分析装置
【課題】装置の構造を簡素化するとともに、試薬収容具に収容された試薬の攪拌を効果的に行なうことが可能な分析装置を提供する。
【解決手段】この免疫分析装置1は、検体を吸引する検体分注アーム5と、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具300を円環状に保持するためのラック600と、ラック600に保持された試薬収容具300から試薬を吸引する試薬分注アーム9と、検体分注アーム5によって吸引された検体と、試薬分注アーム9によって吸引された試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する制御装置4と、複数の試薬収容具300に収容された試薬の攪拌のためにラック600を円環の中央を中心に往復回転させる駆動部とを備える。
【解決手段】この免疫分析装置1は、検体を吸引する検体分注アーム5と、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具300を円環状に保持するためのラック600と、ラック600に保持された試薬収容具300から試薬を吸引する試薬分注アーム9と、検体分注アーム5によって吸引された検体と、試薬分注アーム9によって吸引された試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する制御装置4と、複数の試薬収容具300に収容された試薬の攪拌のためにラック600を円環の中央を中心に往復回転させる駆動部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分析装置に関し、特に、試薬を攪拌するための機構を備えた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬を攪拌するための機構を備えた分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の分析装置は、試薬容器を載置したターンテーブルを回転させることによって、試薬容器をターンテーブルの回転中心の周りに公転させるとともに、試薬容器そのものをターンテーブルの上で自転させることによって試薬に含まれる微小粒子を均一に分散させる攪拌機構を備えている。また、特許文献1には、ターンテーブルを3回転させるうちの2回転目でターンテーブルを一旦停止させ、ターンテーブルを逆向きに回転させることも記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−196006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の攪拌機構では、試薬容器の自転のための構造が必要となるため、装置の構造が複雑化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の構造を簡素化するとともに、試薬収容具に収容された試薬の攪拌を効果的に行なうことが可能な分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の第1の局面による分析装置は、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備える。
【0008】
この第1の局面による分析装置では、上記のように、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために収容具保持部を円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。すなわち、試薬収容具の移動方向が切り替わるときに試薬に作用する力の方向が変化し、試薬の流動が生じるところ、試薬収容具の内部底面が滑らかな凹面状に形成されているので、試薬の流動が容易になり、撹拌が効果的に行われる。これにより、試薬に磁性粒子などの重い粒子が含まれている場合にも、攪拌子を挿入することなく試薬を攪拌することができる。
【0009】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている。このように構成すれば、試薬収容具内において試薬がより移動し易くなるので、試薬の攪拌をより効果的に行なうことができる。
【0010】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具は、上部に、上方に向かって内部の水平断面の断面積が狭くなるように形成されたテーパー形状部を含む。このように構成すれば、駆動部による試薬収容具の移動に伴って試薬が流動する際、液面近傍の試薬の移動がテーパー形状部によって上から抑えられる。これにより、液面近傍の試薬が波打つことが抑制されるので、試薬の泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、試薬は、液面がテーパー形状部の下端よりも低くなるように試薬収容具に収容される。このように構成すれば、試薬の液面が浅くなることにより試薬が流動され易くなるので、攪拌を効果的に行なうことができるとともに、テーパー形状部により泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、収容具保持部は、試薬収容具の往復動中に収容具保持部が収容具保持部に対して移動しないように構成されている。このように構成すれば、試薬収容具自体を収容具保持部に対して移動させるための機構を設ける必要がないので、装置の構成を簡素化することができる。また、試薬収容具自体を収容具保持部に対して移動させるための機構を設ける必要がないので、試薬収容具自体を移動させる際に、試薬収容具の横断面の形状が円形以外の形状であっても、隣り合う試薬収容具同士の干渉を防止するためのスペース(隙間)を収容具保持部に余分に設ける必要がなくなる。このため、上記スペース(隙間)の分だけ収容具保持部を小さくすることができる。
【0013】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬吸引部による試薬の吸引が必要な時は、駆動部による試薬収容具の往復動を中断し、吸引対象の試薬を収容した試薬収容具が所定の吸引位置に配置されるまで駆動部によって試薬収容具を移動させ、吸引位置に配置された試薬収容具から試薬吸引部によって試薬が吸引された後、駆動部による試薬収容具の往復動を再開する。このように構成すれば、駆動部が試薬の攪拌のための往復動と、試薬収容具を吸引位置に配置させるための移動との両方を行なうので、それぞれの動作を行なうための移動機構を別々に設ける必要がなくなる。これにより、装置を簡素化することができる。また、試薬の吸引動作が開始される直前まで試薬の攪拌のための往復動を行なうので、試薬が攪拌された状態(吸引に適した状態)で試薬を吸引することができる。
【0014】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、駆動部は、分析装置の待機時において、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる。このように構成すれば、分析装置の待機時にも試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、分析装置の待機時間が長時間に及ぶ場合にも、試薬が攪拌された状態を保つことができるので、待機直後の分析動作を試薬の攪拌に時間を費やすことなく行なうことができる。これにより、待機直後の分析時間を短縮することができる。
【0015】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、駆動部は、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる。このように構成すれば、試薬収容具の往復動の範囲を5度以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動は、回転運動よりも振幅運動に近くなるので、撹拌が効果的に行われる。さらに、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動方向の切り替えを頻繁に行うことができるので、撹拌が効果的に行われる。
【0016】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、駆動部は、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で、円環の中央を中心とする円の円弧上を往復動させる。このように構成すれば、試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる角速度を45度/秒以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる角速度を270度/秒以下にすることによって試薬に気泡が発生してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具に収容される試薬は、磁性粒子を含む。このように試薬が重量が大きく沈殿し易い磁性粒子を含む場合にも、上記一の局面による分析装置を用いることにより、効果的に試薬を攪拌することができる。
【0018】
この発明の第2の局面による分析装置は、複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備え、試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている。
【0019】
この第2の局面による分析装置では、上記のように、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために収容具保持部を円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。すなわち、試薬収容具の移動方向が切り替わるときに試薬に作用する力の方向が変化し、試薬の流動が生じるところ、試薬収容具の内部底面が滑らかな凹面状に形成されているので、試薬の流動が容易になり、撹拌が効果的に行われる。これにより、試薬に磁性粒子などの重い粒子が含まれている場合にも、攪拌子を挿入することなく試薬を攪拌することができる。また、試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されているので、試薬収容具内において試薬がより移動し易くなるので、試薬の攪拌をより効果的に行なうことができる。
【0020】
この発明の第3の局面による分析装置は、複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる駆動部とを備える。
【0021】
この第3の局面による分析装置では、上記のように、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる駆動部を設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。また、試薬収容具の往復動の範囲を5度以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動は、回転運動よりも振幅運動に近くなるので、撹拌が効果的に行われる。さらに、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動方向の切り替えを頻繁に行うことができるので、撹拌が効果的に行われる。
【0022】
この発明の第4の局面による分析装置は、複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で、円環の中央を中心とする円の円弧上を往復動させる駆動部とを備える。
【0023】
この第4の局面による分析装置では、上記のように、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる駆動部を設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。また、試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる角速度を45度/秒以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる角速度を270度/秒以下にすることによって試薬に気泡が発生してしまうことを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の全体構成について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態による免疫分析装置1は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための装置である。この免疫分析装置1では、測定対象である血液などの検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体(R1試薬)に磁性粒子(R2試薬)を結合させた後に、結合(Bound)した抗原、捕捉抗体および磁性粒子をBF(Bound Free)分離部14(図1および図2参照)の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の捕捉抗体を含むR1試薬を除去する。そして、磁性粒子が結合した抗原と標識抗体(R3試薬)とを結合させた後に、結合(Bound)した磁性粒子、抗原および標識抗体をBF分離部14の磁石に引き寄せることにより、未反応(Free)の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原または抗体を定量的に測定している。
【0027】
この免疫分析装置1は、図1および図2に示すように、測定機構部2と、測定機構部2の前面側に配置された検体搬送部(サンプラ)3と、測定機構部2に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置4とを備えている。また、測定機構部2は、検体分注アーム5と、試薬設置部6および7と、試薬分注アーム8、9および10と、1次反応部11および2次反応部12と、キュベット供給部13と、BF分離部14と、検出部15とから構成されている。また、図3に示すように、測定機構部2における各機構(各種分注アームおよび試薬設置部7など)は、測定機構部2に設けられた制御部2aにより制御されている。具体的には、制御部2aは、試薬設置部7に設けられた各種センサ(原点検知センサ30dなど)の信号を受信するとともに、試薬設置部7に設けられた各種駆動源(ステッピングモータ23、33および駆動部43など)の駆動を制御している。また、搬送機構部3も制御部2aによって制御される。なお、各種分注アーム、各種センサおよび各種駆動源については後に詳細に説明する。
【0028】
制御部2aは、図4に示すように、CPU2bと、ROM2cと、RAM2dと、通信インターフェース2eとから主として構成されている。
【0029】
CPU2bは、ROM2cに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM2dに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM2cは、CPU2bに実行させるためのコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータなどを記憶している。RAM2dは、ROM2cに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU2bの作業領域として利用される。
【0030】
通信インターフェース2eは、制御装置4に接続されており、検体の光学的な情報(標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量のデータ)を制御装置4に送信するとともに、制御装置4の制御部4aからの信号を受信するための機能を果たす。また、通信インターフェース2eは、搬送機構部3および測定機構部2の各部を駆動するためのCPU2bからの指令を送信するための機能を有する。
【0031】
検体搬送部3は、図1および図2に示すように、検体を収容した複数の試験管100が載置されたラック101を、検体分注アーム5が検体を吸引する吸引位置1aに対応する位置まで搬送するように構成されている。この検体搬送部3は、未処理の検体を収容した試験管100が載置されたラック101をセットするためのラックセット部3aと、分注処理済みの検体を収容した試験管100が載置されたラック101を貯留するためのラック貯留部3bとを有している。そして、未処理の検体を収容した試験管100を検体分注アーム5の吸引位置1aに対応する位置まで搬送することにより、検体分注アーム5により試験管100内の血液などの検体の吸引が行われ、その後、その試験管100を載置したラック101がラック貯留部3bに貯留されるように構成されている。
【0032】
制御装置4(図1参照)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。また、表示部4bは、検出部15から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0033】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御装置4は、図5に示すように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとから主として構成されたコンピュータ401によって構成されている。制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0034】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
【0035】
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0036】
RAM401cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401bおよびハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0037】
ハードディスク401dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施形態に係る免疫分析用のアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0038】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、免疫分析用のアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401がその可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0039】
なお、上記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0040】
また、ハードディスク401dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム404aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0041】
入出力インタフェース401fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0042】
通信インタフェース401gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して測定機構部2との間でデータの送受信が可能である。
【0043】
画像出力インタフェース401hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0044】
また、制御部4aのハードディスク401dにインストールされた免疫分析用のアプリケーションプログラム404aは、測定機構部2の検出部15から送信された測定用試料の発光量(デジタル信号のデータ)を用いて、測定用試料の抗原の量を測定している。
【0045】
検体分注アーム5(図1および図2参照)は、検体搬送部3により吸引位置1aに搬送された試験管100内の検体を、後述する1次反応部11の回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150内に分注する機能を有している。この検体分注アーム5は、図1および図2に示すように、モータ5aと、モータ5aに接続される駆動伝達部5bと、駆動伝達部5bに軸5cを介して取り付けられるアーム部5dとを含んでいる。駆動伝達部5bは、モータ5aからの駆動力によりアーム部5dを、軸5cを中心に回動させるとともに、上下方向(Z方向)に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部5dの先端部には、検体の吸引および吐出を行うピペット5eが設けられている。
【0046】
試薬設置部6(図1および図2参照)は、捕捉抗体を含むR1試薬が収容される試薬容器および標識抗体を含むR3試薬が収容される試薬容器を保持する試薬収容具(図示せず)を設置するために設けられている。R1試薬は、孔6aを介して後述する試薬分注アーム8により吸引される。また、R3試薬は、孔6bを介して後述する試薬分注アーム10により吸引される。また、試薬設置部6には、試薬設置部6に設置される試薬収容具(図示せず)を交換するための孔6cが設けられている。
【0047】
試薬設置部7(図1および図2参照)は、磁性粒子を含むR2試薬が収容される試薬容器310を保持する試薬収容具300(図6参照)を設置するために設けられている。試薬設置部7の構造については後に詳細に説明する。
【0048】
試薬分注アーム8(図1および図2参照)は、試薬設置部6に設置される試薬収容具200内のR1試薬を吸引するとともに、その吸引したR1試薬を1次反応部11の検体が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム8は、モータ8aと、モータ8aに接続される駆動伝達部8bと、駆動伝達部8bに軸8cを介して取り付けられたアーム部8dとを含んでいる。駆動伝達部8bは、モータ8aからの駆動力により軸8cを中心にアーム部8dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部8dの先端部には、試薬収容具200内のR1試薬の吸引および吐出を行うためのピペット8e(図1参照)が取り付けられている。すなわち、ピペット8eは、試薬設置部6に設置された試薬収容具200内のR1試薬を吸引した後、吸引したR1試薬を1次反応部11の検体が分注されたキュベット150内に分注するように構成されている。
【0049】
試薬分注アーム9(図1および図2参照)は、試薬設置部7に設置される試薬収容具300内のR2試薬を1次反応部11の検体およびR1試薬が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム9は、モータ9aと、モータ9aに接続される駆動伝達部9bと、駆動伝達部9bに軸9cを介して取り付けられたアーム部9dとを含んでいる。駆動伝達部9bは、モータ9aからの駆動力により、軸9cを中心にアーム部9dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部9dの先端部には、試薬収容具300内のR2試薬の吸引および吐出を行うためのピペット9e(図1参照)が取り付けられている。したがって、ピペット9eは、試薬設置部7の試薬収容具300内のR2試薬を吸引した後、吸引したR2試薬を1次反応部11の検体およびR1試薬が分注されたキュベット150内に分注するように構成されている。
【0050】
試薬分注アーム10(図1および図2参照)は、試薬設置部6に設置される試薬収容具200内のR3試薬を吸引するとともに、その吸引されたR3試薬を2次反応部12の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム10は、モータ10aと、モータ10aに接続される駆動伝達部10bと、駆動伝達部10bに軸10cを介して取り付けられたアーム部10dとを含んでいる。駆動伝達部10bは、モータ10aからの駆動力により、軸10cを中心にアーム部10dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部10dの先端部には、試薬収容具200内のR3試薬の吸引および吐出を行うためのピペット10e(図1参照)が取り付けられている。すなわち、ピペット10eは、試薬設置部6の試薬収容具200内のR3試薬を吸引した後、吸引したR3試薬を2次反応部12の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット150内に分注される。
【0051】
1次反応部11は、図1および図2に示すように、回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150を所定の期間(本実施形態では、18秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット150内の検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌するために設けられている。つまり、1次反応部11は、キュベット150内で磁性粒子を有するR2試薬と検体中の抗原とを反応させるために設けられている。この1次反応部11は、検体とR1試薬およびR2試薬とが収容されるキュベット150を回転方向に搬送するための回転テーブル部11aと、キュベット150内の検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体、R1試薬およびR2試薬が収容されたキュベット150を後述するBF分離部14(図1および図2参照)に搬送する容器搬送部11cとから構成されている。
【0052】
また、回転テーブル部11aは、保持部11bに保持されたキュベット150を18秒毎に所定の角度だけ回転移送するように構成されている。そのため、免疫分析装置1の各種装置(検体分注アーム5や試薬分注アーム8および9など)は、回転テーブル部11aにより所定の位置に移送されたタイミングで、移送された所定の位置のキュベット150に対して動作するように制御されている。
【0053】
また、容器搬送部11cは、回転テーブル部11aの中心部分に回転可能に設置されている。この容器搬送部11cは、回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150を把持するとともにキュベット150内の試料を攪拌する機能を有している。さらに、容器搬送部11cは、検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌してインキュベーションした試料を収容したキュベット150をBF分離部14(図1および図2参照)に搬送する機能も有している。
【0054】
2次反応部12(図1および図2参照)は、1次反応部11と同様の構成を有しており、回転テーブル部12aの保持部12bに保持されるキュベット150を所定の期間(本実施形態では、18秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット150内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬を攪拌するために設けられている。つまり、2次反応部12は、キュベット150内で標識抗体を有するR3試薬と検体中の抗原とを反応させるとともに、発光基質を有するR5試薬とR3試薬の標識抗体とを反応させるために設けられている。なお、R5試薬は、2次反応部12の近傍に設けられたR5試薬分注アーム(図示せず)により、2次反応部12の検体、R1試薬、R2試薬およびR3試薬が収容されたキュベット150内に分注されるように構成されている。この2次反応部12は、検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬が収容されるキュベット150を回転方向に搬送するための回転テーブル部12aと、キュベット150内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体などが収容されたキュベット150をBF分離部14に搬送する容器搬送部12cとから構成されている。さらに、容器搬送部12cは、BF分離部14により処理されたキュベット150を再び回転テーブル部12aの保持部12bに搬送する機能を有している。なお、2次反応部12の詳細構造は、1次反応部11と同様であるので、その説明を省略する。
【0055】
キュベット供給部13(図1および図2参照)は、複数のキュベット150を1次反応部11の回転テーブル部11aの保持部11bに順次供給することが可能なように構成されている。
【0056】
BF分離部14は、1次反応部11の容器搬送部11cによって搬送されたキュベット150内の試料から未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する機能と、2次反応部12の容器搬送部12cによって搬送されたキュベット150(図1参照)内の試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する機能とを有する。
【0057】
検出部15(図1および図2参照)は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定するために設けられている。
【0058】
次に、図6〜図13を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の試薬設置部7および試薬設置部7に設置される試薬収容具300の構造を説明する。
【0059】
この試薬設置部7は、図6に示すように、試薬収容具300を円環状に並べて保持する円筒形状の試薬保持部20と、試薬保持部20に開閉可能に取り付けられる蓋部30と、円筒形状の試薬保持部20の側面(外壁部21)に取り付けられる昇降部40とを含んでいる。また、試薬設置部7の底部にはペルチエ素子(図示せず)が取り付けられており、試薬設置部7の内部は約15℃に保たれている。
【0060】
試薬保持部20は、図7および図8に示すように、円筒状の外壁部21と、中心に設けられる回転可能な回転軸22と、回転軸22を回転させるためのステッピングモータ23と、ステッピングモータ23の駆動力を回転軸22に伝達するためのベルト24(図8参照)とを含んでいる。外壁部21の内面には全面に渡って断熱材(図示せず)が取り付けられており、試薬保持部20内部の温度を低温(約15℃)に保っている。また、ステッピングモータ23の駆動力は、図8に示すように、ステッピングモータ23により回転するプーリ23aと、回転軸22と同軸上に固定されるプーリ22aとにより、ベルト24を介して回転軸22に伝達されるように構成されている。このステッピングモータ23により、回転軸22は矢印A方向および矢印B方向に回転される。
【0061】
また、回転軸22には、複数の試薬収容具300を円環状に保持するためのラック600が固定的に取り付けられている。ラック600に試薬収容具300を保持させた状態で回転軸22を回転させることにより、試薬収容具300が保持されたラック600が回転されるので、吸引対象または交換対象の試薬を保持する試薬収容具300を後述する蓋部30の孔30bおよび入出孔30cの下方に移動させることが可能である。このラック600は、図9に示すように、ラック600の中心に設けられ、回転軸22が挿入される挿入部601と、挿入部601を中心に円環状に形成され、試薬収容具300を保持するための複数の保持部602と、挿入部601の上方に突出するように設けられた原点検知片603とを含む。保持部602は、仕切板602aと支持部602bとにより構成されている。仕切板602aは、挿入部601から半径方向に放射状に延びるように所定の角度間隔で複数設けられている。支持部602bは、仕切板602aの互いに対向する部分の下部および挿入部601の下部に、内側に突出するように設けられている。各試薬収容具300は、一対の仕切板602aにより挟まれる空間に支持部602bにより底部326(図10参照)の周縁部が支持されるように配置される。また、図8に示すように、保持部602の上部、下部および半径方向の外側部を開放端とすることにより、試薬収容具300を昇降させるための昇降部40の載置台41およびアーム42がラック600の保持部602に接触することなく昇降可能に構成されている。
【0062】
また、本実施形態では、ステッピングモータ23の駆動により回転軸22が矢印A方向および矢印B方向に往復回転可能に構成されている。すなわち、試薬設置部7に設置されるR2試薬(磁性粒子)を攪拌するために、R2試薬を収容する試薬容器310(試薬収容具300)を保持するラック600を矢印A方向および矢印B方向に往復回転させることによりR2試薬を攪拌して、一般的な粒子と比較して重量の大きい粒子であるR2試薬(磁性粒子)が沈殿するのを抑制している。具体的には、図8に示すように、ラック600は、一定の角速度(例えば、1回転/4秒)で一定の角度α(例えば、約27度)の角度範囲で往復動される。すなわち、例えば、約27度の角度範囲で0.3秒毎に回転方向が逆転するように構成されている。なお、攪拌時の矢印A方向への回転角度および矢印B方向への回転角度は、実質的に等しく設定されている。また、矢印A方向への回転速度および矢印B方向への回転速度も、実質的に等しく設定されている。なお、上記の角速度は、45度/秒以上270度/秒以下が好ましい。角速度を45度/秒以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、角速度を270度/秒以下にすることによって試薬に気泡が発生してしまうことを防ぐことができる。特に、本実施形態のR2試薬は、界面活性剤を含むので気泡が発生しやすいが、角速度が270度/秒以下であれば気泡の発生を防ぐことができる。
【0063】
さらに、上記の角度範囲は、5度以上90度以下が好ましい。角度範囲を5度以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、角度範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具300の移動は、回転運動よりも振幅運動に近くなるので、撹拌が効果的に行われる。また、角度範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具300の移動方向の切り替えを頻繁に行うことができるので、撹拌が効果的に行われる。
【0064】
また、ラック600は、試薬の吸引動作時および試薬収容具300の交換時(追加、取出時)以外は、常に往復回転されることにより、試薬が攪拌されるように構成されている。また、免疫分析装置1の待機時(分析の指示待ちの状態であり、検体の測定動作が行われていない状態)においても、ラック600が往復回転されるように構成されている。なお、これらの動作は、制御部2aによって制御される。
【0065】
また、蓋部30は、図6に示すように、試薬保持部20にヒンジ部30aを介して開閉可能に取り付けられている。この蓋部30は、試薬設置部7内の温度が低温(15℃)に保たれるように外気を遮断するとともに、試薬設置部7内の試薬を外部から吸引可能で、かつ、試薬収容具300を試薬設置部7内に出し入れ可能なように構成されている。具体的には、蓋部30は、図1、図2および図6に示すように、試薬収容具300の試薬容器310(図10参照)から試薬を吸引する際に試薬分注アーム9のピペット9eが挿入される孔30bと、試薬収容具300を試薬設置部7から昇降部40によって出し入れするための入出孔30cとを含んでいる。また、蓋部30は、孔30bの下方に配置された試薬収容具300のスライド蓋330(図10参照)を開閉可能な開閉部材31と、開閉部材31を矢印C方向および矢印D方向にスライド可能に支持する直動ガイド32と、開閉部材31を往復駆動するステッピングモータ33とを含んでいる。また、蓋部30には、ラック600の原点位置を検知するための透過型の原点検知センサ30dが設けられている。透過型の原点検知センサ30dは、ラック600に設けられた原点検知片603を検知することにより、回転するラック600の原点位置を検知する機能を有する。
【0066】
また、図6に示すように、開閉部材31は、二股の係合片31aを有する。また、試薬収容具300がスライド蓋330(図10参照)が閉まった状態で孔30bの下方に配置された場合には、試薬収容具300のスライド蓋330の係合片333(図10参照)が開閉部材31の二股の係合片31aの間に位置するように構成されている。スライド蓋330の係合片333が二股の係合部31aの間に位置する時に、開閉部材31が矢印C方向および矢印D方向にスライドすることにより、試薬収容具300のスライド蓋330を開閉することが可能である。
【0067】
昇降部40は、試薬設置部7内に試薬収容具300を出し入れするために設けられている。昇降部40は、図7および図8に示すように、試薬収容具300が載置される載置台41と、載置台41を支持するアーム42と、アーム42を上下方向にスライドさせる駆動部43とを含んでいる。載置台41には、試薬収容具300のケース320の底部326に設けられたリブ326aと係合可能な溝41aが設けられておいる。また、アーム42は、外壁部21に設けられた上下方向に延びる孔(図示せず)を介して、試薬保持部20の外部に設けられた駆動部43の駆動力により載置台41を上下方向に移動させる機能を有する。昇降部40は、載置台41に試薬収容具300を載置した状態で載置台41を下降させることにより、試薬収容具300をラック600に保持させることが可能である。また、ラック600に保持された試薬収容具300の下方から上方に載置台41を移動させることにより、ラック600に保持された試薬収容具300を持ち上げて、蓋部30の入出孔30cから試薬収容具300を取り出すことが可能なように構成されている。
【0068】
次に、図10〜図13を参照して、本実施形態による免疫分析装置1に用いられる試薬収容具300の構造を説明する。
【0069】
試薬収容具300は、図10、図11および図13に示すように、R2試薬が収容される試薬容器310と、試薬容器310を収納するケース320とからなる。図12に示すように、試薬容器310は、開口311aを有する頭部311と、滑らかな凹面状に形成された底部312と、円筒状に形成された中部313と、中部313の上端から上方に向かって水平断面の断面積が徐々に狭くなるように形成されたテーパ−形状部314とを含んでいる。底部312の水平断面は円形状に形成されており、先端312aを含む内部形状が実質的に球面状に形成されている。また、底部312の内面には、内側に突出する段差部312bが設けられている。また、R2試薬は、液面がテーパ−形状部314の下端314aよりも低くなるように試薬容器310に収容される。
【0070】
また、ケース320の上面321には、試薬容器310の開口311aに挿入されている筒部322と、蓋部30に設けられた反射型のセンサ(図示せず)が照射する光を反射するための反射部323と、後述するスライド蓋330がスライドするためのスライドレール324と、スライド蓋330の位置をそれぞれ規制するための凹部325とを有する。また、ケース320の上面321には、筒部322を密閉可能なスライド蓋330が取り付けられている。また、ケース320の底面326には、昇降部40の載置台41の溝41aと係合するリブ326aが設けられている。
【0071】
筒部322は、図11および図13に示すように、上側の開口端面322aが水平面から所定の角度傾斜した傾斜面となるように形成されている。また、凹部325は、後述するスライド蓋330の突出部332と当接することによりスライド蓋330の移動を規制するとともに、スライド蓋330がケース320から脱落することを抑制する機能を有する。また、凹部325には、スライド蓋330が筒部322の上側の開口端面322aを閉じる位置にある時に、スライド蓋330の突出部332と係合する凸状のリブ325aが設けられている。これにより、スライド蓋330が筒部322を密閉した状態でスライド蓋330を固定することが可能である。
【0072】
また、スライド蓋330は、ケース320に対してスライドすることにより筒部322を開閉するように構成されている。このスライド蓋330は、スライドレール324に係合する係合部331(図10参照)と、上面321の凹部325に嵌め込まれる突出部332(図13参照)と、蓋部30の開閉部材31(係合片31a)と係合する係合片333と、所定の角度傾斜する傾斜面となるように形成された当接部334(図13参照)とを含んでいる。図13に示すように、当接部334には、スライド蓋330が筒部322を密閉する時に筒部322の上側の開口端面322aと密着する板状のシリコンシート334aが取り付けられている。
【0073】
また、筒部322の上側の開口端面322aの傾斜角度と、スライド蓋330の当接部334の傾斜角度とは実質的に等しく形成されている。スライド蓋330が筒部322の開口端面322aの低い側から高い側へ向かう方向にスライドすることによって、開口端面322aとシリコンシート334aとが密着して、試薬容器310に収容された試薬が密閉状態となるように構成されている。
【0074】
次に、本実施形態による免疫分析装置1の試薬設置部7におけるR2試薬の攪拌動作について説明する。
【0075】
R2試薬を含む試薬収容具300を保持するラック600は、免疫分析装置1の分析動作時において、R2試薬を攪拌するためにステッピングモータ23の駆動により矢印A方向および矢印B方向に往復回転されている。そして、試薬の吸引時には、まず、ラック600の往復回転動作が中断される。そして、ステッピングモータ23の駆動によりラック600が回転されて、吸引対象の試薬を含む試薬収容具300が蓋部30の孔30bの下方に移動される。そして、試薬分注アーム9のピペット9eによる試薬の吸引が終了した後、ステッピングモータ23の駆動によりラック600の往復回転が再開される。
【0076】
また、昇降部40による試薬収容具300の交換、追加および取出時においても、ラック600の往復回転が中断される。そして、載置台41がラック600の保持部602を通過して昇降することにより行なわれる交換動作(追加および取出動作)が終了した後に、ラック600の往復回転が再開される。
【0077】
このように、本実施形態では、試薬の吸引時における試薬収容具300の吸引位置(孔30bの下方)への移動と、試薬の攪拌とが1つのステッピングモータ23により行なわれる。
【0078】
次に、図1、図8、図14〜図16を参照して、本実施形態による試薬収容具300から試薬分注アーム9のピペット9eにより試薬を吸引する吸引動作を説明する。
【0079】
まず、試薬保持部20の回転軸22(図8参照)が試薬収容具300を保持するラック600を回転させることにより、吸引対象の試薬を収容した試薬容器310を含む試薬収容具300が蓋部30の孔30bの下方に移動される。試薬収容具300が蓋部30の孔60bの下方に移動する際、図14に示すように、スライド蓋330の係合片333が蓋部30の開閉部材31の二股の係合部31aの間に配置される。
【0080】
この状態で、ステッピングモータ33により開閉部材31が矢印C方向にスライドされることにより、図15に示すように、スライド蓋330の係合片333が二股の係合部31aとともに矢印C方向にスライドされてスライド蓋330が開状態となる。これにより、試薬分注アーム9のピペット9eを試薬容器310の内部に挿入することが可能となる。また、ピペット9eは、モータ9aおよび駆動伝達部9bによる回動により蓋部30の孔30bの上方に移動されており、スライド蓋330の開状態でピペット9eが下降することによりピペット9eが孔60bを介して試薬容器310の内部に挿入されて、試薬が吸引される。
【0081】
そして、試薬を吸引したピペット9eは、モータ9aおよび駆動伝達部9bにより上昇するとともに回動されて、1次反応部11(図1参照)の上方に移動される。そして、1次反応部11のキュベット150に試薬容器310から吸引した試薬が分注される。
【0082】
また、試薬の吸引が終了した後、開閉部材31がステッピングモータ33により矢印D方向に移動されることによって、スライド蓋330の係合片333が二股の係合部31aとともに矢印D方向にスライドされる。これにより、スライド蓋330が閉められて、試薬が密閉状態となる。これにより、ラック600が回転されて試薬収容具300が移動される際などにも、試薬の密閉状態が保持される。
【0083】
本実施形態では、上記のように、底部312が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬容器310を円環状に保持するラック600を回転軸22を中心に往復回転させることによって、ラック600を往復回転させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。また、ラック600を往復回転させた時に、試薬容器310に収容される試薬が滑らかな凹面状に形成された底部312により流動し易くなるので、試薬容器310に収容された試薬の攪拌を効果的に行なうことができる。これにより、試薬に磁性粒子などの重い粒子が含まれている場合にも、攪拌子を挿入することなく試薬を攪拌することができる。
【0084】
すなわち、本実施形態では、底部312が滑らかな凹面状に形成されているので、試薬の流動を阻害する突起や滞留を引き起こす角部がない。従って、回転により力が試薬に作用することによって滑らかな凹面の傾斜にそって試薬が移動し、回転方向が逆転することによって反対方向の力が試薬に作用する際の試薬の流動がスムーズに行われ、効果的な撹拌が可能となる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、底部312を、水平断面が円形状で、かつ、内面が実質的に球面状であるように形成することによって、試薬容器310内において試薬がより移動し易くなるので、試薬の攪拌をより効果的に行なうことができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、試薬容器310に、中部313の上端から上方に向かって水平断面の断面積が狭くなるように形成されたテーパー形状部314を設けることによって、ラック600の回転に伴って試薬容器310内の試薬が流動する際、液面近傍の試薬の移動がテーパー形状部314によって上から抑えられる。これにより、液面近傍の試薬が波打つことが抑制されるので、試薬の泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、試薬を、液面がテーパー形状部314よりも低くなるように試薬容器310に収容することによって、試薬が浅くなることにより試薬が流動され易くなるので、攪拌を効果的に行なうことができるとともに、テーパー形状部314により泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、試薬の攪拌のためのラック600の往復回転と、試薬容器310を吸引位置(蓋部30の孔30bの下方)に移動させるためのラック600の回転との両方をステッピングモータ23の駆動力により行なうことによって、それぞれの回転動作を行なうための回転機構を別々に設ける必要がなくなる。これにより、装置を簡素化することができる。また、試薬の吸引動作が開始される直前まで試薬の攪拌のための往復回転を行なうので、試薬が攪拌された状態(吸引に適した状態)で試薬を吸引することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、免疫分析装置1の待機時において、ラック600を試薬の攪拌のために往復回転させることによって、免疫分析装置1の待機時間が長時間に及ぶ場合にも、試薬が攪拌された状態を保つことができるので、待機直後の分析動作を試薬の攪拌に時間を費やすことなく行なうことができる。これにより、待機直後の分析時間を短縮することができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、試薬容器310の底部312に内側に突出する段差部312bを設けることによって、より効果的に試薬の攪拌を行なうことができる。
【0091】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0092】
たとえば、上記実施形態では、本発明を分析装置の一例である免疫分析装置1に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、生化学分析装置および血液凝固測定装置などの他の分析装置に適用してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、試薬の攪拌のためにラック600を往復回転させる際、矢印A方向の回転角度と矢印B方向の回転角度とを等しく設定した例を示したが、本発明はこれに限らず、矢印A方向の回転角度と矢印B方向の回転角度とが異なるように設定してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、試薬を攪拌のためにラック600を往復回転させる際、矢印A方向の回転速度と矢印B方向の回転速度とを等しく設定した例を示したが、本発明はこれに限らず、矢印A方向の回転速度と矢印B方向の回転速度とが異なるように設定してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、試薬収容具300は、ケース320に試薬容器310が収納され、試薬容器310にR2試薬が収容されているが、試薬容器310はケース320に収納される必要はなく、試薬容器310そのものを試薬収容具としてもよい。
【0096】
なお、上記実施形態では、底部312に突起や窪みが全くない試薬収容具を示したが、試薬を製造する際に生じる成形上の突起や窪みは、小さいものであればあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態による免疫分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した免疫分析装置の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による免疫分析装置の測定機構部の制御部を含むブロック図である。
【図4】図3に示した測定機構部の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による免疫分析装置の制御装置を示すブロック図である。
【図6】図1に示した試薬設置部の全体構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示した試薬設置部の試薬保持部を示す斜視図である。
【図8】図6に示した試薬設置部の試薬保持部の平面図である。
【図9】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具を保持するためのラックを示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の外観図である。
【図11】一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の上面を示す斜視図である。
【図12】図10に示した試薬収容具の試薬容器の100−100線に沿った断面図である。
【図13】図10に示した試薬収容具の100−100線に沿った断面図である。
【図14】本発明の一実施形態による免疫分析装置の吸引動作を説明するための断面図である。
【図15】本発明の一実施形態による免疫分析装置の吸引動作を説明するための断面図である。
【図16】本発明の一実施形態による免疫分析装置の吸引動作を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 免疫分析装置(分析装置)
4 制御装置(分析部)
9 試薬分注アーム(試薬吸引部)
300 試薬収容具
310 試薬容器
314 テーパー形状部
314a 下端
600 ラック(収容具保持部)
【技術分野】
【0001】
この発明は、分析装置に関し、特に、試薬を攪拌するための機構を備えた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬を攪拌するための機構を備えた分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の分析装置は、試薬容器を載置したターンテーブルを回転させることによって、試薬容器をターンテーブルの回転中心の周りに公転させるとともに、試薬容器そのものをターンテーブルの上で自転させることによって試薬に含まれる微小粒子を均一に分散させる攪拌機構を備えている。また、特許文献1には、ターンテーブルを3回転させるうちの2回転目でターンテーブルを一旦停止させ、ターンテーブルを逆向きに回転させることも記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−196006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の攪拌機構では、試薬容器の自転のための構造が必要となるため、装置の構造が複雑化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の構造を簡素化するとともに、試薬収容具に収容された試薬の攪拌を効果的に行なうことが可能な分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の第1の局面による分析装置は、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備える。
【0008】
この第1の局面による分析装置では、上記のように、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために収容具保持部を円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。すなわち、試薬収容具の移動方向が切り替わるときに試薬に作用する力の方向が変化し、試薬の流動が生じるところ、試薬収容具の内部底面が滑らかな凹面状に形成されているので、試薬の流動が容易になり、撹拌が効果的に行われる。これにより、試薬に磁性粒子などの重い粒子が含まれている場合にも、攪拌子を挿入することなく試薬を攪拌することができる。
【0009】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている。このように構成すれば、試薬収容具内において試薬がより移動し易くなるので、試薬の攪拌をより効果的に行なうことができる。
【0010】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具は、上部に、上方に向かって内部の水平断面の断面積が狭くなるように形成されたテーパー形状部を含む。このように構成すれば、駆動部による試薬収容具の移動に伴って試薬が流動する際、液面近傍の試薬の移動がテーパー形状部によって上から抑えられる。これにより、液面近傍の試薬が波打つことが抑制されるので、試薬の泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、試薬は、液面がテーパー形状部の下端よりも低くなるように試薬収容具に収容される。このように構成すれば、試薬の液面が浅くなることにより試薬が流動され易くなるので、攪拌を効果的に行なうことができるとともに、テーパー形状部により泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、収容具保持部は、試薬収容具の往復動中に収容具保持部が収容具保持部に対して移動しないように構成されている。このように構成すれば、試薬収容具自体を収容具保持部に対して移動させるための機構を設ける必要がないので、装置の構成を簡素化することができる。また、試薬収容具自体を収容具保持部に対して移動させるための機構を設ける必要がないので、試薬収容具自体を移動させる際に、試薬収容具の横断面の形状が円形以外の形状であっても、隣り合う試薬収容具同士の干渉を防止するためのスペース(隙間)を収容具保持部に余分に設ける必要がなくなる。このため、上記スペース(隙間)の分だけ収容具保持部を小さくすることができる。
【0013】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬吸引部による試薬の吸引が必要な時は、駆動部による試薬収容具の往復動を中断し、吸引対象の試薬を収容した試薬収容具が所定の吸引位置に配置されるまで駆動部によって試薬収容具を移動させ、吸引位置に配置された試薬収容具から試薬吸引部によって試薬が吸引された後、駆動部による試薬収容具の往復動を再開する。このように構成すれば、駆動部が試薬の攪拌のための往復動と、試薬収容具を吸引位置に配置させるための移動との両方を行なうので、それぞれの動作を行なうための移動機構を別々に設ける必要がなくなる。これにより、装置を簡素化することができる。また、試薬の吸引動作が開始される直前まで試薬の攪拌のための往復動を行なうので、試薬が攪拌された状態(吸引に適した状態)で試薬を吸引することができる。
【0014】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、駆動部は、分析装置の待機時において、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる。このように構成すれば、分析装置の待機時にも試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、分析装置の待機時間が長時間に及ぶ場合にも、試薬が攪拌された状態を保つことができるので、待機直後の分析動作を試薬の攪拌に時間を費やすことなく行なうことができる。これにより、待機直後の分析時間を短縮することができる。
【0015】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、駆動部は、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる。このように構成すれば、試薬収容具の往復動の範囲を5度以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動は、回転運動よりも振幅運動に近くなるので、撹拌が効果的に行われる。さらに、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動方向の切り替えを頻繁に行うことができるので、撹拌が効果的に行われる。
【0016】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、駆動部は、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で、円環の中央を中心とする円の円弧上を往復動させる。このように構成すれば、試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる角速度を45度/秒以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる角速度を270度/秒以下にすることによって試薬に気泡が発生してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具に収容される試薬は、磁性粒子を含む。このように試薬が重量が大きく沈殿し易い磁性粒子を含む場合にも、上記一の局面による分析装置を用いることにより、効果的に試薬を攪拌することができる。
【0018】
この発明の第2の局面による分析装置は、複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備え、試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている。
【0019】
この第2の局面による分析装置では、上記のように、内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために収容具保持部を円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。すなわち、試薬収容具の移動方向が切り替わるときに試薬に作用する力の方向が変化し、試薬の流動が生じるところ、試薬収容具の内部底面が滑らかな凹面状に形成されているので、試薬の流動が容易になり、撹拌が効果的に行われる。これにより、試薬に磁性粒子などの重い粒子が含まれている場合にも、攪拌子を挿入することなく試薬を攪拌することができる。また、試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されているので、試薬収容具内において試薬がより移動し易くなるので、試薬の攪拌をより効果的に行なうことができる。
【0020】
この発明の第3の局面による分析装置は、複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる駆動部とを備える。
【0021】
この第3の局面による分析装置では、上記のように、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる駆動部を設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。また、試薬収容具の往復動の範囲を5度以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動は、回転運動よりも振幅運動に近くなるので、撹拌が効果的に行われる。さらに、試薬収容具の往復動の範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具の移動方向の切り替えを頻繁に行うことができるので、撹拌が効果的に行われる。
【0022】
この発明の第4の局面による分析装置は、複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で、円環の中央を中心とする円の円弧上を往復動させる駆動部とを備える。
【0023】
この第4の局面による分析装置では、上記のように、複数の試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、収容具保持部に円環状に保持された試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる駆動部を設けることによって、駆動部により収容具保持部を往復動させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。また、試薬収容具を円環の中央を中心に往復動させる角速度を45度/秒以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる角速度を270度/秒以下にすることによって試薬に気泡が発生してしまうことを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の全体構成について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態による免疫分析装置1は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための装置である。この免疫分析装置1では、測定対象である血液などの検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体(R1試薬)に磁性粒子(R2試薬)を結合させた後に、結合(Bound)した抗原、捕捉抗体および磁性粒子をBF(Bound Free)分離部14(図1および図2参照)の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の捕捉抗体を含むR1試薬を除去する。そして、磁性粒子が結合した抗原と標識抗体(R3試薬)とを結合させた後に、結合(Bound)した磁性粒子、抗原および標識抗体をBF分離部14の磁石に引き寄せることにより、未反応(Free)の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原または抗体を定量的に測定している。
【0027】
この免疫分析装置1は、図1および図2に示すように、測定機構部2と、測定機構部2の前面側に配置された検体搬送部(サンプラ)3と、測定機構部2に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置4とを備えている。また、測定機構部2は、検体分注アーム5と、試薬設置部6および7と、試薬分注アーム8、9および10と、1次反応部11および2次反応部12と、キュベット供給部13と、BF分離部14と、検出部15とから構成されている。また、図3に示すように、測定機構部2における各機構(各種分注アームおよび試薬設置部7など)は、測定機構部2に設けられた制御部2aにより制御されている。具体的には、制御部2aは、試薬設置部7に設けられた各種センサ(原点検知センサ30dなど)の信号を受信するとともに、試薬設置部7に設けられた各種駆動源(ステッピングモータ23、33および駆動部43など)の駆動を制御している。また、搬送機構部3も制御部2aによって制御される。なお、各種分注アーム、各種センサおよび各種駆動源については後に詳細に説明する。
【0028】
制御部2aは、図4に示すように、CPU2bと、ROM2cと、RAM2dと、通信インターフェース2eとから主として構成されている。
【0029】
CPU2bは、ROM2cに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM2dに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM2cは、CPU2bに実行させるためのコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータなどを記憶している。RAM2dは、ROM2cに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU2bの作業領域として利用される。
【0030】
通信インターフェース2eは、制御装置4に接続されており、検体の光学的な情報(標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量のデータ)を制御装置4に送信するとともに、制御装置4の制御部4aからの信号を受信するための機能を果たす。また、通信インターフェース2eは、搬送機構部3および測定機構部2の各部を駆動するためのCPU2bからの指令を送信するための機能を有する。
【0031】
検体搬送部3は、図1および図2に示すように、検体を収容した複数の試験管100が載置されたラック101を、検体分注アーム5が検体を吸引する吸引位置1aに対応する位置まで搬送するように構成されている。この検体搬送部3は、未処理の検体を収容した試験管100が載置されたラック101をセットするためのラックセット部3aと、分注処理済みの検体を収容した試験管100が載置されたラック101を貯留するためのラック貯留部3bとを有している。そして、未処理の検体を収容した試験管100を検体分注アーム5の吸引位置1aに対応する位置まで搬送することにより、検体分注アーム5により試験管100内の血液などの検体の吸引が行われ、その後、その試験管100を載置したラック101がラック貯留部3bに貯留されるように構成されている。
【0032】
制御装置4(図1参照)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。また、表示部4bは、検出部15から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0033】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御装置4は、図5に示すように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとから主として構成されたコンピュータ401によって構成されている。制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0034】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
【0035】
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0036】
RAM401cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401bおよびハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0037】
ハードディスク401dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施形態に係る免疫分析用のアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0038】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、免疫分析用のアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401がその可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0039】
なお、上記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0040】
また、ハードディスク401dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム404aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0041】
入出力インタフェース401fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0042】
通信インタフェース401gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して測定機構部2との間でデータの送受信が可能である。
【0043】
画像出力インタフェース401hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0044】
また、制御部4aのハードディスク401dにインストールされた免疫分析用のアプリケーションプログラム404aは、測定機構部2の検出部15から送信された測定用試料の発光量(デジタル信号のデータ)を用いて、測定用試料の抗原の量を測定している。
【0045】
検体分注アーム5(図1および図2参照)は、検体搬送部3により吸引位置1aに搬送された試験管100内の検体を、後述する1次反応部11の回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150内に分注する機能を有している。この検体分注アーム5は、図1および図2に示すように、モータ5aと、モータ5aに接続される駆動伝達部5bと、駆動伝達部5bに軸5cを介して取り付けられるアーム部5dとを含んでいる。駆動伝達部5bは、モータ5aからの駆動力によりアーム部5dを、軸5cを中心に回動させるとともに、上下方向(Z方向)に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部5dの先端部には、検体の吸引および吐出を行うピペット5eが設けられている。
【0046】
試薬設置部6(図1および図2参照)は、捕捉抗体を含むR1試薬が収容される試薬容器および標識抗体を含むR3試薬が収容される試薬容器を保持する試薬収容具(図示せず)を設置するために設けられている。R1試薬は、孔6aを介して後述する試薬分注アーム8により吸引される。また、R3試薬は、孔6bを介して後述する試薬分注アーム10により吸引される。また、試薬設置部6には、試薬設置部6に設置される試薬収容具(図示せず)を交換するための孔6cが設けられている。
【0047】
試薬設置部7(図1および図2参照)は、磁性粒子を含むR2試薬が収容される試薬容器310を保持する試薬収容具300(図6参照)を設置するために設けられている。試薬設置部7の構造については後に詳細に説明する。
【0048】
試薬分注アーム8(図1および図2参照)は、試薬設置部6に設置される試薬収容具200内のR1試薬を吸引するとともに、その吸引したR1試薬を1次反応部11の検体が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム8は、モータ8aと、モータ8aに接続される駆動伝達部8bと、駆動伝達部8bに軸8cを介して取り付けられたアーム部8dとを含んでいる。駆動伝達部8bは、モータ8aからの駆動力により軸8cを中心にアーム部8dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部8dの先端部には、試薬収容具200内のR1試薬の吸引および吐出を行うためのピペット8e(図1参照)が取り付けられている。すなわち、ピペット8eは、試薬設置部6に設置された試薬収容具200内のR1試薬を吸引した後、吸引したR1試薬を1次反応部11の検体が分注されたキュベット150内に分注するように構成されている。
【0049】
試薬分注アーム9(図1および図2参照)は、試薬設置部7に設置される試薬収容具300内のR2試薬を1次反応部11の検体およびR1試薬が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム9は、モータ9aと、モータ9aに接続される駆動伝達部9bと、駆動伝達部9bに軸9cを介して取り付けられたアーム部9dとを含んでいる。駆動伝達部9bは、モータ9aからの駆動力により、軸9cを中心にアーム部9dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部9dの先端部には、試薬収容具300内のR2試薬の吸引および吐出を行うためのピペット9e(図1参照)が取り付けられている。したがって、ピペット9eは、試薬設置部7の試薬収容具300内のR2試薬を吸引した後、吸引したR2試薬を1次反応部11の検体およびR1試薬が分注されたキュベット150内に分注するように構成されている。
【0050】
試薬分注アーム10(図1および図2参照)は、試薬設置部6に設置される試薬収容具200内のR3試薬を吸引するとともに、その吸引されたR3試薬を2次反応部12の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム10は、モータ10aと、モータ10aに接続される駆動伝達部10bと、駆動伝達部10bに軸10cを介して取り付けられたアーム部10dとを含んでいる。駆動伝達部10bは、モータ10aからの駆動力により、軸10cを中心にアーム部10dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部10dの先端部には、試薬収容具200内のR3試薬の吸引および吐出を行うためのピペット10e(図1参照)が取り付けられている。すなわち、ピペット10eは、試薬設置部6の試薬収容具200内のR3試薬を吸引した後、吸引したR3試薬を2次反応部12の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット150内に分注される。
【0051】
1次反応部11は、図1および図2に示すように、回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150を所定の期間(本実施形態では、18秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット150内の検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌するために設けられている。つまり、1次反応部11は、キュベット150内で磁性粒子を有するR2試薬と検体中の抗原とを反応させるために設けられている。この1次反応部11は、検体とR1試薬およびR2試薬とが収容されるキュベット150を回転方向に搬送するための回転テーブル部11aと、キュベット150内の検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体、R1試薬およびR2試薬が収容されたキュベット150を後述するBF分離部14(図1および図2参照)に搬送する容器搬送部11cとから構成されている。
【0052】
また、回転テーブル部11aは、保持部11bに保持されたキュベット150を18秒毎に所定の角度だけ回転移送するように構成されている。そのため、免疫分析装置1の各種装置(検体分注アーム5や試薬分注アーム8および9など)は、回転テーブル部11aにより所定の位置に移送されたタイミングで、移送された所定の位置のキュベット150に対して動作するように制御されている。
【0053】
また、容器搬送部11cは、回転テーブル部11aの中心部分に回転可能に設置されている。この容器搬送部11cは、回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150を把持するとともにキュベット150内の試料を攪拌する機能を有している。さらに、容器搬送部11cは、検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌してインキュベーションした試料を収容したキュベット150をBF分離部14(図1および図2参照)に搬送する機能も有している。
【0054】
2次反応部12(図1および図2参照)は、1次反応部11と同様の構成を有しており、回転テーブル部12aの保持部12bに保持されるキュベット150を所定の期間(本実施形態では、18秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット150内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬を攪拌するために設けられている。つまり、2次反応部12は、キュベット150内で標識抗体を有するR3試薬と検体中の抗原とを反応させるとともに、発光基質を有するR5試薬とR3試薬の標識抗体とを反応させるために設けられている。なお、R5試薬は、2次反応部12の近傍に設けられたR5試薬分注アーム(図示せず)により、2次反応部12の検体、R1試薬、R2試薬およびR3試薬が収容されたキュベット150内に分注されるように構成されている。この2次反応部12は、検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬が収容されるキュベット150を回転方向に搬送するための回転テーブル部12aと、キュベット150内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体などが収容されたキュベット150をBF分離部14に搬送する容器搬送部12cとから構成されている。さらに、容器搬送部12cは、BF分離部14により処理されたキュベット150を再び回転テーブル部12aの保持部12bに搬送する機能を有している。なお、2次反応部12の詳細構造は、1次反応部11と同様であるので、その説明を省略する。
【0055】
キュベット供給部13(図1および図2参照)は、複数のキュベット150を1次反応部11の回転テーブル部11aの保持部11bに順次供給することが可能なように構成されている。
【0056】
BF分離部14は、1次反応部11の容器搬送部11cによって搬送されたキュベット150内の試料から未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する機能と、2次反応部12の容器搬送部12cによって搬送されたキュベット150(図1参照)内の試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する機能とを有する。
【0057】
検出部15(図1および図2参照)は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定するために設けられている。
【0058】
次に、図6〜図13を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の試薬設置部7および試薬設置部7に設置される試薬収容具300の構造を説明する。
【0059】
この試薬設置部7は、図6に示すように、試薬収容具300を円環状に並べて保持する円筒形状の試薬保持部20と、試薬保持部20に開閉可能に取り付けられる蓋部30と、円筒形状の試薬保持部20の側面(外壁部21)に取り付けられる昇降部40とを含んでいる。また、試薬設置部7の底部にはペルチエ素子(図示せず)が取り付けられており、試薬設置部7の内部は約15℃に保たれている。
【0060】
試薬保持部20は、図7および図8に示すように、円筒状の外壁部21と、中心に設けられる回転可能な回転軸22と、回転軸22を回転させるためのステッピングモータ23と、ステッピングモータ23の駆動力を回転軸22に伝達するためのベルト24(図8参照)とを含んでいる。外壁部21の内面には全面に渡って断熱材(図示せず)が取り付けられており、試薬保持部20内部の温度を低温(約15℃)に保っている。また、ステッピングモータ23の駆動力は、図8に示すように、ステッピングモータ23により回転するプーリ23aと、回転軸22と同軸上に固定されるプーリ22aとにより、ベルト24を介して回転軸22に伝達されるように構成されている。このステッピングモータ23により、回転軸22は矢印A方向および矢印B方向に回転される。
【0061】
また、回転軸22には、複数の試薬収容具300を円環状に保持するためのラック600が固定的に取り付けられている。ラック600に試薬収容具300を保持させた状態で回転軸22を回転させることにより、試薬収容具300が保持されたラック600が回転されるので、吸引対象または交換対象の試薬を保持する試薬収容具300を後述する蓋部30の孔30bおよび入出孔30cの下方に移動させることが可能である。このラック600は、図9に示すように、ラック600の中心に設けられ、回転軸22が挿入される挿入部601と、挿入部601を中心に円環状に形成され、試薬収容具300を保持するための複数の保持部602と、挿入部601の上方に突出するように設けられた原点検知片603とを含む。保持部602は、仕切板602aと支持部602bとにより構成されている。仕切板602aは、挿入部601から半径方向に放射状に延びるように所定の角度間隔で複数設けられている。支持部602bは、仕切板602aの互いに対向する部分の下部および挿入部601の下部に、内側に突出するように設けられている。各試薬収容具300は、一対の仕切板602aにより挟まれる空間に支持部602bにより底部326(図10参照)の周縁部が支持されるように配置される。また、図8に示すように、保持部602の上部、下部および半径方向の外側部を開放端とすることにより、試薬収容具300を昇降させるための昇降部40の載置台41およびアーム42がラック600の保持部602に接触することなく昇降可能に構成されている。
【0062】
また、本実施形態では、ステッピングモータ23の駆動により回転軸22が矢印A方向および矢印B方向に往復回転可能に構成されている。すなわち、試薬設置部7に設置されるR2試薬(磁性粒子)を攪拌するために、R2試薬を収容する試薬容器310(試薬収容具300)を保持するラック600を矢印A方向および矢印B方向に往復回転させることによりR2試薬を攪拌して、一般的な粒子と比較して重量の大きい粒子であるR2試薬(磁性粒子)が沈殿するのを抑制している。具体的には、図8に示すように、ラック600は、一定の角速度(例えば、1回転/4秒)で一定の角度α(例えば、約27度)の角度範囲で往復動される。すなわち、例えば、約27度の角度範囲で0.3秒毎に回転方向が逆転するように構成されている。なお、攪拌時の矢印A方向への回転角度および矢印B方向への回転角度は、実質的に等しく設定されている。また、矢印A方向への回転速度および矢印B方向への回転速度も、実質的に等しく設定されている。なお、上記の角速度は、45度/秒以上270度/秒以下が好ましい。角速度を45度/秒以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、角速度を270度/秒以下にすることによって試薬に気泡が発生してしまうことを防ぐことができる。特に、本実施形態のR2試薬は、界面活性剤を含むので気泡が発生しやすいが、角速度が270度/秒以下であれば気泡の発生を防ぐことができる。
【0063】
さらに、上記の角度範囲は、5度以上90度以下が好ましい。角度範囲を5度以上にすることによって試薬を流動させるための力を十分に試薬に作用させることができるので、撹拌が効果的に行われる。また、角度範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具300の移動は、回転運動よりも振幅運動に近くなるので、撹拌が効果的に行われる。また、角度範囲を90度以下にすることによって、試薬収容具300の移動方向の切り替えを頻繁に行うことができるので、撹拌が効果的に行われる。
【0064】
また、ラック600は、試薬の吸引動作時および試薬収容具300の交換時(追加、取出時)以外は、常に往復回転されることにより、試薬が攪拌されるように構成されている。また、免疫分析装置1の待機時(分析の指示待ちの状態であり、検体の測定動作が行われていない状態)においても、ラック600が往復回転されるように構成されている。なお、これらの動作は、制御部2aによって制御される。
【0065】
また、蓋部30は、図6に示すように、試薬保持部20にヒンジ部30aを介して開閉可能に取り付けられている。この蓋部30は、試薬設置部7内の温度が低温(15℃)に保たれるように外気を遮断するとともに、試薬設置部7内の試薬を外部から吸引可能で、かつ、試薬収容具300を試薬設置部7内に出し入れ可能なように構成されている。具体的には、蓋部30は、図1、図2および図6に示すように、試薬収容具300の試薬容器310(図10参照)から試薬を吸引する際に試薬分注アーム9のピペット9eが挿入される孔30bと、試薬収容具300を試薬設置部7から昇降部40によって出し入れするための入出孔30cとを含んでいる。また、蓋部30は、孔30bの下方に配置された試薬収容具300のスライド蓋330(図10参照)を開閉可能な開閉部材31と、開閉部材31を矢印C方向および矢印D方向にスライド可能に支持する直動ガイド32と、開閉部材31を往復駆動するステッピングモータ33とを含んでいる。また、蓋部30には、ラック600の原点位置を検知するための透過型の原点検知センサ30dが設けられている。透過型の原点検知センサ30dは、ラック600に設けられた原点検知片603を検知することにより、回転するラック600の原点位置を検知する機能を有する。
【0066】
また、図6に示すように、開閉部材31は、二股の係合片31aを有する。また、試薬収容具300がスライド蓋330(図10参照)が閉まった状態で孔30bの下方に配置された場合には、試薬収容具300のスライド蓋330の係合片333(図10参照)が開閉部材31の二股の係合片31aの間に位置するように構成されている。スライド蓋330の係合片333が二股の係合部31aの間に位置する時に、開閉部材31が矢印C方向および矢印D方向にスライドすることにより、試薬収容具300のスライド蓋330を開閉することが可能である。
【0067】
昇降部40は、試薬設置部7内に試薬収容具300を出し入れするために設けられている。昇降部40は、図7および図8に示すように、試薬収容具300が載置される載置台41と、載置台41を支持するアーム42と、アーム42を上下方向にスライドさせる駆動部43とを含んでいる。載置台41には、試薬収容具300のケース320の底部326に設けられたリブ326aと係合可能な溝41aが設けられておいる。また、アーム42は、外壁部21に設けられた上下方向に延びる孔(図示せず)を介して、試薬保持部20の外部に設けられた駆動部43の駆動力により載置台41を上下方向に移動させる機能を有する。昇降部40は、載置台41に試薬収容具300を載置した状態で載置台41を下降させることにより、試薬収容具300をラック600に保持させることが可能である。また、ラック600に保持された試薬収容具300の下方から上方に載置台41を移動させることにより、ラック600に保持された試薬収容具300を持ち上げて、蓋部30の入出孔30cから試薬収容具300を取り出すことが可能なように構成されている。
【0068】
次に、図10〜図13を参照して、本実施形態による免疫分析装置1に用いられる試薬収容具300の構造を説明する。
【0069】
試薬収容具300は、図10、図11および図13に示すように、R2試薬が収容される試薬容器310と、試薬容器310を収納するケース320とからなる。図12に示すように、試薬容器310は、開口311aを有する頭部311と、滑らかな凹面状に形成された底部312と、円筒状に形成された中部313と、中部313の上端から上方に向かって水平断面の断面積が徐々に狭くなるように形成されたテーパ−形状部314とを含んでいる。底部312の水平断面は円形状に形成されており、先端312aを含む内部形状が実質的に球面状に形成されている。また、底部312の内面には、内側に突出する段差部312bが設けられている。また、R2試薬は、液面がテーパ−形状部314の下端314aよりも低くなるように試薬容器310に収容される。
【0070】
また、ケース320の上面321には、試薬容器310の開口311aに挿入されている筒部322と、蓋部30に設けられた反射型のセンサ(図示せず)が照射する光を反射するための反射部323と、後述するスライド蓋330がスライドするためのスライドレール324と、スライド蓋330の位置をそれぞれ規制するための凹部325とを有する。また、ケース320の上面321には、筒部322を密閉可能なスライド蓋330が取り付けられている。また、ケース320の底面326には、昇降部40の載置台41の溝41aと係合するリブ326aが設けられている。
【0071】
筒部322は、図11および図13に示すように、上側の開口端面322aが水平面から所定の角度傾斜した傾斜面となるように形成されている。また、凹部325は、後述するスライド蓋330の突出部332と当接することによりスライド蓋330の移動を規制するとともに、スライド蓋330がケース320から脱落することを抑制する機能を有する。また、凹部325には、スライド蓋330が筒部322の上側の開口端面322aを閉じる位置にある時に、スライド蓋330の突出部332と係合する凸状のリブ325aが設けられている。これにより、スライド蓋330が筒部322を密閉した状態でスライド蓋330を固定することが可能である。
【0072】
また、スライド蓋330は、ケース320に対してスライドすることにより筒部322を開閉するように構成されている。このスライド蓋330は、スライドレール324に係合する係合部331(図10参照)と、上面321の凹部325に嵌め込まれる突出部332(図13参照)と、蓋部30の開閉部材31(係合片31a)と係合する係合片333と、所定の角度傾斜する傾斜面となるように形成された当接部334(図13参照)とを含んでいる。図13に示すように、当接部334には、スライド蓋330が筒部322を密閉する時に筒部322の上側の開口端面322aと密着する板状のシリコンシート334aが取り付けられている。
【0073】
また、筒部322の上側の開口端面322aの傾斜角度と、スライド蓋330の当接部334の傾斜角度とは実質的に等しく形成されている。スライド蓋330が筒部322の開口端面322aの低い側から高い側へ向かう方向にスライドすることによって、開口端面322aとシリコンシート334aとが密着して、試薬容器310に収容された試薬が密閉状態となるように構成されている。
【0074】
次に、本実施形態による免疫分析装置1の試薬設置部7におけるR2試薬の攪拌動作について説明する。
【0075】
R2試薬を含む試薬収容具300を保持するラック600は、免疫分析装置1の分析動作時において、R2試薬を攪拌するためにステッピングモータ23の駆動により矢印A方向および矢印B方向に往復回転されている。そして、試薬の吸引時には、まず、ラック600の往復回転動作が中断される。そして、ステッピングモータ23の駆動によりラック600が回転されて、吸引対象の試薬を含む試薬収容具300が蓋部30の孔30bの下方に移動される。そして、試薬分注アーム9のピペット9eによる試薬の吸引が終了した後、ステッピングモータ23の駆動によりラック600の往復回転が再開される。
【0076】
また、昇降部40による試薬収容具300の交換、追加および取出時においても、ラック600の往復回転が中断される。そして、載置台41がラック600の保持部602を通過して昇降することにより行なわれる交換動作(追加および取出動作)が終了した後に、ラック600の往復回転が再開される。
【0077】
このように、本実施形態では、試薬の吸引時における試薬収容具300の吸引位置(孔30bの下方)への移動と、試薬の攪拌とが1つのステッピングモータ23により行なわれる。
【0078】
次に、図1、図8、図14〜図16を参照して、本実施形態による試薬収容具300から試薬分注アーム9のピペット9eにより試薬を吸引する吸引動作を説明する。
【0079】
まず、試薬保持部20の回転軸22(図8参照)が試薬収容具300を保持するラック600を回転させることにより、吸引対象の試薬を収容した試薬容器310を含む試薬収容具300が蓋部30の孔30bの下方に移動される。試薬収容具300が蓋部30の孔60bの下方に移動する際、図14に示すように、スライド蓋330の係合片333が蓋部30の開閉部材31の二股の係合部31aの間に配置される。
【0080】
この状態で、ステッピングモータ33により開閉部材31が矢印C方向にスライドされることにより、図15に示すように、スライド蓋330の係合片333が二股の係合部31aとともに矢印C方向にスライドされてスライド蓋330が開状態となる。これにより、試薬分注アーム9のピペット9eを試薬容器310の内部に挿入することが可能となる。また、ピペット9eは、モータ9aおよび駆動伝達部9bによる回動により蓋部30の孔30bの上方に移動されており、スライド蓋330の開状態でピペット9eが下降することによりピペット9eが孔60bを介して試薬容器310の内部に挿入されて、試薬が吸引される。
【0081】
そして、試薬を吸引したピペット9eは、モータ9aおよび駆動伝達部9bにより上昇するとともに回動されて、1次反応部11(図1参照)の上方に移動される。そして、1次反応部11のキュベット150に試薬容器310から吸引した試薬が分注される。
【0082】
また、試薬の吸引が終了した後、開閉部材31がステッピングモータ33により矢印D方向に移動されることによって、スライド蓋330の係合片333が二股の係合部31aとともに矢印D方向にスライドされる。これにより、スライド蓋330が閉められて、試薬が密閉状態となる。これにより、ラック600が回転されて試薬収容具300が移動される際などにも、試薬の密閉状態が保持される。
【0083】
本実施形態では、上記のように、底部312が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬容器310を円環状に保持するラック600を回転軸22を中心に往復回転させることによって、ラック600を往復回転させるだけで試薬の攪拌を行なうことができる。これにより、装置の構造を簡素化することができる。また、ラック600を往復回転させた時に、試薬容器310に収容される試薬が滑らかな凹面状に形成された底部312により流動し易くなるので、試薬容器310に収容された試薬の攪拌を効果的に行なうことができる。これにより、試薬に磁性粒子などの重い粒子が含まれている場合にも、攪拌子を挿入することなく試薬を攪拌することができる。
【0084】
すなわち、本実施形態では、底部312が滑らかな凹面状に形成されているので、試薬の流動を阻害する突起や滞留を引き起こす角部がない。従って、回転により力が試薬に作用することによって滑らかな凹面の傾斜にそって試薬が移動し、回転方向が逆転することによって反対方向の力が試薬に作用する際の試薬の流動がスムーズに行われ、効果的な撹拌が可能となる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、底部312を、水平断面が円形状で、かつ、内面が実質的に球面状であるように形成することによって、試薬容器310内において試薬がより移動し易くなるので、試薬の攪拌をより効果的に行なうことができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、試薬容器310に、中部313の上端から上方に向かって水平断面の断面積が狭くなるように形成されたテーパー形状部314を設けることによって、ラック600の回転に伴って試薬容器310内の試薬が流動する際、液面近傍の試薬の移動がテーパー形状部314によって上から抑えられる。これにより、液面近傍の試薬が波打つことが抑制されるので、試薬の泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、試薬を、液面がテーパー形状部314よりも低くなるように試薬容器310に収容することによって、試薬が浅くなることにより試薬が流動され易くなるので、攪拌を効果的に行なうことができるとともに、テーパー形状部314により泡立ちが発生するのを抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、試薬の攪拌のためのラック600の往復回転と、試薬容器310を吸引位置(蓋部30の孔30bの下方)に移動させるためのラック600の回転との両方をステッピングモータ23の駆動力により行なうことによって、それぞれの回転動作を行なうための回転機構を別々に設ける必要がなくなる。これにより、装置を簡素化することができる。また、試薬の吸引動作が開始される直前まで試薬の攪拌のための往復回転を行なうので、試薬が攪拌された状態(吸引に適した状態)で試薬を吸引することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、免疫分析装置1の待機時において、ラック600を試薬の攪拌のために往復回転させることによって、免疫分析装置1の待機時間が長時間に及ぶ場合にも、試薬が攪拌された状態を保つことができるので、待機直後の分析動作を試薬の攪拌に時間を費やすことなく行なうことができる。これにより、待機直後の分析時間を短縮することができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、試薬容器310の底部312に内側に突出する段差部312bを設けることによって、より効果的に試薬の攪拌を行なうことができる。
【0091】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0092】
たとえば、上記実施形態では、本発明を分析装置の一例である免疫分析装置1に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、生化学分析装置および血液凝固測定装置などの他の分析装置に適用してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、試薬の攪拌のためにラック600を往復回転させる際、矢印A方向の回転角度と矢印B方向の回転角度とを等しく設定した例を示したが、本発明はこれに限らず、矢印A方向の回転角度と矢印B方向の回転角度とが異なるように設定してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、試薬を攪拌のためにラック600を往復回転させる際、矢印A方向の回転速度と矢印B方向の回転速度とを等しく設定した例を示したが、本発明はこれに限らず、矢印A方向の回転速度と矢印B方向の回転速度とが異なるように設定してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、試薬収容具300は、ケース320に試薬容器310が収納され、試薬容器310にR2試薬が収容されているが、試薬容器310はケース320に収納される必要はなく、試薬容器310そのものを試薬収容具としてもよい。
【0096】
なお、上記実施形態では、底部312に突起や窪みが全くない試薬収容具を示したが、試薬を製造する際に生じる成形上の突起や窪みは、小さいものであればあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態による免疫分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した免疫分析装置の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による免疫分析装置の測定機構部の制御部を含むブロック図である。
【図4】図3に示した測定機構部の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による免疫分析装置の制御装置を示すブロック図である。
【図6】図1に示した試薬設置部の全体構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示した試薬設置部の試薬保持部を示す斜視図である。
【図8】図6に示した試薬設置部の試薬保持部の平面図である。
【図9】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具を保持するためのラックを示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の外観図である。
【図11】一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の上面を示す斜視図である。
【図12】図10に示した試薬収容具の試薬容器の100−100線に沿った断面図である。
【図13】図10に示した試薬収容具の100−100線に沿った断面図である。
【図14】本発明の一実施形態による免疫分析装置の吸引動作を説明するための断面図である。
【図15】本発明の一実施形態による免疫分析装置の吸引動作を説明するための断面図である。
【図16】本発明の一実施形態による免疫分析装置の吸引動作を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 免疫分析装置(分析装置)
4 制御装置(分析部)
9 試薬分注アーム(試薬吸引部)
300 試薬収容具
310 試薬容器
314 テーパー形状部
314a 下端
600 ラック(収容具保持部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備える、分析装置。
【請求項2】
前記試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記試薬収容具は、上部に、上方に向かって内部の水平断面の断面積が狭くなるように形成されたテーパー形状部を含む、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記試薬は、液面が前記テーパー形状部の下端よりも低くなるように前記試薬収容具に収容される、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記収容具保持部は、前記試薬収容具の往復動中に前記試薬収容具が前記収容具保持部に対して移動しないように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記試薬吸引部による試薬の吸引が必要な時は、前記駆動部による前記試薬収容具の往復動を中断し、吸引対象の試薬を収容した試薬収容具が所定の吸引位置に配置されるまで前記駆動部によって前記試薬収容具を移動させ、前記吸引位置に配置された前記試薬収容具から前記試薬吸引部によって試薬が吸引された後、前記駆動部による前記試薬収容具の往復動を再開する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記分析装置の待機時において、複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で往復動させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項10】
前記試薬収容具に収容される試薬は、磁性粒子を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項11】
複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備え、
前記試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている、分析装置。
【請求項12】
複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる駆動部とを備える、分析装置。
【請求項13】
複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で、前記円環の中央を中心とする円の円弧上を往復動させる駆動部とを備える、分析装置。
【請求項1】
内部底面が滑らかな凹面状に形成された複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備える、分析装置。
【請求項2】
前記試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記試薬収容具は、上部に、上方に向かって内部の水平断面の断面積が狭くなるように形成されたテーパー形状部を含む、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記試薬は、液面が前記テーパー形状部の下端よりも低くなるように前記試薬収容具に収容される、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記収容具保持部は、前記試薬収容具の往復動中に前記試薬収容具が前記収容具保持部に対して移動しないように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記試薬吸引部による試薬の吸引が必要な時は、前記駆動部による前記試薬収容具の往復動を中断し、吸引対象の試薬を収容した試薬収容具が所定の吸引位置に配置されるまで前記駆動部によって前記試薬収容具を移動させ、前記吸引位置に配置された前記試薬収容具から前記試薬吸引部によって試薬が吸引された後、前記駆動部による前記試薬収容具の往復動を再開する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記分析装置の待機時において、複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で往復動させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項10】
前記試薬収容具に収容される試薬は、磁性粒子を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項11】
複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に往復動させる駆動部とを備え、
前記試薬収容具は、所定の位置から下の部分が、内部の水平断面が円形状で、かつ、内部底面が実質的に球面状に形成されている、分析装置。
【請求項12】
複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に5度以上90度以下の範囲で往復動させる駆動部とを備える、分析装置。
【請求項13】
複数の試薬収容具を円環状に保持するための収容具保持部と、
前記収容具保持部に保持された試薬収容具から試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、前記試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部と、
複数の前記試薬収容具に収容された試薬の攪拌のために、前記収容具保持部に円環状に保持された前記試薬収容具を前記円環の中央を中心に45度/秒以上270度/秒以下の角速度で、前記円環の中央を中心とする円の円弧上を往復動させる駆動部とを備える、分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−96223(P2008−96223A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276983(P2006−276983)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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