説明

分析装置

【課題】恒温液による測光への影響がなく、反応容器が保持した液体の温度安定性に優れた分析装置を提供すること。
【解決手段】複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して反応液を分析する分析装置1。複数の反応容器7を周方向に沿って保持すると共に、半径方向に光が通過する測光部が形成された複数のホルダ6aと、測光部を除く位置に周方向に形成されると共に、半径方向の幅と高さが前記ホルダに保持される前記反応容器の幅よりも大きく形成され、伝導する熱によって反応容器に保持された液体を保温する恒温液が封入状態で流れる流路とを有するキュベットホイール6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬と検体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して反応液を分析する分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、反応容器が保持した試薬と検体を所定温度の下で反応させる必要から恒温槽を備えており、反応容器の一部を恒温液に接触させるウェットバスタイプと反応容器が恒温液に接触しない非ウェットバスタイプの恒温槽がある。この場合、非ウェットバスタイプの恒温槽は、反応容器を囲む恒温液を通して測光を行うウェットバスタイプの恒温槽に比べ、恒温液の汚染や気泡による測光への影響がなく、恒温液の交換や定期的な清掃が不要な点で利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−186129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の恒温槽は、外部の恒温液供給装置から恒温化検液ホルダにリング状に形成した恒温液流路に恒温液を供給しており、恒温液流路は、反応容器の半径方向の幅よりも高さ及び半径の幅が小さい。このため、特許文献1の恒温槽は、恒温液流路を流れる恒温液の温度が低下し易く、温度が低下しても、外部の恒温液供給装置に戻らない限り恒温液の温度を加温することができず、恒温液、従って反応容器が保持した液体の温度安定性に欠けるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、恒温液による測光への影響がなく、反応容器が保持した液体の温度安定性に優れた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、複数の反応容器を周方向に沿って保持すると共に、半径方向に光が通過する測光部が形成された複数のホルダと、前記測光部を除く位置に周方向に形成されると共に、半径方向の幅と高さが前記ホルダに保持される前記反応容器の幅よりも大きく形成され、伝導する熱によって前記反応容器に保持された液体を保温する恒温液が封入状態で流れる流路と、を有するキュベットホイールを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る分析装置は、上記の発明において、前記キュベットホイールは、回転の際の慣性によって前記流路に沿って前記恒温液を循環させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る分析装置は、上記の発明において、前記流路は、前記キュベットホイールが回転した際に、前記恒温液を強制的に循環させる複数の板羽根が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る分析装置は、上記の発明において、さらに、前記流路は、一端が外部と連通する管の他端が接続される空気室が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る分析装置は、上記の発明において、さらに、前記流路は、前記流路を挟んで前記ホルダと対向する位置に断熱材を介して設けられる液室に一端が接続された管の他端が接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る分析装置は、上記の発明において、前記キュベットホイールは、前記複数のホルダと前記流路の半径方向内周側と外周側及び前記流路の下部側にカバーが設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る分析装置は、上記の発明において、前記カバーは、内部の温度をモニタする温度センサが設けられ、外気を導入する吸気管が配管されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる分析装置は、複数の反応容器を周方向に沿って保持すると共に、半径方向に光が通過する測光部が形成された複数のホルダと、前記測光部を除く位置に周方向に形成されると共に、半径方向の幅と高さが前記ホルダに保持される前記反応容器の幅よりも大きく形成され、伝導する熱によって前記反応容器に保持された液体を保温する恒温液が封入状態で流れる流路とを有するキュベットホイールを備えたので、恒温液による測光への影響がなく、反応容器が保持した液体の温度安定性に優れているという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の分析装置の実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置のキュベットホイールを拡大した平面図である。図3は、図2に示すキュベットホイールを直径上で切断した断面図である。図4は、図1の自動分析装置で使用する反応容器の斜視図である。
【0015】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13及び攪拌装置20が設けられている。
【0016】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0017】
検体分注機構5は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0018】
キュベットホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって、図1及び図2に矢印で示す方向に回転され、外周には試薬や検体等を含む液体L(図3参照)を保持した反応容器7を個々に保持する複数のホルダ6aが周方向に沿って等間隔で設けられている。キュベットホイール6は、図3に示すように、各ホルダ6aの半径方向両側に測定光が通過する開口からなる測光部6bが形成されている。キュベットホイール6は、図3に示すように、複数のホルダ6a下方の測光部6bを除く位置に恒温液LTが封入され、恒温槽となる流路6cが周方向に形成されている。流路6cは、半径方向の幅と高さがホルダ6aに保持される反応容器7の半径方向の幅よりも大きく形成されている。また、恒温液LTは、水又は水に近い熱容量を有する液体(例えば、エチレングリコール溶液等)を使用する。
【0019】
キュベットホイール6は、流路6c下部の底壁にシート状のヒータ6dが設けられると共に、半径方向内側の壁には恒温液LTの温度を検出するサーミスタ等の温度センサ6eが設置されている。ヒータ6dは、周方向に沿って適宜間隔で設けるが、全周に亘って設けてもよい。また、キュベットホイール6は、天板6fとホルダ6a及び流路6cを形成する側壁によって囲まれる内部に、温度制御基板8が配置されている。温度制御基板8は、制御部16を介して入力部18と接続され、入力部18から恒温液LTの制御温度が入力される。温度制御基板8は、温度センサ6eから流路6c内の恒温液LTの温度情報が入力され、この温度情報に基づいて恒温液LTの温度が入力された所定の制御温度となるようにヒータ6dの加熱動作を制御する。
【0020】
キュベットホイール6は、回転の際の慣性によって流路6cに沿って恒温液LTを循環させる。このとき、キュベットホイール6は、温度制御基板8によって作動が制御されるヒータ6dにより流路6c内の恒温液LTの温度が予め設定した温度に制御され、恒温液LTから伝導する熱によって反応容器7に保持された液体を所定温度に保温している。そして、キュベットホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向にホルダ6aの1個分回転する。キュベットホイール6の外周近傍には、測光装置10、洗浄装置11及び攪拌装置20が配置されている。
【0021】
反応容器7は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、測光装置10の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器7は、図4に示すように、側壁7a,7bと底壁7cとによって試薬や検体等を含む液体L(図3参照)を保持する液体保持部7dが形成され、液体保持部7dの上部に開口7eを有する四角筒形状のキュベットである。反応容器7は、液体保持部7dの内面に検体や試薬等の液体Lに対する親和性処理が施されている。反応容器7は、側壁7aをキュベットホイール6の周方向に向けると共に、側壁7bをキュベットホイール6の半径方向に向けて、ホルダ6aに配置される。ここで、反応容器7は、側壁7bの下部が測光装置10の光源が出射した光束BLが透過する測光領域Amとして利用される。
【0022】
測光装置10は、図1に示すように、キュベットホイール6の外周近傍に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置10は、前記光源と受光器がキュベットホイール6のホルダ6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0023】
洗浄装置11は、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置11は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0024】
試薬分注機構12は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0025】
試薬テーブル13は、検体テーブル3及びキュベットホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0026】
ここで、試薬テーブル13の外周には、図1に示すように、試薬容器14に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。
【0027】
制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19及び攪拌装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記バーコードラベルの記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する機能を備えている。
【0028】
分析部17は、制御部16を介して測光装置10に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容,分析結果或いは警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0029】
攪拌装置20は、反応容器7に保持された液体を攪拌する装置であり、攪拌棒によって直接液体を攪拌するものや音波によって非接触で液体を攪拌するものがある。
【0030】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構12が試薬容器14から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0031】
そして、検体が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって攪拌装置20へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液を保持した反応容器7は、キュベットホイール6が再び回転したときに測光装置10を通過し、光源から出射された分析光の光束BL(図4参照)が透過する。このとき、反応液を透過した光束BLは、受光部で側光され、制御部16によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置11によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。自動分析装置1は、このような一連の動作を制御部16の制御の下に自動で実行する。
【0032】
このとき、自動分析装置1は、ホルダ6a下方の測光部6bを除く位置に設けた流路6c内に恒温液LTが封入され、例えば、キュベットホイール6が、図5に示すように時計方向に回転すると、キュベットホイール6が回転する際の慣性によって水よりも熱容量の大きい恒温液LTが流路6c内を矢印で示す時計方向に流れて循環する。自動分析装置1は、このようにして流路6c内を循環する恒温液LTから伝導する熱によってキュベットホイール6が配置した複数の反応容器7に保持された液体を所定温度に保温している。
【0033】
この場合、自動分析装置1は、キュベットホイール6における流路6cの半径方向の幅と高さがホルダ6aに保持される反応容器7の半径方向の幅よりも大きく形成され、恒温液LTの体積、従って熱容量を大きくしている。このため、自動分析装置1は、キュベットホイール6の流路6c内を流れる恒温液LTの温度が低下し難い。また、自動分析装置1は、温度センサ6eによって流路6c内の恒温液LTの温度を検出し、温度制御基板8によってヒータ6dの加熱動作を制御することで、予め設定した制御温度となるように恒温液LTの温度を制御している。このため、自動分析装置1は、恒温液LTの温度を効率よく、迅速、かつ、適切に制御することができる。
【0034】
このように、自動分析装置1は、測光部6bに恒温液LTが存在しないため、恒温液LTによる測光への影響がなく、流路6cを流れる恒温液LTの熱容量が大きいことから、反応容器7が保持した液体の温度安定性に優れている。また、恒温液LTは、流路6c内に封入されているため、汚染等がないので交換の必要がない。更に、自動分析装置1は、キュベットホイール6が回転する際の慣性によって恒温液LTを流路6cに沿って循環させているので、恒温液LTを循環させるためのポンプや配管が不要で、恒温液LTを循環させる構造が非常に簡単で、かつ、安価である。
【0035】
ここで、キュベットホイール6は、図6に示すように、キュベットホイール6が回転した際に、恒温液LTを強制的に循環させる板羽根6gを流路6cに設けてもよい。キュベットホイール6は、このような板羽根6gを設けることにより、回転した際に恒温液LTをより一層迅速、かつ、効率良く流路6c内を循環させることができ、板羽根6gの数によって恒温液LTの流量を最適値に設定することができる。
【0036】
また、キュベットホイール6は、図7に示すように、複数のホルダ6aと流路6cの半径方向内周側と外周側及び流路6cの下部側を一体に覆うカバー9を設けてもよい。この場合、カバー9は、測光用の光束が通過する部分に開口を設けるか、透明体からなる窓を設ける。このようなカバー9をキュベットホイール6に設けると、自動分析装置1は、反応容器7が保持した液体を測光するうえで迷光の影響を与えることなく、周囲の温度の影響を受け難くすることができるので、反応容器7が保持した液体の温度安定性を更に高めることができる。ここで、図中、矢印は、測光装置10の光源が出射し、測光部6bを通過する光束BLを示している。
【0037】
更に、キュベットホイール6は、図8に示すように、温度センサ6eをホルダ6aと流路6cとの間の反応容器7に近接した壁に設けると共に、ヒータ6dを流路6c内に設けてもよい。この場合、温度センサ6eを反応容器7に近接した壁に設けると、反応容器7内の液温を目標値に近付けるのに有利である。また、ヒータ6dを流路6c内に設けると、恒温液LTのハンチングの少ない安定した温度制御が可能になるという利点がある。但し、ヒータ6dを流路6c内に設ける場合、ヒータ6dのサイズによっては流路6c内における恒温液LTの循環を妨げる場合がある。このため、ヒータ6dは、熱効率と恒温液LTの循環とを考慮して設置位置を決める。また、この場合、図示のように、キュベットホイール6にカバー9を設けると、自動分析装置1は、図7と同様に反応容器7が保持した液体の温度安定性を更に高めることができる。
【0038】
(実施の形態2)
次に、本発明の分析装置の実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の自動分析装置は、キュベットホイールが回転する際の慣性によって恒温液を流路に沿って循環させている。これに対し、実施の形態2の自動分析装置は、更に恒温液の体積膨張による内部圧力の上昇を緩和する空気室が流路に設けられている。
【0039】
図9は、実施の形態2にかかる自動分析装置の概略構成図である。図10は、図9に示す自動分析装置のC2−C2線に沿った断面図である。ここで、以下に説明する各実施の形態では、実施の形態1の自動分析装置と同一の構成部分には同一の符号を使用している。
【0040】
図9に示す実施の形態2の自動分析装置30は、恒温液の体積膨張による内部圧力の上昇を緩和する排気管31が流路6cに接続されている。即ち、自動分析装置30は、図10に示すように、空気室CAが流路6cに設けられ、一端が外部と連通する排出管31の他端が空気室CAに接続されている。
【0041】
このため、自動分析装置30は、実施の形態1の自動分析装置1で説明した効果に加え、ヒータ6dによって加熱された恒温液LTの体積膨張によって流路6c内部の圧力が上昇した場合、膨張した恒温液LTが空気室CA内の空気を排出管31から外部へ排出するので、流路6c内部の圧力上昇が抑えられる。この場合、恒温液LTの温度が下がって流路6c内部の圧力が低下した場合、排出管31を通って外部から空気が空気室CA内に導入される。但し、空気室CA内の空気は、恒温液LTが再度加熱された場合に、流路6c内の急激な圧力上昇を緩和すると共に、排出管31を通って外部へ排出される。
【0042】
また、自動分析装置30は、図11に示すように、キュベットホイール6の流路6cの下部に断熱材32を介して箱からなる液溜部33を設け、液溜部33に一端が接続された排出管34の他端を流路6cに接続してもよい。このように構成すると、自動分析装置30は、ヒータ6dによって加熱された恒温液LTの体積膨張によって流路6c内部の圧力が上昇した場合、膨張した恒温液LTが排出管34から液溜部33へと流出し、流路6c内部の圧力上昇が抑えられる。また、流路6cと液溜部33との間に断熱材32を配置することにより、ヒータ6dの熱エネルギーの液溜部33側への移動が抑えられ、液溜部33内の恒温液LTや空気の膨張が抑制されるので、液溜部33の内部圧力の上昇による流路6c内部の圧力上昇を回避することができる。
【0043】
この場合、液溜部33は、密封されているので、流路6cとの間で圧力が平衡状態に保持される。このため、恒温液LTの温度が下がって流路6c内部の圧力が低下した際は、液溜部33の空気の圧力により、液溜部33の恒温液LTは、排出管34を通って流路6cに戻るので、恒温液LTによる反応容器7が保持した液体の温度安定性には何ら影響はない。
【0044】
ここで、自動分析装置30のキュベットホイール6は、図12に示すように、複数のホルダ6aと流路6cの半径方向内周側と外周側及び流路6cの下部側を一体に覆う透明素材からなるカバー9を設けてもよい。このようなカバー9をキュベットホイール6に設けると、自動分析装置30は、反応容器7が保持した液体の測光へ影響を与えることなく、周囲の温度の影響を受け難くすることができるので、反応容器7が保持した液体の温度安定性を更に高めることができる。
【0045】
ここで、カバー9を設ける場合、自動分析装置30のキュベットホイール6は、図13に示すように、温度センサ6eをホルダ6aと流路6cとの間の壁に設けると共に、ヒータ6dを流路6c内に設けてもよい。このように、ヒータ6dを流路6c内に設けると、恒温液LTの加熱効率を向上させることができる。
【0046】
(実施の形態3)
次に、本発明の分析装置の実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態2の自動分析装置は、キュベットホイールの恒温液の流路に管が接続されている。これに対し、実施の形態3の自動分析装置は、キュベットホイールにカバーを設けると共に、カバー内に外気を導入するように構成されている。図14は、実施の形態3にかかる自動分析装置の概略構成図である。図15は、図14に示す自動分析装置のC3−C3線に沿った断面図である。
【0047】
図14に示す実施の形態3の自動分析装置40は、キュベットホイールにカバーが設けられている。即ち、自動分析装置40は、図15に示すように、複数のホルダ6aと流路6cの半径方向内周側と外周側及び液溜部33の下部側を一体に覆う透明素材からなるカバー9が設けられている。
【0048】
このとき、カバー9は、温度センサ6eと同じ温度センサ41が側壁9aの下部に設けられると共に、底壁9bには排気コネクタ42が設けられている。排気コネクタ42は、配管43を介してブロワ44と接続されている。ブロワ44は、カバー9内部の温度、従って、恒温液LTの温度が設定温度よりも高くなった場合に、自動分析装置40のハウジング40aに設けられ、外部の空気を吸引し、配管43を介して排気コネクタ42からカバー9内へ排気する。このため、ブロワ44は、温度センサ41から入力されるカバー9内部の温度情報に基づいて制御部16が作動を制御している。このため、自動分析装置40は、恒温液LTによる反応容器7が保持した液体の温度をよりきめ細かく制御して安定させることができる。
【0049】
このように、自動分析装置40は、キュベットホイール6にカバー9を設けると共に、カバー内に外気を導入するように構成されているので、自動分析装置1に関する効果に加え、恒温液LTによる反応容器7が保持した液体の温度をよりきめ細かく制御して安定させることができる。この場合、自動分析装置40は、キュベットホイール6を図12に示す構成としてもよい。
【0050】
(実施の形態4)
次に、本発明の分析装置の実施の形態4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態3の自動分析装置は、キュベットホイールにカバーを設けると共に、カバー内に外気を導入するように構成した。これに対し、実施の形態4の自動分析装置は、恒温液を循環させる手段としてキュベットホイールの恒温液の流路に磁性体からなる球体を配置すると共に、キュベットホイールの外部に磁石を配置している。図16は、実施の形態4にかかる自動分析装置の概略構成図である。図17は、図16に示すキュベットホイールを直径上で切断した断面図である。
【0051】
図16に示す実施の形態4の自動分析装置50は、恒温液を循環させる手段として磁性体からなる球体と磁石を使用している。即ち、自動分析装置50は、図17に示すように、キュベットホイール51の恒温液LTの流路51cに磁性体からなる球体52を転動自在に配置すると共に、キュベットホイール51外部の流路51cと対向する位置に磁石53を配置している。
【0052】
キュベットホイール51は、キュベットホイール6と同様に構成されるホルダ51aと測光部51bとを有しており、恒温液LTは流路51c外部の側壁に設けたシート状のヒータ51dによって加熱される。このとき、流路51cは、半径方向の幅と高さがホルダ51aに保持される反応容器7の半径方向の幅よりも大きく形成されている。また、ヒータ51dは、キュベットホイール51の底板51f近傍に設けた温度制御基板54によって加熱動作が制御される。なお、温度制御基板54は、実施の形態1で制御した温度制御基板8と同じ機能を有し、制御部16を介して入力部18と接続されている。また、キュベットホイール51は、底板51fの中央下部に外部から電力を供給するスリップリング51gが設けられている。
【0053】
自動分析装置50は、流路51cに磁性体からなる球体52を転動自在に配置すると共に、キュベットホイール51外部の流路51cと対向する位置に磁石53を配置している。このため、自動分析装置50は、キュベットホイール51が回転すると、磁石53の磁力に吸引された球体52が磁石53の位置に留まろうとするため、流路51c内の恒温液LTがキュベットホイール51の回転方向と逆方向に循環させられる。
【0054】
このように、自動分析装置50は、測光部51bに恒温液LTが存在しないため、恒温液LTによる測光への影響がない。また、自動分析装置50は、キュベットホイール51に形成した流路51cの半径方向の幅と高さがホルダ51aに保持される反応容器7の半径方向の幅よりも大きく形成され、恒温液LTの体積、従って熱容量を大きくしている。このため、自動分析装置50は、キュベットホイール51の流路51c内を流れる恒温液LTの温度が低下し難く、反応容器7が保持した液体の温度安定性に優れている。また、恒温液LTは、流路51c内に封入されているため、汚染等がないので交換の必要がない。更に、自動分析装置50は、キュベットホイール51が回転する際に球体52が磁石53に吸引される磁力によって恒温液LTを流路51c内に循環させる。このため、自動分析装置50は、恒温液LTを循環させるためのポンプや配管が不要で、恒温液LTを循環させる構造が非常に簡単で、かつ、安価である。
【0055】
但し、自動分析装置50は、流路51c内における恒温液LTの循環効率を高める必要がある場合には、図18に示すように、底板51f上にポンプ55を設けると共に、対向する流路51c間を配管56によって接続し、流路51c→配管56→ポンプ55→配管56→ヒータ57→配管56→流路51cとなる経路によって恒温液LTを循環させてもよい。
【0056】
なお、実施の形態1〜4の自動分析装置は、試薬テーブル13が1つの場合について説明したが、本発明の自動分析装置は、試薬テーブルが複数設けられ、2以上の試薬を使用するものであってもよい。また、本発明の自動分析装置は、図1に示す構造を1ユニットとして2以上のユニットを有する構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置のキュベットホイールを拡大した平面図である。
【図3】図2に示すキュベットホイールを直径上で切断した断面図である。
【図4】図1の自動分析装置で使用する反応容器の斜視図である。
【図5】図3に示すキュベットホイールのC1−C1線に沿った断面図である。
【図6】キュベットホイールの第1の変形例を示す図5に対応する断面図である。
【図7】キュベットホイールの第2の変形例を示す図3の右半側に対応する断面図である。
【図8】キュベットホイールの第3の変形例を示す図7に対応する断面図である。
【図9】実施の形態2にかかる自動分析装置の概略構成図である。
【図10】図9に示す自動分析装置のC2−C2線に沿った断面図である。
【図11】キュベットホイールの第1の変形例を示す図10に対応する断面図である。
【図12】キュベットホイールの第2の変形例を示す図10に対応する断面図である。
【図13】キュベットホイールの第3の変形例を示す図10に対応する断面図である。
【図14】実施の形態3にかかる自動分析装置の概略構成図である。
【図15】図14に示す自動分析装置のC3−C3線に沿った断面図である。
【図16】実施の形態4にかかる自動分析装置の概略構成図である。
【図17】図16に示すキュベットホイールを直径上で切断した断面図である。
【図18】キュベットホイールの変形例を示す図17に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 キュベットホイール
7 反応容器
8 温度制御基板
9 カバー
10 測光装置
11 洗浄装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 攪拌装置
30 自動分析装置
31 排出管
32 断熱材
33 液溜部
34 排出管
40 自動分析装置
41 温度センサ
42 排気コネクタ
43 配管
44 ブロワ
50 自動分析装置
51 キュベットホイール
52 球体
53 磁石
54 温度制御基板
55 ポンプ
56 配管
57 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、
複数の反応容器を周方向に沿って保持すると共に、半径方向に光が通過する測光部が形成された複数のホルダと、
前記測光部を除く位置に周方向に形成されると共に、半径方向の幅と高さが前記ホルダに保持される前記反応容器の幅よりも大きく形成され、伝導する熱によって前記反応容器に保持された液体を保温する恒温液が封入状態で流れる流路と、
を有するキュベットホイールを備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記キュベットホイールは、回転の際の慣性によって前記流路に沿って前記恒温液を循環させることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記流路は、前記キュベットホイールが回転した際に、前記恒温液を強制的に循環させる複数の板羽根が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
さらに、前記流路は、一端が外部と連通する管の他端が接続される空気室が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
さらに、前記流路は、前記流路を挟んで前記ホルダと対向する位置に断熱材を介して設けられる液室に一端が接続された管の他端が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記キュベットホイールは、前記複数のホルダと前記流路の半径方向内周側と外周側及び前記流路の下部側にカバーが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項7】
前記カバーは、内部の温度をモニタする温度センサが設けられ、外気を導入する吸気管が配管されていることを特徴とする請求項6に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−285760(P2007−285760A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110977(P2006−110977)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】