説明

分析装置

【課題】 本発明の目的はシステム立上げに必要な操作の容易化及びミス低減化を図ることのできる分析装置を提供することにある。
【解決手段】 分析装置本体12と、該分析装置本体12ないし付属品16の動作制御を行うための制御機構14とを備え、該付属品16はその構成内容を識別するための付属品情報を記憶している識別タグ24を含み、該分析装置本体12は試料室18に設けられた付属品16の識別タグ24に記憶されている付属品情報を読み取る読取手段26を含み、該制御機構14は該付属品16の構成内容に応じた専用システムの立上げに必要な専用プログラムを該付属品毎に記憶している専用プログラム記憶手段42を含み、始動時、付属品認識手段40により付属品構成内容が自動に識別され、該付属品構成内容に基づき専用プログラム起動手段44が該専用プログラムを自動に起動することを特徴とする分析装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析装置、特にそのシステム立上げ機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の光計測を行うため、例えば分光光度計等の分析装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、最近の分析機器、特に分光光度計においては、測定の対象となる試料の状態(固体、液体、気体)、形状、数、測定の手法(正透過、正反射、拡散反射、拡散透過、偏光度、時間変化、温度変化、定量、スペクトル評価等)に応じて適切な付属品を、本体に組み合わせて使用されることが一般的となっている。さらに得られた結果(測光値、スペクトル等)から最終的に必要な値を算出するようにした応用プログラムを組み込むことも一般化している。
このような多種多様の付属品等の存在により、分析目的の拡張性が向上する。
【0004】
例えば分光光度計では、使用開始に当たって、本体に付属品を組み込み、本体・付属品、制御用コンピュータの電源を投入し、コンピュータのオペレーティングシステムから必要な制御用プログラムを選んで呼び出す。さらに分光光度計では、これらのプログラムにおいて測定に必要なパラメータファイルを呼び出し、また必要に応じてこの中身を変更する。また分光光度計では、本体・付属品の調整や設定、あるいは必要に応じて、マスク、偏光子等の光学部品を取り付ける。さらに分光光度計では、適当なウォームアップの後、ベースラインやブランクを測定し、条件を整える。
分光光度計等の分析装置では、このようにして条件を整えてから、実試料の測定に入る必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−183294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分析装置では、実測定前セッティングのミスが測定結果の誤差になり得るので、システム立上げに伴う一連の操作のミス低減化が重要であり、またミス低減化と共に操作の容易化も重要である。
【0007】
分析装置では、多種多様の付属品、応用プログラムが存在するので、汎用型とすると、システム立上げに伴う一連の操作の手間がかかり、ミスも生じやすくなる。特に分析装置では、一連の測定を終わるか中断して、別の付属品を使った別の測定に入る場合も多く、このような場合では、付属品の取り付け、一連の操作のやり直しが必要となるので、この問題はより深刻となる。
【0008】
これに対し、多種多様の付属品、応用プログラムの中から特定の目的に応じて選び、専用機として用いることも考えられる。
【0009】
すなわち、今日の分光光度計の使用形態を見てみると、多種多様の付属品群と応用プログラム群とが用意されているものの、それらを多く揃えて汎用的に用いられるケースは一般的ではなく、特定の目的のためにほとんど専用機的に利用されているケースが大多数である。
【0010】
しかしながら、専用機として用いると、特定の目的の数だけ専用機の数を揃える必要がある。また専用機とすると、分析装置の拡張性を損なうことにもなるので、システム立上げに伴う一連の操作の容易性及びミス低減化の解決手段として採用するに至らなかった。
【0011】
このように分析装置においては、その拡張性を損なうことなく、システム立上げに伴う一連の操作の容易性及びミス低減化が求められていたものの、従来は、これらを同時に解、決することのできる適切な技術が存在しなかった。
【0012】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、種々の分析目的に対する拡張性を十分に確保しながら、特定の分析目的に応じたシステム立上げに必要な操作の容易化及びミス低減化を図ることのできる分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために本発明にかかる分析装置は、分析装置本体と、制御機構と、を備える。該分析装置本体は、その構成部材の一部を含む付属品が着脱自在に設けられる試料室を含み、試料の光計測を行うためのものとする。該制御機構は、分析装置本体ないし付属品の動作制御を行うためのものとする。
【0014】
ここで、前記付属品は、その構成内容を識別するための付属品情報を記憶している識別タグを含む。
【0015】
また前記分析装置本体は、試料室に設けられた付属品の識別タグに記憶されている付属品情報を読み取る読取手段を含む。
【0016】
前記制御機構は、専用プログラム記憶手段と、付属品認識手段と、専用プログラム起動手段と、設定手段と、を含む。
【0017】
前記専用プログラム記憶手段は、付属品の構成内容に応じた専用システムの立上げに必要な専用プログラムを、該付属品の構成内容毎に記憶している。
前記付属品認識手段は、読取手段からの読取情報に基づき、試料室に設けられている付属品の構成内容を判断する。
前記専用プログラム起動手段は、付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に応じて、専用プログラム記憶手段の専用プログラムの中から、付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを選択して起動する。
前記設定手段は、付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に応じて、付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分析装置本体ないし付属品の設定を自動に行う。
【0018】
そして、該分析装置は、始動時、付属品認識手段により付属品の構成内容が自動に認識され、付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、専用プログラム起動手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動し、ないし設定手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分析装置本体ないし付属品の設定を自動に行うことを特徴とする。
【0019】
<基本プログラム、システム自動起動プログラム>
なお、本発明においては、さらに、前記制御用コンピュータは、基本プログラム記憶手段と、基本プログラム起動手段と、システム自動起動プログラム記憶手段と、システム自動起動プログラム起動手段と、を含む。
【0020】
ここで、前記基本プログラム記憶手段は、基本プログラムを記憶している。
また前記基本プログラム起動手段は、基本プログラム記憶手段のオペレーティングシステムを起動する。
前記システム自動起動プログラム記憶手段は、汎用機をあたかも専用機とするためのシステム自動起動プログラムを記憶している。
前記システム自動起動プログラム起動手段は、オペレーティングシステムの起動に続いて、システム自動起動プログラム記憶手段のシステム自動起動プログラムを起動する。
【0021】
そして、該分析装置は、始動時、基本プログラムに続いてシステム自動起動プログラムを自動に起動し、付属品認識手段により付属品の構成内容が自動に認識され、付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、専用プログラム起動手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動、ないし設定手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分析装置本体ないし付属品の設定を自動に行う。
【0022】
本発明の始動としては、例えば電源投入等が一例として挙げられる。
本発明の基本プログラムとしては、オペレーティングシステム(OS)が一例として挙げられる。
本発明の専用プログラムは、付属品の構成内容に応じて、システム立上げに伴う一連の操作を行うためのものである。専用プログラムとしては、例えばデータ処理用プログラム
測定パラメータファイル等が一例として挙げられる。
本発明の設定としては、例えば予備測定(ベースライン測定、バックグラウンド測定、キャリブレーション等)、本体ないし付属品の調整や設定、ウォームアップ、ベースライン、ブランク測定等の実測定を行うのに必要な条件を自動に整えるための一連の操作等が一例として挙げられる。
ここにいう立上げとは、分析装置を即、使用可能な状態にすること、つまり即、実測定を開始することのできる状態にまで、システム立上げに伴う一連の操作を完了することをいう。
【0023】
<システム変化検出手段>
また本発明においては、前記制御機構は、システム変化検出手段を含む。
【0024】
ここで、前記システム変化検出手段は、始動後、システムの状態ないし付属品構成内容の変化の有無を常に監視している。
【0025】
そして、該分析装置は、始動後、前記システム変化検出手段で該システムの状態ないし付属品構成内容の変化が検出されると、
前記付属品認識手段に付属品の構成内容の認識を行わせ、
前記専用プログラム起動手段が、付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、旧システムの専用プログラムを自動にダウンし、ないし付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動し、
ないし前記設定手段が、付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、旧システムの設定を自動にダウンし、ないし付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分析装置本体ないし付属品の設定を自動に行う。
【0026】
システムの状態の変化としては、例えば電源のON/OFFが一例として挙げられる。付属品の構成内容の変化としては、例えば試料室に新しい付属品が取り付けられたとき、付属品を交換したとき等が一例として挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる分析装置は、付属品が識別タグを含み、さらに、始動時、付属品の構成内容を自動認識する付属品認識手段と、付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動する専用プログラム起動手段と、該専用システムの立上げに必要な分析装置本体ないし付属品の設定を自動に行う設定手段を備えることとしたので、種々の分析目的に対する拡張性を確保しながら、特定の分析目的に応じたシステム立上げに必要な操作の容易化及びミス低減化を図ることができる。
【0028】
また本発明においては、始動時、基本プログラムに続いてシステム自動起動プログラムが自動に起動されると、付属品認識手段により付属品の構成内容が自動に認識されることにより、より確実に、種々の分析目的に対する拡張性を確保しながら、特定の分析目的に応じたシステム立上げに必要な操作の容易化及びミス低減化を図ることができる。
【0029】
本発明においては、システム変化検出手段を備えることにより、より確実に、種々の分析目的に対する拡張性を十分に確保しながら、特定の分析目的に応じたシステム立上げに伴う操作の容易化及びミス低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる分析装置の概略構成が示されている。
同図に示す分光光度計(分析装置)10は、分光光度計本体(分析装置本体)12と、制御用コンピュータ(制御機構)14と、を備える。
分光光度計本体12は、透過測定用セル(分光光度計の構成部材の一部)を含む付属品16が着脱自在に設けられる試料室18と、試料室18の前段に設けられ、付属品16に光を照射する光照射ユニット20と、試料室18の後段に設けられ、付属品16からの光を検出する光検出ユニット22と、を含み、試料の光計測を行うためのものとする。
制御用コンピュータ14は、分光光度計本体12ないし付属品16の動作制御を行うためのものとする。
【0031】
付属品16は、その構成内容を識別するための付属品情報を記憶しているICチップ(識別タグ)24を含む。
【0032】
分光光度計本体12は、試料室18に設けられた付属品16のICチップ24に記憶されている付属品情報を読み取り、該読取情報を制御用コンピュータ14に出力する読取手段26を含む。
【0033】
制御用コンピュータ14は、基本プログラム記憶手段30と、基本プログラム起動手段32と、システム自動起動プログラム記憶手段34と、システム自動起動プログラム起動手段36と、付属品認識プログラム記憶手段38と、付属品認識手段40と、専用プログラム記憶手段42と、専用プログラム起動手段44と、設定プログラム記憶手段46と、設定手段48と、を含む。
【0034】
基本プログラム記憶手段30は、オペレーティングシステム(基本プログラム)を記憶している。
基本プログラム起動手段32は、基本プログラム記憶手段30のオペレーティングシステムを起動する。
システム自動起動プログラム記憶手段34は、汎用機をあたかも専用機とするためのシステム自動起動プログラムを記憶している。
システム自動起動プログラム起動手段36は、オペレーティングシステムの起動に続いて、システム自動起動プログラム記憶手段34のシステム自動起動プログラムを起動する。
付属品認識プログラム記憶手段38は、付属品認識に必要な付属品認識プログラムを記憶している。
付属品認識手段40は、付属品認識プログラムに従い、読取手段26からの読取情報に基づき、試料室に設けられている付属品の構成内容を判断する。
専用プログラム記憶手段42は、付属品16の構成内容に応じた専用システムの立上げに必要な専用プログラムを、該付属品16の構成内容毎に記憶している。
専用プログラム起動手段44は、付属品認識手段40で認識された付属品16の構成内容に応じて、専用プログラム記憶手段42の専用プログラムの中から、付属品認識手段40で認識された付属品16を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを選択して起動する。
設定プログラム記憶手段46は、分光光度計本体12ないし付属品16の設定に必要な設定プログラムを付属品構成内容毎に記憶している。
設定手段48は、付属品認識手段40で認識された付属品16の構成内容に応じて、設定プログラム記憶手段46の設定プログラムの中から最適な設定プログラムを選択し、該設定プログラムに基づき、付属品認識手段40で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分光光度計本体12ないし付属品16の設定を自動に行う。
【0035】
そして、該分光光度計10は、制御用コンピュータ14の始動時、付属品認識手段40により付属品16の構成内容が自動に認識され、付属品認識手段40で認識された付属品16の構成内容に基づき、専用プログラム起動手段44が付属品認識手段40で認識された付属品16を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に選択して起動し、設定手段48が付属品認識手段40で認識された付属品16を使用した専用システムの立上げに必要な分光光度計本体12ないし付属品16の設定を自動に行う。
【0036】
なお、本実施形態においては、分光光度計本体12と、制御用コンピュータ14とが、USBケーブル(接続ケーブル)50を介して接続されており、USBケーブル50を介して分光光度計本体12と制御用コンピュータ14間で必要な全ての情報のやりとりを行う。
また本実施形態においては、分光光度計本体12が、本体用電源52を備える。
また本実施形態においては、制御用コンピュータ14が、コンピュータ用電源54と、前記各プログラムの設定等を指示するための入力デバイス56と、実測定に必要なプログラム画面等を表示するモニタ58と、を備える。
【0037】
本実施形態にかかる分光光度計10は概略以上のように構成され、以下に、その操作手順について、図2を参照しつつ説明する。
すなわち、本実施形態においては、ユーザはコンピュータ用電源54の投入だけで、自動に試料室18に設けられた付属品16に応じたシステム立上げに伴う一連の操作が完了するので、汎用型システムをあたかも専用型システムとして即、使用可能な状態にすることができる。
【0038】
本実施形態においては、基本プログラム起動工程(S10)、システム自動起動プログラム起動工程(S12)、付属品認識工程(S14)、専用プログラム起動工程(S16)、設定工程(S18)が順に自動的に行われる。
【0039】
すなわち、基本プログラム起動工程(S10)では、汎用型システムの電源投入だけで、基本プログラム記憶手段のオペレーティングシステムを自動に起動する。
【0040】
システム自動起動プログラム起動工程(S12)では、オペレーティングシステムの起動に続いて、汎用機をあたかも専用機とするためのシステム自動起動プログラムを自動に起動する。
【0041】
付属品認識工程(S14)では、読取手段からの読取情報に基づき、試料室に設けられている付属品の構成内容を判断する。
【0042】
専用プログラム起動工程(S16)では、付属品認識工程(S14)で認識された付属品の構成内容に応じて、専用プログラム記憶手段の専用プログラムの中から、付属品認識工程(S14)で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを選択して専用プログラムを起動する。例えばデータ処理用プログラムを自動に起動し、測定パラメータファイルを自動に呼び出す。
【0043】
設定工程(S18)では、付属品認識工程(S14)で認識された付属品の構成内容に応じて、付属品認識工程(S14)で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分光光度計本体ないし付属品の設定を自動に行う。例えば予備測定(ベースライン測定、バックグラウンド測定、キャリブレーション等)、分光光度計本体ないし付属品の調整や設定、ウォームアップ、ベースライン、ブランク測定等の実測定を行うのに必要な条件を自動に整える。
【0044】
ところで、分析装置では、多種多様の付属品群、応用プログラム群が増えると、種々の分析目的に対する汎用性が向上されるのに対し、システム立上げに伴う一連の操作は、手間がかかり、またミスも多くなりやすくなる。
このため分析装置では、分析目的に対する汎用性を確保しながら、システム立上げに伴う一連の操作の容易化及びミス低減が非常に重要である。
このような要望に応えるため、例えば特定の目的毎に専用装置を構成することも考えられるが、分析目的の数だけ専用装置の数を揃える必要があり、これは、事実上、不可能となるので、本発明は課題解決手段として採用するに至らなかった。
【0045】
これに対し、本実施形態では、まず、分光光度計に組み合わせる付属品に、それが何であるかを認識するための付属品認識手段を設け、分光光度計の電源をONにした時に組み付けられている付属品が何であるかを認識されるようにした。あるいは付属品を取り替えたときに、新しく取り付けられた付属品が何であるかを付属品認識手段で認識させるようにした。
【0046】
ところで、従来においても、付属品認識手段を設けることも考えられる。
これは、付属品の認識だけを見ると、付属品の認識のミス低減化には有効な手法ではあるが、システム立上げに必要な一連の操作から見ると、未だ操作の容易化及びミス低減化は改善の余地が残されていた。
【0047】
すなわち、測定の対象となる試料の状態、形状、数、測定の手法に応じて適切な付属品を、本体に組み合わせて使用されること、さらに得られた結果から最終的に必要な値を算出するようにした応用プログラムを組み込むような状況下にあって、付属品に識別タグを取り付け、それを本体に組み付けたときに、本体あるいはそれを制御するコンピュータ/制御プログラムが識別タグに含まれる情報を読み出して、組み込んだ付属品が何であるかを認識するような仕組みが考えられる。
そして、コンピュータが付属品を認識した結果に基づいて、その付属品に相応しい測定条件/パラメータを自動設定することに利用することが考えられる。これにより、ある種の付属品を使用するときに必要となる特別の測定パラメータに対する配慮を確実にし、それを誤って不適切な測定パラメータの下で誤った測定結果が得られてしまうミスを防止するというような効果が期待される。また測定手法によって結果が微妙に変わるようなケース、例えば反射測定において、正反射と拡散反射のようなケースにおいては、測定に用いた付属品が何であるかという効果も期待される。一方で、この付属品の認識が制御の最上位に置かれることによって、純正品以外の付属品の組み込みが実質的に排除されるようなことが起こることも考えられる。
【0048】
ここで、一般的な分光光度計の使用形態を見ると、多種多様の付属品群と応用プログラム群とが用意されているものの、それらを多く揃えて汎用的に用いられるケースは一般的ではなく、特定の目的のためだけ、つまりほとんど専用機的に利用されているケースが多い。このようなケースにおける典型的な操作手順は、以下の通りである。
(1)電源投入
(2)付属品の取り付け
(3)制御プログラムの呼び出し
(4)応用プログラム(データ処理の仕方、測定の仕方)あるいは測定機能の呼び出し
(5)測定パラメータファイルの呼び出し
(6)予備測定(ベースライン測定、バックグラウンド測定、キャリブレーション等)
(7)実測定
(8)測定結果の整理
このような一連の測定を終わるか中断して、別の付属品を使った別の測定に入る場合には、(2)付属品の取り付けがスタートとなる。
【0049】
しかしながら、本発明者らによれば、前記付属品認識に期待される効果とこれらの実際の操作手順を対応させると、付属品認識だけによる効果はわずかに、測定パラメータファイルの呼び出しと、測定結果の整理に寄与しているに過ぎないことがわかった。
【0050】
これに対し、本発明者らは、拡張性を十分に確保しながら、実際の操作手順に対する操作の容易化及びミス低減の効果をより効果的に得るためには、さらに、以下の点が重要である点に気付いた。
【0051】
すなわち、本実施形態において特徴的なことは、その認識に基づいて、分光光度計を制御するプログラム、そのシステムで使われるデータ処理プログラム、分光光度計の測定パラメータ等を自動的に立上げ、そのシステムを自動的に使用可能な状態にまでする機能を付与したことである。
【0052】
これは、以下のようにして実現した。すなわち、分光光度計の制御プログラムの最上位=オペレーティングシステムに次ぐ階層に、システム自動起動プログラムを置いて、これ自身が自動立上げされるようにしておく。
このため制御用コンピュータの電源が投入されると、オペレーティングシステムに引き続いてシステム自動起動プログラムが自動に起動する。このシステム自動起動プログラムは、分光光度計本体を通じて付属品の認識を行う。付属品情報が得られたら、その情報に対応する形で予めプログラムされている専用プログラム、例えばシステム制御プログラム(例えばJASCO製、スペクトルマネージャ)、応用プログラム、測定パラメータファイル等を呼び出し、さらに分光光度計本体ないし付属品等の分光光度計の状態を、これに合わせて自動に設定してしまうのである。
【0053】
この結果、本実施形態は、汎用装置の電源を投入するだけで、分光光度計本体は自分がその付属品の専用機であることを制御用コンピュータに送る、つまり制御用コンピュータにより付属品が自動に認識される。制御用コンピュータは、付属品の認識結果に基づき、システム立上げに伴う一連の操作、例えばシステム制御プログラムの立上げ、データ処理プログラムの立上げ、測定パラメータの呼び出し、装置の初期設定等を自動に行う。
したがって、本実施形態は、元々は汎用の分光光度計本体や付属品を組み合わせたシステムを、あたかもその付属品の専用機のように作動させることができるようになる。
これにより、本実施形態は、システム立上げに必要な操作の手間が掛からなくなったことに加え、操作やシステムの構成等にミスが入り込んで正しくない測定結果が誤って得られてしまう危険性を著しく低減することができる。
【0054】
<システム変化検出手段>
ところで、より確実に、システム立上げに伴う一連の操作の容易化及びミス低減化を行うには、以下の点を考慮することも重要である。
【0055】
すなわち、システム自動起動プログラムが付属品認識をしようとしたときに本体の電源が入っていなかったとか、付属品が取り付けられていなかったとかの理由で、付属品認識ができないことがある。
このようなときには、システム自動起動プログラムの起動以下を、オペレータの操作に委ねるようになっている。
その後、分光光度計本体に電源が投入されたとき、付属品が取り付けられたとき、付属品が付け替えられたときのタイミングで、改めて付属品認識を行い、必要に応じて、システム自動起動プログラムの起動も含めて、前記操作を実行することが好適である。
【0056】
このため、前述のような場合であっても、確実に、実測定前セッティングに必要な操作の容易化及びミス低減化を得るため、本実施形態においては、図3に示されるように制御用コンピュータ14は、さらにシステム変化検出手段60を備えることも非常に重要である。
【0057】
同図に示すシステム変化検出手段60は、システム自動起動プログラムの起動後、システムの状態ないし付属品構成内容の変化の有無を常に監視している。このシステム変化検出手段60は、試料室18での付属品16の有無、分光光度計本体12の電源52のON又はOFFも判断する。
【0058】
そして、システム変化検出手段60でシステムの状態ないし付属品構成内容の変化が検出されると、付属品認識手段40は、付属品の構成内容を再度、自動認識する。
専用プログラム起動手段44は、付属品認識手段40で認識された付属品の構成内容に基づき、旧システムの専用プログラムをダウンし、該付属品認識手段40で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動する。
設定手段48は、付属品認識手段40で認識された付属品の構成内容に基づき、旧システムの設定をダウンし、該付属品認識手段40で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な分析装置本体ないし付属品の設定を自動に行う。
【0059】
変形例
<システム自動起動プログラム>
なお、本発明で利用している付属品認識は、システム供給者によって与えられるほか、ユーザによっても変更・登録できるものである。その上で、このシステム自動起動プログラムは、システム制御プログラムの応用プログラムに1つである簡易言語によってプログラミングされるものである。このシステム自動起動プログラムは、予めシステム供給者によって作成供給されるのに加え、分光光度計のユーザによっても作成・変更し、登録・使用できるものである。このシステム自動起動プログラムは、分光光度計を使用するユーザの必要に合わせて新規作成やカスタマイズができる。
【0060】
<分析装置>
また付属品認識手段を紫外・可視分光光度計あるいは紫外・可視・近赤外分光光度計等の分光光度計に用いることが特に好ましいが、分光光度計以外の分析装置に適用することも可能である。
<付属品>
付属品は前記構成に限定されるものではなく、種々の付属品を用いることができる。例えば分光光度計では、試料形態として、液体、固体(粉体、板状、膜状等)、気体等がある。測定法としては、透過法の他に、正反射法、拡散透過法、拡散反射法、時間変化測定法、温度変化測定法等がある。このため各種の試料形態や、測定法でのサンプル測定を行うための試料セル(試料ホルダ等の容器全般を含む)、ミラー、レンズ等の光学系構成部材、恒温手段等の構成部材を付属品側ベースに設けることができる。また測定法としては、試料室に何も入れない状態でのバックグラウンド測定もあり、付属品側ベースに何も構成部材を設けないものを付属品として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態にかかる分析装置の概略構成の説明図である。
【図2】本実施形態にかかる分析装置の操作手順の説明図である。
【図3】本実施形態にかかる分析装置に好適なシステム変化検出手段の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 分光光度計(分析装置)
12 分光光度計本体(分析装置本体)
14 制御用コンピュータ(制御機構)
16 付属品
24 ICチップ(識別タグ)
40 付属品認識手段
42 専用プログラム記憶手段
44 専用プログラム起動手段
48 設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置の構成部材の一部を含む付属品が着脱自在に設けられる試料室を含み、試料の光計測を行うための分析装置本体と、
前記分析装置本体ないし前記付属品の動作制御を行うための制御機構と、
を備え、
前記付属品は、その構成内容を識別するための付属品情報を記憶している識別タグを含み、
前記分析装置本体は、前記試料室に設けられた前記付属品の前記識別タグに記憶されている付属品情報を読み取り、該読取情報を前記制御機構に出力する読取手段を含み、
前記制御機構は、
付属品の構成内容に応じた専用システムの立上げに必要な専用プログラムを、該付属品の構成内容毎に記憶している専用プログラム記憶手段と、
前記読取手段からの読取情報に基づき、前記試料室に設けられている前記付属品の構成内容を判断する付属品認識手段と、
前記付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に応じて、前記専用プログラム記憶手段の専用プログラムの中から、該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを選択して起動する専用プログラム起動手段と、
前記付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に応じて、該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な前記分析装置本体ないし前記付属品の設定を自動に行う設定手段と、
を含み、
始動時、前記付属品認識手段により前記付属品の構成内容が自動に認識され、該付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、前記専用プログラム起動手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動し、ないし前記設定手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な前記分析装置本体ないし前記付属品の設定を自動に行うことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の分析装置において、
前記制御機構は、さらに、基本プログラムを記憶している基本プログラム記憶手段と、
前記基本プログラム記憶手段の基本プログラムを起動する基本プログラム起動手段と、
汎用機をあたかも専用機とするためのシステム自動起動プログラムを記憶しているシステム自動起動プログラム記憶手段と、
前記基本プログラムの起動に続いて、前記システム自動起動プログラム記憶手段に記憶されている前記システム自動起動プログラムを起動するシステム自動起動プログラム起動手段と、
を備え、
前記始動時、前記基本プログラムに続いて前記システム自動起動プログラムが起動されると、前記付属品認識手段により付属品の構成内容が自動に認識され、前記付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、前記専用プログラム起動手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動し、ないし前記設定手段が該付属品を使用した専用システムの立上げに必要な前記分析装置本体ないし前記付属品の設定を自動に行うことを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の分析装置において、
前記制御機構は、さらに、始動後、前記システムの状態ないし付属品構成内容の変化の有無を常に監視しているシステム変化検出手段を含み、
前記システム変化検出手段で前記システムの状態ないし付属品構成内容の変化が検出されると、前記付属品認識手段は付属品の構成内容を再度、自動に認識し、
また前記専用プログラム起動手段は、前記付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、旧システムの専用プログラムをダウンないし該付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な専用プログラムを自動に起動し、
ないし前記設定手段は、前記付属品認識手段で認識された付属品の構成内容に基づき、旧システムの設定をダウンないし該付属品認識手段で認識された付属品を使用した専用システムの立上げに必要な前記分析装置本体ないし前記付属品の設定を自動に行うことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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