説明

分析装置

【課題】メンテナンスの記録を自動的に行うことでユーザの手間を削減するとともに確実な記録を行うことができる分析装置を提供する。
【解決手段】検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、動作を指示するための入力部と、表示部と、前記表示部に、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴を表示させるメンテナンス履歴表示手段と、前記入力部から、動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス動作を前記分析機構に実行させるメンテナンス動作実行手段と、前記メンテナンス動作実行手段により実行されたメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段と、前記メンテナンス動作が実行されたときに、メンテナンスの履歴の表示を更新させる表示更新手段とを備えた分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析装置に関する。さらに詳しくは、装置を動作させて行うメンテナンス(保守)の実行を自動的に記録し得る分析装置に関する。なお、本明細書において、「分析装置」とは、尿や血液などの検体を分析する装置だけでなく、例えば塗沫処理装置などの分析のための前処理装置をも含む概念である。
【背景技術】
【0002】
尿や血液などの検体を分析する分析装置では、主として所定の分析精度を維持するために、定められたスケジュール(メンテナンスの内容及び時期を含むスケジュール)に従って装置のメンテナンスが行われている。例えば、血液凝固測定装置の場合、メンテナンス項目として、「ピペット洗浄」、廃棄用の容器に収容された使用済みのキュベット(サンプルチューブ)を廃棄して、当該容器を空にする「サンプルチューブ廃棄」、使用済みの洗浄液などの「排液処理」、試薬容器に付着した結露を除去する「試薬結露除去」などがある。
【0003】
かかるメンテナンスには、「サンプルチューブ廃棄」や「試薬結露除去」などのように、装置の動作を停止させた状態でユーザやサービスマンが手動で行なう項目と、「ピペット洗浄」などのように装置を動作させる必要がある項目とがある。なお、後者には、例えば「ピペット交換」のように、交換作業自体は手動で行われるものの、交換のために装置を動作させる必要がある場合も含まれる。具体的に、「ピペット交換」に際しては、ピペットを交換位置まで移動させ、手動による交換作業完了後、当該ピペットを元の位置に復帰させるという動作が必要である。例えば特許文献1には、機構部の作動回数と作動時間を計測し、計測された作動機構部を時刻別に記憶し、記憶内容から、例えば分析装置が使用されない時間帯などのメンテナンス動作に適した時間帯であるか否かを判定して、メンテナンス動作に適した時間帯であると判定されたときに、メンテナンス動作を行うようにメンテナンス開始信号を発する自動分析装置が開示されている。
【0004】
従来、このようなメンテナンスの記録は、手動だけで行われる項目も、装置を動作させることで行われる項目も、いずれもユーザが紙(装置のマニュアルに記載ないしは添付されているメンテナンス記録欄、又はそれをコピーしたものを用いる場合が多い)に記載することにより行われている。また、特許文献2には、保守項目を実行すると実行した日付が記憶装置に記憶される自動分析装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−150770号公報
【特許文献2】特開平9−211003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、分析装置の操作や分析作業は、パソコンなどのコンピュータを用いて行われており、前記装置の動作を伴うメンテナンスの実行もかかるコンピュータの入力手段からの指示により行われている。この場合に、ユーザは、コンピュータにメンテナンスの実行を指示し、当該メンテナンスの完了を確認した後に、メンテナンスの記録を前記記録用紙に記録する必要があり、煩雑であるだけでなく、記録自体を失念するおそれもある。
【0007】
また、特許文献2に開示されている自動分析装置では、メンテナンスの記録を表示する場合に、単にメンテナンスを実行した最新の日付のみを表示するだけであるため、頻繁に(例えば毎日や毎週)実施するメンテナンス作業であってもユーザが画面上で一度に確認することができるのは最新の実施日のみであり、複数のメンテナンスの実施日を一度に確認することができなかった。また、保守管理上の観点から、メンテナンスの履歴に実施者を記録することが望まれているが、特許文献2に開示されている自動分析装置では、メンテナンスの実施者を記録するためにはユーザが手動で実施者を入力しなければならず、メンテナンス作業の都度実施者を入力しなければならないというユーザの負担が生じ、また入力忘れが生じるおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、装置を動作させて行われるメンテナンスを実行した場合に当該メンテナンスの記録を自動的に行うことでユーザの手間を削減するとともに確実な記録を行うことができる分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分析装置は、検体を分析するのに用いられる装置であって、検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、前記分析機構のメンテナンス動作を指示するための入力部と、表示部と、前記表示部に、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴を表示させるメンテナンス履歴表示手段と、前記入力部からメンテナンス動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス動作を前記分析機構に実行させるメンテナンス動作実行手段と、前記メンテナンス動作実行手段により実行されたメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段と、前記メンテナンス動作が実行されたときに、メンテナンスの履歴の表示を更新させる表示更新手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の分析装置では、当該分析装置の動作を伴うメンテナンス動作が実行された場合に、当該メンテナンスの記録が自動的に前記記憶部に記憶されるので、ユーザが別途メンテナンスを記録する手間が省け、当該ユーザの負担を軽減させることができるとともに、メンテナンスの記録が自動的に行われるので、記録忘れや記録ミスを防止することができる。また、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴が表示部に表示され、メンテナンス動作が実行されたときには、メンテナンスの履歴の表示が更新されるため、頻繁に(例えば毎日や毎週)実施するメンテナンス作業の実施日を一度に確認することができ、また例えば、メンテナンスが行われていない項目を直感的に認識することができる。これにより、メンテナンスを確実に実行することができる。
【0011】
メンテナンス動作を操作するための操作画面と、メンテナンスの履歴を表示する履歴画面とを同時に表示し得ることが好ましい。この構成によれば、メンテナンスの履歴を確認しつつ、メンテナンスの動作を指示することができるので、必要なメンテナンスだけを確実に実行することができる。
【0012】
前記メンテナンス履歴表示手段は、メンテナンス動作を操作するための操作画面と、メンテナンスの履歴を表示する履歴画面とを同時に前記表示部に表示させるように構成されていることが好ましい。これにより、ユーザは操作画面に表示されている指示用図形のうち、所望するメンテナンス項目に対応する図形を選択するだけで、当該メンテナンス動作の指示を与えることができる。
【0013】
前記記憶部は、メンテナンスの予定をさらに記憶し、前記メンテナンス履歴表示手段は、前記履歴画面に、メンテナンスの履歴と共にメンテナンスの予定を表示させるように構成されていることが好ましい。この構成によれば、必要なメンテナンスが何であるかをユーザが把握しやすく、必要なメンテナンスを確実に実施することができる。
【0014】
前記入力部は、メンテナンスの記録の入力を受け付けることが可能であり、前記記憶部は、手動で入力されたメンテナンスの記録を記憶するように構成することができる。メンテナンスの中には、「サンプルチューブ廃棄」や「試薬結露除去」などのように、装置の動作を停止させた状態でユーザやサービスマンが手動で行なうものがあるが、手動入力可能にすることで、かかるメンテナンスも含めすべてのメンテナンスの履歴をまとめて表示部に表示して、一元的に管理することができる。
【0015】
前記入力部からの指示により装置がメンテナンス動作を実行するメンテナンスについては、手動によるメンテナンス記録の入力が禁止されるように構成することができる。このようにすることで、装置の動作によりメンテナンスが行われる項目について、手動により誤って実行済の記録がなされるのを防止することができる。
【0016】
予め定められたログイン名が入力されたときに前記手動による入力の禁止を解除するように構成することができる。例えば、装置が故障した場合には、ユーザによる通常のメンテナンス動作が不可能になることが考えられるが、このような場合にサービスマンが装置を強制動作させてメンテナンスを実行することがある。その際、かかるサービスマンが所定のログイン名を入力して装置を動作させたときに、手動入力の禁止を解除して、手動入力可能にすることで、サービスマンにより実行されたメンテナンスを記録することができる。
【0017】
本発明の分析装置は、検体を分析するのに用いられる装置であって、検体を分析するための分析動作と、メンテナンス作業に伴う動作とを実行可能な分析機構と、当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、前記分析機構のメンテナンス作業に伴う動作を指示するための入力部と、表示部と、前記表示部に、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴を表示させるメンテナンス履歴表示手段と、前記入力部からメンテナンス作業に伴う動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス作業に伴う動作を前記分析機構に実行させる実行手段と、前記実行手段によりメンテナンス作業に伴う動作が実行されたときに、このメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段と、前記メンテナンス作業に伴う動作が実行されたときに、メンテナンスの履歴の表示を更新させる表示更新手段とを備えることを特徴としている。
【0018】
本発明の分析装置では、当該分析装置のメンテナンス作業に伴う動作が実行された場合に、当該メンテナンスの記録が自動的に前記記憶部に記憶されるので、ユーザが別途メンテナンスを記録する手間が省け、当該ユーザの負担を軽減させることができるとともに、メンテナンスの記録が自動的に行われるので、記録忘れや記録ミスを防止することができる。また、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴が表示部に表示され、メンテナンス動作が実行されたときには、メンテナンスの履歴の表示が更新されるため、頻繁に(例えば毎日や毎週)実施するメンテナンス作業の実施日を一度に確認することができ、また例えば、メンテナンスが行われていない項目を直感的に認識することができる。これにより、メンテナンスを確実に実行することができる。
【0019】
本発明の分析装置は、検体を分析するのに用いられる装置であって、検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、前記入力部に入力されたユーザ情報に基づいてユーザを認証し、ユーザのログインを許可するか否かを決定するログイン手段と、前記入力部からメンテナンス動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス動作を前記分析機構に実行させるメンテナンス動作実行手段と、前記メンテナンス動作が実行されたときに、ログインしているユーザの情報と、このメンテナンスの記録とを関連づけて前記記憶部に記憶させる記録更新手段とを備えることを特徴としている。
【0020】
本発明の分析装置では、当該分析装置のメンテナンス動作が実行された場合に、ログインしているユーザの情報と当該メンテナンスの記録とが関連づけられて自動的に前記記憶部に記憶されるので、ユーザが別途メンテナンスを記録する手間が省けるとともに、このメンテナンスの記録を参照することで、メンテナンス作業を実施したユーザを特定することができる。メンテナンスの記録に作業の実施者を含めておくことにより、メンテナンスに関する情報の管理をより適切に行うことができる。
【0021】
本発明の分析装置は、検体を分析するのに用いられる装置であって、検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、表示部と、前記表示部に、複数のメンテナンス動作を各別に指示するための複数の指示用図形を表示させる表示手段と、ユーザから前記指示用図形を選択する入力が前記入力部に与えられたときに、前記分析機構に当該指示用図形に対応するメンテナンス動作を実行させるメンテナンス動作実行手段と、前記メンテナンス動作実行手段により実行されたメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段とを備えることを特徴としている。
【0022】
本発明の分析装置では、当該分析装置の動作を伴うメンテナンス動作が実行された場合に、当該メンテナンスの記録が自動的に前記記憶部に記憶されるので、ユーザが別途メンテナンスを記録する手間が省け、当該ユーザの負担を軽減させることができるとともに、メンテナンスの記録が自動的に行われるので、記録忘れや記録ミスを防止することができる。また、ユーザは操作画面に表示されている指示用図形のうち、所望するメンテナンス項目に対応する図形を選択するだけで、当該メンテナンス動作の指示を与えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の分析装置によれば、装置を動作させて行われるメンテナンスを実行した場合に当該メンテナンスの記録を自動的に行うことでユーザの手間を削減するとともに確実な記録を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の分析装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の分析装置の一実施の形態の全体構成を示す斜視説明図であり、図2は、図1に示される分析装置における測定装置及び搬送部を示す平面説明図であり、図3は、図1に示される分析装置における測定装置の構成を示すブロック図である。また、図4は、図1に示される分析装置における制御装置のブロック図である。
【0025】
[分析装置の全体構成]
まず、本実施の形態に係る分析装置1の全体構成について説明する。
本発明の一実施の形態に係る分析装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、検体としては血漿を用いている。分析装置1では、凝固時間法、合成基質法及び免疫比濁法を用いて検体の光学的な測定(本測定)を行っている。本実施の形態で用いる凝固時間法は、検体が凝固する過程を透過光の変化として検出する測定方法である。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)などがある。また、合成基質法の測定項目としてはATIIIなど、免疫比濁法の測定項目としてはDダイマー、FDPなどがある。
【0026】
前記分析装置1は、図1に示されるように、測定装置2、この測定装置2の前面側に配置された搬送部3、並びに前記測定装置2及び搬送部3における各機構の動作制御を行う制御部120(図3参照)からなる測定ユニットと、前記測定装置2に電気的に接続された、データ処理ユニットである制御装置4とで主に構成されている。なお、本実施の形態では、前記搬送部3が測定装置2と一体となり分析装置1の一部を構成しているが、この搬送部3は、分析装置1と別体とすることもできる。例えば、複数の分析装置を含む大規模なシステムにおいて、搬送部を各分析装置に設けずに、大型の搬送ラインに複数の分析装置が接続された形態を採用することができる。
【0027】
制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)などからなり、図1に示されるように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。制御部4aは、測定装置2で得られた検体の光学的な情報を分析するための機能を有している。この制御部4aは、CPU、ROM、RAMなどからなる。また、表示部4bは、制御部4aで得られた分析結果を表示し、また、後述する、分析装置1のメンテナンス履歴を表示するために設けられている。
【0028】
制御装置4は、ユーザの操作部として機能し、キーボード4cによりユーザから与えられた動作指示からコマンドを作成し、このコマンドを前記測定ユニットの制御部に送信し、当該測定ユニットに分析の開始などの動作を行わせる。測定ユニットの制御部は、前記制御部4aと同様に、CPU、ROM、RAMなどからなっており、制御装置4から送信されたコマンドに従って前記測定装置2及び搬送部3における各機構を制御する。また、測定装置2で得られた測定データを制御装置4に送信する。
【0029】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御部4aは、図4に示されるように、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0030】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータなどが記録されている。
【0031】
RAM401cは、SRAM又はDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401b及びハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
ハードディスク401dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施の形態における干渉物質の有無や濃度を算出するためのアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0032】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、本実施の形態におけるアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401が、その可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0033】
なお、前記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0034】
また、ハードディスク401dには、例えば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態におけるアプリケーションプログラム404aは前記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
出力インタフェース401fは、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0035】
通信インタフェース401gは、例えば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して検出機構部2との間でデータの送受信が可能である。
画像出力インタフェース401hは、LCD又はCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0036】
搬送部3は、測定装置2に検体を供給するために、検体を収容した複数(本実施の形態では、10本)の試験管150が載置されたラック151を測定装置2の吸引位置2a(図2参照)に搬送する機能を有している。また、搬送部3は、未処理の検体を収容した試験管150が収納されたラック151をセットするためのラックセット領域3aと、処理済みの検体を収容した試験管150が収納されたラック151を収容するためのラック収容領域3bとを有している。
【0037】
測定装置2は、搬送部3から供給された検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施の形態では、搬送部3のラック151に載置された試験管150から測定装置2のキュベット152(図2参照)内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。また、測定装置2は、図1〜3に示されるように、キュベット供給部10と、回転搬送部20と、検体分注アーム30と、HIL検出部40と、ランプユニット50と、2つの試薬分注アーム60と、キュベット移送部70と、検出部80と、緊急検体セット部90と、キュベット廃棄部100と、流体部110と、制御部120とを備えている。
【0038】
キュベット供給部10は、ユーザによって無造作に投入された複数のキュベット152を回転搬送部20に順次供給することが可能なように構成されている。このキュベット供給部10は、図2に示されるように、ブラケット11(図1参照)を介して装置本体に取り付けられたホッパ12と、ホッパ12の下方に設けられた2つの誘導板13と、2つの誘導板13の下端に配置された支持台14と、支持台14から所定の間隔を隔てて設けられた供給用キャッチャ部15とを含んでいる。2つの誘導板13は、キュベット152のつば部の直径よりも小さく、かつ、キュベット152の胴部の直径よりも大きくなるような間隔を隔てて互いに平行に配置されている。ホッパ12内に供給されたキュベット152は、つば部が2つの誘導板13の上面に係合した状態で、支持台14に向かって滑り落ちながら移動するように構成されている。また、支持台14は、誘導板13を滑り落ちて移動したキュベット152を、供給用キャッチャ部15が把持可能な位置まで回転移送する機能を有している。そして、供給用キャッチャ部15は、支持台14により回転移送されたキュベット152を回転搬送部20に供給するために設けられている。
【0039】
回転搬送部20は、キュベット供給部10から供給されたキュベット152と、キュベット152内の検体に添加される試薬を収容した試薬容器(図示せず)とを回転方向に搬送するために設けられている。この回転搬送部20は、図2に示されるように、円形状の試薬テーブル21と、円形状の試薬テーブル21の外側に配置された円環形状の試薬テーブル22と、円環形状の試薬テーブル22の外側に配置された円環形状の二次分注テーブル23と、円環形状の二次分注テーブル23の外側に配置された円環形状の一次分注テーブル24とにより構成されている。これらの一次分注テーブル24、二次分注テーブル23、試薬テーブル21及び試薬テーブル22は、それぞれ、時計回り方向及び反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。
【0040】
試薬テーブル21及び22は、図2に示されるように、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の孔部21a及び22aを含んでいる。試薬テーブル21及び22の孔部21a及び22aは、検体から測定用試料を調製する際に添加される種々の試薬を収容した複数の試薬容器(図示せず)を載置するために設けられている。また、一次分注テーブル24及び二次分注テーブル23は、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた円筒形状の複数の保持部24a及び23aを含んでいる。保持部24a及び23aは、キュベット供給部10から供給されたキュベット152を保持するために設けられている。一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152には、一次分注処理の際に、搬送部3の試験管150に収容される検体が分注される。また、二次分注テーブル23の保持部23aに保持されたキュベット152には、二次分注処理の際に、一次分注テーブル24に保持されたキュベット152に収容される検体が分注される。また、保持部24aには、当該保持部24aの側方の互いに対向する位置に一対の小孔が形成されている。この一対の小孔は、後述するランプユニット50の分岐光ファイバ58から出射された光を通過させるために設けられている。
【0041】
検体分注アーム30は、搬送部3により吸引位置2aに搬送された試験管150に収容される検体を吸引するとともに、吸引した検体を回転搬送部20に移送されたキュベット152内に分注する機能を有している。
【0042】
HIL検出部40は、試薬を添加する前の検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定するために、検体から光学的な情報を取得するように構成されている。具体的には、後述するランプユニット50から照射される5種類の光(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の内の4種類の光(405nm、575nm、660nmおよび800nm)を用いて、干渉物質の有無およびその濃度を測定している。なお、405nmの波長を有する光は、乳び、ヘモグロビン及びビリルビンのいずれにも吸収される光である。すなわち、405nmの波長を有する光により測定された光学的な情報には、乳び、ヘモグロビン及びビリルビンの影響が寄与している。また、575nmの波長を有する光は、ビリルビンには実質的に吸収されず、かつ、乳び及びヘモグロビンに吸収される光である。すなわち、575nmの波長を有する光により測定された光学的な情報には、乳び及びヘモグロビンの影響が寄与している。そして、660nm及び800nmの波長を有する光は、ビリルビン及びヘモグロビンには実質的に吸収されず、かつ、乳びに吸収される光である。すなわち、660nm及び800nmの波長を有する光により測定された光学的な情報には、乳びの影響が寄与している。また、乳びは、低波長域の405nmから高波長域の800nmまでの波長の光を吸収しており、660nmの波長を有する光の方が、800nmの波長を有する光に比べて、乳びによる吸収が多い。すなわち、800nmの波長を有する光で測定した光学的な情報の方が、660nmの波長を有する光で測定した光学的な情報より、乳びの影響が小さい。
【0043】
このHIL検出部40による検体の光学的な情報の取得は、検出部80による検体の光学的な測定(本測定)の前に行われる。HIL検出部40は、図2に示されるように、一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152内の検体から光学的な情報を取得する。
【0044】
本実施の形態では、ランプユニット50は、図2に示されるように、HIL検出部40及び検出部80で行われる光学的な測定に用いられる光を供給するために設けられている。すなわち、1つのランプユニット50が、HIL検出部40及び検出部80に対して共通に用いられるように構成されている。
試薬分注アーム60は、図1〜2に示されるように、回転搬送部20に載置された試薬容器(図示せず)内の試薬を回転搬送部20に保持されたキュベット152に分注することにより、キュベット152内の検体に試薬を混合するために設けられている。これにより、HIL検出部40による光学的な測定が終了した検体に試薬を添加して測定用試料が調製される。また、キュベット移送部70は、キュベット152を回転搬送部20と検出部80との間を移送させるために設けられている。前記試薬分注アーム60の先端付近には、試薬の加温機能を備えた加温装置を構成する加温ピペット61が取り付けられている。
【0045】
検出部80は、検体に試薬を添加して調製された測定用試料の加温を行うとともに、その測定用試料から光学的な情報を測定するための機能を有している。この検出部80は、図2に示されるように、キュベット載置部81と、キュベット載置部81の下方に配置された検出器82とにより構成されている。
【0046】
緊急検体セット部90は、図1〜2に示されるように、緊急を要する検体に対しての検体分析処理を行うために設けられている。この緊急検体セット部90は、搬送部3から供給された検体に対しての検体分析処理が行われている際に、緊急検体を割り込ませることが可能なように構成されている。キュベット廃棄部100は、回転搬送部20のキュベット152を廃棄するために設けられている。キュベット廃棄部100は、図2に示されるように、廃棄用キャッチャ部101と、廃棄用キャッチャ部101から所定の間隔を隔てて設けられた廃棄用孔102(図1参照)と、廃棄用孔102の下方に設置された廃棄ボックス103とにより構成されている。廃棄用キャッチャ部101は、回転搬送部20のキュベット152を、廃棄用孔102(図1参照)を介して廃棄ボックス103に移動させるために設けられている。流体部110は、検体分析装置1のシャットダウン処理の際に、各分注アームに設けられるノズルに洗浄液などの液体を供給するために設けられている。
【0047】
図3に示すように、制御部120は、キュベット供給部10、回転搬送部20、検体分注アーム30、HIL検出部40、ランプユニット50、2つの試薬分注アーム60、キュベット移送部70、検出部80、緊急検体セット部90と、キュベット廃棄部100、及び流体部110に電気信号を通信可能に接続されている。また、制御部120は、CPU、ROM、RAM等から構成されており、CPUがROMに予め記憶された制御プログラムを実行することにより、上述した各機構の動作を制御し、これにより測定装置4が後述する検体分析動作やメンテナンス動作(メンテナンス作業のための動作)を実行するようになっている。
【0048】
[検体分析のプロセス]
次に、前述した分析装置を用いた検体の分析動作について、簡単に説明をする。
図5は、図1に示される分析装置の検体分析動作の手順を示すフローチャートである。まず、図1に示される分析装置1の測定装置2および制御装置4の電源をそれぞれオン状態にすることにより、分析装置1の初期設定が行われる。これにより、キュベット152を移動させるための機構と各分注アームとを初期位置に戻すための動作や、制御装置4の制御部4aに記憶されているソフトウェアの初期化などが行われる(ステップS1)。
【0049】
そして、図2に示される搬送部3によって、検体(血漿)を収容した試験管150が載置されたラック151の搬送が行われる。これにより、ラックセット領域3aのラック151が測定装置2の吸引位置2aに対応する位置まで搬送される(ステップS2)。
そして、ステップS3において、検体分注アーム30により試験管150から所定量の検体の吸引が行われる。そして、検体分注アーム30を回転搬送部20の一次分注テーブル24に保持されたキュベット152の上方に移動させる。その後、検体分注アーム30から一次分注テーブル24のキュベット152内に検体が吐出されることにより、キュベット152内に検体が分取される。
【0050】
そして、一次分注テーブル24を回転させて、検体が分注されたキュベット152をHIL検出部40による測定が可能な位置に搬送する。これにより、ステップS4において、HIL検出部40による検体に対する光学的な測定が行われて、検体から光学的な情報が取得される。
そして、ステップS5において、制御装置4の制御部4aは、受信したデジタル信号のデータ(第1光学的情報)を用いて、検体の吸光度を算出するとともに、検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビン、ビリルビン)の有無およびその濃度を算出する。
【0051】
その後、ステップS6において、RAM401cに記憶されている吸光度が閾値以下か否かが判断される。ステップS6において、HIL検出部40で測定された第1光学的情報から算出した吸光度が閾値を超える場合には、検体中に多量の干渉物質が含まれており、正確に分析が行えないため、処理を終了する。
そして、ステップS6において、HIL検出部40で測定された第1光学的情報から算出した吸光度が閾値以下の場合には、ステップS7において、検体分注アーム30により一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152から所定量の検体が吸引される。その後、検体分注アーム30から二次分注テーブル23の複数のキュベット152に所定量の検体が各々吐出されることにより二次分注処理が行われる。
【0052】
ついで、ステップS8において、定量した検体を所定の時間インキュベートする。このインキュベーションの時間は、測定項目により異なるが、通常、1〜3分間程度である。
その後、ステップS9において、試薬分注アーム60を駆動させて、試薬テーブル21及び22に載置された試薬容器(図示せず)内の試薬を二次分注テーブル23のキュベット152内の検体に添加する。これにより、測定用試料の調製が行われる。そして、キュベット移送部70を用いて、測定用試料が収容された二次分注テーブル23のキュベット152を検出部80のキュベット載置部81の挿入孔81aに移動させる。
【0053】
そして、ステップS10において、検出部80の検出器82によりキュベット152内の測定用試料に対して光学的な測定(本測定)が行われることによって、測定用試料から光学的な情報(第2光学的情報)が取得される。
そして、ステップS11の制御装置4の制御部4aによる分析が終了した後には、ステップS12において、前記ステップS11で得られた分析結果を制御装置4の表示部4bに表示する。このようにして、分析装置1の検体の分析動作が終了する。
【0054】
[メンテナンス履歴の記録及び表示]
以上のように構成された分析装置1をスムーズに稼動させ、所定の性能を発揮させるために種々のメンテナンスが実施される。また、このメンテナンスには、前述したように、「サンプルチューブ廃棄」や「試薬結露除去」などのように、装置の動作を停止させた状態でユーザやサービスマンが手動で行なう項目と、「ピペット洗浄」などのように装置を動作させる必要がある項目とがある。本実施の形態では、分析装置1の動作を伴う後者のメンテナンス動作が実行された場合に、当該メンテナンスの記録が自動的になされるように構成されている。したがって、ユーザが別途メンテナンスを記録する手間が省け、当該ユーザの負担を軽減させることができるとともに、メンテナンスの記録が自動的に行われるので、記録忘れや記録ミスを防止することができる。本実施の形態では、また、メンテナンスの履歴が前記制御装置4のRAM401c(記憶部)に記憶され、この記憶された履歴が表示部4bに表示されるように構成されている。その際、メンテナンスの履歴は、その種類に応じて日付が一覧表示されたカレンダ形式又は日付形式にて前記表示部4bに表示される。「カレンダ形式」とは、例えば1ヶ月分の日付が横一列に一覧表示され、日付の下にメンテナンスの実施の有無を記号や文字で記載する形式のことであり、日毎又は週毎の短期スパンのメンテナンスの履歴を表示するのに便利である。一方、「日付形式」とは、メンテナンスの実施を当該メンテナンス項目を記載した箇所の、例えば横に日付(2006年7月26日、又は平成18年7月26日といった表記)で記載する形式のことであり、月毎又は年毎の長期スパンのメンテナンスの履歴を表示するのに便利である。
【0055】
本実施の形態では、ユーザが日常の分析操作を行う装置自体にメンテナンスの履歴が記憶され、この記憶されたメンテナンスの履歴がディスプレイなどの表示部に表示されるので、装置の操作と装置のメンテナンスとを関連付けて行うことができる。したがって、メンテナンスを確実に行い易くなることから、装置の信頼性を維持して高精度の分析を行うことができる。
前記メンテナンスの履歴は、例えば、分析装置1の制御装置4を立ち上げたときに表示部4bに表示されるメニュー画面において「メンテナンス」というアイコンをクリックするか、又はツールバーで「メンテナンス」というアイコンをクリックすることにより表示させることができる。
【0056】
図6はそのような表示画面の一例を示す図である。図6において、Aは、ユーザによる保守点検のスケジュール及び履歴を表示する保守スケジュール・履歴表示領域であり、Bは、保守画面に関する操作ボタンを表示する操作パネル領域である。このように、メンテナンス動作を操作するための操作画面と、メンテナンスの履歴を表示する履歴画面とを同時に表示することで、メンテナンスの履歴を確認しつつ、メンテナンスの動作を指示することができるので、必要なメンテナンスだけを確実に実行することができる。
【0057】
保守スケジュール・履歴表示領域Aは、メンテナンスの種類に応じて、4つの表示領域に分かれている。すなわち、保守スケジュール・履歴表示領域Aは、装置の稼働日毎に通常行われる「日常保守点検項目」、週毎に行われる「毎週の保守点検項目」、月毎に行われる「毎月の保守点検項目」、必要に応じて行われる「必要時の保守点検項目・サプライ部品の交換」に分かれている。
【0058】
「日常保守点検項目」及び「毎週の保守点検項目」は、前述したカレンダ形式にてメンテナンスの履歴が記録されている。「日常保守点検項目」としては、検体や試薬の吸引及び分注を行うピペットの洗浄を行う「ピペット洗浄」(各検体の測定時に行われる洗浄とは別に行われる、洗浄の程度を強化した洗浄のこと)、廃棄用の容器に収容された使用済みのキュベット(サンプルチューブ)を廃棄して、当該容器を空にする「サンプルチューブ廃棄」、使用済みの洗浄液などの「排液処理」、試薬の保存性を高めるために10℃程度に冷却される試薬容器に付着した結露を除去する「試薬結露除去」、及びコンプレッサへの液体の逆流を防ぐチャンバ内に液体が溜まっていないかを目視にて確認し、溜まっている場合には、当該液体を廃棄する「逆流防止チャンバ確認」という各項目がある。「毎週の保守点検項目」としては、前記ピペットに繋がるチューブなどの液体の流路全体を洗浄する「流路洗浄」がある。
【0059】
「日常保守点検項目」では、各日付に実施状況マークが表示され、本実施の形態においては、毎日各項目に対し白丸(○)のマークが付されている。そして、メンテナンスを実施すると黒丸(●)のマークになる。また、「毎週の保守点検項目」では、前回実施日から7日毎に○がつき、メンテナンスを実施すると実施した日に「●」マークがつき、この実施日を基準にして「○」マークの位置が更新される。このように、メンテナンスの予定を表示することにより、必要なメンテナンスを確実に実施することができる。
【0060】
前記「日常保守点検項目」及び「毎週の保守点検項目」は、メンテナンスの履歴がカレンダ形式で表示されているので、一目でメンテナンスの履歴を把握することができ、例えば、メンテナンスが行われていない項目を直感的に認識することができる。これにより、メンテナンスを確実に実行することができる。
「毎月の保守点検項目」としては、「流路洗浄」があるが、これは週毎に行われる「流路洗浄」と基本的に同様のメンテナンスである。ただし、洗浄部位や洗浄時間において相違しており、週毎の洗浄よりも徹底した洗浄が行われる。
【0061】
また、「必要時の保守点検項目・サプライ部品の交換」には、測定部において光源と用いられるランプを交換する「ランプ交換」、ゴム製キャップで密封された容器から検体を吸引する際に当該キャップを穿刺するピアサを交換する「ピアサ交換」、ピアサの汚れを除去する「ピアサ拭き取り」、検体などを吸引、分注するに用いられる空気圧源(コンプレッサ)の圧力を調整する「圧力調整」、長期間装置を使用しないときや、装置の設置場所を変更するときなどに装置内部流路の水を抜く「水抜き」、及び装置内部流路に水を入れる「水入れ」がある。「必要時の保守点検項目・サプライ部品の交換」の各項目においては、必要時の保守点検の履歴を過去3回分まで表示し、次回実施予定日及び動作状況が表示される。稼動時間又は稼動回数により、その交換時期を予測することが可能な部品については、メンテナンスの予定日を推測している。この推測は、予定日推測部として機能するCPU401aにより実行され、例えば、当該部品の最大動作回数(時間)と現在の動作回数(時間)及び1回前の保守実施日からの経過時間を元に算出(予測)することができる。本実施の形態では、ランプ交換及びピアサ交換の実施予定日が推測され、表示されている。これにより、消耗品であるランプやピアサの交換時期を予測することができ、予め当該消耗品を入手又はストックしておくことができる。その結果、部品不足などにより装置の稼動が停止することを防止することができる。
【0062】
前記「毎月の保守点検項目」及び「必要時の保守点検項目・サプライ部品の交換」は、カレンダ形式で表示された「日常保守点検項目」及び「毎週の保守点検項目」とは異なり、日付形式で表示されている。消耗品の交換のように不定期に行われるメンテナンスの場合は、メンテナンス(交換作業)の実施時期の間隔が月単位又は年単位と一般に長いことから、その履歴をカレンダ形式にて表示しようとすると、表示が小さくなったり、複数の画面に亘ったりして、かえって見にくくなるが、日付形式で表示することにより、必要な情報を容易に得ることができる。このように、本実施の形態では、メンテナンスの種類(定期又は不定期、短期スパン又は長期スパン)に応じた表示を行っている。
【0063】
操作パネル領域Bには、保守に関連する各種の操作ボタンが表示されており、各ボタンをクリックすることにより、表示されている動作又は当該動作のための準備又は補助動作が自動的に実行されるように構成されている。この「動作のための準備又は補助動作」とは、例えば「ピペット交換」の場合、ピペットを交換位置まで移動させ、手動による交換作業完了後、当該ピペットを元の位置に復帰させるという動作(準備動作)のことであり、また、「ランプ交換」の場合、手動によりランプ交換を実施した後、当該ランプの校正を行うこと(補助動作)である。すなわち、ここでいう「動作のための準備又は補助動作」は、ユーザがメンテナンス作業を実施するための動作(メンテナンス作業に伴う動作)を意味する。本実施の形態では、このような準備又は補助動作が実行された場合にも、当該動作に関連するメンテナンスが実行されたものとして、メンテナンスの記録が自動的に行われる。なお、本明細書中において「メンテナンス動作」とは、例えば「流路洗浄」のようにメンテナンス作業の全ての行程を分析装置1により自動に行う動作だけでなく、上述した「動作のための準備又は補助動作」を含む概念である。
【0064】
図6において、Cは操作パネルの表示切替ボタンであり、この切替ボタンをクリックすることで、次ページの操作パネルが表示される。表示切替ボタンCの下方には、[現在のページ/総ページ数]が表示されている。次ページの操作パネルには、図7に示されるように、「圧力調整」、「水入れ」、及び「水抜き」の各操作ボタンが表示される。図示された操作ボタンのうち、「洗浄」に関するボタンは、当該ボタンをクリックすることにより、確認ダイアログ(図示せず)が表示され、この確認ダイアログにおいて、「実行」ボタンをクリックすることで、所定のシーケンスに従った洗浄が開始される。そして、当該「洗浄」が完了すると自動的に該当箇所が実施完了を示す「●」マークになる。なお、本実施の形態においては、操作画面である操作パネル領域Bにメンテナンス動作を実行させるための操作ボタンを配置し、ユーザがかかる操作ボタンをクリックすることによってメンテナンス動作の指示を行う構成について述べたが、ユーザからのメンテナンス動作の指示を受け付けるための手段であれば他の構成であってもよい。例えば、メンテナンス動作の指示を受け付けるための手段として、メンテナンス動作の内容を模式的に図案化したアイコン等のボタンとは異なる図形(画像)を操作画面中に表示し、ユーザがこの図形を選択する操作、すなわちマウスのクリックやキーボードの操作を行うことによりユーザからのメンテナンス動作の開始指示を受け付けるように構成してもよい。
【0065】
つぎに、このようなメンテナンス動作に付随するメンテナンス履歴の自動更新を、図8のフローチャートに従い説明する。図において、左半分がパーソナルコンピュータ401における制御、右半分が測定ユニットの制御部における制御を示している。
【0066】
まず、ステップS21において、パーソナルコンピュータ(PC)401は、ユーザによるユーザ名及びパスワードなどのログイン情報が入力されたか否かの判断を行い、所定のログイン情報が入力された場合は、ステップS22においてログインの認証を行う。ついで、ステップS23において、認証が成功したか否かの判断がなされ、認証に失敗した場合は、操作が終了し、認証に成功した場合は、続くステップS24においてメニュー画面が表示される。
このメニュー画面において、ユーザが保守管理画面表示の指示(例えば、所定のアイコンをクリックする)をすると、記憶手段に記憶されているメンテナンス履歴・予定を読み出し(ステップS26)、かかるメンテナンス履歴・予定を保守管理画面に表示する(ステップS27)。
ついで、ステップS28において、パーソナルコンピュータ(PC)401は、操作パネル領域Bにおける操作ボタンの操作によるメンテナンス(保守)動作の指示を受け付けたか否かの判断を行う。保守動作の指示を受け付けた場合、ステップS29において、パーソナルコンピュータ401は、測定ユニットの制御部に、保守動作開始コマンドを送信する。
【0067】
ついで、ステップS30において、測定ユニットの制御部は、前記保守動作開始コマンドを受信したか否かの判断をする。コマンドを受信したと判断した場合、測定ユニットの制御部は、ステップS31において、該当する機構が所定のシーケンスに従って保守動作を行うように制御する。
【0068】
つぎにステップS32において、測定ユニットの制御部は、保守動作中にエラーが発生したか否かの判断を行い、エラーが発生した場合は、ステップS33において、エラー情報をパーソナルコンピュータ(PC)401に送信する。一方、エラーが発生していない場合は、ステップS34において、所定のメンテナンス動作が完了したか否かの判断を行い、完了していない場合は、ステップS31に戻って、そのままメンテナンス動作の制御を続行し、メンテナンス動作が完了した場合は、ステップS35において、メンテナンス動作の完了情報をパーソナルコンピュータ(PC)401に送信する。
【0069】
一方、パーソナルコンピュータ(PC)401は、ステップS29において保守動作開始コマンドを測定ユニットの制御部に送信した後、ステップS36において、当該測定ユニットの制御部からエラー情報を受信したか否かの判断を行う。そして、エラー情報を受信した場合は、ステップS37において、エラー表示を行い、エラー情報を受信していない場合は、ステップS38において、メンテナンス動作完了の情報を受信したか否かの判断を行う。
メンテナンス動作完了の情報を受信していない場合は、ステップS36に戻り、メンテナンス動作完了の情報を受信した場合は、ステップS39において、メンテナンス履歴の更新を行う。具体的には、メンテナンス項目及び日付をログインしたユーザ名と対応付けて記憶部に記憶するとともに、保守管理画面における該当箇所の「○」マークを、実施完了を示す「●」マークに変更する。
【0070】
なお、メンテナンスの中には、「サンプルチューブ廃棄」や「試薬結露除去」などのように、装置の動作を停止させた状態でユーザやサービスマンが手動で行なうものがあるが、メンテナンスの履歴表示領域を手動入力可能にすることで、かかる手動によるメンテナンスも含めすべてのメンテナンスの履歴をまとめて表示部に表示して、一元的に管理することができる。また、この場合に、パーソナルコンピュータ(PC)401からの指示により装置がメンテナンス動作を実行するメンテナンスについては、手動によるメンテナンス記録の入力が禁止されるように構成することができる。このようにすることで、装置の動作によりメンテナンスが行われる項目について、手動により誤って実行済の記録がなされるのを防止することができる。
【0071】
さらに、予め定められたログイン名が入力されたときに前記手動入力の禁止を解除するように構成することができる。例えば、装置が故障した場合には、ユーザによる通常のメンテナンス動作が不可能になることが考えられるが、このような場合にサービスマンが装置を強制動作させてメンテナンスを実行することがある。その際、かかるサービスマンが所定のログイン名を入力して装置を動作させたときに、手動入力の禁止を解除して、手動入力可能にすることで、サービスマンにより実行されたメンテナンスを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の分析装置の一実施の形態の全体構成を示す斜視説明図である。
【図2】図1に示される分析装置における測定装置及び搬送部を示す平面説明図である。
【図3】図1に示される分析装置における測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示される分析装置における制御装置のブロック図である。
【図5】図1に示される分析装置の検体分析動作の手順を示すフローチャートである。
【図6】表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
【図7】表示画面における操作パネル領域Bの他の頁の表示例を示す図である。
【図8】保守履歴の更新を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 検体分析装置
2 測定装置
3 搬送部
4 制御装置
4a 制御部
10 キュベット供給部
20 回転搬送部
21 試薬テーブル
22 試薬テーブル
23 二次分注テーブル
24 一次分注テーブル
30 検体分注アーム
40 HIL検出部
50 ランプユニット
60 試薬分注アーム
61 加温ピペット
80 検出部
152 キュベット
A 保守スケジュール・履歴表示領域
B 操作パネル領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析するのに用いられる装置であって、
検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、
当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、
前記分析機構のメンテナンス動作を指示するための入力部と、
表示部と、
前記表示部に、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴を表示させるメンテナンス履歴表示手段と、
前記入力部からメンテナンス動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス動作を前記分析機構に実行させるメンテナンス動作実行手段と、
前記メンテナンス動作実行手段により実行されたメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段と、
前記メンテナンス動作が実行されたときに、メンテナンスの履歴の表示を更新させる表示更新手段とを備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記メンテナンス履歴表示手段は、メンテナンス動作を操作するための操作画面と、メンテナンスの履歴を表示する履歴画面とを同時に前記表示部に表示させるように構成されている請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記メンテナンス履歴表示手段は、前記操作画面に、複数のメンテナンス動作を各別に指示するための複数の指示用図形を表示するように構成されており、
前記メンテナンス動作実行手段は、ユーザから前記指示用図形を選択する入力が前記入力部に与えられたときに、前記分析機構に当該指示用図形に対応するメンテナンス動作を実行させるように構成されている請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記記憶部は、メンテナンスの予定をさらに記憶し、
前記メンテナンス履歴表示手段は、前記履歴画面に、メンテナンスの履歴と共にメンテナンスの予定を表示させるように構成されている請求項2又は3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記入力部は、メンテナンスの記録の入力を受け付けることが可能であり、
前記記憶部は、手動で入力されたメンテナンスの記録を記憶するように構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
前記入力部からの指示により前記分析機構がメンテナンス動作を実行するメンテナンスについては、手動によるメンテナンス記録の入力が禁止されるように構成されている請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
予め定められたログイン名が入力されたときに前記手動による入力の禁止を解除するように構成されている請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
検体を分析するのに用いられる装置であって、
検体を分析するための分析動作と、メンテナンス作業に伴う動作とを実行可能な分析機構と、
当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、
前記分析機構のメンテナンス作業に伴う動作を指示するための入力部と、
表示部と、
前記表示部に、日付又は週を一覧表示するとともに各日付又は週に対応付けてメンテナンスの実施状況を表示するようにメンテナンスの履歴を表示させるメンテナンス履歴表示手段と、
前記入力部からメンテナンス作業に伴う動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス作業に伴う動作を前記分析機構に実行させる実行手段と、
前記実行手段によりメンテナンス作業に伴う動作が実行されたときに、このメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段と、
前記メンテナンス作業に伴う動作が実行されたときに、メンテナンスの履歴の表示を更新させる表示更新手段とを備えることを特徴とする分析装置。
【請求項9】
検体を分析するのに用いられる装置であって、
検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、
当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
前記入力部に入力されたユーザ情報に基づいてユーザを認証し、ユーザのログインを許可するか否かを決定するログイン手段と、
前記入力部からメンテナンス動作の実行指示を受け付けたときに、このメンテナンス動作を前記分析機構に実行させるメンテナンス動作実行手段と、
前記メンテナンス動作が実行されたときに、ログインしているユーザの情報と、このメンテナンスの記録とを関連づけて前記記憶部に記憶させる記録更新手段とを備えることを特徴とする分析装置。
【請求項10】
検体を分析するのに用いられる装置であって、
検体を分析するための分析動作と、メンテナンス動作とを実行可能な分析機構と、
当該装置のメンテナンスの記録を記憶する記憶部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
表示部と、
前記表示部に、複数のメンテナンス動作を各別に指示するための複数の指示用図形を表示させる表示手段と、
ユーザから前記指示用図形を選択する入力が前記入力部に与えられたときに、前記分析機構に当該指示用図形に対応するメンテナンス動作を実行させるメンテナンス動作実行手段と、
前記メンテナンス動作実行手段により実行されたメンテナンスの記録を前記記憶部に記憶させる記録更新手段とを備えることを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−51542(P2008−51542A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225498(P2006−225498)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】