説明

分析装置

【課題】放電式のオゾン発生器に用いて発生させたオゾンを用いて反応器に導き、該反応器内で別に導かれた試料ガス中の目的成分と会合させて化学発光させる分析装置において、発生したオゾン濃度を一定に保ち、周囲温度の変化に対して影響を受けにくい分析装置を提供する。
【解決手段】放電式のオゾン発生器12からオゾンとともに発生する副生成物等を除去し、オゾンを高い効率で通過させるための浄化器13も温度調節することにより、周囲温度の変化の影響を受けることなく安定したオゾン濃度で反応器に導かれるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を原料として発生させたオゾンと、目的成分を反応させて発光反応を生じせしめることを利用する分析装置に関連し、とりわけ発生したオゾン濃度を安定に保ち、分析装置の温度依存性の改善や、再現性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中の目的成分を分析する装置には種々のものがあるが、長期にわたり連続的に分析し、記録する必要がある場合に好適な装置の一つとして周囲空気を原料としてオゾンを発生させて、このオゾンと目的成分を反応させてその化学発光による光の強度を測定することによって分析する装置がある。この一例は大気中の窒素酸化物自動測定器であって、一酸化窒素がオゾンと反応して近赤外部に光を発生することを利用している。
【0003】
この窒素酸化物自動測定器は、発生するオゾン濃度を一定に保つことが一酸化窒素の濃度に応じた安定した測定値を得るうえで重要となる。そのために発生するオゾン濃度を安定に保つために、窒素酸化物自動測定器においては周囲の空気を連続的に除湿し、乾燥空気として放電させるために透過膜式等の除湿器を通過させたのちにオゾン発生器に導いている。
【0004】
オゾン発生器は、空気を高圧で放電させる放電式のものや紫外線照射式のものがある。放電式においては、オゾン発生量に優れている一方、放電の過程で、空気中の窒素に由来する副生成物ないし不純物(これらを「副生成物等」と呼ぶ)として種々の窒素酸化物などが発生し、これが反応セル容器内で偽の光を発し、または反応セル容器に沈着物を生成して、目的成分の発光による測定を妨げることがある。その対策として、副生成物等の浄化器を介して反応器に導くことが有効であることが知られている。(米国特許第4236895号)
【0005】
この先行特許文献によると、副生成物等の浄化器の充填材料としては、シリカゲルが好適で、副生成物等を除去するとともに、オゾンは比較的、高い効率で通過させるという性質を有していることが開示されている。更に、このシリカゲルは1年から半年の寿命もあり、比較的で安価に交換も可能なので、現在では、上記の空気の放電による副生成物等を除去し、オゾンを比較的、高い効率で反応セル容器に導く手段として広く普及している。
【特許文献1】米国特許第4236895号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の副生成物等の浄化のための充填材料のシリカゲルは、前述のようにオゾンを高い効率で、通過させるが、発明者が、鋭意、長期にわたって観察したところ、オゾンの通過率には温度依存性があることを確認した。
つまり、この充填材料のシリカゲルは、温度が高いほどオゾンの通過率が悪化し、低温では通過率が向上する。この結果、周囲温度が変化した場合、反応セル容器に至るオゾン濃度が変化してしまい、その結果、試料気体中の目的成分との反応による発光強度が、周囲温度の影響を受けて、変動する。
【0007】
特に、本法によってJIS B 7953に基づく大気中の窒素酸化物自動計測器を構成した場合、周囲の気温の高い夏季と気温の低い冬季では、感度が異なるという問題を発生していた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、効率のよいオゾン発生法である放電法によって、不可避的に発生する副生成物等を確実に除去するとともに、周囲温度の変化にかかわらず安定した濃度でオゾンを反応セルに供給するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、オゾンが高温で分解されやすく、顕著な温度依存性を有していることに着目した。そこで請求項1においては、周囲空気を原料とし、該原料を膜透過式除湿器で除湿したのちに無声放電式のオゾン発生器に導いて発生させたオゾンを、副生成物等の浄化器を介して反応器に導き、該反応器内で別に導かれた試料ガス中の目的成分と会合させて化学発光させる分析装置において、前記の副生成物等の浄化器を温度調節器内に保持していることを特徴とする。これによって副生成物の浄化器は温度調節器内に保持されており、周囲温度が変化してもここを通過するオゾンの濃度が変化することはなくなる。
【0010】
つぎに請求項2においては、前記副生成物等の浄化器としてシリカゲルを充填した容器を用いた場合にも請求項1と同様に、副生成物等の浄化器は温度調節器内に保持されているので、副生成物ないし不純物を良好に除去するとともに、周囲温度が変化してもここを通過するオゾンの濃度が変化することはなくなる。
【0011】
請求項3においては、前記浄化器を保持する温度調節器の温度範囲を5℃〜50℃であることを特徴とした。温度調節の設定温度は、技術的には任意に設定可能であるが、JIS B 7953に基づく大気中の窒素酸化物自動計測器の使用可能範囲は、5℃〜40℃である。更に使用可能な周囲温度の上限である40℃ではオゾン発生器が放電によって更に周囲温度が上昇しても50℃を超えることはないので温度調節器の温度を5℃〜50℃の範囲で設定する。
【0012】
請求項4においては、前記温度調節器内には、オゾン発生器もともに保持していることを特徴とする。すでに知られているように放電式のオゾン発生器のオゾン発生量は温度が低いほど大きくなり、同様に温度依存性がある。したがって周囲温度の変化にかかわりなくオゾン発生量を安定に保つには、オゾン発生器を温度調節器のなかに保って温度調節する。ここで同じく温度調節を必要とする副生成物等の浄化器も、同一の温度調節器のなかに保つことによって、オゾン発生器のオゾン発生量も安定に保つことができ、同時に副生成物の浄化器を通過するオゾンも外気温によって変化することがないので、反応セル容器に到達するオゾン濃度が一定に保つことができる。そして分析装置は周囲温度に依存しない安定した測定値を得ることができる。
【0013】
請求項5においては、目的成分が一酸化窒素であることを特徴とし、本発明に基づく分析装置が窒素酸化物自動測定器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、放電方式のオゾン発生器から発生する副生成物等を除去するための浄化器は、オゾンを通過させる際に、その通過率は温度によって異なり、その結果、分析装置は外気温度の影響を受けて変化するが、本発明の分析装置によれば、副生成物等を除去するための浄化器は、温度調節器のなかに保たれているので、オゾンの通過率は安定しており、分析装置は外気温度の影響を受けることなく、安定した測定値を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
JIS B 7953に基づく大気中の窒素酸化物自動計測器のうち、化学発光式計測器は三種類の流路構成を示しており、更に環境省の「環境大気 常時監視マニュアル」(第5版)において従来技術を詳述している。そのうち、もっとも構成が簡易な流路切換方式では、大気中の窒素酸化物を分析する場合、二酸化窒素は、試料大気中の二酸化窒素を一酸化窒素に還元するコンバータを経由する流路とコンバータを経由しない流路を弁で切り換え、交互に1つの反応セル容器に導入して、その発光光量を1つの検出器で測定している。
【0016】
図1は従来の大気中の窒素酸化物自動計測器の構成を示す。試料大気は試料大気導入口1を経てダストフィルター2を経由して透過膜式の除湿器3を介して切換え弁4に至る。ここで流路は2つに分かれコンバータ5を経由する流路6と経由しない流路7に分岐し、切換え弁8で交互に切換えられ、流量制御部(図示しない)を経て反応セル容器9に至る。
一方、オゾン発生をさせる流路は周囲の大気をオゾン源ガス入り口10から除湿器11に導き、更に放電式のオゾン発生器12でオゾンを発生させたのち、浄化器13で副生成物等を除去し、流量制御部(図示しない)を経て反応セル容器9に至る。この反応セル容器9で試料大気中の一酸化窒素や、コンバータ5を経由して一酸化窒素に還元された二酸化窒素は、オゾンと反応して発光する。発光した光は光電測光部14で電気信号に変換され、増幅部15で増幅されたのち、データ処理されて、一酸化窒素濃度、二酸化窒素濃度として表示され、記録される。上記のガス流路は試料大気吸引ポンプ16で制御され、吸引口側には発生したオゾンからポンプ16を保護するために、オゾン分解器17を配置している。
【0017】
1.従来の温度調節方法
ここで放電式のオゾン発生器12のオゾン生成効率は、温度依存性があることが知られており、安定したオゾン濃度を確保するために、オゾン発生器12を温度調節して使用する。この場合、オゾン発生効率は低温であるほど良い。しかしJIS B 7953に基づく大気中の窒素酸化物自動計測器の使用可能な周囲温度の上限である40℃で運転させるとオゾン発生器は高圧で放電させるために発熱し、その影響でその部位は50℃に上がる。このような事情から通常は、温度調節器18(図1において太線で囲む)の温度は50℃として、周囲温度の変化にかかわらずオゾン発生器12を50℃に保って、つねに安定したオゾンが発生するようにしている。
ここで従来の窒素酸化物自動計測器の周囲温度を10℃から30℃に変化させてみた。この場合,窒素酸化物自動計測器内部の浄化器周辺の温度は30℃から45℃に上昇し,感度は5.5%低下した。
次に窒素酸化物自動計測器の周囲温度は20℃の一定に保ち、浄化器の部分のみを45℃に上昇させてみた。そうすると感度は2%低下していた。
【0018】
2.本発明による温度調節方法
次に図2に示す50℃の温度調節器18(図2において太線で囲む)のなかに浄化器13もオゾン発生器12とともに入れて運転させた。この状態で窒素酸化物自動計測器の周囲温度を10℃から30℃に変化させてみた。そうすると感度の低下は3.5%に減少した。
次に窒素酸化物自動計測器の周囲温度は20℃の一定に保ち、オゾン発生器12とともに浄化器13が設置された温度調節器18の周囲のみを30℃から45℃に上昇させてみた。そうすると感度の低下は全く見られなかった。
以上の点からオゾン発生器12から発生する副生成物等の種々の窒素酸化物を除去するためのシリカゲルからなる浄化器13を温度調節することによって周囲温度の変化による感度の低下が見られなくなり、分析装置の温度依存性や、再現性の改善に寄与していることが確認された。
【0019】
この実施形態においては、放電式のオゾン発生器が運転により発熱し、かつオゾン発生器自体も温度調節する必要があることから、温度調節にかけるコストを抑え、簡易な構成とするために、窒素酸化物自動計測器の使用可能な最高周囲温度の40℃で、オゾン発生器が到達する温度の50℃に設定して発熱素子のみからなる温度調節器にオゾン発生器とともに、浄化器を入れて温度調節した。
【0020】
しかし、浄化器でのオゾンの通過率をより高め、窒素酸化物自動計測器の感度を高く保つ必要がある場合には、冷却素子も内蔵した温度調節器を用い、窒素酸化物自動計測器の使用可能な温度内で設定温度をより低く保つことも可能である。そして容量の大きい冷却素子をも内蔵した温度調節機能をもった温度調節器を用いて、このなかにオゾン発生器とともに収容することによって、オゾンの発生効率を高め、浄化器でのオゾンの通過率も向上させて窒素酸化物自動計測器の感度をより高く保ち、同時に周囲温度の影響を受けない安定した運転をさせることも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の窒素酸化物測定器の構成を示す図である。
【図2】本発明にもとづく窒素酸化物測定器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 試料大気導入口
2 ダストフィルター
3 除湿器
4 切換え弁
5 コンバータ
6 コンバータを経由する流路
7 コンバータを経由しない流路
8 切換え弁
9 反応セル容器
10 オゾン源ガス入り口
11 除湿器
12 オゾン発生器
13 浄化器
14 光電測光部
15 増幅部
16 試料大気吸引ポンプ
17 オゾン分解器
18 温度調節器



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲空気を原料とし、該原料を透過膜式除湿器で除湿したのちに放電式のオゾン発生器に導いて発生させたオゾンを、副生成物等の浄化器を介して反応セル容器に導き、該反応セル容器内で別に導かれた試料ガス中の目的成分と会合させて化学発光させる分析装置において、前記の副生成物等の浄化器を温度調節器内に保持していることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記副生成物等の浄化器としてシリカゲルを充填した容器を用いていることを特徴とする請求項1に記載する分析装置。
【請求項3】
前記浄化器を保持する温度調節器の温度範囲が5℃〜50℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載する分析装置。
【請求項4】
前記温度調節器内には、オゾン発生器とともに保持していることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載する分析装置。
【請求項5】
目的成分が一酸化窒素であることを特徴とし、分析装置が窒素酸化物自動測定器であることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載する分析装置。


















【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−150688(P2009−150688A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327011(P2007−327011)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】