説明

分析装置

【課題】 複数の処理を行う分析装置において、装置の設置床面積が増大することを低減する。また、その際に処理部間の試料およびピペットチップの受渡しを行うための機構により床面積が増大することを低減する。
【解決手段】 複数の処理部を、互いに装置の鉛直方向に配列する。更に、前記試料を鉛直方向の処理部間において搬送する搬送機構を有し、試料の受渡しを処理部の上方もしくは処理部にて行う。また、ピペットチップの受渡しを処理部の上方もしくは処理部にて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関し、特にDNAマイクロアレイを用いた遺伝子検出などの試料の生化学反応処理又は試料の生化学検出処理を施す処理を有する生化学分析を行う分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の分析を行う技術分野において、分析作業の自動化が強く求められてきた。
【0003】
試料の分析の例示として、DNAマイクロアレイ、DNAチップ等の試験片を用いた遺伝子分析をあげることができる。スライドガラスやシリコン基板などからなる基板の表面に、多数の種類のプローブ核酸をプローブスポットとしてマトリックス上に配置固定したDNAマイクロアレイと、蛍光色素などで標識付けされたDNAなどの試料とをハイブリダイゼーション条件下で接触させる。DNAマイクロアレイおよび試料に、互いにハイブリダイゼーション反応する核酸同士が含まれていたとき、DNAマイクロアレイに標識物質がプローブ核酸を介して固定される。そして、どのプローブスポットに標識物質が結合したかを検出することによって、ハイブリダイゼーション反応した核酸の種類を特定することができる。
【0004】
遺伝子分析の処理フローの代表的な例として、(1)試料から核酸を抽出する抽出工程、(2)抽出した核酸を増幅する増幅工程、(3)増幅した核酸とDNAマイクロアレイのプローブ核酸とのハイブリダイゼーション反応を生じせしめる工程、(4)検出工程、という順序で行う分析方法が挙げられる。この中で上記(1)〜(3)の工程では、試料および試薬の液体ハンドリングや容器ハンドリングにおいて煩雑な操作が必要であり、省力化、時間短縮の観点から自動化することが強く求められている。
【0005】
また,遺伝子分析以外にも,生体組織やタンパク質等の試料に対する多種多様の分析が行われており,それらの分析においても同様に自動化が求められている。
【0006】
従来技術として、試料分析の自動化を実現する試みがいくつか提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1の自動分析装置では、分注手段を備えたプレートステージの下方にプレート内の試料を分析する分析器およびまたはプレートを洗浄する洗浄器とを配設し、プレートステージからプレートを搬送する搬送手段を備えた装置構成が開示されている。
【0008】
また、特許文献2の液体クロマトグラフ分析計およびプレラベル反応処理方法では、蛍光強度計とカラムパネルを上下に積層して設置する装置構成が開示されている。しかし、各処理部間における具体的な搬送方法は何ら開示されていない。
【特許文献1】特開平11−223635号公報
【特許文献2】特公平8−20426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
まず、本発明者は、利用者が直接処理間での試料の移送を行う方法と、処理部間を接続する液送管のようなものを用意してポンプ手段等を利用して試料を移送する方法を考えた。しかし、利用者が作業する場合には人為的失敗の可能性は否定できないし、送液管を使用する場合は液体のコンタミネーションは避けられない。そして、いずれの場合も処理の複雑化に対応できる構成とはなり得ないことが判明したのである。
【0010】
上記のように試料分析作業を自動化する試みはある。しかし、分析ステップの複雑化に対応し、且つ装置の小型化、特に設置床面積を低減するという課題を同時に解決する装置は依然開発されていなかった。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、複数の連続的な処理(分析ステップ)を必要とする分析装置において、複雑な処理を可能とし、且つ装置の小型化に貢献する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る分析装置は、試料を処理する処理部の複数を有する分析装置であって、複数の処理部の少なくとも2つが、装置の鉛直方向に配列されており、更に、鉛直方向の処理部間において試料を搬送する搬送機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の処理部を備えた分析装置の設置床面積を低減することができる。また、分析装置において、試料を搬送する搬送機構を用いて処理部間での試料および試薬等の移動を行う構成のために、必要な設置床面積を低減することができる。また、分析装置において、試料の搬送とともに処理部間でのピペットチップの移動を行う構成も採用でき、このために必要な設置床面積をも低減することができるとともに、ピペットチップの使用数を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(用語の定義)
以下に本発明で使用する用語の定義を説明する。なお、説明中の例示は限定を意図しない。単数か複数かを特に明示しない限り、用語の単数形および複数形の両方が定義内に存在可能である。
【0015】
1.試料
本発明に用いられる試料としては、分析を行う対象物を意味する。例えば、生体から採取した物質(血液等の体液、生体組織、便、尿、喀痰等)や、植物から採取した物質(葉、茎、根、花、実等)や、環境から採取した物質(土壌、水、塵、金属等)、工業的産物(樹脂等)をあげることができる。また、上記の物質になんらかの処理を施した、試料由来の物質も試料の定義に含む。
【0016】
2.処理
本発明に用いられる処理としては、物質に対して生物的、化学的、物理的、機械的、電気的等の外的影響を及ぼすことにより、物質の性質を変化させたり、観察したりする等の目的を達しようとするための行為を意味する。例えば、試薬を投入する、液体を撹拌する、担体に吸着させる、温度を制御する、温度を計測する、電界を印加する、電界を計測する、振動させる、圧力を加える、圧力を計測する、光線を照射する、光量を検出する、磁界を印加する、磁界を計測する、等の行為が含まれる。またこれらを同時または順次に組み合わせて行う行為も含む。このうち、生化学反応処理とは、生化学反応を生ぜしめる処理、その生化学反応を生ぜしめるために行う前処理、およびその生化学反応を生ぜしめた後に行う後処理を含めて、生化学反応を生ぜしめ、分析する際に必要とされる処理を意味する。生化学検出処理としては、生化学反応の結果生じた反応前の試料の状態との違いを検出するための処理が挙げられる。具体的には、DNAマイクロアレイのような反応後のハイブリッド体における蛍光または化学発光を検出する処理、試料をゲル電気泳動処理した泳動後の位置を測定する処理、溶液中で反応後の試料に特異的に結合する物質を検出する処理(ハイブリッド体に対するインターカレーター等)、などが挙げられる。
また、対象とする試料は、2つの処理間で同一であっても、異なっていてもよい。
【0017】
3.生化学反応
生物由来の物質または組織(細胞、核酸、タンパク質、ウイルス等)に対して生物的または化学的なメカニズムにより起こる反応を意味する。例えば、血液成分の分離、細胞膜または細胞壁の破砕、核酸の担体への吸着、核酸の精製、核酸の増幅、核酸のハイブリダイゼーション、親和性(アフィニティー)による結合、メチル化等を挙げることができる。また、これらの組み合わせも含まれる。
【0018】
4.試料搬送機構
試料搬送とは、試料を、異なる場所に移動させることをいう。
例えば、ピペットチップ中の液状試料を容器に吐出する、容器中の液状試料をピペットチップで吸引する、容器に固形試料を落下させる、移動機構に試料を保持して試料が動くように機構を作動させる、液体試料が入った容器を移動させる、容器内で一つのチャンバから別のチャンバに液状試料を移す等の行為が含まれる。本発明に用いられる試料搬送機構としては、ピペットチップを先端に保持可能に構成され、ピペットチップ中への試料の吸引およびピペットチップ中の試料溶液を吐出可能に構成されたピペットユニットや、試料を収容した容器を把持して所定の位置に移動できるハンドロボット等が挙げられ、これらを組み合わせて処理部間の試料搬送機構を構成すると好ましい。
【0019】
5.複数の処理部
前述した複数の処理をそれぞれ行うために、本発明においてはその処理部が複数存在している。複数の処理部を有することで、異なる処理を並行して行うこともできる。複数の処理の具体例として、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子を検出する装置であれば、組織から核酸を抽出する核酸抽出部、抽出した核酸をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法などにより増幅する核酸増幅部、増幅した核酸をDNAマイクロアレイと反応させるハイブリダイゼーション部、DNAマイクロアレイとの反応を検出する検出部、の4つの処理部を個別に有している構成が挙げられる。2つの例としては、下部に検出部、上部にハイブリダイゼーション部を鉛直方向に配列する構成が挙げられる。
【0020】
抗原または抗体を基板に固定したチップを用いる検出装置であれば、検体をチップに反応させる反応工程、2次抗体などをチップに更に供給し反応させる第2反応工程、結合に関与しなかった抗原または抗体を除去する洗浄工程、結合した抗原または抗体に付与されている蛍光標識の蛍光強度を測定する検出工程、の各工程を2以上に分割された処理部で連続的に行う構成とできる。
【0021】
他に、細胞培養による分析装置であれば、培養ボトル内で行う細胞の1次培養工程、培地上で行う細胞の2次培養工程、培養された細胞個数を光学的に検出する検出工程を,分割された処理部で連続的に行う構成とできる。
【0022】
6.鉛直方向
本発明において、装置の鉛直方向とは、その装置が標準的な動作が可能な状態で設置されている際の鉛直方向を示している。
【0023】
複数の処理部が鉛直方向に配列されているとは、処理部が占有する空間において、装置の鉛直方向に対して最大となる断面を切り出した際、各処理部の断面が鉛直方向に対して重なりを持っている状態である。
【0024】
重なる面積が大きいほど設置床面積の減少させる効果を有するが、必ずしも全てが重なっている必要はなく、複数の処理部のレイアウト構成に応じて設計されてよい。
【0025】
鉛直方向に配列される複数の処理部は、少なくとも2つあればよいが、3つまたは4つの処理部が配列されていることが好ましい。あるいは5つ以上の処理部が配列されていても良い。
【0026】
また、装置内において鉛直方向となる軸は1つである必要はなく、2軸、あるいはそれ以上でも良い。すなわち、2つの水平方向に配列した第1、第2の処理部が最下層に配置されており、第1の処理部の鉛直方向上方に第3、第4の処理部を有し、第2の処理部の鉛直方向上方に第5、第6の処理部を有するような、2軸および3段の構成でも良い。
【0027】
以下本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明に係る分析装置は、
鉛直方向に配列された試料に生化学反応処理又は試料の生化学検出処理を施す少なくとも2つの処理部と、
試料を鉛直方向に搬送し、前記複数の処理部の一方から他方に受け渡す搬送機構と、
を有することを特徴とする。搬送機構は、独立して試料を搬送可能な少なくとも2つの試料搬送機構を有し、前記試料の搬送は、前記2つの試料搬送機構間での試料の受け渡しを介して行われるとよい。
【0029】
この場合、以下の構成が好ましい。
(1)搬送機構が、試料を搬送可能な第一の試料搬送機構(例えば、試料を容器から吸い出し、別の容器に供給可能なピペットユニット)と、試料を搬送可能な第二の試料搬送機構(例えば、試料が収容された容器を処理部間で移動させる容器搬送ロボット)と、で構成されており、第一の試料搬送機構から第二の試料搬送機構への試料受渡しを、少なくともひとつの処理部の上方で行う。これにより、試料の受け渡しのスペースを外部に設ける必要がなくなる。
(2)搬送機構が、試料を搬送可能な第一の試料搬送機構(例えば、上記ピペットユニット)と、
試料を保持可能な容器を搬送可能な第二の試料搬送機構(例えば、上記容器搬送ロボット)と、で構成されており、
第一の試料搬送機構から該容器への試料受渡しを処理部にて行う。これにより、試料の受け渡しのスペースを外部に設ける必要がなくなる。
(3)前記搬送機構が、ピペットチップを着脱可能な第一の試料搬送機構(例えば、第一のピペットユニット)と、
ピペットチップを着脱可能な第二の試料搬送機構(例えば、第二のピペットユニット)と、
ピペットチップを搬送可能なピペットチップ搬送機構(例えば、ピペットチップを保持可能な搬送ロボット)と、で構成されており、前記第一の試料搬送機構から前記ピペットチップ搬送機構へのピペットチップの受渡しを少なくともひとつの処理部の上方で行い、受け渡されたピペットチップを該第二の試料搬送機構に装着する。これにより試料の受け渡しのスペースを外部に設ける必要がなくなり、ピペットチップの使用数を低減することができる。
(4)搬送機構が、ピペットチップを着脱可能な第一の試料搬送機構(例えば、第一のピペットユニット)と、ピペットチップを着脱可能な第二の試料搬送機構(例えば、第二のピペットユニット)と、ピペットチップを保持可能な容器を搬送可能な容器搬送機構(例えば、ピペットチップと容器を搬送する搬送ロボット)と、で構成されており、第一の試料搬送機構から該容器へのピペットチップの受渡しを処理部にて行い、受け渡されたピペットチップを該第二の試料搬送機構に装着する。これにより試料の受け渡しのスペースを外部に設ける必要がなくなり、ピペットチップの使用数を低減することができる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
本発明を適用できる第1の実施形態として、生化学的試料(例えば血液等の体液、生体組織、便、尿、喀痰等)から核酸を抽出し、抽出した核酸を増幅し、増幅した核酸をDNAマイクロアレイとハイブリダイゼーション反応させ、ハイブリダイゼーション反応させたDNAマイクロアレイを光学的に検出することによって、生化学的試料中の核酸配列を同定する自動分析装置について説明する。
【0032】
図1は本発明を適用できる自動分析装置の内部構成を示す概略の正面図、図2は本発明を適用できる自動分析装置の外観を示す概略図である。図3はその斜視図、図4はその側面図である。図1、図3、図4は、内部を説明するため、容器供給部扉22、容器回収部扉23、第二層扉24、第三層扉25、第四層扉26を外した状態として書かれている。
【0033】
自動分析装置1は縦型の形状をしている。分析操作者40は、容器供給部扉22を手前に開けて、分析に使用する容器を装置にセットし、容器供給部扉22を閉じる。分析操作者40は、タッチパネルとなっている操作部20に触れることにより、分析の開始、中断等の操作指令を装置に与えることができる。また、操作部20には試料の属性情報、分析結果、装置の動作状況、外部装置の情報等が表示される。分析が終了したら、分析操作者40は、容器回収部扉23を手前に開けて使用済み容器を取り出した後、容器回収部扉23を閉じる。第二層扉24、第三層扉25、第四層扉26は、メンテナンス用の扉である。例えば、装置内部で何らかのエラーが発生した場合にこれらの扉を手前に開けることにより、装置内部にアクセスが可能となる。
【0034】
以下、図1、図3、図4を用いて装置の内部構成について説明する。
【0035】
装置内部は棚板2、3、4によって、上から第一層51、第二層52、第三層53、第四層54に分割されている。
【0036】
第一層51には、容器供給部5、容器回収部10、操作部20が設置されている。
【0037】
第二層52には、核酸抽出部6、核酸増幅部7、第一の試料搬送機構である第一ピペットユニット11、第一ピペットユニット用X軸ガイド15が設置されている。
【0038】
第三層53には、ハイブリダイゼーション部8、DNAマイクロアレイ検出部9、第二の試料搬送機構である第二ピペットユニット12、第二ピペットユニット用X軸ガイド16が設置されている。
【0039】
第四層54には、電装部18、機械補器部19が設置されている。
第一層51から第四層54を上下方向に貫通して容器搬送ロボット用Z軸ガイド17が設置されている。図5に容器搬送機構としての容器搬送ロボット13を示す。容器搬送ロボット13は、容器搬送ロボット用Z軸ガイド17に案内されて第一層51から第四層54の間で移動可能に設置されている。容器搬送ロボット13の先端には、各容器を把持可能な容器ハンド14が搭載されている。容器搬送ロボット13は複数のモーターによってrθZ軸に自由度をもつ、いわゆる極座標系の動きを行えるスカラーロボットと呼ばれる方式を採用している。ここでr軸はロボットの基部13dに対するアーム先端部13eのXY面内の伸び長さ、θ軸はロボットの基部13dに対するアーム先端部13eのXY面内の回転角を表す。13a、13bはrθ軸駆動用のモータである。また,搬送ハンド14はアーム先端部13eに対してXY面内で回転可能に構成されている。図5に示すように,−Y軸に対する搬送ハンド14の回転角度をθ2軸と定義する。13cはθ2軸駆動用のモータである。容器搬送ロボット13は、この構成に限らず、例えばXYZ直交座標系の動きを行うものを用いることもできる。
【0040】
搬送ハンド14には真空吸着用の孔14aが設けられている。真空吸着用の孔14aは樹脂チューブ14bと接続されている。樹脂チューブ14bは不図示のバルブを介して真空ポンプと接続されている。これにより、真空吸着力のONおよびOFFの状態を切り替えることができる。
【0041】
第1の実施形態では、前述の通り、装置正面の扉を開けることにより装置内部のメンテナンスを行えるような構成にしてある。容器搬送ロボット用Z軸ガイド17を、正面手前側ではなく背面側に配置してメンテナンスを容易にしている。また、容器搬送ロボット用Z軸ガイド17を装置右側面部あるいは左側面部に配置すると、容器搬送ロボット13にX軸方向に対して長いストロークが必要とされるとともに、搬送経路を確保することが難しくなる。上記のように、メンテナンス性と容器搬送ロボット13の長ストローク化防止、搬送経路容易性の理由から、容器搬送ロボット用Z軸ガイド17を背面部の概ね左右中央に配置してある。
【0042】
次に核酸増幅容器33とハイブリダイゼーション用試薬容器34の構成を図6と図7を用いて説明する。図6は核酸増幅容器33の斜視図である。核酸増幅容器33の全体は、概ウエルプレート形状になっている。33cはプレート部を表す。X軸方向に沿った1列を用いて、1試料の反応に使用できる。第一の実施形態では、6試料に対応した容器を用いているが、この限りではなく、装置の仕様に合せた設計が可能である。33aはピペットチップ収納孔で、ピペットチップ31を収納することができる。ピペットチップ収納孔33aに収納された状態のピペットチップ31を、ピペットユニットに自動的に装着することが可能である。その際、ピペットチップ31の先端部が変形しないよう、ピペットチップ収納孔33aの上方にある段差が、ピペットチップ31の首付近のくびれ部分と突き当たる形状としている。33bは液体用ウエルである。増幅工程の反応プロトコルに従って、試薬および試料を保持できるよう構成されている。ピペットチップ収納孔33aと液体用ウエル33bのY方向のピッチは、第一ピペットユニット11および第二ピペットユニット12と同一である。33dは容器ハンド14が把持するための領域である。
【0043】
図7のハイブリダイゼーション用試薬容器34は,核酸増幅容器33と似た構成になっている。34aはピペットチップ収納孔、34bは液体用ウエル、34cはプレート部、34dは容器ハンド14が把持するための領域である。33cの2領域のX方向間隔と、34cの2領域のX方向間隔は同じにしてある。そのため、核酸増幅容器33とハイブリダイゼーション用試薬容器34は、同一の容器ハンド14によって把持することが可能である。
【0044】
核酸増幅容器33を搬送する時には、図6の−Y方向から+Y方向に容器ハンド14を侵入させてハンドが容器を把持する。第一の実施形態では、容器ハンド14をプレート部33cに対して下側に位置させ、プレート下面を容器ハンド14上面が真空吸着する方法を採用している。把持の方法はこれに限らず公知の方法を用いることができる。公知の把持方法としては、メカニカルチャッキング、磁石吸着、自重による摩擦力、静電吸着等を利用するものがあげられる。ただし、後述の図30のステップS304を行う場合には、核酸増幅容器33、容器ハンド14、容器搬送ロボット13、容器搬送ロボット用Z軸ガイド17等が、第二ピペットユニット12から下向きの力を受ける。その力によってハンドと容器の位置ずれが生じたり、機構部品が塑性変形を生じたりしないような設計とする必要がある。図8は核酸増幅部7の斜視図、図9は核酸増幅部7に核酸増幅容器33を載置した状態の正面断面図である。図8において、サーマルブロック7aはPCR反応を行うためにウエルの液体温度を制御するためのものである。温度制御アクチュエータとして、不図示のペルチェ素子を用いている。サーマルブロック7aはモータ7bによりZ軸方向に駆動されうる。ウエルとヒートブロックを接触される時は、+Z方向に上昇するようモータ7bを駆動する。その際、不図示のクランプ機構により核酸増幅容器33を固定し、浮き上がりを防止する。磁石プレート7cは磁性ビーズを用いた核酸精製に用いるためのもので、非磁性のプレート部材に永久磁石を取り付けてある。磁石プレート7cは、Zアクチュエータ7dによりZ方向に駆動されうる。周縁部7fは核酸増幅容器33の外縁部を受けるための部材である。核酸増幅部7に核酸増幅容器33を載置した状態において、容器ハンド用切欠き7eに図の−Y方向から容器ハンド14を侵入させることができる。そのため、容器ハンド14は、核酸増幅容器33のプレート部下側に潜り込んで把持することができる。
【0045】
なお、以上説明した核酸増幅部7の構成を、核酸増幅容器33およびハイブリダイゼーション用試薬容器34を搭載可能に設計することは容易に可能である。同様に、容器ハンド14の構成を、核酸増幅容器33およびハイブリダイゼーション用試薬容器34を把持可能に設計することは容易に可能である。図8乃至図10を参照して説明すると、容器のX方向幅の違いを解消するために、支持部材7gがハイブリダイゼーション用試薬容器34を支持する。また,ヒートブロック7aおよび磁石プレート7cは、ハイブリダイゼーション用試薬容器34と干渉しないように配置されている。
【0046】
以下、分析の流れに沿って各部を説明する。
【0047】
分析操作者40は、分析に使用する核酸抽出容器32、核酸増幅容器33、ハイブリダイゼーション用試薬容器34、DNAマイクロアレイカセット35をそれぞれ容器供給部5にセットする。
【0048】
次に容器ハンド14が、容器供給部5にセットされた核酸抽出容器32を把持し、容器搬送ロボット13をrθZ軸に駆動することにより核酸抽出部6に搬送する。その後順次、核酸増幅容器33を核酸増幅部7へ、ハイブリダイゼーション用試薬容器34をハイブリダイゼーション部8へ、DNAマイクロアレイカセット35をハイブリダイゼーション部8へ、それぞれを把持し、各部に搬送することを繰り返す。
【0049】
核酸抽出部6には核酸抽出容器32が搬送されている。核酸抽出容器32にはあらかじめ試料、試薬、ピペットチップを装置外で投入しておく。生化学的試料から核酸を抽出する方法は、一般に知られている方法を用いることができる。本実施形態では、磁性シリカビーズを用いた方式を採用しているが、これに限らずカラム法、遠心分離法、電気泳動法、ナノピラー法等も本発明の核酸抽出に適用可能である。
【0050】
第一ピペットユニット11は、第一ピペットユニット用X軸ガイド15とZ軸駆動機構により、核酸抽出容器32に設けられているピペットチップ収納孔に移動し、その孔に収納されているピペットチップ31をピペットユニットの下端に装着する。続いて第一ピペットユニット11は、核酸抽出容器32の試薬と試料を混合する。所定の核酸抽出処理が終了すると、試料(核酸抽出産物)が核酸抽出容器32内に設けられたウエルに保持された状態となる。なお、核酸抽出工程の中で,ピペットチップに付着した試料や試薬を持ち越したくない場合には、ピペットチップを新品と交換することができる。使用済みのピペットチップは、核酸抽出容器32に設けられたピペットチップ収納孔に入れることができる。
【0051】
前述したように、核酸増幅部7には核酸増幅容器33が搬送されている。核酸増幅容器33にはあらかじめ試薬、ピペットチップを装置外で投入しておく。
【0052】
核酸増幅部7は図8および図9に示す構成のものである。図8および図9は装置背面側から見た図である。核酸増幅部7は、PCR反応用のヒートブロック7aと、ヒートブロックZ軸駆動用のモータ7bと、磁石7dをもつ磁石プレート7cと、磁石プレートZ軸駆動用のアクチュエータ7eを備える。また,容器載置用の周縁部7fと、ハイブリダイゼーション用試薬容器34を搭載するための支持部材7gを備える。容器ハンド14は、核酸増幅部7に対して装置背面側から進入する。そのために核酸増幅部7の背面側部材は大きく切り欠いた構成としてある。図9は容器ハンドが核酸増幅部7に進入し、核酸増幅容器33を下側から把持した状態を表している。
【0053】
第一ピペットユニット11が、核酸抽出工程が終了した試料(核酸抽出産物)を、核酸抽出部6に在る核酸抽出容器32から核酸増幅部7に在る核酸増幅容器33へ移動する。核酸抽出産物を移動した後、核酸抽出容器32を容器ハンド14で把持し容器回収部10へ搬送する。
【0054】
核酸抽出産物中の核酸を増幅する方法は、一般に知られている方法を用いることができる。本実施例では、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を採用しているが、これに限らずLCR(リガーゼ連鎖反応)法、等温増幅法等も本発明の核酸増幅に適用可能である。核酸増幅部7では、PCR法によりターゲット核酸の数を指数的に増幅した後、試薬除去のために磁性ビーズを用いて核酸精製を行い、更にターゲット核酸を蛍光物質で標識する。核酸精製は磁性ビーズ法に限らず、カラムフィルター法、遠心分離法、電気泳動法、ナノピラー法(特開2004−045357号公報参照)等を適用することが可能である。また、ターゲット核酸の蛍光物質標識には、蛍光物質を結合済みのプライマー核酸を用いてPCR法によりターゲットと結合させる方法を採用している。この標識方法に限らず、微小粒子を結合させる方法、ハイブリダイゼーション時にインターカレーター方式で標識する方法等、検出方法に合せて他の標識方法を用いることが可能である。あるいは、標識せずにターゲットとプローブの結合を観察する方法も提案されているので、それらの方法により標識処理を省略することも可能である。
【0055】
前述したように、ハイブリダイゼーション部8にはハイブリダイゼーション用試薬容器34およびDNAマイクロアレイカセット35が搬送されている。ハイブリダイゼーション用試薬容器34にはあらかじめ試薬を装置外で投入しておく。DNAマイクロアレイカセット35にはあらかじめDNAマイクロアレイを装置外で装着しておく。
【0056】
核酸増幅工程が終了した試料(標識済み増幅産物、以下単に「増幅産物」という)を、第一ピペットユニット11が核酸増幅容器33から吸引する。次にハイブリダイゼーション用試薬容器34を容器ハンド14で把持し、核酸増幅容器33の上方へ搬送する。その状態で第一ピペットユニット11内の増幅産物をハイブリダイゼーション用試薬容器34に吐出する。続いて、第一ピペットユニット11に装着されていたピペットチップ31を、ハイブリダイゼーション用試薬容器34に移す。その後ハイブリダイゼーション用試薬容器34を核酸増幅部7からハイブリダイゼーション部8に搬送する。次に、核酸増幅容器33を容器ハンド14で把持し容器回収部10へ搬送する。
【0057】
ハイブリダイゼーション用試薬容器34内で、増幅産物と、ハイブリダイゼーション用試薬を、第二ピペットユニット12により混合調整し、ハイブリダイゼーション用試料液を作成する。容器34内のハイブリダイゼーション用試料液は、第二ピペットユニット12によってDNAマイクロアレイカセット35内に投入される。DNAマイクロアレイカセット35内を例えば45℃〜60℃のような所定の温度に調整し、例えば10分〜4時間のような所定時間経過させることによって、ターゲット核酸と基板上プローブ核酸のハイブリダイゼーション反応を生ぜしめる。このとき、不図示の液体撹拌機構によって、DNAマイクロアレイカセット35内のハイブリダイゼーション用試料液を動かすことができる。ハイブリダイゼーション反応が終了したら、ハイブリダイゼーション用試薬容器34内の液体用ウェルのいずれかに注入しておいた洗浄液をDNAマイクロアレイカセット35内に投入し、フローする。これによってハイブリダイゼーションの選択性が向上する。洗浄後に、不図示の負圧機構によりDNAマイクロアレイカセット内に空気を流入させることでエアフローを形成して乾燥させる。
【0058】
ハイブリダイゼーション工程が終了したら、DNAマイクロアレイカセット35を容器ハンド14で把持しDNAマイクロアレイ検出部9へ搬送する。また、ハイブリダイゼーション用試薬容器34を容器ハンド14で把持し、容器回収部10へ搬送する。
【0059】
DNAマイクロアレイ検出部9は外部から遮光された空間内に設けられた少なくとも照明光源(不図示)と光学センサ(不図示)と光学要素(不図示)を備える。DNAマイクロアレイに照明光を照射することにより、ハイブリダイゼーション作用によりDNAマイクロアレイ上のプローブ核酸と結合した蛍光標識ターゲット核酸の蛍光物質が励起されて蛍光を発する。その蛍光を光学センサにより読み取る。
【0060】
検出工程が終了したら、DNAマイクロアレイカセット35を容器ハンド14で把持し検出部9から容器回収部10へ搬送する。容器回収部10に回収された、核酸抽出容器32、核酸増幅容器33、ハイブリダイゼーション用試薬容器34、DNAマイクロアレイカセット35を分析操作者が手動で取り出し、廃棄処分する。
【0061】
なお、第一の実施形態の自動分析装置においては、核酸抽出工程、核酸増幅工程、ハイブリダイゼーション工程、DNAマイクロアレイ検出工程の四つの工程の処理部が独立しているため、各ユニットで別々の検査ロットの試料を処理することもできる。
【0062】
図11に第一の実施形態の自動分析装置の制御ブロック図を示す。全体制御部36は装置全体のシーケンス制御する部分で、中央演算装置(CPU)を用いている。全体制御部は、9個のサブユニット制御部、すなわち、核酸抽出制御部37、核酸増幅制御部38、ハイブリダイゼーション制御部39、DNAマイクロアレイ検出制御部40、容器搬送制御部41、第一ピペットユニット制御部42、第二ピペットユニット制御部43、I/F制御部44、機械補器部制御部45と通信を行い、動作指令の送信と状態検知の受信を行う。各サブユニット制御部は、アクチュエータ、センサに対する信号の入出力制御を行う。全体制御部36はI/F制御部45を介して装置外のネットワーク46と接続し、外部装置(不図示)と通信可能である。例えば、電子カルテシステムと連携してデータを送受信する機能を備えている。
【0063】
続いて、第二層52から第三層53への液体の受渡し方法について、図12乃至図28とを参照しながらより詳細に説明する。
【0064】
増幅工程が終了したら、核酸増幅容器33内の増幅産物を第一ピペットユニット11で吸引する(図12、図28のS101)。ピペットチップ31内に増幅産物を保持した状態で、第一ピペットユニット11をZ軸駆動機構により上昇させる(図13、図28のS102)。次にハイブリダイゼーション部8にセットされているハイブリダイゼーション用試薬容器34を容器ハンド14で把持する(図14)。容器搬送ロボット13をrθZ軸駆動して、ハイブリダイゼーション用試薬容器34を+Y方向に待避させ(図15)た後、核酸増幅容器33の上方のZ位置に上昇させ(図16)、増幅容器の上方のXY位置に移動させる(図17、図28のS103)。次に第一ピペットユニット11を下降させ、ピペットチップ31がハイブリダイゼーション用試薬容器34の所定のウエルに対して分注可能な位置関係にする。このとき、第一ピペットユニット11をX軸方向に駆動してもよい。この状態で試料(増幅産物)をハイブリダイゼーション用試薬容器34の所定のウエルに投入する(図18、図28のS104)。液の投入が終了後、いったん第一ピペットユニット11を上昇させ(図19、図28のS105)た後、ピペットチップ31がハイブリダイゼーション用試薬容器34のピペットチップ収納孔に投入可能なXYZ位置になるように、第一ピペットユニット11を駆動する(図20)。この状態で第一ピペットユニット11のピペットチップ離脱機構(不図示)を作動させて、ピペットチップ31をハイブリダイゼーション用試薬容器34のピペットチップ収納孔に移す(図21、図28のS106)。次に第一ピペットユニット11を上方に待避させるとともに、ハイブリダイゼーション用試薬容器34を容器搬送ロボット13で+Y方向に待避させる(図22)。ハイブリダイゼーション用試薬容器34をハイブリダイゼーション部8への容器設置高さに下降させ(図23)、設置する(図24、図28のS107)。次に第二ピペットユニット12を下降させることにより、ハイブリダイゼーション用試薬容器34内のピペットチップ31を装着する(図25、図28のS108)。いったん第二ピペットユニット12を上昇させて(図26)から、ピペットチップ31でハイブリダイゼーション用試薬容器34内の試料(増幅産物)を吸引、吐出(図27、図28のS109)することによって、ハイブリダイゼーション用試料を調整する。
【0065】
また、容器搬送ロボット13および容器ハンド14を+Y方向に待避させ(図25)、核酸増幅容器33を把持する高さに上昇させ(図26)、核酸増幅容器33を容器ハンド14で把持し(図27)、容器回収部10へ搬送する動作を行うことが可能である。
【0066】
以上の動作によりハイブリダイゼーション用試薬容器34に移動された増幅産物と、試薬を調整してハイブリダイゼーション工程で使用する。また、ハイブリダイゼーション用試薬容器34に移動されたピペットチップ31は、増幅工程で使用済みのものであるが、同一試料のハイブリダイゼーション工程で使用することが可能である。なぜならば、このピペットチップに付着している液体がハイブリダイゼーション工程に与える影響は軽微なものであり、また、同一試料に対して使用する限りは核酸のクロスオーバー汚染の恐れも小さいからである。
【0067】
なお、前記図12乃至図28で示した動作の他に、図29に示す動作によっても本発明に特徴的な液体とピペットチップの受渡しを行うことが可能である。
【0068】
図29のスタートは、核酸増幅容器33が核酸増幅部7に載置されており、かつハイブリダイゼーション用試薬容器34がハイブリダイゼーション部8に載置されている状態である。第一ピペットユニット11で核酸増幅容器33内の増幅産物を吸引(S201)し、第一ピペットユニット11を上方に待避(S202)する。その後、核酸増幅容器33を容器回収部10に搬送(S203)してから、ハイブリダイゼーション用試薬容器34を核酸増幅部7に搬送(S204)する動作が図11との主な違いである。すなわち、図28と図29の動作の相違点は、ハイブリダイゼーション用試薬容器34に増幅産物とピペットチップ31を投入する際、ハイブリダイゼーション用試薬容器34を、容器ハンド14で把持しているか(図28)、核酸増幅部7に載置しているか(図29)、である。
【0069】
さらにその他に図30に示す動作によっても本発明に特徴的な液体とピペットチップの受渡しを行うことが可能である。
【0070】
図30のスタートも、核酸増幅容器33が核酸増幅部7に載置されており、かつハイブリダイゼーション用試薬容器34がハイブリダイゼーション部8に載置されている状態である。まず、ピペットチップ31を第一ピペットユニット11から離脱して核酸増幅容器33に投入(S301)する。この状態では増幅産物はまだ核酸増幅容器33にある。次に第二ピペットユニット12を上方に待避(S302)した後、核酸増幅容器33をハイブリダイゼーション用試薬容器34上方に搬送(S303)する。核酸増幅容器33をこの状態にして、核酸増幅容器33内のピペットチップ31を第二ピペットユニット12に装着(S304)し、第二ピペットユニット12を上方に移動(S305)し、第二ピペットユニット12で核酸増幅容器33内の増幅産物を吸引(S306)する。続いて第二ピペットユニット12を上方に待避(S307)し、核酸増幅容器33を容器回収部10に搬送(S308)した後、ハイブリダイゼーション用試薬容器34に増幅産物を吐出(S309)する。
【0071】
図28と図30の相違点は、核酸増幅容器33からハイブリダイゼーション用試薬容器34へ増幅産物とピペットチップ31を移する際、核酸増幅部7で行うか(図28)、ハイブリダイゼーション部8で行うか(図30)、である。
【0072】
また、第1の実施形態においては、核酸抽出工程と核酸増幅工程用に第一ピペットユニット11を共通に用い、ハイブリダイゼーション工程用には第二ピペットユニット12を用いる。そのため、核酸抽出工程および核酸増幅工程と、ハイブリダイゼーション工程とは受渡し動作時以外は独立して動作することができる。例えば、第一番目の検査ロットの核酸増幅工程が終了し、ハイブリダイゼーション工程に試料とピペットチップを受け渡した後、ハイブリダイゼーション工程の終了を待たずに核酸増幅工程を開始することができる。
【0073】
なお、第1の実施形態において、核酸抽出部6、核酸増幅部7、ハイブリダイゼーション部8の3反応部を全て装置のX方向に水平配置した場合と比較すれば、図1に示す装置の幅寸法のおよそ半分ほどが設置床面積低減の効果として得られているといえる。このように、全反応部ではなく、一部の反応部を垂直方向に配列した場合であっても設置床面積低減の効果を得られることは明白であり、その形態も本発明の範囲に含まれている。
【0074】
なお、第一の実施形態においては、使用する試薬とピペットチップを全てウエルプレート状容器にあらかじめ入れ込んだ状態にして分析処理を行う装置について説明した。これに限らず、試薬の一部または全部を別の方法で供給することも可能である。例えば試薬専用の使い捨て容器を用いる方法や、ボトルによって複数回分の試薬をまとめて装置にセットする方法等、公知の方法を用いることが可能である。また、ピペットチップの一部または全部を別の方法で供給することも可能である。例えばピペットチップ専用の使い捨て容器を用いる方法や、チップラックによって複数回分のピペットチップをまとめて装置にセットする方法等、公知の方法を用いることが可能である。
【0075】
また、第一の実施形態においては、容器を搬送することにより試料およびピペットチップの移動を行った。これ以外の形態の例示として、容器ハンド14の代わりに、試料を保持する凹みを持ったプレートを備える構成が挙げられる。図18の動作状態において、ハイブリハイブリダイゼーション用試薬容器34のウエルの代わりに、このプレートの凹みで増幅産物を受け取る。また、図30のS306の動作ステップにおいて、核酸増幅容器33の代わりに、このプレートの凹みから増幅産物を吸引し、ハイブリハイブリダイゼーション用試薬容器34に投入すればよい。
【0076】
また、これ以外の形態の例示として、容器ハンド14の代わりに、ピペットチップを保持する凹みを持ったプレートを備える構成が挙げられる。図21の動作状態において、ハイブリハイブリダイゼーション用試薬容器34のピペットチップ収納孔の代わりに、このプレートの凹みでピペットチップを受け取る。また、図30のS304の動作ステップにおいて、核酸増幅容器33の代わりに、このプレートの凹みからピペットチップを第二ピペットユニット12に装着すればよい。
【0077】
上記のようなプレートを用いた場合には、次以降の検査に試料の持ち越しによるキャリーオーバーコンタミネーションが懸念される。そのため、プレートを洗浄する機構を備えることが望ましい。
【0078】
さらに別の形態の例示として、試料を受け渡す代わりに、試料以外の試薬等の液体を受け渡すことが挙げられる。
【0079】
さらに別の形態の例示として、液体状の試料を受け渡す代わりに、固形状の試料を受け渡すことが挙げられる。その場合、ピペットチップとピペットユニットの組み合わせとは別の試料採取機構を用いることが好ましい。例えば、ピンセットの様につまむ機構、掬い取る機構、接触して移し取る機構が考えられる。
【0080】
以上に説明したように、装置の設置床面積を増大させることなく、複雑な生化学反応処理を行う自動分析装置が実現可能である。第1の実施形態においては、特に装置の幅方向の寸法が、全てを水平方向に展開した構成と比較して、およそ1/2に低減できていることが理解されよう。
【0081】
(第2の実施形態)
図31は本発明を適用できる自動分析装置の内部構成を示す概略の正面図である。
【0082】
図31において、1は自動分析装置全体を示す。装置内部は、正面から見て右側に液体反応系のユニットが積層された形態になっている。
【0083】
本実施形態においては、処理部間の試料とピペットチップの受渡しが次の2種類となる。すなわち、(1)核酸抽出部6から核酸増幅部7、(2)核酸増幅部7からハイブリダイゼーション部8である。受渡し動作は第1の実施形態で図12乃至図30を用いて説明した例示と同様に行うことができる。ただし、第1の実施形態と比べて受渡しの種類が増えているため、シーケンス制御に工夫が必要である。
【0084】
また、第2の実施形態においては、核酸抽出工程、核酸増幅工程、ハイブリダイゼーション工程がそれぞれ独立のピペットユニットを用いて反応を行う。そのため、上記3工程の並列処理が容易に行えるという別の効果を得ることが可能である。
【0085】
(第3の実施形態)
本実施形態では、抗原または抗体を基板に固定したチップを用いて抗原抗体反応により試料を分析する自動分析装置の例を示す。
【0086】
具体的には、実施形態1、2で示した核酸の自動分析装置を転用すればよい。図1の核酸抽出部6の構成を、検体をチップに反応させる反応部に変更し、核酸増幅部7を2次抗体などをチップに更に供給し反応させる第2反応部、ハイブリダイゼーション部8の構成を、結合に関与しなかった抗原または抗体を除去する洗浄部、と変更することで、抗原抗体反応により試料を分析する自動分析装置を構成することができる。
【0087】
他の例として、細胞培養による自動分析装置の例を示す。
【0088】
具体的には、実施形態1、2で示した核酸の自動分析装置を転用すればよい。図1の核酸増幅部7の構成を,培養ボトル内で行う細胞の1次培養工程に変更し,ハイブリダイゼーション部8の構成を,培地による細胞の2次培養工程,と変更することで、細胞培養により試料を分析する自動分析装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置を示す概略正面図
【図2】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置を示す概略外観図
【図3】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置を示す概略斜視図
【図4】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置を示す概略側面図
【図5】本発明を適用できる第1の実施形態の容器ハンドを説明する図
【図6】本発明を適用できる第1の実施形態の核酸増幅容器を説明する図
【図7】本発明を適用できる第1の実施形態のハイブリダイゼーション用試薬容器を説明する図
【図8】本発明を適用できる第1の実施形態の核酸増幅部の斜視図
【図9】本発明を適用できる第1の実施形態の核酸増幅部に核酸増幅容器を載置した状態の背面断面図
【図10】本発明を適用できる第1の実施形態の核酸増幅部にハイブリダイゼーション用試薬容器を載置した状態の背面断面図
【図11】本発明を適用できる第1の実施形態の制御ブロック図
【図12】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図13】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図14】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図15】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図16】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図17】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図18】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図19】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図20】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図21】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図22】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図23】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図24】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図25】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図26】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図27】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明する図
【図28】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの受渡し動作を説明するフローチャート
【図29】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの第二の受渡し動作を説明するフローチャート
【図30】本発明を適用できる第1の実施形態の自動分析装置における、液体とピペットチップの第三の受渡し動作を説明するフローチャート
【図31】本発明を適用できる第2の実施形態の自動分析装置を示す正面断面図
【符号の説明】
【0090】
1 自動分析装置
6 核酸抽出部
7 核酸増幅部
8 ハイブリダイゼーション部
9 DNAマイクロアレイ検出部
11 第一ピペットユニット
12 第二ピペットユニット
13 容器搬送ロボット
14 容器ハンド
15 第一ピペットユニット用X軸ガイド
16 第二ピペットユニット用X軸ガイド
17 容器搬送ロボット用Z軸ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に配列された試料に生化学反応処理又は試料の生化学検出処理を施す少なくとも2つの処理部と、
試料を鉛直方向に搬送し、前記複数の処理部の一方から他方に受け渡す搬送機構と、
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、独立して試料を搬送可能な少なくとも2つの試料搬送機構を有し、前記試料の搬送は、前記2つの試料搬送機構間での試料の受け渡しを介して行われる請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記搬送機構が、
試料を搬送可能な第一の試料搬送機構と、
試料を搬送可能な第二の試料搬送機構と、で構成されており、
該第一の試料搬送機構から該第二の試料搬送機構への試料受渡しを、少なくともひとつの処理部の上方で行うことを特徴とする、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記搬送機構が、
試料を搬送可能な第一の試料搬送機構と、
試料を保持可能な容器を搬送可能な第二の試料搬送機構と、で構成されており、
該第一の試料搬送機構から該容器への試料受渡しを処理部にて行うことを特徴とする、請求項2に記載の分析装置。
【請求項5】
前記搬送機構が、
ピペットチップを着脱可能な第一の試料搬送機構と、
ピペットチップを着脱可能な第二の試料搬送機構と、
ピペットチップを搬送可能なピペットチップ搬送機構と、で構成されており、前記第一の試料搬送機構から前記ピペットチップ搬送機構へのピペットチップの受渡しを少なくともひとつの処理部の上方で行い、受け渡されたピペットチップを該第二の試料搬送機構に装着することを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記搬送機構が、
ピペットチップを着脱可能な第一の試料搬送機構と、
ピペットチップを着脱可能な第二の試料搬送機構と、
ピペットチップを保持可能な容器を搬送可能な容器搬送機構と、で構成されており、
該第一の試料搬送機構から該容器へのピペットチップの受渡しを処理部にて行い、受け渡されたピペットチップを該第二の試料搬送機構に装着することを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−261735(P2008−261735A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104850(P2007−104850)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】