説明

分析装置

【課題】分析装置の構造が簡易で、マイクロプレートの着脱がなく簡易かつ確実にマイクロプレートを移動することができる分析装置を提供する。
【解決手段】マイクロプレートを静置するプレート静置部と、マイクロプレートのウェルを洗浄する洗浄部と、液状試料の光学特性を測定する測定部と、液体をウェルに分注する分注ユニット部と、分注ユニット部をX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させる分注ユニット移動機構部と、各部における動作を制御する制御部と、各部を支持する装置本体部と、を備え、液状試料に含まれる所定物質の含有量を分析する分析装置において、装置本体部が、プレート静置ポジション、洗浄ポジションおよび測定ポジションのいずれかのポジションに就くようにマイクロプレートを水平移動させるプレート移動機構部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の安全性を検査するため、食品に含まれている特定の物質の含有量を分析する分析装置に関し、特に、食品に含まれている卵、乳、そば、小麦および落花生の5品目からなる特定原材料が所定の基準値を超えているか否かを分析する特定原材料の分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品に含まれている特定原材料の含有量を分析する分析装置として、厚生労働省の定めた酵素複合体試薬からなる測定キットを使用し、試料と酵素複合体試薬とを反応させ、発色した酵素複合体試薬の吸光度を測定して特定原材料の含有量を分析するエライザ法(酵素免疫測定法)を利用した分析装置が知られている。
このような従来の分析装置は、液状試料を収納する多数のウェルを有するマイクロプレートが載置されるプレート台と、ウェルに酵素複合体試薬を分注する分注ユニットと、この分注ユニットおよびマイクロプレートをX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させる移動機構と、マイクロプレートのウェルを洗浄する洗浄エリアと、液状試料と酵素複合体試薬とを反応させる反応エリアと、分注エリアと、吸光度を測定する測定エリアおよびこれらを支持する装置本体部と、マイクロプレートの移動、分注、洗浄および反応などの各工程を制御するPC(Personal Computer)とにより構成されている。
以上の構成により、従来の分析装置においては、食品などの検体からなる液状試料および各試薬が装置内に収納されて準備が完了すると、所定の分析項目が設定された制御プログラムが起動し、移動機構によるマイクロプレートのプレート台を基点とするX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向への移動、分注エリア、反応エリア、洗浄エリアおよび測定エリアからなる各エリアにおける作業や化学反応が終了し、分析が完了するまで自動的にマイクロプレートの移動や液状試料の化学反応が進められる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】ジャパンフードサイエンス、Vol.44、2005年4月号、別冊、p77−p83
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載のものにおいては、非特許文献1のp79、図4に記載のように、分注エリア(図4のf)、反応エリア(図4のc)、洗浄エリア(図4のd)および測定エリア(図4のb)が棚状に3次元で配置されているので、分注、反応、洗浄および測定の各工程毎に、移動機構(図4のa)がマイクロプレートを装着しX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させマイクロプレートを各エリアにおいて離脱させる必要がある。そのため、分析装置の構造が複雑となってしまうという問題がある。また、移動機構によるマイクロプレートの移動の動作が複雑となり移動の効率が低下するという問題がある。移動機構によるマイクロプレートの着脱に失敗した場合には、プログラム制御されている全ての工程が無駄になってしまうだけでなく、準備した食品の液状試料や高価な酵素複合体試薬が無駄になってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前述のような従来の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、分析装置の構造が簡易で、マイクロプレートの着脱がなく簡易かつ確実にマイクロプレートを移動することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分析装置においては、上記目的を達成するため、(1)液状試料を収納するウェルを有するマイクロプレートを静置するプレート静置部と、前記マイクロプレートのウェルを洗浄する洗浄部と、前記ウェルに収納された前記液状試料の光学特性を測定する測定部と、液体を吸入し吐出することにより液体を前記ウェルに分注する分注ユニット部と、前記分注ユニット部をX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させる分注ユニット移動機構部と、前記プレート静置部、前記洗浄部、前記測定部、前記分注ユニット部および前記分注ユニット移動機構部からなる各部における動作を制御する制御部と、前記各部を支持する装置本体部と、を備え、前記液状試料に含まれる所定物質の含有量を分析する分析装置において、前記装置本体部が、前記マイクロプレートを静置するプレート静置ポジション、前記ウェルを洗浄する洗浄ポジションおよび前記液状試料の前記光学特性を測定する測定ポジションからなる3つの異なるポジションを有し、前記マイクロプレートが前記プレート静置ポジション、前記洗浄ポジションおよび前記測定ポジションのいずれかのポジションに就くように前記マイクロプレートを水平移動させるプレート移動機構部を備えたことを特徴とする。
【0007】
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、まず、分析しようとする食品を粉砕し、抽出液を加え、振盪、遠心分離、ろ過する工程を経て液状試料が作製される。作製された液状試料および各試薬は分析装置に配置され、次いで、マイクロプレートがプレート静置部に静置される。以上の準備が完了すると、所定の分析項目が設定された制御プログラムが起動し、分注ユニット部によるマイクロプレートのウェルへの液状試料および試薬の分注、マイクロプレートのウェルの洗浄、液状試料の化学反応、液状試料の光学測定の各工程、分注ユニット移動機構部による分注ユニット部のX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向の移動およびプレート移動機構部によるマイクロプレートのプレート静置ポジション(以下、プレート静置部ということがある。)および測定ポジション(以下、測定部ということがある。)の各ポジションへの移動が制御プログラムに従って自動的に進められる。所定の分析項目に基づく分析が終了すると、分析結果が表示パネルに表示される。このマイクロプレートは、プレート移動機構部によりプレート静置ポジション、洗浄ポジションおよび測定ポジションの各ポジションに水平に移動されるので、従来の分析装置のようにX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動して各工程に対応した場所に載置されることはない。その結果、分析装置は簡易な構造にすることができ、マイクロプレートの各工程に対応した場所における着脱の必要がなくなるので、簡易かつ確実にマイクロプレートを移動することができる。
【0008】
また、本発明に係る分析装置においては、(2)前記プレート移動機構部が、前記マイクロプレートを着脱自在に支持する支持ユニットとガイドレールとを有し、前記マイクロプレートを前記ガイドレールに沿って水平移動させるよう構成してもよい。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、分析作業の始動時にマイクロプレートを支持ユニットに装着すると、分析作業の終了時まではマイクロプレートを支持ユニットから離脱させる必要はない。また、マイクロプレートが支持ユニットに装着されると、ガイドレールに沿ってプレート静置ポジション、洗浄ポジションおよび測定ポジションのいずれかのポジションに就くようにプレート移動機構部により移動するので、一軸の直線移動となり、マイクロプレートの移動動作が簡易になる。
【0009】
また、本発明に係る分析装置においては、(3)前記各ポジションが、前記測定ポジション、前記プレート静置ポジションおよび前記洗浄ポジションの順に略同一の平面内に位置するようにしてもよい。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、各ポジションが測定ポジション、プレート静置ポジションおよび洗浄ポジションの順に略同一の平面内に位置すると、プレート移動機構部によるマイクロプレートの移動動作の無駄がなく効率よくマイクロプレートを移動させることができる。
【0010】
また、本発明に係る分析装置においては、(4)前記各ポジションが、前記測定ポジション、前記洗浄ポジションおよび前記プレート静置ポジションの順に略同一の平面内に位置するようにしてもよい。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、各ポジションが測定ポジション、洗浄ポジションおよびプレート静置ポジションの順に略同一の平面内に位置すると、(3)と同様にプレート移動機構部によるマイクロプレートの移動動作の無駄がなく効率よくマイクロプレートを移動させることができる。
【0011】
また、本発明に係る分析装置においては、(5)前記プレート移動機構部が、前記測定ポジションにおいて前記マイクロプレート内の前記液状試料の前記光学特性が測定されている間、前記プレート静置ポジションにおいて前記マイクロプレート内の前記液状試料が化学反応している間および前記洗浄ポジションにおいて前記マイクロプレート内の前記液状試料の洗浄がなされている間は、前記マイクロプレートを各ポジションにおいて所定時間停止させるように構成する。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、マイクロプレートが各ポジションにおいて、反応、洗浄および測定に必要な所定時間、例えば、数秒〜数分間停止している間に、各ポジションにおける作業が進行するので、プレート移動機構部の動作が簡易となる。
【0012】
また、本発明に係る分析装置においては、(6)前記洗浄部が、前記洗浄ポジションに就いた前記マイクロプレートの底面部近傍に磁石を備え、前記ウェルに収容され磁気ビーズを含む前記液体試料を洗浄する際、前記磁気ビーズが前記ウェル外に排出されないように前記磁石の磁気引力で前記磁気ビーズを前記ウェル内に留めるよう構成してもよい。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、洗浄部が、洗浄ポジションに就いたマイクロプレートの底面部近傍に磁石を備えていると、分注ユニットでウェルに収容され磁気ビーズを含む液体試料を吸引する際に、磁気ビーズが磁石に引き寄せられるので、磁気ビーズが吸引されずにウェル内に残留する。その結果、従来のように同一の抗体が結合した複数のウェルが一列になったウェルセットを使用する必要はなく、特定原材料に対応した磁気ビーズを任意のウェルに分注するだけで特定原材料を分析できるので、マイクロプレートの多数のウェルを任意に区別して使用でき、マイクロプレートに無駄が生ずることはなく、使い勝手が向上する。
【0013】
また、本発明に係る分析装置においては、(7)前記磁気ビーズが、表面部に抗体を結合した磁性体を有する微粒子からなり、前記液体試料に含まれ、人体にアレルギー症状を引き起こす特定のアレルギー物質からなる特定原材料を捕捉するものでもよい。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、磁気ビーズが、特定原材料を捕捉するようになっているので、特定原材料の分析に好適である。
【0014】
また、本発明に係る分析装置においては、(8)前記プレート静置部が、前記マイクロプレートのウェルに収容された前記液状試料が化学反応する際に、前記液状試料の温度を制御する温度制御ユニットを備えてもよい。
以上の構成により、本発明に係る分析装置においては、プレート静置部が温度制御ユニットを備えているので、プレート静置ポジションにおいてマイクロプレートのウェルに収容された液状試料が化学反応する際に、好適な温度の環境の下で化学反応が促進される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る分析装置によれば、分析装置は簡易な構造にすることができ、マイクロプレートの各ポジションにおける着脱の必要がなくなり、簡易かつ確実にマイクロプレートを移動することができる。そのため、マイクロプレートの移動、分注、洗浄および反応などの各工程を制御する制御プログラムもシンプルとなり特定原材料の分析の効率も向上する。
【0016】
また、請求項2に係る分析装置によれば、分析作業の始動時にマイクロプレートを支持ユニットに装着すると、分析作業の終了時まではマイクロプレートを離脱させる必要はなく、マイクロプレートがガイドレールに沿ってプレート静置ポジション、洗浄ポジションおよび測定ポジションのいずれかのポジションに就くようにプレート移動機構部による一軸の直線移動となるので、請求項1の効果に加え、マイクロプレートの移動動作がより簡易になる。
【0017】
また、請求項3および4に係る分析装置によれば、各ポジションが測定ポジション、プレート静置ポジションおよび洗浄ポジションの順または測定ポジション、洗浄ポジションおよびプレート静置ポジションの順に略同一の平面内に位置するので、請求項1の効果に加え、プレート移動機構部によるマイクロプレートの移動動作の無駄がなく効率よくマイクロプレートを移動させることができる。
【0018】
また、請求項5に係る分析装置によれば、マイクロプレートが各ポジションにおいて所定時間停止している間に、各ポジションにおける作業が進行するので、請求項1の効果に加え、プレート移動機構部の動作がより簡易となる。
【0019】
また、請求項6および7に係る分析装置によれば、分注ユニットでウェルに収容され磁気ビーズを含む液体試料を吸引する際に、磁気ビーズが磁石に引き寄せられて磁気ビーズが吸引されずにウェル内に残留するので、請求項1の効果に加え、従来のように同一の抗体が結合した複数のウェルが一列になったウェルセットを使用する必要はなく、特定原材料に対応した磁気ビーズを任意のウェルに分注するだけで特定原材料を分析することができるので、マイクロプレートの多数のウェルを任意に区別して使用でき、マイクロプレートに無駄が生ずることはなく、使い勝手が向上する。
【0020】
また、請求項8に係る分析装置によれば、プレート静置ポジションにおいてマイクロプレートのウェルに収容された液状試料が化学反応する際に、好適な温度の環境の下で化学反応が促進されるので、請求項1の効果に加え、液状試料を化学反応させるための環境を確保するため、従来の分析装置におけるような空間からなる室が不要となり、このような室にマイクロプレートをX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させる必要もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る分析装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1〜図11は、本発明に係る分析装置の実施の形態の一例を示している。
【0022】
分析装置1は、図1に示すように、装置本体部2と、プレート静置ポジションとしてのプレート静置部3と、洗浄ポジションとしての洗浄部4と、測定ポジションとしての測定部5と、分注ユニット部6と、分注ユニット移動機構部7と、プレート移動機構部8と、制御部9と、送受信部11と、チップラック15と、試薬ラック16と、液状試料および標準溶液ラック17と、廃棄エリア18とにより構成される。
【0023】
装置本体部2は、電源ユニット21と、廃棄チップ容器22と、廃液ボトル23と、洗浄液ボトル24、25と、これらを収納する収納筐体2aと、カバー26と、カバー26を取り付けるためのカバー取付ボス2bとにより構成される。
【0024】
電源ユニット21は、所定の変換器などから構成され、供給される100V〜220V程度の交流電源から、洗浄部4、測定部5、分注ユニット部6、分注ユニット移動機構部7、プレート移動機構部8および送受信部11で必要な所定の電源、例えば、サーボモータ駆動用の+12V、メモリIC用の−5V、−12Vなどに変換し供給するようになっている。
【0025】
廃棄チップ容器22は、例えば、プラスチックなどからなる容器で構成され、図1に示すように、収納筐体2aの正面下部に配置されている。分注ユニット部6において分注の都度着脱して使用するディスポーザブルチップが使用済みとなった場合、廃棄されたディスポーザブルチップは廃棄エリア18から廃棄されて廃棄チップ容器22に集積されるようになっている。
【0026】
廃液ボトル23は、例えば、プラスチックなどからなる容器で構成され、図1に示すように、収納筐体2aの正面下部に配置されている。洗浄部4において、吸引した液状試料Sなどの廃液は廃液ボトル23に集積するようになっている。
【0027】
洗浄液ボトル24、25は、例えば、プラスチックなどからなる容器で構成され、図1に示すように、収納筐体2aの正面下部に配置されている。洗浄液ボトル24、25にはマイクロプレート10のウェル10aを洗浄する洗浄液が収容され、洗浄部4から吐出されるようになっている。
【0028】
カバー26は、装置本体部2に設けられたカバー取付ボス2bとカバー取付穴26aとが回転自在に係合し、一面開口の箱体で構成される。以上の構成により、カバー取付ボス2bを中心として開閉されるようになっている。このカバー26が開放されているときは、制御部9の制御プログラムが起動しないようにし、制御プログラム実行中は開放できないようにし、カバー26を閉じた状態で分析装置1の外部環境の影響を受けないよう密閉構造としてもよい。
【0029】
プレート静置部3は、図2〜図5に示すように、ペルチェ素子からなり温度制御ユニットとしてのペルチェモジュール31と、このペルチェモジュール31を収納する筐体32、図示しない移動機構とにより構成され、マイクロプレート10の下部近傍であって、ペルチェ素子がマイクロプレート10側になるように配置される。以上の構成より、プレート移動機構部8に支持されたマイクロプレート10は、プレート移動機構部8がプレート静置部3(プレート静置ポジション3)で停止することによりプレート静置部3の上部近傍に、所定時間静置され、ペルチェ素子に供給する電流を制御してマイクロプレート10が所定の温度、例えば、液状試料Sと磁性体を有する微粒子からなる磁気ビーズとしての抗体磁気ビーズBの溶液、標準溶液、酵素基質溶液、反応停止液などからなる試薬Dとの化学反応を好適に促進させるよう20℃〜30℃、好ましくは25℃前後で維持されるようになっている。ペルチェ素子に電源ユニット21から電源が供給されると、ペルチェ素子の片側が低温に反対側が高温になることを利用し、ペルチェモジュール31によりペルチェ素子が所定の温度で維持されるよう温度制御がなされるようになっている。
【0030】
また、シャッタ52の開閉時には、シャッタ52の開閉の妨げとならないよう、プレート静置部3に設けられた移動機構により、プレート静置部3が洗浄ポジション4側に移動するようになっている。また、この移動機構を設ける代わりに、プレート静置部3と測定部5との間隔を、シャッタ52の開閉の妨げとならないよう充分に離隔して、プレート静置部3と測定部5とを配置してもよい。
【0031】
以上説明したように本実施の形態では、プレート静置部3がペルチェ素子からなるペルチェモジュール31で構成される場合で説明したが、ヒータその他の発熱体、例えば、シリコンゴムシートの間に発熱線をパターン配線したシートヒータ(面状発熱体)、セラミックなどからなる板状ヒータなどで構成してもよい。
【0032】
洗浄部4は、図2〜図5に示すように、洗浄ヘッドユニット41と、磁石42と、磁石42を支持し移動させる磁石移動機構43と、磁石42および磁石移動機構43を支持する筐体44とにより構成される。
洗浄ヘッドユニット41は、ウェル10aに収容された液体試料Sを吸引する吸引ノズル41aと、洗浄液を吐出する吐出ノズル41bと、吸引ノズル41aおよび吐出ノズル41bを昇降させるための昇降機構41eと、吸引ノズル41aにより吸引された液体試料Sを廃液ボトル23に排出するための液体試料排出用配管41cと、吐出ノズル41bから吐出される洗浄液を洗浄液ボトル24、25から供給する洗浄液供給用配管41dとにより構成されている。
【0033】
以上の構成により、プレート移動機構部8に支持されたマイクロプレート10が、プレート移動機構部8が洗浄部4で停止することにより洗浄部4の上部近傍に、所定時間静置され、昇降機構41eにより洗浄ヘッドユニット41が所定の位置に下降し、所定の位置において洗浄部4によりウェル10a内が洗浄される。図9に示すように、洗浄部4の吸引ノズル41aでウェル10aに収容され、抗体磁気ビーズBを含む液体試料Sを吸引して洗浄する際に、磁石42が磁石移動機構43により、マイクロプレート10下部に近接して磁石42により磁界が形成されるので、抗体磁気ビーズBが磁石に引き寄せられて抗体磁気ビーズBが吸引されずにウェル内に残留する。洗浄液は洗浄液ボトル24、25から洗浄液供給用配管41dを介して洗浄部4に供給され、吐出ノズル41bから吐出される。
吸引ノズル41aにより吸引された液体試料Sは、液体試料排出用配管41cを通って廃液ボトル23に排出される。
【0034】
以上説明したように本実施の形態では、磁石42が永久磁石で構成される場合で説明したが、電磁石で構成してもよい。電磁石で構成する場合には、磁石移動機構43は必要ではなく、電磁石を制御するスイッチ機構を設け、プレート移動機構部8に支持されたマイクロプレート10が、プレート移動機構部8が洗浄部4で停止することにより洗浄部4の上部近傍に、所定時間静置されたときに、電磁石をONにして磁界を発生するようにし、洗浄が終了したときにOFFにしてもよい。
【0035】
抗体磁気ビーズBは、図9に示すように、直径が数μmの磁性体を有する微粒子から構成され、様々な物質や抗体が表面にコーティングされ、例えば、特定原材料の物質が捕捉できるようになっている。所定の溶液に抗体磁気ビーズBを混合して、分注ユニット部6のノズル62から吐出させウェル10aに分注してもよい。
【0036】
測定部5は、図2〜図5に示すように、プレート収納筐体51と、シャッタ52と、シャッタ52を開閉するヒンジ52aおよび52bと、ヒンジ52aおよび52bに組み込まれた図示しないコイルばねと、光学測定ユニット54とにより構成される。プレート収納筐体51は、出入口51aが開口されプレート移動機構部8に支持されたマイクロプレート10が出入りするようになっている。シャッタ52は、板状体で構成され、ヒンジ52aおよび52bに組み込まれた図示しないコイルばねにより、常に閉じるよう付勢されており、マイクロプレート10がプレート収納筐体51に収納されたとき、すなわち測定ポジション5に移動し停止したとき、シャッタ52が閉じられ、プレート収納筐体51が密閉され外部から光がプレート収納筐体51の内部に入らないようになっている。このシャッタ52の開閉時には、プレート静置部3に設けられた移動機構により、プレート静置部3が洗浄ポジション4側に移動するので、シャッタ52の開閉の妨げとならない。
【0037】
以上説明したように本実施の形態では、プレート収納筐体51に外部から光が入らないようシャッタ52で、出入口51aを閉じる構成で説明したが、シャッタ52を使用せず、収納筐体2aのカバー26で外部から収納筐体2aの内部に光が入らないよう密閉するよう構成してもよい。この場合、カバー26は光透過性のない、プラスチックまたは金属などで形成してもよい。
【0038】
光学測定ユニット54は、例えば、吸光度を測定する一例として、図8に示すように、ハロゲンランプ54aと、分光用フィルタ54bと、光ファイバ54cと、ウェル10aに収納された液状試料Sに光を通すための集光レンズ54d、集光レンズ54dを支持するレンズ基板54eと、液状試料Sを通過した光を集光する集光レンズ54fと、集光レンズ54fを支持するレンズ基板54gと、受光部54hとにより構成され、プレート収納筐体51の内部に配置されている。集光レンズ54dおよび集光レンズ54fは各々マイクロプレート10を挟んで対向する位置に配置されている。マイクロプレート10には横一列に1〜16までの16個のウェル10aが設けられており、集光レンズ54dおよび集光レンズ54fは、各ウェル10aに各1個設けられ、合計16組設けられている。なお、各ウェル10aの使い方によって、集光レンズ54fの個数を少なくしてもよい。例えば、横一列の1〜15まで使用し16個目のウェル10aを使用しない場合、集光レンズ54fは、横一列の1〜15に対応して、合計15組であってもよい。
【0039】
以上の構成により、光源のハロゲンランプ54aが点灯すると、光は分光用フィルタ54bにより所定の波長λ、例えば、400nm〜700nmの範囲における数種類の波長λに分光され、所定の波長λが、液状試料Sおよび試薬Dに応じて最適な波長λに選択されると、その所定波長λの光が、光ファイバ54cおよび集光レンズ54dを経由しウェル10a内の液状試料Sに投光されて液状試料S内を光が透過し、さらに集光レンズ54fを経由して受光部54hで受光するようになっている。集光レンズ54dおよび集光レンズ54fは、合計16組設けられているので、同時に16個のウェル10a内の液状試料Sに対して投受光されるようになっている。
【0040】
16個のウェル10a内の液状試料Sへの投受光が終了すると、プレート移動機構部8によりマイクロプレート10が1列分移動し、次の16個のウェル10aの列への投受光がなされるようになっている。受光部54hが光を受光すると、液状試料Sを透過した光の量に比例した電流が発生し、発生した電流に応じた信号が送受信部11を経由して制御部9に出力されるようになっている。
【0041】
本実施の形態に係る測定部5においては、光学測定ユニット54によりマイクロプレート10およびウェル10a内の液状試料Sを透過する光の量を測定し、制御部9に信号を出力し、この信号に基づいて制御部9で吸光度を算出するよう構成した例を説明したが、吸光度の代わりに蛍光強度または発光強度を算出するよう構成してもよい。
蛍光強度とは、物質に可視、紫外領域の光を照射すると、物質の種類によっては、照射した光の波長λとは異なった波長λの光を放射する性質、すなわち、蛍光を放射する性質があり、この放射した蛍光の強度をいう。例えば、微生物にピーク波長が366nmの励起光を照射すると、この微生物から波長430〜490nmの蛍光が発せられる。
この蛍光強度は、以下のように測定することができる。まず、測定対象となる抗体に蛍光色素を標識しておき、励起波長λを照射する。照射により蛍光色素から蛍光が放射される。この蛍光を光学測定ユニット54における蛍光強度を測定するよう構成されている蛍光測定モジュールで測定する。蛍光測定モジュールにおいては、蛍光波長選択部を通過した特定の波長λのみ検出され、検出された特定の波長λを電気信号に変換することにより、測定および算出することができる。蛍光強度は、蛍光物質の濃度に比例するので、予め蛍光強度と蛍光物質の濃度との関係を定量化しておき、蛍光強度を求めることにより、その蛍光物質の濃度を求めることができる。
【0042】
発光強度とは、例えば、試料と酵素複合体試薬とを反応させ、酵素複合体試薬が発光する光の強度(LuxまたはmW/cm)をいう。このような光強度を測定して特定物質の含有量を分析するエライザ法(酵素免疫測定法)を利用し、以下のように発光物質の濃度を求めることができる。まず、測定対象となる抗体に発光色素を標識しておき、発光する光の強度を光学測定ユニット54において発光強度を測定するよう構成されている発光測定モジュールで測定する。発光測定モジュールにおいては、受光した光の強度を電気信号に変換することにより、測定および算出することができる。発光色素が発光する光強度は、発光物質の濃度に比例するので、予め発光強度と発光物質の濃度との関係を定量化しておき、発光強度を求めることにより、その光強度を測定するエライザ法(酵素免疫測定法)においては、吸光度および蛍光強度を測定する方法と比較して、光源を必要としないので、測定装置をより簡易な構造にすることができる。
【0043】
分注ユニット部6は、図7に示すように、筐体61と、ノズル62と、図示しないノズル昇降機構、図示しないシリンジポンプおよびチューブとにより構成される。筐体61は、背面61aで分注ユニット移動機構部7に支持されている。ノズル62は1本または複数本のノズル62を着脱自在に保持する機構からなり、例えば、本実施の形態では、図7に示すように5本のノズル62を保持するいわゆる5連ノズルで構成されている。このノズル62は、例えば、分注の都度着脱し廃棄可能なディスポーザブルチップで構成されている。
このノズル昇降機構は、例えば、図示しない駆動源としてのマイクロモータ、マイクロモータを制御するコントローラおよびノズルを昇降させるガイドレールからなり、個々のノズル62が独立して昇降できるように構成されている。
【0044】
以上の構成により、分注ユニット部6は、図1に示す分析装置1にセットされているチップラック15、試薬ラック16、液状試料および標準溶液ラック17、廃棄エリア18、マイクロプレート10が各々配置されている所定の位置、例えば、所定の基準位置(0、0、0)からX軸、Y軸、Z軸の各方向に距離a、b、cだけ離隔した位置からなるアドレス、(a、b、c)へ制御プログラムに従って分注ユニット移動機構部7により移動するようになっている。また、前述の5連の各ノズル62は必要に応じて他のノズルから独立して、1本または複数本が昇降されるようになっている。
【0045】
分注ユニット部6がチップラック15に移動すると、分注ユニット部6は、ノズル62をノズル昇降機構で降下させチップラック15内に保持されているディスポーザブルチップを装着した後、ノズル62を移動中に他の部位と干渉せず、かつその後の分注動作に最短時間で移行できる位置まで上昇するようになっている。
【0046】
また、分注ユニット部6が試薬ラック16に移動すると、分注ユニット部6は、ノズル62をノズル昇降機構で降下させ試薬ラック16内の容器に注入されている抗体溶液、酵素基質溶液および反応停止溶液などからなる試薬Dを各工程に応じて選択し、シリンジポンプを動作させてノズル62から試薬Dを吸引した後、ノズル62を移動中に他の部位と干渉せず、かつその後の分注動作に最短時間で移行できる位置まで上昇するようになっている。
【0047】
さらに、分注ユニット部6が液状試料および標準溶液ラック17に移動すると、分注ユニット部6は、ノズル62をノズル昇降機構で降下させ液状試料Sおよび標準溶液ラック17内に収容されている卵、乳などの特定原材料からなる液状試料、標準溶液および抗体抗体磁気ビーズBの溶液などを各工程に応じて選択し、シリンジポンプを動作させノズル62から該当の液状試料Sなどを吸引した後ノズル62を移動中に他の部位と干渉せず、かつその後の分注動作に最短時間で移行できる位置まで上昇するようになっている。
【0048】
また、分注ユニット部6が廃棄エリア18に移動すると、分注ユニット部6は、試薬D、液状試料S、標準溶液などが分注された後の使用済みのディスポーザブルチップをノズル62から離脱させて廃棄エリア18に廃棄する。廃棄されたディスポーザブルチップは廃棄通路を介して廃棄チップ容器22に集積される。
【0049】
分注ユニット移動機構部7は、例えば、図1に示すように、X軸移動レール71、Y軸移動レール72、Z軸移動レール73、図示しない駆動源としてのサーボモータ、サーボモータを制御するコントローラで構成される。以上の構成により、分注ユニット移動機構部7は、制御部9における制御プログラムに基づいてコントローラを介してサーボモータを自動的に駆動させ、分注ユニット部6を前述の所定の位置に移動させ、所定の時間停止させるようになっている。
【0050】
プレート移動機構部8は、図2〜図4に示すように、右側ガイドレール81と、左側ガイドレール82と、支持ユニット83とにより構成される。
右側ガイドレール81は、左側ガイドレール82と対向する側面の長手方向に所定の幅および所定深さの溝が設けられ、溝の一側面に右側ラックギヤ81aが形成されている。
左側ガイドレール82は、右側ガイドレール81と対向する側面の長手方向に所定の幅および所定深さの溝が設けられ、溝の一側面に右側ラックギヤ81aと同様の左側ラックギヤが形成されている。
【0051】
支持ユニット83は、プレート部83aと、マイクロプレート10の四隅を支持する支持ユニット84と、プレート部83aに固定され右側ガイドレール81に係合する右側クランプ部85と、プレート部83aに固定され左側ガイドレール82に係合する左側クランプ部86と、右側支持部材87および左側支持部材88とにより支持されるサーボモータ89と、サーボモータ89に接続され駆動されるハスバ歯車機構部90と、ハスバ歯車機構部90に接続され先端部でピニオンギヤが形成された右側シャフト91と、ハスバ歯車機構部90に接続され先端部でピニオンギヤが形成された左側シャフト92と、図示しないコントローラとにより構成される。支持ユニット84は、マイクロプレート10をプレート部83aに支持するものであれば四隅を支持するものでなくてもよい。例えば、二隅と他の一箇所、マイクロプレート10の二側面部などに形成してもよい。
【0052】
以上の構成により、プレート移動機構部8においては、四隅の支持ユニット84にマイクロプレート10を装着すると、マイクロプレート10はプレート部83aに固定されるようになっている。制御部9の制御プログラムに従って、サーボモータ89が駆動され、サーボモータ89に接続されているハスバ歯車機構部90が駆動され、右側シャフト91および左側シャフト92が同時に同方向に回転するようになっている。右側シャフト91および左側シャフト92が同時に駆動されると、右側シャフト91の先端部のピニオンギヤが、右側ガイドレール81に形成された右側ラックギヤ81aと噛み合い、左側シャフト92の先端部のピニオンギヤが、左側ガイドレール82に形成された不図示のラックギヤと噛み合い、右側クランプ部85が右側ガイドレール81に案内され、左側クランプ部86が左側ガイドレール82に案内されて矢印A方向に移動するようになっている。
【0053】
また、制御部9の制御プログラムに従って、プレート移動機構部8によりマイクロプレート10が移動し、プレート静置部3に移動し停止すると分注ユニット移動機構部7が所定のマイクロプレート10の上部に移動して停止し、試薬Dなどの分注がなされ、抗体磁気ビーズBと分注された試薬Dなどとの化学反応が完了するまでの所定時間、例えば、試薬Dなどの種類に応じて数秒〜数分間静止するようになっている。
また、マイクロプレート10がプレート静置部3から洗浄部4に移動し停止すると、洗浄部4によりウェル10aの洗浄が開始し、洗浄が完了するまで所定時間静止するようになっている。さらに、マイクロプレート10が洗浄部4から測定部5に移動し停止すると、光学測定ユニット54が動作し受光部54hで透過光を受光し信号を出力するまで所定時間静止するようになっている。
【0054】
以上説明したプレート移動機構部8によるマイクロプレート10の移動は、制御部9の制御プログラムに従って、プレート静置部3と洗浄部4との間を複数回往復し所定の化学反応および洗浄がなされるようになっている。制御部9の制御プログラムが起動し、最終の分析工程まで、特定原材料の種類や液状試料Sの種類によって異なるが、30分〜1時間程度で全ての分析が完了するようになっている。
【0055】
本実施の形態に係るプレート移動機構部8においては、プレート移動機構部8が、駆動源にサーボモータを使用し駆動力をラックとピニオンにより直線運動に変換し、ガイドレールを使用してマイクロプレート10を水平移動させるよう構成した例を説明したが、マイクロプレート10を水平移動させる移動機構であれば、公知の移動機構で構成してもよい。例えば、サーボモータ、ステッピングモータなど公知の駆動源の動力をタイミングプーリおよびタイミングベルトにより水平移動に変換する機構、公知の駆動源の動力をボールネジおよびスライダにより水平移動に変換する機構、駆動源をガイドロッドに直接装着し駆動源自体がガイドロッドに沿って直線移動するリニアサーボモータによる直動機構などの公知の移動機構であってもよい。さらに、図5に示すように、マイクロプレート10が測定ポジション5に移動し停止した際に、プレート移動機構部8におけるガイドレール全体が、プレート収納筐体51内に完全に収納されるように構成してもよい。
【0056】
前述の公知の移動機構の具体例として、図6(A)〜(C)に示すプレート移動機構部100について説明する。
プレート移動機構部100は、左側ガイドレール101と、右側ガイドレール102と、マイクロプレート支持部103と、ベルト駆動部104と、連結部105とにより構成される。
左側ガイドレール101は、左側ステー107に設けた左側ガイドピン107aおよび107bと係合しマイクロプレート支持部103を案内するためのガイド溝101aを有し、右側ガイドレール102と対向する位置になるようプレート収納筐体51の左側内側面に固定されている。
右側ガイドレール102は、右側ステー108に設けた右側ガイドピン108aおよび108bと係合してマイクロプレート支持部103を案内するためのガイド溝102aを有し、左側ガイドレール101と対向する位置になるようプレート収納筐体51の右側内側面に固定されている。
【0057】
マイクロプレート支持部103は、マイクロプレート10を支持する支持プレート106と、支持プレート106に固定された左側ステー107および右側ステー108と、左側ステー107と右側ステー108とを連結した横ステー109と、ガイド溝101aと係合する左側ガイドピン107aおよび107bと、ガイド溝102aと係合する右側ガイドピン108aおよび108bとにより構成される。この構成により、ベルト駆動部104の駆動により連結部105を介して矢印AまたはB方向に水平移動する。
【0058】
ベルト駆動部104は、駆動プーリ113と、従動プーリ114と、タイミングベルト115と、駆動プーリ113を駆動する駆動モータ116と、従動プーリ114を支持するプーリ支持部117とにより構成される。この構成により、駆動モータ116が制御部9の指令に基づいて駆動すると、駆動プーリ113が回転しタイミングベルト115を介して従動プーリ114が回転する。
【0059】
連結部105は、タイミングベルト115に固定されたベルト側固定板121と、右側ステー108に固定されたステー側固定板122と両者を連結する連結板123とにより構成される。この構成により、タイミングベルト115が回動すると、その回動に伴ってベルト側固定板121が駆動プーリ113と従動プーリ114との間を回動し、連結板123を介してステー側固定板122がタイミングベルト115の回動方向と同方向に水平移動する。その水平移動に伴って、右側ステー108が水平移動する。右側ステー108が水平移動すると、支持プレート106が水平移動し、支持プレートに載置されたマイクロプレート10が水平移動するようになっている。
【0060】
以下にプレート移動機構部100の動作について説明する。
まず、駆動モータ116が制御部9の指令に基づいて、右方向(矢印C方向)に回転すると、駆動プーリ113が右回転し、タイミングベルト115が右廻りに回動し、従動プーリ114も右回転する。その回動に伴ってベルト側固定板121が矢印A方向に移動し、連結板123を介してステー側固定板122が矢印A方向に移動する。その移動に伴って、右側ステー108が矢印A方向に移動し、支持プレート106が水平移動し、支持プレートに載置されたマイクロプレート10が矢印A方向に水平移動する。
次いで、駆動モータ116が制御部9の指令に基づいて矢印C反対の左方向に回転すると、駆動プーリ113が左回転し、タイミングベルト115が左廻りに回動し、従動プーリ114も左回転する。その回動に伴ってベルト側固定板121が矢印B方向に移動し、連結板123を介してステー側固定板122が矢印B方向に移動する。その移動に伴って、右側ステー108が矢印B方向に移動し、支持プレート106が水平移動し、支持プレートに載置されたマイクロプレート10が矢印B方向に水平移動する。
【0061】
制御部9は、光学測定ユニット54から送られた信号を演算処理するための集積回路(Integrated Circuit)、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路、演算処理結果を記憶するRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体および装置本体部2に設けた送受信部11と無線通信可能な送受信部とで構成される。例えば、制御部9は、PCなどで構成される。
以上説明したように本実施の形態においては、装置本体部2と制御部9との接続を無線LAN(Local Area Network)などを利用した無線接続で構成する場合について説明したが、USBケーブルまたはRS−232ケーブルなどによるケーブル接続で構成してもよい。
【0062】
以上の構成により、プレート静置部3、洗浄部4、測定部5、分注ユニット部6および分注ユニット移動機構部7からなる各部における動作を制御するようになっている。また、以下のように、光学測定ユニット54から送られた信号に基づいて液状試料Sに含まれている特定原材料などの物質の濃度を求めることができる。例えば、吸光度を測定する場合は、液状試料Sに当てる光の強さをXとし、液状試料Sを通過した後の光の強さをYとすると、まず、透過率を算出処理して求める。透過率をTとすると、透過率Tは次式、T(%)=X/Y×100で算出される。通常は、純水などをいれた空セル(マイクロプレート10)で100%合わせ(キャリブレーション)をして、次にウェル10a内の液状試料Sを対象として測定するので、透過率は光学測定ユニット54から送られた信号から直接測定することができ、演算処理する必要はない。次に、算出された透過率から吸光度を求める。吸光度をAとすると、一般に吸光度Aは、A=−log10(lo/l)で算出される。loは、空セル(マイクロプレート10)を透過した光の透過光強度lは、マイクロプレート10および液状試料Sの双方を透過した光の透過光強度を表す。本実施の形態においては、空セル(マイクロプレート10)で100%合わせ(キャリブレーション)をしているので、吸光度は次式、吸光度=−log(T/100)で求めることができる。なお、100%合わせを行わず、測定の都度loを測定して吸光度Aを求めてもよい。
【0063】
吸光度Aが算出されると、一般に、溶液中の光を吸収する成分の濃度が吸光度Aと比例するので、予め濃度の分かった標準試料を用いて、濃度と吸光度Aの関係を求めて「検量線」を作っておき、液状試料Sの吸光度Aを測定することで液状試料Sに含まれている特定原材料などの物質の濃度を求めることができる。
【0064】
送受信部11は、例えば、周波数が2.4GHz帯の無線LANで、モデム、アンプ、アンテナおよび送受信切換スイッチなどで構成され、測定部5から出力された信号を制御部9に送信し、制御部9から送信される制御プログラム情報などを受信するようになっている。
【0065】
以上のように本実施の形態においては、装置本体部2と制御部9との接続を無線LANで構成する場合について説明したが、送受信部11においても通信内容が傍受される可能性のないUSBケーブルまたはRS−232ケーブルなどによるケーブル接続になるようにコネクタを備えた構成でもよい。
【0066】
表示部12は、表示デバイスなどで構成され、図1に示すように、例えば、PCの構成部品として液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。以上の構成により、表示部12には、分析装置の運転条件、緊急停止情報、エラーやアラーム情報、メンテナンス情報、動作前点検情報、動作自己診断情報、分析結果、検量線のグラフ、データマトリックステーブル、特定原材料、液状試料S、各工程のタイムチャートその他の情報が必要に応じて表示されるようになっている。
【0067】
操作部13は、キーボードなどで構成され、図1に示すように、例えば、表示部12とともにPCの構成部品として操作キーなどの押しボタンキーで構成される。
以上の構成により、操作部13から同時に検査する全ての液状試料Sの名称の入力、液状試料S毎に1つまたは複数の実施する測定項目の設定、液状試料Sの数量、マイクロプレート10のウェルに収容する液状試料Sの配置情報その他の設定など、所定の情報を入力することができる。操作部13から所定の情報を入力し、分析条件が決定され、設定操作をすると、制御部9における制御プログラムにより、入力された情報に基づいて最速な工程が自動的に決定され、決定されたタイムチャートが表示部12に表示されるようになっている。
【0068】
チップラック15は、使用の都度廃棄して新たなチップを使用することができるディスポーザブルチップと、このディスポーザブルチップを出し入れ自在に保持した棚とにより構成される。チップラック15においては、分注ユニット部6が分注ユニット移動機構部7により、チップラック15上の所定の位置に移動停止すると、ノズル62がノズル昇降機構により降下し、ノズル62でディスポーザブルチップをホールドした後、棚からディスポーザブルチップが離脱させる。
【0069】
試薬ラック16は、ウェル10a内の抗体磁気ビーズBを化学反応させる所定の試薬Dが注入された容器と、この容器を保持した棚とにより構成される。試薬ラック16においては、分注ユニット部6が分注ユニット移動機構部7により、試薬ラック16上の所定の位置に移動停止すると、ディスポーザブルチップを装着したノズル62がノズル昇降機構で降下し、試薬ラック16上の容器に注入されている抗体溶液、酵素基質溶液および反応停止溶液などからなる試薬Dがシリンジポンプの動作によりノズル62から吸引されるようになっている。
【0070】
液状試料および標準溶液ラック17は、ウェル10a内に注入される所定の液状試料Sおよび標準溶液が収容された容器と、この容器を保持した棚とにより構成される。液状試料および標準溶液ラック17においては、分注ユニット部6が分注ユニット移動機構部7により、液状試料および標準溶液ラック17上の所定の位置に移動停止すると、ノズル62がノズル昇降機構により降下し液状試料および標準溶液ラック17内に収容されている液状試料S、標準溶液および抗体磁気ビーズBの溶液などをシリンジポンプの動作によりノズル62から吸引されるようになっている。
【0071】
廃棄エリア18は、上面が開口で底面に図示しない廃棄口が形成された箱体で構成されている。廃棄口は、廃棄チップ容器22に接続した廃棄用配管に形成された廃棄通路と連通している。この構成により、廃棄エリア18においては、分注ユニット部6が分注ユニット移動機構部7により、廃棄エリア18上の所定の位置に移動停止すると、分注ユニット部6が試薬D、液状試料S、標準溶液などを分注し使用済みのディスポーザブルチップをノズル62から離脱させて廃棄することを許容し、廃棄されたディスポーザブルチップは廃棄通路を通って廃棄チップ容器22に集積されるようになっている。
【0072】
本実施の形態に係る分析装置1においては、制御部9はPCで構成した例を説明したが、各構成部分を制御するCPU(Central Processing Unit)、CPUを立ち上げるOS(Operating System)やその他のプログラムおよび制御用パラメータなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータなどを記憶するRAM(Randam Access Memory)と、アプリケーションソフトや所定のデータを不揮発かつ書替可能に記憶するEEPROM(Electrycally Erasable Programamble ROM)と、所定の信号を入出力するインターフェース及びこれらの構成部分を接続するバスを装置本体部2に設けてもよい。例えば、分析装置1における分注ユニット移動機構部7、プレート移動機構部8、プレート静置部3における液状試料Sおよび試薬Dとの化学反応の制御、洗浄部4および測定部5などの各構成部分をCPUによって動作するようにしてもよい。すなわち、CPUにより装置本体部2内に格納した各構成部分に対応する制御プログラムを実行し、各構成部分を動作させるようにしてもよい。
【0073】
次に、本実施の形態に係る分析装置1における特定原材料の分析手順について、図10および図11のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
まず、分析の事前準備を行う。事前準備は、例えば、分析しようとする食品サンプルを粉砕、抽出液を加え、振盪、ろ過および希釈などの前処理を行い液状試料Sを作製する。必要があれば、酵素複合体試薬の調製を行っていく。
事前準備が完了すると、オペレータはカバー26を閉めた状態で装置を起動し、分析しようとする特定原材料の種類と液状試料Sの種類を操作部から入力し、制御部9の制御プログラムを実行させる。次いで、制御プログラムの実行により表示部12の表示画面に表示された内容(例えば、本実施の形態に係る分析装置1にセットすべき試薬の種類など情報)に従って、カバー26を開け、液状試料S、酵素複合体試薬、マイクロプレート10を分析装置1にセットして、カバー26を閉める(ステップS10)。
【0075】
分析の準備が終了して装置本体部2のカバー26が閉じられ、操作部13の制御プログラムの実行キーが押されると、制御部9の制御プログラムが起動する。制御プログラムが起動した以降の各ステップは制御プログラムに基づいて実行され、各分析行程が完了し分析結果が表示部12に表示されるまで、全て自動的に各ステップが進行する。この制御プログラムは、分析しようとする特定原材料毎に対応して設定されている。以下、特定原材料の一般的な分析処理のステップについて説明する。
【0076】
例えば、マイクロプレート10が、液状試料Sと試薬Dとの化学反応が行われるホームポジションであるプレート静置ポジション3に移動され停止する(ステップS12)。
次いで、分注ユニット部6が、分注ユニット移動機構部7により、ディスポーザブルチップの装着、液状試料Sと試薬Dなどの吸引と分注、ディスポーザブルチップの廃棄を繰り返す。分注は、プレート静置ポジション3にて行われ、分注ユニット部6から液状試料Sおよび標準溶液がマイクロプレート10のウェル10aに分注され(ステップS13)、抗体が結合した抗体磁気ビーズBがマイクロプレート10のウェル10aに分注される(ステップS14)。抗体が結合した抗体磁気ビーズBが分注されると、プレート静置部3が所定の温度、例えば25℃で維持されるよう制御部9の指令に基づいてペルチェモジュール31によりコントロールされ、恒温下で液状試料Sおよび標準溶液と抗体磁気ビーズBとの化学反応が促進される(ステップS15)。
【0077】
次いで、マイクロプレート10がプレート移動機構部8により洗浄ポジション4に水平移動され停止する(ステップS16)。洗浄部4の吸引ノズル41aおよび吐出ノズル41bの位置とウェル10aとの位置が合うように、マイクロプレート10がプレート移動機構部8によって水平移動しながらウェル10aの洗浄が行われる(ステップS17)。この洗浄部4においては、昇降機構41eにより洗浄ヘッドユニット41が所定の位置に下降した後、図9に示すように、磁石42に引寄せられた抗体磁気ビーズBを残して液状試料Sが吸引ノズル41aで吸引される。吸引ノズル41aにより吸引された液体試料Sは、液体試料排出用配管41cを通って廃液ボトル23に排出される。次いで、洗浄液が洗浄液ボトル24、25から洗浄液供給用配管41dを介して洗浄部4に供給され、吐出ノズル41bから吐出される。吐出された洗浄液は、吸引ノズル41aにより吸引され液体試料排出用配管41cを通って廃液ボトル23に排出される。
【0078】
次いで、マイクロプレート10がプレート移動機構部8によりプレート静置ポジション3に水平移動され停止する(ステップS18)。停止後、酵素標識抗体溶液が分注ユニット部6のノズル62からマイクロプレート10のウェル10aに分注される(ステップS19)。酵素標識抗体溶液が分注されると、プレート静置部3が所定の温度、例えば25℃で維持されるよう制御部9の指令に基づいてペルチェモジュール31によりコントロールされ、恒温下で酵素標識抗体溶液と抗体磁気ビーズBとの化学反応が促進される(ステップS20)。
次いで、図10および図11に示す(A)に進み、洗浄部4の吸引ノズル41aおよび吐出ノズル41bの位置とウェル10aとの位置が合うように、マイクロプレート10がプレート移動機構部8によって水平移動され停止する(ステップS25)。次いで、洗浄部4においては、まず、昇降機構41eにより洗浄ヘッドユニット41が所定の位置に下降した後、図9に示すように、磁石42に引寄せられた抗体磁気ビーズBを残してウェル10a内の溶液が吸引ノズル41aで吸引され、その後、磁石42をマイクロプレート10より遠ざけた状態で吐出ノズル41bから洗浄液を吐出することを繰り返してウェル10aが洗浄される(ステップS26)。
【0079】
再び、マイクロプレート10がプレート移動機構部8によりプレート静置ポジション3に水平移動され停止する(ステップS27)。停止後、酵素基質溶液がウェル10aに分注される(ステップS28)。酵素基質溶液が分注されると、プレート静置部3が所定の温度、例えば25℃で維持されるよう制御部9の指令に基づいてペルチェモジュール31によりコントロールされ、恒温下で酵素基質溶液と抗体磁気ビーズBとの化学反応が促進される(ステップS29)。所定の時間の経過により反応停止液がウェル10aに分注される(ステップS30)。反応停止液がウェル10aに分注されると、酵素基質溶液と抗体磁気ビーズBとの化学反応が停止、終了する。
【0080】
次いで、マイクロプレート10がプレート移動機構部8により測定ポジション5に水平移動され停止する(ステップS31)。続いて、測定ポジション5のシャッタ52が閉じられ測定部5は暗室となる。次いで、測定部5において、光源のハロゲンランプ54aが点灯すると、光は分光用フィルタ54bにより所定の波長λに分光され、その所定波長λの光が、光ファイバ54cおよび集光レンズ54dを経由しウェル10a内の液状試料Sに投光されて液状試料S内を光が透過し、さらに集光レンズ54fを経由して受光部54hで受光する。同時に16個のウェル10a内の液状試料Sに対して投受光される。16個のウェル10a内の液状試料Sへの投受光が終了すると、プレート移動機構部8によりマイクロプレート10が1列分移動し、次の16個のウェル10aの列への投受光がなされる。受光部54hが光を受光すると、液状試料Sを透過した光の量に比例した電流が発生し、発生した電流に応じた信号が送受信部11を経由して制御部9に出力される(ステップS32)。
【0081】
続いて、制御部9が信号を受領すると、信号に基づいて、液状試料Sの透過率が算出される。次に、算出された透過率から吸光度が算出される。例えば、透過率をTとし吸光度をAとすると、次式、A=−log(T/100)で吸光度を求めることができる。
吸光度Aが算出されると、予め濃度の分かった標準試料を用いて作成された濃度と吸光度の関係をグラフで示した「検量線」に基づいて、液状試料Sの吸光度に対応する液状試料Sに含まれている特定原材料の物質の濃度、すなわち被分析物の食品サンプルに含まれている特定原材料、例えば、卵の食品サンプル中の含有量を求めることができる。求められた含有量は、表示部12に出力し表示される(ステップS33)。次いで、洗浄液、使用済みチップの廃棄、残試薬Dの保存がなされる(ステップS34)。
最後に、特定原材料の分析処理を続行するか否かが判断され(ステップS35)、続行しない場合は、特定原材料の分析処理を終了する。続行する場合は、図10および図11に示す(B)に進み、順次繰り返し行われる。
【0082】
以上のように本実施の形態における特定原材料の分析手順については、測定部5において、液状試料Sの吸光度を測定し特定原材料に含まれている特定物質の濃度を分析する場合について説明したが、測定部5において、吸光度の代わりに蛍光強度または発光強度を測定および算出し特定原材料に含まれている特定物質の濃度を分析してもよい。
蛍光強度の測定は、具体的には、以下の手順で行われる。まず、測定対象となる抗体に蛍光色素を標識しておき、励起波長λの光を液状試料Sに照射する。励起波長λの光を液状試料Sに照射すると、蛍光色素から蛍光が放射され、放射された蛍光は光学測定ユニット54における蛍光強度を測定するよう構成されている蛍光測定モジュールの蛍光波長選択部を通過する。蛍光波長選択部では、通過した蛍光の特定の波長λの光のみ検出し、これを電気信号に変換しその信号を制御部9に出力する。制御部9は、出力信号に基づいて蛍光強度を算出する。この蛍光強度は、蛍光物質の濃度に比例することを利用し、予め蛍光強度と蛍光物質の濃度との関係を定量化しておき、この定量化した蛍光強度と蛍光物質の濃度との関係に基づいて制御部9において蛍光強度を求めることにより、その蛍光物質の濃度を求めることができる。
【0083】
発光強度の測定は、具体的には、以下の手順で行われる。まず、測定対象となる抗体に発光色素を標識しておき、所定の波長λの光を液状試料Sに照射する。所定波長λの光を液状試料Sに照射すると、発光色素が発光し、その光を光学測定ユニット54において発光強度を測定するよう構成されている発光測定モジュールで検出し、検出した光を電気信号に変換し、その信号を制御部9に出力する。制御部9は、出力信号に基づいて検出した光の光強度を算出する。発光色素が発光する光強度が物質の濃度に比例することを利用し、予め発光色素が発光する光強度と発光物質の濃度との関係を定量化しておき、この定量化した光強度と発光物質の濃度との関係に基づいて制御部9において発光強度を求めることにより、その発光物質の濃度を求めることができる。このような光強度を測定するエライザ法(酵素免疫測定法)においては、吸光度および蛍光強度を測定する方法と比較して、光源を必要としないので、より簡易な測定装置により濃度を分析することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る分析装置1では、液状試料Sを収納するウェル10aを有するマイクロプレート10を静置するプレート静置部3と、マイクロプレート10のウェル10aを洗浄する洗浄部4と、ウェル10aに収納された液状試料Sの吸光度、蛍光強度または発光強度を測定する測定部5と、液体を吸入し吐出することにより液体をウェル10aに分注する分注ユニット部6と、分注ユニット部6をX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させる分注ユニット移動機構部7と、プレート静置部3、洗浄部4、測定部5、分注ユニット部6および分注ユニット移動機構部7からなる各部における動作を制御する制御部9と、各部を支持する装置本体部2とを備え、液状試料Sに含まれる所定物質の含有量を分析するよう構成され、装置本体部2が、マイクロプレート10を静置するプレート静置ポジション3、ウェル10aを洗浄する洗浄ポジション4および液状試料Sの吸光度を測定する測定ポジション5からなる3つの異なるポジションを有し、マイクロプレート10がプレート静置ポジション3、洗浄ポジション4および測定ポジション5のいずれかのポジションに就くようにマイクロプレート10を水平移動させるプレート移動機構部8を備えている。
【0085】
その結果、マイクロプレート10は、プレート移動機構部8によりプレート静置ポジション3、洗浄ポジション4および測定ポジション5の各ポジションに水平に移動されるので、従来の分析装置のようにX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動して各工程に対応した場所に静置されることはない。したがって、本発明に係る分析装置1は簡易な構造にすることができ、マイクロプレート10の各工程に対応した場所における着脱の必要がなくなるので、簡易かつ確実にマイクロプレート10を移動することができるという効果がある。
【0086】
また、プレート移動機構部8は、マイクロプレート10を着脱自在に支持する支持ユニット83とを有し、マイクロプレート10を右側ガイドレール81および左側ガイドレール82に沿って水平移動させている。その結果、分析作業の始動時にマイクロプレート10を支持ユニット83に装着すると、分析作業の終了時までは離脱させる必要はない。また、マイクロプレート10が支持ユニット83に装着されると、右側ガイドレール81および左側ガイドレール82に沿ってプレート静置ポジション3、洗浄ポジション4および測定ポジション5のいずれかのポジションに就くようにプレート移動機構部8により移動するので、一軸の直線移動となり、マイクロプレート10の移動動作が簡易になる効果がある。
【0087】
また、各ポジションは、測定ポジション5、プレート静置ポジション3および洗浄ポジション4の順かまたは、測定ポジション5、洗浄ポジション4およびプレート静置ポジション3の順に略同一の平面内に位置するようにしてもよい。その結果、各ポジションが測定ポジション5、プレート静置ポジション3および洗浄ポジション4の順か、または、測定ポジション5、洗浄ポジション4およびプレート静置ポジション3の順に略同一の平面内に位置すると、プレート移動機構部によるマイクロプレートの移動動作の無駄がなく効率よくマイクロプレートを移動させることができる。
【0088】
また、プレート移動機構部8は、前記測定ポジション5においてマイクロプレート10内の液状試料Sの吸光度が測定されている間、プレート静置ポジション3においてマイクロプレート10内の液状試料Sが化学反応している間および洗浄ポジション4においてマイクロプレート10内の液状試料Sの洗浄がなされている間は、マイクロプレート10を各ポジションにおいて停止させるように構成されている。その結果、マイクロプレート10が各ポジションにおいて停止している間に、各ポジションにおける作業が進行するので、プレート移動機構部8の動作が簡易となる。
【0089】
また、洗浄部4は、洗浄ポジション4に就いたマイクロプレート10の底面部近傍に磁石を備え、ウェル10aに収容され抗体磁気ビーズBを含む液体試料Sを洗浄する際、抗体磁気ビーズBがウェル10aの外に排出されないように磁石42の磁気引力で抗体磁気ビーズBをウェル10a内に留めるようにしてもよい。その結果、洗浄部4が、洗浄ポジション4に就いたマイクロプレート10の底面部近傍に磁石42を備えていると、分注ユニット部6でウェル10aに収容され抗体磁気ビーズBを含む液体試料Sを吸引する際に、抗体磁気ビーズBが磁石42に引き寄せられるので、抗体磁気ビーズBが吸引されずにウェル10a内に残留する。その結果、従来のように同一の抗体が結合した複数のウェルが一列になったウェルセットを使用する必要はなく、特定原材料に対応した抗体磁気ビーズBを任意のウェル10aに分注するだけで特定原材料を分析できるので、マイクロプレート10の多数のウェル10aを任意に区別して使用でき、マイクロプレート10に無駄が生ずることはなく、使い勝手が向上する。
【0090】
また、抗体磁気ビーズBは、表面部に抗体を結合した磁性体を有する微粒子からなり、液体試料Sに含まれ、人体にアレルギー症状を引き起こす特定のアレルギー物質からなる特定原材料を捕捉するものでも構成されるので、特定原材料の分析に好適である。
【0091】
また、プレート静置部3は、液状試料Sの温度を制御するペルチェモジュール31を備えているので、ウェル10aに収容された液状試料Sが化学反応する際に、好適な温度の環境の下で化学反応が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明は、分析装置の構造が簡易で、マイクロプレートの着脱がなく簡易かつ確実にマイクロプレートを移動することができるという効果を有し、食品になどに含まれている特定物質の含有量を分析する装置、例えば、特定原材料自動分析装置、特定物質自動分析システムなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施の形態に係る分析装置を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る分析装置の一実施の形態におけるプレート移動機構部がマイクロプレートをプレート静置部で停止させたときの分析装置の部分斜視図である。
【図3】本発明に係る分析装置の一実施の形態におけるプレート移動機構部がマイクロプレートを洗浄部で停止させたときの分析装置の部分斜視図である。
【図4】本発明に係る分析装置の一実施の形態におけるプレート移動機構部がマイクロプレートを測定部で停止させたときの分析装置の部分斜視図である。
【図5】本発明に係る分析装置の一実施の形態におけるプレート移動機構部を測定部に収納したときの分析装置の部分斜視図である。
【図6】(A)は、本発明に係る分析装置の一実施の形態におけるプレート移動機構部の斜視図である。(B)は、図6(A)のプレート移動機構部をB方向から見た部分斜視図である。(C)は、図6(A)のプレート移動機構部をA方向から見た正面図である。
【図7】本発明に係る分析装置の一実施の形態における分注ユニット部の構造を示す概念図である。
【図8】本発明に係る分析装置の一実施の形態における光学測定ユニット部の側面図である。
【図9】本発明に係る分析装置の一実施の形態における分注ユニット部の洗浄フローを示す概念図である。
【図10】本発明に係る分析装置の一実施の形態における液状試料の分析一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る分析装置の一実施の形態における液状試料の分析一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1 分析装置
2 装置本体部
2a 収納筐体
2b カバー取付ボス
3 プレート静置部(プレート静置ポジション)
4 洗浄部(洗浄ポジション)
5 測定部(測定ポジション)
6 分注ユニット部
7 分注ユニット移動機構部
8 プレート移動機構部
9 制御部
10 マイクロプレート
10a ウェル
11 送受信部
12 表示部
13 操作部
15 チップラック
16 試薬ラック
17 液状試料および標準溶液ラック
18 廃棄エリア
21 電源ユニット
22 廃棄チップ容器
23 廃液ボトル
24、25 洗浄液ボトル
26 カバー
26a カバー取付穴
31 ペルチェモジュール
32 筐体
41 洗浄ヘッドユニット
41a 吸引ノズル
41b 吐出ノズル
41c 液状試料排出用配管
41d 洗浄液供給用配管
41e 昇降機構
42 磁石
43 磁石移動機構
44 筐体
51 プレート収納筐体
51a 出入口
52 シャッタ
52a、52b ヒンジ
54 光学測定ユニット
54a ハロゲンランプ
54b 分光用フィルタ
54c 光ファイバ
54d、54f 集光レンズ
54e、54g レンズ基板
54h 受光部
61 筐体
61a 背面
62 ノズル
71 X軸移動レール
72 Y軸移動レール
73 Z軸移動レール
81 右側ガイドレール
81a 右側ラックギヤ
82 左側ガイドレール
83 支持ユニット
83a プレート部
84 支持ユニット
85 右側クランプ部
86 左側クランプ部
87 右側支持部材
88 左側支持部材
89 サーボモータ
90 ハスバ歯車機構部
91 右側シャフト
92 左側シャフト
100 プレート移動機構部
101 左側ガイドレール
101a ガイド溝
102 右側ガイドレール
102a ガイド溝
103 マイクロプレート支持部
104 ベルト駆動部
105 連結部
106 支持プレート
107 左側ステー
107a、107b 左側ガイドピン
108 右側ステー
108a、108b 右側ガイドピン
109 横ステー
113 駆動プーリ
114 従動プーリ
115 タイミングベルト
116 駆動モータ
117 プーリ支持部
121 ベルト側固定板
122 ステー側固定板
123 連結板
B 抗体磁気ビーズ
D 試薬
S 液状試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状試料を収納するウェルを有するマイクロプレートを静置するプレート静置部と、
前記マイクロプレートのウェルを洗浄する洗浄部と、
前記ウェルに収納された前記液状試料の光学特性を測定する測定部と、
液体を吸入し吐出することにより液体を前記ウェルに分注する分注ユニット部と、
前記分注ユニット部をX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に移動させる分注ユニット移動機構部と、
前記プレート静置部、前記洗浄部、前記測定部、前記分注ユニット部および前記分注ユニット移動機構部からなる各部における動作を制御する制御部と、
前記各部を支持する装置本体部と、
を備え、前記液状試料に含まれる所定物質の含有量を分析する分析装置において、
前記装置本体部が、前記マイクロプレートを静置するプレート静置ポジション、前記ウェルを洗浄する洗浄ポジションおよび前記液状試料の前記光学特性を測定する測定ポジションからなる3つの異なるポジションを有し、前記マイクロプレートが前記プレート静置ポジション、前記洗浄ポジションおよび前記測定ポジションのいずれかのポジションに就くように前記マイクロプレートを水平移動させるプレート移動機構部を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記プレート移動機構部が、前記マイクロプレートを着脱自在に支持する支持ユニットとガイドレールとを有し、前記マイクロプレートを前記ガイドレールに沿って水平移動させることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記各ポジションが、前記測定ポジション、前記プレート静置ポジションおよび前記洗浄ポジションの順に略同一の平面内に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記各ポジションが、前記測定ポジション、前記洗浄ポジションおよび前記プレート静置ポジションの順に略同一の平面内に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項5】
前記プレート移動機構部が、前記測定ポジションにおいて前記マイクロプレート内の前記液状試料の前記光学特性が測定されている間、前記プレート静置ポジションにおいて前記マイクロプレート内の前記液状試料が化学反応している間および前記洗浄ポジションにおいて前記マイクロプレート内の前記液状試料の洗浄がなされている間は、前記マイクロプレートを各ポジションにおいて所定時間停止させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記洗浄部が、前記洗浄ポジションに就いた前記マイクロプレートの底面部近傍に磁石を備え、前記ウェルに収容され磁気ビーズを含む前記液体試料を洗浄する際、前記磁気ビーズが前記ウェル外に排出されないように前記磁石の磁気引力で前記磁気ビーズを前記ウェル内に留めることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記磁気ビーズが、表面部に抗体を結合した磁性体を有する微粒子からなり、前記液体試料に含まれ、人体にアレルギー症状を引き起こす特定のアレルギー物質からなる特定原材料を捕捉することを特徴とする請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記プレート静置部が、前記マイクロプレートのウェルに収容された前記液状試料が化学反応する際に、前記液状試料の温度を制御する温度制御ユニットを有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−151594(P2008−151594A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338704(P2006−338704)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】