必要がなく、分析処理の処理能力を維持することもできる。
【0036】
なお、本実施の形態1にかかる分析装置1は、図5に示すように、レンズ113に代えて軸外し放物面鏡である放物面鏡113a,113bおよびレンズ114に代えて軸外し放物面鏡である放物面鏡113c,113dを設けてもよい。軸外し放物面鏡とは、回転放物面の一部を形成する凹面鏡である。分析装置1は、第1の集光手段および第2の集光手段に軸外し放物面鏡を2枚使用した偏心光学系を用いることによって、色収差の影響を抑制した精度の高い測定結果を得ることができる。また、分析装置1は、軸外し放物面鏡を使用することによって、球面収差もほとんどなくなるため、非常に小さな光束系を反応容器7に入射することができる。この結果、分析装置1においては、反応容器7の幅をさらに狭くすることができ、検体量をさらに減らすことができる。
【0037】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。この実施の形態2では、複数の所定波長に対する測定を簡易な構成で行うようにしている。図6は、実施の形態2にかかる分析装置の概略構成図である。実施の形態2にかかる分析装置201は、図6に示すように、図1に示す測光部10に代えて測光部210を備えた作業テーブル202と、図1に示す制御部16に代えて制御部216を有する。制御部216は、制御部16と同様の機能を有する。
【0038】
図7に示すように、測光部210を構成する測光ステージ211上には、それぞれ隣接配置された反応容器7a〜7dの位置にそれぞれ対応して、LED212a〜212d、レンズ213a〜213d,214a〜214d、フォトダイオード217a〜217dとからなる複数の測光ユニット220a〜220dが固定配置される。
【0039】
測光ユニット220a〜220dは、それぞれLED212a〜212dから所定の波長λa〜λdの光を発し、レンズ213a〜213dが、LED212a〜212dから発せられた光を反応容器7a〜7d内における各液体試料に対して集光する。レンズ214a〜214dは、反応容器7a〜7d内における各液体試料を透過した光をフォトダイオード217a〜217dに対して集光し、フォトダイオード217a〜217dは、それぞれレンズ214a〜214dが集光した波長λa〜λdの光を受光し、この波長λa〜λdの光の受光量を制御部216に出力する。ここで、フォトダイオード217a〜217dは、それぞれ少なくとも波長λa〜λdの光を受光する機能があれば足りる。
【0040】
ここで、反応容器7a〜7dからみると、各反応容器7a〜7d内に液体試料には、測光ユニット220a〜220dの相対的な移動によって波長λa〜λdの順、あるいは波長λd〜λaの順に光が入射されパイプライン的に測光されることになる。
【0041】
この実施の形態2では、測光ユニット220a〜220dが複数配置されるものの、各測定ユニット220a〜220dは、スリット115や凹面グレーティング116が不要になるとともに、1つのフォトダイオード217a〜217dのみでよいので、簡易な構成で、複数の波長λa〜λdの光に対する測光処理を行うことができる。
【0042】
また、分析装置201は、発熱が少ないLED212a〜212dを光源として使用するため、反応容器7内の液体試料温度に対する影響が少なく、LED212と反応容器7との距離を短くすることができる。このため、分析装置201では、レンズ213a〜213dのレンズ径を小さくすることができ、測光部210の小型化を図ることができる。また、LED212、レンズ213,214、フォトダイオード214は、小型および軽量であるため、測光テーブル118による移動処理の容易化を図ることができる。
【0043】
なお、実施の形態2においては、LED212a〜213dとレンズ213a〜213dとの距離およびレンズ214a〜214dとフォトダイオード217a〜217dとの距離をLED212a〜213dが発する光の波長に対応させたものとすることによって、色収差の補正を行うことができ、さらに精度の高い分析処理を可能にする。
【0044】
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3について説明する。この実施の形態3では、LEDから発光された光を集光するレンズと反応容器内の液体試料を透過した光を集光するレンズとを容器ホルダー側に設けるようにしている。図8は、実施の形態3にかかる分析装置の概略構成図である。実施の形態3にかかる分析装置301は、図8に示すように、図1に示す測光部10に代えて測光部310を備えるとともに図1に示す反応テーブル6に代えて反応テーブル360を備えた作業テーブル302と、図1に示す制御部16に代えて制御部316を有する。制御部316は、制御部16と同様の機能を有する。
【0045】
測光部310は、図9および図10に示すように、それぞれ対応するLED212a〜212d、絞り319a〜319d、フォトダイオード217a〜217dを一体として備えた複数の測光ユニット320a〜320dを有する測光部ステージ311を備える。測光部ステージ311は、図2および図3に示した測光部ステージ111と同様に、容器ホルダー362を半径方向で挟む構造であり、容器ホルダー362とは別個独立して移動することができる。なお、絞り319a〜319dは、レンズ363の前側焦点位置に配置され、LED212a〜212dに位置ずれがあっても反応容器7内における主光線が常に平行となるテレセントリック光学系を形成し、試料通過の光路長が等しくなるようにし、測光精度を高めている。
【0046】
この実施の形態3にかかる分析装置301は、反応容器に対する検体分注処理、試薬分注処理、攪拌処理および洗浄処理を行う反応容器7の静止時に、測光ユニット320の反応容器7に対する相対的な移動処理とこの移動に伴った測光処理とを行うようにしているので、実施の形態1と同様の効果を奏する。特に、この実施の形態3では、測光部ステージ311に搭載される光学系が少なくなるため測光部310の構成が簡易となり、測光部ステージ311の移動処理にかかる負担を軽減することができる。さらに、テレセントリック光学系を形成するように絞り319a〜319dを設けているので、精度の高い測光処理を行うことができる。
【0047】
ここで、図11および図12に示すように、絞り319a〜319dを容器ホルダー362側に設けるようにしてもよい。この場合、測光部ステージ311の移動に伴ってLED212a〜212dおよびフォトダイオード217a〜217dが移動するが、容器ホルダー362側の絞り319a〜319dによってテレセントリック光学系が形成されているため、図13に示すように、反応容器7内の試料を通過する主光線la,lbは平行移動して常に平行となり、試料内を通過する光路長は等しくなる。この結果、光路長の変化に起因する受光量のばらつきの影響を受けることがなく、精度の高い受光量を取得し、精度の高い分析処理を行うことができる。
【0048】
また、この場合、測光部ステージ311は、LED212a〜212dおよびフォトダイオード217a〜217dのみを移動させればよいため、さらに、測光部ステージ311の移動処理の負担を軽減することができる。
【0049】
また、図14および図15に示すように、レンズ363,364を反応容器367内に設けるようにしてもよい。この場合、図9および図10に示す場合と同様に、測光部ステージ311の移動に伴ってLED212a〜212d、フォトダイオード217a〜217dおよび絞り319a〜319dが移動する。また、絞り319a〜319dは、レンズ363の前側焦点位置に配置され、テレセントリック光学系を形成するため、精度の高い分析処理を行うことができる。また、測光部ステージ311は、LED212a〜212d、フォトダイオード217a〜217dおよび絞り319a〜319dのみを移動させればよいため、測光部ステージ311の移動処理の負担を軽減することができる。なお、この場合、反応容器内にレンズ363,364が設けられているため、レンズが設けられていない容器ホルダー62を用いればよい。
【0050】
なお、実施の形態1〜3においては、図中において、レンズ113,114,213a〜213d,214a〜214d,363,364を、凸面レンズとして記載したが、これに限らず、非球面レンズとしてもよい。この場合、球面収差の影響を軽減できるため、非常に小さな光束系を反応容器7に入射することができる。この結果、分析装置1,201,301においては、反応容器7の幅をさらに狭くすることができ、検体量をさらに減少することが可能になる。
【0051】
また、本実施の形態2,3においては、それぞれ対応するLED、レンズ、フォトダイオードを有する測光ユニットを4組備えた場合について説明したが、もちろん4組に限るものではない。本実施の形態2,3においては、それぞれ対応するLED、レンズ、フォトダイオードを有する測光ユニットを単数備え、一種類の所定波長の光に対する測定を行ってもよい。また、LED212a〜212dがそれぞれ異なる波長の光を発光する場合について説明したが、これに限らず、同じ波長の光を発光し、受光量の時間依存性の取得や測定不備を補うための予備測定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態1にかかる分析装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した制御部による反応テーブルおよび測光部の移動制御処理の一例を示すタイムチャートである。
【図3】図1に示した測光部および反応テーブルにおける測光部内の通過部分の構成を模式的に示した平面図である。
【図4】図2におけるX−X線断面図である。
【図5】実施の形態1の変形例である測光部および反応テーブルにおける測光部10内の通過部分の構成を模式的に示した平面図である。
【図6】実施の形態2にかかる分析装置の概略構成図である。
【図7】図6に示した測光部および反応テーブルにおける測光部内の通過部分の構成を模式的に示した平面図である。
【図8】実施の形態3にかかる分析装置の概略構成図である。
【図9】図8に示した測光部および反応テーブルにおける測光部内の通過部分の構成を模式的に示した平面図である。
【図10】図9におけるY−Y線断面図である。
【図11】実施の形態3の変形例である測光部および反応テーブルの一部構成を示す平面図である。
【図12】図11におけるY−Y線断面図である。
【図13】実施の形態3の変形例である測光部のLEDの移動に伴う光軸変化を示す図である。
【図14】実施の形態3の変形例である測光部および反応テーブルの一部構成を示す平面図である。
【図15】図14におけるY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1,201,301 分析装置
2,202,302 作業テーブル
3 検体テーブル
3a 収納室
4 検体容器
5 検体分注機構
6、360 反応テーブル
7,7a〜7e,367 反応容器
8 攪拌部
10,210,310 測光部
11 洗浄装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
13a 収納室
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
62,362 容器ホルダー
65 恒温液
111,211,311 測光部ステージ
112 光源
113,114,213a〜213d,214a〜214d,363,364 レンズ
113a,113b,114a,114b 放物面鏡
115 スリット
116 凹面グレーティング
117 フォトダイオードアレイ
118 測光部ステージ
212a〜212d LED
217a〜217d フォトダイオード
220a〜220d,320a〜320d 測光ユニット
319a〜319d 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持した容器を透過した光の光量をもとに前記試料を分析する分析装置において、
複数の前記容器を収納するとともに該容器の移動および停止を行う容器移動機構と、
発光手段と該発光手段から発せられ前記容器を透過した光を受光する受光手段とを固定配置し、前記容器移動機構とは独立した移動および停止を可能とする前記発光手段および前記受光手段の光学測定移動機構と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記光学測定移動機構が、前記容器移動機構の停止時に移動され、前記容器移動機構に収納された各容器に対して相対的に移動されつつ、各容器を透過した光の光量を測定することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記発光手段から発せられた光を前記容器中の所定位置に集光する第1の集光手段と、
前記容器を透過した光を前記受光手段に対して集光する第2の集光手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を前記光学測定移動機構に備えたことを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を前記容器移動機構に備えたことを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第1の集光手段および前記第2の集光手段を前記容器に備えたことを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項7】
前記発光手段と前記第1の集光手段との間であって該第1の集光手段の焦点位置に絞りを設けたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項8】
前記発光手段と該発光手段に対応する前記受光手段とを有した光学対を複数配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項9】
記光学対の前記発光手段は、それぞれ異なる波長帯の光を発光することを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記第1の集光手段および前記第2の集光手段は、偏心光学系を有することを特徴とする請求項3〜9のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−225339(P2007−225339A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44388(P2006−44388)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】