説明

分析装置

【課題】検体や試薬に対する分注処理の処理効率向上を図ることができる分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置においては、検体を吸引および吐出する検体プローブとして第1検体プローブ121iおよび第2検体プローブ122iを設け、第1検体プローブ121iおよび第2検体プローブ122iのうち分注処理を実施させるプローブを非分注位置から分注位置に切り替えて分注処理を行うことによって、一本のプローブを操作させて分注処理を行なっていた場合と比較し、検体や試薬に対する分注処理の処理効率向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体である反応容器に検体および試薬を分注し検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する生化学検査装置として、試薬が分注されたキュベットに検体を加え、キュベット内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置では、検体容器内の検体を反応テーブル上のキュベットに順次分注し、各試薬と検体とが反応した反応液の光学的特性をもとに検体の分析を行っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3152711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の分析装置は、液体を吸引吐出する1本のプローブを1本のアームに取り付け、このアームを回転昇降させることによって検体や試薬などの分注処理を行なっていた。したがって、従来においては、一本のプローブと一本のアームを操作させて分注処理を行なっていたため、分注速度向上などの処理効率向上に限界があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、検体や試薬に対する分注処理の処理効率向上を図ることができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、反応容器に液体である検体および試薬を分注し前記検体を分析する分析装置において、液体を吸引および吐出する複数のプローブと、前記複数のプローブを取り付け各プローブをまとめて移送するプローブ移送手段であって、各プローブの昇降位置を切り替える切替機構を有したプローブ移送手段と、各プローブの昇降位置を切り替える切替機構を有したプローブ移送手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる分析装置は、前記プローブ移送手段による移送処理および前記切替機構によるプローブの昇降位置の切替処理を制御する制御手段をさらに備え、前記プローブ移送手段は、アームと、前記アームの一端に接続し、前記アームの一端を通過する鉛直線が中心軸である支柱と、前記支柱を回転および昇降させる支柱回転昇降機構と、を備え、前記切替機構は、前記支柱内部に貫入された第1の回転軸と、前記第1の回転軸を回転させる回転機構と、前記複数のプローブが固定配置されている支え部材と、前記アームの他端に設けられ、前記支え部材に接続する第2の回転軸と、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸に掛け渡され前記第1の回転軸の回転を前記第2の回転軸に伝達する伝達部材と、を備え、前記制御手段は、前記回転機構を駆動させることによって前記支え部材を回動させて各プローブの昇降位置を切り替えさせることを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記プローブによる液体吸引位置および/または液体吐出位置に近接して設けられたプローブ洗浄槽をさらに備え、前記制御手段は、前記切替機構に対して、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブの昇降位置を前記プローブ洗浄槽に対応する昇降位置に切り替えさせ、液体吸引処理および/または液体吐出処理と同時に前記液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブに対する洗浄処理を行わせることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記制御手段は、液体吸引処理および液体吐出処理を実施していたプローブに異常が発生した場合に該異常が発生したプローブとは別のプローブが液体吸引処理および液体吐出処理を実施できるように前記切替機構に各プローブの昇降位置を切替させることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記複数のプローブの開口径はそれぞれ異なっており、前記制御手段は、分注対象の液体の分注量に対応した開口径のプローブが吸引処理および吐出処理を実施できるように前記切替機構に各プローブの昇降位置を切替させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる分析装置は、複数のプローブを取り付け、各プローブをまとめて移送するとともに、各プローブの昇降位置を切り替える切替機構を有したプローブ移送手段を備えるため、一本のプローブを操作させて分注処理を行なっていた場合と比較し、検体や試薬に対する分注処理の処理効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である洗浄装置および分析装置について、血液や尿などの液体検体をキュベットに分注して検体を分析する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬をキュベット21にそれぞれ分注し、分注したキュベット21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行う。なお、キュベット21は、容量が数nL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。キュベット21は、側壁と底壁とによって液体を保持する液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する。
【0014】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。
【0015】
検体移送部11は、血液などの液体検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送されるキュベット21に分注される。
【0016】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行う検体プローブが複数取り付けられており、検体分注機構12は、各検体プローブをまとめて移送する。検体分注機構12による各検体プローブの移送処理は後述する制御部31によって制御される。検体分注機構12は、各プローブに対応させて図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定の検体吸引位置に移送された検体容器11aの中から、複数のプローブのうち所定のプローブによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定の検体吐出位置に搬送されたキュベット21に検体を吐出して分注を行う。なお、検体移送部11における検体吸引位置に近接して、検体吸引処理および検体吐出処理を実施しないプローブを洗浄するための洗浄液を保持したプローブ洗浄部12bが設けられている。
【0017】
反応テーブル13は、キュベット21への検体や試薬の分注、キュベット21の攪拌、測光、洗浄を行うためにキュベット21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0018】
試薬庫14は、キュベット21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、保冷庫が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を冷却し、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0019】
試薬分注機構16は、検体分注機構12と同様に、試薬の吸引および吐出を行う複数の試薬プローブが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。試薬分注機構16は、各試薬プローブをまとめて移送する。試薬分注機構16による各試薬プローブの移送処理は後述する制御部31によって制御される。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。試薬分注機構16は、各プローブに対応させて図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。試薬分注機構16は、試薬庫14上の所定の試薬吸引位置に移動された試薬容器15内の試薬をプローブによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定の試薬吐出位置に搬送されたキュベット21に試薬を吐出して分注する。なお、試薬庫14における試薬吸引位置に近接して、試薬吸引処理および試薬吐出処理を実施しないプローブを洗浄するための洗浄液を保持したプローブ洗浄部16bが設けられている。
【0020】
攪拌部17は、キュベット21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送されたキュベット21に光源から分析光(340〜800nm)を照射し、キュベット21内の液体を透過した光を分光し、PDAなどの受光素子による各波長光の強度測定を行うことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0021】
洗浄部19は、洗浄プローブによって、測光部18による測定が終了したキュベット21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了したキュベット21を洗浄する。
【0022】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部35および出力部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0023】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0024】
入力部32は、キーボード、マウス、入出力機能を兼ねたタッチパネル等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。また、入力部32は、図示しない通信ネットワークを介して制御部31への指示情報を取得し、送信する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行う。記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置に諸情報を出力する。
【0025】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数のキュベット21に対して、検体分注機構12が複数の検体プローブのうち所定のプローブを用いて検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構16が複数の試薬プローブのうち所定のプローブを用いて試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の検体の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送されるキュベット21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0026】
つぎに、図1に示す検体分注機構12についてさらに詳細に説明する。検体分注機構12は、前述したように、複数の検体プローブを備えた構成を有する。具体的に、図2〜図7を参照して説明する。図2は、検体分注機構12の構成を示す側面図であり、図3は、検体分注機構12を構成するアーム12aを上方から見た平面図であり、図4は、検体分注機構12をアーム12a先端の検体プローブ側から見た正面図であり、図5は、図4に示す回転ベルトおよび支柱の断面を示す図であり、図6は、図2〜図4に示す支え板を下方から見た図であり、図7は、検体分注機構12の要部をアーム12a先端の検体プローブ側から見た正面図である。
【0027】
図2〜図4に示すように、検体分注機構12は、アーム12aの一端に接続し、アームの一端を通過する鉛直線が中心軸である支柱12cを有する。そして、検体分注機構12は、この支柱12cを回転させる回転機構と支柱12cを昇降させる昇降機構とを有する。検体分注機構12は、支柱12cを回転させる回転機構として、図2〜図4に示すように、支柱12cに一体となって設けられたプーリ121oと、プーリ121oおよびプーリ122oに掛け渡された回転用ベルト12pと、プーリ122oに接続するとともに装置本体の不動部分である基板10aに固定された回転用モータ12qとを備える。制御部31の制御のもと回転用モータ12qが時計回りまたは反時計回りに対応する向きで回転した場合、回転用モータ12qの回転がプーリ122o、回転用ベルト12p、プーリ121oに順次伝達することによって支柱12cが時計回りまたは反時計周りに回転する。この支柱12cの回転によって、支柱12cが接続するアーム12aが回転する。そして、検体分注機構12は、支柱12cを昇降させる昇降機構として、分析装置1内部の不動部分である基板10aに支柱12cと平行となるように接続されたネジ軸12sと、このネジ軸12sに接続する昇降用モータ12tと、支柱12cを上面に保持する昇降用板材12uとを備える。ネジ軸12sは、昇降用板材12u内を貫通しており、昇降用板材12uとネジ軸12sとは、たとえばボールねじ機構を構成している。制御部31の制御のもと昇降用モータ12tが上昇方向または下降方向に対応する向きで回転した場合、昇降用モータ12tの回転によってネジ軸12sが回転し、このネジ軸12sの回転にともない昇降用板材12uも上昇または下降することによって、支柱12cが上昇または下降する。この支柱12cの昇降によって、支柱12cが接続するアーム12aも昇降する。
【0028】
そして、分析装置1においては、各プローブの昇降位置を切り替える切替機構が設けられ、切替機構が複数のプローブのうち分注処理を実施させるプローブの昇降位置を分注処理を実施可能な昇降位置に切り替えてから検体分注処理を行なっている。具体的に、切替機構を構成する伝達用歯車12d、切替用歯車12e、支え板12g、回転軸12j、軸柱12k、軸柱用ベルト12l、プーリ121m,122mおよびプローブ用モータ12nについて説明する。
【0029】
前述した支柱12cは、図5に示すように、中空となっており、支柱12c内部には、軸柱12kが貫入されている。図2〜図4に示すように、この軸柱12kの上端には、伝達用歯車12dが設けられている。また、アーム12aの他端、すなわちプローブ側端部近傍においては、回転軸12jがアーム12aを貫通するように設けられている。この回転軸12jは、回転可能なように設けられており、回転軸12jの下端は、支え板12gに接続する。支え板12gには、たとえば図6および図7に示すように、第1検体プローブ121iと第2検体プローブ122iの2本のプローブが固定配置されている。なお、第1検体プローブ121iは、図示しない吸排シリンジに接続するチューブ121hと接続し、第2検体プローブ122iは、図示しない吸排シリンジに接続するチューブ122hと接続する。このチューブ121h,122hの長さには、各検体プローブの回転移動を考慮して余裕を持たせている。
【0030】
そして、この回転軸12jの上端には、切替用歯車12eが設けられている。この回転軸12j上端の切替用歯車12eと軸柱12k上端の伝達用歯車12dには、ベルト12fが掛け渡されている、言い換えると、このベルト12fは、回転軸12jと軸柱12kに掛け渡されている。軸柱12kには、この軸柱12kを回転させる回転機構が設けられており、ベルト12fは、軸柱12kの回転を回転軸12jに伝達する。
【0031】
分析装置1は、この軸柱12kを回転させる回転機構として、図2に示すように、軸柱12k下端に一体となって設けられたプーリ121mと、プーリ122mと、プーリ121mおよびプーリ122mに掛け渡された軸柱用ベルト12lと、プーリ122mに接続するとともに昇降用板材12uに固定されたプローブ用モータ12nとを備える。制御部31の制御のもとプローブ用モータ12nが矢印Y21のように回転した場合、プローブ用モータ12nの回転がプーリ122m、軸柱用ベルト12l、プーリ121mに順次伝達することによって軸柱12kが矢印Y22のように回転する。この軸柱12kの回転にともない軸柱12k上端の伝達用歯車12dが回り、ベルト12fが矢印Y23のように回動する。このベルト12fの回動によって切替用歯車12eが回転し、切替用歯車12eの回転によって回転軸12jも回転し、さらに、回転軸12j下端に接続する支え板12gも回動する。この結果、この支え板12gに固定配置される第1検体プローブ121i,第2検体プローブ122iも矢印Y24のように回転して、位置を入れ替えられる。
【0032】
このように、分析装置1における検体分注機構12においては、各検体プローブの昇降位置を切り替えることができる切替機構を有する。制御部31は、この切替機構による検体プローブの昇降位置の切替処理を制御する。制御部31は、切替機構における回転機構を構成するプローブ用モータ12nを駆動させることによって支え板12gを回動させて各検体プローブの昇降位置を切り替えさせている。
【0033】
たとえば図6および図7に示す検体吸引処理および検体吐出処理を実施可能である分注位置P1に位置するプローブを第1検体プローブ121iから第2検体プローブ122iに切り替える場合を例に説明する。この場合、制御部31は、図6(1)および図7(1)に示す矢印Y23aの方向にベルト12fが回動するようにプローブ用モータ12nを駆動させる。このベルト12fが矢印Y23aの方向に回動することによって、切替用歯車12eが回転し、矢印Y13のように回転軸12jが回転する。さらに、これにともない支え板12gも、図6(1),(2)および図7(1),(2)の矢印Y12a,Y12bのように回動する。この結果、図6(3)および図7(3)に示すように、第2検体プローブ122iが分注位置P1に配置し、第1検体プローブ121iが非分注位置P2に位置に配置し、分注位置P1に位置するプローブが第1検体プローブ121iから第2検体プローブ122iに切り替えられる。なお、次に検体プローブの切り替えを行う場合には、制御部31は、矢印Y23aとは逆の方向にベルト12f、支え板12gが回動するようにプローブ用モータ12nを駆動させて、チューブ121h,122hの絡まりを防止する。
【0034】
そして、試薬分注機構16も検体分注機構12と同様に、支柱16cを回転させる回転機構と、支柱16cを昇降させる昇降機構と、複数の試薬プローブと、この各試薬プローブの昇降位置を切り替える切替機構とを有する。図8に示すように、試薬分注機構16は、アーム16aの一端に接続し、アーム16aの一端を通過する鉛直線が中心軸である支柱16cと、この支柱16cを回転させる回転機構として機能するプーリ161oとプーリ161oおよびプーリ162oに掛け渡された回転用ベルト16pとプーリ162oに接続する回転用モータ16qと、この支柱16cを昇降させる昇降機構として機能するネジ軸16sと該ネジ軸16sに接続する昇降用モータ16tと支柱16cを上面に保持する昇降用板材16uとを備える。そして、試薬分注機構16は、各試薬プローブの昇降位置を切り替える切替機構として、支柱16c内部を貫入する軸柱16kと、軸柱16kの上端に設けられた伝達用歯車16dと、アーム16aの他端を貫通する回転軸16jと、回転軸16jの下端に接続する支え板16gとを備える。そして、支え板16gには、第1試薬プローブ161iと第2試薬プローブ162iの2本のプローブが固定配置されている。なお、第1試薬プローブ161iは、図示しない吸排シリンジに接続するチューブ(図示せず)と接続し、第2試薬プローブ162iは、図示しない吸排シリンジに接続するチューブ162hと接続する。
【0035】
さらに試薬分注機構16は、切替機構として、回転軸16jの上端に設けられた切替用歯車16eと、切替用歯車16eと伝達用歯車16dに掛け渡されたベルト16fと、軸柱16kを回転させる回転機構として機能するプーリ161mと、プーリ162mと、プーリ161mとプーリ162mとに掛け渡された軸柱用ベルト16lと、プーリ162mに接続するプローブ用モータ16nとを備える。制御部31の制御のもとプローブ用モータ16nが矢印Y31のように回転した場合、プローブ用モータ16nの回転がプーリ162m、軸柱用ベルト16l、プーリ161mに順次伝達することによって軸柱16kが矢印Y32のように回転する。この軸柱16kの回転にともない軸柱16k上端の伝達用歯車16dが回り、この結果、ベルト16fが矢印Y33のように回動する。このベルト16fの回動によって切替用歯車16eが回転し、切替用歯車16eの回転によって回転軸16jも回転し、さらに、回転軸16j下端に接続する支え板16gも回動することによって、この支え板16gに固定配置される第1試薬プローブ161i、第2試薬プローブ162iも矢印Y34のように回転して、位置を入れ替えられる。
【0036】
この分析装置1においては、図1に示すように検体吸引位置および試薬吸引位置に近接した箇所にプローブ洗浄部12b,16bを設け、さらに、制御部31が、各切替機構に対して、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブの昇降位置をプローブ洗浄槽12b,16bに対応する昇降位置に切り替えさせ、液体吸引処理と同時に液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブに対する洗浄処理を行わせている。この結果、分析装置1によれば、従来行なっていたプローブ洗浄処理に要する時間分を短縮した分注処理を行うことができる。
【0037】
具体的に、図9〜図13を参照して、この分注処理について説明する。図9は、プローブ洗浄処理を削除した分注処理の処理手順を示すフローチャートであり、図10〜図13は、図9に示す分注処理を説明する図である。なお、図9〜図13においては、検体分注機構12における検体分注処理の処理手順を例に示すが、試薬分注機構16は、図9に示す処理手順と同等の処理手順を行なって試薬分注処理を行う。
【0038】
図9に示すように、まず、制御部31は、検体分注機構12における切替機構に対して、複数の検体プローブのうち分注処理を実施させる検体プローブを非分注位置から分注位置に切り替えさせるプローブ切替処理を行う(ステップS2)。たとえば、図10に示すように、前回の分注処理を実施していた検体プローブが第2検体プローブ122iであり本分注処理を実施する検体プローブが第1検体プローブ121iである場合には、制御部31は、プローブ用モータ12nを駆動させることによって矢印Y41のように支え板12gを回動させて、分注位置P1に位置する検体プローブを第2検体プローブ122iから第1検体プローブ121iに切り替える。
【0039】
そして、制御部31は、検体分注機構12のアーム12aを回転させて、分注処理を実施させる検体プローブを検体吸引位置に移動させる吸引位置移動処理を行う(ステップS4)。具体的には、制御部31は、図10の矢印Y42のように、アーム12aを回転させて、図11に示す吸引対象の検体Ls1を保持する検体容器11a上に、分注処理を実施させる第1検体プローブ121iを位置させる。
【0040】
次いで、制御部31は、検体分注機構12の支柱12cを下降させて、分注処理を実施させる検体プローブを分注対象の検体を保持する検体容器内に挿入させて検体の吸引を実施させる吸引用下降処理を行う(ステップS6)。
【0041】
ここで、この分析装置1においては、図1および図11に示すように、分注処理を実施させるプローブがアーム12aおよび支柱12cなどの移送機構によって検体吸引位置に移送された場合に、分注処理を実施させるプローブ以外のプローブが位置する場所に、洗浄液Lwを保持したプローブ洗浄部12bを設けている。すなわち、分析装置1には、検体分注機構12による検体吸引処理のためのプローブ下降時において、支え板12gの非分注位置P2に位置する検体プローブが下降する位置に、プローブ洗浄部12bが設けられている。このため、吸引用下降処理において支柱12cが図11の矢印Y43のように下降した場合、矢印Y44aのように分注処理を実行する第1検体プローブ121iは、検体容器11aの検体Ls1内に挿入され、その後、所定量の検体を吸引する。さらに、第1検体プローブ121iの検体Ls1内挿入と同時に、前回分注処理を行なったプローブであって本分注処理において検体の分注処理を行なわない第2検体プローブ122iも矢印Y44bのようにプローブ洗浄部12b内の洗浄液Lw内に挿入される。この結果、第2検体プローブ122iは、洗浄液Lwによって前回分注処理による付着物が除去される。このように、分析装置1においては、検体分注機構12による吸引処理のためのプローブ下降時において支え板12gにおける検体吸引を行なわない検体プローブが下降する位置にプローブ洗浄部12bを設けることによって、検体吸引処理と同時に、検体吸引を行なわない検体プローブの洗浄を行なっている。なお、分析装置1においては、試薬分注機構16においても同様にプローブ洗浄部16bを設け、試薬吸引処理と同時に、試薬吸引を行なわない試薬プローブの洗浄を可能としている。
【0042】
検体の吸引処理が終了した後、制御部31は、検体分注機構12の支柱12cを上昇させて、検体プローブを検体容器11a外に移動させる吸引後上昇処理を行う。(ステップS8)。そして、制御部31は、検体分注機構12のアーム12aを回転させて、分注処理を実行する検体プローブを検体吐出位置に移動させる吐出位置移動処理を行う(ステップS16)。具体的には、制御部31は、図12の矢印Y45のように、アーム12aを回転させて、検体を吐出するキュベット21上に、分注処理を実行させる第1検体プローブ121iを位置させる。
【0043】
つぎに、制御部31は、検体分注機構12の支柱12cを下降させて、分注処理を実施させる検体プローブを吐出対象のキュベット21内に挿入させて検体の吐出を実施させる吐出用下降処理を行う(ステップS12)。具体的には、図12に示すように、制御部31は、図12の矢印Y46のように、支柱12cを下降させる。この結果、第1検体プローブ121iは、吐出対象のキュベット21内に挿入され、その後、吸引していた所定量の検体をキュベット21内に吐出する。なお、第2検体プローブ122iは、キュベット21内には挿入されない。
【0044】
検体の吐出処理が終了した後、制御部31は、検体分注機構12の支柱12cを上昇させて、検体プローブをキュベット21外に移動させる吐出後上昇処理を行ない(ステップS14)、第1検体プローブ121iによる一連の分注処理は終了する。
【0045】
そして、制御部31は、分析処理の依頼内容などをもとにさらに分注処理を続行するか否かを判断する(ステップS16)。制御部31は、分注処理を続行しないと判断した場合には(ステップS16:No)、分注処理を終了し、分注処理終了後に行うプローブ洗浄処理や検体移送処理などを所定のシーケンスにしたがって実行する。
【0046】
これに対し、制御部31は、分注処理を続行すると判断した場合(ステップS16:Yes)、ステップS2に戻り、分注位置に位置する検体プローブを、これまでの分注処理を実施した検体プローブから、次の分注処理を実施させる検体プローブであって洗浄処理が終了した別の検体プローブに切り替える。具体的には、図13に示すように、制御部31は、プローブ用モータ12nを駆動させることによって矢印Y48のように支え板12gを回動させて、分注位置P1に位置する検体プローブを、これまで分注処理を実施していた第1検体プローブ121iから、洗浄済みの第2検体プローブ122iに切り替える。この結果、この分注処理における吸引用下降処理(ステップS6)では、第2検体プローブ122iは、検体吸引処理のため吸引対象の検体Ls2を保持する検体容器11a内に挿入される。そして、第2検体プローブ122iは、検体Ls2を吸引する。これと同時に、前回分注処理を実施した第1検体プローブ121iは、プローブ洗浄部12b内に挿入され、洗浄される。
【0047】
このように、図1に示すように検体吸引位置および試薬吸引位置に近接した箇所にプローブ洗浄部12b,16bを設け、さらに、検体または試薬に対する分注処理が終了するごとに複数のプローブの昇降位置を切り替えることによって、液体吸引処理を実行するプローブによる吸引処理と前回分注処理を実施したプローブに対する洗浄処理とを同時に行なっている。
【0048】
ところで、従来の分析装置は、液体を吸引吐出する1本のプローブを1本のアームに取り付け、このアームを回転昇降させることによって検体や試薬などの分注処理を行なっていた。したがって、従来の分析装置においては、一本のプローブと一本のアームを操作させて分注処理を行なっていたため、試薬または検体の吸引処理、試薬または検体の吐出処理に加え、分注処理後のプローブを洗浄する洗浄処理を一連の分注処理として行なわざるを得なかった。
【0049】
具体的に、図14を参照して、従来の分析装置における分注処理の処理手順を説明する。従来の分析装置においては、分注処理として、図9に示すステップS4と同様に、吸引位置移動処理(ステップS104)を行い、アームがプローブを下降させて検体容器内にプローブを挿入する吸引用下降処理(ステップS106)を行い、プローブが吸引対象の液体を吸引した後、アームがプローブを上昇させる吸引後上昇処理を行う(ステップS108)。そして、従来の分析装置においては、アームがキュベット上にプローブを移動させる吐出位置移動処理を行い(ステップS110)、アームがプローブを下降させてキュベット内にプローブを挿入する吐出用下降処理を行い(ステップS112)、プローブが液体を吐出した後、アームがプローブを上昇させる吐出後上昇処理を行う(ステップS114)。
【0050】
さらに、従来の分析装置においては、液体を吸引吐出したプローブを洗浄するために、アームがプローブ洗浄槽上にプローブを移送する洗浄位置移動処理を行い(ステップS116)、アームがプローブを下降させてプローブをプローブ洗浄槽内の洗浄液内に挿入させる洗浄用下降処理を行って(ステップS118)、プローブを洗浄し、その後アームがプローブを上昇させる洗浄後上昇処理を行っていた(ステップS120)。なお、従来の分析装置においても、図9に示すステップS16と同様に、分注処理続行判断処理を行い(ステップS124)、分注処理を終了する。
【0051】
したがって、従来においては、一本のプローブと一本のアームを操作させて分注処理を行っていることから、分注処理が終了したプローブを洗浄する洗浄処理を連続的に処理するように分注処理のシーケンスに洗浄処理を組み込まざるを得なかったため、分注速度向上などの処理効率向上に限界があった。
【0052】
これに対し、本実施の形態にかかる分析装置1においては、図1および図11に示すように検体吸引位置および試薬吸引位置に近接した箇所にプローブ洗浄部12b,16bを設け、さらに、検体または試薬に対する分注処理が終了するごとに各プローブの昇降位置を切り替えることによって、液体吸引処理を実行するプローブによる液体吸引処理と前回分注処理を実施したプローブに対する洗浄処理とを同時に行なっている。すなわち、分析装置1によれば、従来必要であったプローブ洗浄処理に要する時間分を短縮した分注処理を行うことができる。したがって、分析装置1によれば、分注速度を向上させることができ、分析処理全体の処理効率の向上を図ることが可能になる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、図15の分析装置1aに示すように、プローブ洗浄部12b,16bに加え、検体吐出位置および試薬吐出位置に近接した箇所にもプローブ洗浄部122b,162bを設け、制御部31は、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブの昇降位置をプローブ洗浄槽12b,16b,122b,162bに対応する昇降位置に切り替えさせ、液体吸引処理および液体吐出処理の処理と同時に液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブに対する洗浄処理を2回行なわせてもよい。この分析装置1aによれば、図16に示すように、図9に示す吸引用下降処理(ステップS6)とともに、図9に示す吐出用下降処理(ステップS12)においても、前回分注処理を行ったプローブに対して洗浄処理を行うことができる。このため、分析装置1aによれば、洗浄処理時間を新たに追加することなく、プローブの2度洗いをすることができる。なお、実施の形態においては、プローブの洗浄処理を一度のみ行えば足りる場合には、図1に示す構成のほか、分析装置1aにおけるプローブ洗浄部122b,162bのみを設けた構成としてもよい。
【0054】
また、実施の形態として、図1、図9および図15に示すように、液体吸引位置、液体吐出位置の少なくともいずれかに近接させてプローブ洗浄部12b,16bを設けて液体吸引処理または液体吐出処理と同時にプローブ洗浄処理を行えるようにして、分析処理時間を短縮化した場合を例に説明したが、これに限らない。たとえば、複数のプローブのうち少なくとも1本を予備用のプローブとし、制御部31は、各プローブの昇降位置を切り替える切替機構に対し、液体吸引処理および液体吐出処理を実施していたプローブに異常が発生した場合に、該異常が発生したプローブとは別のプローブが液体吸引処理および液体吐出処理を実施できるように各プローブの昇降位置を切替させて、分析処理の中断を回避してもよい。
【0055】
具体的には、図17の矢印Y61に示すように、検体を分注していた第1検体プローブ121iに異物詰まりなどの異常が発生した場合には、制御部31は、プローブ用モータ12nを駆動させることによって矢印Y62のように支え板12gを回動させて、分注位置P1に位置する検体プローブを第1検体プローブ121iから予備用の第2検体プローブ122iに切り替える。そして、制御部31は、図18に示すように、以降の分注処理を第2検体プローブ122iに実行させる。
【0056】
つぎに、図19を参照して、この場合の分析装置1における分注処理の処理手順について説明する。まず、制御部31は、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しているプローブに異常が発生したか否かを判断する(ステップS201)。たとえば、制御部31は、分析処理を行った分析結果に異常があったと判断した場合、プローブに異物詰まりが発生したと判断した場合、プローブに接続する吸排シリンジに異常が発生したと判断した場合、または、入力部32からプローブに異常が発生したことを示す情報が入力された場合、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しているプローブに異常が発生したと判断する。
【0057】
制御部31は、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しているプローブに異常が発生したと判断した場合には(ステップS201:Yes)、プローブ用モータ12nを駆動させて予備用のプローブを非分注位置から分注位置に切り替えさせるプローブ切替処理を行う(ステップS202)。
【0058】
そして、制御部31は、分注処理を実施しているプローブに異常が発生していないと判断した場合(ステップS201:No)、または、プローブ切替処理(ステップS202)が終了した場合、図9に示すステップS4〜ステップS14と同様に、吸引位置移動処理(ステップS204)、吸引用下降処理(ステップS206)、吸引後上昇処理(ステップS208)、吐出位置移動処理(ステップS210)、吐出用下降処理(ステップS212)、吐出後上昇処理(ステップS214)を行なう。そして、液体を吸引吐出したプローブを洗浄するために、アームが、アームの軌跡に応じて設けられたプローブ洗浄槽上にプローブを移送する洗浄位置移動処理を行い(ステップS216)、プローブを下降させてプローブをプローブ洗浄槽内の洗浄液内に挿入させる洗浄用下降処理を行って(ステップS218)、プローブを洗浄し、その後プローブを上昇させる洗浄後上昇処理を行う(ステップS220)。そして、制御部31は、図9に示すステップS16と同様に分注処理続行判断処理(ステップS222)を行う。
【0059】
したがって、分析装置1は、液体吸引処理および液体吐出処理を実施していたプローブに異常が発生した場合には、該異常が発生したプローブから別のプローブに切り替え、そのまま切り替えたプローブを用いて分注処理を行い、分析処理を続行することができる。
【0060】
ここで、従来の分析装置においては、一本のプローブと一本のアームを操作させて分注処理を行っていたため、この一本のプローブに異常が発生した場合には、分析処理を中断して新たに別のプローブに交換しなければならなかった。
【0061】
これに対し、分析装置1によれば、液体吸引処理および液体吐出処理を実施していたプローブに異常が発生した場合であっても、プローブ交換のため分析処理を中断することなくそのまま分析処理を続行することができるため、システム的な処理効率を向上させることが可能になる。
【0062】
また、分析装置1においては、複数のプローブの開口径をそれぞれ異なるものとし、制御部31は、切替機構に対し、分注対象の液体の分注量に対応した開口径のプローブが液体吸引処理および液体吐出処理を実施できるように各プローブの昇降位置を切り替えさせて、それぞれ異なる分注量の検体または試薬を用いる複数の分析処理を一つの分析装置1内で連続して行えるようにしてもよい。
【0063】
たとえば、図20に示すように、第1検体プローブ1212iとともに、第1検体プローブ1212iよりも開口径の大きい第2検体プローブ1222iを設け、制御部31は、検体の分注量に応じて分注位置に位置する検体プローブを第1検体プローブ1212iまたは第2検体プローブ1222iのいずれかに切り替える。具体的には、制御部31は、分注量が少ない場合には、分注位置に位置する検体プローブを開口径の小さい第1検体プローブ1212iに切り替えて、分注精度の向上を図る。一方、制御部31は、分注量が多い場合には、分注位置に位置する検体プローブを開口径の大きな第2検体プローブ1222iに切り替えて、分注処理の高速化および異物詰まり防止を図る。
【0064】
つぎに、図21を参照して、この場合の分析装置1における分注処理の処理手順について説明する。まず、制御部31は、本分析処理における検体または試薬の分注量をもとに、分注処理を実施するプローブを切り替えるタイミングであるか否かを判断する(ステップS301)。制御部31は、分注処理を実施するプローブを切り替えるタイミングであると判断した場合には(ステップS301:Yes)、プローブ用モータ12nを駆動させて分注量に応じたプローブを非分注位置から分注位置に切替されるプローブ切替処理を行う(ステップS302)。
【0065】
そして、制御部31は、分注処理を実施するプローブを切り替えるタイミングで無いと判断した場合(ステップS301:No)、または、プローブ切替処理(ステップS302)が終了した場合、図9に示すステップS4〜ステップS14および図19に示すステップS216〜ステップS222と同様に、分析装置1は、吸引位置移動処理(ステップS304)、吸引用下降処理(ステップS306)、吸引後上昇処理(ステップS308)、吐出位置移動処理(ステップS310)、吐出用下降処理(ステップS312)、吐出後上昇処理(ステップS314)、洗浄位置移動処理(ステップS316)、洗浄用下降処理(ステップS318)、洗浄後上昇処理(ステップS320)および分注処理続行判断処理(ステップS322)を行う。このように、分析装置1は、検体または試薬の分注量に応じてプローブを切り替えて分注処理を行い、分注精度の向上、分注処理の高速化および異物詰まり防止を図る。
【0066】
ここで、従来の分析装置においては、一本のプローブと一本のアームを操作させて分注処理を行っていたため、検体または試薬の分注量が異なる複数の分析処理を行う場合には、検体または試薬の分注量に合う開口径のプローブを持つ各分析装置をわざわざ使い分けていた。また、従来の分析装置においては、検体または試薬の分注量が異なる複数の分析処理を行う場合であって、これまで行なわれてきた分注処理における分注量と分注量が大きく異なる分析処理を行なう場合には、分析装置の操作者が分注量に合う開口径のプローブに交換してからでないと分析処理を再開できなかった。
【0067】
これに対し、分析装置1においては、開口径の異なるプローブを設け、検体または試薬の分注量に応じた開口径のプローブが液体吸引処理および液体吐出処理を実施できるように各プローブの昇降位置を切り替えることによって、検体または試薬の分注量が異なる複数の分析処理を、分注量に合う開口径のプローブに交換することなく、一台の分析装置1内において連続して実行することができる。このため、分析装置1においては、プローブ交換処理による操作者の作業負担および分析装置変更に要していた作業時間を省略することができ、分析処理効率の向上を図ることが可能になる。
【0068】
また、本実施の形態においては、二本のプローブを設けた場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。たとえば検体分注機構12においては、図22に示すように、支え板122gに第1検体プローブ121iおよび第2検体プローブ122iに加え第3検体プローブ123iを設けて、これら3本のうちのいずれかを用いて検体分注処理を行ってもよく、図23に示すように、支え板123gに第1検体プローブ121i、第2検体プローブ122iおよび第3検体プローブ123iに加え第4検体プローブ124iを設けて、これら4本のうちのいずれかを用いて検体分注処理を行ってもよい。もちろん、試薬分注機構16においても、試薬プローブをたとえば3本または4本設け、これら4本のうちのいずれかを用いて試薬分注処理を行ってもよい。なお、図22および図23は、図2〜図4に示す支え板および検体プローブの他の構成を例示する図であって、図22の上図および図23の上図は、支え板を上から見た図であり、図22の下図および図23の下図は、検体プローブ側から見た正面図である。
【0069】
なお、本実施の形態による分析装置1,1aにおいては、制御部31の制御のもと、プローブ用モータ12n,16nが駆動することによって各プローブの昇降位置を切り替えていたが、もちろん、各プローブの昇降位置の切り替えは手動で行なってもよい。
【0070】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1,1aは、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す検体分注機構の構成を示す側面図である。
【図3】図1に示す検体分注機構を構成するアームを上方から見た平面図である。
【図4】図1に示す検体分注機構をアーム先端の検体プローブ側から見た正面図である。
【図5】図4に示す回転用ベルトおよび支柱の断面を示す図である。
【図6】図2〜図4に示す支え板を下方から見た図である。
【図7】図1に示す検体分注機構の要部をアーム先端の検体プローブ側から見た正面図である。
【図8】図1に示す試薬分注機構の構成を示す側面図である。
【図9】図1に示す分析装置における分注処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図9に示す分注処理を説明する図である。
【図11】図9に示す分注処理を説明する図である。
【図12】図9に示す分注処理を説明する図である。
【図13】図9に示す分注処理を説明する図である。
【図14】従来の分析装置における分注処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】実施の形態にかかる分析装置の他の構成を示す模式図である。
【図16】図15に示す検体分注機構の動作を説明する図である。
【図17】図1に示す検体分注機構におけるプローブ切替処理を説明する図である。
【図18】図1に示す検体分注機構におけるプローブ切替処理を説明する図である。
【図19】図1に示す分析装置における分注処理の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】図1に示す検体分注機構におけるプローブ切替処理を説明する図である。
【図21】図1に示す分析装置における分注処理の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図22】図2〜図4に示す支え板および検体プローブの他の構成を例示する図である。
【図23】図2〜図4に示す支え板および検体プローブの他の構成を例示する図である。
【符号の説明】
【0072】
1,1a 分析装置
2,2a 測定機構
3 制御機構
10 筐体
10a 基板
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
12a,16a アーム
12b,16b,122b,162b プローブ洗浄部
12c,16c 支柱
12d,16d 伝達用歯車
12e,16e 切替用歯車
12f,16f ベルト
12g,16g,122g,123g 支え板
121h,122h,162h チューブ
121i,1212i 第1検体プローブ
122i,1222i 第2検体プローブ
123i 第3検体プローブ
124i 第4検体プローブ
12j,16j 回転軸
12k,16k 軸柱
12l,16l 軸柱用ベルト
121m,122m,121o,122o,161m,162m,161o,162o プーリ
12n,16n プローブ用モータ
12p,16p 回転用ベルト
12q,16q 回転用モータ
12s,16s ネジ軸
12t,16t 昇降用モータ
12u,16u 昇降用板材
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
16 試薬分注機構
161i 第1試薬プローブ
162i 第2試薬プローブ
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
21 キュベット
31 制御部
32 入力部
33 分析部
35 記憶部
36 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に液体である検体および試薬を分注し前記検体を分析する分析装置において、
液体を吸引および吐出する複数のプローブと、
前記複数のプローブを取り付け各プローブをまとめて移送するプローブ移送手段であって、各プローブの昇降位置を切り替える切替機構を有したプローブ移送手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記プローブ移送手段による移送処理および前記切替機構によるプローブの昇降位置の切替処理を制御する制御手段をさらに備え、
前記プローブ移送手段は、
アームと、
前記アームの一端に接続し、前記アームの一端を通過する鉛直線が中心軸である支柱と、
前記支柱を回転および昇降させる支柱回転昇降機構と、
を備え、
前記切替機構は、
前記支柱内部に貫入された第1の回転軸と、
前記第1の回転軸を回転させる回転機構と、
前記複数のプローブが固定配置されている支え部材と、
前記アームの他端に設けられ、前記支え部材に接続する第2の回転軸と、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸に掛け渡され前記第1の回転軸の回転を前記第2の回転軸に伝達する伝達部材と、
を備え、
前記制御手段は、前記回転機構を駆動させることによって前記支え部材を回動させて各プローブの昇降位置を切り替えさせることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記プローブによる液体吸引位置および/または液体吐出位置に近接して設けられたプローブ洗浄槽をさらに備え、
前記制御手段は、前記切替機構に対して、液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブの昇降位置を前記プローブ洗浄槽に対応する昇降位置に切り替えさせ、液体吸引処理および/または液体吐出処理と同時に前記液体吸引処理および液体吐出処理を実施しないプローブに対する洗浄処理を行わせることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、液体吸引処理および液体吐出処理を実施していたプローブに異常が発生した場合に該異常が発生したプローブとは別のプローブが液体吸引処理および液体吐出処理を実施できるように前記切替機構に各プローブの昇降位置を切替させることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項5】
前記複数のプローブの開口径はそれぞれ異なっており、
前記制御手段は、分注対象の液体の分注量に対応した開口径のプローブが吸引処理および吐出処理を実施できるように前記切替機構に各プローブの昇降位置を切替させることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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